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特許異議申立

2021-700941

防水膜とこれを備える防水部材及び電子機器

審判番号
2021-700941
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-077793
登録番号
6853400
請求日
2021年09月30日
審決日
2022年06月30日
公報発行日
2022年09月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日東電工株式会社
  • 【権利者代理人】鎌田 耕一
  • 【異議申立人】永井 道雄
審判長/審判官
  • 審判長 千葉 輝久
  • 審判官 畑中 高行
  • 審判官 渡辺 努
分類
P1651.113-YAA(H04R) / P1651.121-YAA(H04R) / P1651.536-YAA(H04R) / P1651.537-YAA(H04R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6853400号発明「防水膜とこれを備える防水部材及び電子機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6853400号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 特許第6853400号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6853400号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和2年4月24日(優先権主張 平成31年4月26日)に出願したものであって、令和3年3月15日にその特許権の設定登録(特許公報発行日 令和3年3月31日)がされ、その後、令和3年9月30日に特許異議申立人 永井 道雄 により請求項1~10に対して特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年11月26日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和4年1月31日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、令和4年2月15日付けで特許法第120条の5第5項に基づく通知書を出し、特許異議申立人 永井 道雄 は、令和4年3月18日に意見書を提出したものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年1月31日付け訂正請求(以下「本件訂正」という。)による訂正の内容は、以下のとおりであり、以下「訂正事項」という。なお、下線部は、訂正箇所である。 設定登録時の明細書の段落【0091】に「次に、図7の(d)に示すように、試験片71及び支持体72A,72Bの積層体94を、支持体72Aの粘着剤層により、模擬筐体91における通音口92が形成された表面95に接合した。積層体94は、試験片71の主面に垂直な方向から見て、試験片71の透過領域が通音口92を覆うように、かつ支持体72Aが通音口92と重複しないように接合した。」と記載されているのを、「次に、図7の(d)に示すように、試験片71及び支持体72A,72Bの積層体94を、支持体72Aの粘着剤層により、模擬筐体91における通音口92が形成された表面95に接合した。積層体94は、試験片71の主面に垂直な方向から見て、試験片71の透過領域が通音口92内に位置するように接合した。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正の目的の適否について 訂正事項は、設定登録時の明細書の【0091】の「積層体94は、試験片71の主面に垂直な方向から見て、試験片71の透過領域が通音口92を覆うように、かつ支持体72Aが通音口92と重複しないように接合した。」を本件訂正により「積層体94は、試験片71の主面に垂直な方向から見て、試験片71の透過領域が通音口92内に位置するように接合した。」に変更するものである。なお、下線が訂正した部分である。 上記「積層体94」における「試験片71」の「透過領域」と「通音口92」との位置関係に関して、設定登録時の明細書には、以下の記載がある。 「【0083】 評価対象である防水膜を直径5.8mmの円形に打ち抜いて試験片71を得た。次に、得られた試験片71の双方の主面に対して、両面粘着テープ(日東電工製、No.57120B)により構成される支持体72A,72B(外径5.8mm及び内径1.3mmのリング状、厚さ0.2mm)をそれぞれ接合した。試験片71に対する支持体72A,72Bの接合は、両面粘着テープの粘着剤層により、各支持体72A,72Bの外周と試験片71の周とが一致するように実施した。試験片71における透過領域の形状及び面積は、上記所定の形状及びサイズを有する支持体72A,72Bの接合によって、試験片71の主面に垂直に見て円、及び1.3mm2となった。」 「【0088】 最大速度Vmaxの評価方法と同様にして、試験片71及び支持体72A,72Bの積層体を得た。また、防水膜A~Eについて、リング状の支持体72A,72Bの内径を1.5mm及び1.0mmに変更することで、透過領域の面積をそれぞれ1.8mm2及び0.79mm2に変更した積層体も併せて作製した。」 「【0090】 次に、図7の(c)に示すように、電子機器の筐体を模した模擬筐体91(ポリスチレン製、外形60mm×50mm×28mm、板厚2mm)の内部に、上記作製したスピーカーユニット85を収容した。具体的には、次の通りである。準備した模擬筐体91は、2つの部分91A,91Bからなり、部分91A,91Bは互いに嵌め合わせることができる。部分91Aには、内部に収容したスピーカーユニット85から発せられた音声を模擬筐体91の外部に伝達する通音口92(直径2mmの円形の断面を有する)と、スピーカーケーブル89を模擬筐体91の外部に導出する導通孔93とが設けられている。」 「【0091】 次に、図7の(d)に示すように、試験片71及び支持体72A,72Bの積層体94を、支持体72Aの粘着剤層により、模擬筐体91における通音口92が形成された表面95に接合した。積層体94は、試験片71の主面に垂直な方向から見て、試験片71の透過領域が通音口92を覆うように、かつ支持体72Aが通音口92と重複しないように接合した。」 これらの記載から、積層体94は、試験片71の主面に垂直に見て、リング状の支持体72A,72Bの内径(1.3mm、1.5mm又は1.0mm)に対応する直径を有する円形の透過領域を有し、支持体72Aの粘着剤層により、模擬筐体91における通音口92(直径2mmの円形の断面を有する)が形成された表面95に接合されることがいえる。 上記透過領域の直径と上記通音口92の直径とを対比すると、上記透過領域の直径は、上記通音口92の直径よりも小さいことから、上記【0091】に記載された「積層体94は、試験片71の主面に垂直な方向から見て、試験片71の透過領域が通音口92を覆うように、かつ支持体72Aが通音口92と重複しないように接合」することができない。 そして、上記透過領域の直径と上記通音口92の直径との正しい位置関係は、訂正事項のように「積層体94は、試験片71の主面に垂直な方向から見て、試験片71の透過領域が通音口92内に位置する」ことであることは明らかである。 したがって、訂正事項による訂正は、明細書の記載の不整合により明瞭でない記載を正すものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (2)新規事項の有無について 訂正事項は、設定登録時の明細書の【0083】、【0088】、【0090】及び【0091】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合している。 (3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記(1)で検討したとおり、訂正事項は、明細書の記載の不整合を正すものであり、特許請求の範囲の請求項1~10に関係するものではあるが、特許請求の範囲の記載の意味内容を直接的又は間接的に変更するものとはいえず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合している。 (4)明細書の訂正と関係する請求項について 訂正事項は、請求項1~10の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するから、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正によって、特許請求の範囲は訂正されていないので、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1~10」等という。)は、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の1~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(符号A1~O10は合議体が付した。以下、「構成A1」~「構成O10」等という。) (本件発明1) 【請求項1】 A1 音の透過領域の面積が1.3mm2のときに、 B1 周波数1kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下であり、 C1 周波数10kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下である、 D1 防水膜。 (本件発明2) 【請求項2】 A2 前記透過領域の面積が1.3mm2のときに、 E2 周波数200Hz以上10kHz以下の範囲の音に対する最大の挿入損失IL1.3/maxと最小 の挿入損失IL1.3/minとの差IL1.3/max-IL1.3/minが5.0dB以下である D2 請求項1に記載の防水膜。 (本件発明3) 【請求項3】 F3 厚さ方向の通気度が、JIS L1096:2010に定められた通気性測定A法(フラジ ール形法)に準拠して測定したフラジール通気度により表して、3.0cm3/(cm2・秒)未満である D3 請求項1又は2に記載の防水膜。 (本件発明4) 【請求項4】 A4 前記透過領域の面積が1.3mm2のときに、 G4 周波数100Hz~10kHzの音の透過時における面外方向への振動の最大速度Vmaxが 100μm/秒以上である D4 請求項1~3のいずれかに記載の防水膜。 (本件発明5) 【請求項5】 H5 ポリテトラフルオロエチレン膜を含む D5 請求項1~4のいずれかに記載の防水膜。 (本件発明6) 【請求項6】 I6 比表面積が6m2/g以上である D6 請求項1~5のいずれかに記載の防水膜。 (本件発明7) 【請求項7】 D7 請求項1~6のいずれかに記載の防水膜と、 J7 前記防水膜に接合された支持体と、 K7 を備える防水部材。 (本件発明8) 【請求項8】 J8 前記支持体が、 L8 前記防水膜の主面に垂直な方向から見て、前記防水膜の周縁部の形状に対応する形状を有す るとともに、当該周縁部に接合されており、 A8 前記方向から見て、前記防水膜における前記支持体との接合部により囲まれた領域として定 められる前記防水部材の透過領域の面積が1.3mm2以下である K8 請求項7に記載の防水部材。 (本件発明9) 【請求項9】 M9 開口が設けられた筐体と、 N9 前記筐体の外部から内部への前記開口を介した水の侵入を防ぐように前記筐体及び/又は 前記筐体の内部の部材に取り付けられた D9 請求項1~6のいずれかに記載の防水膜と、 O9 を備える電子機器。 (本件発明10) 【請求項10】 P10 電気信号と音声との変換を行う音声変換部が前記筐体に収容されており、 Q10 前記開口が、前記音声変換部と前記筐体の外部との間に位置している O10 請求項9に記載の電子機器。 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件特許に対して、当審が令和3年11月26日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由(サポート要件:特許法第36条第6項第1号) 請求項1には、「音の透過領域の面積が1.3mm2のときに、周波数1kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下であり、周波数10kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下である、防水膜」と記載されている。 明細書及び図面の【0083】、【0084】、【0088】、【0090】、【0091】、【0092】、【0096】、【図6】、【図7】によれば、支持体72Aが通音口92と重複しないように接合できず、測定時に支持体72Aの通音口92との重複部分の影響を受け、ブランク値についても影響を受けた値の測定を行っていることから、明細書及び図面には、防水膜の音の透過領域のみの挿入損失を得ることは記載されておらず、「防水膜」について、音の透過領域の面積が1.3mm2のときに、周波数1kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下であり、周波数10kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下である」ことは、記載されていない したがって、本件の請求項1~10に係る特許は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 よって、本件の請求項1~10に係る発明は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。 2 当審の判断 (1)本件訂正後の明細書及び図面には、以下の記載がある(下線は、当審にて付したものである。)。 「【0082】 [最大速度Vmax] 透過領域の面積が1.3mm2のときの周波数100Hz~10kHzの音の透過時における防水膜の面外方向への振動の最大速度Vmaxは、レーザードップラー振動計を用いて以下のように評価した。評価方法を図6を参照しながら説明する。 【0083】 評価対象である防水膜を直径5.8mmの円形に打ち抜いて試験片71を得た。次に、得られた試験片71の双方の主面に対して、両面粘着テープ(日東電工製、No.57120B)により構成される支持体72A,72B(外径5.8mm及び内径1.3mmのリング状、厚さ0.2mm)をそれぞれ接合した。試験片71に対する支持体72A,72Bの接合は、両面粘着テープの粘着剤層により、各支持体72A,72Bの外周と試験片71の周とが一致するように実施した。試験片71における透過領域の形状及び面積は、上記所定の形状及びサイズを有する支持体72A,72Bの接合によって、試験片71の主面に垂直に見て円、及び1.3mm2となった。次に、電子機器の筐体を模したポリカーボネートシート73(直径47mmの円形、厚さ1.0mm)及び音声変換部のハウジングを模したポリカーボネートシート75(直径47mmの円形、厚さ1.0mm)を、支持体72Bにおける試験片71側の面とは反対側の面、及び支持体72Aにおける試験片71側の面とは反対側の面にそれぞれ接合した。ポリカーボネートシート73,75の中央には、それぞれ通音口74,76(いずれも断面の形状が直径1.0mmの円)が設けられており、ポリカーボネートシート73,75は、試験片71の主面に垂直な方向から見て通音口74,76の中心が試験片71の中心と一致するように試験片71に接合した。なお、部材同士を接合する際には、接合する双方の部材の間に隙間が生じないようにした。この点は、これ以降に記載する部材同士の接合においても同様である。 【0084】 これとは別に、幅50mm、奥行60mm及び高さ28mmの直方体の外形を有するハウジング78(厚さ2.0mmのポリカーボネート板により各壁が構成)と、ハウジング78の底壁の内面に戴置されたスピーカー79(スター精密社製、SCC-16A)とを備える試験音発信装置82を準備した。試験音発信装置82の上壁81には、通音口80(断面の形状が直径2.0mmの円)が設けられており、スピーカー79は、上壁81の表面に垂直な方向から見て通音口80の中心とスピーカー79の出力部であるコーンの中心とが一致するように、上記内面に戴置した。 【0085】 次に、試験音発信装置82の上壁81の外面に、両面粘着テープ(日東電工製、No.57120B)により構成されるシール77(外径5.8mm及び内径1.3mmのリング状、厚さ1.3mm)を介して、試験片71、支持体72A,72B及びポリカーボネートシート73,75の積層体を接合した。当該積層体の接合は、試験片71の主面に垂直な方向から見て、試験片71の中心と試験音発生装置82の通音口80の中心とが一致するように実施した。上記接合した状態において、スピーカー79の表面と試験片71との距離は約21mmであった。 【0086】 次に、周波数100Hz~10kHzの音(通音口80における音圧レベル85dB)を、周波数を100Hzから上昇させながらスピーカー79から出力して試験片71を透過させるとともに、レーザードップラー振動計(ポリテック製、NLV-2500)のレーザー発振/受光器83を通音口74の上方に固定して、レーザー84を通音口74を介して試験片71の上面に照射し、上面にて反射したレーザー84をレーザー発振/受光器83により受光した。レーザー84の照射は、照射方向が試験片71の主面に垂直な方向となるように実施した。上記レーザードップラー振動計によれば、試験片71に照射し、かつ試験片71の上面で反射したレーザー84を付属の解析ソフトにより解析することで、音の透過により生じた試験片71の面外方向への振動の状態(最大速度Vmaxを含む)を評価可能である。このようにして、防水膜の最大速度Vmaxを評価した。なお、測定環境の温度は25±5℃とし、相対湿度は60±5%とした。 【0087】 [挿入損失] 防水膜の挿入損失は、電子機器の筐体を模した模擬筐体を用いて以下のように評価した。 【0088】 最大速度Vmaxの評価方法と同様にして、試験片71及び支持体72A,72Bの積層体を得た。また、防水膜A~Eについて、リング状の支持体72A,72Bの内径を1.5mm及び1.0mmに変更することで、透過領域の面積をそれぞれ1.8mm2及び0.79mm2に変更した積層体も併せて作製した。 【0089】 次に、図7の(a)及び(b)に示すように、模擬筐体の中に収容するスピーカーユニット85を作製した。具体的には、次の通りである。音源であるスピーカー86(スター精密社製、SCC-16A)と、ウレタンスポンジからなり、スピーカー86を収容するとともにスピーカーからの音声を不必要に拡散させない(評価対象である試験片71を通過することなく評価用マイクロフォンに入力する音声をできるだけ発生させない)ための充填材87A,87B,87Cと、を準備した。充填材87Aには、直径5mmの円形の断面を有する通音口88がその厚さ方向に設けられている。充填材87Bには、スピーカー86の形状に対応する形状を有する切り欠きと、スピーカーケーブル89を収容するとともにスピーカーユニット85外へスピーカーケーブル89を導出するための切り欠きとが設けられている。次に、充填材87C及び87Bを重ね、充填材87Bの切り欠きにスピーカー86及びスピーカーケーブル89を収容した。次に、通音口88を介してスピーカー86からスピーカーユニット85の外部に音声が伝達されるように充填材87Aを重ねて、スピーカーユニット85を得た(図7(b))。 【0090】 次に、図7の(c)に示すように、電子機器の筐体を模した模擬筐体91(ポリスチレン製、外形60mm×50mm×28mm、板厚2mm)の内部に、上記作製したスピーカーユニット85を収容した。具体的には、次の通りである。準備した模擬筐体91は、2つの部分91A,91Bからなり、部分91A,91Bは互いに嵌め合わせることができる。部分91Aには、内部に収容したスピーカーユニット85から発せられた音声を模擬筐体91の外部に伝達する通音口92(直径2mmの円形の断面を有する)と、スピーカーケーブル89を模擬筐体91の外部に導出する導通孔93とが設けられている。部分91A,91Bを互いに嵌め合わせることによって、通音口92及び導通孔93以外に開口がない空間が模擬筐体91内に形成される。作製したスピーカーユニット85を部分91B上に配置した後、部分91Aと部分91Bとを嵌め合わせて、模擬筐体91内にスピーカーユニット85を収容した。このとき、スピーカーユニット85の通音口88と部分91Aの通音口92とを重ね合わせて、双方の通音口88,92を介してスピーカー86から模擬筐体91の外部に音声が伝達されるようにした。