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特許異議申立

2020-700607

ヘモグロビン類測定用試薬及びヘモグロビン類の測定方法

審判番号
2020-700607
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-566860
登録番号
特許第6651066号(P6651066)
請求日
2020年08月17日
審決日
2021年06月21日
公報発行日
2021年09月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】積水メディカル株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
  • 【権利者】徳山積水工業株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
  • 【異議申立人】鈴木 敏明
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 福島 浩司
  • 審判官 伊藤 幸仙
分類
P1651.121-YAA(G01N) / P1651.113-YAA(G01N) / P1651.537-YAA(G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6651066号発明「ヘモグロビン類測定用試薬及びヘモグロビン類の測定方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6651066号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6651066号の請求項1、5及び6に係る特許を維持する。 特許第6651066号の請求項2~4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6651066号の請求項1~6に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)9月5日(優先権主張 2018年9月12日  日本)を国際出願日とする出願であって、令和2年1月23日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年8月17日に特許異議申立人鈴木 敏明(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年10月28日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年12月24日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和3年2月9日に意見書を提出した。そして、当審は、同年3月17日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年5月20日に意見書の提出及び訂正の請求(以下当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)を行った。 なお、上記のとおり、特許権者は本件訂正請求を行ったが、下記に記載のとおり、本件訂正請求によって特許請求の範囲の「非イオン性界面活性剤」は「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」のみに減縮され、「非イオン性界面活性剤」が「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」については申立人は既に意見を述べており、事件において提出された全ての証拠や意見を踏まえてさらに審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したため、申立人に意見書の提出を求めなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容(下線は、訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記非イオン性界面活性剤が、下記成分A1、下記成分A2、下記成分A3、下記成分A4、下記成分A5又は下記成分A6である、ヘモグロビン類測定用試薬。 成分A1:オキシエチレン基の平均付加モル数が10以上20以下であり、かつアルキル基の炭素数が12以上17以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル 成分A2:オキシエチレン基の平均付加モル数が40以上60以下であるポリオキシエチレンステアリルエーテル 成分A3:オキシエチレン基の平均付加モル数が9以上15以下であるポリオキシエチレンオレイルエーテル 成分A4:オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上10以下であり、かつアルキル基の炭素数が11以上15以下であるポリオキシエチレン-sec-アルキルエーテル 成分A5:オキシエチレン基の平均付加モル数が15であるポリオキシエチレントリデシルエーテル 成分A6:HLB値が11以上15以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル」 とあるのを、 「前記非イオン性界面活性剤が、オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテルである、ヘモグロビン類測定用試薬。」 に訂正する。 そして、請求項1の記載を引用する、請求項5,6も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1~4のいずれか1項」とあるのを、「請求項1」に訂正する。 そして、請求項5に係る発明を引用する請求項6も同様に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1~5のいずれか1項」とあるのを、「請求項1又は5」に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落【0186】において、「実施例2~23、参考例24~30」とあるのを、 「実施例2,3、参考例4~30」に訂正する。 明細書の段落【0194】、【0195】、【0197】、【0201】、【0206】、【0207】、【0214】において、「実施例2~23、参考例1,24~30」とあるのを、「実施例2,3、参考例1,4~30」に訂正する。 明細書の段落【0209】の【表2】において、「実施例4」、「実施例5」、「実施例6」、「実施例7」及び「実施例8」とあるのをそれぞれ、「参考例4」、「参考例5」、「参考例6」、「参考例7」及び「参考例8」に訂正する。 明細書の段落【0210】の【表3】において、「実施例9」、「実施例10」、「実施例11」、 「実施例12」、「実施例13」、「実施例14」、「実施例15」、「実施例16」及び「実施例17」とあるのをそれぞれ、「参考例9」、「参考例10」、「参考例11」、「参考例12」、「参考例13」、「参考例14」、「参考例15」、「参考例16」及び「参考例17」に訂正する。 明細書の段落【0212】の【表5】において、「実施例18」、「実施例19」、「実施例20」、「実施例21」、「実施例22」及び「実施例23」とあるのをそれぞれ、「参考例18」、「参考例19」、「参考例20」、「参考例21」、「参考例22」及び「参考例23」に訂正する。 明細書の段落【0215】において、「実施例31~38」とあるのを、「実施例31,32、参考例33~38」に訂正する。 明細書の段落【0216】において、「実施例32,34,36~38」とあるのを、「実施例32、参考例34,36~38」に訂正する。 明細書の段落【0219】及び【0224】において、「実施例31~36」とあるのを、「実施例31,32、参考例33~36」に訂正する。 明細書の段落【0231】の【表7】において、「実施例33」、「実施例34」、「実施例35」、「実施例36」、「実施例37」及び「実施例38」とあるのをそれぞれ、「参考例33」、 「参考例34」、「参考例35」、「参考例36」、「参考例37」及び「参考例38」に訂正する。 