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特許異議申立

2020-700291

光学積層体、偏光板、偏光板の製造方法、画像表示装置、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法

審判番号
2020-700291
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-180222外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年04月23日
審決日
2021年06月29日
公報発行日
2021年10月29日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6597742号発明「光学積層体、偏光板、偏光板の製造方法、画像表示装置、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置の視認性改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6597742号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〕、〔2〕について訂正することを認める。 特許第6597742号の請求項1、2に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続等の経緯 特願2013-529462号(以下「もとの特許出願」という。)は、2013年5月21日(先の出願に基づく優先権主張 平成24年5月31日及び同年10月5日,以下同じ)を国際出願日とする出願であり、特願2013-219367号(以下「第二出願」という。)は、もとの特許出願の一部を平成25年10月22日に新たな特許出願としたものであり、特願2015-166031号(以下「第三出願」という。)は、第二出願の一部を平成27年8月25日に新たな特許出願としたものである。 そして、特許第6597742号の請求項1及び請求項2に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2017-180222号)は、第三出願の一部を平成29年9月20日に新たな特許出願としたものであり、令和元年10月11日にその特許権の設定の登録がされたものである。 本件特許について、令和元年10月30日に特許掲載公報が発行されたところ、令和2年4月23日に、特許異議申立人 笠原佳代子(以下「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立てがされた。 その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和2年 7月10日付け:取消理由通知書 令和2年 9月14日付け:訂正請求書 令和2年 9月14日付け:意見書(特許権者) 令和2年11月24日付け:意見書(異議申立人) 令和3年 1月 8日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和3年 3月22日付け:訂正請求書 令和3年 3月22日付け:意見書(特許権者) 令和3年 6月 7日付け:意見書(特許異議申立人) なお、令和3年3月22日付け訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたことから、令和2年9月14日付け訂正請求書による訂正の請求は、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第6597742号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び請求項2について訂正することを求める、というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体」と記載されているのを、「面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体(全ヘイズをH%とし、透過鮮明度をTc%としたときに、Tc≦8Hを満たすものを除く)」に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記光透過性基材は、リタデーションが3000nm以上である」と記載されているのを、「前記光透過性基材は、リタデーションが7000nm以上である」に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に「有機エレクトロルミネッセンス表示装置である請求項1記載の画像表示装置。」と記載されているのを、「面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光素子上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板を備える画像表示装置であって、 前記光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であるポリエチレンテレフタレートからなる基材であり、 前記ポリエチレンテレフタレートからなる基材の厚みは、40~500μmの範囲内であり、 前記光学積層体と前記偏光素子とは、前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光素子の吸収軸とが90°±10°(前記光透過性基材の遅相軸と前記偏光素子の吸収軸とのなす角が90°である場合を除く)となるように配置され、 前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向に対して0°±30°の範囲に配置して用いられ、 前記光透過性基材と前記光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい(nx<np<nf)、又は、前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きく(nf<np<ny)、前記プライマー層の厚みが65~125nmであり、 前記光透過性基材は、リタデーションが7000nm以上であり、 前記画像表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置である ことを特徴とする画像表示装置。」に訂正する。 (4) 訂正事項4 明細書の【0094】に「実施例2」と記載されているのを「参考例1」に訂正し、明細書の【0096】に「実施例4」と記載されているのを「参考例2」に訂正し、明細書の【0097】に「実施例5」と記載されているのを「参考例3」に訂正し、明細書の【0098】に「実施例6」と記載されているのを「参考例4」に訂正し、明細書の【0105】に「参考例1」と記載されているのを「参考例5」に訂正し、明細書の【0106】に「参考例2」と記載されているのを「参考例6」に訂正し、「実施例4、5」と記載されているのを「参考例2、3」に訂正し、明細書の【0107】に「参考例3」と記載されているのを「参考例7」に訂正する。 (5) 訂正請求について 本件訂正請求は、訂正前の一群の請求項である請求項1及び請求項2に対してされたものである。また、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書の訂正をする場合であるところ、訂正事項4による訂正は、当該明細書に係る訂正後の一群の請求項の全てである請求項1及び請求項2について行われたものである。 3 訂正の適否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1による訂正は、請求項1に記載された発明の範囲から、「面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体」が「全ヘイズをH%とし、透過鮮明度をTc%としたときに、Tc≦8Hを満たす」場合の発明を除くものである。 そうしてみると、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。 また、訂正事項1による訂正は、請求項1に記載された発明の範囲から一部の態様を除くにとどまるものである。 そうしてみると、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 さらに、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、請求項1に記載された「光透過性基材」を、「リタデーションが3000nm以上である」ものから、「リタデーションが7000nm以上である」ものに限定する訂正である。 そうしてみると、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。 また、本件特許の願書に添付した明細書の【0014】には、「上記ポリエステル基材は、ニジムラ発生を防止でき、視認性改善が極めて良好となることから、リタデーションが3000nm以上であることが好ましい。・・・略・・・より好ましい範囲は、7000~2万nmであり、この範囲であると、本発明の光学積層体が画像表示装置に、上記ポリエステル基材の遅相軸が、上記表示画面の上下方向に対して0°±30°~40°の範囲で配置された場合、つまり、上記ポリエステル基材の遅相軸が、上記表示画面の上下方向に対して完全な平行よりも少しずれた角度を持って配置されている場合であっても、ニジムラ防止性を更に良好にできる。」と記載されている。 そうしてみると、訂正事項2による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。 さらに、訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3による訂正は、[A]請求項1の記載を引用する請求項2の記載を、請求項1の記載を引用しないものとし、さらに、[B]「光透過性基材」を、「リタデーションが3000nm以上である」ものから、「リタデーションが7000nm以上である」ものに限定する訂正である。 そうしてみると、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる事項(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。)及び1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。 また、上記[A]の訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは、明らかである。 さらに、上記[B]の訂正については、前記(2)で述べたのと同様に判断することができるから、上記[B]の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないものである。 (4) 訂正事項4について 訂正事項4による訂正は、訂正事項2及び訂正事項3による訂正により、発明の範囲から含まれないこととなった実施例2、実施例4、実施例5及び実施例6を、それぞれ参考例1、参考例2、参考例3及び参考例4とするとともに、訂正前の参考例1、参考例2及び参考例3をそれぞれ参考例5、参考例6及び参考例7とすることにより、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図る訂正である。 そうしてみると、訂正事項4による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。また、この訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは、明らかである。 4 まとめ 本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 また、特許権者より、請求項2について、別の訂正単位とする求めがされた。 よって、結論に記載のとおり、特許第6597742号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び請求項2について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 前記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたから、本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 「【請求項1】 面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体(全ヘイズをH%とし、透過鮮明度をTc%としたときに、Tc≦8Hを満たすものを除く)が、偏光素子上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板を備える画像表示装置であって、 前記光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であるポリエチレンテレフタレートからなる基材であり、 前記ポリエチレンテレフタレートからなる基材の厚みは、40~500μmの範囲内であり、 前記光学積層体と前記偏光素子とは、前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光素子の吸収軸とが90°±10°(前記光透過性基材の遅相軸と前記偏光素子の吸収軸とのなす角が90°である場合を除く)となるように配置され、 前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向に対して0°±30°の範囲に配置して用いられ、 前記光透過性基材と前記光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい(nx<np<nf)、又は、前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きく(nf<np<ny)、前記プライマー層の厚みが65~125nmであり、 前記光透過性基材は、リタデーションが7000nm以上である ことを特徴とする画像表示装置。 