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特許異議申立

2020-700533

キャベツを含む青果物の鮮度保持性能に優れた包装体、及び青果物の鮮度保持方法

審判番号
2020-700533
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-069127
登録番号
特許第6636979号(P6636979)
請求日
2020年07月29日
審決日
2021年09月30日
公報発行日
2021年12月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三井化学東セロ株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人浅村特許事務所
  • 【権利者】三井化学株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人浅村特許事務所
  • 【異議申立人】森田 弘潤
審判長/審判官
  • 審判長 久保 克彦
  • 審判官 藤原 直欣
  • 審判官 村山 達也
分類
P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6636979号発明「キャベツを含む青果物の鮮度保持性能に優れた包装体、及び青果物の鮮度保持方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6636979号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、〔9-10〕について訂正することを認める。 特許第6636979号の請求項1、5-8に係る特許を維持する。 特許第6636979号の請求項2-4、9、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6636979号(以下「本件特許」という)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成29年3月30日の特許出願であり、令和元年12月27日にその特許権の設定登録がされ、令和2年1月29日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、概略次のとおりである。 令和2年 7月29日 : 特許異議申立人森田弘潤(以下「申立人」という)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て 令和2年10月16日 : 取消理由の通知 (令和2年10月13日付け取消理由通知書) 令和2年12月15日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和3年 2月15日 : 申立人による意見書の提出 令和3年 4月 1日 : 取消理由の通知 (令和3年3月29日付け取消理由通知書(決定の予告)) 令和3年 5月28日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、特許権者が平成2年12月15日に提出した訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正 1 訂正の内容 令和3年5月28日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正」という)は、特許第6636979号の明細書、及び特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正明細書、及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める、というものであって、その内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「包装体であって、包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が20体積%以上50体積%以下、かつ、内部酸素濃度が0.152体積%以上13.4体積%以下」を「包装体であって、前記包装容器の酸素透過度が、22℃、40%RHにおいて、2000cc/m2/atm/day以上、2500cc/m2/atm/day以下であり、包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度が、20体積%以上50体積%以下であり、包装体の封止直後における内部酸素濃度が、14.7体積%以上70体積%以下であり、包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が38.8体積%以上48.4体積%以下、かつ、内部酸素濃度が13.1体積%以上13.4体積%以下」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項5~8も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2から4を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5の「請求項1から4のいずれか一項に記載の包装体。」を「請求項1に記載の包装体。」に訂正する。 請求項5の記載を引用する請求項6~8も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6の「請求項1から5のいずれか一項に記載の包装体。」を「請求項1又は5に記載の包装体。」に訂正する。 請求項6の記載を引用する請求項7~8も同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7の「請求項1から6のいずれか一項に記載の包装体。」を「請求項1及び5から6のいずれか一項に記載の包装体。」に訂正する。 請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項8の「請求項1から7のいずれか一項に記載の包装体。」を「請求項1及び5から7のいずれか一項に記載の包装体。」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項9及び10を削除する。 (8)訂正事項8 明細書の段落【0063】及び【表1】に記載の「実施例3」を「参考例1」に訂正・変更する。 (9)一群の請求項 本件訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、本件訂正の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正事項1~6は、一群の請求項〔1~8〕に対して請求するものである。 本件訂正前の請求項9~10は、請求項10が、本件訂正の対象である請求項9の記載を直接的に引用する関係にあるから、訂正事項7は、一群の請求項〔9~10〕に対して請求するものである。 訂正事項8は、本件訂正前の請求項1~10の全てに対するものである。 