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特許異議申立

2020-700280

血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血漿の分離方法

審判番号
2020-700280
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-520471
登録番号
特許第6595743号(P6595743)
請求日
2020年04月21日
審決日
2020年11月11日
公報発行日
2021年02月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】積水メディカル株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
  • 【権利者】徳山積水工業株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
  • 【異議申立人】日本ペイント・インダストリアルコーティングス 株式会社
  • 【異議申立人代理人】吉田 環
審判長/審判官
  • 審判長 福島 浩司
  • 審判官 三崎 仁
  • 審判官 伊藤 幸仙
分類
P1651.113-YAA(G01N) / P1651.121-YAA(G01N) / P1651.536-YAA(G01N) / P1651.537-YAA(G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6595743号発明「血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血漿の分離方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6595743号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12、14-17〕、〔13、18-27〕について訂正することを認める。 特許第6595743号の請求項1ないし9、13、15、17ないし27に係る特許を維持する。 特許第6595743号の請求項10ないし12、14、16に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6595743号の請求項1~17に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)12月25日(優先権主張 平成29年12月27日)を国際出願日とする出願であって、令和元年10月4日にその特許権の設定登録がされ、同月23日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年4月21日:特許異議申立人日本ペイント・インダストリアル コーティングス株式会社(以下「申立人」という 。)による請求項1~17に係る特許に対する特 許異議の申立て 同年7月6日付け:取消理由通知書 同年8月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年9月7日付け:通知書 上記通知書は、申立人に、取消理由通知の写し、訂正請求書並びにこれに添付された訂正特許請求の範囲及び明細書の副本、取消理由通知に対応する特許権者の意見書の副本を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたものである。 しかし、申立人は、これに対し応答しなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲及び明細書を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項について ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下である」を「前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であり、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり」(下線は訂正箇所である。以下同様。)に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9、15及び17も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1の「血清または血漿分離用組成物」を「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9、15及び17も同様に訂正する)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2~9の「血清または血漿分離用組成物」を「血漿分離用組成物」に訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項10、11、12、14及び16を削除する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項13である「請求項1~10のいずれか1項に記載の血清または血漿分離用組成物が、血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物。」を「(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であり、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物。」に訂正する(請求項13の記載を引用する請求項18~27も同様に訂正する)。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項15の「請求項12又は13」を「請求項1~9のいずれか1項」に訂正する。 キ 訂正事項7 「前記シリコーンオイルがポリエーテル変性ポリアルキルシロキサンである、請求項13に記載の血漿分離用組成物。」を請求項18とする。 ク 訂正事項8 「前記シリコーンオイルのHLB値が、1以上10以下である、請求項13又は18に記載の血漿分離用組成物。」を請求項19とする。 ケ 訂正事項9 「前記シリコーンオイルの含有量が、0.10重量%以上2.00重量%以下である、請求項13、18又は19のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物。」を請求項20とする。 コ 訂正事項10 「前記微粉末シリカが、親水性シリカを含む、請求項13及び18~20のいずれかの1項に記載の血漿分離用組成物。」を請求項21とする。 サ 訂正事項11 「前記親水性シリカの含有量が、0.3重量%以上2.20重量%以下である、請求項21に記載の血漿分離用組成物。」を請求項22とする。 シ 訂正事項12 「前記微粉末シリカが、親水性シリカと疎水性シリカとを含む、請求項21又は22に記載の血漿分離用組成物。」を請求項23とする。 ス 訂正事項13 「前記親水性シリカと前記疎水性シリカとの合算含有量が、1.40重量%以上4.0重量%以下である、請求項23に記載の血漿分離用組成物。」を請求項24とする。 セ 訂正事項14 「微粉末シリカとは異なる無機粉末を含み、前記無機粉末の比重が、3以上である、請求項13及び18~24のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物。」を請求項25とする。 ソ 訂正事項15 「血液採取容器本体と、請求項13及び18~25のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物とを備え、前記血液採取容器本体内に、前記血漿分離用組成物が収容されている、血液採取容器。」を請求項26とする。 タ 訂正事項16 「請求項26に記載の血液採取容器を用いた血漿の分離方法であって、前記血液採取容器本体内に血液を採取する工程と、前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える、血漿の分離方法。」を請求項27とする。 チ 訂正事項17 明細書の【発明の名称】の「血清または血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血清または血漿の分離方法」を「血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血漿の分離方法」に訂正する。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項2~17は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1~17は一群の請求項であり、上記訂正事項1~16はいずれも、その一群の請求項においてなされたものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。 また、訂正事項17は、明細書の【発明の名称】に係る訂正であり、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。 