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特許異議申立

2020-700593

画像表示装置、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法

審判番号
2020-700593
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-251479外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年08月12日
審決日
2021年04月30日
公報発行日
2021年09月24日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6645491号発明「画像表示装置、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6645491号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、〔10〕、〔11〕について訂正することを認める。 特許第6645491号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続等の経緯 特許第6645491号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願(特願2017-251479号)は、平成25年9月30日を出願日とする特願2013-205733号の一部を平成29年12月27日に新たな特許出願としたものであって、令和2年1月14日にその特許権の設定の登録がされた。 本件特許について、令和2年2月14日に特許掲載公報が発行されたところ、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和2年8月12日に特許異議申立人 笠原佳代子(以下、「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和2年10月30日付け:取消理由通知書 令和3年 1月 4日付け:意見書(特許権者) 令和3年 1月 4日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の請求を、以下、「本件訂正請求」という。) 令和3年 3月 8日付け:意見書(特許異議申立人) 第2 本件訂正請求について 1 訂正の趣旨及び訂正の内容 (1)訂正の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第6645491号の特許請求の範囲及び明細書を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求める、というものである。 (2)訂正の内容 本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記光透過性基材(1)は、」と記載されているのを「前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、」に訂正し、「リタデーションが3000nm以上」と記載されているのを「リタデーションが7000~2万nm」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4~9も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記光透過性基材(1)は、」と記載されているのを「前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、」に訂正し、「リタデーションが3000nm以上」と記載されているのを「リタデーションが7000~2万nm」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項5~9も同様に訂正する。)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記光透過性基材(1)は、」と記載されているのを「前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、」に訂正し、「リタデーションが3000nm以上」と記載されているのを「リタデーションが7000~2万nm」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5~9も同様に訂正する。)。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項10に「前記光透過性基材(1)は、」と記載されているのを「前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、」に訂正し、「リタデーションが3000nm以上」と記載されているのを「リタデーションが7000~2万nm」に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項11に「前記光透過性基材(1)は、」と記載されているのを「前記光透過注基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、」に訂正し、「リタデーションが3000nm以上」と記載されているのを「リタデーションが7000~2万nm」に訂正する。 カ 訂正事項6 明細書の【0117】、【0118】、【0119】、【0120】、【0121】、【0122】、【0123】、【0124】、【0125】、【0126】、【0127】、【0128】、【0129】、【0130】、【0131】、【0179】に「実施例1」と記載されているのを「参考例1」に訂正し、明細書の【0118】に「実施例2」と記載されているのを「参考例2」に訂正し、明細書の【0119】、【0128】に「実施例3」と記載されているのを「参考例3」に訂正し、明細書の【0120】、【0130】に「実施例4」と記載されているのを「参考例4」に訂正し、明細書の【0121】、【0130】、【0172】に「実施例5」と記載されているのを「参考例5」に訂正し、明細書の【0122】に「実施例6」と記載されているのを「参考例6」に訂正し、明細書の【0123】、【0127】に「実施例7」と記載されているのを「参考例7」に訂正し、明細書の【0124】、【0127】に「実施例8」と記載されているのを「参考例8」に訂正し、明細書の【0125】、【0127】、【0173】に「実施例9」と記載されているのを「参考例9」に訂正し、明細書の【0126】に「実施例10」と記載されているのを「参考例10」に訂正し、明細書の【0129】に「参考例1」と記載されているのを「参考例11」に訂正し、明細書の【0130】に「参考例2」と記載されているのを「参考例12」に訂正し、明細書の【0131】、【0175】に「参考例3」と記載されているのを「参考例13」に訂正し、明細書の【0168】、【0176】、【0177】、【0178】に「参考例4」と記載されているのを「参考例14」に訂正し、明細書の【0169】、【0177】、【0178】に「参考例5」と記載されているのを「参考例15」に訂正し、明細書の【0170】、【0177】、【0178】に「参考例6」と記載されているのを「参考例16」に訂正し、明細書の【0171】、【0177】、【0178】に「参考例7」と記載されているのを「参考例17」に訂正し、明細書の【0172】、【0177】、【0178】に「参考例8」と記載されているのを「参考例18」に訂正し、明細書の【0173】、【0177】に「参考例9」と記載されているのを「参考例19」に訂正し、明細書の【0174】、【0177】に「参考例10」と記載されているのを「参考例20」に訂正し、明細書の【0175】、【0177】、【0178】に「参考例11」と記載されているのを「参考例21」に訂正する。 2 一群の請求項について 本件訂正請求は、一群の請求項〔1~9〕、〔10〕、〔11〕に対して請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 一群の請求項1~9について ア 訂正事項1について 訂正事項1による訂正は、a:請求項1に記載された「光透過性基材(1)」を、「ポリエチレンナフタレート基材であ」るものに限定し、b:請求項1に記載された「光透過性基材(1)」の「リタデーション」が、「3000nm以上」であるものから、「7000~2万nm」であるものに限定する訂正である。 そうしてみると、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 また、上記aの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであり、上記bの訂正は【0021】の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 さらに、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 請求項4~9についての訂正も同様である。 イ 訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、a:請求項2に記載された「光透過性基材(1)」を、「ポリエチレンナフタレート基材であ」るものに限定し、b:請求項2に記載された「光透過性基材(1)」の「リタデーション」について、「3000nm以上」であるものから、「7000~2万nm」であるものに限定する訂正である。 そうしてみると、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 また、上記aの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであり、上記bの訂正は【0021】の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項2による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 さらに、訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 請求項5~9についての訂正も同様である。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3による訂正は、a:請求項3に記載された「光透過性基材(1)」を、「ポリエチレンナフタレート基材であ」るものに限定し、b:請求項3に記載された「光透過性基材(1)」の「リタデーション」について、「3000nm以上」であるものから、「7000~2万nm」であるものに限定する訂正である。 そうしてみると、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 また、上記aの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであり、上記bの訂正は【0021】の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項3による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 さらに、訂正事項3による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 請求項5~9についての訂正も同様である。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正のうち、訂正事項1~3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)一群の請求項10について ア 訂正事項4による訂正は、a:請求項10に記載された「光透過性基材(1)」を、「ポリエチレンナフタレート基材であ」るものに限定し、b:請求項10に記載された「光透過性基材(1)」の「リタデーション」について、「3000nm以上」であるものから、「7000~2万nm」であるものに限定する訂正である。 