【請求項2】 面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光素子上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板を備える画像表示装置であって、 前記光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上であるポリエチレンテレフタレートからなる基材であり、 前記ポリエチレンテレフタレートからなる基材の厚みは、40~500μmの範囲内であり、 前記光学積層体と前記偏光素子とは、前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光素子の吸収軸とが90°±10°(前記光透過性基材の遅相軸と前記偏光素子の吸収軸とのなす角が90°である場合を除く)となるように配置され、 前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向に対して0°±30°の範囲に配置して用いられ、 前記光透過性基材と前記光学機能層との間にプライマー層を有し、 前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい(nx<np<nf)、又は、前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きく(nf<np<ny)、前記プライマー層の厚みが65~125nmであり、 前記光透過性基材は、リタデーションが7000nm以上であり、 前記画像表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置である ことを特徴とする画像表示装置。」 第4 取消しの理由 令和3年1月8日付け取消理由通知書により通知した取消しの理由は、本件特許の請求項1に係る発明は、最先の先の出願(以下、単に「先の出願」という。)前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである、というものである。 引用文献1:特開2009-156938号公報(甲3) 引用文献2:特開2004-345333号公報(甲2の1) 引用文献3:特開2010-107542号公報(甲2の2) 引用文献4:特開2006-163151号公報(甲2の3) 引用文献5:特開2007-253512号公報(甲2の4) 引用文献6:特開2010-284943号公報(甲2の5) 引用文献7:梅本清司、「大型液晶ディスプレイ用光学補償フィルム」、月刊ディスプレイ、2007年10月号別冊、2007年10月17日、株式会社テクノタイムズ社発行、45~53頁(甲5) 引用文献8:特開2011-8169号公報(甲6の1) 引用文献9:特開2010-277028号公報(甲6の2) 引用文献10:特開2010-217844号公報(甲6の3) 引用文献11:特開2010-54824号公報(甲第6の4) 引用文献12:特開2009-169389号公報(甲第6の5) なお、主引用例は引用文献1であり、その他の文献は、周知技術又は先の出願時の技術水準を示す文献である。 第5 当合議体の判断 1 引用文献の記載及び引用発明 (1) 引用文献1の記載 令和3年1月8日付けで特許権者に通知した取消しの理由で引用された引用文献1(特開2009-156938号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 表面に微細な凹凸形状を有する防眩層が、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された防眩フィルムであって、該防眩フィルムの全ヘイズをH%とし、透過鮮明度をTc%としたときに、以下の関係式(1)を満たすことを特徴とする防眩フィルム。 Tc≦8H   ・・・(1) …省略… 【請求項9】 請求項1~7のいずれかに記載の防眩フィルムまたは請求項8に記載の防眩性偏光板と、画像表示素子とを備える画像表示装置であって、 前記防眩フィルムまたは前記防眩性偏光板は、その防眩層側を外側にして画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は、フィルムの機械的強度およびコスト面に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた防眩(アンチグレア)フィルム、ならびに当該防眩フィルムを用いた防眩性偏光板および画像表示装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の画像表示装置は、その表示面に外光が写り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。 …省略… 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 上記課題を解決するためには、フィルムの機械的強度およびコスト面で優れる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを防眩フィルムの基材フィルムとして使用することが考えられる。しかし、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、画像表示装置、特に液晶表示装置に配置して映像を見た場合、その位相差の影響により、斜め方向から見たときに色ムラ(干渉ムラ、虹ムラともいう)が目立ち、視認性に劣るという問題を有していた。 【0009】 本発明は、かかる現状に鑑みなされたものであり、その目的は、フィルムの機械的強度およびコスト面に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて、優れた防眩性能を示す防眩(アンチグレア)フィルム、ならびに当該防眩フィルムを用いた防眩性偏光板および画像表示装置を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、フィルムの機械的強度およびコスト面で優れるポリエチレンテレフタレートフィルムを防眩フィルムの基材フィルムとして用い、該防眩フィルムの全ヘイズH%と透過鮮明度Tc%が特定の関係を満たす防眩層を該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成すれば、薄いながらも十分な機械的強度を備えながら、画像表示装置に配置した際に色ムラも観察されない防眩フィルムとなることを見出した。 【0011】 すなわち、本発明による防眩フィルムは、表面に微細な凹凸形状を有する防眩層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された防眩フィルムであって、該防眩フィルムの全ヘイズをH%とし、透過鮮明度をTc%としたときに、以下の関係式(1)を満たすことを特徴とする。 