特許拒絶査定不服審判
2020-017410
電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物、当該組成物を使用した電気電子部品固定電気電子装置、及び電気電子部品固定体の製造方法
- 審判番号
- 2020-017410
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-169898外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月21日
- 審決日
- 2023年01月26日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-169898「電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物、当該組成物を使用した電気電子部品固定電気電子装置、及び電気電子部品固定体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月25日出願公開、特開2021- 46496〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和1年9月18日の出願であって、令和2年4月21日付けで拒絶理由が通知され、同年6月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月31日付けで拒絶査定がされ、同年12月21日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書(2通)が提出され、令和4年7月28日付けで拒絶理由が通知され、同年10月19日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和4年10月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される事項により特定されるとおりの以下のものである。
「【請求項1】
ガラス転移点と融点とを有する結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含むことを特徴とする電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物であって、前記結晶性ラジカル重合性組成物は、23℃で固体であり、かつ、前記電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して0.1~10重量%の熱可塑性樹脂を含み、かつ、前記熱可塑性樹脂は、飽和ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、及びそれらの共重合体から選ばれる1種以上を含む(但し、ポリスチレンを除く。)ことを特徴とする電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物。」
第3 当審において通知した拒絶理由の概要
当審において、令和4年7月28日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に日本国内において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
引用文献1 特開2018-145280号公報
引用文献2 特開2019-89871号公報
引用文献3 特開2018-199304号公報
引用文献4 特開平4-253715号公報
引用文献5 特開平2-117953号公報
第4 当審の判断
当審は、本願は、第3で示した拒絶理由により拒絶すべきものと判断する。その理由は以下のとおりである。
1 本願発明の技術的意義
本願の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)には次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物、前記組成物により固定されている電気電子部品固定電気電子装置、電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物からなる粒状物、及び電気電子部品固定体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械、作業用ロボット、車両、自動車、電化製品等に使用されている電気電子部品は埃、水分、衝撃等の外的要因から守るために筐体あるいはユニット、モジュール、デバイス等の構成パーツに固定されている。金属による電気電子部品の筐体あるいはユニット、モジュール、デバイス等の構成パーツへの固定は高い信頼性を有するが高価であるため、安価で生産性が良好な樹脂製材料による固定材に置き換わっている。また、金属による電気電子部品の固定を樹脂製固定材にすることにより、電気絶縁性を有することから固定された電気電子部品を小さくすることが可能となり、搭載される工作機械、作業用ロボット、車両、自動車、電化製品等の設計自由度が向上する。また、電気電子部品は高温高湿環境下の過酷な条件で使用されることもあるため、樹脂製材料を使用する場合に、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂が多く使用されている。
【0003】
最近では樹脂製基板や金属と密着性が良好であり、機械強度、流動性に優れる熱硬化性樹脂として液状エポキシ樹脂が使用されている。
【0004】
また、タブレット状のエポキシモールディングコンパウンド(EMC)は高い生産性を有するトランスファー成形法で使用され、密着性や線膨張率等の物理的特性に優れていることから高い信頼性を確立しているが、冷凍保管、後硬化工程が必要であることから、使用方法の簡素化が求められている。
【0005】
このようなことから、従来、封止用エポキシ樹脂組成物、電子装置、自動車及び電子装置の製造方法が知られている(例えば特許文献1)。また、電池を複数個積層させ樹脂モールドした電池モジュールの製造方法が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6281178号公報
【特許文献2】特開2018-56092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1において、封止用エポキシ樹脂組成物はトランスファー成形法で成形されている。トランスファー成形に使用するエポキシ樹脂組成物は冷凍保管した樹脂組成物を常温に戻す必要がある。エポキシ樹脂組成物を常温で保管すると流動性が大きく低下することや、成形時間中に完全硬化しないため、必要な成形品特性を得るために数時間の後硬化を行う等の課題がある。
【0008】
さらに特許文献1において、熱硬化性樹脂としてラジカル重合性化合物である、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂の記載があるが、これらのラジカル重合性化合物の具体的な使用方法、実施例等の詳細な記述は一切ない。さらに、硬化剤はラジカル重合開始剤の記述がないため、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂を使用してもラジカル重合性化合物を三次元架橋することが出来ない。そのため、特許文献1に記載されている硬化剤はエポキシ樹脂を三次元架橋できるものに限定されている。事実上、特許文献1はエポキシ樹脂組成物の内容である。
【0009】
上記特許文献2において、複数個の二次電池を積層させ樹脂モールドして電池モジュールを製造する方法が開示されているが、樹脂モールド用の樹脂に関する組成、性状等の具体的な記載はなされていない。
【0010】
そこで、本発明は、流動性に優れ、取扱い性が良好な結晶性ラジカル重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、結晶性ラジカル重合性化合物を少なくとも含む組成物について種々の観点から多角的に検討を重ねた結果、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を見出すに至った。
【0012】
すなわち、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含むことを特徴とする。」
「【発明の効果】
【0029】
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物によれば、取扱い性に優れた効果を奏する。更に、本発明の電気電子部品固定体の製造方法、例えば、電気電子部品固定ユニット、電気電子部品固定モジュール、電気電子部品固定デバイス体等の製造方法によれば、射出成形、トランスファー成形、注型時の加熱溶融時に極めて粘度が低い結晶性ラジカル重合性組成物となることから電気電子部品固定ユニット、電気電子部品固定モジュール、電気電子部品固定デバイス体の固定に必要な流動性を確保できるという有利な効果を奏する。」
「【0032】
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含むことを特徴とする。これは、結晶性ラジカル重合性組成物の使用により、後述する実施例に示されているように、流動性に優れ、取扱いに優れる重合性組成物を実現可能であるからである。また、結晶性ラジカル重合性組成物は、固定(接着)にも適していることが判明し、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物からなる接着剤の使用により、後述するように、電気電子部品等を電気電子装置へ固定化することも可能である。なお、本明細書中において電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を、結晶性ラジカル重合性組成物と称することがある。
【0033】
