2020-014266
復号装置及び復号方法
- 審判番号
- 2020-014266
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-523480外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年10月12日
- 審決日
- 2021年12月21日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
- 【請求人代理人】新居 広守
- 【請求人代理人】寺谷 英作
- 【請求人代理人】道坂 伸一
- 分類
- P18 .121-Z (H04N) / P18 .575-Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、2018年(平成30年)5月30日(パリ条約による優先権主張 2017年6月5日、米国)を国際出願日とするものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 令和2年10月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年10月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
令和2年10月12日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和2年2月18日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1および2を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1および2に補正するものであり、本件補正は、補正前の請求項2を補正後の請求項2とする補正事項を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。
(補正前の請求項2)
【請求項2】
第1動作モードでは、
動画像に含まれる画像を分割した予測ブロック単位で第1動きベクトルを導出し、
前記第1動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照して予測画像を生成する第1動き補償処理を行い、
第2動作モードでは、
前記予測ブロックを分割したサブブロック単位で双方向予測の第2動きベクトルを導出し、
前記第2動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する第2動き補償処理を行う
復号方法。
(補正後の請求項2)
【請求項2】
動き補償処理を行う復号方法であって、前記動き補償処理は第1動作モード及び第2動作モードを含み、
前記第1動作モードでは、
動画像に含まれる画像を分割した予測ブロック単位で第1動きベクトルを導出し、
前記第1動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照して予測画像を生成する第1動き補償処理を行い、
前記第2動作モードでは、
前記予測ブロックを複数に分割したサブブロック毎に、サブブロック単位で双方向予測の第2動きベクトルを導出し、
前記第2動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する第2動き補償処理を行う
復号方法。
2 補正の適合性
(1)補正の目的について
請求項2に係る補正は、
(i)補正前の請求項2に係る発明が「第1動作モードでは」「第1動き補償を行い」「第2動作モードでは」「第2動き補償を行う」「復号方法。」と特定されていたのに対して、請求項2の最初に「動き補償処理を行う復号方法であって、前記動き補償処理は第1動作モード及び第2動作モードを含み、」という発明の前提を示す記載を追加するとともに、「第1動作モード」及び「第2動作モード」の前に「前記」という記載を追加する補正、及び、
(ii)補正前の請求項2に係る発明の「予測ブロックを分割したサブブロック単位で双方向予測の第2動きベクトルを導出」という事項を、「予測ブロックを複数に分割したサブブロック毎に、サブブロック単位で双方向予測の第2動きベクトルを導出」という事項とする補正である。
上記(i)は、補正前の「復号方法」が「動き補償処理を行う」「復号方法」であり、「動き補償処理」として「第1動作モード及び第2動作モードを含」むものとして補正することで限定するものであり、(ii)は、補正前の「双方向予測の第2動きベクトルを導出」する単位である「予測ブロックを分割したサブブロック単位」を、「予測ブロック」を「複数に分割したサブブロック毎に」、「サブブロック単位で」「双方向予測の第2動きベクトルを導出」すると補正することで限定するものであり、これらを総合すると、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえる。
そして、いずれの補正も本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項2に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わるものではなく、同一であるといえるから、請求項2に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号の規定に適合するものである。
(2)補正の範囲及び単一性について
本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下、明細書等という)には、以下の記載がある。(下線は、強調のため当審で付したものである。)