2 訂正要件の判断 (1)請求項〔1~8〕に係る一群の請求項に対する訂正(訂正事項1~6)について ア 訂正事項1について (ア)訂正事項1は、訂正前の請求項1の「包装体」について、「包装容器の酸素透過度」を「22℃、40%RHにおいて、2000cc/m2/atm/day以上、2500cc/m2/atm/day以下」であるものに、「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度」を「20体積%以上50体積%以下」であるものに、「包装体の封止直後における内部酸素濃度」を「14.7体積%以上70体積%以下」であるものに、さらに、「包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における」「内部二酸化炭素濃度」を「38.8体積%以上48.4体積%以下」であるものに、かつ、「内部酸素濃度」を「13.1体積%以上13.4体積%以下」であるものに、それぞれ限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)a 訂正事項1のうち「包装容器の酸素透過度」についての事項は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という)の段落【0012】に「酸素透過度が20℃、90%RHにおいて、2000cc/m2/atm/day以下である包装容器を用いることが望ましい。・・・包装容器の酸素透過度は、・・・、2500cc/m2/atm/day以下であることが特に好ましい。」との記載があり、また、包装容器の酸素透過度の測定方法として段落【0013】及び【0055】に「袋を22℃、相対湿度40%の空気中・・・の室内に6時間放置」した後に測定することが記載され、さらに、段落【0063】の表1に実施例1及び2における包装容器の酸素透過率が「2,000」(cc/m2/atm/day)であることが記載されていることから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の事項といえる。 b 「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度」に関連して、本件明細書等の段落【0007】に「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度が、20体積%以上である」と記載され、また、段落【0021】に「包装体の内部二酸化炭素濃度は、包装体の封止直後の二酸化炭素濃度を調整することで、所望の範囲に調整することが可能である。より具体的には、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を調整することで、適宜調整することが可能である。例えば、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を、20体積%以上とすることが好ましい。」と記載されていることから、「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度」は、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を調整することで、包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度を20体積%以上に調整できることが把握される。さらに、段落【0063】の表1に実施例2における封入ガス組成のうち二酸化炭素が「50」(%)であることが記載されている。 そうすると、「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度」についての事項は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の事項といえる。 c 「包装体の封止直後における内部酸素濃度」に関連して、請求項9に「包装容器内の・・・酸素濃度を14.7体積%以上70体積%以下とする工程を有し、その後に該包装容器を封止する工程を更に有する」と記載され、また、段落【0023】に「包装体の内部酸素濃度は、包装直後の酸素濃度を調整することで、所望の範囲に調整することが可能である。より具体的には、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を調整することで、適宜調整することが可能である。例えば、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を、10体積%以上とすることが好ましい。」と記載されていることから、「包装体の封止直後における内部酸素濃度」は、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を調整することで調整できることが把握される。さらに、段落【0063】の表1に実施例1及び3における封入ガス組成のうち酸素がそれぞれ「70」「14.7」(%)であることが記載されている。 そうすると、訂正事項1のうち「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度」についての事項は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 d 訂正事項1のうち「包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における」「内部二酸化炭素濃度」についての事項は、本件明細書等の段落【0063】の表1に実施例1及び2における120時間の二酸化炭素濃度がそれぞれ「38.8」、「48.4」(%)であることが記載されていることから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の事項といえる。 e 訂正事項1のうち「包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における」「内部酸素濃度」についての事項は、本件明細書等の段落【0063】の表1に実施例1及び2における120時間の酸素濃度がそれぞれ「13.4」、「13.1」(%)であることが記載されていることから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の事項といえる。 f 以上より、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (ウ)訂正事項1は、既に述べたとおり特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2~4を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。請求項の削除は、新規事項を追加するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項3~6について 訂正事項3~6は、訂正事項2による請求項2~4を削除することに伴い、引用する請求項から請求項2~4を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。また、引用する請求項から一部の請求項を削除することは、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)請求項〔9~10〕に係る一群の請求項に対する訂正(訂正事項7)について 訂正事項7は、請求項9、10を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。請求項の削除は、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項8 訂正事項8は、訂正事項1に伴い、本件明細書等の実施例の内容が明確に理解できるようにするためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。 また、訂正事項8は、新規事項を追加するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)小括 以上のとおりであるから、訂正事項1乃至6、訂正事項7及び8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4項乃至第6項の規定に適合する。 