特許異議申立
2020-700314
微小電気機械システムを保護する装置及び方法
- 審判番号
- 2020-700314
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-573109
- 登録番号
- 特許第6599905号(P6599905)
- 請求日
- 2020年04月30日
- 審決日
- 2020年12月18日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】鶴田 準一
- 【権利者代理人】南山 知広
- 【権利者代理人】渡辺 陽一
- 【権利者代理人】胡田 尚則
- 【権利者代理人】出野 知
- 【異議申立人】松村 朋子
- 審判長/審判官
- 審判長 千葉 輝久
- 審判官 樫本 剛
- 審判官 渡辺 努
- 分類
- P1651.121-Y (H04R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6599905号発明「微小電気機械システムを保護する装置及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6599905号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6599905号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)7月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年7月6日 米国、2014年7月7日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和元年10月11日にその特許権の設定登録(特許公報発行日 令和元年10月30日)がされた。
その後、令和2年4月30日に特許異議申立人松村朋子により請求項1~4に対して特許異議の申立てがされた。
そして、令和2年6月26日付けで当審から特許権者に取消理由を通知し、これに対し、令和2年9月25日に特許権者から意見書が提出された。
2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。また、本件発明1~本件発明4を総称して「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
ここで、本件発明1~4の各構成には、(A)~(J)の符号を当審において付した。以下、構成A~構成Jという。
(本件発明1)【請求項1】
(A)超音波トランスデューサと、
(B)前記超音波トランスデューサに隣接して配された、1.5g/m2以下の質量/面積比を有する延伸PTFEメンブレンとを含み、
(C)該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である、
(D)微小電気機械システム。
(本件発明2)【請求項2】
(E)前記質量/面積比が1g/m2以下である、
(F)請求項1に記載のシステム。
(本件発明3)【請求項3】
(G)前記延伸PTFEメンブレンが、直径0.25ミクロン超の粒子を捕捉する、
(H)請求項1に記載のシステム。
(本件発明4)【請求項4】
(I)前記延伸PTFEメンブレンが、音波伝送、粒子捕捉、及び圧力放出を与える、
(J)請求項1に記載のシステム。
3 取消理由の概要
令和2年6月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(取消理由)進歩性(特許法第29条第2項)
本件発明1~4は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
引用文献1:特開2013-253214号公報(異議申立書における甲第6号証)
引用文献2:藤本登企画編集、「スマートフォン・タッチパネル部材の最新技術便覧」、368~372頁、技術情報協会、2013年6月(異議申立書における甲第7号証)
4 引用文献について
(1)引用文献1について
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1には次の記載がある。なお、以下の下線は、強調のために当審で付したものである。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)多孔質膜の製造方法に関し、特に防水通気部材およびエアフィルタ濾材の捕集層として適した特性を有するPTFE多孔質膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PTFE多孔質膜は、PTFEファインパウダーと押出助剤である液状潤滑剤とを混合して得た混合物を押し出して成形し、得られた成形体をシート状に圧延し、圧延して得たPTFEシートから液状潤滑剤を除去し、液状潤滑剤を除去したPTFEシートを延伸して多孔化することにより、製造される。こうして得られたPTFE多孔質膜は、よく知られているとおり、ノード(結節)とフィブリル(繊維)とから構成された多孔構造を有する。
【0003】
電子機器および照明機器の筐体には開口部が設けられることがある。電子機器においては、開口部を通じ、筐体の内部に収容されたマイクロフォン、スピーカーなどの音響トランスデューサと筐体の外部との間を音響エネルギーが伝搬する。照明機器の筐体においては、開口部を通じ、発光体の発熱により膨張する空気が外部へと排出される。携帯電話に代表される小型の電子機器、および自動車のヘッドライトに代表される車両用照明機器には高い防水性が求められることがあるから、開口部からの水の侵入を防ぐ必要がある。このため、これらの機器の筐体の開口部には、耐水性と通気性(通音性)とを兼ね備えた防水通気部材が配置されることが多い。
【0004】
なお、電子機器に用いられる防水通気部材は、防水通音部材とも称されるが、本明細書では、以降、防水通音部材を含む概念を示す用語として「防水通気部材」を使用する。」
「【0015】
本発明は、
標準比重が2.19以下であるPTFEファインパウダーと液状潤滑剤とを含む混合物を、フラットダイを用いてシート状に押し出し、PTFEシートを得る工程Aと、
前記PTFEシートを、前記工程Aにおける押し出し方向である前記シートの長手方向に沿って一対のロールの間を通過させて圧延する工程Bと、
前記PTFEシートを、前記シートの長手方向に直交する幅方向に延伸する工程Cと、
前記工程Bおよび前記工程Cにおいて圧延および延伸されたPTFEシートから前記液状潤滑剤を除去する工程Dと、
前記工程Dにおいて前記液状潤滑剤が除去されたPTFEシートを、当該シートの長手方向および幅方向のそれぞれについて延伸して、PTFE多孔質膜を得る工程Eと、
を具備するPTEF多孔質膜の製造方法、を提供する。」
「【発明の効果】
【0018】
本発明のPTFE多孔質膜の製造方法は、防水通気部材用のPTFE多孔質膜の製造に適している。この製造方法によれば、耐水性および通気性の両方が改善されたPTFE多孔質膜を得ることが可能となる。特に、本発明によれば、単層でありながらも耐水性および通気性の両方に優れたPTFE多孔質膜を製造することができる。
【0019】
本発明のPTFE多孔質膜の製造方法は、エアフィルタ濾材用のPTFE多孔質膜のPF値の改善にも適している。この製造方法によれば、特に、目付量の増大を抑制しながらPTFE多孔質膜のPF値を向上させることが可能となる。小さい目付量は、原材料コストの削減のみならず、製品軽量化にも寄与する好ましい特徴である。本発明によれば、高いPF値を有するとともに、PTFEの材料使用効率などの観点からも従来よりも有利であるPTFE多孔質膜およびエアフィルタ濾材を提供することが可能となる。」
「【0027】
従来から実施されてきたように、工程Eにおいては、所望の特性が得られるように延伸倍率は適宜調整される。長手方向についての延伸倍率と幅方向についての延伸倍率との積により算出される延伸面倍率は、PTFE多孔質膜の用途に応じて適宜調整される。防水通気部材として供する場合、延伸面倍率は、例えば4倍以上150倍未満が適切である。通気性と耐水性とを両立させるためには、延伸面倍率を16倍以上140倍以下、特に30倍以上140倍以下、場合によっては50倍以上140倍以下とすることが好ましい。ただし、高い通気性が要求されない場合には、延伸面倍率を16倍以上30倍未満としてもよい。一方、エアフィルタ濾材の捕集層として供する場合、延伸面倍率は150倍以上700倍以下が適切である。」
「【0033】
本発明によれば、防水通気部材に適した改良されたPTFE多孔質膜を得ることができる。このPTFE多孔質膜は、例えば、フラジール数により表示した通気度をF[cm3/秒/cm2]、耐水圧をR[MPa]と表示したときに、以下の関係式(A-1)~(A-3)を満たす。
【0034】
0.2≦F≦4.0 (A-1)
0.2≦R≦1.0 (A-2)
R≧-0.1F+0.5 (A-3)」
「【0046】
また、本発明によれば、エアフィルタの捕集層に適した改良されたPTFE多孔質膜を得ることができる。このPTFE多孔質膜は、例えば、上記式(B-1)により定められるPF値が36以上であり、目付量が0.90g/m2以下である。」
「【0090】
図2に示す防水通気部材は、PTFE多孔質膜1とともに、複数の固定用部材2a,2bを備えている。固定用部材2a,2bは、固定用部材2(図1)と同様、膜面に直交する方向から観察したときにリング状の形状を有し、PTFE多孔質膜1の両主面において通気領域3を囲んでいる。この防水通気部材は、例えば電子機器の筐体の内部における使用に適している。この場合、例えば、固定用部材2aは筐体内部に配置される機器(例えばスピーカ)に接合され、固定用部材2bは筐体の開口部を囲むように筐体の内面に接合される。」
イ 引用発明
上記アの記載事項から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
ここで、引用発明の各構成には、(a)~(g)の符号を当審において付した。以下、構成a~構成gという。
〔引用発明〕
(a)標準比重が2.19以下であるPTFEファインパウダーと液状潤滑剤とを含む混合物を、フラットダイを用いてシート状に押し出し、PTFEシートを得る工程Aと、前記PTFEシートを、前記工程Aにおける押し出し方向である前記シートの長手方向に沿って一対のロールの間を通過させて圧延する工程Bと、前記PTFEシートを、前記シートの長手方向に直交する幅方向に延伸する工程Cと、前記工程Bおよび前記工程Cにおいて圧延および延伸されたPTFEシートから前記液状潤滑剤を除去する工程Dと、前記工程Dにおいて前記液状潤滑剤が除去されたPTFEシートを、当該シートの長手方向および幅方向のそれぞれについて延伸して、PTFE多孔質膜を得る工程Eと、を具備するPTEF多孔質膜の製造方法であって、
(b)上記PTFE多孔質膜の製造方法は、防水通気部材用のPTFE多孔質膜の製造に適しており、
(c)上記工程Eにおいては、長手方向についての延伸倍率と幅方向についての延伸倍率との積により算出される延伸面倍率は、PTFE多孔質膜の用途に応じて適宜調整され、防水通気部材として供する場合、延伸面倍率は、通気性と耐水性とを両立させるためには、延伸面倍率を16倍以上140倍以下、特に30倍以上140倍以下、場合によっては50倍以上140倍以下とすることが好ましく、