そして、訂正後の請求項13及び18~27については、特許権者は、本件訂正が認められるときには、請求項1~12及び14~17とは別の訂正単位として扱われることを求めているものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 目的の適否 訂正事項1は、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体」を「前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであ」るものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書には、(メタ)アクリル酸エステル系重合体について、 「【0056】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合することにより得られる。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を有する。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体の単独重合体であってもよく、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合体であってもよく、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体との共重合体であってもよい。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。 【0057】 上記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、炭素数が1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、及び(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。」 「【0059】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上である。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率の上限は特に限定されない。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率は、100重量%(全量)であってもよく、100重量%未満であってもよく、90重量%以下であってもよく、80重量%以下であってもよい。上記(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が上記下限以上であると、血清または血漿分離用組成物の粘度をより一層良好にすることができ、隔壁の強度をより一層高めることができる。」(下線は当審において付与した。以下同様。)と記載されていることから、訂正事項1は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について ア 目的の適否 訂正事項2は、「血清または血漿分離用組成物」を「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書には、血漿分離用組成物について、 「【0045】 本発明の血清または血漿分離用組成物が血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物(白血球含有血漿分離用組成物)である場合に、上記白血球含有血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.060以上、より好ましくは1.070以上、好ましくは1.095以下、より好ましくは1.085以下である。上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液から白血球含有血漿を良好に分離することができ、赤血球の混入量が少なくかつ白血球の含有量が多い血漿を良好に得ることができる。例えば、血液中の各白血球成分の組成比率と同等の組成比率で白血球を回収することができる。また、上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、低温下や、遠心力が低い場合でも、良好な強度を有する隔壁を形成することができる。また、上記比重が上記下限以上であると、滅菌時の発泡をかなり抑えることができる。」と記載されていることから、訂正事項2は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について ア 目的の適否 訂正事項3は、「血清または血漿分離用組成物」を「血漿分離用組成物」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、選択肢を削除するものであるから、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、請求項を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項の削除は、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について ア 目的の適否 訂正事項5は、「請求項1~10のいずれか1項」の記載を引用する請求項の記載を、請求項1の「(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であ」ることを記載することにより、当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものである。 そして、さらに、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体」を「前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであ」るものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。 イ 新規事項の有無 「前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであ」るものについては、上記(1)イで述べたとおり、本件特許明細書に記載されているものであるから、訂正事項5は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について ア 目的の適否 訂正事項6は、請求項15の「請求項12又は13」を「請求項1~9のいずれか1項」に訂正するものであるところ、これは、請求項15が引用する「請求項12又は13」のうち請求項13を削除し、さらに、「請求項12」が引用する請求項1~10のうち請求項10を削除して「請求項1~9のいずれか1項」としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6は、引用する請求項を削除するものであるから、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項7について ア 目的の適否 訂正事項7は、訂正前の請求項13が「請求項1~10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項2」(請求項2は訂正前の請求項1を引用している)を引用する請求項13を新たに請求項18とするものであるところ、その請求項13は、上記訂正事項5によって、訂正前の請求項1の特定事項を記載することにより、他の請求項の記載を引用しないものとするものとされ、さらに限定が加えられるものであることから、請求項18をその請求項13を引用する形式で記載するものである。 そうすると、引用する請求項13が、上記(5)で述べたとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、訂正事項7についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項7は、訂正事項5と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (8)訂正事項8について ア 目的の適否 訂正事項8は、訂正前の請求項13が「請求項1~10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項3」(請求項3は訂正前の請求項1又は2を引用している)を引用する請求項13を新たに請求項19とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項19をその請求項13又は訂正前の請求項2に対応する上記請求項18を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項8についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項8は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (9)訂正事項9について ア 目的の適否 