よって、明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正の訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正が認められることから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明10」といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、令和3年5月28日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】 延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、又は延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体である2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の該高分子フィルムを折り重ねた状態で融着してなる包装容器内にカットキャベツを含む青果物を収納してなる包装体であって、前記包装容器の酸素透過度が、22℃、40%RHにおいて、2000cc/m2/atm/day以上、2500cc/m2/atm/day以下であり、 包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度が、20体積%以上50体積%以下であり、 包装体の封止直後における内部酸素濃度が、14.7体積%以上70体積%以下であり、 包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が38.8体積%以上48.4体積%以下、かつ、内部酸素濃度が13.1体積%以上13.4体積%以下である、上記包装体。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 前記包装容器内に更に窒素が封入されている、請求項1に記載の包装体。【請求項6】 前記高分子フィルムの厚みが、15から45μmである、請求項1又は5に記載の包装体。 【請求項7】 前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、請求項1及び5から6のいずれか一項に記載の包装体。 【請求項8】 更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、請求項1及び5から7のいずれか一項に記載の包装体。 【請求項9】(削除) 【請求項10】(削除) 第4 特許権者に通知された取消理由 本件訂正前の請求項1、5~10に係る特許に対して、当審が特許権者に対して令和3年4月1日に通知した取消理由(令和3年3月29日付け取消理由通知書(決定の予告))の概要は、次のとおりである。 ・サポート要件: 本件請求項1、5~10に係る特許は、本件請求項1、5~10に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものでないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ・進歩性: 本件特許の請求項1、5~8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ・甲第2号証:特開平4-341139号公報 第5 当審の判断 1 サポート要件について (1)酸素透過度について 当審で通知した取消理由は、本件訂正前の各請求項に記載された「包装容器の酸素透過度」の測定条件が「20℃、90%RH」であることにより「酸素透過度」が所定値である「高分子フィルムを含んでなる包装容器」は本件発明の課題を解決し得るものと当業者が認識できるように記載されておらず、また、本件訂正前の請求項1で「包装容器の酸素透過度」の上限値が2500cc/m2/atm/dayである点及び下限値が何ら特定されていない点で、また、本件訂正前の請求項9で下限値が何ら特定されていない点で、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない、というものである。 ア 本件訂正により、請求項1の記載において「包装容器の酸素透過度が、22℃、40%RHにおいて、2000cc/m2/atm/day以上、2500cc/m2/atm/day以下」であることが特定された。 イ 発明の詳細な説明では、課題の解決が確認された実施例1及び2の「包装容器の酸素透過度」は、「22℃、40%RH」の測定条件の下で「2000cc/m2/atm/day」であることが示されている(段落【0063】表1)。 本件発明の課題(段落【0005】)は、酸素透過度に加えて、内部酸素濃度及び内部二酸化炭素濃度の特定により解決されるものであり、段落【0012】に「酸素透過度が20℃、90%RHにおいて、2000cc/m2/atm/day以下である包装容器を用いることが望ましい。・・・包装容器の酸素透過度は、・・・、2500cc/m2/atm/day以下であることが特に好ましい。」との記載を考慮すれば、「包装容器の酸素透過度」の観点から、本件訂正後の請求項1に記載された発明である本件発明1が所与の課題が解決できることは十分推認し得る。 本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明5~8についても同様である。 また、本件訂正により請求項9、10は削除されたので、取消理由は該当しないものとなった。 (2)「臭い」と「褐変」の評価について 当審で通知した取消理由は、発明の詳細な説明には、外観及び異臭を客観的、正確に評価したことが把握し得る記載がないから適切な官能評価が記載されているとはいえず、課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない、というものである。 ア 発明の詳細な説明には、実施例、比較例の評価手法に関し、次の記載がある。 「【0055】以下の実施例/比較例において、各特性の評価は以下の方法で行った。 ・・・ (外観) 包装体の封を開けて、取り出した青果物を並べ、キャベツ断面を中心に全体的な褐変部分の面積を目視にてn=3で評価した。併せてカビの有無を観察した。 評価基準は以下のとおり。 A:褐変が全くなく問題ない。 B:褐変はあるが断面全体の10%以下で少し目立つ状態 C:褐変はあるが断面全体の30%以下であり、かなり目立つが販売可能な状態 D:褐変はあるが断面全体の50%以下であり、著しく目立ち消費者により販売不可能な状態 E:褐変大きく、消費者には明らかに販売不可能な状態 (異臭) 包装体の封を開けた時に顔を近づけて内部のにおいを嗅いでn=3で官能評価した。 評価基準は以下のとおり。 A:新鮮な状態で全く問題ない B:やや臭いがあるが新鮮と言える状態 C:臭いが強いが市販と同じ状態であり、販売可能な状態 D:更に臭いが強く消費者が気にする状態 E:更に臭いが強く販売不可能な状態」 イ 特許権者は、意見書を提出して、次のように主張する。 ・ 褐変(外観)については、褐変の面積割合という客観的な外部基準が採用されている。 ・ 臭いについても、消費者の容認可否や販売可能性という外部基準が採用されている。 ・ 褐変(外観)及び臭いは、客観的な基準により評価されるので、パネラー間で評価を共通するための手順が踏まれたことになる。 ウ 合議体として、特許権者のこれらの主張を踏まえてさらに検討を進める。 まず、「褐変」の評価は、その面積割合に着目したもので、これ自体は、十分客観的なものといえる。また、「褐変」の面積割合は、褐変の程度に直結するものである。したがって、その評価は、客観性が備わったものと考える。 