商標拒絶査定不服審判
2020-016917
オンジャクキュウ、オンジャクキュー、オンジャク
- 審判番号
- 2020-016917
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2019-098619
- 請求日
- 2020年12月08日
- 審決日
- 2021年11月24日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】弓田 潔明
- 【請求人代理人】中井 博
- 【請求人代理人】洲崎 竜弥
- 【請求人代理人】岡本 茂樹
- 審判長/審判官
- 審判長 岩崎 安子
- 審判官 小田 昌子
- 審判官 茂木 祐輔
- 分類
- T18 .13 -Z (W44) / T18 .272-Z (W44)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2019-98619拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
理 由
1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,第44類「あん摩・マッサージ及び指圧,きゅう,はり治療,カイロプラクティック,医療情報の提供,栄養の指導」を指定役務として,令和元年7月19日に登録出願されたものである。
本願は,令和2年5月20日付けで拒絶理由の通知がされ,同年6月30日付けで意見書が提出されたが,同年9月7日付けで拒絶査定がされたものであり,これに対して同年12月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『おんじゃくきゅう』及び『温石灸』の文字を上下二段に表してなるところ,『おんじゃくきゅう』の文字は,『温石灸』の表音を平仮名文字で表したものであり,『温石』の文字は『軽石などを焼いて布などに包み,懐に入れたりしてからだをあたためるもの。』の意味を,『灸』の文字は『漢方医術の一。もぐさをつぼに当たる皮膚の特定の位置に据え,線香で火をつけて燃やし,その熱の刺激で病気に対する治癒力を促進する療法。』の意味を有する語であることからすると,本願商標は,全体として『からだをあたためる石をつぼに当たる皮膚の特定の位置に据え,その熱の刺激で病気に対する治癒力を促進する療法』ほどの意味合いを生ずる。そして,本願商標の指定役務を扱う業界において,からだをあたためるための石を使用した灸が広く一般に扱われている実情が見受けられる。そのため,本願商標をその指定役務中,例えば『からだをあたためるための石を使用したきゅう』などの上記意味合いに相応する役務に使用するときは,これに接する取引者,需要者は,役務の質を表示したものと容易に認識するというのが相当であり,本願商標をその指定役務中,上記以外の役務に使用するときは,役務の質に誤認を生じさせるおそれがある。したがって,本願商標は,『役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』及び『役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標』に当たるから,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
3 当審における審尋
当審において,令和3年8月19日付け審尋により,原審において示した事実(別掲2)に加え,別掲3に掲げる事実を記載した上で,本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの暫定的見解を示し,期間を指定した上で請求人に対し意見を求めた。
4 審尋に対する請求人の回答の要旨
請求人の回答の要旨は次のとおりである。
(1)2014年7月26日付けのブログ記事にて「温石灸という当院オリジナルのお灸」として紹介しており,請求人が「温石灸」なる商標の使用をして提供を開始した役務(施術)は,温石の下にもぐさをおいて使用するものである。また,「温石」と「もぐさ」両方を用いる上記役務(施術)は2014年当時存在しなかった。
(2)審尋における事例によれば,「温石」が使用されていることがうかがえるものの,「灸」に代わる「温石療法」としての使用や,「温石」に特化した使用など,請求人が開始した施術と異なるものであるから,本願商標は,請求人がオリジナルの役務(施術)と共に創出した造語である。また,請求人及びその許諾を受けた者のみが使用している。
(3)テレビ番組で「温石灸」が紹介された事実や,塩や味噌等の材料等を使用した「○○灸」の事例があるとしても,本願の施術とは施術方法が全く異なるものである。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は,別掲1のとおり,「温石灸」の漢字を横書きし,その上段に漢字の読みと認められる「おんじゃくきゅう」の平仮名を配した構成からなるものである 。
そして,その構成中の「温石」の文字は,「焼いた軽石を布などに包んで身体を温めるもの。」(広辞苑第七版),「軽石などを焼いて布などに包み,懐に入れたりしてからだをあたためるもの。」(大辞泉第二版)等,「身体を温めるもの」を意味するものとして複数の辞書等に掲載されている(別掲3の1)。
また,別掲3の2のとおり,鍼灸や整体等,本願の指定役務を提供する業界において,「温石」の文字は,「腹部の経穴・・・に温めた石(温石)を置き」(別掲の3の2(2)),「局所を効果的に温め」(同(3)),「温かい石・・・を用いて、この経絡を刺激し」(同(9)),「温石を使って身体を温め」(同(10)),「身体に温かい天然石を乗せ・・・体中のツボを刺激し、コリをほぐし、全身の血液やリンパ液の流れを良くします」(同(11))等,「温めた石」ほどの意味合いをもって,身体のツボに置く等により,身体を温め,刺激するものとして,多くの事業者によって使用されている。
さらに,「温石(温めた石)」の使用方法や,それに期待される効果は灸と共通するものであることに加え,使用されている事例の中には,「温石(温めた石)」を使用した施術(灸等)を「温石灸」と称しているものも見受けられ(別掲3の2),別掲3の3のとおり,「温石灸」は,一般の需要者が多数視聴するテレビ番組である「ザ!鉄腕!DASH!!」でも紹介されている。
