特許異議申立
2020-700360
エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置
- 審判番号
- 2020-700360
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-075265
- 登録番号
- 特許第6610697号(P6610697)
- 請求日
- 2020年05月25日
- 審決日
- 2021年05月28日
- 公報発行日
- 2021年10月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社ニコン
- 【権利者代理人】西 和哉
- 【異議申立人】西林 博
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 岸 智史
- 分類
- P1651.121-ZDA(G01D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6610697号発明「エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6610697号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8、10~22〕、9について訂正することを認める。
特許第6610697号の請求項1~8、10~22に係る特許を取り消す。
特許第6610697号の請求項9に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6610697号(以下「本件特許」という。)の請求項1~22に係る特許についての出願は、平成27年7月17日を国際出願日とする日本語特許出願(特願2016-534502号)の一部を平成30年4月10日に新たな特許出願としたものであり(優先権主張 平成26年7月18日)、令和元年11月8日にその特許権の設定の登録がされ、同月27日にその特許掲載公報が発行された。本件特許の請求項の数は22である。
これに対して、令和2年5月25日に特許異議申立人西林博(以下「申立人」という。)は、証拠として甲1号証から甲6号証を提出し、本件特許の請求項1~22に係る特許について特許異議の申立てをした。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和2年 7月31日付け:取消理由通知書
令和2年10月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和2年11月27日付け:通知書(申立人宛て)
令和2年12月23日 :申立人による意見書の提出
令和3年 2月 4日付け:取消理由通知書(決定の予告)
なお、上記令和3年2月4日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
以下、令和2年10月5日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正について
1 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正の請求の趣旨は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~22について訂正することを求めるものであって、その内容は次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
なお、特許権者は、請求項9に係る訂正事項2について、「別の訂正単位とする求め」をしている。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、・・・を備える」とあるのを、
「光センサ、第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、・・・を備え、前記光センサは、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記回転軸の多回転情報を検出する、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~8、10~14、20~22も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9に「前記回転軸の回転数と前記第2の回転数とを照合して、その照合の結果に基づき異常の検出を行う、請求項8に記載のエンコーダ装置。」とあるのを、
「第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、
前記回転軸の回転に基づき前記検出部と相対位置が変化する磁石と、第1感磁性部及び第2感磁性部を有し、前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部と、
前記電力を所定電圧の電力に調整し、前記検出部で消費される電力の少なくとも一部を供給する電力調整部と、を備え、
前記検出部は、前記第1感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号と前記第2感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号とを用いて前記回転軸の第2の回転数を検出し、
前記位置情報に基づく前記回転軸の回転数と前記第2の回転数とを照合して、その照合の結果に基づき異常の検出を行う、エンコーダ装置。」に訂正する。
(請求項9の記載を引用する請求項10~14、20~22も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項15に「第1のセンサと第2のセンサとを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、・・・前記発電部は、前記ハイレベルの信号が出力される期間において前記第1感磁性部によって生じる前記パルス状の電流として第1の電流を出力し、前記ローレベルの信号が出力される期間において前記第2感磁性部によって生じる前記パルス状の電流として第2の電流を出力する、」とあるのを、
「光センサ、第1のセンサ及び第2のセンサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、・・・前記発電部は、前記ハイレベルの信号が出力される期間において前記第1感磁性部によって生じる前記パルス状の電流として第1の電流を出力し、前記ローレベルの信号が出力される期間において前記第2感磁性部によって生じる前記パルス状の電流として第2の電流を出力し、前記光センサは、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサは、前記回転軸の多回転情報を検出する、」に訂正する。
(請求項15の記載を引用する請求項16~22も同様に訂正する。)
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的
ア 訂正事項1、3
上記訂正事項1の訂正は、本件訂正前の「第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部」が、「光センサ」も有するように限定し、「前記光センサは、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記回転軸の多回転情報を検出する」ことを追加して、「検出部」の各「センサ」の検出内容を特定したものである。
上記訂正事項3の訂正も、上記訂正事項1の訂正と同様の内容である。
よって、上記訂正事項1及び3の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項2
上記訂正事項2は、本件訂正前の請求項9において、「・・・請求項8に記載のエンコーダ装置。」とされ、請求項1の記載を引用する請求項8の記載を引用するものであったところ、これらの引用関係を解消し、独立形式の記載に改めるための訂正であるから、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当する。
(2)新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
上記訂正事項1~3の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当しないから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書等は、特許権の設定の登録がされた時点での願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「特許明細書等」という。)である。
ア 訂正事項1、3
上記訂正事項1及び3の訂正は、特許明細書等の段落【0012】、【0014】及び【0116】の記載に基づくものであると認められる。
したがって、上記訂正事項1及び3の訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。
また、上記訂正事項1及び3の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項に規定する要件を満たす。
イ 訂正事項2
上記訂正事項2は、本件訂正前の請求項9において、「・・・請求項8に記載のエンコーダ装置。」とされ、請求項1の記載を引用する請求項8の記載を引用するものであったところ、これらの引用関係を解消し、独立形式の記載に改めるための訂正であるから、実質的に内容の変更を伴うものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
したがって、上記訂正事項2の訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。
また、上記訂正事項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項に規定する要件を満たす。
(3)独立特許要件
この特許異議の申立てにおいては、請求項1~22について特許異議の申立てがされているから、本件訂正後における請求項1~22に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
(4)まとめ
上記(1)~(3)において検討した訂正要件についての判断をまとめると、本件訂正は適法なものである。
よって、前記結論のとおり、訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~22に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件訂正発明1」等という。)は、次のとおり、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~22に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。
