2020-017965
アルカリ性メラミンフォームの製造方法。
- 審判番号
- 2020-017965
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-255466外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月29日
- 審決日
- 2022年10月12日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社広栄社
- 分類
- P18 .121-WZ (A61C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成29年12月26日の出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、令和 4年 5月 2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】メラミンフォームの構成壁内に、アルカリ性を示すPH調整剤を含浸させる方法として、前記PH調整剤を好適温度に加熱した蒸留水内に適量投入する工程と、前記PH調整剤の入った水溶液を撹拌し、前記PH調整剤を溶解する工程と、前記水溶液内にメラミンフォームを投入し、漬け置く工程と、その後、脱水処理する工程と、完全乾燥する工程とを特徴とするアルカリ性メラミンフォームの製造方法。」
第3 当審の拒絶の理由
令和4年 3月24日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、概略、次のとおりのものである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.登録実用新案第3170648号公報
引用文献2.特表2016-530309号公報
引用文献3.特許第5577510号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1には、図面と共に以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与。以下同様。)。
「【0024】本考案は,包装容器に収容されたメラミン樹脂発泡体スポンジを有する歯ブラシに関するものである。本考案の歯ブラシは,液体歯磨き剤を含浸したメラミン樹脂発泡体スポンジを有する歯ブラシであり,歯ブラシは包装容器に密封包装されている。」
「【0025】メラミン樹脂発泡体スポンジは,無数の連続気孔を有することにより,水分または液体歯磨き剤を含浸することができる。また,メラミン樹脂発泡体スポンジは,材質特性により,歯の表面に付着した着色物質などを,効率良く除去することができる。・・・(後略)・・・」
「【0027】また,メラミン樹脂発泡体スポンジの製造の際に,スポンジの密度を上昇させることができる。スポンジの密度を上昇させるためには,メラミン樹脂発泡体スポンジを加圧し,同時に加熱をすることで気泡と気泡を隔離する構成壁を押し潰す。このようにして得られたメラミン樹脂発泡体スポンジは,加圧及び加熱をしなかったメラミンスポンジに比べて,1.5倍から15倍,密度が高い。密度が高いメラミン樹脂発泡体スポンジは,摩耗しにくく,口腔洗浄に,より適している。」
「【0028】液体歯磨き剤に添加される有効成分は,口腔清浄,口臭予防,歯石沈着の防止,歯周炎・歯肉炎の防止,虫歯予防に効果的に働く。その他にも,清涼剤,香料を液体歯磨き剤に添加することで,使用時の爽快感を高めることができる。以下に具体的物質をあげるが,有効成分はこれらに限定されるものではない。」
「【0031】上記した有効成分を適宜含む液体歯磨き剤を,メラミン樹脂発泡体スポンジに含浸させる。具体的には,液体歯磨き剤を容器に入れ,そこにメラミン樹脂発泡体スポンジを浸漬する。浸漬時間は,例えば,1分以上2時間以下であれば良く,5分以上1時間以下であれば更に良い。また含浸処理温度は5℃以上40℃以下であれば良く,15℃以上30℃以下であれば更に良い。」
「【0048】尚,メラミン樹脂発泡スポンジに含浸させた液体歯みがき剤は,その後減圧乾燥法や凍結乾燥法などの方法により脱水させた状態で用いることもできる。乾燥させる工程を加えた場合でも,本考案で示す歯ブラシとしての機能は損なわれない。」
「【0050】図2に示すように,メラミン樹脂発泡性スポンジを歯磨き剤の中に10分間,浸漬した。歯磨き剤にはポリリン酸,ポリエチレングリコール(PEG),香味料,フッ素化合物及び保存料を添加した。液体歯磨き剤を100重量部とした場合,ポリリン酸は1重量部,PEGは2重量部,フッ素化合物としてフッ化ナトリウムを0.1重量部,保存料は0.1重量部となるように添加した。香味料には,佐々木香料株式会社製の各種の香味料を各々使用した。具体的には,ペパーミントCM-25(ペパーミント香料,0.2重量部),ピーチフレーバーSA-1059 C44(ピーチミント香料,0.1重量部)及びクールグレープフルーツフレーバーC12(グレープフルーツミント香料,0.2重量部)を各々液体歯磨き剤に添加した。」
