特許拒絶査定不服審判
2024-019256
エピソードの検出及び評価のためのシステム、装置、及び方法
- 審判番号
- 2024-019256
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-034518外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年12月02日
- 審決日
- 2025年09月22日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】柳田 征史
- 【請求人代理人】高橋 秀明
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 34518「エピソードの検出及び評価のためのシステム、装置、及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 5月23日出願公開、特開2023- 71914〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年7月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年7月6日(US)米国、2015年7月10日(US)米国)を国際出願日とする特願2017-558396号の一部を令和3年10月8日に新たな特許出願(特願2021-166113号)とし、さらにその一部を令和5年3月7日に新たな特許出願(特願2023-34518号)としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 5年 4月28日 手続補正書・上申書の提出
令和 6年 2月14日付け 拒絶理由通知書
同年 5月 8日 意見書・手続補正書の提出
同年 7月26日付け 拒絶査定
同年12月 2日 審判請求書・手続補正書の提出
令和 7年 2月26日 上申書の提出
以下では、令和6年7月26日付け拒絶査定を「原査定」という。
第2 令和6年12月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年12月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。また、A~Gは、各構成単位毎に分説するために当審にて付した分説番号であり、以下、各構成単位について、該分説番号を用いて「構成A」などということがある。引用発明等についても同様である。)。
「【請求項1】
A 人間の検体レベルに関する情報を含むインタラクティブレポートを生成する方法であって、該方法は、
B1 処理回路によって、
C (a)グラフであって、
横軸に沿った時刻の表示、
縦軸に沿った複数の検体レベルの大きさの表示、
前記人間の検体レベルの経時的トレース、及び
複数のエピソードインジケータであって、各々が、発生時に、検体エピソードの発生を示し、前記発生時によって、前記検体レベルの経時的トレースに沿って配置されるエピソードインジケータを含むグラフ、
D (b)複数の検体エピソードの調整可能なリストであって、前記複数の検体エピソードの各々が、前記グラフ内に、対応するエピソードインジケータを有する、リスト、および
E (c)前記グラフにおける時刻の表示に対応し、最も早い時刻に対応する第1のマーカーおよび最も遅い時刻に対応する第2のマーカーを含む、ユーザーが調整可能なフィルターであって、前記第1のマーカーは、前記第2のマーカーに対して独立して調整することができる調整可能なフィルターを、
B2 同時表示させるステップと、
F ユーザーが前記調整可能なフィルターを調整したことを示す指示を、前記処理回路によって監視するステップと
G を備えることを特徴とする方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和6年5月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
人間の検体レベルに関する情報を含むインタラクティブレポートを生成する方法であって、該方法は、
処理回路によって、
(a)グラフであって、
横軸に沿った時刻の表示、
縦軸に沿った複数の検体レベルの大きさの表示、
前記人間の検体レベルの経時的トレース、及び
複数のエピソードインジケータであって、各々が、発生時に、検体エピソードの発生を示し、前記発生時によって、前記検体レベルの経時的トレースに沿って配置されるエピソードインジケータを含むグラフ、
(b)複数の検体エピソードの調整可能なリストであって、前記複数の検体エピソードの各々が、前記グラフ内に、対応するエピソードインジケータを有する、リスト、および
(c)前記グラフにおける時刻の表示に対応し、最も早い時刻に対応する第1のマーカーおよび最も遅い時刻に対応する第2のマーカーを含む、ユーザーが調整可能なフィルターを、同時表示させるステップと、
ユーザーが前記調整可能なフィルターを調整したことを示す指示を、前記処理回路によって監視するステップと
を備えることを特徴とする方法。」
2 補正の適否
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「最も早い時刻に対応する第1のマーカーおよび最も遅い時刻に対応する第2のマーカーを含む、ユーザーが調整可能なフィルター」について、「前記第1のマーカーは、前記第2のマーカーに対して独立して調整することができる」るものであることを限定するものである。そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された国際公開第2015/040167号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。また、原文の摘記の後に日本語訳を示す。(日本語訳は、引用文献1の日本語ファミリー文献である特表2016-534841号公報を参照し、当審で付したものである。また、下線は当審において付与した。以下同様。)。
a 「As mentioned above in an example embodiment the medical device 100 may be realized as a two-part device, wherein the first part comprises the measurement unit 1 10 and the second part comprises the data storage 130, the receiving unit 120, the processor 140, the user input unit 150, the display unit 160 with the trend indicator 164, the interface unit 170, and the clock unit 180. The inventive method is realized as a software program (application or "app") to run on the aforementioned hardware of a mobile device such as a smartphone or of another computer. The keys 151, 152, 153 and 154 may realized in this case as keys of a computer keyboard, keys on a mobile device such as a smartphone, or button fields on the display of a touchscreen of such a device. However, it is referred to a single-part medical device in the following description.」(第18頁第30行~第19頁第2行)
