特許異議申立
2023-701237
検知装置取付具および検知装置取付構造
- 審判番号
- 2023-701237
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-007149
- 登録番号
- 7279726
- 請求日
- 2023年11月24日
- 審決日
- 2024年07月31日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】いすゞ自動車株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人鷲田国際特許事務所
- 【異議申立人】石川 克人
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 田辺 正樹
- 審判官 中塚 直樹
- 分類
- P1651.121-YAA(G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第36条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7279726号発明「検知装置取付具および検知装置取付構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7279726号の明細書及び特許請求の範囲を、それぞれ訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。
特許第7279726号の請求項1、2、4~6に係る特許を維持する
特許第7279726号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7279726号(以下「本件特許」という。)についての請求項1~6に係る特許についての出願は、令和3年1月20日の出願であって、令和5年5月15日にその特許権の設定登録がされ、同月23日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和5年11月24日に特許異議申立人石川克人(以下、単に「特許異議申立人」という。)は、請求項1~6に係る特許に対して特許異議の申立てを行った。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和6年 1月19日付け:審尋
同年 2月 5日 :回答書の提出(特許異議申立人)
同月28日付け:取消理由通知書
同年 5月 1日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 6月11日 :意見書の提出(特許異議申立人)
第2 本件訂正について
1 本件訂正請求の趣旨
本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、それぞれ本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5、6について訂正することを求めるものである。
2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~6の記載(登録時における特許請求の範囲の記載)は、次のとおりである。
「【請求項1】
キャブの後端下部を支持するとともにフレームに固定されたキャブリアメンバを備えた車両に搭載され、前記車両の周辺の状況を検知する検知装置を車体に取り付けるための検知装置取付具であって、
一端が、前記キャブリアメンバのうち、前記車両の車高方向において前記フレームよりも上方の部分に固定され、
他端には、前記検知装置が取り付けられ、
前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸している、
検知装置取付具。
【請求項2】
前記他端は、前記車幅方向において前記キャブよりも外側に位置する、
請求項1に記載の検知装置取付具。
【請求項3】
前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している、
請求項1または2に記載の検知装置取付具。
【請求項4】
前記検知装置は、BSM(Blind Spot Monitoring)レーダである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の検知装置取付具。
【請求項5】
前記フレームは、サイドメンバである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の検知装置取付具。
【請求項6】
車両に搭載される検知装置取付構造であって、
前記車両の周辺の状況を検知する検知装置と、
キャブの後端下部を支持するとともにフレームに固定されたキャブリアメンバと、
一端が、前記キャブリアメンバのうち、前記車両の車高方向において前記フレームよりも上方の部分に固定され、他端には、前記検知装置が取り付けられ、前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸している検知装置取付具と、を含む、
検知装置取付構造。」
3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6の記載は、以下のとおりである。下線は訂正箇所である。
「【請求項1】
キャブの後端下部を支持するとともにフレームに固定されたキャブリアメンバを備えた車両に搭載され、前記車両の周辺の状況を検知する検知装置を車体に取り付けるための検知装置取付具であって、
一端が、前記キャブリアメンバのうち、前記車両の車高方向において前記フレームよりも上方の部分に固定され、
他端には、前記検知装置が取り付けられ、
