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特許拒絶査定不服審判

2020-016401

検体センサおよびセンサ制御装置を含むシステム

審判番号
2020-016401
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-184435外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年11月30日
審決日
2021年07月19日
公報発行日
2022年01月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B) / P18 .537-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-184435「検体センサおよびセンサ制御装置を含むシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 1日出願公開、特開2018- 29983〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成22年(西暦2010年)2月26日(パリ条約による最先の優先権主張 2009年2月26日 米国)を国際出願日とする特願2011-552211号の一部を平成27年7月3日に新たな特許出願とした特願2015-134307号の一部を平成29年9月26日に新たな特許出願としたものであって、平成30年9月27日付け拒絶理由通知に対し平成31年3月22日に1回目の手続補正がなされ、令和元年8月16日付けの最後の拒絶理由通知に対し令和2年2月28日に2回目の手続補正がなされたところ、同年7月21日付け補正の却下の決定により前記2回目の手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1~11の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。請求項1の各構成単位冒頭の「A」などは当審による分説番号である。以下「構成A」などという。) 「 【請求項1】 A 検体センサおよびセンサ制御装置を含むシステムであって、 B 前記検体センサが、 検体センサの使用期間中の間質液との流体接触用に構成された遠位部を有する基板; C 前記基板の遠位部上に形成された導電層; D 前記遠位部上に位置する空隙を含む、前記導電層の上に形成された誘電体層; E 検体センサの使用期間中にモニターされる検体レベルに対応する1つ以上の信号を検体センサが発生するように1つ以上のパラメータを有する検体センサ活性領域を画成するために前記空隙内で前記導電層上に形成されたセンシング層を備え、 F 前記センサ制御装置は、前記発生される1つ以上の信号を、該信号に適用される較正パラメータに基づき、モニターされる検体レベルと関連付け、 G 前記システムは、前記導電層上に形成された前記センシング層上の領域にわたって形成された膜をさらに備え、 H 前記センシング層上の前記領域にわたって形成された前記膜は、前記較正パラメータが対応する、実質的に一定の厚さを有する I システム。 【請求項2】 前記検体センサの導電層上に形成されたセンシング層の表面領域が、検体センサの使用期間中の間質液との流体接触用に構成されている検体センサの作用電極の少なくとも一部を画成する、請求項1記載のシステム。 【請求項3】 前記検体センサのセンシング層上に形成された膜層が、前記センシング層上に形成された、グルコース流制限層、干渉物質除去層または生体適合層のうち1つ以上を含む、請求項1記載のシステム。 【請求項4】 前記検体センサの導電層の表面積が、0.01mm2~1.0mm2である、請求項1~3いずれか1項記載のシステム。 【請求項5】 前記検体センサの導電層上に形成されたセンシング層の表面積が、0.01mm2~1.0mm2である、請求項4記載のシステム。 【請求項6】 前記検体センサ活性領域の1つ以上のパラメータが、検体センサの膜ポリマーの粘度、透過性、厚さまたは組成特性、酵素安定性を含む検体センサの酵素特性、および検体センサの生体適合性の群の少なくとも1つに基づく、請求項1~5いずれか1項記載のシステム。 【請求項7】 前記較正パラメータは、検体センサと関連付けられかつ検体センサ製造中に決定されるセンサ感度を含む、請求項1~6いずれか1項記載のシステム。 【請求項8】 前記検体センサのセンシング層上に形成された第2の膜層をさらに備え、前記センサ感度が、前記膜層の厚さに反比例し、かつ検体センサ活性領域の面積に比例する、請求項7記載のシステム。 【請求項9】 前記センサ感度が、検体センサ製造中に、同じ検体センサロット中の複数のサンプリングされた検体センサから決定される平均センサ感度である、請求項7記載のシステム。 【請求項10】 センサ感度に関連する所定のドリフトプロファイルが、検体センサと関連付けられる、請求項7記載のシステム。 【請求項11】 前記事前に定義されるドリフトプロファイルが、センサの使用期間中にモニターされる検体レベルを報告するために、前記発生する1つ以上の信号に適用される、請求項10記載のシステム。 」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、上記1回目の手続補正により補正された特許請求の範囲における請求項1~13の記載(以下「第1補正クレーム」という。)は次のとおりである(請求項1の各構成単位冒頭の「A」などは当審による分説番号である。以下「構成A」などという。)。 「 【請求項1】 A 検体センサおよびセンサ制御装置を含むシステムであって、 B 前記検体センサが、 検体センサの使用期間中の間質液との流体接触用に構成された遠位部を有する基板; C 前記基板の遠位部上に形成された導電層; D 前記遠位部上に位置する空隙を含む、前記導電層の上に形成された誘電体層; E 検体センサの使用期間中にモニターされる検体レベルに対応する1つ以上の信号を検体センサが発生するように1つ以上のパラメータを有する検体センサ活性領域を画成するために前記空隙内で前記導電層上に形成されたセンシング層を備え、 F’ 前記発生される1つ以上の信号は、該信号に適用される較正パラメータに基づき、モニターされる検体レベルと関連付けられる、 I システム。 【請求項2】 前記検体センサの導電層上に形成されたセンシング層の表面領域が、検体センサの使用期間中の間質液との流体接触用に構成されている検体センサの作用電極の少なくとも一部を画成する、請求項1記載のシステム。 【請求項3】 前記検体センサのセンシング層上に形成された膜層をさらに備えた、請求項1記載のシステム。 【請求項4】 前記検体センサのセンシング層上に形成された膜層が均一な厚さを有する、請求項1~3いずれか1項記載のシステム。 【請求項5】 前記検体センサのセンシング層上に形成された膜層が、前記センシング層上に形成された、グルコース流制限層、干渉物質除去層または生体適合層のうち1つ以上を含む、請求項3記載のシステム。 【請求項6】 前記検体センサの導電層の表面積が、0.01mm2~1.0mm2である、請求項1~5いずれか1項記載のシステム。 【請求項7】 前記検体センサの導電層上に形成されたセンシング層の表面積が、0.01mm2~1.0mm2である、請求項6記載のシステム。 【請求項8】 前記検体センサ活性領域の1つ以上のパラメータが、検体センサの膜ポリマーの粘度、透過性、厚さまたは組成特性、酵素安定性を含む検体センサの酵素特性、および検体センサの生体適合性の群の少なくとも1つに基づく、請求項1~7いずれか1項記載のシステム。 【請求項9】 前記較正パラメータは、検体センサと関連付けられかつ検体センサ製造中に決定されるセンサ感度を含む、請求項1~8いずれか1項記載のシステム。 【請求項10】 前記検体センサのセンシング層上に形成された膜層をさらに備え、前記センサ感度が、前記膜層の厚さに反比例し、かつ検体センサ活性領域の面積に比例する、請求項9記載のシステム。 【請求項11】 前記センサ感度が、検体センサ製造中に、同じ検体センサロット中の複数のサンプリングされた検体センサから決定される平均センサ感度である、請求項9記載のシステム。 【請求項12】 センサ感度に関連する所定のドリフトプロファイルが、検体センサと関連付けられる、請求項9記載のシステム。 【請求項13】 前記事前に定義されるドリフトプロファイルが、センサの使用期間中にモニターされる検体レベルを報告するために、前記発生する1つ以上の信号に適用される、請求項12記載のシステム。」 2.補正の適否 (1)本件補正の目的について ア 本件補正後の請求項1についての補正 当該補正は、第1補正クレームの請求項1における「検体センサ」の構造について構成G,Hで特定する特徴を付加したものであり、当該補正前の請求項1に記載された発明と当該補正後の請求項1に記載される発明との産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、前記構成G,Hについての補正に伴い、特定の対象を明示しようとする構成Fについての補正を含め、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。 イ 本件補正後の請求項2~7,9~11についての補正 請求項2については、本件補正の前後で特定事項について補正がなされていない。 