特許異議申立
2023-700566
ボルト締めランジュバン型振動子、超音波計測用機器
- 審判番号
- 2023-700566
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-017350
- 登録番号
- 7182783
- 請求日
- 2023年06月01日
- 審決日
- 2024年06月27日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】本多電子株式会社
- 【権利者代理人】渥美 久彦
- 【異議申立人】田中 祐子
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 佐々木 祐
- 審判官 濱野 隆
- 分類
- P1651.121-ZAA(G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第113条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7182783号発明「ボルト締めランジュバン型振動子、超音波計測用機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7182783号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7182783号の請求項1、3~6に係る特許を取り消す。
特許第7182783号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7182783号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成31年2月1日の出願であって、令和4年11月25日にその特許権の設定登録がされ、同年12月5日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 6月 1日 : 特許異議申立人田中祐子による請求項1~ 6に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 8月24日付け: 取消理由通知書
同年10月19日 : 面接
同月29日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年11月16日付け: 手続補正指令書(方式)
同年12月 1日差出: 手続補正書(方式)の提出(特許権者)
令和6年 1月17日 : 意見書の提出(特許異議申立人)
同年 3月27日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
当合議体は、特許権者に対し、令和6年3月27日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
令和5年10月29日に提出された訂正請求書を以下「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正請求及び訂正をそれぞれ「本件訂正請求」及び「本件訂正」という。
第2 本件訂正について
1 本件訂正請求の趣旨
本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものである。
2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~6の記載(特許権の設定登録時における特許請求の範囲の記載)は、次のとおりである。
「【請求項1】
フロントマスとバックマスとの間に、無鉛材料で形成された圧電素子及び電極板を複数枚ずつ積層してなる駆動部が挟持され、前記駆動部を貫通する孔に挿通された締め付けボルトにより、前記フロントマスと前記バックマスとが締結された構造のランジュバン型振動子であって、
前記駆動部は、ニオブ酸アルカリ系のセラミックス圧電材料を用いて形成された前記圧電素子を4枚以上含んで構成され、
前記フロントマスは第1の金属材料を用いて形成され、前記バックマスは前記第1の金属材料よりも比重が大きい第2の金属材料を用いて形成され、
振動子全長は共振周波数の半波長の長さに相当し、前記駆動部の厚さは前記振動子全長の1/3未満であり、かつ前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の1/3を超えるものである
ことを特徴とするボルト締めランジュバン型振動子。
【請求項2】
前記圧電素子は、ニオブ酸ナトリウムカリウム系のセラミックス圧電材料を用いて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボルト締めランジュバン型振動子。
【請求項3】
前記第2の金属材料の比重は、前記第1の金属材料の比重の2倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のボルト締めランジュバン型振動子。
【請求項4】
前記第1の金属材料の比重は2.5以上3.5以下であり、前記第2の金属材料の比重が7.0以上9.0以下であることを特徴とする請求項3に記載のボルト締めランジュバン型振動子。
【請求項5】
超音波の送受信により物理量の計測を行う機器であって、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のボルト締めランジュバン型振動子を1つまたは複数含んで構成された超音波計測用機器。
【請求項6】
前記超音波計測用機器は、複数の前記ボルト締めランジュバン型振動子を同じ方向に向けてゴムモールドした構造の魚群探知機用センサであることを特徴とする請求項5に記載の超音波計測用機器。」
3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6の記載は、次のとおりである。下線は訂正箇所である。
「【請求項1】
フロントマスとバックマスとの間に、無鉛材料で形成された圧電素子及び電極板を複数枚ずつ積層してなる駆動部が挟持され、前記駆動部を貫通する孔に挿通された締め付けボルトにより、先細り形状のホーン部を有しない前記フロントマスと前記バックマスとが締結された構造であり、超音波の送受信により物理量の計測を行う超音波計測用機器のためのランジュバン型振動子であって、
前記駆動部は、圧電定数d33が250pC/N以上のニオブ酸ナトリウムカリウム系のセラミックス圧電材料を用いて形成された前記圧電素子を4枚以上含んで構成され、
前記フロントマスは第1の金属材料を用いて前記バックマスの断面よりも大きい断面となるように形成され、前記バックマスは前記第1の金属材料よりも比重が大きい第2の金属材料を用いて前記フロントマスよりも重く形成され、
振動子全長は共振周波数の半波長の長さに相当し、前記駆動部の厚さは前記振動子全長の21%~31%であり、かつ前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の34%~44%であり、前記バックマスの厚さは前記駆動部の厚さよりも大きく、
前記駆動部の中心部が超音波振動の節部となり、前記フロントマス及び前記バックマスの各々の端面が超音波振動の腹部となる
ことを特徴とするボルト締めランジュバン型振動子。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記第2の金属材料の比重は、前記第1の金属材料の比重の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載のボルト締めランジュバン型振動子。
【請求項4】
前記第1の金属材料の比重は2.5以上3.5以下であり、前記第2の金属材料の比重が7.0以上9.0以下であることを特徴とする請求項3に記載のボルト締めランジュバン型振動子。
【請求項5】
超音波の送受信により物理量の計測を行う機器であって、請求項1、3または4に記載のボルト締めランジュバン型振動子を1つまたは複数含んで構成された超音波計測用機器。
【請求項6】
前記超音波計測用機器は、複数の前記ボルト締めランジュバン型振動子を同じ方向に向けてゴムモールドした構造の魚群探知機用センサであることを特徴とする請求項5に記載の超音波計測用機器。」
4 本件訂正の内容
本件訂正は、特許法120条の5第4項の規定する一群の請求項である請求項1~6について訂正するものである。
本件訂正の内容を、訂正される請求項の記載ごとに整理すると、次の訂正事項1~4からなる。
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1についての、次のア~キまでに示す訂正事項1-1から訂正事項1-7までの訂正事項からなる(請求項1の記載を引用する請求項3、4、5、6も同様に訂正する。)。
ア 訂正事項1-1
「前記駆動部を貫通する孔に挿通された締め付けボルトにより、」の直後の「前記フロントマス」を、「先細り形状のホーン部を有しない前記フロントマス」と訂正すること。
イ 訂正事項1-2
「前記フロントマスと前記バックマスとが締結された構造のランジュバン型振動子」を、「前記フロントマスと前記バックマスとが締結された構造であり、超音波の送受信により物理量の計測を行う超音波計測用機器のためのランジュバン型振動子」と訂正すること。
ウ 訂正事項1-3
「ニオブ酸アルカリ系のセラミックス圧電材料」を、「圧電定数d33が250pC/N以上のニオブ酸ナトリウムカリウム系のセラミックス圧電材料」と訂正すること。
エ 訂正事項1-4
「前記フロントマスは第1の金属材料を用いて形成され」を、「前記フロントマスは第1の金属材料を用いて前記バックマスの断面よりも大きい断面となるように形成され」と訂正すること。
オ 訂正事項1-5
「前記バックマスは前記第1の金属材料よりも比重が大きい第2の金属材料を用いて形成され」を、「前記バックマスは前記第1の金属材料よりも比重が大きい第2の金属材料を用いて前記フロントマスよりも重く形成され」と訂正すること。
カ 訂正事項1-6
「前記駆動部の厚さは前記振動子全長の1/3未満であり、かつ前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の1/3を超えるものである」を、「前記駆動部の厚さは前記振動子全長の21%~31%であり、かつ前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の34%~44%であり、前記バックマスの厚さは前記駆動部の厚さよりも大きく、」と訂正すること。
キ 訂正事項1-7
「ことを特徴とするボルト締めランジュバン型振動子」の直前に「前記駆動部の中心部が超音波振動の節部となり、前記フロントマス及び前記バックマスの各々の端面が超音波振動の腹部となる」を挿入すること。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載の」と記載されているのを、「請求項1に記載の」に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1乃至4のいずれか1項に記載の」と記載されているのを、「請求項1、3または4に記載の」に訂正する。
第3 本件訂正の適否についての当合議体の判断
1 訂正の目的
(1) 訂正事項1
ア 訂正事項1-1の訂正は、本件訂正前の請求項1の「前記フロントマス」について、本件訂正後の「先細り形状のホーン部を有しない」ものに限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項1-2の訂正は、本件訂正前の請求項1の「ランジュバン型振動子」について、本件訂正後の「超音波の送受信により物理量の計測を行う超音波計測用機器のための」ものに限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
ウ 訂正事項1-3の訂正は、本件訂正前の請求項1の「ニオブ酸アルカリ系のセラミックス圧電材料」について、本件訂正後の「圧電定数d33が250pC/N以上のニオブ酸ナトリウムカリウム系のセラミックス圧電材料」に限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
