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特許異議申立

2020-700038

自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、食器類のすすぎ方法、及び野菜又は果物洗浄用組成物

審判番号
2020-700038
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-167648
登録番号
特許第6549297号(P6549297)
請求日
2020年01月23日
審決日
2020年09月16日
公報発行日
2020年12月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ADEKA
  • 【権利者代理人】曾我 道治
  • 【権利者代理人】梶並 順
  • 【権利者代理人】大宅 一宏
  • 【権利者】ADEKAクリーンエイド株式会社
  • 【権利者代理人】曾我 道治
  • 【権利者代理人】梶並 順
  • 【権利者代理人】大宅 一宏
  • 【異議申立人】竹口 美穂
審判長/審判官
  • 審判長 蔵野 雅昭
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 天野 斉
分類
P1651.113-YAA(C11D) / P1651.121-YAA(C11D) / P1651.537-YAA(C11D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6549297号発明「自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、食器類のすすぎ方法、及び野菜又は果物洗浄用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6549297号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕〔14、15〕について訂正することを認める。 特許第6549297号の請求項1~15に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6549297号の請求項1~15に係る特許についての出願は、平成30年9月7日に出願され、令和元年7月5日にその特許権の設定登録がされ、同年7月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~15に係る特許に対し、令和2年1月23日に特許異議申立人竹口美穂(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年3月19日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内(同年5月14日提出の上申書による、指定期間の30日の延長の求めを認める)である同年6月16日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)を行った。 なお、特許権者から同年6月16日に訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月30日に特許異議申立人に通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、意見書は提出されなかった。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「(A)HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)HLBが14以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)水を含有し、質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である、自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。」の記載を、「(A)仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(B)仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)水を含有し、仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である、自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。」に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~13についても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3の「(B)成分がグリセリンの平均重合度が3~12、脂肪酸の炭素数が8~18のポリグリセリン脂肪酸エステルである、請求項1又は2に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。」の記載を、「(B)成分がグリセリンの平均重合度が3~12のポリグリセリン脂肪酸エステルである、請求項1又は2に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。」に訂正する。 請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4~13についても同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項10の「(A)成分の(G)成分及び/又は(H)成分の総量に対する質量比(A)/[(G)+(H)]の値が0.005~10である、請求項8又は9に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。」の記載を、「(A)成分の(G)成分及び/又は(H)成分の総量に対する仕込み値の質量比(A)/[(G)+(H)]の値が0.005~10である、請求項8又は9に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。」に訂正する。 請求項10を直接又は間接的に引用する請求項11~13についても同様に訂正する。 (4)訂正事項4 明細書の段落【0009】の「上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、(A)成分としてHLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)成分としてHLBが13以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)成分として水を含有し、(A)成分と(B)成分が特定の比率になるようにしたすすぎ助剤組成物が、上記従来の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。」の記載を、「上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、(A)成分として仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(B)成分として仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)成分として水を含有し、仕込み時の(A)成分と(B)成分が特定の比率になるようにしたすすぎ助剤組成物が、上記従来の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。」に訂正する。 また、明細書段落【0010】の 「即ち本発明は (1)(A)HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)HLBが14以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)水を含有し、質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である、自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (2)(A)成分がグリセリンの平均重合度が3~10であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルである、上記(1)の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (3)(B)成分がグリセリンの平均重合度が3~12、脂肪酸の炭素数が8~18のポリグリセリン脂肪酸エステルである、上記(1)又は(2)の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (4)さらに、(D)成分としてショ糖脂肪酸エステルを含有する、上記(1)~(3)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (5)さらに、(E)成分としてソルビタン脂肪酸エステルを含有する、上記(1)~(4)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (6)さらに、(F)成分として有機溶剤を含有する、上記(1)~(5)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (7)前記自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物が、クレート洗浄後のすすぎに用いられる、上記(1)~(6)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (8)さらに(