「例示的な実施形態で前述したように、医療デバイス100は、2つの部分のデバイスとして実現することができ、第1の部分は測定ユニット110を含み、また第2の部分は、データ記憶装置130、受信ユニット120、プロセッサ140、ユーザ入力ユニット150、傾向インジケータ164を備えた表示ユニット160、インターフェースユニット170、クロックユニット180を含む。本発明の方法は、スマートフォンなどの移動デバイスの、または他のコンピュータの前述のハードウェアで動作するソフトウェアプログラム(アプリケーションまたは「アプリ」)として実現される。キー151、152、153、および154は、この場合、コンピュータキーボードのキーとして、スマートフォンなどの移動デバイス上のキーとして、またはこのようなデバイスのタッチスクリーンのディスプレイ上のボタンフィールドとして実現することができる。しかし、以下の記述では、それは単一部分の医療デバイスを指す。」
b 「The "Data Management and Analysis" mode is entered when the user activates the medical device 100 by pressing e.g. the confirmation button 152. Then a display as depicted in Fig. 4 is shown.」(第19頁第4~6行)
(ユーザが、例えば、確認ボタン152を押すことにより、医療デバイス100を起動したとき、「データ管理および解析」モードに入る。次いで、図4で示すような表示が示される。)
c 「Fig. 4 shows an exemplary view of a display 162 of the inventive data management unit comprising nine rectangular tiles 501 , 502, 503, 504, 505, 506, 507, 508 and 509, each with a bar-like colored area at the left side edge. Further in the upper line of the display 162 there are several tabs 511 which give the user / patient the possibility to choose the selected date range for which the derived data in the tiles 501 to 508 are displayed, wherein the tab "1W" refers to one week, the tab "2W" refers to two weeks, the tab "4W" refers to four weeks, the tab "3M" refers to three months, the tab "other" refers to another date range individually selectable by the user / patient and the tab "compare" provides the possibility to compare data from the previous period with another period. For other languages, the labels may differ.」(第19頁第8~16行)
(図4は、それぞれが、左側の縁部に棒状の着色領域を有する、9個の長方形タイル501、502、503、504、505、506、507、508、および509を含む本発明のデータ管理ユニットのディスプレイ162の例示的な図を示している。さらにディスプレイ162の上側の列には、タイル501から508における導出データが表示される選択された日付範囲を、ユーザ/患者が選べるようにするいくつかのタブ511が存在しており、ここで、タブ「1W」は1週間を指し、タブ「2W」は2週間を指し、タブ「4W」は4週間を指し、タブ「3M」は3ヶ月を指し、タブ「その他」はユーザ/患者により個々に選択可能な別の日付範囲を指し、またタブ「比較する」は前の期間のデータを他の期間と比較する可能性を提供する。他の言語に対しては、ラベルは異なるはずである。)
d 「On the right hand side from the tabs 511 the tags and comments used with the measurement values are shown in rectangular tiles 513. Therein the tiles are marked with a check mark which were used in the data analysis, namely the tags "before meal", "after meal", "untagged" and "fasting" (or corresponding tags in other languages). Further, the possibility to provide comments to the single measurement values seems to be not used in the displayed case as this box is not provided with a check mark.」(第19頁第18~23行)
(タブ511からは右側に、測定値と共に使用されるタグおよびコメントが長方形タイル513で示されている。その中で、データ解析で使用されたタイルは、チェックマークで印付けされており、すなわち、「食前」、「食後」、「タグなし」、および「空腹時」タグ(または他の言語の対応するタグ)である。さらに単一の測定値に対してコメントを提供する可能性は、このボックスにチェックマークが付されていないので、表示された事例では使用されていないようである。)
e 「For example, the tile 503 shows as a derived, statistical value, namely the mean (average) blood glucose measurement value 503a (see title of this tile 503 "AVERAGE BG", wherein BG stands for blood glucose measurement value) of all measurement values of last two weeks in form of a numerical value and the respective unit (mg/dl), because the tab 511 "2W" is chosen and displayed in a darker color. Accordingly, all values shown in the display of Fig. 4 refer to last two weeks.」(第19頁第25~30行)
