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特許異議申立

2021-700607

四塩化チタン製造装置及びこれを用いた四塩化チタンの製造方法

審判番号
2021-700607
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-133078
登録番号
6831304
請求日
2021年06月28日
審決日
2022年07月05日
公報発行日
2022年10月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東邦チタニウム株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人 もえぎ特許事務所
  • 【異議申立人】七滝 一郎
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 宮澤 尚之
  • 審判官 金 公彦
分類
P1651.113-YAA(C01G) / P1651.121-YAA(C01G) / P1651.537-YAA(C01G) / P1651.851-YAA(C01G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6831304号発明「四塩化チタン製造装置及びこれを用いた四塩化チタンの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6831304号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 特許第6831304号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6831304号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成29年7月6日に出願され、令和3年2月1日にその特許権の設定登録がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1~11に係る特許に対して、令和3年6月28日に特許異議申立人七滝一郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年11月30日付けで取消理由が通知され、令和4年1月20日に特許権者により意見書及び訂正請求書の提出がされ、同年4年2月8日に特許権者により手続補正書(方式)の提出がされたものである。 なお、上記のとおり訂正の請求があったので、特許法第120条の5第5項の規定に従い、申立人に意見書を提出する機会を与えたが、応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年2月8日提出の手続補正書(方式)により補正された、同年1月20日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~11を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「断熱層、断熱層を支える底板」と記載されているのを、「耐塩素性粒子から構成される断熱層、断熱層を支える底板」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「断熱層、断熱層を支える底板」と記載されているのを、「耐塩素性粒子から構成される断熱層、断熱層を支える底板」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6に「断熱層、断熱層を支える底板」と記載されているのを、「耐塩素性粒子から構成される断熱層、断熱層を支える底板」に訂正する。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1)訂正事項1~3について 訂正事項1~3は、願書に添付された明細書の段落【0011】の記載に基づき、訂正前の請求項1、2及び6に記載された「断熱層」を「耐塩素性粒子から構成される断熱層」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明) 前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などという。)。 「【請求項1】 酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置であって、 耐塩素性粒子から構成される断熱層、断熱層を支える底板、及び塩素ガスを供給するノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定され、前記ノズルの塩素ガス吹出口は断熱層の上面よりも高い位置に設置されていること、及び 前記ノズルは、原料と接していること を特徴とする四塩化チタン製造装置。 【請求項2】 酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置であって、 耐塩素性粒子から構成される断熱層、断熱層を支える底板、及び塩素ガスを供給するノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定され、前記ノズルの塩素ガス吹出口は断熱層の上面よりも高い位置に設置されていること、及び 前記ノズルは、底板の貫通孔とは緩衝材を介して接続して固定されていること を特徴とする四塩化チタン製造装置。 【請求項3】 前記ノズルは、塩素ガス吹出口が断熱層の上面よりも500mm以下(ゼロを含まない)の高い位置に設置されていること を特徴とする、請求項1又は2に記載の四塩化チタン製造装置。 【請求項4】 前記緩衝材は、厚さが1~10mmで、緩衝材の嵩密度/真密度の比が0.1~0.3であること を特徴とする請求項2に記載の四塩化チタン製造装置。 【請求項5】 前記緩衝材は、耐熱性と耐塩素性に優れたセラミックファイバー集合体であること を特徴とする請求項2又は4に記載の四塩化チタン製造装置。 【請求項6】 酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置であって、 耐塩素性粒子から構成される断熱層、断熱層を支える底板、及び塩素ガスを供給するノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定され、前記ノズルの塩素ガス吹出口は断熱層の上面よりも高い位置に設置されていること、並びに 前記ノズルは、前記底板の貫通孔の孔径と前記ノズルの内径より小さい外径を有する円筒状の接続管を用い、前記底板の貫通孔の内側及び前記ノズル内面を接続管で固定して接続されていること を特徴とする四塩化チタン製造装置。 