特許異議申立
2020-700767
測距撮像装置及び固体撮像素子
- 審判番号
- 2020-700767
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-520212
- 登録番号
- 6676866
- 請求日
- 2020年10月07日
- 審決日
- 2021年10月14日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
- 【権利者代理人】新居 広守
- 【権利者代理人】寺谷 英作
- 【権利者代理人】道坂 伸一
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 中塚 直樹
- 分類
- P1652.161-ZDA(G01S) / P1652.537-ZDA(G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第5項、特許法第41条、特許法第36条、特許法第113条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6676866号発明「測距撮像装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6676866号の明細書及び特許請求の範囲を、それぞれ訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11、12〕について訂正することを認める。
特許第6676866号の請求項1、2、6に係る特許を維持する。
特許第6676866号の請求項7~10に係る特許を取り消す。
特許第6676866号の請求項3、4、11、12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6676866号の請求項1~12に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)5月10日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 平成27年5月28日)、令和2年3月17日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月8日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 2年10月 7日 : 特許異議申立人赤松智信(以下、単に「特許異議申立人」という。)による請求項1~4、6~12に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 3年 1月21日付け: 取消理由通知書
令和 3年 3月29日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 3年 4月22日付け: 手続補正指令書(方式)
令和 3年 5月27日 : 特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和 3年 6月21日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
以下、令和3年3月29日にされた訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。
なお、上記訂正請求書による請求の内容は、実質的に、取消理由が通知された請求項1~4、及び、請求項1~4の記載を引用する請求項6~12を全て削除し、特許異議の申立ての対象となっていない請求項5(訂正後の請求項1及び2が対応する。)及び請求項5の記載を引用する請求項6~10を残すように訂正する訂正であるから、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情がある場合(特許法120条の5第5項)に該当すると認め、特許異議申立人が意見書を提出する機会は、設けなかった。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】
発光信号が示すタイミングに従って複数回の照射光の照射を行う光源部と、
対象物体を含む領域に対して、露光信号が示すタイミングに従って複数回の露光を行う固体撮像素子を含み、当該露光の露光量の総和に対応する信号を生成する固体撮像部と、を備える測距撮像装置であって、
前記固体撮像素子は、同一画素で検出する信号電荷を蓄積する複数の信号蓄積領域を含み、
前記複数の信号蓄積領域のそれぞれは、前記照射光とは異なる背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用されず、前記発光信号とタイミングが異なる前記露光信号により露光した前記信号電荷を蓄積することに使用され、
前記測距撮像装置は、さらに、
前記複数の信号蓄積領域に蓄積される複数の前記信号電荷に基づく信号量の大小関係を判定する信号量比較部と、
前記信号量の大小関係の判定結果に基づいて前記対象物体との距離を算出する距離演算部と、を備える
測距撮像装置。
【請求項2】
前記信号量比較部は、
複数の前記反射光による前記信号と背景光のみによる前記信号とを振り分けるとともに、前記信号量の大小関係の判定結果を前記距離演算部に伝達する信号振り分け部を有する
請求項1に記載の測距撮像装置。
【請求項3】
前記信号量比較部は、
複数の前記反射光による前記信号から、前記背景光のみによる前記信号を差し引くことで背景光信号を除去する背景光除去部を有する
請求項1または2に記載の測距撮像装置。
【請求項4】
さらに、
前記背景光除去部により前記背景光信号が除去された複数の前記信号から、異常値を判定し、その結果を前記距離演算部に伝達する異常値判定部を有する
請求項3に記載の測距撮像装置。
【請求項5】
前記複数の信号蓄積領域のうち、少なくとも1つの同一の前記信号蓄積領域には、前記露光信号のタイミングが前記発光信号に対して複数のタイミングで露光した複数の前記信号電荷を蓄積する
請求項1または2に記載の測距撮像装置。
【請求項6】
ノイズを除去した前記信号間で前記信号量の大小関係を判定する
請求項1~5のいずれか一項に記載の測距撮像装置。
【請求項7】
前記発光信号と複数の前記露光信号とを発生する駆動制御部を備え、
前記駆動制御部は、
露光期間が同じであって、露光タイミングが異なる第一の露光信号、第二の露光信号及び第三の露光信号を少なくとも発生し、
前記発光信号に対する前記第二の露光信号の遅延時間である第二遅延時間は、前記発光信号に対する前記第一の露光信号の遅延時間である第一遅延時間と前記第一の露光信号による露光期間である第一露光期間とが加算された時間である
請求項1~6のいずれか一項に記載の測距撮像装置。
【請求項8】
前記発光信号に対する前記第三の露光信号の遅延時間である第三遅延時間は、前記第二遅延時間と前記第二の露光信号による露光期間である第二露光期間とが加算された時間である
請求項7に記載の測距撮像装置。
【請求項9】
前記信号量比較部は、
前記発光信号のタイミングに対する前記反射光の到達タイミングの遅れ時間が、前記第一遅延時間と前記第一露光期間とが加算された値未満である場合、前記第一の露光信号による露光量の総和A0と前記第三の露光信号による露光量の総和A2とを比較し、前記信号量の大小関係の判定結果をA0>A2とする
請求項8に記載の測距撮像装置。
【請求項10】
前記信号量比較部は、
前記発光信号のタイミングに対する前記反射光の到達タイミングの遅れ時間が、前記第一遅延時間と前記第一露光期間とが加算された値以上である場合、前記第一の露光信号による露光量の総和A0と前記第三の露光信号による露光量の総和A2とを比較し、前記信号量の大小関係の判定結果をA2≧A0とする
請求項8に記載の測距撮像装置。
【請求項11】
発光信号と露光信号を発生する駆動制御部と、
前記発光信号が示すタイミングに従って複数回の照射光の照射を行う光源部と、
対象物体を含む領域に対して、前記露光信号が示すタイミングに従って複数回の露光を行う固体撮像素子を含み、当該露光の露光量の総和に対応する信号を生成する固体撮像部と、
複数の信号蓄積領域に蓄積される複数の信号電荷に基づく信号量の大小関係を判定する信号量比較部と、
前記信号量の大小関係の判定結果に基づいて対象物体との距離を算出する距離演算部と、
を備える測距撮像装置に用いられる固体撮像素子であって、
同一画素で検出する前記信号電荷を蓄積する前記複数の信号蓄積領域を含み、
前記複数の信号蓄積領域のそれぞれは、前記光源部から照射される前記照射光とは異なる背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用されず、露光期間が同じであって、前記駆動制御部からの前記発光信号とタイミングが異なる前記駆動制御部からの前記露光信号により露光した前記信号電荷を蓄積することに使用される
固体撮像素子。
【請求項12】
前記固体撮像素子は、CCD型の固体撮像素子である
請求項11に記載の固体撮像素子。」
2 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1について
