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特許異議申立

2020-700334

スピーカー振動板

審判番号
2020-700334
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-251948
登録番号
6613875
請求日
2020年05月12日
審決日
2021年12月28日
公報発行日
2022年06月24日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】オンキヨー株式会社
  • 【異議申立人】神谷 高伸
  • 【異議申立人】宮川 貴浩
審判長/審判官
  • 審判長 清水 正一
  • 審判官 渡辺 努
  • 審判官 樫本 剛
分類
P1651.121-ZAA(H04R)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6613875号発明「スピーカー振動板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6613875号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第6613875号の請求項1、2に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6613875号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成27年12月24日の出願であって、令和1年11月15日付けでその特許権の設定登録(特許公報発行日 令和1年12月4日)がされた。 その特許についての本件特許異議申立の経緯は以下のとおりである。 令和2年 5月12日 特許異議申立人神谷高伸による請求項1、2に対する特許異議の申立て、甲第1号証~甲第3号証の提出 令和2年 6月 3日 特許異議申立人宮川貴浩による請求項1、2に対する特許異議の申立て、甲第1号証~甲第5号証の提出 令和2年 7月14日付け 取消理由通知 令和2年 9月 9日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出、乙第1号証~乙第3号証の提出 令和2年11月10日 特許異議申立人神谷高伸による意見書提出、参考資料1~4の提出 令和2年11月13日 特許異議申立人宮川貴浩による意見書提出、参考資料1~5の提出 令和3年 3月12日付け 取消理由通知(決定の予告) 令和3年 5月13日 特許権者による意見書提出、乙第4号証の提出 令和3年 8月 6日付け 特許異議申立人に対する審尋 令和3年 8月27日 特許異議申立人神谷高伸による回答書提出 令和3年 8月31日 特許異議申立人宮川貴浩による回答書提出、参考資料1の提出 第2 訂正の適否 1 訂正請求の趣旨 令和2年9月9日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による、特許権者が請求する訂正の趣旨は、「特許第6613875号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正事項 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 また、下線は訂正箇所である。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「該セルロースナノファイバーが、未酸化セルロースナノファイバーであり、」 と記載されているのを、 「該セルロースナノファイバーが、未酸化セルロースナノファイバーであり、針葉樹由来のセルロースから形成され、」 に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「木材パルプに未酸化セルロースナノファイバーを配合し、」 と記載されているのを、 「木材パルプに針葉樹由来のセルロースから形成された未酸化セルロースナノファイバーを配合し、」 に訂正する。 3 訂正の適否の判断 (1)一群の請求項について 訂正前の請求項1、2について、請求項2は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1、2に対応する訂正後の請求項1、2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正の目的 ア 訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項1のセルロースナノファイバーが、「針葉樹由来のセルロースから形成され」るものであることを特定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項2の未酸化セルロースナノファイバーが、「針葉樹由来のセルロースから形成され」るものであることを特定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1、2は、明細書の段落0011の「(前略)1つの実施形態においては、針葉樹由来のセルロースが、セルロースナノファイバーの原料として用いられる。(後略)」の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1、2は、上記(2)に示したように、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや発明の対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (5)独立特許要件について 訂正前の請求項1、2は、本件特許異議申立事件において特許異議申立人神谷高伸、宮川貴浩の双方から特許異議の申立てがされている請求項であるから、訂正事項1、2については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に基づき、独立特許要件は課されない。 4 むすび 以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的としており、かつ、同条第4項、並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。 