「【図2】[図:0001392462000001.jpg]」
(2)上記(1)の記載及び図示内容から、引用文献1には次の事項が記載されている。
ア 段落【0025】には、メラミン樹脂発泡体スポンジが無数の連続気孔を有し、この連続気孔に液体歯磨き剤を含浸させることが可能であることが記載され、段落【0027】には、メラミン樹脂発泡体スポンジの気泡と気泡とが構成壁で隔離されることが記載されているので、メラミン樹脂発泡体スポンジの構成壁で隔離される気泡に、液体歯磨き剤を含浸させている。
イ 段落【0031】、【0048】及び【0050】には、液体歯磨き剤を含浸したメラミン樹脂発泡体スポンジの製造方法であって、メラミン樹脂発泡体スポンジに、液体歯磨き剤を含浸させる方法として、液体歯磨き剤にメラミン樹脂発泡体スポンジを浸漬する工程と、その後、減圧乾燥法や凍結乾燥法などの方法により脱水及び乾燥させる工程が記載されている。
ウ 段落【0028】、【0031】及び【0050】には、液体歯磨き剤が有効成分を含むことが記載されており、この有効成分は液体(溶媒)に溶けていることは自明であるので、液体歯磨き剤は有効成分の入った水溶液である。そして、図2を参照すると、段落【0031】の「液体歯磨き剤を容器に入れ,そこにメラミン樹脂発泡体スポンジを浸漬する」ことは、液体歯磨き剤内にメラミン樹脂発泡体スポンジを投入することであるので、有効成分の入った水溶液内にメラミン樹脂発泡体スポンジを投入していることである。
(3)上記(1)の記載事項及び(2)の事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「メラミン樹脂発泡体スポンジの構成壁で隔離される気泡に、有効成分を含む液体歯磨き剤を含浸させる方法として、前記有効成分の入った水溶液内にメラミン樹脂発泡体スポンジを投入し、浸漬する工程と、その後、脱水及び乾燥させる工程とからなる液体歯磨き剤を含浸したメラミン樹脂発泡体スポンジの製造方法。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【0002】歯のエナメル質の浸食は、痛み、変色、物理的不具合、及び虫歯へより高い感染しやすさにつながる可能性がある。歯のエナメル質の化学的浸食は、口腔の酸の存在から生じ得る。口腔用組成物が機能し得る多くの目的の1つは、口腔のpH制御を助けることである。」
「【0003】歯学の大きい懸念の1つは、酸による化学溶解が理由による、歯構造体の不可逆的損失である酸蝕症である。口腔pHを制御するいくつかの既存の方策は、口腔ケア組成物の配合物にアルカリ剤を含むことである。しかし、これらの緩衝系は、酸系エナメル質の浸食を防ぐほどの、十分高い緩衝能を有しない。」
「【0004】本開示は一般に、口腔用組成物、例えば酸緩衝能又は中和能を備えた口腔用組成物に関する。一般に本開示の口腔用組成物は、口腔の酸を緩衝又は中和する能力を有する。また、口腔用組成物が水と接触する又は圧縮空気の流れで乾燥した後、本開示の口腔用組成物は約30秒未満で膜を形成できる。その結果、本開示の口腔用組成物は、歯の組織を保護するためにバリアを提供できる。」
「【0032】様々な方法を、歯構造体に口腔用組成物を適用するために用いることができる。いくつかの実施形態では、口腔用組成物は、瓶、注射器若しくは管などの、組成物の容器又はディスペンサから適用されることができる。いくつかの実施形態では、歯の構造体の表面をこすって、表面のコーティングに薄層を残すために、歯ブラシ、マイクロファイバ、発泡体、又はスポンジ塗布器若しくはQティップ綿棒を使用する。いくつかの他の実施形態では、口腔用組成物で満たされたトレイ塗布器、歯科用トレイ又は歯科用ストリップを使うことができる。口腔用組成物は歯の構造体の表面を被覆することができ、表面にコーティングの層を残すことができる。他の実施態様において、口腔用組成物は、スプレ装置又はエアゾール塗布器を用いて歯構造体の表面上へ噴霧される(例えばエアブラシする)ことができる。他の実施態様において、口腔用組成物は、注射器に取り付けられたブラシを用いて歯構造体の表面上へ直接塗られることができる。更に他の実施形態では、口腔用組成物を、リンスとして適用することができる。口腔用組成物は、30秒以内、水、唾液により、又は空気吹込みで乾燥することにより、歯構造体及びその付属品のコーティングに入れることができる。」