【請求項7】 前記ノズルは、塩素ガス吹出口が断熱層の上面よりも500mm以下(ゼロを含まない)の高い位置に設置されていること を特徴とする、請求項6に記載の四塩化チタン製造装置。 【請求項8】 前記接続管はニッケル、ニッケル基合金又は鋼材からなること を特徴とする請求項6又は7に記載の四塩化チタン製造装置。 【請求項9】 前記ノズルが、底板の貫通孔とは緩衝材を介して接続して固定されており、及び、請求項6~8のいずれか1項の前記接続管を用いて接続されていること を特徴とする請求項1又は2に記載の四塩化チタン製造装置。 【請求項10】 前記ノズルが、請求項3~5のいずれか1項の前記緩衝材を介していること を特徴とする請求項9に記載の四塩化チタン製造装置。 【請求項11】 請求項1~10のいずれか1項に記載の四塩化チタン製造装置を使用し、四塩化チタンを製造すること を特徴とする四塩化チタンの製造方法。」 第4 取消理由通知書に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 設定登録時の請求項1~11に係る特許に対して、当審が令和3年11月30日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由1(進歩性欠如) 請求項1~8、11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8、11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)取消理由2(サポート要件違反) 請求項1~11に係る特許は、特許請求の範囲の記載が後記4(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)証拠方法 甲第1号証 特開昭49-82582号公報 甲第2号証 特開昭58-156535号公報 甲第3号証 特開昭48-26697号公報 甲第4号証 特開昭61-114080号公報 甲第5号証 特開昭63-58092号公報 甲第6号証 特開2012-76078号公報 2 甲号証の記載事項 (1)甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、「流動化反応炉の気体分散盤」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下、同様である。)。 ア 「本発明は粉状又は粒状の被処理材料を流動状態において加熱気体又は反応処理気体と接触反応させる流動化反応炉の該気体の分散盤に関するものである。」(第1頁左下欄第13~16行) イ 「本発明の一実施例を示す図面において、気体分散盤10は耐火物よりなる支持床11と、これを炉壁12内に水平に固定するための金属製支持板13と、支持床11に配設された複数個の気体噴射ノズル14とからなる。支持床11には第2図に示されるように、噴射ノズル14が比較的平均して分布するようにその頭部15のみを上面に露出して埋設される。 噴射ノズル14は耐熱性金属よりなる中空円筒状の本体16と上端の球面状の表面を有する閉鎖頭部15とよりなり、本体16の下端部において前記支持床11を支持する支持板13に下端開口17が支持板13の下面に開口するように溶接等の適宜の手段により固着される。噴射ノズル14の頭部15にはその表面に上端が開口し、下端が本体16の中空部に連通する4個の噴射孔18が形成されている。これら噴射孔18の軸線19は支持床11の表面と約45度の角度αをなしており、その各上端開口は頭部球面の同一円周上に位置している。 流動化反応炉内に送られる圧力気体は炉の下部より送入され、噴射ノズル14の下端開口17より噴射ノズル中に入り、前記噴射孔18より支持床11の上方に噴射される。第2図には、この噴射束流20が模形的に示されている。一個の噴射孔18より出る噴射束流20の拡散角度は大体60度であるから、その軸線19と支持床11との間の角度αを45度とすれば、噴射束流20の外面と支持床11の表面との間の角度は約15度となり、噴射束流20が支持床11の表面に衝接することはない。しかも第2図より明らかのように、噴射束流の上方向への動圧成分が大きいので、支持床11上に重積される被処理材料に対する流動床化エネルギーも大きいのである。」(第2頁左下欄第13行~第3頁左上欄第7行) ウ 「 [図:0001389377000001.jpg] 」(第3頁下欄) (2)甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、「耐火ライニング容器」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。 ア 「本発明は耐火性ライニングを施した容器、特に塩素化反応器、およびその使用方法に関する。」(第2頁右上欄第8~9行) イ 「本発明に従つて構成した塩素化反応器の一形状は、適当な容器の図式断面である添付図面を参照するだけの例によつてここに記載する。 塩素化反応器は耐火性ライニング2を有する外殻1から成る。殻の上端はライニングした蓋3により閉じており殻は塩素化生成物用の上部出口4を有する。殻の基底部に支持板6上に設けたガス分配管5の列あるいは組立てで隣接の管間の空間をライニング2を形成するものと同様の耐火性充てん材で満たした上記列あるいは装置を配置する。支持板6の下側にガス用の入口9を有するウインドボツクスすなわちガス分配箱8がある。 使用にあたつては塩素化されるべきチタン含有物質の床10は管列5およびもし入口ポートを通して供給されるなら使用時に床を補充してもよい上記入口ポートによつて運ばれる。 本発明はまたチタン含有物質を塩素化して四塩化チタンを生成する方法において、チタン含有物質の床を設けて塩素化し、本発明に従つて容器の基底部上で物質を還元し、ガス分配管を通して塩素ガスを通じてチタン含有物質と反応させしかも床を流動懸濁状態に保ち、しかも塩素化により生成した四塩化チタンを集めることから成る上記方法を含む。」(第3頁右上欄第19行~右下欄第2行) ウ 「バインダーの重量当りAl2O3として表わして71重量%の量のアルミナ源、0.25重量%の量の酸化鉄およびCaOとして表わして27重量%の量のカルシウム源を含有するセメント質バインダーおよび予備焼成フリント粘土骨材を含むコンクリート混合物から鋳造した充てん材を備えた基底部を持つ塩素化反応容器を組立てた。