特許異議申立
2020-700503
チタン酸バリウム微粒子粉末、分散体及び塗膜
- 審判番号
- 2020-700503
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-527858外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年07月20日
- 審決日
- 2021年04月06日
- 公報発行日
- 2021年08月27日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(C01G) / P1651.121-YAA(C01G) / P1651.851-YAA(C01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6635031号発明「チタン酸バリウム微粒子粉末、分散体及び塗膜」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6635031号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6635031号の請求項2ないし5に係る特許を維持する。
特許第6635031号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
特許第6635031号の請求項1~5に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)6月11日(優先権主張:平成26年6月13日 日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、令和元年12月27日に特許権の設定登録がされ、令和2年1月22日に特許掲載公報の発行がされ、請求項1~5に係る特許に対し、同年7月20日に特許異議申立人菊地いのり(以下「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされた。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 9月24日付け:取消理由通知
同年11月24日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
令和3年 1月 6日 :意見書の提出(申立人)
第2.訂正の適否
1.訂正の内容
令和2年11月24日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の(1)ないし(10)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「一次粒子の粒度分布を一次粒子の平均粒径で除した値が0.20~0.25である請求項1記載のチタン酸バリウム微粒子粉末。」とあるのを、「一次粒子の平均粒径が20~60nmであり、比誘電率が300~800であり、一次粒子の粒度分布を一次粒子の平均粒径で除した値が0.20~0.25であるチタン酸バリウム微粒子粉末。」と訂正する。(下線は、訂正特許請求の範囲に特許権者が付加したもの。以下、同じ。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「格子定数比c/aが1.003未満である請求項1又は2記載のチタン酸バリウム微粒子粉末。」とあるのを、「格子定数比c/aが1.003未満である請求項2記載のチタン酸バリウム微粒子粉末。」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1~3のいずれかに記載のチタン酸バリウム微粒子粉末を含有する分散体。」とあるのを、「請求項2又は3に記載のチタン酸バリウム微粒子粉末を含有する分散体。」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1~3のいずれかに記載のチタン酸バリウム微粒子粉末を含有する塗膜。」とあるのを、「請求項2又は3に記載のチタン酸バリウム微粒子粉末を含有する塗膜。」と訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の【0013】を削除する。
(7)訂正事項7
明細書の【0014】に、
「また、本発明は、一次粒子の粒度分布を一次粒子の平均粒径で除した値が0.20~0.25である本発明1記載のチタン酸バリウム微粒子粉末である(本発明2)。」とあるのを、「本発明は、一次粒子の平均粒径が20~60nmであり、比誘電率が300~800であり、一次粒子の粒度分布を一次粒子の平均粒径で除した値が0.20~0.25であるチタン酸バリウム微粒子粉末である(本発明1)。」と訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の【0015】に、
「また、本発明は、格子定数比c/aが1.003未満である請求項1又は2記載のチタン酸バリウム微粒子粉末である(本発明3)。」とあるのを、「また、本発明は、格子定数比c/aが1.003未満である本発明1に記載のチタン酸バリウム微粒子粉末である(本発明2)。」と訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の【0016】に、
「また、本発明は、本発明1~3のいずれかに記載のチタン酸バリウム微粒子粉末を含有する分散体である(本発明4)。」とあるのを、「また、本発明は、本発明1又は2に記載のチタン酸バリウム微粒子粉末を含有する分散体である(本発明3)。」と訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の【0017】に、
「また、本発明は、本発明1~3のいずれかに記載のチタン酸バリウム微粒子粉末を含有する塗膜である(本発明5)。」とあるのを、「また、本発明は、本発明1又は2に記載のチタン酸バリウム微粒子粉末を含有する塗膜である(本発明4)。」と訂正する。
ここで、訂正前の請求項2~5は、訂正前の請求項1を引用し、これら請求項1~5は一群の請求項を構成するところ、上記訂正事項1~5に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1~5を訂正の単位として請求されたものである。
また、上記訂正事項6~10に係る明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、この一群の請求項1~5を訂正の単位として請求されたものである。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、この訂正により新規事項が発生したり、特許請求の範囲の拡張ないし変更が発生するものでもないことは明らかであるから、訂正事項1は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が、請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項1との引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。また、この訂正により新規事項が発生したり、特許請求の範囲の拡張ないし変更が発生するものでもないことは明らかであるから、訂正事項2は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3ないし5について