スピーカーケーブル89は導通孔93から模擬筐体91の外部に引き出し、導通孔93はパテによって塞いだ。 【0091】 次に、図7の(d)に示すように、試験片71及び支持体72A,72Bの積層体94を、支持体72Aの粘着剤層により、模擬筐体91における通音口92が形成された表面95に接合した。積層体94は、試験片71の主面に垂直な方向から見て、試験片71の透過領域が通音口92内に位置するように接合した。 【0092】 次に、図7の(e)に示すように、試験片71及び支持体72A,72Bの積層体における試験片71の透過領域を覆うように、支持体72Bの粘着剤層によりマイクロフォン96(Knowles Acoustics社製、SPU0410LR5H)を接合した。マイクロフォン96を接合したときのスピーカー86とマイクロフォン96との距離は、22mmであった。次に、スピーカー86及びマイクロフォン96を音響評価装置(B&K社製、Multi-analyzerSystem 3560-B-030)に接続し、評価方式としてSSR(Solid State Response)モード(試験信号20Hz~20kHz、sweep up)を選択して実行し、試験片71の挿入損失を評価した。挿入損失は、音響評価装置からスピーカー86に入力された試験信号と、マイクロフォン96で受信された信号とから自動的に求められる。試験片71の挿入損失を評価するにあたっては、試験片71を取り除いた場合の挿入損失の値(ブランク値)を予め求めておいた。ブランク値は、周波数1kHzにおいて-24dB、周波数10kHzにおいて-35dBであった。試験片71の挿入損失は、音響評価装置での測定値からこのブランク値を引いた値である。挿入損失の値が小さいほど、スピーカー86から出力された音の通音特性が維持されていることになる。」 「【0096】 【表3】 [図:0001388390000001.jpg] 」 「【図6】 [図:0001388390000002.jpg] 」 「【図7】 [図:0001388390000003.jpg] 」 これらの記載によれば、明細書及び図面には、挿入損失を評価する方法として、最大速度の評価方法と同様にして、試験片71及び支持体72A,72Bの積層体を得る方法、すなわち、評価対象である防水膜を直径5.8mmの円形に打ち抜いて試験片71を得て、支持体72A,72Bは、外径5.8mm及び内径1.3mmのリング状であり、試験片71に対する支持体72A,72Bの接合は、両面粘着テープの粘着剤層により、各支持体72A,72Bの外周と試験片71の周とが一致するように実施し、また、電子機器の筐体を模した模擬筐体91の部分91Aに、内部に収容したスピーカーユニット85から発せられた音声を模擬筐体91の外部に伝達する直径2mmの円形の断面を有する通音口92を設け、試験片71及び支持体72A,72Bの積層体94を、支持体72Aの粘着剤層により、模擬筐体91における通音口92が形成された表面95に接合し、積層体94は、試験片71の主面に垂直な方向から見て、試験片71の透過領域が通音口92内に位置するように接合する方法が記載されている。 また、試験片71の挿入損失を評価するにあたっては、試験片71を取り除いた場合の挿入損失の値(ブランク値)を予め求め、試験片71の挿入損失は、音響評価装置での測定値からこのブランク値を引いた値とすることが記載されている。 さらに、この評価方法によって、透過領域の面積が1.3mm2のときに、それぞれ、周波数1kHzの音に対する挿入損失が2.7dBであり周波数10kHzの音に対する挿入損失が3.6dBである防水膜A(実施例1)、周波数1kHzの音に対する挿入損失が1.8dBであり周波数10kHzの音に対する挿入損失が4.9dBである防水膜B(実施例2)、周波数1kHzの音に対する挿入損失が3.1dBであり周波数10kHzの音に対する挿入損失が-2.5dBである防水膜C(実施例3)、周波数1kHzの音に対する挿入損失が2.7dBであり周波数10kHzの音に対する挿入損失が3.0dBである防水膜D(実施例4)が得られることが記載されている。 (2)サポート要件についての判断 上記第3における請求項1の記載と上記(1)における本件訂正後の明細書及び図面の記載とを対比すると、次のとおりである。 本件訂正後の明細書及び図面における「試験片71」は、請求項1における「防水膜」に相当する。 そして、上記(1)における当該防水膜を定義するパラメータの評価方法に基づくと、通音口92の上方が防水膜の音の透過領域だけでなく支持体72Aの一部にも覆われることになり、支持体72Aが通音口92と重複しないように接合できず、測定時に支持体72Aの通音口92との重複部分の影響を受け、ブランク値についても、通音口92の上方が支持体72Aの一部に覆われているため、支持体72Aの通音口92との重複部分の影響を受けることとなるものの、当該影響を受ける上記(1)の評価方法によって、上記(1)の実施例1~4の防水膜A~Dに対する表3に記載された透過領域の面積における挿入損失の値を得ている。 ここで、パラメータの値を得るためには、当該パラメータの値を得るための方法が必要であることは明らかであり、当該パラメータの値である挿入損失の値を得るための方法が、上記(1)における評価方法である。 してみると、本件訂正後の明細書及び図面では、上記(1)における防水膜を定義するパラメータの評価方法によって、防水膜A~Dについて、表3に記載された挿入損失の値を得ており、当該挿入損失の値は、音の透過領域の面積が1.3mm2のときに、周波数1kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下であり、周波数10kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下の値であるから、本件の請求項1~10に係る特許におけるパラメータは、発明の詳細な説明に記載した上記(1)における防水膜を定義するパラメータの評価方法によって得られたものといえる。 また、上記評価方法によって得られたパラメータにより定義される防水膜により、「音の透過領域のさらなる縮小にも対応可能な防水膜の提供」(【0006】)という本件特許の課題を解決している。 よって、本件の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されているものといえることから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしており、取り消すことはできない。 また、本件の請求項2~10は、請求項1を直接又は間接に引用する請求項であり、請求項2に記載されたパラメータも上記評価方法によって得られたものであるから、同様に、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしており、取り消すことはできない。 (3)特許異議申立人の意見について ア 特許異議申立人の意見の概要 特許異議申立人は、令和4年3月18日付け意見書において、以下のように意見を述べている。 「マイクロフォン96に上から押さえ付けられている重複部分Aが振動できず音を透過しないとしても、重複部分Aが音を反射してその反射音がマイクロフォン96に届く音(重複部分Aで囲まれた部分を通過する音)に干渉することは明らかです。」(意見書2ページ18行~21行) 「重複部分Aの面積が増減することで、スピーカーユニット85からマイクロフォン96までの空間の形状が変化します。このため、重複部分Aから発生する音の反射だけでなく重複部分Aを含めた空間全体から発生する音の反射、反響、共鳴等の影響も考慮すれば、マイクロフォン96で検出される音は、重複部分Aの面積の増減に応じて変化することは明らかです。」(意見書2ページ22行~26行) 「訂正した明細書の段落[0092]には、防水膜(試験片71)を取り除いた場合の音の挿入損失の値であるブランク値が周波数1kHzにおいて-24dB、周波数10kHzにおいて-35dBとなる旨が記載されています。よって、重複部分Aの面積及び重複部分Aに囲まれた部分の面積によってブランク値が変化していません。」(意見書3ページ12行~16行) 「訂正した明細書に記載された評価方法のように、重複部分Aの面積及び重複部分Aに囲まれた部分の面積に関わらず一定のブランク値を用いて防水膜(試験片71)の音の挿入損失の値(測定値からブランク値を引いた値)を求めても正確な値を得ることができません。よって、訂正後の明細書の段落0096~0098の表3~表5に記載された実施例1~4及び比較例の挿入損失の値が全て誤りであることは明らかです。」(意見書3ページ20行~25行) 「したがって、「(…前略…)ブランク値の評価を含む音の損入損失の評価には重複部分Aは影響しない」旨の特許権者の主張が失当であることは明らかです。このため、訂正した明細書等には、防水膜の音の透過領域のみの挿入損失を得ることは記載されておらず、このことは、訂正した明細書等にその記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる程度のものであるとはいえません。」(意見書3ページ26行~4ページ2行) イ 特許異議申立人の意見についての判断 上記アの特許異議申立人の意見について検討すると、上記(2)のように、本件訂正後の明細書及び図面には、上記(1)における防水膜を定義するパラメータの評価方法によって、防水膜A~Dについて、表3に記載された挿入損失の値を得ることが記載されており、当該評価方法によって得られた挿入損失の値には、重複部分Aによる影響が含まれている。 してみると、上記評価方法に重複部分の影響が含まれていても、本件の請求項1~10に係る発明は、上記重複部分の影響が含まれている評価方法によって得られたパラメータによって特定されるものであるから、上記特許異議申立人の意見を採用することはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の概要 (1)申立理由1(新規性:特許法第29条第1項第3号) 請求項1、7乃至10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるため、新規性が欠如しており、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。 (2)申立理由2(進歩性:特許法第29条第2項) (2-1)請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであって進歩性が欠如しており、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (2-2)請求項5に係る発明は、甲第1号証及び甲2号証に記載された発明と甲1号証及び甲2号証に記載された周知技術から当業者が容易に想到し得たものであって進歩性が欠如しており、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (2-3)請求項7乃至10に係る発明は、甲第1号証及び甲2号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであって進歩性が欠如しており、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (3)申立理由3(実施可能要件:特許法第36条第4項第1号) (3-1)発明の詳細な説明には、請求項1、2に係る発明の裏付けとなる、具体的な実施例及び比較例として実施例1乃至4と比較例とが記載されているが、これらの評価方法に誤りがあり評価結果が正確でないため、実施例1乃至4が請求項1に係る発明に含まれ、且つ、比較例が請求項1に係る発明に含まれないか否かを当業者が特定できない。 よって、請求項1、2に係る発明、及び請求項1、2に係る発明に従属する請求項3乃至10に係る発明は、発明の詳細な説明に当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。 (3-2)発明の詳細な説明には、所謂パラメータ特許発明である請求項1乃至4、6について、各パラメータの限界値(最大値又は最小値)が得られた実施例について記載も示唆も一切なされておらず、このような実施例が作り出せるか否かを当業者が特定できない。 よって、請求項1乃至4、6及び請求項1乃至4、6に従属する請求項5、7乃至10は、発明の詳細な説明に当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。 (4)申立理由4(サポート要件:特許法第36条第6項第1号) 発明の詳細な説明には、パラメータ特許発明である本件特許発明1乃至4、6について、各パラメータの限界値が得られた実施例について記載も示唆も一切なされておらず、これらの実施例について所望の効果が得られることについて、当業者が理解できるように記載されていない。 よって、請求項1乃至4、6及び本件特許発明1乃至4、6に従属する本件特許発明5、7乃至10は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 2 証拠の表示 甲第1号証:特開2015-65639号公報 甲第2号証:特開2015-119474号公報 3 各甲号証の記載事項及び各甲号証に記載される発明又は技術 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証には、以下の記載がある。(下線は合議体が付した。以下同じ。) 「【0001】 本発明は、防水性および通音性を兼ね備える防水通音膜と、当該防水通音膜を備える防水通音部材、電子機器、電子機器用ケースおよび防水通音構造とに関する。」 「【0007】 本発明の目的の一つは、外部からの水の浸入を防ぎながら、有効面積を減少させた場合においても当該膜を伝達される音の特性が確保された防水通音膜の提供である。」 「【0040】 有効面積が小さくなればなるほど、防水通音膜を伝達する音の特性が低下し、より具体的には、例えば音圧損失が上昇する。しかし、防水通音膜1は、有効面積が0.8mm2(例えば、直径1mmの円形であるとき)またはそれ未満のときに、100Hz以上3kHz以下の音域における音圧損失が10dB以下を確保しうる。」 「【0080】 最初に、図8Aに示すように、携帯電話の筐体を模した模擬筐体91(ポリスチレン製、外形60mm×50mm×28mm)を準備した。模擬筐体91には、スピーカーから出力した音を筐体の外部へと伝える開口となるスピーカー取付穴92(径が2.5mmの円形)と、スピーカーケーブルの導通孔93とが各々1箇所設けられている以外は開口がない。次に、径が5mmの円形である通音孔が形成されたウレタンスポンジ製の充填材94にスピーカー95(スター精密製、SCG-16A)を埋め込んで、筐体91の内部に収容した。スピーカー95のスピーカーケーブル96は導通孔93から筐体91の外部に導き出し、その後、導通孔93はパテで塞いだ。 【0081】 次に、ポリエチレン系の発泡体からなる両面テープ97(日東電工製、No.57120B、厚さ0.2mm)、PETフィルム98(厚さ0.1mm)およびPETからなる両面テープ99(日東電工製、No.5603、厚さ0.03mm)を準備し、それぞれ、内径2.5mmおよび外径5.8mmのリング状と、内径1.0mmおよび外径5.8mmのリング状との2種類のリングに打ち抜き加工した。これとは別に、各実施例および比較例で作製した防水通音膜100を直径5.8mmの円形に打ち抜いた。次に、内径2.5mmのリング状の両面テープ97、円形の防水通音膜100、内径2.5mmのリング状の両面テープ99、および内径2.5mmのリング状のPETフィルム98を、この順に、外形を揃えて積層し、音響特性評価用の防水通音部材A(防水通音膜の有効面積が4.9mm2)を作製した。これとは別に、内径1.0mmのリング状の両面テープ97、円形の防水通音膜100、内径1.0mmのリング状の両面テープ99、および内径1.0mmのリング状のPETフィルム98を、この順に、外形を揃えて積層し、音響特性評価用の防水通音部材B(防水通音膜の有効面積が0.8mm2)を作製した。 【0082】 次に、作製した防水通音部材を、当該部材が備えるポリエチレン系発泡体の両面テープ97を用いて、模擬筐体91の外側に、開口92を防水通音膜100が完全に覆うように取り付けた。その際、防水通音膜100と両面テープ97との間、および両面テープ97と模擬筐体91との間に隙間ができないようにした。 【0083】 次に、スピーカーケーブル96とマイク(Knowles Acoustic製、Spm0405Hd4H-W8)とを音響評価装置(B&K製、Multi-analyzer System 3560-B-030)に接続し、模擬筐体91のスピーカー95から21mm離れた位置にマイクを配置した。次に、評価方式としてSSR分析(試験信号20Hz~10kHz、sweep)を選択、実行し、防水通音膜100の音響特性(THD、音圧損失)を評価した。音圧損失は、音響評価装置からスピーカー95に入力した信号と、マイクロフォンを介して検出された信号とから、自動的に求められる。これとは別に、防水通音膜を配置しない状態で、同様にしてブランクの音圧損失を求めておき、防水通音膜を配置した際の音圧損失からブランクの音圧損失を引いたものを、当該防水通音膜の特性である音圧損失(挿入損失)とした。挿入損失が小さいほど、防水通音膜を伝達される音の特性が確保されていると判断できる。これを、実施例および比較例で作製した防水通音膜について、当該膜の有効面積が異なる防水通音部材A,Bのそれぞれについて実施した。」 「【0103】 (比較例3) 厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の市販のPETフィルム(it4ip製、Track etched membrane)を準備した。当該フィルムの膜厚は41μm、貫通孔の径は10.0μm、貫通孔の密度(孔密度)は2.2×105個/cm2であった。 【0104】 次に、準備した当該フィルムを、温度を80℃に保持した水酸化カリウム(濃度5重量%)/エタノール(濃度20重量%)水溶液に180分間浸漬することで貫通孔の径を拡張した後、当該水溶液から取り出して水洗し、乾燥させた。この段階で、フィルムの膜厚は35μm、貫通孔の径は15.0μmであった(孔密度は変化なし)。 【0105】 次に、乾燥後のフィルムを黒色染料を用いて染色し、黒色フィルムとした。次に、作製した黒色フィルムを撥液処理液中に3秒間浸漬した後、処理液から引き上げて常温で30分間放置して乾燥させ、樹脂フィルムの表面に撥液層を形成して防水通音膜を得た。撥液処理液は、撥液剤(信越化学製、X-70-029C)を濃度1.2重量%となるように希釈剤(信越化学製、FSシンナー)で希釈して調製した。 【0106】 このようにして得た防水通音膜における樹脂フィルムの貫通孔の径は15.0μm、気孔率は35.3%、孔密度は2.2×105個/cm2、防水通音膜の面密度は31.3g/m2、通気度は30cm3/(cm2・秒)、耐水圧は3kPa、厚さは35μm、撥油性は「有り」であった。」 【0108】 (比較例5) 比較例5では、PTFEの延伸多孔質膜から構成される防水通音膜を作成した。 「【0114】 各実施例および比較例で作製した防水通音膜の特性を、以下の表1にまとめる。また、各実施例および比較例で作製した防水通音膜の音響特性(音圧損失)を、図9A~図10Cに示すとともに、周波数1KHzの音に対する音圧損失、周波数3kHzの音に対する音圧損失および100Hz以上3kHz以下の音域における音圧損失の最大値を、以下の表2に示す。ただし、表1における比較例4,5の「貫通孔の径」の欄について、比較例4,5で作製した防水通音膜は延伸多孔質膜により構成されるため、その平均孔径(μm)を示す。また、比較例4,5の孔密度は評価できないため、「-(未測定)」で示す。また、図9A~図9Cは、防水通音膜の有効面積が4.9mm2のとき(防水通音部材Aとしたとき)の結果であり、図9Aは実施例および比較例の双方を、図9Bは実施例のみを、図9Cは比較例のみを、それぞれ示す。図10A~図10Cは、防水通音膜の有効面積が0.8mm2のとき(防水通音部材Bとしたとき)の結果であり、図10Aは実施例および比較例の双方を、図10Bは実施例のみを、図10Cは比較例のみを、それぞれ示す。」 「【0116】 【表2】 [図:0001388390000004.jpg] 」 【0114】及び表2の記載によると、有効面積が4.9mm2のときの比較例3の1kHzでの音圧損失は、0.0dBであり、有効面積が0.8mm2のときの比較例3の1kHzでの音圧損失は、0.2dBであり、有効面積が4.9mm2のときの比較例5の1kHzでの音圧損失は、1.7dBであり、有効面積が0.8mm2のときの比較例5の1kHzでの音圧損失は、9.8dBである。 「【図8A】 [図:0001388390000005.jpg] 」 「【図8B】 [図:0001388390000006.jpg] 」 「【図9C】 [図:0001388390000007.jpg] 」 【0114】及び図9Cの記載によると、有効面積が4.9mm2のときの比較例3の10kHzでの音圧損失は、約7.0dBであり、有効面積が4.9mm2のときの比較例5の10kHzでの音圧損失は、約1.8dBである。 