前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している、
検知装置取付具。
【請求項2】
前記他端は、前記車幅方向において前記キャブよりも外側に位置する、
請求項1に記載の検知装置取付具。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記検知装置は、BSM(Blind Spot Monitoring)レーダである、
請求項1又は2に記載の検知装置取付具。
【請求項5】
前記フレームは、サイドメンバである、
請求項1、2、又は4に記載の検知装置取付具。
【請求項6】
車両に搭載される検知装置取付構造であって、
前記車両の周辺の状況を検知する検知装置と、
キャブの後端下部を支持するとともにフレームに固定されたキャブリアメンバと、
一端が、前記キャブリアメンバのうち、前記車両の車高方向において前記フレームよりも上方の部分に固定され、他端には、前記検知装置が取り付けられ、前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している検知装置取付具と、を含む、
検知装置取付構造。」
4 本件訂正の内容
本件訂正請求は、一群の請求項〔1~5〕及び請求項6に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~5〕及び請求項6について請求されたものである。
本件訂正の内容を明細書に係る訂正も含めて一群の請求項又は請求項ごとに整理すると、本件訂正は、以下の(1)(2)に示すとおり、一群の請求項〔1~5〕についての訂正事項である訂正事項1-1~1-5と、請求項6についての訂正事項2-1、2-2からなる。
なお、請求項2~5は、それぞれ請求項1の記載を直接又は間接的に引用しているから、訂正事項1-1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、請求項1~5は、特許法120条の5第4項の規定する一群の請求項である。
(1) 一群の請求項〔1~5〕についての訂正事項
ア 一群の請求項〔1~5〕についての特許請求の範囲の訂正事項
(ア) 訂正事項1-1(請求項1の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1における「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸している、」との記載を、
「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)
(イ) 訂正事項1-2(請求項3の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(ウ) 訂正事項1-3(請求項4の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項4における「請求項1から3のいずれか1項に記載の」との記載を、
「請求項1又は2に記載の」に訂正する。
(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)
(エ) 訂正事項1-4(請求項5の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項5における「請求項1から4のいずれか1項に記載の」との記載を、
「請求項1、2、又は4に記載の」に訂正する。
イ 訂正事項1-5(一群の請求項〔1~5〕についての明細書の訂正)
本件訂正前の明細書の段落【0010】における「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸している。」との記載を、
「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している。」に訂正する。
(2) 請求項6についての訂正事項
ア 訂正事項2-1(請求項6の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項6における「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸している検知装置取付具と、」との記載を、
「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している検知装置取付具と、」に訂正する。
イ 訂正事項2-2(請求項6についての明細書の訂正)
本件訂正前の明細書の段落【0011】における「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸している検知装置取付具と、」との記載を、
「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している検知装置取付具と、」に訂正する。
第3 本件訂正の適否についての当合議体の判断
1 訂正の目的
(1) 訂正事項1-1及び訂正事項1-2
ア 訂正事項1-1
訂正事項1-1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「検知装置取付具」について、「前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」と限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項2-1
訂正事項2-1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6の「検知装置取付構造」が含む「検知装置取付具」について、「前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」と限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2) 訂正事項1-2
