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特許異議申立

2020-700394

多結晶シリコンを堆積させるための反応器

審判番号
2020-700394
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-519351
登録番号
6619093
請求日
2020年06月09日
審決日
2023年07月18日
公報発行日
2023年10月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
  • 【権利者代理人】弁理士法人川口國際特許事務所
  • 【異議申立人】星 正美
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 後藤 政博
  • 審判官 増山 淳子
分類
P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6619093号発明「多結晶シリコンを堆積させるための反応器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6619093号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第6619093号の請求項1、4~9に係る特許を維持する。 特許第6619093号の請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6619093号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)10月11日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年10月14日 ドイツ(DE))を国際出願日とする特願2018-519351号として特許出願され、令和1年11月22日にその特許権の設定登録がされ、同年12月11日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 2年 6月 9日 :特許異議申立人 星正美(以下、「申立人」 という。)による請求項1~9に係る特許に 対する特許異議の申立て 同年 8月25日付け:取消理由通知書 同年12月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 3年 1月 8日 :申立人による意見書の提出 同年 3月16日付け:訂正拒絶理由通知書 同年 9月14日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年12月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 4年 2月 2日 :申立人による意見書の提出 同年 9月28日付け:取消理由通知書 同年12月27日 :特許権者による意見書の提出 令和 5年 2月 7日 :申立人による上申書の提出 なお、令和3年3月16日付けの訂正拒絶理由通知に対する特許権者からの応答はなかった。また、令和3年12月8日に訂正の請求がされたので、令和2年12月1日にされた先の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和3年12月8日付けの訂正の請求の趣旨は、特許第6619093号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「多結晶シリコンの堆積のための反応器であって、」 という記載を、 「多結晶シリコンの堆積のためのシーメンス反応器であって、」 に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1の 「前記フィードガスシステムおよび/または前記オフガスシステムが、」 という記載を、 「前記フィードガスシステムが、および、任意で前記オフガスシステムが、」 に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1の 「保護要素が、前記ノズルまたは前記フィードガス導管内に設置されていることを特徴とする、反応器。」 という記載を、 「保護要素が、前記ノズルまたは前記フィードガス導管内に設置されており、保護要素が、フィードガス導管の端部から0mmから500mmの距離に設置されたグリッドであり、グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている、ことを特徴とする、反応器。」 に訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項4の 「請求項2又は3に記載の反応器。」 という記載を、 「請求項1に記載の反応器。」 に訂正する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項5の 「請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器。」 という記載を、 「請求項1又は4に記載の反応器。」 に訂正する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項6の 「請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器。」 という記載を、 「請求項1又は4に記載の反応器。」 に訂正する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9の 「いずれか一項に記載の反応器内に」 という記載を、 「いずれか一項に記載のシーメンス反応器内に」 に訂正する。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項9の 「請求項1から8のいずれか一項に記載」 という記載を、 「請求項1および4から8のいずれか一項に記載」 に訂正する。 (11) 一群の請求項について 訂正前の請求項1の記載を訂正前の請求項2~9が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~9は一群の請求項であるところ、本件訂正に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1~9を訂正の単位として請求されたものである。