明細書の段落【0232】において、「実施例31~36」、「実施例37,38」、「実施例31~36」及び「実施例31~36」とあるのをそれぞれ、「実施例31,32、参考例33~38」、「参考例37,38」、「実施例31,32、参考例33~38」及び「実施例31,32、参考例33~38」に 訂正する。 なお、訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が訂正の対象である請求項1を引用するものであるから、訂正前において一群の請求項に該当し、上記訂正は一群の請求項に対してされたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 上記訂正事項1は、請求項1に規定されている非イオン性界面活性剤を、訂正前の請求項1に規定されていた成分A1の下位概念である「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0073】に、「界面活性剤の溶解性を高める観点、良好に溶血させ、高い精度でヘモグロビン類を測定する観点から、成分A1におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは11以上、好ましくは19以下である。」と記載され、段落【0208】及び【0209】に実施例2及び3として、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」が記載されているから、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2~4について 訂正事項2~4は、特許請求の範囲の請求項2~4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、この訂正が、新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかである。 (3)訂正事項5及び6について 訂正事項5に係る請求項5についての訂正及び訂正事項6に係る請求項6についての訂正は、訂正事項2~4により請求項2~4が削除されたことに伴い、訂正前の請求項5及び6が引用する請求項2~4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、この訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 (4)訂正事項7について 訂正事項7は、上記訂正事項1~6に伴って、訂正後の請求項1に記載の特許発明及び該請求項1に従属する訂正後の請求項5、6に記載の特許発明に、実施例4~23、33~38が含まれなくなったことに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、この訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1~6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「  【請求項1】 陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬であって、 非イオン性界面活性剤を含み、 前記非イオン性界面活性剤が、オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテルである、ヘモグロビン類測定用試薬。 【請求項2】 削除 【請求項3】 削除 【請求項4】 削除 【請求項5】 前記非イオン性界面活性剤の含有量が、0.01重量%以上1.0重量%以下である、請求項1に記載のヘモグロビン類測定用試薬。 【請求項6】 赤血球含有検体と、請求項1又は5に記載のヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る工程と、 前記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する工程とを備える、ヘモグロビン類の測定方法。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由(決定の予告)の概要 請求項1~6に係る特許に対して、当審が令和3年3月17日に特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 (1)請求項1、3~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1~5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用文献1:特開2001-021555号公報(甲1号証) 引用文献2:特開2007-163182号公報(甲4号証) 引用文献3:特開2013-036959号公報(甲5号証) 引用文献4:特開2014-025918号公報(甲6号証) 引用文献5:Masahiro FUKUDA, Misao KOIDE, Kazuo OHBU, "Effects of Hydrophile-Lipophile Balance of Alkyl Poly (oxyethylene) Ethers on Hemolysis", Journal of Japan Oil Chemists' Society, JP, Japan Oil Chemists' Society, 1987年8月20日, Volume 36 Issue 8 Pages 576-580(甲7号証) 2 引用文献の記載 (1)引用文献1について ア 引用文献1(特開2001-021555号公報、甲1号証)に記載された事項 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 (引1a)「【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬であって、カオトロピックイオンを含有することを特徴とする溶血試薬を提供する。また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の溶血試薬であって、さらに緩衝剤を含有し、pHが5.0~10.0であることを特徴とする溶血試薬を提供する。また、請求項3記載の本発明は、請求項1または2記載の溶血試薬を用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法を提供する。以下に本発明を詳細に説明する。」 (引1b)「【0019】上記溶血試薬には、以下の物質を添加してもよい。 (1)無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの塩類の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1~1500mMである。 (2)pH調節剤として、公知の酸、塩基を添加してもよい。酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸等が挙げられ、また、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化ストロンチウム、水酸化セシウム、水酸化ニッケル、水酸化アルミニウム、水酸化カドミウム等が挙げられる。 これらの酸、塩基の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、0.001~500mMである。 (3)メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトンなどの水溶性有機溶媒と混合してもよい。これらの有機溶媒の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0~80体積%であり、カオトロピックイオン、無機酸、有機酸、これらの塩などが析出しない程度で用いるのが好ましい。 【0020】(4)界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を添加してもよい。界面活性剤を用いることにより、溶血を効率よく行うだけでなく、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等で測定を行う場合、溶血試薬の通過する流路等を洗浄する効果がある。