そうしてみると、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 また、上記aの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであり、上記bの訂正は【0021】の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項4による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 さらに、訂正事項4による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項4による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 イ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正のうち、訂正事項4による訂正も、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3) 一群の請求項11について ア 訂正事項5による訂正は、a:請求項11に記載された「光透過性基材(1)」を、「ポリエチレンナフタレート基材であ」るものに限定し、b:請求項11に記載された「光透過性基材(1)」の「リタデーション」について、「3000nm以上」であるものから、「7000~2万nm」であるものに限定する訂正である。 そうしてみると、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 また、上記aの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであり、上記bの訂正は【0021】の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項5による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項5による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 さらに、訂正事項5による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項5による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 イ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正のうち、訂正事項5による訂正も、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4) 訂正事項6について ア 訂正事項6による訂正は、訂正事項1~5による訂正に伴って、訂正後の請求項1~11に記載された範囲を外れることとなった、「実施例1」~「実施例10」を、それぞれ「参考例1」~「参考例10」に書き改めるとともに、番号を整理するために、「参考例1」~「参考例11」を、それぞれ「参考例11」~「参考例21」に書き改める訂正である。 したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項6による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは,明らかである。 イ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正のうち、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5) 明細書の訂正と一群の請求項との関係について 前記(4)のとおり、訂正事項6による明細書の訂正は、一群の請求項である〔1~9〕、〔10〕及び〔11〕の全てについて行うものである。 4 まとめ 本件訂正請求(訂正事項1~6よる訂正)は、特許法第120条の5第2項ただし書、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕、〔10〕、〔11〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 前記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。 したがって、本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、請求項に付す番号を使って、それぞれ、「本件特許発明1」などという。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、 前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm~500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000~2万nmであり、 前記光透過性甚材(2)は、ポリエステル基材であり、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、 前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており、 前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものである ことを特徴とする画像表示装置。 【請求項2】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、 前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm~500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000~2万nmであり、 前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であり、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である達相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、 前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており、 前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものであり、 前記光透過性基材(1)と前記光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)及び前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(np>nx,nf)、又は、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)及び前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(np<ny,nf)、前記プライマー層の厚みが3~30nmである ことを特徴とする画像表示装置。 【請求項3】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、 前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方廊と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm~500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000~2万nmであり、 前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であり、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され、 前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2) の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており、 前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振凱するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものであり、 前記光透過性基材(1)と前記光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい場合(nx<np<nf)、又は、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きい場合(nf<np<ny)、 前記プライマー層の厚みが65~125nmである ことを特徴とする画像表示装置。 【請求項4】 光透過性基材(1)と光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材(1)の進相軸方向の屈折率(ny)と前記光透過性基材(1)の達相軸方向の屈折率(nx)との間に存在する(ny<np<nx)請求項1記載の画像表示装置。 【請求項5】 光透過性基材(2)と偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±15°又は90°±15°となるように積層されている請求項1、2、3又は4記載の画像表示装置。 【請求項6】 光透過性基材(2)は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方面と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.01以上である請求項1、2、3、4又は5記載の画像表示装置。 【諸求項7】 光透過性基材(2)の屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)と、前記光透過性基材(2)の平均屈折率(N)とが、下記式の関係を有し、かつ、 前記進相軸と偏光子(2)の透過軸とのなす角度が0°±2°である 請求項1、2、3又は4記載の画像表示装置。 nx>N>ny 【請求項8】 バックライト光源として白色発光ダイオードを備えたVAモード又はIPSモードの液晶表示装置である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の画像表示装置。 【請求項9】 バックライト光源と面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)との間に、偏光分離フィルムを有する請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の画像表示装置。 【請求項10】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置の製造方法であって、 前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm~500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000~2万nmであるものを用い、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置する工程と、 前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であるものを用い、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有し、 前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものである ことを特徴とする画像表示装置の製造方法。 