なお、固定とは一つの場所から動かないようにすること、また、動かないことである。固定は接着や封止等を含み、固定用途は接着用途や封止用途等を含む。本電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を使用した固定は固定される装置及び/または部品の一部及び/または全部を固定することができる。
【0034】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記結晶性ラジカル重合性化合物は、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ラジカル重合性単量体、ラジカル重合性多量体から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする。
【0035】
結晶性を省略しているが、具体的には、前記結晶性ラジカル重合性化合物が、結晶性不飽和ポリエステル、結晶性エポキシ(メタ)アクリレート、結晶性ウレタン(メタ)アクリレート、結晶性ポリエステル(メタ)アクリレート、結晶性ポリエーテル(メタ)アクリレート、結晶性ラジカル重合性単量体、結晶性ラジカル重合性多量体から選ばれる1種以上を含むことができる。これらの重合性化合物を使用すると機械特性、取扱い性が良好となる(以下でも、結晶性を省略する場合がある。)。
【0036】
なお、本明細書において、結晶性化合物とはガラス転移点と融点を有する化合物とすることができる。これらの温度はDSC( 示差走査熱量計 )、TGDTA( 示差熱熱重量同時測定装置 )等の熱分析装置により確認できる。本発明における結晶性化合物は熱分析装置により融点が確認できる化合物とすることができる。
【0037】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、さらに、収縮性という観点から、熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする。本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記熱可塑性樹脂は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、スチレンブタジエンゴム、及びそれらの共重合体から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする。これらの熱可塑性樹脂を選択することにより、収縮率が小さい電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物にすることが出来るためである。
【0038】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記熱可塑性樹脂の含有量は、成形性という観点から、結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して0.01~20重量部であり、好ましくは0.05~15重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%である。上記範囲としたのは、熱可塑性樹脂が上記範囲よりも少ない場合は成形後の低収縮効果が小さくなる虞があるためと、上記範囲よりも多い場合は溶融粘度が高くなり成形性が低下する虞があるためである。
【0039】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記結晶性ラジカル重合性化合物は、作業性、成形性という観点から、前記結晶性ラジカル重合性化合物の融点が30~150℃であり、より好ましくは30~120℃であり、さらに好ましくは30~100℃の範囲で融点を示すことを特徴とする。融点が30℃未満の結晶性ラジカル重合性化合物、または融点が150℃より高い結晶性ラジカル重合性化合物を使用した場合に比較して、30~150℃の範囲で融点を示す結晶性ラジカル重合性化合物を使用すると、より良好な取扱い性を実現可能であるためである。結晶性ラジカル重合性化合物の融点が上記範囲よりも低い場合は、常温で液体になりやすいため、結晶性ラジカル重合性組成物が固体を維持しにくくなる虞がある。結晶性ラジカル重合性化合物の融点が上記範囲よりも高い場合は、金型の成形温度と近接するため、流動開始から硬化までの時間が短くなり、成形不良が発生する虞がある。
【0040】
また、融点が30℃未満の結晶性ラジカル重合性化合物のみを使用した場合は、23℃で固体の結晶性ラジカル重合性組成物になりにくい傾向がある。一方、融点が150℃より高い結晶性ラジカル重合性化合物のみを使用した場合は、射出成形法において、シリンダー内で結晶性ラジカル重合性組成物を可塑化する際に、シリンダー温度と金型の温度が近接しているため、シリンダー内で安定性に乏しい傾向がある。
【0041】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記結晶性ラジカル重合性組成物は、結晶性ラジカル重合性化合物の取扱い性という観点から、23℃で固体であることを特徴とする。上記範囲としたのは、結晶性ラジカル重合性組成物の製造・成形・輸送環境下において組成物の形状が変化しないため、汎用の製造設備・条件で連続生産が可能となるためである。なお、固体とは外力によって容易に形及び体積が変化しないものとすることができる。」
「【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明の一実施態様についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
<電気電子部品固定用ラジカル重合性組成物の製造例>
実施例1~11、参照例1、及び比較例1~2
表2に示す実施例1~11、参照例1、及び表3に示す比較例1~2の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物は、下記表2、及び3に記載の配合量にて配合し、加圧加熱・冷却可能な混練機を用いて均一に調製した後、調製物を押し出し機に投入してホットカットして粒状物とした。一部の粒状物、塊状のラジカル重合性組成物は粉砕機を用いて粉末とした。
【0101】
得られたラジカル重合性組成物等は油圧成形機((株)東邦プレス製作所製)により、金型温度165℃、硬化時間180秒または試験片が取得できる時間まで行い、試験片を作製した。成形した試験片について下記記載の方法により物性評価を行い、それぞれ表2、及び表3に示した。
【0102】
配合成分としては以下のものを用いた。
(1)重合性化合物
1.結晶性ラジカル重合性化合物1:フタル酸系不飽和ポリエステル(テレフタル酸とフマル酸と1,6-ヘキサンジオールの縮合物)
2.結晶性ラジカル重合性化合物2:ウレタンメタクリレート(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの2-ヒドロキシエチルメタクリレート付加物)
3.結晶性ラジカル重合性化合物3:ウレタンアクリレート(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの2-ヒドロキシエチルアクリレート付加物)
4.結晶性ラジカル重合性単量体1:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学(株)製 A-9300)
5.非晶性ラジカル重合性化合物1:フタル酸系不飽和ポリエステル(日本ユピカ(株)製 ユピカ8552H)
6.非晶性ラジカル重合性化合物2:ビスフェノールA型エポキシメタクリレート(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のメタクリル酸付加物)
7.ラジカル重合性単量体1:ジアリルフタレートモノマー(大阪ソーダ(株)製 ダイソーダップモノマー)
8.ラジカル重合性単量体2:ジエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学(株)製 2G)
【0103】
(2)無機充填材
1.無機充填材1:溶融シリカ(デンカ(株)製 平均粒子径24μm)
2.無機充填材2:炭酸カルシウム(日東粉化(株)製 平均粒子径2μm)
【0104】
(3)添加剤
1.シランカップリング剤:メタクリル系シラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)
2.ラジカル重合開始剤:ジクミルパーオキサイド(日油(株)製 パークミルD)
3.離型剤:ステアリン酸亜鉛(日油(株)製 GF-200)
4.重合禁止剤:ペラベンゾキノン(精工化学(株)製 PBQ)
5.着色剤:カーボンブラック(三菱化学(株)製 CB40)
【0105】
<重合性化合物特性>
結晶性又は非晶性ラジカル重合性化合物、及びラジカル重合性単量体の融点、及び重量平均分子量を測定して表1に示した。
【0106】
【表1】
[図:0001396565000001.jpg]
【0107】
【表2】
[図:0001396565000002.jpg]
【0108】
【表3】
[図:0001396565000003.jpg]
【0109】
<化合物特性、組成物特性、物性評価方法>
【0110】
(1)融点
表1に示すラジカル重合性化合物を示差走査熱量分析計「DSC6220」(セイコーインスツル(株)製)にて、測定試料10mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、-60℃から200℃まで、10℃/minの昇温速度で測定した。得られた曲線の吸熱ピークを融点とした。その結果を表1に示す。23℃で液体の化合物は測定を中止した。
【0111】
(2)重量平均分子量
表1に示すラジカル重合性化合物の重量平均分子量は重合性化合物をテトラヒドロフラン(THF)に1.0重量%にて溶解させ、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算により測定した。測定条件を下記に示す。その結果を表1に示す。但し、前記厳格な基準をクリアせずとも、所望の用途、要求される品質等によっては、重量平均分子量が100未満、または100,000より大きくても適合する場合もあるので、一つの目安として検討すればよいものである。