G)成分として、植物性抗菌・消臭剤及び抗菌ペプチドからなる群より選ばれた1種または2種以上を含有する上記(1)~(7)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (9)さらに(H)成分として、シクロデキストリンを含有する、上記(1)~(8)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (10)(A)成分の(G)成分及び/又は(H)成分の総量に対する質量比(A)/[(G)+(H)]の値が0.005~10である、上記(8)又は(9)の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (11)(G)成分の植物性抗菌・消臭剤が、モウソウチク抽出物、モウソウチク乾留物、チャ抽出物、チャ乾留物、ブドウ種子抽出物、グレープフルーツ種子抽出物より選ばれた1種または2種以上である上記(8)~(10)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (12)自動食器洗浄機用洗浄剤を含む洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して食器類を洗浄する工程、及び、洗浄後、上記(1)~(11)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物を含むすすぎ液ですすぐ工程を含む、自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、及び、 (13)前記すすぎ液ですすぐ工程において、すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm2あたり、1~3L噴射して食器類をすすぐ上記(12)の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法を提供する。」の記載を、 「即ち本発明は (1)(A)仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(B)仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)水を含有し、仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である、自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (2)(A)成分がグリセリンの平均重合度が3~10であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルである、上記(1)の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (3)(B)成分がグリセリンの平均重合度が3~12のポリグリセリン脂肪酸エステルである、上記(1)又は(2)の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (4)さらに、(D)成分としてショ糖脂肪酸エステルを含有する、上記(1)~(3)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (5)さらに、(E)成分としてソルビタン脂肪酸エステルを含有する、上記(1)~(4)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (6)さらに、(F)成分として有機溶剤を含有する、上記(1)~(5)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (7)前記自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物が、クレート洗浄後のすすぎに用いられる、上記(1)~(6)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (8)さらに(G)成分として、植物性抗菌・消臭剤及び抗菌ペプチドからなる群より選ばれた1種または2種以上を含有する上記(1)~(7)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (9)さらに(H)成分として、シクロデキストリンを含有する、上記(1)~(8)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (10)(A)成分の(G)成分及び/又は(H)成分の総量に対する仕込み値の質量比(A)/[(G)+(H)]の値が0.005~10である、上記(8)又は(9)の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (11)(G)成分の植物性抗菌・消臭剤が、モウソウチク抽出物、モウソウチク乾留物、チャ抽出物、チャ乾留物、ブドウ種子抽出物、グレープフルーツ種子抽出物より選ばれた1種または2種以上である上記(8)~(10)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物、 (12)自動食器洗浄機用洗浄剤を含む洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して食器類を洗浄する工程、及び、洗浄後、上記(1)~(11)のいずれかの自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物を含むすすぎ液ですすぐ工程を含む、自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、及び、 (13)前記すすぎ液ですすぐ工程において、すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm2あたり、1~3L噴射して食器類をすすぐ上記(12)の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法を提供する。」に訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0056】の 「実施例1~140、比較例1~13 表1~16に示す組成物を調製した。各組成物を、すすぎ助剤としてすすぎに用いた場合の乾燥性、仕上がり性、再汚染防止性、抑泡性、貯蔵安定性、抗菌性、消臭性、野菜洗浄用として用いた場合の野菜の洗浄性を試験した。表1~8、表10~15に実施例1~140の結果を、表9、表16に比較例1~13の結果をそれぞれ示す。 なお、実施例17、19、20は参考例である。」の記載を、 「実施例1~140、比較例1~13 表1~16に示す組成物を調製した。各組成物を、すすぎ助剤としてすすぎに用いた場合の乾燥性、仕上がり性、再汚染防止性、抑泡性、貯蔵安定性、抗菌性、消臭性、野菜洗浄用として用いた場合の野菜の洗浄性を試験した。表1~8、表10~15に実施例1~140の結果を、表9、表16に比較例1~13の結果をそれぞれ示す。 なお、実施例9、10、17、19、20は参考例である。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項14の「(A)HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)HLBが14以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)水を含有し、質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である、野菜又は果物洗浄用組成物。」の記載を、「(A)仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(B)仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)水を含有し、仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である、野菜又は果物洗浄用組成物。」に訂正する。 請求項14を引用する請求項15についても同様に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落【0011】の 「また、本発明と同様の組成を有する組成物が、野菜や果物といった食品(青果類)を洗浄するための洗浄液としても有用であることを見出した。 つまり、本発明は、 (14)(A)HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)HLBが14以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)水を含有し、質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である、野菜又は果物洗浄用組成物、及び(15)さらに、(D)成分としてショ糖脂肪酸エステル、(E)成分としてソルビタン脂肪酸エステル、(F)成分として有機溶剤、(G)成分として植物性抗菌・消臭剤及び/又は抗菌ペプチド、並びに(H)成分としてシクロデキストリンからなる群から選択される、1種又は2種以上の成分を含む、上記(14)の野菜又は果物洗浄用組成物も提供する。」の記載を、 「また、本発明と同様の組成を有する組成物が、野菜や果物といった食品(青果類)を洗浄するための洗浄液としても有用であることを見出した。 つまり、本発明は、 (14)(A)仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(B)仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)水を含有し、仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である、野菜又は果物洗浄用組成物、及び (15)さらに、(D)成分としてショ糖脂肪酸エステル、(E)成分としてソルビタン脂肪酸エステル、(F)成分として有機溶剤、(G)成分として植物性抗菌・消臭剤及び/又は抗菌ペプチド、並びに(H)成分としてシクロデキストリンからなる群から選択される、1種又は2種以上の成分を含む、上記(14)の野菜又は果物洗浄用組成物も提供する。」