訂正事項9は、訂正前の請求項13が「請求項1~10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項4」(請求項4は訂正前の請求項1~3のいずれかを引用している)を引用する請求項13を新たに請求項20とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項20をその請求項13又は訂正前の請求項2及び3に対応する上記請求項18及び19を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項9についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項9は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (10)訂正事項10について ア 目的の適否 訂正事項10は、訂正前の請求項13が「請求項1~10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項5」(請求項5は訂正前の請求項1~4のいずれかを引用している)を引用する請求項13を新たに請求項21とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項21をその請求項13又は訂正前の請求項2~4のいずれかに対応する上記請求項18~20のいずれかを引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項10についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項10は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (11)訂正事項11について ア 目的の適否 訂正事項11は、訂正前の請求項13が「請求項1~10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項6」(請求項6は訂正前の請求項5を引用している)を引用する請求項13を新たに請求項22とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項22をその請求項13又は訂正前の請求項5に対応する上記請求項21を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項11についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項11は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (12)訂正事項12について ア 目的の適否 訂正事項12は、訂正前の請求項13が「請求項1~10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項7」(請求項7は訂正前の請求項5又は6を引用している)を引用する請求項13を新たに請求項23とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項23をその請求項13又は訂正前の請求項5又は6に対応する上記請求項21又は22を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項12についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項12は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (13)訂正事項13について ア 目的の適否 訂正事項13は、訂正前の請求項13が「請求項1~10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項8」(請求項8は訂正前の請求項7を引用している)を引用する請求項13を新たに請求項24とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項24をその請求項13又は訂正前の請求項7に対応する上記請求項23を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項13についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項13は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (14)訂正事項14について ア 目的の適否 訂正事項14は、訂正前の請求項13が「請求項1~10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項9」(請求項9は訂正前の請求項1~8のいずれかを引用している)を引用する請求項13を新たに請求項25とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項25をその請求項13又は訂正前の請求項2~8のいずれかに対応する上記請求項18~24のいずれかを引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項14についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項14は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (15)訂正事項15について ア 目的の適否 訂正事項15は、訂正前の請求項15が「請求項12又は13」を引用していたもののうち、「請求項13」(請求項13は訂正前の請求項1~10のいずれかを引用している)を引用する請求項を新たに請求項26とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項26をその請求項13又は訂正前の請求項2~9のいずれかに対応する上記請求項18~25のいずれかを引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項15についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項15は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (16)訂正事項16について ア 目的の適否 訂正事項16は、訂正前の請求項13を引用する請求項15をさらに引用する請求項17を新たに請求項27とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項27を訂正前の請求項13を引用する請求項15に対応する上記請求項26を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項16についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項16は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (17)訂正事項17について ア 目的の適否 明細書の【発明の名称】を「血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血漿の分離方法」に訂正することは、訂正特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項17は、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 上記のとおり、訂正事項1~17に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 そして、訂正後の請求項13及び18~27については、特許権者は、本件訂正が認められるときには、請求項1~12及び14~17とは別の訂正単位として扱われることを求めているものであるから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12、14-17〕、〔13、18-27〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~27に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」等と記載し、まとめて記載する場合には「本件発明」と記載する。ただし、請求項10、11、12、14及び16は削除された。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~27に記載されたとおりのものであり、そのうち、本件発明1及び13を記載すると、以下のとおりである。 「【請求項1】 (メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、 血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、 25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物。」 