エ 訂正事項1-4の訂正は、本件訂正前の請求項1の「前記フロントマス」について、本件訂正後の「前記バックマスの断面よりも大きい断面となる」に限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
オ 訂正事項1-5の訂正は、本件訂正前の請求項1の「前記バックマス」について、本件訂正後の「前記フロントマスよりも重く形成され」ていることを限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
カ(ア) 訂正事項1-6の訂正は、本件訂正前の請求項1について、次のaからcに示す限定をするものである。
a 「前記駆動部の厚さは前記振動子全長の1/3未満であ[る]」ものから、本件訂正後の「前記駆動部の厚さは前記振動子全長の21%~31%であ[る]」ものに限定すること。
b 「前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の1/3を超えるものであ[る]」ものから、本件訂正後の「前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の34%~44%であ[る]」ものに限定すること。
c 「バックマスの厚さ」について、本件訂正後の「駆動部の厚さよりも大き[い]」ものに限定すること。
(イ) したがって、訂正事項1-6の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
キ 訂正事項1-7の訂正は、本件訂正前の請求項1の「ボルト締めランジュバン型振動子」について、「前記駆動部の中心部が超音波振動の節部となり、前記フロントマス及び前記バックマスの各々の端面が超音波振動の腹部となる」ものに限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2) 訂正事項2
訂正事項2の訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(3) 訂正事項3
訂正事項3の訂正は、訂正事項2により請求項2を削除したことに伴い、請求項3が引用する請求項を請求項1又は2から請求項1に訂正するものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(4) 訂正事項4
訂正事項4の訂正は、訂正事項2により請求項2を削除したことに伴い、請求項5が引用する請求項を請求項1~4から請求項1、3又は4に訂正するものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
2 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
前記訂正事項1~4の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当しないから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書等は、特許権の設定の登録がされた時点での願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下では、それぞれ、「本件特許明細書」、「本件特許請求の範囲」及び「本件特許図面」といい、総称して「本件特許明細書等」という。)である。
(1) 訂正事項1
ア 訂正事項1-1において、「前記フロントマス」について「先細り形状のホーン部を有しない」と訂正することは、次の(ア)及び(イ)に示す、本件特許明細書の段落【0027】及び本件特許図面【図1】~【図3】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-1の上記訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる(下線は当合議体が付した。以下同様である。)。
(ア) 段落【0027】
「【0027】
フロントマス21(前面板)はボルト締めランジュバン型振動子11における前端側に配置されており、その前面26から超音波を放射するようになっている。バックマス22(裏打板)はボルト締めランジュバン型振動子11における後端側に配置されている。なお、本実施形態においては、フロントマス21が25mm角の断面矩形状に形成されている一方、バックマス22が直径25mmの断面円形状に形成されている(図2参照)。」
(イ) 【図1】~【図3】
「【図1】
[図:0001416448000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001416448000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001416448000003.jpg]
」
イ 訂正事項1-2において、「ランジュバン型振動子」について「超音波の送受信により物理量の計測を行う超音波計測用機器のための」ものに訂正することは、次の(ア)、(イ)及び(ウ)に示す、本件特許明細書の段落【0021】、【0039】及び【0064】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-2の上記訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
(ア) 段落【0021】
「【0021】
請求項5に記載の発明は、超音波の送受信により物理量の計測を行う機器であって、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のボルト締めランジュバン型振動子を1つまたは複数含んで構成された超音波計測用機器をその要旨とする。」
(イ) 段落【0039】
「【0039】
図4、図5には、実施形態のボルト締めランジュバン型振動子11を用いて構成された魚群探知機用センサ41が示されている。この魚群探知機用センサ41は、複数のボルト締めランジュバン型振動子11を同じ方向に向けてゴムモールドした構造を有している。より具体的に説明すると、この魚群探知機用センサ41における容器(ゴムモールド部)は、容器本体42と蓋部43とを備えている。その容器本体42の底部45は音響整合層を兼ねており、その底部45の上には4つのボルト締めランジュバン型振動子11がフロントマス21側を下方に向けるようにして接合固定されている。また、各ボルト締めランジュバン型振動子11における電極板33のタブ部には、図示しない電線が電気的に接続されている。それらの電線は、ケーブル44を介してセンサ外部に引き出されており、発振器等を含む駆動制御装置等や電源装置(いずれも図示略)に電気的に接続されている。そして、このような構造の魚群探知機用センサ41によると、駆動制御装置からの駆動信号に基づき、4つあるボルト締めランジュバン型振動子11が同時に駆動され振動を開始する。すると、各ボルト締めランジュバン型振動子11の発した超音波が容器本体42の底部45に伝達され、容器の底面から外部に放射されるようになっている。また、先に放射された超音波の反射波が容器本体42の底部45を介して各ボルト締めランジュバン型振動子11に伝達され、検知信号として駆動制御装置に出力されるようになっている。」
(ウ) 段落【0064】
「【0064】
・上記実施形態では、ボルト締めランジュバン型振動子11を用いて魚群探知機用センサ41を構成した例を挙げたが、当該振動子11を用いて魚群探知機用センサ41以外の超音波計測用機器(例えば空中超音波センサ、超音波レベル計、超音波流量計、超音波濃度計、超音波気泡検知センサ、超音波ノッキングセンサ等)を構成しても勿論よい。」
ウ 訂正事項1-3において、「ニオブ酸アルカリ系のセラミックス圧電材料」について「圧電定数d33が250pC/N以上のニオブ酸ナトリウムカリウム系のセラミックス圧電材料」に訂正することは、次の(ア)及び(イ)に示す、本件特許明細書の段落【0031】及び【0033】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-3の上記訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
(ア) 段落【0031】
「【0031】
ニオブ酸アルカリ系のセラミックス圧電材料の好適例としては、ペロブスカイト構造を持つ、ニオブ酸カリウムとニオブ酸ナトリウムの固溶体であるニオブ酸カリウムナトリウム系(KNN系)のセラミックス圧電材料などがある。KNN系のセラミックス圧電材料とは、少なくともK(カリウム)、Na(ナトリウム)、Nb(ニオブ)を主な金属成分として含むものをいい、その組成中にはPb(鉛)をはじめとする他の有毒有害な元素は殆どあるいは全く含有されていない。このようなKNN系のセラミックス圧電材料は、K(カリウム)やNa(ナトリウム)のほかに、Li(リチウム)等のアルカリ金属を含んでいてもよく、またNb(ニオブ)のほかに、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ta(タンタル)、Sb(アンチモン)等のアルカリ土類金属を含んでいてもよい。さらに、KNN系のセラミックス圧電材料は、少量のBi(ビスマス)、Fe(鉄)、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)等を含んでいてもよい。」
(イ) 段落【0033】
「【0033】
ここで、Biの添加量(mol比)をv、Feの添加量(mol比)をwとしたとき、0.03≦x≦0.045、0.5≦y≦0.58、0.03≦z≦0.045、0.006≦v<w≦0.010の範囲を満たす組成を有するものとしている。このような組成範囲を満たすKNN系のセラミックス圧電材料とした場合には、良好な圧電特性(例えば、圧電定数d33が250pC/N以上、キュリー温度Tcが330℃以上)や、良好な電気的特性(例えば、径方向の電気機械結合係数Kpが0.44以上、比誘電率ε33T/ε0が1390以上、誘電損失tanδが0.03以下)が得やすくなる。さらに、0.007≦v<w≦0.009の組成範囲を満たすものとした場合には、圧電定数d33が270pC/N以上、キュリー温度が340℃以上、径方向の電気機械結合係数Kpが0.47以上、比誘電率ε33T/ε0が1450以上、誘電損失tanδが0.25以下といった、より良好な特性を得ることが可能となる。」
エ 訂正事項1-4において、「前記フロントマス」について「前記バックマスの断面よりも大きい断面となる」と訂正することは、前記ア(ア)で示した、本件特許明細書の段落【0027】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-4の上記訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
オ 訂正事項1-5において、「前記バックマス」について「前記フロントマスよりも重く形成され」と訂正することは、次の(ア)及び(イ)に示す、本件特許明細書の段落【0008】及び【0054】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-5の上記訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
(ア) 段落【0008】
「【0008】
上記課題に鑑みて本願発明者らが鋭意研究を行い、数ある無鉛のセラミックス圧電材料のなかでもニオブ酸アルカリ系のセラミックス圧電材料が好適であるとの予測のもとに、当該材料で形成された圧電素子を従来どおり2枚用いて駆動部を構成したところ、期待するほど好適な性能が得られなかった。そこで本願発明者らはさらに試行錯誤を行った末、圧電素子の枚数を2枚よりも多くすること及びバックマスをフロントマスよりも重くすることにより、所望とする好適な性能が得られることを新規に知見し、最終的に下記の発明を想到するに至ったのである。」
(イ) 段落【0054】
「【0054】