【請求項11】 面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、画像表示装置のバックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置の視認性改善方法であって、 前記光透過性基材(1)は、ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm~500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000~2万nmであるものを用い、 前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記画像表示装置の表示画面の上下方向とが平行となるように、前記光学積層体を配置するとともに、 前記光透過性基材(2)は、ポリエステル基材であるものを用い、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層し、 前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である淮相軸の方掏が平行となるように室内に設置されるものである ことを特徴とする画像表示装置の視認性改善方法。」 第4 取消しの理由の概要 令和2年10月30日付け取消理由通知により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、以下のとおりである。 「理由1(進歩性)本件特許の請求項1~11に係る発明(本件訂正請求による訂正前のもの)は、本件特許の出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~11に係る特許は、いずれも、特許法29条の規定に違反してされたものである。 引用例1:特開2011-59488号公報(甲第1号証) 引用例2:国際公開第2011/162198号(甲第6号証) 引用例3:梅本清司、「大型液晶ディスプレイ用光学補償フィルム」、月刊ディスプレイ、2007年10月号別冊、2007年10月17日、株式会社テクノタイムズ社発行、45~53頁(甲第3号証) 引用例4:特開2013-174852号公報(甲第4号証) 引用例5:特開2010-107542号公報(甲第5号証)」 第5 当合議体の判断(理由1(進歩性)について) 1 引用例の記載及び引用発明 (1) 引用例1の記載 取消しの理由で引用された引用例1(特開2011-59488号公報(甲第1号証))には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、 前記偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、 前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板。 【請求項2】 前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の位相差値が200~1200nmもしくは2000~7000nmの値である請求項1に記載の偏光板。 ・・・略・・・ 【請求項8】 前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける前記偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に積層された、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1層を備える請求項1~7のいずれかに記載の偏光板。 【請求項9】 請求項7または8に記載の偏光板が、その粘着剤層を介して液晶セルに貼合された液晶パネルを備える液晶表示装置。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は、偏光板およびそれを用いた液晶表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、消費電力が低く、低電圧で動作し、軽量でかつ薄型の液晶表示装置が、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ用のモニター、およびテレビ等の情報用表示デバイスとして急速に普及している。さらに、液晶技術の発展に伴い、様々なモードの液晶表示装置が提案され、従来、応答速度、コントラスト、および視野角等の液晶表示装置の問題とされていた点が解消されつつある。 【0003】 一方で、液晶表示装置のさらなる薄型軽量化を望む強い市場要求を受けて、液晶表示装置を構成する液晶パネル、拡散板、バックライトユニット、および駆動IC等の薄型化や小型化が進められている。このような状況下、液晶パネルを構成する部材である偏光板も10μmの単位で薄型化することが求められている。 【0004】 同時に、液晶表示装置の普及に伴って、市場からのコストダウン要求も日増しに強くなっており、偏光板においてもさらなるコストダウンや生産性の向上が必須となっている。 【0005】 これらの要求を満足すべく、これまでに様々な提案がなされてきた。たとえば、偏光板は通常、偏光フィルムの片面または両面に透明保護フィルムが設けられた構成を有し、その透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが一般的に使用されているが、・・・略・・・のように、その保護フィルムに位相差を持たせて光学補償機能を付与することにより、構成部材の削減と生産工程の簡便化を図る試みが広くなされている。このような構成とすることで、偏光板と位相差板との積層物である複合偏光板を薄型軽量化することができ、さらに液晶表示装置の構成部材点数が削減されることで、生産工程を簡素化し、歩留まりを向上させてコストダウンに繋げることが可能となる。 【0006】 さらには、保護フィルムをトリアセチルセルロース以外の他の樹脂で置き換える試みも積極的に進められている。たとえば、・・・略・・・には、トリアセチルセルロースに代えて、環状オレフィン系樹脂を使用する手段が開示されている。しかしながら、環状オレフィン系樹脂は一般的に高価であるため、現状は、より付加価値の高い位相差フィルムに用いられており、単なる保護フィルムとして使用するには、コスト削減の点から釣り合いがとれないという問題を有している。 【0007】 上記要求を満足できる技術として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする手法が提案されている。ポリエチレンテレフタレートは機械的強度に優れることから、薄膜化に適しており、偏光板の薄型化を実現できる。さらに、トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂と比較して、一般的にコストの面からも優位性を有する。加えて、トリアセチルセルロースと比較して、低透湿性で低吸水性といった特徴を有することから、耐湿熱性や耐冷熱衝撃性にも優れ、環境変化に対して高い耐久性を持つことも期待できる。 【0008】 しかしながら、一方で、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板を液晶表示装置に搭載した場合、トリアセチルセルロースフィルムを保護フィルムとする一般的な偏光板に比べて、その高いレタデーション値に由来する斜め方向からの色ムラ(干渉ムラ、虹ムラとも言う)が目立ち、視認性に劣るという問題を有している。この問題について、・・・略・・・ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板と、ヘイズ値を制御した防眩層を付与した偏光板とを組み合わせて液晶表示装置を構成することで、色ムラを低減する手法が開示されている。しかしながら、この手法を用いても色ムラの低減は不十分であり、より効果的な手法の確立が望まれていた。 ・・・略・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 そこで、本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって、液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者らは、上記色ムラ問題を解決するべく、鋭意研究を行なってきた。その結果、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板において、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の色ムラを効果的に低減でき、高い視認性と薄型化、低コスト化との両立が実現できることを見出した。 【0012】 すなわち、本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板が提供される。 【0013】 本発明の偏光板において、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の位相差値が200~1200nmもしくは2000~7000nmの値であることが好ましい。 ・・・略・・・ 【0019】 本発明の偏光板は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に積層された、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1層を備えることが好ましい。 【0020】 また、本発明によれば、上記粘着剤層が設けられた偏光板が、その粘着剤層を介して液晶セルに貼合された液晶パネルを備える液晶表示装置が提供される。 【発明の効果】 【0021】 本発明によれば、Nz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示し、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することができる。 【発明を実施するための形態】 【0022】 <偏光板> 本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備えるものである。また、本発明の偏光板は、偏光フィルムにおける延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面とは反対側の面に、第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備えていてもよい。以下、本発明の偏光板について具体的に説明する。 【0023】 (偏光フィルム) 本発明に用いる偏光フィルムは、通常、公知の方法によってポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造されるものである。 ・・・略・・・ 【0037】 こうして得られる偏光フィルムの厚みは、通常、5~40μm程度とすることができる。 【0038】 (延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム) 本発明に用いる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは、一種以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出によって製膜し、横延伸してなる一層以上の一軸延伸フィルム、または、製膜後引き続いて縦延伸し、次いで横延伸してなる一層以上の二軸延伸フィルムである。ポリエチレンテレフタレートは、延伸により屈折率の異方性および、それらで規定される位相差値、Nz値、光軸を任意に制御することができ、本発明においては、必要な光学性能を効率よく付与できることから一軸延伸品が好ましく用いられる。 ・・・略・・・ 【0057】 一軸延伸フィルムを得る場合、上記未延伸フィルムは、通常、ガラス転移温度以上の温度において、テンターによってフィルムの巾方向(長尺方向に対して垂直方向)への横延伸が行なわれる。この延伸温度は、通常、70~150℃であり、80~130℃が好ましく、90~120℃がより好ましい。また、延伸倍率は、通常、2.5~6倍であり、3~5.5倍であることが好ましい。横延伸における延伸倍率が2.5倍未満であると、フィルムの透明性が不良となる場合があり好ましくない。また、6倍を超える延伸倍率は、製造技術上現実的ではない。 ・・・略・・・ 【0060】 一方、二軸延伸フィルムを得る場合、上記未延伸フィルムは、ガラス転移温度以上の温度において、通常、まず押出方向へ縦延伸される。延伸温度は、通常、70~150℃であり、80~130℃が好ましく、90~120℃がより好ましい。また、延伸倍率は、通常、1.1~6倍であり、2~5.5倍が好ましい。この延伸倍率が1.1倍未満であると、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの機械的強度が不足する傾向にあるためである。また、6倍を超えると、横方向の強度が実用に不足する場合がある。この延伸は一回で終えることも、必要に応じて複数回に分けて行なうこともできる。通常、複数回の延伸を行なう場合でも、合計の延伸倍率は前記の範囲であることが好ましい。 ・・・略・・・ 【0063】 二軸延伸フィルムを得る場合、通常、縦延伸処理の後に、もしくは必要に応じて熱処理または弛緩処理を経た後に、テンターによって横延伸が行なわれる。この延伸温度は、通常、70~150℃であり、80~130℃が好ましく、90~120℃がより好ましい。また、延伸倍率は、通常、1.1~6倍であり、2~5.5倍であることが好ましい。横延伸における延伸倍率が1.1倍未満であると、配向によるフィルム強度向上が不足する場合がある。また、6倍を超える延伸倍率は、製造技術上現実的ではない。 ・・・略・・・ 【0066】 一軸延伸および二軸延伸処理においては、ともに、その延伸処理温度が250℃を超えると、樹脂に熱劣化が生じたり、結晶化が進みすぎたりするために光学性能が低下する場合がある。また、延伸処理温度が70℃未満になると、延伸に過大なストレスがかかったり、フィルムが固化し延伸自体が不可能になったりする場合がある。 ・・・略・・・ 【0068】 なお、ここで延伸方向とは、縦延伸または横延伸における延伸倍率の大きい方向をいう。ポリエチレンテレフタレートフィルムの二軸延伸では、通常、横延伸倍率の方が縦延伸倍率より若干大きくなされるので、この場合、延伸方向とは、前記フィルムの長尺方向に対して垂直方向をいう。また、一軸延伸では、通常、前記のように横方向へ延伸されるので、この場合、延伸方向とは、同じく長尺方向に対して垂直方向をいう。 【0069】 また、ここで配向主軸とは、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上の任意の点における分子配向方向をいい、ここでは遅相軸のことを指す。配向主軸(遅相軸)の延伸方向に対する歪みとは、遅相軸と延伸方向との角度差をいう。 【0070】 前記遅相軸は、たとえば、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)または分子配向計MOA(王子計測機器株式会社製)などを用いて測定できる。 【0071】 延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおいて、上記縦延伸または横延伸における延伸倍率は、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であるnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率であるny、厚み方向の屈折率であるnzを制御する上で最も重要な因子であり、一般的に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの作製において、一軸延伸は、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が比較的小さい、二軸延伸は比較的大きいフィルムを作製することに適している。 【0072】 本発明の偏光板においては、かかる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとして、Nz係数が2.0未満であるものを用いる。このため、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、一軸延伸にて作製することが好ましい。このような光学性能の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを採用することで、かかる偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラを効果的に低減することが可能となる。Nz係数は、2.0未満であれば小さいほど色ムラ低減の効果を発揮し、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。Nz係数が2.0以上の場合は、かかる偏光板を搭載した液晶表示装置において強い色ムラが発生し、視認性に劣るものとなる。Nz係数が2.0以上4未満である場合、色ムラ低減効果を得ることができない。なお、Nz係数が4以上である場合であっても色ムラ低減効果を得ることができ、この場合、Nz係数の値が高いほど、色ムラ低減に有利である。 【0073】 また、本発明の偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、膜厚をdとしたときに、(nx-ny)×dで定義される面内位相差値R0が200~1200nmもしくは2000~7000nmのものが好適に採用できる。R0がかかる範囲外、すなわちR0が1200を超え、2000nm未満の範囲にある場合は、比較的目立つ色ムラが発生する傾向にある。したがって、より効果的に色ムラを低減する観点から、面内位相差値R0は、1200nm以下もしくは2000nm以上であることが好ましい。また、R0が200nm未満と小さい場合は、安定的にNz係数を2.0未満に制御することが困難であり、生産性やコストの面に問題を有する。一方で、R0が7000nmを超える場合は、Nz係数は低減させやすいものの、機械的強度に劣るフィルムとなる傾向にある。 【0074】 本発明の偏光板においては、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度は目的や生産上の制約等に応じて任意に選択することができる。たとえば、本発明の偏光板を、偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合、延伸ポリエチレンテレフタレートの面内位相差に由来する正面方向からの干渉色の発現を防ぐため、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度は小さい方が好ましい。好ましくは、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲とすることが好ましい。かかる場合においても、Nz係数を2.0未満とすることが、色ムラの低減に効果的である。 【0075】 偏光性の強いバックライト光源として、たとえば、バックライトユニット内に反射型偏光分離フィルムを備えるもの等が挙げられる。反射型偏光分離フィルムとは、バックライトの光を選択的に反射させ、再利用することで可視範囲の輝度を向上させる機能を有するフィルムである。反射型偏光分離フィルムに相当する市販品としては、米国の3M Company〔日本では住友スリーエム(株)〕から販売されている「DBEF」(商品名)などがある。 【0076】 一方で、上記以外の場合には、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が大きいものも好ましく用いることができる。中でも、20度以上50度以下のズレ角度であるものがより好ましい。偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度を上記の範囲とすることで、より効果的に液晶表示装置の色ムラを低減することができる。 【0077】 本発明における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおいて、Nz係数、面内位相差値R0および遅相軸を特定範囲に制御するためには、公知のあらゆる技術が制限なく採用できる。具体的には、上記の延伸処理時における延伸温度、延伸倍率、弛緩処理、ラインスピード等の延伸条件を調整することで制御できる。また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム原反にはしばしば巾方向(長尺方向に対して垂直方向)において、ボーイングに代表されるような遅相軸の歪みや、Nz係数、R0のバラツキがある場合が見られる。このような延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムについては、必要に応じて、目的の光学性能を有する巾範囲のみを選択的に使用することもできる。 【0078】 また、本発明の偏光板における偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度を制御する方法としては、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム原反自体において延伸方向と遅相軸とが目的の角度範囲内に調整されたものを用いる方法や、上記のように必要に応じて、目的の光学性能を有する巾範囲のみを選択的に使用する方法などを挙げることができる。後者の方法を採用した場合、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとをロール・ツー・ロールで貼合することができるため、生産性およびコスト面で優れる。また、偏光フィルムに延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層する際に、偏光フィルムの透過軸方向と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸方向とのズレ角度が目的の範囲内となるように調整して貼り合わせてもよい。 【0079】 本発明の偏光板に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、15~75μmの範囲内であることが好ましく、20~60μmの範囲内であることがより好ましい。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが15μm未満である場合には、ハンドリングしにくい(取り扱い性に劣る)傾向にあり、また厚みが75μmを超える場合には、厚膜となるためコスト高となり、さらには、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。 ・・・略・・・ 【0081】 (機能層) 本発明に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、そのフィルムが偏光板の視認側に用いられる場合、偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を設けることが好ましい。 【0082】 防眩層は、外光の映り込みやギラツキを防ぐために設けられる。ハードコート層は、表面の耐擦傷性などを改善するために設けられる。反射防止層は、外光の反射を防ぐために設けられる。 ・・・略・・・ 【0083】 防眩層は、たとえば、フィラーが添加された紫外線硬化型樹脂を塗工し、そこに紫外線を照射して硬化させ、フィラーに基づく凹凸を現出させる方式、紫外線硬化型樹脂にエンボス型を接触させた状態で紫外線を照射し、硬化させて凹凸を現出させる方式などにより設けることができる。ハードコート層は、紫外線硬化型のハードコート樹脂を塗工し、そこに紫外線を照射して硬化させる方式などにより設けることができる。反射防止層は、金属酸化物などを一層または複数層蒸着する方式などにより設けることができる。 ・・・略・・・ 【0087】 (第一の接着剤層) 本発明の偏光板において、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは、通常、透明で光学的に等方性の接着剤を介して貼着される。 ・・・略・・・ 【0147】 (保護フィルム、光学補償フィルム) 本発明の偏光板は、偏光フィルムの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面と反対側の面に、第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備えていてもよい。 【0148】 保護フィルムまたは光学補償フィルムは、光学フィルムとしての光学特性を有するものを目的に合わせて適宜使用することができ、特に限定されるものではないが、保護フィルムとしては、たとえば、トリアセチルセルロース(TAC)等からなるセルロース系樹脂フィルム、オレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、およびポリエステル系樹脂フィルム等の透明樹脂フィルムから構成されるものを用いることができる。 ・・・略・・・ 【0187】 (第二の接着剤層) 本発明の偏光板において、偏光フィルムと上記した保護フィルムまたは光学補償フィルムは、通常、透明で光学的に等方性の第二の接着剤を介して貼着される。 ・・・略・・・ 【0204】 (粘着剤層) 本発明の偏光板は、保護フィルムまたは光学補償フィルムの外側(保護フィルムまたは光学補償フィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面)に粘着剤層を有することができる。このような粘着剤層は、液晶セルとの貼合に用いることができる。 ・・・略・・・ 【0217】 <液晶表示装置> 以上のようにしてなる偏光板、すなわち、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板は、粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの片面または両面に貼合し、液晶パネルとすることができる。この液晶パネルは、液晶表示装置に適用することができる。 【0218】 本発明の偏光板は、たとえば、液晶表示装置において、光出射側(視認側)に配置される偏光板として用いることができる。光出射側とは、液晶セルを基準に、液晶表示装置のバックライト側とは反対側を指す。光出射側の偏光板として本発明の偏光板が採用される場合、当該偏光板は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備えることが好ましい。また、液晶表示装置の光入射側(バックライト側)に配置される偏光板は、本発明の偏光板であってもよいし、従来公知の偏光板であってもよい。 ・・・ 【0220】 液晶表示装置を構成する液晶セルは、透過光量をスイッチングするために、液晶が2枚の透明基板の間に封入され、電圧印加により液晶の配向状態を変化させる機能を有する部材であって、その中に封入された液晶層の配向状態と、電極間に電圧を印加したときの液晶層の配向状態によって、たとえば、ツイステッドネマティック(TN)モードや垂直配向(VA)モードなど、各種方式のものがある。本発明の偏光板は、一般的な液晶表示装置に広く使用されている各種モードの液晶セルに対して、有効に適用することができる。 【0221】 偏光フィルムに積層されている保護フィルムまたは光学補償フィルムの性能は、上記液晶セルの動作モードや特性に応じて適宜選択することができる。 【0222】 液晶表示装置を構成するバックライトも、一般の液晶表示装置に広く使用されているものでよい。たとえば、拡散板とその背後に配置された光源で構成され、光源からの光を拡散板で均一に拡散させたうえで前面側に出射するように構成されている直下型のバックライトや、導光板とその側方に配置された光源で構成され、光源からの光を一旦導光板の中に取り込んだうえで、その光を前面側に均一に出射するように構成されているサイドライト型のバックライトなどを挙げることができる。バックライトにおける光源としては、蛍光管を使って白色光を発光する冷陰極蛍光ランプや、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などを採用することができる。 【実施例】 【0223】 以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。 【0224】 以下の例において、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、メーカー呼称値で示した。面内位相差値R0およびNz係数は、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)にて測定した。また、環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムの厚み、面内位相差値R0および厚み方向位相差値Rthはメーカー呼称値で示した。環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムのR0およびRthは位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)を用いて実測もしているが、ほぼ同様の値が得られている。 【0225】 <実施例1> (a)偏光フィルムの作製 平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であった。 【0226】 (b)粘着剤付き偏光板の作製 厚み38μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(Nz係数:1.0、R0:2160nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、チャンバードクターを備える塗工装置によって厚さ2μmで塗工した。また、厚み73μmの環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルム(面内位相差値R0:63nm、厚み方向位相差値Rth:225nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、上記と同じ接着剤組成物を同様の装置にて厚さ2μmで塗工した。 【0227】 次いで、直ちに上記(a)にて得られた偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、もう一方の面に上記光学補償フィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合した。この際、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレは0度とした。その後、この積層物の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、メタルハライドランプを320~400nmの波長における積算光量が600mJ/cm2となるように照射し、両面の接着剤を硬化させた。さらに、得られた偏光板の光学補償フィルムの外面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤の層(セパレートフィルム付き)を設けた。 【0228】 (c)液晶表示装置の作製 ソニー(株)製の垂直配向モードの液晶表示装置“BRAVIA”(対角寸法40インチ=約102cm)の液晶パネルから光出射側偏光板を剥がし、その代わりに、市販の偏光板(スミカランSRW842E-GL5、住友化学(株)製)を、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層側にて貼り付けた。また、光入射側偏光板も剥がし、その代わりに、上記(b)で作製した粘着剤層付き偏光板からセパレートフィルムを剥がしたものを、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層を用いて貼り付けた。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は小さく、視認性は良好であった。 ・・・略・・・ 【0234】 各例につき、偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの光学特性と試験結果を表1にまとめた。 【0235】 【表1】 【0236】 表1に示されるように、偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのNz係数が2.0未満である実施例1~5については、偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラが少なく、視認性に優れる効果が認められた。一方で、Nz係数が2.0以上である比較例1については、色ムラが強く、視認性に劣るものであった。」 (2) 引用発明 ア 引用例1の【発明を実施するための形態】の【0022】、【0038】、【0071】~【0073】及び【0079】の記載から、引用例1でいう「本発明」の「偏光板」(【0022】)における「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」として、「一軸延伸フィルム、または」「二軸延伸フィルムであ」り(【0038】)、「フィルム面内の遅相軸方向の屈折率」を「nx」、「面内で遅相軸と直交する方向の屈折率」を「ny」、「厚み方向の屈折率」を「nz」とした時、「(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数」「は2.0未満であ」(【0071】、【0072】)り、「膜厚をdとしたときに、(nx-ny)×dで定義される面内位相差値R0が200~1200nmもしくは2000~7000nm」(【0073】)であり、「厚み」が「15~75μmの範囲内である」(【0079】)ものを理解することができる。 また、【発明を実施するための形態】の【0074】には、引用例1でいう「本発明の偏光板」について、「偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)」の「偏光板として適用する」場合、「偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲とする」ことが記載されている。 さらに、【発明を実施するための形態】の【0217】より、引用例1でいう「本発明」の「液晶表示装置」として、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板」の「粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの」「両面に貼合し」た「液晶パネル」が「適用」されたものを理解することができる。 また、【0220】より、引用例1でいう「本発明」の「液晶表示装置」として、「液晶パネル」が「垂直配向(VA)モード」のものである「液晶表示装置」を理解することができる(当合議体注:本件特許の出願前の当業者ならば、引用例1の【0220】に記載された液晶セル(パネル)のうち、「垂直配向(VA)モード」のものが液晶TVの主力であることを心得ている(引用例3の47頁右欄5~6行の記載からも確認できる。)