訂正事項1-2の訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(3) 訂正事項1-3、1-4
訂正事項1-3、1-4の訂正は、次のア及びイに示すとおり、いずれも多数項を引用している請求項において、訂正事項1-2により請求項3を削除することに伴い、削除された請求項との引用関係を解消し、引用請求項数を削減するものであるから、いずれも特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
ア 訂正事項1-3
請求項4の引用請求項を請求項1~3から請求項1又は2に訂正する。
イ 訂正事項1-4
請求項5の引用請求項を請求項1~4から請求項1、2又は4に訂正する。
(4) 訂正事項1-5、2-2
訂正事項1-5、2-2による明細書の訂正は、いずれも訂正事項1-1、2-1による特許請求の範囲の訂正(前記(1)(2)参照)に伴い、明細書の記載を当該訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるためにする明細書についての訂正である。
したがって、訂正事項1-5、2-2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
2 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
前記訂正事項1-1~1-5、2-1、2-2の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当しないから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書、特許請求の範囲及び図面は、特許権の設定の登録がされた時点での願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)である。
(1) 訂正事項1-1、2-1
ア(ア) 訂正事項1-1において、「検知装置取付具」について、「前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」と限定することは、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項3の記載(前記第2の2を参照)に基づくものであるから、訂正事項1-1の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
(イ) 訂正事項2-1についても同様である。
イ したがって、訂正事項1-1、2-1の訂正は、いずれも本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項1-1、2-1の訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(2) 訂正事項1-2
訂正事項1-2の訂正は、請求項3を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項1-2の訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(3) 訂正事項1-3、1-4
訂正事項1-3、1-4の訂正は、いずれも多数項を引用している請求項における引用請求項数を削減するものであるから、いずれも本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項1-3、1-4の訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(4) 訂正事項1-5、2-2
前記(1)の検討を踏まえれば、訂正事項1-5、2-2による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
3 独立特許要件
本件の特許異議の申立てにおいては、請求項1~6について特許異議の申立てがされているところ、本件訂正後における請求項1、2、4~6に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 本件訂正の適否についての当合議体の判断のまとめ
前記1~3において検討した訂正要件についての当合議体の判断をまとめると、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、本件訂正は適法なものである。
よって、前記結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、それぞれ本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。
第4 訂正後の本件発明
本件特許の請求項1、2、4~6に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。請求項3は、本件訂正により削除された。)は、それぞれ、前記第2の3に示した本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、4~6に記載された事項により特定されるとおりのものである。
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件特許について、令和6年2月28日付け取消理由通知書によって特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