次に、「臭い」については、単純に“よい”“わるい”“強い”“弱い”といったようなものではなく、「新鮮な状態」、「販売可能」な状態、「消費者が気にする」状態といった事項が評価の際に検討されている。そして、当該事項は、臭いに直結するものであって、包装された食品素材の商品価値の観点から定められたものと推察される。また、食品に関する技術分野における評価手法として、官能評価は、よく用いられるものであるが、それは、一定の知識・経験を有した者がパネラーとなって実施されるのが通常である。そして、「キャベツ」についての上記「新鮮な状態」等の事項は、そのようなパネラーにとって共通した認識が持てる程度の、十分な客観性を備えたものと考える。 そうしてみると、発明の詳細な説明において実施例(参考例)、比較例に対して行われた官能評価は、「褐変」、「臭い」それぞれについてのものであって、そのいずれも十分客観性を持ったものであるから、そのような評価による結果を伴った実施例は、課題が解決できることを示す上で十分なものというべきである。 (3)課題を解決できるものとして当業者が認識し得る記載(実施例)について 当審で通知した取消理由は、実施例3は、比較例5との比較において優位であるとは理解できないから、発明をサポートする開示としての適格性を欠く、というものであった。 これに対し、本件訂正により「実施例3」は「参考例」に変更された。 したがって、この点についての取消理由は、解消した。 (4)封止直後の気体組成について 当審で通知した取消理由は、本件訂正前の請求項1は、封止直後における内部二酸化炭素濃度の下限値が20体積%である点及び上限値が何ら特定されていない点、並びに、包装体の封止直後における内部酸素濃度の下限値が5体積%である点及び上限値が何ら特定されていない点で、また、本件訂正前の請求項9は、封止直後における内部酸素濃度の下限値が14.7体積%である点で、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない、というものであった。 ア 本件訂正により、請求項1の記載において「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度が、20体積%以上50体積%以下であり、包装体の封止直後における内部酸素濃度が、14.7体積%以上70体積%以下であり、」と特定された。 イ 発明の詳細な説明では、課題の解決が確認された実施例1及び2の「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度」は、それぞれ、30体積%、50体積%であり、また、それら実施例1及び2の「包装体の封止直後における内部酸素濃度」は、それぞれ、70体積%、50体積%であることが示されている(段落【0063】)。 また、本件明細書等の段落【0021】及び【0023】等の記載によれば、“包装体の封止直後”における内部二酸化炭素濃度、内部酸素濃度は、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度、酸素濃度を調整することで調整できることが把握される。 ウ 特許権者は、意見書を提出して、次のように主張する。 ・ 本件訂正により包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度及び内部酸素濃度の上限値及び下限値を特定した。 ・ 「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度」の下限値が20体積%である点については、実施例1、2の30体積%、50体積%に近接している上に、青果物の量を多くする等して呼吸により発生する二酸化炭素量を増加させることで所定の120時間後ガス組成を実現することができる。 ・ 「包装体の封止直後における内部酸素濃度」の下限値が14.7体積%である点については、「包装体の封止直後における内部酸素濃度」は封止後10℃の条件下で120時間保持した後における所定のガス組成を実現するための手段であり、その値が50体積%を下回る場合であっても、包装容器の酸素透過度を調整する等により所定のガス組成を実現し得るものである。「包装体の封止直後における内部酸素濃度」が14.7%である参考例1を踏まえても、実施例1、2を参照しつつ、120時間後の所定のガス組成を実現することが可能である。青果物の量を減らすことで、酸素の消費量を減らすことができ、120時間後の所定のガス組成を実現することが可能である。 エ 合議体として、特許権者のこれらの主張を踏まえてさらに検討を進める。 本件発明の課題(段落【0005】)は、酸素透過度に加えて、内部酸素濃度及び内部二酸化炭素濃度の特定により解決されるものであり、実施例1及び2に参考例での封入ガスの酸素濃度が14.7%であること及び段落【0021】に「包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を、20体積%以上とすることが好ましい。」との記載が存在することも合わせて考慮すれば、「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度が、20体積%以上50体積%以下であり、包装体の封止直後における内部酸素濃度が、14.7体積%以上70体積%以下」であれば、「包装体の封止直後における」「内部二酸化炭素濃度」及び「内部酸素濃度」の観点からは、本件訂正後の請求項1に記載された発明である本件発明1で所与の課題が解決できることは十分推認し得る。補足するに、充填するガスの組成は、目標とする「包装体の封止直後における」「内部二酸化炭素濃度」及び「内部酸素濃度」に近いものとするのが普通であるし、参考例は、120時間になると外観の劣化が見られるものであって、包装体の封止直後における内部酸素濃度が14.7体積%であっても、包装容器の酸素透過度、包装体の封止直後の二酸化炭素濃度、カットキャベツを含む青果物の量等を調整することで所与の課題を解決することできると認められる。 本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明5~8についても同様である。 また、本件訂正により請求項9、10は削除されたので、取消理由は該当しないものとなった。 (5)120時間後の気体組成について 当審で通知したこの点に関する取消理由は、120時間保持した後における気体組成に関して、訂正前の請求項1では、内部二酸化炭素濃度の下限値が20体積%である点及び上限値が50体積%である点、並びに、内部酸素濃度の下限値が0.152体積%である点で、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではなく、また、本件訂正前の請求項9では、内部二酸化炭素濃度の下限値が20体積%である点及び上限値が50体積%である点、並びに、内部酸素濃度の下限値が0.152体積%である点で、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない、というものである。 ア 本件訂正により、請求項1の記載において「包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が38.8体積%以上48.4体積%以下、かつ、内部酸素濃度が13.1体積%以上13.4体積%以下である」と特定された。 イ 発明の詳細な説明では、課題の解決が確認された実施例1及び2の「包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における」「内部二酸化炭素濃度」は、それぞれ、38.8体積%、43.4体積%であり、また、それら実施例1及び2の「包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における」「内部酸素濃度」は、それぞれ、13.4体積%、13.1体積%であることが示されている(段落【0063】)。 