したがって、訂正後の請求項〔1、2〕についての訂正を認める。 第3 本件訂正発明 本件訂正請求により訂正された本件特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明(以下、項番にしたがい「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 なお、説明のために、A~Gの記号を当審において付与した。以下、「構成A」~「構成G」と称する。 (本件訂正発明) 【請求項1】(本件訂正発明1) A 木材パルプと、セルロースナノファイバーとを含み、 B 該セルロースナノファイバーが、未酸化セルロースナノファイバーであり、針葉樹由来のセルロースから形成され、 C セルロースナノファイバーの含有割合が、該木材パルプ100重量部に対して、1重量部~20重量部である、 D スピーカー振動板。 【請求項2】(本件訂正発明2) E 木材パルプに針葉樹由来のセルロースから形成された未酸化セルロースナノファイバーを配合し、混抄すること、および F 混抄の後、所定の形状に成形することを含む、 G 請求項1に記載のスピーカー振動板の製造方法。 第4 取消理由通知(決定の予告)の概要 本件訂正発明1、2に対して、令和3年3月12日付けで特許権者に通知した取消理由のうち、文献1に記載された発明を主引例とした進歩性の取消理由の概要は、次のとおりである。 本件訂正発明1、2は、文献1に記載された発明、及び、参考文献A、C、Dに開示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (なお、本件訂正発明1の検討に際して、ナノファイバーの平均径(短径)は、10~100nm程度であることの説明として、文献2の記載を引用している。 また、本件訂正発明2の検討に際して、文献1に記載されている構成が本件訂正発明2の構成であることが明らかであることの説明として、文献4~6に記載された技術を周知の技術として提示している。 さらに、参考文献A、C、Dの用語の解釈に際して、参考文献Bを提示している。) よって、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 文献1:特開平3-120999号公報(特許異議申立人宮川貴浩が提示した甲第1号証) 文献2:特開2011-56456号公報(特許異議申立人神谷高伸が提示した甲第2号証、特許異議申立人宮川貴浩が提示した甲第3号証) 文献4:特開2007-208809号公報(特許異議申立人宮川貴浩が提示した甲第2号証) 文献5:国際公開第2014/068834号(特許異議申立人神谷高伸が提示した甲第1号証) 文献6:国際公開第2007/097206号(特許異議申立人神谷高伸が提示した甲第3号証) 参考文献A:特開2008-124962号公報(特許異議申立人神谷高伸が提示した参考資料3) 参考文献B:松村晴雄『ARCリポート 大きく花開くか セルロースナノファイバー』株式会社 旭リサーチセンター 2015年2月発行(特許異議申立人神谷高伸が提示した参考資料4) 参考文献C:特開平4-23597号公報(特許異議申立人宮川貴浩が提示した参考資料1) 参考文献D:特開2008-160640号公報(特許異議申立人宮川貴浩が提示した参考資料3) 第5 当審の判断 1 文献1、2、4~6及び参考文献A~Dについて (1)文献1 ア 文献1に記載された事項 文献1には、「スピーカ振動板」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 なお、以降の下線は、説明のために当審において付与したものである。 「本発明のスピーカ振動板は、セルロース質微細繊維と木材パルプとを混抄したシートからなることを特徴としている。」(2頁右上欄3~5行) 「本発明のスピーカ振動板は、この木材パルプにセルロース質微細繊維を添加する点に特徴がある。かかるセルロース質微細繊維の原料としては、高剛性の点より結晶化度の高いセルロース材料が好ましく、たとえば結晶化度60~90%程度の材料が好ましい。このため木材パルプ由来の材料よりも、リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いるのが好ましい。ただし、結晶化度の低いセルロース材料であっても、希鉱酸処理とか、加圧水高温処理などの前処理を施すことによって結晶化度を上げることは周知であり、これらを本発明のセルロース質微細繊維の原料として用いることができる。 セルロース材料は、通常、水分散液の状態で微細化される。微細化に用いられる装置としては、高圧ホモジナイザー、ディスクリファイナー、ジョルダン、ビーターなどを用いることができ、所望の叩解度の微細繊維がえられることを基準に選定すればよい。以上の装置のうち、高圧ホモジナイザーはとくに高剪断力がえられるため材料の微細化にとくに適しており、たとえばManton-Gaulin社製の高圧ホモジナイザーなどを好適に用いることができる。」(2頁右上欄11行~左下欄14行) 「この状態のセルロース質微細繊維は、その大部分が直径0.1μm以下の微細繊維になっており、パルプ繊維と混抄した振動板の断面の電子顕微鏡写真を観察することにより 0.1μm以下の繊維が存在することを確認することにより証明できる。 セルロース質微細繊維の木材パルプに対する添加量(木材パルプに対する固形物重量)は、本発明においてとくに限定されないが、既ね1~30重量%が目安であり、好ましくは5~20重量%、とくに好ましくは8~15重量%である。」(2頁右下欄5~15行) 「叩解された木材パルプ(結晶化度:40~60%)に前記セルロース質微細繊維を10重量%(木材パルプに対する固形物重量)添加し、抄紙した。 えられたシートについて、透気度(JIS P8117準拠)、伝播速度および密度を測定した。結果を第1表に示す。また、同様にして振動板形状に抄紙してえた振動板(截頭円錐体状。開口83mmφ、ネック26mmφ、高さ20mm)を組込んだスピーカの周波数特性を測定した。」(3頁右上欄2~10行) イ 文献1に記載された発明 上記アの記載事項を考慮すると、文献1には、以下の発明(以下、「文献1発明」という。)が記載されている。 なお、1a~1fは、当審で付したものであり、以下、「構成1a」~「構成1f」という。 (文献1発明) 1a セルロース質微細繊維と木材パルプとを混抄したシートからなるスピーカ振動板であって、 1b セルロース質微細繊維の原料としては、高剛性の点より結晶化度の高いセルロース材料が好ましく、たとえば結晶化度60~90%程度の材料が好ましいため木材パルプ由来の材料よりも、リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いるのが好ましいが、結晶化度の低いセルロース材料であっても、加圧水高温処理などの前処理を施すことによって結晶化度を上げることは周知であり、 1c セルロース材料は、通常、水分散液の状態で微細化され、微細化に用いられる装置としては、高圧ホモジナイザー、ディスクリファイナー、ジヨルダン、ビーターなどを用いることができ、所望の叩解度の微細繊維がえられることを基準に選定すればよく、高圧ホモジナイザーはとくに高剪断力がえられるため材料の微細化にとくに適しており、たとえばManton-Gaulin社製の高圧ホモジナイザーなどを好適に用いることができ、 1d セルロース質微細繊維は、その大部分が直径0.1μm以下の微細繊維になっており、 1e セルロース質微細繊維の木材パルプに対する添加量(木材パルプに対する固形物重量)は、既ね1~30重量%が目安であり、好ましくは5~20重量%、とくに好ましくは8~15重量%であり、 1f 叩解された木材パルプに前記セルロース質微細繊維を添加し、振動板形状に抄紙してえた 1a スピーカ振動板。 (2)文献2に記載された事項 文献2には、「バイオナノファイバーの製造方法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0011】 本発明の方法で製造されたナノファイバーの平均径(短径)は、10~100nm程度、好ましくは10~50nm程度、より好ましくは10~40nm程度、さらに好ましくは15~25nm程度、最も好ましくは20nm程度である。」 (3)文献4 ア 文献4に記載された事項 文献4には、「音響振動板及びその製造方法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 なお、説明のために、下線を当審において付与した。 「【0001】 本発明は、スピーカ等に用いられる音響振動板(振動板、センターキャップ等)及びその製造方法に関する。特に、平均繊維径が0.002~3μm、かつ平均繊維長が0.01~1mmであるミクロフィブリル化繊維を用いた音響振動板及びその製造方法に関し、なかでも、原料繊維を水または有機溶媒に分散し、高圧ホモジナイザーでせん断力を与えて得られたミクロフィブリル化繊維を用いた音響振動板及びその製造方法に関する。」 「【0013】 また本発明は、 (8)音響振動板がミクロフィブリル化繊維とパルプを含むものであって、パルプに対するミクロフィブリル化繊維の配合割合が乾燥重量で0.1~80wt%である(1)~(7)の何れかに記載の音響振動板を提供する。」 「【0035】 [実施例1] ミクロフィブリル化用原料繊維として芳香族ポリアミド繊維(東レ・デュポン社製、ケブラー)の3mmチョップドファイバー100gに水20Lを加えてよく攪拌した。得られた分散液を高圧ホモジナイザー(均質化装置;GAULIN社製15M-8TA)に常温で仕込み、430kg/cm2の圧力をかけて13回通過させスラリーを得た。このスラリーを脱液し、固形分20%の含水状態のミクロフィブリル化物を得た。得られたミクロフィブリル化繊維は平均繊維長0.6mm、平均繊維径0.2μmであった。このミクロフィブリル化繊維の走査型電子顕微鏡による観察結果を図2に示す。このミクロフィブリル化繊維15wt%を紙パルプ85wt%とで固形分1wt%の均一なスラリーを作成した。得られたスラリーで80メッシュの抄紙網で抄紙を行った。次いで開口83mmの金型で130℃で加熱及びプレスを行い乾燥させ、振動板形状にした。ついで得られた抄造体(音響振動板)について、密度、ヤング率及び伝播速度及び内部損失を表2に示す。」 イ 文献4に記載された技術 上記アの記載事項を考慮すると、文献4には、以下の技術(以下、「文献4技術」という。)が記載されている。 (文献4技術) スピーカ等に用いられる音響振動板に関する技術であって、 音響振動板がミクロフィブリル化繊維とパルプを含み、 ミクロフィブリル化繊維15wt%を紙パルプ85wt%とで固形分1wt%の均一なスラリーを作成し、得られたスラリーで80メッシュの抄紙網で抄紙を行い、次いで開口83mmの金型で130℃で加熱及びプレスを行い乾燥させ、振動板形状にした技術。 (4)文献5 ア 文献5に記載された事項 文献5には、「振動板と、ラウドスピーカ、および移動体装置、ならびに振動板の製造方法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 「[0006] スピーカ用の振動板は、繊維と、天然物由来の熱硬化性の樹脂を含んでいる。振動板の主材料は繊維であり、振動板は繊維を抄紙して作製されている。なお繊維には、天然繊維を含んでいる。そして、天然繊維は、天然物由来の物質である。さらに、樹脂も天然物が原料であるので、石油資源の使用量を抑制できる。また、CO2の増加の抑制にも貢献できる。また、振動板は、樹脂を含んでいるので、湿度や水分に対する耐性に優れる。」 「[0025] 図3Aは、本発明の実施の形態における振動板1の断面の概念図である。図3Bは、振動板1の断面のSEM観察図である。図4は、振動板1の要部の概念図である。なお、図4は、図3A、図3Bに示す内層部1Bの一部を拡大して示している。繊維2は、天然繊維2Aに加えて、さらに補助繊維2Bを含んでもかまわない。補助繊維2Bには、微細繊維を含むことが好ましい。微細繊維は、天然繊維2A同士を結び付けるバインダーとして働く。すなわち、微細繊維は、天然繊維2Aと絡み合い、天然繊維2A同士の結合力を強くしている。したがって、振動板1の弾性率を大きくできる。また、補助繊維2Bは、天然繊維2A間の隙間に入り込むことができる。その結果、振動板1のピンホールを抑制できるので、振動板1の音圧を大きくできる。」 「[0028] また、微細繊維には、バクテリアセルロースを含んでもかまわない。バクテリアセルロースは、バクテリアが生成するナノファイバである。