(例えば、タイル503は、導出された統計値として示しており、すなわち、タブ511の「2W」が選択され、かつ暗い色で表示されているので、数値と各単位(mg/dl)の形態で、最近2週間のすべての測定値の算術平均(平均)血糖測定値503aを(このタイル503のタイトル「平均BG」を参照。ここで、BGは血糖測定値を表す)示している。したがって、図4の表示で示されたすべての値は、最近の2週間を指している。)
f 「Single clicking on any tile 501 to 508 gets the user to the respective trend chart 600 which is depicted in Fig. 6. Therein, each measurement value of this time range (here two weeks) is plotted as a point in a diagram providing on the x-axis 601 the time and date of the measurement (derived from the time stamp of the respective measurement value) and on the y-axis 602 the blood glucose level. The measurement point further contains, if applicable, a symbol 605 showing the kind of measurement regarding the associated tag as depicted in the tiles 611 in the upper line of the display. 」(第23頁第28~34行)
(501から508のいずれのタイル上のシングルクリックも、図6で示された各傾向チャート600にユーザを導く。そこでは、この時間範囲(ここでは2週間)の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付(各測定値のタイムスタンプから導かれる)を、またy軸602で、血糖レベルを提供する線図の点としてプロットされている。測定点は、適用可能な場合、ディスプレイの上側の列のタイル611で示された関連付けられたタグに関する測定の種類を示す記号605をさらに含む。)
g 「The consecutive measurement points are connected with a line to make the user understand the ups and downs of the blood sugar level within the chosen time range.」(第23頁第36~37行)
(連続する測定点は、選択された時間範囲内で血糖レベルの上昇および下降をユーザに理解させるために線で連結される。)
h 「In the trend chart 600 the hypos or hypers are emphasized by a colored ring 612 appearing like a shadow around the symbol 605, if applicable, referring to the tag of this measurement point. The colored ring 612 emphasizes and highlights the respective measurement point and has the advantage that the user / patient may easily derive the distribution of the hypos and hypers from the chart 600.」(第24頁第2~6行)
(傾向チャート600では、低血糖または高血糖は、適用可能な場合、この測定点のタグを示す、記号605の周囲の影のように見える着色リング612により強調される。着色リング612は、各測定点を強調し、かつ目立たせ、ユーザ/患者が、チャート600から低血糖および高血糖の分布を容易に導出できるという利点を有する。)
i 「Using the slider 607 of the "history" time scale 609 depicted in the lower line the user / patient may choose which period (time section) he or she wishes to look at from a, for example, 3 months line. This slider forms a section of the blood glucose values line, which helps the user / patient to see where there is data (if the patient does not test often enough), and get a first glimpse of where problems may lie (for example with regard to too much variability).」(第24頁第8~12行)
(下側の列で示された「履歴」時間尺度609のスライダ607を使用すると、ユーザ/患者は、例えば、3ヶ月の線からどの期間(時間セクション)を見たいかを選択することができる。このスライダは血糖値線のセクションを形成し、それは、ユーザ/患者が、(十分な頻度で患者が検査していない場合に)どこにデータがあるかを見ること、および(例えば、多すぎる変動に関して)問題がどこにあるかを最初に見るのに役立つ。)
j 「On the right hand side of the trend chart a "mini-dashboard" shows some important statistical values similar to the tiles view of Fig. 4.」(第24頁第14~15行)
(傾向チャートの右側では、「小型のダッシュボード」が、図4のタイル図と同様のいくつかの重要な統計値を示している。)
k 「Using the respective tab "LOGBOOK" above the chart 600 the user may switch to the associated logbook note which is depicted in Fig. 7. In this view each single measurement value (column "BLOOD GLUCOSE") within the chosen time range (here two weeks) is listed comprising the associated time stamp (columns "DATE" and "TIME"), the respective tag (column "TAG") and comment (column "COMMENT"). Additionally, the associated administered dose is listed (columns "PREMIX UNITS", "BASAL UNITS" and "BOLUS UNITS"). Additional columns showing other data may be added, for example the ingested carbohydrate value.」(第24頁第17~23行)