「【請求項1】
光センサ、第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、
前記回転軸の回転に基づき前記検出部と相対位置が変化する磁石と、
第1感磁性部及び第2感磁性部を有し、前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部と、
前記電力を所定電圧の電力に調整し、前記検出部で消費される電力の少なくとも一部を供給する電力調整部と、を備え、
前記光センサは、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、
前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記回転軸の多回転情報を検出する、
エンコーダ装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記パルス状の電流が生じる期間において出力された前記第1磁気センサの出力信号と前記第2磁気センサの出力信号とに基づいて、前記回転軸の回転数を検出する、請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記第1磁気センサと前記第1感磁性部とは前記回転軸の回転方向において互いに重ならない角度位置に配置され、
前記第2磁気センサと前記第2感磁性部とは前記回転軸の回転方向において互いに重ならない角度位置に配置される、請求項1又は請求項2に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記第1磁気センサは、前記第1感磁性部の角度位置に対する位相差が45°以上135°以下の範囲の角度位置に配置され、
前記第2磁気センサは、前記回転軸の回転方向において前記第1磁気センサと重ならない角度位置であって、前記第2感磁性部の角度位置に対する位相差が45°以上135°以下の範囲の角度位置に配置される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記第1感磁性部の角度位置は、前記第2感磁性部の角度位置に対して45°以上135°以下の位相差を有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記第1磁気センサの出力信号を所定の閾値と比較して、前記回転軸の1回転内における第1期間においてハイレベルの信号を出力し、前記第1期間と異なる第2期間においてローレベルの信号を出力するコンパレータを備え、
前記第1期間において前記第1磁気センサの出力信号が出力される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記第1感磁性部から前記電流が生じるタイミングと前記第2感磁性部から前記電流が生じるタイミングとにおいて、それぞれ出力信号を出力する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記第1感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号と前記第2感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号とを用いて前記回転軸の第2の回転数を検出する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、
前記回転軸の回転に基づき前記検出部と相対位置が変化する磁石と、
第1感磁性部及び第2感磁性部を有し、前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部と、
前記電力を所定電圧の電力に調整し、前記検出部で消費される電力の少なくとも一部を供給する電力調整部と、を備え、
前記検出部は、前記第1感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号と前記第2感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号とを用いて前記回転軸の第2の回転数を検出し、
前記位置情報に基づく前記回転軸の回転数と前記第2の回転数とを照合して、その照合の結果に基づき異常の検出を行う、エンコーダ装置。
【請求項10】
前記第1感磁性部及び前記第2感磁性部は、前記磁界の変化によって大バルクハウゼンジャンプを生じる、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項11】
前記検出部は、外部から電力供給を受けない場合、前記発電部又はバッテリから電力供給を受ける、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項12】
前記電力調整部は、
前記発電部から生じる前記電流を全波整流する整流器と、
前記整流器によって整流された電力を所定電圧の電力に調整するレギュレータと、を備える、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項13】
前記電力調整部は、前記整流器と前記レギュレータとの間にコンデンサを備える、請求項12に記載のエンコーダ装置。
【請求項14】
前記電力調整部は、前記検出部の検出結果を記憶する記憶部で消費される電力の少なくとも一部を供給する、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項15】
光センサ、第1のセンサ及び第2のセンサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、
第1感磁性部及び第2感磁性部を有し、前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部と、
前記電力を所定電圧の電力に調整し、前記検出部で消費される電力の少なくとも一部を供給する電力調整部と、
前記第1のセンサから出力される出力信号を所定の閾値と比較して、前記回転軸の1回転内におけるハイレベルの信号とローレベルの信号とを出力するコンパレータと、を備え、
前記発電部は、前記ハイレベルの信号が出力される期間において前記第1感磁性部によって生じる前記パルス状の電流として第1の電流を出力し、前記ローレベルの信号が出力される期間において前記第2感磁性部によって生じる前記パルス状の電流として第2の電流を出力し、
前記光センサは、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、
前記第1のセンサ及び前記第2のセンサは、前記回転軸の多回転情報を検出する、エンコーダ装置。
【請求項16】
前記電力調整部は、
前記第1の電流及び前記第2の電流を整流する整流器と、
前記整流器によって整流された電力を所定電圧の電力に調整するレギュレータと、を備える、請求項15に記載のエンコーダ装置。
【請求項17】
前記コンパレータは、前記回転軸の1回転内における第1期間において前記ハイレベルの信号を出力し、前記第1期間と異なる第2期間において前記ローレベルの信号を出力し、
前記第1期間において前記第1のセンサの出力信号が出力される、請求項15又は請求項16に記載のエンコーダ装置。
【請求項18】
前記第2期間において前記第2のセンサの出力信号が出力される、請求項17に記載のエンコーダ装置。
【請求項19】
前記第1のセンサは磁気センサであって、
前記磁気センサは、前記第1感磁性部から前記パルス状の電流が生じる期間において、前記磁界の変化において前記磁界が相対的に強い位置に配置される、請求項15から請求項18のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載のエンコーダ装置と、
前記移動部に動力を供給する動力供給部と、
前記エンコーダ装置の前記検出部が検出した位置情報を使って前記動力供給部を制御する制御部と、を備える駆動装置。
【請求項21】
移動物体と、
前記移動物体を移動させる請求項20に記載の駆動装置と、を備えるステージ装置。
【請求項22】
請求項20に記載の駆動装置を備えるロボット装置。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件特許について、当審が令和3年2月4日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件訂正後の請求項1~8、10~22に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
記
甲1号証:特開2008-203199号公報
甲2号証:国際公開第2013/157279号
甲5号証:特開2008-14799号公報
甲6号証:特開2012-225917号公報
第5 当審の判断
1 当審の判断の概要
当審は、上記第4に示すとおり、令和3年2月4日に取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかったところ、以下の2及び3に示すとおり、上記取消理由は妥当なものと認められるので、請求項1~8、10~22に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
2 引用文献
(1)甲1号証について
ア 甲1号証には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
「【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を操舵装置に適用した場合の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が回転体としてのステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、一端がステアリングホイール1に連結された入力軸2aと、この入力軸2aの他端に図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとで構成されている。そして、ステアリングシャフト2の回転角即ち操舵角が操舵角センサ3によって検出されると共に、ステアリングシャフト2に伝達される操舵トルクが操舵トルクセンサ4によって検出される。」
「【0012】
操舵角センサ3は、図2に示すように、ステアリングシャフト2の入力軸2aの外周面に取付けられた上半部をN極に、下半部をS極に励磁されたリング状の硬磁性体21と、この硬磁性体21の外周側に近接対向して円周方向に180°の間隔で固定配置された発電型磁気センサGM1及びGM2と、硬磁性体21の外周側に近接対向して固定配置された磁気検出素子MD1及びMD2とを備え、これら磁気検出素子MD1及びMD2の一方は、発電型磁気センサGM1及びGM2のうちの一方と同位相となり、且つ他方は各発電型磁気センサGM1及びGM2と90°の位相差となる位置に配置され、図2では、磁気検出素子MD1が発電型磁気センサGM1と同位相となる位置に固定配置され、磁気検出素子MD2が発電型磁気センサGM1及びGM2に対し円周方向に90°の間隔で固定配置されている。
