特許拒絶査定不服審判
2023-022084
腹腔鏡検査における血流及び組織灌流を無染料で視覚化するための方法及びシステム
- 審判番号
- 2023-022084
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-572752
- 請求日
- 2023年12月26日
- 審決日
- 2025年04月21日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】チルドレンズ ナショナル メディカル センター
- 【請求人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 南 宏輔
- 審判官 伊藤 幸仙
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P18 .113-Z (A61B) / P18 .121-Z (A61B) / P18 .537-Z (A61B) / P18 .572-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-572752「腹腔鏡検査における血流及び組織灌流を無染料で視覚化するための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月 2日国際公開、WO2020/006454、令和 3年10月28日国内公表、特表2021-529053〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)6月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年6月28日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和5年4月13日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年8月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月26日に審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、令和6年5月13日に上申書が提出されたものである。
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正前の請求項1に係る発明
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「 視覚化システムであって、
腹腔鏡、
前記腹腔鏡に動作可能に連結されたカメラ、
前記腹腔鏡の照明ポートに動作可能に連結された光源であって、標的領域を照明するために、1つ又は複数の光ビームを、各ビームのそれぞれの所定の周波数で出力するように構成された前記光源、及び
前記カメラによって受信されたイメージングデータを処理して、少なくとも1つのレーザースペックルコントラスト画像を含む前記標的領域の1つ又は複数の画像を生成するように構成された処理回路を含み、
前記腹腔鏡は、前記1つ又は複数の光ビームを前記腹腔鏡の遠位端の前記標的領域に向けて出力し、前記遠位端を介して前記標的領域からの反射光及び/又は散乱光を収集するように構成されており、
前記腹腔鏡の前記遠位端と前記カメラのセンサとの間に配置された偏光子をさらに備え、前記光源によって提供される前記1つ又は複数の光ビームのうちの少なくとも1つが偏光パターンを有する、視覚化システム。」
(2)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、次のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。
「 視覚化システムであって、
腹腔鏡、
前記腹腔鏡に動作可能に連結されたカメラ、
前記腹腔鏡の照明ポートに動作可能に連結された光源であって、標的領域を照明するために、複数の光ビームを、各ビームのそれぞれの所定の周波数で出力するように構成された前記光源、及び
前記カメラによって受信されたイメージングデータを処理して、少なくとも1つのレーザースペックルコントラスト画像を含む前記標的領域の1つ又は複数の画像を生成するように構成された処理回路を含み、
前記腹腔鏡は、前記複数の光ビームを前記腹腔鏡の遠位端の前記標的領域に向けて出力し、前記遠位端を介して前記標的領域からの反射光及び/又は散乱光を収集するように構成されており、
前記視覚化システムは、前記腹腔鏡の前記遠位端と前記カメラのセンサとの間に配置された偏光子と、前記腹腔鏡の前記遠位端に配置された調整可能な偏光子キャップと、をさらに備え、前記光源によって提供される前記複数の光ビームのうちの少なくとも1つが偏光パターンを有する、視覚化システム。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「光源」が出力する「光ビーム」について、「1つ又は複数」とされていたのを、「複数」に限定する補正事項と、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「偏光子」について、これを備えるとする主体が「前記視覚化システム」であることを明示する補正事項と、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「視覚化システム」について、「腹腔鏡の前記遠位端に配置された調整可能な偏光子キャップ」を備えることを特定する補正事項からなる。
これらの補正事項に基づけは、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項に限定を付加する補正事項を含んでいるといえる。そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
3 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。
4 引用文献
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2003/0120156号明細書(2003年6月26日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、括弧内に翻訳文を示すとともに、引用発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
(ア)「[0002] This invention relates to a system, method of measurement, and presentation of motion within a cavity, used for example to determine the magnitude of blood perfusion to a tissue located within a body cavity.」
(本発明は、例えば体腔内に位置する組織への血液灌流の大きさを決定するために使用される、システム、測定方法及び腔内の動きの提示に関する。)
(イ)「[0007] No speckle imaging technique described in the cited art is adapted or could be used for endoscopy. A common feature of all of speckle imaging techniques described in the cited art is that they are remote techniques, which require the instrument to be placed directly above or in front of the tissue surface. Remote speckle imaging techniques require fixation of the instrument and the tissue surface. During endoscopic speckle imaging, the surgeon and patient may be expected to move and cause distortion and artifact in the image. Another common feature of prior art speckle imaging techniques is that their image resolution is too low to be useful for clinical endoscopy. Endoscopy is a technique that requires immediate visual display to assist in cavity navigation and tissue recognition, and serious surgical decisions are often made based on what the surgeon “sees”. The minimum image resolution required for clinical endoscopy is a standard video resolution of 640×480 pixels. This resolution is maintained for a variable field of view that can range from a few square millimeters to several square centimeters. Prior art speckle-imaging techniques are limited in a low resolution and restricted field of view. Therefore, applying prior art speckle techniques to endoscopy would result in an image that is of too low of resolution or much too small to be clinically useful.」
