特許異議申立
2020-700645
車両用装飾部品
- 審判番号
- 2020-700645
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-110249
- 登録番号
- 特許第6665691号(P6665691)
- 請求日
- 2020年08月28日
- 審決日
- 2021年03月25日
- 公報発行日
- 2021年10月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】豊田合成株式会社
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【異議申立人】特許業務法人 藤央特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 岡田 吉美
- 審判官 濱野 隆
- 分類
- P1652.121-ZC (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の2第2項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6665691号発明「車両用装飾部品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6665691号の請求項1、2に係る特許を取り消す。
特許第6665691号の請求項3、6、9、10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6665691号(以下「本件特許」という。)の請求項1-11に係る特許についての出願は、平成28年6月1日に出願され、令和2年2月25日にその特許権の設定登録がされ、同年3月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和2年8月28日に、請求項1、2、3、6、9、10に係る特許に対し、特許異議申立人である特許業務法人藤央特許事務所により特許異議の申立てがされた。
当審は、令和2年11月26日付けで、請求項1、2に対して取消理由通知書を通知したところ、特許権者からの応答はなかった。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、請求項の番号に従って、「本件発明1」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、各請求項の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
車両において、ミリ波レーダ装置からのミリ波の送信方向の前方に取付けられて、同車両を装飾するとともに、ミリ波透過性を有する装飾本体部を備え、
樹脂シートに線状のヒータが形成されてなる加熱シートの少なくとも主要部が前記装飾本体部に一体に設けられ、
前記装飾本体部は、
樹脂材料により形成された基材と、
樹脂材料により形成され、かつ前記送信方向における前記基材の前側に配置された透明部材とを備え、
前記装飾本体部及び前記加熱シートのうち少なくとも前記ミリ波の透過領域では、前後方向の厚みが均一に設定されており、
前記透過領域での前後方向の厚み(mm)は、前記ミリ波の半波長を、前記透明部材又は前記基材の比誘電率の平方根にて除算した値の整数倍を厚みTとしたとき、T±0.2mmの範囲内に含まれる値である車両用装飾部品。
【請求項2】
前記装飾本体部は、
前記基材及び前記透明部材の間に形成され、かつミリ波透過性を有する加飾層とをさらに備え、
前記加熱シートの少なくとも主要部は、前記基材、前記透明部材及び前記加飾層のうちの1つ又は隣り合う2つに重ねられた状態で配置されている請求項1に記載の車両用装飾部品。
【請求項3】
前記透明部材は、前透明部材と、前記前透明部材の後側の後透明部材とに分割されており、
前記加熱シートの少なくとも主要部は、前記前透明部材及び前記後透明部材の間において、それらの前透明部材及び後透明部材に重ねられた状態で配置されている請求項2に記載の車両用装飾部品。
【請求項4】
前記加熱シートの少なくとも主要部は、前記基材に対し後側から重ねられた状態で配置されている請求項2に記載の車両用装飾部品。
【請求項5】
前記加熱シートの少なくとも主要部は、前記加飾層及び前記基材の間において、それらの加飾層及び基材に重ねられた状態で配置されている請求項2に記載の車両用装飾部品。
【請求項6】
前記透明部材の前面には、同透明部材よりも硬度の高いハードコート層が形成されている請求項3~5のいずれか1項に記載の車両用装飾部品。
【請求項7】
前記加熱シートの少なくとも主要部は、前記透明部材に対し前側から重ねられた状態で配置されている請求項2に記載の車両用装飾部品。
【請求項8】
前記加熱シートの少なくとも主要部の前面には、同加熱シートよりも硬度の高いハードコート層が形成されている請求項7に記載の車両用装飾部品。
【請求項9】
前記ハードコート層の前面には撥水膜が形成されている請求項6又は8に記載の車両用装飾部品。