機器装置:昭和電工
(株)製 Shodex GPC-101
カラム:昭和電工(株)製 KF-802、803、804、805
溶媒、キャリア液:THF
流量:1.0ml/分
サンプル濃度:1.0%
温度:40℃
サンプル注入量:200μl
検出器:示差屈折率検出器
【0112】
(3)硬さ
測定方法はJIS K 7215を参考とした。表2に示す実施例1~11、参照例1、及び表3に示す比較例1~2の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物の硬さをデュロメーター(西東京精密(株) WR-105D)にて測定した。90℃に温調したラジカル重合性組成物を約100mm×100mm×10mmの平板状にして23℃の恒温室で冷却固化した。23℃に温調した硬化前のラジカル重合性組成物を水平な硬い台の上に設置した。デュロメーターの加圧基準面を、ラジカル重合性組成物表面に平行を保ちながら、衝撃を伴うことなく、できるだけ速やかにラジカル重合性組成物表面に押し付け、加圧基準面とラジカル重合性組成物とをよく密着させた。1秒以内に速やかに指示装置の指針の最大指示値を読み取った。その結果を表2、及び3に示す。目標とする硬さは10とし、20以上を優、10以上を良、10未満を可とした。
【0113】
(4)溶融粘度
表2に示す実施例1~11、参照例1、及び表3に示す比較例1~2の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物を高化式フローテスタ((株)島津製作所製 CFT-100EX)にて溶融粘度を測定した。直径0.5mmで長さ1mmダイスを備え、90℃に加熱したシリンダー試料挿入孔にラジカル重合性組成物を入れ、240秒の予備加熱後に30kgf/cm2又は、1kgf/cm2の圧力でピストンを加圧し、ラジカル重合性組成物をダイのノズルから流出させ、直線性が良好な箇所から溶融粘度を求めた。その結果を表2、及び3に示す。目標とする溶融粘度は1~1,000Pa・sとし、1~100Pa・sであった組成物を優、100~1,000Pa・sを良とした。
【0114】
(5)流動長
測定方法はEIMS T-901を参考とした。表2に示す実施例1~11、参照例1、及び表3に示す比較例1~2の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物を用いて、スパイラルフロー金型を備えた補助ラム式トランスファー成形機にて流動長を測定した。スパイラルフロー金型は165℃に加熱した。スパイラルフローの金型は、中心部が材料の注入口部になっており、注入口部を起点として半径1.6mmの半円状の渦巻き曲線状に溝が設けられているものを用いた。カルの厚さが1~10mmの範囲になるようにあらかじめ決めた量のラジカル重合性組成物を量り取った。プランジャーを上げ、ラジカル重合性組成物をポットに投入し、直ぐに3.2MPaの圧力を加えてトランスファー成形を開始した。プランジャーの動きが停止し、測定開始から180秒後に金型を開き成形物を取り出した。成形物先端の光沢のある部分までの長さ、または光沢のある部分の長さに、その先の密度の低い部分の長さの1/2を加えた数字を読み取った。その結果を表2、及び3に示す。目標とする流動長は50cmとし、100cm以上を優、50cm以上を良、50cm未満を可とした。但し、前記厳格な基準をクリアせずとも、所望の用途、要求される品質等によっては、50cm未満でも条件が適合する場合もあるので、一つの目安として検討すればよいものである。
【0115】
(6)成形収縮率
測定方法はJISK6911に準拠した。表2に示す実施例1~11、参照例1、及び表3に示す比較例1~2の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物を用いて、収縮率測定用金型を用いて圧縮成形で試験片を作製した。165℃に温調した金型内にラジカル重合性組成物を置き、3分間加圧加熱した。試験片は直ちに金型から取り出し、23℃、湿度55%RHの恒温恒湿下で24時間保管した。試験片の表裏に突起した環状帯の外形をお互いに直行する測定線に沿って、表面2ヶ所、裏面2ヶ所、計4箇所の寸法を測定した。試験片に対応する金型の溝の外形を同一条件で0.01mmまで測定して成形収縮率を算出した。その結果を表2、及び表3に示す。目標とする成形収縮率は0.5%とし、0.2%以下を優、0.2~0.5%以下を良、0.5%を超える場合を可とした。但し、前記厳格な基準をクリアせずとも、所望の用途、要求される品質等によっては、0.5%を超える場合でも条件が適合する場合もあるので、一つの目安として検討すればよいものである。
【0116】
(7)ガラス転移点
測定はJISK7224-4に準拠した。表2に示す実施例1~11、参照例1、及び表3に示す比較例1~2の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物を165℃に温調した平板用金型内に置いた。速やかに金型を閉じ加圧加熱成形した。硬化後に金型を開けて平板状の成形片を得た。平板状の成形片から短冊状に切削加工を行いガラス転移点測定用試験片を得た。動的粘弾性(TAインスツルメント社(株)製RSA-G2)は2℃/分の昇温速度で、30~250℃の範囲、周波数10Hzで測定した。Tanδピーク温度をガラス転移点とした。その結果を表2、及び3に示す。目標とするガラス転移点は125℃とし、125℃以上を良、125℃未満を可とした。但し、前記厳格な基準をクリアせずとも、所望の用途、要求される品質等によっては、125℃未満でも条件が適合する場合もあるので、一つの目安として検討すればよいものである。
【0117】
<評価結果>
表2及び表3に示すように、本発明における電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、取扱性に優れることが判明した。また、特に、本発明における電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の実施例1~8、11は、23℃で固体であるため取扱い性に優れ、溶融粘度が低く良好であった。本発明における電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、全体的に優れた結果を示すことが判明した。
【0118】
実施例9は実施例1の無機充填材配合量が異なる結晶性ラジカル重合性組成物である。組成物の硬さは3であり柔らかかった。さらに溶融粘度は0.5Pa・sであり粘度が低い組成物であり、成形収縮率は大きいが、その他の特性は良好であった。
【0119】
実施例10は実施例5の結晶性ラジカル重合性化合物から常温液体のラジカル重合性化合物に変更して、ラジカル重合性化合物の配合割合を変えた結晶性ラジカル重合性組成物である。結晶性ラジカル重合性化合物が少ないため、組成物の硬さは0であり柔らかく、また、ガラス転移点が低い結果であったが、その他の特性は良好であった。
【0120】
参照例1は実施例8の無機充填材の配合量を変えた結晶性ラジカル重合性組成物である。溶融開始温度は測定中に流動が停止したため、観測されなかった。また、溶融粘度が高く、流動長も短かったが、その他の特性は良好であった。
【0121】
したがって、実施例9及び10、参照例1であっても、所望の用途、要求される品質等によっては、条件が適合する場合もあるので、一つの目安として検討すればよく、良好な特性が要求される用途に適用可能であることが判明した。
【0122】
また、比較例1及び2ともに、結晶性に比較して、溶融粘度が高く(比較例1は、実施例4と対比可能)、取扱性等に劣る結果となった。
【0123】
以上に述べたように、結晶性ラジカル重合性化合物を少なくとも含む電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、取扱い性に優れ、流動性も良好であることが判明した。
【0124】
次に、上述した本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物からなる粒状物等を用いて、電気電子部品を例に固定を試みた。すなわち、電気電子部品と、電気電子装置との間のギャップに対して、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を充填し、硬化させることにより、電気電子部品を電気電子装置へ固定することを試みた。
【0125】
これらの結果、いずれの本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物においても、良好な固定効果を示すことが判明した。また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を充填し、硬化させることにより、電気電子部品を電気電子装置へ固定した電気電子部品固定電気電子装置を機械へ搭載した結果、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物ガラス転移点が高く耐熱性に優れるので、電気電子部品固定電気電子装置を搭載した工作機械、作業用ロボット、車両、自動車、電化製品等の耐久性を向上させることが可能であることが判明した。
【0126】
<熱可塑性樹脂を含む電気電子部品固定用ラジカル重合性組成物の製造例>
実施例12~19、及び実施例20~21
表5に示す実施例12~19、及び表6に示す実施例20~21の結晶性ラジカル重合性組成物は、下記表5、及び6に記載の配合量にて配合し、加圧加熱・冷却可能な混練機を用いて均一に調製した後、調製物を押し出し機に投入してホットカットして粒状物とした。一部の粒状物、塊状のラジカル重合性組成物は粉砕機を用いて粉末とした。
【0127】