訂正事項3ないし5は、それぞれ、訂正前の請求項2ないし4における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、この訂正により新規事項が発生したり、特許請求の範囲の拡張ないし変更が発生するものでもないことは明らかであるから、訂正事項3ないし5は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項6ないし10について
訂正事項6ないし10は、それぞれ、訂正事項1ないし5による訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と願書に添付された明細書の記載を合致させるものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3.本件特許請求の範囲の記載
本件訂正請求により訂正された請求項2ないし5に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明2」ないし「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項2ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項2】
一次粒子の平均粒径が20~60nmであり、比誘電率が300~800であり、一次粒子の粒度分布を一次粒子の平均粒径で除した値が0.20~0.25であるチタン酸バリウム微粒子粉末。
【請求項3】
格子定数比c/aが1.003未満である請求項2記載のチタン酸バリウム微粒子粉末。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のチタン酸バリウム微粒子粉末を含有する分散体。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のチタン酸バリウム微粒子粉末を含有する塗膜。」
第4.取消理由通知に記載した取消理由について
1.令和2年9月24日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要
訂正前の請求項1、3~5に係る特許に対して令和2年9月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
<取消理由>
請求項1に係る発明は、下記の甲第1号証(以下、「甲1」という。)又は引用文献1に記載された発明であるか、甲1又は引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、さらに、請求項4及び5に係る発明は、甲1又は引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、4及び5に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
<引用する刊行物一覧>
・甲1:「チタン酸バリウムナノ粒子の構造と巨大誘電特性の発現機構」、保科拓也、日本結晶学会誌、第51巻、第5号(2009)、300~305頁
・引用文献1:「Size and temperature induced phase transition behaviors of barium titanate nanoparticles」、T.Hoshina, H.Kakemoto, T.Tsurumi, M.Yashima and S.Wada: J.Appl.Phys. 99, 054311 (2006)(甲第1号証の引用文献10)
・引用文献2:特開2012-148970号公報
2.取消理由通知に記載した取消理由に対する判断
(1)請求項1に係る特許について
請求項1は、本件訂正請求による訂正により削除されたため、取消理由通知に記載した取消理由の対象となる請求項は存在しない。
(2)請求項3~5に係る特許について
本件発明3~5は、本件訂正請求による訂正により、取消理由を通知していない本件発明2を引用するものとなったため、取消理由通知に記載した取消理由の対象とはならなくなった。
3.小括
以上のとおりであるから、令和2年9月24日付けで特許権者に通知した取消理由に理由はない。
第5.取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1.特許異議申立書における特許異議申立理由(甲1を主引例とする特許法第29条第2項)について
申立人は、訂正前の請求項2に係る発明及びこれを引用する請求項3~5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲第2号証(特開2011-132071号公報、以下「甲2」という。)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。
2.各甲号証について記載
(1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
ア.甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている(当審注:「・・・」は省略を表す。以下、同じ。)。
(ア)「図1は2段階熱分解法を用いて得られたBaTiO3超微粒子のTEM写真である.得られた微粒子は平均粒子径約20nmの単結晶粒子であることが明らかとなった.・・・
また,シュウ酸塩の2段階熱分解法で合成した粒子径20nmの微粒子を空気中でさらに熱処理することにより.最終的に粒子径20nmから430nmの範囲でBaTiO3微粒子を作製した.」(301頁左欄22行~右欄2行)
(イ)「
」
(ウ)「合成したBaTiO3微粒子の誘電率を測定したところ,図2に示すような誘電率のサイズ依存性が得られた.8),10)すなわち,・・・粒子径20nmにおいて比誘電率は250という値をとることがわかった.」(301頁右欄「3.チタン酸バリウム微粒子の誘電特性」における13行~22行)
(エ)「
」
(オ)「2.チタン酸バリウム微粒子の合成
BaTiO3微粒子の合成方法として,これまでに数多くの報告がある.従来からの固相法に加え,シュウ酸法,水熱法,ゾルゲル法,エマルジョン法などの液相法,最近では気相法による合成も行われている.中でもナノオーダーの超微粒子を得る方法であるゾルゲル法や,それよりもやや大きいが数十nm以上の超微粒子を得ることができる水熱法が有名である.しかしながら,液相法による問題点は,不純物や欠陥がBaTiO3中に容易に導入される点である.ゾルゲル法では前駆体に含まれる水や有機炭素などが残留し不純物となること,水熱法においては溶媒である水中の水酸基を結晶格子内に容易に取り込みやすいという問題点がある.6)また,固相法やシュウ酸法では欠陥を含まないBaTiO3微粒子を合成できるものの,数十nmの粒子径をもつ微粒子の合成が非常に困難であるという問題点がある.このように,従来の方法では,不純物の存在を無視することができ,Ba/Ti原子比が1:1で,相対密度が100%に近い欠陥の存在を無視できるようなBaTiO3超微粒子の合成が非常に困難であった.