特許請求の範囲の請求項1に、訂正前の請求項5の特徴である「前記複数の信号蓄積領域のうち、少なくとも1つの同一の前記信号蓄積領域には、前記露光信号のタイミングが前記発光信号に対して複数のタイミングで露光した複数の前記信号電荷を蓄積する」という構成を付加する訂正をする。
また、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、6~10も同様に訂正する。
(2)訂正事項2について
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3について
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(4)訂正事項4について
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(5)訂正事項5について
特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1~5のいずれか一項に記載の測距撮像装置。」とあるのを、「請求項1または2に記載の測距撮像装置。」に訂正する。
また、請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7~10も同様に訂正する。
(6)訂正事項6について
特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1~6のいずれか一項に記載の測距撮像装置。」とあるのを、「請求項1、2及び6のいずれか一項に記載の測距撮像装置。」に訂正する。
また、請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8~10も同様に訂正する。
(7)訂正事項7について
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(8)訂正事項8について
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(9)訂正事項9について
明細書の【発明の名称】に「測距撮像装置及び固体撮像素子」と記載されているのを、「測距撮像装置」に訂正する。
(10)訂正事項10について
明細書の段落【0010】に
「【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る測距撮像装置は、発光信号が示すタイミングに従って複数回の照射光の照射を行う光源部と、対象物体を含む領域に対して、露光信号が示すタイミングに従って複数回の露光を行う固体撮像素子を含み、当該露光の露光量の総和に対応する信号を生成する固体撮像部と、を備える測距撮像装置であって、前記固体撮像素子は、同一画素で検出する信号電荷を蓄積する複数の信号蓄積領域を含み、前記複数の信号蓄積領域のそれぞれは、前記照射光とは異なる背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用されず、前記発光信号とタイミングが異なる前記露光信号により露光した前記信号電荷を蓄積することに使用され、前記測距撮像装置は、さらに、前記複数の信号蓄積領域に蓄積される複数の前記信号電荷に基づく信号量の大小関係を判定する信号量比較部と、前記信号量の大小関係の判定結果に基づいて前記対象物体との距離を算出する距離演算部と、を備えることを特徴とする。」と記載されているのを、
「【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る測距撮像装置は、発光信号が示すタイミングに従って複数回の照射光の照射を行う光源部と、対象物体を含む領域に対して、露光信号が示すタイミングに従って複数回の露光を行う固体撮像素子を含み、当該露光の露光量の総和に対応する信号を生成する固体撮像部と、を備える測距撮像装置であって、前記固体撮像素子は、同一画素で検出する信号電荷を蓄積する複数の信号蓄積領域を含み、前記複数の信号蓄積領域のそれぞれは、前記照射光とは異なる背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用されず、前記発光信号とタイミングが異なる前記露光信号により露光した前記信号電荷を蓄積することに使用され、前記測距撮像装置は、さらに、前記複数の信号蓄積領域に蓄積される複数の前記信号電荷に基づく信号量の大小関係を判定する信号量比較部と、前記信号量の大小関係の判定結果に基づいて前記対象物体との距離を算出する距離演算部と、を備え、
前記複数の信号蓄積領域のうち、少なくとも1つの同一の前記信号蓄積領域には、前記露光信号のタイミングが前記発光信号に対して複数のタイミングで露光した複数の前記信号電荷を蓄積することを特徴とする。」に訂正する(下線は訂正箇所を示す。)。
(11)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~10は、請求項2~10が、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるため「一群の請求項」を構成し、同様に、本件訂正前の請求項11~12は、請求項12が、訂正請求の対象である請求項11の記載を引用する関係にあるため「一群の請求項」を構成する。また、これらの「一群の請求項」は、共通する請求項を有しておらず、別々の「一群の請求項」となる。
よって、本件訂正のうち前記訂正事項1~6、10に係る訂正は、一群の請求項である請求項〔1~10〕について請求されており、本件訂正のうち前記訂正事項7~9に係る訂正は、一群の請求項である請求項〔11~12〕について請求されている。
3 本件訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明、及び当該請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、6~10に係る発明に、訂正前の請求項5の特徴である「前記複数の信号蓄積領域のうち、少なくとも1つの同一の前記信号蓄積領域には、前記露光信号のタイミングが前記発光信号に対して複数のタイミングで露光した複数の前記信号電荷を蓄積する」という構成を付加して限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実質的には、本件訂正後の請求項1は、本件訂正前の請求項5のうち、本件訂正前の請求項1を引用するものに相当するから、明らかに新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
また、訂正事項1は、特許異議の申立てがされている請求項1、2、6~10について行うものであるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2~6について
訂正事項2~4は、それぞれ請求項3~5を削除するというものであり、訂正事項5、6は、それぞれ当該請求項3~5の削除に伴い、訂正前の請求項6、7が引用する請求項を削減する訂正を行うものであるから、訂正事項2~6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2~6に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
そして、訂正事項2、3、5、6は、特許異議の申立てがされている請求項3、4、6、7について行うものであるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。また、訂正事項4は、請求項5を削除するものであるから、独立特許要件の判断を要するものでない。
(3)訂正事項7、8について
訂正事項7、8は、それぞれ請求項11~12を削除するというものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項7、8に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
そして、訂正事項7、8は、特許異議の申立てがされている請求項11、12について行うものであるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項9について
訂正事項9は、上記訂正事項7、8に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正事項9は、発明の名称に記載された「及び固体撮像素子」を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項10について
訂正事項10は、前記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正事項10は、訂正前の請求項5の「前記複数の信号蓄積領域のうち、少なくとも1つの同一の前記信号蓄積領域には、前記露光信号のタイミングが前記発光信号に対して複数のタイミングで露光した複数の前記信号電荷を蓄積する」という記載を追加するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、前記結論のとおり、明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11、12〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