【0013】
ここで、発電型磁気センサGM1及びGM2は、図3(a)に示すように、複合磁性ワイヤ22と、この複合磁性ワイヤ22の回りに巻装された検出コイル23とで構成されている。複合磁性ワイヤ22は、中心部と外郭部とで磁気を通し易い特性と磁石に近い特性との異なる磁気特性を有して、磁性体が磁化される時に、磁性体内部の微少な磁石単位の境界である磁壁が一度に移動する大バルクハウゼン現象を生じるように構成されている。この複合磁性ワイヤ22が硬磁性体21のN極によって磁化されると、急激な磁化の状態変化を生じ、この状態変化は短時間で発生するので、検出コイル23に電磁誘導による起電力が発生し、この起電力がパルス電圧として回転領域検出部14に出力される。
【0014】
これら発電型磁気センサGM1及びGM2で発生されるパルス電圧は、図3(b)に示すように、発電型磁気センサGM1及びGM2に硬磁性体21のN極及びS極による正弦波の磁界が加わるものとしたときに、N極による正の磁界が加えられたときに、所定のタイミング、例えば磁界が零の状態から正方向に増加して所定値に達したとき、例えば45°の位置で外部磁界による急激な状態変化を生じて、電磁誘導により検出コイル23からパルス電圧PViが出力される。このため、ステアリングホイール1を右切りしたときには、磁界が零である0°の状態から正方向に増加して例えば45°となったときに黒塗り図示のパルス電圧PViを生成し、逆にステアリングホイール1を左切りしたときには、磁界が零である180°の状態から正方向に増加して例えば135°となったときに斜線図示のパルス電圧PViを生成する。
【0015】
また、磁気検出素子MD1及びMD2は、発電型磁気センサGM1及びGM2からのパルス電圧によって駆動され、硬磁性体21で発生する磁界に応じて正弦波状及び余弦波状の検出信号S1及びS2を出力する、アナログ出力型のリニアホールIC等で構成され、これら検出信号S1及びS2は、回転領域検出部14に入力されると共に、後述するコントローラ15に入力される。
この回転領域検出部14は、図4に示すように、論理回路14a及び不揮発性メモリ14bを備え、これら各部には、発電型磁気センサGM1及びGM2から出力されるパルス電圧PV1及びPV2が入力され、入力されたパルス電圧PVi(i=1又は2)によって駆動される。
【0016】
ここで、論理回路14aは、入力されるパルス電圧PViによって駆動され、例えば、同様にパルス電圧PViによって駆動される磁気検出素子MD1及びMD2からの検出信号S1及びS2を入力し、これらに基づいて回転方向検出用の矩形波信号SD1及びSD2を生成する矩形波生成部141及び142と、この矩形波生成部141、142で生成した矩形波信号SD1及びSD2に基づき回転方向を判断する回転方向判断部143と、を備えている。前記矩形波生成部141及び142は例えばコンパレータで構成され、それぞれ、後述の図9(b)に示すように、検出信号S1、S2(図9(c))が正値であるときHIGHレベル、検出信号S1、S2が負値又は零であるときLOWレベルとなる矩形波信号SD1、SD2を生成する。
【0017】
また、回転方向判断部143では、矩形波信号SD1及びSD2が共にHIGHレベル又はLOWレベルであるとき回転方向は右と判断し、矩形波信号SD1及びSD2のうち何れか一方がHIGHレベル、他方がLOWレベルであるとき回転方向は左と判断し、回転方向が右、すなわち右切りが行われたときには不揮発性メモリ14bに形成した加減算カウンタ領域への加算信号を出力し、回転方向が左、すなわち左切りが行われたときには前記加減算カウンタ領域への減算信号を出力する。
【0018】
不揮発性メモリ14bは、入力されるパルス電圧PViによって駆動され、論理回路14aから入力される加算信号又は減算信号に基づいて、加減算カウンタを構成する加減算カウンタ領域に記憶されているステアリングシャフト2の入力軸2aの回転領域を表す正負の値をとる計数値Nを、加算信号が入力されたときにカウントアップし、減算信号が入力されたときにカウントダウンするように構成されている。
【0019】
そして、不揮発性メモリ14bの加減算カウンタ領域に記憶されている回転領域を表す計数値Nは、後述するコントローラ15から読取り可能とされている。 図1に戻って、操舵トルクセンサ4は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を磁気的変化又は電気的変化に変換して操舵トルク検出値Tを検出するように構成されている。」
「【0025】
符号判定回路90Fは、判定信号としてスイッチ信号SWを出力してスイッチ90Dの接点を切り換えるが、操舵角θR及び操舵角速度ωhの符号が不一致のときにスイッチ信号SWで接点bに切り換える。また、スイッチ90Dの接点a,bは、操舵角速度ωhが零となったことを検出する回路(図示せず)からも切り換えられるようになっている。
一方、コントローラ15で実行する操舵角検出処理は、イグニッションスイッチ18がオン状態となってコントローラ15に電源が投入されている状態で、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として、図7に示す手順で実行される。
【0026】
なお、ここでは、図9に示すように、中立状態を0°とし、ステアリングシャフト2のが回転する範囲を、LOCK TO LOCKの範囲である“-720°から+720°”の範囲とし、回転角度が180°毎に、一つの回転領域を設定している。すなわち、図9(e)に示すように、“-180°から0°”を回転領域RA(0)、“0°から180°”を回転領域RA(1)、“180°から360°”を回転領域RA(2)とし、以後同様にして、回転領域RA(3)、RA(4)とする。さらに、“-360°から-180°”を回転領域RA(-1)、“-540°から-360°”を回転領域RA(-2)とし、“-720°から-540°”を回転領域RA(-3)とする。
【0027】
そして、操舵角検出処理では、まず、ステップS1で,回転領域検出部14の不揮発性メモリ14bの最終パルス記憶領域に格納された、イグニッションスイッチ18をオフ状態、すなわちコントローラ15への電源をオフ状態とする前に発電型磁気センサGM1又はGM2から最後にパルス電圧を入力したときの、ステアリングシャフト2の入力軸2aの回転領域を表す最終回転領域RAlastを読込み、これを基点領域RAsとする。
【0028】
次いで、ステップS2に移行し、操舵角センサ3の磁気検出素子MD1及びMD2から出力される90°位相が異なる磁気検出信号S1及びS2と、回転領域検出部14の不揮発性メモリ14bから、イグニッションスイッチ18がオフ状態である期間における、回転領域の移動量を表す計数値Nとを読込む。
次いで、ステップS3に移行し、ステップS1で設定した基点領域RAsを基点とし、計数値Nが正値であれば右回転方向、負値であれば左回転方向に回転領域を移動させ、現時点における入力軸2aの回転領域の領域値を表す現領域値Nnowを算出する。
【0029】
次いで、ステップS4に移行し、90°位相が異なる磁気検出信号S1及びS2に基づいて下記(1)式の演算を行って舵角θ(0°~360°)を算出する。
θ=arctan(S1/S2) ……(1)
このようにして舵角θを算出したならば、ステップS5に移行し、ステップS3で検出した入力軸2aの現領域値Nnowと、ステップS4で算出した舵角θとから、操舵角θRを算出する。」
「【0042】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、車両が走行状態にある状態から、例えば車両のステアリングホイール1を中立位置即ち直進走行時の操舵角θRが“0”となっている状態で停止させ、イグニッションスイッチ18をオフ状態としたものとする。
このイグニッションスイッチ18がオフ状態であるときにはコントローラ15に電源が投入されておらず、このコントローラ15で実行する操舵補助制御処理及び操舵角検出処理は作動停止状態にある。
【0043】
しかしながら、操舵角センサ3は、図2に示すように、発電型磁気センサGM1及びGM2を備えており、ステアリングホイール1が操舵されると、発電型磁気センサGM1及びGM2から出力されるパルス電圧PV1及びPV2が回転領域検出部14及び磁気検出素子MD1及びMD2に供給される。
ここで、ステアリングホイール1が操舵角0°にあるとき、図2に示すように、発電型磁気センサGM1及びGM2が、硬磁性体21のN極及びS極の境界線上に対向し、磁気検出素子MD1は、発電型磁気センサGM1と同様に、硬磁性体21のN極及びS極の境界線上に対向し、磁気検出素子MD2は硬磁性体21のN極の中央部に対向しているものとする。
【0044】
この状態では、ステアリングホイール1が操舵されていないので、図9(a)に示すように、各発電型磁気センサGM1及びGM2からパルス電圧PV1及びPV2は出力されず、回転領域検出部14及び磁気検出センサMD1及びMD2も作動停止状態にある。
この車両の停止状態で、車両に運転者が乗車して、ステアリングホイール1を例えば右切りすると、これに応じて硬磁性体21が図2で、矢印Aで示すように時計方向に回動する。このため、発電型磁気センサGM1に硬磁性体21のN極が近づくことになるため、ステアリングホイール1が45°回転した位置で、発電型磁気センサGM1から図9(a)に示すパルス電圧PV1が出力される。
【0045】
このパルス電圧PV1が論理回路14a、不揮発性メモリ14b及び磁気検出素子MD1、MD2に供給されるので、これら論理回路14a、不揮発性メモリ14b及び磁気検出素子MD1、MD2が作動状態となる。このため、磁気検出素子MD1、MD2から位相が90°ずれた検出信号S1、S2(図9(c))が出力され、論理回路14aでは、この検出信号S1及びS2に応じた矩形波信号SD1及びSD2(図9(b))が生成される。
【0046】
ここで、上記図3(b)に示すように、パルス電圧PViは、右切りの場合には45°の位置、左切りの場合には135°の位置で生成される。また、磁気検出素子MD1及びMD2からの検出信号S1及びS2は互いに90°の位相差があり、また、検出信号S1は、発電型磁気センサGM1と同位相となるように配置されていることから、入力軸2aを右方向に回転させた場合に、発電型磁気センサGM1及びGM2の磁界がそれぞれ45°となる位置で生成されるパルス電圧PViのタイミングで、矩形波信号SD1及びSD2が共にHIGHレベル又は共にLOWレベルとなり、逆に左方向に回転させた場合に、磁界が135°となる位置で生成されるパルス電圧PViのタイミングで、矩形波信号SD1及びSD2の一方がHIGHレベル、他方がLOWレベルとなる。したがって、パルス電圧PViを入力したときに、矩形波信号SD1及びSD2が共にHIGHレベル又はLOWレベルであるときは右切りが行われ、矩形波信号SD1及びSD2の一方がHIGHレベル、他方がLOWレベルであるときには左切りが行われていると判断することができる。
【0047】