上記界面活性剤は、好ましくはノニオン性界面活性剤が使用され、例えば、ポリオキシエチレン類(以下、ポリオキシエチレンをPOE、エチレンオキシド付加モル数を(n)で表す。)、POE(7)デシルエーテル、POE(n)ドデシルエーテル、POE(10)トリデシルエーテル、POE(11)テトラデシルエーテル、POE(n)セチルエーテル、POE(n)ステアリルエーテル、POE(n)オレイルエーテル、POE(17)セチルーステアリルエーテル、POE(n)オクチルフェニルエーテル、POE(n)ノニルフェニルエーテル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、POE(n)モノラウリン酸ソルビタン、POE(n)モノパルミチン酸ソルビタン、POE(n)モノステアリン酸ソルビタン、POE(n)モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でもまた複数混合して用いてもよい。 【0021】これらの界面活性剤の添加量は、好ましくは0.01~10重量%である。」 (引1c)「【0041】 【実施例】次に、実施例、比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。 【0042】(実施例1) 〔充填剤1の調製:カルボキシル基〕テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及びメタクリル酸(和光純薬社製)150gの混合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2500mlに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で75℃に昇温し、8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。 【0043】〔カラムの充填〕得られた充填剤1をカラムに以下のようにして充填した。粒子0.7gを、50mMリン酸緩衝液(pH5.8)30mlに分散し、5分間超音波処理した後、よく撹拌した。全量をステンレス製の空カラム(4.6φ×30mm)を接続したパッカー(梅谷精機社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(サヌキ工業社製)を接続し、圧力300kg/cm2 で定圧充填した。 【0044】〔ヘモグロビン類の測定〕得られたカラムを用いて、以下の測定条件でヘモグロビン類の測定を行った。 (測定条件) システム:送液ポンプ:LC-9A(島津製作所社製) オートサンプラ:ASU-420(積水化学社製) 検出器:SPD-6AV(島津製作所社製) 溶離液:溶離液A:70mMのリン酸緩衝液(和光純薬社製;pH5.7) 溶離液B:70mMのリン酸緩衝液(pH8.5)、250mM硝酸ナトリウム 測定開始より0~2分の間は溶離液Aを流し、2~2.1分の間は溶離液Bを流し、2.1~3分の間は溶離液Aを流した。 流速:2.0ml/分 検出波長:415nm 試料注入量:10μl 【0045】(測定試料:A)健常人血を採血し、抗血液凝固剤としてフッ化ナトリウムを10mg/mlとなるよう添加した。これに、150倍量の溶血試薬(界面活性剤として0.1重量%ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)とカオトロピックイオンを生成する化合物として100mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液からなる溶血試薬(pH7.5))を添加して溶血し、測定試料とした。 (測定試料B;AHb)健常人血10mlにフッ化ナトリウムを添加し(10mg/ml)、さらに0.3重量%アセトアルデヒドの生理食塩水溶液1mlを添加し、37℃で3時間反応させた。これに、150倍量の溶血試薬(0.1重量%トリトンX-100と100mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液からなる溶血試薬(pH7.5))を添加して溶血し、測定試料とした。 【0046】(測定結果)上記測定条件により、試料を測定して得られたクロマトグラムを図1、2に示す。図1は、試料Aを測定した結果、図2は、試料Bを測定した結果を示す。ピーク1はHbA1a及びb、ピーク2はHbF、ピーク3は不安定型HbA1c、ピーク4は安定型HbA1c、ピーク5はHbA0、ピーク6はAHbを示す。図2では、ピーク4と6とが良好に分離されている。また、上記測定試料A、Bを5検体測定し安定型HbA1cの測定精度(SD;標準偏差、CV;変動係数値)を求めた結果を表1に示す。」 イ 引用文献1に記載された発明 (ア)上記(引1a)及び(引1b)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬であって、 界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤である、POE(10)トリデシルエーテル、POE(11)テトラデシルエーテルを、単独でもまた複数混合して用いる溶血試薬。」 (イ)上記(引1c)より、引用文献1には、実施例として以下の「測定試料:A」が記載されている。 「測定試料:Aとして、健常人血を採血し、抗血液凝固剤としてフッ化ナトリウムを10mg/mlとなるよう添加し、これに、150倍量の溶血試薬(界面活性剤として0.1重量%ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)とカオトロピックイオンを生成する化合物として100mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液からなる溶血試薬(pH7.5))を添加して溶血した測定試料:A。」 (ウ)上記(イ)の「測定試料:A」に使用される溶血試薬は、上記(引1a)より「カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬」であるから、上記bより引用文献1には、実施例としては以下の発明(以下「引用発明’」という。)が記載されている。 「カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬であって、 界面活性剤として0.1重量%ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)とカオトロピックイオンを生成する化合物として100mMグアニジン及び10mMリン酸緩衝溶液からなる溶血試薬(pH7.5)」 (2)引用文献2について ア 引用文献2に記載された事項 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 (引2a)「【0015】 本発明に係る溶血試薬は、HLB値が11~13の範囲のノニオン性界面活性剤であって、該界面活性剤を含有し、糖化タンパク質を検出するための酵素が有する活性を阻害しないことを特徴とするものである。 【発明の効果】 【0016】 本発明に係る溶血方法および溶血試薬によれば、迅速に赤血球を完全溶血することができ、且つ酵素への活性阻害もない。 また、本発明に係る溶血方法および溶血試薬は、糖尿病用のHbA1c測定マイクロチップに使用するのに特に好適である。」 (引2b)「【0022】 本発明者らは、前記特定の成分を検出するための酵素の活性を低下させることがなく、同時に迅速に完全溶血の能力を持つ溶血試薬を探索するために、数多くのノニオン性界面活性剤について検討した結果、HLB値が11~13の範囲のノニオン性界面活性剤が迅速に完全溶血でき、且つ酵素の活性に阻害がないことを見出すに至った。 また、上記特性値を満たすノニオン性界面活性剤は、さらにエーテル型ノニオン性界面活性剤であることにより、完全溶血するまでの時間をさらに短くすることができた。 HLB値とは界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値であり、Hydrophile-Lipophile Balanceの頭文字を取ったものである。親水親油バランスともいう。この概念は1949年にAtlasPowderCompanyのウィリアム・グリフィンによって提唱された。計算によって決定する方法がいくつか提案されている。 (1)アトラス法: エステル系の界面活性剤について、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとし、HLB値を20(1-S/A)で定義する。 (2)グリフィン法: HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量で定義する。 (3)デイビス法: 官能基によって決まる基数を定め(例えばメチル基やメチレン鎖は親油基で0.475、水酸基は親水基で1.9など)、HLB値=7+親水基の基数の総和-親油基の基数の総和で定義する。界面活性剤の混合物のHLB値は各成分のHLB値の加重平均となる。 (4)標準試料にHLB値を決定したい界面活性剤を添加して乳化し、実験的に決定する方法もあるが煩雑であるためあまり行われない。 (5)高速液体クロマトグラフィーでの保持時間から決定する方法もある。 本発明には、有機概念図(甲田善生,「有機概念図 -基礎と応用-」,p.227(1984)三共出版)に基づくIOB方法で求めたHLB値を用いた。IOB値は界面活性剤の無機性値と有機性値の比で、HLB値はIOB値×10の値である。 【0023】 本発明においては、下記一般式(1)で表わされるポリオキシエチレン系ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。 一般式(1) R-(OCH2CH2)nOH 上記一般式(1)中、Rは、炭素数8~20の直鎖でも分岐していてもよい脂肪族炭化水素基、炭素数8~20の直鎖でも分岐していてもよいアルキル基を置換基として有していてもよい脂環式炭化水素基、または、炭素数8~20の直鎖でも分岐していてもよいアルキル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基であり、nは5~20の整数である。 上記脂環式炭化水素基としては、1つの環の炭素数が5~6であり、脂環式炭化水素環の数が1~4であるものが好ましく挙げられる。 上記芳香属炭化水素基としては、1つの環の炭素数が5~6であり、芳香属炭化水素環の数が1~4であるものが好ましく挙げられる。 【0024】 ポリオキシエチレン系ノニオン性界面活性剤として好ましくは、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル及び、炭素数8~20の直鎖でも分岐していてもよいアルキル基を置換基として有していてもよいポリオキシエチレンフェニルエーテルが挙げられる。 【0025】 本発明においてさらに好ましく使用されるノニオン性界面活性剤としては、 ポリオキシエチレンセチルエーテル(オキシエチレン単位10~17のもの)、 ポリオキシエチレンオレイルエーテル(オキシエチレン単位12~20のもの)、 ポリオキシエチレンステアリルエーテル(オキシエチレン単位11~20のもの)、 ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン単位7~12のもの)、 ポリオキシエチレンイソセチルエーテル(オキシエチレン単位10~15のもの)、 ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル(オキシエチレン単位10~20のもの)、 ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、 ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル(オキシエチレン単位16~20のもの)及び ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(該アルキル基は、炭素数が8~20であり、直鎖でも分岐していてもよい。例えば、オキシエチレン単位平均9~10含有 Triton X-100)が挙げられる。 【0026】 本発明において溶血剤に用いられる上記界面活性剤の使用濃度は、0.05%~5%(質量濃度)が好ましく、好ましくは0.05%~1%、より好ましくは0.1%~1%、さらに好ましくは0.1%~0.2%である。この濃度範囲であれば、迅速な溶血能力を持つと同時に、エンザイムイムノアッセイで通常用いられる多くの標識酵素の酵素活性に悪影響を与えることもない。」 (引2c)「【0044】 表1に、使用濃度0.1%における各化合物の特性と迅速溶血評価結果、酵素阻害評価結果をまとめて示す。完全溶血を○とし、それ以外を×とした。また、0.05%、0.2%、0.5%および1%の各濃度においても同様の結果を得た。 【0045】 上記のノニオン性界面活性剤の溶血性能と酵素への阻害評価の結果から、本願発明のノニオン性界面活性剤(化合物1~化合物6)、すなわち、11~13という特定のHLB値範囲内のポリオキシエチレンエーテルが優れた溶血能力を有し、且つ酵素活性の阻害性も無いことがわかった。比較化合物1~比較化合物3はイオン性界面活性剤であり、強力な溶血力を有するが、酵素活性を阻害性した。比較化合物4はノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレンラウリルエーテルであるが、HLB値が10であり、酵素活性を阻害し、弱い溶血力が確認された。また、比較化合物5、6はエステル系のノニオン性界面活性剤であり、酵素活性の阻害を示さなかったが、強力な溶血力を持っていなかった。 【0046】 【表1】 」 イ 引用文献2に記載された技術事項 (ア)上記(引2a)より、引用文献2には、「HLB値が11~13の範囲のノニオン性界面活性剤を含有」する「溶血試薬は」、「糖化タンパク質を検出するための酵素が有する活性を阻害しない」ものであって、「迅速に赤血球を完全溶血することができ」、「糖尿病用のHbA1c測定マイクロチップに使用するのに特に好適である」旨記載されている。 (イ)上記(引2b)より、引用文献2には、「迅速に完全溶血でき」る「HLB値が11~13の範囲のノニオン性界面活性剤が」、「エーテル型ノニオン性界面活性剤であることにより、完全溶血するまでの時間をさらに短くすることができ」る旨、「ノニオン性界面活性剤として」、「ポリオキシエチレンセチルエーテル(オキシエチレン単位10~17のもの)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(オキシエチレン単位12~20のもの)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン単位7~12のもの)」「が挙げられる」旨記載されている。 (ウ)上記(引2c)より、引用文献2には、「11~13という特定のHLB値範囲内のポリオキシエチレンエーテル」である「ノニオン性界面活性剤(化合物1~化合物6)」は、「優れた溶血能力を有」する旨記載され、「迅速溶血評価結果」が示された「表1」より、ポリオキシエチレンラウリルエーテルである化合物1~3と、ポリオキシエチレンセチルエーテルである化合物5が、Triton X-100である化合物6と同様に「迅速溶血評価結果」が良好である旨記載されている。 (エ)上記(ア)~(ウ)より引用文献2には、以下の技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されている。 「HLB値が11~13の範囲のノニオン性界面活性剤を含有する溶血試薬は、糖化タンパク質を検出するための酵素が有する活性を阻害しないものであって、迅速に赤血球を完全溶血することができ、糖尿病用のHbA1c測定マイクロチップに使用するのに特に好適であり、 迅速に完全溶血できるHLB値が11~13の範囲のノニオン性界面活性剤は、エーテル型ノニオン性界面活性剤であることにより、完全溶血するまでの時間をさらに短くすることができ、 ノニオン性界面活性剤として、 ポリオキシエチレンセチルエーテル(オキシエチレン単位10~17のもの)、 ポリオキシエチレンオレイルエーテル(オキシエチレン単位12~20のもの)、 ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン単位7~12のもの) が挙げられ、 実際に、ポリオキシエチレンラウリルエーテルである化合物1~3と、ポリオキシエチレンセチルエーテルである化合物5が、Triton X-100である化合物6と同様に迅速溶血評価結果が良好である。」 (3)引用文献3について ア 引用文献3に記載された事項 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (引3a)「【0015】 本発明の測定方法の特徴的な構成 本発明の全血検体の成分測定方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。 (1)全血検体を、酸化剤および界面活性剤を含む溶液と希釈する工程。 (2)希釈した検体の目的成分を測定する工程。 (3)希釈した検体のヘモグロビン(Hb)量を定量する工程。 (4)(2)における測定結果を、(3)における定量値に基づいてヘマトクリット(Ht)補正を行うことにより、血清または血漿を測定した際の測定結果に換算する工程。」 (引3b)「【0018】 「目的成分の測定」 本発明の成分測定方法が対象とする目的成分およびその測定方法は、特に限定されない。 目的成分としては、総タンパク質(TP)、アルブミン(Alb)、コリンエステラーゼ、乳酸脱水素酵素(LDH)、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン(T.B)、直接ビリルビン(D.B) 、アミラーゼ(AMY)、クレアチニン(CRE)、クレアチンキナーゼ(CK)、総コレステロール(T-CHO)、中性脂肪(トリグリセリド)、HDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)、尿素窒素(BUN)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)、カルシウム(CA)、無機リン(IP)、鉄(血清鉄:FE)、不飽和鉄結合能(UIBC)、グルコース(GLU)、HbA1c、グリコアルブミン、インスリン、C反応性蛋白(CRP)、CEA、AFP、PSA、BNP、NT-proBNPなどが挙げられる。 目的成分の測定方法としては、検体と目的成分に反応する試薬とを接触させることにより生じる物理化学的変化を測定する方法など、種々の公知の測定原理を用いた方法が挙げられる。物理化学的変化としては、色素の化学変化や凝集による光学的・電気化学的変化などが例示され、その手段として、酵素などを介してもよい。 波長は、適宜設定すればよく300nmから850nmの間であれば、特に限定されない。ヘモグロビン量の定量と同じ波長を用いることもできる。」 (引3c)「【0025】 「界面活性剤」 本発明の成分測定方法で用いる界面活性剤としては、特に限定されないが、以下の(a)~(g)のうちいずれかが例示できる。 (a)下記式(I)で示される化合物 R-O-X ・・・(I) (Rは、炭素数が9~18のアルキル基または置換アルキル基であり、Xは、ポリオキシエチレン残基である。) このような化合物としては、エマルゲン130K、エマルゲン150、エマルゲン147、エマルゲン120が例示できる。」 (引3d)「【0032】 後述の実施例でも示すように、全血検体を、本発明の方法で用いる酸化剤および界面活性剤を含む溶液で希釈することによって、迅速にHbの吸光度が一定になる。 このような現象がおこる理由は、本発明の界面活性剤を用いることでHbの溶血および試料の均一化が迅速に行われ、同時に、本発明の酸化剤によってHbがメト化されるため、迅速にヘモグロビンの酸化還元状態を一定にすることができるからであると考察される。 これにより、好ましくは希釈後60秒、50秒、40秒、30秒、20秒、10秒以下でHbの吸光度が一定になり、迅速なHb定量が可能となることから、トータルでの測定時間が、好ましくは10分、5分、3分、2分、60秒以下と大幅に短縮されるため、迅速な測定が可能となる。」 イ 引用文献3に記載された技術事項 上記(引3a)~(引3c)より、引用文献3には、以下の技術事項(以下「技術事項3」という。)が記載されている。 「全血検体の成分測定方法は、 全血検体を、界面活性剤を含む溶液と希釈する工程と、 希釈した検体の目的成分を測定する工程とを含み、 成分測定方法が対象とする目的成分は、HbA1cであり、 成分測定方法で用いる界面活性剤としては、エマルゲン147、エマルゲン120が例示され、 これらの界面活性剤を用いることでHbの溶血および試料の均一化が迅速に行われる技術。」 (4)引用文献4について ア 引用文献4に記載された事項 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 (引4a)「【0030】 界面活性剤AとBとの組み合わせによって血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除が可能となるメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように考えられる。界面活性剤Aに、血球への溶解性の高い界面活性剤Bが組み合わされることにより、界面活性剤A及びBが混合ミセルを形成し、この混合ミセルが、その割合によって界面活性剤Aの血球への選択性を邪魔することなく血球に選択的に作用し、界面活性剤Bの高い溶解性により接触した血球を迅速に溶解する。すなわち、血球のすばやく排除を可能とすることで、がん細胞へのダメージがより抑制されると考えられる。ただし、本開示はこれらのメカニズムに限定されて解釈されなくてもよい。」 (引4b)「【0045】 [界面活性剤B] 本開示の処理方法に使用する界面活性剤Bは、赤血球を溶解する能力が前記界面活性剤Aのそれよりも高い非イオン性界面活性剤である。本明細書において、「赤血球の溶解」とは、赤血球を含む試料と混合した場合の溶血が生じる現象をいい、例えば、同じ濃度及び/又は混合比で処理した場合に溶血させるまでの時間が速いほど赤血球を溶解する能力が高いと判断できる。溶血とは赤血球の細胞膜が、物理的又は化学的、生物学的など様々な要因によって損傷や溶解し、ヘモグロビン等が細胞外に漏出し赤血球が死に至る現象のことを言う。本開示の処理方法に使用する界面活性剤Bは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、その白血球の成育阻害の能力が前記界面活性剤Aのそれよりも高いことが好ましい。 【0046】 界面活性剤Bは、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、非イオン性界面活性剤であって、一又は複数の実施形態において、ポリオキシエチレンポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO=13~22)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤が挙げられる。 【0047】 ポリオキシエチレンポリオキシアルキレンアルキルエーテル型の界面活性剤Bは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、好ましくは下記式(III)で表わされる非イオン性界面活性剤である。 R3-O-(AO)m/(EO)n-R4  (III) [前記式(III)中、R3は炭素数1~24のアルキル基であり、R4は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、AOは炭素数3~6のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、m及びnはそれぞれAO及びEOの平均付加モル数である。mは1~100の数であり、nは0~50の数であり、"/"はAO基及びEO基が、順序に関係なく、ランダム又はブロックのいずれに付加したものであってもよいことを示す。] 【0048】 前記式(III)のR3は、一又は複数の実施形態において、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、ノナデシル、イコシル、ヘネイコシル、ドコシル(ベヘニル)、トリコシル、テトラコシル等が挙げられる。前記式(III)のR4は、水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基であって、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、前記アルキル基は、一又は複数の実施形態において、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基である。前記式(III)中、AOとしては、一又は複数の実施形態において、ポリオキシポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等が挙げられる。