【請求項10】
前記加熱シートの少なくとも主要部と前記基材との間に、同基材よりも荷重たわみ温度の高い材料からなる熱伝達抑制層が形成されている請求項3,5,7,8のいずれか1項に記載の車両用装飾部品。
【請求項11】
前記加熱シートは、その主要部においてのみ前記装飾本体部に一体に設けられ、
前記加熱シートは、前記主要部から前記装飾本体部の外部へ延び、かつ前記ヒータの両端部の接続端子を有する接続部を備えている請求項1~10のいずれか1項に記載の車両用装飾部品。」
第3 取消理由及び特許異議申立理由の概要
1 引用文献一覧
本決定で引用する引用文献は次のとおりである。
引用文献1 甲第1号証:特開2004-251868号公報
引用文献2 甲第2号証:独国特許出願公開第102014214329号
引用文献3 甲第3号証:独国特許出願公開第102014002438号
引用文献4 甲第4号証:W. M. Cady et al., "RADAR SCANNERS AND RADOMES", (米), McGraw-Hi11, 1948, p.259-273
引用文献5 甲第第5号証:松本欣二著,「電波工学入門」,朝倉書店,1986年4月1日、p.1-9, 144-146
引用文献6 甲第第6号証:電子通信学会編,「アンテナ工学ハンドブック」,株式会社オーム社,1980年10月30日,p.492-493
引用文献7 甲第7号証:特開2002-22821号公報
引用文献8 甲第8号証:特開2002-131413号公報
引用文献9 甲第9号証:特開2015-99081号公報
2 取消理由の概要
当審が令和2年11月26日付けの取消理由通知にて特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本件発明1及び本件発明2は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1~6に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要
下記の発明は、それぞれ、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
本件発明3 引用文献1~6
本件発明6 引用文献1~7
本件発明9 引用文献1~8
本件発明10 引用文献1~6、9
第4 各引用文献に記載された事項
1 甲第1号証に記載された事項及び引用発明の認定
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。
「【請求項1】
車両外装部材の開口部に取付されるとともに背面側に電波レーダー装置が配置される樹脂製の電波透過カバーであって、
前記電波透過カバーの外表面に表出する表出面を持つ透明樹脂層と、該透明樹脂層と離間して配置される基材層と、該透明樹脂層と該基材層との間隙に積層され該透明樹脂層を通して該電波透過カバーの外表面に意匠を表示する加飾体層とを有し、
該加飾体層は、所定の意匠となるように蒸着方向に結晶が伸長する金属材料が蒸着された蒸着意匠面を持つ光輝片を含むことを特徴とする電波透過カバー。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はミリ波レーダー装置やマイクロ波レーダ装置等の電波レーダ装置が搭載される車両の車両外装部材のうち、背面側に電波レーダーが配置される開口部を被覆する電波透過カバー及びその製造方法に関する。」
「【0004】電波レーダは、一般的には車両の外装部材の裏面側に配置される。しかし、外装部材のうちフロントグリル等には金属めっきがなされている場合が多く、金属の反射係数が大きい電波を良好に透過させることは難しい。また、特にフロントグリルは、空気を取り入れるための通気口が穿設された構造になっており、均一な肉厚を有さないため、電波を出入りさせると、フロントグリルの肉厚の薄い部分と厚い部分とで電波の透過速度に差が生じ、電波レーダの充分な感度を得ることが難しくなる。」
「【0023】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる電波透過カバーは、車両外装部材の開口部に取付されるとともに背面側にミリ波レーダ装置やマイクロ波レーダ装置等の電波レーダー装置が配置される樹脂製の電波透過カバーである。本発明の電波透過カバーは、例えばフロントグリルやバンパー,バックガーニッシュ,スポイラー,サイドモール等に取付することができる。また、本発明の電波透過カバーの車両外装部材の開口部への取付は、例えば接着や溶着等の方法でおこなうこともできるし、あるいは、電波透過カバーの端部に所定形状の係合部を設けて、この係合部によって車両外装部材の開口部に係合させることもできる。また、これに限らず、既知の種々の方法により取付することもできる。
【0024】
本発明の電波透過カバーは、電波透過カバーの外表面に表出する表出面を持つ透明樹脂層と、この透明樹脂層と離間して配置される基材層と、透明樹脂層と基材層との間隙に積層され透明樹脂層を通して電波透過カバーの外表面に意匠を表示する加飾体層とを有する。