特許第6676866号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1~12には次のとおり記載されている(下線は、本件訂正により訂正した箇所を示す。)。
「【請求項1】
発光信号が示すタイミングに従って複数回の照射光の照射を行う光源部と、
対象物体を含む領域に対して、露光信号が示すタイミングに従って複数回の露光を行う固体撮像素子を含み、当該露光の露光量の総和に対応する信号を生成する固体撮像部と、を備える測距撮像装置であって、
前記固体撮像素子は、同一画素で検出する信号電荷を蓄積する複数の信号蓄積領域を含み、
前記複数の信号蓄積領域のそれぞれは、前記照射光とは異なる背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用されず、前記発光信号とタイミングが異なる前記露光信号により露光した前記信号電荷を蓄積することに使用され、
前記測距撮像装置は、さらに、
前記複数の信号蓄積領域に蓄積される複数の前記信号電荷に基づく信号量の大小関係を判定する信号量比較部と、
前記信号量の大小関係の判定結果に基づいて前記対象物体との距離を算出する距離演算部と、を備え、
前記複数の信号蓄積領域のうち、少なくとも1つの同一の前記信号蓄積領域には、前記露光信号のタイミングが前記発光信号に対して複数のタイミングで露光した複数の前記信号電荷を蓄積する
測距撮像装置。
【請求項2】
前記信号量比較部は、
複数の前記反射光による前記信号と背景光のみによる前記信号とを振り分けるとともに、前記信号量の大小関係の判定結果を前記距離演算部に伝達する信号振り分け部を有する
請求項1に記載の測距撮像装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
ノイズを除去した前記信号間で前記信号量の大小関係を判定する
請求項1または2に記載の測距撮像装置。
【請求項7】
前記発光信号と複数の前記露光信号とを発生する駆動制御部を備え、
前記駆動制御部は、
露光期間が同じであって、露光タイミングが異なる第一の露光信号、第二の露光信号及び第三の露光信号を少なくとも発生し、
前記発光信号に対する前記第二の露光信号の遅延時間である第二遅延時間は、前記発光信号に対する前記第一の露光信号の遅延時間である第一遅延時間と前記第一の露光信号による露光期間である第一露光期間とが加算された時間である
請求項1、2及び6のいずれか一項に記載の測距撮像装置。
【請求項8】
前記発光信号に対する前記第三の露光信号の遅延時間である第三遅延時間は、前記第二遅延時間と前記第二の露光信号による露光期間である第二露光期間とが加算された時間である
請求項7に記載の測距撮像装置。
【請求項9】
前記信号量比較部は、
前記発光信号のタイミングに対する前記反射光の到達タイミングの遅れ時間が、前記第一遅延時間と前記第一露光期間とが加算された値未満である場合、前記第一の露光信号による露光量の総和A0と前記第三の露光信号による露光量の総和A2とを比較し、前記信号量の大小関係の判定結果をA0>A2とする
請求項8に記載の測距撮像装置。
【請求項10】
前記信号量比較部は、
前記発光信号のタイミングに対する前記反射光の到達タイミングの遅れ時間が、前記第一遅延時間と前記第一露光期間とが加算された値以上である場合、前記第一の露光信号による露光量の総和A0と前記第三の露光信号による露光量の総和A2とを比較し、前記信号量の大小関係の判定結果をA2≧A0とする
請求項8に記載の測距撮像装置。
【請求項11】(削除)
【請求項12】(削除)」
第4 令和3年6月21日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由(36条6項1号)の内容
訂正後の請求項6~10に係る特許に対して、当審が令和3年6月21日付けで特許権者に通知した取消理由(36条6項1号)は、次のとおりである。
(1) 本件発明に対応する訂正明細書の記載について
訂正明細書及び図面には、実施の形態1(変形例も含む)と、実施の形態2(変形例も含む)が記載されているところ、実施の形態1が、段落【0014】~【0077】、図1~7に、実施の形態2が、段落【0078】~【0152】、【図8】~【図14】にそれぞれ示されているものと認められる。
そして、訂正明細書の段落【0078】~【0082】、【図8】~【図10】には、以下記載されている(下線は、当審が付与したものである。)。
「【0078】
(実施の形態2) 図8、図9及び図10は、それぞれ、実施の形態2に係る測距撮像装置1の発光信号及び露光信号のタイミングチャートである。具体的には、駆動制御部13で発生する発光信号と露光信号とのタイミング関係の一例を示し、反射光を受光する露光信号のタイミングが各々異なる複数の露光期間の関係を理解し易くするために、発光信号及び露光信号の各タイミングを同一紙面上に示したものである。本実施の形態では、固体撮像部12を構成する同一画素で検出する信号を蓄積する、異なる複数の信号蓄積手段の数が3である例を示す。
【0079】
駆動制御部13は、発光信号に対して固体撮像部12が対象物体OBからの反射光を受光するタイミングが異なる第一の露光信号、第二の露光信号及び第三の露光信号を出力する。
【0080】
本実施の形態の場合、第一の露光信号の露光信号期間の長さは、発光信号期間の長さと同じToに設定されている。第一の露光信号は、光源部11が発光信号を受信して発光するタイミングに対して遅延時間が0に設定された露光期間を有する第一の露光信号Aと、遅延時間が第三の露光信号の遅延時間2×Toと第三の露光期間Toとが加算された3×Toに設定されている露光期間を有する第一の露光信号Bとの2つの露光信号で構成されている。
【0081】
第二及び第三の露光信号期間の長さは、発光信号期間の長さと同じToに設定されている。第二の露光信号の遅延時間は、第一の露光信号Aの遅延時間0と第一の露光信号Aの露光期間(To)とが加算されたToに設定されている。第三の露光信号の遅延時間は、第二の露光信号の遅延時間Toと第二の露光信号期間Toとが加算された2×Toに設定されている。
【0082】
従って、背景光の露光量は、第二及び第三の露光信号期間で等しく、第一の露光信号期間ではその2倍になる。」
「【図8】
[図:0001385124000001.jpg]
」
「【図9】
[図:0001385124000002.jpg]
」
「【図10】
[図:0001385124000003.jpg]
」
【0080】には「第一の露光信号の露光信号期間の長さは、発光信号期間の長さと同じToに設定されている。」、「第一の露光信号は、・・・第一の露光信号Aと、・・・第一の露光信号Bとの2つの露光信号で構成されている。」と記載されており、【図8】~【図10】の記載も併せて考慮すると、実施の形態2では、第一の露光信号が、それぞれタイミングが異なる第一の露光信号Aと第一の露光信号Bから構成されていることが読み取れる。
また、【0081】には「第二及び第三の露光信号期間の長さは、発光信号期間の長さと同じToに設定されている。」、【0082】には「従って、背景光の露光量は、第二及び第三の露光信号期間で等しく、第一の露光信号期間ではその2倍になる。」と記載されており、【図8】~【図10】の記載も併せて考慮すると、実施の形態2において、第一の露光信号の露光期間は、第一の露光信号を構成する第一の露光信号A及び第一の露光信号Bのそれぞれの露光期間を足した2Toであり、第二の露光信号の露光期間と第三の露光信号の露光期間は、いずれもToであることが読み取れる。
そうしてみると、本件発明1、2、6~10は、「前記複数の信号蓄積領域のうち、少なくとも1つの同一の前記信号蓄積領域には、前記露光信号のタイミングが前記発光信号に対して複数のタイミングで露光した複数の前記信号電荷を蓄積する」という構成を備えているから、第一の露光信号が、それぞれタイミングが異なる第一の露光信号Aと第一の露光信号Bから構成されているものである実施の形態2に対応するものと理解される。
(2) サポート要件(36条6項1号)について
上記(1)を踏まえて、本件発明について検討すると、本件発明7~10は、以下のア~ウの点において、発明の詳細な説明に記載されたものといえない。
ア 訂正後の請求項7には、「露光期間が同じであって、露光タイミングが異なる第一の露光信号、第二の露光信号及び第三の露光信号を少なくとも発生し」という記載があるところ、訂正明細書及び図面に示された実施の形態2では、第一の露光信号を構成する第一の露光信号Aと第一の露光信号Bの露光期間はいずれもToであるため、第一の露光信号全体の露光期間は2Toとなり、第二の露光信号及び第三の露光信号の露光期間Toと同じではないから、当該実施の形態2の記載と上記訂正後の請求項7の記載は整合していない。
そして、訂正明細書及び図面には、訂正後の請求項7に対応するその他の実質的な記述は、見当たらない。
よって、訂正後の請求項7、及び当該請求項7を引用する請求項8~10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