「【0227】以上のように、符号化装置100は、図15に示す処理を行う。なお、復号装置200における処理も同様である。符号化装置100は、第1動作モードでは、(S111で第1動作モード)、第1画面間予測方式により、動画像に含まれる画像を分割した予測ブロック単位で第1動きベクトルを導出し(S112)、予測ブロック単位で、導出された第1動きベクトルを用いた第1動き補償処理を行う(S113)。ここで第1動き補償処理は、例えば、BIO処理であり、導出された第1動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照して予測画像を生成する動き補償処理である。【0228】また、符号化装置100は、第2動作モードでは(S111で第2動作モード)、第2画面間予測方式により、予測ブロックを分割したサブブロック単位で第2動きベクトルを導出し(S114)、サブブロック単位で、第2動きベクトルを用いた第2動き補償処理を行う(S115)。ここで第2動き補償処理とは、例えば、BIO処理を適用しない動き補償処理であり、第2動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する動き補償処理である。」
「[図:0001385594000001.jpg]」
上記の明細書等の記載によれば、上記補正事項は、【0227】、【0228】、【図15】の記載に裏付けられているものであるから、請求項2に係る補正は、本願出願時の明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。
また、請求項2に係る補正は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正前の請求項2に記載された発明と、本件補正後の請求項2に記載された発明は、発明の単一性の要件を満たすものといえ、請求項2に係る補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合するものである。
(3) 独立特許要件について
以上のように、請求項2に係る補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正後の請求項2に記載された発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
(3-1)本件補正発明
本件補正後の請求項2に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、次のとおりのものである。(なお、本件補正発明の各構成の符号は、請求項の記載を分説するために当審で付したものであり、請求項の記載を符号を用いて、以下、発明特定事項A~発明特定事項D2と称する。)
(本件補正発明)
A 動き補償処理を行う復号方法であって、
B 前記動き補償処理は第1動作モード及び第2動作モードを含み、
C 前記第1動作モードでは、
C1 動画像に含まれる画像を分割した予測ブロック単位で第1動きベクトルを導出し、
C2 前記第1動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照して予測画像を生成する第1動き補償処理を行い、
D 前記第2動作モードでは、
D1 前記予測ブロックを複数に分割したサブブロック毎に、サブブロック単位で双方向予測の第2動きベクトルを導出し、
D2 前記第2動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する第2動き補償処理を行う
A 復号方法。
(3-2)引用文献等の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である、
Harmonization and improvement for BIO,STUDY GROUP 16-CONTRIBUTION 1045,ITU-T,2015年 9月,COM16-C1045-E,pp.1-3
には、以下の記載がある(括弧内に当審で作成した仮訳を添付する。また、下線は強調のために当審で付した。以下同様。)。
(ア)「2 IntroductionBIO(Bi-directional optical flow)[1] was proposed for inter blocks which have both forward and backward references. It was observed that it didn't work well with IC(illumination compensation)[2] and FRUC(merge mode based on frame rate up-conversion)[3] in HM-KTA software.」
(2 イントロダクション
BIO(双方向オプティカルフロー)[1]は前方参照及び後方参照を有するブロックの間について提案された。それはHM-KTAソフトウェアにおけるIC(輝度保証)[2]とFRUC(フレームレートアップコンバージョンを元にしたマージモード)[3]とは一緒にはうまく働かないことが観測された。)
(イ)「3.2 Harmonization between BIO and FRUCIn HM-14.0-KTA-2,BIO is not applied when a block is coded in FRUC mode.」
(3.2 BIOとFRUCの調和
HM-14.0-KTA-2では、ブロックがFRUCモードで符号化された場合、BIOは適用されない。)
(ウ)「6 Reference[1] E. Alshina, A. Alshin, J.-H. Min, K. Choi, A. Saxena, M. Budagavi, "Known tools performance investigation for next generation video coding", ITU - Telecommunications Standardization Sector, STUDY GROUP 16 Question 6, Video Coding Experts Group (VCEG), VCEG-AZ05, June. 2015,Warsaw,Poland.・・・・[3] J. Chen, W.-J. Chien, M. Karczewicz, X. Li, H. Liu, A. Said, L. Zhang, X. Zhao, " Further improvements to HMKTA-1.0", ITU - Telecommunications Standardization Sector, STUDY GROUP 16 Question 6, Video Coding Experts Group (VCEG), VCEG-AZ07, June. 2015, Warsaw, Poland.」