(引用技術に記載されているいずれのスペックルイメージング技術も、内視鏡検査には適応されておらず、使用することができない。引用技術に記載されているスペックルイメージング技術は、装置が組織表面の直上又は前面に配置される遠隔技術である点で共通する。遠隔スペックルイメージング技術は、装置と組織表面とを固定することを必要とする。内視鏡スペックル画像診断では、外科医や患者が動いて画像に歪みやアーチファクトが生じることが予想される。先行技術のスペックルイメージング技術は、臨床内視鏡検査に用いるには画像解像度が低いことにおいても共通する。内視鏡検査は、空洞のナビゲーションと組織の認識を助けるために、即時の視覚表示を必要とする技術であり、重大な外科的決定は、多くの場合、外科医が“見た物”に基づいて行われる。臨床内視鏡検査に必要な最低画像解像度は、640×480ピクセルの標準ビデオ解像度である。この解像度は、数平方ミリメートルから数平方センチメートルまでの可変視野で維持される。先行技術のスペックルイメージング技術は、解像度が低く視野が制限されている。したがって、従来技術のスペックル技術を内視鏡検査に適用すると、解像度が低すぎたり、画像が小さすぎたりして、臨床的に有用な画像が得られない。)
(ウ)「[0010] In this patent, we disclose a method for endoscopic tissue diagnosis, which makes use of blood perfusion as a secondary indicator of tissue metabolism. The inventors have demonstrated a high degree of correlation between blood perfusion and the predicted outcome of healing. There are both high and low thresholds in blood flow, which predict the potential for the healing of connective tissues. For example the determination of whether or not injured meniscus tissue should be repaired or resected, when the predicted outcome of healing based on tactile and visual inspection of tissue anatomy alone is uncertain, may be made using endoscopic imaging of blood perfusion. The methods of endoscopic blood perfusion imaging disclosed in this patent may be used as a surgical guide. In the event that an inadequate vascular response indicates poor healing, the degree of resection and the margin of resection when removing tissue that are avascular and non-viable are determined from the perfusion image. In general, in orthopedic surgery, a tissue perfusion image, which shows regions of low metabolic state of tissue physiology, is useful in determining conservative surgical resection margins. Conservative surgery may result in improved preservation of mechanical load bearing function of an injured joint.」
(本特許では、組織代謝の二次的指標として血液灌流を利用する内視鏡組織診断法を開示する。本発明者らは、血液灌流と治癒の予測結果との間に高い相関関係があることを実証した。血流の高い閾値と低い閾値により、結合組織の治癒の可能性が予測される。例えば、損傷した半月板組織を修復するか切除するかの判断を、組織の解剖学的構造の触診と視診だけでは治癒の予測結果が不確かな場合に、血液灌流の内視鏡画像を用いて行うことができる。本特許に開示された内視鏡的血液灌流画像診断法は、手術ガイドとして使用することができる。血管反応が不十分で治癒不良を示す場合は、灌流画像から、切除の程度と無血管で生存不可能な組織を切除する際の切除の境界を決定する。一般に整形外科手術においては、組織生理の代謝状態の低い領域を示す組織灌流画像は、保存的な外科的切除の境界の決定に有用である。保存的手術により、損傷した関節の機械的な荷重支持機能が改善される可能性がある。)
(エ)「[0011] In the present invention the limitations of prior art speckle imaging are overcome and a method of clinical endoscopic speckle imaging of blood flow is disclosed.」
(本発明においては、従来のスペックル画像化の制限が克服された、血流の臨床内視鏡のスペックル画像化の方法が開示されている。)
(オ)「[0025] Referring to FIG. 1 and FIG. 2, an exemplary endoscopic motion measurement device makes use of much of existing endoscopic hardware consisting of: camera 1, endoscope shaft 2 containing imaging relay lens system 29 and internal light guide 28,standard object illumination white light source 3, light-guide 4 for delivering white light from source to endoscope internal light guide entrance port 9, and video display components 5.」
(図1及び図2は、カメラ1、結像リレーレンズシステム29と内部光ガイド28を含む内視鏡シャフト2、標準的な対象物照明用白色光源3、光源から内視鏡内部ライトガイド入口ポート9に白色光を供給するための光ガイド4、映像表示部5から構成される、既存の内視鏡ハードウェアの多くを活用した内視鏡運動測定装置の一例である。)
合議体注:図1は次のものである。
[図:0001427359000001.jpg]
合議体注:また、図2は次のものである。
[図:0001427359000002.jpg]
