商標拒絶査定不服審判
2022-010155
- 審判番号
- 2022-010155
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-122583
- 請求日
- 2022年06月30日
- 審決日
- 2024年01月04日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】達野 大輔
- 【請求人代理人】竹中 陽輔
- 【請求人代理人】中山 真理子
- 【請求人代理人】山頭 めぐみ
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 渡邉 あおい
- 審判官 藤村 浩二
- 分類
- T18 .13 -Z (W10) / T18 .17 -Z (W10)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、商標法第4条第1項第18号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-122583拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和2年10月5日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年8月13日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月19日 :意見書の提出
令和4年3月29日付け:拒絶査定
令和4年6月30日 :審判請求書の提出
2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなる立体商標であり、第10類「医療用血糖監視装置」を指定商品として登録出願されたものである。
3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、別掲1のとおりの商標記載欄の記載及び立体商標である旨の記載から把握されるものであるところ、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「医療用血糖監視装置」の機能又は美感に資する目的のために採用された「医療用血糖監視装置」の形状の一形態であると認識するにとどまるものといえるから、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 立体商標における商品の形状に係る判示
(ア)商品又は商品の包装(以下「商品等」という。)の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。
このように、商品の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品等の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品等の形状は、多くの場合、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
(イ)また、商品等の具体的形状は、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品等の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。
しかし、同種の商品等について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。
(ウ)さらに、商品等に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、同法第3条第1項第3号に該当するというべきである。
その理由として、商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に、商品等の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10555号判決、平成19年(行ケ)第10215号判決、平成22年(行ケ)第10253号判決)。
イ 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
本願商標は、別掲1のとおり、高さの低い偏平な略円柱形及びその底面に接するように当該略円柱形の底面より大きくて厚みがほぼない円板形が組み合わされており、略円柱形の上面中央に小さい歯車状のものが埋没するように配され、略円柱形の側面を一周するように波状の模様ないし装飾が施された立体的形状からなるものである。
そして、本願商標の指定商品を扱う分野において、原審で示した別掲2のとおり、偏平な円形ないし略円柱形のセンサーや丸みを帯びた薄型形状のセンサーが存在することが認められる。
そうすると、本願商標の立体的形状における、高さの低い偏平な略円柱形及びその底面部に接するように当該略円柱形の底面より大きく厚みがほぼない円板形の組合せは、本願商標の指定商品について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものといえる。
また、本願商標の立体的形状における、略円柱形の上面中央に埋没するように配された小さい歯車状のものや、略円柱形の側面を一周するように施された波状の模様ないし装飾についても、商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものといえるものであり、そのようには認識されないというべき特段の事情は見いだせない。
してみると、本願商標の立体的形状は、客観的にみて、本願商標の指定商品である「医療用血糖監視装置」について、機能又は美感に資することを目的として採用されたものとみるのが相当であり、また、「医療用血糖監視装置」の形状として、需要者において、機能又は美感に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものといえ、結局のところ、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、自他商品の識別標識として認識し得ないものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は、請求人(法人)の技術部門の職員が宣誓した宣誓書(参考資料2)を提出した上で、本願商標の立体的形状は、実際に製造するには多くのステップと考慮事項が必要であり、「恣意性」がある旨、また、円形形状とすることによって、普通に用いられない方法で表示するという「特段の事情」がある旨主張している。
ところで、請求人のいうところの「恣意性」とは、上記宣誓書における「・・・、利用可能な代替デザインがある、すなわち、形状の恣意性がある・・・」(参考資料2-2、3ページ)との記載から、「利用可能な代替デザインがある」ことをいっているものと思われる。
そして、上記ア(イ)のとおり、同種の商品等について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。
そうすると、たとえ利用可能な代替デザインがあったとしても、また、製造するには多くのステップと考慮事項が必要であったとしても、上記イのとおり、本願商標の立体的形状は、機能又は美感に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものと判断するのが相当であって、円形形状とすることが「特段の事情」に当たるとはいえない。
(イ)請求人は、「偏平」で、かつ、「丸い」形状は我が国の市場においては、請求人の「医療用血糖監視装置」のみであり、加えて、円形状の中央に付された歯車を模したような模様や、側面部に波を模したような模様が付されていることから、本願商標の自他商品識別力が認められるべきである旨主張している。