(チャート600の上方にある各タブ「ログブック」を用いると、ユーザは、図7で示される関連するログブックノートに切り換えることができる。この図では、選択された時間範囲(ここでは2週間)内の各単一の測定値(列「血糖」)が、関連するタイムスタンプ(列「日付」および「時間」)と、各タグ(列「タグ」)と、コメント(列「コメント」)とを含んで一覧表示されている。さらに関連する投与量が列挙されている(列「予混合単位」、「基礎単位」、および「ボーラス単位」)。例えば、摂取された炭水化物値など、他のデータを示すさらなる列を追加することができる。)
l 「
[図:0001432803000001.jpg]
」(図4)
m 「
[図:0001432803000002.jpg]
」
(図6)
n 「
[図:0001432803000003.jpg]
」
(図7)
上記a~nの記載事項及び図面から、以下、o~rの事項が導かれる。
o 引用文献1には、「ユーザが、例えば、確認ボタン152を押すことにより、医療デバイス100を起動したとき、「データ管理および解析」モードに入る。次いで、図4で示すような表示が示される。」(記載事項b)、「図4は、それぞれが、左側の縁部に棒状の着色領域を有する、9個の長方形タイル501、502、503、504、505、506、507、508、および509を含む本発明のデータ管理ユニットのディスプレイ162の例示的な図を示している。」(記載事項c)、「501から508のいずれのタイル上のシングルクリックも、図6で示された各傾向チャート600にユーザを導く。」(記載事項f)、「チャート600の上方にある各タブ「ログブック」を用いると、ユーザは、図7で示される関連するログブックノートに切り換えることができる。」(記載事項k)と記載されており、上記記載においては、図4の表示を行い、図4の表示が含む501から508のいずれのタイル上のシングルクリックすることで、図6で示された傾向チャート600の表示を行い、チャート600の上方にある各タブ「ログブック」から、図7で示される関連するログブックノートの表示を行うものとなっているといえる。
さらに、引用文献1の「本発明の方法は、スマートフォンなどの移動デバイスの、または他のコンピュータの前述のハードウェアで動作するソフトウェアプログラム(アプリケーションまたは「アプリ」)として実現される。」(記載事項a)との記載より、上記図4の表示、図6で示された各傾向チャート600の表示、及び、図7で示される関連するログブックノートの表示が、スマートフォンなどの移動デバイスのハードウェアで動作するソフトウェアプログラムによって行われることは、明らかである。
よって、引用文献1には、スマートフォンなどの移動デバイスのハードウェアで動作するソフトウェアプログラムによって、傾向チャート600及びログブックノートを表示する方法が記載されているといえる。
引用文献1には、「図6で示された各傾向チャート600にユーザを導く。そこでは、この時間範囲(ここでは2週間)の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付(各測定値のタイムスタンプから導かれる)を、またy軸602で、血糖レベルを提供する線図の点としてプロットされている。」(記載事項f)と記載されており、また、引用文献1の「ユーザ/患者が、チャート600から低血糖および高血糖の分布を容易に導出できる」(記載事項h)との記載より、「血糖レベル」が「患者」のものであることは明らかであるから、引用文献1には、傾向チャート600が、患者の血糖レベルを提供する線図を含むものである点が記載されているといえる。
以上より、引用文献1には、スマートフォンなどの移動デバイスのハードウェアで動作するソフトウェアプログラムによって、患者の血糖レベルを提供する線図を含む傾向チャート600及びログブックノートを表示する方法が記載されているといえる。
p 引用文献1には、「図4は、・・・さらにディスプレイ162の上側の列には、タイル501から508における導出データが表示される選択された日付範囲を、ユーザ/患者が選べるようにするいくつかのタブ511が存在しており、ここで、タブ「1W」は1週間を指し、タブ「2W」は2週間を指し、タブ「4W」は4週間を指し、タブ「3M」は3ヶ月を指し、タブ「その他」はユーザ/患者により個々に選択可能な別の日付範囲を指し、」(記載事項c)と記載されており、また、図4には、「タブ511」の「2W」の部分が斜線により塗られた点が図示されている。
また、図6には、図4における「タブ511」と同様の図形が図示されているから、図6には、「511」との符号は記載されていないものの、図6の表示も「タブ511」を有することは明らかであり、また、図6では、図4と同様に「2W」の部分が斜線により塗られたものとなっている。
そして、引用文献1には、「図6で示された各傾向チャート600にユーザを導く。そこでは、この時間範囲(ここでは2週間)の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付(各測定値のタイムスタンプから導かれる)を、またy軸602で、血糖レベルを提供する線図の点としてプロットされている。」(記載事項f)との記載があり、当該記載における「この時間範囲(ここでは2週間)」がタブ511で選択されたものであることは、上記記載事項c及び図4、6より明らかであるから、引用文献1には、傾向チャート600は、タブ511で選択された時間範囲の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付を、y軸602で、血糖レベルを提供する点としてプロットされている線図を有する点が記載されているといえる。
q 引用文献1には、「図6で示された各傾向チャート600にユーザを導く。そこでは、この時間範囲(ここでは2週間)の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付(各測定値のタイムスタンプから導かれる)を、またy軸602で、血糖レベルを提供する線図の点としてプロットされている。」(記載事項f)と記載されている。
そして、図6には、グラフの下辺のx軸601に沿って「01JAN-13」、「02JAN-13」等の記載があり、当該記載が、「x軸601」の「測定の時間および日付」を表すことは、明らかである。
また、図6には、グラフの左辺のy軸602に沿って「50」、「70」等の複数の数字の記載があり、当該複数の数字の記載が、「y軸602」の「血糖レベル」を表すことは、明らかである。
以上より、引用文献1には、傾向チャート600の線図が、x軸601に沿った測定の時間および日付の表示、及び、y軸602にそった複数の血糖レベルを示す値の表示を含む点が記載されているといえる。
r 引用文献1には、「下側の列で示された「履歴」時間尺度609のスライダ607を使用すると、ユーザ/患者は、例えば、3ヶ月の線からどの期間(時間セクション)を見たいかを選択することができる。」(記載事項i)と記載されている。
そして、図6には、「履歴」時間尺度609に沿って、「March2012」、「October2012」等の記載があり、当該記載が「履歴」時間尺度609の位置に対応する日付を意味することは、明らかである。
さらに、図6には、スライダ607が、時間尺度609に沿った所定の長さを有する長方形と、長方形の左右両端から上方に突出する線とからなる図形として示されている。
以上より、引用文献1には、下側の列で示された「履歴」時間尺度609及びスライダ607について、「履歴」時間尺度609に沿って日付が表示されており、スライダ607は、「履歴」時間尺度609に沿った所定の長さを有する長方形と、長方形の左右両端から上方に突出する線とからなる点が記載されているといえる。
(イ)引用文献1に記載された発明