(カ)「[0026] For flow or motion measurements using the methods claimed here, sensitivity to low flow and range of measurement is maximized when the laser source is highly polarized and monochromatic. This is because polarized monochromatic light sources produce the highest speckle contrast in images of stationary objects. Standard endoscopic procedures use non-polarized, white light sources, where polarization and mode preservation of the source light is not necessary. Thus, the source light guide 4 and endoscopic internal light guide 28 on standard endoscopes may consist of one or several multimode fiber optic cables that do not necessarily preserve the light mode quality. As a result, light mode and polarization degrades as a function of traveling distance through these light guides, preventing a proper blood flow measurement. However, it is favorable to utilize as much of the standard endoscopic equipment as is possible because it minimizes modification to the surgical procedure.」
(ここで請求された方法を使用して流れまたは運動を測定するにあたり、レーザー源が高度に偏光された単色光であると、低流量範囲の感度が最大化される。これは、偏光された単色光の光源は、静止物体の画像の中で最も高いスペックルコントラストを生じるからである。標準的な内視鏡処置は、偏光していない白色光源を用い、光源の偏光及びモード保存が必要ではない。このように、標準的な内視鏡に光入射用光ガイド4や内視鏡内のライトガイド28は、必ずしも光モード品質を維持しない一つまたは複数のマルチモード光ファイバーケーブルから構成され得る。その結果、光モードと偏光がこれらの光ガイドを通って移動する距離の関数として低下し、適切な血流の測定が妨げられる。しかし、外科的手順に対する改変を最小化するために可能であるように、標準的な内視鏡装置のできるだけ多くの部分を利用することが好ましい。)
(キ)「[0027] We have determined that most standard white light source guides 4 consist of a fiber-bundle of several meters length that result in too much mode degradation for proper blood flow measurement. However, the endoscopic shaft 2 containing the internal light guide 28 in most standard endoscopes is of a short enough length that polarization and mode degradation of the source light does not degrade significantly and blood flow measurement is possible. Thus, the preferred embodiment of the method for guiding laser light to the distal tip of the endoscope to illuminate tissue of interest 10 uses internal light guide 28 contained within endoscope shaft 2.」
(本発明者らは、ほとんどの標準的な白色光源ガイド4は、数メートルの長さのファイバー・バンドルで構成されており、適切な血流測定にはモードの劣化が大きすぎることを決定した。しかしながら、ほとんどの標準的な内視鏡の内部ライトガイド28を含む内視鏡シャフト2は、光源光の偏光およびモード劣化が著しく劣化しない程度に充分に短い長さのものであり、血流の測定が可能である。このため、関心組織10を照明するためにレーザー光を内視鏡の遠位先端部に導く方法の好ましい実施形態では、内視鏡シャフト2内に含まれる内部ライトガイド28を使用する。)
(ク)「[0028] FIG. 2 is a detailed schematic demonstrating the method of laser light transmittance to the tissue of interest for the preferred embodiment of the instrumentation shown in FIG. 1. Modification to the standard light delivery hardware includes a laser light delivery system including; laser transmitter 6 and lens arrangement 7 for coupling laser light to fiber optic cable 8 for delivering laser light to the endoscope internal light guide 28, and optical or mechanical switching device 30 for switching optical connection of laser source fiber 8 and white light source fiber 4 to endoscope light guide entrance port 9.」
(図2は、図1に示した本装置の好ましい実施形態について、対象組織に対するレーザー光の透過率を測定する方法を示す詳細図である。変更された標準装備の光伝送ハードウェアは、レーザー発振器6と、レーザー光を光ファイバーケーブル8に結合し、内視鏡の内部光ガイド28に伝達するためのレンズ配列7と、レーザー光源ファイバー8と白色光原ファイバー4の内視鏡の光ガイド入口ポート9への光学的接続を切り替えるための光学的又は機械的切替装置30を有するレーザー光伝送システムを含む。)
(ケ)「[0030] In the preferred embodiment of the instrument shown in FIGS. 1 and 2, images of laser illuminated tissue are captured using much of the standard endoscope hardware including; imaging relay lens system 29 contained within endoscope shaft 2 for optical transfer of laser illuminated tissue images to camera focal plane, camera for electronic capture of laser illuminated tissue 1, and electronic cable 12 for transferring video signals to video monitor system 5 (1st display).」
(図1及び図2に示す装置の好ましい実施形態では、レーザー照射された組織の画像は、標準的な内視鏡のハードウェアを用いて取得される。標準的な内視鏡のハードウェアは、内視鏡シャフト2内に収められた、レーザー照射された組織の画像をカメラの焦点面に光学的に転送するための画像化リレーレンズシステム29と、レーザー照射された組織を電子的に捕捉するカメラ、及び、ビデオ信号をビデオモニターシステム5(第1ディスプレイ)に伝送するための電子ケーブル12を含む。)
(コ)「[0031] Modifications to the standard hardware for transfer of video signals include; video signal 1-to-2 channel splitter 13, for splitting channel 12 containing video signal output from camera 1 into 2 channels, 14 and 15, where channel 14 feeds the camera video signal to a standard endoscope monitor 5 (1st display) for the real-time, video feed of light-illuminated tissue used by endoscopic surgeons for maneuvering about the joint cavity and channel 15 for transferring camera video signal to a frame grabber card 16.」