イ 引用文献1において参照される文献[1]
引用文献1の上記箇所ア(ア)において「[1]」として参照されている、上記ア(ウ)の[1]の文献である、
E. Alshina, A. Alshin, J.-H. Min, K. Choi, A. Saxena, M. Budagavi, "Known tools performance investigation for next generation video coding", ITU - Telecommunications Standardization Sector, STUDY GROUP 16 Question 6, Video Coding Experts Group (VCEG), VCEG-AZ05, June. 2015, Warsaw,Poland.2015年6月,pp.1-7(以下、参照文献1という)には、以下の記載がある。
「AbstractIn this contribution, several coding tools are evaluated on top of the HEVC version 1 together with tools proposed for HM-KTA. All these coding tools have been studied during HEVC development. Minor modification of tools is needed for efficient work together with already existed in HM-KTA tools. With the investigated coding tools, the coding performance of HM-KTA reaches 14% and 10%, on average for random access and all intra configurations respectively.1. IntroductionConsidering industry requests for necessity of further coding efficiency improvements, the Study Group 16 established three "ad hoc groups" (AHGs) related to next generation video coding standard during Strasbourg 2014 meeting. As part of the AHG on Coding Efficiency Improvement activity the technical work on coding performance improvement over HEVC version 1 started at Geneva 2015 meeting. Proposal from Qualcomm [1] becomes the starting point for HM-KTA (rc1).続きを表示(全16行)・・・In this contribution one more straight-forward extensions of HEVC design:・ Finer granularity arbitrary directional intra prediction,and 4 coding tools proposed for HEVC before:・ Bi-directional optical flow [2]・ Adaptive secondary transform [3],・ Multi-parameter Intra prediction [4],・ Multi-parameter CABAC probability up-date [5]are applied (Table 1).・・・2.2 Bi-directional optical flowThis tool is sample level motion refinement along optical flow trajectory under assumption of steady motion. It is applied only for “truly” bi-predicted PUs (only if POC information indicates that current picture is between L0 and L1 Reference pictures).」
(概要
この寄書では,いくつかのコーディングツールが、HM-KTAのために提案されたツールとともにHEVCバージョン1の上で評価される。これらのコーディングツールはすべて、HEVCの開発中に検討されたものである。既に存在するHM-KTAのツールと一緒に効率的に動作させるためには、ツールのわずかな修正が必要である。検討された符号化ツールを用いた場合、HM-KTAの符号化性能は、ランダムアクセス構成とオールイントラ構成の平均で、それぞれ14%と10%に達する。
1.序論
さらなる符号化効率向上の必要性を求める業界の要望を考慮し、STUDY GROUP 16では、2014年のストラスブール会議において、次世代映像符号化規格に関連する3つの「アドホックグループ」(AHG)を設立した。符号化効率向上に関するAHGの活動の一環として、HEVCバージョン1に対する符号化性能向上に関する技術作業が2015年のジュネーブ会議において開始された。Qualcommからの提案[1]がHM-KTA(rc1)の出発点となる。
・・・
この寄書では、HEVCの設計をさらに簡単に拡張したもの
- より細粒度の任意の方向性のイントラ予測
と、以前にHEVCで提案されてきた4つのコーディングツールである、
- 双方向オプティカルフロー[2]
- 適応型二次変換[3]
- マルチパラメータイントラ予測[4]
- マルチパラメータCABAC確率更新[5]