上述のように磁界が45°の位置でパルス電圧PV1が入力されたとき、図9(b)に示すように、矩形波信号SD1及びSD2は共にHIGHレベルであることから、回転方向は右と判定され、回転方向判断部143から加算信号が出力され、これによって、不揮発性メモリ14bに形成された加減算カウンタがカウントアップし、イグニッションスイッチ18をオフ状態とした時点で、加減算カウンタは“0”にリセットされていることから(図7ステップS9)、計数値Nは“1”となる。
【0048】
この状態から、さらに、ステアリングホイール1の右切りを継続すると、図9(a)に示すように、ステアリングホイール1が中立位置から約225°回転した状態で、発電型磁気センサGM2からパルス電圧PV2が出力される。このパルス電圧PV2によって、再度論理回路14a及び不揮発性メモリ14bと、磁気検出素子MD1及びMD2とが作動状態となって、論理回路14aにおいて回転方向が判別される。この場合、磁気検出素子MD1及びMD2から生成される矩形波信号SD1及びSD2は共にLOWレベルとなることから、回転方向は右と判定され加算信号が出力されて加減算カウンタがカウントアップし、計数値Nは“2”となる。」
「【0067】
同様に、発電型磁気センサGM1及びGM2は、硬磁性体21の外側に近接対向して固定配置する場合に限るものではなく、例えば図11(a)に示すように、硬磁性体21の上方に固定配置してもよく、また、このとき、図11(b)に示すように、発電型磁気センサGM1と共に磁気検出素子MD1も硬磁性体21の上方に固定配置してもよく、要は、硬磁性体21の回転に伴う磁極の反転に応じたタイミングで、発電型磁気センサGM1、GM2によりパルス電圧を発生させることの可能な位置であれば、どの位置に配置してもよい。(以下省略)」
「【0073】
さらに、上記実施形態においては、操舵角を検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の回転体の絶対回転角を検出する場合に本発明を適用し得るものである。
ここで、上記実施形態において、発電型磁気センサGM1及びGM2が発電型磁気検出部に対応し、磁気検出素子MD1及びMD2が磁気検出部に対応し、論理回路14aが回転方向検出部に対応し、不揮発性メモリ14bが計数手段に対応し、コントローラ15が回転角検出部に対応している。」
「【図1】
」
「【図2】
」
「【図3】
」
「【図4】
」
「【図7】
」
「【図9】
」
「【図11】
」
イ 甲1号証に記載された発明
上記アにおいて摘記した記載事項及び図面の図示内容を総合すると、甲1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「ステアリングシャフト2の入力軸2aの外周面に取付けられた上半部をN極に、下半部をS極に励磁されたリング状の硬磁性体21と、
上記硬磁性体21の外周側に近接対向して円周方向に180°の間隔で固定配置された発電型磁気センサGM1及びGM2と、
上記硬磁性体21の外周側に近接対向して固定配置された磁気検出素子MD1及びMD2を備え、
上記ステアリングシャフト2の回転角即ち操舵角を検出する操舵角センサ3であって、(【0009】、【0012】、【図1】、【図2】)
上記磁気検出素子MD1が上記発電型磁気センサGM1と同位相となる位置に固定配置され、
上記磁気検出素子MD2が上記発電型磁気センサGM1及びGM2に対し円周方向に90°の間隔で固定配置されており、
(【0012】、【図2】)
上記発電型磁気センサGM1及びGM2は、中心部と外郭部とで磁気を通し易い特性と磁石に近い特性との異なる磁気特性を有して、磁性体が磁化される時に、磁性体内部の微少な磁石単位の境界である磁壁が一度に移動する大バルクハウゼン現象を生じるように構成された複合磁性ワイヤ22と、この複合磁性ワイヤ22の回りに巻装された検出コイル23とで構成され、
(【0013】、【図3(a)】)
上記複合磁性ワイヤ22が硬磁性体21のN極によって磁化されると、急激な磁化の状態変化を生じ、この状態変化は短時間で発生するので、検出コイル23に電磁誘導による起電力が発生し、この起電力がパルス電圧として回転領域検出部14に出力され、(【0013】)
上記発電型磁気センサGM1及びGM2で発生されるパルス電圧は、上記発電型磁気センサGM1及びGM2に上記硬磁性体21のN極及びS極による正弦波の磁界が加わるものとしたときに、N極による正の磁界が加えられたときに、所定のタイミング、例えば磁界が零の状態から正方向に増加して所定値に達したとき、例えば45°の位置で外部磁界による急激な状態変化を生じて、電磁誘導により検出コイル23からパルス電圧PViが出力されるものであり、(【0014】、【図3(b)】)
上記磁気検出素子MD1及びMD2は、上記発電型磁気センサGM1及びGM2からのパルス電圧によって駆動され、硬磁性体21で発生する磁界に応じて正弦波状及び余弦波状の検出信号S1及びS2を出力する、アナログ出力型のリニアホールIC等で構成され、(【0015】)
上記検出信号S1及びS2が入力される回転領域検出部14は、論理回路14a及び不揮発性メモリ14bを備え、これら各部には、発電型磁気センサGM1及びGM2から出力されるパルス電圧PV1及びPV2が入力され、入力されたパルス電圧PVi(i=1又は2)によって駆動され、
(【0015】、【図4】)
上記論理回路14aは、上記検出信号S1及びS2に基づいて回転方向検出用の矩形波信号SD1及びSD2を生成する矩形波生成部141及び142と、この矩形波生成部141、142で生成した矩形波信号SD1及びSD2に基づき回転方向を判断する回転方向判断部143を備えており、
(【0016】)
前記矩形波生成部141及び142は、コンパレータで構成され、それぞれ、検出信号S1、S2が正値であるときHIGHレベル、検出信号S1、S2が負値又は零であるときLOWレベルとなる矩形波信号SD1、SD2を生成するものであり、
(【0016】、【図9(a)】、【図9(b)】)
ステアリングホイール1を中立位置即ち直進走行時の操舵角θRが“0”となっている状態で停止させ、イグニッションスイッチ18がオフ状態のときは、コントローラ15に電源が投入されておらず、操舵角0°の状態では、各発電型磁気センサGM1及びGM2からパルス電圧PV1及びPV2は出力されず、回転領域検出部14及び磁気検出センサMD1及びMD2も作動停止状態にあり、(【0042】~【0044】、【図9(a)】)
この停止状態で、ステアリングホイール1を右切りすると、ステアリングホイール1が45°回転した位置で、発電型磁気センサGM1からパルス電圧PV1が出力され、このパルス電圧PV1が論理回路14a、不揮発性メモリ14b及び磁気検出素子MD1、MD2に供給されて、これらが作動状態となり、(【0044】~【0045】、【図9(a)】)
この状態から、ステアリングホイール1の右切りを継続し、ステアリングホイール1が中立位置から約225°回転した状態で、発電型磁気センサGM2からパルス電圧PV2が出力され、(【0048】、【図9(a)】)
ステアリングホイール1が0°から90°回転する間は、SD1及びSD2はともにHIGHレベルであり、
90°から180°回転する間は、SD1はHIGHレベル、SD2はLOWレベルであり、
180°から270°回転する間は、SD1及びSD2はともにLOWレベルであり、
270°から360°回転する間は、SD1はLOWレベル、SD2はHIGHレベルであり、(【図9(b)】)
上記回転方向判断部143は、上記SD1及びSD2が共にHIGHレベル又はLOWレベルであるとき回転方向は右と判断し、上記SD1及びSD2のうち何れか一方がHIGHレベル、他方がLOWレベルであるとき回転方向は左と判断し、
回転方向が右、すなわち右切りが行われたときには上記不揮発性メモリ14bに形成した加減算カウンタ領域への加算信号を出力し、回転方向が左、すなわち左切りが行われたときには前記加減算カウンタ領域への減算信号を出力し、(【0017】)
上記不揮発性メモリ14bは、上記論理回路14aから入力される加算信号又は減算信号に基づいて、加減算カウンタを構成する加減算カウンタ領域に記憶されているステアリングシャフト2の入力軸2aの回転領域を表す正負の値をとる計数値Nを、加算信号が入力されたときにカウントアップし、減算信号が入力されたときにカウントダウンするように構成されており、上記計数値Nは、コントローラ15から読取り可能とされており、
(【0018】~【0019】)
上記コントローラ15で実行する操舵角検出処理では、上記不揮発性メモリ14bの最終パルス記憶領域に格納された、イグニッションスイッチ18をオフ状態、すなわち上記コントローラ15への電源をオフ状態とする前に発電型磁気センサGM1又はGM2から最後にパルス電圧を入力したときの、ステアリングシャフト2の入力軸2aの回転領域を表す最終回転領域RAlastを読込んで、これを基点領域RAsとし、
(【0025】、【0027】、【図7】)
上記検出信号S1及びS2と、イグニッションスイッチ18がオフ状態である期間における計数値Nとを読込んで、基点領域RAsを基点とし、計数値Nが正値であれば右回転方向、負値であれば左回転方向に回転領域を移動させ、現時点における入力軸2aの回転領域の領域値を表す現領域値Nnowを算出し、(【0028】、【図7】)
上記検出信号S1及びS2に基づいて、θ=arctan(S1/S2)の演算を行って舵角θ(0°~360°)を算出し、上記現領域値Nnowと、上記舵角θとから、操舵角θRを算出する、(【0029】、【図7】)
操舵角センサ3。」
ウ 甲1号証に記載された技術事項
甲1号証には、次の2つの技術事項(以下「甲1記載事項1」及び「甲1記載事項2」という。)が記載されていると認められる。
[甲1記載事項1]
「磁気検出素子MD1及びMD2を磁性体21の外側に90°の位相差となる位置に配置し、発電型磁気センサGM1及びGM2を硬磁性体21の上方に対向して配置すること。(【0067】、【図11(a)】)」
[甲1記載事項2]
「(甲1号証に記載された発明は)操舵角を検出する場合に限定されるものではなく、任意の回転体の絶対回転角を検出する場合に適用し得るものであること。(【0073】)」
(2)甲2号証について
甲2号証には、次の技術事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲2記載事項]
「回転検出機構110と、この回転検出機構110と電気的に接続される信号処理回路120とを備え、外部からの電力供給を受けることなく、回転軸の回転方向及び回転数を検出し保持するバッテリレス多回転エンコーダ101において、([0020]、[図1])
上記回転検出機構110は、回転軸115の回転を検出する機構であって、
上記回転軸115と同心上に取り付けられ、回転軸115と伴にCW(時計回り)及びCCW(反時計回り)に回転する円板状の磁石111と、検出コイル112、113とを有し、([0021]、[図1])
上記検出コイル112、113は、上記磁石111の上方で磁石111の回転円周上に配置され、大バルクハウゼン効果を有する磁性ワイヤで形成されており、([0022])
上記信号処理回路120である信号処理IC120は、全波整流回路121、定電圧回路122、Enable回路123、パルス波形符号判定回路124、コントローラ125、アダー126、不揮発メモリ127、外部回路インターフェイス128、及び電源切替129を有し、