。 さらに、【0218】より、「光出射側(視認側)」「の偏光板」として、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備え」たものを理解することができる。 ウ 以上、勘案すると、引用例1には、次の「液晶表示装置」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「 延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板の粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの両面に貼合した液晶パネルが適用され、偏光性の強いバックライト光源を備え、液晶パネルが垂直配向(VAモード)のものである、液晶表示装置であって、 前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、一軸延伸フィルム、または二軸延伸フィルムであり、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数は2.0未満であり、膜厚をdとした時、(nx-ny)×dで定義される面内位相差値R0が200~1200nmもしくは2000~7000nmであり、膜厚が15~75μmの範囲内であり、 光出射側(視認側)の偏光板は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、及び帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備え、 バックライト光源側(入射側)の偏光板は、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲である、 液晶表示装置。」 エ また、上記アより、引用例1には、「引用発明1の液晶表示装置の製造方法」の発明(以下、「引用製造方法発明1」という。)が記載されていると認められる。 オ 引用例1でいう「発明の効果」は、「本発明によれば、Nz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示し、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することができる。」(【0021】)ことである。 そうすると、引用例1には、「引用発明1の液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示すものとする方法」(以下、「引用表示方法発明1」という。)が記載されているものと認められる。 2 本件特許発明1について (1) 対比 本件特許発明1と引用発明1とを対比する。 ア 光学機能層、光透過性基材(1)、光学積層体 引用発明の「光出射側(視認側)の偏光板」は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板の粘着剤層から剥離フィルムを剥離し」たものであり、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、及び帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備え」る。また、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、「フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとし」「膜厚をdとしたとき、(nx-ny)×dで定義される面内位相差値R0が200~1200nmもしくは2000~7000nmであ」る。 上記の構成からみて、引用発明1の「光出射側(視認側)の偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件特許発明1の、「面内に複屈折を有する」とされる、「光透過性基材(1)」に相当する。また、引用発明1の「防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層」は、本件特許発明1の「光学機能層」に相当する。さらに、引用発明1の「光出射側(視認側)積層体」は、本件特許発明1の「光学積層体」に相当する。加えて、引用発明1の「光出射側(視認側)積層体」は、本件特許発明1の「光学積層体」の、「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し」との要件を満足する。 イ 光透過性基材(2)、偏光子(2)、偏光板、バックライト光源 引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」及び「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、前記アで述べた構成を具備する。また、引用発明1の「液晶表示装置」は、「偏光性の強いバックライト光源を備え」、「バックライト光源側(入射側)の偏光板は、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲」としたものである。 上記の構成からみて、引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件特許発明1の、「面内に複屈折率を有する」及び「ポリエステル基材であり」とされる、「光透過性基材(2)」に相当する。また、引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」の「偏光フィルム」は、本件特許発明1の「偏光子(2)」に相当する。さらに、引用発明1の「バックライト光源」は、文字どおり、本件特許発明1の「バックライト光源」に相当し、引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」は、本件特許発明1の「偏光板」に相当する。 加えて、引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」と、本件特許発明1の「偏光板」は、「バックライト光源側から、少なくとも」、「光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され」、「バックライト光源側に配置して用いられる」点において共通する。さらに加えて、引用発明1の「液晶表示装置」は、本件特許発明1の「画像表示装置」における、「前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり」及び「前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されており」との要件を具備する。 ウ 偏光板複合体、画像表示装置 前記ア及びイで述べた事項を考慮すると、引用発明1の「液晶表示装置」は、本件特許発明1の「画像表示装置」に相当する。また、引用発明1の「光出射側(視認側)積層体」は、本件特許発明1の「光学積層体」の、「画像表示装置の表面に配置して用いられる」との要件を満足する。さらに、引用発明1の「バックライト光源側(入射側)の偏光板」と、本件特許発明1の「偏光板」は、「バックライト光源側から、少なくとも」、「光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる」との要件を満足する。加えて、引用発明1の「光出射側(視認側)積層体」及び「バックライト光源側(入射側)の偏光板」は、本件特許発明1の「光学積層体と」、「偏光板とを有する」とされる、「偏光板複合体」に相当する。そして、引用発明1の「液晶表示装置」と、本件特許発明1の「画像表示装置」は、「偏光板複合体を備えた」点で共通する。 (2)一致点及び相違点 ア 一致点 本件特許発明1と、引用発明1は、次の点で一致する。 「面内に複屈折率を有する光透過性基材(1)の一方の面上に光学機能層を有し、画像表示装置の表面に配置して用いられる光学積層体と、 バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され、前記画像表示装置の前記バックライト光源側に配置して用いられる偏光板とを有する偏光板複合体を備えた画像表示装置であって、 前記光透過性甚材(2)は、ポリエステル基材であり、 前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり、 前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されている、 画像表示装置。」 イ 相違点 本件特許発明1と、引用発明1は、次の点で相違する。 (相違点1-1-1) 「光透過性基材(1)」が、本件特許発明1は、「ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm~500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000~2万nmであ」るのに対して、引用発明1は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であって、「フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny」、「膜厚をdとした時、(nx-ny)×dで定義される面内位相差値R0が200~1200nmもしくは2000~7000nmであり、膜厚が15~75μmの範囲内であ」る点。 (相違点1-1-2) 本件特許発明1は、「前記光透過性基材(1)の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向と平行に配置され」ているのに対して、引用発明1は、そのようなものであるかどうか不明である点。 (相違点1-1-3) 本件特許発明1は、「前記画像表示装置は、前記表示画面に入射する割合の多い左右方向に振動するS偏光に対し、前記光透過性基材(1)の屈折率が小さい方向である進相軸の方向が平行となるように室内に設置されるものである」のに対して、引用発明1は、そのようなものであるかどうか不明である点。 (3) 判断 相違点1-1-1について検討する。 ア 引用例1でいう「本発明」が「解決しようとする課題」は、「ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって、液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供すること」、「前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供すること」(【0010】)である。 イ また、引用例1には、「背景技術」として、以下のとおり記載されている。 (ア) 「液晶表示装置のさらなる薄型軽量化を望む強い市場要求を受けて、液晶表示装置を構成する液晶パネル、拡散板、バックライトユニット、および駆動IC等の薄型化や小型化が進められている。このような状況下、液晶パネルを構成する部材である偏光板も10μmの単位で薄型化することが求められている。」(【0003】) (イ) 「同時に、液晶表示装置の普及に伴って、市場からのコストダウン要求も日増しに強くなっており、偏光板においてもさらなるコストダウンや生産性の向上が必須となっている。」(【0004】) (ウ) 「その保護フィルムに位相差を持たせて光学補償機能を付与することにより、構成部材の削減と生産工程の簡便化を図る試みが広くなされている。このような構成とすることで、偏光板と位相差板との積層物である複合偏光板を薄型軽量化することができ、さらに液晶表示装置の構成部材点数が削減されることで、生産工程を簡素化し、歩留まりを向上させてコストダウンに繋げることが可能となる。」(【0005】) (エ) 「保護フィルムをトリアセチルセルロース以外の他の樹脂で置き換える試みも積極的に進められている。