本件補正により、第1補正クレームの請求項3,4は削除され、それに伴い本件補正前の請求項5~9,11~13について、それぞれ本件補正後の請求項3~7,9~11とする項番の変更、及び引用先請求項の変更がなされた。これらは、特許法17条の2第5項1号の請求項の削除を目的とするものと認められる。 ウ 本件補正後の請求項8についての補正 本件補正後の請求項8については、上記イと同様の、本件補正前請求項3,4の削除に伴う項番や引用先請求項の変更のほか、本件補正前の請求項10の「前記検体センサのセンシング層上に形成された膜層をさらに備え」を「前記検体センサのセンシング層上に形成された第2の膜層をさらに備え」と変更する補正がなされた。 この補正は、審査の経緯からみて、最後の拒絶理由通知及び拒絶査定で指摘された、「検体センサのセンシング層上に形成された膜層をさらに備え」なる特定事項の重複に関する明確性要件に係る拒絶の理由1を解消することを意図したものであると推察される。 ところで、「検体センサのセンシング層上に形成された膜層をさらに備え」るとの特定事項は、第1補正クレームの請求項1には含まれず、同請求項3~5でまず特定されている。そして、同じく当該特定事項が新たに特定される同請求項10は、同請求項1~8を引用する同請求項9を引用するものであるから、当該特定事項を含まない同請求項1と、含む同請求項3~5とを共に間接的に引用している。 そうすると、同請求項10が「さらに備え」るとする「前記検体センサのセンシング層上に形成された膜層」は、同請求項3~5が既に備える「膜層」に追加するものでも、「膜層」を備えない同請求項1の構成に新規に備えるものでもありうる、すなわち、同請求項3~5が既に備える「膜層」とは別のものであると解される。 したがって、本件補正後の請求項8についての補正は、第1補正クレームの請求項10において「さらに備え」る「膜層」が同請求項3~5で特定される「膜層」とは別の「膜層」である点を、拒絶理由の指摘に応じて明確化したものということができるから、特許法17条の2第5項4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものと認められる。 (2)新規事項について ア 本件補正後の請求項8についての補正 本件補正後の請求項8は同請求項1を引用するものであり、同請求項1は構成Gとして「前記導電層上に形成された前記センシング層上の領域にわたって形成された膜」なる構成を備えていることから、上記(1)ウでも検討したとおり、同請求項8の「第2の膜」は同請求項1の「膜」とは別の要素であることが明らかである。 そして、「前記導電層上に形成された前記センシング層上の領域にわたって形成された膜(層)」が2層設けられる例は、例えば当初明細書等の【0087】~【0088】、【図9】に、「作用電極904aのセンシング要素906上」の「第1の膜層916」と、その上方を含む「センサ尾部の残りの表面領域を覆う第2の膜層918」が示されており、当該補正は当初明細書等にその根拠を見出すことができるといえる。 イ 構成Gの根拠記載について 本件補正後の請求項1に構成Gとして加入された「前記システムは、前記導電層上に形成された前記センシング層上の領域にわたって形成された膜をさらに備え」るとの特定事項は、本件補正により削除された第1補正クレームの請求項3の「前記検体センサのセンシング層上に形成された膜層をさらに備えた」なる記載、及び本件出願の願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)のうち例えば【0087】の「検体のセンシング層への拡散または流束速度を調節するために、図9Cに示すように、第1の膜層916が、作用電極904aのセンシング要素906上に単独で提供されうる。」なる記載などにその根拠を見いだすことができる。 ウ 構成Hの根拠記載について 本件補正後の請求項1に構成Hとして加入された「前記センシング層上の前記領域にわたって形成された前記膜は、前記較正パラメータが対応する、実質的に一定の厚さを有する」との特定事項は、文章構造に乱れがありその意味内容が必ずしも明確ではない。 そのうち、「前記センシング層上の前記領域にわたって形成された前記膜は、・・・実質的に一定の厚さを有する」こと」(以下、「事項H1」という。)、即ちセンシング層上に形成された膜の厚さに関しては、当初明細書等の【0012】に「実施の形態は、製造ロット内および/または製造ロット間の、流束限界膜(flux limiting membrane)の厚さにおける極めて低い変動性/高い正確さを有するインビボ検体モニタリング装置を含む。製造技術および方法は、センサの製造ロットまたはバッチ内のセンサ間の感度の変動係数(CV)が約5%以下、例えば3%以下、例えば約2%以下、例えば約1%以下になるように、制御された、実質的に均一な膜厚を有する」、同【0087】~【0088】には「・・・ある特定の実施の形態では、検体のセンシング層への拡散または流束速度を調節するために、図9Cに示すように、第1の膜層916が、作用電極904aのセンシング要素906上に単独で提供されうる・・・それがセンサの活性領域への検体の流束を制限するように作用し、したがって、センサ感度に寄与することから、膜916の厚さの調節は重要である。すなわち、再現可能な検体センサの製造は、実質的に一定の膜厚を含む。」、同【0090】に「ある特定の実施の形態では、他の検出器または測定装置またはシステムを使用して、施用した膜の厚さをモニタリングし、工程パラメータを調整して、センサロットにわたる厚さ変動性の低さを確実にしてもよい。」などの記載がある。 そうすると、構成Hの「実質的に一定の厚さ」における「一定」が膜厚の個体間の一定(均一)性を指す限りにおいて、事項H1につき当初明細書等にその根拠を見出すことができるといえる。 一方、「前記センシング層上の前記領域にわたって形成された前記膜」の「厚さ」に「前記較正パラメータが対応する」こと(以下、「事項H2」という。)、については、当初明細書等に明示的に対応する記載がない。 前記当初明細書等の【0012】、【0087】~【0088】、【0090】の記載は、センサの感度とセンサ上の膜の厚さとが関係し得ることを定性的に示唆するにとどまり、センサの較正パラメータを該膜厚に対応させる、即ちセンサの電気的出力を濃度値等の物理量に換算する較正パラメータを該膜厚の関数とすることまで意味するとはいえない。 よって、事項H2は、センサの感度と前記膜厚とが関係し得るものであるとの意味である限りにおいて、当初明細書等にその根拠を見出しうるといえる。 エ まとめ 以上ア~ウのとおりであるから、本件補正は、当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入するものであるとまではいえない。 3.本件補正発明の独立特許要件についての検討 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明は、その請求項1~11に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 3-1.進歩性について (1)本件補正発明について 本件補正発明は、分説も含め上記1.(1)に示したとおりのものである。 (2)引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2004-520898号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は特に引用した箇所に対し当審にて付した。以下同じ。)。 ア 明細書の記載事項 「【0031】 検体センサ・システム本発明の検体監視システムはさまざまな条件の下で利用することが可能である。検体監視システムで使用されるセンサおよび他のユニットの具体的な構成は例えば、意図する検体監視システムの用途、および検体監視システムが動作する条件によって決まる。検体監視システムの一実施形態は、患者または使用者に埋め込むように構成されたセンサを含む。センサの埋込みは例えば、血液中の検体のレベルを直接に検査するために、動脈または静脈系に実施することができる。あるいは、間質液中の検体のレベルを決定するために、センサを間質組織に埋め込むことができる。この間質液中の検体のレベルを、血液または他の流体中の検体のレベルに相関させ、かつ/または血液または他の流体中の検体のレベルに変換することができる。埋込み部位および埋込みの深さが、センサの具体的な形状、構成要素および構成に影響する場合がある。場合によっては、センサの埋込みの深さを制限するために皮下埋込みが好ましい場合がある。他の流体中の検体のレベルを決定するために、センサを体の他の領域に埋め込むこともできる。本発明の検体監視システムで使用するのに適したセンサの例が、本願明細書に援用する米国特許出願番号09/034,372に記載されている。 【0032】 埋込み式センサ42、具体的には皮下埋込み式センサとともに使用される検体監視システム40の一実施形態を図1のブロック図に示す。検体監視システム40は少なくともその一部分を患者(例えば皮下、静脈または動脈)に埋め込むように構成されたセンサ42と、センサ制御ユニット44とを含む。センサ42は、患者の皮膚に一般に取り付けられるセンサ制御ユニット44に結合される。センサ制御ユニット44はセンサ42を操作する。操作には例えば、センサ42の電極間に電圧を供給し、センサ42からの信号を収集することが含まれる。センサ制御ユニット44はセンサ42からの信号を評価し、かつ/または、随意的な1台以上の受信/表示ユニット46,48に評価のため信号を送信することができる。