塩化カルシウムは固化用の水と混合し乾燥混合物に加えた。塩化カルシウムの量は乾燥混合物の2.5重量%であつた。コークスおよびルチル鉱物の混合物から成る床を基底部上に作り塩素化温度に加熱した。次に塩素ガスを1200時間床を通過させ、その時間中に床物質の供給添加を行ないしかも塩素化生成物は容器の上部を通して連続的に抜出した。」(第3頁右下欄第5~18行) エ 「 [図:0001389377000002.jpg] 」(第4頁右上欄) (3)甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、「四塩化チタンの製造方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。 ア 「含チタン原料を流動塩素化して四塩化チタンを製造するにあたり、四塩化チタンを生成する第一の塩化炉と、第一の塩化炉からキャリーオーバーする未反応物(及び必要に応じ新に供給される微粉含チタン原料)を塩素化する第二の塩化炉とを設け、前記第一の塩化炉においては含チタン原料を還元性物質の存在下に前記第二の塩化炉の反応生成ガスを含む塩素含有ガスによって、流動塩素化し、塩素の反応率を100%近くに維持しながら反応させ、反応生成物を四塩化チタンを含む気体と、未反応含チタン原料を含む固体とに分離し、前記第二の塩化炉においては該分離固体及び所望に応じて新に供給する微粉含チタン原料を還元性物質の存在下に塩素含有ガスによって流動塩素化し、その際該ガス中の塩素量が反応に必要な量より多く、かつ、該ガスの炉内での見かけの線速度が前記第一の塩化炉内での流動塩素化ガスの見かけの線速度より小さくなるようにしながら反応させ、反応生成ガスを前記第一の塩化炉の流動塩素化用に使用することを特徴とする、四塩化チタンの製造方法。」(特許請求の範囲) イ 「このような例として第2~4図を示す。第2図では第二の流動塩化炉で生成した塩化物ガスはノズル35から第一の塩化炉中に放出される。ノズル35のガス放出口は分散板ノズルの放出口と同様で複数に分枝する場合もあり、これは通常分散板ノズルよりも高い位置、例えば流動層高さの下から1/4~1/2程度の高さに位置するようにするのが望ましい。分散板ノズル34の放出口からは、主たる流動塩素化ガスである導管37からの塩素(少量の窒素、酸素を含む)が放出される。 第3図及び第4図は、他の一態様で、第3図は、塩化炉の縦断略図、第4図は横断略図である。第二の塩化炉で生成した塩化物ガスは導管41及びその分岐管42、43及び44を通つて、それぞれノズル45、46及び47によって、塩化炉49の側壁からほぼ接線方向に導入される。別に導管50からは分散板48を通って、塩素含有ガスが主たる流動塩素化ガスとして導入される。」(第4頁右上欄第3行~左下欄第2行) ウ 「実施例1. 第1図に示すような装置で、塩化炉5は内径100cm高さ280cmであり、塩化炉15は図に示されるような形で、内径50cm高さ40cmの下部流動層形成部と内径80cm高さ180cmの上部フリーボード部とからなるものであり、サイクロン8は内径25cmのものを用いた。使用した含チタン原料はオーストラリア産天然ルチル鉱で、組成、性状は次表のようであった。 ・・・ 操業が定常状態に達したときの概要は次記のようであった。ホッパー1からスクリューフィーダー3を通じて前記ルチル鉱が810Kg/時の割合で、ホッパー2からはスクリューフィーダー4を通して前記還元用コークスが77Kg/時の割合で、塩化炉5に導入された。一方導管6へは、導管31を通して塩素が459Kg/時、酸素が25.6Kg/時の割合で導かれると同時に導管29を通して塩化炉15の反応生成ガスの全量が導かれ、導管6で混合されて、塩化炉底部に位置する分散板を通って上向きに炉内に供給された。炉内では分散板から約100cmまでの間に流動層が形成され、ここで980~1000℃の温度で塩素化反応が進行した。」(第4頁左下欄第9行~右下欄第14行) エ 「 [図:0001389377000003.jpg] 」 (第6頁左下欄) (4)甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、「流動床装置」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。 ア 「(7)孔を設けた容器の底板に固定されるほぼ一定の内孔を有する垂直配置の噴出管と、この噴出管の上部に配置され粒子層内に供給される流動化ガスの方向を曲げて安定した流動状態を形成する着脱可能なキャップとを備え、このキャップが前記垂直配置の噴出管の内孔に整合して配置された垂直方向の内部(管状)通路を含み、少なくとも1個の出口を形成する横方向の溝内に流動化ガスを適当な圧力で送る大きさに形成された絞りを有し、好ましくはねじ結合により前記キャップの前記垂直な噴出管からの取外しを容易とし、これにより、流動層を安定して保持するためあるいは流動層を所定の状態に調整するためにキャップを迅速かつ簡単に交換可能としたことを特徴とするノズル。 ・・・ (9)特許請求の範囲第7項又は第8項に記載のノズルにおいて、前記キャップが底板からの高さを調整可能で、固定装置がこのキャップを底板からの所要高さに固定しかつこの底板から取外し可能とし、前記底板と加熱流動床の間の断熱静止微粒子層の厚さを調節可能であるノズル。 ・・・ (14)特許請求の範囲第9項に記載のノズルを設けた分散板を備える流動床装置において、耐熱性を有する金属で形成された分離可能なモジュール構造体を含み、このモジュール構造体が微粒子を流動化する前記のノズルを設けたガス分散板を備え、この分散板に隣接してガス入口管を有するガス予圧室が設けられ、更に、取外し可能な屋根部材を備えた耐火室を含み、この耐火室内に前記モジュール構造体が配置されて固定の耐火壁および前記構造体のガス分配板で形成される分離可能な基部とを有するU字状の微粒子層を内包する保持容器を形成し、前記流動化ガスは可燃性ガスと空気との混合物で形成し、この流動化ガスが外部で形成されて前記流動化ノズルにより前記粒子層を介して調整された速度および圧力で吹き付けられてこの微粒子層内で前記混合物を燃焼することによりこの粒子層を流動化および加熱し、更に、この流動床内で前記混合物を点火する手段を備える900℃より高い温度に金属性の部材を加熱するために使用する流動床装置。」(特許請求の範囲) イ 「〔産業上の利用分野] 本発明は金属製の部材を熱処理するのに使用する流動床装置に関する。