([0029]、[図1])
上記検出コイル112、113で発生したそれぞれの電圧パルスは、全波整流回路121、121でそれぞれ整流された後、定電圧回路122によって一定電圧にされ、この一定電圧は、Enable回路123、パルス波形符号判定回路124、コントローラ125、アダー126、及び不揮発メモリ127に電力として供給され、([0030])
上記電源切替129は、上記定電圧回路122と外部からの電力供給とを切り替えて出力する機能を有し、コントローラ125、不揮発メモリ127には、電源切替129を介して一定電圧が供給され、([0030])
上記Enable回路123は、上記定電圧回路122からの電圧が十分安定したのを確認した後、パルス波形符号判定回路124、コントローラ125、アダー126、及び不揮発メモリ127へ動作開始トリガーを送信し、([0031])
動作開始トリガーを受け取ったパルス波形符号判定回路124は、上記検出コイル112、113からの各電圧パルスからA相出力及びB相出力を判定し、コントローラ125に送信し、
上記コントローラ125は、不揮発メモリ127から、前回に電圧パルスが生じたときの回転軸115の回転数と、A状態及びB状態とを読み取り、これをアダー126に送信し、([0032])
上記アダー126は、受け取った情報(回転数、A相出力B相出力、A状態、B状態の値)から、変換テーブルを用いて、状態A、状態B及び回転数の更新を行い、最新のA状態、B状態、及び回転数をコントローラ125に送信し、
上記コントローラ125は、上記アダー126からの情報を再度不揮発メモリ127にアクセスし、これらの書き込みを実施し、([0033])
上記信号処理IC120は、これら一連の動作を、検出コイル112、113からの各電圧パルスによって全波整流回路121、及び定電圧回路122で発生させた電力のみで行い、且つ次の電圧パルスが生じる前に動作を終了すること。([0034])」
「[図1]
」
(3)甲5号証について
甲5号証には、次の技術事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲5記載事項]
「産業用ロボット、NC工作機械等に用いられるモータの回転位置を検出するエンコーダであって、(【0001】)
回転シャフト3の1回転内の絶対値を検出するために、前記回転シャフト3に光を照射するLEDやレーザなどの光源15と、
前記光源15によって照射され、回転ディスク5を透過した光を受光し、電気信号に変換する受光素子17と、
前記回転シャフト3の多回転検出のための磁界検出センサ8a、8bと、
前記回転シャフト3に固定された回転ディスク5上に配置された永久磁石7と、
前記永久磁石7の磁界が数十Oeくらいになる位置に搭載され、大バルクハウゼン効果を有する磁性ワイヤ2aの回りにコイル2bを巻いた発電装置2、を備えた絶対値エンコーダ装置において、
(【0023】、【0027】)
1回転内の絶対値は、グレイコードの透光、遮光のスリットパターンが蒸着形成された回転ディスク5のパターンを通過した光を受光素子(フォトダイオード)17で電気信号に変換し、1回転絶対値演算処理器19dで演算処理することにより求められるものであり、(【0024】)
前記磁界検出センサ8aと8bは、前記永久磁石7の周辺に前記永久磁石7に対向してこの磁界を検出するように配置され、約90度位相差の検出波形が得られる相対位置に配置されており、(【0025】~【0026】)
多回転量は、前記磁界検出センサ8a、8bの出力信号により検出するものであり、(【0025】~【0026】)
大バルクハウゼン効果による急峻な磁壁移動により磁性ワイヤ2aの磁化が反転し、その磁化の反転によりコイル2bに誘起電圧が発生するようになっており、(【0027】)
主電源OFFの場合は、発電装置2によって発電された電圧を使って、磁気センサ8a、8b、比較器9a、9bおよび多回転検出演算処理器19bを動作させて多回転量をカウントする、(【0027】)
絶対値エンコーダ装置。」
(4)甲6号証について
甲6号証には、次の技術事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲6記載事項]
「N極とS極とを含む永久磁石EMの位置の変化が、検出される回転体の動作に関連付けられ、(【0020】)
ウィーガンドセンサWs1及びWs2は、検出コイルSpを含み、この検出コイルSpから電圧信号の形態をなす信号Ua及びUbを拾い上げることができ、(【0020】)
ウィーガンドワイヤWg1とWg2の磁化方向を直接測定する磁場感知センサMs1とMs2を設け、(【0025】)
ウィーガンドワイヤWg1の磁化方向とWg2の磁化方向とは、直交しており、(【図4】)
ウィーガンドワイヤWg1の磁化方向と磁場感知センサMs1の極性Aとは直交し、ウィーガンドワイヤWg2の磁化方向と磁場感知センサMs2の極性Bとは直交していること。(【図4】)」
「【図4】
」
3 対比、判断
(1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、以下のとおりである。
ア 甲1発明の「磁気検出素子MD1及びMD2」は、本件訂正発明1の「第1磁気センサ及び第2磁気センサ」に相当する。
また、甲1発明の「ステアリングシャフト2」は、本件訂正発明1の「移動部の回転軸」に相当し、甲1発明の「ステアリングシャフト2の回転角即ち操舵角」は、本件訂正発明1の「移動部の回転軸の位置情報」に相当する。
そして、甲1発明では、「磁気検出素子MD1及びMD2」が出力する「検出信号S1及びS2に基づいて」、「論理回路14a」の「回転方向判断部143」が「回転方向を判断」し、「不揮発性メモリ14b」が「ステアリングシャフト2の入力軸2aの回転領域を表す」「計数値N」をカウントして、「コントローラ15」が「操舵角検出処理」を「実行」して「操舵角θRを算出」しているから、これらの「磁気検出素子MD1及びMD2」、「論理回路14a」、「不揮発性メモリ14b」及び「コントローラ15」の組み合わせは、本件訂正発明1の「移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部」に相当する。
よって、甲1発明の「操舵角センサ3」は、本件訂正発明1の「第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部」に相当する構成を含む。
イ 甲1発明の「ステアリングシャフト2の入力軸2aの外周面に取付けられた上半部をN極に、下半部をS極に励磁されたリング状の硬磁性体21」は、本件訂正発明1の「前記回転軸の回転に基づき前記検出部と相対位置が変化する磁石」に相当する。
ウ 甲1発明の「発電型磁気センサGM1及びGM2」の「複合磁性ワイヤ22」は、「中心部と外郭部とで磁気を通し易い特性と磁石に近い特性との異なる磁気特性を有して、磁性体が磁化される時に、磁性体内部の微少な磁石単位の境界である磁壁が一度に移動する大バルクハウゼン現象を生じるように構成」されているから、本件訂正発明1の「第1感磁性部及び第2感磁性部」に相当する。
また、甲1発明の「発電型磁気センサGM1及びGM2」の「複合磁性ワイヤ22の回りに巻装された検出コイル23」については、「上記複合磁性ワイヤ22が硬磁性体21のN極によって磁化されると、急激な磁化の状態変化を生じ、この状態変化は短時間で発生するので、検出コイル23に電磁誘導による起電力が発生し、この起電力がパルス電圧として回転領域検出部14に出力され」るから、このような「検出コイル23」は、本件訂正発明1の「前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部」に相当する。
よって、甲1発明の「操舵角センサ3」は、本件訂正発明1の「第1感磁性部及び第2感磁性部を有し、前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部」に相当する構成を含む。
エ 甲1発明の「磁気検出素子MD1及びMD2」は、「発電型磁気センサGM1及びGM2からのパルス電圧によって駆動され」、「回転領域検出部14」の「論理回路14a及び不揮発性メモリ14b」の「各部には、発電型磁気センサGM1及びGM2から出力されるパルス電圧PV1及びPV2が入力され、入力されたパルス電圧PVi(i=1又は2)によって駆動され」るから、本件訂正発明1と甲1発明は、「発電部」から「供給」される「電力」が、「前記検出部で消費される電力の少なくとも一部」となる点で共通する。
オ 甲1発明の「上記ステアリングシャフト2の回転角即ち操舵角を検出する操舵角センサ3」は、本件訂正発明1の「エンコーダ装置」に相当する。
上記ア~オの対比内容をまとめると、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の一致点Aにおいて一致し、以下の相違点A1及びA2において相違する。
[一致点A]
「第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、
前記回転軸の回転に基づき前記検出部と相対位置が変化する磁石と、
第1感磁性部及び第2感磁性部を有し、前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部と、を備え、
前記発電部から供給される電力が前記検出部で消費される電力の少なくとも一部となる、
エンコーダ装置。」
[相違点A1]
「前記発電部から供給される電力」について、本件訂正発明1は、「前記電力を所定電圧の電力に調整し、前記検出部で消費される電力の少なくとも一部を供給する電力調整部」を備えているのに対して、甲1発明はそのような構成を備えていない点。
[相違点A2]
「移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部」が、本件訂正発明1では、「第1磁気センサ及び第2磁気センサ」の他に「光センサ」を有し、「前記光センサは、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記回転軸の多回転情報を検出する」のに対して、甲1発明はそのような構成を備えていない点。
まず、上記相違点A1について検討すると、甲2記載事項には、「外部からの電力供給を受けることなく、回転軸の回転方向及び回転数を検出し保持するバッテリレス多回転エンコーダ101において」、「大バルクハウゼン効果を有する磁性ワイヤで形成され」た「検出コイル112、113で発生したそれぞれの電圧パルス」が、「全波整流回路121、121でそれぞれ整流された後、定電圧回路122によって一定電圧にされ、この一定電圧は、Enable回路123、パルス波形符号判定回路124、コントローラ125、アダー126、及び不揮発メモリ127に電力として供給され」ることが開示されている。
ここで、甲2記載事項の「磁性ワイヤで形成され」た「検出コイル112、113」は、本件訂正発明1の「発電部」に対応し、「電圧パルス」が「一定電圧にされ」ることは、本件訂正発明1の「前記電力を所定電圧の電力に調整」することに対応する。また、「全波整流回路121、121」及び「定電圧回路122」は、本件訂正発明1の「電力調整部」に対応する。