「【請求項13】 (メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、 血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、 25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物。」 第4 取消理由の概要 令和2年7月6日付け取消理由通知書の取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1~5、7~11、14及び16に係る発明は、本件特許出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 取消理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1~17に係る発明は、本件特許出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 取消理由3(サポート要件) 本件特許は、その特許請求の範囲の下記の請求項に係る記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ●取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について 新規性については、甲第1号証に記載された発明であること、進歩性については、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであることを説示している。 甲第1号証:特開平6-201682号公報 甲第2号証:国際公開第2007/029525号 甲第3号証:特開2007-101322号公報 甲第4号証:ポリウレタンフォーム用シリコーン整泡剤、東レ・ダウコーニング株式会社 甲第5号証:日本アエロジル株式会社 製品案内 甲第7号証:酸化チタン(ナノ酸化チタンを含む)の安全性等について、日本酸化チタン工業会(URL:http://www.sankatitan.org/sankatitan/2016.12ansen.pdf) 甲第8号証:製品説明書「セルリッチ」、ニプロ株式会社 なお、甲第6号証(特開2009-286905号公報)は、取消理由では提示しなかったが、以下の第6の判断では、これを含めて判断することとする。 以下、甲第1~8号証は「甲1」~「甲8」という。 ●取消理由3(サポート要件) (メタ)アクリル酸エステル系重合体には、種々のモノマーから得られる多種多様な重合体が包含されているところ、電子線やγ線等を照射した際の発泡を抑制でき、かつ保存中の相分離の発生を抑制できるという課題を解決したものとして実施例に記載されているものは、アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させたものだけであり、アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルの重合体以外の、種々のモノマーから得られる多種多様な(メタ)アクリル酸エステル系重合体のすべてにおいても、訂正前の請求項1で特定する「重量平均分子量が15000以上100000以下」ということだけで、上記課題を解決できると認識できるとはいえない。 また、その余の請求項において、その余の条件を追加しても、アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルの重合体以外の、種々のモノマーから得られる多種多様な(メタ)アクリル酸エステル系重合体すべてにおいて、上記課題を解決できると認識できるとはいえない。 よって、訂正前の請求項1~17に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないことから、特許請求の範囲の請求項1~17に係る記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第5 甲号証の記載について 1 甲1について (1)記載事項 甲1は、発明の名称は「血清分離用シーラント」であり、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである(以下同様)。 (1ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は血清分離用シーラントに関し、更に詳しくは、流動特性と比重特性とのバランスに優れかつ貯蔵安定性に優れた血清分離用シーラントに関する。 【0002】 【従来の技術】近年、微量の目的生化学物質を検出する臨床分析技術が著るしい進歩を遂げている。このためには、全血液をその構成成分である血清と血球に分離する技術の改良が要求されている。かかる分析技術は血清部分に臨床治験データに影響を及ぼすおそれのある赤血球が混入しないことが要求されている。 【0003】本発明は、かかる血清(又は血漿)の分離のために血液を採取する試験管中に充填されるチキソトロピー性ゲル状材料を使用することに関する。ゲル状材料は、遠心力を付加することで比重差によって試験管内で血清(又は血漿)からなる上層と血球からなる下層との間の領域に移動し、二層間に隔壁を形成する。この血清(又は血漿)はその後臨床検査用に使用される。血液構成成分を分離し、血球が拡散して血清中に混入するのを防止するのに有効な隔壁を形成するのが、分離剤の主たる作用である。このような材料は遠心力の作用下にのみ流動し、遠心力解除後には血清層と血球層との間の位置を保持しなければならない。例えば、試験管を傾斜させた場合には、分離剤はその配置を保持し、血球部分が流動せず、又経日で隔壁のくずれが生じないことが望まれる。このことは試験管がそのような位置をとるおそれのある輸送又は貯蔵時に特に重要である。」 (1イ)「【0013】 【課題を解決するための手段】本発明に従えば、(A)式(I) 【0014】 【化3】 【0015】(式中、R1はH又はCH3であり、R2は炭素数1~18のアルキル基を示す)を有するアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートに由来する、20℃における比重が0.94~1.06で粘度が10~140Pa・Sのポリマー100重量部、(B)シリカ及びベントナイトより選ばれた少なくとも一種の成分0.5~10重量部(C)(C-1)フルオロカーボン系界面活性剤、(C-2)ポリエステル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤及び(C-3)ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤の中から選ばれた少なくとも一種の界面活性剤0.01~2重量部を主成分とし、20℃における比重が1.035~1.065、粘度が100~400Pa・Sで降伏値が100~400dyne/cm2 の範囲内である血清分離用シーラントが提供される。 【0016】本発明に従った血清分離用シーラントは、前述の如く、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を必須の構成成分とする。本発明において(A)成分として使用されるポリマーは式(I)のアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタアクリレートを重合して成るポリマー(以下、単にアクリルポリマーという)であり、20℃における比重が0.94~1.06、好ましくは1.030~1.045であり、粘度が10~140Pa・S、好ましくは50~100Pa・Sである。なお、前記ポリマーの数平均分子量(Mn)は4000~12000であるのが好ましい。かかるアクリルポリマーはモノマーが容易に入手でき、低コストであるという利点も有する。更に、このアクリルポリマーは比重及び粘度の調節が容易であるため、使用者のニーズに合致した広範囲の粘度-比重の組合せを達成することができ、しかも、従来のものに比較してより均一な樹脂を複雑な操作を必要とすることなく、しかも分離血清上に浮遊物を生成することもない。」 (1ウ)「【0020】本発明に従った血清分離用シーラントのB成分として用いられるシリカ及び/又はベントナイトは、ゲルの網目形成剤及び/及び比重調整剤として使用される。使用するシリカ及びベントナイトの種類には特に限定はないが、例えば、デクッサ社のアエロシル(Aerosil)(商標)などのヒュームドシリカを好適に用いることができ、その粒子径には特に限定はないが、好ましくは50mμ(nm)以下で、より好ましくは5~40mμである。一方、ベントナイトにも特に限定はなく、例えば、NL Chemicals社より市販のベントン(BENTONE)(商標)(スメクタイト/ヘクトライト)などを用いることができる。シリカ及び/又はベントナイトは前記アクリルポリマー(A)100重量部に対し0.5~10重量部、好ましくは1~5重量部の範囲で使用する。0.5重量%未満では構造粘性が出ず、自由移動性が高くなり、10重量部を超えると、比重が高くなって反転性が低下する 【0021】本発明に従った血清分離用シーラントの(C)成分としては、(C-1)フルオロカーボン系界面活性剤、(C-2)ポリエステル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤及び(C-3)ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤の中から選ばれた少なくとも一種の界面活性剤を前記アクリルポリマー(A)100重量部に対し、0.01~2重量部、好ましくは0.05~1.8重量部配合する。