【0012】 Tc≦8H   ・・・(1) …省略… 【0017】 また本発明により、上記いずれかに記載の防眩フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせてなる防眩性偏光板であって、該偏光フィルムは、防眩フィルムの防眩層が形成されている面と反対側の面に配置される防眩性偏光板が提供される。 【0018】 本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板は、液晶表示素子やプラズマディスプレイパネルなどの画像表示素子と組み合わせて、画像表示装置とすることができる。すなわち、本発明によれば、上記いずれかに記載の防眩フィルムまたは上記防眩性偏光板と、画像表示素子とを備え、防眩フィルムまたは防眩性偏光板が、その防眩層側を外側にして画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置が提供される。 【発明の効果】 【0019】 本発明の防眩フィルムは、色ムラを低減しつつ優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が防止される。かかる本発明の防眩フィルムを偏光フィルム(偏光子)と組み合わせた防眩性偏光板も、同様の効果を発現する。そして、本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板を配置した画像表示装置は、防眩性能が高く、視認性に優れる上に、パネルの強度が補強され、パネルの反りを防止することが出来る。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムが有する位相差に起因する、斜め方向から観察したときの色ムラが改善される。 【発明を実施するための最良の形態】 【0020】 <防眩フィルム> 本発明の防眩フィルムは、表面に微細な凹凸形状を有する防眩層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された構成を有する。図1(a)および(b)は、本発明の防眩フィルムの好ましい例を示す断面模式図である。図1(a)に示される防眩フィルム103aは、ポリエチレンテレフタレートフィルム101aと、ポリエチレンテレフタレートフィルム101aの表面上に積層された、表面に微細な凹凸形状を有する防眩層102aとを備える。防眩層には表面凹凸形状を形成するためのフィラー104aが分散されている。図1(b)に示される防眩フィルム103bは、ポリエチレンテレフタレートフィルム101bと、ポリエチレンテレフタレートフィルム101bの表面上に積層された、表面に微細な凹凸形状を有する防眩層102bとを備える。防眩層102a、102bは、硬化によって硬い被膜を与えるものであることから、ハードコート層と呼ばれることもある。 …省略… 【0021】 <ポリエチレンテレフタレートフィルム> 本発明の防眩フィルムはポリエチレンテレフタレートフィルムのいずれか一方の面またはその両面に微細な凹凸形状を有する防眩層を積層して作製される。該ポリエチレンテレフタレートフィルムは一軸延伸もしくは二軸延伸されていることが好ましい(このように一軸延伸もしくは二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを以下単に「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」とも記す)。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コストなどに優れたフィルムであり、このようなポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた防眩フィルムは、機械的強度等に優れるとともに、厚みの低減を図ることができる。 …省略… 【0027】 このような延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みdPETは、20μm以上100μm以下とすることが好ましく、30μm以上50μm以下とすることがより好ましい。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みdPETが20μmm未満であると、ハンドリングしにくい傾向にあり、厚みdPETが100μmを超えると、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内位相差値RPETは、1000nm以上であることが好ましく、より好ましくは3000nm以上である。面内位相差値RPETが1000nm未満であると、正面からの色つきが目立つ傾向にある。なお、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内位相差値RPETは、下記式(4)で表される。 【0028】 RPET=(na-nb)×dPET     ・・・(4) ここで、naは延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内遅相軸方向の屈折率、nbは面内進相軸方向(面内遅相軸方向と直交する方向)の屈折率である。 …省略… 【0030】 延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける、一方の面もしくは両面には各種の易接着処理が施されていても良い。易接着処理は特に限定されるものではなく、従来公知の処理、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、溶剤処理などがあげられる。 …省略… 【0032】 <防眩層および全ヘイズ/透過鮮明度> 本発明の防眩フィルムに形成される、表面に微細な凹凸形状を有する防眩層は、上記ポリエチレンテレフタレートフィルム(好ましくはその延伸品)の表面上に積層されるものであり、防眩フィルムとしての全ヘイズH%と透過鮮明度Tc%は上記関係式(1)を満たすものである。関係式(1)を満たさない場合には該防眩フィルムを画像表示装置に配置した際に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの位相差に起因する色ムラが観察されるようになる。また、この色ムラを好適に抑えるためには、防眩フィルムのヘイズH%と透過鮮明度Tc%は上記関係式(2)を満たすことが好ましく、さらには上記関係式(3)を満たすことがより好ましい。 …省略… 【0034】 ここで、防眩フィルムの全ヘイズH%は次のようにして測定される。すなわち、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム上に微細な凹凸形状を有する防眩層を形成し、この防眩層が形成されていない方の面が接合面となるようにして、該防眩フィルムとガラス基板とを、透明粘着剤を用いて貼合し、JIS K 7136に準拠して全ヘイズを測定する。 【0035】 また、本発明の防眩フィルムの透過鮮明度Tc%は次のようにして測定される。すなわち、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム上に、微細な凹凸形状を有する防眩層を形成し、この防眩層が形成されていない方の面が接合面となるように、該防眩フィルムとガラス基板とを、透明粘着剤を用いて貼合し、JIS K 7105に規定される方法で測定する。