「【図10C】 [図:0001388390000008.jpg] 」 【0114】及び図10Cの記載によると、有効面積が0.8mm2のときの比較例3の10kHzでの音圧損失は、約5.0dBであり、有効面積が0.8mm2のときの比較例5の10kHzでの音圧損失は、約23.5dBである。 イ 上記アの記載から、甲第1号証には、防水通音膜に関する以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。(符号a~hは合議体が付した。以下、「構成a」~「構成h」等という。また、各構成の末尾に、対応する段落番号や図番号を付した。) (甲1発明) 「a 携帯電話の筐体を模した模擬筐体91(ポリスチレン製、外形60mm×50mm×28mm)を準備し、模擬筐体91には、スピーカーから出力した音を筐体の外部へと伝える開口となるスピーカー取付穴92(径が2.5mmの円形)と、スピーカーケーブルの導通孔93とが各々1箇所設けられている以外は開口がなく、径が5mmの円形である通音孔が形成されたウレタンスポンジ製の充填材94にスピーカー95(スター精密製、SCG-16A)を埋め込んで、筐体91の内部に収容し、スピーカー95のスピーカーケーブル96は導通孔93から筐体91の外部に導き出し、その後、導通孔93はパテで塞ぎ、(【0080】、図8A) b ポリエチレン系の発泡体からなる両面テープ97(日東電工製、No.57120B、厚さ0.2mm)、PETフィルム98(厚さ0.1mm)およびPETからなる両面テープ99(日東電工製、No.5603、厚さ0.03mm)を準備し、それぞれ、内径2.5mmおよび外径5.8mmのリング状と、内径1.0mmおよび外径5.8mmのリング状との2種類のリングに打ち抜き加工し、これとは別に、各実施例および比較例で作製した防水通音膜100を直径5.8mmの円形に打ち抜き、内径2.5mmのリング状の両面テープ97、円形の防水通音膜100、内径2.5mmのリング状の両面テープ99、および内径2.5mmのリング状のPETフィルム98を、この順に、外形を揃えて積層し、音響特性評価用の防水通音部材A(防水通音膜の有効面積が4.9mm2)を作製し、これとは別に、内径1.0mmのリング状の両面テープ97、円形の防水通音膜100、内径1.0mmのリング状の両面テープ99、および内径1.0mmのリング状のPETフィルム98を、この順に、外形を揃えて積層し、音響特性評価用の防水通音部材B(防水通音膜の有効面積が0.8mm2)を作製し、(【0081】、図8B) c 作製した防水通音部材を、当該部材が備えるポリエチレン系発泡体の両面テープ97を用いて、模擬筐体91の外側に、開口92を防水通音膜100が完全に覆うように取り付け、その際、防水通音膜100と両面テープ97との間、および両面テープ97と模擬筐体91との間に隙間ができないようにし、(【0082】、図8B) d スピーカーケーブル96とマイク(Knowles Acoustic製、Spm0405Hd4H-W8)とを音響評価装置(B&K製、Multi-analyzer System 3560-B-030)に接続し、模擬筐体91のスピーカー95から21mm離れた位置にマイクを配置し、評価方式としてSSR分析(試験信号20Hz~10kHz、sweep)を選択、実行し、防水通音膜100の音響特性(THD、音圧損失)を評価し、音圧損失は、音響評価装置からスピーカー95に入力した信号と、マイクロフォンを介して検出された信号とから、自動的に求められ、これとは別に、防水通音膜を配置しない状態で、同様にしてブランクの音圧損失を求めておき、防水通音膜を配置した際の音圧損失からブランクの音圧損失を引いたものを、当該防水通音膜の特性である音圧損失(挿入損失)とし、これを、実施例および比較例で作製した防水通音膜について、当該膜の有効面積が異なる防水通音部材A,Bのそれぞれについて実施し、(【0083】、図8A) e 有効面積が4.9mm2のときの比較例3の1kHzでの音圧損失は、0.0dBであり、有効面積が0.8mm2のときの比較例3の1kHzでの音圧損失は、0.2dBであり、(【0114】、【0116】、表2) f 有効面積が4.9mm2のときの比較例3の10kHzでの音圧損失は、約7.0dBであり、(【0114】、図9C) g 有効面積が0.8mm2のときの比較例3の10kHzでの音圧損失は、約5.0dBである、(【0114】、図10C) h 防水通音膜100。」 (2)甲第2号証 ア 甲第2号証には、以下の記載がある。 「【0002】 携帯電話、スマートフォン、デジタルビデオカメラ等の電子機器では、音響装置が筐体に収容されている。これらの筐体は、音声の通過を許容するための開口を有する。水が筐体内に入り込むことを防ぐために、この開口に音の通過を許容しつつ水の通過を阻止する防水通音膜を取り付けることが行われている。防水通音膜としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜が用いられることが多い。」 「【0013】 図1は本実施形態の防水通音膜10の断面図であり、図2は防水通音膜10の斜視図である。防水通音膜10は、音の通過を許容する通音領域13cと、通音領域13cを囲む周縁領域13pと、を有している。通音領域13cは、単層のPTFE多孔質膜11により構成されている。周縁領域13pは、PTFE多孔質膜11と、粘着層12と、を備えている。粘着層12は、粘着剤のみにより構成されていてもよいが、両面テープであってもよい。」 イ 上記アの記載から、甲第2号証には、防水通音膜に関する以下の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されている。 (甲2技術事項) 「防水通音膜の通音領域は、単層のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜により構成されている」 4 申立理由1(新規性:特許法第29条第1項第3号)及び申立理由2(進歩性:特許法第29条第2項)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)構成A1について 甲1発明の構成bには、「防水通音膜の有効面積」が記載されており、防水通音膜は、防水しながら音を通過させる膜であって、その有効面積は、音を通過させる領域の面積であるといえることから、上記「防水通音膜の有効面積」は、本件発明1の構成A1における「音の通過領域の面積」に相当するといえる。 そして、甲1発明の構成b、e~gには、「防水通音膜の有効面積」が「4.9mm2」のとき及び/又は「0.8mm2」のときが記載されており、本件発明1の構成A1における「音の透過領域の面積が1.3mm2」のときとは、「音の透過領域の面積が特定の値のとき」という点で共通する。 しかしながら、甲1発明では、上記「特定の値」が、「1.3mm2」のときについて明示されていない点で、本件発明1の構成A1と相違する。 (イ)構成B1について 甲1発明の構成dに「音圧損失(挿入損失)」とあることから、甲1発明の構成eの「有効面積が4.9mm2のときの比較例3の1kHzでの音圧損失は、0.0dBであり、有効面積が0.8mm2のときの比較例3の1kHzでの音圧損失は、0.2dBであ」ることにおける「1kHzでの音圧損失は、0.0dB」及び「1kHzでの音圧損失は、0.2dB」は、本件発明1の構成B1の「周波数1kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下であり」に相当する。 (ウ)構成C1について 甲1発明の構成dに「音圧損失(挿入損失)」とあることから、甲1発明の構成gの「有効面積が0.8mm2のときの比較例3の10kHzでの音圧損失は、約5.0dBであ」ることにおける「10kHzでの音圧損失は、約5.0dB」は、本件発明1の構成C1の「周波数10kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下である」に相当する。 (エ)構成Dについて 甲1発明の構成bのようにして作成された「防水通音膜100」は、防水する膜であることから、本件発明1の構成D1の「防水膜」と同様の「防水膜」であるといえる。 以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> A1’ 音の透過領域の面積が特定の値のときに、 B1 周波数1kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下であり、 C1 周波数10kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下である、 D1 防水膜。 <相違点> 本件発明1は、「音の透過領域の面積が1.3mm2のとき」の挿入損失が特定されているのに対し、甲1発明では、「音の透過領域の面積が1.3mm2のとき」の挿入損失について特定されていない点。 イ 特許法第29条第1項第3号(申立理由1)についての判断 上記相違点について検討する。 甲1号証には、上記3(1)アにあるように「有効面積が小さくなればなるほど、防水通音膜を伝達する音の特性が低下し、より具体的には、例えば音圧損失が上昇する。」(【0040】)と記載されている。 そのため、甲1発明の構成gにおける「有効面積が0.8mm2のときの比較例3の10kHzでの音圧損失」が、「約5.0dB」に上記【0040】の記載を当てはめると、本件発明1の構成A1における「音の透過領域の面積が1.3mm2」のときは、甲1発明の「有効面積が0.8mm2のとき」より有効面積が大きくなっていることから、甲1発明では、音圧損失が下降するものと考えられる。 しかしながら、甲1発明の構成fによると「有効面積が4.9mm2のときの比較例3の10kHzでの音圧損失は、約7.0dB」となっており、「有効面積が0.8mm2のとき」より有効面積が大きくなっているのに音圧損失が上昇している。 してみると、甲1発明の比較例3では、上記【0040】の記載は当てはまらず、「有効面積が0.8mm2のとき」より有効面積が大きい、「音の透過領域の面積が1.3mm2」のときについても「周波数10kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下」になるか否か不明である。 