「【0035】いくつかの実施形態では、酸緩衝又は中和剤は、通常塩の形態で、炭酸塩、重炭酸塩、塩化物、水酸化物、二塩基クエン酸塩、リン酸塩、硫酸塩などを含むことができる。代表的な塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、アルミニウム、マグネシウムなどとの複合体が含まれる。いくつかの他の実施形態では、酸緩衝剤として、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム、二塩基クエン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム(一塩基性又は二塩基性)、硫酸アンモニウム、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、クエン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム(二塩基性)、水酸化カリウム、重炭酸カリウムなどを挙げることができる。」
「【0036】いくつかの実施形態では、酸緩衝又は中和剤としては、PO43-アニオンを含むリン酸塩系緩衝剤(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム及びリン酸アンモニウム)、HPO42-アニオンを含むリン酸水素塩系緩衝剤(例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム及びリン酸カルシウム)、H2PO4-アニオンを含むリン酸二水素塩系緩衝剤(例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びリン酸二水素カルシウム)、RCOO-アニオンを含むカルボン酸塩系緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム及びクエン酸アンモニウム)、CO32-アニオンを含む炭酸塩系緩衝剤(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸鉄、炭酸カリウム及び炭酸アンモニウム)、HCO3-アニオンを含む炭酸水素塩緩衝剤(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素アンモニウム及び炭酸水素カリウム)を挙げることができる。」
(2)上記(1)の記載事項から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「口腔用組成物に、口腔pHを制御するための酸緩衝又は中和剤として、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等のアルカリ剤を含ませること、及び、発泡体又はスポンジ塗布器を用いて口腔用組成物を歯構造体の表面のコーティングに薄層を残す技術。」
3 引用文献3について
(1)引用文献3には、図面と共に以下の事項が記載されている。
「【0001】本発明はメラミンフォーム使用の歯面清掃具において安全性向上を目的とし、残留物質除去商品及びその除去方法に関する。」
「【0012】本発明に係るメラミンフォーム未反応残留物質の除去方法に関しては、不揮発性蒸発残留物に対しては、PH値の類似した酸性物質の水溶液中にメラミンフォームを浸し置き水溶液中に蒸発残留物を溶出した後、洗浄する方法と、メラミンフォーム残留物がPH値の低い酸性物質であることから、アルカリ性を示すPH調整剤を水に溶触しメラミンフォームを浸し置きした後、中和し洗浄処理した。」
「【0032】50l以上の洗浄水槽2に水道水(水温20乃至50℃程度の水温)を満たした後、中和剤8(PH調整剤)として炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどの食品添加物を水道水量に対し0・1乃至2%程度投入水溶液を製造し、その中にメラミンフォーム1を洗浄水槽2の容積に対し10乃至20%位の量を投入する。次に、上下垂直方向の押し洗浄と回転(反転)による遠心洗浄によりメラミンフォーム三次元構成壁内に残留する残留物質を水中に溶出させる。上下垂直方向の押し洗浄方法を押し洗浄装置3で示した。洗浄作業は5乃至30分間が好ましく、その後、水流を止め静止状態として60乃至180分間放置する。この工程により酢酸ナトリウム等のカルボン酸塩類は水溶液中に溶出し同時に中和される。又、微量ではあるが含有すると推察される鉛(金属鉛として)の比重は11.3と重いため下槽部に沈殿する。それに対して洗浄されたメラミンフォームは市販商品において嵩密度で約9kg/m3と軽く(上記洗浄品においては約1.15g)三次元構成壁内の泡部に多量の空気を蓄積しているため水面に浮き上がる。浮き上がったメラミンフォームを洗浄槽から取り出し排水後、洗浄槽を水洗いし、上記メラミンフォームを脱水処理する(図1参照)。」
「【図1】[図:0001392462000002.jpg]」