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1) 訂正事項1、9について 訂正事項1、9は、訂正前の請求項1、9の「反応器」を、「シーメンス反応器」に具体的に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項1、9は、本件明細書の段落【0003】、【0004】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記フィードガスシステムおよび/または前記オフガスシステムが、・・・保護要素を備え」の記載において、「フィードガスシステム」又は「フィードガスシステム及びオフガスシステム」が保護要素を備える構成に限定したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項2は、単に選択肢の中から、「オフガスシステム」のみが保護要素を備える構成を削除したものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する訂正前の請求項2及び請求項3のそれぞれの特定事項を、訂正前の請求項1に追加したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項3で特定した事項は、訂正前の請求項2、3に記載されていたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4) 訂正事項4、5について 訂正事項4、5は、それぞれ請求項2、3を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5) 訂正事項6~8、10について 訂正事項6~8、10は、訂正前の請求項2、3が削除されたことによって、訂正前の請求項4~6、9において、引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件について 本件特許の全請求項について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 小括 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 第3 本件発明について 本件訂正により訂正された請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す。)。 「【請求項1】 多結晶シリコンの堆積のためのシーメンス反応器であって、 前記反応器は、反応器壁によって横方向および上方向に区切られており、基板によって下方向に区切られており、電流の直接通過によって加熱可能であり前記基板に取り付けられた複数のフィラメントロッド、当該反応器内にケイ素含有反応混合物を導入するための前記基板にある1個以上の開口部を通過するフィードガスシステム、および当該反応器からオフガスを排出するための前記基板にある1個以上の開口部を通過するオフガスシステムを備え、 前記フィードガスシステムが、および、任意で前記オフガスシステムが、開口部またはメッシュアパーチャーを含む金属、セラミックまたはCFC製の少なくとも1個の保護要素を備え、前記フィードガスシステムまたは前記オフガスシステムからフラッシングによって除去できるシリコン片のみが、前記保護要素より下の前記フィードガスシステムまたは前記オフガスシステムに進入可能になるように、前記保護要素の前記開口部および前記メッシュアパーチャーが構成され、フィードガスシステムが、少なくとも1個のノズルおよび前記ノズルに接続された少なくとも1個のフィードガス導管を備え、保護要素が、前記ノズルまたは前記フィードガス導管内に設置されており、保護要素が、フィードガス導管の端部から0mmから500mmの距離に設置されたグリッドであり、グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている、ことを特徴とする、反応器。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 グリッドの総面積に対する、すべての穴の面積の合計の比K1が、0.2から0.8の間である、請求項1に記載の反応器。 【請求項5】 オフガスシステムが、少なくとも1個のオフガス導管を備え、保護要素が、前記オフガス導管内に配置された、または前記オフガスシステムのための基板の開口部に配置されたオフガスふるいである、請求項1又は4のいずれか一項に記載の反応器。 【請求項6】 保護要素が、オフガスシステムのための基板の開口部の中に吊り下げられたオフガスバスケットである、請求項請求項1又は4に記載の反応器。 【請求項7】 オフガスバスケットが、基板に対して上方向に開いており、オフガス導管に対して下方向に閉じられており、オフガスバスケットの壁に穴が設けられている、請求項6に記載の反応器。 【請求項8】 基板の開口部の中まで突出したオフガスバスケットの面積に対する、すべての穴の面積の合計の比K2が、0.2から0.9の間である、請求項6または7に記載の反応器。 【請求項9】 複数のフィラメントロッドを内包する請求項1および4から8のいずれか一項に記載のシーメンス反応器内に、ケイ素含有成分および水素を含有する反応ガスを導入することを含む、多結晶シリコンを製造するための方法であって、電極によって各フィラメントロッドに電流が供給され、この結果、電流の直接通過によって、多結晶シリコンがフィラメントロッド上に堆積する温度に加熱される、方法。」 第4 取消理由(決定の予告)について 1 取消理由(決定の予告)の概要 令和3年9月14日付けの取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 (1) 取消理由1(明確性要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 設定登録時の請求項1は、「・・前記フィードガスシステムおよび/または前記オフガスシステムが、開口部またはメッシュアパーチャーを含む金属、セラミックまたはCFC製の少なくとも1個の保護要素を備え・・・フィードガスシステムが、少なくとも1個のノズルおよび前記ノズルに接続された少なくとも1個のフィードガス導管を備え、保護要素が、前記ノズルまたは前記フィードガス導管内に設置されていることを特徴とする、反応器。」と記載され、「オフガスシステム」のみに「保護要素」を備えることが特定される一方で、「フィードガスシステム」が、「ノズル」及び「フィードガス導管」を備え、さらに「保護要素」が設置されていることが必須の特定事項であるとも解せられることから、設定登録時の請求項1及びこれに従属する請求項2~9が明確であるとはいえない(下線部は、当審が付与した。)