すなわち、外部からの電力供給を受けることなく、回転軸の回転方向及び回転数を検出し保持するバッテリレス多回転エンコーダにおいて、発電部で発生した電力を所定電圧の電力に調整し、検出部で消費される電力の少なくとも一部を供給する電力調整部を備えることは、上記甲2記載事項に開示されているように周知の技術であり、このような周知の技術を甲1発明に適用して、上記相違点A1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
次に、上記相違点A2について検討すると、甲5記載事項には、「絶対値エンコーダ装置」の「回転シャフト3に光を照射するLEDやレーザなどの光源15と、前記光源15によって照射され、回転ディスク5を透過した光を受光し、電気信号に変換する受光素子17」を用いて、「グレイコードの透光、遮光のスリットパターンが蒸着形成された回転ディスク5のパターンを通過した光を受光素子(フォトダイオード)17で電気信号に変換し、1回転絶対値演算処理器19dで演算処理することにより」「回転シャフト3の1回転内の絶対値を検出する」ことが開示されており、また、この「絶対値エンコーダ装置」の「前記回転シャフト3の多回転検出のための磁界検出センサ8a、8b」の「出力信号により」「多回転量」を「検出」することが開示されている。
ここで、甲5記載事項の「回転シャフト3に光を照射するLEDやレーザなどの光源15と、前記光源15によって照射され、回転ディスク5を透過した光を受光し、電気信号に変換する受光素子17」は、本件訂正発明1の「光センサ」に対応し、「回転シャフト3の1回転内の絶対値を検出する」ことは、本件訂正発明1の「前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出」することに対応する。また、甲5記載事項の「前記回転シャフト3の多回転検出のための磁界検出センサ8a、8b」は、本件訂正発明1の「前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサ」に対応し、甲5記載事項の「磁界検出センサ8a、8b」の「出力信号により」「多回転量」を「検出」することは、本件訂正発明1の「前記回転軸の多回転情報を検出する」ことに対応する。
すなわち、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部が、第1磁気センサ及び第2磁気センサの他に光センサを有し、前記光センサは、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記回転軸の多回転情報を検出することは、上記甲5記載事項に開示されているように周知の技術であり、このような周知の技術を甲1発明に適用して、上記相違点A2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件訂正発明1の奏する効果は、甲1発明並びに甲2記載事項及び甲5記載事項に基づいて、当業者が予測し得たものにすぎない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明並びに甲2記載事項及び甲5記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件訂正発明2について
甲5記載事項の「回転シャフト3」の「多回転量」は「磁界検出センサ8a、8bの出力信号により検出するもの」であるところ、この「多回転量」は、本件訂正発明2の「回転軸の回転数」に対応し、「磁界検出センサ8a、8bの出力信号」は、本件訂正発明2の「前記第1磁気センサの出力信号と前記第2磁気センサの出力信号」に対応している。
すなわち、回転軸の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流が生じる期間において出力された第1磁気センサの出力信号と第2磁気センサの出力信号とに基づいて、前記回転軸の回転数を検出することは、甲5記載事項に開示されているように周知の技術であり、このような周知の技術を甲1発明に適用して、本件訂正発明2のごとく構成することは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、本件訂正発明2は、甲1発明並びに甲2記載事項及び甲5記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件訂正発明3について
甲1記載事項1では、「磁気検出素子MD1及びMD2を磁性体21の外側に」「配置し」、「発電型磁気センサGM1及びGM2を硬磁性体21の上方に対向して配置」しているから(【図11(a)】参照)、「磁気検出素子MD1」と「発電型磁気センサGM1」とは、ステアリングシャフト2(回転軸)の回転方向において互いに重ならない角度位置に配置されているといえる。
同様に、甲1記載事項1では、「磁気検出素子MD2」と「発電型磁気センサGM2」とは、ステアリングシャフト2(回転軸)の回転方向において互いに重ならない角度位置に配置されている。
したがって、本件訂正発明3は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項及び甲5記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件訂正発明4及び5について
甲6記載事項では、「ウィーガンドワイヤWg1の磁化方向と磁場感知センサMs1の極性Aとは直交し、ウィーガンドワイヤWg2の磁化方向と磁場感知センサMs2の極性Bとは直交」している。
ここで、「ウィーガンドワイヤWg1」及び「ウィーガンドワイヤWg2」は、本件訂正発明4の「第1感磁性部」及び「第2感磁性部」に対応し、「磁場感知センサMs1」及び「磁場感知センサMs2」は、本件訂正発明4の「第1磁気センサ」及び「第2磁気センサ」に対応する。
よって、甲6記載事項においても、第1磁気センサは、第1感磁性部の角度位置に対する位相差が45°以上135°以下の範囲の角度位置(すなわち90°)に配置され、第2磁気センサは、回転軸の回転方向において前記第1磁気センサと重ならない角度位置であって、第2感磁性部の角度位置に対する位相差が45°以上135°以下の範囲の角度位置(すなわち90°)に配置されているといえる。
また、甲6記載事項では、「ウィーガンドワイヤWg1の磁化方向とWg2の磁化方向とは、直交」しているから、このことは、第1感磁性部の角度位置は、第2感磁性部の角度位置に対して45°以上135°以下の位相差(すなわち90°)を有することに対応する。
したがって、本件訂正発明4及び5は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件訂正発明6について
甲1発明では、「コンパレータで構成され」る「矩形波生成部141」が、「検出信号S1」が「正値であるときHIGHレベル」、「負値又は零であるときLOWレベルとなる矩形波信号SD1」を「生成」するから、「検出信号S1」が「正値であるとき」は、本件訂正発明6の「回転軸の1回転内における第1期間」に相当し、「検出信号S1」が「負値又は零であるとき」は、本件訂正発明6の「前記第1期間と異なる第2期間」に相当する。
そうすると、甲1発明の「コンパレータで構成され」る「矩形波生成部141」は、本件訂正発明6の「第1磁気センサの出力信号を所定の閾値と比較して、前記回転軸の1回転内における第1期間においてハイレベルの信号を出力し、前記第1期間と異なる第2期間においてローレベルの信号を出力するコンパレータ」に相当する。
そして、甲1発明では、「検出信号S1」が「正値であるとき」、「磁気検出素子MD1」から「検出信号S1」が出力されており、このことは、本件訂正発明6の「前記第1期間において前記第1磁気センサの出力信号が出力される」ことに相当する。
したがって、本件訂正発明6は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件訂正発明7について
甲1発明の「磁気検出素子MD1及びMD2」は、「発電型磁気センサGM1及びGM2からのパルス電圧によって駆動され、硬磁性体21で発生する磁界に応じて正弦波状及び余弦波状の検出信号S1及びS2を出力する」ものであるから、これらのパルス電圧が発生するタイミングにおいて、それぞれ検出信号S1及びS2を出力しているといえる。このことは、本件訂正発明7の「前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記第1感磁性部から前記電流が生じるタイミングと前記第2感磁性部から前記電流が生じるタイミングとにおいて、それぞれ出力信号を出力する」ことに相当する。
したがって、本件訂正発明7は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本件訂正発明8について
甲2記載事項では、「磁石111の上方で磁石111の回転円周上に配置され、大バルクハウゼン効果を有する磁性ワイヤで形成され」た「検出コイル112、113」からの「各電圧パルス」が、「コントローラ125に送信」され、「上記コントローラ125は、不揮発メモリ127から、前回に電圧パルスが生じたときの回転軸115の回転数と、A状態及びB状態とを読み取り、これをアダー126に送信し、上記アダー126は、受け取った情報(回転数、A相出力B相出力、A状態、B状態の値)から、変換テーブルを用いて、状態A、状態B及び回転数の更新を行い、最新のA状態、B状態、及び回転数をコントローラ125に送信し」ている。
ここで、甲2記載事項における「検出コイル112、113」からの「各電圧パルス」は、本件訂正発明8の「前記第1感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号と前記第2感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号」に対応し、「最新」の「回転数」に「更新」することは、「回転軸の第2の回転数を検出する」ことに対応する。
したがって、本件訂正発明8は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)本件訂正発明10及び11について
甲1発明の「発電型磁気センサGM1及びGM2」の「複合磁性ワイヤ22」は、「中心部と外郭部とで磁気を通し易い特性と磁石に近い特性との異なる磁気特性を有して、磁性体が磁化される時に、磁性体内部の微少な磁石単位の境界である磁壁が一度に移動する大バルクハウゼン現象を生じるように構成され」ており、このことは、本件訂正発明10の「前記第1感磁性部及び前記第2感磁性部は、前記磁界の変化によって大バルクハウゼンジャンプを生じる」ことに相当する。