イ 訂正後の請求項9には、「前記信号量比較部は、前記発光信号のタイミングに対する前記反射光の到達タイミングの遅れ時間が、前記第一遅延時間と前記第一露光期間とが加算された値未満である場合、前記第一の露光信号による露光量の総和A0と前記第三の露光信号による露光量の総和A2とを比較し、前記信号量の大小関係の判定結果をA0>A2とする」と記載されているが、訂正明細書の【0083】、【0084】には、「発光信号タイミング(照射光)に対する対象物体OBからの反射光の光路による遅延Tdが、第一の露光信号Aの遅延時間0と第一の露光信号Aの露光期間Toとが加算された値To未満である場合」、「信号量比較部14は、第一の露光信号による露光量の総和A0と第二の露光信号による露光量の総和A1と第三の露光信号による露光量の総和A2とを比較し」、その場合の大小関係の判定結果を、A0>2×A2、A1>A2とすることが記載されており、両者が対応していない。
そして、訂正明細書及び図面には、訂正後の請求項9に対応するその他の実質的な記述は、見当たらない。
よって、訂正後の請求項9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
ウ 訂正後の請求項10には、「前記信号量比較部は、前記発光信号のタイミングに対する前記反射光の到達タイミングの遅れ時間が、前記第一遅延時間と前記第一露光期間とが加算された値以上である場合、前記第一の露光信号による露光量の総和A0と前記第三の露光信号による露光量の総和A2とを比較し、前記信号量の大小関係の判定結果をA2≧A0とする」と記載されているが、訂正明細書の【0087】~【0089】には、「発光信号タイミング(照射光)に対する対象物体OBからの反射光の光路による遅延Tdが、第一の露光信号Aの遅延時間0と第一の露光信号Aの露光期間Toとが加算された値To以上で、第二の露光信号の遅延時間Toと第二の露光信号期間Toとが加算された値2×To未満である場合」、「信号量比較部14は、第一の露光信号による露光量の総和A0と第二の露光信号による露光量の総和A1と第三の露光信号による露光量の総和A2とを比較し」、その場合の大小関係の判定結果を、2×A2≧A0、2×A1>A0とすることが記載されており、【0092】~【0094】には、「発光信号タイミング(照射光)に対する対象物体OBからの反射光の光路による遅延Tdが、第二の露光信号の遅延時間Toと第二の露光信号期間Toとが加算された値2×To以上である場合」、「信号量比較部14は、第一の露光信号による露光量の総和A0と第二の露光信号による露光量の総和A1と第三の露光信号による露光量の総和A2とを比較し」、その場合の大小関係の判定結果を、A0≧2×A1、A2>A1とすることが記載されており、両者が対応していない。
そして、訂正明細書及び図面には、訂正後の請求項10に対応するその他の実質的な記述は、見当たらない。
よって、訂正後の請求項10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
2 当審の判断
上記取消理由(36条6項1号)について、令和3年6月21日付けで通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。
そして、上記取消理由(36条6項1号)は妥当なものであると認められるから、本件発明7~10は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
第5 当審が令和3年1月21日付けで特許権者に通知した取消理由(特許異議申立人が申立てた理由)について
1 取消理由(29条の2)の概要
訂正前の請求項1~4、6~12に係る特許に対して、当審が令和3年1月21日付けで特許権者に通知した取消理由(特許異議申立人が申立てた理由)の概要は、次のとおりである。
(拡大先願)請求項1~4、6~12に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、特許法41条1項の規定による優先権の基礎とされ、同法184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法41条3項の規定により,本件特許の優先日後に出願公開されたものとみなされる下記の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許の優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、下記の請求項に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものである。
記
(先願)特願2014-22516号(国際公開第2015/118884号)
2 当審の判断
(1) 先願発明の認定
ア 先願明細書に記載された事項
先願の明細書又は図面(以下、両者を含めて「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、先願明細書の【0001】、【0011】、【0012】、【0045】~【0050】、【0055】、【0058】、【0086】、【0088】、【0089】、【0100】~【0107】の記載事項は、国際公開第2015/118884号(以下「甲第1号証」という。)の[0001]、[0011]、[0012]、[0044]~[0049]、[0054]、[0057]、[0084]、[0086]、[0087]、[0098]~[0105]に記載されている。
「【0001】
本発明は、電子又は正孔(ホール)からなる信号電荷を、3つ以上の電荷蓄積領域に順次輸送する経路選択機能を持った電荷変調素子、及びこの電荷変調素子又はこの電荷変調素子と等価な構造を周期的に配列して構成した単位カラムを、1次元又は2次元に周期的に配列した固体撮像装置に関する。」
「【0011】
(第1の実施形態)
図1の平面図及び図2(a)の断面図等に示すように、本発明の第1の実施形態に係る3出力電荷変調素子は、第1導電型(p型)の半導体からなる活性領域形成層32、活性領域形成層32の上部の一部に設けられた、第2導電型(n型)の表面埋込領域35、及び表面埋込領域35の表面に接して設けられた、p型のピニング層34を含む画素形成領域(32,34,35)と、画素形成領域(32,34,35)上に設けられた絶縁膜11と、画素形成領域(32,34,35)の中央部を受光領域とし、受光領域を囲むように受光領域の中心位置に関して対称となる4つ位置のそれぞれに互いに離間して設けられた、活性領域形成層32よりも高不純物密度でn型の第1の電荷蓄積領域61、第2の電荷蓄積領域62、第3の電荷蓄積領域63及び第4の電荷蓄積領域64と、受光領域を囲む位置において、絶縁膜11上に受光領域の中心位置から第1の電荷蓄積領域61、第2の電荷蓄積領域62、第3の電荷蓄積領域63及び第4の電荷蓄積領域64のそれぞれに至る電荷移動経路のそれぞれの両側に対をなして配置された第1の電界制御電極対(41a,41b)、第2の電界制御電極対(42a,42b)、第3の電界制御電極対(43a,43b)及び第4の電界制御電極対(44a,44b)とを備える。
【0012】
第1の実施形態に係る3出力電荷変調素子は、第1の電界制御電極対(41a,41b)、第2の電界制御電極対(42a,42b)、第3の電界制御電極対(43a,43b)及び第4の電界制御電極対(44a,44b)に対し、図5に示すような、それぞれ互いに位相の異なる電界制御パルスを周期的に印加し、表面埋込領域35の空乏化電位を順次変化させることにより、電荷移動経路のいずれかに、図3(b)及び図4(b)に示したような、電荷が輸送される電位勾配を順次形成して、表面埋込領域35中で発生した多数キャリアの移動先を第1の電荷蓄積領域61、第2の電荷蓄積領域62、第3の電荷蓄積領域63及び第4の電荷蓄積領域64のいずれかに順次設定するように制御する。則ち、第1の実施形態に係る3出力電荷変調素子は、電荷移動経路を横断する方向に静電誘導効果で電界制御を行う4つのゲートである第1の電界制御電極対(41a,41b),第2の電界制御電極対(42a,42b),第3の電界制御電極対(43a,43b),第4の電界制御電極対(44a,44b)によって、受光領域で発生した光電子を、H型を構成する電荷移動経路に沿って、H字の左右の方向、上下の方向に電界制御により高速に移動させて、電荷変調を行う。」
「【0045】