に訂正する。 2.訂正の理由 (1)一群の請求項について ア 訂正前の請求項1~13について、請求項2~13は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 また、請求項4~13は、請求項3を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項2によって訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。 また、請求項11~13は、請求項10を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項3によって訂正される請求項10に連動して訂正されるものである。 従って、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 イ 訂正前の請求項14及び15について、請求項15は請求項14を直接引用しているものであって、訂正事項6によって記載が訂正される請求項14に連動して訂正されるものである。 従って、訂正前の請求項14及び15に対応する訂正後の請求項14及び15は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 ア 訂正事項1について (ア)訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明では、(A)成分に関し、「HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」と規定されている。 これに対して、訂正後の請求項1に係る発明では、(A)成分を「仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル」と規定した。 つまり、(A)成分のHLBの値はポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが他の成分と配合される前のHLB値であることを明記した。これは、本件明細書の実施例の記載及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえて、特許請求の範囲に記載すべき条件を追加して特許発明の内容を明瞭にすることに該当する。 さらに、HLBの値の範囲を狭め、かつこのエステル化合物を形成する脂肪酸を縮合リシノール酸に限定し、(A)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮することに該当する。 訂正前の請求項1に係る発明では、(B)成分に関し、「HLBが14以上のポリグリセリン脂肪酸エステル」と規定されている。 これに対して、訂正後の請求項1に係る発明では、「仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル」と規定した。 つまり、(B)成分のHLBの値は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルが他の成分と配合される前のHLB値であることを明記した。これは、本件明細書の実施例の記載及び技術常識を踏まえて、特許請求の範囲に記載すべき条件を追加して特許発明の内容を明瞭にすることに該当する。 さらに(B)成分のHLBの値の範囲を狭め、このエステル化合物を形成する脂肪酸の種類の範囲を狭め、ポリグリセリン脂肪酸エステルの範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮することに該当する。 また、訂正前の請求項1では「質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である」と規定されている。 これに対し、訂正後の請求項1では、「仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である」と規定した。これは、本件明細書の実施例の記載及び技術常識を踏まえて、特許請求の範囲に記載すべき条件を追加して特許発明の内容を明瞭にすることに該当する。 従って、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 同様に、訂正後の請求項2~13は、訂正後の請求項1に記載された(A)成分に関する「(A)仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル」、(B)成分に関する「(B)仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル」及び「仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である」の記載を引用することにより、訂正後の請求項2~13に係る発明における(A)成分及び(B)に該当するエステル化合物の範囲を明確にし、さらにその範囲を狭めるものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)の理由から明らかなように、訂正事項1は、(A)成分及び(B)成分に規定するポリグリセリン脂肪酸エステルに該当する化合物の対象を明瞭にし、かつその範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条6項に適合するものである。 また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2~13の記載について変更するものではなく、請求項2~13のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、明細書の段落【0013】、【0015】、実施例等の記載及び本件特許の出願時の技術常識に基づいて導き出せる構成である。 ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリン及び脂肪酸とのエステル化合物である。そして、材料、反応温度、触媒、精製分画などの様々な反応条件により、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルは混合物の場合もあり、単一化合物の場合もあり得る。従って、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物である場合もあり、単一化合物である場合もある。そのため、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる界面活性剤のHLB値は、当該ポリグリセリン脂肪酸エステルが混合物である場合はそれぞれのポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値の(加重)平均値であることも周知である。 一方、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる界面活性剤のHLB値を表すときに、そのポリグリセリン脂肪酸エステルが混合物であっても、そのHLB値を平均値であることをあえて記載しないことも多い。つまり、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる界面活性剤のHLB値の表記は単に数値で表わされ、混合物からなる界面活性剤であっても、単一物からなる界面活性剤であっても相違しない。 そして、ポリグリセリン脂肪酸エステルを他の成分とともに配合して組成物を調製するときの説明として、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を他の成分と混合する時、つまり仕込み時のポリグリセリン脂肪酸エステルが有するHLB値で表記されることが一般的である。 以上より、(A)成分及び(B)成分のHLBの値が仕込み時のHLB値であることを規定する訂正は本件明細書の実施例の記載及び本件特許の出願時の技術常識より自明である。 また、本件特許明細書の段落【0096】以降の各表で、(A)成分及び(B)成分の配合量が示されており、(A)/(B)値も示されていることから、(A)/(B)値は、(A)成分の(B)成分に対する仕込み値の質量比であることも自明である。 (A)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルについて、明細書の段落【0013】では、「本発明のすすぎ助剤組成物において、(A)成分のHLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては特に限定されないが、被洗浄物の再汚染防止性の点でHLBは0.1以上、4以下であることが好ましい。・・・(中略)・・・、本発明の(A)成分としては、被洗浄物由来の汚れの分散性および被洗浄物の再汚染防止性の点で、炭素数18のリシノール酸の縮合物の縮合リシノール酸とポリグリセリンとのエステルであるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが特に好ましい。」と記載されている。 (B)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルについて、明細書の段落【0015】では、「本発明のすすぎ助剤組成物において、(B)成分のHLBが13以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては特に限定されないが、乾燥性、仕上がり性の点で高HLBのものが好ましく、例えば、HLB値は14以上、19以下が好ましく、15以上、19以下がさらに好ましく、16以上、19以下が特に好ましい。