更に詳細には、特に鉄製のワイヤである長尺の金属製被処理部材を連続的に熱処理するのに使用する流動床装置に関するものである。」(第3頁右上欄第3~8行) ウ 「更に、静的な微粒子層(第4a図および第4b図における符号6)の厚さも充分に形成され、底板を覆う絶縁層として作用し、これによりこの底板の過熱が防止された。」(第9頁左上欄第19行~右上欄第2行) エ 「 [図:0001389377000004.jpg] 」(第12頁上欄) (5)甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、「流動層炉の分散板ノズル」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。 ア 「(1)流動層炉の分散板を形成する炉底板に支持され、流動化ガスを噴出する分散板ノズルであつて、上記炉底板に固定される基部が金属で形成され、上記流動層内に臨む噴出孔を備えたノズル部がセラミツクで形成され、上記基部とノズル部とが連結されてなる流動層炉の分散板ノズル。」(特許請求の範囲) イ 「[発明が解決しようとする問題点] ところが、セメントクリンカの焼成炉のように1300℃ないし1400℃程度の非常な高温状態になる流動層炉では、上記焼損を十分防止できない。そこで、分散板ノズル50をセラミツク製にすることが考えられる。しかし、流動層炉は、炉底板51の上方と下方との温度差が大きいので、つまり、流動層内と風箱内とで温度差が大きいので、分散板ノズル50の上部と下部とでは大きな温度勾配が生じるため、機械的強度の低いセラミツク製の分散板ノズル50が熱応力により破損するおそれがある。また、セラミツクは加工性が悪いため、たとえば、雄ねじ53の加工が困難であるから、炉底板51への取付が容易でない。 この発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、焼損および破損するおそれがなく、炉底板への取付が容易な流動層炉の分散板ノズルを提供することを目的としている。」(第2頁左上欄第14行~右上欄第11行) (6)甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、「流動層反応器」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。 ア 「【0022】 図1a及び図1bは、本発明の実施形態による流動層反応器を示す。図1a及び図1bに示されたように、本発明の実施形態による流動層反応器500は、ヘッド100と、第1ボディ部200と、第2ボディ部300と、底面部400とを含む。」 イ 「【0036】 第1反応管250は、第1ボディ部200の内部に位置するように組み立てる。第2反応管350は、第2ボディ部300の内部に位置するように組み立て、第2ボディ部300の下端を密閉するための底面部400に各種ノズル600、650と電極800とヒーター700とが組み立てられる。第2反応管350が位置する第2ボディ部300の下部には、底面部400が連結される。次いで、第1ボディ部200と第2ボディ部300とが互いに連結され、ヘッド100が第1ボディ部200に連結される。」 ウ 「【0096】 第2反応管350と底面部400によって形成された空間のうち、各種ノズルとヒーター700とが占める空間を除いた残りの空間にビーズが充填される。ビーズ間の空間は、流動ガスが通るチャンネルの役割をするため、ビーズは、流動ガスを流動層反応器の内部に均一に分散させる。・・・」 エ 「【図1a】 [図:0001389377000005.jpg] 」 3 取消理由1(進歩性欠如)に対する当審の判断 (1)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証の前記2(1)ア~ウの記載事項を「流動化反応炉」に注目して整理すると、甲第1号証には、 「粉状又は粒状の被処理材料を流動状態において加熱気体又は反応処理気体と接触反応させる流動化反応炉であって、 耐火物よりなる支持床11と、これを炉壁12内に水平に固定するための金属製支持板13と、支持床11に配設された複数個の気体噴射ノズル14とからなる気体分散盤10を有し、 気体噴射ノズル14は、耐熱性金属よりなる中空円筒状の本体16と上端の球面状の表面を有する閉鎖頭部15とよりなり、本体16の下端部において支持する支持板13に下端開口17が支持板13の下面に開口するように固着され、閉鎖頭部15のみが支持床11の上面に露出して埋設され、 噴射ノズル14の閉塞頭部15には、4個の噴射孔18が形成され、これら噴射孔18の軸線19は支持床11の表面と約45度の角度αをなしており、 被処理材料は、支持床11上に重積され、 流動化反応炉内に送られる加熱気体又は反応処理気体は炉の下部より送入され、噴射ノズル14の下端開口17より噴射ノズル中に入り、前記噴射孔18より支持床11の上方に噴射される、流動化反応炉。」 の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明の対比 甲1発明の「流動化反応炉」、「支持床11」、「支持床11」を「炉壁12内に水平に固定するための金属製支持板13」、「気体噴射ノズル14」、「噴射孔18」、「被処理材料」は、それぞれ、本件発明1の「装置」、「断熱層」、「断熱層を支える底板」、「ノズル」、「吹出口」、「原料」に相当する。 また、甲1発明の「気体噴射ノズル14」は、「本体16の下端部において支持する支持板13に下端開口17が支持板13の下面に開口するように固着され」、また、「4個の噴射孔18が形成され」た「閉鎖頭部15のみが支持床11の上面に露出して埋設され」ていることから、甲1発明は、本件発明1の「前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定され、前記ノズルの」「吹出口は断熱層の上面よりも高い位置に設置されている」との特定事項を満足する。 さらに、甲1発明の「気体噴射ノズル14」は、「閉鎖頭部15のみが支持床11の上面に露出して」おり、「支持床11上に重積される」「被処理材料」と接触していることは明らかであるから、甲1発明は、本件発明1の「前記ノズルは、原料と接している」との特定事項を満足する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、 「断熱層、断熱層を支える底板、及びノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定され、前記ノズルの吹出口は断熱層の上面よりも高い位置に設置されていること、及び 前記ノズルは、原料と接している 装置」である点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 ・相違点1 本件発明1は、「酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置」であるのに対して、甲1発明は、「粉状又は粒状の被処理材料を流動状態において加熱気体又は反応処理気体と接触反応させる流動化反応炉」である点。 ・相違点2 上面よりも高い位置に「ノズルの吹出口」が設置されている「断熱層」について、本件発明1の「断熱層」は、「耐塩素性粒子から構成」されているのに対して、甲1発明の「支持床11」は、「耐火物」からなっている点。 ・相違点3 本件発明1の「ノズル」及び「吹出口」は、「塩素ガス」を供給するためのものであるのに対して、甲1発明の「気体噴射ノズル14」及び「噴射孔18」は、「加熱気体又は反応処理気体」を供給するためものである点。 イ 相違点の検討 事案に鑑み、相違点2について検討する。 甲第2号証には、前記2(2)ア~エによれば、「塩素化反応器」の「外殻1」の「基底部に支持板6上に設けたガス分配管5の列あるいは組立てで隣接の管間の空間」を「セメント質バインダーおよび予備焼成フリント粘土骨材を含むコンクリート混合物から鋳造した充てん材」で満たすことが記載されている。 甲第3号証には、前記2(3)イ及びエによれば、「第二の塩化炉で生成した塩化物ガス」を「側壁からほぼ接線方向に導入」するための「ノズル45、46及び47」、「主たる流動塩素化ガス」を「導入」するための「分散板48」を備えた「塩化炉」が記載されている。 甲第4号証には、前記2(4)ア~エによれば、「金属製の部材を加熱するのに使用する流動床装置」において、「ノズルを設けたガス分配板」を備えた「基部」を有する「保持容器」内に「微粒子層」を内包し、「可燃ガス」を含む「流動化ガス」を「ノズルにより前記粒子層を介して」吹き付けて、「この粒子層を流動化および加熱」して「加熱流動床」とし、「保持容器」の「底板と加熱流動床の間」に「断熱静止微粒子層」を形成することが記載されている。 甲第5号証には、前記2(5)ア及びイによれば、「セメントクリンカの焼成炉のように」「非常な高温状態となる流動層炉」の「分散板」について、「流動化ガスを噴出する分散板ノズル」を「炉底板に固定される基部が金属」及び「流動層内に臨む噴出孔を備えたノズル部がセラミツク」で形成することが記載されている。 そして、甲第6号証には、前記2(6)ア~エによれば、「ヘッド100と、第1ボディ部200と、第2ボディ部300と、底面部400」を含み、「第1ボディ部200」の内部に「第1反応管250」、「第2ボディ部300」の内部に「第2反応管350」、「第2ボディ部300の下端を密閉するための底面部400に各種ノズル600、650と電極800とヒーター700」が設けられた「流動層反応器」において、「流動ガスを流動層反応器の内部に均一に分散させる」ために、「第2反応管350と底面部400によって形成された空間のうち、各種ノズルとヒーター700とが占める空間を除いた残りの空間にビーズが充填される」ことが記載されている。 しかしながら、いずれの甲号証にも、上面よりも高い位置に「ノズルの吹出口」が設置されている「断熱層」を「耐塩素性粒子から構成」することは記載されていないし、また、このようなことが技術常識であるとの証拠も無いから、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 ウ 小括 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (3)本件発明2について ア 本件発明2と甲1発明の対比 本件発明2と甲1発明との相当関係は、前記(2)アで検討したのと同様であるから、本件発明2と甲1発明とは、 「断熱層、断熱層を支える底板、及びノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定され、前記ノズルの吹出口は断熱層の上面よりも高い位置に設置されている 装置」である点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 ・相違点4 本件発明2は、「酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置」であるのに対して、甲1発明は、「粉状又は粒状の被処理材料を流動状態において加熱気体又は反応処理気体と接触反応させる流動化反応炉」である点。 ・相違点5 上面よりも高い位置に「ノズルの吹出口」が設置されている「断熱層」について、本件発明2の「断熱層」は、「耐塩素性粒子から構成」されているのに対して、甲1発明の「支持床11」は、「耐火物」からなっている点。 ・相違点6 本件発明2では、「ノズル」及び「吹出口」が「塩素ガス」を供給するためのものであるのに対して、甲1発明では、「加熱気体又は反応処理気体」を供給するためものである点。 ・相違点7 本件発明2では、「ノズルは、底板の貫通孔とは緩衝材を介して接続して固定されている」のに対して、甲1発明では、その点が明らかでない点。 イ 相違点の検討 事案に鑑み、相違点5について検討すると、前記(2)イにおいて相違点2に対して検討した理由と同様な理由により、甲1発明において、相違点5に係る本件発明2の特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 ウ 小括 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (4)本件発明6について ア 本件発明6と甲1発明の対比 本件発明6と甲1発明との相当関係は、前記(2)アで検討したのと同様であるから、本件発明6と甲1発明とは、 「断熱層、断熱層を支える底板、及びノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定され、前記ノズルの吹出口は断熱層の上面よりも高い位置に設置されている 装置」である点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 ・相違点8 本件発明6は、「酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置」であるのに対して、甲1発明は、「粉状又は粒状の被処理材料を流動状態において加熱気体又は反応処理気体と接触反応させる流動化反応炉」である点。 ・相違点9 上面よりも高い位置に「ノズルの吹出口」が設置されている「断熱層」について、本件発明6の「断熱層」は、「耐塩素性粒子から構成」されているのに対して、甲1発明の「支持床11」は、「耐火物」からなっている点。 ・相違点10 本件発明6では、「ノズル」及び「吹出口」が「塩素ガス」を供給するためのものであるのに対して、甲1発明では、「加熱気体又は反応処理気体」を供給するためものである点。 ・相違点11 本件発明6では、「ノズルは、前記底板の貫通孔の孔径と前記ノズルの内径より小さい外径を有する円筒状の接続管を用い、前記底板の貫通孔の内側及び前記ノズル内面を接続管で固定して接続されている」のに対して、甲1発明では、その点が明らかでない点。 イ 相違点の検討 事案に鑑み、相違点9について検討すると、前記(2)イにおいて相違点2に対して検討した理由と同様な理由により、甲1発明において、相違点9に係る本件発明6の特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 ウ 小括 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (5)本件発明3~5、7、8、11について 本件発明3は、本件発明1又は2の全ての特定事項を含み、本件発明4は、本件発明2の全ての特定事項を含み、本件発明7は、本件発明6の全ての特定事項を含み、そして、本件発明11は、本件発明1、2又は6の全ての特定事項を含むものであるから、前記(2)~(4)で検討したのと同様の理由により、本件発明3~5、7、8、11は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (6)まとめ 以上のとおりであるから、取消理由1に理由はない。 4 取消理由2(サポート要件違反)に対する当審の判断 (1)具体的な指摘事項 取消理由2は、要するに、本件発明の課題は、底板上に耐塩素性粒子を設置した四塩化チタン製造装置において、耐塩素性粒子の小径化を防ぎ、塩素ガスを長期間にわたって流動層内に均一に供給することができ、効率よく四塩化チタンを製造できる四塩化チタン製造装置及びこれを用いた四塩化チタンの製造方法を提供することといえるところ、設定登録時の請求項1~11に係る発明は、「断熱層」が「耐塩素性粒子」から構成されることが特定されていないため、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものといえず、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない、というものである。 (2)検討 前記第3のとおり、本件訂正により、本件発明1~11における「断熱層」は、「耐塩素性粒子から構成される」ことが特定されたため、本件発明1~11は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものといえるから、本件発明1~11に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件を満足する。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、取消理由2に理由はない。 第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 申立人が主張する特許異議申立理由のうち、前記第4の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした進歩性欠如) 設定登録時の請求項9、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第4号証~甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項9、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とした進歩性欠如) 設定登録時の請求項1、3、6~11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、並びに、甲第1号証及び甲第4号証~甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1、3、6~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(甲第3号証を主たる証拠とした進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~11に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、及び、甲第4号証~甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 申立理由1に対する当審の判断 本件発明9、10は、本件発明1又は2の全ての特定事項を含むものであるから、前記第4の3(2)及び(3)で検討したのと同様の理由により、本件発明9、10は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第4号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 よって、申立理由1に理由はない。 3 申立理由2に対する当審の判断 (1)甲第2号証に記載された発明 甲第2号証の前記第4の2(2)ア~エの記載事項を「塩素化容器」に注目して整理すると、甲第2号証には、 「耐火性ライニング2を有する外殻1からなり、外殻1の上端はライニングした蓋3により閉じており、外殻1は塩素化生成物用の上部出口4を有し、外殻1の基底部に支持板6上に設けたガス分配管5の列あるいは組立てであって、隣接のガス分配管5間の空間を、セメント質バインダー及び予備焼成フリント粘土骨材を含むコンクリート混合物から鋳造した耐火性充てん材で満たした上記列あるいは装置が配置され、支持板6の下側にガス用の入口9を有するガス分配箱8がある、塩素化容器であって、 コークス及びルチル鉱物の混合物から成る床を基底部上に作り、塩素化温度に加熱し、ガス分配管5を通して塩素ガスを供給し、床を流動懸濁状態に保ちながら反応させ、塩素化により生成した四塩化チタンを集める、四塩化チタンを生成するための塩素化容器。」 