(4)本実施形態では、振動子全長L1が共振周波数の半波長λ/2の長さに相当するものにおいて、駆動部31の厚さT2が振動子全長L1の1/3未満に抑えられていることから、駆動部31全体を振動の節部F1の付近に配置することが容易になる。ゆえに、駆動部31における振幅を抑えることができ、圧電素子32と電極板33との接合界面に剥がれ等が生じにくくなる。また、駆動部31を構成している各圧電素子32の厚さが薄くなることで電界が大きくなり、その結果、振動変位が増大して送波音圧が高くなる。また、振動子全長L1に占めるフロントマス21の厚さの比率が大きくなることで、相対的にバックマス22を重くした場合であっても振動のバランスがとりやすくなり、フロントマス21側の振幅をより確実に大きくすることができる。」
カ(ア) 訂正事項1-6のうち、次のa(a)及び(b)に示す訂正事項は、次のb(a)及び(b)に示す、本件特許明細書の段落【0035】及び【0037】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-6の上記訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
a 訂正事項
(a) 「前記駆動部の厚さは前記振動子全長の1/3未満であ[る]」ものから、本件訂正後の「前記駆動部の厚さは前記振動子全長の21%~31%であ[る]」ものに限定すること。
(b) 「前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の1/3を超えるものであ[る]」ものから、本件訂正後の「前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の34%~44%であ[る]」ものに限定すること。
b 明細書の記載箇所
(a) 段落【0035】
「【0035】
フロントマス21の厚さT3は、振動子全長L1の1/3を超えるものであることが好ましく、振動子全長L1の34%~44%であることがより好ましく、ここでは約16mm(振動子全長L1の約38%)とされている。」
(b) 段落【0037】
「【0037】
また、4枚分の圧電素子32及び4枚分の電極板33の厚さの総和である駆動部31の厚さT2は、振動子全長L1の1/3未満であることが好ましく、振動子全長L1の21%~31%であることがより好ましく、ここでは約11mm(振動子全長L1の約26%)とされている。ちなみに、各圧電素子32の厚さはいずれも2.5mm程度であり、各電極板33の厚さはそれらよりもかなり薄く0.2mm程度となっている。」
(イ) 訂正事項1-6のうちの残りの訂正事項である、(c)「バックマスの厚さ」について、本件訂正後の「駆動部の厚さよりも大き[い]」ものに限定することは、次に示す、本件特許明細書の段落【0036】並びに前記カ(ア)b(b)で示した段落【0037】及び【図1】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-6のうちの上記(c)の訂正事項は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
「【0036】
バックマス22の厚さT1は、振動子全長L1の1/3前後であることが好ましく、振動子全長L1の30%~40%であることがより好ましく、ここでは約15mm(振動子全長L1の約36%)とされている。なお、バックマス22の厚さT1は、上記のようにフロントマス21の厚さT3よりも若干小さいことが好適である。」
キ 訂正事項1-7において、「ボルト締めランジュバン型振動子」について「前記駆動部の中心部が超音波振動の節部となり、前記フロントマス及び前記バックマスの各々の端面が超音波振動の腹部となる」と訂正することは、次に示す、本件特許明細書の段落【0038】及び前記ア(イ)で示した【図1】の記載に基づくものであるから、訂正事項1-7の上記訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
「【0038】
図1に示されるように、本実施形態のボルト締めランジュバン型振動子11の場合、振動子長さ方向における中間点である駆動部31の中心部、より具体的にいうと2層めの圧電素子32及び電極板33と、3層めの圧電素子32及び電極板33との界面の部分に、超音波振動の節部F1がくるように設計されている。また、振動子における両端部(フロントマス21及びバックマス22の各々の端面)に、超音波振動の腹部H1がくるように設計されている。」
ク 前記ア~キの検討のとおりであるから、訂正事項1の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
(2) 訂正事項2
訂正事項2の訂正は、請求項2を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
(3) 訂正事項3及び4
訂正事項3及び4の訂正は、いずれも、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項3及び4の訂正は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
3 独立特許要件
この特許異議の申立てにおいては、全請求項である請求項1~6について特許異議の申立てがされているから、本件訂正後における請求項1、3~6に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 小括
前記1~3において検討した訂正要件についての当合議体の判断をまとめると、訂正事項1~4の訂正は、いずれも訂正要件を満たすものであるから、本件訂正は適法なものである。
よって、前記結論のとおり、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第4 令和6年3月27日付け取消理由通知書において通知した取消理由の概要
令和6年3月27日付け取消理由通知書において通知した取消理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
取消理由(進歩性の欠如)
本件特許の請求項1、3~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において発行された、下記の文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
記
引用文献3: 特開2000-350964号公報(主引用例)
甲1号証 : 特開2003-259492号公報
甲2号証 : 特開2008-264773号公報
甲3号証 : 特開2014-111529号公報
甲4号証 : 米国特許出願公開第2007/0063618号明細書
甲5号証 : 国際公開第2013/179776号
甲6号証 : 特開2007-274191号公報
引用文献1: 特開平5-261341号公報
引用文献2: 特開2015-125110号公報
引用文献4: 特許第5499305公報
引用文献5: 実願平1-62731号(実開平3-3482号)のマイクロフィルム
引用文献6: 特開2010-264339号公報
引用文献7: 特開平10-277483号公報
引用文献8: 実公昭49-33188号公報
※甲1号証~甲6号証は、特許異議申立人が証拠方法として提出した文書である。以下では、各甲号証を文献の番号に従い「甲1文献」~「甲6文献」という。また、引用文献1~引用文献8は、当合議体において職権調査により発見したものである。
第5 当合議体の判断
1 本件訂正発明について
前記第3において説示したとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1、3~6に係る発明(以下では、請求項の番号に従って「本件訂正発明1」などという。またこれらを総称して「本件訂正発明」ということもある。)は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、3~6の記載は、前記第2の3に示したとおりである。
2 引用文献等の記載事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献3の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献3の記載事項
前記引用文献3(特開2000-350964号公報)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波振動を利用した洗浄機等に用いられる超音波の発生源として、或いはプラスチック溶着等の加工機として用いられるボルト締め振動子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種類のボルト締め振動子の構成は、図2に示すように、圧電セラミクス9、電気端子(電極板)4、前面板(金属ブロック)5、裏打板(金属ブロック)6、絶縁材7、ボルト8等の部品から構成されている。
【0003】ここで、圧電セラミクス9の厚さ方向両端面(電極面)には、電極(図示せず)が形成されている。従来では、この電極は、高真空の蒸着装置で銀等を圧電セラミクス9の電極面に蒸着して形成していた。」
「【図2】
[図:0001416448000004.jpg]
」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】圧電セラミクスへの電力供給は電極に接している電気端子、並びに前面板及び裏打板によって行われているが、これらの接触面は、同時に圧電セラミクスの振動を振動系全体に伝える境界面となっているため、これらの境界面に異物或いは空気層等の音響インピーダンスの異なる層があると振動電送ロスが大きくなり振動振幅或いは効率のばらつきが大きくなる等の問題点があった。
【0005】また、上述の電極の形成方法においては、高真空の空間で電極を形成するため、製造上のコスト面からも問題があった。
【0006】それ故に、本発明の課題は、振動効率に優れ、しかも低コストなボルト締めランジュバン型振動子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、それぞれ電極面に電極が形成されている偶数個の圧電セラミクスの同一極性面を向かい合わせ、この間に電極板を挟み込んで前記偶数個の圧電セラミクスを重ね合わせ、該重ね合わせた偶数個の圧電セラミクスを一対の金属ブロックで挟み込み、該金属ブロック同士をボルトにて締結したボルト締めランジュバン型振動子において、前記電極としてカーボン電極を前記電極面に形成したことを特徴とするボルト締めランジュバン型振動子が得られる。
【0008】
【作用】本発明のボルト締めランジュバン型振動子に使用される圧電セラミクスの電極面に形成される電極としてカーボン電極を、例えば印刷(メッシュ印刷、転写印刷等)によって形成することで、電極と電極板、並びに電極と圧電セラミクスにおける接合面の密着性が向上し、この結果、振動振幅及び効率のばらつきが小さくなり、また、高真空空間を使用せずに常温常圧の大気中で電極を形成できるので、コストパフォーマンスに優れている。」
「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳しく説明する。図1は本発明の一実施形態に係るボルト締めランジュバン型振動子の縦断面図である。」
「【図1】
[図:0001416448000005.jpg]
」
「【0010】このボルト締めランジュバン型振動子1は、2個の圧電セラミクス2と、2枚の電極板4と、前面板(金属ブロック)5と、裏打板6と、絶縁材7、ボルト8とを含んで構成されている。
【0011】各圧電セラミクス2は、略リング状であり、その中心部に、挿通孔21を有している。また、各圧電セラミクス2の厚さ方向の両端面は、電極面と成っている。
【0012】各圧電セラミクス2の電極面には、それぞれ、カーボン電極3が形成されている。このカーボン電極3は、印刷(メッシュ印刷、転写印刷等)によって各圧電セラミクス2の電極面に形成されている。