なお、本件発明1は、実体的には訂正前の請求項3に係る発明に対応しているところ、次のとおり、訂正前の請求項3に係る発明に対しては取消理由を通知していないが、通知した取消理由は特許異議申立人の特許異議申立理由に基づくものであって本件決定において検討を要するものであり、形式上請求項1、2、4~6には取消理由を通知していることから、ここで先に検討する。
本件特許の訂正前の請求項1、2、4~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
記
(文献一覧)
甲2号証:特開2013-107516号公報
甲3号証:“自動車の車幅に関する取扱い”、令和2年度 第2回車両安全対策検討会 配布資料、国土交通省、令和2年11月20日、安全-資料3-8
甲4-1号証:正田拓也、“【東京モーターショー 2019】いすゞ、ハイブリッド連接バス「エルガデュオ」や新型「ギガ」などを展示”、[online]、令和元年10月24日、株式会社インプレス、Car Watch、インターネット<URL:https://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/tokyo2019/1214290.html>
2 甲4-1号証に記載された事項及び甲4-1発明の認定
(1) 甲4-1号証に記載された事項
甲4-1号証には次の記載がある。摘記した写真を以下「図A」といい、図Aのうち左側の写真及び右側の写真をそれぞれ、以下「図A1」及び「図A2」という。なお、図面における矢印及び枠囲いの名称(「フロントタイヤ」、「部材A」、「部材B」、「部材C」及び「キャブ」)は、当合議体が付したものである。
ア 本文
「 大型トラックの新型ギガは、安全性とドライバーの疲労軽減策を拡充したもの。外見では可変配光型LEDヘッドライトを備え、フロントマスクの印象が変わっている。
また、ブラインドスポットモニターを左フロントコーナーや左右の巻き込み事故抑制用に装備。フロントのコーナーにセンサーがあるので、淡色系のボディカラーではモニターの黒い部分が目立つようになっている。」
イ 図A(左側:図A1、右側:図A2)
「
[図:0001415300000001.jpg]
」
(2) 甲4-1号証の記載から認定した事項
ア 前記(1)アにおいて摘記した記載を参照しつつ前記(1)イにおいて摘記した図A1を観察すると、大型トラックの「新型ギガ」は、「フロントタイヤ」、「部材A」、「部材B」及び「部材C」を備えていることが見て取れる。
同様にして図A2を観察すると、大型トラックの「新型ギガ」は「キャブ」を備えていることが見て取れる。
イ(ア) 図A1から、「部材A」は、「フロントタイヤ」の後方であって概略タイヤの中心の高さより上側に配置された、概略フロントタイヤと同程度の幅であって平たい形状の部材であることが見て取れる。
トラックにおいて、「フロントタイヤ」の後方であって概略タイヤの中心の高さより上側に配置されている、概略フロントタイヤと同程度の幅であって平たい形状の部材が「マッドガード」であることは技術常識であるから、「部材A」は、「マッドガード」であると認められる。
(イ)a 図A1の説明文には、「フロントタイヤのすぐ後ろに巻き込み事故抑制用のセンサーがある」と記載されている。図A1において「部材B」は写真の中央に位置しており、また、図A1においてフロントタイヤのすぐ後ろに配置されている部材は「部材A」と「部材B」しかないところ、前記(ア)において検討したとおり「部材A」はマッドガードであるから、「部材B」は「巻き込み事故抑制用のセンサー」を含むものであると認められる。
b また、図A1から、「部材B」は、「部材C」の少なくとも縦方向に延びた部分に、当該部分からトラックの車幅方向の外側に向かって伸びる部分を介して取り付けられていることが見て取れる。
c したがって、甲4-1号証には、次の事項(以下「認定事項1」という。)が記載されていると認められる。
<認定事項1>
「少なくとも縦方向に延びた部分を有し、当該部分からトラックの車幅方向の外側に向かって伸びる部分を介して巻き込み事故抑制用のセンサーが取り付けられている部材C」
(ウ) 図A1から、「部材Cの縦方向に延びた部分は「部材A」(マッドガード)を支持していること」が見て取れる。
したがって、甲4-1号証には、次の事項(以下「認定事項2」という。)が記載されていると認められる。
<認定事項2>
「部材Cの縦方向に伸びた部分はマッドガードを支持していること。」
ウ 前記ア及びイをまとめると、甲4-1号証には、次の事項(以下「認定事項3」という。)が記載されていると認められる。
<認定事項3>
「キャブ及び巻き込み事故抑制用のセンサーを備えたトラックにおける、巻き込み事故抑制用のセンサーの取付具又は取付構造」
(3) 甲4-1号証に記載された発明の認定
前記(1)において摘記した事項及び前記(2)において認定した事項を総合すると、甲4-1号証には、次の発明(以下「甲4-1発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲4-1発明>
「キャブ及び巻き込み事故抑制用のセンサーを備えたトラックにおける、巻き込み事故抑制用のセンサーの取付具又は取付構造であって(認定事項3)、
少なくとも縦方向に延びた部分を有し、当該部分からトラックの車幅方向の外側に向かって伸びる部分を介して巻き込み事故抑制用のセンサーが取り付けられている部材Cを有するものであり(認定事項1)、
部材Cの縦方向に延びた部分はマッドガードを支持するものである(認定事項2)、
巻き込み事故抑制用のセンサーの取付具又は取付構造。」
3 当合議体の判断
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4-1発明を対比する。
(ア) 対比分析
a(a) 甲4-1発明における「キャブ」及び「トラック」は、それぞれ、本件発明1における「キャブ」及び「車両」に相当する。