が適用される。(表1))
・・・
2.2 双方向オプティカルフロー
このツールは一定の動きであることの仮定に基づくオプティカルフロー軌跡に沿ったサンプルレベルの動きを精緻化するものであり、“真に”双方向予測されたPUに対してのみ(現在ピクチャがL0参照ピクチャとL1参照ピクチャの間にあることをPOC情報が示す場合のみ)適用される。)
ウ 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2であり、上記参照文献1でもある、
E. Alshina, A. Alshin, J.-H. Min, K. Choi, A. Saxena, M. Budagavi, "Known tools performance investigation for next generation video coding", ITU - Telecommunications Standardization Sector, STUDY GROUP 16 Question 6, Video Coding Experts Group (VCEG), VCEG-AZ05, June. 2015, Warsaw, Poland. 2015年 6月,VCEG-AZ05,pp.1-7
には、双方向オプティカルフローについて、以下の記載がある。
「2.2 Bi-directional optical flow・・・Motion vector refinement {vx, vy} is calculated on a fly (not signalled) to minimize discrepancy between values A and B (Fig. 2).With {vx, vy} bi-prediction続きを表示(全15行)[図:0001385594000002.jpg]is modified as follows:[図:0001385594000003.jpg][図:0001385594000004.jpg]Where[図:0001385594000005.jpg]are gradients of predictions[図:0001385594000006.jpg]coming from L0 and L1 and[図:0001385594000007.jpg]is regularization parameter.」
(2.2 双方向オプティカルフロー
・・・
動きベクトル精緻化{vx、vy}はオンザフライで(シグナルされるのではなく)AとBの値の間の不一致を最小化するように計算される。(図2){vx、vy}を用いて、双方向予測
[図:0001385594000008.jpg]
は
[図:0001385594000009.jpg]
[図:0001385594000010.jpg]
と修正される。
ここで、
[図:0001385594000011.jpg]
はL0とL1から得られる予測値
[図:0001385594000012.jpg]
の勾配であり、
[図:0001385594000013.jpg]
は正規化パラメータである。)
エ 引用文献1において参照される文献[3]
引用文献1の上記箇所ア(ア)において「[3]」として参照されている、上記ア(ウ)の[3]の文献である、
J. Chen, W.-J. Chien, M. Karczewicz, X. Li, H. Liu, A. Said, L. Zhang, X. Zhao, " Further improvements to HMKTA-1.0", ITU - Telecommunications Standardization Sector, STUDY GROUP 16 Question 6, Video Coding Experts Group (VCEG), VCEG-AZ07, June. 2015, Warsaw, Poland, 2015年 6月,VCEG-AZ07_v2,pp.1-8
(以下、参照文献2という)には以下の記載がある。
「2 Technical descriptionInter prediction is improved in this contribution by applying the following four techniques: Local Illumination Compensation (LIC), Adaptive Motion Vector Resolution (AMVR), Extension of ATMVP and Frame Rate Up-Conversion (FRUC) mode.」
(2 技術的な記述
インター予測はこの寄書では後述の4つの技法を適用して改良されるものであり、その4つの技法とは、ローカル輝度保証(LIC)、適応的動きベクトル解像度(AMVR)、拡張ATMPVとフレームレートアップコンバージョンモード(FRUC)である。)
オ 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3であり、上記参照文献2でもある、
Jianle Chen, Wei-Jung Chien, Marta Karczewicz, Xiang Li, Hongbin Liu, Amir Said, Li Zhang, Xin Zhao, " Further improvements to HMKTA-1.0", ITU - Telecommunications Standardization Sector, STUDY GROUP 16 Question 6, Video Coding Experts Group (VCEG), VCEG-AZ07, June. 2015, Warsaw,Poland, 2015年 6月,VCEG-AZ07_v2,pp.1-8
には、フレームレートアップコンバージョンモードについて、以下の記載がある。