・・・略・・・環状オレフィン系樹脂は一般的に高価であるため、現状は、より付加価値の高い位相差フィルムに用いられており、単なる保護フィルムとして使用するには、コスト削減の点から釣り合いがとれないという問題を有している。」(【0006】) (オ) 「上記要求を満足できる技術として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする手法が提案されている。ポリエチレンテレフタレートは機械的強度に優れることから、薄膜化に適しており、偏光板の薄型化を実現できる。さらに、トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂と比較して、一般的にコストの面からも優位性を有する。加えて、トリアセチルセルロースと比較して、低透湿性で低吸水性といった特徴を有することから、耐湿熱性や耐冷熱衝撃性にも優れ、環境変化に対して高い耐久性を持つことも期待できる。」(【0007】) (カ) 「しかしながら、一方で、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板を液晶表示装置に搭載した場合、トリアセチルセルロースフィルムを保護フィルムとする一般的な偏光板に比べて、その高いレタデーション値に由来する斜め方向からの色ムラ(干渉ムラ、虹ムラとも言う)が目立ち、視認性に劣るという問題を有している。」(【0008】) ウ さらに、引用例1には、「課題を解決するための手段」について、以下のとおり記載されている。 (ア) 「ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板において、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の色ムラを効果的に低減でき、高い視認性と薄型化、低コスト化との両立が実現できることを見出した。」(【0011】) (イ) 「すなわち、本発明によれば、・・・略・・・該偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板が提供される。」(【0012】) エ 加えて、引用例1には、「発明の効果」として、「Nz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示し、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することができる。」(【0021】)と記載されている。 オ 以上ア~エを勘案すると、引用発明1において、[A]「光出射側(視認側)の偏光板」の「光出射側(視認側)」の保護フィルム及び「バックライト光源側(入射側)の偏光板」の「バックライト光源側(入射側)」の保護フィルムとして、[B-1]機械的強度に優れ、[B-2]偏光板の薄型化を実現でき、[B-3]トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂と比較して、コストの面からも優位性を有し、[B-4]トリアセチルセルロースと比較し、低透湿性で低吸水性を有することから、耐湿熱性や耐冷熱衝撃性にも優れ、環境変化に対して高い耐久性を持つ、[C]「Nz係数が2.0未満」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」を用いることは、[D]「液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供」し、「前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供する」との課題を解決するために、必須の事項であることが理解できる(当合議体注:引用例1の請求項1、2の記載からも理解されることである。)。 カ したがって、引用発明1において、「光出射側(視認側)の偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に替えて、ポリエチレンナフタレートフィルム(基材)を採用することには、特段の動機付けが必要と言える。 しかしながら、特許異議申立人が提出した特開2009-169389号(甲第2号証)、引用例3(甲第3号証)、引用例4(甲第4号証)、引用例5(甲第5号証)には、ポリエチレンテレフタレートに替えて、ポリエチレンナフタレートフィルムを採用するについて記載も示唆もされていない。 一方、本件特許の出願日前の当業者であれば、ポリエステルフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの他、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを心得ている(例えば、引用例2(甲第6号証)の[0027]には、「本発明に用いられるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレナフタレートを用いることができる」と記載されている。)。 しかしながら、PETフィルムの方がPENフィルムよりも安価であることは、技術常識である。例えば、PETフィルム及びPENフィルムの価格については、特許権者による令和3年1月4日付け意見書(以下、「特許権者意見書」という。)に添付された乙第1号証(東京マーケティング本部 ケミカル&マテリアルグループ 調査・編集,2011 フィルム用高機能材料の市場展望とフィルムメーカー戦略,株式会社 富士経済,2011年6月15日)の第55頁「8.価格動向」のPETフィルムのグレード別の価格・動向の表には、「光学用」の価格が「600~2,000」「円/kg」であること、「光学用」は低価格化の動向であることが記載されている。また、同第60頁「8.価格動向」のPENフィルムのグレード別の価格・動向の表には、「標準品」の価格が「3,800~5,000」「円/kg」であること、「白色PENフィルム」の価格が「4,000~5,200」「円/kg」であること、「超高透明品」の価格が「10,000~」「円/kg」であること、いずれのグレードの価格も横ばいの動向であることが、それぞれ示されている。 そうすると、乙第1号証からは、PETフィルムとPENフィルムとには、価格にして、1.9倍(=3,800/2,000)~16倍以上(10,000/600)の価格差があること、価格差の動向は広がる動向であることが理解できる。さらに、同60頁の上記表のPENの「標準品」、「白色PENフィルム」、「超高透明品」とのグレード分け及びその価格から、(同55頁の上記表に示される)PETに比較して、PENは透明性に劣る材料であること、透明性に優れるPENはより高価であることも理解できる(当合議体注:透明性については、特許権者意見書に添付された乙第2号証(研究開発本部 第二部門 調査・編集,2019年版 機能性高分子フィルムの現状と将来展望(上巻),株式会社 富士キメラ総研,2019年1月28日,第33頁,第238頁)の第33頁の「3)ベースフィルム競合・代替動向」の表に、「品目名」「偏光子保護フィルム」において、「代替ベースフィルム」として、「PET」、「アクリル系」及び「COP」フィルムが、「低吸湿性、光学特性」との「代替フィルムの採用ポイント」から、「トレンド」が「拡大」であること、第238頁の「E4 カバーレイフィルム」の「2)ベースフィルム」の表には、「PENフィルム」及び「PETフィルム」について、「PENはPETよりも透明性が劣ることから、ほとんど採用は見られない。」ことが示されていることからも理解できる。)。 加えて、強直なPEN樹脂よりもPET樹脂の方が延伸加工性、生産性に優れることも、技術常識である。 そうすると、コストパフォーマンスや生産性に優れる偏光板の提供を課題とする引用発明1において、「光出射側(視認側)の偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に替えて、ポリエチレンナフタレートフィルム(基材)を採用する強い動機付けがあるとはいえない。 そうしてみると、引用発明1において、「光出射側(視認側)の偏光板」の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に替えて、ポリエチレンナフタレートフィルム(基材)を採用することが、当業者が容易になし得たことということはできない。 キ 特許異議申立人が令和3年3月8日に提出した意見書(以下、「異議申立人意見書」という。)の主張について (ア) 特許異議申立人は、「引用例2にも、『近年、LCDの薄型化に伴い、偏光板の薄層化が求められるようになっている。しかし、このために保護フィルムとして用いられているTACフィルムの厚みを薄くすると、充分な機械強度を得ることが出来ず、また透湿性が悪化するという問題が発生する。また、TACフィルムは非常に高価であり、安価な代替素材が強く求められている。』と記載され(段落【0002】)、このような課題を前提として、偏光子保護フィルムの少なくとも一つとして『3000~30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルム』が採用されると共に(請求項1)、『本発明に用いられるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを用いることができる』と記載されている(段落【0027】)。」、「従って、引用例1発明において、コストダウンの必要性に応じて延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが採用されているとしても、同様の課題が引用例2発明にも記載されているため、その解決手段として記載されたポリエチレンナフタレートフィルムを、引用例1発明に適用することについて、何ら困難性を生じさせない。」と主張する。 また、特許異議申立人は、「PETフィルムよりもPENフィルムの方が複屈折率(△n)を大きく発現させ易いことは当業者に周知であり(例えば特開平11-1826号公報の段落0018、国際公開WO2008/078618号公報の段落0072、特開2008-129556号公報の段落0020など)、このため同じ位相差を得る上で、PENフィルムの方が厚みを低減(原料コスト低減にもつながる)できるという長所がある。」、「例えば、甲第9号証として提出する特開平11-1826号公報の段落0018には、『結晶の固有複屈折率として、ポリエチレンテレフタレードでは0.22、ポリエチレンナフタレートでは0.487・・・略・・・などの高い値を有する。』との記載があり、PETに比して、PENの固有複囲折は2倍以上となる。」、「一方、特許権者は、PENの価格は、PETの価格の1.9~16倍であると主張するが、仮に、価格が2倍の場合、PENフィルムは、PETフィルムと同じリタデーション、同じ価格でありながら、フィルム厚みを半分にして薄型化できるため、PETからPENに変更する動機付けは十分あるといえる。」、「更に、PENフィルムはPETフィルムよりも、耐薬品性、耐熱性、強度などで優れていることが当業者に周知であり、コストの差を考慮しても、PENフィルムを選択することには、十分な動機付けがある。」と主張する。 (イ) しかしながら、実際に、Nz係数が2.0未満であり、高リタデーションの、透明性に優れるPENフィルムを安価に製造できるか分からない。乙第1号証によれば、「超高透明品」が「10,000~」「円/kg」であり、「白色PENフィルム」でも「4,000~5,200」「円/kg」であり、実際には、透明性に優れるPENフィルムは、PETに比較してかなり高価と考えられる。加えて、強直なPEN樹脂は、PET樹脂よりも延伸加工性、生産性に劣るものであることは既に述べたとおりである。 そうしてみると、「PETフィルムよりもPENフィルムの方が複屈折率(△n)を大きく発現させ易」く、PENフィルムはより薄型化できるとしても、コストパフォーマンスや生産性に優れる偏光板の提供を課題とする、引用発明1において、PETフィルムに替えて、PENフィルムを選択することに十分な動機付けがあるとまではいえない。 