【0013】各電極板4は、挿通孔41を有している。2枚の電極板4の内、一方の電極板4は、2個の圧電セラミクス2の間に挟み込まれ、他方の電極板4は、圧電セラミクス2と裏打板6の間に挟み込まれている。2個の圧電セラミクス2の間に電極板4を挟み込む際、2個の圧電セラミクス2は、同一極性面を向かい合わせて、電極板4を挟み込むように成っている。
【0014】前面板5は、略円柱状であり、その中央部には、絶縁材7の一端部を受け入れるための凹部51と、この凹部51に隣接し、ボルト8の一端部と螺合する雌ネジ52が形成されている。
【0015】裏打板6も、略円柱状であり、その中央部には、絶縁材7の他端部を受け入れるための凹部61と、この凹部61に隣接し、ボルト8の他端部と螺合する雌ネジ62が形成されている。
【0016】絶縁材7は、円筒状であり、交合に積み重ねられた圧電セラミクス2と電極板4の挿通孔21,41に挿通されている。そして、この交互に積み重ねられた圧電セラミクス2と電極板4を、前面板5と裏打板6で挟み込む際に、絶縁材7の一端部は、前面板5の凹部51に嵌入し、絶縁材7の他端部は、裏打板6の凹部61に嵌入する。
【0017】ボルト8は、圧電セラミクス2と電極板4の挿通孔21,41に挿通された絶縁材7に挿入されている。そして、この絶縁材7に挿入されたボルト8の一端部を前面板5の雌ネジ52に螺合し、他端部を裏打板6の雌ネジ62に螺合することにより、交合に積み重ねられた圧電セラミクス2と電極板4が、前面板5と裏打板6によって挟み込まれている。
【0018】以上の説明から明らかなように、図2に示す従来のボルト締めランジュバン型振動子1の構成と異なる点として、本実施形態のボルト締めランジュバン型振動子1では、圧電セラミクス2の電極面には、カーボンペーストにてカーボン電極3が形成されている。従来では、前述した通り、電極は、高真空の蒸着装置で銀等の金属を電極面に蒸着することにより形成されていた。」
イ 引用発明の認定
引用文献3の【0018】に「図2に示す従来のボルト締めランジュバン型振動子1の構成と異なる点として、本実施形態のボルト締めランジュバン型振動子1では、圧電セラミクス2の電極面には、カーボンペーストにてカーボン電極3が形成されている。」と記載されていることから、図2に示す従来のボルト締めランジュバン型振動子1は、この点を除き、基本的な構成は、【図1】のものと共通することが理解される。
この点を踏まえて、前記アで示した摘記事項を総合すると、引用文献3には、図2の従来技術に係る発明として、次に示す発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「ボルト締めランジュバン型振動子1であって、(【0018】)
2個の圧電セラミクス2と、2枚の電極板4と、前面板(金属ブロック)5と、裏打板(金属ブロック)6と、絶縁材7、ボルト8とを含んで構成されており、(【0010】、【0002】)
各圧電セラミクス2は、略リング状であり、その中心部に、挿通孔21を有しており、また、各圧電セラミクス2の厚さ方向の両端面は、電極面となっており、(【0011】)
各電極板4は、挿通孔41を有しており、2枚の電極板4の内、一方の電極板4は、2個の圧電セラミクス2の間に挟み込まれ、他方の電極板4は、圧電セラミクス2と裏打板6の間に挟み込まれており、2個の圧電セラミクス2の間に電極板4を挟み込む際、2個の圧電セラミクス2は、同一極性面を向かい合わせて、電極板4を挟み込むようになっており、(【0013】)
前面板5は、略円柱状であり、その中央部には、絶縁材7の一端部を受け入れるための凹部51と、この凹部51に隣接し、ボルト8の一端部と螺合する雌ネジ52が形成されており、(【0014】)
裏打板6も、略円柱状であり、その中央部には、絶縁材7の他端部を受け入れるための凹部61と、この凹部61に隣接し、ボルト8の他端部と螺合する雌ネジ62が形成されており、(【0015】)
絶縁材7は、円筒状であり、交合に積み重ねられた圧電セラミクス2と電極板4の挿通孔21,41に挿通されており、この交互に積み重ねられた圧電セラミクス2と電極板4を、前面板5と裏打板6で挟み込む際に、絶縁材7の一端部は、前面板5の凹部51に嵌入し、絶縁材7の他端部は、裏打板6の凹部61に嵌入するものであり、(【0016】)
ボルト8は、圧電セラミクス2と電極板4の挿通孔21,41に挿通された絶縁材7に挿入されており、この絶縁材7に挿入されたボルト8の一端部を前面板5の雌ネジ52に螺合し、他端部を裏打板6の雌ネジ62に螺合することにより、交合に積み重ねられた圧電セラミクス2と電極板4が、前面板5と裏打板6によって挟み込まれている、(【0017】)
ボルト締めランジュバン型振動子1。」
(2) 甲6文献の記載事項及び技術常識1の認定
ア 甲6文献の記載事項
前記甲6文献(特開2007-274191号公報)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0011】
以下、本発明を図1~7を参照しつつ詳しく説明する。
本発明の超音波振動子1は、前面板11と、裏打板12と、前面板11と裏打板12との間に配設された圧電セラミック体13とが、軸芯ボルト14により一体に固定されてなり、前面板11が樹脂製である。
この超音波振動子1は、所謂、ランジュバン型超音波振動子であり、従来は金属ブロックにより構成されていた前面板11が樹脂製であることを特徴とする。」
「【図1】
[図:0001416448000006.jpg]
」
「【図2】
[図:0001416448000007.jpg]
」
「【図3】
[図:0001416448000008.jpg]
」
「【0024】
圧電セラミック成形体は、前面板11の超音波放射面111とは反対の面と裏打板12の一端面との間、又は板状体142を備える軸芯ボルト14の場合は、この板状体142の他面と裏打板12の一端面との間、に1枚のみ挟持され、圧接されて圧電セラミック体13が構成されていてもよいが、通常、複数の圧電セラミック成形体が挟持され、圧接されて圧電セラミック体13となっている(図1~3参照)。このように複数の圧電セラミック成形体を用いるのは、実用的に十分な出力を得ようとして高電圧を印加した場合に、過大な引張応力には耐えられない圧電セラミック成形体に亀裂が発生することを防止するためである。複数の圧電セラミック成形体が挟持され、圧接される場合、その枚数は特に限定されず、圧電セラミック成形体を構成する圧電セラミックの種類、並びに超音波振動子の用途及び所要出力等により設定することが好ましい。この枚数は2~10枚とすることができ、2~8枚、特に2~6枚とすることが好ましい。」
「【0033】
本発明の超音波機器は、本発明の超音波振動子を備える。この超音波機器は特に限定されず、例えば、超音波プローブ、魚群探知機、超音波距離計、超音波流量計、超音波速度計、超音波探傷機、超音波洗浄機及び水中音波探知機等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
実施例1
断面円形の棒状体141の一端側と他端側とにネジが螺設され、この棒状体141の一端側寄りに棒状体141の軸芯方向と直交するように断面円形の板状体142が固定されてなるステンレス鋼製の軸芯ボルト14の一端側から、中心部に貫通孔131を有する円板形状の4枚の圧電セラミック成形体と、ベリリウム―銅合金製であり、中心部に開口部を有し、且つ断面円形の4枚の電極板132とを、1枚目の電極板132から交互に挿通させた。その後、軸芯ボルト14の他端側からアルミニウム製の裏打板12を嵌め込み、軸芯ボルト14の板状体142の他面と裏打板12の一端面との間で、圧電セラミック成形体と電極板132とを圧接させて組立体20を作製した。次いで、軸芯ボルト14の一端側からアクリル樹脂製の前面板11を嵌め込んで組み付け、軸芯ボルト14の板状体142の一面と、前面板11の超音波放射面111とは反対の面とを圧接させ、超音波振動子1を製造した。
尚、前面板11の長さは、共振周波数22.8kHzに基づき、SONIC社製、型式「R220」により測定した音速値及び文献での音速値をもとに、下式より算出される波長λの1/4となる21.2mmとした。
λ=V/f
λ;波長、V;音速、f;共振周波数
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の超音波振動子は、特に水又は空気等の媒体に超音波を放射するとき、並びにこれらの媒体からの超音波を受信するときに特に有用であり、前記の各種の超音波機器に組み込んで用いることができる。これらの超音波機器は、魚群探知、距離測定、流量測定、速度測定、非破壊検査、洗浄及び水中音波探知等の多くの用途において用いることができる。」
イ 技術常識1の認定
前記アに摘記した事項に例示されるように、次に示す技術事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識1」という。)。
[技術常識1]
「ランジュバン型超音波振動子を備える超音波機器は、例えば魚群探知機、超音波距離計、超音波流量計、超音波速度計又は超音波洗浄機等の多くの用途において用いることができること。」
(3) 引用文献4の記載事項及び技術常識2の認定
ア 引用文献4の記載事項
前記引用文献4(特許第5499305公報(2014年5月11日発行))には、次に摘記する事項が記載されている。
「【請求項1】
組成式{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-zSbz)O3で表され、添加物である金属元素としてBi及びFeを含む圧電磁器組成物であって、Biの添加量(mol比)をv、Feの添加量(mol比)をwとしたとき、下記の関係式、
0.03≦x≦0.045、0.5≦y≦0.58、0.03≦z≦0.045、0.006≦v<w≦0.010
の範囲を満たす組成を有するとともに、
圧電定数d33が250pC/N以上である
ことを特徴とする圧電磁器組成物。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を圧電磁器組成物に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の圧電磁器組成物10を示す斜視図である。圧電磁器組成物10は、表面及び裏面を有する円板状であり、直径15mm、厚さ1mmのサイズを有している。圧電磁器組成物10は、例えば超音波流量計を構成するための超音波センサとして使用される。
【0019】
本実施の形態の圧電磁器組成物10は、ニオブ酸カリウムナトリウム系(ニオブ酸アルカリ系)の圧電磁器組成物であり、ペロブスカイト構造の結晶相を含んで構成されている。より詳しくは、圧電磁器組成物10は、以下の組成式(1)で表され、添加物である金属元素としてBi(ビスマス)及びFe(鉄)を含む磁器組成物である。
{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-zSbz)O3・・・(1)」
「【0040】
・上記実施の形態の圧電磁器組成物10は、超音波流量計の超音波センサとして用いていたが、これに限定されるものではない。具体的には、例えば液体中を伝搬する超音波の減衰率を測定し、その減衰率に基づいて気泡の有無を判定する気泡検知センサや、超音波の減衰率に基づいて液体の濃度を検出する超音波濃度計などに圧電磁器組成物10を用いてもよい。また、圧電磁器組成物10は、上記の用途以外に、エンジンのノッキングセンサ、圧電アクチュエータ、超音波洗浄機の超音波振動子などに用いてもよい。なお、本実施の形態の圧電磁器組成物10は、円板状であったが、用途に応じて素子の形状やサイズは適宜変更してもよい。」
イ 技術常識2の認定
前記アに摘記した事項に例示されるように、次に示す技術事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識2」という。)。
[技術常識2]
「超音波センサや超音波洗浄機の超音波振動子等に用いられる圧電素子の材料としての、ニオブ酸カリウムナトリウム系(ニオブ酸アルカリ系)の圧電磁器組成物であって、圧電定数d33が250pC/N以上である圧電磁器組成物」
(4) 甲1文献等の記載事項及び技術常識3の認定
ア 各文献の記載事項