【0025】
本発明の電波透過カバーは、上述したように既知の方法で車両外装部材の開口部に取付される。このとき、電波透過カバーの外表面に表出する表出面が車両外装部材の外表面側に表出することとなる。したがって、透明樹脂層は、ポリカーボネート等の通常使用される耐候性の高い透明樹脂によって形成することができる。」
「【0028】
加飾体層は、透明樹脂層と基材層との間隙に積層され透明樹脂層を通して電波透過カバーの外表面に意匠を表示する。すなわち、電波透過カバーの最外表面に位置する透明樹脂層は透明樹脂によって形成されているため、この透明樹脂層の下層に積層される加飾体層の意匠は、透明樹脂層を通して電波透過カバーの外表面に表示される。加飾体層は、樹脂材料を予めフィルム状に成形し、後述する光輝片とともに透明樹脂層や基材層を成形する際に積層することもできる。あるいは、後述する光輝片を透明樹脂や基材層に積層する際に射出成形等の既知の方法で樹脂材料を積層して形成することもできる。」
「【0061】
(実施例1)
本発明の実施例1の電波透過カバーは、蒸着意匠面が形成された光輝片と印刷面が形成されたフィルムとによって加飾体層が構成されるものである。本実施例1の電波透過カバーを示す模式斜視図を図1に示し、図1中A-A'の断面図を図2に示す。
【0062】
本実施例1の電波透過カバー1は、透明樹脂層2と、この透明樹脂層2の下層に積層された加飾体層3と、加飾体層3のさらに下層に積層された基材層4とを有する。
【0063】
加飾体層3は小形の光輝片5と、この光輝片5に接するフィルム7とからなる。光輝片5はPMMAを材料とした略楕円形の平板状に形成され、その一面にはエンブレムの意匠となるようにインジウムが蒸着されて蒸着意匠面8が形成されている。また、フィルム7はPMMAを材料として形成され、その一面にはフロントグリルのフィン様の意匠をもつ疑似フィン部10が縞状にグラビア印刷されて、印刷面11が形成されている。また、フィルム7はこの縞状の疑似フィン部10の意匠に沿って賦形されて、2つの凹部12と3つの凸部13が交互に形成されている。
【0064】
加飾体層3の上層、すなわち、フィルム7の印刷面11及び光輝片5の蒸着意匠面8の上層側には、ポリカーボネート製の透明樹脂層2が形成されている。また、加飾体層3の下層、すなわち、フィルム7の印刷面11及び光輝片5の蒸着意匠面8の下層側には透明樹脂層2と離間してAES樹脂製の基材層4が形成されている。透明樹脂層2及び基材層4は凹凸をもつように賦形されたフィルム7の凹凸間にも充填されているため、本実施例1の電波透過カバー1は肉厚が一定に形成されるものとなる。」
「【図1】
【図2】
」
(2)甲第1号証に記載された発明の認定
前記(1)で摘記した事項を総合すると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「 車両外装部材の開口部に取付されるとともに背面側に電波レーダー装置が配置される樹脂製の電波透過カバーであって、
前記電波透過カバーの外表面に表出する表出面を持つ透明樹脂層と、該透明樹脂層と離間して配置される基材層と、該透明樹脂層と該基材層との間隙に積層され該透明樹脂層を通して該電波透過カバーの外表面に意匠を表示する加飾体層とを有し、
該加飾体層は、所定の意匠となるように蒸着方向に結晶が伸長する金属材料が蒸着された蒸着意匠面を持つ光輝片を含み(【請求項1】)、
電波レーダー装置はミリ波レーダ装置であり(【0023】)、
基材層はAES樹脂製であり(【0064】)、
肉厚が一定に形成されている(【0064】)、
電波透過カバー。」
2 周知技術Aの認定(1)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の技術事項が記載されている。なお、邦訳は、基本的に異議申立人が提出したものにより、下線は当審が付した。
「
」
(【0011】 本発明の有利な形態によれば、シート複合体が、装飾シートの裏側に配置されたホットシートを有すると特に有利である。このようなホットシートは、シート複合体と、とりわけ装飾シートとを加熱するために導電性の抵抗トラックを有し、これにより天候に起因する氷、雪又は湿気の堆積を除去することができる。)
「
」
(【0022】 図1は、ケーシング2を備える、自動車用のレーダ装置1を示し、ケーシングは、ケーシング下部2.1とカバー部2.2とから形成されている。カバー部2.2は、レードーム3として構成されており、その層構造が分解図から理解される。)
「
」
(【0023】 この雇構造は、まず、複数のシート4.1,4.2及び4.3からなるシート複合体4を含み、シート複合体4の表側は可視性の装飾シート4.1により形成され、したがって車両の外皮の一部分を形成する。装飾シート4.1は、色、装飾および抵抗力に関して顧客特有の要求に適合することができ、例えば会社ロゴまたは他の構造を設けることもできる。この装飾シート4.1は、レーダ装置1の組み込み環境、すなわち例えば車両のラジェーターグリル又はバンパーの領域に適合することもできる。)
「
」