。 (2) 取消理由2(新規性欠如) 設定登録時の請求項1、2、4、5、9に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (3) 取消理由3(進歩性欠如) 設定登録時の請求項1、2、4、5、9に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <新規性、進歩性に係る証拠方法> 甲1:中国実用新案第201809173号明細書 甲2:国際公開第2014/166711号 2 取消理由についての判断 (1) 取消理由1(明確性要件違反)について 本件発明1は、「フィードガスシステムが、および、任意で前記オフガスシステムが・・・少なくとも1個の保護要素を備え」と特定された。そうすると、「フィードガスシステムおよびオフガスシステム」の両システム又は「フィードガスシステム」のみが「保護要素」を備え、さらに「フィードガスシステム」が「ノズル」及び「フィードガス導管」を備えることが明らかであるから、本件発明1及びこれに従属する本件発明4~9は明確である。 したがって、明確性要件違反を理由とする取消理由1は理由がない。 (2) 取消理由2、3(新規性・進歩性欠如)について ア 各証拠の記載事項 (ア)甲1の記載事項 甲1には、以下の 1a~1fの記載がある(甲1に記載された段落番号に対応させて、該当箇所の日本語訳のみ示す。また、下線は当審が付与した。なお、日本語訳は、特許異議申立書に添付された甲1の翻訳文を参考にした。)。 1a「請求の範囲 1.ステンレス鋼管キャップ(1)はステンレス鋼管(2)と連結され、ステンレス鋼管(2)の下方に複数のステンレス鋼支持脚(4)が設けられ、ステンレス鋼管(2)上に複数の通気口(3)が設けられ、 前記ステンレス鋼管キャップ(1)の上方には円孔が設けられており、前記円孔は吸気管(5)の外径と隙間を隔てて結合されることを特徴とする還元炉シリコンブロック脱落防止装置。 2.前記通気口(3)は細長いバー状を呈し、ステンレス鋼管(2)の円周上に分布されることを特徴とする請求項1に記載の還元炉シリコンブロック脱落防止装置。 3.前記複数の通気口(3)の総面積は還元炉排気管の横断面積以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の還元炉シリコンブロック脱落防止装置。 4.前記通気口(3)の底部は還元炉の底盤より20±5mm高いことを特徴とする請求項3に記載の還元炉シリコンブロック脱落防止装置。」 1b「技術分野 [0001] 本考案はシーメンス法多結晶シリコン還元炉の部材に関し、特に、還元炉シリコンブロック脱落防止装置に関する。 背景技術 [0002] 現在、改良型シーメンス法多結晶シリコン還元炉は、何れも底盤から吸気、底盤から排気する方式であり、シリコンロッドの成長過程で、シリコンロッドが倒れる現象が頻繁に発生し、このような現象が発生すると、シリコンブロックが還元炉の排気管路に落ちて流動するプロセスガスにより後続するプロセスパイプラインに持ち込まれ、シリコンブロックが管路内に落ちたかどうか、またはどれだけ落ちたかを見つけることは難しく、見つけてもシリコンブロックを取り出すことができない。シリコンブロックを取り出すためには、還元炉の排気管路を取り外すしかないが、これには時間と手間がかかり、時間が経つにつれて、排気管路に落ちたシリコンブロックの数が十分多くなると、パイプラインが塞がれ、シリコンロッドの成長末期に、プロセスガスの流量が非常に大きい場合、還元炉及び炉の前の蒸発器の圧力が塞ぎ止められて、設計圧力を超えてしまうことにより、還元炉の正常的な生産及びプロセス操作に安全上のリスクをもたらす。 発明の概要 [0003] 本考案が解決しようとする技術的問題は、シリコンブロックが排気管路に落ちることを回避することができる還元炉シリコンブロック脱落防止装置を提供することにある。」 1c「[0010] 本考案で提供する還元炉シリコンブロック脱落装置は、生産中にシリコンロッドが傾倒されて、シリコンブロックが排気管に入って、還元炉の排気プロセスパイプラインを塞ぐ問題を効果的に解決し、本考案は、構造が簡単で、且つ実用的であり、取り外しが便利であるので、メンテナンス及び交換が便利である。」 1d「発明を実施するための形態 [0015] 図1及び図2に示すように、還元炉シリコンブロック脱落防止装置において、ステンレス鋼管キャップ1は、ステンレス鋼管2に連結され、ステンレス鋼管2の下方に複数のステンレス鋼支持脚4が設けられ、ステンレス鋼管2に複数の通気口3が設けられている。 [0016] 図3に示すように、前記ステンレス鋼管キャップ1の上方に円孔 が設けられており、前記円孔は吸気管5の外径と隙間を隔てて結合される。還元炉の吸気管は、ステンレス鋼管キャップ1の中心孔を貫通し、ステンレス鋼管キャップ1より若干高くなっており、吸気管の頂部は管継手であり、管継手には2つの小さい板が溶接されており、小リブ板は本考案に対して上下方向に位置決めし、容易に外して取り出すことができる。 [0017] 前記通気口3は、細長いバー状を呈し、ステンレス鋼管3の円周上に分布される。 [0018] 前記通気口3の総面積は、還元炉排気管の横断面積以上である。 [0019] 前記通気口3の底部は、還元炉の底盤より20±5mm高い。ステンレス鋼管2が還元炉底盤上に置かれることにより、プロセスガスが細長いバー状の通気口3から還元炉排気管に円滑に流れるようにすることができるだけでなく、シリコンロッドが倒れた時にシリコンブロックが還元炉の排気管に落ちることを防止することができる。」 1e「 [図:0001402722000001.jpg] 」 1f「 [図:0001402722000002.jpg] 」 (イ)甲2の記載事項 甲2には、以下の 2a~2dの記載がある(該当箇所の日本語訳のみ示す。なお、日本語訳は、特許異議申立書に添付された甲2の対応日本語公報(特表2016-521238号公報)を参考にした。) 2a (1ページ25行~2ページ18行) 「シーメンス法は、通常、析出炉(「シーメンス炉」とも呼ばれる。)内で実施される。最も一般的な実施形態では、炉は、金属製ベースプレートと、ベル内部に反応空間が形成されるようにベースプレートに載せられる冷却可能なベル状部とを備える。ベースプレートには、1つ以上のガス入口孔と、出発する反応ガスのための1つ以上の排ガス孔とが備え付けられ、基材を反応空間内に保持し電力が供給されるホルダも備え付けられる。 