センサ制御ユニット44および/または受信/表示ユニット46,48は現在の検体のレベルを表示し、または他の方法で知らせることができる。さらに、センサ制御ユニット44および/または受信/表示ユニット46,48は、例えば可聴または視覚警報、あるいは他の感覚刺激警報によって、検体のレベルが閾値に達したこと、または閾値に近いことを患者に指示することができる。・・・。 【0033】 センサ 図2に示すように、センサ42は、基板50の表面に形成された少なくとも1つの作用電極58を含む。センサ42はさらに、少なくとも1つの対電極60(または対電極/参照電極)、および/または少なくとも1つの参照電極62(図8参照)を有してもよい。対電極60および/または参照電極62は基板50の表面に形成することができ、あるいは別個のユニットとすることができる。例えば、対電極および/または参照電極を、やはり患者に埋め込まれる第2の基板の表面に形成することができ、あるいは埋込み可能センサの一部の実施形態では、少なくとも1つの作用電極を患者に埋め込み、対電極および/または参照電極は患者の皮膚の表面に配置することができる。皮膚表面の対電極および/または参照電極を埋込み式作用電極とともに使用することは、本願明細書に援用する米国特許第5593852号に記載されている。」 「【0036】 後に説明するが、電極58,60,62および検出層64の他にセンサ42はさらに、温度プローブ66(図6および8参照)、質量輸送制限層74(図9参照)、生体適合層75(図9参照)、および/または随意的に他の構成要素を有してもよい。これらの個別要素はそれぞれ、後に論じるように、センサ42の機能を強化し、かつ/またはセンサ42に由来する。」 「【0043】 少なくとも一部の実施形態では基板50が、センサ42の全長に沿って均一な寸法を有するが、他の実施形態では、図2に示すように基板50が、幅53および55が異なる遠位端67および近位端65を有する。これらの実施形態では、基板50の遠位端67が相対的に狭い幅53を有することができる。皮下組織または患者の体内の他の部分に埋込み式センサ42では、基板50の遠位端67の幅53を狭くすることによって、センサ42の埋込みを容易にすることができる。多くの場合、センサ42の幅が狭いほど、センサの埋込み中およびその後に患者が感じる痛みは小さい。」 「【0061】 作用電極58および対電極60(別に参照電極を使用する場合)は多くの場合に、炭素などの導電材料56を使用して作られる。・・・一般に、作用電極58の作用表面51は、検体を含む流体と接触する(例えば患者に埋め込まれる)導電性トレース52の少なくとも一部分である。」 「【0086】 他の実施形態では、検出層64を作用電極58aの表面に直接には付着させない。その代わりに、図4Aに示すように、検出層64を作用電極58aから間隔をあけて配置し、分離層61によって作用電極58aから分離する。分離層61は一般に、1つ以上の膜またはフィルムを含む。検出層64から作用電極58aを分離する他に、分離層61は、後に説明する質量輸送制限層または干渉剤(interferent)排除層の働きをすることができる。」 【0087】 作用電極58aと直接に接触していない検出層64は一般に、検体の反応を促進する触媒を含む。しかし、検出層64は作用電極58から間隔をあけて配置されているので、この検出層64は一般に、作用電極58aから検体に電子を直接に移動させる電子移動剤を含まない。このタイプのセンサの一例が、検出層64に酵素(例えばそれぞれグルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼ)を含むグルコースまたは乳酸センサである。グルコースまたは乳酸は、酵素の存在下で第2の化合物(例えば酸素)と反応する。第2の化合物は次いで、電極で電解酸化または電解還元される。電極での信号の変化は流体中の第2の化合物のレベルの変化を指示し、グルコースまたは乳酸のレベルの変化に比例し、したがって検体のレベルに相関する。 【0088】他の実施形態では、図4Bに示すように、2つの検出層63,64が使用される。2つの検出層63,64はそれぞれ、作用電極58aの表面に、または作用電極58aの近くに独立に形成され得る。一方の検出層64は一般に作用電極58aから間隔をあけて配置される。ただしこれは必須ではない。例えば、この検出層64は、検体の反応を触媒して生成化合物を形成させる触媒を含んでもよい。生成化合物は次いで、第2の検出層63で電解される。検出層63は、作用電極58aと生成化合物の間で電子を移動させる電子移動剤、および/または生成化合物の反応を触媒して作用電極58aのところで信号を発生させる第2の触媒を含んでもよい。 【0089】例えば、グルコースまたは乳酸センサは、作用電極から間隔をあけて配置され、酵素、例えば、グルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼを含む第1の検出層64を有してもよい。適切な酵素の存在下でのグルコースまたは乳酸を反応させて過酸化水素を形成する。第2の検出層63は作用電極58aの上に直接に配置され、過酸化水素に応答して電極のところに信号を発生させるペルオキシダーゼ酵素および電子移動剤を含む。次いで、センサによって指示された過酸化水素のレベルをグルコースまたは乳酸のレベルに相関させる。グルコースまたは乳酸オキシダーゼとペルオキシダーゼの両方を付着させた単一の検出層を使用して、同じように動作する他のセンサを製作することが可能である。・・・。」 「【0136】 質量輸送制限層 作用電極58の周囲の領域への検体、例えばグルコースまたは乳酸の質量輸送の速度を低減させる拡散制限障壁として作用する質量輸送制限層74をセンサに含めてもよい。検体の拡散を制限することによって、作用電極58の近くの検体の定常状態濃度(これは体液または試料流体中の検体の濃度に比例する)を低減することが可能である。これによって、正確に測定し得る検体濃度の上限が広がり、さらに、検体のレベルとともに電流がほぼ直線的に増大する範囲を広げることができる。」 「【0143】 センサの寿命 センサ42は、生体内検体監視装置、特に埋込み式検体監視装置の交換可能な構成要素として設計することができる。センサ42は一般に数日間の動作が可能である。動作期間が少なくとも1日、より好ましくは少なくとも3日、最も好ましくは少なくとも1週間であることが好ましい。その後、センサ42は取り外し、新しいセンサと交換することが可能である。例えば電極の汚損、あるいは電子移動剤または触媒の浸出によって、センサ42の寿命は短縮される。センサ42の耐用寿命のこれらの制限条件はそれぞれ、先に説明した生体適合層75または非浸出性の電子移動剤および触媒の使用によって克服することが可能である。」 「【0174】 基板260上に送信器263が配置される上述の実施形態を使用する患者は、センサの埋込み可能部分を皮膚を通して挿入し、ユニットを皮膚に固定するだけで、この装置を利用することができる。患者は、センサを皮膚表面取付けセンサ制御ユニット(例えば図17の皮膚表面取付けセンサ制御ユニット44)に接続する必要がない。したがって、装置全体が使い捨て可能となり、このことは、装置の使用者が装置を単一のユニットとして購入し、例えば1日から14日、またはそれ以上の使用期間の後にやはり単一のユニットとして廃棄することができることを意味する。」 「【0199】 オンスキン制御ユニットの電子回路 皮膚表面取付けセンサ制御ユニット44は一般に、センサ42および検体監視装置システム40を動作させる電子構成要素の少なくとも一部分を含む。オンスキン制御ユニット44の電子回路の一実施形態を図18Aのブロック図に示す。皮膚表面取付けセンサ制御ユニット44の電子構成要素は一般に、オンスキン制御ユニット44およびセンサ42を動作させるための電源95と、センサ42から信号を取得し、センサ42を動作させるためのセンサ回路97と、センサ信号を所望の形式に変換する測定回路96と、少なくともセンサ回路97および/または測定回路96から信号を取得し、随意的な送信器98に信号を供給する処理回路109とを含む。一部の実施形態では、処理回路109がさらに、センサ42からの信号を部分的にまたは完全に評価し、その結果得られたデータを随意的な送信器98に送り、かつ/または検体のレベルが閾値を上回った場合に随意的な警報システム94(図18B参照)を作動することができる。処理回路109は多くの場合にディジタル論理回路を含む。」 「【0217】 センサ回路97および随意的な温度プローブ回路からの出力は測定回路96に結合される。測定回路96は、センサ回路97および随意的な温度プローブ回路99から信号を取得し、少なくとも一部の実施形態では、例えばディジタル回路が読むことが可能な形態の出力データを供給する。測定回路96からの信号は処理回路109に送られる。処理回路109は随意的な送信器98にデータを供給することができる。