(ア) 甲1文献の記載事項
前記甲1文献(特開2003-259492号公報)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】ランジュバン型超音波振動子aとしては、図8に示すように、一対の金属製振動ブロックeとfとの間に複数の圧電素子bと正極端子板c1と負極端子板c2とを交互に積層した圧電振動素子dを配置し、これらを中心ボルトgによって一体に結合したボルト締めランジュバン型超音波振動子が知られている。この超音波振動子aの全長は、所定の共振周波数の1/2波長またはその整数倍の長さに略一致するように設定される。」
「【図8】
[図:0001416448000009.jpg]
」
(イ) 甲2文献の記載事項
前記甲2文献(特開2008-264773号公報)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【図2】
[図:0001416448000010.jpg]
」
「【0023】
上記「圧電セラミック体4」は、交流電圧を印加することにより、振動し、超音波を発生させる部材である。この圧電セラミック体4を構成する圧電セラミック成形体の形成に用いられる圧電セラミックは特に限定されず、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられる。また、圧電セラミック体4の形状は特に限定されず、円柱形、円板形、断面が正方形の角柱、断面が正方形の板状体等とすることができる。更に、圧電セラミック体4は、通常、複数の圧電セラミック板(圧電セラミック成形体と導電層等の電極とを備える。)が積層されてなる積層体が、前面部材1と裏打部材3との間に挟持され、圧接されて形成される。このように複数の圧電セラミック板を用いるのは、実用的に十分な出力を得ようとして高電圧を印加した場合に、過大な引張応力には耐えられない圧電セラミック体に亀裂が発生することを防止するためである。複数の圧電セラミック板が挟持され、圧接される場合、その枚数は特に限定されず、圧電セラミック成形体を構成する圧電セラミックの種類、並びに超音波振動子の用途及び所要出力等により設定することが好ましい。この枚数は2~10枚とすることができ、2~8枚、特に2~6枚とすることが好ましい。」
(ウ) 甲6文献の記載事項
甲6文献の記載事項については、前記(2)アで摘記した、特に段落【0024】及び【0034】の記載を参照。
(エ) 引用文献5の記載事項
前記引用文献5(実願平1-62731号(実開平3-3482号)のマイクロフィルム)には、次に摘記する事項が記載されている。
4頁14行~5頁12行
「第1図において、チタン酸ジルコン酸鉛系磁器より円環状に製作され両面に銀電極(図示しない)が生成され厚み方向に分極された4個の環状圧電素子1aは、機械的に直列、電気的には並列に、正極側には外側突出電極端子板1bを、負極側には第3図に示される外側突出部がなくねじ孔1C’を備えたねじ式電極端子板1cを各々介して積層され、電歪要素1を形成している。前記電歪要素1の一方の外端面に、中央部にねじ孔2aを備えたアルミニウム合金からなる第1の金属ブロツク2、他方の外端面に貫通孔3aを備えたアルミニウム合金からなる第2の金属ブロツク3を各々当接しこれら電歪要素1と第1、第2の金属ブロツク2、3は一端ねじ部4aを第1の金属ブロツク2のねじ孔2aと螺合され、前記電歪要素1及び第2の金属ブロツク3の中央孔を各々挿通してナット5と螺合された中心ボルト4によって一体に締結されボルト締めランジユバン型振動子を構成している。」
「【第1図】
[図:0001416448000011.jpg]
」
イ 技術常識3の認定
前記アに摘記した事項に例示されるように、次に示す技術事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識3」という。)。
[技術常識3]
「ランジュバン型超音波振動子における設計上の選択肢として、圧電素子を4枚以上用いること。」
(5) 甲6文献等の記載事項及び技術常識4の認定
ア 各文献の記載事項
(ア) 甲6文献の記載事項
甲6文献の記載事項については、前記(2)アで摘記した【図1】から【図3】の記載を参照。
(イ) 引用文献6の記載事項
前記引用文献6(特開2010-264339号公報)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0026】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、本実施形態1の超音波洗浄装置100を示す。また、図2に、超音波洗浄装置100を構成する超音波振動子110を示し、図3に、振動板130を示す。本実施形態1の超音波洗浄装置100は、超音波振動子110と、この超音波振動子110が接合(接着)された振動板130から構成されている。
【0027】
このうち超音波振動子110は、フロントマス111と、リアマス115と、2つの圧電素子(第1圧電素子121及び第2圧電素子122)と、2つの電極板(第1電極板125及び第2電極板126)と、ボルト129及び六角ナット128等から構成されたランジュバン型振動子である。
このうちフロントマス111は、後述する圧電素子121,122で発生した超音波を振動板130に伝達する部材であり、金属からなる。このフロントマス111は、先端側(図1及び図2中、上方)に位置し、概略四角柱状をなす先端側部112と、この先端側部112の後端側(図1及び図2中、下方)に位置し、円柱状をなす後端側部113とから一体的に形成されている。なお、フロントマス111の後端側中央には、ボルト129が螺合するネジ孔(不図示)が設けられている。」
「【図1】
[図:0001416448000012.jpg]
」
「【図2】
[図:0001416448000013.jpg]
」
(ウ) 引用文献7の記載事項
前記引用文献7(特開平10-277483号公報)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0013】BLTは、円環状のリアマス1と、その中央部にめねじ部2aを有するフロントマス2との間に、負の電極板3a(ニッケル、Cu-Ni-Zn、SUS、洋白等の薄板状の金属片からなる),円環状の圧電セラミック4b,正の電極板3b(ニッケル、Cu-Ni-Zn、SUS、洋白等の薄板状の金属片からなる),そして円環状の圧電セラミック4aが順に重ね合わされた構成となっている。そして、両端に有効ねじ部を有するスタッドボルト5が、六角ナット6,リアマス1,圧電セラミック4a,4bおよび電極板3a,3bを貫通し、さらにフロントマス2のめねじ部2aにねじ込まれた構造となっている。そして、この状態でさらにそのスタッドボルト5を介して六角ナット6の締め付けにより、リアマス1、電極板3a,3b、圧電セラミック4a,4bおよびフロントマス2が一体化されている。」
「【図1】
[図:0001416448000014.jpg]
」
イ 技術常識4の認定
前記アに摘記した事項に例示されるように、次に示す技術事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識4」という。)。
[技術常識4]
「フロントマス、リアマス、圧電素子及び電極からなるランジュバン型超音波振動子における設計上の選択肢として、フロントマスの断面をリアマスの断面より大きくすること。」
(6) 甲2文献の記載事項及び甲2文献技術事項の認定
ア 甲2文献の記載事項
前記甲2文献(特開2008-264773号公報)には、前記(4)ア(イ)で摘記した段落【0023】及び【図2】の記載に加えて、次に摘記する事項が記載されている。
「【請求項1】
超音波放射面を有する前面部材と、側面部材と、裏打部材と、圧電セラミック体とを、軸線方向に一体に備える超音波振動子であって、
上記側面部材の一端側が上記前面部材の上記超音波放射面とは反対側に取り付けられ、上記裏打部材の一端側が該側面部材の他端側に取り付けられ、上記圧電セラミック体は該前面部材と該裏打部材との間に介装されていることを特徴とする超音波振動子。
(中略)
【請求項6】
上記前面部材の構成材料は、上記裏打部材の構成材料よりも、振動の内部損失が小さくなる材料が適用されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項7】
上記前面部材を伝わる音速が、上記裏打部材を伝わる音速よりも速くなるように、上記前面部材及び上記裏打部材を構成する材料が選ばれていることを特徴とする請求項6に記載の超音波振動子。
【請求項8】
上記前面部材は、上記裏打部材の構成材料よりも、密度が小さい材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図1~図13を参照しつつ詳しく説明する。
本発明の超音波振動子101は、図2のように、前面部材1と、一端側が前面部材1の超音波放射面11とは反対側に取り付けられた側面部材2と、一端側が側面部材2の他端側に取り付けられた裏打部材3と、前面部材1の超音波放射面11とは反対側の端面と裏打部材3の一端側の端面との間に介装された圧電セラミック体4とを、軸線方向に一体に備える。
この超音波振動子101は、所謂、ランジュバン型超音波振動子であり、従来は前面部材1と一体であった側面部材2が、別体として前面部材1に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
上記「前面部材1」は、超音波放射面11を有し、この超音波放射面11から媒体に向けて超音波が放射される。他の物品等と接触しても欠損等し難い十分な強度を有する前面部材1であることがより好ましいため、前面部材1は金属製である。この金属の種類は特に限定されず、各種の金属を用いることができる。金属としては、金属のうちでは圧電セラミック体4とρC(密度×音速)が大きく相違しない、所謂、軽金属が好ましい。この軽金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、チタン、及びそれらの合金等の軽金属が挙げられるが、材料強度、ρC、材料入手の容易性等に鑑み、チタン、アルミニウム、及びこれらの軽金属を含有する合金等を使用することが多い。また、ρCが小さいと、振動子を小型化することができるという利点もある。更に、クロムめっきが施されたステンレス鋼等からなる前面部材1とすることもできる。」
「【0027】
また、本発明のさらに他の実施態様としては、図12及び図13に示す超音波振動子103を例示することができる。
すなわち、この超音波振動子103では、図12に示すように、前面部材1aの構成材料は、裏打部材3aの構成材料よりも、振動の内部損失(振動の伝播ロス)の小さい材料が適用されている。具体的には、前面部材1aは、当該前面部材(媒質)1a中を伝わる音速cが、6260m/sec程度になる例えばアルミニウム材料(例えばA5052Pなどのアルミニウム合金)で構成されている。一方、裏打部材3aは、当該裏打部材(媒質)3a中を伝わる音速cが、5790m/sec程度になる例えばSUS304などのステンレス鋼で形成されている。
【0028】
したがって、超音波振動子103では、上記のように前面部材1aが裏打部材3aよりも振動の伝播ロスの少ない材料(例えば上記音速cの速い材料)で構成されていることで、図12に示すように、圧電セラミック体4の発生させる振動を、前面部材1a先端の超音波放射面11側に効率良く伝播することができる。これにより、超音波振動子103によれば、裏打部材3aの後端側に生じる振動エネルギV2よりも実質的に大きな振動エネルギV1を所望の超音波放射面11側に発生させることができる。
【0029】
また、超音波振動子103では、裏打部材3aの構成材料である上記ステンレス鋼よりも、密度(比重)が小さい材料である上記のアルミニウム材料を前面部材1aの構成材料として積極的に適用している。具体的には、前面部材1aを構成するアルミニウム材料の密度ρは、約2.7g/cm3であり、一方、裏打部材3aを構成するステンレス鋼(SUS304など)の密度ρは、7.93g/cm3程度である。したがって、超音波振動子103によれば、容易に、裏打部材3aよりも前面部材1aを軽量にすることが可能なので、この構造の場合、図12に示すように、圧電セラミック体4の発生させる振動を基に、裏打部材3a側よりも、前面部材1a側をより大きく変位させることができ、超音波放射面11で、振幅の大きな安定した振動を得ることができる。」