「2.2 Frame rate up-conversion mode・・・During the motion derivation process,an initial motion vector is first derived for the whole PU based on bilateral matching or template matching. First, the merge list of the PU is checked and the candidate which leads to the minimum matching cost is selected as the starting point. Then a local search based on bilateral matching or template matching around the starting point is performed and the MV results in the minimum matching cost is taken as the MV for the PU.Then the motion information is further refined at sub-block level with the derived CU/PU motion vectors as the starting points.As shown in the Figure 1, the bilateral matching is used to derive motion information of the current block by finding the best match between two blocks along the motion trajectory of the current block in two different reference pictures. Under the assumption of continuous motion trajectory, the motion vectors MV0 and MV1 pointing to the two reference blocks shall be proportional to the temporal distances, i.e., TD0 and TD1, between the current picture and the two reference pictures.」
(2.2) フレームレートアップコンバージョンモード
・・・
動き導出処理の際には、まず、バイラテラルマッチングまたはテンプレートマッチングに基づいて、PU全体の初期動きベクトルが導出される。最初に、PUのマージリストがチェックされ、マッチングコストが最小となる候補が出発点として選択され、次に、出発点の周りでバイラテラルマッチングまたはテンプレートマッチングに基づくローカル・サーチが実行され、マッチングコストが最小となったMVがPUのMVとされる。次に、導出されたCU/PUの動きベクトルを出発点として、サブブロックレベルで動き情報がさらに精緻化される。
図1に示すように、バイラテラルマッチングは、2つの異なる参照画像における現在のブロックの動きの軌跡に沿って、2つのブロック間の最適な一致を見つけることによって、現在のブロックの動き情報を導き出すために使用される。連続的な動きの軌跡を仮定すると、2つの参照ブロックを指す動きベクトルMV0およびMV1は、現在のピクチャと2つの参照ピクチャとの間の時間的な距離、すなわちTD0およびTD1に比例するものとする。)
カ 引用文献3とともに示される文献
上記引用文献3の格納場所である
https://www.itu.int/wftp3/av-arch/video-site/1506_War/VCEG-AZ07_v3.zip
に、引用文献3であるVCEG-AZ07_v2とともに格納されている、
VCEG-AZ07 -Further improvements to HMKTA-1.0, Jianle Chen, Wei-Jung Chien, Marta Karczewicz, Xiang Li, Hongbin Liu, Amir Said, Li Zhang, Xin Zhao Qualcomm,
https://www.itu.int/wftp3/av-arch/video-site/1506_War/VCEG-AZ07_v3.zipのVCEG-AZ07_v1.pdf
には、5枚目のスライド(以下、引用文献3とともに示される文献という)に以下の記載がある。
[図:0001385594000014.jpg]
(フレームレートアップコンバージョン(FRUC)モード
・動き情報はデコーダ側で導出される。
・特別なマージモードとして動作する
・2つのFRUCモード
・バイラテラルマッチング
・テンプレートマッチング
・2段階マッチング
・PUレベルマッチング
・PUレベルMVマッチングを開始点とするサブPUレベルマッチング)
(3-3) 引用発明および引用文献記載の事項の認定
(3-3-1)引用発明
ア 上記(3-2)アの引用文献1には、
・前方参照及び後方参照を有するブロックの間で提案された、BIO(双方向オプティカルフロー)が、HM-KTAソフトウェアにおけるFRUC(フレームレートアップコンバージョンを元にしたマージモード)と一緒にはうまく働かないこと、
・HM-14.0-KTA-2では、FRUCモードで符号化されたブロックにはBIOは適用されないこと
が記載されている。
イ 上記(3-2)イの参照文献1には、HM-KTAおよび双方向オプティカルフローに関して、以下の事項が記載されている。
・HEVCの開発中に検討された、いくつかのコーディングツールがHM-KTAのために提案されたツールとともに評価されたこと。
・次世代映像符号化規格に関連する「アドホックグループ」(AHG)において、符号化効率向上に関するAHGの活動の一環として、HEVCバージョン1に対する符号化性能向上に関する技術作業が開始され、Qualcommからの提案がHM-KTAの出発点となること。
・以前にHEVCで提案されたコーディングツールである、双方向オプティカルフロー、適応型二次変換、マルチパラメータイントラ予測、マルチパラメータCABAC確率更新、が適用されること。
・双方向オプティカルフローは双方向予測されたPUに対してのみ適用されるツールであること。
そうすると、参照文献1には、
