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特許訂正審判

2020-390075

積層セラミックキャパシタ及びその製造方法

審判番号
2020-390075
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2010-284215外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年08月24日
審決日
2021年07月06日
公報発行日
2021年11月26日
結論
訂正認容
審判長/審判官
分類
P141 .851-Y (H01G) / P141 .853-Y (H01G) / P141 .856-Y (H01G) / P141 .857-Y (H01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法126条1項3号特許法126条1項4号特許法126条5項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第6項、特許法第131条の2第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5301524号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
特許第5301524号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、3、4、7、8、9について訂正することを認める。

理由

目次 ▾ 15項目
【理 由】

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本件訂正審判の請求に係る特許第5301524(以下「本件特許」という。)は、平成22年12月21日(パリ条約に基づく優先権主張 2009年12月22日、韓国(KR))を出願日とする出願の請求項1ないし請求項11に係る発明について、平成25年6月28日にその特許権の設定の登録がされたものであって、本件特許についての訂正の経緯は以下のとおりである。

令和2年 8月24日   本件訂正審判請求

令和2年10月30日付け 訂正拒絶理由通知

令和2年12月23日   意見書

令和3年 2月10日付け 訂正拒絶理由通知

令和3年 4月 6日   意見書、審判請求書の手続補正書

第2 令和3年4月6日付け手続補正書による訂正審判の審判請求書の補正、及びその適否

1 訂正審判の審判請求書の補正

令和3年4月6日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)の内容のうち、審判請求書における訂正の要旨に関する補正は、以下のとおりである。

(1)「5.請求の趣旨」について

審判請求書の「5. 請求の趣旨」の本文について、

「特許第5301524号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」(以下、「補正前の請求の趣旨」という。)

とあったところを、

「特許第5301524号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、3、4、7、8、および9について訂正することを認める、との審決を求める。」(以下、「補正後の請求の趣旨」という。)

とするものである。

(2)「6.請求の理由」の「(2)訂正事項」について

折りたたみ中(クリックで表示)

審判請求書の「6.請求の理由」の「(2)訂正事項」について、

「ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「第2電極物質を含む外部電極」と記載されているのを、「焼結された第2電極物質を含む外部電極」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2から5も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に「前記キャパシタ本体を焼成するステップ」と記載されているのを、「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7から11も同様に訂正する。)
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層」と記載されているのを、「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2から5も同様に訂正する。)
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層」と記載されているのを、「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7から11も同様に訂正する。)」(以下、「補正前の訂正事項1」ないし「補正前の訂正事項4」という。)

とあったところを、

「ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「前記第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ」と記載されているのを、「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体と、前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極と、を含み、前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層を備え、前記第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金を含むことを特徴とする積層セラミックキャパシタ」に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記第2極物質は、銅または銅合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ」と記載されているのを、「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体と、前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極と、を含み、前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層を備え、前記第2極物質は、銅または銅合金を含むことを特徴とする積層セラミックキャパシタ」に訂正する。
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ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記拡散層は、ニッケル銅合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ」と記載されているのを、「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体と、前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極と、を含み、前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層を備え、前記拡散層は、ニッケル銅合金を含むことを特徴とする積層セラミックキャパシタ」に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「前記第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする請求項6に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法」と記載されているのを、「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップと、前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップと、前記キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップと、前記キャパシタ本体を加圧するステップと、前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップと、を含み、前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層が形成され、前記第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする積層セラミックキャパシタの製造方法」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に「前記第2電極物質は、銅または銅合金からなることを特徴とする請求項6に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法」と記載されているのを、「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップと、前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップと、前記キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップと、前記キャパシタ本体を加圧するステップと、前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップと、を含み、前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層が形成され、前記第2電極物質は、銅または銅合金からなることを特徴とする積層セラミックキャパシタの製造方法」に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に「前記拡散層は、ニッケル銅合金からなることを特徴とする請求項6に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法」と記載されているのを、「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップと、前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップと、前記キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップと、前記キャパシタ本体を加圧するステップと、前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップと、を含み、前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層が形成され、前記拡散層は、ニッケル銅合金からなることを特徴とする積層セラミックキャパシタの製造方法」に訂正する。」(以下、「補正後の訂正事項1」ないし「補正後の訂正事項6」という。)

とするものである。なお、下線は訂正箇所である。

2 補正の適否

上記「1」によれば、本件補正は、補正前の訂正事項1ないし4について、

(1)補正前の訂正事項1及び補正前の訂正事項3に記載されていた請求項1及び5に対する訂正事項を削除し、

(2)補正前の訂正事項2及び補正前の訂正事項4に記載された請求項6、10及び11に対する訂正事項を削除するとともに、

(3)補正前の訂正事項1及び補正前の訂正事項3に記載されていた請求項2に対する訂正事項をまとめた上で、請求項2を独立請求項に改め、請求項1との引用関係を解消するとした補正後の訂正事項1とし、

(4)補正前の訂正事項1及び補正前の訂正事項3に記載されていた請求項3に対する訂正事項をまとめた上で、請求項3を独立請求項に改め、請求項1との引用関係を解消するとした補正後の訂正事項2とし、

(5)補正前の訂正事項1及び補正前の訂正事項3に記載されていた請求項4に対する訂正事項をまとめた上で、請求項4を独立請求項に改め、請求項1との引用関係を解消するとした補正後の訂正事項3とし、

(6)補正前の訂正事項2及び補正前の訂正事項4に記載されていた請求項7に対する訂正事項をまとめた上で、請求項7を独立請求項に改め、請求項6との引用関係を解消するとした補正後の訂正事項4とし、

(7)補正前の訂正事項2及び補正前の訂正事項4に記載されていた請求項8に対する訂正事項をまとめた上で、請求項8を独立請求項に改め、請求項6との引用関係を解消するとした補正後の訂正事項5とし、

(8)補正前の訂正事項2及び補正前の訂正事項4に記載されていた請求項9に対する訂正事項をまとめた上で、請求項9を独立請求項に改め、請求項6との引用関係を解消するとした補正後の訂正事項6とするものである。

してみると、上記(1)および(2)は、審判請求の趣旨の減縮的変更に該当するものであり、上記(3)ないし(8)は、請求項2ないし4、7ないし9に対する補正前の各訂正事項をまとめた上で請求項間の引用関係を解消するものであって、審理対象の拡張変更を伴うものではない。

よって、本件補正は、本件審判請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第131条の2第1項の規定に適合するから、本件補正を認める。

第3 請求の趣旨及び訂正の内容

上記「第2」のとおり、審判請求書の補正が認められることから、本件訂正審判の請求の趣旨は、上記「第2」「1」「(1)」「補正後の請求の趣旨」のとおりであり、本件訂正審判請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、「第2」「1」「(2)」「補正後の訂正事項1」ないし「補正後の訂正事項6」のとおりである。