(変更された標準的なビデオ信号転送ハードウェアには、カメラ1からのビデオ信号出力を含むチャンネル12を2つのチャンネル、14と15に分割するためのビデオ信号1対2チャンネルスプリッタ13が含まれる。チャンネル14は、内視鏡外科医が関節腔を操作するために使用する光照射組織のリアルタイムのビデオを提供するための標準的な内視鏡モニタ5(第1ディスプレイ)にカメラビデオ信号を供給し、チャンネル15は、フレームグラバーカード16にカメラビデオ信号を転送するためのものである。)
(サ)「[0032] The frame grabber card 16 digitizes analog video signals and digital data is transferred to a computer processing system 18, via digital, data-transfer bus 17. Digitized, laser-illuminated images are processed by computer processing system 18 into blood flow images using a speckle reduction and comparison method for generating images containing blood flow information, which includes the steps of: capturing a sequence of speckle images of laser illuminated tissue; comparing these speckle images to a reference image that is an image of the illuminated tissue where speckle has been reduced; and representing information obtained from this comparison in image format such that images are generated with a relation to blood flow. The speckle reduction and comparison method is described in more detail below starting in paragraph 36. Images are transferred to digital storage medium 20 via data transfer bus 19. Images are also transferred to monitor 22 (2nd display) for real-time, immediate display of processed, blood flow images via data bus 21.」
(フレームグラバーカード16はアナログビデオ信号をデジタル化し、デジタルデータはデジタルデータ転送バス17を介してコンピュータ処理システム18に転送される。デジタル化されたレーザー照射画像は、コンピュータ処理システム18によって、血流情報を含む画像を生成するためのスペックル低減比較法を用いて血流画像に処理され、レーザー照射された組織の一連のスペックル画像を取り込むステップと、これらのスペックル画像をスペックルが低減された照射組織の画像である参照画像と比較するステップと、この比較から得られた情報を血流に関連する画像を生成する画像フォーマットで表現するステップと、を含む。スペックル低減及び比較方法は、段落36以下に詳細に説明される。画像はデータ転送バス19を介してデジタル記憶媒体20に転送される。画像はまた、データバス21を介して、処理された血流画像をリアルタイムで即座に表示するためのモニタ22(第2ディスプレイ)に転送される。)
(シ)「[0033] In an alternate embodiment of the method for image capture the standard endoscope camera is replaced by a high resolution, scientific quality digital camera with associated analog to digital conversion hardware. Digital output is then fed directly to the computer processing system 18 for processing, storage, and display of blood flow and laser speckle images.」
(画像捕捉のための方法の別の実施形態では、標準的な内視鏡カメラは、デジタル変換ハードウェアに関連するアナログを用いて高解像度、高画質デジタルカメラで置き換えられる。デジタル出力は、その後、処理、記憶、および血流及びレーザスペックル画像を表示するためのコンピュータ処理システム18に直接供給される。)
(ス)「[0034] When an object surface has a roughness of less than one wavelength, the light field at the diffraction plane has a non-vanishing specular component superimposed with a fluctuating diffuse component. For measurements in tissue, the diffuse component originates from tissue scattering points below the surface and is the fluctuating light component leading to the speckle pattern. This is the light component that carries information of blood flow and, in cases when the tissue surface is very smooth, can be relatively weak compared to the specular component.」
(物体表面が1波長以下の粗さを持つ場合、回折面における光場は、ゆらぎのある拡散成分と重なった非波長の鏡面成分を持つ。組織内を測定する場合、表面下の組織散乱点に由来する拡散成分は、スペックルパターンとなる変動光成分である。これは血流の情報を伝える光成分であり、組織表面が非常に滑らかな場合には、鏡面反射成分と比較して相対的に弱くなることがある。)
(セ)「[0035] Internal body tissue can be very smooth, having a high specular light component when illuminated. Therefore, it is effective for a blood perfusion imager to use a technique to eliminate or reduce the specular component in the measured light reflected back from the tissue surface. A further embodiment of the invention uses a polarization technique to reduce specular reflection such that a polarized light source is used in conjunction with a polarization filter with the polarization axis aligned perpendicular to the polarization axis of the illuminating light. This filter can be placed at any location within the light receiving optics of the endoscopic imaging relay lens system 29.」
(身体内部の組織はとても滑らかであり、照明によって高い鏡面反射成分を有することになる。したがって、血液灌流撮像装置において、組織表面で反射して戻ってくる測定光の鏡面成分を除去または低減する技術を用いることが有効である。本発明のさらなる実施形態では、偏光光源を、偏光軸が照明光の偏光軸に対して垂直に配置された偏光フィルタと組み合わせて使用して、鏡面反射を低減する偏光技術を使用する。このフィルタは、内視鏡撮像リレーレンズシステム29の受光光学系内の任意の位置に配置することができる。)