処理回路109は、以下の1つ以上の機能を有することができる:1)測定回路96からの信号を送信器98に転送し、2)測定回路96からの信号をデータ記憶回路102に転送し、3)(例えば測定回路96によって実施されなかったときに)信号の情報を含んだ特性を、例えば電流-電圧変換器、電流-周波数変換器または電圧-電流変換器を使用して、ある特性から別の特性に変換し、4)較正データおよび/または温度プローブ回路99からの出力を使用してセンサ回路97からの信号を修正し、5)間質液中の検体のレベルを決定し、6)間質液から得られたセンサ信号に基づいて血中の検体のレベルを決定し、7)検体のレベル、検体の変化速度、および/または検体の変化の加速度が1つ以上の閾値を上回り、または閾値に達しているかどうかを判定し、8)閾値に達し、または閾値を上回っている場合に、警報を作動させ、9)一連のセンサ信号に基づいて検体のレベルの傾向を評価し、10)薬剤の用量を決定し、11)例えば、信号の平均値を算出し、または複数の作用電極58からの読みを比較するこによって、ノイズおよび/または誤差を低減する。」 「【0245】 較正データはさまざまな方法で取得することができる。例えば、較正データは単純に、受信器99を使用して皮膚表面取付けセンサ制御ユニット44に入力することが可能な、工場決定の較正測定値とすることができ、あるいは、皮膚表面取付けセンサ制御ユニット44自体の較正データ記憶ユニット100に記憶することができる(この場合には受信器99が必要ない場合がある)。較正データ記憶ユニット100は例えば、読取り可能なメモリ回路または読取り/書込み可能なメモリ回路とすることができる。」 イ 図面の記載事項 (ア) 図2は次のとおりである。 [図:0001380597000001.jpg] (イ)図4Bは次のとおりである。 [図:0001380597000002.jpg] (ウ)図9は次のとおりである。 [図:0001380597000003.jpg] ウ 認定事項 (ア)図2からは、【0033】、【0043】の記載事項を参照すると、平面視でセンサ42の基板50は、近位端65を上端とする略長方形の相対的に幅広の近位側部分と、遠位端67を下端とし、近位端側部分の幅55より狭い幅53を有する略長方形状の遠位端側部分とからなり、遠位端側部分の遠位端67近傍表面に作用電極58及び対電極/参照電極60が形成されていることを看取できる。 (イ)図4Bからは、【0036】、【0086】、【0088】の記載事項を参照すると、基板50上の凹部に作用電極58a、対電極60、及び参照電極62が形成され、その上に接して前記各電極にわたって分離層61が設けられ、作用電極58a表面上の分離層61下面凹部内に第2の検出層63が形成され、分離層61の前記作用電極58a上方部分には検出層64が形成されることを看取できる。 (ウ)図9からは、【0061】、【0136】の記載事項を参照すると、作用電極58の作用表面51の上方を含め、遠位端側部分の遠位端近傍表裏を取り巻くように質量輸送制限層74が形成されることを看取できる。 エ 引用発明 上記ア~ウの記載事項、認定事項から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる(構成単位冒頭の「a」などは分説記号であり、以下、「構成a」などという。また、構成単位末尾の括弧内には、引用箇所を示した。)。 「a センサおよびセンサ制御ユニットを含む検体監視システムであって、(【0032】) b 前記センサは、間質液中の検体のレベルを決定するために、患者の間質組織に例えば1日~1週間埋め込んで動作させる幅狭の遠位端側部分と、幅広の近位端側部分とを有する基板と、(【0031】、【0032】、【0043】、【0143】、図2、認定事項ウ(ア)) c 基板の遠位端側部分の遠位端近傍表面に形成された作用電極と、(【0033】、【0034】、図2、認定事項ウ(ア)) d 基板の遠位端側部分の作用電極上に接して、隣接する対電極や参照電極にわたって膜またはフィルムからなる分離層が設けられ、分離層下面の作用電極表面上の部分には凹部が形成され、(【0086】、【0088】、図4B、認定事項ウ(イ)) e 前記分離層の凹部内の作用電極表面には第2の検出層が設けられ、第2の検出層の上方、分離層の表面には検出層が設けられ、第2の検出層は、検出層が検体の反応を触媒して生成した生成化合物の反応を触媒して作用電極に例えばグルコースや乳酸のレベルの変化に相関する信号を発生させるものであり、(【0087】、【0088】、認定事項ウ(イ)) f 前記センサ制御ユニットは、センサの電極間に電圧を供給することでセンサからの信号を収集し、較正データを使用して信号を修正し、間質液中の検体のレベルを決定し、(【0032】、【0199】、【0217】) g 検体監視システムは、作用電極の作用表面の上方を含め、検出層とは別に質量輸送制限層を、遠位端部分の遠位端近傍表裏を取り巻くようにさらに形成した、(【0036】、【0061】、【0136】、認定事項ウ(ウ)) i 検体監視システム。」 (3)引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2007/070486号(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(ページ番号、行数は引用文献2の欄外記載による。)。 ア 明細書の記載事項 (ア)「Embodiments of the invention disclosed herein provide elements for use in analyte sensors of the type used, for example, in subcutaneous or transcutaneous monitoring of blood glucose levels in a diabetic patient. Embodiments of the invention disclosed herein further provide analyte sensors of the type used, for example, in a variety of clinical contexts such as with dialysis and/or extracorporeal membrane oxygenation protocols. More specifically, the disclosure provided herein teaches optimized analyte sensor designs and methods for making and using such sensors.」(2頁24-30行) (当審訳:「本明細書で開示する本発明の実施形態は、例えば、糖尿病患者の血中グルコース濃度の皮下または経皮モニタリングに用いられるタイプの被分析物質センサで使用するための素子を提供する。本明細書で開示する本発明の実施形態は、例えば、透析および/または体外膜型人工肺プロトコールなどの様々な臨床関連で用いられるタイプの被分析物質センサをさらに提供する。より具体的には、本明細書で提供する開示は、最適化された被分析物質センサ設計、およびそうしたセンサを作製しかつ使用するための方法を教示する。」) (イ)「Typical embodiments of the invention include an analyte sensing layer disposed on the base layer 102. In an illustrative embodiment as shown in FIG. 2 the analyte sensing layer comprises a conductive layer 104 which is disposed on insulating base layer 102. Typically the conductive layer 104 comprises one or more electrodes.・・・An electrically insulating protective cover layer 106 such as a polymer coating is typically disposed on portions of the conductive layer 104.」(47頁15-22行) (当審訳:「本発明の典型的な実施形態は、ベース層102上に配置された被分析物質検知層を含む。例示的な実施形態では、図2に示すように、被分析物質検知層は絶縁性ベース層102上に配置された導電層104を含む。一般に、導電層104は1つ以上の電極を含む。・・・ポリマーコーティングなどの電気絶縁性保護被覆層106は一般に、導電層104の一部に配置されている。」) (ウ)「A analyte sensing layer 110 is typically disposed on one or more of die exposed electrodes of the conductive layer 104 through the apertures 108.」