(b) 甲4-1発明における「巻き込み事故抑制用のセンサー」は、本件発明1における「車両の周辺の状況を検知する検知装置」に相当する。
(c) 甲4-1発明における「部材C」は、「縦方向に延びた部分を有し」、「巻き込み事故抑制用のセンサー」は、当該「縦方向に延びた部分に、当該部分からトラックの車幅方向の外側に向かって伸びる部分を介して取り付けられている」から、前記bを踏まえると、本件発明1における「車両の周辺の状況を検知する検知装置を車体に取り付けるための検知装置取付具」に相当する。
(d) 前記(c)より、甲4-1発明における「部材C」は「トラック」における取付具であるから、「トラック」に搭載されているといえる。
(e) 前記(a)から(d)の検討結果をまとめると、本件発明1と甲4-1発明は、次の点において共通する。
「キャブを有する車両に搭載され、前記車両の周辺の状況を検知する検知装置を車体に取り付けるための検知装置取付具」の発明である点。
b(a) 甲4-1発明における「部材C」の「縦方向に延びた部分」側の先端と、巻き込み事故抑制用のセンサーが取り付けられる側の先端を、それぞれ一端及び他端とすると、甲4-1発明において、「部材C」の他端に「巻き込み事故抑制用のセンサー」が「取り付けられている」ことは、本件発明1において、「(検知装置取付具の)他端には、前記検知装置が取り付けられ」ていることに相当する。
(b) したがって、本件発明1と甲4-1発明は、次の点において一致する。
「(検知装置取付具の)他端には、前記検知装置が取り付けられ[ている]」点。
(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件発明1と甲4-1発明は、次の一致点1において一致し、後記の相違点1において相違する。
<一致点1>
「キャブを有する車両に搭載され、車両の周辺の状況を検知する検知装置を車体に取り付けるための検知装置取付具であって、
他端には、前記検知装置が取り付けられている、
検知装置取付具」である点。
<相違点1>
本件発明1は、「キャブの後端下部を支持するとともにフレームに固定されたキャブリアメンバを備えた車両に搭載され[る]検知装置取付具」であって、
「一端が、前記キャブリアメンバのうち、前記車両の車高方向において前記フレームよりも上方の部分に固定され、
前記一端から(前記検知装置が取り付けられている)前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」
のに対して、
甲4-1発明は、「キャブを備えたトラック」(「車両」に相当する。)に搭載される「部材C」(「検知装置取付具」に相当する。)であるところ、
当該トラックが「キャブの後端下部を支持するとともにフレームに固定されたキャブリアメンバ」を備えたものであるか不明であり、
「部材C」の一端が「トラック」に対してどのように搭載されているか不明であり、
「巻き込み事故抑制用のセンサー」(「検知装置」に相当する。)が、トラックの車幅方向の外側に向かって、「部材C」の「少なくとも縦方向に延びた部分」から「トラックの車幅方向の外側に向かって伸びる部分」を介して取り付けられているものではあるが、「部材C」の前記一端から前記他端までが「トラック」の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲しているものではない点。
イ 判断
前記相違点1について検討する。
前記相違点1に係る構成のうち、特に、「検知装置取付具」の「前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」という構成は、甲4-1号証において開示も示唆もされていない。
そして、前記相違点1に係る構成は、取消理由通知書で引用した甲2号証及び甲3号証のいずれにも、開示も示唆もされていない。
さらには、前記相違点1に係る構成は、特許異議申立人が提出した前記甲号証以外の甲1~5号証のいずれにも、開示も示唆もされておらず、当該構成が周知技術や技術常識等に該当すると認めるに足る証拠も発見していない。
したがって、本件発明1は、当業者が甲1~5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、前記相違点1に係る構成について、令和6年6月11日に提出された意見書の第4~7ページにおいて、概略次の二つの主張をしている。
それぞれ、以下、「主張1」及び「主張2」として、順に検討する。
(ア) 特許異議申立人の主張1について
a 主張1の内容
特許異議申立人の主張1の内容は、次のとおりである。
甲4-1号証の図A1に示される縦ブラケットは、マッドガードを支持するとともに、マッドガードに沿って車長方向後ろ側に緩やかにカーブしており、縦ブラケットの形状は、本件発明1における「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している、」との構成(以下「構成X」という。)の下線部の構成と一致する。
甲4-1発明における「部材C」(検知装置取付具)の「少なくとも縦方向に延びた部分」は、「部材A」(マッドガード)を支持し、かつ上方から下方に直線状に延びるとともに、この直線状の下端から「部材A」に沿って車長方向後ろ側に緩やかにカーブしている。
令和6年2月28日付け取消理由通知書において、「部材C」(検知装置取付具)は、「全体として前記一端から前記他端までが「トラック」の車幅方向の外側へ延伸している構造」と認定されていることから、「部材C」の「少なくとも縦方向に延びた部分」は、本件発明1の「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分」に相当する。