得られたラジカル重合性組成物等は油圧成形機((株)東邦プレス製作所製)により、金型温度165℃、硬化時間180秒または試験片が取得できる時間まで行い、試験片を作製した。成形した試験片について下記記載の方法により物性評価を行い、それぞれ表5、及び表6に示した。
【0128】
配合成分としては以下のものを用いた。
(1)重合性化合物
1.結晶性ラジカル重合性化合物1:ウレタンメタクリレート(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの2-ヒドロキシエチルメタクリレート付加物)
2.結晶性ラジカル重合性単量体1:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学(株)製 A-9300)
【0129】
(2)熱可塑組成樹脂
1.熱可塑性樹脂1:飽和ポリエステル(日本ユピカ(株)製 GV-150)
2.熱可塑性樹脂2:ポリエチレン(住友精化(株)製 フローセンUF80)
3.熱可塑性樹脂3:ポリメチルメタクリレート(藤倉化成(株)製 MH-101-5)
【0130】
(3)無機充填材
1.無機充填材1:溶融シリカ(デンカ(株)製 平均粒子径24μm)
2.無機充填材2:炭酸カルシウム(日東粉化(株)製 平均粒子径2μm)
3.無機充填材2:酸化アルミニウム(デンカ(株)製 平均粒子径45μm)
4.無機充填材2:酸化マグネシウム(宇部マテリアル(株)製 平均粒子径70μm)
【0131】
(4)添加剤
1.シランカップリング剤:メタクリル系シラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)
2.ラジカル重合開始剤:ジクミルパーオキサイド(日油(株)製 パークミルD)
3.離型剤:ステアリン酸亜鉛(日油(株)製 GF-200)
4.重合禁止剤:ペラベンゾキノン(精工化学(株)製 PBQ)
5.着色剤:カーボンブラック(三菱化学(株)製 CB40)
【0132】
<重合性化合物特性>
結晶性ラジカル重合性化合物、及び結晶性ラジカル重合性単量体の融点、及び重量平均分子量を測定して表4に示した。
【0133】
【表4】
[図:0001396565000004.jpg]
【0134】
【表5】
[図:0001396565000005.jpg]
【0135】
【表6】
[図:0001396565000006.jpg]
【0136】
<化合物特性、組成物特性、物性評価方法>
【0137】
(1)融点
表4に示す結晶性ラジカル重合性化合物及び結晶性ラジカル重合性単量体を示差走査熱量分析計「DSC6220」(セイコーインスツル(株)製)にて、測定試料10mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、-60℃から200℃まで、10℃/minの昇温速度で測定した。得られた曲線の吸熱ピークを融点とした。その結果を表4に示す。
【0138】
(2)重量平均分子量
表4に示す結晶性ラジカル重合性化合物及び結晶性ラジカル重合性単量体の重量平均分子量は重合性化合物をテトラヒドロフラン(THF)に1.0重量%にて溶解させ、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算により測定した。測定条件を下記に示す。その結果を表4に示す。
機器装置:昭和電工(株)製 Shodex GPC-101
カラム:昭和電工(株)製 KF-802、803、804、805
溶媒、キャリア液:THF
流量:1.0ml/分
サンプル濃度:1.0%
温度:40℃
サンプル注入量:200μl
検出器:示差屈折率検出器
【0139】
(3)曲げ強さ、曲げ弾性率
測定方法はJISK6911に準拠した。表5に示す実施例12~19、及び表6に示す実施例20~21の結晶性ラジカル重合性組成物を用いて、金型を用いて、成形温度165℃、成形圧力3.2N/mm2、成形時間180秒の条件で成形して試験片を得た。試験片を23℃、湿度55%RHの恒温恒湿下にて、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した。その結果を表5、及び表6に示す。
【0140】
(4)成形収縮率
測定方法はJISK6911に準拠した。表5に示す実施例12~19、及び表6に示す実施例20~21の結晶性ラジカル重合性組成物を用いて、収縮率測定用金型を用いて圧縮成形で試験片を作製した。165℃に温調した金型内にラジカル重合性組成物を置き、3分間加圧加熱した。試験片は直ちに金型から取り出し、23℃、湿度55%RHの恒温恒湿下で24時間保管した。試験片の表裏に突起した環状帯の外形をお互いに直行する測定線に沿って、表面2ヶ所、裏面2ヶ所、計4箇所の寸法を測定した。試験片に対応する金型の溝の外形を同一条件で0.01mmまで測定して成形収縮率を算出した。その結果を表5、及び表6に示す。
【0141】
(5)硬さ
測定方法はJIS K 7215を参考とした。表5に示す実施例12~19、及び表6に示す実施例20~21の結晶性ラジカル重合性組成物の硬さをデュロメーター(西東京精密(株) WR-105D)にて測定した。90℃に温調したラジカル重合性組成物を約100mm×100mm×10mmの平板状にして23℃の恒温室で冷却固化した。23℃に温調した硬化前のラジカル重合性組成物を水平な硬い台の上に設置した。デュロメーターの加圧基準面を、ラジカル重合性組成物表面に平行を保ちながら、衝撃を伴うことなく、できるだけ速やかにラジカル重合性組成物表面に押し付け、加圧基準面とラジカル重合性組成物とをよく密着させた。1秒以内に速やかに指示装置の指針の最大指示値を読み取った。その結果を表5、及び6に示す。
【0142】
(6)溶融粘度
表5に示す実施例12~19、及び表6に示す実施例20~21の結晶性ラジカル重合性組成物を高化式フローテスタ((株)島津製作所製 CFT-100EX)にて溶融粘度を測定した。直径0.5mmで長さ1mmダイスを備え、90℃に加熱したシリンダー試料挿入孔にラジカル重合性組成物を入れ、240秒の予備加熱後に30kgf/cm2又は、1kgf/cm2の圧力でピストンを加圧し、ラジカル重合性組成物をダイのノズルから流出させ、直線性が良好な箇所から溶融粘度を求めた。その結果を表5、及び6に示す。
【0143】
(7)流動長
測定方法はEIMS T-901を参考とした。表5に示す実施例12~19、及び表6に示す実施例20~21の結晶性ラジカル重合性組成物を用いて、スパイラルフロー金型を備えた補助ラム式トランスファー成形機にて流動長を測定した。スパイラルフロー金型は165℃に加熱した。スパイラルフローの金型は、中心部が材料の注入口部になっており、注入口部を起点として半径1.6mmの半円状の渦巻き曲線状に溝が設けられているものを用いた。カルの厚さが1~10mmの範囲になるようにあらかじめ決めた量のラジカル重合性組成物を量り取った。プランジャーを上げ、ラジカル重合性組成物をポットに投入し、直ぐに3.2MPaの圧力を加えてトランスファー成形を開始した。プランジャーの動きが停止し、測定開始から180秒後に金型を開き成形物を取り出した。成形物先端の光沢のある部分までの長さ、または光沢のある部分の長さに、その先の密度の低い部分の長さの1/2を加えた数字を読み取った。その結果を表5、及び6に示す。
【0144】
(8)ガラス転移点
測定はJISK7224-4に準拠した。表5に示す実施例12~19、及び表6に示す実施例20~21の結晶性ラジカル重合性組成物を165℃に温調した平板用金型内に置いた。速やかに金型を閉じ加圧加熱成形した。硬化後に金型を開けて平板状の成形片を得た。平板状の成形片から短冊状に切削加工を行いガラス転移点測定用試験片を得た。動的粘弾性(TAインスツルメント社(株)製RSA-G2)は2℃/分の昇温速度で、30~250℃の範囲、周波数10Hzで測定した。Tanδピーク温度をガラス転移点とした。その結果を表5、及び6に示す。
【0145】
<評価結果>
表5及び表6に示すように、本発明における電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、低収縮性に優れることが判明した。また、特に、本発明における電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の実施例12~21は、23℃で固体であるため取扱い性に優れ、溶融粘度が低く良好であった。本発明における電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、全体的に優れた結果を示すことが判明した。
【0146】
実施例20は実施例12に熱可塑性樹脂を加えた結晶性ラジカル重合性組成物である。実施例20は実施例12よりも収縮率が大きく、他の物性は同等であった。
【0147】
実施例21は実施例14に熱可塑性樹脂を加えた結晶性ラジカル重合性組成物である。実施例21は実施例14よりも収縮率が大きく、他の物性は同等であった。
【0148】
以上に述べたように、熱可塑性樹脂を加えた電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、収縮率、取扱い性に優れることが判明した。
【0149】
次に、上述した熱可塑性樹脂を含む本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物からなる粒状物等を用いて、電気電子部品を例に固定を試みた。すなわち、電気電子部品と、電気電子装置との間のギャップに対して、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を充填し、硬化させることにより、電気電子部品を電気電子装置へ固定することを試みた。
【0150】
これらの結果、いずれの本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物においても、良好な固定効果を示すことができた。このように本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物及びこれを用いてなる電気電子部品固定ユニット、モジュール、デバイス体等は、ガラス転移点が高く耐熱性に優れるので、搭載される工作機械、作業用ロボット、車両、自動車、電化製品等の耐久性を向上させることが可能であることが判明した。」