(d)上記方法によれば、防水通気部材に適した改良されたPTFE多孔質膜を得ることができ、このPTFE多孔質膜は、例えば、フラジール数により表示した通気度をF[cm3/秒/cm2]と表示したときに、関係式0.2≦F≦4.0を満たし、
(e)電子機器においては、開口部を通じ、筐体の内部に収容されたマイクロフォン、スピーカーなどの音響トランスデューサと筐体の外部との間を音響エネルギーが伝搬し、携帯電話に代表される小型の電子機器の筐体の開口部には、耐水性と通気性(通音性)とを兼ね備えた防水通気部材が配置され、
(f)防水通気部材は、PTFE多孔質膜1とともに、複数の固定用部材2a,2bを備え、固定用部材2a,2bは、PTFE多孔質膜1の両主面において通気領域3を囲んでおり、固定用部材2aは筐体内部に配置される機器(例えばスピーカ)に接合され、固定用部材2bは筐体の開口部を囲むように筐体の内面に接合されるように構成される
(a)PTEF多孔質膜の製造方法、
(g)により製造されるPTEF多孔質膜を用いた電子機器。
(2)引用文献2について
ア 引用文献2の記載事項
引用文献2には次の記載がある。
「一方、2002年にKnowlesが世界に先駆けて出荷開始したSiSonicTMをはじめとしたMEMSマイクは、今ではモバイルデバイスに使用されるマイクのスタンダードになりつつある。これはモバイルデバイスに求められる進化に対して,MEMSマイクが同じく進化を遂げてきたことを示している。」(368頁6~8行)
「3.2 超音波センサとしてのMEMSマイク
通常、マイクは可聴域の音声信号を扱う用途で使用される。しかしKnowlesのMEMSマイクは可聴域より上の超音波帯信号(20kHz~100kHz)を受信する能力も備えている。つまり,音声用マイクとして使用されるデバイスが,超音波センサとしても使えるのである。」(370頁下から4行~最終行)
イ 文献2周知技術
上記アの記載事項から、引用文献2には、以下の周知技術(以下、「文献2周知技術」という。)が記載されている。
〔文献2周知技術〕
可聴域より上の超音波帯信号(20kHz~l00kHz)を受信する能力も備えるMEMSマイク。
5 甲号証について
上記4の、引用文献1及び引用文献2とされた甲第6号証及び甲第7号証のほかに、特許異議申立人が提出した甲号証は以下のものである。
甲第1号証:国際公開第2013/138286号
甲第2号証:特開2008-99271号公報
甲第3号証:特表2003-503991号公報
甲第4号証:特開2010-193439号公報
甲第5号証:特表平3-504876号公報
甲第8号証:国立国会図書館サーチページ、「スマートフォン・
タッチパネル部材の最新技術便覧」のページ、[online]、
[令和2年4月24日検索]、インターネット
<URL:htts://iss.ndl.go.jp./books/R100000002-I024631123-00>
甲第9号証:特開2010-171631号公報
甲第10号証:特開2010-87891号公報
甲第11号証:特開2008-245111号公報
甲第12号証:特開2008-301406号公報
甲第13号証:特開2010-141720号公報
上記各甲号証の記載事項は以下のとおりである。
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には次の記載がある。なお、対応する公表公報である特表2015-518646号公報に基づき訳文を括弧内に付した。また、以降の各号証における下線は、強調のために当審で付したものである。
「DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
In one embodiment, the present invention relates to a method of manufacturing a venting device for a container. In particular, a venting device suitable for MEMS package may be made by the inventive process. Fig. 1 shows such a container (18) with an internal space (20) space and an aperture (22) which separates the internal space from the ambient space (24). Examples of containers may include, but are not limited to, pressure sensors, electronic enclosures, gas sensors, microphones, and hearing aid devices.
Fig. 2 depicts the vent array. The array comprises multiple vents manufactured in a single process. The vents may be separated by cutting or dicing prior to installation or may be installed upon an array of MEMS packages prior to separation.
A venting device (26) such as depicted in Fig. 3 may be placed over the aperture (22) in a container. The venting device serves to protect the internal space of the container from contaminants in the ambient space including dust, moisture, and other liquids while allowing gas flow for pressure equalization or moisture transmission. The device (26) may be provided in the form of a vent array (28) comprising several venting devices as shown in Fig. 2. The vent array may be constructed by combining a porous polymeric matrix material (30) and a substrate material (32) having a plurality of perforations (34).」(2頁3~19行)
(訳:発明の詳細な説明
一実施態様では、本発明は、容器のための通気装置を製造する方法に関する。特に、MEMSパッケージに適した通気装置は、本発明の方法で製造することができる。図1は、内部空間(20)と、その内部空間を周囲空間(24)から隔てる開口部(22)とを有する容器(18)を示している。容器の非限定的な例として、圧力センサー、エレクトロニクス用エンクロージャ、ガス・センサー、マイクロフォン、補聴器などが挙げられる。
図2は、通気アレイを示している。このアレイは、単一のプロセスで製造される複数の通気装置を備えている。通気装置は、設置前に切断して分離してもよいし、分離前にMEMSパッケージのアレイの上に設置してもよい。
図3に示したような通気装置(26)は、容器の開口部(22)の上方に配置することができる。この通気装置は、容器の内部空間を周囲空間の汚染物(例えば塵、水分や、他の液体)から保護する一方で、圧力均等化または水分伝達のためにガスが流れることを可能にする機能を有する。この通気装置(26)は、図2に示したようないくつかの通気装置を備える通気アレイ(28)の形で提供してもよい。通気アレイは、多孔性ポリマー・マトリックス材料(30)と、複数の穴(34)を有する基板材料(32)を組み合わせて構成することができる。)
「Another aspect of the present invention relates to a method of manufacturing a vented MEMS package. Fig. 5 shows an exemplary MEMS condenser microphone package (50) including a transducer unit (52) and an amplifier (54). The package has an acoustic port or aperture (56) for allowing sound waves to reach the transducer. Other MEMS packages for other applications, such as MEMS speakers, are similarly configured and contemplated by the inventive manufacturing method. The aperture is covered with the venting device (26) to allow sound waves or gases to pass through but prevent liquid contaminants, dust, and moisture from entering the package, thereby protecting the contents inside the package.
Example: Method of making a vent array
A prepreg material (GORETM SPEEDBOARD(丸囲みR) C) was used as the substrate. Circular perforations of diameter 0.8 mm were drilled into the substrate (12.7 cm by 15.2 cm in size) by using a C02 laser. The substrate had a total of 1755 such perforations which were spaced 3.25 mm apart from each other. An expanded PTFE membrane was used as the porous polymeric matrix material, the properties of the membrane are as follows: about 35 micron thickness, average pore size of 0.5 micron, Gurley of about 10 secs. The expanded PTFE membrane was rendered oleophobic by coating with a solution of fluoroacryiate polymer in a solvent system and subsequently removing the solvent by drying.