(【0024】 図1によれば、この装飾シート4.1には、裏側でホットシート4.2が接続され、引き続き支持体シート4.3が、シート複合体4となるよう平面状に接続される。ホットシート4.2は、抵抗トラック4.21を有し、この抵抗トラックは、シート複合体4、そしてレードーム3を加熱するために電圧源に接続される。抵抗トラック4.21は、フィルタとしてレーダビームに対して作用する構造を有することができ、これによりレーダビームの障害性成分を、フィルタとして構造化されたこの抵抗トラックによってろ波除去する。これによりレーダ装置1の性能を改善することができる。)
「
」
(【0025】 このシート複合体4は、3次元に成形することもでき、その製造後に支持体層5を形成するために、熱可塑性プラスチック材料により後射出される。ここで、この支持体層5は、カバー部2.2として成形され、レーダ装置1のレードーム3を形成する。支持体シート4.3によって、シート複合体4と支持体層5との間に改善された結合が達成される。)
「
」
(【0026】シート複合体4の後射出によって別個の構成部材が形成される。この別個の構成部材は、装飾シートヘの顧客固有の要求により、ただ1回の射出成形により製造することができる。このような構成部材の場合、後処理、例えば塗装が省略される。)
「
」
(【0027】 支持体層5は、図1によればケーシング2のカバー部2.2として構成されている。支持体層5は、車両のバンパーのバンパー本体の一部としても形成することができる。)
「Fig 1
」
(2)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の技術事項が記載されている。なお、邦訳は、基本的に異議申立人が提出したものにより、下線は当審が付した。
「
」
(【0032】 本発明は、着霜を回避あるいは溶解するために、加熱ワイヤによって加熱することのできるレードームの作製方法に関する。加熱可能なレードームによって、車両の安全性関連の車間制御システムを、着霜及び降雪の場合でも使用することができる。)
「
」
(【0033】 自動車の加熱可能なプラスチックレードームのための本発明の作製方法では、第1のステップa)で、1つ又は複数の切欠部を有する平坦な(とりわけPC又はPMMAのような熱可塑性プラスチック製の)シートが提供される。シート内の切欠部は、切り抜き又は打ち抜きあるいはレーザ切除しておくことができる。)
「
」
(【0034】 図1は、切欠部1aを備えるほぼ円形のシート部材1を示し、切欠部は、加熱ワイヤ2の接触接続に用いられる。図示のジート部材1の縁部にあるさらなる切欠部及び隆起部は、作製方法のステップ中に位置決め補助として、又はレードームを組み立てる際の取り付け補助手段として設けることができる。)
「
」
(【0035】 透明プラスチック製の平坦なシート部材1には、1つ又は複数の加熱ワイヤ2が少なくとも平行に、例えば鋳込みによって埋め込まれる。そのために超音波法を使用することができる。)
「
」
(【0036】 ここで加熱ワイヤ2は、レーダの周波数及び偏波に整合した外形に敷設され、この外形は、本例では多重の蛇行を形成する。敷設外形は、ワイヤ2がシート部材1の、接触接続領域を形成する切欠部1aを通って多重に延在することを意図している。さらに図1に示されたスターマークは、シート部材1又は加熱ワイヤ2の一部ではなく、後で行われる後射出の方法ステップで相応に形成される正面プレート構造の位置を、敷設外形を基準にして再現し、かつその経過を、レードームの取り付け位置を基準にして再現する。)
「
」
(【0037】 約40から50μmの太さである敷設された加熱ワイヤ区間同士の理想的な間隔は5mmである。間隔がこれよりも小さいと、レーダビームに対する透過性が大きく低下し、一方、間隔がこれより大きいと、加熱能力が過度に低下し、所望の結果、すなわちシートあるいはレードームの外側に霜が存在しないことを、もはや保証することができない恐れがある。)
「
」
(【0038】 本発明により、埋め込まれた加熱ワイヤが、約40から60μmの範囲の非常に小さな直径を有することができ、したがって加熱ワイヤは光学的にほとんど知覚不能である。さらにこのワイヤは、光学的知覚性をさらに低減するために塗装することができ、又は他のやり方で着色することができる。ここで着色は、接触接続するための選択された後続の接続方法(例えば溶接又はハンダ付け)に整合されているように留意すべきである。したがってワイヤの接触接続領域において前処理(例えば塗装除去)は必要ない。)
「
」
(【0039】 埋め込まれた加熱ワイヤ2と切欠部1aを備えるシート部材1は、特別の深絞りプロセスにおいて高圧変形により、予め規定された形状、例えばレンズ形状にもたらされる。この特別の深絞りプロセスは、ここではとりわけ、埋め込まれた加熱ワイヤ2を備えるシート部材1が付加的な (複数回使用可能な)メンブレン(例えばシリコン製)により取り囲まれ、このメンブレンが切欠部1aの領域を完全に覆い、これにより圧力の形成及びシート部材1の深絞りを可能にする方法とすることができる。)
「
」