なお,「温石灸」の使用例や,上記テレビ番組での紹介に対する業界からの反応は,別掲2及び別掲3に示した事実に加え,例えば以下のウェブサイトにおいても確認することができる。
ア 「泉美堂(いずみどう)治療院」のウェブサイトにおいて,「ご利用について」の見出しの下,「きゅう治療/画像は温石灸です(遠赤外線効果で温かく気持ち良いと患者様に評判です)熱くはありません、火傷の心配もなく鍼施術やオイルマッサージの併用で治療効果が増します。 ※ホットストーンと呼ばれることもあります。」の記載がある(https://i9vm4.crayonsite.com/p/2/)。
イ 「鍼灸院 こもれび」のウェブサイトにおいて,「施術料金」の見出しの下,「時短コース(約30分) 3000円/循環を良くする鍼+温石灸」の記載がある(https://sinnkilyuuinnkomorebi.shopinfo.jp/pages/1954218/page_201805261608)。
ウ 「番町もくの木倶楽部」のウェブサイトにおいて,「もくの木ブログ」の見出しの下,「2016.05.10/Relaxもくの木倶楽部 を鍼灸院に併設(略)● 温石灸などの温灸と手技による施術を基本としています。」の記載があると共に(http://mokunoki.jp/blog/relax%E3%82%82%E3%81%8F%E3%81%AE%E6%9C%A8%E5%80%B6%E6%A5%BD%E9%83%A8-%E3%82%92%E9%8D%BC%E7%81%B8%E9%99%A2%E3%81%AB%E4%BD%B5%E8%A8%AD),「Relaxもくの木倶楽部」の見出しの下,「★ Relaxもくの木倶楽部/“はり・きゅう”の治療は経験がなく、少し不安な方々へ。(略)● 温石灸などの温灸と手技による施術を基本としています。」の記載がある(http://mokunoki.jp/relax%e3%82%82%e3%81%8f%e3%81%ae%e6%9c%a8%e5%80%b6%e6%a5%bd%e9%83%a8)。
エ 「もぐさ鍼灸院」のウェブサイトにおいて,「徒然もぐさ日記」の見出しの下,「温石灸/January19, 2021/先日、あるテレビ番組で、温石灸で腰痛緩和を試みていました。島で拾った石や瓦、レンガを温めて、患部に置き、筋肉の凝りをほぐす目的です。お湯の温度加減がうまく行かず、熱がっていたり、うつ伏せになって自分で腰に石を置くなど、苦労しておられる姿が楽しく、喜ばしく感じました。(略)何より、温石を取り上げて頂いた事が何より嬉しく、ありがたい限りです。テレビを観ておられる皆さんの養生に広く使って頂けたらいいなと思いました。温石の良さを改めて感じでいます。」の記載がある(http://www.moxa-89.com/15873607016188)。
また,別掲3の4のとおり,鍼灸治療といった本願の指定役務を提供する業界において,様々な材料や道具を使用した灸が多岐にわたり提供されており,その灸は,施術に用いられる材料や道具の名称を冠し,「塩灸」,「味噌灸」,「生姜灸」,「ニンニク灸」,「台座灸」,「箱灸」等,「〇〇灸」のように称されている実情がある。
以上よりすれば,「温石」の文字は,「温めた石」ほどの意味合いをもって,本願の指定役務を提供する業界において,灸と同様の効果を有するものとして施術(灸等)に一般に使用されている上に,「温石(温めた石)」を使用した施術を「温石灸」とも称すること,また,施術に用いられる材料や道具の名称を冠した「〇〇灸」と称される灸が行われている実情があることからすれば,「温石灸」の文字は,「温めた石を用いた灸(施術)」ほどの意味合いを容易に理解させるといえる。
そうすると,「温石灸」の漢字及びその読みからなる本願商標をその指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者は,「温めた石を用いた灸(施術)」であること,すなわち役務の質(内容)を認識するにとどまるというべきである。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,本願商標を「温めた石を用いた灸(施術)」を内容とする役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,請求人が「温石灸」を使用して行う施術は,請求人が2014年に開始したオリジナルの施術であって,2014年当時存在しなかったものである旨主張する。
しかしながら,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かの判断時期は査定時又は審決時であるところ,本審決時において,本願商標「温石灸(おんじゃくきゅう)」が,上記(1)のとおり,取引者等が役務の質(内容)を認識する以上,2014年当時「温石灸(おんじゃくきゅう)」が存在したか否か(資料4)は,同号該当性についての判断を左右するものではない。
イ 請求人は,本願商標は請求人がオリジナルの施術と共に創出した造語であって,請求人及びその許諾を受けた者のみが使用(資料5)しているものであり,審尋で挙げられた事例は請求人等が行うオリジナルの施術とは異なる旨主張する。
しかしながら,本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かは,商標の構成態様や,当該商標が使用される役務の取引の実情等を考慮し,取引者,需要者が本願商標をどのように認識するかを基準として判断されるべきものであるところ,上記(1)のとおり,本願商標は「温めた石を用いた灸(施術)」ほどの意味合いを認識させるものであることからすれば,請求人等の施術内容との相違が同号該当性に何の影響を及ぼさないというべきである。
また,別掲3の3や上記(1)エの事例に見られるように,「温石灸」がテレビ番組で紹介されたことに対し,本願の指定役務を提供する業界から,施術の内容を理解できない等の疑問や否定的な反応は見られず,むしろ施術の内容を自然に理解し好感をもって受け止められている様子がうかがえることからしても,「温石灸」は,造語として理解されたというよりは,灸(施術)の一種を表したものとして認識されたとみるべきである。
ウ したがって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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