前記式(III)中、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、mは、1~60が好ましく、1~30がより好ましい。同様に、nは、1~50が好ましく、1~25がより好ましい。 【0049】 前記式(III)の界面活性剤Bは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが好ましい。前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、HLB値(親水性-親油性バランス値)が、10.0~18.0のものが好ましく、より好ましくは12.0~15.0、さらに好ましくは12.5~13.5である。さらに、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、同様の観点から、曇点(℃/2%水溶液)が、34℃~88℃のものが好ましく、より好ましくは40℃~75℃、さらに好ましくは50℃~60℃である。 【0050】 前記式(III)の界面活性剤Bは、一又は複数の実施形態において、市販品として、EMALEX DAPE-207、EMALEX DAPE-210、EMALEX DAPE-212、EMALEX DAPE-215、EMALEX DAPE-220、EMALEX DAPE-230(以上、日本エマルジョン社製)、プルラファックLF300、プルラファックLF400、プルラファックLF431、プルラファックLF711、プルラファックLF900、プルラファックLF901、プルラファックLF1300〔BASFジャパン(株)製〕及びエマルゲンLS-106、エマルゲンLS-110、エマルゲンLS114、エマルゲンMS110〔花王(株)製〕として市販され、ワンダーサーフRL-80、ワンダーサーフRL-100、ワンダーサーフRL-140、ワン ダーサーフS-800、ワンダーサーフS-1000、ワンダーサーフS-1400(以上、青木油脂社製)、ユニセーフPKA-5015、ユニセーフPKA-5016、ユニセーフPKA-5017、ユニセーフLM-2(以上、日本油脂社製)等が挙げられる。 【0051】 ポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO=13~22)型の界面活性剤Bは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、好ましくは下記式(IV)で表わされる非イオン性界面活性剤である。 R5-O-(EO)n-R6    (IV) [前記式(IV)中、R5は炭素数12~40の炭化水素基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、nはEOの平均付加モル数であって8~22であり、R6は水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基である。] 【0052】 前記式(IV)のR5は、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、分岐鎖を有する炭素数12~40の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは分岐鎖を有する炭素数12~30のアルキル基である。前記炭化水素基及びアルキル基の炭素数は、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、12~28が好ましく、より好ましくは14~26、さらに好ましくは16~24、さらにより好ましくは18~22、さらにより好ましくは20である。前記式(IV)のR5の好ましい実施形態として、イソヘキシル基、イソノニル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソヘキサデシル基、ヘキシルデシル基、ヘキシルドデシル基、ヘキシルヘキサデシル基、オクチルデシル基、オクチルドデシル基、オクチルヘキサデシル基、ノニルデシル基、ノニルドデシル基、ノニルヘキサデシル基が挙げられ、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、オクチルドデシル基が好ましい。前記式(IV)のR6は、水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基であって、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、前記アルキル基は、一又は複数の実施形態において、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基である。前記式(IV)として、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、下記式(V)がより好ましい。 【0053】 【化3】 【0054】 式(IV)及び(V)におけるEOの平均付加モル数nは、一又は複数の実施形態において、血液中の稀少細胞に対するダメージを抑制しつつ血球の排除をする観点から、10~22が好ましく、より好ましくは13~22、さらに好ましくは15~21、さらにより好ましくは18~21、さらにより好ましくは20である。」 イ 引用文献4に記載された技術事項 上記(引4a)及び(引4b)より、引用文献4には、以下の技術事項(以下「技術事項4」という。)が記載されている。 「高い溶解性により接触した血球を迅速に溶解する界面活性剤Bは、赤血球を溶解する能力が高い非イオン性界面活性剤であって、 下記式(IV)で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO=13~22)型の非イオン性界面活性剤である界面活性剤B。 R5-O-(EO)n-R6    (IV) [前記式(IV)中、R5は炭素数12~40の炭化水素基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、nはEOの平均付加モル数であって8~22であり、R6は水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基である。]」 (5)引用文献5について 引用文献5には、以下の事項が記載されている。 (引5a)「Zaslavsky et al3). reported that the hemolytic activity of nonionic surfactants does not depend on the hydrophile-lipophile balance (HLB) of the compounds. However, they claimed that when the alkyl chain length is 12, the hemolytic activity becomes the greatest in nonionic surfactant with an oxyethylene number of 9 to 15.」(578頁右欄4-11行、当審訳:「Zaslavskyら3)は、非イオン性界面活性剤の溶血活性は、化合物の親水性-親油性バランス(HLB)に依存しないことを報告した。 しかし、彼らは、アルキル鎖の長さが12の場合、溶血活性は、オキシエチレン数が9~15の非イオン性界面活性剤で最大になると主張した。」) (6)甲2号証に記載の事項 甲2号証(特開2002-82105号公報)には、以下の事項が記載されている。 (甲2a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ヘモグロビン類の測定方法に用いられる、カチオン交換液体クロマトグラフィー用充填剤であって、 安定型HbA1c保持力試験法により、80mMリン酸緩衝液(pH5.60)を使用して測定した保持力パラメータが2.5~60、 及び/または、45mM過塩素酸含有30mMリン酸緩衝液(pH5.50)を使用して測定した保持力パラメータが1.5~60であることを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤。 【請求項2】 請求項1記載の液体クロマトグラフィー用充填剤が、カラム筐体に充填されてなる液体クロマトグラフィー用カラム。 