」(4頁1~19行)
(訳:本発明の別の特徴は、通気されるMEMSパッケージを製造する方法に関する。図5は、トランスデューサ・ユニット(52)と増幅器(54)を備えるMEMSコンデンサ・マイクロフォン・パッケージ(50)の一例を示している。このパッケージは、音波をトランスデューサに伝えることを可能にする音響ポートまたは音響開口部(56)を有する。別の用途のための別のMEMSパッケージ(例えばMEMSスピーカ)も同様の構成であり、本発明の製造方法で製造される。開口部を通気装置(26)によって覆うことで、音波またはガスの通過は可能だが、液体汚染物質、塵、水分はパッケージ内部の中に入らないようにすることができる。そうすることで、パッケージ内部の要素が保獲される。
実施例:通気アレイの製造方法
プレプレグ材料(GORE(登録商標)SPEEDBOARD(登録商標)C)を基板として使用した。CO2レーザーを用いて基板(12.7cm×15.2cm)に直径0.8mmの丸い穴を開けた。基板には、互いに3.25mm離れた穴が合計で1755個あった。延伸PTFE膜を多孔性ポリマー・マトリックス材料として用いた。この膜の特性は、厚さ約35ミクロン、空孔サイズの平均値0.5ミクロン、ガーレー数約10秒である。この延伸PTFE膜は、フルオロアクリレートポリマーを溶媒系に溶かした溶液で覆い、その後乾燥させて溶媒を除去することによって疎油性にした。)
イ 甲1発明
上記アの記載事項から、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
ここで、甲1発明の各構成には、(1a)~(1e)の符号を当審において付した。以下、構成1a~構成1eという。
〔甲1発明〕
(1a)トランスデューサ・ユニット(52)と増幅器(54)を備えるMEMSコンデンサ・マイクロフォン・パッケージ(50)であって、
(1b)音波をトランスデューサに伝えることを可能にする音響ポートまたは音響開口部(56)を有し、
(1c)開口部を通気装置(26)によって覆うことで、音波またはガスの通過は可能だが、液体汚染物質、塵、水分はパッケージ内部の中に入らないようにすることができ、
(1d)通気装置(26)は、いくつかの通気装置を備える通気アレイ(28)の形で提供してもよく、通気アレイは、多孔性ポリマー・マトリックス材料(30)と、複数の穴(34)を有する基板材料(32)を組み合わせて構成し、
(1e)延伸PTFE膜を多孔性ポリマー・マトリックス材料として用い、この膜の特性は、厚さ約35ミクロン、空孔サイズの平均値0.5ミクロン、ガーレー数約10秒である
(1a)MEMSコンデンサ・マイクロフォン・パッケージ(50)。
(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、トランスデューサのハウジングに関する。より詳しくは、本発明は、シリコン金型の表面上に形成されたトランスデューサを遮蔽するためのハウジングを備えた小型シリコンコンデンサマイクロフォンに関する。シリコン金型は、このようなタイプの高度なマイクロフォンを製造するためにパッケージされていなければならない。」
「【発明の開示】
【課題を解決するための手段]
【0005】
本発明は、音響エネルギーをトランスデューサに接触させて、必要な圧力リファレンスを提供すると同時に、光と電磁妨害および物理的損害からトランスデューサを保護するシリコンコンデンサマイクロフォンパッケージに関連している。シリコンコンデンサマイクロフォンパッケージは、トランスデューサと、基板と、カバーから構成されている。基板は、凹部が形成された上面を有する。トランスデューサは、基板の上面に取り付けられて、凹部の少なくとも一部と重なり、それによってトランスデューサの後部ボリュームがトランスデューサと基板間に形成されている。カバーは、トランスデューサ上に配置され、音波がシリコンコンデンサトランスデューサに達するよう設けられた開口部を有する。」
「【0010】
図1乃至図3を参照すると、本発明のシリコンコンデンサマイクロフォンパッケージ10の三つの実施例が例示されている。本発明のシリコンマイクロフォンパッケージ10は、通常、トランスデューサ12(例:ここで引例している米国特許第5,870,482号に開示されたシリコンコンデンサマイクロフォン)と、基板14と、増幅器16と、トランスデューサ12に圧力リファレンスを提供する後部ボリュームまたはエアキャビティ18と、カバー20を有している。基盤14は、通常、回路基板パネル状に加工できるFR-4材によって形成されることにより、製造上のスケールメリットという利点を有する。図6は、複数の端子パッドに囲まれた後部ボリューム18を示す基板14の平面図である。
【0011】
後部ボリューム18は、多くの方法によって形成することができる。例えば、シリコンコンデンサマイクロフォンが上部に取り付けられた凹部を形成するために、深さを制御しながら基板14の上面19に穴をあける(図1);FR-4材の数枚の個々のシートに穴をあけ、ルートを形成し、個々のシートを積層して、内側支柱がなくてもあってもよい後部ボリューム18を形成する(図2);基板14に貫通孔をあけ、ユーザの“基板”28の表面に取り付ける際に後部ボリューム18を封止するシーリングリング22を素子の底部に設ける(図3乃至図5)。この例では、基板とユーザの基板28を組み合わせることにより、後部ボリューム18が形成される。後部ボリューム18は、バンプ接着され、表を下にして取り付けられたトランスデューサ12(MEMS素子)によって被覆されている。」
「【0017】
図7乃至図10および図23乃至図26に示された様々な実施例において、開口部または音響ポート54を含むハウジング42の部分は、さらに、開口部54の上部または内部に環境バリア62を形成する材料層を含んでいる。この環境バリア62は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または焼結金属等のフィルムに形成された重合体材料が代表的である。環境バリア62は、ハウジング42のチャンバ56を防御して、その結果、ハウジング42内にあるトランスデューサ部58を太陽光、湿気、油、泥および/または粉塵等の環境要素から防御するために設けられている。」
イ 甲2発明
上記アの記載事項から、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
ここで、甲2発明の各構成には、(2a)~(2d)の符号を当審において付した。以下、構成2a~構成2dという。
〔甲2発明〕
(2a)音響エネルギーをトランスデューサに接触させて、必要な圧カリファレンスを提供すると同時に、光と電磁妨害および物理的損害からトランスデューサを保護するシリコンコンデンサマイクロフォンパッケージであって、
(2b)トランスデューサと、基板と、カバーから構成され、
(2c)カバーは、トランスデューサ上に配置され、音波がシリコンコンデンサトランスデューサに達するよう設けられた開口部を有し、
(2d)トランスデューサはMEMS素子であり、
(2e)開口部の上部または内部に環境バリアを形成する材料層を含んでおり、この環境バリアは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、環境バリアは、ハウジングのチャンバを防御して、その結果、ハウジング内にあるトランスデューサ部を太陽光、湿気、油、泥および/または粉塵等の環境要素から防御するために設けられている
(2a)シリコンコンデンサマイクロフォンパッケージ。
(3)甲第3号証
ア 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には次の記載がある。
「【請求項1】音声伝送性の保護カバーアセンブリであって、
(a)微孔性メンブランから成っており、前記微孔性メンブランは、前記メンブランの少なくとも一部が、音響エネルギーに応答して自由に運動するように少なくとも1つの接着支持システムによって周囲で支持されており、前記アセンブリが、少なくとも1メートル水柱の瞬間水流入圧力と、300~3000Hzの周波数域で3dB以下の総合音響伝送損失とを有していることを特徴とする、音声伝送性の保護カバーアセンブリ。」
「【0001】
-発明の分野-
本発明は、広くは、電子デバイスに採用されたトランスデューサ(例えばマイクロフォン、リンガーまたはスピーカ)のための音響保護カバーに関する。より具体的には、本発明は、低い音響損失、および、液体侵入に対する長時間の暴露に耐え得る能力の双方を提供する微孔保護メンブランを含む音響保護カバーアセンブリに関する。
【0002】
一発明の背景一
最新の電子デバイス、例えばラジオや携帯電話は、トランスデューサ、例えばマイクロフォン、リンガー、スピーカ、ブザーなどを有している。これらの電子デバイスはしばしば、トランスデューサの上方に配置された小さな開口または穴を有するハウジングを有しており、これにより、トランスデューサがハウジング内部からの音声信号を伝送するか、または受け取ることが可能になる。しかしながら、このような構造は水(例えば雨滴)に対する偶発的な暴露からトランスデューサを保護するものの、トランスデューサの効率と音質とを著しく減衰してしまう。さらに、このような構造は、大量の水の侵入を阻止することはできない。従って、水その他の液体の流入による損傷からトランスデューサを保護するために、トランスデューサとハウジングとの間に音響保護カバーが利用されてきた。」
「【0015】
一発明の概要一
前述のものと関連して、長時間にわたる液体侵入に対する暴露から電子デバイスを保護する一方、従来の音響カバーと等価の、またはより良好な音声減衰を提供するような音声伝送性の音響保護カバーアセンブリを開示する。アセンブリは、メンブランを構成する際に焦点を絞るべき重要なパラメータが、可動質量および厚さであって、空気流ではないことを認識することにより、音声損失が低い、IP-57の要件に見合う微孔性の保護メンブランを有している。メンブランの可動質量および厚さの双方を減じると、電話域内の音声伝送損失が低減される。
【0016】