(ソ)「[0036] In the preferred embodiment of the method of light delivery, polarization of the light source can be achieved by attaching a polarization filter over the internal light guide exit port located at the distal tip of the endoscope. This filter must not cover the light receiving optics also located at the distal tip of the endoscope shaft. For most standard endoscopes, this requires a ring shaped design. Alternatively, a circular polarization filtering technique can be used with a polarization filter and quarter wave-plate located at the distal tip of the endoscopic device.」
(光送達方法の好ましい実施形態では、光源の偏光は、内視鏡の遠位先端部に位置する内部ライトガイド出口ポート上に偏光フィルタを取り付けることによって達成することができる。このフィルターは、内視鏡シャフトの遠位先端にある受光光学系を覆ってはならない。最も標準的な内視鏡では、リング状の設計が必要となる。あるいは、内視鏡装置の遠位先端に偏光フィルターと1/4波長板を配置し、円偏光フィルター技術を使用することもできる。)
(タ)「[0040] Endoscopic blood flow applications include but are not limited to measurement in an abdominal cavity, a joint cavity, a pulmonary cavity, and a bladder.」
(内視鏡による血流について、腹腔、関節腔、肺腔及び膀胱内での測定を含むが、限定されない。)
イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の記載事項(オ)(段落[0025])に基づけば、引用文献1には、「既存の内視鏡ハードウェアの多くを活用した内視鏡運動測定装置」の一例として、図1及び図2に示される実施形態の内視鏡運動測定装置が開示されており、記載事項(タ)(段落[0040])の記載から、当該内視鏡を、腹腔内での測定に用いる態様が記載されているといえる。そして、記載事項(カ)(段落[0026])及び記載事項(ク)(段落[0028])には、上記内視鏡運動測定装置における光伝送ハードウェアが、標準装備の光伝送ハードウェアを、高度に偏光された単色光であるレーザー源であるレーザー発振器6等を含む、レーザー光伝送システムを含むものであること、記載事項(ケ)(段落[0030])には、上記内視鏡運動測定装置において使用される標準的な内視鏡のハードウェアが、内視鏡シャフト2内に収められた、レーザー照射された組織の画像をカメラの焦点面に光学的に転送するための画像化リレーレンズシステム29等を含むものであること、記載事項(コ)(段落[0031])及び記載事項(サ)(段落[0032])には、上記内視鏡運動測定装置における変更された標準的なビデオ信号転送ハードウェアが、フレームグラバーカード16にカメラビデオ信号を転送する構成等を有し、コンピュータ処理システム18によって血流画像に処理されること、が記載されている。さらに、記載事項(セ)(段落[0035])及び記載事項(ソ)(段落[0036])に基づけば、上記内視鏡運動測定装置において、偏光光源を、偏光軸が照明光の偏光軸に対して垂直に配置された偏光フィルタと組み合わせて使用して、鏡面反射を低減する偏光技術を使用した態様が記載されている。
これらの記載に基づけば、引用文献1には、「既存の内視鏡ハードウェアの多くを活用した内視鏡運動測定装置」として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「腹腔内での内視鏡による血流の測定を行う、既存の内視鏡ハードウェアの多くを活用した内視鏡運動測定装置であって、
変更された標準装備の光伝送ハードウェアであって、既存の内視鏡ハードウェアが有する標準的な対象物照明用白色光源3及び光源から内視鏡内部ライトガイド入口ポート9に白色光を供給するための光ガイド4と、レーザー光伝送システムが有するレーザー発振器6と、レーザー光を光ファイバーケーブル8に結合し、内視鏡の内部光ガイド28に伝達するためのレンズ配列7と、レーザー光源ファイバー8と白色光原ファイバー4の内視鏡の光ガイド入口ポート9への光学的接続を切り替えるための光学的又は機械的切替装置30を有し、ここで、レーザー源が高度に偏光された単色光であり、
活用する標準的な内視鏡のハードウェアには、内視鏡シャフト2内に収められた、レーザー照射された組織の画像をカメラの焦点面に光学的に転送するための画像化リレーレンズシステム29と、レーザー照射された組織を電子的に捕捉するカメラ1、及び、ビデオ信号をビデオモニターシステム5に伝送するための電子ケーブル12が含まれ、
変更された標準的なビデオ信号転送ハードウェアには、カメラ1からのビデオ信号出力を含むチャンネル12を2つのチャンネル、14と15に分割するためのビデオ信号1対2チャンネルスプリッタ13が含まれ、チャンネル14は、内視鏡外科医が関節腔を操作するために使用する光照射組織のリアルタイムのビデオを提供するための標準的な内視鏡モニタ5にカメラビデオ信号を供給し、チャンネル15は、フレームグラバーカード16にカメラビデオ信号を転送するためのものであり、フレームグラバーカード16はアナログビデオ信号をデジタル化し、デジタルデータはデジタルデータ転送バス17を介してコンピュータ処理システム18に転送され、デジタル化されたレーザー照射画像は、コンピュータ処理システム18によって、血流情報を含む画像を生成するためのスペックル低減比較法を用いて血流画像に処理され、画像はまた、データバス21を介して、処理された血流画像をリアルタイムで即座に表示するためのモニタ22に転送され、
偏光光源を、内視鏡撮像リレーレンズシステム29の受光光学系内の任意の位置に配置されるとともに偏光軸が照明光の偏光軸に対して垂直に配置された偏光フィルタと組み合わせて使用して、鏡面反射を低減する偏光技術を使用するものであり、光源の偏光は、内視鏡の遠位先端部に位置する内部ライトガイド出口ポート上に偏光フィルタを取り付けることによって達成する、
内視鏡運動測定装置。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2018/0020932号明細書(2018年1月25日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、括弧内に翻訳文を示すとともに、引用文献2に記載された技術的事項の認定に用いた箇所に下線を付した。
(ア)「[0128] As discussed above, some embodiments of the present inventive concept provide methods, systems and computer program products for non-invasive determination of blood flow and perfusion in a sample. Although multi-spectral physiologic visualization (MSPV) can be used in a non-invasive, open surgical setting with direct illumination of the tissues, embodiments of the present inventive concept are not limited to this configuration. In particular, recently many surgical procedures have been performed using endoscopy-based illumination for visual access within cavities of the body. According to some embodiments of the present inventive concept, MSPV can be adapted for an endoscopic platform, which includes, for example, endoscopic cavitary surgery, minimally invasive surgery, and robotic surgery, all of which use endoscopic visualization to illuminate the tissues and organs and to perform the procedure as will be discussed further herein.」