例えば、光飛行時間(TOF)距離センサへの応用においては、TOF距離センサに設けられた光源から繰り返しパルス信号として光を対象物に照射し、対象物によって反射された光の往復に要する遅延時間Tdを測定すればよい。則ち、TOF距離センサへの応用では、上記のように、第1の電界制御電極対(41a,41b)、第2の電界制御電極対(42a,42b)、第3の電界制御電極対(43a,43b)及び第4の電界制御電極対(44a,44b)に、図5に示すようなそれぞれ互いに位相の異なる第1電界制御パルスG1,第2電界制御パルスG2,第3電界制御パルスG3,第4電界制御パルスGDを印加する動作を、図5に示すように、出力光の光パルスの繰り返し周期と同期して、周期的に繰り返して遅延時間Tdを測定する。則ち、第1の電界制御電極対(41a,41b)、第2の電界制御電極対(42a,42b)及び第3の電界制御電極対(43a,43b)に印加する第1電界制御パルスG1,第2電界制御パルスG2,第3電界制御パルスG3のそれぞれのパルス幅を2倍した時間より短いパルス幅T0の光パルスを用いる。このパルス幅T0の光パルスを、第3電界制御パルスG3の第1電位レベルLから第2電位レベルHの電圧への遷移時、及び第2電界制御パルスG2の第2電位レベルHから第1電位レベルLの電圧への遷移時を含むように、図5に示すようなタイミングで受信すれば、光パルスが対象物で反射して戻ってくる往復時間による遅延時間Tdを求めることができる。光パルスの光源から対象物までの距離Lは、光パルスの往復時間により決まる遅延時間Tdが求められれば、遅延時間Tdの半分に光速をかけることで求めることができる。
【0046】
図5に示すように、第1の実施形態に係る3出力電荷変調素子は、比較的デューティの狭いパルス光を用いて動作させる。図5に示すように、到来光の光パルスを受けて、電荷変調素子で変調された電荷を蓄積する期間では、第1電界制御パルスG1,第2電界制御パルスG2,第3電界制御パルスG3,第4電界制御パルスGDからなる4つのゲート信号を図に示すように周期的に与えて動作させる。
【0047】
(a)第1電界制御パルスG1が第2電位レベルH、第2電界制御パルスG2が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルL、第4電界制御パルスGDが第1電位レベルLの期間では、受光領域で生成された信号電荷は、第1の電荷蓄積領域61に転送される。
(b)第2電界制御パルスG2が第2電位レベルH、第1電界制御パルスG1が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルL、第4電界制御パルスGDが第1電位レベルLの期間では、受光領域で生成された信号電荷は、第2の電荷蓄積領域62に転送される。
【0048】
(c)第3電界制御パルスG3が第2電位レベルH、第1電界制御パルスG1が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルL、第4電界制御パルスGDが第1電位レベルLの期間では、受光領域で生成された信号電荷は、第3の電荷蓄積領域63に転送される。
(d)第4電界制御パルスGDが第2電位レベルH、第1電界制御パルスG1が第1電位レベルL、第2電界制御パルスG2が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルLの期間では、受光領域で生成された信号電荷は、第4の電荷蓄積領域(電荷排出領域)64に排出される。
このとき、到来光の光パルスが図5に示したタイミングで到来すると、光電荷は、第2の電荷蓄積領域62と、第3の電荷蓄積領域63に転送される。第2の電荷蓄積領域62と第3の電荷蓄積領域63にたまる電荷をQ2,Q3とすると、
Q2=Iph(T0-Td)+IaT0 …………(3)
Q3=IphTd+IaT0 …………(4)
で表される。
【0049】
ここで、Iphは、信号光パルスによる光電流、Iaは、背景光による光電流、T0は、光のパルス幅、Tdは、光の飛行時間による光パルスの遅延時間である。第1電界制御パルスG1が第2電位レベルH、第2電界制御パルスG2が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルL、第4電界制御パルスGDが第1電位レベルLの期間では、光パルスが到来しないので、背景光のみによる信号が蓄積される。このとき、第1の電荷蓄積領域61にたまる電荷をQ1とすると、
Q1=IaT0 …………(5)
このQ1を使って、Q2及びQ3に含まれる背景光の影響をキャンセルしながら、光の飛行時間を推定することができる。則ち、式(3),(4),(5)より光の飛行時間は次式で表される:
Td=T0(Q3-Q1)/(Q2+Q3-2Q1) …………(6)
なお、第4電界制御パルスGDが第2電位レベルH、第1電界制御パルスG1が第1電位レベルL、第2電界制御パルスG2が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルLの期間では、背景光により光電荷が発生するが、その光電荷は、第4の電荷蓄積領域(電荷排出領域)64に排出されるので、このような短いデューティに光パルスを用いて、光のエネルギーを第2電界制御パルスG2が第2電位レベルH、第3電界制御パルスG3が第2電位レベルHの期間に集中させることで、背景光に対する影響を軽減する。更に、キャンセル処理で、背景光の成分をキャンセルする。これにより、背景光に対する耐性の高い光飛行時間計測を行う。
【0050】
図6は、第1の実施形態に係る3出力電荷変調素子を用いて、出力光のパルス幅T0の2倍の遅延時間に対応する距離を図る場合の動作タイミングを示す。この場合、出力光のパルス幅T0とゲート信号第1電界制御パルスG1、第2電界制御パルスG2、第3電界制御パルスG3の幅は同じとする。出力光パルスに対して、受信した到来光パルスの遅延時間(光飛行時間)が、図6の第1の到来光に対応する遅延時間Tdの場合には、Q1,Q2,Q3は、以下のようになる:
Q1=Iph(T0-Td)+IaT0 …………(7)
Q2=IphTd+IaT0 …………(8)
Q3=IaT0 …………(9)
これらより、第1の到来光に対応する遅延時間Tdは次式で求めることができる:
Td=T0(Q2-Q3)/(Q1+Q2-2Q3) ………(10)
出力光パルスに対して、受信した到来光パルスの遅延時間(光飛行時間)が、図6の第2の到来光に対応する遅延時間Td2の場合には、第1の電荷蓄積領域61、第2の電荷蓄積領域62、第3の電荷蓄積領域63の電荷、Q1,Q2,Q3は以下のようになる:
Q1=IaT0 …………(11)
Q2=Iph(2T0-Td2)+IaT0 …………(12)
Q3=Iph(Td2-T0)+IaT0 …………(13)
これらより、第2の到来光に対応する遅延時間Td2は次式で求めることができる:
Td2=T0+T0(Q3-Q1)/(Q2+Q3-2Q1) …(14)
光パルスの飛行時間が出力光のパルス幅T0より大きいかは、Q1とQ3を比較することで分かる。則ち、光パルスの飛行時間は、Q1>Q3ならば、式(10)を、Q1≦Q3ならば、式(14)を使って計算する。」
「【0055】
-固体撮像装置-
第1の実施形態に係る3出力電荷変調素子は、固体撮像素子(光飛行時間距離画像センサ)の能動画素Xijに適用可能であり、固体撮像素子の能動画素Xijに適用することにより、各能動画素Xijの内部において、高速の信号電荷の転送が可能になる。
図9は、第1の実施形態に係る3出力電荷変調素子を、図10に示したように、複数個マトリクス状に配置した集積化構造を能動画素Xijとし、この能動画素Xijを更にマトリクス状複数個配列した固体撮像素子の構成例である。能動画素Xijの1画素内には、図1に例示的に構造を示した3出力電荷変調素子を必要な個数マトリクス状に並べて並列に接続し、必要な感度を確保している。図10では、図1の構造をした3出力電荷変調素子を3×4=12個含んでいる。」
「【0058】
本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置(光飛行時間距離画像センサ)は、図9に示すように、画素アレイ部と周辺回路部(21,22,23,24)とを同一半導体チップ上に配置し、集積化している。画素アレイ部には、2次元マトリクス状に図10に示した能動画素Xij(i=1~n;j=1~m:n,mはそれぞれ整数である。)が多数配列されており、例えば、方形状の撮像領域を構成している。画素アレイ部の下辺部には、図9において水平方向に示した画素行X11,X12,X13,……X1m;X21,X22,X23,……X2m;X31,X32,X33,……X3m;……Xn1,Xn2,Xn3,……Xnm方向に沿ってカラム並列折り返し積分/巡回型A/D変換器22と、このカラム並列折り返し積分/巡回型A/D変換器22に接続される水平シフトレジスタ21が設けられている。画素アレイ部の左辺部には、図9において垂直方向に示した画素列X11,X21,X31,……,Xn1;X12,X22,X32,……,Xn2;X13,X23,X33,……,Xn3;……;X1m,X2m,X3m,……,Xnm方向に沿って垂直シフトレジスタ23が設けられている。垂直シフトレジスタ23及び水平シフトレジスタ21には、図示を省略したタイミング発生回路が接続されている。第1の実施形態に係る固体撮像素子では、画素アレイ部の下辺部に設けられたカラム並列折り返し積分/巡回型A/D変換器22に信号を読み出してA/D変換を行い、更にノイズキャンセルする。これにより、光電荷による信号レベルが抽出され、固定パターンノイズや、時間的ランダムノイズの一部(リセットノイズ)がキャンセルされた信号を求める。」
「【0086】
(第3の実施形態)