(【0040】 基本的にシート部材の幾何形状あるいは形状は任意とすることができる。)
「
」
(【0041】 加熱ワイヤは、材料及び強度及び深絞りプロセスパラメータの観点で、予め規定の形状へのシート部材の深絞りの際に、シートの加熱ワイヤが剥ぎ取られたり、引き剥がされたりすることがないように整合すべきことに留意されたい。)
「
」
(【0042】 シート部材の以降の後射出作業ステップでは、成形された表面構造3’、図2ではブランドエンブレム、を備えるフロントプレート3を得るために、少なくとも部分的に埋め込まれた加熱ワイヤ2が存在するシート部材1の側に、プラスチック材料が吹き付けられる。吹き付けられるプラスチック材料の厚さは、レードームの表側を形成するシート部材1とは反対の側においてブランドエンブレムを成形できるような厚さである。後射出の際のスプルーとプロセスパラメータを適切に選択することにより、射出成形中にシートから加熱ワイヤが剥がれることを回避できる。)
「
」
(【0043】 後射出のために、深絞りされ、加熱ワイヤ2が埋め込まれたシート部材1が、適切な射出成形工具に装填され、プラスチック、例えばとりわけPC、PC混合物又はPMMAが後射出される。これらのプラスチックは、シート部材1のプラスチックと互換性がある。シート部材1の切欠部1a(図1参照)から、後射出されたプラスチックが除去される。その代わりに、この開放された領域に(あるいはこれらの領域に)、それぞれ1つの接点要素4、例えば導電性材料(例えば銅)からなる接点小片が、後射出の際に配置され、したがって接点要素4は射出されたプラスチックと堅固に結合する。各接点要素4は、射出成形後に、切欠部1aにおいて加熱ワイヤ2と直接接触する。)
「
」
(【0044】 作製方法のこの箇所で、フロントパネル3を着色して構成することができる。成形されたブランドエンブレムは、例えばメタリックな外観により、例えばインジウム被撹により装飾することができ、一方、フロントパネルの他の領域は、例えばブラックに着色することができ、これによりブランドエンブレムに対する良好なコントラストを達成する。)
「
」
(【0045】 最後に、加熱ワイヤ2と接点要素4は、適切な方法で互いに接続され、電気接点が形成される。ここでは例えば、複数のワイヤも同時に接点要素と持続的に接続することのできる種々の溶接方法(特に熱圧着溶接)又はハンダ付け法が考えられる。ここでは接点要素を、幾何形状の適切な修正によって、ケーブル束又はコネクタとの直接的接触接続のために使用することができる。)
「
」
(【0046】 この場合、プラスチックレードームの製造は、例えば従来のレードームのように通常の製造ステップを更に含む。ここでシート部材1は、後射出されたフロントパネル3及び成形された構造体3’と共にベースプレート5によって収容され、装飾リング6により、フロントパネルの可視側に向かって装飾的に取り囲まれる(図3参照)。)
「
」
(【0047】 図3の概略的側面図では、シート部材1に埋め込まれた加熱ワイヤ2が示されており、この加熱ワイヤは、切欠部1aを通って延びている。接点要素4は、沈下された部分4”を有し、この部分は、切欠部1a内に配置され、加熱ワイヤ2に接触接続する。接点要素4の接続部分4’は、ベースプレート5の方向を指し、そこでコネクタ要素5’により収容され、このコネクタ要素を介して車両電流供給部との電気接続が行われる。ベースプレート5は、さらに係止手段5”を有し、この係止手段によりレードームを、車両フロントにあるそのために設けられた開口部に固定することができる。例えばクローム色である、またはクロームから作製することのできる装飾リング6も、同様に固定のための係止手段を有する。)
「
」
「
」
(3)周知技術A等の認定
前記(1)及び(2)の記載事項を踏まえると、レーダ装置のレードームの前面を霜、氷や雪が覆うことを防止するということは、当業者には自明な設計指針であり、そのための技術手段として、「樹脂シートに線状のヒータが形成されてなる加熱シート」(以下「周知技術A」と言う。)は、周知技術であることが認められる。
3 技術常識Bの認定
(1)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。なお、邦訳は、基本的に異議申立人が提出したものによった。
(260頁31行-261頁16行)
「
」
(誘電材料からなるシートの厚みが1/4波長に等しい場合、裏背面から反射された波は、前面で反射された波よりも半波長長く進み、同位相になる。シートの厚みが(3/4)λs, (5/4)λs等の場合、反射強度は最大を取る。一方で、シートの厚さが部材中の半波長の整数倍である場合、波は再び位相がずれ、結果として反射強度がゼロになる。
この事象の全ては式(12・77)によって説明され、与えられる反射電力係数は、
この等式中のrabは前面での反射振幅係数であり、そして、
φ/2πはシートの電気的厚みを指す、ここで、
d =シートの厚み,
λ0 =自由空間における波長,
n =屈折率 =√ε/ε0
ε=材料の誘電率,
ε0 =自由空間の誘電率,
ε/ε0 =部材の比誘電率,
λ0/n = 誘電材料中の波長.