以上の記載から、本願発明の技術的意義は、流動性に優れ、取扱い性が良好な結晶性ラジカル重合性組成物を提供するものであり(【0010】)、結晶性ラジカル重合性組成物を用いることにより、流動性に優れ、取扱いに優れる重合性組成物が実現可能であり(【0032】)、それに加えて、熱可塑性樹脂を含むことにより収縮率を小さくすることができるが(【0037】)、成形性という観点から、熱可塑性樹脂の含有量を結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して0.1~10重量%としたものである(【0038】)と認められる。
そして、熱可塑性樹脂を配合したことによる技術的意義は、実施例12,14(熱可塑性樹脂を配合)と実施例20,21(熱可塑性樹脂を配合しない以外は実施例12,14と同じ)を比較することによっても確認することができ、熱可塑性樹脂を配合した実施例12,14は、それを配合しない実施例20,21と比較して、収縮率が小さくなっている。
2 引用文献に記載された事項
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物」に関して、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。以下、同様。
「【請求項1】
結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含むことを特徴とする電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物。」
【請求項2】
前記結晶性ラジカル重合性化合物は、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ラジカル重合性単量体、ラジカル重合性多量体から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項3】
前記結晶性ラジカル重合性化合物は、30~150℃の範囲で融点を示すことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項4】
前記結晶性ラジカル重合性組成物は、23℃で固体であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物。」
【請求項5】
前記結晶性ラジカル重合性組成物の高化式フローテスタによる溶融粘度は、測定温度90℃、ダイスの直径0.5mmで長さ1.0mm、圧力30kgf/cm2において7~1000Pa・s、又は、圧力1kgf/cm2において1~7Pa・sであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物。」
【請求項6】
前記無機充填材は、前記結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して50~95重量%であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項7】
前記結晶性ラジカル重合性化合物全量に対する結晶性ラジカル重合性化合物の割合は、30重量部以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項8】
前記結晶性ラジカル重合性化合物の重量平均分子量は、100~100000であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物により封止されている電気電子部品封止体。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物からなる粒状物。
【請求項11】
請求項10記載の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物からなる前記粒状物を射出成形法、トランスファー成形法によるインサート成形法により電気電子部品を封止する工程を有する電気電子部品封止体の製造方法。」
「【0007】
液状エポキシ樹脂を使用した封止成形は、圧縮成形、注型等の比較的生産性に乏しい方法により製造されている。そのため、生産性の高い製造方法が期待されている。
【0008】
上記特許文献1において、封止用エポキシ樹脂組成物はトランスファー成形法で成形されている。トランスファー成形に使用するエポキシ樹脂組成物は冷凍保管した樹脂組成物を常温に戻す必要がある。エポキシ樹脂組成物を常温で保管すると流動性が大きく低下することや、成形時間中に完全硬化しないため、必要な成形品特性を得るために数時間の後硬化を行う等の課題がある。
【0009】
さらに特許文献1において、熱硬化性樹脂としてラジカル重合性化合物である、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂の記載があるが、これらのラジカル重合性化合物の具体的な使用方法、実施例等の詳細な記述は一切ない。さらに、硬化剤はラジカル重合開始剤の記述がないため、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂を使用してもラジカル重合性化合物を三次元架橋することが出来ない。そのため、特許文献1に記載されている硬化剤はエポキシ樹脂を三次元架橋できるものに限定されている。したがって、事実上、特許文献1は、エポキシ樹脂組成物の内容である。
【0010】
上記特許文献2において、半導体封止用アクリル樹脂組成物は常温で液状である。常温で液状であるため、流動性は非常に良好であるが、アクリル樹脂組成物が常温で液状であることからべたつき、作業性、取扱い性が悪く、常温固形のペレット状、タブレット状に使用される汎用な成形機では取り扱うことが出来ない。また、注型による成形時には樹脂組成物内に気泡が残りやすいため、気泡の制御が難しい。また、液状の樹脂組成物は固体の樹脂組成物に比べて、無機充填材を使用する場合は充填剤が沈降しやすいため、均一な成形品が得られにくいという課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、流動性に優れ、取扱い性が良好な結晶性ラジカル重合性組成物を提供することにある。」
「【0030】
なお、本明細書において、結晶性化合物とはガラス転移点と融点を有する化合物とすることができる。これらの温度はDSC(示差走査熱量計)、TGDTA(示差熱熱重量同時測定装置)等の熱分析装置により確認できる。本発明における結晶性化合物は熱分析装置により融点が確認できる化合物とすることができる。
【0031】
また、本発明の電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記結晶性ラジカル重合性化合物は、作業性、成形性という観点から、前記結晶性ラジカル重合性化合物の融点が30~150℃であり、より好ましくは30~120℃であり、さらに好ましくは30~100℃の範囲で融点を示すことを特徴とする。融点が30℃未満の結晶性ラジカル重合性化合物、または融点が150℃より高い結晶性ラジカル重合性化合物を使用した場合に比較して、30~150℃の範囲で融点を示す結晶性ラジカル重合性化合物を使用すると、より良好な取扱い性を実現可能であるためである。結晶性ラジカル重合性化合物の融点が上記範囲よりも低い場合は、常温で液体になりやすいため、結晶性ラジカル重合性組成物が固体を維持しにくくなる虞がある。結晶性ラジカル重合性化合物の融点が上記範囲よりも高い場合は、金型の成形温度と近接するため、流動開始から硬化までの時間が短くなり、成形不良が発生する虞がある。
【0032】
また、融点が30℃未満の結晶性ラジカル重合性化合物のみを使用した場合は、23℃で固体の結晶性ラジカル重合性組成物になりにくい傾向がある。一方、融点が150℃より高い結晶性ラジカル重合性化合物のみを使用した場合は、射出成形法において、シリンダー内で結晶性ラジカル重合性組成物を可塑化する際に、シリンダー温度と金型の温度が近接しているため、シリンダー内で安定性に乏しい傾向がある。」
「【0041】
電気電子部品用封止体はインサート物を含んだ封止体である。電気電子部品用封止体はコンデンサー、集積回路等が基板に接合されており、それらを一体で覆うような成形体である。基板に接合された電気電子部品は、高粘度な成形材料を用いた射出成形やトランスファー成形等の流動圧力より電気電子部品の損傷を起こす虞がある。なお、本発明において、電気電子部品には、いわゆる電気電子部品のほか、半導体等を含むことができる。従って、これらの電気電子部品用封止体は半導体封止体にも使用することが可能である。要するに、本発明の組成物は、取り扱え性、流動性等が要求される封止体に広く適用することができる。」
「【0077】
本発明においては、これらの配合成分以外に、結晶性ラジカル重合性組成物の硬化条件を調整するための硬化触媒、重合禁止剤、着色剤、増粘剤、湿潤分散剤、表面調整剤、減粘剤、流動改質剤、その他有機系添加剤、無機系添加剤等を必要に応じて適宜配合することができる。」
「【0085】
以下、実施例により本発明の一実施態様についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
<電気電子部品封止用ラジカル重合性組成物の製造例>
実施例1~11、参照例1、及び比較例1~2
表2に示す実施例1~11、参照例1、及び表3に示す比較例1~2の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物は、下記表2、及び3に記載の配合量にて配合し、加圧加熱・冷却可能な混練機を用いて均一に調製した後、調製物を押し出し機に投入してホットカットして粒状物とした。一部の粒状物、塊状のラジカル重合性組成物は粉砕機を用いて粉末とした。