(2)上記(1)の記載事項から、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「メラミンフォーム使用の歯面清掃具において、水温20乃至50℃程度の水道水に、水道水量に対し0.1乃至2%程度の中和剤(PH調整剤)を投入して水溶液を製造し、該水溶液にメラミンフォームを投入する技術。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「メラミン樹脂発泡体スポンジ」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「メラミンフォーム」に相当する。
また、引用発明の「浸漬する工程」は、引用文献1の段落【0031】の「浸漬時間は,例えば,1分以上2時間以下であれば良く,5分以上1時間以下であれば更に良い。」との記載から、所定時間を確保して浸漬する、すなわち、漬け置いているので、本願発明の「漬け置く工程」に相当する。
さらに、本願明細書の段落【0017】の「図1は、メラミンフォームの顕微鏡写真(×1000倍)であり、構成壁1を取り囲むように気泡が存在し、構成壁にはpH調整剤粒子3が付着していることが理解できる。」との記載から、本願発明の「メラミンフォームの構成壁内」とは、その「構成壁」が形成するメラミンフォームの気泡を意味しているので、引用発明の「メラミン樹脂発泡体スポンジの構成壁で隔離される気泡」は、本願発明の「メラミンフォームの構成壁内」に相当する。
さらに、引用発明の「有効成分を含む液体歯磨き剤」と本願発明の「アルカリ性を示すPH調整剤」とは、「口腔用剤」の限りで一致し、引用発明の「有効成分の入った水溶液」と本願発明の「PH調整剤の入った水溶液」とは、「口腔用剤の入った水溶液」の限りで一致し、引用発明の「脱水及び乾燥させる工程」と本願発明の「脱水処理する工程と、完全乾燥する工程」とは、「脱水処理する工程と、乾燥する工程」の限りで一致する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「メラミンフォームの構成壁内に、口腔用剤を含浸させる方法として、前記口腔用剤の入った水溶液内にメラミンフォームを投入し、漬け置く工程と、その後、脱水処理する工程と、乾燥する工程とを有するメラミンフォームの製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
(1)相違点1
メラミンフォームに含浸させる口腔用剤に関し、本願発明では「アルカリ性を示すPH調整剤」であるのに対し、引用発明では「有効成分を含む液体歯磨き剤」である点。
(2)相違点2
メラミンフォームを投入する水溶液に関し、本願発明では(口腔用剤である)「前記PH調整剤を好適温度に加熱した蒸留水内に適量投入する工程と、前記PH調整剤の入った水溶液を撹拌し、前記PH調整剤を溶解する工程」による水溶液であるのに対し、引用発明ではそのような工程によるものか明らかでない点。
(3)相違点3
メラミンフォームを乾燥する工程に関し、本願発明では「完全乾燥」させているのに対し、引用発明では完全乾燥させているのか明らかでない点。
第6 判断
上記相違点1~3について以下検討する。
(1)相違点1及び2について
上記第4の2(2)のとおり、引用文献2に、「口腔用組成物に、口腔pHを制御するための酸緩衝又は中和剤として、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等のアルカリ剤を含ませること、及び、発泡体又はスポンジ塗布器を用いて口腔用組成物を歯構造体の表面のコーティングに薄層を残す技術」が記載されているように、発泡体又はスポンジ塗布器に含浸させる口腔用剤として、アルカリ性を示すPH調整剤を用いることは、技術常識に基づき通常に採用し得ることである。
また、上記第4の3(2)のとおり、引用文献3に、「メラミンフォーム使用の歯面清掃具において、水温20乃至50℃程度の水道水に、水道水量に対し0.1乃至2%程度の中和剤(PH調整剤)を投入して水溶液を製造し、該水溶液にメラミンフォームを投入する技術」が記載されており、50℃程度に水道水が加熱されていることは明らかであるから、一般的な中和剤を含む水溶液の製造方法に関し、中和剤を該中和剤に応じた好適温度に加熱した水内に適量投入する工程と、該中和剤を溶解する工程とによる水溶液を用いることも技術常識に基づき通常に採用し得ることである。
そして、引用発明、引用文献2に記載の技術事項及び引用文献3に記載の技術事項により示される技術常識は、いずれも口腔の清掃に関する技術分野に属するという点で共通している。また、引用文献1の段落【0028】に「液体歯磨き剤に添加される有効成分は,口腔清浄,口臭予防,歯石沈着の防止,歯周炎・歯肉炎の防止,虫歯予防に効果的に働く。」と記載され、引用文献2の段落【0002】に「歯のエナメル質の浸食は、痛み、変色、物理的不具合、及び虫歯へより高い感染しやすさにつながる可能性がある。歯のエナメル質の化学的浸食は、口腔の酸の存在から生じ得る。口腔用組成物が機能し得る多くの目的の1つは、口腔のpH制御を助けることである。」と記載されるように、引用発明と引用文献2に記載の技術事項とは、いずれも虫歯を予防するという課題を有する点で共通している。