図22、図23(a)及び図25(a)に示すように、本発明の第3の実施形態に係る4出力電荷変調素子は、p型の半導体からなる活性領域形成層32、活性領域形成層32の上部の一部に設けられたn型の表面埋込領域35及び表面埋込領域35の表面に接して設けられた、p型のピニング層34を含む画素形成領域(32,34,35)と、画素形成領域(32,34,35)上に設けられた絶縁膜11と、画素形成領域(32,34,35)の中央部を受光領域とし、受光領域を囲むように受光領域の中心位置に関して対称となる4つ位置のそれぞれに互いに離間して設けられた、活性領域形成層32よりも高不純物密度でn型の第1の電荷蓄積領域81、第2の電荷蓄積領域82、第3の電荷蓄積領域83及び第4の電荷蓄積領域84と、受光領域を囲む位置において、絶縁膜11上に受光領域の中心位置から第1の電荷蓄積領域81、第2の電荷蓄積領域82、第3の電荷蓄積領域83及び第4の電荷蓄積領域84のそれぞれに至る電荷移動経路のそれぞれの両側に対をなして配置された第1の電界制御電極対(91a,91b)、第2の電界制御電極対(92a,92b)、第3の電界制御電極対(93a,93b)及び第4の電界制御電極対(94a,94b)とを備える。図22の平面図から分かるように、4出力端子として機能する第1の電荷蓄積領域81、第2の電荷蓄積領域82、第3の電荷蓄積領域83及び第4の電荷蓄積領域84の配置トポロジーは、受光領域の中心位置に関して4回回転対称である。」
「【0088】
図22に示すように、本発明の第3の実施形態に係る4出力電荷変調素子は、更に、受光領域を囲む周辺部に、活性領域形成層32よりも高不純物密度でn型の第1の電荷排出補助領域85a,第2の電荷排出補助領域85b,第3の電荷排出補助領域85c,第4の電荷排出補助領域85dが、互いに離間して設けられている。第1の電界制御電極91bと第2の電界制御電極92aの間には、T字型に凸形状をなす第1の電荷排出補助領域85aの凸部が挿入され、凸部の先端は図23(a)に示すように、p型の活性領域形成層32を介してn型の表面埋込領域35に対向している。又、第2の電界制御電極92bと第4の電界制御電極95aの間には、T字型に凸形状をなす第2の電荷排出補助領域85bの凸部が挿入され、凸部の先端は活性領域形成層32を介して表面埋込領域35に対向している。更に、第4の電界制御電極95bと第3の電界制御電極93aの間には、T字型に凸形状をなす第3の電荷排出補助領域85cの凸部が挿入され、凸部の先端は図23(a)に示すように、p型の活性領域形成層32を介してn型の表面埋込領域35に対向している。第3の電界制御電極93bと第1の電界制御電極91aの間には、T字型に凸形状をなす第4の電荷排出補助領域85dの凸部が挿入され、凸部の先端は、活性領域形成層32を介して表面埋込領域35に対向している。
【0089】
更に、第1の電界制御電極91bと第2の電界制御電極92aの間には、背景光により受光領域に発生した暗電流による電荷をp型の活性領域形成層32をチャネル領域として、MOS構造によってチャネル領域の電位を制御して、表面埋込領域35から第1の電荷排出補助領域85aに転送する第1電荷転送ゲート電極96aが設けられている。更に、第2の電界制御電極92bと第4の電界制御電極95aの間には、受光領域に発生した暗電流による電荷を表面埋込領域35から第2の電荷排出補助領域85bに転送する第2電荷転送ゲート電極96bが設けられ、第4の電界制御電極95bと第3の電界制御電極93aの間には、暗電流による電荷を第3の電荷排出補助領域85cに転送する第3電荷転送ゲート電極96cが設けられ、第3の電界制御電極93bと第1の電界制御電極91aの間には、暗電流による電荷を第4の電荷排出補助領域85dに転送する第4電荷転送ゲート電極96dが設けられている。」
「【0100】
図31に、第3の実施形態に係る4出力電荷変調素子の動作タイミングを示す。光パルスを受けて、変調された電荷を蓄積する積分期間では、第1電界制御パルスG1,第2電界制御パルスG2,第3電界制御パルスG3,第4電界制御パルスG4,電荷排出制御パルスからなる5つのゲート信号を図31に示すように周期的に与えて動作させる。第1電界制御パルスG1が第2電位レベルH、第2電界制御パルスG2が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルL、第4電界制御パルスG4が第1電位レベルL、電荷排出制御パルスGDが第1電位レベルLDの期間では、受光領域で生成された信号電荷は、図22に示した第1の電荷蓄積領域81に転送される。第2電界制御パルスG2が第2電位レベルH、第1電界制御パルスG1が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルL、第4電界制御パルスG4が第1電位レベルL、電荷排出制御パルスGDが第1電位レベルLDの期間では、受光領域で生成された信号電荷は、第2の電荷蓄積領域82に転送される。第3電界制御パルスG3が第2電位レベルH、第1電界制御パルスG1が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルL、第4電界制御パルスG4が第1電位レベルL、電荷排出制御パルスGDが第1電位レベルLDの期間では、受光領域で生成された信号電荷は、第3の電荷蓄積領域83に転送される。第4電界制御パルスG4が第2電位レベルH、第1電界制御パルスG1が第1電位レベルL、第2電界制御パルスG2が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルL、電荷排出制御パルスGDが第1電位レベルLDの期間では、受光領域で生成された信号電荷は、第4の電荷蓄積領域84端子に転送される。
【0101】
一方、電荷排出制御パルスGDが第2電位レベルHD、第1電界制御パルスG1が第1電位レベルL、第2電界制御パルスG2が第1電位レベルL、第3電界制御パルスG3が第1電位レベルL、第4電界制御パルスG4が第1電位レベルLの期間では、受光領域で生成された信号電荷は、第1の電荷排出補助領域85a,第2の電荷排出補助領域85b,第3の電荷排出補助領域85c及び第4の電荷排出補助領域85dに排出される。
このとき、光パルスが図31の第1の到来光のタイミングで到来すると、第1の電荷蓄積領域81、第2の電荷蓄積領域82、第3の電荷蓄積領域83にそれぞれ蓄積される電荷Q1,Q2,Q3は、式(5),(3),(4)のようになる。又、第4の電荷蓄積領域84に蓄積される電荷Q4は以下となる:
Q4=IaT0 ………(15)
光の飛行時間は式(6)で求められる。
【0102】
もし、光パルスが図31の第2の到来光のタイミングで到来すると、このときの光飛行時間(遅延時間)をTd2とすると、このときに第1の電荷蓄積領域81、第2の電荷蓄積領域82、第3の電荷蓄積領域83、第4の電荷蓄積領域84にそれぞれ蓄積される電荷Q1,Q2,Q3,Q4は、以下のようになる:
Q1=IaT0 ………(16)
Q2=IaT0 ………(17)
Q3=Iph(2T0-Td2)+IaT0 ………(18)
Q4=Iph(2Td2-T0)+IaT0 ………(19)
で表される。これらを用いて、Td2は、次式のように求めることができる:
Td2=T0+T0(Q4-Q1)/(Q4+Q3-2Q1)……(20)
【0103】
このように、第3の実施形態に係る4出力電荷変調素子を用いると、T0のパルス幅を用いてT0の2倍の光飛行時間のレンジで距離測定を行うことができる。
光パルスの飛行時間がT0より大きいかは、Q2とQ4を比較することで分かる。則ち、光パルスの飛行時間は、Q2>Q4ならば、式(6)を、Q2≦Q4ならば、式(20)を使って計算する。
【0104】
図32は、第3の実施形態に係る4出力電荷変調素子を用いて、光パルス幅T0の3倍の遅延時間に対応する距離を図る場合の動作タイミングを示す。この場合、光パルス幅T0と第1電界制御パルスG1、第2電界制御パルスG2、第3電界制御パルスG3,第4電界制御パルスG4のパルス幅は同じとする。出力光パルスに対して、受信した到来光パルスの遅延時間(光飛行時間)が、図32のTd1の場合(第1の到来光)には、Q1,Q2,Q3,Q4は、以下のようになる:
Q1=Iph(T0-Td2)+IaT0 …………(21)
Q2=IphTd1+IaT0 …………(22)
Q3=IaT0 …………(23)
Q4=IaT0 …………(24)
これらより、Td1は次式で求めることができる:
Td1=T0(Q2-Q4)/(Q1+Q2-2Q4) ………(25)
【0105】
出力光パルスに対して、受信した到来光パルスの遅延時間(光飛行時間)が、図32のTd2の場(第2の到来光)には、第1の電荷蓄積領域81、第2の電荷蓄積領域82、第3の電荷蓄積領域83,第4の電荷蓄積領域84に蓄積される電荷、Q1,Q2,Q3,Q4は以下のようになる:
Q1=IaT0 …………(26)
Q2=Iph(2T0-Td2)+IaT0 …………(27)
Q3=Iph(Td2-T0)+IaT0 …………(28)
Q4=IaT0 …………(29)
これらより、Td2は次式で求めることができる:
Td2=T0+T0(Q3-Q1)/(Q2+Q3-2Q1) …(30)
【0106】
出力光パルスに対して、受信した到来光パルスの遅延時間(光飛行時間)が、図32のTd3の場合(第3の到来光)には、第1の電荷蓄積領域81、第2の電荷蓄積領域82、第3の電荷蓄積領域83、第4の電荷蓄積領域84に蓄積される電荷Q1,Q2,Q3,Q4は以下のようになる:
Q1=IaT0 …………(31)