(上述したように、本発明のいくつかの実施形態は、試料中の血流及び灌流を非侵襲的に決定するための方法、システムおよびコンピュータプログラム製品を提供する。マルチスペクトル生理的視覚化(MSPV)は、組織の直接照明を備えた非侵襲性開放外科的設定において使用することができるが、本発明の発明概念の実施形態はこの構成に限定されるものではない。特に、最近多くの外科手術は、体の空洞内に視覚的なアクセスのために、内視鏡式照明を用いて行われてきた。本発明のいくつかの実施形態によれば、MSPVは内視鏡、例えば、内視鏡空洞外科手術、低侵襲手術、およびロボット手術は、本明細書でさらに説明するが、すべての組織および器官を照射するために、処置を行うために内視鏡的可視化を使用することを含む)のために適合させることができる。)
(イ)「[0130] Referring now to FIG. 24, a standalone MSVP endoscopic system 2400 including an endoscopic device 2405 in accordance with some embodiments of the present inventive concept will be discussed. As will be discussed further below with respect to FIG. 25, embodiments of the present inventive concept are not limited to standalone systems. Referring to FIG. 24, the system includes a mobile cart 2417 including, for example, a light source 2410; a camera control and image processing unit 2420; an image management unit 2430; a power supply and other accessory unit 2440; a display 2447 and an endoscopy device 2405 coupled thereto in accordance with some embodiments discussed herein.」
(ここで図24を参照して、本発明の一実施形態による内視鏡装置2405を含むスタンドアローンのMSVP内視鏡システム2400について説明する。図25を参照して以下に更に説明するように、本発明の発明概念の実施形態は、スタンドアローンシステムに限定されるものではない。図24を参照すると、システムは、例えば、光源2410を含む可動カート2417、カメラ制御及び画像処理部2420、画像管理部2430、電源及び他の補助ユニット2440と、本明細書で説明したいくつかの実施形態による、それに結合されたディスプレイ2447及び内視鏡検査装置2405とを備えている。)
合議体注:図24は次のものである。
[図:0001427359000003.jpg]
(ウ)「[0135] The light source 2410 may include a multi-spectral LED light to guide the field of view (FOV) of the endoscope insertion process. The light source 2410 may also include one or more multi-spectral lasers for blood flow and perfusion visualization once the region of interest (ROI) is located. The light source unit 2410 is generally connected to the endoscope with optic fibers. Embodiments of the present inventive concept may provide a light source 2410 specifically configured to work in endoscopic environments.」
(光源2410は、内視鏡挿入工程の視野(FOV)を案内するために多スペクトルLEDを含むことができる。関心領域(ROI)が配置されると、光源2410はまた、血流と灌流の視覚化のために、1つ以上の多スペクトルのレーザを含むことができる。光源ユニット2410は、一般に、光ファイバを備えた内視鏡に接続されている。本発明の発明概念の実施形態は、内視鏡環境で機能するように特に構成された光源2410を提供することができる。)
イ 引用文献2に記載された技術的事項
上記記載事項(ア)~(ウ)に基づけば、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。
「マルチスペクトル生理的視覚化(MSPV)を内視鏡に適用したMSVP内視鏡システム2400において、光源2410が、血流と灌流の視覚化のために、1つ以上の多スペクトルのレーザーを含むこと。」
(3)周知技術
ア 特開2003-47588号公報について
本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2003-47588号公報(以下「引用文献ア」という。)には、以下の記載事項がある。なお、周知技術の認定に用いた箇所に下線を付した。以下の文献についても同様である。
「【0064】(第3の実施の形態)次に図5ないし図7を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は既存の内視鏡を用いて偏光画像と通常画像が得られる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【0065】図5は第3の実施の形態の内視鏡装置1Cを示す。この内視鏡装置1Cは光学式内視鏡46と、この光学式内視鏡46の後端に装着される外付けカメラ47と、光学式内視鏡46の前端に装着される先端キャップ48と、光学式内視鏡46のライトガイド49に照明光を供給する光源装置3Cと、外付けカメラ47のカラーCCD50に対する信号処理を行うプロセッサ4Cと、モニタ5とから構成される。
【0066】光学式内視鏡46は、光源装置3Cから供給される白色光を、挿入部51内等に挿通されたライトガイド49で伝送し、照明窓に固定されたその先端面からさらに先端キャップ48に設けた偏光板52を経て患部組織等の被検体53側に照射する。
【0067】本実施の形態の先端キャップ48は例えば図6に示すようにライトガイド49の先端面に対向する側に偏光板52が貼り付けられており、ライトガイド49の先端面からの照明光を偏光する。また、照明窓に隣接する観察窓に取り付けた対物レンズ54に対向部分は孔48aが設けてあり、被検体53側からの光を対物レンズ54に導く。」
合議体注:なお、図5及び図6は以下のものである。
[図:0001427359000004.jpg]
イ 特開2013-215582号公報
本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2013-215582号公報(以下「引用文献イ」という。)には、以下の記載事項がある。
(ア)「【0036】
図2に示されるように、内視鏡10は、いずれも挿入チューブ12の先端36に配置される主撮像装置32および主光源34と、主撮像装置32および主光源34を覆うために挿入チューブ12の先端36上に装着されるようになっている偏光器キャップ38とを含んでいる。図2は、挿入チューブ12の先端36から取り外された偏光器キャップ38を示しており、また、図5は、挿入チューブ12の先端36上に装着された偏光器キャップ38を示している。」
(イ)「【0038】
図2および図3に示されるように、偏光器キャップ38は、円筒側壁42と、端壁44と、端壁44上に装着された偏光フィルタ46,48とを含んでいる。円筒側壁42および端壁44は、医療グレードプラスチックなどの適切な生体適合性材料の射出成形によって作られる一体部品を形成してもよい。端壁44は、主撮像装置32のための偏光フィルタ46を収容する開口50を有することが好ましい。開口50は、偏光フィルタ46を保持するのに適した任意の形態を成していてもよい。例えば、開口50は、偏光フィルタ46を受けるための凹状リップを有していてもよい。偏光フィルタ46は、接着によりあるいは機械的な留め金による嵌合により凹状リップ内に配置されてそこに固定され得る。」
(ウ)「【0058】
前述したような偏光フィルタの偏光面の望ましい相対配向は、任意の適切な方法によって得られてもよい。例えば、主撮像装置32および主光源34のための偏光フィルタ46,48の偏光面は、偏光器キャップ38内に位置合わせされて固定されてもよく、また、補助撮像装置64および補助光源70のための偏光フィルタ76,68の偏光面は、撮像アセンブリ14内に位置合わせされて固定されてもよい。このとき、撮像アセンブリ14における偏光フィルタ76,78の偏光面が偏光器キャップ38における偏光フィルタ46,48の偏光面から略90°の角度を成すまで、撮像アセンブリ14がそのハンドル62を用いて挿入チューブ12のチャンネル16内で回転されてもよい。」
(エ)「【0072】