0.01重量部未満では必要とする粘性が得られにくく、自由移動性が高くなり、2重量部を超えると粘性が上がり、反転性が低下する。」 (1エ)「【0045】例3~16(実施例) 本発明に従った各種血液分離用シーラントを製造した。これらのシーラントの構成組成(重量部)は表2及び表3に示す通りであり、(A)成分としてNBA(n-ブチルアクリレート)、EHA(エチルヘキシルアクリレート)及びEGDM(エチレングリコールジメタクリレート)から表2及び表3に示す組成で重合した各種ポリマーを用いた。ポリマーの粘度及び比重は表2及び表3に示す通りであった。(B)成分としてはアエロジル(AEROSIL: 登録商標)(デグッサ社)R805、R812、R972、A130、及びOX50のシリカ並びにベントン(NL Chemicals社市販のB-38)を表2及び表3に示す量(重量部)で用い、(C)成分としてはSH190(東レ・ダウコーニングシリコン社製ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤)、BYK370(BYK CHEMIE社製ポリエステル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤)、F144、F177(大日本インキ化学工業(株)社製フルオロカーボン系界面活性剤)及びFC170C(住友3M社製フルオロカーボン系界面活性剤)を表2及び表3に示 す量で用いた。更に、任意的な(D)成分としては、炭酸カルシウム(CaCO3)及び二酸化チタン(TiO2)を用い、(E)成分としてチタンカップリング剤プレンアクトKRTTS、KR-9S及びKR-12(味の素(株)製)を表2及び表3に示す量(重量部)で用いた。 【0046】前述の如く、シリカ及び/又はベントンは網目形成剤であり、アルキルポリシロキサン及び/又はフルオロカーボン系界面活性剤はシーラントの粘性を高める作用をし、これによってシーラント中の網目形成剤の含量を著しく(例えば最大30部から12部未満まで)低下させることができる。この濃度低下は製造プロセスを著しく容易にすることができ、例えばロールミル操作を2回通し以下又はロールミル操作をなくすことができる。チタンカップリング剤を上記配合に組み入れることによっても網目形成剤/充填剤含量の分散性が一層改良される。アクリルポリマーの製造は、一般に適当な溶剤(例えば、キシレン、トルエンなど)30~60部(重量)にモノマー成分を滴加することによって行うことができる。モノマーの滴加完了後、混合物は完全反応のために熟成し、溶媒を蒸発除去する。得られた血清分離用シーラントの配合、諸物性などを表2及び表3に示す。ゲルの性状における粘度の単位はPa・S、降伏値の単位はdyne/cm2である。」 【表2】 【表3】 」 (1オ)「【0053】実際の試験前に、ゲル1.8mlを含む試験管材料を60℃で1ヶ月間貯蔵した(通常温度の1年間貯蔵の促進テスト)。各試験管に約8mlの血液を収集し、1時間以内で凝血させた。次に試料を800Gで10分間遠心分離した。通常の方法では、1300G以上で10分間遠心分離するのが隔壁形成の確実性を得るために普通であるが、より厳しい遠心操作標準条件として本評価試験では800G×10分間を選定した。評価試験結果を表4に示す。」 (2)甲1発明について 甲1に記載されている発明を、摘記(1エ)に記載されている実施例から認定すると、以下のとおりであり、ここで表2及び表3は、摘記(1エ)の上記【表2】及び【表3】である。 なお、摘記(1ア)に「血清(又は血漿)の分離」との記載もあるが、上記摘記した記載以外の特許請求の範囲及び明細書の部分においても血漿を分離することについて一切記載されておらず、また、血清と血漿は成分的に同じものではなく(血漿には凝固因子であるフィブリノゲンが含まれるが血清には含まれない)、その分離手法も異なる(血漿の場合には抗凝固剤を入れるが、血清の場合には入れないため、血清は血餅との分離となる)ことを考慮するに、「血清(又は血漿)の分離」だけの記載をもってして、「血漿分離用シーラント」を読み取ることはできない。 「血清分離用シーラントであって、 シーラントの構成組成(重量部)は表2及び表3に示す通りであり、 (A)成分としてNBA(n-ブチルアクリレート)、EHA(エチルヘキシルアクリレート)及びEGDM(エチレングリコールジメタクリレート)から表2及び表3に示す組成で重合した各種ポリマーを用い、ポリマーの粘度及び比重は表2及び表3に示す通りであり、 (B)成分としてはアエロジル(AEROSIL: 登録商標)(デグッサ社)R805、R812、R972、A130、及びOX50のシリカ並びにベントン(NL Chemicals社市販のB-38)を表2及び表3に示す量(重量部)で用い、 (C)成分としてはSH190(東レ・ダウコーニングシリコン社製ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤)、BYK370(BYK CHEMIE社製ポリエステル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤)、F144、F177(大日本インキ化学工業(株)社製フルオロカーボン系界面活性剤)及びFC170C(住友3M社製フルオロカーボン系界面活性剤)を表2及び表3に示す量で用い、 更に、任意的な(D)成分としては、炭酸カルシウム(CaCO3)及び二酸化チタン(TiO2)を用い、(E)成分としてチタンカップリング剤プレンアクトKRTTS、KR-9S及びKR-12(味の素(株)製)を表2及び表3に示す量(重量部)で用い、 得られた血清分離用シーラントの配合、諸物性(ゲルの性状)などを表2及び表3に示す、 血清分離用シーラント。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲2について 甲2には、以下の事項が記載されている。 「[0047] 血液分離剤組成物は、前記血液分離剤用重合体及びシリカを含有することから、 血液分離剤用重合体の前記効果を発揮することができる。 実施例 [0048] 以下に、製造例、実施例、及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はそれらの実施例に限定されるものではない。 (共重合体Αの製造方法) オイルジャケットを備えるとともに容量が 1リットルである加圧式攪拌槽型反応器に おけるオイルジャケットの温度を 180°Cに保った。次いで、アクリル酸ブチル(以下、 BAと略記する) 50g、アクリル酸-2-エチルへキシル(以下、 HAと略記する) 30g、アクリル酸シクロへキシル 20g、及びメチルエチルケトン 15gからなる原料に、ラジカル 重合開始剤としてジターシャリーへキシルバーオキサイド(以下、DTHPと略記する)0.1gを配合した後、原料を原料タンクに仕込んだ。そして、一定の供給速度で原料タンク力も反応器に原料を連続供給し、反応器内の質量が580gで一定になるように、反応物を反応器出口から連続的に抜き出した。このときの原料の供給速度は48g/分であり、原料の反応器中での滞留時間は12分であった。更に、反応器内の温度を180°Cに保った。そして、減圧度を30kPaに保つとともに温度を250°Cに保った薄膜蒸発器を用いて、抜き出した反応物から揮発成分を連続的に分離し、該揮発成分をほとんど含まない共重合体Aを回収した。 [0049] 原料の供給開始後、反応器内の温度が安定してから更に36分後にほぼ平衡状態に達したと判断し、該時間が経過したときを薄膜蒸発後の共重合体Aの回収開始点とした。そして、回収開始点から60分間、原料の供給を継続した結果、約2000gの共重合体Aを回収した。得られた共重合体Aについて、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフ(GPC)より求めたポリスチレン換算による共重合体Aの重量平均分子量(以下、Mwという)は20,000であり、数平均分子量(以下、Mnという)は4,600であり、分子量分布Mw/Mnは4.6であった。」 3 甲3について 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【実施例】 【0043】 以下に実施例および比較例で本発明を詳細に説明する。 (重合体Aの製造)オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器のオイルジャケット温度を、180℃に保った。 アクリル酸ブチル75質量部、アクリル酸2エチルヘキシル25質量部、イソプロピルアルコール3質量部、メチルエチルケトン25質量部、および重合開始剤としてジターシャリーヘキシルパーオキサイド0.1質量部からなる単量体混合液を原料タンクに仕込んだ。単量体混合液を一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給し、反応器内の混合液質量が約580gで一定になるように重合反応液を反応機出口から連続的に抜き出した。その時の反応器内温は約155℃に保たれた。 抜き出した重合反応液を減圧度20kPa、温度250℃に保った薄膜蒸発機で連続的に揮発成分を分離し、揮発成分をほとんど含まない重合体Aを回収した。 