この規格では、像鮮明度の測定に用いる光学くしとして、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類が規定されている。本発明で規定する防眩フィルムにおいては、これら4種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度の和をもって透過鮮明度と呼ぶことにする。この定義による場合の透過鮮明度の最大値は400%である。 【0036】 図2は、基材フィルムとして一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた防眩フィルムを画像表示装置に配置した際の色ムラの程度を評価するために、防眩フィルムの全ヘイズH%と透過鮮明度Tc%との関係を示した図である。図2から明らかなように防眩フィルムの全ヘイズH%と透過鮮明度Tc%が関係式(1)を満たさない場合(すなわち直線Tc=8Hより上側(Tc>8H)の領域)は色ムラが酷く観察される。 …省略… 【0059】 <防眩性偏光板> 本発明の防眩フィルムは、防眩性能が高く、視認性に優れる上に、パネルの強度が補強され、パネルの反りを防止することが出来るため、画像表示装置に装着したときに視認性および機械的強度に優れたものとなる。画像表示装置が液晶ディスプレイである場合には、この防眩フィルムを偏光板に適用することができる。 …省略… 【0061】 <画像表示装置> 本発明の画像表示装置は、本発明の防眩フィルムまたは上記のような防眩性偏光板と、画像表示素子とを備えるものである。ここで、画像表示素子は、上下基板間に液晶が封入された液晶セルを備え、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行なう液晶パネルが代表的であるが、その他、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなど、公知の各種ディスプレイに対しても、本発明の防眩フィルムまたは上記のような防眩性偏光板を適用することができる。 …省略… 【0062】 また、本発明の防眩フィルムを画像表示装置に適用した場合には、従来の防眩フィルムを用いた場合よりもパネルの強度が補強され、パネルの反りを防止することが出来る。また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが有する位相差に起因する、斜め方向から観察したときの色ムラも観察されない。」 ウ 「【実施例】 【0063】 …省略… 【0070】 <実施例1> (A)偏光フィルムの作製 平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であった。 【0071】 (B)防眩フィルムの作製 以下の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60%で溶解されている紫外線硬化性樹脂組成物を用意した。 【0072】 ペンタエリスリトールトリアクリレート         60部 多官能ウレタン化アクリレート             40部 (ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物) 次に、この紫外線硬化性樹脂組成物の固形分100部に対して、重量平均粒子径が2.7μmの多孔質シリカ粒子「サイリシア」(商品名、富士シリシア化学(株)製)を3部添加し、光重合開始剤である「ルシリン TPO」(BASF社製、化学名:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を3部添加して塗布液を調製した。 【0073】 この塗布液を、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)上に、乾燥後の塗布厚みが3μmとなるように塗布し、80℃に設定した乾燥機中で1分間乾燥させた。乾燥後のフィルムの紫外線硬化性樹脂組成物層側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で300mJ/cm2となるように照射して、紫外線硬化性樹脂組成物層を硬化させて、表面に微細な凹凸形状を有する防眩層(硬化樹脂)を形成した一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる防眩フィルムを得た。このようにして得られた防眩フィルムの防眩層の厚みを実測したところ、2.7μmであった。なお本発明における防眩層の厚みとは、微細な凹凸形状の凸部のうち最も高くなる部分を測定するものとする。また、防眩層の表面の微細な凹凸形状の算術平均高さPaと最大断面高さPtを表1に示す。 【0074】 (C)防眩性偏光板の作製 上記で得られた偏光フィルムの片面に、上記で得られた本発明の防眩フィルムを、防眩層が形成されている面と反対側の面で接着剤を介して貼合し、偏光フィルムの反対面にはケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(厚み80μm)を、接着剤を介して貼合して、防眩性偏光板を得た。なお、防眩フィルムを構成する一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、その遅相軸が該偏光フィルムの延伸軸と直交するように貼合した。該前面側偏光板のトリアセチルセルロースフィルム面に粘着剤(25μm厚)の層を設けた。 【0075】 (D)液晶パネルおよび液晶表示装置の作製 垂直配向モードの液晶表示素子(すなわち画像表示素子)が搭載された市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC-32GH3」)の液晶セルから偏光板を剥離し、液晶セルの背面(バックライト側)側には、住友化学(株)製の偏光板「スミカラン SRD341E」を、液晶セルの前面(視認側)には、上記防眩性偏光板を、いずれも偏光板の吸収軸が、元々液晶テレビに貼付していた偏光板の吸収軸方向と一致するように、粘着剤層を介して貼り合わせて、液晶パネルを作製した。次に、この液晶パネルを、バックライト/光拡散板/液晶パネルの構成で組み立てて、液晶表示装置(すなわち画像表示装置)を作製した。当該液晶表示装置について、斜め方向から見たときの色ムラ(干渉ムラ)は小さかった。また、液晶パネルの反りも小さかった。 【0076】 その他の光学特性評価結果については表2に記載した。なお、表2に示される実施例1の防眩フィルムの透過鮮明度の内訳は、次のとおりである。 【0077】 透過鮮明度 0.125mm光学くし: 12.5% 0.5mm光学くし  :  9.4% 1.0mm光学くし  : 10.6% 2.0mm光学くし  : 33.4% 合計           65.9% …省略… 【0080】 【表1】 (当合議体注:便宜のため、表1を90°回転した。) 【0081】 【表2】 (当合議体注:便宜のため、表2を90°回転した。) 