(48頁15-16行) (当審訳:「被分析物質検知層110は一般に、アパーチャ108を介して導電層104の1つ以上の曝露電極上に配置される。」) (エ)「The electrochemical sensors of the invention include an analyte modulating constituent disposed on the sensor (see, e.g. element 112 in Figure 2). The term "analyte modulating constituent" is used herein according to art accepted terminology and refers to a constituent that typically forms a membrane on the sensor that operates to modulate the diffusion of one or more analytes, such as glucose, through the constituent. In certain embodiments of the invention, the analyte modulating constituent is an analyte limiting membrane -which operates to prevent or restrict the diffusion of one or more analytes, such as glucose, through the constituents. In other embodiments of the invention, the analyte modulating constituent operates to facilitate the diffusion of one or more analytes, through the constituents. Optionally such analyte modulating constituents can be formed to prevent or restrict the diffusion of one type of molecule through the constituent (e.g. glucose), while at the same time allowing or even facilitating the diffusion of other types of molecules through the constituent (e.g. O2).」(30頁18-30行) (当審訳:「本発明の電気化学的センサは、センサ上に配置された被分析物質調節構成要素を含む(例えば、図2の構成要素112を参照されたい)。「被分析物質調節構成要素」という用語は本明細書では、当業界で受け入れられている専門用語に従って用いられ、構成要素を通してのグルコースなどの1つ以上の被分析物質の拡散を調節するように動作するセンサ上に膜を形成する構成要素を指す。本発明の特定の実施形態では、被分析物質調節構成要素は、構成要素を通してのグルコースなどの1つ以上の被分析物質の拡散を阻止するかまたは制限するように動作する被分析物質制限膜である。本発明の他の実施形態では、被分析物質調節構成要素は、構成要素を通しての1つ以上の被分析物質の拡散を容易にするように動作する。任意選択で、そうした被分析物質調節構成要素は、構成要素を通しての1つの種類の分子(例えば、グルコース)の拡散を阻止するかまたは制限するように形成させ、同時に構成要素を通しての他のタイプの分子(例えば、O2)の拡散を可能にするかさらには容易にするように形成させることができる。」) (オ)「Some embodiments of the present invention include an analyte modulating layer deposited over the enzyme- containing layer. In addition to its use in modulating the amount of analyte(s) that contacts the active sensor surface, by utilizing an analyte limiting membrane layer, the problem of sensor fouling by extraneous materials is also obviated. As is known in the art, the thickness of the analyte modulating membrane layer can influence the amount of analyte that reaches the active enzyme. Consequently, its application is typically carried out under defined processing conditions, and its dimensional thickness is closely controlled. As in the microfabrication of the underlying layers can be a factor which affects close dimensional control over the analyte modulating membrane layer is the composition of the analyte limiting membrane layer material itself. In this regard, it has been discovered that several types of copolymers, for example, a copolymer of a siloxane and a nonsiloxane moiety, are particularly useful. These materials can be microdispensed or spin-coated to a controlled thickness.」(70頁21行-71頁4行) (当審訳:「本発明のいくつかの実施形態は、酵素含有層上に配置された被分析物質調節層を含む。活性センサ表面と接触する被分析物質の量の調節におけるその使用に加えて、被分析物質制限膜層を用いることによっても、外部からの物質によるセンサ汚染の問題は未然に防がれる。当業界で周知のように、被分析物質調節膜層の厚さは、活性酵素まで到達する被分析物質の量に影響を及ぼすことができる。したがって、その施用は一般に、規定された加工条件の下で実施され、その厚みは厳密に制御される。下位層の微細加工においてであるので、被分析物質調節膜層に対する厳密な寸法制御に影響を及ぼすことができる要素は、被分析物質制限膜層材料の組成物自体である。この関連では、複数の種類のコポリマー、例えばシロキサンと非シロキサン部分のコポリマーが特に有用であることが発見されている。これらの材料は、微小分注するかまたはスピンコートして制御された厚さにすることができる。」 イ 図面の記載事項 図2Aは次のとおりである。 [図:0001380597000004.jpg] (4)引用文献3に記載された事項 本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2007/100717号(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている(ページ番号、行数は引用文献3の欄外記載による。)。 「 An intravenous amperometric biosensor may be formed using the EVA membrane as a flux limiting layer to at least partially cover the surface of an enzyme electrode. The biosensor may be formed on a flex circuit substrate having reference, counter, and working electrodes mounted thereon, wherein one working electrode may be the enzyme-bearing electrode. In one embodiment, the biosensor may be a glucose sensor, the working electrode may be at least partially coated with glucose oxidase, and an EVA membrane may be formed on the working electrode to provide a flux limiting barrier that selectively allows diffusion of oxygen and glucose from blood to the glucose oxidase. Adhesive properties of EVA mechanically seal the glucose oxidase to the electrode and the electrode to the substrate to improve mechanical integrity during intravenous insertion. The composition of the EVA membrane may be optimized such that, when the biosensor is located intravenously with the working electrode energized, the current output of the working electrode is a linear function of blood glucose concentration. A related method is also disclosed for forming a flux limiting layer on an enzyme electrode that is bonded to a substrate of an amperometric biosensor. The method may include dissolving EVA in a solvent such as paraxylene, applying a layer of the dissolved EVA to an area of the substrate that includes at least a portion of the enzyme electrode, and curing the applied layer. The EVA may be dissolved in paraxylene to facilitate application by spray-coating, and the thickness and concentration of the EVA membrane may be optimized to promote a linear output of electrode current as a function of blood glucose concentration. 