「【図12】
[図:0001416448000015.jpg]
」
「【0033】
既述したように、超音波振動子103は、この超音波振動子本体の側面部分を、前述したように前面部材1a及び裏打部材3aとは別体の側面部材2aにより構成したことで、製品として要求される所望の機能的要素を、より細かく分けて部材ごとに割り当てることができる。これにより、各部材(前面部材1a、側面部材2a及び裏打部材3a)にとってより適した構成材料を選択することが可能となり、選択した材料の特性を生かしたかたちで個々の部材を構成することができる。
【0034】
なお、既述した構造の超音波振動子103では、主に、図2に示した超音波振動子101の前面部材1、側面部材2及び裏打部材3に代えて、前面部材1a、側面部材2a及び裏打部材3aを適用した態様を図12、図13を用いて図示しているが、無論、図3、図8、図10に示した超音波振動子が備える前面部材1、側面部材2及び裏打部材3を、上記した前面部材1a、側面部材2a及び裏打部材3aに代えた態様の超音波振動子を構成することもできる。」
イ 甲2文献技術事項の認定
前記アで示した摘記事項を総合すると、甲2文献には、次の技術事項(以下「甲2文献技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲2文献技術事項]
「前面部材1aと、裏打部材3aと、圧電セラミック体4とを、軸線方向に一体に備えたランジュバン型超音波振動子103において、(【0009】、【0029】、【0034】、【図12】)
超音波振動子103では、裏打部材3aの構成材料である上記ステンレス鋼よりも、密度(比重)が小さい材料である上記のアルミニウム材料を前面部材1aの構成材料として積極的に適用することにより、(【0029】)
裏打部材3aよりも前面部材1aを軽量にすることが可能なので、圧電セラミック体4の発生させる振動を基に、裏打部材3a側よりも、前面部材1a側をより大きく変位させることができ、超音波放射面11で、振幅の大きな安定した振動を得ることができること。(【0029】、【請求項1】、【請求項8】)」
(7) 引用文献8の記載事項及び技術常識5の認定
ア 引用文献8の記載事項
前記引用文献8(実公昭49-33188号公報)には、次に摘記する事項が記載されている。
第1頁第1欄「図面の簡単な説明」~第2欄13行
「図面の簡単な説明
第1図Aは従来のランジュバン型電歪振動子の縦断正面図、第1図Bはその片振幅の変位を示す線図、第2図A、B及び第3図A、Bはそれぞれ本案ランジュバン型電歪振動子の縦断正面図とその片振幅を示す線図である。
考案の詳細な説明
本案は特に超音波加工機等に使用される強力な超音波エネルギーを発生するランジュバン型電歪振動子に関するものである。
溶接、切削、塑性加工等の加工機に使用する超音波振動子はニッケル、フェライト等磁歪振動子に代って圧電電歪磁器を使用した電歪振動子が広く使用されるようになったが特に強力な超音波勢力を得るためには第1図に示すようチタン酸ジルコン酸鉛系化合物等圧電電歪材料によって製作し分極した環状の電歪素子1a、1bをそれら正極側を第1の電極板2aを介して当接せしめ機械的に直列、電気的には並列になるよう接続した一対と同じく電歪素子1c、1dをそれら正極側を第2の電極板2bを介して当接せしめ機械的に直列、電気的には並列になるよう接続した他の一対を第3の電極板2cを介して積層、電歪要素Pとし、上記正極側の第1の電極板2aと第2の電極板2bを接続、第3の電極板2cを負極とし、電歪要素Pの上下面に当接する第1の金属ブロック3、第2の金属ブロック4のいずれかと接続した後前記電歪要素Pの中心孔内壁と絶縁する絶縁管5を嵌挿した締付ボルト6をもって第1、第2の金属ブロック3、4間を締着したボルト締めランジュバン型電歪振動子を形成すると共に第1、第2の金属ブロック3と4を電気的に接続し、4個の電歪素子1a、lb、1c、1dを全部並列接続とした構造が使用されている。これは第1図Bに示される通り並列に接続された複数の電歪素子が振動子の所望超音波の半波長λ/2における変位零の位相を中心として積層されるから積層数に限度があり、それ以上の積層はロスを増大するため、更に大出力を要求される場合はこのように製作した複数の振動子を機械的、電気的に並列に接続して使用する必要があるので高価となり、また大きなスペースを取り装置を大型化する難点があった。」
「第1図
[図:0001416448000016.jpg]
」
イ 技術常識5の認定
前記アの摘記事項に例示されるように、次に示す技術事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識5」という。)。
[技術常識5]
「ボルト締めランジュバン型超音波振動子において、振動子全長が所望超音波の半波長であるλ/2に略一致するため、当該振動子の両端部が変位が最大となる位相にあり、また電歪要素の中心部分が変位零の位相にあること。」
(7) 引用文献2の記載事項及び引用文献2技術事項の認定
ア(ア) 引用文献2の記載事項
前記引用文献2(特開2015-125110号公報)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0022】
以下、本発明に係る送受波器を有する水中探知装置1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。水中探知装置1は、主に魚及び魚群等の物標を探知するためのものであって、漁船などの船舶の船底において、海中に露出するように固定されている。
【0023】
[水中探知装置の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る水中探知装置1の構成を示すブロック図である。水中探知装置1は、図1に示すように、送受波器2と、送受信装置3と、信号処理部4と、操作・表示装置5(表示部)とを備えている。
【0024】
送受波器2は、複数の超音波振動子10を有している。送受波器2では、各超音波振動子10が、電気信号から変換された超音波を所定のタイミング毎に水中へ送信するとともに、受信した超音波を電気信号に変換する。送受波器2の構成については、詳しくは後述する。」
「【0030】
[送受波器の構成]
図2は、送受波器2の構成を模式的に示す斜視図である。また、図3は、図2に示す送受波器2のフレーム部20の外周面21が平坦状になるように展開した展開図の一部を示す図であって、フレーム部20の外周面21に形成された複数の振動子用穴22の配置を模式的に示す図である。また、図4は、フレーム部20及びモールド部25に埋め込まれた状態の超音波振動子10を側方から視た部分断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図2以降の図面において、上と記載された矢印が指示する方向を上側又は上方、下と記載された矢印が指示する方向を下側又は下方、前と記載された矢印が指示する方向を前側又は前方、後と記載された矢印が指示する方向を後側又は後方、と称する場合もある。
【0031】
送受波器2は、図2に示すように、略円柱状に形成されている。送受波器2の外径は、例えば一例として、530mm程度である。送受波器2は、その中心軸が鉛直方向に沿った状態で海中に露出するように、船底等に固定される。送受波器2は、図2及び図4に示すように、フレーム部20と、モールド部25と、複数の超音波振動子10と、を備えている。
【0032】
フレーム部20は、金属によって構成された略円筒状の部材である。フレーム部20の外周面21には、図3及び図4に示すように、超音波振動子10が挿入される複数の振動子用穴22が形成されている。各振動子用穴22は、フレーム部20の外周面21から該フレーム部20の径方向内側に向かって延びるように形成されている。また、振動子用穴22は、該振動子用穴22の延びる方向に垂直な断面形状が、円形状となっている。
【0033】
図3を参照して、フレーム部20の外周面21には、上下方向に互いに所定の間隔をあけて直線状に配列された振動子用穴列23が、円周方向に等間隔に形成されている。複数の振動子用穴22は、上述のように配列された複数の振動子用穴列23によって、構成されている。複数の振動子用穴22は、上下方向及び円周方向のそれぞれにおいて、径方向外方から視て直線状に並ぶように形成されている。すなわち、複数の振動子用穴22は、格子状(マトリックス状)に配列されている。円周方向に隣接する振動子用穴22の中心点同士の間隔は、後述するグレーティングローブが発生しない程度の間隔(本実施形態では、超音波の半波長以下(0.5λ以下))となっている。
【0034】
超音波振動子10は、図4に示すように、振動子本体10aと、被覆部材19とを備えている。
【0035】
振動子本体10aは、フロントマス11(フロント部)、2つの圧電素子15a,15b、及びリアマス16(リア部)を有している。振動子本体10aは、フロントマス11、圧電素子15a,15b、及びリアマス16がボルト締めによって互いに固定された、いわゆるボルト締めランジュバン型振動子(BLT振動子)として設けられている。振動子本体10aでは、図4に示すように、リアマス16がフレーム部20に対して固定された状態で、送受波器2における径方向内側から径方向外側(図4における後方から前方)に向かって順に、リアマス16、圧電素子15b,15a、及びフロントマス11が配置された状態となる。
【0036】
フロントマス11は、例えばアルミニウム等の金属材料によって形成されたブロック状の部材であって、図4に示すように、後方(送受波器2の径方向内側)から前方(送受波器2の径方向外側)に向かって広がるように設けられている。フロントマス11の前側の端面は、超音波の送受波が行われる送受波面12として設けられている。また、フロントマス11の後側の端面は、フロントマス後端面13として設けられている。」
「【0040】
リアマス16は、圧電素子15a,15bよりも外径がやや大きく且つ長さが長い略円柱状に形成されている。リアマス16は、例えば一例として、ステンレス鋼(SUS)等の金属によって構成されている。リアマス16は、圧電素子15a,15bと同軸状となるように設けられ、前端面17が圧電素子15bの後端面に密着している。また、リアマス16の後端部には、フレーム部20に固定されたコネクタ18が接続されている。このコネクタ18は、圧電素子15a,15bに接続されたケーブル(図示省略)を介して圧電素子15a,15bに電圧を印加するためのものである。」
「【0043】
各超音波振動子10は、上述のように、複数の振動子用穴22のそれぞれに挿入されて固定されている。これにより、超音波振動子10は、送受波器2の径方向外側から視た配列が、複数の振動子用穴22の配列と同様になる。
【0044】
具体的には、複数の超音波振動子10は、図2に示すように、上下方向に所定の間隔をあけて直線状に配列された超音波振動子列9が、円周方向に等間隔に配列されることにより、フレーム部20に対して配列される。そして、各超音波振動子列9を構成する各超音波振動子10は、上下方向及び円周方向のそれぞれにおいて直線状に並ぶ格子状(マトリックス状)に配列される。円周方向に隣接する超音波振動子10の中心点同士の間隔は、超音波の半波長以下(0.5λ以下)となっている。このように、超音波振動子10は、特に円周方向において、比較的間隔を詰めて配列されている。
【0045】
モールド部25は、図2及び図4に示すように、フレーム部20の外周面側に設けられた略円筒状の部分である。モールド部25は、弾性及び電気的な絶縁性を有する材料によって構成された弾性部として設けられている。また、モールド部25に用いられる材料としては、水(海水)の音響インピーダンスに近い材料が好ましい。これにより、超音波振動子10からの超音波を、効率的に水中に伝えることができる。モールド部25に用いられる材料としては、例えば、発泡ウレタン、ゴム材料、エポキシ樹脂等、伸縮可能な材料が挙げられる。」