また、甲1発明では、「イグニッションスイッチ18がオフ状態のときは、コントローラ15に電源が投入されておらず」、「回転領域検出部14及び磁気検出センサMD1及びMD2も作動停止状態にあり」、「この停止状態で、ステアリングホイール1を右切りすると、ステアリングホイール1が45°回転した位置で、発電型磁気センサGM1からパルス電圧PV1が出力され、このパルス電圧PV1が論理回路14a、不揮発性メモリ14b及び磁気検出素子MD1、MD2に供給されて、これらが作動状態とな」るから、このことは、本件訂正発明11の「前記検出部は、外部から電力供給を受けない場合、前記発電部又はバッテリから電力供給を受ける」ことに相当する。
したがって、本件訂正発明10及び11は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)本件訂正発明12及び13について
甲2記載事項の「全波整流回路121、121」及び「定電圧回路122」は、本件訂正発明12の「前記発電部から生じる前記電流を全波整流する整流器」及び「前記整流器によって整流された電力を所定電圧の電力に調整するレギュレータ」にそれぞれ対応する。
また、前記整流器と前記レギュレータとの間に、いわゆる平滑コンデンサを設けることは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
したがって、本件訂正発明12及び13は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10)本件訂正発明14について
甲1発明の「不揮発性メモリ14b」は、「発電型磁気センサGM1及びGM2から出力されるパルス電圧PV1及びPV2が入力され、入力されたパルス電圧PVi(i=1又は2)によって駆動され」るから、このことは、本件訂正発明14の「前記電力調整部は、前記検出部の検出結果を記憶する記憶部で消費される電力の少なくとも一部を供給する」ことに相当する。
したがって、本件訂正発明14は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(11)本件訂正発明15について
本件訂正発明15と甲1発明を対比すると、以下のとおりである。
ア 上記「(1)本件訂正発明1について」のアの検討内容を踏まえると、甲1発明の「磁気検出素子MD1及びMD2」は、本件訂正発明15の「第1のセンサと第2のセンサ」に相当する。
また、甲1発明の「ステアリングシャフト2」は、本件訂正発明15の「移動部の回転軸」に相当し、甲1発明の「ステアリングシャフト2の回転角即ち操舵角」は、本件訂正発明15の「移動部の回転軸の位置情報」に相当する。
そして、甲1発明の「磁気検出素子MD1及びMD2」、「論理回路14a」、「不揮発性メモリ14b」及び「コントローラ15」の組み合わせは、本件訂正発明15の「移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部」に相当する。
よって、甲1発明の「操舵角センサ3」は、本件訂正発明15の「第1のセンサ及び第2のセンサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部」に相当する構成を含む。
イ 上記「(1)本件訂正発明1について」のウの検討内容を踏まえると、甲1発明の「発電型磁気センサGM1及びGM2」の「複合磁性ワイヤ22」は、本件訂正発明15の「第1感磁性部及び第2感磁性部」に相当し、甲1発明の「発電型磁気センサGM1及びGM2」の「複合磁性ワイヤ22の回りに巻装された検出コイル23」は、本件訂正発明15の「前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部」に相当する。
よって、甲1発明の「操舵角センサ3」は、本件訂正発明15の「第1感磁性部及び第2感磁性部を有し、前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部」に相当する構成を含む。
ウ 上記「(1)本件訂正発明1について」のエの検討内容を踏まえると、本件訂正発明15と甲1発明は、「発電部」から「供給」される「電力」が、「前記検出部で消費される電力の少なくとも一部」となる点で共通する。
エ 上記「(5)本件訂正発明6について」での検討内容を踏まえると、甲1発明の「コンパレータで構成され」る「矩形波生成部141」は、本件訂正発明15の「前記第1のセンサから出力される出力信号を所定の閾値と比較して、前記回転軸の1回転内におけるハイレベルの信号とローレベルの信号とを出力するコンパレータ」に相当する。
オ 甲1発明では、「ステアリングホイール1が0°から90°回転する間は」、「SD1」は「HIGHレベル」であり、「ステアリングホイール1が45°回転した位置で、発電型磁気センサGM1からパルス電圧PV1が出力され」るから、このことは、本件訂正発明15の「前記発電部は、前記ハイレベルの信号が出力される期間において前記第1感磁性部によって生じる前記パルス状の電流として第1の電流を出力」することに相当する。
また、甲1発明では、「ステアリングホイール1」が「180°から270°回転する間は」、「SD1」は「LOWレベル」であり、「ステアリングホイール1が中立位置から約225°回転した状態で、発電型磁気センサGM2からパルス電圧PV2が出力され」るから、このことは、本件訂正発明15の「前記発電部」は、「前記ローレベルの信号が出力される期間において前記第2感磁性部によって生じる前記パルス状の電流として第2の電流を出力する」ことに相当する。
カ 甲1発明の「上記ステアリングシャフト2の回転角即ち操舵角を検出する操舵角センサ3」は、本件訂正発明15の「エンコーダ装置」に相当する。
上記ア~カの対比内容をまとめると、本件訂正発明15と甲1発明は、以下の一致点Bにおいて一致し、以下の相違点B1及びB2において相違する。
[一致点B]
「第1のセンサ及び第2のセンサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、
第1感磁性部及び第2感磁性部を有し、前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部と、を備え、
前記発電部から供給される電力が前記検出部で消費される電力の少なくとも一部となり、
前記第1のセンサから出力される出力信号を所定の閾値と比較して、前記回転軸の1回転内におけるハイレベルの信号とローレベルの信号とを出力するコンパレータと、を備え、
前記発電部は、前記ハイレベルの信号が出力される期間において前記第1感磁性部によって生じる前記パルス状の電流として第1の電流を出力し、前記ローレベルの信号が出力される期間において前記第2感磁性部によって生じる前記パルス状の電流として第2の電流を出力する、
エンコーダ装置。」
[相違点B1]
「前記発電部から供給される電力」について、本件訂正発明15は、「前記電力を所定電圧の電力に調整し、前記検出部で消費される電力の少なくとも一部を供給する電力調整部」を備えているのに対して、甲1発明はそのような構成を備えていない点。
[相違点B2]
「移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部」が、本件訂正発明15では、「第1のセンサ及び第2のセンサ」の他に「光センサ」を有し、「前記光センサは、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサは、前記回転軸の多回転情報を検出する」のに対して、甲1発明はそのような構成を備えていない点。
上記相違点B1は、上記「(1)本件訂正発明1について」における「相違点A1」と同じ内容であるから、上記相違点B1についても、上記「(1)本件訂正発明1について」の判断内容が同様に当てはまる。
すなわち、外部からの電力供給を受けることなく、回転軸の回転方向及び回転数を検出し保持するバッテリレス多回転エンコーダにおいて、発電部で発生した電力を所定電圧の電力に調整し、検出部で消費される電力の少なくとも一部を供給する電力調整部を備えることは、上記甲2記載事項に開示されているように周知の技術であり、このような周知の技術を甲1発明に適用して、上記相違点B1に係る本件訂正発明15の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
上記相違点B2は、上記「(1)本件訂正発明1について」における「相違点A2」と同じ内容であるから、上記相違点B2についても、上記「(1)本件訂正発明1について」の判断内容が同様に当てはまる。
すなわち、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部が、第1のセンサ及び第2のセンサの他に光センサを有し、前記光センサは、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサは、前記回転軸の多回転情報を検出することは、上記甲5記載事項に開示されているように周知の技術であり、このような周知の技術を甲1発明に適用して、上記相違点B2に係る本件訂正発明15の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件訂正発明15の奏する効果は、甲1発明並びに甲2記載事項及び甲5記載事項に基づいて、当業者が予測し得たものにすぎない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明並びに甲2記載事項及び甲5記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(12)本件訂正発明16について
上記「(9)本件訂正発明12及び13について」で検討した内容が同様に当てはまる。
したがって、本件訂正発明16は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項及び甲5記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(13)本件訂正発明17及び18について
上記「(5)本件訂正発明6について」で検討した内容が同様に当てはまる。
また、甲1発明では、「検出信号S1」が「負値又は零であるとき」、「磁気検出素子MD2」から「検出信号S2」が出力されており、このことは、本件訂正発明18の「前記第2期間において前記第2のセンサの出力信号が出力される」ことに相当する。
したがって、本件訂正発明17及び18は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項及び甲5記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(14)本件訂正発明19について
甲1発明が「磁気検出センサMD1」を備えることは、本件訂正発明19の「前記第1のセンサは磁気センサ」であることに相当する。
また、検出感度が最適化されるように磁気センサを配置することは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎず、第1感磁性部からパルス状の電流が生じる期間において、磁界の変化において前記磁界が相対的に強い位置に配置されるようにすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。