上記(ア)a~nの記載事項及び図面、o~rの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「a 患者の血糖レベルを提供する線図を含む傾向チャート600及びログブックノートを表示する方法であって、該方法は、(認定事項o)
b1 スマートフォンなどの移動デバイスのハードウェアで動作するソフトウェアプログラムによって、(認定事項o)
c タブ511で選択された時間範囲の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付を、y軸602で、血糖レベルを提供する点としてプロットされている線図であって、(認定事項p)
x軸601に沿った測定の時間および日付の表示、(認定事項q)
y軸602にそった複数の血糖レベルを示す値の表示、(認定事項q)
タイル611で示された関連付けられたタグに関する測定の種類を示す記号605及び低血糖または高血糖の場合に記号605を強調する着色リング612と、を含む線図と、(記載事項f、h)
e 下側の列で示された「履歴」時間尺度609及びスライダ607であって、「履歴」時間尺度609に沿って日付が表示されており、スライダ607は、「履歴」時間尺度609に沿った所定の長さを有する長方形と、長方形の左右両端から上方に突出する線とからなり、スライダ607を使用すると、3ヶ月の線からどの期間を見たいかを選択することができる、「履歴」時間尺度609及びスライダ607と(記載事項i、認定事項r)
b2 を有する傾向チャート600を表示し、(認定事項o)
d 傾向チャート600の上方にある「ログブック」を用いると、選択された時間範囲内の各単一の測定値が、関連するタイムスタンプと、各タグと、コメントとを含んで一覧表示される、ログブックノート(記載事項k)
b3 を表示する、(認定事項o)
g 方法。(認定事項o)」
イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された特表2003-527142号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
a 「【0043】
図14は、ソフトウエアによって生成されるレポートの一般的な表示構造を描いている。レポートは閉じるコマンドボタンを含んでおり、これは、個々のレポートを、ユーザがそのレポートを処理すると不表示にする(除去する)。レポート形式はヘルプメニューを表示して、選択されたレポートに対する内容に応じた(context-sensitive)ヘルプを提供する(図11Dを参照のこと)。レポートが1つより多くのスクリーンを含んでいると、矢印ボタン(一般的にはスクリーンの最下部に位置している)が、複数のスクリーン間での前進および後進を提供する。」
b 「【0053】
図18A~Cは一日当たりの詳細スクリーンを描いており、これは図11Oに示されるアイコンによって選択可能である。このレポートは、点滴ポンプ、血糖メータ、およびセンサ(例えばモニタ)データの91日までの各々の詳細な一日当たりの表示を提供する。各スクリーンは単一の日のデータを表し、以下の内容から構成されている。点滴ポンプデータ(すなわちインシュリン使用量データ)、センサおよびメータデータ(すなわち血糖データ)、アラーム/イベント/マーカー表、および円グラフ(基礎量:ボーラス比およびボーラスタイプ)。」
c 「【0055】
センサおよびメータデータが下部に示されており、特定された日に対するメータの読みおよびセンサデータ対時間をグラフィック的に示している。好ましくは、任意の連続血糖モニタ(すなわちセンサ)の読みが、連続線グラフとして表示される。メータの読みは、参照値または較正点のいずれかとしてマークされる。下端の小さい長方形マーカーなどのような任意のセンサイベントマーカーは、センサイベントマーカーを描いている。
【0056】
アラーム/イベント/マーカー表が上側部に示され、点滴ポンプ12、血糖メータ24、または血糖モニタ18(すなわちセンサ)データのいずれかが存在するときにのみ示される。点滴ポンプ12、血糖メータ24、および血糖モニタ18からのアラームおよびイベントは、イベント/アラームの時間順にリストされる。イベントに対するテキストによる定義が、規定されていればリストされる。規定されていなければ、イベントに対する数字による値が示される。この表は、現在の日に対する以下の「プログラム変更」を表示するべきである。時刻/日付変更は、新しい日付(mm-dd-yyフォーマットで)および新しい時刻を表示し、時刻変更がユーザの設定に依存して12時間または24時間フォーマットの何れかで表示される。一時停止オン/オフ時刻は、その特徴がオンされた時刻およびオフされた時刻である。一時的基礎量率は、時間当たり単位による量(例えば0.6u/h)、およびボーラス履歴に対する継続時間として同じフォーマットで表示された継続時間を含む。基礎量率変更は、基礎量率変更履歴に対して基礎量プロファイルセクションを参照するノートである。バッテリー取り外し/再配置は、バッテリーの取り外しとそれに引き続くバッテリーの再配置とを、行為の時刻と共に表示する。最大基礎量率変更は、行為の時刻を伴う設定の変更である。最大ボーラス変更は、設定の変更を行為の時刻と共に表示する。インシュリン濃度変更は、濃度の変更を表示する。自動オフ変更は、時間として表示された変更の時刻と共に、新しい特徴の設定を表示する。アラーム/エラーコードは、アラーム/エラーの簡単な説明である。」
(イ)引用文献2に記載された事項
上記(ア)a~cの記載事項を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「ソフトウエアによって生成され、スクリーンに表示される、点滴ポンプ、血糖メータ、およびセンサデータの91日までの各々の詳細な一日当たりの表示を提供するレポートの表示方法であって、(段落【0043】、【0053】)
連続血糖モニタの読みが、連続線グラフとして表示されるセンサおよびメータデータが下部に示されており、(段落【0055】)
アラーム/イベント/マーカー表が上側部に示され、点滴ポンプ12、血糖メータ24、または血糖モニタ18データのいずれかが示される点。(段落【0056】)」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 構成A、Gについて
引用発明の「患者の血糖レベル」は本件補正発明の「人間の検体レベル」に相当する。また、引用発明の「患者の血糖レベルを提供する線図」は、本件補正発明の「人間の検体レベルに関する情報」に相当する情報を含むものといえる。
引用発明の「傾向チャート600及びログブックノート」は、本件補正発明の「インタラクティブレポート」に相当する。
引用発明において、「患者の血糖レベルを提供する線図を含む傾向チャート600及びログブックノートを表示する」ことが、「患者の血糖レベルを提供する線図を含む傾向チャート600及びログブックノート」を生成し、「表示する」ものであることは、自明である。
以上より、引用発明の「患者の血糖レベルを提供する線図を含む傾向チャート600及びログブックノートを表示する方法」は、本件補正発明の「人間の検体レベルに関する情報を含むインタラクティブレポートを生成する方法」に相当する。
イ 構成Cについて
(ア)引用発明の「タブ511で選択された時間範囲の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付を、y軸602で、血糖レベルを提供する点としてプロットされている線図」は、本件補正発明の「グラフ」に相当する。