本発明の1つの局面によれば、アセンブリは、2つの接着支持システムの間に捕捉された微孔保護メンブランから成っている。第1の接着支持システムは片面または両面接着剤であってよいが、しかし、この接着支持システムの一次的な機能は、メンブランを対向する接着支持システムに定着することである。第2の接着支持システムは、両面接着剤である。この両面接着剤は、用途に応じてトランスデューサまたはハウジングのためのガスケットとして役立つ。両接着支持システムは、メンブランに結合されるので、結合された外側の領域によって取り囲まれた結合されていない内側の領域がメンブランに形成される。結合されていない領域において、2つの接着支持システムの組み合わせは、上流側の音圧波がメンプランを振動させ、メンブランの固体伝播エネルギー(機械的な振動)を、音響保護カバーアセンブリの下流側で空気伝播エネルギー(圧力波)に変換することを可能にする。これにより音響損失/減衰が小さくなる。伝送損失を最小化することに加えて、音響カバーアセンブリは、上述のような、メンブランのためのIP-57レベルの防水を可能にする。このような防水レベルが達成されるのは、メンブランに付加的な剛性および定着が提供されるからである。対向する接着支持システムは、接着剤からメンブランが剥離することにより、アセンブリが構造的に破壊されるのを防止する。」
「【0019】
-発明の詳細な説明-
図面を参照すると、いくつかの図面にわたって、対応部分が同一符号で示されており、本発明の音声伝送性の音響保護カバーアセンブリおよびガスケットシステムが、種々の構造で全体的に示されており、また、典型的な電子デバイス、例えば携帯電話に設けられたトランスデューサをカバーするのに使用するために寸法設定されている。本発明が本明細書中の態様に限定されるものではなく、これらの態様は単に例示したものにすぎず、本願の請求の範囲から逸脱することなしにこれらの態様に変更を加えるかまたは適合することができるのは、明らかである。」
「【0027】
保護メンブラン20は、低い表面張力の液体による漏れに対する抵抗を向上させるために、疎油性処理を施されることが望ましい。この処理は、弗素化ポリマーのコーティングにより行われる。このポリマーは例えば、米国特許第5385694号および同第5460872号の各明細書において教示されたような、ジオキソル/TFEコポリマー、米国特許第5462586号において教示されたようなペルフルオロアルキルアクリレートおよびペルフルオロアルキルメートルクリレート、フルオロオレフィンおよびフルオロシリコーンであるが、しかしこれに限定されるものではない。特に好ましい液体不透性かつ気体透過性のメンブランは、ジオキソル/TFEコポリマーおよびペルフルオロアルキルアクリレートポリマーで処理された延伸PTFE(「ePTFE)から成る微孔性メンブランである。
【0028】
保護メンブラン20は以下の性質を有しているべきである:約3~150μmの範囲内、好ましくは3~33μmの範囲内の厚さ;0.05~5μmの範囲、好ましくは0.5~1μmの範囲内の公称孔サイズ;20~99パーセントの範囲、好ましくは50~95パーセントの範囲内の孔容積;0.15~50ガーレ-(Gurley)秒の範囲、好ましくは1~10ガーレー秒の範囲内の空気透過度;5~200psiの範囲、好ましくは20~150psiの範囲内の水流入圧力抵抗;約1~40グラム/m2の範囲、好ましくは1~30グラム/m2の範囲内の質量;および、1メートルの水圧において0.5時間よりも長い、好ましくは1メートルの水圧において4時間よりも長い、長時間の水流入圧力継続時間。」
イ 甲3発明
上記アの記載事項から、甲第3号証には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
ここで、甲3発明の各構成には、(3a)~(3c)の符号を当審において付した。以下、構成3a~構成3cという。
〔甲3発明〕
(3a)携帯電話であって、
(3b)トランスデューサ、例えばマイクロフォンなどを有し、
(3c)音響保護カバーアセンブリは携帯電話に設けられたトランスデューサをカバーし、
(3d)アセンブリは、2つの接着支持システムの間に捕捉された微孔保護メンブランから成っており、
(3e)保護メンブランは延伸PTFE(「ePTFE」)から成り、約1~40グラム/m2の範囲、好ましくは1~30グラム/m2の範囲内の質量であり、300~3000Hzの電話周波数帯域で3dB以下の総合音響伝送損失を有する
(3a)携帯電話。
(4)甲第4号証
ア 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には次の記載がある。
「【0017】
本発明の防水通音膜では、複数の多孔質層(PTFE多孔質層)を、防水通音膜としての面密度が1~10g/m2となるように、積層および一体化している。ここで、少なくとも1つの多孔質層が、lμm以下の十分に小さい平均孔径を有する。そして、複数の多孔質層を積層および一体化していること、ならびに各多孔質層を、標準比重法により算出した数平均分子量が5.0×107以上のPTFEにより構成すること、によって、良好な通音性が得られる1~10g/m2の範囲に面密度を低く保ちながらも、高い引張強度(10~l00MPa)および突き刺し強度(面密度で除した値にして25~50kPa・m2/g)を実現している。」
「【0058】
図4Aおよび図4Bは、防水通音膜10が用いられた電気製品の一例を示している。図4Aおよび図4Bに示す電気製品は、携帯電話5である。携帯電話5の筐体9には、スピーカー6、マイク7、ブザー8などの発音部および受音部のための開口が設けられている。それらの開口を塞ぐ形で、防水通音膜10が内側から筐体9に取り付けられている。これにより、筐体9の内部への水や埃の侵入が阻止され、発音部および受音部が保護される。防水通音膜10の筐体9への取り付けは、筐体9との接合部から水が浸入することのないように、例えば、両面テープを用いた貼付、熱溶着、高周波溶着、超音波溶着などの方法により行われる。」
イ 甲4発明
上記アの記載事項から、甲第4号証には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
ここで、甲4発明の各構成には、(4a)~(4c)の符号を当審において付した。以下、構成4a~構成4cという。
〔甲4発明〕
(4a)防水通音膜が用いられた電気製品の一例である携帯電話であって、
(4b)携帯電話の筐体には、スピーカー、マイク、ブザーなどの発音部および受音部のための開口が設けられており、それらの開口を塞ぐ形で、防水通音膜が内側から筐体に取り付けられており、
(4c)防水通音膜では、複数の多孔質層(PTFE多孔質層)を、防水通音膜としての面密度が1~10g/m2となるように、積層および一体化している
(4a)携帯電話5。
(5)甲第5号証
ア 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には次の記載がある。
「上記の条件下で行なわれる場合に、300のフラジール数までの通気性を有する高度に多孔質の、非常に薄い延伸ポリテトラフルオロエチレン膜が製造される。
本発明により製造された代表的な膜(実施例3)の物理的性質が、表Iに示される。
本発明の製品は、極度の清浄度の迅速な達成を要する領域に使用される空気ろ過装置、外科用マスク、真空クリーナーフィルターもしくはバッグ、排気フィルター並びに一般に循環ろ過装置に用途がある。
表I
実施例3の膜の性質
フラジール数 196
密度(g/cc) 0.09
多孔度(%) 96
厚さ(ミル) 0.3
水の侵入圧力(psi) 0.36
0.3μmのエアゾール
によるろ過効率 46.9
マトリックス引張
強度(psi)* 21292±3002
*マトリックス引張強度は、最大破壊力を試料の断面積で割り、試料材料の比重で割られた固体ポリマーの比重の比を掛けることにより決定される。」(4頁左上欄9行~同右上欄13行)
イ 甲5技術
1ミルは2.54×10-5mであるから、上記アの実施例3の膜の厚さである「0.3ミル」は、2.54×10-5m×0.3=7.64×10-6mである。そして、当該膜の密度が0.09g/cc=0.09×106g/m3であるから、面密度は0.09×106g/m3×7.64×10-6m=0.6876g/m2である。
したがって、上記アの記載事項から、甲第5号証には、以下の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されている。
〔甲5技術〕
極度の清浄度の迅速な達成を要する領域に使用される空気ろ過装置、外科用マスク、真空クリーナーフィルターもしくはバッグ、排気フィルター並びに一般に循環ろ過装置に用途がある、0.6876g/m2の延伸ポリテトラフルオロエチレン膜。
(6)甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、「スマートフォン・タッチパネル部材の最新技術便覧」(甲第7号証)の「出版年月日等」が「2013.6」と記載されている。
(7)甲第9号証
ア 甲第9号証の記載事項
甲第9号証には次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
この発明はマイクパッケージに形成する音響穴の配置を工夫したシリコンマイクロホン(「MEMSマイクロホン」とも称される)に関し、マイクパッケージ内の複雑な共振モードを取り除いて高域特性を改善したものである。」
「【発明を実施するための形態】
【0019】
以下この発明の実施の形態を説明する。各実施の形態および実施例に示すシリコンマイクロホンはいずれも超音波マイクロホンとして使用できる性能を有しているものである。各実施の形態の音響穴は例えば金属製の蓋にエッチングにより形成することができる。」
「【0022】
〈実施の形態1の実施例および比較例〉
蓋22のみ相違する様々なシリコンマイクロホンを作製してマイク出力の周波数特性を測定した。マイクパッケージ12の外寸は前面側から見て長手方向が4mm、短手方向が3mmであり、厚みが1mmである。また蓋22の厚さは0.1mmである。図2(a)は実施の形態1の実施例に係るシリコンマイクロホン10である。シリコンマイクロホン10内部空間にはMEMSチップとLSIチップが収容されている。蓋22には音響穴24がMEMSチップの直上位置を外した位置に、MEMSチップの直上位置を取り囲んで全周に形成されている。音響穴24の直径は0.1mmであり、音響穴24による蓋22の開口率は9%である。図2(b)は図2(a)に示すシリコンマイクロホン10について測定したマイク出力の周波数特性である。この周波数特性は超音波域まで伸びており、大きなピークや大きなディップは生じていない。」