そうすると、本件発明1における「包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における」「内部二酸化炭素濃度」及び「内部酸素濃度」は、実施例1及び2を踏まえたものということができる。 したがって、本件発明1で所与の課題が解決できると理解できる。 本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明5~8についても同様である。 また、本件訂正により請求項9、10は削除されたので、取消理由は該当しないものとなった。 (6)小括 以上のとおり、本件発明1、5~8は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではなく、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。 したがって、本件請求項1、5~8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。 2 進歩性について (1)甲第2号証(特開平4-341139号公報)の記載事項 ア 甲第2号証には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】カット野菜の包装体において、該包装体にはヒートシール性を有し、減圧下で窒素および/または炭酸ガスを導入することにより、初期の残存酸素濃度が0.1~10%の範囲内でガス置換包装することが可能な、適度の酸素透過性を有するフィルムよりなる袋状体を用いたことを特徴とするカット野菜の包装体。 【請求項2】カット野菜が葉菜類であるあしたば、キャベツ、こまつ菜、サラダ菜、春菊、はくさい、パセリ、ほうれんそうまたはみつばのいずれかである請求項1記載のカット野菜の包装体。 ・・・ 【請求項10】包装体は、カット野菜の下部に位置する吸水性シートとカット野菜および吸水性シートの外側を被覆する袋状体からなり、前記吸水性シートは、カット野菜側に位置する透水性シートと、透水性シートあるいは非透水性シートと、前記両シートの間に挟着された高吸水性樹脂とから構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載のカット野菜の包装体。 【請求項11】透水性シートが、紙および/または不織布よりなる請求項1ないし10のいずれかに記載のカット野菜の包装体。 【請求項12】適度な酸素透過度性を有するフィルムの23℃における酸素透過度が、100~10000cc/m2・atm・24hrsである請求項1ないし11のいずれかに記載のカット野菜の包装体。 【請求項13】野菜を洗浄後、必要に応じて剥皮、カッティング、洗浄、脱水、計量工程を経たカット野菜を、適度な酸素透過性を有し、かつヒートシール性を有するフィルムよりなる袋状体に入れ、一旦減圧下に保持した後、窒素および/または炭酸ガスを包装体内に導入し、初期の酸素濃度が0.1%~10%の範囲内となるようにガス置換包装した後、ヒートシール密封し、冷蔵することを特徴とするカット野菜の包装方法。」 (イ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、カット野菜の包装体およびその包装方法に関し、さらに詳しくは、カット野菜の保存時の褐変、アルコール臭の発生、ドリップによる品質の低下、雑菌の繁殖を防止し得るカット野菜の包装体およびその包装方法に関する。」 (ウ)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のこのような包装形態では、包装系内の酸素および炭酸ガス濃度に関しては全く考慮されておらず、酸素濃度の低下に起因するアルコール臭の発生、過剰呼吸に起因する褐変等により鮮度変化による鮮度低下が著しく、冷蔵で保管した場合でも、可食期間は1日ないしは2日程度、加熱調理を前提としたものでも5日程度と非常に短いものであった。すなわち、野菜をカッティングすることにより、呼吸量の増大、細胞液の滲出、表面積の増大が付随して起こるため、それらに起因する褐変、異臭、腐敗、萎凋、菌の増殖は鮮度低下の大きな原因となっていた。 【0005】前記の点は野菜の種類によってもその状態は種々変化するものである。また、包装系内の酸素濃度をカット野菜の呼吸作用により低下させ、適性酸素濃度に維持する簡易CA包装も試みられているが、酸素濃度低下がカット野菜の呼吸量に依存しているため、適正酸素濃度になるのに時間がかかる為、その間に鮮度が低下する場合が多かった。 【0006】本発明者は、先にカットレタスの包装体およびその包装方法について提案したが(特願平2-274466号)、本発明は、前記先行発明の技術がレタス以外のカット野菜にも適用できることを知見し、前述の問題点を解消したものである。すなわち、本発明は、カット野菜製品のイメージアップを図り、かつ消費拡大を可能とするために、保存性が良く、しかも野菜本来のフレッシュ感を有するカット野菜の包装体とその製造方法を提供することを目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、カット野菜の状態と包装材料、包装条件を組合せることが効果的であることを知見し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、冷蔵で長期間の保存が可能であり、かつ野菜本来のフレッシュ感を有するカット野菜製品の包装体とそれを製造する方法に関する。 【0008】具体的には、本発明のカット野菜の包装体は、野菜を洗浄後、必要に応じて剥皮、カッティング、洗浄、脱水、計量工程を経たカット野菜を被覆する適度な酸素透過性を有するフィルムによる袋状体よりなるカット野菜の包装体であって、前記袋状体はヒートシール性を有し、被覆後減圧下で窒素および/または炭酸ガスを導入することによりカット野菜を、初期の残存酸素濃度が0.1%~10%の範囲内でガス置換包装することができ、その後冷蔵で保存することができることを特徴とする。 【0009】本発明が適用可能な野菜としては根菜類(かぶ、ごぼう、だいこん等)茎葉菜類(あしたば、うど、きゃべつ、ねぎ等)、果菜類(かぼちゃ、なす等)土物類(さつまいも、さといも等)芽物、つま物(あさつき、しょうが等)菌茸類(えのきだけ、わらび等)の日常食用に供される野菜類すべてが対象とされる。また、本発明のカット野菜の包装方法は、野菜を洗浄後、必要に応じて剥皮、カッティング、洗浄、脱水、計量工程を経たカット野菜を、適度な酸素透過性を有し、かつヒートシール性を有するフィルムよりなる袋状体に入れ、一旦減圧下に保持した後、窒素および/または炭酸ガスを包装体内に導入し、初期の酸素濃度が0.1%~10%の範囲内となるようにガス置換包装した後、ヒートシール密封し、冷蔵することを特徴とする。 【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明において、適度な酸素透過度を有するフィルムとしては、通常の熱可塑性樹脂の厚みを変化させて、酸素透過度を調整したもの、2種以上のフィルムを貼合し酸素透過度を調整したもの等であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、エチレン酢ビコポリマー、アイオノマー、ポリピロピレン、ポリブタジエン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン等を使用でき、フィルムの23℃における酸素透過度は100~10000cc/m2・atm・24hrsのものが望ましい。 【0011】酸素透過度が100cc/m2・atm・24hrs未満であると、カット野菜を包装した際に、包装系内に流入してくる酸素量が少なくなり、カット野菜が窒息する場合や、嫌気的呼吸によりエタノールやアルデヒドを発生し、商品価値が低下する。