よって、引用発明において、引用文献2に記載の技術事項及び引用文献3に記載の技術事項により示される技術常識を参酌することで、アルカリ剤をメラミン樹脂発泡体スポンジに含浸させるようにし、そのための方法において、該アルカリ剤を好適温度に加熱した水に適量投入し、該アルカリ剤を溶解させた水溶液内にメラミン樹脂発泡体スポンジを投入し、漬け置くよう構成することは、当業者が容易になし得ることである。その際、水として、蒸留水を使うことは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。また、溶解させる際に水溶液を撹拌することは通常行われることにすぎない。
したがって、引用発明において、上記相違点1及び2に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点3について
本願発明の「完全乾燥」については、明細書の段落【0018】において「漬け置いた後に脱水処理し完全乾燥させた製品がドライタイプとなり、」と記載されているものの、どのような乾燥状態であるのか、例えば含水率等の具体的な記載はない。そうすると、「完全乾燥」とは、アルカリ性メラミンフォームがドライタイプとなる程度に乾燥させることであると理解される。
一方、引用発明の「脱水及び乾燥させる工程」は、どの程度まで乾燥させるかは明らかでない。しかしながら、「脱水及び乾燥させる工程」を含んでいる以上、水分ができるだけ無くなるようにすることは技術常識であるから、引用発明の「脱水及び乾燥させる」工程において、具体的に完全乾燥することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献2に記載の技術事項及び引用文献3に記載の技術事項から当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。
(4)請求人の主張について
請求人は、令和 4年 5月 2日提出の意見書において、「本願発明は、引用文献2及び3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないと考えます。」と主張している。また、令和 4年 1月21日提出の意見書において、「引用文献1(登録実用新案第3170648号公報)においては、メラミンフォームの構成壁内に、各種の歯磨剤を含浸させ、ブラッシング効果(特に、歯面に付着した着色汚れを除去する美白効果)を上昇させることを目的とするものであって、本願発明、歯面を中心に口腔内清掃によって、唾液を逸速くアルカリ性(中性)に変化させ、口腔内を正常な状態に戻すことは、目的が異なり、当業者においても容易に発明をすることができたものではないと思量します。」及び「引用文献2(特表2016-530309号公報)の発明には、特許庁審判官殿が指敵されるように、口腔内をPH調整剤をもってアルカリ性に戻す内容の記載はありますが、具体的な物体に含浸する等の記載はありません。そのような状態でメラミンフォーム(主の用途が断熱材)に含浸される考えは、当業者においても一切なく容易に発明できたものではないと確信します。」と主張している。
しかしながら、上記(1)で説示したとおり、引用発明において、引用文献2に記載の技術事項及び引用文献3に記載の技術事項を参酌することで、アルカリ剤をメラミン樹脂発泡体スポンジに含浸させる構成とすることは、当業者が容易になし得ることであり、そのようにすることで、口腔内清掃によって口腔内をアルカリ性(中性)に変化させ、正常な状態に戻すようにできることは、当業者が予測し得る程度のものである。また、引用文献2の段落【0032】には、歯構造体に口腔用組成物を適用するために発泡体又はスポンジ塗布器を用いることが記載されているので、請求人の主張する「具体的な物体に含浸する等の記載はありません。」に首肯することはできない。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
(5)よって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載の技術事項及び引用文献3に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載の技術事項及び引用文献3に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-017965