各基材は、2つの薄いフィラメントロッドと、隣り合うロッドをこれらの自由端で概ね接合するブリッジとから主に成る。最も頻繁には、フィラメントロッドは、単結晶または多結晶シリコンで作られ、稀に金属または合金または炭素が使用される。フィラメントロッドは、炉ベースに位置する電極に垂直に差し込み、これらの電極を介して電源供給部との接続が成される。加熱されるフィラメントロッドおよび水平ブリッジには、高純度ポリシリコンが析出し、この結果、これらの直径が時間とともに増加する。所望の直径を達成した後、方法は終了する。 ポリシリコンを製造するために、析出炉がルーチン的に使用され、炉内にはベースプレートと呼ばれる下部にて反応ガスがノズルを介して注入される。しかし、炉の上部には、ノズルを用いて可能な限り等しく反応ガスが導入される。」 2b (5ページ14行~30行) 「析出工程を通して、成長するシリコンロッドにクラックが生じることがある。この結果として、各種サイズのシリコン破砕物が給送孔および排ガス孔に落下し、ガス管またはガス分配器を閉塞することがある。 最悪の場合、全てのロッドが崩壊することがあり、非常に大きなシリコン片が入口および出口孔に落下することがある。 原料ガスの場合、このような閉塞は、原料ガスの不均一な分配または不正確な計量をもたらし、排ガスの場合、閉塞は、炉内の望ましくない圧力上昇を生じさせることがある。 このため、遅くとも次のバッチの前にシリコン片を除去しなければならない。」 2c (11ページ29行~12ページ6行) 「図3は、炉フード1、U字状基材7(表面にシリコンが析出される。)と、2つの原料ガス分配器21とを有する炉を示している。31は原料ガス管を示している。反応ガスは、反応ガス給送部41を介して原料ガス分配器21に導かれる。原料ガス分配器21毎に反応ガス用の3つの孔を示している。ベースプレート5には、対応する孔が存在する。原料ガス分配器の個々の要素は、フランジ接続部6を用いて固定されており分離され得る。加えて排ガス捕集器22が設けられる。32は排ガス管を示している。炉からの排ガスは、ベースプレート5の3つの孔を介して排ガス管32(対応する孔を排ガス捕集器が有する。)に導かれ、排ガス除去部42を用いて排ガス捕集器22から除去される。排ガス捕集器22の個々の要素は、フランジ接続部6を用いて固定されており分離され得る。水冷却部8が水噴霧部9とともに設けられる。」 2d「 [図:0001402722000003.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 記載事項1a~1fから、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「シーメンス法多結晶シリコン還元炉であって、 前記還元炉は、底盤から吸気及び排気する方式であり、 還元炉の排気管を備え ステンレス鋼管キャップがステンレス鋼管に連結され、複数の通気口が設けられた前記ステンレス鋼管は、還元炉の底盤上に置かれ、 プロセスガスが前記通気口から還元炉排気管に円滑に流れると共に、シリコンブロックが前記排気管に落ちることを防止するように還元炉シリコンブロック脱落防止装置を構成した、還元炉。」 ウ 対比・判断 (ア)本件発明1について 甲1発明の「シーメンス法多結晶シリコン還元炉」は、本件発明1の「多結晶シリコンの堆積のためのシーメンス反応器」に相当することは明らかである。 次に、甲1発明に係る還元炉は、その構造において、当然に本件発明1と同様に反応器壁によって横方向および上方向に区切られていると認められ、 甲1発明の「底盤」は、その名称からすると還元炉を下方で還元炉内部と外部とを区切るといえるから、本件発明1の「基板」に相当する。また、甲1発明の「吸気及び排気する方式」は、底盤に、原料ガス(フィードガス)を吸気し、反応後のガス(オフガス)を排気するためにそれぞれ開口があるといえ、還元炉の排気管は、反応後のガスを排気するための開口に接続されることは明らかである。そうすると、甲1発明の「還元炉は、底盤から吸気及び排気する方式であり、還元炉の排気管を備え」ることは、本件発明1の「反応器は、基板によって下方向に区切られており、基板にある1個以上の開口部を通過するフィードガスシステム、および当該反応器からオフガスを排出するための前記基板にある1個以上の開口部を通過するオフガスシステムを備え」ることに相当する。 さらに、甲1発明の「ステンレス鋼管キャップ」及び「ステンレス鋼管」は、金属製であり、記載事項 1a、1dからも明らかなとおり、シリコンブロックが排気管路に落ちて、還元炉排気プロセスパイプラインが塞がれることを防止するものであって、本件発明1と同様にオフガスシステムを保護するものであるといえるから、甲1発明の「ステンレス鋼管キャップがステンレス鋼管に連結され、複数の通気口が設けられた前記ステンレス鋼管は、・・・ シリコンブロックが前記排気管に落ちることを防止するように」したことは、本件発明1の「前記オフガスシステムが、開口部またはメッシュアパーチャーを含む金属、セラミックまたはCFC製の少なくとも1個の保護要素を備え」ることに相当する。 以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、 「多結晶シリコンの堆積のためのシーメンス反応器であって、 前記反応器は、反応器壁によって横方向および上方向に区切られており、基板によって下方向に区切られており、フィートガスは基板にある1個以上の開口部を通過するフィードガスシステム、および当該反応器からオフガスを排出するための前記基板にある1個以上の開口部を通過するオフガスシステムを備え、 前記オフガスシステムが、開口部またはメッシュアパーチャーを含む金属、セラミックまたはCFC製の少なくとも1個の保護要素を備え、前記保護要素の前記開口部および前記メッシュアパーチャーが構成されている、反応器。」 の点で一致し、以下の相違点1~3において、両者は一応相違していると認められる。 ・相違点1:本件発明1では、「前記反応器は、電流の直接通過によって加熱可能であり前記基板に取り付けられた複数のフィラメントロッドを備え、フィードガスとして、ケイ素含有反応混合物を導入するための開口部を通過するフィードガスシステム」が特定されているのに対して、甲1発明では、このような反応器の構成及び具体的なフィードガス成分が規定されていない点。 ・相違点2:本件発明1では、「前記フィードガスシステムまたは前記オフガスシステムからフラッシングによって除去できるシリコン片のみが、前記保護要素より下の前記フィードガスシステムまたは前記オフガスシステムに進入可能になるように、前記保護要素の前記開口部および前記メッシュアパーチャーが構成され」ることが特定されているのに対して、甲1発明では、このような保護要素の開口部およびメッシュアパーチャーの構成を有していない点。 ・相違点3:本件発明1では、「フィードガスシステムが、少なくとも1個のノズルおよび前記ノズルに接続された少なくとも1個のフィードガス導管を備え、保護要素が、前記ノズルまたは前記フィードガス導管内に設置されており、保護要素が、フィードガス導管の端部から0mmから500mmの距離に設置されたグリッドであり、グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている」ことが特定されているのに対して、甲1発明では、底盤から吸気する方式であることは規定されているが、本件発明1のフィードガスシステムの保護要素に該当する事項は何ら規定されていない点。 事案に鑑み、相違点3について検討すると、甲1発明に係る還元炉のフィードガスシステムは、「保護要素」に該当する事項について何ら規定をしておらず、甲1をみても、これについての示唆はされていないから、当該相違点3は、本件発明1と甲1発明との実質的な相違点であるといえる。 そこで、相違点3についての容易想到性について検討する。 甲2の記載事項2aによると、反応ガスがノズルを介して注入されること、また、記載事項2bによると、シリコン破砕物が給送孔に落下してガス管を閉塞する恐れがあることが、それぞれ公知の事項であると認められるから、甲1発明において、原料ガスを吸気する開口にノズルを設けること、及びシリコンブロックの落下を防止するために、排気管側に設けるステンレス鋼管キャップ及びステンレス鋼管を含むブロック脱落防止装置を配置する程度のことは当業者であれば容易に想到し得るものであるといえる。 しかし、甲1発明のシリコンブロック脱落防止装置について、甲1の記載事項を仔細にみても、シリコンブロックが排気管に落ちることを防止するために、ステンレスキャップに接続されたステンレス鋼管が底盤上に置かれることについての開示は認められるものの、本件発明1の上記相違点3に係る「保護要素が、前記ノズルまたは前記フィードガス導管内に設置されており、保護要素が、フィードガス導管の端部から0mmから500mmの距離に設置されたグリッドであり、グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている」という、保護要素であるグリッドが、ノズルに設けられるという構造についてまでうかがい知ることはできないから、当該構成について、甲1発明は何ら想定していないというほかなく、そのような構造に転換することを動機付けるような要因も見当たらない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明とはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (イ)本件発明4、5、9について 本件発明4、5、9は、上記(ア)において検討した本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、これらの発明についても、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明とはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 エ 取消理由2、3(新規性・進歩性欠如)についてのまとめ 以上のとおりであるから、新規性及び進歩性欠如を理由とする取消理由2、3は理由がない。 第5 令和4年9月28日付けの取消理由について 1 取消理由の概要 令和4年9月28日付けの取消理由の概要は、以下のとおりである。 なお、令和4年2月2日付けの申立人の意見書の内容は、下記(1) ア~ウと同旨である。 (1) 取消理由(明確性要件違反) 本件特許は、本件発明1及びこれに従属する本件発明4~9が下記ア~ウ の点で明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満た していない特許出願に対してされたものである。 ア ノズルとフィードガス導管との位置関係について 「少なくとも1個のノズルおよび前記ノズルに接続された少なくとも1個のフィードガス導管を備え」と特定され、本件明細書にも「1個以上のノズル、および、ノズルまたはノズルに接続された気体分配装置に接続された1個以上のフィードガス導管」(段落【0027】)等の記載はあるものの、フィードガス導管のみ又はノズルのみが記載された図面が示されているだけであるから、「ノズルおよびノズルに接続されたフィードガス導管」とは、どのような構造を想定しているのか明確でない。 イ 「フィードガス導管の端部」の記載について 「保護要素が、フィードガス導管の端部から0mmから500mm」の特定事項について、「フィードガス導管の端部」とは、ノズルに接続されたフィードガス導管において、どの位置を示すのか明確でない。 本件明細書では、「グリッドは、フィードガス導管の端部から、0mmから500mmまでの距離にあってよい。フィードガス導管の端部は、ノズルの頂部の縁部として規定されている。」(段落【0032】)と記載されているが、当該記載を参照しても、「フィードガス導管の端部」と「ノズルの頂部の縁部」との対応関係が明らかでない。 ウ 「グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている」の記載について 「ノズルの下側」の記載があいまいであり、ノズルとフィードガス導管とを備えた場合に「グリッド」がどの位置に据え付けられているのか明確でない。 すなわち、「下側」という用語について、本件明細書には、「一実施形態において、グリッドは、ノズルの下側に据え付けられている。「下側」という用語は、フィードガス導管にねじ込み継手により固定される側を意味するものとして理解すべきである。」(段落【0041】)と記載されている。しかし、本件発明では「ねじ込み継手」は特定されておらず、「下側」の定義が明らかでない。 2 取消理由(明確性要件違反)についての判断 (1) 本件特許の明細書及び図面の記載事項 本件特許の明細書及び図面には、次の記載がある。 「【0027】 「フィードガスシステム」という用語は、1個以上のノズル、および、それぞれがノズルまたはノズルに接続された気体分配装置に接続された1個以上のフィードガス導管を意味するものとして理解すべきである。従って、フィードガス導管およびノズルはそれぞれ、互いに直接接続し合っていてもよい。