の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明の対比 甲2発明の「耐火性充てん材」、「塩素ガス」を通す「ガス分配管5」、「ルチル鉱物」、「四塩化チタンを生成するための塩素化容器」は、本件発明1の「断熱層」、「塩素ガスを供給するノズル」、「酸化チタンを含む鉱石」、「四塩化チタン製造装置」にそれぞれ相当する。 また、甲2発明の「支持板6」は、「ガス分配管5」が設けられ、この「ガス分配管5」間の空間に「耐火性充てん材」が満たされ、「耐火性充てん材」を支えているといえるから、本件発明1の「断熱層を支える底板」に相当する。 さらに、甲2発明の「支持板6」は、その下側の「入口9」から上側の「ガス分配管5」に連通する「貫通孔」を有していることは明らかであるから、甲2発明の「支持板6上に設けたガス分配管5の列あるいは組立て」は、本件発明1の「前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定されている」ことに相当する。 したがって、本件発明1と甲2発明とは、 「酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置であって、 断熱層、断熱層を支える底板、及び塩素ガスを供給するノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定されている、 四塩化チタン製造装置」である点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 ・相違点12 本件発明1では、「断熱層」は「耐塩素性粒子から構成」され、「ノズルの塩素ガス吹出口」が「断熱層の上面よりも高い位置に設置されている」のに対して、甲2発明では、「耐火性充てん材」は「セメント質バインダー及び予備焼成フリント粘土骨材を含むコンクリート混合物から鋳造」したものであって、「耐火性充てん材」と「ガス分配管5」の位置関係も明らかでない点。 ・相違点13 本件発明1では、「ノズルは、原料と接している」のに対して、甲2発明では、その点が明らかでない点。 イ 相違点の検討 相違点12について検討すると、前記第4の3(2)イで検討したとおり、甲第1号証、甲第4号証~甲第6号証のいずれにも、上面よりも高い位置に「ノズルの吹出口」が設置されている「断熱層」を「耐塩素性粒子から構成」することは記載されていないし、また、このようなことが技術常識であるとの証拠も無いから、甲2発明において、相違点12に係る本件発明1の特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 ウ 小括 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、並びに、甲第1号証及び甲第4号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (3)本件発明6について ア 本件発明6と甲2発明の対比 本件発明6と甲2発明との相当関係は、前記(2)アで検討したのと同様であるから、本件発明6と甲2発明とは、 「酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置であって、 断熱層、断熱層を支える底板、及び塩素ガスを供給するノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定されている、 四塩化チタン製造装置」である点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 ・相違点14 本件発明6では、「断熱層」は「耐塩素性粒子から構成」され、「ノズルの塩素ガス吹出口」が「断熱層の上面よりも高い位置に設置されている」のに対して、甲2発明では、「耐火性充てん材」は「セメント質バインダー及び予備焼成フリント粘土骨材を含むコンクリート混合物から鋳造」したものであって、「耐火性充てん材」と「ガス分配管5」の位置関係も明らかでない点。 ・相違点15 本件発明6では、「ノズルは、前記底板の貫通孔の孔径と前記ノズルの内径より小さい外径を有する円筒状の接続管を用い、前記底板の貫通孔の内側及び前記ノズル内面を接続管で固定して接続されている」のに対して、甲2発明では、その点が明らかでない点。 イ 相違点の検討 事案に鑑み、相違点14について検討すると、前記(2)イにおいて相違点12に対して検討した理由と同様な理由により、甲2発明において、相違点14に係る本件発明6の特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 ウ 小括 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲第2号証に記載された発明、並びに、甲第1号証及び甲第4号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (4)本件発明3、7~11について 本件発明3、9、10は、本件発明1の全ての特定事項を含み、本件発明7及び8は、本件発明6の全ての特定事項を含み、そして、本件発明11は、本件発明1又は6の全ての特定事項を含むものであるから、前記(2)及び(3)で検討したのと同様の理由により、本件発明3、7~11は、甲第2号証に記載された発明、並びに、甲第1号証及び甲第4号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、申立理由2に理由はない。 4 申立理由3に対する当審の判断 (1)甲第3号証に記載された発明 甲第3号証の前記第4の2(3)イの記載を踏まえると、同エに摘記した第3図の「分散板48」は、第2図に示された「分散板ノズル34」に相当する「ノズル」を有していることが見て取れるから、同ア~エに摘記した記載事項を、第3図の「第一の塩化炉」に注目して整理すると、甲第3号証には、 「含チタン原料としてのルチル鉱を還元用コークスの存在下で塩素含有ガスによって流動塩素化して四塩化チタンを製造するための第一の塩化炉であって、第二の塩化炉で生成した塩化物ガスを側壁からほぼ接線方向に導入するためのノズル45、46及び47と、主たる流動塩素化ガスを導入するための分散板ノズルを有する分散板48を備えた第一の塩化炉。」 の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲3発明の対比 甲3発明の「含チタン原料としてのルチル鉱物」、「主たる流動塩素化ガス」、「主たる流動塩素化ガスを導入するための分散板ノズル」、「分散板48」、「四塩化チタンを製造するための第一の塩化炉」は、本件発明1の「酸化チタンを含む鉱石」、「塩素ガス」、「塩素ガスを供給するノズル」、「底板」、「四塩化チタン製造装置」にそれぞれ相当する。 