イ 甲9技術
上記アの記載事項から、甲第9号証には、以下の発明(以下、「甲9技術」という。)が記載されている。
〔甲9技術〕
超音波マイクロホンとして使用できる性能を有しているものであるシリコンマイクロホン(MEMSマイクロホン)。
(8)甲第10号証
ア 甲第10号証の記載事項
甲第10号証には次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
携帯電話機を利用するユーザは、電話機本体を耳に当てながらその姿勢やその位置を調整するが、それを助けるための技術として特許文献1に開示されたものがある。特許文献1には、受話器とユーザの口との距離を検出し、その距離が大きく、ユーザの話声の収音音声が不明瞭になる場合に、受話器の位置や姿勢の修正を促すことが開示されている。」
「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
携帯電話機に距離を検出するセンサ等の構成を備えると、装置全体の構成部品の数は必然的に増えてしまい、特に小型化・軽量化が重視されている携帯電話機において好ましくない。
そこで、本発明は、構成部品の数の増加を抑えつつ、ユーザの話声を明瞭に収音できるようにすることを目的とする。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下で述べる「携帯電話機」は、法令上の携帯電話機に限らず、これと同等の機能を有するPHS(Personal Handyphone System;登録商標)等の電話機も含み、ユーザが携帯可能で、無線通信を利用して送受信を行う電話機全体を指すものとする。
(1)構成
図1は、携帯電話機10の外観を示した図である。
携帯電話機10は、複数のボタンからなる操作部13や、各種情報を表示する表示部14を本体前面に有し、無線で他の通信機器との間でデータを遣り取りするためのアンテナ16を有する。また、表示部14の上方側には受音領域30が設けられている。ユーザは、通話相手の話声等の音声を聴くときには、受音領域30に自身の耳100を当てる。携帯電話機10の受音領域30の位置には、後述するスピーカ18が内蔵されており、ユーザは、スピーカ18から外部空間に放音された音声を聞き取る。操作部13の下方には送音領域40が設けられている。送音領域40の位置にはマイクロホン19が内蔵されており、ユーザの話声等の音声は孔HMを介して携帯電話機10内に伝搬し、マイクロホン19により収音される。このようにしてマイクロホン19により収音された音声は、相手方の電話機等に送られる。なお、携帯電話機10を把持して、ユーザが受音領域30に耳を当てるときには、送音領域40はユーザの口元付近に位置する。」
「【0014】
スピーカ18は、音声処理部17から供給された音声信号に応じて受話音等の音声を放音する放音手段である。マイクロホン19は、例えばシリコンマイクであり、ユーザの話声等の音声を収音し、収音した音声を表す音声信号を音声処理部17に出力する。このマイクロホン19は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により製造された超小型・軽量のマイクロホンである。
【0015】
ここで、マイクロホン19の構成について説明する。図3は、マイクロホン19の構成を示す分解斜視図であり、図4は、図3に示す切断線IV-IVで収音素子192を切断したときの断面を表した図である。
筐体191は、セラミックで箱型に成形されており、収音素子192及び信号処理回路193を収容する。収音素子192は、ダイアフラム1921、バックプレート1922、及び支持体1923を備えたコンデンサマイクロホンであり、いわゆるシリコンマイクである。ダイアフラム1921は、多結晶シリコン等の半導体膜であり、音を受けて振動する。ダイアフラム1921は、例えば円形であるが、円の一部を切除した形状等であってもよい。バックプレート1922は、支持体1923によって支持され、ダイアフラム1921に対して所定の間隔をもって対向するように固定して設けられている。バックプレート1922は、ダイアフラム1921と同様の半導体であり、ダイアフラム1921とは絶縁されている。バックプレート1922においても、その形状は例えば円形であるが、円の一部を切除した形状等であってもよい。ダイアフラム1921が音圧に応じた量だけ変位することにより、収音素子192の静電容量が変化する。すなわち、収音素子192は音圧を静電容量に変換する。信号処理回路193は、例えばアナログLSI(Large Scale integrated circuit)であり、収音素子192の静電容量の変化を電気信号に変換し、この電気信号を音声信号として音声処理部17に出力する。すなわち、信号処理回路193は、ダイアフラム1921の振動により変化する、ダイアフラム1921とバックプレート1922との間の静電容量に応じた音声信号を生成する生成手段の一例である。上面部材194は、その表面が略正方形の金属からなる平面状の部材であり、筐体191の開口部を塞ぐようにして設けられている。上面部材194の一部に孔Pが設けられており、この孔Pを介して筐体19I内部に伝搬する音を、マイクロホン19は収音する。
【0016】
以上の構成を有するマイクロホン19は、超音波を放音可能なスピーカとしても機能し、制御部11から供給される音声信号に応じてその放音を行う。具体的には、制御部11が音声処理部17により発振を行い、マイクロホン19のダイアフラム1921に超音波を放音させるための電気信号(以下、「超音波信号」という)を供給すると、ダイアフラム1921が超音波振動子となって振動し、その超音波信号に応じた超音波を放音する。
【0017】
図5は、制御部11及び音声処理部17の機能を示したブロック図である。同図に示す各機能は、制御部11及び音声処理部17のハードウェア又はソフトウェアによって実現される。
発振部175は、超音波信号をマイクロホン19に供給することにより、所定の参照音を放音させる放音制御を行う。発振部175は、発振回路によって所定の周波数fo(ここでは、40kHzとする)で発振・増幅して超音波信号を生成し、生成した超音波信号をマイクロホン19のダイアフラム1921に供給する。ダイアフラム1921は、供給された超音波信号に応じて振動し、超音波である参照音を放音する。
【0018】
収音音声取得部171は、マイクロホン19によって収音された音声を表す音声信号SAを取得し、取得した音声信号SAを測定部172に供給する。マイクロホン19による収音は、マイクロホン19(ダイアフラム1921)によって参照音が放音されないときに行われる。すなわち、発振部175によって上記放音制御が行われていない期間にマイクロホン19により収音が行われ、収音音声取得部171はその収音音声を表す音声信号SAを取得する。
【0019】
測定部172は、発振部175によって供給された音声信号に応じてマイクロホン19のダイアフラム1921が振勁して参照音が放音されてから、その参照音の反射音によりダイアフラム1921が振動してその反射音が収音されるまでの期間を測定し、その測定結果を判断部173に供給する。携帯電話機10の受音領域30がユーザの耳に当てられているときに放音された参照音の反射音の音声信号SAを、収音音声取得部171が取得する場合、マイクロホン19のダイアフラム1921から放音された参照音は、送音領域40の付近にあるユーザの口元を反射し、その反射音がマイクロホン19により収音される。すなわち、測定部172は、ダイアフラム1921及びユーザ間における超音波の往復の伝搬時間を測定することになる。
【0020】
判断部173は、測定部172から供給される測定結果に基づいてダイアフラム1921(すなわち、送音領域40)及びユーザ間の距離Lを特定し、その距離Lが決められた範囲内に含まれるか否かを判断して、その判断結果を報知部174及び発振部175に供給する。ダイアフラム1921及びユーザ間の距離Lについては、判断部173は、超音波センサと同じ原理に基づき求めることができる。具体的には、参照音および反射音は超音波であり、その伝搬速度も既知であるから、伝搬速度と測定部172によって測定された期間とに基づいて距離Lを求めることができる。なお、伝搬時間のみを用いるのではなく、参照音および反射音の音波の位相差を参照するようにしてもよい。
判断部173は、特定した距離Lが距離L1以上、且つ距離L2以下であれば(Ll≦L≦L2であれば)、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離が決められた範囲内であると判断する。一方、判断部173は、特定した距離がL1を下回るか(L<Ll)、又はL2を上回っていれば(L>L2)、距離Lが上記範囲内でないと判断する。」
イ 甲10技術
上記アの記載事項から、甲第10号証には、以下の発明(以下、「甲10技術」という。)が記載されている。
〔甲10技術〕
超音波信号が供給される、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により製造された超小型・軽量のマイクロホン。
(9)甲第11号証の記載事項
甲第11号証には次の記載がある。
「【0044】
(実施の形態2)
次に、MEMSマイクロホン100を携帯電話に使用する例について説明する。図4は、MEMSマイクロホン100が搭載された携帯電話150の外観斜視図である。図5は、携帯電話150のマイク部付近の要部断面図(図4中のE-E線断面図)である。図6は、リフロー前の携帯電話150のマイク部付近の要部断面図(図4中のE-E線断面図)であり、音孔にメラミン103gが充填された状態となっている。」
(10)甲第12号証の記載事項