【0087】
得られたラジカル重合性組成物等は油圧成形機((株)東邦プレス製作所製)により、金型温度165℃、硬化時間180秒または試験片が取得できる時間まで行い、試験片を作製した。成形した試験片について下記記載の方法により物性評価を行い、それぞれ表2、及び表3に示した。
【0088】
配合成分としては以下のものを用いた。
(1)重合性化合物
1.結晶性ラジカル重合性化合物1:フタル酸系不飽和ポリエステル(テレフタル酸とフマル酸と1,6-ヘキサンジオールの縮合物)
2.結晶性ラジカル重合性化合物2:ウレタンメタクリレート(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの2-ヒドロキシエチルメタクリレート付加物)
3.結晶性ラジカル重合性化合物3:ウレタンアクリレート(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの2-ヒドロキシエチルアクリレート付加物)
4.結晶性ラジカル重合性単量体1:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学(株)製 A-9300)
5.非晶性ラジカル重合性化合物1:フタル酸系不飽和ポリエステル(日本ユピカ(株)製 ユピカ8552H)
6.非晶性ラジカル重合性化合物2:ビスフェノールA型エポキシメタクリレート(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のメタクリル酸付加物)
7.ラジカル重合性単量体1:ジアリルフタレートモノマー(大阪ソーダ(株)製 ダイソーダップモノマー)
8.ラジカル重合性単量体2:ジエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学(株)製 2G)
【0089】
(2)無機充填材
1.無機充填材1:溶融シリカ(デンカ(株)製 平均粒子径24μm)
2.無機充填材2:炭酸カルシウム(日東粉化(株)製 平均粒子径2μm)
【0090】
(3)添加剤
1.シランカップリング剤:メタクリル系シラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)
2.ラジカル重合開始剤:ジクミルパーオキサイド(日油(株)製 パークミルD)
3.離型剤:ステアリン酸亜鉛(日油(株)製 GF-200)
4.重合禁止剤:ペラベンゾキノン(精工化学(株)製 PBQ)
5.着色剤:カーボンブラック(三菱化学(株)製 CB40)
【0091】
<重合性化合物特性>
結晶性又は非晶性ラジカル重合性化合物、及びラジカル重合性単量体の融点、及び重量平均分子量を測定して表1に示した。
【0092】
【表1】
[図:0001396565000007.jpg]
【0093】
【表2】
[図:0001396565000008.jpg]
【0094】
【表3】
[図:0001396565000009.jpg]
」
「【0101】
(6)成形収縮率
測定方法はJIS K 6911に準拠した。表2に示す実施例1~11、参照例1、及び表3に示す比較例1~2の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物を用いて、収縮率測定用金型を用いて圧縮成形で試験片を作製した。165℃に温調した金型内にラジカル重合性組成物を置き、3分間加圧加熱した。試験片は直ちに金型から取り出し、23℃、湿度55%RHの恒温恒湿下で24時間保管した。試験片の表裏に突起した環状帯の外形をお互いに直行する測定線に沿って、表面2ヶ所、裏面2ヶ所、計4箇所の寸法を測定した。試験片に対応する金型の溝の外形を同一条件で0.01mmまで測定して成形収縮率を算出した。その結果を表2、及び表3に示す。目標とする成形収縮率は0.5%とし、0.2%以下を優、0.2~0.5%以下を良、0.5%を超える場合を可とした。但し、前記厳格な基準をクリアせずとも、所望の用途、要求される品質等によっては、0.5%を超える場合でも条件が適合する場合もあるので、一つの目安として検討すればよいものである。」
「【0103】
<評価結果>
表2及び表3に示すように、本発明における電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物は、取扱性に優れることが判明した。また、特に、本発明における電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物の実施例1~8、11は、23℃で固体であるため取扱い性に優れ、溶融粘度が低く良好であった。本発明における電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物は、全体的に優れた結果を示すことが判明した。」
(2)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、「シートモールディングコンパウンド及び樹脂成形体」に関して、次の記載がある。
「【請求項1】
樹脂組成物と、
前記樹脂組成物の内部に分散し、外部から印加された圧力に応答して熱を発生する圧力応答性材料を含む、複数のカプセル粒子と、
を備え、
前記カプセル粒子は、外部から圧力が印加された際に破裂する、シートモールディングコンパウンド。」
「【0013】
(樹脂組成物)
シートモールディングコンパウンド1のマトリックス樹脂である樹脂組成物20は特に限定されず、後述する加熱加圧成形により硬化して成形体となる組成物を用いることができる。樹脂組成物20としては、例えば、アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物及びフェノール樹脂組成物からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。ただ、樹脂組成物20としては、アクリル樹脂組成物及び不飽和ポリエステル樹脂組成物の少なくとも一方を用いることが好ましい。」
「【0047】
<不飽和ポリエステル樹脂組成物>
本実施形態に係る不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和・飽和のポリカルボン酸と、有機ポリオールと、重合開始剤と、増粘剤とを含有している。また、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、必要に応じて、繊維補強材、無機充填材、内部離型剤、重合性単量体、重合禁止剤、及び低収縮剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有することができる。」
「【0055】
低収縮剤は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化収縮を低減させる目的で使用され、一般的に熱可塑性樹脂が用いられる。低収縮剤として、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、飽和ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン変性共重合体等が挙げられる。」
(3)引用文献4に記載された事項
引用文献4には、「低収縮性樹脂組成物および成形品の製造法」及びその「従来の技術」に関して、次の記載がある。
「【請求項1】 (A)分子内に重合性二重結合を持つポリマー、(B)重合性単量体および(C)2段階以上の多段階重合により得られる共重合体を配合してなる低収縮性樹脂組成物。」
「【0002】
【従来の技術】不飽和ポリエステル等の分子内に二重結合を有するポリマーを、スチレンやメタアクリレートまたはアクリレート(以下、(メタ)アクリレートと略す)などの重合性単量体に溶解させて得られる熱硬化性樹脂は、有機過酸化物等により硬化して樹脂硬化物(成形品)とされるが、硬化時に体積収縮を生じ、これが成形品内に残留応力として残り、成形品に歪みやクラックが発生するという問題があった。
【0003】熱硬化性樹脂の硬化時の収縮を改善する方法として、熱可塑性のポリマーを配合する方法が知られている。この方法は、例えばポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、飽和ポリエステル等の熱可塑性ポリマーを、熱硬化性樹脂に溶解または分散させて熱硬化性樹脂の硬化時に相分離させるか、硬化時の発熱により熱硬化性樹脂を熱膨脹させて容積を大きくして収縮を低減さる方法である。
【0004】しかしながら、上記熱可塑性樹脂として収縮率低減効果が大きいポリスチレンを用いる場合には、ポリスチレンの熱硬化性樹脂に対する分散性が悪いため、硬化前に完全に相分離を起こし、該ポリスチレンの収縮率低減効果を充分発揮することができない。また熱硬化性樹脂に炭酸カルシウム等の充填剤、ガラス繊維などを混合した成形材料では、硬化時に熱可塑性ポリマーが分離してしまい、成形品表面に熱可塑性ポリマーの縞ができ、成形品の外観を損なうという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記従来技術の欠点をなくし、熱硬化性樹脂の硬化収縮を防ぎ、歪みやクラックの発生がなく、かつ外観に優れた成形品を得ることができる低収縮性樹脂組成物およびこれを用いた成形品の製造法を提供することにある。」
(4)引用文献5に記載された事項
引用文献5には、「低収縮性熱硬化性樹脂組成物」及びその「従来の技術」に関して、次の記載がある。
「2.特許請求の範囲
1. 熱硬化性樹脂〔 I 〕に分子内にアジリジン基、オキサゾリン基、エポキシ基から選ばれる1種又は2種以上の官能基を有する重合体〔II〕を配合してなる低収縮性熱硬化性樹脂組成物。」(特許請求の範囲第1項)
「<従来の技術>