また、酸素透過度が10000cc/m2・atm・24hrsを越えると、包装系内に流入してくる酸素量が多くなり、包装系内の酸素濃度が低下せず、カット野菜の呼吸量は低下せず、褐変の原因となる。 ・・・ 【0013】従来のシール密封包装では、包装系内の酸素濃度低下はカット野菜の呼吸量に依存していたため、適正酸素濃度になるのに時間がかかり、その間にカット野菜は褐変する場合が多かったが、初期の残存酸素濃度が0.1%~10%の範囲内となるように窒素および/または炭酸ガス置換包装することにより包装体内の酸素濃度は、速やかに適正濃度まで低下し、その後、包装体外からの酸素透過量と、呼吸による酸素消費量のバランスが取れ、適正酸素濃度に維持されるため、褐変は発生しない。初期の残存酸素濃度が0.1%以下であると、保存中にカット野菜は嫌気的呼吸を行い、エタノールまたはアルデヒドは発生し、異臭の原因となる。また、初期の残存酸素濃度が10%以上であると、適正酸素濃度に低下するのに時間がかかり、その間に褐変が発生する場合がある。」 (エ)「【0020】 【実施例2】坪量25g/m2の紙(メーテル(株)社製MSP25)の上に高吸水性樹脂(住友精化(株)製 アクアキープ10SHP)を20g/m2、バインダー(東レ(株)社製 ケミットR272S)を2g/m2の量で均一に散布し、この上をさらに前述の坪量25g/m2の紙で覆い、80℃の加熱エンボスロールで挟着一体化した。 【0021】このシートを300mm×300mmにカッティングし、不織布(クラレ(株)製NA240JP2096)上に載せ、下部の不織布を原紙サイドに折り込んだ。さらに上部より不織布を給紙し、サイド部をギアロールにより120℃でヒートシールした。またエンド部はシールバーにより、130℃でヒートシールし、さらに全体を加熱エンボスロールを通し、80℃で挟着一体化した。一体化後、エンド部において310mm×310mmにカッティングし、上記高吸水性樹脂の層を上部2層、下部2層の積層材料の間に挟着した吸水性シートを作成した。 【0022】キャベツの芯を除去し、半分に分割後、その切断面より約5mm幅でカッティングし、冷オゾン水(水温:約5℃,オゾン濃度:約5ppm)に約10分間浸漬し、洗浄・殺菌処理を行い、脱水装置で脱水した後、1kg計量した。上記カットキャベツおよび吸水性シートを線状低密度ポリエチレン(LLDPE)で作成したパウチ(出光石油化学(株)社製 モアテック0238N,サイズ:0.03mm×400mm×500mm,23℃における酸素透過度:8500cc/m2・24hrs・atm)に入れ、250mmHgに一旦減圧し、その後、窒素・炭酸ガス混合ガス(1:1混合ガス)で、ガス置換包装を行った。ガス置換包装時の包装体内の残存酸素濃度は、3.5%であった。」 (オ)「【0031】[比較例1]実施例2と同様に作成した吸水性シートおよびパウチを用いて、実施例1と同様にカットレタスをガス置換包装せずに包装した。 [比較例2]実施例2と同様に作成した吸水性シートとともに、実施例1と同様に処理したカットレタスを延伸ナイロン(ON)/未延伸ポリプロピレン(CPP)製のパウチ(厚み:ON15μ/CPP60μ,サイズ:実施例2と同様)を用いて、実施例1と同条件でガス置換包装した。ガス置換包装後の残存酸素濃度は、3.0%であった。 【0032】[比較例3]実施例2と同様に作成した吸水性シートおよびパウチを用いて、実施例2と同様に処理したカットキャベツをガス置換包装せずに包装した。 [比較例4]実施例2と同様に作成した吸水性シートとともに、実施例2と同様に処理したカットキャベツを延伸ナイロン(ON)/未延伸ポリプロピレン(CPP)製のパウチ(厚み:ON15μ/CPP60μ,サイズ:実施例2と同様)を用いて、実施例2と同条件でガス置換包装した。ガス置換包装後の残存酸素濃度は、3.9%であった。」 (カ)「【0036】・・・ 実験1 実施例1~6および比較例1~12のカット野菜包装体を10℃で保存し、保存中の外観の変化についてしらべた結果を表1~表6に示す。 ・・・ 【0038】 【表2】 」 (キ)「【0043】実験2 実施例1~6および比較例1~12の包装袋内の酸素濃度を経時的に測定した結果を表7~表12に示す。 ・・・ 【0045】 【表8】 」 (ク)「【0050】表1~表12より明らかなように、本発明のカット野菜包装体およびその包装方法によれば、10℃で7日間保存後も、褐変や異臭は発生は認められなかった。」 イ 上記(カ)【表2】及び(ク)の記載事項を合わせると、実施例2のカット野菜包装体には、10℃で5日間保存後も、褐変や異臭の発生は認められなかったことが分かる。 ウ 上記(ア)及び上記(イ)の記載を踏まえ、特に実施例2に着目すると、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という)が記載されていると認められる。 「ポリエチレン、ポリピロピレン等の熱可塑性樹脂を使用して酸素透過度を調整したフィルムをヒートシール密封してなる袋状体内にカットキャベツを収納してなる包装体であって、袋状体のヒートシール後10℃の条件下で5日保存後も褐変や異臭の発生は認められず、残存酸素濃度が1.0%である、上記包装体であり、 包装体の酸素透過度が、23℃において、8500cc/m2・24hrs・atmであり、 ガス置換包装時の包装体内の炭酸ガス濃度は48.25体積%であり、 ガス置換包装時の包装体内の酸素濃度は3.5%であり、 ガス置換包装時の包装体内の窒素濃度は48.25%であり、 吸水性シートを入れてある、包装体。」 (2)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲2発明とを対比する。 ・甲2発明の「ポリエチレンの熱可塑性樹脂」は本件発明1の「ポリエチレン系フィルム」に相当し、同様に、「カットキャベツ」は「カットキャベツを含む青果物」に、「ガス置換包装時」は「包装体の封止直後」に、「10℃の条件下で5日保存後」は「10℃の条件下で120時間保持した後」に、それぞれ相当する。 ・甲2発明の「フィルムをヒートシール密封してなる袋状体」は、「高分子フィルムを融着してなる包装容器」という限りにおいて、本件発明1の「2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の該高分子フィルムを折り重ねた状態で融着してなる包装容器」と一致する。 ・甲2発明の「包装体の酸素透過度が、23℃において、8500cc/m2・24hrs・atmであ」ることと本件発明1の「22℃、40%RHにおいて、2000cc/m2/atm/day以上、2500cc/m2/atm/day以下」であることは、いずれも「包装容器の酸素透過度が所定値」であるということはできる。 ・甲2発明の「ガス置換包装時の包装体内の炭酸ガス濃度」は、本件発明1の「包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度」に相当し、甲2発明における濃度が「48.25体積%」であることは、本件発明1における濃度が「20体積%以上50体積%以下」に包含される。また、甲2発明の「ガス置換包装時の包装体内の酸素濃度」は、本件発明1の「包装体の封止直後における内部酸素濃度」に相当し、甲2発明における濃度が「3.5体積%」であることと本件発明1における濃度が「14.7体積%以上70体積%以下」であることは、いずれも、濃度が「所定値」であるということはできる。 ・甲2発明の「残存酸素濃度が1.0%である」ことと本件発明1の「内部酸素濃度が13.1体積%以上13.4体積%以下であ」ることは、いずれも、「内部酸素濃度が所定値」であるということはできる。 