(イ)引用発明の「x軸601」、「測定の時間および日付」、「y軸602」及び「複数の血糖レベルを示す値」は、それぞれ、本件補正発明の「横軸」、「時刻」、「縦軸」及び「複数の検体レベルの大きさ」に相当する。よって、引用発明の「横軸に沿った時刻の表示」及び「縦軸に沿った複数の検体レベルの大きさの表示」は、それぞれ、本件補正発明の「横軸に沿った時刻の表示」及び「縦軸に沿った複数の検体レベルの大きさの表示」に相当する。
(ウ)引用発明において、「タブ511で選択された時間範囲の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付を、y軸602で、血糖レベルを提供する点としてプロットされている線図」における、「プロットされている」「血糖レベルを提供する点」は、「x軸601」による「測定の時間および日付」の情報を有しており、「y軸602」で示される「血糖レベル」の経時的な推移を把握することができるものであるから、本件補正発明の「前記人間の検体レベルの経時的トレース」に相当する。
(エ)引用発明において、「タイル611で示された関連付けられたタグに関する測定の種類を示す記号605」は、「プロットされている」「血糖レベルを提供する点」のうち、「タイル611で示された関連付けられたタグに関する」ものに付したものであることは明らかであるから、「プロットされている」「血糖レベルを提供する点」に沿って配置されるものといえる。
また、引用発明において、「低血糖または高血糖の場合」は、本件補正発明における「検体エピソード」が「発生」した場合に相当し、引用発明において、「低血糖または高血糖の場合に」「着色リング612」により「強調」された「記号605」は、本件補正発明の「エピソードインジケータ」に相当する。そして、引用発明の「着色リング612」により「強調」された「記号605」は、「時間範囲」における「低血糖または高血糖の場合」の発生回数に応じて複数ある場合があることは、明らかである。
(オ)上記(ア)~(エ)より、引用発明の
「タブ511で選択された時間範囲の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付を、y軸602で、血糖レベルを提供する点としてプロットされている線図であって、
x軸601に沿った測定の時間および日付の表示、
y軸602にそった複数の血糖レベルを示す値の表示、
タイル611で示された関連付けられたタグに関する測定の種類を示す記号605及び低血糖または高血糖の場合に記号605を強調する着色リング612と、を含む線図」
は、本件補正発明の
「(a)グラフであって、
横軸に沿った時刻の表示、
縦軸に沿った複数の検体レベルの大きさの表示、
前記人間の検体レベルの経時的トレース、及び
複数のエピソードインジケータであって、各々が、発生時に、検体エピソードの発生を示し、前記発生時によって、前記検体レベルの経時的トレースに沿って配置されるエピソードインジケータを含むグラフ」
に相当する。
ウ 構成Dについて
引用発明の「選択された時間範囲内の各単一の測定値が、関連するタイムスタンプと、各タグと、コメントとを含んで一覧表示される、ログブックノート」において、「各単一の測定値」は、「線図」における「着色リング612」により「強調」された「記号605」(構成c)に対応する「測定値」を含むことは明らかである。そして、引用発明における、「着色リング612」により「強調」された「記号605」に対応する「測定値」についての、「一覧表示される」「関連するタイムスタンプと、各タグと、コメント」は、本件補正発明の「複数の検体エピソードの」「リストであって、前記複数の検体エピソードの各々が、前記グラフ内に、対応するエピソードインジケータを有する、リスト」に相当する。
また、引用発明において、「選択された時間範囲内の各単一の測定値が、関連するタイムスタンプと、各タグと、コメントとを含んで一覧表示される、ログブックノート」における「選択された時間範囲」が、「タブ511で選択された時間範囲」(構成c)と「スライダ607」により「選択」した「期間」(構成e)とにより選択されたものであることは明らかであるから、引用発明の「選択された時間範囲」は、「タブ511」(構成c)及び「スライダ607」(構成e)により調整可能なものであるといえる。
以上より、引用発明の「選択された時間範囲内の各単一の測定値が、関連するタイムスタンプと、各タグと、コメントとを含んで一覧表示される、ログブックノート」は、本件補正発明の「(b)複数の検体エピソードの調整可能なリストであって、前記複数の検体エピソードの各々が、前記グラフ内に、対応するエピソードインジケータを有する、リスト」に相当する。
エ 構成Eについて
引用発明は、「下側の列で示された「履歴」時間尺度609及びスライダ607」において、「スライダ607を使用すると、3ヶ月の線からどの期間を見たいかを選択することができる」ものであるから、「スライダ607を使用する」ことで、「3ヶ月」のうち「「履歴」時間尺度609」の「スライダ607」の位置に対応する期間について、「タブ511で選択された時間範囲の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付を、y軸602で、血糖レベルを提供する点としてプロットされている線図」(構成c)の表示が行われることは、明らかである。よって、引用発明における「下側の列で示された「履歴」時間尺度609及びスライダ607」と、引用発明の
「x軸601に沿った測定の時間および日付の表示」(構成c)とは、対応するものといえる。
また、引用発明は、「下側の列で示された「履歴」時間尺度609及びスライダ607」において、「スライダ607を使用すると、3ヶ月の線からどの期間を見たいかを選択することができる」ものであり、当該「選択」により、「タブ511で選択された時間範囲の各測定値が、x軸601で測定の時間および日付を、y軸602で、血糖レベルを提供する点としてプロットされている線図」(構成c)及び「選択された時間範囲内の各単一の測定値が、関連するタイムスタンプと、各タグと、コメントとを含んで一覧表示される、ログブックノート」(構成d)における「時間範囲」が調整されることは明らかであるから、「下側の列で示された「履歴」時間尺度609及びスライダ607」は、「線図」(構成c)と「ログブックノート」(構成d)とにおいて表示する「時間範囲」を設定する、調整可能なフィルターとしての機能を有するといえる。
引用発明において、「スライダは、「履歴」時間尺度609に沿った所定の長さを有する長方形と、長方形の左右両端から上方に突出する線とからな」るから、「スライダ607」の左側端部及び右側端部の「上方に突出する線」が、それぞれ、「3ヶ月の線から」「見たいかを選択する」「期間」の始点及び終点、すなわち、最も早い時刻及び最も遅い時刻を指すものであることは、明らかである。よって、引用発明の「スライダ」の左側端部及び右側端部の「上方に突出する線」は、それぞれ、本件補正発明の「最も早い時刻に対応する第1のマーカー」及び「最も遅い時刻に対応する第2のマーカー」に相当する。
以上より、引用発明の「下側の列で示された「履歴」時間尺度609及びスライダ607であって、「履歴」時間尺度609に沿って日付が表示されており、スライダ607は、「履歴」時間尺度609に沿った所定の長さを有する長方形と、長方形の左右両端から上方に突出する線とからなり、スライダ607を使用すると、3ヶ月の線からどの期間を見たいかを選択することができる、「履歴」時間尺度609及びスライダ607」は、本件補正発明の構成Eと、「(c)前記グラフにおける時刻の表示に対応し、最も早い時刻に対応する第1のマーカーおよび最も遅い時刻に対応する第2のマーカーを含む、ユーザーが調整可能なフィルター」である点で共通する。
オ 構成B1、B2について