しかしながら、個別のフィードガスノズルのための複数の接続部を有する気体分配装置を基板より下に設置することもできる。ノズルおよびフィードガス導管は、基板の開口部を通過し、基板上に据え付けられている。しかしながら、他の構成、例えば気体分配装置と、ノズルに接続された個別のフィードガス導管との組合せも想定可能である。 ・・・ 【0030】 従って、フィードガスシステムにおいて、保護要素は、ノズルまたはフィードガス導管内に設定されていてもよい。個別の各ノズルまたは個別の各フィードガス導管は、保護要素とはめ合わされることになる。」 「【0031】 本発明の一実施形態において、保護要素は、フィードガス導管またはノズルの断面に設置されたグリッドである。 【0032】 グリッドは、フィードガス導管の端部から、0mmから500mmまでの距離にあってよい。フィードガス導管の端部は、ノズルの頂部の縁部として規定されている。 【0033】 従って、グリッドは、フィードガス導管の中またはノズルの頂部側、ノズルの底部側もしくはノズルの中に据え付けられることも可能であるし、またはねじ込み継手により固定されることも可能である。 【0034】 グリッドは、平坦な表面または曲がった形状を有し得る。 【0035】 グリッドは、織物型メッシュまたは穴のある基体から製造されることが可能である。穴の形状は、円形、正方形または所望される任意の他の形状であってよい。円形または正方形の形状が好ましい。 【0036】 グリッドの基体は、多様な幾何形状にして実装することができる。 【0037】 可能な幾何形状は、ディスク、球形もしくは楕円形、円錐または二次元的もしくは三次元的に曲がった状態である。 【0038】 好ましい一実施形態において、平坦なディスクが重要である。 【0039】 グリッドの各実施形態は、ノズル内の流れ方向に対して異なる角度で据え付けられることが可能である。 【0040】 角度は、0°から80°までであり得る。」 「【0041】 一実施形態において、グリッドは、ノズルの下側に据え付けられている。「下側」という用語は、フィードガス導管にねじ込み継手により固定される側を意味するものとして理解すべきである。 【0042】 グリッドをノズルに取り付ける可能な手段は、溶接、はんだ付け、ねじ込み継手による固定、滑りばめまたは締結である。」 「【符号の説明】 【0076】 1 基板 2 フィードガス導管 3 グリッド 4 ねじ込み継手 5 グリッド用の据付けリング 6 グリッド固定用のピン 7 ノズル ・・・ 【図面の簡単な説明】 【0077】 【図1】フィードガス導管のグリッドの概略図を示す。 ・・・ 【図4】フィードガス導管の出口にグリッドディスクが締結された概略図を示す。 ・・・ 【図6】ノズルに据え付けられたグリッドの様々な実施形態の概略図を示す。 ・・・ 【0078】 図1は、反応器の基板1およびフィードガス導管2を示している。グリッ ド3が、フィードガス導管2内に設置されている。 ・・・ 【0081】 図4は、反応器の基板1およびフィードガス導管2を示している。グリッド3が、フィードガス導管2の出口に据え付けられる。この目的のために、ねじ込み継手4によってフィードガス導管2に固定された、グリッド3のための据付けリング5が存在する。この結果、フィードガス導管2の出口にグリッドディスクが締結されている。 ・・・ 【0083】 図6は、ノズル7に据え付けられたグリッド3の様々な実施形態を示している。グリッド3の基体は、球形または楕円形(A、B)、平坦な(C、D)および円錐(E、F)という、異なる幾何形状を有する。実施形態Dは、ノズル内の流れ方向に対して約30°の角度に固定されている。」 「 [図:0001402722000004.jpg] 図1 」 「 [図:0001402722000005.jpg] 図4 」 「 [図:0001402722000006.jpg] 図6 」 (2) 令和4年12月27日付けの特許権者の意見書における主張 特許権者は、令和4年12月27日付けの意見書において、上記取消理由(明確性要件違反)のア~ウの指摘に対して、以下のように主張している。 「本件特許権者は、取消理由通知書における ・・・ 「(1)本件発明1」においてご指摘のア~ウの点について、以下の参考図を参照しながらご説明致します。」 a「[参考図1] [図:0001402722000007.jpg] 」 b「[参考図2] [図:0001402722000008.jpg] 」 c「ア ノズルとフィードガス導管との位置関係について ノズル7、および、ノズルに接続されたフィードガス導管2は、添付しました2つの参考図に示されるような構造を想定しております。」 d「イ フィードガス導管の端部の記載について フィードガス導管の端部とは、上記の参考図1においてTop edge of Nozzleの表記で示された位置であります。本願明細書の段落[0032]の「フィードガス導管の端部は、ノズルの頂部の縁部として規定されている。」という記載は、ノズルがある場合についての記載であります。「グリッドは、フィードガス導管の端部から、0mmから500mmまでの距離にあってよい。」という記載における「フィードガス導管の端部」は、「ノズルの頂部の縁部」であることを述べる意図であり、すなわち、参考図1においてTop edge of Nozzleの表記の表記で示された位置が、フィードガス導管の端部となります。」 e 「ウ 「グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている」の記載について ノズルの下側とは、上記の参考図2にも示されておりますように、ノズルの2つの端部のうち、フィードガス導管に継がれる側の端部を指しております。本願明細書は、ノズルとフィードガス導管とを備える態様と、ノズルを持たずフィードガス導管だけを備える態様とが併存しておりましたが、令和3年12月8日付けの訂正後の本願請求項1は、「フィードガスシステムが、少なくとも1個のノズルおよび前記ノズルに接続された少なくとも1個のフィードガス導管を備え、」という記載を含み、すなわち、本願請求項1の権利対象は、明細書の開示態様のうちの、ノズルを有する態様に限定されております。よって、本願明細書の開示態様そのものには含まれておりました「ねじ込み継手」を含む本願図面の図3、4および5の態様は、上記訂正後の本願請求項1の権利対象からは除外されている態様であります。本願明細書の段落[0041]の「「下側」という用語は、ノズルの2つの端部のうち、上記訂正後の本願請求項1の権利対象に含まれる本願図面の図6の態様で示されたグリッドの設けられている側すなわちフィードガス導管と継がれる側の端部を示しております。」 (3) 取消理由(明確性要件違反)についての検討 ア 「ノズルとフィードガス導管との位置関係について」の検討 上記明細書及び図面の記載を踏まえて、ノズルとフィードガス導管との位置関係について検討する。 上記段落【0027】には、フィードガス導管及びノズルは、互いに直接接続しあってもよいこと、及びノズル及びフィードガス導管は、基板の開口部を通過し、基板上に据え付けられている旨の記載がある。 そうすると、ノズルの構造を示す上記図6には、「フィードガス導管」の記載はないものの、ノズルにはノズルを固定するためのフランジ部が設けられていると認められることから、本件発明1の「フィードガスシステムが、少なくとも1個のノズルおよび前記ノズルに接続された少なくとも1個のフィードガス導管を備え」という特定事項の「ノズル」と「フィードガス導管」とは、当業者であれば、当該ノズルにフランジ部を介してフィードガス導管が接続されて一体化され、基板上に据え付けられる形態であることを把握することができる。 そして、これは特許権者の説明(意見書の記載a~c)における「ノズル」と「フィードガス導管」とを含む本件発明に係る「反応器」の構造と合致するものである。 したがって、「少なくとも1個のノズルおよび前記ノズルに接続された少なくとも1個のフィードガス導管を備え」の特定事項は明確であり、「ノズル」と「フィードガス導管」との位置関係は明らかであるといえる。 イ 「「フィードガス導管の端部」の記載について」の検討 上記明細書及び図面の記載を踏まえて、「フィードガス導管の端部」の記載について検討する。 そもそも、ノズルとフィードガス導管とは、それぞれ符号2、7で示されるように別々の部材であるが、上記アに記載したように、ノズルとフィードガス導管とが接続される場合には、これは一体の部材となるのであるから、上記段落【0032】の「フィードガス導管の端部は、ノズルの頂部の縁部として規定されている」とは、フィードガスの出口となるフィードガス導管と接続された「ノズル」の「頂部の縁部」が「フィードガス導管の端部」であると定義されるものであり、特許権者の説明(意見書の記載a、d)通りに理解することができる。 したがって、本件発明1の「保護要素が、フィードガス導管の端部から0mmから500mmの距離に設置されたグリッド」であるとの特定事項は、保護要素(グリッド)が、フィードガス導管に接続されたノズルの頂部から0mm~500mmの距離の範囲内に設置されたと理解することができるから、「フィードガス導管の端部」という記載は明確である。 ウ「「グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている」の記載について」の検討 上記明細書及び図面の記載を踏まえて、「グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている」の記載について検討する。 上記段落【0033】には、「フィードガス導管の中またはノズルの頂部側、ノズルの底部側もしくはノズルの中」という様々な位置にグリッドを据え付けることが可能であることが記載され、その中で「ノズルの底部側」は、技術常識からして「ノズルの下側」に含まれると認められる。 そして、ノズル7に据え付けられたグリッド3の実施形態を示す図6では、上記段落【0034】~【0040】に記載されているような様々な幾何形状及び角度で、「ノズルの底部側」において、グリッドがノズルに据え付けられていることが見て取れるから、図6は、「グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている」実施形態であると認められる。 そうすると、段落【0041】の「「下側」という用語は、フィードガス導管にねじ込み継手により固定される側を意味するものとして理解すべきである。」という記載は、一実施形態として、固定手段としてねじ込み継手を用いる場合には、ノズルがねじ込み継手に継がれる側を意味すると解するのが相当である。 これは、「ノズルの下側」とは「ノズルの2つの端部のうち・・・図6の態様で示されたグリッドが設けられた側すなわちフィードガス導管と継がれる側の端部を示しております。」という特許権者の説明(意見書の記載b、e)と合致するものである。 したがって、「ノズルの下側」の定義は明らかであって、「グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている」という記載は明確である。 (4) 取消理由(明確性要件違反)についてのまとめ 以上のとおりであるから、取消理由(明確性要件違反)には理由がない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 標記特許異議申立理由の概要 申立人が、特許異議申立書において主張する特許異議申立理由のうち、当審が上記各取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 ・申立理由1(進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~9に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2及び甲3(米国特許第3188173号明細書)に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 上記申立理由1(進歩性欠如)についての当審の判断 本件発明1と甲1発明との相違点は、上記「第4 2(2)ウ(ア)」に記載したとおりである。 一方、申立人は、甲3には、気体の反応によって固体を生成する反応装置において、生成した固体がガス供給システムに落下することを防止するためのデバイス(脱落防止装置)を、ガス供給口の入り口に装備することが明記され、甲1や甲2に記載のシーメンス炉も同様に気体の反応から固体を生成するものであり、ガス供給口を有するから、甲3の記載に接した当業者であれば、甲1に記載のシーメンス炉においても、甲3に記載のように、ガス供給口に、固体の脱落防止装置を装備することを容易に想到する旨主張している。 しかし、甲3に記載された「ガス透過性/固体不透過性デバイス」は、固体がガス通路に落下することを防止するために、ガス通路の開口部分に収容されるものであると認められ、上記「第4 2(2)ウ(ア)」の相違点3に係る本件発明1の特定事項である「保護要素が・・・グリッドであり、グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている」ことに相当するものではなく、これを何ら示唆するものでもない。 