HEVCバージョン1に対する符号化性能向上技術を出発点とするHM-KTAにおいて、HEVCの開発中に検討された、いくつかのコーディングツールがHM-KTAのために提案されたツールとともに、以前にHEVCで提案されたコーディングツールである、双方向オプティカルフロー、適応型二次変換、マルチパラメータイントラ予測、マルチパラメータCABAC確率更新が適用され評価され、そのうちの双方向オプティカルフローは双方向予測されたPUに対してのみ適用されるものであること、
が記載されている(以下、参照文献1記載の事項という)といえる。
ウ 上記(3-2)エの参照文献2は、HM-KTAおよび双方向オプティカルフローに関して言及する上記(3-2)ア(ア)において「[3]」として参照されていることから、HM-KTAおよび双方向オプティカルフローに関する文献であるといえる。
そして、上記参照文献2には、以下の事項が記載されているといえる。
・インター予測は後述の技法を適用して改良されるものであり、その技法とはフレームレートアップコンバージョンモード(FRUC)であること。
そうすると、参照文献2には、
FRUCはインター予測を改良するものであること、
が記載されている(以下、参照文献2記載の事項という)といえる。
エ ア、イ、ウによれば、参照文献1、2記載の事項を踏まえた引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。引用発明の各構成は、符号(a)~(d2)を用いて、以下、構成(a)~(d2)と称する。
(引用発明)
(a) HEVCバージョン1に対する符号化性能向上技術を出発点とするHM-KTAにおいて、
(b) HM-KTAのために提案されたツールとともに、HEVCの開発中に検討された、いくつかのコーディングツールが評価されたものであって、以前にHEVCで提案されたコーディングツールである、双方向オプティカルフロー、適応型二次変換、マルチパラメータイントラ予測、マルチパラメータCABAC確率更新、が適用され評価され、
(b)、(c) 前方参照及び後方参照を有するブロックの間で提案された、双方向予測されたPUに対してのみ適用される、BIO(双方向オプティカルフロー)が、
(b)、(d) HM-KTAソフトウェアにおけるインター予測を改良するものであるFRUC(フレームレートアップコンバージョンを元にしたマージモード)と一緒にはうまく働かず、
(d2)FRUCモードで符号化されたブロックにはBIOは適用されない
(a2) HM-14.0-KTA-2。
(3-3-2)引用文献2記載の事項
上記(3-2)ウによれば、引用文献2には
「双方向オプティカルフローにおいて、動きベクトル精緻化{vx、vy}を用いて、双方向予測[図:0001385594000015.jpg]は[図:0001385594000016.jpg]続きを表示(全13行)[図:0001385594000017.jpg]と修正される。ここで、[図:0001385594000018.jpg]はL0とL1から得られる予測値[図:0001385594000019.jpg]の勾配であり、[図:0001385594000020.jpg]は正規化パラメータである。」
ことが記載されている。(以下、引用文献2記載の事項という。)
(3-3-3)引用文献3記載の事項、引用文献3とともに示される文献記載の事項
上記(3-2)オによれば、引用文献3文献には、
・フレームアップコンバージョンモードは、動き導出処理の際には、バイラテラルマッチングに基づいて、PU全体の初期動きベクトルが導出され、マッチングコストが最小となったMVがPUのMVとされ、次に、導出されたCU/PUの動きベクトルを出発点として、サブブロックレベルで動き情報がさらに精緻化されるものであること、
・バイラテラルマッチングは、2つの異なる参照画像における現在のブロックの動きの軌跡に沿って、2つのブロック間の最適な一致を見つけることによって、現在のブロックの動き情報を導き出すために使用され、2つの参照ブロックを指す動きベクトルMV0およびMV1は、現在のピクチャと2つの参照ピクチャとの間の時間的な距離に比例すること、
が記載されている。(以下、引用文献3記載の事項という。)
また、上記(3-2)カによれば、引用文献3とともに示される文献には、
・フレームレートアップコンバージョン(FRUC)モードは、PUレベルマッチングと、PUレベルMVマッチングを開始点とするサブPUレベルマッチングの2段階マッチングからなること、
が記載されているといえる。(以下、引用文献3とともに示される文献記載の事項という。)
(3-4) 本件発明と引用発明との対比
次に、本件発明と引用発明とを対比する。
ア 発明特定事項Aについて
引用発明における構成(a)の「HEVCバージョン1に対する符号化性能向上技術を出発点とするHM-KTA」は、HEVCバージョン1に対する符号化性能向上技術を出発点とするものであるところ、HEVCバージョン1は動き補償を行う符号化方式における復号方法を規定するものであり、HM-KTAも同様に動き補償を行う復号方法を規定するものであって、本件補正発明の構成Aの「動き補償処理を行う復号方法」に相当する。
イ 発明特定事項B、C、Dについて
引用発明の構成(b)から、「HM-KTAのために提案されたツールとともに」「HEVCで提案されたコーディングツールである、双方向オプティカルフロー」「が適用され評価され」ること、構成(b)、(d)から、HM-KTAソフトウェアにおいてFRUC(フレームレートアップコンバージョンを元にしたマージモード)が含まれていることがいえる。
さらに、引用発明における構成(b)、(c)において、BIO(双方向オプティカルフロー)は双方向予測されたPUに対してのみ適用されることから、BIOを適用する前に、PUすなわち予測ユニットに対して双方向予測により動きベクトルを導出し、当該動きベクトルを用いて動き補償処理を行って予測画像を生成することが、引用発明における構成(b)、(d)において、FRUCはフレームレートアップコンバージョンを元にしたマージモードであって、インター予測を改良するものであることから、インター予測による動き補償処理を行うことが、それぞれ示されているといえる。