【請求項3】 請求項1記載の充填剤または請求項2記載のカラムを使用した、液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法。」 (甲2b)「【0052】(6)界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を添加してもよい。界面活性剤を用いることにより、溶血を効率よく行うだけでなく、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等で測定を行う場合、溶血試薬の通過する流路等を洗浄する効果がある。上記界面活性剤は、好ましくはノニオン性界面活性剤が使用され、例えば、ポリオキシエチレン類(以下、ポリオキシエチレンをPOE、エチレンオキシド付加モル数を(n)で表す。)、POE(7)デシルエーテル、POE(n)ドデシルエーテル、POE(10)トリデシルエーテル、POE(11)テトラデシルエーテル、POE(n)セチルエーテル、POE(n)ステアリルエーテル、POE(n)オレイルエーテル、POE(17)セチルーステアリルエーテル、POE(n)オクチルフェニルエーテル、POE(n)ノニルフェニルエーテル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、POE(n)モノラウリン酸ソルビタン、POE(n)モノパルミチン酸ソルビタン、POE(n)モノステアリン酸ソルビタン、POE(n)モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でもまた複数混合して用いてもよい。また、これらの界面活性剤の添加量は、好ましくは0.01~10重量%である。」 (7)甲3号証に記載の事項 甲3号証(特開2003-344372号公報)には、以下の事項が記載されている。 (甲3a)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】キャリブレータ及びコントロール液は、溶液として調製した後、HbA1c値が経時的に小さくなる現象が認められる。これは、キャリブレータ及びコントロール液を冷蔵保存すると、HbA1c値が経時的に小さくなる現象が抑制されることから、前記現象はキャリブレータ及びコントロール液中のHbA1cが温度の影響を受けて、何らかの変性きたし、結果としてHbA1cの測定値が誤差を受けていると推定される。 【0005】特に高速液体クロマトグラフィー法(以下HPLC法と記す。)による測定において顕著に認められるため、HbA1cの3次元構造が変化している可能性がある。ただし、検体中に存在するHbA1c値は経時的な変化が認められず、キャリブレータ及びコントロール液に限ってHbA1c値は経時的な変化が認めらることから、一度乾燥されたHbA1cが、温度による影響を受けることにより、3次元構造が経時的に変化していると推測される。しかし、本発明者らが調べる限り原因は未だ解明されていない。」 (甲3b)「【0020】本発明において、好ましくは添加される上記非イオン性界面活性剤とは特に限定されるわけではないが、例えば、ポリオキシエチレン類(以下、ポリオキシエチレンをPOE、エチレンオキシド付加モル数を(n)で表わす。)、POE(7)デシルエーテル、POE(n)ドデシルエーテル、POE(10)トリデシルエーテル、POE(11)テトラデシルエーテル、POE(n)セチルエーテル、POE(n)ステアリルエーテル、POE(n)オレイルエーテル、POE(17)セチル-ステアリルエーテル、POE(n)オクチルフェニルエーテル、POE(n)ノニルフェニルエーテル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、POE(n)モノラウリン酸ソルビタン、POE(n)モノパルミチン酸ソルビタン、POE(n)モノステアリン酸ソルビタン、POE(n)モノオレイン酸ソルビタン、POE(9)ラウリルエーテル等が挙げられる。また、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体等の高分子化合物も用いることができる。上記界面活性剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上併用されて用いられてもよい。また、1種あるいは2種以上の界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01~10重量%である。」 3 当審の判断 (1)特許法36条6項1号について 当審は、 本件の発明の詳細な説明において開示された有効な実施例として記載されている非イオン性界面活性剤は、成分A1はオキシエチレン基の平均付加モル数及びアルキル基の炭素数が、成分A2~成分A4は、オキシエチレン基の平均付加モル数が、そして、成分A6はHLB値が、それぞれ特定のものであって、各成分はそれぞれ単独で使用された実施例のみであるから、訂正前の請求項1、3及び4に係る発明の非イオン界面活性剤の成分は、有効な実施例として記載された成分以外のものを含んでおり、また、複数の成分を混合することも排除していない。 そうすると、ヘモグロビン類測定用試薬において、成分中のオキシエチレン基の平均付加モル数、アルキル基の炭素数又はHLB値が相違した場合にどの程度の効果を有するか、実際に実施してみないと予測することができないという、出願時の技術常識に照らしても発明の詳細な説明において開示された内容を、訂正前の請求項1、3及び4に係る発明の範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえないから、訂正前の請求項1、3及び4に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。 旨通知したが、本件訂正請求により、請求項1に係る発明の非イオン性界面活性剤が、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」に訂正され、請求項3及び4は削除されたので、上記理由は解消した。 (2)特許法29条2項について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明’とを対比する。 a 引用発明’の「カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬」は、本件発明1の「陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬」に相当する。 b 引用発明’が含む「界面活性剤」である「ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)」は、オキシエチレン基の平均付加モル数が10のPOEオクチルフェニルエーテルであって、上記(引1b)より「ノニオン性界面活性剤」であるから、本件発明1の「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテルである」「前記非イオン性界面活性剤」とは、「前記非イオン性界面活性剤」である点で共通する。 c そうすると、a及びbより本件発明1と引用発明’とは、以下の一致点と相違点がある。 (一致点)「陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬であって、 非イオン性界面活性剤を含む、ヘモグロビン類測定用試薬。」 (相違点)ヘモグロビン類測定用試薬に含まれる非イオン性界面活性剤が、本件発明1は、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」であるのに対し、引用発明’が、「ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)」である点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 a 上記(引1b)より、引用文献1には、「カチオン交換液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法において、血液検体を溶血させる際に用いる溶血試薬」に含まれる「ノニオン性界面活性剤」として、「POE(n)ドデシルエーテル」、「POE(n)セチルエーテル」、「POE(n)ステアリルエーテル」、「POE(n)オレイルエーテル」が、「ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(トリトンX-100、東京化成社製)」である「POE(n)オクチルフェニルエーテル」とともに、「単独でもまた複数混合して用い」ることができる旨記載されているが、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」は記載されていない。 