グリセリンの平均重合度としては、3~12であることが好ましく、4~10であることがさらに好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、合成脂肪酸、動植物油脂由来の脂肪酸のいずれでもよく、炭素数8~18の脂肪酸が好ましく、炭素数8~12の脂肪酸がより好ましい。」と記載されている。 よって、(A)成分及び(B)成分のHLB値及び構成脂肪酸に関する訂正は上記に基づくものである。 以上より、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2~13の記載について願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 イ 訂正事項2について (ア)訂正の目的について 訂正事項2は、訂正事項1で(B)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの範囲を限定することに伴い、請求項3における「脂肪酸の炭素数が8~18」の記載を削除するものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載以外に、訂正前の請求項4~13の記載について、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)の記載から明らかなように、訂正事項2は、(B)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの範囲を更に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載以外に、訂正前の請求項4~13の記載について変更するものではなく、請求項4~13のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、請求項3に規定する(B)成分の範囲を明細書段落【0015】の記載に基づき更に限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 また、訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載以外に、訂正前の請求項4~13の記載について願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 訂正事項3について (ア)訂正の目的について 訂正事項3は、訂正事項1と同様に、請求項10で規定する質量比(A)/[(G)+(H)]の値を、仕込み値の質量比(A)/[(G)+(H)]の値であることを訂正する。 これは、本件明細書の実施例の記載及び技術常識を踏まえて、特許請求の範囲に記載すべき条件を追加して特許発明の内容を明瞭にすることに該当する。 よって当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項3は、訂正前の請求項10の記載以外に、訂正前の請求項11~13の記載について、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)の記載から明らかなように、訂正事項3は請求項10で規定する質量比(A)/[(G)+(H)]の値を明瞭にして、特許発明の範囲を明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項3は、訂正前の請求項10の記載以外に、訂正前の請求項11~13の記載について変更するものではなく、請求項11~13のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 本件明細書の段落【0033】では、「本発明のすすぎ助剤組成物は、更に上記(G)成分及び/又は(H)成分を配合する場合、上記(A)成分の(G)成分及び/又は(H)成分の総量に対する質量比(A)/[(G)+(H)]の値が0.005~10となるように含有することが好ましい。」と記載され、明細書段落【0105】表10~【0110】表15の記載から、請求項10で規定する質量比(A)/[(G)+(H)]の値が仕込み値の質量比(A)/[(G)+(H)]の値であることは自明であり、技術的に新規な事項を何ら追加していない。 従って訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 また、訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載以外に、訂正前の請求項10~13の記載について願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 エ 訂正事項4及び5について (ア)訂正の目的について 訂正事項4及び5は、上記訂正事項1~3に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項4及び5は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、上記訂正事項1~3に係る訂正に伴い、明細書の段落【0009】及び【0010】の記載を整備するための訂正であるため、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項5は、訂正前明細書に記載の実施例のうち、上記訂正事項1~3に係る訂正に伴い、特許請求の範囲に記載の発明に該当しないものとなった実施例を参考例とするものであるため、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する126条第6項に適合するものである。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記(イ)の理由から明らかなように、訂正事項4は訂正後の特許請求の範囲の記載に明細書の記載を整合させる訂正であるため、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 同様に、訂正事項5は訂正後の特許請求の範囲に記載の発明に該当しない実施例を参考例とする訂正であるため、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 オ 訂正事項6について (ア)訂正の目的について 訂正前の請求項14に係る発明では、(A)成分に関し、「HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」と規定されている。 これに対して、訂正後の請求項14に係る発明では、(A)成分を「仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル」と規定した。 つまり、(A)成分のHLBの値はポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが他の成分と配合される前のHLB値であることを明記した。これは、本件明細書の実施例の記載及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえて、特許請求の範囲に記載すべき条件を追加して特許発明の内容を明瞭にすることに該当する。 さらに、HLBの範囲を狭め、かつこのエステル化合物を形成する脂肪酸を縮合リシノール酸に限定し、(A)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮することに該当する。 訂正前の請求項14に係る発明では、(B)成分に関し、「HLBが14以上のポリグリセリン脂肪酸エステル」と規定されている。 これに対して、訂正後の請求項14に係る発明では、「仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル」と規定した。 つまり、(B)成分のHLBの値は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルが他の成分と配合される前のHLB値であることを明記した。これは、本件明細書の実施例の記載及び技術常識を踏まえて、特許請求の範囲に記載すべき条件を追加して特許発明の内容を明瞭にすることに該当する。 さらに、(B)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBの範囲、及びこのエステル化合物を形成する脂肪酸の種類の範囲を狭め、(B)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮することに該当する。 また、訂正前の請求項14では「質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である」と規定されている。 これに対し、訂正後の請求項14では、「仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である」と規定した。これは、本件明細書の実施例の記載及び技術常識を踏まえて、特許請求の範囲に記載すべき条件を追加して特許発明の内容を明瞭にすることに該当する。 従って、当該訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 同様に、訂正後の請求項15は、訂正後の請求項14に記載された(A)成分に関する「(A)仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル」、(B)成分に関する「(B)仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル」及び「仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である」の記載を引用することにより、訂正後の請求項15に係る発明における(A)成分及び(B)成分に該当するエステル化合物の範囲を明確にし、さらにその範囲を狭めるものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)の理由から明らかなように、訂正事項6は、(A)成分及び(B)成分に規定するポリグリセリン脂肪酸エステルに該当する化合物の範囲の対象を明瞭にし、かつその範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条6項に適合するものである。 