以上を踏まえると、両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「ポリエチレン系フィルムの高分子フィルムを融着してなる包装容器内にカットキャベツを含む青果物を収納してなる包装体であって、 前記包装容器の酸素透過度が所定値であり、 包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度が、20体積%以上50体積%以下であり、 包装体の封止直後における内部酸素濃度が所定値であり、 包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における内部二酸化炭素濃度、内部酸素濃度がそれぞれ所定値である、上記包装体。」 <相違点1> 高分子フィルムを融着してなる包装容器に関して、本件発明1では、2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の該高分子フィルムを折り重ねた状態で融着してなるのに対して、甲2発明では、フィルムの重ね合わせの態様は不明である点。 <相違点2> “包装容器の酸素透過度”が、本件発明1では、22℃、40%RHにおいて、2000cc/m2/atm/day以上、2500cc/m2/atm/day以下であるのに対して、甲2発明では、23℃において、8500cc/m2・24hrs・atmである点。 <相違点3> “包装体の封止直後における”“内部酸素濃度”について、本件発明1では14.7体積%以上70体積%以下であるのに対して、甲2発明では3.5%である点。 <相違点4> 包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後において、本件発明1では、内部二酸化炭素濃度が38.8体積%以上48.4体積%以下、かつ、内部酸素濃度が13.1体積%以上13.4体積%以下であるのに対して、甲2発明では、内部二酸化炭素濃度は不明で、かつ、内部酸素濃度は1.0%である点。 (イ)事案に鑑み、相違点4を中心に検討していく。 相違点4から明らかなことであるが、包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における、本件発明1と甲2発明の内部酸素濃度は、明らかに異なっている。 そもそも、相違点3にあるように、包装体の封止直後における内部酸素濃度は、甲2発明では本件発明1よりも明白に低いものといえる。 また、相違点2にあるように、包装容器の酸素透過度は、甲2発明は、本件発明1よりも明白に大きいものが採用されている。 そうしてみると、甲2発明において、包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における内部酸素濃度を1.0%から13.1体積%以上13.4体積%以下に向上させようという動機付けがない上に、包装体の封止直後における内部酸素濃度も包装容器の酸素透過度も本件発明1とは明らかに異なるものが採用されているのであるから、甲2発明に基づいて、その包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における内部酸素濃度を13.1体積%以上13.4体積%以下にすることが当業者にとって容易に想到し得たことということはできない。 したがって、甲2発明において、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に採用し得たということはできない。 そうすると、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明5~8について 本件発明5~8は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て含み他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、甲2発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1、5~8は、甲2発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に規定される発明に該当しない。 第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 明確性要件違反 申立人は、初期気体組成、保存環境下における気体の流出入に関する容器の特性、内容物の呼吸の程度のどれ一つとして全く特定されてないため、発明の範囲が明確であっても、発明特定事項の技術的意味を理解することができず、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるから、明確性要件違反である旨主張している。 しかしながら、本件訂正前の発明は、封止後の時間経過後における気体濃度を特定していたことから発明が明確であったといえるし、仮に、申立人が主張するとおり、技術的に発明特定事項が不足することで発明が技術的に不明確であったとしても、本件訂正後の発明は、その発明特定事項として、包装容器の酸素透過度、封止直後における内部二酸化濃度及び内部酸素濃度、封止後の時間保持した後における内部二酸化濃度及び内部酸素濃度を特定するものである。 したがって、申立人の主張は採用することができない。 2 実施可能性要件違反 申立人は、明確性要件違反やサポート要件違反と同様の主張を用いて、本件発明は、当業者といえども過度な試行錯誤を要することなく実施できたとは到底認められない旨の主張をしている。 しかし、明確性要件を満たすこと及びサポート要件を満たすことは上記述べたとおりであるし、本件特許明細書を参照すると、【0063】の【表1】の実施例として、カットキャベツ包装袋の評価結果として、封入ガス組成、高分子フィルムを含んでなる包装容器における孔及び酸素透過率、時間経過後の酸素濃度及び二酸化炭素濃度について記載されており、【0054】以降に実施例についての詳細な説明も記載されている。また、訂正により特定された「酸素透過度」、「内部酸素濃度」及び「内部二酸化炭素濃度」に係る事項から考慮して、カットキャベツを含む青果物の量等を調整することで所与の課題は解決できるし、その調整に際し、過度の試行錯誤を要するとは認められない。 してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 したがって、申立人の主張は採用することができない。 3 進歩性について (1)甲各号証 ・甲第1号証:特開2011-81号公報 ・甲第2号証:特開平4-341139号公報 ・甲第3号証:特開2011-78369号公報 ・甲第4号証:今堀 義洋、「低酸素貯蔵環境における青果物の品質保持と代謝調節機構に関する研究」、日本食品保蔵科学会誌 VOL.32 NO.2、2006年 ・甲第5号証:M. V. Rama et al、「Effects on Fruit and Vegetables」、ENCYCLOPEDIA OF FOOD SCIENCES AND NUTRITION (Second Edition)、 2003年、1607-1615ページ ・甲第6号証:泉 秀実、「カット野菜の品質特性と微生物的安全性」、日本食品保蔵科学会誌 VOL.27 NO.3、2001年 ・甲第7号証:壇 和弘 外二名、「数種野菜の呼吸におよぼす低酸素の影響」、日本食品低温保蔵学会誌 VOL.21 NO.1 1995年 ・甲第8号証:河野 澄夫 外一名、「カット野菜の加工・流通過程における品質保持技術」、日本食品工業学会誌 第36巻 第2号、1989年2月 ・甲第9号証:特開2005-112442号公報 ・甲第10号証:森田 弘潤、「試験結果報告書」、2020年7月28日 ・甲第11号証:山下 市二、「野菜のMA包装における機能性フィルムの利用」、日本食品化学工学会誌 第45巻第12号、1998年12月 ・引用文献12:三井 俊、「酸素バリヤー性を有する食品包装材料」、愛産研食品工業技術センターニュース、平成21年3月24日発行(インターネット検索日:令和2年9月17日 URLhttp://www.aichiinst.jp/shokuhin/other/shokuhin_news/s_no41_02.pdf)(周知技術を示すための文献、当審が職権で探知) (2)甲第1号証を主引用発明とした場合について ア 甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。) 