|R|2 =0のとき、φ=Nπ(Nは0を含む全ての整数)であることは明白である。このφがこのような値のとき、dは、
として与えられる。dの値を変化させた場合、反射電力係数の最大値は次式のようになる。
この最大値は、任意のdの値が次の関係を満たす場合に実現する。
)
(266頁11行-同頁14行)
「
」
(損失媒体は、しばしば複素誘電率で特徴付けられる。これは次のように記述できる。
又は
)
(267頁1行-同頁2行)
「
」
(誘電体内における電磁波の波長λsは、λ0/nに等しい。)
(268頁6行-269頁13行)
「
」
(式(12-82)は、電力透過係数|T|2に対応する式を与える。図10-5及び図10-6は、ε’/ε0が2と4の場合の、異なるtanδにおけるd/λsに対してプロットである。透過率は、d/λsが極端に小さい場合を除き、損失正接に大きく依存することがわかる。半波長の厚みをもつシートの透過率はtanδの増加とともに急激に低下し、tanδの値がゼロ以外の場合、最適な透過率はシートの厚みがλs/2よりもわずかに小さい厚みの場合に実現する。
実際には、波長1~10cmの範囲において、レードーム用の均質な壁を作るには、tanδが0.1以下の低損失材料が有用である。波長範囲の下限では、半波長の厚さを有するレードーム構造で実用的であるが,tanδは透過損失に著しく依存するため、tanδは小さくなければならない。もしくは、損失正接が十分に小さければ、反射は低く透過率は高くなるので、非常に低い誘電率の材料を半波長の数倍の厚さにして使用される。波長範囲の上限では、λsに比べて薄いシート状の高強度材料を使用することが可能である。この場合でも、反射をできるだけ小さくするために、このような「薄壁」のレードームやパネルを用いる場合でも、ε’/ε0をできるだけ低くすることが望ましい。誘電率の低い材料は、通常、損失正接の値も低くなる。)
(2)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(2頁18行-3頁12行)
「
」
(144頁17行-145頁10行)
「
」
(3)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
(493頁左欄26行目37行)
「
」
(4)技術常識Bの認定
前記(1)から(3)を踏まえると、次の技術事項は、技術常識であると認められる(以下「技術常識B」という。)。
<技術常識B>
レードームの壁の厚みが、当該レーダの電磁波の、壁の中での波長の値(真空中の波長を比誘電率の平方根で割った値)の半分の整数倍であるときに、当該電磁波の透過率が極大となること。
第5 対比・判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の認定
ア 本件発明1と甲1発明の対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、以下のとおりである。
(ア)甲1発明は、「車両外装部材の開口部に取付されるとともに背面側に電波レーダー装置が配置される樹脂製の電波透過カバー」であって、「電波レーダー装置はミリ波レーダ装置」であるから、甲1発明の「電波透過カバー」は、「車両において、ミリ波レーダ装置からのミリ波の送信方向の前方に取付けられて」いるということができる。
また、甲1発明は、「電波透過カバーの外表面に意匠を表示する加飾体層」を有しているから、「車両を装飾するとともに、ミリ波透過性を有する装飾本体部を備える車両用装飾部品」であるということができる。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「車両において、ミリ波レーダ装置からのミリ波の送信方向の前方に取付けられて、同車両を装飾するとともに、ミリ波透過性を有する装飾本体部を備える車両用装飾部品」の点で共通する。
(イ)甲1発明は、「前記電波透過カバーの外表面に表出する表出面を持つ透明樹脂層と、該透明樹脂層と離間して配置される基材層と、該透明樹脂層と該基材層との間隙に積層され該透明樹脂層を通して該電波透過カバーの外表面に意匠を表示する加飾体層」を有するから、甲1発明において、「装飾本体部」は「基材」を備えるということができる。そして、甲1発明の「基材層」は「AES樹脂製」であるから、甲1発明において、「装飾本体部」は、「樹脂材料により形成された基材」を備えるということができる。
また、甲1発明は、「前記電波透過カバーの外表面に表出する表出面を持つ透明樹脂層」を有するから、甲1発明において、装飾本体部は、「樹脂材料により形成され、かつ前記送信方向における前記基材の前側に配置された透明部材を備える」、ということができる。
以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「前記装飾本体部は、樹脂材料により形成された基材と、樹脂材料により形成され、かつ前記送信方向における前記基材の前側に配置された透明部材とを備える」点で一致している。
(ウ)甲1発明は、「肉厚が一定に形成されている」から、本件発明1と甲1発明は、「前記装飾本体部のうち少なくとも前記ミリ波の透過領域では、前後方向の厚みが均一に設定されて」いる点で共通するということができる。