Q2=IaT0 …………(32)
Q3=Iph(3T0-Td3)+IaT0 …………(33)
Q4=Iph(Td3-2T0)+IaT0 …………(34)
これらより、Td3は次式で求めることができる:
Td3=2T0+T0(Q4-Q1)/(Q3+Q4-2Q1)…(35)
光パルスの飛行時間がどの時間帯にあるかは、電荷の比較により分かり、時間帯によって、式(25),(30),(35)のいずれを使うかは、表1のように決めることによって、T0の3倍の遅延時間に対応する距離を測定することができる。
【0107】
【表1】
[図:0001385124000004.jpg]
」
「【図1】
[図:0001385124000005.jpg]
」
「【図5】
[図:0001385124000006.jpg]
」
「【図6】
[図:0001385124000007.jpg]
」
「【図9】
[図:0001385124000008.jpg]
」
「【図22】
[図:0001385124000009.jpg]
」
「【図31】
[図:0001385124000010.jpg]
」
「【図32】
[図:0001385124000011.jpg]
」
【0050】、図6には、第1の到来光に対応する遅延時間Tdの場合は、第1の電荷蓄積領域61の電荷Q1、第2の電荷蓄積領域62の電荷Q2、第3の電荷蓄積領域63の電荷Q3は、Q1=Iph(T0-Td)+IaT0、Q2=IphTd+IaT0、Q3=IaT0となることが示されており、第3の電荷蓄積領域63の電荷Q3は、背景光のみによる信号が蓄積され、第1の到来光による信号は蓄積されていないことからみて、出力光パルスに対する第1の到来光パルスの遅延時間Tdは、0<Td≦T0の範囲内にあることが読み取れる。同様に、第2の到来光に対応する遅延時間Td2は、第1の電荷蓄積領域61の電荷Q1は、背景光のみによる信号が蓄積され、第2の到来光による信号は蓄積されていないことからみて、出力光パルスに対する第2の到来光パルスの遅延時間Td2は、T0<Td2≦2T0の範囲内にあることが読み取れる。
イ 先願明細書に記載された発明の認定
前記アを総合すると、先願明細書には、以下の先願発明1及び先願発明2が記載されているものと認められる。なお、先願発明2の下記式(21)について、先願明細書の【0104】(甲第1号証の[0102])には、「Q1=Iph(T0-Td2)+IaT0」と表記されているが、「Q1=Iph(T0-Td1)+IaT0」の誤記であることが明らかであるため、当該誤記を修正したものを認定した。
<先願発明1>
「繰り返しパルス信号として光を対象物に照射する光源と(【0045】)、
第1電界制御パルスG1,第2電界制御パルスG2,第3電界制御パルスG3,第4電界制御パルスGDに応じて、到来光の光パルスを電荷に変調して蓄積する電荷変調素子を配列した固体撮像装置と(【0001】、【0046】)、
を備える光飛行時間(TOF)距離センサであって(【0001】、【0045】)、
前記電荷変調素子は、画素形成領域と、前記画素形成領域の中央部の受光領域で生成された信号電荷が転送される第1の電荷蓄積領域61、第2の電荷蓄積領域62、第3の電荷蓄積領域63及び第4の電荷蓄積領域64を含み(【0011】、【0047】、【0048】)、
前記第1の電荷蓄積領域61、第2の電荷蓄積領域62、第3の電荷蓄積領域63及び第4の電荷蓄積領域64は、それぞれ互いに位相の異なる前記第1電界制御パルスG1、前記第2電界制御パルスG2、前記第3電界制御パルスG3及び第4電界制御パルスGDにより、前記受光領域で生成された信号電荷が転送され(【0045】、【0047】、【0048】、【図6】)、
出力光パルスに対する到来光パルスの遅延時間がTd(0<Td≦T0)の場合には、Q1は、第1の電荷蓄積領域61の電荷、Q2は、第2の電荷蓄積領域62の電荷、Q3は、第3の電荷蓄積領域63の電荷、Iphは、信号光パルスによる光電流、Iaは、背景光による光電流、T0は、光のパルス幅とした場合、
Q1=Iph(T0-Td)+IaT0 …………(7)
Q2=IphTd+IaT0 …………(8)
Q3=IaT0 …………(9)
となり、
前記遅延時間Tdは、
Td=T0(Q2-Q3)/(Q1+Q2-2Q3) ………(10)
により求められ(【0049】、【0050】、【図6】)、
前記遅延時間がTd2(T0<Td2≦2T0)の場合には、前記Q1、Q2、Q3は、
Q1=IaT0 ………(11)
Q2=Iph(2T0-Td2)+IaT0 ………(12)
Q3=Iph(Td2-T0)+IaT0 …………(13)
となり、
前記遅延時間Td2は、
Td2=T0+T0(Q3-Q1)/(Q2+Q3-2Q1) …(14)
により求められ(【0049】、【0050】、【図6】)、
前記遅延時間は、Q1>Q3の場合は上記式(10)を、Q1≦Q3の場合は上記式(14)を使って計算し、光パルスの光源から対象物までの距離Lは、前記遅延時間の半分に光速をかけることで求める(【0045】、【0050】)、
光飛行時間(TOF)距離センサ。」
<先願発明2>
「繰り返しパルス信号として光を対象物に照射する光源と(【0045】)、
第1電界制御パルスG1、第2電界制御パルスG2、第3電界制御パルスG3、及び第4電界制御パルスG4に応じて、到来光の光パルスを電荷に変調して蓄積する電荷変調素子を配列した固体撮像装置と(【0001】、【0100】、【0101】、【図31】)、
を備える光飛行時間(TOF)距離センサであって(【0001】、【0045】)、
前記電荷変調素子は、画素形成領域と、前記画素形成領域の中央部の受光領域で生成された信号電荷が転送される第1の電荷蓄積領域81、第2の電荷蓄積領域82、第3の電荷蓄積領域83及び第4の電荷蓄積領域84と、前記受光領域で生成された信号電荷が排出される第1の電荷排出補助領域85a、第2の電荷排出補助領域85b、第3の電荷排出補助領域85c及び第4の電荷排出補助領域85dを含み(【0086】、【0088】、【0100】、【0101】)、
前記第1の電荷蓄積領域81、第2の電荷蓄積領域82、第3の電荷蓄積領域83及び第4の電荷蓄積領域84は、それぞれ互いに位相の異なる前記第1電界制御パルスG1、前記第2電界制御パルスG2、前記第3電界制御パルスG3及び第4電界制御パルスG4により、前記受光領域で生成された信号電荷が転送され【0100】)、
前記第1の電荷排出補助領域85a、第2の電荷排出補助領域85b、第3の電荷排出補助領域85c及び第4の電荷排出補助領域85dは、電荷排出制御パルスGDにより、前記受光領域で生成された信号電荷が排出され(【0101】)、
出力光パルスに対する到来光パルスの遅延時間がTd1(0<Td1≦T0)の場合には、Q1は、第1の電荷蓄積領域61の電荷、Q2は、第2の電荷蓄積領域62の電荷、Q3は、第3の電荷蓄積領域63の電荷、Q4は、第4の電荷蓄積領域63の電荷、Iphは、信号光パルスによる光電流、Iaは、背景光による光電流、T0は、光のパルス幅とした場合、
Q1=Iph(T0-Td1)+IaT0 …………(21)
Q2=IphTd1+IaT0 …………(22)
Q3=IaT0 …………(23)
Q4=IaT0 …………(24)
となり、
前記遅延時間Td1は、
Td1=T0(Q2-Q4)/(Q1+Q2-2Q4) ………(25)
により求められ(【0049】、【0104】、【0105】)、
出力光パルスに対する到来光パルスの遅延時間がTd2(T0<Td2≦2T0)の場合には、
Q1=IaT0 …………(26)
Q2=Iph(2T0-Td2)+IaT0 …………(27)
Q3=Iph(Td2-T0)+IaT0 …………(28)
Q4=IaT0 …………(29)
となり、
前記遅延時間Td2は、
Td2=T0+T0(Q3-Q1)/(Q2+Q3-2Q1) …(30)
により求められ(【0105】)、
出力光パルスに対する到来光パルスの遅延時間がTd3(2T0<Td3≦3T0)の場合には、
Q1=IaT0 …………(31)
Q2=IaT0 …………(32)
Q3=Iph(3T0-Td3)+IaT0 …………(33)
Q4=Iph(Td3-2T0)+IaT0 …………(34)
となり、
前記遅延時間Td3は、
Td3=2T0+T0(Q4-Q1)/(Q3+Q4-2Q1) …(35)
により求められ(【0106】)、
前記遅延時間は、Q1>Q3、Q2>Q4の場合は上記式(25)を、Q1≦Q3、Q2>Q4の場合は上記式(30)を、Q1≦Q3、Q2≦Q4の場合は上記式(35)を使って計算し、光パルスの光源から対象物までの距離Lは、前記遅延時間の半分に光速をかけることで求める(【0045】、【0104】~【0107】)、
光飛行時間(TOF)距離センサ。」
(2) 本件発明1について
ア 本件発明1と先願発明1の対比
本件発明1と先願発明1を対比する。
(ア) 先願発明1の「繰り返しパルス信号として光を対象物に照射する光源」、「電荷変調素子」、「固体撮像装置」、「光飛行時間(TOF)距離センサ」は、それぞれ本件発明1の「発光信号が示すタイミングに従って複数回の照射光の照射を行う光源部」、「固体撮像素子」、「固体撮像部」、「測距撮像装置」に相当する。