また、訂正事項6は、訂正前の請求項14の記載以外に、訂正前の請求項15の記載について変更するものではなく、請求項15のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6は、明細書の段落【0013】、【0015】、実施例等の記載及び本件特許の出願時の技術常識に基づいて導き出せる構成である。 ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリン及び脂肪酸とのエステル化合物である。そして、材料、反応温度、触媒、精製分画などの様々な反応条件により、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルは混合物の場合もあり、単一化合物の場合もあり得る。従って、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物である場合もあり、単一化合物である場合もある。そのため、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる界面活性剤のHLB値は、当該ポリグリセリン脂肪酸エステルが混合物である場合はそれぞれのポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値の(加重)平均値であることも周知である。 一方、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる界面活性剤のHLB値を表すときに、そのポリグリセリン脂肪酸エステルが混合物であっても、そのHLB値を平均値であることをあえて記載しないことも多い。つまり、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる界面活性剤のHLB値の表記は単に数値で表わされ、混合物からなる界面活性剤であっても、単一物からなる界面活性剤であっても相違しない。 そして、ポリグリセリン脂肪酸エステルを他の成分とともに配合して組成物を調製するときの説明として、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を他の成分と混合する時、つまり仕込み時のポリグリセリン脂肪酸エステルが有するHLB値で表記されることが一般的である。 以上より、(A)成分及び(B)成分のHLBの値が仕込み時のHLB値であることを規定する訂正は本件明細書の実施例の記載及び本件特許の出願時の技術常識より自明である。 また、本件特許明細書の段落【0101】以降の各表で、(A)成分及び(B)成分の配合量が示されており、(A)/(B)値も示されていることから、(A)/(B)値は、(A)成分の(B)成分に対する仕込み値の質量比であることも自明である。 (A)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルについて、明細書の段落【0013】では、「本発明のすすぎ助剤組成物において、(A)成分のHLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては特に限定されないが、被洗浄物の再汚染防止性の点でHLBは0.1以上、4以下であることが好ましい。・・・(中略)・・・、本発明の(A)成分としては、被洗浄物由来の汚れの分散性および被洗浄物の再汚染防止性の点で、炭素数18のリシノール酸の縮合物の縮合リシノール酸とポリグリセリンとのエステルであるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが特に好ましい。」と記載されている。 (B)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルについて、明細書の段落【0015】では、「本発明のすすぎ助剤組成物において、(B)成分のHLBが13以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては特に限定されないが、乾燥性、仕上がり性の点で高HLBのものが好ましく、例えば、HLB値は14以上、19以下が好ましく、15以上、19以下がさらに好ましく、16以上、19以下が特に好ましい。グリセリンの平均重合度としては、3~12であることが好ましく、4~10であることがさらに好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、合成脂肪酸、動植物油脂由来の脂肪酸のいずれでもよく、炭素数8~18の脂肪酸が好ましく、炭素数8~12の脂肪酸がより好ましい。」と記載されている。 よって、(A)成分及び(B)成分のHLB値及び構成脂肪酸に関する訂正は上記に基づくものである。 以上より、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 また、訂正事項6は、訂正前の請求項14の記載以外に、訂正前の請求項15の記載について願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 カ 訂正事項7について (ア)訂正の目的について 訂正事項7は、上記訂正事項6に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項7は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)の通り、訂正事項7は、上記訂正事項6に係る訂正に伴い、明細書の段落【0011】の記載を整備するための訂正であるため、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する126条第6項に適合するものである。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記(イ)の理由から明らかなように、訂正事項7は訂正後の特許請求の範囲の記載に明細書の記載を整合させる訂正であるため、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 (2)小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び6項の規定に適合する。 したがって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕〔14、15〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項1~15について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~15に係る発明は、令和2年6月16日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明15」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。 「【請求項1】 (A)仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(B)仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)水を含有し、仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である、自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項2】 (A)成分がグリセリンの平均重合度が3~10であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルである、請求項1記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項3】 (B)成分がグリセリンの平均重合度が3~12のポリグリセリン脂肪酸エステルである、請求項1又は2に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項4】 さらに、(D)成分としてショ糖脂肪酸エステルを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項5】 さらに、(E)成分としてソルビタン脂肪酸エステルを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項6】 さらに、(F)成分として有機溶剤を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項7】 前記自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物が、クレート洗浄後のすすぎに用いられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項8】 さらに(G)成分として、植物性抗菌・消臭剤及び抗菌ペプチドからなる群より選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項9】 さらに(H)成分として、シクロデキストリンを含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項10】 (A)成分の(G)成分及び/又は(H)成分の総量に対する仕込み値の質量比(A)/[(G)+(H)]の値が0.005~10である、請求項8又は9に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項11】 (G)成分の植物性抗菌・消臭剤が、モウソウチク抽出物、モウソウチク乾留物、チャ抽出物、チャ乾留物、ブドウ種子抽出物、グレープフルーツ種子抽出物より選ばれた1種または2種以上である請求項8~10のいずれか一項に記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。 