第4 令和2年10月30日付け訂正拒絶理由の概要

当審が令和2年10月30付けで通知した訂正拒絶理由の要旨は、以下のとおりである。

訂正事項1、3、4は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

そして、本件訂正後の請求項1~11に係る発明は、次の(1)及び(2)のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができず、訂正事項1、3、4は、特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件訂正を認めることはできない。

(1)特許法第29条第1項第3号について

訂正後の請求項1ないし4に係る発明は、下記引用文献に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

(2)特許法第29条第2項について

訂正後の請求項5に係る発明は、下記引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

訂正後の請求項6ないし11に係る発明は、下記引用文献に記載された発明及び慣用的に行われている技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

・引用文献:特開2005-222831号公報

第5 令和3年2月10日付け訂正拒絶理由の概要

当審が令和3年2月10日付けで通知した訂正拒絶理由の要旨は、以下のとおりである。

訂正事項1、3、4は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

そして、本件訂正後の請求項1~11に係る発明は、次の(1)のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができず、訂正事項1、3、4は、特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件訂正を認めることはできない。

(1)特許法第29条第2項について

訂正後の請求項1ないし5に係る発明は、下記引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

訂正後の請求項6ないし11に係る発明は、下記引用文献に記載された発明及び慣用的に行われている技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

・引用文献:特開2005-222831号公報

第6 当審の判断

1 訂正の目的について

(1)訂正事項1について

訂正事項1は、本件訂正前の請求項2が請求項1を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消した上で、「第2電極物質を含む外部電極」を「焼結された第2電極物質を含む外部電極」と訂正して「第2電極物質」の状態について「焼結された」ことを限定し、また、「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、」を「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、」と訂正して「拡散層」の形成される場所をより限定するものである。

よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(2)訂正事項2について

訂正事項2は、訂正事項1と同様に、本件訂正前の請求項3が請求項1を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消した上で、「第2電極物質を含む外部電極」を「焼結された第2電極物質を含む外部電極」と訂正し、また、訂正前の請求項3の「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、」を「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、」と訂正するものである。

よって、訂正事項2も、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(3)訂正事項3について

訂正事項3は、訂正事項1と同様に、本件訂正前の請求項4が請求項1を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消した上で、「第2電極物質を含む外部電極」を「焼結された第2電極物質を含む外部電極」と訂正し、また、訂正前の請求項4の「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、」を「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、」と訂正するものである。

よって、訂正事項3も、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(4)訂正事項4について

ア 訂正事項4は、本件訂正前の請求項7が請求項6を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消するものである。

イ そして、訂正事項4は、「前記キャパシタ本体を焼成するステップ」を「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」と訂正するものである。

ここで、補正された審判請求書(令和3年4月6日付け手続補正書の12頁14ないし21行)において、審判請求人は、訂正後の請求項7に係る発明では、外部電極が付着されたキャパシタ本体を焼成することを明らかにすることで特許請求の範囲を減縮しようとするものである旨主張しているが、訂正後の請求項7の「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」の「前記外部電極」の「前記」は、該「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」の前のステップである「前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップ」における「外部電極」を示していることは明らかであって、「前記キャパシタ本体を焼成するステップ」時には、既に「キャパシタ本体」に外部電極が形成されているといえるから、「前記キャパシタ本体」について「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体」とする訂正事項は、特許請求の範囲を減縮するものとはいえない。

しかし、訂正前の請求項7が引用する訂正前の請求項6に係る発明は、「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップと、前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップと、前記キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップと、前記キャパシタ本体を加圧するステップと、前記キャパシタ本体を焼成するステップと、を含み、」と記載されていることから、各ステップが任意の順である製造方法も含まれるところ、「前記キャパシタ本体を焼成するステップ」を「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」と訂正することで、少なくとも「・・・外部電極を形成するステップ」の後に「・・・キャパシタ本体を焼成するステップ」が行われることが特定され、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の段落【0043】の「次いで、銅を含む外部電極2を付着し、焼成及びめっき工程を行い」との記載と整合が図れ、積層セラミックキャパシタの製造方法における工程が明りょうになったといえる。

ウ さらに、訂正事項4は、「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、」を「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、」と訂正して、「拡散層」の形成される場所をより限定するものである。

エ よって、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明、及び、第4項に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(5)訂正事項5について

訂正事項5は、訂正事項4と同様に、本件訂正前の請求項8が請求項6を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消した上で、「前記キャパシタ本体を焼成するステップ」を「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」と訂正し、また、訂正前の請求項8の「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、」を「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、」と訂正するものである。

よって、上記「(4)」で述べたように、訂正事項5も、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明、及び、第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(6)訂正事項6について

訂正事項6は、訂正事項4と同様に、本件訂正前の請求項9が請求項6を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消した上で、「前記キャパシタ本体を焼成するステップ」を「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」と訂正し、また、訂正前の請求項9の「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、」を「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、」と訂正するものである。

よって、上記(4)で述べたように、訂正事項6も、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明、及び、第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

2 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて

(1)訂正事項1について

ア 訂正事項1における「第2電極物質を含む外部電極」を「焼結された第2電極物質を含む外部電極」とする訂正事項について

本件特許明細書等の段落【0009】の「第2電極物質を含む外部電極」、同段落【0015】の「第2電極物質を含む外部電極を形成するステップ」、同段落【0033】の「外部電極2は、銅(Cu)または銅合金(Cu alloy)を含む第2電極物質からなっている。」、同段落【0045】の「本発明によるキャパシタ本体1の外側端部に、第2電極物質である銅ペーストを塗布した」の各記載より、本件特許明細書等には、外部電極に第2電極物質が含まれることが記載されているといえ、さらに、同段落【0005】の「セラミックキャパシタの側端面に上記の外部電極ペーストを塗布し、外部電極ペーストが塗布されたセラミックキャパシタを焼成して外部電極ペースト内の金属粉末を焼結させることによって外部電極を形成する。」、及び、同【0043】の「次いで、銅を含む外部電極2を付着し、焼成及びめっき工程を行い、図1のような積層セラミックキャパシタを完成した。」との記載から、第2電極物質が含まれる外部電極が焼結されることは明らかである。

よって、訂正事項1における「第2電極物質を含む外部電極」を「焼結された第2電極物質を含む外部電極」とする訂正事項は、本件特許明細書等に記載された範囲内の訂正である。

イ 訂正事項1における「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、」を「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、」とする訂正事項について

本件特許明細書等の段落【0034】の「内部電極4と外部電極2との接続領域には、第1電極物質と第2電極物質とが混在した1μm超過の長さを有する拡散層4aが形成される。」、同段落【0039】の「拡散層4aは、内部電極4の両方端部のうち少なくとも一つに形成され」との各記載、及び、図3に示された「4a」の拡大図からすれば、拡散層4aが、内部電極4と外部電極2との接続領域における内部電極4の端部に形成されることは明らかである。