更なる他の代替的な実施形態では、図6に示されるように、腹腔鏡検査中または関節鏡検査中などの処置中に内視鏡アセンブリと見なされてもよい複数の内視鏡80,82が使用される場合、内視鏡80,82によって引き起こされる光干渉を減少させるために1つ以上の内視鏡80,82上に偏光器キャップ84,86が配置されてもよい。図6では、内視鏡80,82が腹腔88内に挿入されている。好ましくは、内視鏡80,82のうちの少なくとも1つは、手術器具90が腹腔88にアクセスできるようにするチャンネルを有している。図示の実施形態では、内視鏡80,82のうちの1つ以上が光源を有していてもよい。場合によっては、すべての内視鏡80,82のそれぞれが1つの光源を有している。同様に、内視鏡80,82のうちの1つ以上が撮像装置を有していてもよい。場合によっては、すべての内視鏡80,82のそれぞれが1つの撮像装置を有する。1つの特定のケースでは、内視鏡のうちの1つのみが1つの光源を有する一方で、他の内視鏡のそれぞれが1つの撮像装置のみを有する。図示の実施形態では、同じキャップ84,86の偏光フィルタが同じ偏光面を有していてもよく、また、異なるキャップ84,86の偏光フィルタが異なる偏光面を有していてもよい。あるいは、キャップが同じ偏光面を有していてもよいが、医師は、1つ以上の内視鏡を適切な方向に回転させることができる。2つの内視鏡80,82のみが使用される場合、2つのキャップ84,86は、互いから90°に方向付けられるそれらの偏光面を有していてもよい。3つの内視鏡のみが使用される場合、3つのキャップは、各内視鏡で光干渉を大幅にキャンセルするために相互に120°に方向付けられる偏光面を有していてもよい。」
(オ)「【0073】
更なる他の実施形態において、内視鏡は、偏光フィルタ間の方向を容易に調整できるように、偏光キャップおよび撮像アセンブリの両方に方向付け構成を有していてもよい。1つのそのような実施形態は、偏光キャップに対して取り外し不能に固定された小型マグネットと、撮像アセンブリに対して固定された金属要素とを含んでいる。マグネットは、ネオジム鉄ボロン型永久磁石などの希土類磁石であってもよい。マグネットおよび金属要素の方向は、偏光フィルタが適切に位置合わせされるときにマグネットによって形成される磁場が最も強く金属要素を引き付けるように設定される。このようにすると、金属要素は、マグネットに近接しているときには、マグネットにより正しい位置へと必然的に引き寄せられる。また、マグネットおよび金属要素が接触すると、方向の変化に抵抗し且つ偏光フィルタ間で適切な方向を維持する結合が形成される。医師が撮像アセンブリを力強く推し進める場合など、かなりの力が加えられるときにのみ、磁気結合が壊され、それにより、医師は撮像アセンブリを再び位置合わせしあるいは除去することができる。あるいは、マグネットが撮像アセンブリ内に配置されてもよく、また、金属要素がキャップ上に位置されてもよい。更に、撮像アセンブリおよびキャップの両方でマグネットが使用されてもよい。
【0074】
更なる他の実施形態において、方向付け機構は、撮像アセンブリに対して付設されて撮像アセンブリから僅かに離れて突出するピン、ロッド、または、形体などの機構と、撮像アセンブリ上の対応する機構と結合する偏光キャップ上のカップおよびチューブなどの機構とを含んでいる。機構は、2つの機構が係合される際にその係合を解除するためにかなりの力が必要とされるようにゴムなどの圧縮性材料から形成されてもよい。このようにすると、医師は、最初に、挿入チューブの先端を超えて撮像アセンブリを滑動させた後、補助撮像装置のガイド下で撮像アセンブリを回転させて、偏光フィルタ間の正しい相対的方向を得る。偏光フィルタ間で正しい相対的方向が得られると、医師は、2つの機構が相互に係合して係止するように撮像アセンブリを引っ込めてもよい。その後に機構の係合を解除するため、医師は、撮像アセンブリを力強く推し進めてもよい。」
合議体注:図2、図3、図5、図6は、以下のものである。
[図:0001427359000005.jpg]
ウ 特開2014-150893号公報
本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2014-150893号公報(以下「引用文献ウ」という。)には、以下の記載事項がある。
(ア)「【請求項1】
内視鏡に設けられた、被検体内に挿入される挿入部と、
前記挿入部の長手軸方向の先端の先端面において前記挿入部の中心軸を含む部位に設けられた対物光学系と、
前記先端面において前記対物光学系が設けられた部位とは異なる部位に設けられた、照明光を出射する照明光出射部と、
前記挿入部の前記先端に取り付けられるとともに、取り付け後、前記先端の外周及び前記先端面を覆う外筒と、
前記先端に前記外筒が取り付けられた際、前記外筒の前記先端面を覆う部位に設けられた偏光部材と、
前記偏光部材において、前記照明光出射部に対向するとともに前記照明光出射部から出射された照明光の内、第1の偏光のみを透過させる第1の偏光部位と、
前記偏光部材において、前記対物光学系に対向するとともに前記第1の偏光と該第1の偏光に直交する第2の偏光との少なくとも一方のみを前記対物光学系に透過させる第2の偏光部位と、
少なくとも前記外筒に設けられた、前記第1の偏光部位と前記第2の偏光部位とが透過する光が同じ偏光である第1の状態と、前記第1の偏光部位と前記第2の偏光部位とが透過する光が直交する偏光である第2の状態との間において切り替え自在となるよう、または、前記第1の状態もしくは前記第2の状態と前記第1の状態及び前記第2の状態が混在する第3の状態との間において切り替え自在となるよう前記先端に前記外筒を回動自在にするとともに、前記第1の状態、前記第2の状態、前記第3の状態となる位置に回動位置を規定する回動機構と、
を具備することを特徴とする内視鏡装置。」
(イ)「【【0063】
また、図8に示すように、内視鏡装置1は、挿入部2と該挿入部2の先端に取り付けられるとともに、取り付け後、先端の外周及び先端面2sを覆うキャップ状の外筒30とから主要部が構成されている。
合議体注:図8は次のものである。
[図:0001427359000006.jpg]
エ 周知技術
上記引用文献ア~ウの各記載事項に基づけば、本願の優先日前において、以下の周知技術が存在したといえる。
「内視鏡の遠位端に、キャップ状の部材を介して偏光フィルタを取り付けること」
5 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)視覚化システム
引用発明の「内視鏡運動測定装置」は、「血流画像をリアルタイムで即座に表示」するものである。そうすると、引用発明の「内視鏡運動測定装置」は、本件補正発明の「視覚化システム」に相当する。
(2)腹腔鏡
引用発明は、「標準的な内視鏡のハードウェア」を有し、「腹腔内での内視鏡による血流の測定」を行うものである。そうすると、引用発明の「標準的な内視鏡のハードウェア」は、本件補正発明の「腹腔鏡」に相当する。
(3)カメラ
引用発明の「カメラ1」は、「標準的な内視鏡のハードウェア」であって、「レーザー照射された組織を電子的に捕捉する」ものである。そうすると、引用発明の「カメラ1」は、本件補正発明の「カメラ」に相当し、本件補正発明の「前記腹腔鏡に動作可能に連結された」とする要件を満たしている。
(4)光源
引用発明の「変更された標準装備の光伝送ハードウェア」は、「既存の内視鏡ハードウェアが有する標準的な対象物照明用白色光源3」の「白色光」と、「レーザー光伝送システムが有するレーザー発振器6」の「レーザー光」とを、「光学的又は機械的切替装置30」を介して「内視鏡の光ガイド入口ポート9」へ供給するものである。そうすると、引用発明の「変更された標準装備の光伝送ハードウェア」は、全体として、「内視鏡の光ガイド入口ポート9」に複数の光ビームを供給するための光源として機能するものといえる。
そして、引用発明の「白色光源3」は「対象物照明用」とされており、また、引用発明は、「レーザー照射された組織の画像」を取得するものであるから、引用発明の「白色光」及び「レーザー光」は、内視鏡において、腹腔内の組織を照明するものであるといえる。そうすると、引用発明の「変更された標準装備の光伝送ハードウェア」は、本件補正発明の「光源」に相当し、本件補正発明の「前記腹腔鏡の照明ポートに動作可能に連結された」とする要件、及び、「標的領域を照明するため」とする要件を、いずれも満たしている。
さらに、引用発明の「内視鏡」は、上記「白色光」及び「レーザー光」を用いて腹腔内の組織を照明し、「レーザー照射された組織の画像」を取得するものである。そうすると、引用発明の「内視鏡」は、本件補正発明の「前記腹腔鏡は、前記複数の光ビームを前記腹腔鏡の遠位端の前記標的領域に向けて出力し、前記遠位端を介して前記標的領域からの反射光及び/又は散乱光を収集するように構成されて」いるとする要件も満たしている。
また、引用発明の「レーザー光」は、「単色光」であるから、「白色光」と「レーザー光」の周波数は異なるものといえる。そうすると、引用発明の「変更された標準装備の光伝送ハードウェア」は、本件補正発明の「複数の光ビームを、各ビームのそれぞれの所定の周波数で出力するように構成された」とする要件を満たしている。
(5)処理回路