甲第12号証には次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話端末には、いわゆるエレクトレットコンデンサマイクロホン(以下、ECMと表記する)が使用されている。このECMは、音声出力兼電源端子とグランド(GND)端子の二つの端子を備えており、また、音声出力ラインに例えば2.0V(ボルト)程度のバイアス電圧を重畳して当該マイクロホン自身の電源としている。
【0003】
一方、最近は、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)の技術を用いて開発された新しいタイプの表面実装に対応したマイクロホン(以下、MEMSマイクと表記する。)が使われ始めている。」
(11)甲第13号証の記載事項
甲第13号証には次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
従来、例えば、携帯電話やトランシーバ等の音声通信機器、又は音声認証システム等の入力された音声を解析する技術を利用した情報処理システム、或いは録音機器、といった音声入力装置にマイクロホンユニットが適用されている。近年においては、電子機器の小型化が進んでおり、小型・薄型化等が可能なマイクロホンユニットの開発が盛んである。
【0003】
小型・薄型化が可能なマイクロホンユニットとして、半導体製造技術を用いて作製されるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロホン装置が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。ここで、従来のマイクロホンユニットの構成例について説明する。」
6 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
(ア)構成Aについて
構成eの「マイクロフォン、スピーカーなどの音響トランスデューサ」は、「トランスデューサ」である点で構成Aと共通する。
しかしながら、トランスデューサが、本件発明1では「超音波トランスデューサ」であるのに対し、引用発明では「超音波トランスデューサ」との特定がなされていない点で、両者は相違する。
(イ)構成Bについて
引用発明の「防水通気部材」は、構成bの「PTFE多孔質膜」であり、構成aの延伸する工程Cを含む方法により製造されるものであるから、構成Bの「延伸PTFEメンブレン」に相当する。
そして、当該「防水通気部材」は、構成fにおいて、固定用部材2aにより筐体内部に配置される機器(例えばスピーカ)に接合されるものであるから、「前記トランスデューサに隣接して配された延伸PTFEメンブレン」である点で構成Bと共通し、上記(ア)の点で構成Bと相違する。
また、上記「PTFE多孔質膜」は、構成cにおいて「防水通気部材として供する場合、延伸面倍率は、通気性と耐水性とを両立させるためには、延伸面倍率を16倍以上140倍以下、特に30倍以上140倍以下、場合によっては50倍以上140倍以下とすることが好ましく」とされているものの、質量/面積比については具体的な特定がなされていない。
なお、引用文献1には、「PTFE多孔質膜」として、「防水通気部材用のPTFE多孔質膜」(段落0018等)に加え「エアフィルタ濾材用のPTFE多孔質膜」(段落0019等)が記載されている。段落0046には「エアフィルタの捕集層に適した改良されたPTFE多孔質膜」として「目付量が0.90g/m2以下」のものが記載されているが、当該エアフィルタの捕集層の構成は「防水通気部材」とは異質の機能を前提とするものであり、「防水通気部材」に係る構成とは認められない。
したがって、延伸PTFEメンブレンが、本件発明1では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する」ものであるのに対し、引用発明では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する」ものであるとの特定がなされていない点で、両者は相違する。
(ウ)構成Cについて
引用発明の「防水通気部材」は、構成dにおいて通気度F[cm3/秒/cm2]が関係式0.2≦F≦4.0を満たすことは特定されているものの、伝送損失については何ら特定がなされていない。
したがって、本件発明1が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成を備えているのに対し、引用発明が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成が特定されていない点で、両者は相違する。
(エ)構成Dについて
構成e及び構成fの、筐体において、内部にマイクロフォン、スピーカーなどの音響トランスデューサが収容されるとともに、開口部に防水通気部材が配置される構成を備えた構成gの電子機器は、音響トランスデューサにおいて電気信号と機械振動の変換を行うから、電気機械システムといえるものである。したがって、引用発明の電子機器は、電気機械システムである点で構成Dと共通する。
しかしながら、電気機械システムが、本件発明1では「微小電気機械システム」であるのに対し、引用発明では「微小電気機械システム」との特定がなされていない点で、両者は相違する。
(オ)一致点及び相違点
上記(ア)~(エ)から、本件発明1と引用発明との間の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
(A’)トランスデューサと、
(B’)前記トランスデューサに隣接して配された延伸PTFEメンブレンとを含む
(D’)電気機械システム。
(相違点1)
トランスデューサが、本件発明1では「超音波トランスデューサ」であるのに対し、引用発明では「超音波トランスデューサ」との特定がなされていない点。
(相違点2)
延伸PTFEメンブレンが、本件発明1では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する」ものであるのに対し、引用発明では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する」ものであるとの特定がなされていない点。
(相違点3)
本件発明1が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成を備えているのに対し、引用発明が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成が特定されていない点。
(相違点4)
電気機械システムが、本件発明1では「微小電気機械システム」であるのに対し、引用発明では「微小電気機械システム」との特定がなされていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
引用発明の「マイクロフォン、スピーカーなどの音響トランスデューサ」は、構成eにおいて「携帯電話に代表される小型の電子機器」での使用が想定されているところ、携帯電話等の小型の電子機器にMEMSマイクロホンを用いることが、甲第11号証~甲第13号証に記載されているように周知技術であるから、引用発明の音響トランスデューサとしてMEMSマイクロホンを用いることは、当業者が容易に着想しうることである。そして、当該着想の際に、MEMSマイクロホンとして周知の、可聴域より上の超音波帯信号(20kHz~l00kHz)を受信する能力も備えるもの(文献2周知技術)を用いることは、当業者が適宜採り得る事項にすぎない。
すると、引用発明において、周知技術を適用することにより上記相違点1及び相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
しかしながら、上記各引用文献及び各甲号証のいずれにおいても、超音波領域である50~92.5KHzの周波数における延伸PTFEメンブレンの伝送損失を改善するという課題が、記載も示唆もされていないから、引用発明において上記相違点3に係る本件発明1の構成を採用する動機があるとはいえない。
したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、文献2周知技術及びその他各甲号証に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2~本件発明4について
本件発明2~本件発明4も、上記相違点3に係る構成である構成Cを備えるものであるから、上記(1)と同じ理由により、引用発明、甲2周知技術及びその他各甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
7 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由の概要
特許異議申立書に記載された特許異議申立理由の概要は次のとおりである。なお、以下、ア~キの各理由をそれぞれ「理由ア」~「理由キ」という。
ア 本件発明1は、甲第3号証~甲第4号証を参照し、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。
イ 本件発明1は、甲第3号証~甲第4号証を参照し、甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。
ウ 本件発明1は、周知技術(甲第11号証~甲第13号証)を参照し、甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。
エ 本件発明1は、周知技術(甲第11号証~甲第13号証)を参照し、甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。
オ 本件発明2は、本件発明1と同様、甲第3号証~甲第4号証を参照し、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。また、本件発明2は、本件発明1と同様、周知技術(甲第11号証~甲第13号証)を参照し、甲第3号証に記載された発明又は甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。