【請求項12】 自動食器洗浄機用洗浄剤を含む洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して食器類を洗浄する工程、及び、洗浄後、請求項1~11のいずれかに記載の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物を含むすすぎ液ですすぐ工程を含む、自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。 【請求項13】 前記すすぎ液ですすぐ工程において、すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm2あたり、1~3L噴射して食器類をすすぐ請求項12記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。 【請求項14】 (A)仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(B)仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)水を含有し、仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である、野菜又は果物洗浄用組成物。 【請求項15】 さらに、(D)成分としてショ糖脂肪酸エステル、(E)成分としてソルビタン脂肪酸エステル、(F)成分として有機溶剤、(G)成分として植物性抗菌・消臭剤及び/又は抗菌ペプチド、並びに(H)成分としてシクロデキストリンからなる群から選択された1種又は2種以上の成分を含む、請求項14に記載の野菜又は果物洗浄用組成物。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1~15に係る特許に対して、当審が令和2年3月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 理由1(明確性)本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 理由2(サポート要件)本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 理由3(新規性)本件特許の請求項1、3、6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 理由4(進歩性)本件特許の請求項1~15に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証~甲第7号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 甲第1号証:特開平5-255698号公報 甲第2号証:特開昭63-17995号公報 甲第3号証:特許第6105360号公報 甲第4号証:特許第3425381号公報 甲第5号証:特許第5199529号公報 甲第6号証:特開平7-62397号公報 甲第7号証:米国特許出願公開2017/0051234号明細書 2 甲号証の記載について (1)甲第1号証 1a「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、自動食器洗浄機などに用いられるすすぎ助剤に関する。」 1b「【0015】 【実施例】後記表1~4に示した組成のすすぎ助剤を調製し、以下の条件で洗浄、すすぎを行って乾燥性、スポット汚れおよび泡立ちを評価し、その結果を表1~4に示した。以下、洗浄・すすぎ方法、評価方法、各評価基準の順に示す。また、併せて低温安定性についても評価し、表1~4に示した。 【0016】(1) 洗浄・すすぎ方法 洗浄機:石川島播磨重工業(株)製、JWD-6型 自動供給装置:米国ベーター社製H-7100R 洗浄剤:アルカリ性自動食器洗浄機用洗浄剤、マイスターLE(ライオンハイジーン(株)製) 洗浄条件:洗浄剤濃度0.2%、60℃-40秒間スプレー洗浄 すすぎ条件:表1~4に示したすすぎ助剤濃度0.01%、80℃-15秒スプレーすすぎ 【0017】(2) 評価方法 ガラス製のグラスを市販牛乳でぬらし、4時間風乾した後に、洗浄、すすぎを行い、以下の基準により目視により判定した。なお、スポット汚れはグラス10個の平均をとった。 【0018】(3) グラスの乾燥性 ◎:極めて良好 〇:良好 △:やや劣る ×:不良 【0019】(4) グラスのスポット汚れ 5点:全くスポットがない 4点:スポットが1個ある 3点:スポットが2~3個ある 2点:スポットが多数ある 1点:全体に曇った感じがする 【0020】(5) 泡立ち ○:泡立ちが少なく、洗浄機の運転に全く支障なし △:泡立ちは多いが、洗浄機の運転に支障なし ×:泡立ちが極めて多く、洗浄機の運転に支障あり 【0021】(6) 低温安定性 下記表1~4に示した組成のすすぎ助剤を-5℃の恒温室に静置し、1ケ月経過後の外観を下記基準に基づき、視覚判定した。 ○:透明でかつ流動性を保持 △:一部混濁ないし分離生成 ×:全面的に混濁ないし分離生成 ・・・ 【表4】 *1)エステルはすべて、モノ、ジエステル70~80%、トリエステル10~20%、残部テトラエステル以上および未反応多価アルコールから成る。」 (2)甲第2号証 2a「〔従来の技術と問題点〕 従来よりすすぎ助剤の成分として、プルロニック系界面活性剤、食品添加物として認められているソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの界面活性剤を用いることが公知である。 しかし、プルロニック系界面活性剤は食品添加物として認められておらず、人体に対する安全性の面で問題があり、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルは水溶性が悪く、プロピレングリコール、グリセリン、エタノールなどの可溶化剤を用いて安定な製品にするのが通常の方法である。」(第1ページ右欄第1~17行) 2b「本発明の乳状すすぎ助剤組成物の必須成分中、重合度2~12のポリグリセリンの縮合リシノレートは、乳状すすぎ助剤を得る為に特に必須な成分であり、例えばヘキサグリセリン縮合リシノレート(版本薬品のSYグリスターCR-500)、テトラグリセリン縮合リシノレート(版本薬品のSYグリスターCR-310)等が好ましく、特にヘキサグリセリン縮合リシノレートが好ましい。この重合度2~12のポリグリセリンの縮合リシノレートがないと、白色乳状のすすぎ助剤は得られない。」(第2ページ左下欄第7~17行) 2c「「ショ糖、グリセリン、ソルビタン、ソルバイド、ソルビットからなる群から選ばれた1種又は2種以上の多価アルコールと炭素原子数6~10個の脂肪酸との部分エステルとしては、ソルビタンモノカプリレート、グリセリンモノカプリレート等があり、これらは使用濃度におけるすすぎ助剤溶液の泡立ちを抑え、食器に光沢を与える。」(第2ページ右下欄3~10行目) (3)甲第3号証 3a「【0037】 そして、本発明の自動洗浄機用プラスチック食器乾燥仕上げ剤組成物には、任意成分として、水、pH調整剤、有機酸およびその塩、染料、香料、金属腐食抑制剤、殺菌剤、消臭剤、帯電防止剤等を用いることができる。水は、水道水、軟水、イオン交換水、純水、精製水等があげられ、好ましくは、水道水、軟水が用いられる。なお、上記「水」は、本発明の組成物を構成する各成分に由来の結晶水や水溶液の形で含まれる水と外から加えられる水との総和であり、自動食器洗浄機用プラスチック食器乾燥仕上げ剤組成物全体が100%となるよう配合される。 【0038】 上記必須成分および任意成分を適宜含有してなる本発明のプラスチック食器用乾燥仕上げ剤組成物は、1000~40000倍に希釈して、乾燥仕上げ剤水溶液として、ガラス、陶器、磁器、金属、プラスチック等の材質の食器・調理器具等を効率よく洗浄する自動洗浄機のすすぎ工程に用いることができる。上記乾燥仕上げ水溶液は、特にプラスチック食器に対する乾燥性、仕上がり性に優れ、安全性に優れるとともに、低泡性で広範囲な温度における貯蔵安定性にも優れるものとなっている。」 (4)甲第4号証 4a「【0037】なお、本発明のプラスチック食器用乾燥仕上剤には、染料,香料,殺菌剤,粘度調製剤等の任意成分を、必要に応じて適宜の割合で配合することができる。」 (5)甲第5号証 5a「【0054】 そして、本発明の自動洗浄機用乾燥仕上げ剤組成物には、任意成分として、pH調整剤、有機酸およびその塩、染料、香料、金属腐食抑制剤、殺菌剤、消臭剤、帯電防止剤等を用いることができる。」 (6)甲第6号証 6a「【特許請求の範囲】 【請求項1】 必須成分として、使用時において、(1)植物より抽出される成分0.1~40mg/リットル、(2)ソルビトール、ソルビタン、ソルビッド、グリセリン、ポリグリセリン、ショ糖、プロピレングリコールから選ばれる1種または2種以上の多価アルコールと脂肪酸との部分エステル3~80mg/リットルを含有することを特徴とする消臭すすぎ助剤。」 (7)甲第7号証(訳文にて示す) 7a「[0259]使用方法 [0260]一態様において、本発明は、表面及び/又は製品をすすぐための組成物の使用を含む。別の態様において、本発明の組成物は、特に硬表面洗剤、食品接触洗剤(直接的又は間接的接触を含む)、組織接触洗剤(例えば、果物又は野菜用を含む)、種々の硬表面用の速乾助剤(例えば、ヘルスケア表面用、器具用、器具洗浄用、食品及び/又は飲料表面用等を含む)、任意の塗り付け硬表面洗剤又はすすぎ助剤としての使用に特に適当である。