単量体混合物の供給開始後、反応器内部の温度が安定してからさらに36分後をほぼ平衡状態に達したと判断し、薄膜蒸発後の重合体Aの回収開始点とし、それから約300分間、原料の供給を継続した結果、約10kgの重合体Aを回収した。 ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPC)より求めたポリスチレン換算による重合体Aの重量平均分子量(以下Mw)は37400、数平均分子量(以下Mn)は7400、分子量分布Mw/Mnは5.1であった。また加熱残分から求めた重合体の固形分は99.8%であった。重合体Aは室温で流動性があり液状であった。25℃での粘度はE型粘度計で測定したところ71Pa・sであった。20℃での比重は1.032であった。重合体Aを目視で確認したところ、黄変等の問題もなく、色調の優れたものであった。」 4 甲4について 甲4は、ポリウレタンフォーム用シリコーン整泡剤について記載したものであり、その4頁の「軟質スラブ及びホットモールフォーム用シリコーン整泡剤一覧」の表には、製品名「SH 190」のHLBが7であることが記載されている。 5 甲5について 甲5は、アエロジル(AEROSIL)についての製品案内であり、その6頁の「表面処理の種類と特徴」の表には、製品名「AEROSILOX50」と「AEROSIL130」が親水性であることが、「AEROSILR972」が疎水性であることが記載されている。 6 甲6について 甲6には、以下の事項が記載されている。 「【0197】 -硬化性溶液1- まず、架橋スルホン酸変性ポリアクリル酸ナトリウム(「日本触媒製、アクアリックcs7s、中心粒径7μmにボールミル粉砕したもの/吸水性樹脂粒子」に対し、親水化処理を施したシリカ粒子エアロジルA130(日本エアロジル製、粒径16nm)を2質量%となるようサンプルミルで混合外添し、表面にシリカが付着した吸水性樹脂粒子を得た。」 7 甲7について 甲7は、酸化チタンについて記載したものであり、その「代表的な酸化チタンの物理特性」の表1には、密度について、ルチル金鉱石の場合には4.27g/cm3、アナターゼ鋭錐石の場合には3.90g/cm3、ブルカイト板チタン石の場合には4.13g/cm3であることが記載されている。 8 甲8について 甲8は、製品名「セルリッチ」について紹介したものであり、 【形状・構造及び原理等】の欄に 「1.形状・構造 本品は、全血等を分取する「採取ユニット」、遠心分離により各種の血液成分に分離する「分離ユニット」及び「回収ユニット」により構成される。」と記載され、 【使用方法等】の欄に 「以下に、全血から赤血球層、白血球・血小板、血漿層を分離する方法を示します。 1.採取方法 1)薬液採取針を付けた採取容器に、別途用意した抗凝固剤(ACD-A液)を採取します。 2)あらかじめ遠沈管等に用意した血液を採取容器内に吸引して、抗凝固剤(ACD-A液)と混ざるよう軽く転倒混和します。 2.分離方法 1)十分攪拌した後、採取容器から薬液採取針を取り外し、採取容器の先端(ロックコネクタ)に遠心キャップをしっかりと取り付けます。 2)ネジを緩める要領で採取容器の押子をガスケットから取り外します。遠心キャップ側を下にして遠心分離機にセットし、目的の遠心条件にて採取容器内の血液を遠心分離します。なお、採取容器の遠心キャップ側に分離される「赤血球層」を回収する際に必要となるため、取り外した押子は捨てずに取っておきます。 3)遠心分離後、「赤血球層」と「白血球・血小板含有血漿層」とに分離されます。採取容器のガスケットに採取容器用のガイドを取り付けます。」と記載されている。 第6 当審の判断 1 取消理由1及び2について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)(メタ)アクリル酸エステル系重合体について アクリレートはアクリル酸エステルであるから、甲1発明の「(A)成分としてNBA(n-ブチルアクリレート)、EHA(エチルヘキシルアクリレート)及びEGDM(エチレングリコールジメタクリレート)から表2及び表3に示す組成で重合した各種ポリマー」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル系重合体」に相当する。 また、本件発明1における「常温で流動性を有」するとは、本件特許明細書の【0050】に「上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有する。本明細書において、「常温」とは、25℃の温度である。また、本明細書において、「常温で流動性を有する」とは、25℃において、粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下であることを意味する。」と記載されており、甲1発明の「得られた血清分離用シーラントの」「諸物性(ゲルの性状)」の「表2及び表3に示す」「粘度(Pa・S)」の値は、10~500を満たしており、それは摘記(1イ)の【0015】の記載を参照すると20℃における値であるから、本件発明1の「常温で流動性を有」することに相当するものである。 (イ)シリカについて 甲1発明の「アエロジル(AEROSIL: 登録商標)(デグッサ社)R805、R812、R972、A130、及びOX50のシリカ」は、摘記(1イ)の【0020】に記載されているとおり、微粉末シリカであるから、本件発明1の「微粉末シリカ」に相当する。 (ウ)シリコーンオイルについて 本件発明1の「シリコーンオイル」は、本件特許明細書の【0128】に「<シリコーンオイル> ポリエーテル変性シリコーンオイル1(東レ・ダウコーニング社製、商品名・・・、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン)」と記載されているものであるから、甲1発明の「SH190(東レ・ダウコーニングシリコン社製ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤)」は、本件発明1「シリコーンオイル」に相当する。 (エ)比重について 甲1発明の「表2及び表3に示す」「得られた血清分離用シーラントの」「諸物性(ゲルの性状)」の「比重」の値は、1.050~1.065の範囲にあるところ、それは摘記(1イ)の【0015】の記載を参照すると20℃における値である。しかしながら、20℃と25℃とでは主成分である(メタ)アクリル酸エステル系重合体の比重に格別差異がないことを考慮すると、本件発明1の「25℃での比重が、1.060以上1.095以下」とは、「25℃での比重が、1.060以上1.065以下」の範囲で共通するといえる。 (オ)血漿分離用組成物について 甲1発明の「血清分離用シーラント」と、本件発明1の「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物」とは、「血液を分離するために用いられる」「分離用組成物」という上位概念で共通する。 イ 一致点・相違点 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有する、 血液を分離するために用いられる組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.065以下である、分離用組成物。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) (メタ)アクリル酸エステル系重合体が、本件発明1では、「重量平均分子量が15000以上100000以下」であり、その(メタ)アクリル酸エステル系重合体「100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する」ものであるのに対し、 甲1発明では、「NBA(n-ブチルアクリレート)、EHA(エチルヘキシルアクリレート)及びEGDM(エチレングリコールジメタクリレート)から表2及び表3に示す組成で重合した各種ポリマー」が、それらを満たすものかどうか不明である点。 (相違点2) 血液を分離するために用いられる組成物が、本件発明1では「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用」組成物であるのに対し、甲1発明では「血清分離用シーラント」である点。 ウ 判断 (ア)事案に鑑み、相違点2について検討する。 a 上記第5の1(2)でも述べたように、血清と血漿は成分的に同じものではなく(血漿には凝固因子であるフィブリノゲンが含まれるが血清には含まれない)、その分離手法も異なる(血漿の場合には抗凝固剤を入れるが、血清の場合には入れないため、血清は血餅との分離となる)ものであるから、「血清分離用シーラント」を「血漿分離用組成物」として用いる動機はない。ましてや、本件発明1は、血液から血漿だけを分離するものではなく、血液から「白血球含有血漿」を分離するものであるから、白血球が含有されていない「血清」を分離するためのシーラントを、「白血球含有血漿」を分離するものために用いることは阻害要因があるともいえる。 b また、甲8には「赤血球層」と「白血球・血小板含有血漿層」とに分離する製品について記載されているが、それにどのような分離用組成物を用いるのか記載されていない。そして、その余の甲2~7についても、血液から「白血球含有血漿を分離する」ために用いられる血漿分離用組成物について何ら記載されていない。 