車輪は側面視で円形状であり、車輪と干渉しないようにマッドガードを後方に屈曲させることは技術常識である。甲4-1号証の図A1における「部材A」(マッドガード)も左前方車輪と干渉しないように後方に屈曲しており、そのマッドガードに沿って取り付けられた「部材C」(検知装置取付具)も屈曲している。
したがって、「部材C」の「少なくとも縦方向に延びた部分」は「部材A」に沿って車長方向後ろ側に向かって緩やかにカーブしており、この形状は構成Xの「前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」の構成に相当する。
b 主張1についての当合議体の判断
(a) 特許異議申立人の前記主張1は、要するに、甲4-1発明における部材Cの「少なくとも縦方向に延びた部分」はマッドガードに沿って車長方向後ろ側に向かって緩やかにカーブしており、この形状は本件発明1の「前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」との構成に相当する、というものである。
(b) まず、「部材C」の「少なくとも縦方向に延びた部分」がマッドガードに沿って車長方向後ろ側に向かって緩やかにカーブしているといえるか否かについて検討する。甲4-1号証の図A1から、「部材C」の「縦方向に伸びた部分」がマッドガードを支持していることまでは見て取れるが、「部材C」がマッドガードをどのように支持しているかは必ずしも明らかではない。また、甲4-2号証の画像は、甲4-1号証の画像を拡大したものであるから、甲4-2号証の画像からも、同様の理由により、「部材C」がマッドガードをどのように支持しているかは必ずしも明らかではない。
(c) 次に、「部材C」の「少なくとも縦方向に延びた部分」がマッドガードに沿って車長方向後ろ側に向かって緩やかにカーブしていると認められたと仮定して検討する。
トラックなどの車両において、マッドガードが車輪と干渉しないように後方に屈曲している場合、一般的には、マッドガードは車輪に沿うように、すなわち、車輪との距離が略等しくなるように屈曲しているものである。そうすると、マッドガードに沿って車長方向後ろ側に向かって緩やかにカーブしている「部材C」の「少なくとも縦方向に延びた部分」は、「前記キャブの下方に設けられた車輪との距離が略等しくなるように屈曲している」というべきであるから、「前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」との構成に相当するとはいえない。
(d) 以上のとおり、特許異議申立人の前記主張1は採用できない。
(イ) 特許異議申立人の主張2について
a 主張2の内容
特許異議申立人の主張1の主張内容は、次のとおりである。
甲2号証の図2は、右側のアウトリガ100を例示して説明するものであり、甲2号証のマッドガードステー710の一端はマッドガードブラケット700(アウトリガ100)を介してキャブブリッジ300に固定され、他端は車幅方向の外側に位置し、一端から他端までが、「トラック」の車幅方向の外側へ延伸している。
甲2号証の図2には、マッドガードステー710が、マッドガードブラケット700と結合する一端から全体として車高方向下側に延びているが、一端から少し下がった位置で車長方向後ろ側に向かって屈曲していることが示されている。
したがって、甲2号証のマッドガードステー710の構成は、構成Xの「前記一端から前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸して」いる構成に相当し、甲2号証のマッドガードステー710の車高方向下側に延びる部分は、構成Xの「前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分」に相当する。
また、マッドガードステー710の一部分が車長方向後ろ側に屈曲する形状は、構成Xの「前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」の構成に相当する。
令和6年2月28日付け取消理由通知書の第14ページに記載のとおり、甲4-1号証と甲2号証はマッドガードを支持する部材を備える点で共通し、甲4-1号証における「部材C」は甲2号証のマッドガードステー710に相当するともいえる。よって、「部材C」の「少なくとも縦方向に延びた部分」を車輪から遠ざかる方向に屈曲させるための構造として甲2号証のマッドガードステー710形状を適用することは当業者にとって格別の困難性はない。
(当合議体注:参考のため甲2号証の図2を掲載する。
「【図2】
[図:0001415300000002.jpg]
」)
b 主張2についての当合議体の判断
特許異議申立人の前記主張2は、要するに、甲2号証に記載されたマッドガードステー710の一部分が車長方向後ろ側に屈曲する形状は、本件発明1における「前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」との構成に相当する、というものである。
しかしながら、前記(イ)cにおいて検討したとおり、一般にマッドガードは車輪との距離が略等しくなるように屈曲しているものであるから、マッドガードステー710の一部分が車長方向後ろ側に屈曲している形状となっている目的もまた、マッドガードと車輪の距離が略等しくなるようにマッドガードを支持するためであると理解できる。そうすると、マッドガードステー710の一部分は、「車輪との距離が略等しくなるように屈曲している」というべきであるから、「前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している」との構成に相当するとはいえない。
したがって、特許異議申立人の前記主張2は採用できない。
エ 小括