よって、訂正事項1における「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、」を「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、」とする訂正事項は、本件特許明細書等に記載された範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項1における、請求項間の引用関係を解消する訂正事項は、本件特許明細書等に記載された範囲内でされる訂正であることは明らかである。

エ 以上から、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2及び訂正事項3について

訂正事項2、及び、訂正事項3は、訂正事項1と同様の訂正をするものである。

よって、上記「(1)」で述べたように、訂正事項2、及び、訂正事項3も、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項4について

ア 訂正事項4における「前記キャパシタ本体を焼成するステップ」を「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」とする訂正事項について

本件特許明細書等の段落【0042】の「次いで、図4cのように、積層セラミックキャパシタの陥没された部分を切断し、個別積層セラミックキャパシタを形成した。」、同段落【0043】の「次いで、銅を含む外部電極2を付着し、焼成及びめっき工程を行い、図1のような積層セラミックキャパシタを完成した。」との記載から、本件特許明細書等には、外部電極が付着された個別積層セラミックキャパシタを焼成することが記載されているといえる。

よって、訂正事項4における「前記キャパシタ本体を焼成するステップ」を「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」とする訂正事項は、本件特許明細書等に記載された範囲内の訂正である。

イ 訂正事項4における「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、」を「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、」とする訂正事項について

本件特許明細書等の段落【0034】の「内部電極4と外部電極2との接続領域には、第1電極物質と第2電極物質とが混在した1μm超過の長さを有する拡散層4aが形成される。」、同段落【0039】の「拡散層4aは、内部電極4の両方端部のうち少なくとも一つに形成され」との各記載、及び、図3に示された「4a」の拡大図からすれば、拡散層4aが、内部電極4と外部電極2との接続領域における内部電極4の端部に形成されることは明らかである。

よって、訂正事項4における「前記内部電極と前記外部電極との接続領域に、」を「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、」とする訂正事項は、本件特許明細書等に記載された範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項4における、請求項間の引用関係を解消する訂正事項は、本件特許明細書等に記載された範囲内でされる訂正であることは明らかである。

エ 以上から、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項5及び訂正事項6について

訂正事項5及び訂正事項6は、訂正事項4と同様の訂正をするものである。

よって、上記「(3)」で述べたように、訂正事項5及び訂正事項6も、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第126条第5項に適合するものである。

3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて

(1)訂正事項1ないし訂正事項3について

上記「1(1)」ないし「1(3)」で述べたとおり、訂正事項1ないし訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項4ないし訂正事項6について

上記「1(4)」ないし「1(6)」で述べたように、訂正事項4ないし訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

4 独立特許要件について

上記「1」に記載したとおり、訂正事項1ないし6は特許請求の範囲の減縮をその目的としているから、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2ないし4、7ないし9に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、検討する。

(1)訂正後の発明

本件訂正後の請求項2ないし4、7ないし9の記載は、次のとおりである(以下、本件訂正後の請求項2ないし4、7ないし9に係る発明を、それぞれ「訂正発明2」ないし「訂正発明4」、「訂正発明7」ないし「訂正発明9」という。)。

「【請求項2】
第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極と、
を含み、
続きを表示(全45行)
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層を備え、
前記第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金を含むことを特徴とする積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極と、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層を備え、
前記第2極物質は、銅または銅合金を含むことを特徴とする積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極と、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層を備え、
前記拡散層は、ニッケル銅合金を含むことを特徴とする積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップと、
前キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップと、
前記キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップと、
前記キャパシタ本体を加圧するステップと、
前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップと、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層が形成され、
前記第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金からなることを特徴とする積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項8】
第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップと、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップと、
前記キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップと、
前記キャパシタ本体を加圧するステップと、
前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップと、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層が形成され、
前記第2電極物質は、銅または銅合金からなることを特徴とする積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項9】
第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップと、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップと、
前記キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップと、
前記キャパシタ本体を加圧するステップと、
前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップと、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した1μm超過及び13μm未満の長さを有する拡散層が形成され、
前記拡散層は、ニッケル銅合金からなることを特徴とする積層セラミックキャパシタの製造方法。」

(2)引用文献の記載及び引用発明

ア 令和3年2月10日付け訂正拒絶理由通知書で引用した引用文献(特開2005-222831号公報)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付与。)

「【0002】
積層セラミック電子部品、例えば積層セラミックコンデンサは、一般に次のようにして製造される。チタン酸バリウム系セラミックなどの誘電体セラミックグリーンシート上に、内部電極用導体ペーストを所定のパターンで印刷する。このシートを複数枚積み重ね、圧着して、セラミックグリーンシートと内部電極ペースト層とが交互に積層された未焼成の積層体を得る。得られた積層体を所定の形状に切断した後、高温でセラミックと内部電極とを同時焼成して、積層セラミックコンデンサ素体を得る。次いで、素体の内部電極の露出する端面に、導電性粉末、ガラス粉末および有機ビヒクルを主成分とする端子電極用導体ペーストを浸漬等により塗布し、乾燥した後、高温で焼成することにより端子電極が形成される。この後、端子電極上には、必要に応じてバレルめっき装置等を用いてニッケル電気めっき層を、次いでこの上にスズ若しくはその合金めっき層が形成される。
(省略)
【0019】
続きを表示(全21行)
本発明の端子電極用導体ペーストは、導電性粉末として前記のニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、錫、金、銀、パラジウム、白金、ロジウムよりなる群から選択された少なくとも1種の金属(以下”含有金属”という)、特にはニッケル含有フレーク状銅粉末用いることにより、焼成時、極めて優れた脱バインダ性と良好な焼結性を示すとともに、著しく改善された耐酸化性を示す。このため、積層セラミック電子部品、特に内部電極としてニッケルを用いた焼成済みの積層セラミックコンデンサ素体に、接着性、導電性、内部電極との接合性等の優れた端子電極を形成することができる。
(省略)
【0043】
実施例1
平均粒径8.0μm、平均厚み0.2μmのフレーク状銅粉末の粒子表面に、ニッケルの薄膜を平均厚み0.02μmとなるように無電解めっきにより均一、一様に被覆し、フレーク状導電性粉末を得た。蛍光X線分析により測定された粉末中のニッケル量は15.5重量%、ニッケルめっき後の粉末の平均厚みは0.24μm、平均粒径/平均厚みは約33であった。また、この粉末を空気中300℃で1時間保持した後の重量増加率(酸化重量増)をTG-DTAにより測定したところ、2.5%であった。
【0044】
このフレーク状導電性粉末100重量部に対して、BaO-ZnO-B2O3系ガラス粉末を10重量部と、アクリル樹脂をテルピネオールに溶解した有機ビヒクルを40重量部とを配合し、三本ロールミルで混合し導体ペーストを製造した。
【0045】
チタン酸バリウム系セラミック誘電体グリーンシートと、ニッケル内部電極との積層体を、高温で同時焼結して得られた、平面寸法が2.0mm×1.25mmで厚みが1.25mmのX7R 100nF(規格値)の積層セラミックコンデンサ素体を用意し、前記導体ペーストを、コンデンサ素体のニッケル内部電極が露出した両端面に、焼成後の膜厚が60μmとなるように浸漬法により塗布し、熱風式乾燥機中150℃で10分間保持し、乾燥させた。次いで、ベルト式マッフル炉で次の3通りの焼成雰囲気中、ピーク温度が800℃、ピーク温度での保持時間が10分間、焼成の開始から終了まで1時間の条件で焼成して端子電極を形成し、積層セラミックコンデンサを得た。
【0046】
(1)全域5ppm以下の酸素を含む窒素雰囲気
(2)昇温工程において600℃に達するまでの領域は200ppmの酸素を含む窒素雰囲気、次いで5ppmの酸素を含む窒素雰囲気に切換える
(3)全域200ppmの酸素を含む窒素雰囲気
それぞれの条件で端子電極を焼付けしたコンデンサにつき、端子電極膜の表面および断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、またニッケル内部電極との接合性をX線マイクロアナライザ(XMA)で調べた。また、電極膜に電気めっきによりニッケルめっき膜を、更にスズめっき膜を形成し、外観と研磨断面のSEM観察により、めっき液の浸入の有無を調べた。さらに、200個の試料についてコンデンサの静電容量を測定し、規格値±10%の範囲外となったものを容量不良品として、その数を調べた。結果を表1に示す。
(省略)
【0056】
表中、内部電極との接合性は、Cuの拡散がNi内部電極中にCuが平均5μm以上拡散していれば○、明確な拡散層が確認できなかったものを×として評価した。」