バクテリアセルロースを生成するバクテリアには、たとえば、酢酸菌を用いることができる。なお、バクテリアセルロースを生成するバクテリアは、酢酸菌に限られない。例えば、アセトバクターアセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクターキシリナム(Acetobacter xylinum)、アセトバクターランセンス(Acetobacter rancens)、ザルチナベントリクリ(Sarcina ventriculi)、バクテリウムキシロイヂス(Bacterium xyloides)などのバクテリアを用いることもできる。」 「[0050] 振動板1の製造方法は、叩解工程12と、予備成形工程13と、熱プレス工程16とを含んでいる。なお、予備成形工程13は、抄紙工程13Aと、塗布工程13Bを含んでいる。さらに、振動板1の製造方法は、加工工程17を含んでもかまわない。」 「[0054] そのために、抄紙工程13Aでは、たとえば、以下のように抄紙することによって、抄紙体を作製している。天然繊維2Aを含む繊維2を水へ投入して、スラリーを作製する。次に、抄紙網の上に、スラリーを供給する。スラリー中の水分は、抄紙網を通って、抄紙網の下側へと流れ落ちる。なお、このとき、抄紙網の下側から、水分を真空吸引してもよい。この結果、天然繊維2Aが抄紙網上に堆積して、抄紙体が形成される。なお、スラリーを作製する際に、必要に応じて、スラリーへ強化材4や補助繊維2Bなどの充填材、防水剤、顔料などを適宜配合することが好ましい。この構成により、所望の音質の振動板1を製造プレス工程16では、熱プレスによって、予備成形物15を乾燥・成形することにより、振動板1を完成させている。すなわち、熱プレス工程16では、成形金型によって予備成形物15を所定の寸法となるように、圧縮している。また、成形金型を加熱することにより、樹脂3を加熱して、硬化している。このとき、予備成形物15に含まれた水分も蒸発させている。なお、成形金型の温度は、水が蒸発する温度以上であり、かつ樹脂の硬化温度以上であることが好ましい。」 イ 文献5に記載された技術 上記アの記載事項を考慮すると、文献5には、以下の技術(以下、「文献5技術」という。)が記載されている。 (文献5技術) スピーカ用の振動板は、繊維と、天然物由来の熱硬化性の樹脂を含み、 繊維2は、天然繊維2Aに加えて、さらに補助繊維2Bを含み、補助繊維2Bには、微細繊維を含み、微細繊維には、バクテリアセルロースを含み、バクテリアセルロースは、バクテリアが生成するナノファイバであり、 振動板1の製造方法は、予備成形工程13と、熱プレス工程16とを含み、予備成形工程13は、抄紙工程13Aを含み、 抄紙工程13Aでは、天然繊維2Aを含む繊維2を水へ投入して、スラリーを作製し、次に、抄紙網の上に、スラリーを供給し、この結果、天然繊維2Aが抄紙網上に堆積して、抄紙体が形成され、 スラリーを作製する際に、スラリーへ補助繊維2Bを適宜配合し、 熱プレス工程16では、熱プレスによって、予備成形物15を乾燥・成形することにより、振動板1を完成させている、すなわち、熱プレス工程16では、成形金型によって予備成形物15を所定の寸法となるように、圧縮している技術。 (5)文献6 ア 文献6に記載された事項 文献6には、「スピーカ用振動板、スピーカ用ダストキャップ、スピーカ用サブコーンおよびこれらを用いたスピーカおよびこれを用いた電子機器」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 「[0001] 本発明は各種音響機器等に使用されるスピーカを構成するスピーカ用振動板、スピー力用ダストキャップおよびスピーカ用サブコーン、ならびにこれらスピーカ用振動板、スピーカ用ダストキャップ、スピーカ用サブコーンを用いたスピーカ、さらにこのスピーカを用いた電子機器に関する。」 「[0005] 図9に示すように、スピーカ用振動板、ダストキャップの材料であるパルプを水の入つたビータ内に入れ、数日間細かく叩解する。次に、染料、バインダー、定着剤等の投入混合という薬剤処理工程を経て、抄紙槽投入 ・希釈 ・分散 ・抄紙という流れからなる抄紙工程に到る。次に、乾燥工程の前半工程である脱水工程により水分をある程度蒸発させ、更にプレス工程でプレス加熱加圧して更に水分の蒸発とプレスにより均質化を図る。更に、後半工程である抜き工程により、スピーカ用振動板では不要となる最外周部とボイスコイルを挿入するための中心孔部を金型により抜き、加工されて抄紙によるスピーカ用振動板は製作される。また、スピーカ用ダストキャップでは不要となる最外周部を金型により抜き、加工されて抄紙によるスピーカ用ダストキャップは製作される。」 「[0062] (実施の形態2) 本発明の実施の形態2の振動板、ダストキャップは、竹繊維から得られた主繊維を繊維量全体の 80wt%~95wt%に、 A繊維に該当する竹繊維を繊維量全体の5wt%~20wt%用いて、抄紙により作成したものである。 [0063] なお、この抄紙による振動板、ダストキャップの製造工程は、図9に示す方法と同様である。 [0064] なお、A繊維は枝状の羽毛化部分の径の50%以上が500nm以下であり、より好ましくは300nm以下であり、枝状の羽毛化部分のA繊維に占める体積占有率は20%以上であることが好ましい。」 イ 文献6に記載された技術 上記アの記載事項を考慮すると、文献6には、以下の技術(以下、「文献6技術」という。)が記載されている。 (文献6技術) スピーカ用振動板に関する技術であって、 振動板は、竹繊維から得られた主繊維を繊維量全体の80wt%~95wt%に、A繊維に該当する竹繊維を繊維量全体の5wt%~20wt%用いて、抄紙により作成したものであり、 A繊維は枝状の羽毛化部分の径の50%以上が500nm以下であり、より好ましくは300nm以下であり、 この抄紙による振動板の製造工程は、 スピーカ用振動板の材料であるパルプを水の入ったビータ内に入れ、数日間細かく叩解し、薬剤処理工程を経て、抄紙槽投入・希釈・分散・抄紙という流れからなる抄紙工程に到り、次に、乾燥工程の前半工程である脱水工程により水分をある程度蒸発させ、更にプレス工程でプレス加熱加圧して更に水分の蒸発とプレスにより均質化を図り、更に、後半工程である抜き工程により、スピーカ用振動板では不要となる最外周部とボイスコイルを挿入するための中心孔部を金型により抜き、加工されて抄紙によるスピーカ用振動板が製作される技術。 (6)参考文献Aに記載された事項 参考文献Aには、「スピーカ用抄紙振動板およびこれを用いたスピーカならびにこのスピーカを用いた電子機器および装置」に関し、以下の事項が記載されている。 「【0007】 従来のスピーカ用抄紙振動板の材料は、針葉樹を叩解して得られた材料が主流であった。 【0008】 そして、さらに性能向上のために、ミクロフィブリル化して使用したり、ポリエステル等の補強剤とともに使用されることが多かった。また補強剤として、炭素繊維やガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等を使用しているものもあった。」 (7)参考文献Bに記載された事項 参考文献Bには、以下の事項が記載されている。 「セルロースミクロフィブリルは太さが1~100nmと細いことから現在ではナノセルロースと呼ばれるようになった。」(1頁5~6行) (8)参考文献Cに記載された事項 参考文献Cには、「音響振動板及びその製造方法」に関し、以下の事項が記載されている。 「(1) ミクロフィブリル化したセルロースの抄造物よりなる音響振動板。」 (1頁左欄5~6行) 「(4) ミクロフィブリル化したセルロースがパルプをカナダ標準濾水度30ml以下になるまで叩解したセルロースであることを特徴とする請求項(3)記載の音響振動板の製造方法。」(1頁左欄12~15行) 「本発明は、ミクロフィブリル化したセルロースを抄紙することにより、ヤング率、引っ張り強度等の物理特性に優れた音響振動板を提供しようとするものである。」(1頁右欄9~12行) 「ところで、音響振動板には縦波伝播速度(音速C)が大きいことが要求され、したがって音響振動板材料は軽くてヤング率が大きい材料が有利である。 コーン紙のヤング率、引張り強度等の物理特性は、前述の通り叩解の程度によって決まり、ヤング率が大きいコーン紙を作成するためには、なるべくフィブリル化が進んだ叩解度の高いセルロースを使用する必要がある。すなわち、音響振動板として使用されるコーン紙においては、抄紙に使用するセルロースの叩解度が高ければ高いほどヤング率が高くなるものと考えられる。」(2頁左上欄18行~右上欄9行) 「本発明において、抄紙の際に使用するセルロースは、高度にミクロフィブリル化されたセルロースであって、ここではカナダ標準濾水度300ml以下のセルロースとする。カナダ標準濾水度300ml以下とするのは、カナダ標準濾水度300mlを超えると、抄紙される音響振動板のヤング率が不足すること、また抄紙に際して湿潤強度による問題も少なくなることによる。 上記カナダ標準濾水度が300m1以下のセルロ-ス(以下、ミクロフィブリルセルロースと称する。)としては、例えばパルプをビーター等によって機械的叩解したものが挙げられる。この場合、ビーターによる叩解条件(例えば叩解時間、叩解時に加わる力の強さ等)を適宜設定することで、容易にカナダ標準濾水度300ml以下とすることができる。」(2頁右下欄12行~3頁左上欄7行) 「また、乾燥後は、前記補強部材をミクロフィブリルセルロースの抄紙(コーン紙)から剥離し当該ミクロフィブリルセルロースからなる抄紙のみを音響振動板としてもよいし、そのまま一体化して紙-織布あるいは紙-不織布複合振動板としてもよい。」(3頁右下欄19行~4頁左上欄4行) 「針葉樹晒クラフトパルプ(N.B.KP)をホレンダー型ビーターでカナダ標濾水度300mlまで叩解した後、実施例1と同様の抄紙、絞り成形加工を行い、セルロースとポリエステル繊維織布からなる複合振動板を得た。」(4頁右下欄7~11行) (9)参考文献Dに記載された事項 参考文献Dには、「スピーカ用振動板およびこれを用いたスピーカならびにこのスピーカを用いた電子機器および装置」に関し、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 矩形形状、長方形形状、トラック形状、楕円形状のいずれかの外形を有するスピーカ用振動板であって、前記スピーカ用振動板は、材料の叩解度をミクロフィブリル状態まで小さくするとともに、叩解された繊維と、この叩解された繊維の表面から羽毛状に成長した微細繊維のうち、前記叩解された繊維よりも、前記叩解された繊維の表面から羽毛状に成長した微細繊維の絡みを強化した材料を含んで抄紙したスピーカ用振動板。」 「【0006】 これら抄紙振動板に用いられる材料であるパルプは、従来より針葉樹から叩解工程を経て得られたクラフトパルプが使用されている。」 「【0016】 この構成とすることにより、材料の叩解度をミクロフィブリル状態まで小さくして繊維の絡みを強化させて抄紙することで、他の材料との絡み合いを良好化して、スピーカ用振動板として十分な剛性や強靭性を与えることができる。」 「【0018】 以上のように本発明は、材料の叩解度をミクロフィブリル状態まで小さくするとともに、叩解された繊維と、この叩解された繊維の表面から羽毛状に成長した微細繊維のうち、叩解された繊維よりも、叩解された繊維の表面から羽毛状に成長した微細繊維の絡みを強化した材料を含んで抄紙して、矩形形状、長方形形状、トラック形状、楕円形状のいずれかの外形を有するスピーカ用振動板を構成したものであり、振動板の剛性や強靭性、ヤング率を向上させ、低音域での締りのある重低音、高音域特有の振動板剛性不足に起因する共振を低減したクリアな音質を提供するだけでなく、大出力化、高信頼性化をも可能とするスピーカ用振動板を実現することができる。」 「【0021】 図1に示すように、27は材料の叩解度をミクロフィブリル状態まで小さくするとともに、叩解された繊維と、この叩解された繊維の表面から羽毛状に成長した微細繊維のうち、叩解された繊維よりも、叩解された繊維の表面から羽毛状に成長した微細繊維の絡みを強化した材料を含んで抄紙して、トラック形状の外形を有するスピーカ用振動板を構成したものである。」 「【0024】 ミクロフィブリル化の平均繊維径は、より小さいことが好ましく、小さくすることで、繊維の絡み合いを良好化させることが可能となる。」 「【0026】 そして、叩解に要する時間は長く必要となるが、叩解度を平均繊維径が1μm以下としたり、さらには500nm以下とすることで、より大きな効果を発揮させることが可能となる。」 