c してみれば、相違点2は、甲2~8の記載を参照しても、甲1発明から当業者が容易になしえたものとはいえない。 (イ)小括 よって、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明ではなく、そして、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもない。 (2)本件発明13について ア 対比、一致点・相違点 本件発明13は、本件発明1の「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物」の下線部を「血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物」の下線部とした発明であり、その余の発明特定事項は両者とも同じである。 本件発明13の比重は「1.060以上1.085以下」であるが、上記(1)ア(エ)で述べたとおり、本件発明1の「25℃での比重が、1.060以上1.095以下」とは、「25℃での比重が、1.060以上1.065以下」の範囲で共通するといえる。 そうすると、本件発明13と甲1発明とは、上記(1)イで記載した(一致点)で一致し、上記(相違点1)及び以下の(相違点3)で相違することになる。 (相違点3) 血液を分離するために用いられる組成物が、本件発明13では「血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用」組成物であるのに対し、甲1発明では「血清分離用シーラント」である点。 イ 判断 相違点3について検討する。 a 上記(1)ウ(ア)aでも述べたように、血清と血漿は成分的に同じものではなく(血漿には凝固因子であるフィブリノゲンが含まれるが血清には含まれない)、その分離手法も異なる(血漿の場合には抗凝固剤を入れるが、血清の場合には入れないため、血清は血餅との分離となる)ものであるから、「血清分離用シーラント」を「血漿分離用組成物」として用いる動機はない。ましてや、本件発明1は、血液から血漿だけを分離するものではなく、血液から「単核球含有血漿」を分離するものであるから、単核球が含有されていない「血清」を分離するためのシーラントを、「単核球含有血漿」を分離するものために用いることは阻害要因があるともいえる。 b また、甲8には「赤血球層」と「白血球・血小板含有血漿層」とに分離する製品について記載され、単核球は白血球の1種といえるとしても、上記分離にどのような分離用組成物を用いるのか記載されていない。そして、その余の甲2~7についても、血液から「単核球含有血漿を分離する」ために用いられる血漿分離用組成物について何ら記載されていない。 c してみれば、相違点3は、甲2~8の記載を参照しても、甲1発明から当業者が容易になしえたものとはいえない。 (イ)小括 よって、本件発明13は、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明ではなく、そして、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもない。 (3)本件発明2~9並びに本件発明15及び17~27について 本件発明2~9は本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明ではなく、そして、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもない。 本件発明15及び17~27は本件発明13を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明13と同様に、甲1発明ではなく、そして、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもない。 (4)まとめ したがって、本件発明1~9並びに本件発明13、15及び17~27に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでもなく、そして、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものものでもないことから、取消理由1及び2によって、本件発明1~9並びに本件発明13、15及び17~27に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由3について (1)請求項の記載 本件発明1及び13は、本件訂正により、上記第3で記載したとおりの発明となり、前者は「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物」の発明、後者は「血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物」の発明となっている。 (2)本件特許明細書の記載 本件特許明細書には、上記請求項の記載に関連して、 「【0045】 本発明の血清または血漿分離用組成物が血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物(白血球含有血漿分離用組成物)である場合に、上記白血球含有血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.060以上、より好ましくは1.070以上、好ましくは1.095以下、より好ましくは1.085以下である。上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液から白血球含有血漿を良好に分離することができ、赤血球の混入量が少なくかつ白血球の含有量が多い血漿を良好に得ることができる。例えば、血液中の各白血球成分の組成比率と同等の組成比率で白血球を回収することができる。また、上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、低温下や、遠心力が低い場合でも、良好な強度を有する隔壁を形成することができる。また、上記比重が上記下限以上であると、滅菌時の発泡をかなり抑えることができる。 【0046】 本発明の血清または血漿分離用組成物が血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物(単核球含有血漿分離用組成物)である場合に、上記単核球含有血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.060以上、より好ましくは1.070以上、好ましくは1.085以下、より好ましくは1.080以下である。上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液から単核球含有血漿を良好に分離することができ、赤血球の混入量が少なくかつ単核球の含有量が多い血漿を良好に得ることができる。また、上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、低温下や、遠心力が低い場合でも、良好な強度を有する隔壁を形成することができる。また、上記比重が上記下限以上であると、滅菌時の発泡をかなり抑えることができる。」 「【0053】 滅菌時の発泡を抑制する観点及び隔壁を良好に形成させる観点から、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、15000以上100000以下である。上記重量平均分子量が15000未満であると、滅菌時に発泡しやすい。上記重量平均分子量が100000を超えると、血清または血漿分離用組成物の粘度が高くなるため、隔壁を形成しないことがある。」と記載されている。 そして、実施例として、 「【0131】 (実施例1) (メタ)アクリル酸エステル系重合体の作製: アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させ、常温で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得た。得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重を表1に示す。なお、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重は上述した方法により測定した。 【0132】 血清または血漿分離用組成物の作製: 表1に記載の配合割合で、得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体と親水性シリカと疎水性シリカとを混合し、得られた混合液に、ポリエーテル変性シリコーンオイルを添加し、更に混合することにより、血清または血漿分離用組成物を作製した。 【0133】 (実施例2~4及び比較例1~3) 常温で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、血清または血漿分離用組成物を作製した。 【0134】 (実施例5~25及び比較例4~6) 常温で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重を表2,3のように変更したこと、並びに、配合成分の種類及び配合量を表2,3のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、血清または血漿分離用組成物を作製した。」 