・・・」 3 当審の判断 (1)特許法第36条第6項第2号について 本件特許発明1及び14の(A)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルは縮合リシノール酸から得られるエステル化合物であり、(B)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数8~12の脂肪酸から得られるエステル化合物であり、これらの分子構造から、(A)成分と(B)成分のエステル化合物は組成物中においても明確に区別することができる。 また、特定のHLB値を有するポリグリセリン脂肪酸エステルを表記する場合に、それが混合物であっても、化合物名のみで特定して、「・・・の混合物」とは表記せず、また、HLB値が平均値であっても、「HLBが・・・のポリグリセリン脂肪酸エステル」と表記するのが一般的である。 加えて、訂正後の請求項1及び14において、(A)成分及び(B)成分は仕込み時のポリグリセリン脂肪酸エステルを指しており、他の成分と配合される前の状態でのポリグリセリン脂肪酸エステルを指している。 従って、当業者であれば、訂正後の(A)成分及び(B)成分に該当するポリグリセリン脂肪酸エステルの範囲を明確に把握できる。 そして、(A)成分と(B)成分の質量比に関し、「仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である」と特定されていることから、質量比の対象となる(A)成分及び(B)成分の範囲が明確であり、その結果、(A)成分/(B)成分の値も明確である。 以上より、訂正後の本件特許発明1の自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物及び本件特許発明14の野菜又は果物洗浄用組成物に存在するポリグリセリン脂肪酸エステルに関し、(A)成分に由来するポリグリセリン脂肪酸エステルと(B)成分に由来するポリグリセリン脂肪酸エステルは重複することなく明確に区別することができるため、「質量比で(A)成分/(B)成分の値」は正確に把握することができる。 その結果、実施例の記載と、訂正後の本件特許発明1及び14に規定する「仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である」という発明特定事項も整合している。 以上より、本件特許発明1及び14は明確であり、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。 また、本件特許発明1及び14に直接的又は間接的に従属する請求項に記載の発明も明確となり、これらの記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。 (2)特許法第36条第6項第1号について 訂正後の本件発明は、(A)成分として使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルと(B)成分として使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルでは、構成される脂肪酸の構造が明らかに異なるため、本件特許発明の組成物中でこれらが明確に区別できることは明らかである。その結果、上述の通り、「仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9」という発明特定事項も技術的に明確となっている。 本件特許明細書の実施例では、下記の成分(A)に該当する4種のエステル化合物と(B)成分に該当する2種のエステル化合物を配合して用いている(本件特許明細書の段落【0047】、【0048】)。具体的には以下の通りである。 (A)成分 A-1:テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル(HLB2~3) A-2:ペンタグリセリン縮合リシノール酸エステル(HLB0.5~2) A-3:ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル1(HLB2~3) A-4:ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル2(HLB3~4) (B)成分 B-1:テトラグリセリンカプリル酸エステル(HLB16.1) B-2:デカグリセリンカプリル酸エステル(HLB16.1) これらは、ポリグリセリン脂肪酸エステルを示すための一般的な記載であり、仕込み時のポリグリセリン脂肪酸エステルを示している。当業者であれば、これらの化合物の構造、性質等を容易に想定することができる。 また、本件特許明細書の段落【0096】以降に、本件特許発明の自動食器洗浄機用すすぎ助剤の成分表が記載されているが、各成分の数値は、技術常識も勘案すれば、仕込み値であることも当業者は十分理解できる。その結果、「仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9である」自動食器洗浄機用すすぎ助剤がどのような組成物であるかを当業者は十分認識できるといえる。 そしてこれらの表より、本件特許発明の組成物の乾燥性、仕上がり性、再汚染防止性、抑泡性、貯蔵安定性、洗浄性(野菜)、消臭性及び抗菌性が試験されて、全ての試験項目で本件特許発明の組成物は実用性を有することが具体的に立証されているといえる。 従って、本件特許発明の、「自動食器洗浄機、特に業務用の節水型自動食器洗浄機で使用した場合にも、食器類の乾燥性、仕上がり性に優れており、自動食器洗浄機内での抑泡性、貯蔵安定性にも優れ、洗浄タンク内に汚れが存在する場合でも乾燥性、仕上がり性が良好であり、被洗浄物の再汚染防止効果を有し、野菜や果物の洗浄剤としても有用であるすすぎ助剤組成物を提供する」という課題が解決されていることは、当業者が十分に認識可能であるといえる。 以上より、訂正後の特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。 (3)特許法第29条第1項3号及び同法同条第2項について ア 本件特許発明1について (ア)甲1発明との対比 甲第1号証には、比較例12の記載からみて、「テトラグリセリンステアリン酸エステル35wt%、デカグリセリンカプリン酸エステル25wt%、プロピレングリコール20wt%、純水20wt%を含有するすすぎ助剤」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(上記2(1)摘記1b参照)。 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「純水」は、本件特許発明1の「(C)水」に相当する。 甲1発明の「すすぎ助剤」は、自動食器洗浄機などに用いられるものであるから(摘記1a参照)、本件特許発明1の「自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「(C)水を含有する自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物。」である点で一致し、以下の相違点がある。 <相違点> 自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物が、本件特許発明1では (A)仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(B)仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、仕込み値の質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.1~1.9であるのに対し、甲1発明ではテトラグリセリンステアリン酸エステル35wt%、デカグリセリンカプリン酸エステル25wt%を含有する点。 (イ)相違点についての検討 甲1発明は、甲第1号証に記載されている発明としては比較例であって、比較例12として低温安定性が悪く及び泡立ち性の評価が「×」で、自動食器洗浄機の運転に支障があるすすぎ助剤として判断されている(摘記1b参照)。したがって、上記相違点は実質的な相違点である。 一方、甲第2号証では、「重合度2~12のポリグリセリンの縮合リシノレートがないと、白色乳状のすすぎ助剤は得られない」(摘記2b参照)、「ショ糖、グリセリン、ソルビタン、ソルバイド、ソルビットからなる群から選ばれた1種又は2種以上の多価アルコールと炭素原子数6~10個の脂肪酸との部分エステルとしては、ソルビタンモノカプリレート、グリセリンモノカプリレート等があり、これらは使用濃度におけるすすぎ助剤溶液の泡立ちを抑え、食器に光沢を与える」(摘記2c参照)と記載されており、重合度2~12のポリグリセリンの縮合リシノレートは乳状すすぎ助剤を形成することを目的に使用される成分であることは理解されるものの、その他の機能や効果については甲第2号証には何らの記載も示唆もされていない。 そして、甲1発明は、低温安定性が悪く、泡立ち性が自動食器洗浄機では使用できないすすぎ助剤組成物であるから、甲1発明に接した当業者は、低温安定性を改善し、泡立ちが抑えられるための改良を行うはずであり、泡立ち性に関して、多価アルコールと炭素原子数6~10個の脂肪酸との部分エステルが寄与することが記載されている甲第2号証を参照すれば、当業者であれば、甲1発明に対して、この部分エステルの添加を検討するはずである。 したがって、甲第2号証には、重合度2~12のポリグリセリン縮合リシノレートとすすぎ助剤組成物の低温安定性や泡立ち性との関係について何らの記載も示唆もない以上、甲1発明のテトラグリセリンステアリン酸エステルのトリエステルに代えて重合度2~12のポリグリセリン縮合リシノレートを使用する動機付けは見い出せないから、甲1発明において当該ポリグリセリン縮合リシノレートを採用することは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (ウ)本件特許発明1の効果 本件特許明細書の段落【0096】【表1】(特に、実施例9及び10)の記載から明らかなように、 成分(A)としてポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを用いた自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物は、再汚染防止性試験に関する3つの評価(乾燥性、仕上がり性、汚れ付着性)において優れた効果を有する。 