表1

「
」

イ 引用文献の上記記載及び表1から、次のことがいえる。

(ア)段落【0019】、【0043】、【0044】によれば、端子電極は、ニッケルの薄膜により被覆されたフレーク状銅粉末を含む導体ペーストを積層セラミックコンデンサ素体に塗布し、焼成して形成されるから、該端子電極に銅が含まれることは明らかである。

(イ)段落【0019】、【0045】の記載、及び、上記(ア)で述べた点を踏まえれば、引用文献には、セラミック誘電体グリーンシートとニッケルを用いた内部電極との積層体を焼結して得られた積層セラミックコンデンサ素体と、積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面に焼成して形成され、銅を含む端子電極と、を含む積層セラミックコンデンサが記載されているといえる。

(ウ)段落【0019】、【0046】、【0056】によれば、端子電極と内部電極との接合性は、Cuの拡散がNi内部電極中にCuが平均5μm以上拡散していれば○、明確な拡散層が確認できなかったものを×として評価される。

そして、表1によれば、引用文献には、端子電極と内部電極との接合性が○と評価された複数の実施例が示されているから、引用発明には、Ni内部電極中にCuが平均5μm以上拡散した拡散層が形成された積層セラミックコンデンサが記載されているといえる。

ウ したがって、上記(ア)ないし(ウ)によれば、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。(なお、「Ni」および「Cu」は、「ニッケル」および「銅」と統一して表記した。)

「セラミック誘電体グリーンシートとニッケルを用いた内部電極との積層体を焼結して得られた積層セラミックコンデンサ素体と、
積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面に焼成して形成され、銅を含む端子電極と、
を含み、
ニッケル内部電極中に銅が平均5μm以上拡散した拡散層が形成された積層セラミックコンデンサ。」

エ また、引用文献の上記記載から、次のこともいえる。

段落【0002】によれば、引用文献には、誘電体セラミックグリーンシート上に内部電極用導体ペーストを所定のパターンで印刷したシートを複数枚積み重ね、圧着して、セラミックグリーンシートと内部電極ペースト層とが交互に積層された積層体を得ること、得られた積層体を所定の形状に切断後、高温で焼成して積層セラミックコンデンサ素体を得ること、素体の内部電極の露出する端面に、端子電極用導体ペーストを塗布し、高温で焼成することにより端子電極を形成することとを含む、積層セラミックコンデンサの製造方法が記載されているといえ、段落【0045】からすれば、実施例を製造する際、該製造方法を採用していることは自明である。

したがって、上記の点も踏まえれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)も記載されている。

「誘電体セラミックグリーンシート上にニッケルを用いた内部電極用導体ペーストを所定のパターンで印刷したシートを複数枚積み重ね、圧着して、セラミックグリーンシートと内部電極ペースト層とが交互に積層された積層体を得ることと、
得られた積層体を所定の形状に切断後、高温で焼成して積層セラミックコンデンサ素体を得ることと、
素体の内部電極の露出する端面に、銅を含む端子電極用導体ペーストを塗布し、高温で焼成することにより銅を含む端子電極を形成すること、とを含み、
ニッケル内部電極中に銅が平均5μm以上拡散した拡散層が形成された積層セラミックコンデンサの製造方法。」

(3)訂正発明2についての対比・判断

ア 訂正発明2と引用発明1との対比

(ア)訂正発明2の「第1電極物質」は「ニッケルまたはニッケル合金を含む」から、引用発明1の「ニッケルを用いた内部電極」は、訂正発明2の「第1電極物質を含む内部電極」に相当する。

そして、引用発明1の焼結された「セラミック誘電体グリーンシート」は、訂正発明2の「誘電体層」に相当し、引用発明1の「積層セラミックコンデンサ素体」は、訂正発明2の「積層キャパシタ本体」に相当する。

したがって、引用発明1の「セラミック誘電体グリーンシートとニッケルを用いた内部電極との積層体を焼結して得られた積層セラミックコンデンサ素体」は、訂正発明2の「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体」に相当する。

(イ)引用発明1の「積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面」は、訂正発明2の「前記キャパシタ本体の外部表面」に相当する。

また、引用発明1の「端子電極」は、積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面に焼成して形成されるから、引用発明1において、「端子電極」と「内部電極」とは電気的に連結されていることは当然のことである。

そして、本件特許明細書段落【0033】の「外部電極2は、銅(Cu)または銅合金(Cu alloy)を含む第2電極物質からなっている。」との記載からすれば、訂正発明2の「第2電極物質」は銅を含むから、引用発明1の「銅を含む端子電極」は、訂正発明2の「第2電極物質を含む外部電極」に相当する。

さらに、引用発明1における「銅を含む端子電極」は、焼成して形成されるのであるから、引用発明1において、「銅を含む端子電極」が焼結されていることは自明である。

よって、引用発明1の「積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面に焼成して形成され、銅を含む端子電極」は、訂正発明2の「前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極」に相当する。

(ウ)引用発明1において、「銅を含む端子電極」は「内部電極が露出した両端面」に形成されるから、「ニッケル内部電極中に銅が平均5μm以上拡散した」とは、端子電極に含まれる銅が、端子電極と接続された内部電極の端面からニッケル内部電極中に平均5μm以上拡散して拡散層を形成していることといえ、その「拡散層」には、銅とニッケルが混在していることは当然のことである。