不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂はその成形硬化に際し著しい収縮を起こし、クラックを生じたり表面の波うちが生じて表面平滑性が損なわれる等の問題がある。これらの問題はすべて樹脂硬化時の体積収縮に起因するものである。従来、このような問題を解決する方法として、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、飽和ポリエステル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂と共重合可能な単量体に溶解させた後、熱硬化性樹脂中に溶解あるいは分散せしめ、熱硬化性樹脂の硬化時に熱可塑性樹脂を析出させることにより、収縮率を小さくする方法が提案され、それなりの改良がなされている。
<発明が解決しようとする課題>
しかし、これら従来の方法は、得られた樹脂組成物の保存安定性に問題があり、色むらや型よごれを生じたり、又、場合により低収縮効果も不充分となつたりする。これらの欠点は、熱可塑性樹脂の樹脂組成物中での分散性が悪く、熱可塑性樹脂が分離して表面に浮き出したり、あるいは溶解している熱可塑性樹脂が析出する際に均一に析出しない等の原因により、発生するものである。上記のように、従来手法による低収縮化法は、低収縮化はある程度達成するものの、低収縮化にともなう型よごれ、色むらに問題が残るものであった。
<課題を解決するための手段および作用>
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、その目的は、硬化に際し収縮率が低く、表面平滑性や光沢の良好な硬化成形物を与え、しかも型よごれや色むらを生じない低収縮性熱硬化性樹脂組成物を提供するととにある。」(1ページ左下欄13行~2頁左上欄6行)
3 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、「結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含むことを特徴とする電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物。」(請求項1)が記載されており、「前記結晶性ラジカル重合性組成物は、23℃で固体であること」(請求項4)、「本明細書において、結晶性化合物とはガラス転移点と融点を有する化合物とすることができる」(【0030】)ことが記載されている。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「ガラス転移点と融点を有する結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含む電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物であって、前記結晶性ラジカル重合性組成物は、23℃で固体である、電気電子部品封止用結晶性ラジカル重合性組成物。」
4 本願発明と引用発明1との対比
本願発明と引用発明1を対比すると、両者は
「ガラス転移点と融点を有する結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含む結晶性ラジカル重合性組成物であって、前記結晶性ラジカル重合性組成物は、23℃で固体である、結晶性ラジカル重合性組成物。」
である点で一致し、以下の2点において相違する。
相違点1
結晶性ラジカル重合性組成物の用途が、本願発明では「電気電子部品固定用」であるのに対し、引用発明1では「電気電子部品封止用」である点
相違点2
結晶性ラジカル重合性組成物が、本願発明では「結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して0.1~10重量%の熱可塑性樹脂を含み、かつ、前記熱可塑性樹脂は、飽和ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、及びそれらの共重合体から選ばれる1種以上を含む(但し、ポリスチレンを除く)」と特定されているのに対し、引用発明1はそのような特定を有さない点
5 相違点についての判断
(1)相違点1について
本願明細書の【0033】には、以下の記載がある。
「なお、固定とは一つの場所から動かないようにすること、また、動かないことである。固定は接着や封止等を含み、固定用途は接着用途や封止用途等を含む。」
上記記載からみて、本願発明における「電気電子部品固定用」の「固定」には「封止」が含まれるといえるから、引用発明1における「電子電子部品封止用」は本願発明の「電気電子部品固定用」に相当し、この点は実質的な相違点とはいえない。
(2)相違点2について
引用文献1の【0101】には、「成形収縮率」についての記載があり、その記載は、【0093】の【表2】の記載を考慮すると、引用発明1の具体例である実施例1~11において評価された成形収縮率に関して説明するもので、そこには、「目標とする成形収縮率は0.5%とし、0.2%以下を優、0.2~0.5%以下を良、0.5%を超える場合を可とした。」と記載されている。
そうすると、引用発明1においては、成形収縮率を小さくすることが望ましいといえる。
また、引用文献1の【0077】に、「本発明においては、これらの配合成分以外に、・・・その他有機系添加剤、無機系添加剤等を必要に応じて適宜配合することができる。」と記載されるように、引用発明1の電気電子部品封止用組成物においては、必要に応じて有機系添加剤等を適宜配合することができると認められる。
そして、引用文献3には、
「樹脂組成物と、
前記樹脂組成物の内部に分散し、外部から印加された圧力に応答して熱を発生する圧力応答性材料を含む、複数のカプセル粒子と、
を備え、
前記カプセル粒子は、外部から圧力が印加された際に破裂する、シートモールディングコンパウンド。」(請求項1)
という発明において、樹脂組成物としては不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いることが好ましく(【0013】)、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、必要に応じて低収縮剤を含有することができることが記載されており(【0047】)、低収縮剤としては一般的に熱可塑性樹脂が用いられ、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、飽和ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン変性共重合体等が挙げられること(【0055】)が記載されている。
そうすると、引用文献3には、不飽和ポリエステル樹脂組成物において、「低収縮剤としてポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、飽和ポリエステル等の熱可塑性樹脂を配合すること」が記載されている。
また、引用文献4には、
「(A)分子内に重合性二重結合を持つポリマー、(B)重合性単量体および(C)2段階以上の多段階重合により得られる共重合体を配合してなる低収縮性樹脂組成物。」(請求項1)
という発明の「従来の技術」に関して、不飽和ポリエステル等の分子内に二重結合を有するポリマーを、スチレンや(メタ)アクリレートなどの重合性単量体に溶解させて得られる熱硬化性樹脂は、有機過酸化物等により硬化して樹脂硬化物とされるが、硬化時に体積収縮を生じ、これが成形品内に残留応力として残り、成形品に歪みやクラックが発生するという問題があること(【0002】)、熱硬化性樹脂の硬化時の収縮を改善する方法として、熱可塑性のポリマー、例えば飽和ポリエステルを配合する方法が知られていること(【0003】)が記載されている。
そうすると、引用文献4には、不飽和ポリエステル等を含む熱硬化性樹脂の硬化時の収縮を改善する方法として、「飽和ポリエステル等の熱可塑性のポリマーを配合する方法」が従来技術として知られていることが記載されている。
また、引用文献5には、
「熱硬化性樹脂〔 I 〕に分子内にアジリジン基、オキサゾリン基、エポキシ基から選ばれる1種又は2種以上の官能基を有する重合体〔II〕を配合してなる低収縮性熱硬化性樹脂組成物。」(請求項1)という発明の「従来の技術」に関して、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂はその成形硬化に際し著しい収縮を起こし、クラックを生じたり表面の波うちが生じて表面平滑性が損なわれる等の問題があり、従来、このような問題を解決する方法として、ポリメチルメタクリレートや飽和ポリエステル等の熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂と共重合可能な単量体に溶解させた後、熱硬化性樹脂中に溶解あるいは分散せしめ、熱硬化性樹脂の硬化時に熱可塑性樹脂を析出させることにより、収縮率を小さくする方法が提案され、それなりの改良がなされていることが記載されている(上記2(4))。
そうすると、引用文献5には、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂が成形硬化に際し著しい収縮を起こす問題を解決する方法として、「ポリメチルメタクリレートや飽和ポリエステル等の熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂中に溶解あるいは分散させ、熱硬化性樹脂の硬化時に熱可塑性樹脂を析出させる方法」が従来技術として知られていることが記載されている。
上記引用文献3~5の記載から、「不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂の硬化時の収縮を低減させる方法として、低収縮剤である飽和ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を配合すること」は、本願の出願時における周知技術であると認められる。