また、甲3発明の「分散板ノズル」は、「分散板48」に固定されていることは明らかであるし、また、「主たる流動塩素化ガス」を導入して「含チタン原料」等を流動化させるためのものであるから、甲3発明は、本件発明1の「前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定され」、「前記ノズルは、原料と接している」との特定事項を満足する。 したがって、本件発明1と甲3発明とは、 「酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置であって、 底板、及び塩素ガスを供給するノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定され、 前記ノズルは、原料と接している、 四塩化チタン製造装置」である点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 ・相違点16 本件発明1は、底板に支えられた「耐塩素性粒子から構成される断熱層」を有すると共に、「ノズルの塩素ガス吹出口は断熱層の上面よりも高い位置に設置されている」のに対して、甲3発明は、「断熱層」を有することが明らかでなく、ノズルとの位置関係も明らかでない点。 イ 相違点の検討 相違点16について検討すると、前記第4の3(2)イで検討したとおり、甲第4号証~甲第6号証のいずれにも、上面よりも高い位置に「ノズルの吹出口」が設置されている「断熱層」を「耐塩素性粒子から構成」することは記載されていないし、また、このようなことが技術常識であるとの証拠も無いから、甲3発明において、相違点16に係る本件発明1の特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明、及び、甲第4号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (3)本件発明2について ア 本件発明2と甲3発明の対比 本件発明2と甲3発明との相当関係は、前記(2)アで検討したのと同様であるから、本件発明2と甲3発明とは、 「酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置であって、 底板、及び塩素ガスを供給するノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定されている、 四塩化チタン製造装置」である点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 ・相違点17 本件発明2は、底板に支えられた「耐塩素性粒子から構成される断熱層」を有すると共に、「ノズルの塩素ガス吹出口は断熱層の上面よりも高い位置に設置されている」のに対して、甲3発明は、「断熱層」を有することが明らかでなく、ノズルとの位置関係も明らかでない点。 ・相違点18 本件発明2では、「ノズルは、底板の貫通孔とは緩衝材を介して接続して固定されている」のに対して、甲3発明では、その点が明らかでない点。 イ 相違点の検討 事案に鑑み、相違点17について検討すると、前記(2)イにおいて相違点16に対して検討した理由と同様な理由により、甲3発明において、相違点17に係る本件発明3の特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 ウ 小括 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第3号証に記載された発明、及び、甲第4号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (4)本件発明6について ア 本件発明6と甲3発明の対比 本件発明6と甲3発明との相当関係は、前記(2)アで検討したのと同様であるから、本件発明6と甲3発明とは、 「酸化チタンを含む鉱石、コークス及び塩素ガスを反応させて四塩化チタンを製造する装置であって、 底板、及び塩素ガスを供給するノズルを有し、 前記ノズルは底板の貫通孔に接続して固定されている、 四塩化チタン製造装置」である点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 ・相違点19 本件発明6は、底板に支えられた「耐塩素性粒子から構成される断熱層」を有すると共に、「ノズルの塩素ガス吹出口は断熱層の上面よりも高い位置に設置されている」のに対して、甲3発明は、「断熱層」を有することが明らかでなく、ノズルとの位置関係も明らかでない点。 ・相違点20 本件発明6では、「ノズルは、前記底板の貫通孔の孔径と前記ノズルの内径より小さい外径を有する円筒状の接続管を用い、前記底板の貫通孔の内側及び前記ノズル内面を接続管で固定して接続されている」のに対して、甲3発明では、その点が明らかでない点。 イ 相違点の検討 事案に鑑み、相違点19について検討すると、前記(2)イにおいて相違点16に対して検討した理由と同様な理由により、甲3発明において、相違点19に係る本件発明6の特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 ウ 小括 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲第3号証に記載された発明、及び、甲第4号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (5)本件発明3~5、7~11について 本件発明3、9、10は、本件発明1又は2の全ての特定事項を含み、本件発明4、5は、本件発明2の全ての特定事項を含み、本件発明7及び8は、本件発明6の全ての特定事項を含み、そして、本件発明11は、本件発明1、2又は6の全ての特定事項を含むものであるから、前記(2)~(4)で検討したのと同様の理由により、本件発明3~5、7~11は、甲第3号証に記載された発明、及び、甲第4号証~甲第6証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (6)まとめ 以上のとおりであるから、申立理由3に理由はない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700607

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