b 技術事項2には、「ノニオン性界面活性剤を含有する溶血試薬」の「ノニオン性界面活性剤」として「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」を含む「ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン単位7~12のもの)」が挙げられており、技術事項2の「溶血試薬」は、「糖化タンパク質を検出するための酵素が有する活性を阻害しないもの」であるが、「糖化タンパク質を検出するための酵素が有する活性を阻害しない」「ノニオン性界面活性剤」の内の「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」が、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬に含まれる場合においてどの程度の効果を有するか、実際に実施してみないと予測することができないという、出願時の技術常識を考慮すると、引用発明’のヘモグロビン類測定用試薬に含まれる非イオン性界面活性剤として、技術事項2の「ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン単位7~12のもの)」の内のオキシエチレン基の平均付加モル数が12であるものを適用することは、当業者が容易に想到できたことであるとはいえないし、仮に、適用できたとしても、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定する際に格別顕著な効果を得られることを、当業者が予測し得たとは到底認められない。 c 技術事項3の「成分測定方法が対象とする目的成分」である「HbA1c」を「測定する」ために「全血検体」を「希釈する」ための「溶液」に含まれる「界面活性剤」として例示されている「エマルゲン120」は、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」であり、技術事項4の「赤血球を溶解する能力が高い非イオン性界面活性剤であ」るポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO=13~22)型の非イオン性界面活性剤である界面活性剤B」には、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」が含まれ、引用文献5には、「アルキル鎖の長さが12の場合、溶血活性は、オキシエチレン数が9~15の非イオン性界面活性剤で最大」となる旨記載されており、「オキシエチレン数が9~15の非イオン性界面活性剤」は、「オキシエチレン基の平均付加モル数が12であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」が含まれているが、引用文献3~5に記載された非イオン性界面活性剤を含む溶液は、溶血性能が良い旨記載されているものの、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬において使用する場合の記載はないから、上記bと同様に、引用発明’のヘモグロビン類測定用試薬に含まれる非イオン性界面活性剤として、技術事項3、4及び引用文献5に記載された非イオン性界面活性剤を適用することは、当業者が容易に想到できたことであるとはいえないし、仮に、適用できたとしても、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定する際に格別顕著な効果を得られることを、当業者が予測し得たとは到底認められない。 d したがって、本件発明1は、引用発明’、引用文献1及び5に記載された技術事項、技術事項2~4に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件発明5及び6について 本件発明5は、本件発明1の「ヘモグロビン類測定用試薬」において、「前記非イオン性界面活性剤の含有量が、0.01重量%以上1.0重量%以下である」旨の限定を加えたものであって、本件発明6は、「赤血球含有検体と」、本件発明1又は5の「ヘモグロビン類測定用試薬とを混合して混合液を得る工程と、前記混合液を陽イオン交換液体クロマトグラフィーにより測定する工程とを備える、ヘモグロビン類の測定方法」としたものであり、何れの発明も上記相違点を有しているから、上記アと同様の理由により、本件発明5及び6は、引用発明’、引用文献1及び5に記載された技術事項、技術事項2~4に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 (3)特許異議申立人の意見について 申立人は、令和3年2月9日に提出した意見書において、ヘモグロビン類の測定を高精度で行う場合に、赤血球中のヘモグロビンを可溶化する必要があることは技術常識であるから、良好な溶血性能を示す非イオン性界面活性剤であれば、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定する際においても効果があることは、当業者であれば容易に予測できるものであるから、本件発明は、引用文献1~5から容易に想到できるものである旨主張している。 しかしながら、上記(2)において検討したとおり、特定の非イオン性界面活性剤が、陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬に含まれる場合においてどの程度の効果を有するか、実際に実施してみないと予測することができないという、出願時の技術常識を考慮すると、引用文献2~5に記載された非イオン性界面活性剤が良好な溶血性能を示すとしても、この非イオン性界面活性剤が陽イオン交換液体クロマトグラフィーによりヘモグロビン類を測定するために用いられるヘモグロビン類測定用試薬に含まれる場合において、格別顕著な効果を得られることを、当業者が予測し得たとは到底認められないから、本件発明は、引用文献1~5から容易に想到できるものであるとはいえない。 第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1、3及び6に係る発明は、甲1~3号証に記載の発明であって特許法29条1号3号に該当し、特許法29条1項に規定に違反してされたものであり、請求項1~6に係る発明は、甲2~7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである旨も主張している。 しかしながら、上記第4の3(2)で検討したとおり、本件発明1及び6と甲1号証である上記引用文献1に記載された発明である引用発明’とを対比すると上記相違点で相違し、該相違点に係る構成は引用文献1にも、甲2及び3号証にも記載されていないから、本件発明1及び6は、甲1~3号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲2及び3号証に記載された発明と本件発明1、5及び6とは、上記相違点で相違するから、甲2及び3号証に記載された発明からも、当業者が容易に想到できたものであるともいえない。 したがって、申立人のかかる主張は、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、5及び6に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1、5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項2~4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2~4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700607

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