そうすると、引用発明は、共に動き補償処理を行う、「BIO(双方向オプティカルフロー)」というツールと「FRUC」というツールを適用したものであり、各ツールは動き補償処理における所定のモードということができるから、本件補正発明の構成Bと同様に「動き補償処理は第1動作モード及び第2動作モードを含」むといえる。ここで、引用発明の「BIO(双方向オプティカルフロー)」が適用される双方向予測、「FRUC」は、本件補正発明の構成BないしCの「第1動作モード」、構成BないしDの「第2動作モード」に、それぞれ対応する。
ウ 発明特定事項C1、C2について
上記イにおいても示したが、本件補正発明の構成Cの「第1動作モード」に対応する引用発明の構成(b)、(c)の「BIO(双方向オプティカルフロー)」が適用される双方向予測は、前方参照及び後方参照を有するブロックの間で提案された、双方向予測されたPUであることから、本件補正発明の構成C1の「動画像に含まれる画像を分割した予測ブロック単位で第1動きベクトルを導出」することに相当する構成を有するものであり、かつ、構成C2と「前記第1動きベクトルを用いた動き補償」により「予測画像を生成する第1動き補償処理を行」うものである点で共通する。
ただし、本件補正発明における構成C2の「第1動き補償処理」は、「動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照して」予測画像を生成するのに対して、引用発明の構成(b)、(c)の「BIO(双方向オプティカルフロー)」は、予測画像を生成する際に、「動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照して」いることについての特定がなされていない点で一応相違する。
エ 発明特定事項D1、D2について
上記イにおいても示したが、本件補正発明の構成Dの「第2動作モード」に対応する引用発明の構成(b)、(d)のFRUCは、インター予測を改良するものであることから、インター予測における動き補償処理を行うもの、すなわち、インター予測により動きベクトルを導出して、予測画像を生成する動き補償処理を行うものであるといえる。
また、引用発明の構成(d2)において、「FRUCモードで符号化されたブロックにはBIOは適用されない」以上、FRUCモードはBIOが適用される双方向予測とは明らかに異なる処理である。
そうすると、引用発明の構成(b)、(d)のFRUCは、本件補正発明の構成D1、D2と同様に、第1の動きベクトルとは異なる「第2動きベクトルを導出」し、「前記第2動きベクトルを用いた動き補償」により「予測画像を生成する第2動き補償処理を行」うものといえる。
ただし、本件補正発明の構成D1の「第2動きベクトルを導出」するには、予測ブロックを複数に分割したサブブロック毎に、サブブロック単位で双方向予測を行うのに対して、引用発明の構成(b)、(d)は、「予測ブロックを複数に分割したサブブロック毎に、サブブロック単位」で導出することについて特定されていない点、及び「双方向予測」を行うことで導出することについて特定されていない点で相違する。
また、本件補正発明における構成D2の「第2動き補償処理」は、「動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する」のに対して、引用発明の構成(b)、(d)や構成(d2)のFRUCは、「FRUCモードで符号化されたブロックにはBIOは適用されない」と特定されるだけで、「動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する」ことを特定しているわけではない点で相違する。
以上の対比に基づくと、本件補正発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
A 動き補償処理を行う復号方法であって、
B 前記動き補償処理は第1動作モード及び第2動作モードを含み、
C 前記第1動作モードでは、
C1 動画像に含まれる画像を分割した予測ブロック単位で第1動きベクトルを導出し、
C2’ 前記第1動きベクトルを用いた動き補償により予測画像を生成する第1動き補償処理を行い、
D 前記第2動作モードでは、
D1’ 第2動きベクトルを導出し、
D2’ 前記第2動きベクトルを用いた動き補償により予測画像を生成する第2動き補償処理を行う
A 復号方法。
(相違点)
(相違点1)
構成C2’の「第1動きベクトルを用いた動き補償により予測画像を生成する第1動き補償処理を行う」ことに関して、「予測画像を生成する」にあたり、本件補正発明は「動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照」するのに対して、引用発明の「BIO(双方向オプティカルフロー)」は、「動き補償により生成された画像における輝度の空間的勾配を参照する」ことについて特定されていない点。
(相違点2)
構成D1’の「第2動きベクトルを導出する」ことに関して、本件補正発明は「予測ブロックを複数に分割したサブブロック毎に、サブブロック単位で双方向予測」を行うのに対して、引用発明のFRUCは「予測ブロックを複数に分割したサブブロック毎に、サブブロック単位」で導出することについて特定されていない点、及び「双方向予測」を行うことで導出することについて特定されていない点。
(相違点3)
構成D2’の「前記第2動きベクトルを用いた動き補償により予測画像を生成する第2動き補償処理を行う」ことに関して、本件補正発明は「動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する」のに対して、引用発明のFRUCは「FRUCモードで符号化されたブロックにはBIOは適用されない」と特定されるだけで、「動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する」ことについての特定がなされていない点。
(3-5) 相違点に対する判断
相違点1について検討する。
上記引用文献2に記載された事項によれば、BIOを用いた双方向予測PBIOは、オプティカルフローを用いた予測POpticalFlowを用いること、及びPOpticalFlowは、L0とL1から得られる予測値