そして、引用文献1の請求項2の記載からみて、引用発明1は、結晶性ラジカル重合性化合物として、「不飽和ポリエステル」等の熱硬化性樹脂を用いるものであり、かつ、上記のとおり成形収縮率を小さくすることが望ましいものであるから、引用発明1に上記周知技術を適用し、低収縮剤であるポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、飽和ポリエステルなどの(ポリスチレンではない)熱可塑性樹脂を配合することは当業者が容易に想到することであるし、その際に、熱可塑性樹脂の配合量を、低収縮性が期待できる範囲を考慮して、過剰な配合量とならないように調節することは当然のことであることから、本願発明で特定される「結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して0.1~10重量%」とすることも、格別困難なこととはいえない。
また、本願発明の効果について検討すると、本願明細書の【0037】には、「また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、さらに、収縮性という観点から、熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする。・・・これらの熱可塑性樹脂を選択することにより、収縮率が小さい電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物にすることが出来るためである。」と記載され、同じく【0038】には「また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記熱可塑性樹脂の含有量は、成形性という観点から、結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して0.01~20重量部であり、・・・さらに好ましくは0.1~10重量%である。上記範囲としたのは、熱可塑性樹脂が上記範囲よりも少ない場合は成形後の低収縮効果が小さくなる虞があるためと、上記範囲よりも多い場合は溶融粘度が高くなり成形性が低下する虞があるためである。」と記載されている。
しかし、熱可塑性樹脂を配合することにより収縮率が小さい組成物が得られること、その配合量が少なければ収縮率の低下効果が劣ることは、上記周知技術から当業者が予測できる程度のことにすぎないし、引用発明1において必須成分でない熱可塑性樹脂を過剰に配合すれば問題が生じることも当然のことであるから、本願発明の効果は、当業者が予測できる程度のものである。
また、本願明細書の【0010】には、「本発明は、流動性に優れ、取り扱い性が良好な結晶性ラジカル重合性組成物を提供することにある。」と記載されるところ、引用文献1の【0011】にも、「本発明は、流動性に優れ、取扱い性が良好な結晶性ラジカル重合性組成物を提供することにある。」と記載されており、引用発明1も流動性に優れ、取り扱い性が良好な結晶性ラジカル重合性組成物であるといえるから、この点においても、本願発明の効果が格別顕著であるともいえない。
そして、本願発明において、熱可塑性樹脂が「(但し、ポリスチレンを除く。)とされている点について検討しても、本願明細書には、熱可塑性樹脂としてポリスチレンを用いた比較実験や、「飽和ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、及びそれらの共重合体から選ばれる1種以上」を用いた場合の有利な効果について特に記載がなく、熱可塑性樹脂として特にポリスチレン以外の「飽和ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、及びそれらの共重合体から選ばれる1種以上」を用いたことによって、格別顕著な効果が得られるものとも認められない。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和4年10月19日付けの意見書において、主に以下の3点を主張する。
主張1:
「引用例1には、熱可塑性樹脂の使用に関して一切教示乃至示唆するところがない。
加えて、引用例1には、電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して0.1~10重量%の熱可塑性樹脂を含むこと、前記熱可塑性樹脂は、飽和ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、及びそれらの共重合体から選ばれる1種以上を含む(但し、ポリスチレンを除く。)ことに関して教示乃至示唆するところがない。
すなわち、引用例1には、「本発明は、流動性に優れ、取扱い性が良好な結晶性ラジカル重合性組成物を提供することにある。」と記載されていることから明らかなように(引用例1段落番号[0011])、この引用技術は、流動性、及び取扱い性に向けられることを前提とする技術であって、本願発明におけるような取扱い性に加えて、収縮性及び成形性に優れる電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を教示乃至示唆するものではない。」
主張2:
「引用例1には、収縮率が小さく、流動性に優れ、取扱いに優れる重合性組成物を実現可能であり、固定(接着)にも適しているという有利な効果に関して教示乃至示唆するところがない。
引用例1には、熱可塑性樹脂の記載が全くないことに加えて、具体的に、0.1重量%(本願の実施例7(旧実施例18)、表5参照)~10重量%(本願の実施例8(旧実施例19)、表5参照)の熱可塑性樹脂を用いた場合についての収縮率に関しても(本願の明細書段落番号[0146]及び[0147]等)、教示乃至示唆するところがない。
したがって、熱可塑性樹脂について一切開示されておらず構成を欠く以上、引用例1は、本願発明の起因乃至動機付けと成り得るものではない。」
主張3:
「そもそも、引用例3~5は、ガラス転移点と融点とを有する結晶性ラジカル重合性化合物に関するものではないことに加えて、機能性酸化チタンの使用を前提として、実施例には熱可塑性樹脂の使用に関して一切記載がない引用例3と、熱可塑性樹脂の使用を除外する引用例4、及び5と、同様に目的を異にし、構成を欠く引用例1とを、たとえ組み合わせたとしても、本願発明の起因乃至動機付けを当業者へ与えるものとは成り得ない。」
そこで、上記主張1~3について検討する。
ア 主張1について
引用発明1において、成形収縮率を小さくすることが望ましいこと、そのための手段として引用文献3~5に記載された飽和ポリエステル等の熱可塑性樹脂を配合する方法を採用すること、その際の配合量を0.1~10重量%とすることが当業者にとって容易であることは、上記(2)で述べたとおりである。
引用文献1には、成形性については明記されていないものの、審判請求人が主張する成形性の効果というのは、本願明細書の【0038】の記載によれば、熱可塑性樹脂を配合しすぎると溶融粘度が高くなり成形性が悪化するという、加熱によって溶融する熱可塑性樹脂そのものの特性にすぎず、熱可塑性樹脂を配合することにより成形性が向上するというものではない。そして、上記(2)で指摘したように、引用発明1において必須成分でない熱可塑性樹脂を過剰に配合すれば問題が生じることも当然のことであるから、その効果が格別顕著なものとはいえない。
イ 主張2について
引用発明1において、熱可塑性樹脂を配合することにより、収縮率が小さく、流動性に優れ、取り扱い性に優れる重合性組成物を実現すること、その際に、熱可塑性樹脂の配合量を、低収縮性が期待できる範囲を考慮して、かつ過剰な配合量とならないように調節し、「結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して0.1~10重量%」とすることが当業者にとって容易であることは、上記(2)で述べたとおりであるし、引用発明1は「電気電子部品封止用」の結晶性ラジカル重合性組成物であるから、その組成物が固定(接着)性にも適していることは、当業者が予測できることにすぎない。
ウ 主張3について
引用文献3~5は、熱硬化性樹脂の成形収縮率を小さくするために熱可塑性樹脂を配合することが周知技術であることを示すために、それに関連する部分を引用したもので、当業者であれば上記(2)で示した引用箇所からそのような周知技術を容易に理解することができる。
また、引用文献3~5の記載から導かれる周知技術は、ガラス転移点と融点とを有する結晶性ラジカル重合性化合物に特化したものではないが、上記周知技術は不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂一般に適用可能なものであり、熱硬化性樹脂にはガラス転移点と融点とを有するものと有しないものが含まれるところ、そのうちのガラス転移点と融点を有するものにも適用できることは、当業者が容易に理解することである。
そして、本願明細書には、熱硬化性樹脂を配合する対象を「ガラス転移点と融点とを有する」結晶性ラジカル重合性化合物としたことによって、熱可塑性樹脂を配合したときに特に成形収縮率を良好なものにできるとか、成形収縮率の観点で「ガラス転移点と融点とを有する」結晶性ラジカル重合性化合物が有する特有の課題を解決したといった点についての記載や検討もない。
また、「ガラス転移点と融点とを有する」としたことによる効果に関連して、本願明細書の【0039】には「融点が30℃未満の結晶性ラジカル重合性化合物、または融点が150℃より高い結晶性ラジカル重合性化合物を使用した場合に比較して、30~150℃の範囲で融点を示す結晶性ラジカル重合性化合物を使用すると、より良好な取扱い性を実現可能である」との記載があるところ、そのような取り扱い性に関する効果であれば、引用文献1の【0031】に同様の記載があることから、当業者が予測できる程度のものにすぎない。
したがって、本願発明において、熱可塑性樹脂を配合することによって成形収縮率を小さくすることができるという効果は、引用文献3~5に記載された熱硬化性樹脂一般における周知技術から予測できる程度のものにすぎない。
6 小括
よって、本願発明は、引用発明1及び引用文献3~5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-017410