「【0147】 実施例19~22で得られた血漿分離用組成物では、下記式により、赤血球の除去率、白血球の回収率、顆粒球の除去率、及び単核球の回収率をそれぞれ算出し、また、下記の判定基準により白血球の回収を評価した。実施例23~25で得られた血漿分離用組成物では、下記の判定基準により白血球の回収を評価した。 ・・・ 【0153】 組成及び結果を下記の表1~3に示す。」と記載され、表1~3として以下の表が記載されている。 【表1】 【表2】 【表3】 「【0157】 表1から明らかなように、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量が15000以上である場合には、滅菌時の発泡が効果的に抑制されている。 【0158】 表2から明らかなように、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、微粉末シリカ、シリコーンオイルの全てが含まれている場合には、血清または血漿分離用組成物の相分離が効果的に抑制されている。特に、シリコーンオイルのHLBが1以上10以下であると、血清または血漿分離用組成物の相分離がより効果的に抑制されている。また、シリコーンオイルの含有量が0.10重量%以上2.00重量%以下であると、血清または血漿分離用組成物の相分離が更に効果的に抑制されている。 【0159】 表3から明らかなように、血漿分離用組成物の比重を調整することにより、赤血球を除去することができかつ白血球を回収することができている。また、実施例19,20では、赤血球及び顆粒球を除去することができ、かつ、単核球を回収することができている。 【0160】 なお、実施例1~4で得られた血清または血漿分離用組成物では、相分離の発生が抑えられていた。また、実施例5~18で得られた血清または血漿分離用組成物では、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量が15000以上であり、滅菌時の発泡が抑えられていた。また、実施例19~25で得られた血漿分離用組成物では、滅菌時の発泡及び相分離の発生が抑えられていた。」 (3)判断 上記第4で記載したように、取消理由通知書の取消理由3では「電子線やγ線等を照射した際の発泡を抑制でき、かつ保存中の相分離の発生を抑制できるという課題を解決したものとして実施例に記載されているものは、アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させたものだけであり、アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルの重合体以外の、種々のモノマーから得られる多種多様な(メタ)アクリル酸エステル系重合体のすべてにおいても、「重量平均分子量が15000以上100000以下」ということだけで、上記課題を解決できると認識できるとはいえない。」ことを指摘したが、本件訂正により、「重量平均分子量が15000以上100000以下」との発明特定事項の他に、血漿分離用組成物の「25℃での比重が、1.060以上1.095以下」又は「25℃での比重が、1.060以上1.085以下」との比重に関する発明特定事項も追加されている。 そして、上記(2)で摘記したように、比較例においてもアクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させ、「重量平均分子量」が本件発明1及び13で特定される範囲を満たさないもの、血漿分離用組成物の「比重」が本件発明1及び13で特定される範囲を満たさないものを作製して、実施例との比較を行っていることから、本件発明1及び13において(メタ)アクリル酸エステル系重合体がどのような作製方法により作成されたかは本件発明の課題を解決するうえで本質的なことではなく、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の「重量平均分子量」及び血漿分離用組成物の「25℃での比重」の範囲を特定することが本件発明の課題を解決するうえで本質的なことといえる。 さらに、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の「重量平均分子量」及び血漿分離用組成物の「25℃での比重」の範囲を特定することにより、発泡を抑制できかつ保存中の相分離の発生を抑制できるという課題を解決するのみならず、白血球又は単核球を良好に回収することができるという効果も得ている。 そうすると、本件発明の課題を解決し、本件発明の効果を得るうえで、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が「アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させ」て得たアクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルの重合体でなければならないということではないから、これが特定されていないからといって、本件発明1及びそれを引用する本件発明2~9並びに本件発明13及びそれを引用する本件発明15及び17~27が発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえない。 よって、訂正された特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていないとはいえない。 (4)まとめ したがって、本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないことから、取消理由3によって、本件発明1~9並びに本件発明13、15及び17~27に係る特許を取り消すことはできない。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由(実施可能要件) 申立人は、特許異議申立書で、以下の申立理由も主張している。 本件発明において、どのような重合体を用いた場合に本件発明の効果が得られるのか把握することができないことから、本件発明を実施するには過度の試行錯誤が強いられる。 よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないことから、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 当審の判断 上記第5の2(2)で摘記した本件特許明細書(特に表1~3参照)には、本件発明の効果が得られる重合体及びそれを含有する血漿分離用組成物の実施例が、作製方法、用いる原料の商品名とともに、多数記載されており、本件発明を実施するために過度の試行錯誤が強いられることはない。 よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由によって本件発明1~9並びに本件発明13、15及び17~27に係る特許取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~9、13、15及び17~27に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項請求項1~9、13、15及び17~27に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 一方、請求項10~12、14及び16に係る特許は、上記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項10~12、14及び16に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700280

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同じ論点・分野の審決(審決分類)1,061件(113・G01N、121・G01N、536・G01N ほか)
  • 2025-701038異議申立 / 2026-03-25 / 維持分析装置
    共通の審決分類: 113・G01N、121・G01N、536・G01N、537・G01N
  • 2023-701378異議申立 / 2025-10-15 / 訂正認容測定誤差の低減方法
    共通の審決分類: 113・G01N、121・G01N、536・G01N、537・G01N
  • 2023-701195異議申立 / 2024-11-20 / 訂正認容アドレノメデュリン濃度変動による予後予測の情報提供方法及びその試薬
    共通の審決分類: 113・G01N、121・G01N、536・G01N、537・G01N
  • 2023-700560異議申立 / 2024-03-19 / 訂正認容品質判定装置
    共通の審決分類: 113・G01N、121・G01N、536・G01N、537・G01N
  • 2022-700792異議申立 / 2024-02-19 / 訂正認容AIを用いた病理診断支援方法、及び支援装置
    共通の審決分類: 113・G01N、121・G01N、536・G01N、537・G01N

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