「【0032】 現在、スピーカ用の抄紙振動板として用いられる材料は、針葉樹が中心であり、世界の針葉樹不足に拍車をかける状態である。」 2 対比・判断 (1)本件訂正発明1と文献1発明との対比、判断 ア 対比 (ア)構成A、Dについて 構成1dより、文献1発明の「セルロース質微細繊維」は、「その大部分が直径0.1μm(100nm)以下の微細繊維」である。 ここで、上記1(2)に示されているように「ナノファイバーの平均径(短径)は、10~100nm程度」であるから、文献1発明の「直径0.1μm(100nm)以下の微細繊維」は、ナノファイバーであるといえる。 すなわち、文献1発明の「セルロース質微細繊維」は、構成Aの「セルロースナノファイバー」に相当する。 そうすると、構成1aの「セルロース質微細繊維と木材パルプとを混抄したシート」からなる「スピーカ振動板」は、構成A、Dの「木材パルプと、セルロースナノファイバー」とを含む「スピーカ振動板」に相当する。 (イ)構成Bについて 構成1cより、文献1発明のセルロース材料は、高圧ホモジナイザーを用いて微細化されるものである。 ここで、文献1発明のセルロース材料は、セルロース質微細繊維の材料であり、高圧ホモジナイザーを用いて微細化されることは、酸化処理を含むものではなく、上記(ア)でも検討したように、文献1発明の「セルロース質微細繊維」は、その大部分が直径0.1μm(100nm)以下の微細繊維であるから、高圧ホモジナイザーを用いて微細化することにより得られたその大部分が直径0.1μm(100nm)以下の微細繊維であるセルロース質微細繊維は、構成Bの「未酸化セルロースナノファイバー」に相当する。 また、構成1bより、文献1発明のセルロース材料は、木材パルプ由来の材料よりも、リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いるのが好ましいものであるが、結晶化度の低いセルロース材料であっても、加圧水高温処理などの前処理を施すことによって結晶化度を上げることは周知であることから、木材パルプ由来の材料を用いることを妨げるものではない。 したがって、本件訂正発明1と文献1発明は、「該セルロースナノファイバーが、未酸化セルロースナノファイバーであり、木材由来のセルロースから形成」される点で共通する。 しかし、セルロースナノファイバーが由来する木材に関して、本件訂正発明1は、針葉樹由来であるのに対し、文献1発明は、木材パルプ由来であって、針葉樹由来であることの限定がない点で相違する。 (ウ)構成Cについて 構成1eより、セルロース質微細繊維は、木材パルプに対する添加量が、好ましくは5~20重量%、とくに好ましくは8~15重量%であり、構成Cの「セルロースナノファイバーの含有割合が、該木材パルプ100重量部に対して、1重量部~20重量部」との範囲を満たすものである。 そうすると、本件訂正発明1と文献1発明は、構成Cを有する点で一致する。 (エ)一致点、相違点 上記(ア)~(ウ)より、本件訂正発明1と文献1発明は、以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) A 木材パルプと、セルロースナノファイバーとを含み、 B’該セルロースナノファイバーが、未酸化セルロースナノファイバーであり、木材由来のセルロースから形成され、 C セルロースナノファイバーの含有割合が、該木材パルプ100重量部に対して、1重量部~20重量部である、 D スピーカー振動板。 (相違点1) セルロースナノファイバーに関して、本件訂正発明1は、針葉樹由来であるのに対し、文献1発明は、木材パルプ由来であって、針葉樹由来であることの限定がない点。 イ 判断 (ア)相違点1について 上記1(6)、(8)、(9)に示した事項から、スピーカ振動板に用いられるミクロフィブリル化したセルロースとして、針葉樹由来のものを用いることは、参考文献A、C、Dに開示されているように周知技術と認められる。 そして、上記1(7)に示した事項によれば、セルロースミクロフィブリルはナノセルロースと呼ばれているので、スピーカ振動板に用いられるナノセルロースとして針葉樹由来のものを用いることは周知技術である。 文献1発明の木材パルプ由来の材料であるセルロース質微細繊維について、どのような木材を採用するかを検討する際に、スピーカ振動板に用いられるナノセルロースの材料として周知である針葉樹は、当業者により通常想起されうるものといえるから、木材パルプ由来の材料であるセルロース質微細繊維について、針葉樹由来のセルロースを用いるようにしたことは、当業者が容易に想到するものである。 (イ)小活 したがって、本件訂正発明1は、文献1発明、及び、参考文献A、C、Dに開示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件訂正発明2と文献1発明との対比、判断 ア 対比 (ア)本件訂正発明1の引用箇所について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用しており、当該引用箇所の対比は、上記(1)アと同様である。 (イ)構成Eについて 構成1a、構成1fより、文献1発明のスピーカ振動板は、「セルロース質微細繊維と木材パルプとを混抄したシート」からなり、「木材パルプに前記セルロース質微細繊維を添加し、振動板形状に抄紙してえた」ものである。 すなわち、文献1発明は、木材パルプにセルロース質微細繊維を配合し、混抄するものといえる。 そして、上記(1)ア(イ)の検討を援用すると、文献1発明の「セルロース質微細繊維」と構成Eの「未酸化セルロースナノファイバー」は、「木材由来のセルロースから形成された未酸化セルロースナノファイバー」である点で共通する。 したがって、本件訂正発明2と文献1発明は、「木材パルプに木材由来のセルロースから形成された未酸化セルロースナノファイバーを配合し、混抄すること、」である点で共通する。 しかし、未酸化セルロースナノファイバーに関して、本件訂正発明2は、針葉樹由来であるのに対し、文献1発明は、木材パルプ由来であって、針葉樹由来であることの限定がない点で相違する。 (ウ)構成Fについて 文献1発明の「木材パルプに前記セルロース質微細繊維を添加し、」「抄紙」 することは、木材パルプにセルロース質微細繊維を混ぜて、抄紙することであるから、構成Fの「混抄」することに相当する。 