【0082】 本発明の防眩フィルムは色ムラを低減しつつ優れた防眩性能を示しながら延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたことから機械的強度も高く、以って画像表示装置に配置した際にも色ムラの発生しない優れたものであることが分かった。…省略…比較例1~4においては延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いているために機械的強度は高かったが、全ヘイズ(H%)と透過鮮明度(Tc%)との関係が本発明の要件を満たさないために画像表示装置に配置した際に色ムラが明確に観察された。 …省略… 【産業上の利用可能性】 【0085】 本発明の防眩フィルムを、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなどの各種ディスプレイに対し、その防眩フィルムが画像表示素子よりも視認側となるように配置することで、白ちゃけを発生させることなく、映り込み像をぼかすことができ、優れた視認性を与えるものとなる。また、機械的強度も高いためにパネルの反りなども効果的に抑えることが出来る。 【図面の簡単な説明】 【0086】 【図1】本発明の防眩フィルムの好ましい例を示す断面模式図であって、(a)は防眩層がフィラーを含み、(b)は防眩層がフィラーを含まない場合を示す。 【図2】防眩フィルムの全ヘイズH%と透過鮮明度Tc%との関係を示した図である。」 エ 図1 「 」 オ 図2 「 」 (2) 引用発明 引用文献1の【0063】~【0077】には、実施例1として、次の「液晶表示装置」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、全ヘイズ(H%)と透過鮮明度(Tc%)の値は【0081】【表2】に記載のものである。 「 ペンタエリスリトールトリアクリレート60部、多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)40部が酢酸エチルに固形分濃度60%で溶解されている紫外線硬化性樹脂組成物を用意し、 紫外線硬化性樹脂組成物の固形分100部に対して、重量平均粒子径が2.7μmの多孔質シリカ粒子を3部添加し、光重合開始剤を3部添加して塗布液を調製し、 塗布液を、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm)上に、乾燥後の塗布厚みが3μmとなるように塗布し乾燥させ、高圧水銀灯からの光を照射して、紫外線硬化性樹脂組成物層を硬化させて、表面に微細な凹凸形状を有する防眩層(硬化樹脂)を形成した一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる防眩フィルムを得、 偏光フィルムの片面に、防眩フィルムを、防眩層が形成されている面と反対側の面で接着剤を介して貼合し、偏光フィルムの反対面にはケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(厚み80μm)を、接着剤を介して貼合して、防眩性偏光板を得、ここで、防眩フィルムを構成する一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、その遅相軸が偏光フィルムの延伸軸と直交するように貼合し、 垂直配向モードの液晶表示素子が搭載された市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC-32GH3」)の液晶セルから偏光板を剥離し、液晶セルの背面(バックライト側)側に住友化学(株)製の偏光板「スミカラン SRD341E」を、液晶セルの前面(視認側)に防眩性偏光板を、いずれも偏光板の吸収軸が、元々液晶テレビに貼付していた偏光板の吸収軸方向と一致するように、粘着剤層を介して貼り合わせて、液晶パネルを作製し、 次に、この液晶パネルを、バックライト/光拡散板/液晶パネルの構成で組み立てて作製した液晶表示装置であって、 防眩フィルムの全ヘイズ(H%)は10.7%、透過鮮明度(Tc%)は65.9%である、 液晶表示装置。」 2 対比及び判断 (1) 対比 本件特許発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりである。 ア 画像表示装置 引用発明の「防眩性偏光板」は、「表面に微細な凹凸形状を有する防眩層(硬化樹脂)を形成した一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる防眩フィルムを得」、「偏光フィルムの片面に、防眩フィルムを、防眩層が形成されている面と反対側の面で接着剤を介して貼合し」たものである。また、引用発明の「液晶表示装置」は、「液晶セルの前面(視認側)に防眩性偏光板を」、「粘着剤層を介して貼り合わせ」たものである。 上記事項からみて、引用発明の「液晶表示装置」は、「一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「表面に微細な凹凸形状を有する防眩層(硬化樹脂)を形成した」「防眩フィルム」が「偏光フィルムの片面に」「貼合」され、「液晶表示装置」の「前面(視認側)に」「貼り合わせ」られて用いられる「防眩性偏光板」を備えるものである。また、引用発明の「防眩層」は、その文言からみて「防眩」という光学的機能を果たすものであり、「一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」が、面内に複屈折率を有することは技術常識である。そして、引用発明の「防眩フィルム」は、「防眩」という光学的機能を果たす、「防眩層」と「一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の積層体といえる。 そうしてみると、引用発明の「一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」、「防眩層」、「防眩フィルム」、「偏光フィルム」、「防眩性偏光板」及び「液晶表示装置」は、それぞれ本件特許発明1の「光透過性基材」、「光学機能層」、「光学積層体」、「偏光素子」、「偏光板」及び「画像表示装置」に相当する。また、引用発明の「液晶表示装置」と本件特許発明1の「画像表示装置」は、「面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体」「が、偏光素子上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板を備える画像表示装置」である点で共通する。 イ 基材の厚み 引用発明の「一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、「厚さ40μm」である。 前記アの対比結果も踏まえると、引用発明の「一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件特許発明1の「光透過性基材」が具備する構成のうち、「ポリエチレンテレフタレートからなる基材であり」及び「前記ポリエチレンテレフタレートからなる基材の厚みは、40~500μmの範囲内であり」という構成を具備する。 (2) 一致点及び相違点 ア 一致点 本件特許発明1と引用発明は、次の構成で一致する。 「面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に光学機能層を有する光学積層体が、偏光素子上に設けられ、画像表示装置の表面に配置して用いられる偏光板を備える画像表示装置であって、 前記光透過性基材は、ポリエチレンテレフタレートからなる基材であり、 前記ポリエチレンテレフタレートからなる基材の厚みは、40~500μmの範囲内である、 画像表示装置。」 イ 相違点 本件特許発明1と引用発明は、以下の点で相違する。 (相違点1) 「光学積層体」が、本件特許発明1は、「全ヘイズをH%とし、透過鮮明度をTc%としたときに、Tc≦8Hを満たすものを除く」とされているのに対して、引用発明の「防眩フィルムの全ヘイズ(H%)は10.7%、透過鮮明度(Tc%)は65.9%である」から、「全ヘイズをH%とし、透過鮮明度をTc%としたときに、Tc≦8Hを満たすもの」である点。 (相違点2) 本件特許発明1の「光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上である」とともに「前記光学積層体と前記偏光素子とは、前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光素子の吸収軸とが90°±10°(前記光透過性基材の遅相軸と前記偏光素子の吸収軸とのなす角が90°である場合を除く)となるように配置され」、「前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向に対して0°±30°の範囲に配置して用いられ」、「前記光透過性基材は、リタデーションが7000nm以上である」のに対して、引用発明の「一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の屈折率の差及びリタデーションは不明であり、また、引用発明は、「垂直配向モードの液晶表示素子が搭載された市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC-32GH3」)の液晶セルから偏光板を剥離し、液晶セルの背面(バックライト側)側に住友化学(株)製の偏光板「スミカラン SRD341E」を、液晶セルの前面(視認側)に防眩性偏光板を、いずれも偏光板の吸収軸が、元々液晶テレビに貼付していた偏光板の吸収軸方向と一致するように、粘着剤層を介して貼り合わせて」なる点。 (相違点3) 本件特許発明1は、「前記光透過性基材と前記光学機能層との間にプライマー層を有し」、「前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材の遅相軸方向の屈折率(nx)よりも大きく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも小さい(nx<np<nf)、又は、前記プライマー層の屈折率(np)が、前記光透過性基材の進相軸方向の屈折率(ny)よりも小さく、前記光学機能層の屈折率(nf)よりも大きく(nf<np<ny)、前記プライマー層の厚みが65~125nmであり」という構成を具備するのに対して、引用発明は、プライマー層を具備しない点。 (3) 相違点についての判断 事案に鑑みて、相違点1について判断する。 発明の課題に関して、引用文献1の【0008】及び【0009】には、それぞれ「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、画像表示装置、特に液晶表示装置に配置して映像を見た場合、その位相差の影響により、斜め方向から見たときに色ムラ(干渉ムラ、虹ムラともいう)が目立ち、視認性に劣るという問題を有していた。」及び「本発明は、かかる現状に鑑みなされたものであり、その目的は、フィルムの機械的強度およびコスト面に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて、優れた防眩性能を示す防眩(アンチグレア)フィルム、ならびに当該防眩フィルムを用いた防眩性偏光板および画像表示装置を提供することである。」と記載されている。また、課題を解決する手段に関して、引用文献1の【0010】には、「本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果…省略…防眩フィルムの全ヘイズH%と透過鮮明度Tc%が特定の関係を満たす防眩層を該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成すれば、薄いながらも十分な機械的強度を備えながら、画像表示装置に配置した際に色ムラも観察されない防眩フィルムとなることを見出した。」と記載され、引用文献1の【0011】及び【0012】には、それぞれ「すなわち、本発明による防眩フィルムは、表面に微細な凹凸形状を有する防眩層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された防眩フィルムであって、該防眩フィルムの全ヘイズをH%とし、透過鮮明度をTc%としたときに、以下の関係式(1)を満たすことを特徴とする。」及び「Tc≦8H   ・・・(1)」と記載されている。そして、発明の効果に関して、引用文献1の【0019】には、「本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板を配置した画像表示装置は、防眩性能が高く、視認性に優れる上に、パネルの強度が補強され、パネルの反りを防止することが出来る。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムが有する位相差に起因する、斜め方向から観察したときの色ムラが改善される。」と記載されている。加えて、引用文献1の【0036】には、「図2は、基材フィルムとして一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた防眩フィルムを画像表示装置に配置した際の色ムラの程度を評価するために、防眩フィルムの全ヘイズH%と透過鮮明度Tc%との関係を示した図である。図2から明らかなように防眩フィルムの全ヘイズH%と透過鮮明度Tc%が関係式(1)を満たさない場合(すなわち直線Tc=8Hより上側(Tc>8H)の領域)は色ムラが酷く観察される。」と記載されているところ、図2は、次のとおりである。 さらに重ねて、引用文献1の【0082】には、「比較例1~4においては延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いているために機械的強度は高かったが、全ヘイズ(H%)と透過鮮明度(Tc%)との関係が本発明の要件を満たさないために画像表示装置に配置した際に色ムラが明確に観察された。」とも記載されている。 これら引用文献1の記載内容からみて、相違点1おける「全ヘイズをH%とし、透過像鮮明度をTc%としたときに、Tc≦8Hを満たす」という構成は、引用文献1に記載された発明の課題を解決するための本質的な構成といえる。