してみれば、引用発明1と訂正発明2とは、「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層を備え」ている点で共通する。

ただし、「拡散層」に関し、訂正発明2は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明1は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点で相違する。

(エ)訂正発明2の「内部電極」は「第1電極物質」を含み、「第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金」を含む。

よって、「ニッケルを用いた内部電極」を有する引用発明1は、訂正発明2の「第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金を含む」構成を備えている。

よって、上記(ア)ないし(エ)から、訂正発明2と引用発明1との一致点と相違点は以下のとおりである。

(一致点)

「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極と、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層を備え、
前記第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金を含む積層セラミックキャパシタ。」

(相違点1)

「拡散層」に関し、訂正発明2は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明1は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点。

イ 相違点1についての判断

(ア)本件特許明細書等を参照すれば、訂正発明2は、超高容量でかつ高積層セラミックキャパシタにおいて、外部電極から内部電極への拡散が激しく発生すると、内部電極の体積膨脹によってクラックが発生し、発生したクラックによる曲げ強度の低下及びクラックを通じためっき液の浸透により、製品の信頼性が低下するという問題(段落【0007】、【0038】を参照)を解決するために、外部電極に含まれる第2電極物質が内部電極に拡散して形成される拡散層の長さを制御してその長さを「1μm超過13μm未満」とすることより、安定して静電容量を確保し、かつ電極物質の拡散によるクラックを防止する(段落【0039】、【0046】、【0047】、表1を参照)ものである。

(イ)一方、引用文献を参照すると、積層セラミックコンデンサにおいて内部電極にニッケル、端子電極に銅が使用される場合、端子電極の焼成は、これらの卑金属が焼成中に酸化されないように、通常極力酸素分圧の低い非酸化性雰囲気中で行われるため、バインダ樹脂や溶剤などのビヒクルの燃焼、分解、飛散(以下「脱バインダ」という。)を完全に行うことが難しく、効率よく脱バインダを行うためには、導体ペースト焼成時の昇温過程において、電極が緻密化する前の温度域で酸素濃度を数十~数百ppmに上げ、ビヒクル残渣を完全に酸化除去した後、酸素濃度を低下させて非酸化性雰囲気中で焼成を行う方法が望ましいが、銅粉末は、このような少量の酸素によっても容易に酸化されてしまうという課題(段落【0002】、【0004】、【0005】、【0008】を参照)が記載されている。

そして、該課題を解決するために、端子電極用導体ペーストの導電性粉末として、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、錫、金、銀、パラジウム、白金、ロジウムよりなる群から選択された少なくとも1種の金属(以下”含有金属”という)、特にはニッケル含有フレーク状銅粉末用いること(段落【0019】、【0030】、【0033】を参照)が記載されている。

さらに、引用文献には、フレーク状銅粉末の粒子表面にニッケル薄膜を無電解メッキにより被覆したフレーク状導電性粉末の平均粒径、平均厚み、平均粒径/平均厚み、ニッケル薄膜の厚さ及びニッケル量を変化させたフレーク状導電性粉末を用いた実施例1ないし3の積層セラミックコンデンサと、フレーク状銅粉末の表面にニッケルめっきを行わない他は、実施例1、2と同様にして製造されたフレーク状導電性粉末を用いた比較例1、2の積層セラミックコンデンサと、ニッケル量、平均粒径、平均厚みを変化させ、ニッケルメッキしない以外は実施例1と同様に製造されたフレーク状導電性粉末を用いた実施例4の積層セラミックコンデンサと、球状銅粉末の表面に、ニッケルの薄膜を無電解メッキにより被覆した導電性粉末を用いた比較例3、4の積層セラミックコンデンサとを、それぞれ所定の条件で焼成して作製し、ニッケル内部電極との接合性、即ち、Cuの拡散がNi内部電極中にCuが平均5μm以上拡散していれば○、明確な拡散層が確認できなかったものを×として評価したことが記載されている(段落【0043】ないし【0055】、表1を参照)。

しかしながら、引用文献には、各実施例における拡散層の具体的な長さについて記載されておらず、拡散層の長さの上限値について記載も示唆も見当たらない。

さらに、引用文献には、外部電極から内部電極への拡散が激しく発生すると、内部電極の体積膨張によってクラックが発生するという課題も記載されておらず、また、外部電極に含まれる電極物質が内部電極に拡散して形成される拡散層の長さを制御するという技術思想も記載されていない。

(ウ)ここで、積層セラミックキャパシタにおいて、外部電極を形成するための導電性ペーストを高温で焼き付けた場合、外部電極の物質が内部電極へ過剰に拡散が生じ、内部電極が膨張して応力が生じ、該応力によってクラックが発生することは技術常識(必要であれば、国際公開第2005/055257号段落[0006]ないし[0012]、特開2005-322751号公報段落【0001】、【0008】、特開平11-102835号公報段落【0009】、【0010】、特開平8-186049号公報段落【0003】を参照)であることから、引用発明1においても端子電極用導体ペーストの焼き付け温度によっては、外部電極の物質が内部電極へ過剰に拡散が生じ、内部電極が膨張して応力が生じ、該応力によってクラックが発生する可能性があると推測される。

しかしながら、上記(イ)で述べたように、引用文献には、外部電極に含まれる電極物質が内部電極に拡散して形成される拡散層の長さを制御するという技術思想は記載されておらず、さらに、クラックが発生しないように拡散層の長さを制御するという技術事項を示す証拠も他に見当たらないことから、引用発明1から拡散層の長さを制御してクラックが発生しない拡散層の長さの上限値を見出すことは、当業者であっても容易に想到し得ないことである。

(エ)本件特許明細書の段落【0045】、【0046】によれば、キャパシタ本体1の外側端部に、第2電極物質である銅ペーストを塗布した後、焼成条件を異にして積層セラミックキャパシタを形成し、内部電極4における拡散層4aの長さが13μm以上の場合、内部電極4の体積膨脹によるクラックが発生し始めることが判明され、表1によれば、拡散層の長さが13μmの実施例14のクラックが発生し始めていることが見て取れる。

しかしながら、上記(イ)で述べたように、引用文献には、各実施例における拡散層の具体的な長さについて記載されておらず、そして、上記(ウ)で述べたように、引用発明1から拡散層の長さの上限値を見出すことはできない。

してみると、引用発明1において、拡散層の長さの上限値をあえて設け、これを「13μm」とする動機付けは存在せず、当業者といえども、拡散層の長さの上限値を「13μm」とすることを導き出すことはできない。

(オ)したがって、上記相違点1に係る構成は、引用発明1に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。

ウ 小括

よって、訂正発明2は、当業者であっても引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(4)訂正発明3についての対比・判断