そして、甲第1号証及び甲第2号証には、すすぎ助剤組成物における重合度2~12のポリグリセリン縮合リシノレートと再汚染防止性の関係について何らの記載も示唆もないから、本件特許発明1の効果は、甲第1号証及び甲第2号証からは当業者が予想できない顕著なものである。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~13について 本件特許発明2~13は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものである。 そうすると、上記アと同様の理由により、本件特許発明3、6は、上記甲第1号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件特許発明2~13は、甲第1号証~甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明14について 本件特許発明14は、本件特許発明1と同様に、(A)成分として「仕込み時のHLBが4以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル」を用い、(B)成分として、「仕込み時のHLBが14以上、19以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであって、該ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと炭素数8~12の脂肪酸とのエステルである、ポリグリセリン脂肪酸エステル」を用いている。 そうすると、甲第7号証の記載を考慮したとしても、上記アと同様の理由により、本件特許発明14は、甲第1号証、甲第2号証、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 エ 本件特許発明15について 本件特許発明15は、本件特許発明14を引用するものである。 そうすると、上記ウと同様の理由により、本件特許発明15は、甲第1号証~甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、以下の1、2である。 1 本件特許の請求項1~15に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本件特許の請求項1~8に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 2 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 1 特許法第36条第6項第1号について (1)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、 「ア 「本件特許発明1では、(A)成分と(B)成分の質量比は特定されているが、組成物中の(A)成分、(B)成分の質量割合は特定されていない。例えばこれらの質量割合をそれぞれごく僅かなものとした場合に本発明の効果を発揮できることが示されておらず、サポート要件を満たさない。本件特許発明2~15も同様の取消理由を有する。 イ (B)成分(HLB が14以上のポリグリセリン脂肪酸エステル)について、本件特許明細書の実施例ではHLB16.1のものしか用いられていない(本件特許明細書の段落【0048】等)。(A)成分(HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル)についても、HLB0.5~4のものしか用いられていない(本件特許明細書の段落【0047】等)。このような実施例にもとづいて、本件特許発明1の範囲((A)成分についてHLB5以下、 (B)成分についてHLB14以上)にわたって効果を発揮できることが示されていない。本件特許発明2~15も同様の取消理由を有する。 したがって、本件特許発明1~15は、サポート要件を満たしていない。」と主張する。 しかし、上記アについては、段落【0014】において(A)成分の配合量には制限はなく、好ましい範囲も記載されており、段落【0016】において(B)成分の配合量には制限はなく、好ましい範囲も記載されているし、これらの質量割合は、技術常識を勘案してそれぞれ配合すれば足りるものであることは明らかである。 イについては、上記第4 4(2)で検討したとおり、本件特許発明の範囲において、「自動食器洗浄機、特に業務用の節水型自動食器洗浄機で使用した場合にも、食器類の乾燥性、仕上がり性に優れており、自動食器洗浄機内での抑泡性、貯蔵安定性にも優れ、洗浄タンク内に汚れが存在する場合でも乾燥性、仕上がり性が良好であり、被洗浄物の再汚染防止効果を有し、野菜や果物の洗浄剤としても有用であるすすぎ助剤組成物を提供する」という課題が解決されていることは、当業者が十分に認識可能である。また、本件訂正により、訂正後の本件特許発明1は、(A)成分の仕込み時のHLBが4以下、(B)成分の仕込み時のHLBが14以上、19以下に限定されたことからみても、本件特許発明1~15において、上記課題が解決されていることを当業者が十分に認識可能であることは明らかである。 よって、出願人の上記主張は採用できない。 (2)小括 本件特許の請求項1~15に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものである。 2 特許法第36条第6項第2号について (1)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、 「ア 本件特許発明1では、(A)HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステルと、(B)HLBが14以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを規定するところ、HLBの定義としてGriffinの方法により求められた値である旨記載され、1996年(平成8年)に発行された「新版 界面活性剤ハンドブック」の第234頁(甲第9号証)が挙げられている(本件特許明細書の段落【0013】)。 当該第234頁には、Griffinによって提唱されたHLBの概念は、(1)乳化力を比較して実験的に定められるものであることが記載されている。また、非イオン活性剤については簡単な計算式があり、(2)化剤が多価アルコールと脂肪酸エステルの場合の計算式として下記(5・1・6)が示されている。Sは、エステルのけん化価であり、Aは脂肪酸の酸価である旨記載されている。 更に(3)非イオン活性剤分子中の親水基の重量に着目したHLBの式として下記(5・1・9)が示されている。 このように、本件特許明細書に記載のGrifiinの方法により求められるHLBは、「新版界面活性剤ハンドブック」の第234頁の記載から少なくとも上記(1)~(3)複数を読み取ることができ、どの方法を採用するかによってHLBの値も当然変動すると考えられるため、HLBの値が一義的に定まらないと言える。なお、上(2)の方法を採用するとしても、例えばエステルのけん化価の測定方法が不明であり、例えばJIS K 0070-1992の方法を用いるのか、又は、その他の方法を用いるのかが明らかでなく、この測定方法によってもHLBの値が変動し、一義的に定まらないと言える。 したがって、ある具体的な自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物が本件特許発明1の範囲に入るか否かを当業者が理解することができない。本件特許発明2~15も同様の取消理由を有する。 イ また本件特許発明7において、「クレート洗浄後のすすぎに用いられる」なる記載が「自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物」を物としてどのように特定するのかが不明であり、結果、本件特許発明7が示す技術的内容も明確でない。本件特許発明8~13の本件特許発明7を引用する部分も同様の取消理由を有する。 以上より、本件特許発明1~15は、明確性要件を満たしていない。」と主張する。 アについて HLB値は親水親油バランスであるから、ある界面活性剤について一義的に決まるものであり、実験により得られる値と複数の計算式によって得られる値とで一定の誤差が生じる可能性はあったにしても、上記どの方法を採用するかによってHLBの値が変動するとは解されない。 また、訂正後の本件特許発明においては、(A)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルは縮合リシノール酸から得られるエステル化合物であり、(B)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数8~12の脂肪酸から得られるエステル化合物であり、これらの分子構造から、(A)成分と(B)成分のエステル化合物は組成物中においても明確に区別することができる。 イについて 本願発明7の「クレート洗浄後のすすぎに用いられる」なる記載は、「自動食器洗浄機用すすぎ助剤組成物」の用途を特定するものであるから、本件特許発明7が示す技術的内容も明確である。 よって、出願人の上記主張は採用できない。 (2)小括 本件特許の請求項1~15に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、令和2年3月17日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700038

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