したがって、本件訂正発明19は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲2記載事項及び甲5記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(15)本件訂正発明20~22について
甲1記載事項2には、「操舵角を検出する場合に限定されるものではなく、任意の回転体の絶対回転角を検出する場合に適用し得る」とあり、また、甲5記載事項には、「産業用ロボット、NC工作機械等に用いられるモータの回転位置を検出するエンコーダ」とあるから、甲1発明を「エンコーダ装置と、移動部に動力を供給する動力供給部と、前記エンコーダ装置の検出部が検出した位置情報を使って前記動力供給部を制御する制御部と、を備える駆動装置」におけるエンコーダ装置に適用して、本件訂正発明20のごとく構成することに格別の困難性はない。
また、「移動物体と、前記移動物体を移動させる駆動装置と、を備えるステージ装置」における駆動装置のエンコーダ装置に適用して、本件訂正発明21のごとく構成することに格別の困難性はない。
さらに、「駆動装置を備えるロボット装置」における駆動装置のエンコーダ装置に適用して、本件訂正発明22のごとく構成することに格別の困難性はない。
したがって、本件訂正発明20~22は、甲1発明並びに甲1記載事項1、甲1記載事項2、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(16)特許権者の主張について
特許権者は、令和2年10月5日に提出した意見書において、以下のとおり主張している。
「本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)の特徴は、光センサ、第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部を備え、光センサは、回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、第1磁気センサ及び第2磁気センサは回転軸の多回転情報を検出することにあります。
本件特許発明1と引用文献に記載の発明とを比較すると、いずれの引用文献にも、本件特許発明1における上記特徴について、開示も示唆もされていません。
したがって、本件特許発明1は、甲1、2、5及び6号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められません。
同様に、請求項1の記載を引用する請求項2~8、10~14、20~22に係る発明についても、甲1、2、5及び6号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められません。」
「本件特許の請求項15に係る発明(以下、「本件特許発明15」という。)の特徴は、光センサ、第1のセンサ及び第2のセンサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部を備え、光センサは、回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、第1のセンサ及び第2のセンサは回転軸の多回転情報を検出することにあります。
本件特許発明15と引用文献に記載の発明とを比較すると、いずれの引用文献にも、本件特許発明15における上記特徴について、開示も示唆もされていません。
したがって、本件特許発明15は、甲1、2、5及び6号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められません。
同様に、請求項15の記載を引用する請求項16~22に係る発明についても、甲1、2、5及び6号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められません。」
しかしながら、これまでに検討したとおり、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部が、第1磁気センサ及び第2磁気センサの他に光センサを有し、前記光センサは、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出し、前記第1磁気センサ及び前記第2磁気センサは、前記回転軸の多回転情報を検出することは、上記甲5記載事項に開示されているように周知の技術であり、このような周知の技術を甲1発明に適用して、本件訂正発明1、15の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるから、特許権者の上記主張を採用することはできない。
(17)まとめ
上記(1)~(16)より、本件訂正発明1~8、10~22は、甲1、2、5及び6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1~8、10~22に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人が提出した証拠と申立理由の概要
(1)証拠
甲1号証 : 特開2008-203199号公報
甲2号証 : 国際公開第2013/157279号
甲3号証 : 特開2014-48251号公報
甲4号証 : 特開2012-198067号公報
甲5号証 : 特開2008-14799号公報
甲6号証 : 特開2012-225917号公報
(2)申立理由の概要
申立人は、上記(1)の文書を証拠方法として、請求項1~22に係る発明は、甲1~6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~22に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、上記特許は取り消すべきものである旨主張する。
2 当審の判断
請求項1~8、10~22に係る発明については、上記第5において示したとおり、取消理由(決定の予告)は妥当なものと認められるので、請求項1~8、10~22に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
ここでは、この取消理由を通知していない請求項9に係る特許について検討する。
(1)本件訂正発明9
本件訂正後の請求項9の記載は次のとおりである。
「【請求項9】
第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、
前記回転軸の回転に基づき前記検出部と相対位置が変化する磁石と、
第1感磁性部及び第2感磁性部を有し、前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部と、
前記電力を所定電圧の電力に調整し、前記検出部で消費される電力の少なくとも一部を供給する電力調整部と、を備え、
前記検出部は、前記第1感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号と前記第2感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号とを用いて前記回転軸の第2の回転数を検出し、
前記位置情報に基づく前記回転軸の回転数と前記第2の回転数とを照合して、その照合の結果に基づき異常の検出を行う、エンコーダ装置。」
(2)対比
前記「第5 当審の判断」「3 対比、判断」「(1)本件訂正発明1について」で検討した内容を踏まえると、本件訂正発明9と甲1発明は、以下の一致点Cにおいて一致し、以下の相違点C1及びC2において相違する。
[一致点C]
「第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、移動部の回転軸の位置情報を検出する検出部と、
前記回転軸の回転に基づき前記検出部と相対位置が変化する磁石と、
第1感磁性部及び第2感磁性部を有し、前記移動部の回転による磁界の変化により生じるパルス状の電流に基づく電力が発生する発電部と、を備え、
前記発電部から供給される電力が前記検出部で消費される電力の少なくとも一部となる、
エンコーダ装置。」
[相違点C1]
「前記発電部から供給される電力」について、本件訂正発明9は、「前記電力を所定電圧の電力に調整し、前記検出部で消費される電力の少なくとも一部を供給する電力調整部」を備えているのに対して、甲1発明はそのような構成を備えていない点。
[相違点C2]
本件訂正発明9では、「前記検出部は、前記第1感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号と前記第2感磁性部から生じる前記パルス状の電流に基づく検出信号とを用いて前記回転軸の第2の回転数を検出し、前記位置情報に基づく前記回転軸の回転数と前記第2の回転数とを照合して、その照合の結果に基づき異常の検出を行う」のに対して、甲1発明はそのような構成を備えていない点。
(3)判断
ア 事案に鑑み、まず相違点C2を検討すると、第1、2磁気センサを有する検出部が検出する移動部の回転軸の位置情報に基づく前記回転軸の回転数と、第1、2感磁性部から生じるパルス状の電流に基づく検出信号を用いて検出される前記回転軸の第2の回転数とを照合して、その照合の結果に基づき異常の検出を行うことは、甲2~6号証のいずれにも記載されておらず、当業者にとって自明なものでもないから、上記相違点C2に係る本件訂正発明9の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
この点に関し、申立人は、「本件特許発明9の「(P)前記回転軸の回転数と前記第2の回転数とを照合して、その照合の結果に基づき異常の検出を行う、請求項8に記載のエンコーダ装置」は、甲1号証に明示されていないが、2つの回転数を照合して、その照合の結果に基づき異常の検出を行うことは、周知であり、設計事項にすぎない。」(特許異議申立書31頁(ケ))と主張している。
しかしながら、仮に何らかの回転数の照合の結果に基づき異常の検出を行うことが周知であったとしても、磁気センサの検出信号から得られる回転数と、発電部からの出力を検出信号として得られる回転数とを照合して、異常の検出を行うことまでが周知であるとはいえず、設計事項であるともいえない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできず、上記相違点C1について検討するまでもなく、本件訂正発明9は、甲1~6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、申立人の主張する特許異議申立て理由によっては、請求項9に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~8、10~22に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項9に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消すことはできない。他に本件特許の請求項9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700360