また、請求人は、請求人の「医療用血糖監視装置」が紹介されている数件のウェブサイト(参考資料4)を示した上で、当該商品が「五百円玉程度のセンサー」、「500円玉大の丸いセンサー」又は「500円玉大の小型の丸いセンサー」のように記載され、丸い500円玉大のセンサーの形状そのものが自他商品の識別力を有している旨主張している。
請求人の提出に係る参考資料4によれば、数件のウェブサイトにおいて、請求人の「医療用血糖監視装置」が「五百円玉程度のセンサー」、「500円玉大の丸いセンサー」又は「500円玉大の小型の丸いセンサー」のように紹介されていることが認められる。
しかしながら、これらの紹介記事は、いずれも500円玉程度の大きさであることや丸い形状をしていることといった商品の形状の特徴を単に説明しているものであって、500円玉程度の大きさであることや丸い形状をしていることそれ自体が自他商品の識別標識として機能していることを示すものではない。
また、当該ウェブサイトにおいて、本願商標の立体的形状における、略円柱形の上面中央に埋没するように配された小さい歯車状のものや、略円柱形の側面を一周するように施された波状の模様ないし装飾について、特筆している記載は何ら見当たらない。
そして、別掲2のとおり、偏平な円形ないし略円柱形のセンサーや丸みを帯びた薄型形状のセンサーが存在することをも踏まえれば、本願商標が自他商品の識別力を有するということはできない。
(ウ)請求人は、本願商標の同様の「偏平」かつ「丸い」形状が米国や他の国で意匠登録されていることを示した上で、本願商標は「医療用血糖監視装置」そのものの機能をそのまま表す形状ではない旨、グッドデザイン賞を受賞していることから、本願商標はありきたりな美感に資する目的で採用されたものではない旨、本願商標が他国において商標登録されていることを示した上で、本願商標の独占使用を認めることが公益上適当である旨主張している。
しかしながら、意匠登録と商標登録とではその要件を異にするものであり、また、グッドデザイン賞はあくまでもデザインが評価されたことを示すものであり、他国における商標登録は我が国における自他商品の識別力を直接示すものではないから、請求人の当該主張によって、上記イの判断が左右されるものではない。
(エ)以上のとおり、請求人の主張はいずれも採用できない。
(2)商標法第3条第2項該当性について
ア 請求人は、仮に、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、本願商標は使用による識別力を獲得している旨を主張しているので、本願商標の同条第2項該当性について、以下判断する。
イ 商標法第3条第2項に係る判示
商品等の立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標ないし商品等の形状、使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模、当該形状に類似した他の商品等の存否などの諸事情を総合考慮して判断するのが相当である。
そして、使用に係る商標ないし商品等の形状は、原則として、出願に係る商標と実質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するというべきである(上記(1)アに係る知的財産高等裁判所判決)。
また、一般に、商品等の形状に接する需要者は、当該形状は、商品等の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所識別標識のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえることからすると、当該立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかの判断に当たっては、当該立体的形状が需要者の目に付きやすく、強い印象を与えるものであったかについても勘案して判断すべきである。
ウ 本願商標の商標法第3条第2項該当性について
(ア)事実認定
請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
a 請求人は、本願商標の立体的形状からなる「医療用血糖監視装置」(以下「請求人商品」という。)を、2016年10月に日本において販売を開始し、現在までの日本における総売上高は約2.7億USドルに上り、また、日本国内に20社以上の販売代理店を有しており、これらの代理店を通じて日本全国に商品を販売しており、加えて、請求人商品の市場シェアは、2021年においては一般的なグルコースモニター全体の約20%であり、日本において1日に数回インシュリンを投与する患者の間で第1位の市場シェアを獲得した(参考資料8-2)。
b 請求人は、自身のウェブサイトで請求人商品に関する広告を行っており(参考資料8-2別紙2)、そのウェブサイトのアクセス数は、2021年1月1日から2022年6月6日の間に330万を超え、80万人近くの新規消費者が訪れている(参考資料8-2別紙3)。また、請求人商品に関するパンフレットも配布している(参考資料8-2別紙4)。
c 2016年10月の導入から今日に至るまで、請求人商品の広告に、合計で約1,450万ドルが費やされた(参考資料8-2)。
d 請求人商品が、2017年に公益財団法人日本デザイン振興会主催のグッドデザイン賞を受賞している(参考資料6)。
e 2022年に請求人商品に関する保険適用の対象者が増えることになった際に、新聞やウェブ等の約50以上の媒体がそのニュースを採りあげており(参考資料8-2別紙1)、また、現在においても、請求人商品を紹介するウェブサイトがある(参考資料4)。
f 請求人のウェブサイト(参考資料8-2別紙2)、請求人商品に関するパンフレット(参考資料8-2別紙4)及び請求人商品に関する新聞やウェブ等の記事(参考資料4、参考資料8-2別紙1)の一部には、請求人商品の画像が掲載されているが、これらの画像は、いずれも、殊更に大きく顕著に表示されているものではない。
g 請求人のウェブサイト(参考資料8-2別紙2)、請求人商品に関するパンフレット(参考資料8-2別紙4)及び請求人商品に関する新聞やウェブ等の記事(参考資料4、参考資料8-2別紙1)において、請求人商品は、常に「FreeStyleリブレ」の文字からなる商標とともに広告又は紹介されている。
(イ)判断
a 上記(ア)で認定した事実によれば、本願商標の立体的形状からなる「医療用血糖監視装置」である請求人商品は、2016年に販売が開始され、その販売数及び売上高は相当程度あり、請求人のウェブサイトやパンフレットにおいて広告宣伝がされ、その広告費用も相当程度あり、加えて、新聞、雑誌及びウェブサイトで紹介されていることなどが認められる。
そうすると、請求人商品それ自体は、需要者の間に一定程度認識されていることがうかがえる。
b しかしながら、請求人商品に関する広告及び紹介記事において、請求人商品の画像が殊更に大きく顕著に表示されているものではなく、また、請求人商品の広告又は紹介が常に「FreeStyleリブレ」の文字からなる商標とともにされている事実に鑑みれば、本願商標の立体的形状が、需要者の目に付きやすく、強い印象を与えているものとは認められない。
c そうすると、請求人の提出した証拠によっては、本願商標がその指定商品「医療用血糖監視装置」に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとはいまだ認めることができない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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