前記ア~ウにおいて検討したとおり、本件発明1は、当業者が甲1~5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2、4、5について
本件発明1の構成を全て有する本件発明2、4、5は、前記相違点1に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、当業者が甲1~5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件発明2、4、5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
(3) 本件発明6について
ア 対比
前記(1)アを踏まえて、本件発明6と甲4-1発明を対比すると、本件発明6と甲4-1発明は、次の一致点6において一致し、後記の相違点6において相違する。
<一致点6>
「キャブを有する車両に搭載される検知装置取付構造であって、
車両の周辺の状況を検知する検知装置と、
他端には、前記検知装置が取り付けられている検知装置取付具と、
を含む、
検知装置取付構造」である点。
<相違点6>
本件発明6は、「キャブの後端下部を支持するとともにフレームに固定されたキャブリアメンバ」を含み、
「検知装置取付具」は、「一端が、前記キャブリアメンバのうち、前記車両の車高方向において前記フレームよりも上方の部分に固定され、前記一端から(前記検知装置が取り付けられた)前記他端までが前記車両の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲している検知装置取付具と、を含む、」ものであるのに対し、
甲4-1発明は、「キャブを有するトラック」(「車両」に相当する。)に搭載される検知装置取付構造であるが、
「キャブの後端下部を支持するとともにフレームに固定されたキャブリアメンバ」を含むか否か不明であり、
「部材C」(「検知装置取付具」に相当する。)の一端が「トラック」に対してどのように搭載されているか不明であり、
「巻き込み事故抑制用のセンサー」(「検知装置」に相当する。)が、トラックの車幅方向の外側に向かって、「部材C」の「少なくとも縦方向に延びた部分」から「トラックの車幅方向の外側に向かって伸びる部分」を介して取り付けられているものではあるが、「部材C」の前記一端から前記他端までが「トラック」の車幅方向の外側へ延伸しており、前記車幅方向の外側へ延伸している部分のうち一部分は、前記キャブの下方に設けられた車輪から遠ざかるように屈曲しているものではない点。
イ 判断
前記相違点6についての判断は前記(1)イにおいて示した前記相違点1についての判断と同様である。
したがって、本件発明6は、当業者が甲1~5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和6年6月11日に提出された意見書の13頁において、本件発明6についても本件発明1と同様の異議理由を有する旨主張しているところ、前記相違点6についての判断において、前記主張1及び主張2と同様の理由が採用できるものでないことは、前記(1)ウにおいて検討したとおりである。
エ 小括
前記ア~ウにおいて検討したとおり、本件発明6は、当業者が甲1~5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由について
1 甲1号証に基づく特許異議申立ての理由について
(1) 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許の請求項1、3~6に係る発明は、甲1号証及び甲2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項2に係る発明は、甲1号証、甲2号証及び甲3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨申立てた。
(2) そして、特許異議申立人は、令和6年2月5日に提出された回答書において、次のア及びイに示す二つの事項を回答した。
ア 甲1号証は、甲4号証に示すWebページ及び甲5号証に示すWebページに記載された内容を説明するために特許異議申立人が作成した資料であること。
イ 異議申立書の甲1号証に関する記載は、甲4号証及び甲5号証の記載から認識される発明であること。
(3) 当合議体は、前記(2)において示した回答の内容を踏まえ、異議申立書の甲1号証に関する記載は、甲4号証及び甲5号証の記載から認識される発明に関する記載であるとして異議申立ての内容を理解した。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由
(1) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由の概要
前記1を踏まえると、特許異議申立人が申立てた特許異議申立ての理由のうち、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由の概要は次のとおりである。
訂正前の請求項3に係る発明は、甲4号証及び甲5号証の記載から認識される発明並びに甲2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 当合議体の判断
ア 訂正前の請求項3は訂正前の請求項1の記載を引用している。また、前記第4において示したとおり、訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1に訂正前の請求項3に記載された事項を追加したものである。
イ そうすると、訂正前の請求項3に係る発明についての進歩性の判断は、本件発明1についての進歩性の判断と同じとなるところ、本件発明1についての進歩性の判断は前記第5の3(1)イにおいて示したとおり、本件発明1は当業者が甲1~5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない、というものである。