また、申立人は、甲3の図3には、ノズルの下方にて、フランジ間に保持されているディスク内に存在するオリフィスによって狭窄部が設けられ、大きな固体を通過しないため、本件発明1の「グリッド」と等価である旨主張している。 しかし、甲3には、上記オリフィスは、固体の落下を防止する機能を有するのものであることは何ら記載されておらず、その機能を有することを示唆する記載もないから、本件発明1の保護要素である「グリッド」に相当するとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できず、甲1及び甲2に加えて甲3を参照しても、本件発明1及び本件発明1の発明特定事項をすべて具備する本件発明4~9は、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 申立理由1(進歩性欠如)についてのまとめ 以上のとおりであるから、進歩性欠如を理由とする申立理由1に理由はない。 第7 令和5年2月7日付けで申立人が提出した上申書について 1 上申書における申立人の主張の概要 当該申立人の主張は、概ね以下のとおりである。 特許権者は、令和4年12月27日付けの意見書において、フィードガス導管2の端部は、ノズル7の頂部であると主張しているが、部材の名称が整合せず、まったく別の部材である。 また、特許権者が主張するように、グリッドの設置位置を定義する始点となる「フィードガス導管」が「ノズルの頂部」を意味していると解することができるとしても、本件特許は、保護要素(グリッド)が、フィードガス導管の端部から0mmから500mmの距離に設置されていると特定されているから、フィードガス導管の端部から0mmの位置にグリッドが設置される態様を包含し、この場合、グリッドはノズルの上側に据え付けられることになる。 一方、本件特許では、「グリッドがノズルの下側に据え付けられている」とも特定され、この「下側」について、特許権者は、「ノズルの2つの端部のうち、フィードガス導管に継がれる側の端部」と説明している。 そうすると、「フィードガス導管の端部から0mm」の位置と、「ノズルの下側」とは、ノズルの上下の端部をそれぞれ意味するところ、本件特許は、これらの位置は択一的に記載されておらず、並列的に記載されているから、保護要素(グリッド)を設置する際に、これらの位置を同時に満足することができない。 したがって、グリッドの設置位置に関する本件特許の記載は不明確である。 2 当審の判断 上記申立人の主張について検討する。 本件発明1の保護要素(グリッド)の設置位置に関する特定事項は、次のとおりである。 「【請求項1】 ・・・フィードガスシステムが、少なくとも1個のノズルおよび前記ノズルに接続された少なくとも1個のフィードガス導管を備え、保護要素が、前記ノズルまたは前記フィードガス導管内に設置されており、保護要素が、フィードガス導管の端部から0mmから500mmの距離に設置されたグリッドであり、グリッドが、ノズルの下側に据え付けられている、ことを特徴とする、反応器。」 上記特定事項に関連して、本件特許の明細書を参照すると、上記「第5 2(3) イ」で検討したとおり、ノズルとフィードガス導管は、接続されている場合には、「ノズル」の「頂部の縁部」が「フィードガス導管の端部」であると理解することができる。 「0mmから500mmの距離」と「ノズルの下側」との関係については、本件発明1は、グリッドは「フィードガス導管の端部」から、0mmから500mmまでの距離にあることが規定されているところ、本件特許の明細書の段落【0032】、【0033】を参照すると、グリッドは「フィードガス導管の端部から、0mmから500mmまでの距離」の範囲内にあってよく、その範囲内において「グリッドは、フィードガス導管の中またはノズルの頂部側、ノズルの底部側もしくはノズルの中に据え付けられること」が可能であることが記載されている。 その上で、同段落【0041】において、一実施形態として「グリッドは、ノズルの下側に据え付けられている。」と記載されているのであるから、 「フィードガス導管の端部から、0mmから500mmまでの距離」の範囲内の一実施形態として「グリッドは、ノズルの下側に据え付けられている。」という態様を限定するものであって、この場合、グリッドは、当然にフィードガス導管の端部から所定の距離を有することは明らかであり、グリッドがフィードガス導管の端部から0mmの位置にあることは除外されていると理解することができる。 このことは、設定登録時の請求項2が、「保護要素が、フィードガス導管の端部から0mmから500mmの距離に設置されたグリッドである」と様々な保護要素の位置を取ることができる距離の範囲を特定し、当該請求項2を引用する請求項3が、その様々な位置の中で特定の「ノズルの下側」という位置を限定していると認められることからも明らかである。 したがって、上記申立人の、グリッドの設置位置に関する本件特許の記載が不明確であるという主張は採用できない。 第8 まとめ 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1、4~9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1、4~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項2、3は、本件訂正により削除されて、請求項2、3に対する特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり、決定する。

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2020-700394

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  • 2025-700886異議申立 / 2026-04-07 / 請求成立(取消)原子層堆積によって改質された活性炭およびその方法
    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B、537・C01B
  • 2025-700642異議申立 / 2026-03-31 / 訂正認容炭素材料およびそれを用いてなる導電性組成物、導電膜
    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B、537・C01B

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