」(3頁17行-4頁14行) (当審訳:「静脈内電流測定バイオセンサは、EVA膜を流束制限層として使用して、酵素電極の表面を少なくとも部分的に被覆することによって形成されてもよい。バイオセンサは、フレックス回路基板の上に形成されてもよく、そのフレックス回路基板の上には参照電極、対極、および作用電極が装着され、1つの作用電極は酵素含有電極であってもよい。一実施形態において、バイオセンサはグルコースセンサであってもよく、作用電極はグルコースオキシダーゼで少なくとも部分的に被膜されてもよく、EVA膜は作用電極の上に形成されてもよく、血液からグルコースオキシダーゼへの酸素およびグルコースの拡散を選択的に可能にする流束制限障壁を提供するようにする。EVAの接着性は、グルコースオキシダーゼを電極に対して機械的に封止し、また、電極を基板に対して機械的に封止することによって、静脈内挿入中の機械的完全性が改善される。EVA膜の組成は、作用電極が励起されている状態でバイオセンサが静脈の中に位置する場合に、作用電極の出力電力が血中グルコース濃度の線形関数であるように、最適化されてもよい。 また、電流測定バイオセンサの基板に結合された酵素電極の上に、流束制限層を形成するための関連方法も開示される。その方法は、パラキシレンなどの溶媒中にEVAを溶解するステップと、溶解されたEVAを、酵素電極の少なくとも一部を含む基板の範囲に塗布するステップと、塗布された層を硬化するステップと、を含んでもよい。EVAは、溶射によって塗布することを容易にするためにパラキシレンに溶解されてもよく、EVA膜の厚さと濃度は、血中グルコース濃度の関数として、電極電流の線形出力を促進するように最適化されてもよい。」) (5)引用発明と本件補正発明との対比 ア 構成aの「センサ」、「センサ制御ユニット」、「検体監視システム」はそれぞれ、構成Aの「検体センサ」、「センサ制御装置」、「システム」に相当する。 イ 構成bの「遠位端側部分」は構成Bの「遠位部」に相当する。 また、構成bで「センサ」の「遠位端側部分」は「間質液中の検体のレベルを決定するために、患者の間質組織に例えば1日~1週間埋め込んで動作させる」のであるから、該「遠位端側部分」は患者の間質組織の間質液と接触することが明らかである。さらに、ここでの「患者の間質組織に」「埋め込んで動作させる」「例えば1日~1週間」なる期間は、構成Bの検体センサの「使用期間」に相当するといえる。 よって、構成bの「間質液中の検体のレベルを決定するために、患者の間質組織に例えば1日~1週間埋め込んで動作させる幅狭の遠位端側部分」は、構成Bの「検体センサの使用期間中の間質液との流体接触用に構成された遠位部」に相当するといえる。 ウ 構成cの「作用電極」は構成Cの「導電層」に相当する。 エ(ア)構成dの「分離層」は複数の電極上に接しつつそれらにわたって設けられている膜またはフィルムであるから、導電体でないこと、すなわち誘電体であることが明らかである。よって、構成dの「分離層」は構成Dの「誘電体層」に相当する。 また、構成dの分離層下面には、構成eで特定される第2の検出層が設けられる凹部が形成されている。構成Dにおける「空隙」とは「すきま」の意味であるから(「デジタル大辞泉」ほか。)、構成dにおいて、作用電極と分離層下面の凹部との間に形成された隙間は、構成Dの「間隙」に相当するといえる。 よって、構成dは構成Dと一致する。 (イ)ただ、国際出願日における本願の国際特許出願明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下「本願翻訳文等」という。)では、「空隙」について、【0074】及び図8において、電極上で誘電体層808に形成された上下に貫通した穴状の構造として例示されている。 仮に、構成Dにおける「空隙」が、前記明細書中に例示されたような、誘電体層の上下に貫通した穴状の構造のみ指すと限定解釈されるのであれば、引用発明で分離層の作用電極上に形成された凹部とは形態において相違することになる。 よって、ここでは、念のため、構成dの「凹部」は、構成Dの「空隙」の実施例に例示される形態とは相違する点を、一応の相違点として挙げることとする。 オ 構成eの「第2の検出層」が「検出層が検体の反応を触媒して生成した生成化合物の反応を触媒して作用電極に例えばグルコースや乳酸のレベルの変化に相関する信号を発生させる」ことは、構成Eの「検体センサの使用期間中にモニターされる検体レベルに対応する1つ以上の信号を検体センサが発生するように1つ以上のパラメータを有する」こと、すなわち「検体センサ活性領域を画成」することに相当し、構成eの「第2の検出層」が「前記分離層の凹部内の作用電極表面に」「設けられ」ることは、構成Eの「前記空隙内で前記導電層上に形成され」ることに相当する。 よって、構成eの「第2の検出層」は構成Eの「センシング層」に相当するといえる。 カ 構成fの「センサからの信号」、「較正データ」、「間質液中の検体のレベル」はそれぞれ、較正fの「前記発生される1以上の信号」、「較正パラメータ」、「検体レベル」に相当する。 キ 構成gの「作用電極の作用表面の上方を含め、検出層とは別に、遠位端部分の遠位端近傍表裏を取り巻くようにさらに形成」すること、該形成される「質量輸送制限層」は、それぞれ構成Gの「前記導電層上に形成された前記センシング層上の領域にわたって形成された」、「膜」に相当する。 (6)一致点・相違点 上記(5)によれば、本件補正発明と引用発明とは、下記アの点で一致し、イ、ウの点で相違する。 ア 一致点 「A 検体センサおよびセンサ制御装置を含むシステムであって、 B 前記検体センサが、 検体センサの使用期間中の間質液との流体接触用に構成された遠位部を有する基板; C 前記基板の遠位部上に形成された導電層; D 前記遠位部上に位置する空隙を含む、前記導電層の上に形成された誘電体層; E 検体センサの使用期間中にモニターされる検体レベルに対応する1つ以上の信号を検体センサが発生するように1つ以上のパラメータを有する検体センサ活性領域を画成するために前記空隙内で前記導電層上に形成されたセンシング層を備え、 F 前記センサ制御装置は、前記発生される1つ以上の信号を、該信号に適用される較正パラメータに基づき、モニターされる検体レベルと関連付け、 G 前記システムは、前記導電層上に形成された前記センシング層上の領域にわたって形成された膜をさらに備えた、 I システム。」 イ 相違点1(構成H) 本件補正発明は構成Hとして「前記センシング層上の前記領域にわたって形成された前記膜は、前記較正パラメータが対応する、実質的に一定の厚さを有する」との特定事項を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を明示的に備えない点。 ウ 一応の相違点2(構成D) 本件補正発明は構成Dとして「前記導電層の上に形成された誘電体層」が「前記遠位部上に位置する空隙を含む」との特定事項を備えるのに対し、引用発明の構成dでは、構成Dの「誘電体層」に相当する「膜またはフィルムからなる分離層」の「下面の作用電極表面上の部分には凹部が形成され」るものの、構成Dの「空隙」が誘電体層を上下に貫通する穴状のものとして例示されるのに対し、構成dの「凹部」は分離層の下面の作用電極表面上の部分に設けられた凹部であって、分離層を上下に貫通はしていない点。 (7)判断 上記各相違点について検討する。 ア 相違点1について (ア)引用発明における「質量輸送制限層」は、明細書【0136】において「検体の拡散を制限することによって、作用電極58の近くの検体の定常状態濃度(これは体液または試料流体中の検体の濃度に比例する)を低減することが可能である。これによって、正確に測定し得る検体濃度の上限が広がり、さらに、検体のレベルとともに電流がほぼ直線的に増大する範囲を広げることができる。」と説明されているものであり、センサ外の間質液中のグルコース等の被検出物質がセンサ内の検出層や電極近傍に進入する量を制限することで、間質液中で被検物質がセンサの線形検出範囲を超える高濃度であっても、検出層近傍ではセンサが被検物質濃度に対し線形の応答が可能な程度に濃度が抑制されるようにするための層(膜)であり、その結果、センサの線形応答範囲、即ち可測定濃度範囲を、高濃度域まで拡張するものであることが理解できる。 (イ)そして、ここでいう「検体のレベルとともに電流がほぼ直線的に増大する」とは、センサの電圧や電流等の出力を、被検物質の濃度に換算するための較正曲線(直線)を指し、該直線(曲線)の切片や傾き等の諸元が、本件補正発明の較正パラメータに相当する。 (ウ)また、「質量輸送制限層」が被検物質の進入(透過)を制限するものであれば、その機序如何によらず、その厚みが透過量に関係することは自明であるから、製造ムラにより当該厚みに個体差があったり、一つのセンサ内で部位による厚みの差があったりした場合、較正パラメータが影響を受け、個別に調整が必要になること、逆に、工場において個体間でも一個体内でも均一材質均一厚の「質量輸送制限層」が製造できるのであれば、当該層の作用に関しては一定の較正パラメータが適用できるようになるであろうことは、いずれも自明であるといえる。 (エ)さらに、この種の体内埋込型のセンサに対し、「質量輸送制限層」に該当するグルコース制限膜などの膜層を形成することは、上記(3)アで抜記したように、引用文献2にも記載されたとおり周知である。そして、当該膜層の厚さに関し、上記(3)ア(オ)で「当業界で周知のように、被分析物質調節膜層の厚さは、活性酵素まで到達する被分析物質の量に影響を及ぼすことができる。したがって、その施用は一般に、規定された加工条件の下で実施され、その厚みは厳密に制御される。・・・これらの材料は、微小分注するかまたはスピンコートして制御された厚さにすることができる。」と記載されており、ここでいう「制御された厚さ」は予め定められた厚さであって、部位による厚さの相違の許容量も含め「制御」されることを意味することが明らかである。このことは、当該膜層が、厚み制御が容易な「スピンコート」技術を用いて行われることからも裏付けられる。 (オ)さらに、引用文献3にも、上記(4)に抜記したとおり、引用発明と同様のセンサにおいて、「作用電極の上に形成されてもよく、血液からグルコースオキシダーゼへの酸素およびグルコースの拡散を選択的に可能にする流束制限障壁を提供するように」し、「EVA膜の厚さと濃度は、血中グルコース濃度の関数として、電極電流の線形出力を促進するように最適化され」ることが記載されており、「電極電流の線形出力」が、濃度との関係が一定の較正パラメータに沿ったセンサ出力を意味することが明らかであって、それが制限膜の膜厚と関係するとの技術事項、そのために制限膜の厚さを「最適化」する技術事項を読み取ることができる。 (カ)以上のとおりであるから、構成Hの「前記センシング層上の前記領域にわたって形成された前記膜は、・・・実質的に一定の厚さを有する」こと、その「厚さ」(または該「厚さ」を含む「膜」の諸元)に「前記較正パラメータが対応する」ことは、引用発明や引用文献1の記載から自明であり、さらにそのことは引用文献2,3の記載によっても裏付けられ、さらに、仮に引用発明から自明であるとまでいえないとしても、引用文献2,3の記載事項に基づいて、当業者であれば容易に想到し得た事項に過ぎないといえる。 イ 一応の相違点2について (ア)上記3-1.(5)の対比で説示したとおり、構成dの「分離層」は構成Dの「誘電体層」に相当し、構成dの分離層下面には、構成eで特定される第2の検出層が設けられる凹部が形成されており、当該「凹部」は分離層と作用電極表面上とにすきまを生じさせる構造にほかならないところ、「空隙」とは「すきま」の意味であるから(「デジタル大辞泉」ほか。)、構成dの「凹部」は構成Dの「空隙」に相当するといえ、当該相違点2は実質的なものではない。 (イ)仮に、(5)エ(イ)のように、本件補正発明における「空隙」が、前記例示されたような穴状の構造のみ指すと限定解釈されるのであれば、引用発明で分離層の作用電極上に形成された凹部とは相違することになる。 しかし、引用文献2の上記(イ)(ウ)及び図2Aには、引用発明と同様の体内埋込型のセンサにおいて、基板上に設けられた構成Dの「誘電体層」に相当する「ポリマーコーティングなどの電気絶縁性保護被覆層106」の、構成Cの「導電層」に相当する「導電層104」に対応する部分を貫通孔とし、その孔内の空隙に、構成Eの「センシング層」に相当する「被分析物質検知層110」を設けることが記載されている。 引用発明において、分離層の作用電極側に開口した凹部は、そこにセンシング膜が配置される以外特段の目的や作用についての言及を伴わず、これを貫通孔にすることへの特段の阻害要因も見いだせないことに照らせば、センシング層を電極(導電層)上に固定する一様式として、引用発明に対しこの引用文献2に記載された様式を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (ウ)よって、構成Dの「空隙」には、引用発明に相当する構成が少なくとも含まれ、相違点2は実質的な相違点とはいえないし、仮に本件補正発明が実施例に基づいて限定解釈されるべきであるとしても、該実施例の様式での「空隙」は公知の様式であり、当業者にとってその採用は容易になし得たことであるといえる。 ウ 小括 したがって、上記ア~イにおいて検討したように、本件補正発明は、引用発明び引用文献2,3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-2.明確性要件について 本件補正により請求項1に追加された構成Hは「前記センシング層上の前記領域にわたって形成された前記膜は、前記較正パラメータが対応する、実質的に一定の厚さを有する」というものであるが、このうち、「前記較正パラメータが対応する」なる文節が、その前後何れの構成要素を修飾または説明するものであるのか、日本語としての文章構造上不明であって、請求項の記載自体が不明確である結果,発明が不明確となっている。以下詳説する。 構成Hは、前記文節を除くと、「前記センシング層上の前記領域にわたって形成された前記膜は、」「実質的に一定の厚さを有する」となり、文章構造上理解可能であるといえる。 しかし、前記文節部分は、「前記膜」を主語とし、それが「前記較正パラメータが対応する」ものである、との意味であるのか(解釈1)、または、後続の「実質的に一定の厚さ」を有すること、もしくはその「厚さ」自体と「前記較正パラメータが対応する」ことを意味するのか(解釈2)、判断がつかず多義的であり、この点で発明が不明確となっている。 また、解釈1に立った場合、「膜」の諸元のうち何にいかなる「較正パラメータが対応」するのか不明であるし、解釈2に立った場合、較正パラメータが複数個体間の「膜」厚の一定性、一個体の膜の「厚さ」の一定性、いずれと「対応」するのか定まらない。 よって、文章構成を解釈1または解釈2のように理解したとしても、発明の内容は定まらず、また、個々の解釈にも不明確性が存在する。 当該不明確性は、当該「膜」の製造上の諸元の何れに発明が及ぶのかを不明確にするものであるから、特許発明の技術的範囲、すなわち、特許によって付与された独占の範囲が不明となり、第三者に不測の不利益を及ぼすものであるといえる。 以上のとおり、本件補正発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-3.サポート要件違反について (1)構成Hの解釈について 上記3-2.で説示したとおり、構成Hは解釈2の一つとして、一個体の膜の中での「厚さ」の一定性に「較正パラメータが対応」するとの解釈が成り立ち得る。 請求人は審判請求書において、構成Hの加入に関し、「本願発明によれば、センシング層(906)上の領域にわたって形成された膜(916)は、較正パラメータが対応する、実質的に一定の厚さを有するという特徴的構成により、較正パラメータに対応した実質的に一定の厚さの膜により安定したセンサ感度を実現し、インビボ使用時のセンサ較正の必要性を無くすことができるという効果を奏します。」と主張していることから、請求人が構成Hを加入した意図は当該解釈の下でのものと推察される。 (2)本願翻訳文等の関連記載について センサに設ける膜と較正パラメータとの関係については、以下の記載がある(下線は当審にて付与。)。 ア 「【請求項19】 前記検体センサ活性領域の1つ以上の所定の再現可能なパラメータが、検体センサの膜ポリマーの粘度、透過性、厚さまたは組成特性、酵素安定性を含む検体センサの酵素特性、あるいは検体センサの生体適合性のうちの1つ以上に基づく、請求項1記載の検体センサ。」 イ 「【請求項21】 該検体センサが、前記センシング層上に形成された膜層をさらに備え、前記センサ感度が、前記膜層の厚さに反比例し、かつ検体センサ活性領域の面積に比例する、請求項20記載の検体センサ。」 ウ 「【請求項25】 前記検体センサ活性領域の1つ以上の所定の再現可能なパラメータが、検体センサの膜ポリマーの粘度、透過性、厚さまたは組成特性、酵素安定性を含む検体センサの酵素特性、あるいは検体センサの生体適合性のうちの1つ以上に基づく、請求項11記載のシステム。」 エ 「【請求項27】 前記検体センサのセンシング層上に形成された膜層をさらに備え、前記センサ感度が、前記膜層の厚さに反比例し、かつ検体センサ活性領域の面積に比例する、請求項26記載のシステム。」 オ 「【0012】 上述のように、実施の形態は、製造ロット内および/または製造ロット間の、流束限界膜(fluxlimitingmembrane)の厚さにおける極めて低い変動性/高い正確さを有するインビボ検体モニタリング装置を含む。