カ 本件発明3は、本件発明1と同様、甲第3号証~甲第4号証を参照し、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。また、本件発明3は、本件発明1と同様、周知技術(甲第11号証~甲第13号証)を参照し、甲第3号証に記載された発明又は甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。
キ 本件発明4は、本件発明1と同様、甲第3号証~甲第4号証を参照し、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。また、本件発明3は、本件発明1と同様、周知技術(甲第11号証~甲第13号証)を参照し、甲第3号証に記載された発明又は甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。
(2)各理由の検討
理由ア~理由キについて以下検討する。
ア 理由アについて
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 構成Aについて
構成1aの「トランスデューサ・ユニット」は、トランスデューサである点で本件発明1と共通する。
しかしながら、トランスデューサが、本件発明1では「超音波トランスデューサ」であるのに対し、甲1発明では「超音波トランスデューサ」との特定がなされていない点で、両者は相違する。
b 構成Bについて
引用発明の、トランスデューサ・ユニットを備えたMEMSコンデンサ・マイクロフォン・パッケージ(構成1a)は、音響開口部を有し(構成1b)、開口部を通気装置によって覆い(構成1c)、通気装置は多孔性ポリマー・マトリックス材料で構成され(構成1d)、多孔性ポリマー・マトリックス材料として延伸PTFE膜が用いられるものであるから、前記「延伸PTFE膜」は、「トランスデューサに隣接して配された延伸PTFEメンブレン」である点で構成Bと共通する。
しかしながら、上記aの点に加え、延伸PTFEメンブレンが、本件発明1では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する」ものであるのに対し、甲1発明では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する」ものであるとの特定がなされていない点で、両者は相違する。
c 構成Cについて
甲1発明は、延伸PTFE膜の特性が「厚さ約35ミクロン、空孔サイズの平均値0.5ミクロン、ガーレー数約10秒である」ものであるものの、伝送損失については、何ら特定がなされていない。
したがって、本件発明1が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成を備えているのに対し、甲1発明が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成が特定されていない点で、両者は相違する。
d 構成Dについて
甲1発明のMEMSコンデンサ・マイクロフォン・パッケージは、「微小電気機械システム」である点で構成Dと一致する。
e 一致点及び相違点
上記a~dから、本件発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
(A’)トランスデューサと、
(B’)前記トランスデューサに隣接して配された延伸PTFEメンブレンとを含む
(D)微小電気機械システム。
(相違点1)
トランスデューサが、本件発明1では「超音波トランスデューサ」であるのに対し、甲1発明では「超音波トランスデューサ」との特定がなされていない点。
(相違点2)
延伸PTFEメンブレンが、本件発明1では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する」ものであるのに対し、甲1発明では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する」ものであるとの特定がなされていない点。
(相違点3)
本件発明1が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成を備えているのに対し、甲1発明が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成が特定されていない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
甲1発明のシリコンコンデンサマイクロフォンパッケージのトランスデューサはMEMS素子であるところ、当該MEMS素子に、MEMSマイクロホンとして周知の、可聴域より上の超音波帯信号(20kHz~l00kHz)を受信する能力も備えるもの(文献2周知技術)を用いることは、当業者が適宜採り得る事項にすぎない。
そうすると、甲1発明において、周知技術を適用することにより上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
しかしながら、各甲号証のいずれにおいても、超音波領域である50~92.5KHzの周波数における延伸PTFEメンブレンの伝送損失を改善するという課題が、記載も示唆もされていないから、甲1発明において上記相違点3に係る本件発明1の構成を採用する動機があるとはいえない。
したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても甲1発明及びその他の各甲号証に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 理由イについて
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 構成Aについて
構成2aの「トランスデューサ」は、トランスデューサである点で本件発明1と共通する。
しかしながら、トランスデューサが、本件発明1では「超音波トランスデューサ」であるのに対し、甲2発明では「超音波トランスデューサ」との特定がなされていない点で、両者は相違する。
b 構成Bについて
構成2eの「環境バリア」は、構成2cのトランスデューサ上に配置されたカバーに設けられた開口部の上部または内部に形成されたものであり、「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)」であるから、「トランスデューサに隣接して配されたPTFE」である点で構成Bと共通する。
しかしながら、上記aの点に加え、「PTFE」が、本件発明1では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する延伸PTFEメンブレン」であるのに対し、甲2発明では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する延伸PTFEメンブレン」であるとの特定がなされていない点で、両者は相違する。
c 構成Cについて
甲2発明は、開口部が「音波がシリコントランスデューサに達するよう設けられた」ものであるものの、開口部に含まれる「環境バリア」の伝送損失については、何ら特定がなされていない。
したがって、本件発明1が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成を備えているのに対し、甲2発明が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成が特定されていない点で、両者は相違する。
d 構成Dについて
甲2発明のシリコンコンデンサマイクロフォンパッケージは、構成2b、2c、2eにおいて、トランスデューサ及び環境バリアを含むカバーから構成され、構成2dにおいて、前記トランスデューサがMEMS素子と特定されているから、「微小電気機械システム」である点で構成Dと一致する。
e 一致点及び相違点
上記a~dから、本件発明1と甲2発明との間の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
(A’)トランスデューサと、
(B’)前記トランスデューサに隣接して配されたPTFEとを含む
(D)微小電気機械システム。
(相違点1)
トランスデューサが、本件発明1では「超音波トランスデューサ」であるのに対し、甲2発明では「超音波トランスデューサ」との特定がなされていない点。
(相違点2)
PTFEが、本件発明1では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する延伸PTFEメンブレン」であるのに対し、甲2発明では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する延伸PTFEメンブレン」であるとの特定がなされていない点。
(相違点3)
本件発明1が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成を備えているのに対し、甲2発明が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成が特定されていない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
甲2発明のシリコンコンデンサマイクロフォンパッケージのトランスデューサはMEMS素子であるところ、当該MEMS素子に、MEMSマイクロホンとして周知の、可聴域より上の超音波帯信号(20kHz~l00kHz)を受信する能力も備えるもの(文献2周知技術)を用いることは、当業者が適宜採り得る事項にすぎない。
すると、甲2発明において、周知技術を適用することにより上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
しかしながら、各甲号証のいずれにおいても、超音波領域である50~92.5KHzの周波数における延伸PTFEメンブレンの伝送損失を改善するという課題が、記載も示唆もされていないから、甲2発明において上記相違点3に係る本件発明1の構成を採用する動機があるとはいえない。
したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても甲2発明及びその他の各甲号証に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 理由ウについて