引用発明は、「カメラ1からのビデオ信号出力」を、「電子ケーブル12」、「ビデオ信号1対2チャンネルスプリッタ13」、「チャンネル15」、「フレームグラバーカード16」、「デジタルデータ転送バス17」を介して「コンピュータ処理システム18」に転送し、「コンピュータ処理システム18」によって「血流情報を含む画像を生成するためのスペックル低減比較法を用いて血流画像に処理」している。そうすると、引用発明の「コンピュータ処理システム18」は、本件補正発明の「処理回路」に相当し、「前記カメラによって受信されたイメージングデータを処理して、少なくとも1つのレーザースペックルコントラスト画像を含む前記標的領域の1つ又は複数の画像を生成するように構成された」とする要件を満たしている。
(6)偏光子
引用発明の「偏光軸が照明光の偏光軸に対して垂直に配置された偏光フィルタ」は、本件補正発明の「偏光子」に相当する。そして、引用発明の「偏光軸が照明光の偏光軸に対して垂直に配置された偏光フィルタ」は、「内視鏡撮像リレーレンズシステム29の受光光学系内の任意の位置に配置される」ものであり、「内視鏡撮像リレーレンズシステム29の受光光学系」は内視鏡の遠位端とカメラ1との間に配置されるものである。そうすると、引用発明の「偏光軸が照明光の偏光軸に対して垂直に配置された偏光フィルタ」は、本件補正発明の「前記腹腔鏡の前記遠位端と前記カメラのセンサとの間に配置された」とする要件を満たしている。
また、引用発明は「偏光光源」を有するものであって、「内視鏡の遠位先端部に位置する内部ライトガイド出口ポート上に偏光フィルタを取り付ける」ことにより「レーザー源が高度に偏光」することが達成されたものである。そうすると、引用発明は、本件補正発明の「前記光源によって提供される前記複数の光ビームのうちの少なくとも1つが偏光パターンを有する」との要件を満たしている。
(7)一致点及び相違点
以上より、本件補正発明と引用発明とは、
「 視覚化システムであって、
腹腔鏡、
前記腹腔鏡に動作可能に連結されたカメラ、
前記腹腔鏡の照明ポートに動作可能に連結された光源であって、標的領域を照明するために、複数の光ビームを、各ビームのそれぞれの所定の周波数で出力するように構成された前記光源、及び
前記カメラによって受信されたイメージングデータを処理して、少なくとも1つのレーザースペックルコントラスト画像を含む前記標的領域の1つ又は複数の画像を生成するように構成された処理回路を含み、
前記腹腔鏡は、前記複数の光ビームを前記腹腔鏡の遠位端の前記標的領域に向けて出力し、前記遠位端を介して前記標的領域からの反射光及び/又は散乱光を収集するように構成されており、
前記視覚化システムは、前記腹腔鏡の前記遠位端と前記カメラのセンサとの間に配置された偏光子をさらに備え、前記光源によって提供される前記複数の光ビームのうちの少なくとも1つが偏光パターンを有する、視覚化システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本件補正発明は、「前記腹腔鏡の前記遠位端に配置された調整可能な偏光子キャップ」をさらに備えるのに対し、引用発明は、内視鏡の遠位先端部に位置する内部ライトガイド出口ポート上に取り付けられる「偏光フィルタ」が、調整可能な偏光子キャップではない点。
6 判断
(1)[相違点1]について
内視鏡の遠位先端部に位置する内部ライトガイド出口ポート上に「偏光フィルタ」を取り付けるにあたり、「偏光フィルタ」をキャップ状の部材を介して取り付けるようにすることは、前記4(3)エに記載したとおり、周知技術であるといえる。
そして、内視鏡の遠位先端部に位置する内部ライトガイド出口ポート上に「偏光フィルタ」を取り付けるにあたり、どのような部材を用いて取り付けるかは、当業者が適宜設計し得ることであるから、引用発明において、上記周知技術を採用し、「偏光フィルタ」をキャップ状の部材を介して取り付けるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、引用発明の内視鏡撮像リレーレンズシステム29の受光光学系内の任意の位置に配置される「偏光フィルタ」と、内視鏡の遠位先端部に位置する内部ライトガイド出口ポート上に取り付けられる「偏光フィルタ」とは、「偏光軸が照明光の偏光軸に対して垂直に配置」されるように配置されるものである。そうすると、内視鏡の遠位先端部に位置する内部ライトガイド出口ポート上に「偏光フィルタ」を取り付けるにあたり、その偏光軸が、内視鏡撮像リレーレンズシステム29の受光光学系内の任意の位置に配置される「偏光フィルタ」の偏光軸に対して垂直になるように取り付ける必要があることは自明である。そうすると、上記周知技術を採用するにあたり、キャップ状の部材を介して取り付けられる「偏光フィルタ」の偏光軸の向きを、「偏光フィルタ」の偏光軸に対して垂直になるように調整できるよう構成することは、当業者が適宜なし得ることである。
(2)光源について
仮に、本件補正発明における「光源」が、一体の光源を意味すると限定解釈できるとすると、本件補正発明と引用発明とは、次の点でも相違することになる。
[相違点2]
本件補正発明は、(一つの)「光源」が「複数の光ビーム」を出力するのに対し、引用発明は、複数の光源のそれぞれ、光ビームを出力する点。
上記[相違点2]について検討すると、複数の光ビームを出力する光源をどのように構成するかは、当業者が適宜設計し得ることである。そして、複数の光ビームを出力する光源を一体の光源として設計することも、前記4(2)イに記載したとおり、従来より知られたことである。
そうすると、仮に本件補正発明と引用発明とが、上記[相違点2]において相違したとしても、引用発明の「白色光源3」と「レーザー発振器6」とを、一体の光源として設計することは、当業者が適宜なし得たことである。
(3)効果について
引用文献1の記載事項(エ)(段落[0011])の記載に基づけば、引用発明は「従来のスペックル画像化の制限が克服された」とする効果を奏するものである。また、引用文献1の記載事項(セ)(段落[0035])の記載に基づけば、引用発明は、偏光光源を、偏光軸が照明光の偏光軸に対して垂直に配置された偏光フィルタと組み合わせて使用することにより、「血液灌流撮像装置において、組織表面で反射して戻ってくる測定光の鏡面成分を除去または低減する」という効果を奏するものである。
そうすると、引用発明は、本件補正発明の「鏡面反射が最小化される」(段落【0027】)という効果と同様の効果を奏するものといえる。
したがって、本件補正発明の効果は、当業者が予測し得ない格別なものということができない。
審判請求人は、令和5年8月1日の意見書において、「本発明は、カメラのセンサへの鏡面反射を低減させる(明細書の段落0026)との有利な効果を奏します。」と主張し、審判請求書においても、「本発明では腹腔鏡の遠位端に調整可能な偏光子キャップを設けるようにすることで、明細書の段落0027に記載の有利な効果を奏するものであります。」と主張している。しかしながら、上記のとおり、引用発明も「血液灌流撮像装置において、組織表面で反射して戻ってくる測定光の鏡面成分を除去または低減する」という効果を奏するものであるから、係る効果を、引用発明と比べて有利な効果ということができない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。
7 むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件発明
1 本件発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~17に係る発明は、令和5年8月1日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、あるいは、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という拒絶理由を含むものである。
引用文献1:米国特許出願公開第2003/0120156号明細書
引用文献2:米国特許出願公開第2018/0020932号明細書
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の4に記載したとおりである。
4 対比・判断
本件発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「光ビーム」について「複数」とする限定と、「偏光子」を備えるとする主体を「前記視覚化システム」であると明示する記載を省略し、「視覚化システム」が、「腹腔鏡の前記遠位端に配置された調整可能な偏光子キャップ」を備えるとの限定を省いて拡張したものである。
そうすると、本件発明と引用発明とを対比した場合、前記第2の5(7)に記載した[相違点1]、及び、前記第2の6(2)に記載した[相違点2]は、いずれも存在しないことになる。
そうすると、本件発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、仮に本件発明と引用発明との間に相違する点があったとしても、その点については当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず、当業者が容易になし得たことであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-022084