また、文献1発明の「振動板形状に」することは、構成Fの「所定の形状に成形」することに相当する。 ナノファイバーを配合し、混抄の後、所定の形状に成形することにより振動板を製造することは周知の技術であるから(必要であれば、文献4技術~文献6技術を参照。)、構成fの「木材パルプに前記セルロース質微細繊維を添加し、振動板形状に抄紙」することは、木材パルプにセルロース質微細繊維を混ぜて、抄紙した後に、振動板形状にすることは明らかである。 したがって、本件訂正発明2と文献1発明は、構成Fを有している。 (エ)構成Gについて 文献1発明の「スピーカ振動板」の発明は、構成1fに、スピーカ振動板の製造工程が示されており、スピーカ振動板の製造方法を含むものといえる。 したがって、文献1発明は、構成Gを有している。 (オ)一致点、相違点 上記(ア)~(エ)より、本件訂正発明2と文献1発明は、以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) E’ 木材パルプに木材由来のセルロースから形成された未酸化セルロースナノファイバーを配合し、混抄すること、および F 混抄の後、所定の形状に成形することを含む、 G 請求項1に記載のスピーカー振動板の製造方法。 (相違点1) 相違点1については、上記(1)ア(エ)と同様である。 (相違点2) 未酸化セルロースナノファイバーに関して、本件訂正発明2は、針葉樹由来であるのに対し、文献1発明は、木材パルプ由来であって、針葉樹由来であることの限定がない点。 イ 判断 (ア)相違点1について 相違点1については、上記(1)イ(ア)と同様である。 (イ)相違点2について 本件訂正発明2の「未酸化セルロースナノファイバー」は、構成Bの「セルロースナノファイバー」のことである。 未酸化セルロースナノファイバーに関する相違点である相違点2は、セルロースナノファイバーに関する相違点1と同じ相違点といえ、その判断は上記(1)イ(ア)と同様である。 (ウ)小活 したがって、本件訂正発明2は、文献1発明、及び、参考文献A、C、Dに開示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 特許権者の主張について (1)特許権者の主張 特許権者は、令和3年5月13日付けの意見書において、文献1に記載された発明を主引例とした進歩性の取消理由に対して、以下の主張をしている。 ア 本件訂正発明1に関する主張 「従って、文献1発明においては、「剛性が高いスピーカー振動板を提供する」という目的を達成するには、「結晶化度の高いセルロース材料が好ましく、木材パルプ由来の材料よりも、リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いるのが好ましい」。「ただし、結晶化度の低いセルロース材料であっても、希鉱酸処理とか、加圧水高温処理などの前処理を施すことによって結晶化度を上げること」により、「これら」、すなわち、木材パルプ由来の材料「を本発明のセルロース質微細繊維の原料として用いることができる」。 ここで、「加圧水高温処理」について、文献1には、何らの記載もない。また、例えば、「加圧水高温処理」を「J-Platpat」にて国内特許文献を全文検索しても、「加圧水高温処理」の記載がある文献は、文献1のみである。さらに、例えば、「加圧水高温処理」を検索サイトである「Google」にて検索しても、「加圧水高温処理」についての記述は発見されない。従って、「加圧水高温処理」とは、いかなる処理を指し示すか不明である。 従って、当業者は、処理内容が不明である「加圧水高温処理」によって木材パルプ由来の材料の結晶化度を上げることができないため、「剛性の高いスピーカー振動板を提供する」ことを目的とする文献1発明において、「木材パルプ由来の材料」を用いずに、「リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いる」のが通常であると考えられる。 すなわち、取消理由通知において、文献1発明について、「また、構成1bより、文献1発明のセルロース材料は、木材パルプ由来の材料よりも、リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いるのが好ましいものであるが、結晶化度の低いセルロース材料であっても、加圧水高温処理などの前処理を施すことによって結晶化度をあげることは周知であるから、木材パルプ由来の材料を用いることを妨げるものではない。」と認定されているが、文献1発明において、セルロース材料として、木材パルプ由来の材料を用いることが妨げられるため、文献1発明は、「セルロースナノファイバーが、木材由来のセルロースから形成されている」ものではない。 このため、取消理由通知において、一致点として、「B' 該セルロースナノファイバーが、未酸化セルロースナノファイバーであり、木材由来のセルロースから形成され、」と認定されており、相違点1として、「セルロースナノフイァバーに関して、本件訂正発明1は、針葉樹由来であるのに対し、文献1発明は、木材パルプ由来であって、針葉樹由来であることの限定がない点」と認定されているが、「該セルロースナノファイバーが、~、木材由来のセルロースから形成され」ている点は一致せず、この不一致点も相違点となり、相違点は、「セルロースナノファイバーに関して、本件訂正発明 1 は、針葉樹由来であるのに対し、文献1発明は、リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いる点」となる。 従って、取消理由通知において、「文献1発明の木材パルプ由来の材料であるセルロース質微細繊維について、どのような木材を採用するか検討する際に、スピーカ振動板に用いられるナノセルロースとして周知である針葉樹は、当業者により通常想起されうるものといえるから、木材由来のセルロースとして、針葉樹由来のものを用いるようにしたことは、当業者が容易に想到するものである。」と認定されているが、「文献1発明の」「セルロース質微細繊維」は、「木材由来の材料」ではないから、「文献1発明」において、「どのような木材を採用するかを検討する」という諭理付けは、成り立たないため、「文献1発明」において、「針葉樹由来のものを用いるようにしたことは、当業者が容易に想到するものである」との結論に至る論理付けも成り立たない。 