「【図2】
[図:0001416448000017.jpg]
」
「【図4】
[図:0001416448000018.jpg]
」
(イ) 引用文献2の記載から読み取れる事項
前記(ア)で摘記した引用文献2の【図2】の開示から、次に示す技術事項が読み取れる。
「超音波振動子10は、上下方向に沿って、配列され、同じ方向を向いていること。」
イ 引用文献2技術事項の認定
前記アで示した摘記事項を総合すると、引用文献2には、次に示す技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2技術事項]
「主に魚及び魚群等の物標を探知するための水中探知装置1であって、(【0022】)
水中探知装置1は、送受波器2を備え、(【0023】)
送受波器2は、フレーム部20と、モールド部25と、複数の超音波振動子10と、を備え、(【0031】)
フレーム部20の外周面21には、超音波振動子10が挿入される複数の振動子用穴22が形成され、(【0032】)
超音波振動子10は、振動子本体10aを備え、(【0034】)
振動子本体10aは、フロントマス11、圧電素子15a,15b、及びリアマス16がボルト締めによって互いに固定された、いわゆるボルト締めランジュバン型振動子(BLT振動子)として設けられ、(【0035】)
フロントマス11は、例えばアルミニウム等の金属材料によって形成され、(【0036】)
リアマス16は、例えば一例として、ステンレス鋼(SUS)等の金属によって構成され、(【0040】)
各超音波振動子10は、複数の振動子用穴22のそれぞれに挿入されて固定されており、これにより、超音波振動子10は、送受波器2の径方向外側から視た配列が、複数の振動子用穴22の配列と同様になり、(【0043】)、
超音波振動子10は、上下方向に沿って、配列され、同じ方向を向いており、(前記(ア)b)
モールド部25は、フレーム部20の外周面側に設けられた略円筒状の部分であって、弾性及び電気的な絶縁性を有する材料によって構成された弾性部として設けられ、(【0045】)
モールド部25に用いられる材料としては、ゴム材料が用いられる、(【0045】)
水中探知装置1」
3 本件訂正発明1について
(1) 本件訂正発明1と引用発明の対比
ア 発明の対象の点
「ボルト締めランジュバン型振動子」の発明である本件訂正発明1と「ボルト締めランジュバン型振動子1」の発明である引用発明は、共に「ボルト締めランジュバン型振動子」の発明である点において一致する。
イ フロントマス、バックマス、駆動部等の基本構成について
(ア) 次の引用発明の欄に記載した引用発明の各構成は、それぞれ、対応する本件訂正発明1の欄に記載した本件訂正発明1の構成に相当する。
<引用発明> <本件訂正発明1>
裏打板(金属ブロック)6 バックマス
前面板(金属ブロック)5 フロントマス
電極板4 電極板
圧電セラミックス2 圧電素子
ボルト8 締め付けボルト
(イ)a 前記(ア)で示した相当関係を踏まえると、引用発明においては、「2枚の電極板4の内、一方の電極板4は、2個の圧電セラミクス2の間に挟み込まれ、他方の電極板4は、圧電セラミクス2と裏打板6の間に挟み込まれて[いる]」から、引用発明における「2枚の電極板4」と「2個の圧電セラミクス2」(以下「引用発明の駆動部」という。)は全体として、本件訂正発明1における「圧電素子及び電極板を複数枚ずつ積層してなる駆動部」に相当する。
b そして、引用発明においては、「2個の圧電セラミクス2の間に電極板4を挟み込む」から、引用発明の「駆動部」は、「前面板(金属ブロック)5」と「裏打板(金属ブロック)6」の間に挟持されているといえる。
c また、引用発明においては、「各圧電セラミクス2は、略リング状であり、その中心部に、挿通孔21を有しており、また、各圧電セラミクス2の厚さ方向の両端面は、電極面となっており、」「各電極板4は、挿通孔41を有して[いる]」ところ、引用発明における「挿通孔21」及び「挿通孔41」は、本件訂正発明1における「駆動部を貫通する孔」に相当する。
d そして、引用発明においては、「ボルト8は、圧電セラミクス2と電極板4の挿通孔21,41に挿通された絶縁材7に挿入されており、この絶縁材7に挿入されたボルト8の一端部を前面板5の雌ネジ52に螺合し、他端部を裏打板6の雌ネジ62に螺合することにより、交合に積み重ねられた圧電セラミクス2と電極板4が、前面板5と裏打板6によって挟み込まれている」から、引用発明は「挿通孔21」及び「挿通孔41」に挿通された「ボルト8」により「前面板(金属ブロック)5」と「裏打板(金属ブロック)6」が締結された構造であるといえる。
e さらに、引用発明においては「前面板5は、略円柱状であ[る]」から、引用発明の「前面板5」は、「先細り形状のホーン部を有しない」ものといえる。
f(a) 前記a~eの検討結果をまとめると、本件訂正発明1と引用発明は、次の点において共通する。
「フロントマスとバックマスとの間に、圧電素子及び電極板を複数枚ずつ積層してなる駆動部が挟持され、前記駆動部を貫通する孔に挿通された締め付けボルトにより、先細り形状のホーン部を有しない前記フロントマスと前記バックマスとが締結された構造のランジュバン型振動子」である点。
(b) そして、本件訂正発明1と引用発明は、次の点において相違する。
本件訂正発明1の「ボルト締めランジュバン型振動子」は「超音波の送受信により物理量の計測を行う超音波計測用機器のための」ものであるのに対して、
引用発明の「ボルト締めランジュバン型振動子1」はこのような限定のない点。
ウ セラミックス圧電材料の材料と枚数
(ア) 引用発明は「2個の圧電セラミクス2」を含むところ、前記(イ)aの検討結果も踏まえると、「引用発明の駆動部」は、セラミックス圧電材料を用いて形成された圧電素子を2枚含んで構成されているといえる。
(イ)a そうすると、「前記駆動部は、圧電定数d33が250pC/N以上のニオブ酸ナトリウムカリウム系のセラミックス圧電材料を用いて形成された前記圧電素子を4枚以上含んで構成され[ている]」本件訂正発明1と引用発明は、次の点において共通する。
「駆動部は、セラミックス圧電材料を用いて形成された前記圧電素子を2枚以上含んで構成され[る]」点。
b そして、本件訂正発明1と引用発明は、次の点において相違する。
2枚以上の「セラミックス圧電材料を用いて形成された前記圧電素子」の材料と枚数について、
本件訂正発明1においては、材料が「無鉛材料」である「圧電定数d33が250pC/N以上のニオブ酸ナトリウムカリウム系のセラミックス圧電材料」であり、枚数が「4枚以上」であるのに対して、
引用発明においては、材料が明らかでなく、枚数は2枚である点。
エ フロントマスとバックマスの関係
(ア) 引用発明において、「前面板(金属ブロック)5」及び「裏打板(金属ブロック)6」を有し、「前面板5は、略円柱状であり」、「裏打板6も、略円柱状であり」、「交合に積み重ねられた圧電セラミクス2と電極板4が、前面板5と裏打板6によって挟み込まれている」から、前面板(金属ブロック)5」と「裏打板(金属ブロック)6」の断面積は等しいといえる。
(イ)a そうすると、「前記フロントマスは第1の金属材料を用いて前記バックマスの断面よりも大きい断面となるように形成され、前記バックマスは前記第1の金属材料よりも比重が大きい第2の金属材料を用いて前記フロントマスよりも重く形成され[る]」本件訂正発明1と引用発明は、次の点において一致する。
「前記フロントマスは第1の金属材料を用いて形成され、前記バックマスは第2の金属材料を用いて形成され「る」」点。
b そして、本件訂正発明1と引用発明は、次の点において相違する。
本件訂正発明1においては、「前記フロントマスは前記バックマスの断面よりも大きい断面となるように形成され、前記バックマスは前記フロントマスの構成材料の金属である第1の金属材料よりも比重が大きい第2の金属材料を用いて前記フロントマスよりも重く形成され[る]」のに対して、
引用発明においては、「前面板(金属ブロック)5」と「裏打板(金属ブロック)6」の材料の異同は不明であり、両者の断面積は等しく、両者の重量の軽重の関係は不明である点。
オ 素子の全長と各要素の厚さと超音波振動との関係
本件訂正発明1においては、次の(ア)に示すaからeまでの特定があるのに対して、引用発明においては、かかる特定がなく、後記の(イ)に示すaからeまでの点が不明である点において相違する。
(ア) 本件訂正発明1の特定事項
a 振動子全長は共振周波数の半波長の長さに相当すること。
b 前記駆動部の中心部が超音波振動の節部となり、前記フロントマス及び前記バックマスの各々の端面が超音波振動の腹部となること。
c 前記駆動部の厚さは前記振動子全長の21%~31%であること。
d 前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の34%~44%であること。
e 前記バックマスの厚さは前記駆動部の厚さよりも大きいこと。
(イ) 引用発明において特定の無い事項
a 振動子全長と共振周波数の波長の長さとの関係
b 超音波振動の節部と腹部の位置
c 引用発明の駆動部の厚さの振動子全長に対する比率
d 前面板(金属ブロック)5の厚さの振動子全長に対する比率
e 裏打板(金属ブロック)6の厚さと引用発明の駆動部の厚さとの関係
(2) 一致点及び相違点の認定
前記(1)の対比の結果をまとめると、本件訂正発明1と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点1~相違点4において相違すると認められる。
ア 一致点
「フロントマスとバックマスとの間に、圧電素子及び電極板を複数枚ずつ積層してなる駆動部が挟持され、前記駆動部を貫通する孔に挿通された締め付けボルトにより、先細り形状のホーン部を有しない前記フロントマスと前記バックマスとが締結された構造のランジュバン型振動子であって、
前記駆動部は、セラミックス圧電材料を用いて形成された前記圧電素子を2枚以上含んで構成され、
前記フロントマスは第1の金属材料を用いて形成され、前記バックマスは第2の金属材料を用いて形成される、
ボルト締めランジュバン型振動子」である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
本件訂正発明1の「ボルト締めランジュバン型振動子」は「超音波の送受信により物理量の計測を行う超音波計測用機器のための」ものであるのに対して、
引用発明の「ボルト締めランジュバン型振動子1」はこのような限定のない点。
(イ) 相違点2
2枚以上の「セラミックス圧電材料を用いて形成された前記圧電素子」の材料と枚数について、
本件訂正発明1においては、材料が「無鉛材料」である「圧電定数d33が250pC/N以上のニオブ酸ナトリウムカリウム系のセラミックス圧電材料」であり、枚数が「4枚以上」であるのに対して、
引用発明においては、材料が明らかでなく、枚数は2枚である点。
(ウ) 相違点3
本件訂正発明1においては、「前記フロントマスは前記バックマスの断面よりも大きい断面となるように形成され、前記バックマスは前記フロントマスの構成材料の金属である第1の金属材料よりも比重が大きい第2の金属材料を用いて前記フロントマスよりも重く形成され[る]」のに対して、
引用発明においては、「前面板(金属ブロック)5」と「裏打板(金属ブロック)6」の材料の異同は不明であり、両者の断面積は等しく、両者の重量の軽重の関係は不明である点。
(エ) 相違点4
本件訂正発明1においては、次のaからeまでの特定があるのに対して、
a 振動子全長は共振周波数の半波長の長さに相当すること。
b 前記駆動部の中心部が超音波振動の節部となり、前記フロントマス及び前記バックマスの各々の端面が超音波振動の腹部となること。
c 前記駆動部の厚さは前記振動子全長の21%~31%であること。
d 前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の34%~44%であること。
e 前記バックマスの厚さは前記駆動部の厚さよりも大きいこと。