ク 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3~5(甲第3号証~甲第5号証)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本件特許発明2について 本件特許発明2と、引用発明1は、少なくとも、上記2(2)イで述べた相違点1-1-1で相違する。 そして、相違点1-1-1についての判断は、前記2(3)において既に述べたとおりである。 したがって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、当業者といえども、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3~5(甲第3号証~甲第5号証)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本件特許発明3について 本件特許発明3と、引用発明1は、少なくとも、上記2(2)イで述べた相違点1-1-1で相違する。 そして、相違点1-1-1についての判断は、前記2(3)において既に述べたとおりである。 したがって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3~5(甲第3号証~甲第5号証)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 本件特許発明4~9について 本件特許発明4~9は、いずれも相違点1-1-1に係る、本件特許発明1、本件特許発明2あるいは本件特許発明3の構成を具備する発明である。 したがって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4~9は、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3~5(甲第3号証~甲第5号証)の記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 6 本件特許発明10について 本件特許発明10と引用製造方法発明1とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 (相違点1-10-1) 「光学積層体を配置する工程」において、本件特許発明10は、「光透過性基材(1)」は、「ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm~500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000~2万nmであるものを用い」ているのに対して、引用製造方法発明1は、「前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であって、「フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny」、「膜厚をdとした時、(nx-ny)×dで定義される面内位相差値R0が200~1200nmもしくは2000~7000nmであり、膜厚が15~75μmの範囲内であ」る点。 そして、相違点1-10-1についての判断は、前記2(3)において既に検討した相違点1-1-1と同様なものである。 したがって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明10は、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3~5(甲第3号証~甲第5号証)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 7 本件特許発明11について 本件特許発明11と、引用表示方法発明1とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 (相違点1-11-1) 「光透過性基材(1)」は、本件特許発明11は、「ポリエチレンナフタレート基材であり、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であり、厚みが5μm~500μmであり(ただし、65μm未満である場合を除く)、リタデーションが7000~2万nmであるものを用い」ているのに対して、引用表示方法発明1は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であって、「フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny」、「膜厚をdとした時、(nx-ny)×dで定義される面内位相差値R0が200~1200nmもしくは2000~7000nmであり、膜厚が15~75μmの範囲内であ」る点。 そして、相違点1-11-1についての判断は、前記2(3)において既に検討した相違点1-1-1と同様なものである。 したがって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明11は、引用例1(甲第1号証)、特開2009-169389号公報(甲第2号証)、引用例3~5(甲第3号証~甲第5号証)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立の理由の概要 特許異議申立人は、特許異議申立理由の「理由B」として、本件特許発明1、10及び11は、甲第6号証(引用例2)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。また、特許異議申立人は、本件特許発明2~9は、甲第6号証(引用例2)、引用例4(甲第4号証)、引用例5(甲第5号証)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)の記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも主張している。 2 「理由B」について (1) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と、甲第6号証(引用例2)の請求の範囲の請求項2に記載された「液晶表示装置」の発明(以下、「引用発明6」という。)とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 (相違点6-1-1) 本件特許発明1は、「偏光板」が、「バックライト光源側から、少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され」たものであり、「前記光透過性甚材(2)は、ポリエステル基材であり」、「前記光透過性基材(2)に、偏光された光が入射されるものであり」、「前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とは、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層されて」いるのに対して、引用発明6は、そのようなものであるかどうか不明である点。 イ 判断 相違点6-1-1について検討する。 引用発明6の「液晶表示装置」は、「偏光子保護フィルムの少なくとも1つ」を「3000~30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルム」としたものである。 しかしながら、甲第6号証(引用例2)の[0001]~[0024]の記載に接した当業者であれば、引用発明6の「液晶表示装置」においては、液晶セルの偏光特性を変化させてしまうため、偏光特性が必要とされる箇所に「3000~30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルム」を配置することは好ましくないと理解する。 そうすると、たとえ、甲第8号証の1(特開2009-169389号公報)、甲第8号証の2(特開2009-157347号公報)、甲第8号証の3(特開2011-90042号公報)、甲第8号証の4(特開2009-109993号公報)及び甲第8号証の5(特開2009-300661号公報)に例示されるように、「偏光板とバックライト光源との間に輝度向上フィルム(即ち、反射型偏光分離フィルム)を配置し、光源側偏光子保護フィルムとして延伸PETフィルムを使用し、延伸PETフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸を直交関係に配置する」ことが、本件特許の出願前に周知技術であったとしても、引用発明6に基づいて発明をする当業者が、この周知技術を考慮するとはいえない。 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第6号証(引用例2)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)に記載された発明及び(甲第8号証の1乃至甲第8号証の5に記載された)周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (2) 本件特許発明2~9について 本件特許発明2~9は、いずれも相違点6-1-1に係る本件特許発明1の構成を具備する発明である。 よって、本件特許発明1と同様の理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2~9は、甲第6号証(引用例2)、引用例4(甲第4号証)、引用例5(甲第5号証)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (3) 本件特許発明10について ア 対比 本件特許発明10と、引用例2の請求の範囲の請求項2の記載及び技術常識から理解される、引用発明6の製造方法の発明(以下、「引用製造方法発明6」という。)とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 (相違点6-10-1) 本件特許発明10は、「偏光板」が、「少なくとも、面内に複屈折率を有する光透過性基材(2)と偏光子(2)とがこの順に積層され」たものであり、「前記光透過性甚材(2)は、ポリエステル基材であるものを用い」、「前記光透過性基材(2)と前記偏光子(2)とを、前記光透過性基材(2)の屈折率が小さい方向である進相軸と、前記偏光子(2)の透過軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように積層する工程を有し」いるのに対して、引用製造方法発明6は、そのようなものであるかどうか不明である点。 相違点6-10-1について検討すると、たとえ「偏光板とバックライト光源との間に輝度向上フィルム(即ち、反射型偏光分離フィルム)を配置し、光源側偏光子保護フィルムとして延伸PETフィルムを使用し、延伸PETフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸を直交関係に配置する」ことが、本件特許の出願前に周知技術であったとしても、本件特許発明1と同様な理由により、引用製造方法発明6に基づいて発明をする当業者が、この周知技術を考慮するとはいえない。 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲第6号証(引用例2)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (4) 本件特許発明11 本件特許発明10と同様の理由により、本件特許発明11は、甲第6号証(引用例2)、甲第7号証(特開2008-176059号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した理由及び特許異議申立書に記載した理由によっては、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700593

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