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
a 構成Aについて
構成3bの携帯電話のマイクロフォンは、トランスデューサである点で本件発明1と共通する。
しかしながら、トランスデューサが、本件発明1では「超音波トランスデューサ」であるのに対し、甲3発明では「超音波トランスデューサ」との特定がなされていない点で、両者は相違する。
b 構成Bについて
甲3発明の音響保護カバーアセンブリは、マイクロフォンなどのトランスデューサをカバーし(構成3c)、「保護メンブラン」が延伸PTFE(「ePTFE」)から成る(構成3e)ものであるから「トランスデューサに隣接して配された延伸PTFEメンブレン」である点で構成Bと共通する。
しかしながら、上記aの点に加え、延伸PTFEメンブレンの質量/面積比が、本件発明1では「1.5g/m2以下」であるのに対し、甲3発明では「約1~40グラム/m2の範囲、好ましくは1~30グラム/m2の範囲内」である点で、両者は相違する。
c 構成Cについて
延伸PTFEメンブレンの伝送損失が、本件発明1では「50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」のに対し、甲3発明では「300~3000Hzの電話周波数帯域で3dB以下の総合音響伝送損失を有する」(構成3e)というものである点で、両者は相違する。
d 構成Dについて
甲3発明の携帯電話は、マイクロフォン及び音響保護カバーアセンブリを備えるから、「電気機械システム」である点で構成Dと共通する。
しかしながら、電気機械システムが、本件発明1では「微小電気機械システム」であるのに対し、甲3発明では「微小電気機械システム」との特定がなされていない点で、両者は相違する。
e 一致点及び相違点
上記a~dから、本件発明1と甲2発明との間の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
(A’)トランスデューサと、
(B’)前記トランスデューサに隣接して配された延伸PTFEメンブレンとを含む
(D’)電気機械システム。
(相違点1)
トランスデューサが、本件発明1では「超音波トランスデューサ」であるのに対し、甲2発明では「超音波トランスデューサ」との特定がなされていない点。
(相違点2)
延伸PTFEメンブレンの質量/面積比が、本件発明1では「1.5g/m2以下」であるのに対し、甲3発明では「約1~40グラム/m2の範囲、好ましくは1~30グラム/m2の範囲内」である点。
(相違点3)
延伸PTFEメンブレンの伝送損失が、本件発明1では「50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」のに対し、甲3発明では「300~3000Hzの電話周波数帯域で3dB以下の総合音響伝送損失(TL)を有する」(構成3c)というものである点。
(相違点4)
電気機械システムが、本件発明1では「微小電気機械システム」であるのに対し、甲3発明では「微小電気機械システム」との特定がなされていない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
携帯電話等の小型の電子機器にMEMSマイクロホンを用いることは、甲第11号証~甲第13号証に記載されているように周知技術であるから、甲3発明の携帯電話のマイクロフォンとしてMEMSマイクロホンを用いることは、当業者が容易に着想しうることである。そして、当該着想の際に、MEMSマイクロホンとして周知の、可聴域より上の超音波帯信号(20kHz~l00kHz)を受信する能力も備えるもの(文献2周知技術)を用いることは、当業者が適宜採り得る事項にすぎない。
すると、甲3発明において、周知技術を適用することにより上記相違点1及び相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
しかしながら、延伸PTFEメンブレンの伝送損失について、甲3発明では「300~3000Hzの電話周波数帯域」が対象とされているものの、超音波領域である50~92.5KHzの周波数は対象とされていない。また、上記各引用文献及び各甲号証のいずれにおいても、超音波領域である50~92.5KHzの周波数における延伸PTFEメンブレンの伝送損失を改善するという課題が、記載も示唆もされていない。よって、甲3発明において上記相違点3に係る本件発明1の構成を採用する動機があるとはいえない。
したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても甲3発明及びその他の各甲号証に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 理由エについて
(ア)対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
a 構成Aについて
構成4bの携帯電話のマイクは、トランスデューサである点で本件発明1と共通する。
しかしながら、トランスデューサが、本件発明1では「超音波トランスデューサ」であるのに対し、甲4発明では「超音波トランスデューサ」との特定がなされていない点で、両者は相違する。
b 構成Bについて
甲4発明の携帯電話は、筐体にマイクの受音部のための開口が設けられ、当該開口に防水通音膜が取付けられ(構成4b)、防水通音膜はPTFE多孔質層を積層及び一体化したもの(構成4c)ものであるから、当該PTFE多孔質層の防水通音膜は、「トランスデューサに隣接して配されたPTFEメンブレン」である点で構成Bと共通する。
しかしながら、上記aの点に加え、PTFEメンブレンが、本件発明1では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する延伸PTFEメンブレン」であるのに対し、甲4発明では「面密度が1~10g/m」であり、かつ、「延伸PTFEメンブレン」であることが特定されていない点で、両者は相違する。
c 構成Cについて
甲4発明は、PTFE多孔質層の防水通音膜の伝送損失については、何ら特定がなされていない。
したがって、本件発明1が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成を備えているのに対し、甲4発明が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成が特定されていない点で、両者は相違する。
d 構成Dについて
甲4発明の携帯電話は、マイク及び防水通音膜を備えるから、「電気機械システム」である点で構成Dと共通する。
しかしながら、電気機械システムが、本件発明1では「微小電気機械システム」であるのに対し、甲4発明では「微小電気機械システム」との特定がなされていない点で、両者は相違する。
e 一致点及び相違点
上記a~dから、本件発明1と甲2発明との間の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
(A’)トランスデューサと、
(B’)前記トランスデューサに隣接して配されたPTFEメンブレンとを含む
(D’)電気機械システム。
(相違点1)
トランスデューサが、本件発明1では「超音波トランスデューサ」であるのに対し、甲4発明では「超音波トランスデューサ」との特定がなされていない点。
(相違点2)
PTFEメンブレンが、本件発明1では「1.5g/m2以下の質量/面積比を有する延伸PTFEメンブレン」であるのに対し、甲4発明では「面密度が1~10g/m」であり、かつ、「延伸PTFEメンブレン」であることが特定されていない点。
(相違点3)
本件発明1が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成を備えているのに対し、甲4発明が「該延伸PTFEメンブレンの伝送損失が50~92.5KHzの周波数において3dB未満である」との構成が特定されていない点。
(相違点4)
電気機械システムが、本件発明1では「微小電気機械システム」であるのに対し、甲4発明では「微小電気機械システム」との特定がなされていない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
携帯電話等の小型の電子機器にMEMSマイクロホンを用いることは、甲第11号証~甲第13号証に記載されているように周知技術であるから、甲4発明の携帯電話のマイクロフォンとしてMEMSマイクロホンを用いることは、当業者が容易に着想しうることである。そして、当該着想の際に、MEMSマイクロホンとして周知の、可聴域より上の超音波帯信号(20kHz~l00kHz)を受信する能力も備えるもの(文献2周知技術)を用いることは、当業者が適宜採り得る事項にすぎない。
すると、甲4発明において、周知技術を適用することにより上記相違点1及び相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
しかしながら、上記各引用文献及び各甲号証のいずれにおいても、超音波領域である50~92.5KHzの周波数における延伸PTFEメンブレンの伝送損失を改善するという課題が、記載も示唆もされていないから、甲4発明において上記相違点3に係る本件発明1の構成を採用する動機があるとはいえない。
したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても甲4発明及びその他の各甲号証に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
オ 理由オ~理由キについて
本件発明2~本件発明4も、上記相違点3に係る構成である構成Cを備えるものであるから、上記理由ア~理由エと同じ理由により、甲第1号証~甲第13号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
8 むすび
以上のとおりであるから、令和2年6月26日付けで特許権者に通知した取消理由に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-700314