(イ) 先願発明1の「第1電界制御パルスG1」、「第2電界制御パルスG2」及び「第3電界制御パルスG3」は、本件発明1の「露光信号」に相当する。
(ウ) 先願発明1の「第1の電荷蓄積領域61、第2の電荷蓄積領域62、第3の電荷蓄積領域63」は、本件発明1の「複数の信号蓄積領域」に相当する。
また、上記式(7)から、先願発明1の「第1の電荷蓄積領域61」は、遅延時間がTd(0<Td≦T0)の場合に、上記式(13)から、「第3の電荷蓄積領域63」は、前記遅延時間がTd2(T0<Td≦2T0)の場合に、上記式(8)及び式(12)から、「第2の電荷蓄積領域62」は、前記遅延時間がTd、Td2の両方の場合に、それぞれ第1又は第2到来光による信号Iphを蓄積しており、背景光のみによる信号Ia以外も蓄積していることから、本件発明1の「複数の信号蓄積領域のそれぞれは、前記照射光とは異なる背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用されず」に相当する。
ここで、先願発明1の「第4の電荷蓄積領域64」において蓄積される信号電荷は、距離算出に用いず排出されるだけであるから、先願発明1の「第4の電荷蓄積領域64」は、本件発明1の「信号蓄積領域」に相当するものではなく、本件発明1の「前記複数の信号蓄積領域のそれぞれは、前記照射光とは異なる背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用されず」との条件を満たしていると認められる。
また、仮に「信号蓄積領域」に相当するとしても、本件発明1においては、「背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用され」ない「複数の蓄積領域」を含んでさえいればよく、全ての蓄積領域が「背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用され」ないものであることまで限定するものでないから、先願発明1が「第4の電荷蓄積領域64」を有するとしても、このことは、本件発明1との相違点になるものではない。
(エ) 先願発明1の「遅延時間は、Q1>Q3の場合は上記式(10)を、Q1≦Q3の場合は上記式(14)を使って計算し、光パルスの光源から対象物までの距離Lは、前記遅延時間の半分に光速をかけることで求める」ためには、Q1とQ3の大小関係を判定する比較部と、判定結果に基づいて、距離を算出する算出部があることは明らかであるから、本件発明1との実質的な相違点を構成するものではない。
イ 本件発明1と先願発明2の対比
本件発明1と先願発明2を対比する。
(ア) 先願発明2の「繰り返しパルス信号として光を対象物に照射する光源」、「電荷変調素子」、「固体撮像装置」、「光飛行時間(TOF)距離センサ」は、それぞれ本件発明1の「発光信号が示すタイミングに従って複数回の照射光の照射を行う光源部」、「固体撮像素子」、「固体撮像部」、「測距撮像装置」に相当する。
(イ) 先願発明2の「第1電界制御パルスG1」、「第2電界制御パルスG2」、「第3電界制御パルスG3」及び「第4電界制御パルスG4」は、本件発明1の「露光信号」に相当する。
(ウ) 先願発明2の「第1の電荷蓄積領域61、第2の電荷蓄積領域62、第3の電荷蓄積領域63及び第4の電荷蓄積領域84」は、本件発明1の「複数の信号蓄積領域」に相当する。
また、上記式(21)から、先願発明1の「第1の電荷蓄積領域61」は、遅延時間がTd1(0<Td1≦T0)の場合に、上記式(22)及び式(27)から、「第2の電荷蓄積領域62」は、前記遅延時間がTd1及びTd2(T0<Td≦2T0)の場合に、上記式(28)及び式(33)から、「第3の電荷蓄積領域63」は、前記遅延時間がTd2、Td3(2T0<Td3≦3T0)の場合に、上記式(34)から、「第4の電荷蓄積領域64」は、前記遅延時間がTd3の場合に、それぞれ第1、第2又は第3到来光による信号Iphを蓄積しており、背景光のみによる信号Ia以外も蓄積していることから、本件発明1の「複数の信号蓄積領域のそれぞれは、前記照射光とは異なる背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用されず」に相当する。
ここで、先願発明2の「第1の電荷排出補助領域85a、第2の電荷排出補助領域85b、第3の電荷排出補助領域85c及び第4の電荷排出補助領域85d」は、受光領域で生成された信号電荷を蓄積せずに排出されるだけなので、本件発明1の「信号蓄積領域」に相当しない。
また、仮に「信号蓄積領域」に相当するとしても、本件発明1においては、「背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用され」ない「複数の蓄積領域」を含んでさえいればよく、全ての蓄積領域が「背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用され」ないものであることまで限定するものでないから、先願発明2の「第1の電荷排出補助領域85a、第2の電荷排出補助領域85b、第3の電荷排出補助領域85c及び第4の電荷排出補助領域85d」を有するとしても、このことは、本件発明1との相違点になるものではない。
(エ) 先願発明2の「遅延時間は、Q1>Q3、Q2>Q4の場合は上記式(25)を、Q1≦Q3、Q2>Q4の場合は上記式(30)を、Q1≦Q3、Q2≦Q4の場合は上記式(35)を使って計算し、光パルスの光源から対象物までの距離Lは、前記遅延時間の半分に光速をかけることで求める」ためには、Q1とQ3、Q2とQ4の大小関係を判定する比較部と、判定結果に基づいて、距離を算出する算出部があることは明らかであるから、本件発明1との実質的な相違点を構成するものではない。
ウ 一致点及び相違点
上記(ア)、(イ)の検討を総合すると、本件発明1と先願発明1の両者、及び本件発明1と先願発明2の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。
<一致点>
発光信号が示すタイミングに従って複数回の照射光の照射を行う光源部と、
対象物体を含む領域に対して、露光信号が示すタイミングに従って複数回の露光を行う固体撮像素子を含み、当該露光の露光量の総和に対応する信号を生成する固体撮像部と、を備える測距撮像装置であって、
前記固体撮像素子は、同一画素で検出する信号電荷を蓄積する複数の信号蓄積領域を含み、
前記複数の信号蓄積領域のそれぞれは、前記照射光とは異なる背景光のみによる前記対象物体からの反射光を露光した前記信号電荷の蓄積専用に使用されず、前記発光信号とタイミングが異なる前記露光信号により露光した前記信号電荷を蓄積することに使用され、
前記測距撮像装置は、さらに、
前記複数の信号蓄積領域に蓄積される複数の前記信号電荷に基づく信号量の大小関係を判定する信号量比較部と、
前記信号量の大小関係の判定結果に基づいて前記対象物体との距離を算出する距離演算部と、を備える、
測距撮像装置、である点。
<相違点>
本件発明1は「複数の信号蓄積領域のうち、少なくとも1つの同一の前記信号蓄積領域には、前記露光信号のタイミングが前記発光信号に対して複数のタイミングで露光した複数の前記信号電荷を蓄積する」ものであるのに対して、先願発明1又は先願発明2は、そのような構成を備えていない点。
エ 判断
上記相違点に係る構成は、特許異議申立人が取消しを申し立てていない訂正前の請求項5に記載されている構成であるところ、当該構成により、訂正明細書の【0097】に記載されている「信号蓄積手段を増やすことなく、背景光除去を実行しつつ露光期間が更に広がる」という新たな効果を奏するものである。
よって、上記相違点に係る構成は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)であるとは認められない。
オ 小活
よって、本件発明1は、先願発明1及び先願発明2のいずれとも同一ではないから、本件発明1に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものではない。
(3) 本件発明2、6~10について
本件発明2、6~10は、本件発明1と同様、上記相違点に係る構成を有するから、上記(2)において検討したとおり、先願発明1及び先願発明2のいずれとも同一でなく、本件発明2、6~10に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、2、6に係る特許は、当審が令和3年1月21日付けで特許権者に通知した取消理由(特許異議申立人が申立てた理由)によっては取り消すことはできない。そして、他に本件発明1、2、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件発明7~10に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明7~10に係る特許は、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
そして、請求項3、4、11、12は、前記のとおり本件訂正により削除され、請求項3、4、11、12に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700767