ア 訂正発明3と引用発明1との対比

(ア)本件特許明細書段落【0033】の「内部電極4は、ニッケル(Ni)またはニッケル合金(Ni alloy)を含む第1電極物質からなっている。」との記載からすれば、訂正発明3の「第1電極物質」はニッケルを含むから、引用発明1の「ニッケルを用いた内部電極」は、訂正発明3の「第1電極物質を含む内部電極」に相当する。

また、引用発明1の焼結された「セラミック誘電体グリーンシート」は、訂正発明3の「誘電体層」に相当する。

そして、引用発明1の「積層セラミックコンデンサ素体」は、訂正発明3の「積層キャパシタ本体」に相当するから、引用発明1の「セラミック誘電体グリーンシートとニッケルを用いた内部電極との積層体を焼結して得られた積層セラミックコンデンサ素体」は、訂正発明1の「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体」に相当する。

(イ)引用発明1の「積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面」は、訂正発明3の「前記キャパシタ本体の外部表面」に相当する。

また、引用発明1の「端子電極」は、積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面に焼成して形成されるから、引用発明1において、「端子電極」と「内部電極」とは電気的に連結されていることは当然のことである。

そして、訂正発明3の「第2電極物質」は「銅または銅合金」を含むから、引用発明1の「銅を含む端子電極」は、訂正発明3の「第2電極物質を含む外部電極」に相当する。

さらに、引用発明1における「銅を含む端子電極」は、焼成して形成されるのであるから、引用発明1において、「銅を含む端子電極」が焼結されていることは自明である。

よって、引用発明1の「積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面に焼成して形成され、銅を含む端子電極」は、訂正発明3の「前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極」に相当する。

(ウ)引用発明1において、「銅を含む端子電極」は「内部電極が露出した両端面」に形成されるから、「ニッケル内部電極中に銅が平均5μm以上拡散した」とは、端子電極に含まれる銅が、端子電極と接続された内部電極の端面からニッケル内部電極中に平均5μm以上拡散して拡散層を形成していることといえ、その「拡散層」には、銅とニッケルが混在していることは当然のことである。

してみれば、引用発明1と訂正発明3とは、「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層を備え」ている点で共通する。

ただし、「拡散層」に関し、訂正発明3は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明1は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点で相違する。

(エ)訂正発明3の「外部電極」は「第2電極物質」を含み、「第2電極物質は、銅または銅合金」を含む。

よって、「銅を含む端子電極」を有する引用発明1は、訂正発明3の「第2電極物質は、銅または銅合金を含む」構成を備えている。

よって、上記(ア)ないし(エ)から、訂正発明3と引用発明1との一致点と相違点は以下のとおりである。

(一致点)

「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極と、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層を備え、
前記第2電極物質は、銅または銅合金を含む積層セラミックキャパシタ。」

(相違点2)

「拡散層」に関し、訂正発明3は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明1は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点。

イ 上記相違点2についての判断

上記「(3)イ」で述べたように、「相違点1」に係る構成と同様、相違点2に係る構成は当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 小括

よって、訂正発明3は、当業者であっても引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(5)訂正発明4についての対比・判断

ア 訂正発明4と引用発明1との対比

(ア)本件特許明細書段落【0033】の「内部電極4は、ニッケル(Ni)またはニッケル合金(Ni alloy)を含む第1電極物質からなっている。」との記載からすれば、訂正発明4の「第1電極物質」はニッケルを含むから、引用発明1の「ニッケルを用いた内部電極」は、訂正発明4の「第1電極物質を含む内部電極」に相当する。

また、引用発明1の焼結された「セラミック誘電体グリーンシート」は、訂正発明4の「誘電体層」に相当する。

そして、引用発明1の「積層セラミックコンデンサ素体」は、訂正発明4の「積層キャパシタ本体」に相当するから、引用発明1の「セラミック誘電体グリーンシートとニッケルを用いた内部電極との積層体を焼結して得られた積層セラミックコンデンサ素体」は、訂正発明4の「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体」に相当する。

(イ)引用発明1の「積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面」は、訂正発明4の「前記キャパシタ本体の外部表面」に相当する。

また、引用発明1の「端子電極」は、積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面に焼成して形成されるから、引用発明1において、「端子電極」と「内部電極」とは電気的に連結されていることは当然のことである。

そして、本件特許明細書段落【0033】の「外部電極2は、銅(Cu)または銅合金(Cu alloy)を含む第2電極物質からなっている。」との記載からすれば、訂正発明4の「第2電極物質」は銅を含むから、引用発明1の「銅を含む端子電極」は、訂正発明4の「第2電極物質を含む外部電極」に相当する。

さらに、引用発明1における「銅を含む端子電極」は、焼成して形成されるのであるから、引用発明1において、「銅を含む端子電極」が焼結されていることは自明である。

よって、引用発明1の「積層セラミックコンデンサ素体の内部電極が露出した両端面に焼成して形成され、銅を含む端子電極」は、訂正発明4の「前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極」に相当する。

(ウ)引用発明1において、「銅を含む端子電極」は「内部電極が露出した両端面」に形成されるから、「ニッケル内部電極中に銅が平均5μm以上拡散した」とは、端子電極に含まれる銅が、端子電極と接続された内部電極の端面からニッケル内部電極中に平均5μm以上拡散して拡散層を形成していることといえ、その「拡散層」には、銅とニッケルが混在していることは当然のことである。

また、外部電極に含まれる銅が、ニッケルを含む内部電極に拡散されると、ニッケル銅合金が形成されることは技術常識であるから、引用発明1の「拡散層」においてもニッケル銅合金が含まれることは自明である。

してみれば、引用発明1と訂正発明4とは、「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層を備え、前記拡散層は、ニッケル銅合金を含む積層セラミックキャパシタ」である点で共通する。

ただし、「拡散層」に関し、訂正発明4は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明1は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点で相違する。

よって、上記(ア)ないし(ウ)から、訂正発明4と引用発明1との一致点と相違点は以下のとおりである。

(一致点)

「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層が交互に積層された積層キャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、焼結された第2電極物質を含む外部電極と、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層を備え、
前記拡散層は、ニッケル銅合金を含む積層セラミックキャパシタ。」

(相違点3)

「拡散層」に関し、訂正発明4は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明1は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点。

イ 相違点3についての判断

上記「(3)イ」で述べたように、「相違点1」に係る構成と同様、相違点3に係る構成は当業者であっても,引用発明1に基づいて容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 小括

よって、訂正発明4は、当業者であっても引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(6)訂正発明7についての対比・判断

ア 訂正発明7と引用発明2との対比

(ア)引用発明2の焼成された「誘電体セラミックグリーンシート」は、訂正発明7の「誘電体層」に相当する。

また、訂正発明7の「第1電極物質」は「ニッケルまたはニッケル合金」からなり、引用発明2では「内部電極用導体ペースト」に「ニッケルを用い」ており、「内部電極用導体ペースト」を焼成して「内部電極」が得られることは自明であるから、引用発明2の焼成された「ニッケルを用いた内部電極用導体ペースト」は、訂正発明7の「第1電極物質を含む内部電極」に相当する。