本研究ではこれらの問題を解決し理想的なBaTiO3超微粒子を合成するために,シュウ酸塩の2段階熱分解法7)、8)という合成法を開発した.この方法では、シュウ酸バリウムチタニル(BaTiO(C2O4)2・4H2O、Ba/Ti=1.000、純度99.98%以上)を原料とし,空気中低温熱処理と真空高温熱処理という2段階の熱処理によって目的のBaTiO3超微粒子を得る。まず、第1段階では、空気中500℃でBaTiO(C2O4)2・4H2Oを熱処理することによって,非晶質構造の反応中間体(組成:Ba2Ti2O5CO3)を得る.続く第2段階では、雰囲気を真空下(1Pa程度)に切り替え、620℃で熱処理することによって、BaTiO3超微粒子を得る.酸素の存在が必要ではない第2段階の熱分解反応(炭酸基の脱離反応)において,雰囲気を真空下にすることにより,通常のシュウ酸塩法の場合よりも炭酸基の脱離が低温で実現し,結果的に,より粒子サイズの小さなBaTiO3微粒子が得られることがわかった。」(300頁右欄15行~301頁左欄22行)
イ.甲1に記載された発明
上記ア.(ア)及び(イ)の記載事項によると、上記ア.(ウ)の記載事項における「粒子径」は、一次粒子の平均粒子径であるといえる。
また、上記ア.(エ)の記載事項において、粒子径が20~60nmの範囲内、かつ、比誘電率が300~800の範囲内にプロットが見て取れる。
すると、上記ア.(ア)~(エ)の記載事項によれば、甲1には、
「一次粒子の平均粒子径が20~60nmの範囲内、かつ、比誘電率が300~800の範囲内であるBaTiO3微粒子」
の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
ア.「【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、粒径が小さく、かつ、粒径のバラツキが少ない、誘電体層の薄層化に適した誘電体セラミックス材料を製造する方法を提供することを課題とする。」
イ.「【0050】
BaCO3粉末(比表面積;30m2/g又は50m2/g)とTiO2粉末(比表面積;50m2/g又は100m2/g)とを用意し、用意した粉末をA/B比(Ba/Ti比)1.002となるよう秤量した。次に、秤量した粉末に、実施例においてはエタノール(Etha)、又は、トルエンとエタノールとを重量比30:70で混合したトルエン/エタノール混合溶液(Etha/Tolu)を添加し、比較例においては水を添加し、ミキサーで前混合を行い、得られた混合スラリーをビーズミルで粉砕混合した。次に、粉砕混合した混合スラリーを乾燥させ、乾燥後の混合粉末を乾式粉砕した。次に、乾式粉砕後の混合粉末を下記表1~5に記載の温度で真空仮焼した。
【0051】
得られたチタン酸バリウム(BaTiO3)粉末について、XRD測定を行ったところ、得られたXRD測定データより、チタン酸バリウム単相であることが確認された(図4参照)。なお、図4に示すデータは実施例4について得られたものであるが、他の実施例についても同様なデータが得られた。また、得られたBaTiO3粉末をSEM観察し、粒径測定を行った。この際、100個以上の粒子の粒径を測定して、平均粒径とともに標準偏差σを算出した。更に、得られたBaTiO3粉末について、BET法により比表面積(SSA)を測定した。また、得られたBaTiO3粉末をTEM観察し、双晶の存在率を算出した。これらの結果は下記表1~5及び図5に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
」
ウ.「【0010】すなわち本発明に係る誘電体セラミックス材料の製造方法は、炭酸バリウムと二酸化チタンとを固相反応により反応させて誘電体セラミックス材料を製造する方法であって、炭酸バリウム粉末及び二酸化チタン粉末を含有する混合粉末を有機溶媒中で粉砕混合する粉砕混合工程と、粉砕混合した前記混合粉末を焼成してチタン酸バリウム系化合物の粉末を得る仮焼工程とを備えていることを特徴とする。」
3.特許異議申立理由に対する判断
(1)本件発明2について
ア.本件発明2と甲1発明との対比・判断
本件発明2と甲1発明とを対比すると、
甲1発明における「一次粒子の平均粒子径が20~60nmの範囲内、かつ、比誘電率が300~800の範囲内であるBaTiO3微粒子」は、本件発明2における「一次粒子の平均粒径が20~60nmであり、比誘電率が300~800であることを特徴とするチタン酸バリウム微粒子」に相当する。