引用発明において、「スマートフォンなどの移動デバイスのハードウェアで動作するソフトウェアプログラムによって」「傾向チャート600を表示し、」「ログブックノート」「を表示する」際には、「ソフトウェアプログラム」により、「スマートフォンなどの移動デバイスのハードウェア」の処理回路が、「傾向チャート600」と「ログブックノート」の「表示」を行うことは、明らかである。
また、引用発明において、「線図」(構成c)と「「履歴」時間尺度609及びスライダ607」(構成e)と「を有する傾向チャート600を表示」することは、「線図」と「「履歴」時間尺度609及びスライダ607」とを同時表示させることといえる。
以上より、引用発明において、「スマートフォンなどの移動デバイスのハードウェアで動作するソフトウェアプログラムによって」、「線図と」「「履歴」時間尺度609及びスライダ607と」「を有する傾向チャート600を表示し」、「ログブックノート」「を表示する」ステップは、本件補正発明において、「処理回路によって」、「グラフ」、「リスト、および」「フィルターを」、「同時表示させるステップ」と、「処理回路によって」、「グラフ」、「リスト、および」「フィルターを」表示し、「グラフ」と「フィルター」とは「同時表示させるステップ」である点で共通する。
カ 構成Fについて
引用発明は、「スライダ607を使用すると、3ヶ月の線からどの期間を見たいかを選択することができる」(構成e)ものであるから、「スライダ607」の使用に応じて「期間」を変更するために、「スマートフォンなどの移動デバイスのハードウェア」の処理回路が「スライダ607」が使用されたことを示す指示を監視していることは、明らかである。
よって、引用発明は、構成Fに相当する構成を有するものといえる。
(4)一致点、相違点
上記(3)のとおりであるから、本件補正発明と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イ~ウの点で相違する。
ア 一致点
「A 人間の検体レベルに関する情報を含むインタラクティブレポートを生成する方法であって、該方法は、
B1 処理回路によって、
C (a)グラフであって、
横軸に沿った時刻の表示、
縦軸に沿った複数の検体レベルの大きさの表示、
前記人間の検体レベルの経時的トレース、及び
複数のエピソードインジケータであって、各々が、発生時に、検体エピソードの発生を示し、前記発生時によって、前記検体レベルの経時的トレースに沿って配置されるエピソードインジケータを含むグラフ、
D (b)複数の検体エピソードの調整可能なリストであって、前記複数の検体エピソードの各々が、前記グラフ内に、対応するエピソードインジケータを有する、リスト、および
E’ (c)前記グラフにおける時刻の表示に対応し、最も早い時刻に対応する第1のマーカーおよび最も遅い時刻に対応する第2のマーカーを含む、ユーザーが調整可能なフィルターを、
B2’表示させ、グラフとフィルタを同時表示させるステップと、
F ユーザーが前記調整可能なフィルターを調整したことを示す指示を、前記処理回路によって監視するステップと
G を備える方法。」
イ 相違点1(構成Eについて)
本件補正発明は、「前記第1のマーカーは、前記第2のマーカーに対して独立して調整することができる」と特定されているのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。
ウ 相違点2(構成B2について)
本件補正発明は、「グラフ」、「リスト、および」、「フィルターを」、「同時表示させる」と特定されているのに対し、引用発明は「線図」(グラフ)と「「履歴」時間尺度609及びスライダ607」(フィルター)とは同時表示させているものの、「ログブックノート」(リスト)は同時表示させていない点。
(5)相違点について
ア 相違点1
時系列のデータの表示方法において、表示する期間の範囲を選択するために、最も早い時点に対応する第1のマーカーと、最も遅い時点に対応する第2のマーカーとを用い、第1のマーカーと第2のマーカーとは、互いに独立して調整することができるようにすることは、例えば、特開2013-246671号公報(段落【0032】、【0033】、【0040】、【0046】、第4、6図参照)、米国特許出願公開第2002/0154173号明細書(段落[0041]~[0043]、Fig.3~5参照)に例示されているように、周知技術にすぎない。
そして、引用発明と上記周知技術とは、時系列のデータを表示する方法において表示する範囲を選択可能とするものであり、さらに、第1のマーカーと第2のマーカーとを用いるものである点でも共通するものである。また、引用発明において、表示する範囲を選択するための具体的な態様は、公知の態様の中から当業者が適宜選択すべきものであるから、引用発明における、「タブ511で」「時間範囲」を「選択」し、「スライダ607を使用すると、3ヶ月の線からどの期間を見たいかを選択する」構成に代えて、上記周知技術を適用し、「スライダ607」の左側端部の「上方に突出する線」(第1のマーカー)及び右側端部の「上方に突出する線」(第2のマーカー)を、上記周知技術を適用して互いに独立して調整することができるようにし、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2
(ア)引用文献2記載事項における「連続血糖モニタの読み」は、本件補正発明の「検体レベル」に相当し、引用文献2記載事項における「連続血糖モニタの読みが、連続線グラフとして表示されるセンサおよびメータデータ」は、本件補正発明の「人間の検体レベルの経時的トレース」を含む「グラフ」に相当する。
引用文献2記載事項において、「アラーム/イベント/マーカー表」は、本件補正発明の「リスト」に相当する。また、引用文献2記載事項において、「血糖モニタ18データ」は、検体に関する情報であるといえる。よって、引用文献2記載事項において、「血糖モニタ18データ」「が示される」「アラーム/イベント/マーカー表」は、本件補正発明における、「検体」に関する「リスト」に相当する。
引用文献2記載事項において、「下部に示され」る「センサおよびメータデータ」と、「上側部に示され」る「アラーム/イベント/マーカー表」が、「スクリーンに」同時に「表示される」ことは、明らかである。
以上より、引用文献2記載事項は、人間の検体レベルの経時的トレースを含むグラフと、検体に関するリストとを、同時に表示する構成を有しているといえる。
(イ)引用発明と引用文献2記載事項とは、血糖に関するデータの表示方法に関し、血糖に関するグラフと、血糖に関するリストとを表示するものである点で、共通するものである。
また、電子機器等において情報を表示する方法において、一つの画面上にどのような情報を同時に表示するかは、画面の大きさとそれに応じた視認性を確保しつつ表示可能な情報の量、複数の情報における同時に確認可能とすることの必要性等を総合的に考慮して、当業者が適宜設定し得るものであることを考慮すれば、引用発明1において、引用文献2記載事項の構成を適用し、「線図」(グラフ)と「「履歴」時間尺度609及びスライダ607」(フィルター)と「を有する傾向チャート600」及び「ログブックノート」(リスト)を同時に表示するものとし、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(6)効果について
本件補正発明により奏される効果も、引用発明、引用文献2記載事項及び上記周知技術から当業者が予期し得るものであり、格別顕著なものではない。
(7)請求人の主張について
ア 請求人は、令和6年12月2日提出の審判請求書において、