そして、引用発明2では、「積層セラミックコンデンサ素体」を得るために、「圧着」する処理も行われ、該「圧着」は、訂正発明7の「加圧」に相当する。よって、引用発明2の「誘電体セラミックグリーンシート上にニッケルを用いた内部電極用導体ペーストを所定のパターンで印刷したシートを複数枚積み重ね、圧着して、セラミックグリーンシートと内部電極ペースト層とが交互に積層された積層体を得ることと、得られた積層体を所定の形状に切断後、高温で焼成して積層セラミックコンデンサ素体を得ること」とは、訂正発明7の「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップ」及び「前記キャパシタ本体を加圧するステップ」に相当する。

(イ)本件特許明細書段落【0033】の「外部電極2は、銅(Cu)または銅合金(Cu alloy)を含む第2電極物質からなっている。」との記載から、訂正発明7の「第2電極物質」は銅を含み、引用発明2の「銅を含む端子電極」は、訂正発明2の「第2電極物質を含む外部電極」に相当する。

そして、引用発明2の「素体の内部電極の露出する端面」は、訂正発明7の「キャパシタ本体の外部表面」に相当し、引用発明2において、「素体の内部電極の露出する端面」に「銅を含む端子電極用導体ペースト」が塗布されることにより、「ニッケル内部電極の露出する端面」に「銅を含む端子電極用導体ペースト」が付着されることは明らかである。

さらに、引用発明2において、「銅を含む端子電極」は、「内部電極の露出する端面」に「銅を含む端子電極用導体ペースト」が塗布され、高温で焼成されて形成されるから、「銅を含む端子電極」と「内部電極」とが電気的に連結されることは当然のことである。

よって、引用発明2の「素体の内部電極の露出する端面に、銅を含む端子電極導体ペーストを塗布し、高温で焼成することにより銅を含む端子電極を形成すること」は、訂正発明7の「前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップ」及び「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」に相当する。

(ウ)訂正発明7は、キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップを含むのに対し、引用発明2はその旨の特定がされていない点で相違する。

(エ)引用発明2において、「銅を含む端子電極」は「内部電極の露出する端面」に形成されるから、「ニッケル内部電極中に銅が平均5μm以上拡散した」とは、端子電極に含まれる銅が、端子電極と接続された内部電極の端面からニッケル内部電極中に平均5μm以上拡散して拡散層を形成していることといえ、その「拡散層」には、銅とニッケルが混在していることは当然のことである。

してみれば、引用発明2と訂正発明7とは、「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層が形成され」る点で共通する。

ただし、「拡散層」に関し、訂正発明7は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明2は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点で相違する。

(オ)訂正発明7の「内部電極」は「第1電極物質」を含み、「第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金」からなる。

よって、「ニッケルを用いた内部電極用導体ペースト」を有する引用発明2は、訂正発明7の「第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金からなる」構成を備えている。

よって、上記(ア)ないし(オ)から、訂正発明7と引用発明2との一致点と相違点とは以下のとおりである。

(一致点)

「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップと、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップと、
前記キャパシタ本体を加圧するステップと、
前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップと、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層が形成され、
前記第1電極物質は、ニッケルまたはニッケル合金からなる積層セラミックキャパシタの製造方法。」

(相違点4)

訂正発明7は「前記キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップ」を含むのに対し、引用発明2はその旨の特定がされていない点。

(相違点5)

「拡散層」に関し、訂正発明7は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明2は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点。

イ 相違点についての判断

事案に鑑み、まず相違点5について判断する。

上記「(3)イ」で述べたように、「相違点1」に係る構成と同様、相違点5に係る構成は当業者であっても、引用発明2に基づいて容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 小括

よって、他の相違点について判断するまでもなく、訂正発明7は、当業者であっても引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(7)訂正発明8についての対比・判断

ア 訂正発明8と引用発明2との対比

(ア)引用発明2の焼成された「誘電体セラミックグリーンシート」は、訂正発明8の「誘電体層」に相当する。

また、本件特許明細書段落【0033】の「内部電極4は、ニッケル(Ni)またはニッケル合金(Ni alloy)を含む第1電極物質からなっている。」との記載からすれば、訂正発明8の「第1電極物質」はニッケルを含み、引用発明2では「内部電極用導体ペースト」に「ニッケルを用い」ており、「内部電極用導体ペースト」を焼成して「内部電極」が得られることは自明であるから、引用発明2の焼成された「ニッケルを用いた内部電極用導体ペースト」は、訂正発明8の「第1電極物質を含む内部電極」に相当する。

そして、引用発明2では、「積層セラミックコンデンサ素体」を得るために、「圧着」する処理も行われ、該「圧着」は、訂正発明8の「加圧」に相当する。よって、引用発明2の「誘電体セラミックグリーンシート上にニッケルを用いた内部電極用導体ペーストを所定のパターンで印刷したシートを複数枚積み重ね、圧着して、セラミックグリーンシートと内部電極ペースト層とが交互に積層された積層体を得ることと、得られた積層体を所定の形状に切断後、高温で焼成して積層セラミックコンデンサ素体を得ること」とは、訂正発明8の「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップ」及び「前記キャパシタ本体を加圧するステップ」に相当する。

(イ)訂正発明8の「第2電極物質」は「銅または銅合金」からなるから、引用発明2の「銅を含む端子電極」は、訂正発明2の「第2電極物質を含む外部電極」に相当する。

そして、引用発明2の「素体の内部電極の露出する端面」は、訂正発明8の「キャパシタ本体の外部表面」に相当し、引用発明2において、「素体の内部電極の露出する端面」に「銅を含む端子電極用導体ペースト」が塗布されることにより、「ニッケル内部電極の露出する端面」に「銅を含む端子電極用導体ペースト」が付着されることは明らかである。

さらに、引用発明2において、「銅を含む端子電極」は、「内部電極の露出する端面」に「銅を含む端子電極用導体ペースト」が塗布され、高温で焼成されて形成されるから、「銅を含む端子電極」と「内部電極」とが電気的に連結されることは当然のことである。

よって、引用発明2の「素体の内部電極の露出する端面に、銅を含む端子電極導体ペーストを塗布し、高温で焼成することにより銅を含む端子電極を形成すること」は、訂正発明8の「前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップ」及び「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」に相当する。

(ウ)訂正発明8は、キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップを含むのに対し、引用発明2はその旨の特定がされていない点で相違する。

(エ)引用発明2において、「銅を含む端子電極」は「内部電極の露出する端面」に形成されるから、「ニッケル内部電極中に銅が平均5μm以上拡散した」とは、端子電極に含まれる銅が、端子電極と接続された内部電極の端面からニッケル内部電極中に平均5μm以上拡散して拡散層を形成していることといえ、その「拡散層」には、銅とニッケルが混在していることは当然のことである。