すると、本件発明2と甲1発明は、
「一次粒子の平均粒径が20~60nmであり、比誘電率が300~800であることを特徴とするチタン酸バリウム微粒子」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点a)
本件発明2は一次粒子の粒度分布を一次粒子の平均粒径で除した値が0.20~0.25であることを特定するのに対して、甲1発明ではそのような特定がない点
(相違点b)
本件発明2はチタン酸バリウム微粒子「粉末」と特定するのに対して、甲1発明ではそのような特定がない点
まず、相違点aについて検討する。
上記2.(2)ア.の記載事項によると、甲2には、粒径が小さく、かつ、粒径のバラツキが少ない、誘電体層の薄層化に適した誘電体セラミックス材料を製造する方法を提供することを課題とすることが記載されており、上記2.(2)イ.及びウ.の記載事項によると、甲2の表1~4には、固相法によって作製されたチタン酸バリウムの粉末の粒子径の標準偏差σとSEM粒径(nm)が開示されており、同記載事項の【0051】の記載からすると、前記SEM粒径は平均粒径のことであると認められる。
そして、表1~4の測定値から、粒度分布を平均粒径で除した値、すなわち、標準偏差σ/SEM粒径を算出し、表にまとめると、以下のようになる。
そうしてみると、甲2には、固相法によってチタン酸バリウムの粉末を作製した際に、その粉末の平均粒径(SEM粒径)が20~60nmであり、粒度分布を平均粒径で除した値(標準偏差σ/SEM粒径)が0.20~0.25であるとの技術的事項が記載されているといえる。
これに対して、甲1には、上記1.(1)ア.(オ)の記載事項によると、BaTiO3微粒子の合成方法としては、従来からの固相法等があるが、固相法では欠陥を含まないBaTiO3微粒子を合成できるものの、数十nmの粒子径をもつ微粒子の合成が非常に困難であるという問題点があり、従来の方法では、不純物の存在を無視することができ、Ba/Ti原子比が1:1で、相対密度が100%に近い欠陥の存在を無視できるようなBaTiO3超微粒子の合成が非常に困難であったこと、そして、これらの問題を解決し理想的なBaTiO3超微粒子を合成するために、シュウ酸塩の2段階熱分解法という合成法を採用したことが示されている。
そうしてみると、甲1発明においては、固相法が有する上記問題を解決すべく、BaTiO3微粒子の合成方法として、上記シュウ酸塩の2段階熱分解法を採用し、当該シュウ酸塩の2段階熱分解法によりBaTiO3微粒子を作製していることからして、甲1発明において、上記シュウ酸塩の2段階熱分解法に代えて、上記問題を有する固相法を採用することには阻害要因があるといえるから、甲1発明において、甲2に記載された固相法を採用して、BaTiO3微粒子の粒度分布を平均粒径で除した値を0.20~0.25とすることは、容易想到な事項であるといえない。
よって、相違点aに係る本件発明2の発明特定事項は、甲1発明及び甲2に記載された技術事項から当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
イ.小括
したがって、本件発明2は、相違点bについて検討するまでもなく、甲1発明及び甲2に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明2の全てを含んだものであるところ、本件発明3は、前記(1)に記載したとおり、甲1発明及び甲2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明3~5も同様に甲1発明及び甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4.小括
以上のとおりであるから、上記1.の特許異議申立理由は採用できない。
第6.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項2ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項が準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700503