甲1の段落【0024】において「・・・気相を調整した酸素、炭酸ガス及び窒素の混合ガスを充填させた上で包装商品の開口部を密閉して・・・10℃の環境で保存し、24時間毎に・・・細菌数、褐変等の外観の変化、味・臭気についてチェックを行」うこと、また、段落【0025】~【0028】において「製造から168時間経過した時点で」「総合判定」することが記載されているから、甲1の実施例は、製造から120時間保持した時点でもチェックを行い、細菌数、褐変等の外観の変化、味・臭気の判定が合格基準に達したものであることが分かる。 かかる事項と、甲1の【請求項1】、【請求項6】、【0001】~【0009】、【0020】~【0038】、【0026】、【0035】、【0049】~【0052】の記載を踏まえて、実施例1(a08)、(a09)、実施例2(b09)(b10)に注目すると、甲1には、次の甲1発明が記載されていると認められる。 「二軸延伸ポリプロピレン等からなる外部との空気の出入りを略遮断する袋状に形成した包装資材の内部にカットキャベツ、千切りキャベツ等のキャベツ単体又はカットキャベツとニンジン等をミックスしたキャベツミックスを詰めてなる包装商品であって、気相を調整した酸素、炭酸ガス及び窒素の混合ガスを充填させた上で包装商品の開口部を密閉した後10℃の環境で保存して、120時間保持した時点でチェックを行い、細菌数、褐変等の外観の変化、味・臭気が合格基準に達したものである、包装商品であり、 充填させる混合気の炭酸ガス濃度が、20体積%又は25体積%であり、 充填させる混合気の酸素濃度が、25体積%であり、 充填させる混合気は窒素を含んでいる、包装商品。」 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「二軸延伸ポリプロピレン」は本件発明1の「延伸ポリプロピレンフィルム」に相当し、同様に、「カットキャベツ、千切りキャベツ等のキャベツ単体又はカットキャベツとニンジン等をミックスしたキャベツミックス」は「カットキャベツを含む青果物」に、「詰めて」は「収納して」に、「包装商品」は「包装体」に、それぞれ相当する。 甲1発明の「二軸延伸ポリプロピレン等からなる外部との空気の出入りを略遮断する袋状に形成した包装資材」は、「高分子フィルムを融着してなる袋状に形成した包装容器」という限りにおいて、本件発明1の「2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の該高分子フィルムを折り重ねた状態で融着してなる包装容器」と一致する。 甲1発明の「気相を調整した酸素、炭酸ガス及び窒素の混合ガスを充填させた上で包装商品の開口部を密閉した後10℃の環境で保存して、120時間保持した時点でチェックを行い、細菌数、褐変等の外観の変化、味・臭気が合格基準に達したものである」ことは、「包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後に」所定の判定を行うという限りにおいて、本件発明1の「前記包装容器の酸素透過度が、22℃、40%RHにおいて、2000cc/m2/atm/day以上、2500cc/m2/atm/day以下であり、 包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度が、20体積%以上50体積%以下であり、 包装体の封止直後における内部酸素濃度が、14.7体積%以上70体積%以下であり、包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が38.8体積%以上48.4体積%以下、かつ、内部酸素濃度が13.1体積%以上13.4体積%以下である」ことと一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点と相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「延伸ポリプロピレンフィルムの高分子フィルムを融着してなる包装容器内にカットキャベツを含む青果物を収納してなる包装体であって、包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後に所定の判定を行う、上記包装体。」 <相違点1-1> 高分子フィルムを融着してなる包装容器に関して、本件発明1では、2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の該高分子フィルムを折り重ねた状態で融着してなるのに対して、甲1発明では、袋状に形成するための具体的な態様は不明である点。 <相違点1-2> 包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後に所定の判定を行うことに関して、本件発明1では、「前記包装容器の酸素透過度が、22℃、40%RHにおいて、2000cc/m2/atm/day以上、2500cc/m2/atm/day以下であり、 包装体の封止直後における内部二酸化炭素濃度が、20体積%以上50体積%以下であり、 包装体の封止直後における内部酸素濃度が、14.7体積%以上70体積%以下であり、 包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が38.8体積%以上48.4体積%以下、かつ、内部酸素濃度が13.1体積%以上13.4体積%以下である」のに対して、甲1発明では、細菌数、褐変等の外観の変化、味・臭気が合格基準に達したものである点。 (イ)判断 相違点1-2について検討する。 甲1発明は、包装体の封止後10℃の条件下で120時間保持した後に所定の判定を行うことに関して、判定の前提となる、包装容器の酸素透過度、包装体封止直後の内部二酸化濃度及び内部酸素濃度について、それらの数値範囲を含め具体化するものではない。 そして、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項については、他の証拠を参照しても導き出せるものではなく、周知技術であるともいえない。 したがって、相違点1-2は実質的な相違点であることに加えて、当業者が容易に想到し得たものともいえない。 したがって、本件発明1は、相違点1-1を検討するまでもなく、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明5~8 本件発明5~8は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て含み、他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 むすび 以上のとおり、本件請求項1、5~8に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によって取り消すことができない。さらに、他に本件請求項1、5~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件請求項2~4、9、10は、本件訂正により削除され、本件請求項2~4、9、10に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700533

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