すなわち、本件訂正発明1は、文献1発明、及び、参考文献A、C、Dに開示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。」(令和3年5月13日付け意見書4頁20行~6頁12行) イ 本件訂正発明2に関する主張 「上記したとおり、文献1発明において、セルロース材料として、木材パルプ由来の材料を用いることが妨げられるため、文献1発明は、「~木材由来のセルロースから形成された未酸化セルロースナノファイバー」ではない。 このため、取消理由通知において、一致点として、「E' 木材パルプに木材由来のセルロースから形成された未酸化セルロースナノファイバーを配合し、混抄すること、および」と認定されており、相違点2として、「セルロースナノファイバーに関して、本件訂正発明2は、針葉樹由来であるのに対し、文献1発明は、木材パルプ由来であって、針葉樹由来であることの限定がない点」と認定されているが、「~木材由来のセルロースから形成された未酸化セルロースナノファイバー」の点は一致せず、この不一致点も相違点となり、相違点は、「セルロースナノファイバーに関して、本件訂正発明2は、針葉樹由来であるのに対し、文献1発明は、リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いる点」となる。 従って、取消理由通知において、「未酸化セルロースナノファイバーに関する相違点である相違点2は、セルロースナノファイバーに関する相違点1と同じ相違点といえ」と認定されているが、と上記aと同様、この認定は成り立たない。すなわち、本件訂正発明2は、文献1発明、及び、参考文献A、C、D に開示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。」(令和3年5月13日付け意見書6頁14行~7頁4行) (2)特許権者の主張に対する検討 ア 本件訂正発明1に関する主張に対する検討 上記(1)アの主張のうち、第2、3段落の「ここで、・・・考えられる。」における「「加圧水高温処理」とは、いかなる処理を指し示すか不明である。従って、・・・処理内容が不明である「加圧水高温処理」によって木材パルプ由来の材料の結晶化度を上げることができないため、・・・文献1発明において、「木材パルプ由来の材料」を用いずに、「リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いる」のが通常であると考えられる。」との主張(以下、「主張1」という。)について、まず検討する。 「加圧水高温処理」という用語が示す処理は、文字通り、加圧水でかつ高温で処理することと理解でき、処理内容が不明であるとまではいえない。 そして、木質バイオマスの成分分離に際して、「加圧熱水処理」を行うことが、一般に周知の処理技術であり、そのことを考慮すると、文献1は当該「加圧熱水処理」のことを同様の意味を表す「加圧水高温処理」という用語を用いて記載しただけのことであると認められる。 さらに、文献1発明の1bには、セルロース質微細繊維の原料としては、結晶化度の高いセルロース材料が好ましいこと、木材パルプ由来の材料よりも、リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いるのが好ましいこと、結晶化度の低いセルロース材料であっても、加圧水高温処理などの前処理を施すことによって結晶化度を上げることは周知であることが記載されていることから、木材パルプ由来の材料であっても、加圧水高温処理を施すことにより、結晶化度を上げることが可能であるといえ、上記2(1)ア(イ)で検討したように、木材パルプ由来の材料を用いることを妨げるものではない。 以上より、主張1を認めることはできない。 そうすると、木材パルプ由来の材料を用いることを妨げるものではないので、上記(1)アの主張のうち、第4段落の「すなわち、・・・ものではない。」における「文献1発明において、セルロース材料として、木材パルプ由来の材料を用いることが妨げられるため、文献1発明は、「セルロースナノファイバーが、木材由来のセルロースから形成されている」ものではない。」、第5、6段落の「このため・・・成り立たない。」における「相違点は、「セルロースナノファイバーに関して、本件訂正発明1は、針葉樹由来であるのに対し、文献1発明は、リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いる点」となる。・・・「文献1発明の」「セルロース質微細繊維」は、「木材由来の材料」ではないから、「文献1発明」において、「どのような木材を採用するかを検討する」という諭理付けは、成り立たないため、「文献1発明」において、「針葉樹由来のものを用いるようにしたことは、当業者が容易に想到するものである」との結論に至る論理付けも成り立たない。」との特許権者の主張を認めることもできない。 したがって、上記(1)アの主張を認めることはできない。 イ 本件訂正発明2に関する主張に対する検討 上記アで検討したように、主張1を認めることはできない。 したがって、木材パルプ由来の材料を用いることを妨げるものではないので、上記(1)イの主張のうち、第1、2段落の「上記したとおり、・・・用いる点」となる。」における「文献1発明において、セルロース材料として、木材パルプ由来の材料を用いることが妨げられるため、文献1発明は、「~木材由来のセルロースから形成された未酸化セルロースナノファイバー」ではない。・・・相違点は、「セルロースナノファイバーに関して、本件訂正発明2は、針葉樹由来であるのに対し、文献1発明は、リンター、ラミー、麻、亜麻、バロニアなどを出発物質として用いる点」となる。」との特許権者の主張を認めることもできない。 したがって、上記(1)イの主張を認めることはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、文献1に記載された発明、及び、参考文献A、C、Dに開示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 したがって、請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700334

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