そうすると、たとえ当業者といえども、「Tc≦8Hを満たす」範囲を超えて引用発明の「防眩フィルム」の「全ヘイズ(H%)」及び「透過鮮明度(Tc%)」を調整することはない(阻害要因がある)といえる。 したがって、たとえ当業者といえども、引用発明に基づいて、相違点1に係る本件特許発明1の「全ヘイズをH%とし、透過像鮮明度をTc%としたときに、Tc≦8Hを満たすものを除く」という要件を満たす「光学積層体」を具備してなる「画像表示装置」に到るとはいえない。 この点は、特許異議申立人が提出した他の証拠を検討しても変わらない。 (4) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和3年6月7日付け意見書において、本件特許発明1は、甲6の3(特開2010-217844号公報)に記載された発明又は甲6の5(特開2009-169389号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。また、特許異議申立人は、同意見書において、甲第8号証(特開2009-157347号号公報)を新たに提出し、本件特許発明1は、甲8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。 しかしながら、特許異議申立書には、甲6の3又は甲6の5を主引用例とした特許異議の申立ての理由は記載されていない。甲8を主引用例とした特許異議の申立ての理由についても同様である。 そうすると、特許異議申立人の意見は、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由とは全く異なるものであるから、採用の限りではない。 (5) 小括 本件特許発明1は、引用文献1(甲3)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。 第6 取消しの理由において採用しなかった特許異議申立ての理由について 1 本件特許発明2について (1) 特許異議申立ての理由について 特許異議申立人は、特許異議申立書の21頁並びに36及び37頁において、引用文献1(甲3)の【0075】に記載の「液晶表示装置」が「垂直配向モードの液晶表示素子」であること等を根拠として、引用文献1には、本件特許発明2の「前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向に対して0°±30°の範囲に配置して用いられ」という構成が記載されていると主張する。 ところが、特許異議申立人は、特許異議申立書の22頁及び40頁において、引用文献1(甲3)の【0061】に、「その他、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなど、公知の各種ディスプレイに対しても、本発明の防眩フィルムまたは上記のような防眩性偏光板を適用することができる。」と記載されていることを根拠として、「垂直配向モードの液晶表示素子」に代えて「有機EL」に使用できることが記載されていると主張する。 以上のとおり、特許異議申立人が主張する取消しの理由は、液晶表示装置であることを根拠に一致点を導き出しつつ、液晶表示素子を有機ELに代えることが容易であると主張するものであり、容易推考の過程に論理矛盾を含むものであるから、採用の限りではない。 (2) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和3年6月7日付け意見書において、別件の特許異議申立て事件(異議2020-700390号)において進歩性違反が指摘されたことを指摘し、「本件では有機EL表示装置に限定した請求項2に係る発明について、全く進歩性違反が指摘される特許が維持されてしまうのは、全く理解しがたい。」と主張する。 しかしながら、前記(1)のとおりである。 そもそも、異議2020-700390号と本件では、主引用例が相違する。 2 甲1を主引用例とした特許異議申立ての理由について 特許異議申立人は、特許異議申立書の8~13頁において、甲1(特開2011-59488号公報)の特許請求の範囲(【請求項1】、【請求項2】及び【請求項8】)、発明を実施するための形態(【0073】、【0074】、【0076】、【0079】、【0081】、【0084】、【0217】、【0218】及び【0220】)、実施例1及び実施例3(【0235】【表1】)の記載を挙げ、また、甲6の1~甲6の5や甲5に記載の周知技術を挙げて、甲1に記載された発明(甲1発明)を認定している。 しかしながら、このような引用発明の認定手法は、本来、ひとまとまりの技術思想であるはずの引用発明の認定手法として適切なものとはいえない。 さらにすすんで検討すると、本件特許発明(本件特許発明1及び本件特許発明2)は、「前記光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.05以上である」とともに「前記光学積層体と前記偏光素子とは、前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光素子の吸収軸とが90°±10°(前記光透過性基材の遅相軸と前記偏光素子の吸収軸とのなす角が90°である場合を除く)となるように配置され」、「前記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸が、前記画像表示装置の表示画面の上下方向に対して0°±30°の範囲に配置して用いられ」、「前記光透過性基材は、リタデーションが7000nm以上である」という構成を具備する。すなわち、本件特許発明は、「(nx-ny)が、0.05以上である」「光透過性基材」の「遅相軸」を「画像表示装置の上下方向」とする発明であり、これは、本件特許の明細書の【0012】に記載の「本発明の光学積層体は、その用途を画像表示装置の表面に設置するものに限定し、この本発明の光学積層体を設置した画像表示装置は、上記光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸が、上記壁面や床面で反射した光の振動方向に対して垂直な方向を向いた状態となっている。このように光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸の方向を特定の方向となるように光学積層体を設置してなる画像表示装置は、反射防止性能と明所コントラストとに優れたものとなる。」という技術思想に対応したものである。 しかしながら、甲1には、このような技術思想は記載も示唆もされていない。また、上記本件特許発明の構成は、甲1において「…してもよい」や「…が好ましい」という一般的な記載を恣意的に組み合わせてもなお到るとはいえないものである。 したがって、本件特許発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、請求項1及び請求項2に係る特許を取り消すことができない。 また、他に請求項1及び請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700291

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