引用発明においてはかかる特定がなく、次のaからeまでの点が不明である点において相違する。
a 振動子全長と共振周波数の波長の長さとの関係
b 超音波振動の節部と腹部の位置
c 引用発明の駆動部の厚さの振動子全長に対する比率
d 前面板(金属ブロック)5の厚さの振動子全長に対する比率
e 裏打板(金属ブロック)6の厚さと引用発明の駆動部の厚さとの関係
(3) 相違点についての判断
ア 相違点1について
「ランジュバン型超音波振動子を備える超音波機器」が「例えば魚群探知機、超音波距離計、超音波流量計、超音波速度計又は超音波洗浄機等の多くの用途において用いることができること」は、技術常識である(前記技術常識1参照)。
したがって、引用発明を超音波の送受信により物理量の計測を行う超音波計測用機器のためのものとし、相違点1に係る本件訂正発明1の構成を備えるようにすることは、当業者が適宜選択できる設計事項にすぎない。
イ 相違点2について
(ア)a 前記2(3)イにおいて「技術常識2」として認定したとおり、「超音波センサや超音波洗浄機の超音波振動子等に用いられる圧電素子の材料としての、ニオブ酸カリウムナトリウム系(ニオブ酸アルカリ系)の圧電磁器組成物であって、圧電定数d33が250pC/N以上である圧電磁器組成物」は、技術常識である。
b また、前記2(4)イにおいて「技術常識3」として認定したとおり、ランジュバン型超音波振動子における設計上の選択肢として、「圧電素子を4枚以上用いること」は、技術常識である。
c さらに、RoHS指令の例を挙げて示されるように、製品や部品に含まれる鉛の量を低減することは、鉛が人や環境に与える有害な影響について常に考慮すべき当業者にとってはあまりにも自明な課題である。
(イ) そうすると、相違点2は、当該自明な課題を認識した当業者にとっては、引用発明に技術常識2及び技術常識3を適用して設計変更したものにすぎないから、引用発明において、相違点2に係る本件訂正発明1の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点3について
(ア) 前記2(5)イにおいて「技術常識4」として認定したとおり、フロントマス、リアマス、圧電素子及び電極からなるランジュバン型超音波振動子における設計上の選択肢として、「フロントマスの断面をリアマスの断面より大きくすること」は技術常識であるから、引用発明において、「前面板(金属ブロック)5」の断面積を「裏打板(金属ブロック)6」の断面積より大きくすることは、当業者が適宜選択できることにすぎず、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)a 前記2(6)イにおいて「甲2文献技術事項」として認定したとおり、甲2文献には、次の技術事項が記載されている。」
[甲2文献技術事項]
「前面部材1aと、裏打部材3aと、圧電セラミック体4とを、軸線方向に一体に備えたランジュバン型超音波振動子103において、
超音波振動子103では、裏打部材3aの構成材料である上記ステンレス鋼よりも、密度(比重)が小さい材料である上記のアルミニウム材料を前面部材1aの構成材料として積極的に適用することにより、
裏打部材3aよりも前面部材1aを軽量にすることが可能なので、圧電セラミック体4の発生させる振動を基に、裏打部材3a側よりも、前面部材1a側をより大きく変位させることができ、超音波放射面11で、振幅の大きな安定した振動を得ることができること。」
b(a) そうすると、引用発明において、「前面板(金属ブロック)5」を「裏打板(金属ブロック)6」よりも大きく変位させて超音波放射面で振幅の大きな安定した振動を得るために、甲2文献技術事項を適用し、「前面板(金属ブロック)5」の金属材料を「裏打板(金属ブロック)6」の金属材料よりも密度(比重)が小さい材料として、「前面板(金属ブロック)5」を「裏打板(金属ブロック)6」よりも軽量にすることは、当業者が容易に選択できる設計変更にすぎない。
(b) 換言すると、「裏打板(金属ブロック)6」を「前面板(金属ブロック)5」の構成材料の金属である第1の金属材料よりも比重が大きい第2の金属材料を用いて「前面板(金属ブロック)5」よりも重く形成することは、当業者が適宜選択できる設計事項にすぎない。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)に検討のとおりであるから、引用発明において相違点3を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 相違点4について
(ア)a 前記2(6)イにおいて「技術常識5」として認定したとおり、「ボルト締めランジュバン型超音波振動子において、振動子全長が所望超音波の半波長であるλ/2に略一致するため、当該振動子の両端部が変位が最大となる位相(本件訂正発明1の「腹部」に相当する。)にあり、また電歪要素の中心部分が変位零の位相(本件訂正発明1の「節部」に相当する。)にあること」は、技術常識である。
b したがって、引用発明において、振動子全長を共振周波数の半波長の長さとし(相違点4のaの事項に相当する。)、「引用発明の駆動部」の中心部が超音波振動の節部となり、「前面板(金属ブロック)5」及び「裏打板(金属ブロック)6」の各々の端面が超音波振動の腹部となるようにする(相違点4のbの事項に相当する。)ことは、当業者にとっては自明のことにすぎない。
(イ)a 本件訂正発明1においては、さらに、次の3点の限定(以下「三つの数値限定」という。)がある。
(a) 相違点4のcの事項
前記駆動部の厚さは前記振動子全長の21%~31%であること。
(b) 相違点4のdの事項
前記フロントマスの厚さは前記振動子全長の34%~44%であること。
(c) 相違点4のeの事項
前記バックマスの厚さは前記駆動部の厚さよりも大きいこと。
b(a) 上記三つの数値限定の技術上の意義について検討するために、本件特許明細書の記載を参酌すると、次の記載がある。
「【0018】
なお、上記請求項1等に記載の発明では、振動子全長が共振周波数の半波長の長さに相当するものにおいて、駆動部の厚さが振動子全長の1/3未満に抑えられていることから、駆動部全体を振動の節の付近に配置することが容易になる。ゆえに、駆動部における振幅を抑えることができ、圧電素子と電極板との接合界面に剥がれ等が生じにくくなる。また、駆動部を構成している各圧電素子の厚さが薄くなることで電界が大きくなり、その結果、振動変位が増大して送波音圧が高くなる。また、振動子全長に占めるフロントマスの厚さの比率が大きくなることで、相対的にバックマスを重くした場合であっても振動のバランスがとりやすくなり、フロントマス側の振幅をより確実に大きくすることができる。」
「【0035】
フロントマス21の厚さT3は、振動子全長L1の1/3を超えるものであることが好ましく、振動子全長L1の34%~44%であることがより好ましく、ここでは約16mm(振動子全長L1の約38%)とされている。
【0036】
バックマス22の厚さT1は、振動子全長L1の1/3前後であることが好ましく、振動子全長L1の30%~40%であることがより好ましく、ここでは約15mm(振動子全長L1の約36%)とされている。なお、バックマス22の厚さT1は、上記のようにフロントマス21の厚さT3よりも若干小さいことが好適である。
【0037】
また、4枚分の圧電素子32及び4枚分の電極板33の厚さの総和である駆動部31の厚さT2は、振動子全長L1の1/3未満であることが好ましく、振動子全長L1の21%~31%であることがより好ましく、ここでは約11mm(振動子全長L1の約26%)とされている。ちなみに、各圧電素子32の厚さはいずれも2.5mm程度であり、各電極板33の厚さはそれらよりもかなり薄く0.2mm程度となっている。」
「【0054】
(4)本実施形態では、振動子全長L1が共振周波数の半波長λ/2の長さに相当するものにおいて、駆動部31の厚さT2が振動子全長L1の1/3未満に抑えられていることから、駆動部31全体を振動の節部F1の付近に配置することが容易になる。ゆえに、駆動部31における振幅を抑えることができ、圧電素子32と電極板33との接合界面に剥がれ等が生じにくくなる。また、駆動部31を構成している各圧電素子32の厚さが薄くなることで電界が大きくなり、その結果、振動変位が増大して送波音圧が高くなる。また、振動子全長L1に占めるフロントマス21の厚さの比率が大きくなることで、相対的にバックマス22を重くした場合であっても振動のバランスがとりやすくなり、フロントマス21側の振幅をより確実に大きくすることができる。」
(b) 前記(a)に摘記した本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、三つの数値限定には、次の二つの効果を奏することを目的としていることが理解できる。
i) 駆動部全体を振動の節の付近に配置することが容易になること。
ii) 相対的にバックマス22を重くした場合であっても振動のバランスがとりやすくなること。
(c) 上記i)の効果は、本件訂正発明1においては、相違点4のbの事項の「前記駆動部の中心部が超音波振動の節部となり、前記フロントマス及び前記バックマスの各々の端面が超音波振動の腹部となる」との特定があるから、当該構成のものとして予測困難な効果とはいえない。
(d) 上記ii)の効果は、軽い方を大きくすればバランスが取りやすいという自明のことをいっているにすぎず、当該構成のものとして予測困難な効果とはいえない。
(e) したがって、前記三つの数値限定は、顕著な効果を奏するものではないから、かかる数値限定は、設計事項というほかはない。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)において検討のとおりであるから、相違点4は、全体として、当業者が容易に想到し得たものである。
オ 総合評価
前記ア~エにおいて検討したとおり、引用発明において相違点1から4までに係る本件訂正発明1の構成を備えるようにすることは、引用発明、甲2文献技術事項及び技術常識1~5に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1から4までを総合的に勘案しても、本件訂正発明1の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件訂正発明1は、引用発明、甲2文献技術事項及び技術常識1~5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 本件特許発明3~本件訂正発明6について
(1) 本件訂正発明3、4について
第1の金属材料としてアルミニウムを選択し、第2の金属材料としてステンレスを選択することは、当業者には自明の選択肢であるところ、この場合、請求項3及び請求項4において特定した事項を満たす。
したがって、本件訂正発明3、4は、引用発明、甲2文献技術事項及び技術常識1~5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件訂正発明5、6について
引用文献2における、「主に魚及び魚群等の物標を探知するための水中探知装置1において、超音波振動子10を同じ方向となるように並べ、ゴム材料によって構成されたモールド部25を設ける」という前記引用文献2技術事項を、引用発明に採用することは、当業者が適宜選択できる設計事項にすぎない。
そして、本件訂正発明5及び本件訂正発明6の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件訂正発明5及び本件訂正発明6は、引用発明、引用文献2技術事項、甲2文献技術事項及び技術常識1~5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、3~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
請求項2は、本件訂正により削除された。これにより、請求項2に係る特許についての特許異議の申立ては、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700566