ウ したがって、訂正前の請求項3に係る発明も、当業者が甲1~5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
第7 令和6年6月11日に提出された意見書における特許異議申立人のその他の主張について
特許異議申立人は令和6年6月11日に提出された意見書の第7~12ページにおいて、概略三つの主張(以下「主張A」から「主張C」という。)をしているので、以下順に検討する。
1 特許異議申立人の主張Aについて
(1) 主張Aの内容
本件発明1は、当業者であれば本件特許の明細書に記載されている従来例1から容易に想到できるものである。
本件特許の明細書の段落【0006】には、車輪との干渉を回避するための従来例1の構造が記載されている。
従来例1から、ブラケットの車幅方向の外側へ延伸する部分を車輪との干渉を回避できる方向に屈曲させることは自明である。
したがって、本件発明1は、従来技術として自白した内容に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、進歩性がなく、特許法29条2項に違反する。
(2) 主張Aについての検討
ア 前記主張Aは、訂正の請求の内容に付随して生じる理由に係るものではなく、実質的に新たな理由を主張するものである。
イ また、本件特許の明細書において、従来例1として発明が記載されているとしても、当該記載のみをもって、従来例1とされた発明が、本件特許の出願前に特許法29条1項各号のいずれかに該当するに至った発明であると認めることはできない。
ウ そして、仮に従来例1とされた発明が本件特許の出願前に特許法29条1項各号のいずれかに該当するに至った発明であるとしても、「ブラケットの車幅方向の外側へ延伸する部分を車輪との干渉を回避できる方向に屈曲させること」は、本件特許の明細書の記載に基づいて当業者が認識できる事項であって、従来例1とされた発明から自明な事項ではないから、本件発明1は、従来例1とされた発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ したがって、特許異議申立人の前記主張Aは採用できない。
2 特許異議申立人の主張Bについて
(1) 主張Bの内容
本件特許の明細書の段落【0006】には課題として、ブラケットの大型化及び大型化に起因する振動に対する剛性の不足が記載されている。
本件発明1は、他端の位置及び一端から他端までがどのように延伸しているか不明である。訂正後の請求項1には様々な形状の検知装置取付具を含み得るため、大型化及び大型化に起因する振動に対する剛性の不足が解決されるか不明である。
本件特許の明細書の段落【0007】には課題として、固定先の部品の重量を受けることに起因する振動に対する剛性の不足が記載されている。
本件発明1は、検知装置取付具とマッドガードとの関係が記載されていないため、上記課題を解決できているか不明である。
以上より、本件発明1は、「請求項において発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる場合」に該当する。
(2) 主張Bについての検討
ア 前記主張Bは、訂正の請求の内容に付随して生じる理由に係るものではなく、実質的に新たな理由を主張するものである。
イ また、本件発明1においては、少なくとも検知装置取付具の一端が「前記キャブリアメンバのうち、前記車両の車高方向において前記フレームよりも上方の部分に固定され」ることが特定されていることから、本件発明1は、検知装置取付具の一端がサイドメンバに固定されたものとの比較において、前記主張Bにおいて示された二つの課題を解決していると認められる。
ウ したがって、特許異議申立人の前記主張Bは採用できない。
3 特許異議申立人の主張Cについて
(1) 主張Cの内容
訂正後の請求項1に係る発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識するのに必要な要素が規定されておらず、明確ではないため、特許法36条6項2号に違反する。
(2) 主張Cについての検討
ア 前記主張Cは、訂正の請求の内容に付随して生じる理由に係るものではなく、実質的に新たな理由を主張するものである。
イ また、前記(2)イにおいて検討したとおり、本件発明1においては、少なくとも検知装置取付具の一端が「前記キャブリアメンバのうち、前記車両の車高方向において前記フレームよりも上方の部分に固定され」ることが特定されていることから、本件発明1は、前記主張Bにおいて示された二つの課題を解決していると認められる。そうすると、本件発明1においては、発明の課題が解決できることを当業者が認識するのに必要な要素が規定されていることから、本件発明1は明確である。
ウ したがって、特許異議申立人の前記主張Cは採用できない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知において通知した取消理由及び特許異議申立書で申し立てられた特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、2、4~6に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1、2、4~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項3は、前記第2の4(1)ア(イ)のとおり、訂正により削除されたことにより、請求項3に係る特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701237