「しかし、引用文献1において指定できる期間(時間区間)も、スライダ607もあくまで固定であり、本願発明のような独立した第1のマーカーおよび第2のマーカーにより期間を調整するものでもありません。すなわち、第1のマーカーおよび第2のマーカーが、それぞれスライダ607の左端および右端に対応していると認定されていますが、スライダ607が図面上一定の長さをもって描かれているにすぎず、この一定の長さは何らかの期間や間隔を示すものではなく、まして「最も早い時刻」や「最も遅い時刻」に対応するものではないことは明らかであり、独立した個別の2つのアイコン(第1のマーカーおよび第2のマーカー)が、サイズの固定された単一のアイコンの左端と右端に対応すると認定するのは、本技術分野の技術常識からしても明らかに失当であると言わざるを得ません。以上の通り、引用文献1に開示されているスライダ607は、本願発明の第1のマーカーおよび第2のマ
ーカーに対応するものではないものと思料します。・・・この点を明確にするため、上述の補正により、請求項1および8について、「前記第1のマーカーは、前記第2のマーカーに対して独立して調整することができる」ことを明確にする補正を行いましたが、このような特異な構成は、引用文献1および2には開示も示唆もないものと思量します。」
との主張をしているので、以下検討する。
引用発明1において、「スライダ607」は、点等の形状ではなく、「「履歴」時間尺度609に沿った所定の長さを有する長方形」を有するものであり、さらに、当該「長方形の左右両端から上方に突出する線」を有するものであるから、「左右両端から上方に突出する線」が、それぞれ時間範囲における「最も早い時刻」及び「最も遅い時刻」に対応するものであることは、明らかである。また、請求人の主張するとおり、「スライダ607が図面上一定の長さをもって描かれているにすぎず、この一定の長さは何らかの期間や間隔を示すものではなく、まして「最も早い時刻」や「最も遅い時刻」に対応するものではない」と解釈しようとした場合、「長方形の左右両端から上方に突出する線」がなぜ存在するのかわからないものとなるし、図6において、「スライダ607」を構成する長方形は、横長の長方形である必要はないから、そのように解釈するのが合理的であるとはいえない。そして、上記(5)アで示したとおり、最も早い時点に対応する第1のマーカーと、最も遅い時点に対応する第2のマーカーとを用い、第1のマーカーと第2のマーカーとは、互いに独立して調整することができるようにすることは、周知技術にすぎず、引用発明において、上記周知技術を適用することも、当業者が容易に想到し得たことであるから、請求人の上記主張は採用できない。
また、仮に請求人の主張するとおり「スライダ607が図面上一定の長さをもって描かれているにすぎず、この一定の長さは何らかの期間や間隔を示すものではなく、まして「最も早い時刻」や「最も遅い時刻」に対応するものではない」と解釈したとしても、上記周知技術を適用し、「タブ511」及び「スライダ607」に代えて、最も早い時点に対応する第1のマーカーと、最も遅い時点に対応する第2のマーカーとを用い、第1のマーカーと第2のマーカーとは、互いに独立して調整することができるようにすることは当業者が容易に想到し得たことであるから、請求人の上記主張により、本件補正発明が進歩性を有するものとなるとはいえない。
イ 請求人は、令和7年2月26日提出の上申書(以下「上申書」という。)において、「すなわち、拒絶査定では第1のマーカーおよび第2のマーカーが、それぞれ引用文献1における、スライダ607の左端および右端に対応していると認定されていますが、審判請求理由で述べている通り、スライダ607が図面上一定の長さをもって描かれているにすぎず、この一定の長さは何らかの期間や間隔を示すものではなく、まして「最も早い時刻」や「最も遅い時刻」に対応するものではないことは明らかであり、独立した個別の2つのアイコン(第1のマーカーおよび第2のマーカー)が、サイズの固定された単一のアイコンの左端と右端に対応するとの認定は、本技術分野の技術常識からしても明らかに失当であると言わざるを得ず、引用文献1に開示されているスライダ607の左端および右端は、本願発明の第1のマーカーおよび第2のマーカーに対応するものではないものと思料します。」との主張をしているが、上記アと同様の理由により、請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人は、上申書において、「つまり、引用文献1の例えば図6には、グラフの下部に時間尺度609上のスライダ607をスライドさせると、例えば3ヶ月の線からどの期間(時間セクション)を見たいかを選択することができることが記載されていますが、スライダ607はあくまで1つの固定された期間を示すだけであって、本願発明のような2つのマーカーにより期間を特定して表示内容を調整するというものではありませんし、当業者であってもこのような記載から本願発明を容易に想到できるものではありません。この点を明確にするため、上述の補正により、請求項1および8について、「前記第1のマーカーは、前記第2のマーカーに対して独立して調整することができる」ことを明確にする補正を行いましたが、このような特異な構成は、引用文献1および2には開示も示唆もないものと思料します。」との主張をしているが、引用発明は、「タブ511」と「スライダ607」により、「3ヶ月の線」のうち、どの「時間範囲」「を見たいかを選択することができる」ものといえ、当該「タブ511」と「スライダ607」の機能として、上記周知技術の態様を採用することは、当業者が容易に想到し得ることであるから、請求人の上記主張は採用できない。
(8)小括
以上より、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正却下の決定についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、令和6年5月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に示した請求項1の記載により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
理由1(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2015/040167号
引用文献2:特表2003-527142号公報
3 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2の記載事項、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2記載事項は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)本願発明は、上記第2の[理由]2で独立特許要件の検討をした本件補正発明から、「前記第1のマーカーは、前記第2のマーカーに対して独立して調整することができる」との発明特定事項を削除して拡張したものである。
(2)本願発明と引用発明との対比は、上記第2の[理由]2(3)で示したとおりである。
本願発明は、本件補正発明から上記(1)で示した発明特定事項を削除して拡張したものであって、当該削除した発明特定事項は、上記第2の[理由]2(4)イで示した相違点1に係る事項であるから、本願発明と引用発明とは、上記第2の[理由]2(4)ウで示した相違点2によってのみ相違し、その余の点で一致するといえる。
そして、上記第2の[理由]2(5)イで検討したのと同様の理由により、引用発明において、引用文献2記載事項の構成を適用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
以上より、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-019256