イ 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点
上記アで検討した点を総合すると、本件発明1と甲1発明は、次の「本件発明1と甲1発明の一致点」の点で一致し、「相違点1」の点で相違する。
<本件発明1と甲1発明の一致点>
「車両において、ミリ波レーダ装置からのミリ波の送信方向の前方に取付けられて、同車両を装飾するとともに、ミリ波透過性を有する装飾本体部を備え、
前記装飾本体部は、
樹脂材料により形成された基材と、
樹脂材料により形成され、かつ前記送信方向における前記基材の前側に配置された透明部材とを備え、
前記装飾本体部のうち少なくとも前記ミリ波の透過領域では、前後方向の厚みが均一に設定されている、
車両用装飾部品」
<相違点1>
本件発明1においては、「樹脂シートに線状のヒータが形成されてなる加熱シートの少なくとも主要部が前記装飾本体部に一体に設けられ」、「前記装飾本体部及び前記加熱シートのうち少なくとも前記ミリ波の透過領域では、前後方向の厚みが均一に設定されており」、「前記透過領域での前後方向の厚み(mm)は、前記ミリ波の半波長を、前記透明部材又は前記基材の比誘電率の平方根にて除算した値の整数倍を厚みTとしたとき、T±0.2mmの範囲内に含まれる値である」のに対して、甲1発明は、加熱シートを有しておらず、「前記装飾本体部及び前記加熱シート」の「前記透過領域での前後方向の厚み」に関する数値の限定はない点。
(2)本件発明1の想到容易性について
レーダ装置のレードームの前面を霜、氷や雪が覆うことを防止するということは、当業者には自明な設計指針であるから(前記第4の2(3)参照)、そのための手段として、周知の技術である、「樹脂シートに線状のヒータが形成されてなる加熱シート」(周知技術A)を採用することは、当業者が適宜なしえる事項にすぎない。したがって、甲1発明において、「樹脂シートに線状のヒータが形成されてなる加熱シートの少なくとも主要部が前記装飾本体部に一体に設けられる」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、その際、「レードームの壁の厚みが、当該レーダの電磁波の、壁の中での波長の値(真空中の波長を比誘電率の平方根で割った値)の半分の整数倍であるときに、当該電磁波の透過率が極大となること」は、技術常識であるから(技術常識B)、「前記装飾本体部及び前記加熱シートのうち少なくとも前記ミリ波の透過領域では、前後方向の厚みが均一に設定されており」、「前記透過領域での前後方向の厚み(mm)をT程度の値に設定することは(ここで、前記ミリ波の半波長を、前記透明部材又は前記基材の比誘電率の平方根にて除算した値の整数倍を厚みTとする)、当業者には自明の設計事項にすぎない。
そして、本件発明1の効果には、甲1発明、周知技術A及び技術常識Bに基づいて当業者が予測できるものを超える格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件発明1は、甲1発明、周知技術A及び技術常識Bに基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
2 本件発明2について
(1)本件発明2と甲1発明の相違点の認定
ア 本件発明2と甲1発明の対比
本件発明2と甲1発明を対比すると、甲1発明は、「該透明樹脂層と該基材層との間隙に積層され該透明樹脂層を通して該電波透過カバーの外表面に意匠を表示する加飾体層」を有するから、本件発明2と甲1発明は、前記1(1)イの「本件発明1と甲1発明の一致点」のほかに、「前記基材及び前記透明部材の間に形成され、かつミリ波透過性を有する加飾層とをさらに備える」点においても一致する。
イ 本件発明2と甲1発明の相違点
前記1(1)イ及び前記2(1)アで検討した点を総合すると、本件発明2と甲1発明は、前記1(1)イの「本件発明1と甲1発明の相違点」において示した、相違点1の点で相違するほか、次の相違点2の点においても相違する。
<相違点2>
本件発明2は、「前記加熱シートの少なくとも主要部は、前記基材、前記透明部材及び前記加飾層のうちの1つ又は隣り合う2つに重ねられた状態で配置されている」のに対して、甲1発明は加熱シートが設けられていない点。
(2)本件発明2の想到容易性について
「前記加熱シートの少なくとも主要部は、前記基材、前記透明部材及び前記加飾層のうちの1つ又は隣り合う2つに重ねられた状態で配置されている」ことは、甲1発明に周知技術Aを採用することの結果として当然に導かれるものであるから、相違点1に加えてさらに相違点2を有することは、相違点1を有することと実質的には異ならない。
したがって、前記1(1)と同様の理由により、本件発明2は、甲1発明、周知技術A及び技術常識Bに基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
3 本件発明3について
(1)本件発明3と甲1発明の相違点の認定
請求項3は、請求項2の記載を引用している。この点並びに前記1(1)イ及び前記2(1)アで検討した点を総合すると、本件発明3と甲1発明は、前記1(1)イの「本件発明1と甲1発明の一致点」のほかに、「前記基材及び前記透明部材の間に形成され、かつミリ波透過性を有する加飾層とをさらに備える」点においても一致する。