製造技術および方法は、センサの製造ロットまたはバッチ内のセンサ間の感度の変動係数(CV)が約5%以下、例えば3%以下、例えば約2%以下、例えば約1%以下になるように、制御された、実質的に均一な膜厚を有する、センサ作用電極の再現可能な活性センシング領域を提供する。」 カ 「【0088】 それがセンサの活性領域への検体の流束を制限するように作用し、したがって、センサ感度に寄与することから、膜916の厚さの調節は重要である。すなわち、再現可能な検体センサの製造は、実質的に一定の膜厚を含む。・・・ 【0090】 ある特定の実施の形態では、他の検出器または測定装置またはシステムを使用して、施用した膜の厚さをモニタリングし、工程パラメータを調整して、センサロットにわたる厚さ変動性の低さを確実にしてもよい。例えば、検出器または測定装置またはシステムは、測定または検出された情報に基づいて、低い厚さ変動性を維持するように、センサロットに対する調整がなされ、製造の間に各センサロット内の最小限のまたは有意でないセンサ間の変動を生じうるように、膜および/または下地(underlying)電極の1つ以上の厚さを測定、検出、または決定することができる、例えば、レーザー変位検出器、短い波長で操作するものを含めた共焦点レーザー変位検出器、容量検出器、および他の検出器または測定装置から選択して差し支えない。本開示の態様では、膜厚に関する前述の測定または検出は、各センサについて行って差し支えなく、厚さの許容差範囲外にあることが測定または検出された膜厚を有するセンサは(センサ間の変動の耐性基準に基づいて規定または決定されるように)、製造プロセスの間に廃棄、またはインビボ使用に不適切であるとタグ化または通知されうる。」 キ 「【0152】 ある特定の実施の形態では、センサロット内の各センサ(サンプルセンサ以外)は、センサの1つ以上の点における膜厚などの特性を測定または決定するために、非破壊的に試験されて差し支えなく、活性領域の表面積/体積などの物理的特性を含めた他の特性も測定または決定されて差し支えない。このような測定または判定は、例えば、光学スキャナまたは他の適切な測定装置またはシステムを使用して自動的に行われてもよく、決定されたセンサロット内の各センサのセンサ特性は、各センサに与えられた較正パラメータまたはコードの可能な修正のため、サンプルセンサに基づく対応する平均値と比較される。例えば、センサ感度として規定された較正パラメータでは、感度は、膜厚にほぼ反比例し、したがって、例えば、センサとして同一のセンサロットに由来するサンプルセンサの平均膜厚よりもおよそ4%大きい測定された膜厚を有するセンサでは、1つの実施の形態におけるそのセンサに与えられた感度は、サンプリングされたセンサ(sampledsensor)から決定された平均感度を1.04で割った値である。同様に、感度はセンサの活性領域にほぼ比例することから、同一のセンサロットに由来するサンプリングされたセンサの平均活性領域よりおよそ3%低い測定した活性領域を有するセンサでは、そのセンサに与えられた感度は、平均感度に0.97を掛けた値である。与えられた感度は、センサの各試験または測定についての多数の連続的な調整によって、サンプリングされたセンサに由来する平均感度から決定されうる。ある特定の実施の形態では、各センサの試験または測定は、活性なセンシング領域の膜厚および/または表面積または体積に加えて、膜の一貫性または質感の測定をさらに含みうる。」 ク 「【0153】 ある特定の実施の形態では、センサロットの各センサは、例えば、光学または他の適切な測定装置またはシステムを使用して、例えば、限定はしないがセンサの1つ以上の位置における膜厚、膜の一貫性および/または質感、例えば活性領域の幾何学的形状を含めた活性領域の大きさ、表面積、体積、および/または寸法などの特性を決定するために、独立して解析または試験されて差し支えなく、光学的にまたは別の方法で測定されて差し支えなく、各センサの測定パラメータのそれぞれは、データベースまたはストレージ媒体に保存された所定の数値または数値範囲と比較され、ここで、所定の数値または数値範囲は、測定したセンサの測定数値が所定の数値または数値範囲に対応する場合に、センサ特性が、例えば、約5%以内、約3%以内、または約1%以内などの許容される変動係数(CV)以内であるとみなされるように、許容されると考えられる数値または数値範囲に対応する。特定のセンサに与えられた感度は、このように、ロットのサンプリング(すなわち、例えば、感度を決定するためのセンサロット内の各センサのサンプリング)を用いて感度を決定することなく、決定される。あるいは、これらの測定から決定される感度は、例えば、製造の間に検証手順の一環として、センサロットサンプルの平均感度とともに確認されうる。」 (3)構成Hの解釈2が本願翻訳文等に開示されていないこと ア 上記(2)に摘記した各記載のうち、少なくともア~キの記載は、各センサにつき膜の厚さを1つの値で代表させて較正パラメータと関連づけているといえ、その上で、センサロット内またはセンサロット間でのセンサ感度等のセンサ特性の変動幅を抑制すべく、前記1個体1値の膜厚値の、センサロット内またはセンサロット間でばらつきを低減させる趣旨であると理解される。 イ 上記(2)クには、「センサの1つ以上の位置における膜厚、膜の一貫性・・・などの特性を決定」することが記載されている。しかし、この記載も「1つ以上」即ち各センサにつき1つの位置における膜厚を測定することを含んでいる。 また、複数箇所の膜厚が測定された場合であっても、「各センサの測定パラメータのそれぞれは、データベースまたはストレージ媒体に保存された所定の数値または数値範囲と比較され、ここで、所定の数値または数値範囲は、測定したセンサの測定数値が所定の数値または数値範囲に対応する場合に、センサ特性が、例えば、約5%以内、約3%以内、または約1%以内などの許容される変動係数(CV)以内であるとみなされるように、許容されると考えられる数値または数値範囲に対応する」、即ち、測定した各膜厚が所定の数値または数値範囲に対応することでセンサ特性の変動係数が所定値以内となることを担保することが開示されるにとどまり、一つのセンサにおける膜厚が一定か否か、つまり膜厚の「ばらつき」を較正パラメータと関連づける技術思想を読み取ることはできない。 また、当該関連づけが、技術常識や本願翻訳文等の記載から自明のものともいえない。 ウ 以上のとおりであるから、構成Hが審判請求書における請求人の主張のとおり、上記「解釈2」に沿った、センサ一個体について、膜の厚さが一定、すなわちばらつきがない、との技術事項を指すのであるなら、当該技術事項自体、及び当該技術事項によって解決されるべき課題やその作用・効果について本願翻訳文等に開示がないといえる。 そうすると、a)本件補正後の請求項1(の構成H)に記載されている前記技術事項は、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされておらず、b)発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないために、詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになり、また、c)出願時の技術常識に照らしても、該請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるともいえない。 エ よって、本件補正発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.むすび 上記3において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、平成31年3月22日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1~13に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は,上記「第2[理由]1.(2)に本件請求項1として記載したとおりのものである。 2.原査定における拒理の理由 原査定の拒絶の理由のうち進歩性に係る理由2は、本願発明は引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1,2の記載事項は、上記第2の3-1.(2)、(3)に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、本件補正発明の上記構成Fについての一部発明特定事項と、上記構成G、Hのすべてに係る発明特定事項を省いたものである。 一方、上記第2の3-1.(5)~(7)で検討したとおり、本件補正発明と引用発明との相違点は、構成Hに関するものと、本件補正発明を限定解釈した場合における構成D、Eの「空隙」に関する点のみである。 そうすると、前記構成Fの一部と構成G、Hとを省いた本願発明と引用発明との間には、前記本件補正発明を限定解釈した場合における構成D、Eの「空隙」に関する一応の相違点のみが存在する。 しかし、該一応の相違点に係る構成が当業者にとって想到容易であることは、上記第2の3-1.(7)イで説示したとおりである。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、本願優先日前に頒布された引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-016401

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