よって、上記相違点は実質的な相違点であるから、甲1発明は本件発明1ではない。 ウ 特許法第29条第2項(申立理由2(2-1))についての判断 上記イのように、甲1発明の比較例3では、上記【0040】の記載は当てはまらず、「有効面積が0.8mm2のとき」より有効面積が大きい、「音の透過領域の面積が1.3mm2」のときについても「周波数10kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下」になるか否か不明であるから、甲1発明において、「音の透過領域の面積が1.3mm2のとき」の挿入損失を特定することが、当業者にとって容易に想到し得るとはいえない。 よって、本件発明1は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のように主張している。 「甲第1号証の明細書の段落[0040]には、「有効面積が小さくなればなるほど、防水通音膜を伝達する音の特性が低下し、より具体的には、例えば音圧損失が上昇する。」と記載されている。よって、比較例3の防水通音膜の有効面積が0.8mm2から1.3mm2まで大きくなれば音圧損失が低下することは、当業者であれば甲第1号証から導き出せる事項であることは明らかである。具体的には、比較例3について、防水通音膜の有効面積が1.3mm2のときに周波数1kHzの音に対する音圧損失が0.2dB以下であり、周波数10kHzの音に対する音圧損失が5.0dB以下であることは、当業者であれば甲第1号証から導き出せる事項であることは明らかである。よって、上記の事項は甲第1号証に記載されているに等しい事項である。」(特許異議申立書10ページ3行~12行) 「本件特許発明1は、甲第1号証に記載の上記構成(a1)、(b1)、(c1)、(d1)に基づいて、当該技術分野に属する当業者が容易になし得たものである。 ゆえに、本件特許発明1は、先行技術文献から当業者が容易に想到し得たものであって進歩性が欠如しており、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」(特許異議申立書13ページ34行~14ページ5行) (イ)特許異議申立人の主張についての判断 上記イ及びウで判断したように、甲1発明の比較例3では、上記【0040】の記載は当てはまらず、「有効面積が0.8mm2のとき」より有効面積が大きい、「音の透過領域の面積が1.3mm2」のときについても「周波数10kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下」になるか否か不明である。 そのため、上記特許異議申立人の主張である、「周波数10kHzの音に対する音圧損失が5.0dB以下であることは、当業者であれば甲第1号証から導き出せる事項であることは明らか」とはいえず、また、本件発明1が、甲第1号証の記載に基づいて、当業者が容易になし得たものでもなく、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。 (2)本件発明5について ア 特許法第29条第2項(申立理由2(2-2))についての判断 甲1号証には、上記3(1)アにあるように「(比較例5)比較例5では、PTFEの延伸多孔質膜から構成される防水通音膜を作成した。」(【0108】)と記載され(以下「甲1技術事項」という。)、また、甲2号証にも、上記3(2)イのように、「防水通音膜の通音領域は、単層のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜により構成されている」という甲2技術事項が記載されている。 してみると、本件発明5の構成H5の防水膜が「ポリテトラフルオロエチレン膜を含む」点は、上記甲1技術事項及び上記甲2技術事項等にあるように周知技術であるといえる。 ここで、上記3(1)アにあるように、甲1号証の表2、図9C、図10Cによると、有効面積が4.9mm2のときの比較例5の1kHzでの音圧損失は、1.7dBであり、有効面積が0.8mm2のときの比較例5の1kHzでの音圧損失は、9.8dBであり、有効面積が4.9mm2のときの比較例5の10kHzでの音圧損失は、約1.8dBであり、有効面積が0.8mm2のときの比較例5の10kHzでの音圧損失は、約23.5dBである。 そして、上記【0040】の記載を当てはめると、比較例5について、有効面積が1.3mm2のときの1kHzでの音圧損失は、1.7dBから9.8dBの間であり、10kHzでの音圧損失は、1.8dBから23.5dBの間にある可能性はあるが、それぞれ5.0dB以下であるか否かは不明である。 また、上記(1)イ及びウでの判断のとおり、比較例3では、上記【0040】の記載が当てはまらないことから、比較例5についても、上記【0040】の記載が当てはまるか否かも不明である。 そうすると、本件発明1における防水膜として上記周知技術である「ポリテトラフルオロエチレン膜を含む」ことを適用した場合において、上記甲1号証の表2、図9C、図10Cによる、有効面積が4.9mm2のときの比較例5の1kHzでの音圧損失は、1.7dBであり、有効面積が0.8mm2のときの比較例5の1kHzでの音圧損失は、9.8dBであり、有効面積が4.9mm2のときの比較例5の10kHzでの音圧損失は、約1.8dBであり、有効面積が0.8mm2のときの比較例5の10kHzでの音圧損失は、約23.5dBであること及び上記【0040】の記載を根拠として、「音の透過領域の面積が1.3mm2のときに」、「周波数1kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下であり、周波数10kHzの音に対する挿入損失が5.0dB以下である」ことが、当業者にとって容易に想到し得るとはいえない。 よって、本件発明5は、当業者が甲1発明、甲1技術事項及び甲2技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、特許異議申立人は、本件発明5に関し、特許異議申立書において「甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明と甲第1号証及び甲第2号証に記載された周知技術とから容易に想到できる。」(特許異議申立書5ページ「理由の要点」の欄8行~9行)と記載し、甲第2号証から「(a5’)ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜を含む通音領域を有し、JIS L1096に規定されている通気性測定法のA法(フラジール法)に準拠して測定した前記多孔質膜の厚さ方向の通気度が2cm3/cm2/s以上であり、JIS L1092に規定されている防水性試験方法のB法(高水圧法)に準拠して測定した前記多孔質膜の耐水圧が3kPa以上である、防水通音膜。」(特許異議申立書15ページ12行~16行)を甲第2号証に記載された発明としているが、甲1発明に当該甲第2号証に記載された発明を適用したとしても、構成上、甲1発明に上記周知技術を適用した場合と変わらないことから、上記結論も変わるものではない。 イ 特許異議申立人の主張について (ア)特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のように主張している。 「甲第1号証には、本件特許発明5の構成要件(A5)に相当する下記構成(a5)が記載されている(甲第1号証の明細書の段落[0108]参照)。 (a5)比較例5では、PTFEの延伸多孔質膜から構成される防水通音膜を作成した。 なお、甲第1号証において、上記の図10A及び図10Cには、比較例5について、防水通音膜の有効面積が0.8mm2のときに周波数1kHzの音に対する音圧損失が約10dBであり、周波数10kHzの音に対する音圧損失が約22.5dBである旨が記載されている([図10A]、[図10C])。また、甲第1号証において、下記の[図9A]及び[図9C]には、防水通音膜の有効面積が4.9mm2のときに周波数1kHzの音に対する音圧損失が約1.8dBであり、周波数10kHzの音に対する音圧損失が約1.8dBである旨が記載されている([図9A]、[図9C])。 このため、甲第1号証の明細書の段落[0040]の上記記載から、比較例5について、防水通音膜の有効面積が1.3mm2のときに周波数1kHzの音に対する音圧損失が1.8dBから10dBまでの範囲であり、周波数10kHzの音に対する音圧損失が1.8dBから22.5dBまでの範囲であることは、当業者であれば甲第1号証から導き出せる事項であることは明らかであり、甲第1号証に記載されているに等しい事項である。 したがって、本件特許発明5は、上記構成(a1)、(b1)、8c1)、(d1)、(a5)を備える甲第1号証に記載の発明を含む可能性がある。」(特許異議申立書14ページ8行~15ページ8行) 「したがって、本件特許発明5は、甲第1号証に記載の上記構成(a1)、(b1)、8c1)、(d1)、(a5)、甲第2号証に記載の上記構成(a5’)及び周知技術に基づいて、当該技術分野に属する当業者が容易になし得たものである。 ゆえに、本件特許発明5は、先行技術文献から当業者が容易に想到し得たものであって進歩性が欠如しており、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」(特許異議申立書16ページ3行~9行) (イ)特許異議申立人の主張についての判断 上記アで判断したように、甲1発明の比較例5について、有効面積が1.3mm2のときの1kHzでの音圧損失は、1.7dBから9.8dBの間であり、10kHzでの音圧損失は、1.8dBから23.5dBの間にある可能性はあるが、それぞれ5.0dB以下であるか否かは不明であり、また、比較例3では、上記【0040】の記載が当てはまらないことから、比較例5についても、上記【0040】の記載が当てはまるか否かも不明である。 そのため、上記特許異議申立人の主張である「比較例5について、防水通音膜の有効面積が1.3mm2のときに周波数1kHzの音に対する音圧損失が1.8dBから10dBまでの範囲であり、周波数10kHzの音に対する音圧損失が1.8dBから22.5dBまでの範囲であることは、当業者であれば甲第1号証から導き出せる事項であることは明らかであり、甲第1号証に記載されているに等しい事項である」とはいえず、また、「本件特許発明5は、上記構成(a1)、(b1)、8c1)、(d1)、(a5)を備える甲第1号証に記載の発明を含む可能性がある」ともいえないから、本件特許発明5が、甲1発明、甲1技術事項及び甲2技術事項に基づいて、当業者が容易になし得たものではなく、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。 (3)本件発明7~10について ア 特許法第29条第1項第3号(申立理由1)についての判断 本件発明7~10は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)イで検討したのと同じ理由により、甲1発明は、本件発明7~10ではない。 イ 特許法第29条第2項(申立理由2(2-3))についての判断 本件発明7~10は、本件発明1又は5の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)ウ又は(2)アで検討したのと同じ理由により、当業者が甲1発明に基づいて又は甲1発明、甲1技術事項及び甲2技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 5 申立理由3(実施可能要件:特許法第36条第4項第1号)について 理由(3-1)について ア 本件発明1及び2について (ア)明細書及び図面の記載 本件訂正後の明細書及び図面には、以下の記載がある。 「【0070】 [防水膜A(実施例1)] PTFE微粉末(ダイキン工業株式会社製、ポリフロンF-104)100重量部に対し、液状潤滑剤(n-ドデカン、株式会社ジャパンエナジー製)20重量部を均一に混合し、シリンダーに圧縮した後にラム押し出し機で押出し、長手方向に延びるシート状成形体を得た。このシート状成形体を、液状潤滑剤が含まれた状態で金属製圧延ロール間に通し、厚さ0.2mmとなるように圧延した。その後、シート状成形体を150℃に加熱することにより液状潤滑剤を除去し、シート状成形体を乾燥させた。その後、シート状成形体を、300℃において長手方向に2.5倍の倍率で延伸し、200℃において幅方向に20倍の倍率で延伸した後、PTFEの融点以上の温度である400℃で焼成して、膜厚15μmのPTFE多孔質膜である防水膜Aを得た。 【0071】 [防水膜B(実施例2)] 実施例1と同様に得た厚さ0.2mmのシート状成形体(液状潤滑剤の除去前)を常温にて幅方向に4.5倍の倍率で伸張させた。次に、伸張後のシート状成形体を150℃に加熱することにより液状潤滑剤を除去し、乾燥させた。その後、シート状成形体を、300℃において長手方向に2.0倍の倍率で延伸し、100℃において幅方向に20倍の倍率で延伸した後、PTFEの融点以上の温度である400℃で焼成して、膜厚6μmのPTFE多孔質膜である防水膜Bを得た。 【0072】 [防水膜C(実施例3)] PTFE粒子の分散液(PTFE粒子の濃度40質量%、PTFE粒子の平均粒径0.2μm、PTFE100質量部に対してノニオン性界面活性剤を6質量部含有)に、フッ素系界面活性剤(DIC製、メガファックF-142D)をPTFE100質量部に対して1質量部加えた。次に、フッ素系界面活性剤を加えた上記PTFE分散液の塗布膜(厚さ20μm)を、帯状のポリイミド基板(厚さ125μm)の表面に形成した。塗布膜は、ポリイミド基板をPTFE分散液に浸漬した後、引き上げることで形成した。次に、基板及び塗布膜の全体を加熱して、PTFEのキャスト膜を形成した。加熱は、第1の加熱(100℃、1分)と、その後の第2の加熱(390℃、1分)との2段階とした。第1の加熱によって、塗布膜に含まれる分散媒の除去が、第2の加熱によって、塗布膜に含まれるPTFE粒子の結着に基づくキャスト膜の形成が進行した。上記浸漬及びその後の加熱をさらに2回繰り返した後、形成されたPTFEキャスト膜(厚さ25μm)をポリイミド基板から剥離した。次に、剥離したキャスト膜をMD方向(長手方向)に圧延し、さらにTD方向(幅方向)に延伸した。MD方向の圧延は、ロール圧延により実施した。圧延の倍率(面積倍率)は2.0倍、温度(ロール温度)は170℃とした。TD方向の延伸は、テンター延伸機により実施した。TD方向の延伸の倍率は2.0倍、温度(延伸雰囲気の温度)は300℃とした。このようにして、膜厚10μm、面密度15g/m2のPTFE微多孔膜である防水膜Cを得た。 【0073】 [防水膜D(実施例4)] 実施例1と同様に得た厚さ0.2mmのシート状成形体(液状潤滑剤の除去前)を常温にて幅方向に4.5倍の倍率で伸張させた。次に、伸張後のシート状成形体を150℃に加熱することにより液状潤滑剤を除去し、乾燥させた。その後、シート状成形体を、300℃において長手方向に3.0倍の倍率で延伸し、100℃において幅方向に20倍の倍率で延伸した後、PTFEの融点以上の温度である400℃で焼成して、膜厚8μmのPTFE多孔質膜である防水膜Dを得た。 【0074】 [防水膜E(比較例)] 液状潤滑剤を除去したシート状成形体に対する長手方向の延伸温度を380℃、延伸倍率を4.5倍とし、幅方向の延伸温度を330℃、延伸倍率を10倍とするとともに、幅方向の延伸を実施した後の焼成を実施しなかった以外は防水膜Aと同様にして、膜厚25μmのPTFE多孔質膜である防水膜Eを得た。」 【0096】 【表3】 [図:0001388390000009.jpg] 」 (イ)理由(3-1)の実施可能要件についての判断 上記(ア)のように、本件訂正後の明細書及び図面には、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)及び防水膜E(比較例)の具体的な作製方法が記載されており、当該作製方法によって作製した上記防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)及び防水膜E(比較例)を上記「第4 2(1)」の評価方法によって評価した結果が、表3である。 そして、表3によると、透過領域の面積が1.3mm2のときに、挿入損失は、周波数1kHzの音で防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)のすべてにおいて5.0dB以下であり、周波数10kHzの音で防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)のすべてにおいて5.0dB以下であり、防水膜E(比較例)では5.0dBより大きく、周波数200Hz以上10kHz以下の範囲の音に対する最大の挿入損失と最小の挿入損失との差は、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)のすべてにおいて5.0dB以下であり、防水膜E(比較例)では5.0dBより大きい。 してみると、本件訂正後の明細書及び図面に記載された具体的な作製方法で作製された防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)は、本件訂正後の明細書及び図面に記載された評価方法によって評価すると本件発明1の構成B1、C1及び本件発明2の構成E2のパラメータの範囲に含まれ、防水膜E(比較例)は当該範囲のうち構成C1及び構成E2の範囲に含まれないものである。 よって、本件発明の詳細な説明には、本件発明1及び2について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。 イ 本件発明3~10について 本件発明3~10は、本件発明1又は2の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したのと同じ理由により、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。 ウ 特許異議申立人の主張について (ア)特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のように主張している。 「上記の実施例及び比較例の評価方法では、測定時に支持体72Aの通音口92との重複部分の影響を受けることから、試験片71の透過領域のみの挿入損失の値を測定すること自体できないことは明らかである。」(特許異議申立書21ページ12行~15行) 「上記の実施例及び比較例の評価方法では、直径2mmの通音口92の上方を内径1.3mmの支持体72Aを有する積層体94で覆ったときと、直径2mmの通音口92の上方を内径1.5mmの支持体72Aを有する積層体94で覆ったときと、直径2mmの通音口92の上方を内径1.0mmの支持体72Aを有する積層体94で覆ったときとでそれぞれ正確なブランク値が求められていないことは明らかである。」(特許異議申立書23ページ18行~23行) 「これらの結果、上記の実施例及び比較例の評価方法では、そもそも試験片71の透過領域のみの挿入損失の値を測定ができないだけでなく、1kHz及び10kHzを含む200Hz以上10kHz以下の各周波数におけるブランク値も正確でないことから、上記の実施例及び比較例の評価方法には誤りがあることは明らかである。」(特許異議申立書23ページ29行~33行) 「上記表3に示す、上記の実施例及び比較例の周波数1kHzの音に対する挿入損失の値と周波数10kHzの音に対する挿入損失の値とが正確ではない。また、上記表3に示す、上記の実施例及び比較例の200Hz以上10kHz以下の範囲の音に対する最大の挿入損失IL1.3/maxと最小の挿入損失IL1.3/minとの差IL1.3/max-IL1.3/minの値も正確ではない。」(特許異議申立書24ページ1行~6行) 「したがって、上記の実施例及び比較例の評価結果が正確ではないことから、本件特許発明1、2は、実施例1乃至4に係る防水膜を含み、且つ、比較例に係る防水膜を含まないか否かが特定できないため、本願特許公報の明細書には、発明の詳細な説明において当業者が穏健特許発明1、2を作れるような記載がなされていない。」(特許異議申立書24ページ15行~19行) 「よって、本件特許発明1、2は、本願特許公報の明細書の発明の詳細な説明に当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」(特許異議申立書24ページ20行~23行) (イ)特許異議申立人の主張についての判断 上記ア(イ)のように本件訂正後の明細書及び図面には、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)の具体的な作製方法が記載されており、当該作製方法によって作製した上記防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)を上記「第4 2(1)」の評価方法によって評価した結果が、表3であり、表3の結果から、本件訂正後の明細書及び図面に記載された具体的な作製方法で作製された防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)は、本件訂正後の明細書及び図面に記載された評価方法によって評価すると本件発明1の構成B1、C1及び本件発明2の構成E2のパラメータの範囲に含まれ、防水膜E(比較例)は当該範囲のうち構成C1及び構成E2の範囲に含まれないものである。 