してみれば、引用発明2と訂正発明8とは、「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層が形成され」る点で共通する。

ただし、「拡散層」に関し、訂正発明8は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明2は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点で相違する。

(オ)訂正発明8の「外部電極」は「第2電極物質」を含み、「第2電極物質は、銅または銅合金」からなる。

よって、「銅を含む端子電極」を有する引用発明2は、訂正発明8の「第2電極物質は、銅または銅合金からなる」構成を備えている。

よって、上記(ア)ないし(オ)から、訂正発明8と引用発明2との一致点と相違点は以下のとおりである。

(一致点)

「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップと、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップと、
前記キャパシタ本体を加圧するステップと、
前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップと、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層が形成され、
前記第2電極物質は、銅または銅合金からなる積層セラミックキャパシタの製造方法。」

(相違点6)

訂正発明8は「前記キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップ」を含むのに対し、引用発明2はその旨の特定がされていない点。

(相違点7)

「拡散層」に関し、訂正発明8は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明2は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点。

イ 相違点についての判断

事案に鑑み、まず相違点7について判断する。

上記「(3)イ」で述べたように、「相違点1」に係る構成と同様、相違点7に係る構成は当業者であっても、引用発明2に基づいて容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 小括

よって、他の相違点について判断するまでもなく、訂正発明8は、当業者であっても引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(8)訂正発明9についての対比・判断

ア 訂正発明9と引用発明2との対比

(ア)引用発明2の焼成された「誘電体セラミックグリーンシート」は、訂正発明9の「誘電体層」に相当する。

また、本件特許明細書段落【0033】の「内部電極4は、ニッケル(Ni)またはニッケル合金(Ni alloy)を含む第1電極物質からなっている。」との記載からすれば、訂正発明9の「第1電極物質」はニッケルを含み、引用発明2では「内部電極用導体ペースト」に「ニッケルを用い」ており、「内部電極用導体ペースト」を焼成して「内部電極」が得られることは自明であるから、引用発明2の焼成された「ニッケルを用いた内部電極用導体ペースト」は、訂正発明9の「第1電極物質を含む内部電極」に相当する。

そして、引用発明2では、「積層セラミックコンデンサ素体」を得るために、「圧着」する処理も行われ、該「圧着」は、訂正発明9の「加圧」に相当する。

よって、引用発明2の「誘電体セラミックグリーンシート上にニッケルを用いた内部電極用導体ペーストを所定のパターンで印刷したシートを複数枚積み重ね、圧着して、セラミックグリーンシートと内部電極ペースト層とが交互に積層された積層体を得ることと、得られた積層体を所定の形状に切断後、高温で焼成して積層セラミックコンデンサ素体を得ること」とは、訂正発明9の「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップ」及び「前記キャパシタ本体を加圧するステップ」に相当する。

(イ)本件特許明細書段落【0033】の「外部電極2は、銅(Cu)または銅合金(Cu alloy)を含む第2電極物質からなっている。」との記載から、訂正発明9の「第2電極物質」は銅を含み、引用発明2の「銅を含む端子電極」は、訂正発明2の「第2電極物質を含む外部電極」に相当する。

そして、引用発明2の「素体の内部電極の露出する端面」は、訂正発明9の「キャパシタ本体の外部表面」に相当し、引用発明2において、「素体の内部電極の露出する端面」に「銅を含む端子電極用導体ペースト」が塗布されることにより、「ニッケル内部電極の露出する端面」に「銅を含む端子電極用導体ペースト」が付着されることは明らかである。

さらに、引用発明2において、「銅を含む端子電極」は、「内部電極の露出する端面」に「銅を含む端子電極用導体ペースト」が塗布され、高温で焼成されて形成されるから、「銅を含む端子電極」と「内部電極」とが電気的に連結されることは当然のことである。

よって、引用発明2の「素体の内部電極の露出する端面に、銅を含む端子電極導体ペーストを塗布し、高温で焼成することにより銅を含む端子電極を形成すること」は、訂正発明9の「前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップ」及び「前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップ」に相当する。

(ウ)訂正発明9は、キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップを含むのに対し、引用発明2はその旨の特定がされていない点で相違する。

(エ)引用発明2において、「銅を含む端子電極」は「内部電極の露出する端面」に形成されるから、「ニッケル内部電極中に銅が平均5μm以上拡散した」とは、端子電極に含まれる銅が、端子電極と接続された内部電極の端面からニッケル内部電極中に平均5μm以上拡散して拡散層を形成していることといえ、その「拡散層」には、銅とニッケルが混在していることは当然のことである。

また、外部電極に含まれる銅が、ニッケルを含む内部電極に拡散されると、ニッケル銅合金が形成されることは技術常識であるから、引用発明2の「拡散層」においてもニッケル銅合金が含まれることは自明である。

してみれば、引用発明2と訂正発明9とは、「前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層が形成され、拡散層は、ニッケル銅合金からなる積層セラミックキャパシタの製造方法」である点で共通する。

ただし、「拡散層」に関し、訂正発明9は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明2は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点で相違する。

よって、上記(ア)ないし(エ)から、訂正発明9と引用発明2との一致点と相違点は以下のとおりである。

(一致点)

「第1電極物質を含む内部電極及び誘電体層を交互に積層してキャパシタ本体を形成するステップと、
前記キャパシタ本体の外部表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結されて、第2電極物質を含む外部電極を形成するステップと、
前記キャパシタ本体を加圧するステップと、
前記外部電極が付着された前記キャパシタ本体を焼成するステップと、
を含み、
前記内部電極と前記外部電極との接続領域における前記内部電極の端部に、前記第1電極物質と前記第2電極物質とが混在した拡散層が形成され、
前記拡散層は、ニッケル銅合金からなる積層セラミックキャパシタの製造方法。」

(相違点8)

訂正発明9は「前記キャパシタ本体の上面及び下面のうち少なくとも一面に誘電体形成物質を含む保護層を形成するステップ」を含むのに対し、引用発明2はその旨の特定がされていない点。

(相違点9)

「拡散層」に関し、訂正発明9は「1μm超過及び13μm未満の長さを有する」のに対し、引用発明2は「平均5μm以上」拡散し、拡散層の長さの上限値については特定されていない点。

イ 相違点についての判断

事案に鑑み、まず相違点9について判断する。

上記「(3)イ」で述べたように、「相違点1」に係る構成と同様、相違点9に係る構成は当業者であっても、引用発明に基づいて容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 小括

よって、他の相違点について判断するまでもなく、訂正発明9は、当業者であっても引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(9)まとめ

したがって、訂正発明2ないし4、7ないし9は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項1ないし6は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

5 むすび

以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-390075

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