そして、前記1(1)イの「本件発明1と甲1発明の相違点」において示した相違点1の点及び前記2(1)イの「本件発明2と甲1発明の相違点」において示した相違点2の点で相違するほか、次の相違点3の点においても相違する。
<相違点3>
本件発明3は、「前記透明部材は、前透明部材と、前記前透明部材の後側の後透明部材とに分割されており、前記加熱シートの少なくとも主要部は、前記前透明部材及び前記後透明部材の間において、それらの前透明部材及び後透明部材に重ねられた状態で配置されている」のに対して、甲1発明は、前記透明部材は、前透明部材と、前記前透明部材の後側の後透明部材とに分割されていない点。
(2)本件発明3の想到容易性について
相違点3について検討すると、「前記透明部材は、前透明部材と、前記前透明部材の後側の後透明部材とに分割されており、前記加熱シートの少なくとも主要部は、前記前透明部材及び前記後透明部材の間において、それらの前透明部材及び後透明部材に重ねられた状態で配置されている」点は、引用文献1~引用文献6のいずれにも開示されていない。また、引用文献7~9に関しても同様である。
この点について、特許異議申立人は、「層構造を如何に構成するかは当業者が適宜行うべき設計事項である」と主張しているが、それ以上の根拠は示されていない。
そして、甲1発明においては、透明樹脂層は単一の材料により形成される一体の構造をなしており、甲1発明に周知技術Aの加熱シートを採用する際に(単に加熱シートを既存のいずれの層の前又は後に配置するかを選択するのではなく)、そのような一体の構造をなす透明樹脂層を前後に分割し、その間に加熱シートを配置することは、単純な設計事項の域を超えるものであるから、相違点3は、引用文献1から引用文献9に基づいては、当業者が適宜行うべき設計事項であるとまではいえない。
したがって、本件発明3は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえず、本件発明3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとは認められない。
4 本件発明6について
請求項6は、請求項3~5のいずれか1項の記載を引用しているところ、請求項4及び5は、特許異議の申立てがされていない請求項であるから、請求項6のうち請求項4、5の記載を引用する部分については、当審は、審理しない(特許法120条の2第2項)。
以下、本件発明6のうち、請求項3の記載を引用する部分を、改めて「本件発明6」という。そうすると、本件発明6は、本件発明3の構成を全て含むものであるから、上記3(2)における検討と同様の議論により、本件発明6は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえず、本件発明6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとは認められない。
5 本件発明9について
請求項9は、請求項6又は8の記載を引用しているところ、請求項8は、特許異議の申立てがされていない請求項であるから、請求項9のうち請求項8の記載を引用する部分については、当審は、審理しない。また、請求項6は、請求項3~5の記載を引用しているところ、請求項4及び5は、特許異議の申立てがされていない請求項であるから、請求項9が請求項6の記載を引用する部分のうちの請求項6が請求項4、5の記載を引用する部分については、当審は、審理しない。
以下、本件発明9のうち、請求項6の記載を引用する部分であって、さらに請求項6が請求項3の記載を引用する部分を、改めて「本件発明9」という。そうすると、本件発明9は、本件発明3の構成を全て含むものであるから、前記3(2)における検討と同様の議論により、本件発明9は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえず、本件発明9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとは認められない。
6 本件発明10について
請求項10は、請求項3、5、7、8のいずれか1項の記載を引用しているところ、請求項5,7,8は、特許異議の申立てがされていない請求項であるから、請求項10のうち請求項5、7,8の記載を引用する部分については、当審は、審理しない。
以下、本件発明10のうち、請求項3の記載を引用する部分を、改めて「本件発明10」という。そうすると、本件発明10は、本件発明3の構成を全て含むものであるから、前記3(2)における検討と同様の議論により、本件発明10は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえず、本件発明10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとは認められない。
第6 むすび
以上検討のとおり、本件特許の請求項1、2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項3、6、9、10に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項3、6、9、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700645