してみると、上記評価方法に支持体72Aの通音口92との重複部分の影響があったとしても、本件発明1~10における防水膜は、上記作製方法によって作製され、上記重複部分の影響が含まれている評価方法によって得られたパラメータによって定義される防水膜であるから、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。 (2)理由(3-2)について ア 本件発明1~4、6について (ア)明細書及び図面の記載 本件訂正後の明細書及び図面には、以下の記載がある。 「【0094】 【表1】 [図:0001388390000010.jpg] 【0095】 【表2】 [図:0001388390000011.jpg] 【0096】 【表3】 [図:0001388390000012.jpg] 」 (イ)理由(3-2)の実施可能要件についての判断 上記(1)ア(ア)のように、本件訂正後の明細書及び図面には、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)及び防水膜E(比較例)の具体的な作製方法が記載されており、当該作製方法によって作製した上記防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)及び防水膜E(比較例)について、評価測定した結果が表1~表3に記載されている。 そして、上記作製方法によって作製された各実施例の物の評価測定した結果が、明細書中に示され、その結果が請求項に記載されたパラメータの範囲内であれば、発明の詳細な説明が、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないということはできない。 また、本件発明1~4、6において示される最大値又は最小値である限界値は、課題を解決するために実施例と比較例との間の境界として選択された値であるから、発明の詳細な説明に限界値そのものを示す実施例を記載する必要はなく、限界値によって示される範囲内に実施例の物が含まれれば十分である。 上記説示に基づいて、本件発明1~4、6について以下で検討する。 a 本件発明1について 上記(ア)の表3における透過領域の面積が1.3mm2の場合の周波数1kHzの音の挿入損失は、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)のすべてにおいて5.0dB以下であり、周波数10kHzの音の挿入損失は、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)のすべてにおいて5.0dB以下であるから、本件発明1の限界値「5.0dB以下」によって示される範囲内である。 b 本件発明2について 上記(ア)の表3における200Hz以上10kHz以下の範囲の音に対する最大の挿入損失IL1.3/maxと最小の挿入損失IL1.3/minとの差IL1.3/max-IL1.3/minの値は、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)のすべてにおいて5.0dB以下であるから、本件発明2の限界値「5.0dB以下」によって示される範囲内である。 c 本件発明3について 上記(ア)の表2におけるフラジール通気度の値は、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)のすべてにおいて3.0cm3/(cm2・秒)未満であるから、本件発明3の限界値「3.0cm3/(cm2・秒)未満」によって示される範囲内である。 d 本件発明4について 上記(ア)の表2における最大速度Vmaxの値は、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)のすべてにおいて100μm/秒以上であるから、本件発明4の限界値「100μm/秒以上」によって示される範囲内である。 e 本件発明6について 上記(ア)の表1における比表面積の値は、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)のすべてにおいて6m2/g以上であるから、本件発明6の限界値「6m2/g以上」によって示される範囲内である。 上記a~eによれば、本件発明の詳細な説明には、本件発明1~4、6について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないということはできず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。 イ 本件発明5、7~10について 本件発明5は、本件発明1~4のいずれかの発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであり、本件発明7~10は、本件発明1~4、6のいずれかの発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したのと同じ理由により、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。 ウ 特許異議申立人の主張について (ア)特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のように主張している。 「本願特許公報の明細書中には、本件特許発明1について、各パラメータの最大値が得られた実施例について記載も示唆も一切なされていない。」(特許異議申立書25ページ9行~11行) 「本願特許公報の明細書中には、本件特許発明2について、パラメータの最大値が得られた実施例について記載も示唆も一切なされていない。」(特許異議申立書25ページ35行~26ページ2行) 「本願特許公報の明細書中には、本件特許発明3について、パラメータの最大値が得られた実施例について記載も示唆も一切なされていない。」(特許異議申立書26ページ23行~25行) 「本願特許公報の明細書中には、本件特許発明4について、パラメータの最小値が得られた実施例について記載も示唆も一切なされていない。」(特許異議申立書27ページ9行~11行) 「本願特許公報の明細書中には、本件特許発明6について、パラメータの最小値が得られた実施例について記載も示唆も一切なされていない。」(特許異議申立書27ページ29行~31行) (イ)特許異議申立人の主張について 上記イの説示のとおり、上記作製方法によって作製された各実施例の物の評価測定した結果が、明細書中に示され、その結果が請求項に記載されたパラメータの範囲内であれば、発明の詳細な説明が、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであり、また、本件発明1~4、6において示される最大値又は最小値である限界値は、課題を解決するために実施例と比較例との間の境界として選択された値であり、発明の詳細な説明に限界値そのものを示す実施例を記載する必要はなく、限界値によって示される範囲内に実施例の物が含まれれば十分であるから、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。 6 申立理由4(サポート要件:特許法第36条第6項第1号)について (1)本件発明1~4、6について ア 明細書及び図面の記載 本件訂正後の明細書及び図面には、以下の記載がある。 「音の透過領域のさらなる縮小にも対応可能な防水膜の提供を目的とする」(【0006】) 「【0098】 【表5】 [図:0001388390000013.jpg] 」 イ サポート要件についての判断 本件訂正後の明細書には、本件発明1~10が解決しようとする課題は、上記アのように「音の透過領域のさらなる縮小にも対応可能な防水膜の提供」である。 そして、透過領域の面積が1.3mm2の場合の上記5(2)ア(ア)の表3及び透過領域の面積が1.8mm2の場合の上記アの表5の評価測定結果を比較すると、防水膜A(実施例1)~防水膜D(実施例4)のすべてにおいて防水膜E(比較例)よりも、周波数10kHzの音の挿入損失の値及び200Hz以上10kHz以下の範囲の音に対する最大の挿入損失IL1.3/maxと最小の挿入損失IL1.3/minとの差IL1.3/max-IL1.3/minの値が改善している。 してみると、本件発明1及び2の構成によって、上記課題が解決されているといえる。 また、本件発明1~4、6における限界値については、上記5(2)ウ(イ)の説示のとおりである。 よって、本件の請求項1~4、6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されているものといえることから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 (2)本件発明5、7~10について 本件発明5は、本件発明1~4のいずれかの発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであり、本件発明7~10は、本件発明1~4、6のいずれかの発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同じ理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の申立理由4(サポート要件:特許法第36条第6項第1号)についての主張は、上記5(2)ウ(ア)の主張と同様であるから、上記5(2)ウ(イ)と同様に、特許異議申立人の主張を採用することはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された申立人の主張する特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明1~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700941

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