[図:0001385594000021.jpg]
の勾配である
[図:0001385594000022.jpg]
を含むことがいえる。
そうすると、引用発明におけるBIOは、引用文献2記載の事項を考慮すると、L0とL1から得られる予測値、すなわち動き補償により生成された画像、における輝度の空間的な勾配を参照して最終的な予測画像を生成する動き補償処理を行うものといえるが、これは上記相違点1の構成に他ならない。
すなわち、上記相違点1は実質的なものではないか、または、引用発明のBIOについて、引用文献2記載の事項を適用することで、上記相違点1の構成を想到することは、当業者にとって何ら困難なく為し得たものといえる。
次に、相違点2について検討する。
引用文献3記載の事項によれば、フレームアップコンバージョンモード、すなわちFRUCは、動き導出処理の際には、まずPU全体の初期動きベクトルが導出されること、次に、導出されたPUの動きベクトルを出発点として、サブブロックレベルで動き情報がさらに精緻化されることがいえる。
ここで、引用文献3記載の事項における「サブブロックレベルで動き情報がさらに精緻化される」とは、引用文献3とともに示される文献記載の事項を踏まえると、PUレベルでのマッチングによるMVマッチング(すなわち動きベクトルの導出)を開始点として、さらにサブPUレベルでのマッチングからなる、2段階のマッチング(動きベクトルの導出)が行われて、最終的にはサブブロック単位で動きベクトルを導出することを意味するものであって、ブロック単位でサブブロック精度を有する動きベクトルを導出するのではないといえる。
そうすると、引用文献3記載の事項は、FRUCは、予測ユニットであるPUを分割した単位であるサブPUレベル(すなわちサブブロック)毎に、サブPU(サブブロック)単位でのマッチングを行うものといえるが、これは上記相違点2の「予測ブロックを複数に分割したサブブロック毎に、サブブロック単位で」動きベクトルを導出することに相当する。
さらに、引用文献3記載の事項によれば、FRUCは、現在のブロックの動き情報を導出するために2つの異なる参照画像を使用し、2つの参照ブロックを指す動きベクトルMV0およびMV1を得ているといえるが、これはFRUCが上記相違点2の「双方向予測を行う」ことに他ならない。
以上から、引用発明におけるFRUCについて、引用文献3記載の事項を適用することで、上記相違点2の構成を想到することは、当業者にとって何ら困難なく為し得たものといえる。
続いて、相違点3について検討する。
本件明細書の【0227】には、
「以上のように、符号化装置100は、図15に示す処理を行う。なお、復号装置200における処理も同様である。符号化装置100は、第1動作モードでは、(S111で第1動作モード)、第1画面間予測方式により、動画像に含まれる画像を分割した予測ブロック単位で第1動きベクトルを導出し(S112)、予測ブロック単位で、導出された第1動きベクトルを用いた第1動き補償処理を行う(S113)。ここで第1動き補償処理は、例えば、BIO処理であり、導出された第1動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照して予測画像を生成する動き補償処理である。」、
【0228】には、
「また、符号化装置100は、第2動作モードでは(S111で第2動作モード)、第2画面間予測方式により、予測ブロックを分割したサブブロック単位で第2動きベクトルを導出し、(S114)、サブブロック単位で、第2動きベクトルを用いた第2動き補償処理を行う(S115)。ここで第2動き補償処理とは、例えば、BIO処理を適用しない動き補償処理であり、第2動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する動き補償処理である。」、
【0230】には、
「例えば、第1画面間予測方式は、第2画面間予測方式と異なる。具体的には、第2画面間予測方式は、互いに異なる2つのピクチャ内の2つの領域の2つの再構成画像の適合度合いを用いる画面間予測方式であり、例えば、FRUC方式である。」
という記載がある。
そうすると、本件実施例においては、符号化装置100ないし復号装置200は、S111において、
・第1画面間予測方式により、動画像に含まれる画像を分割した予測ブロック単位で第1動きベクトルを導出し、予測ブロック単位で、導出された第1動きベクトルを用いたBIO処理(導出された第1動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照して予測画像を生成する動き補償処理)を行う第1動作モードと、
・例えばFRUC方式である第2画面間予測方式により、予測ブロックを分割したサブブロック単位で第2動きベクトルを導出し、サブブロック単位で、第2動きベクトルを用いたBIO処理を適用しない動き補償処理であり、第2動きベクトルを用いた動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する動き補償処理を行う第2動作モード、
の何れかを選択的に行うといえる。
以上のことから、本件補正発明の構成D2における「動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像を生成する動き補償処理を行う」とは、例えばFRUC方式で動きベクトルを導出し、BIO処理を適用しない動き補償処理を行うことを含むものといえる。
そこで、引用発明の構成(d2)は、「FRUCモードで符号化されたブロックにはBIOは適用されない」という事項を特定していることから、上記(3-4)エの対比の内容を踏まえた引用発明のFRUCは「動き補償により生成された画像における輝度の空間的な勾配を参照せずに予測画像の生成を行う動き補償処理」であるといえるが、これは上記相違点3の構成に他ならない。
したがって、相違点3は実質的なものではない。
(4) 審判請求人の主張について
審判請求人は令和2年10月12日付け審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)特許されるべき理由」において「ウ.補正後の本願発明は進歩性を有すること」として、以下のような主張をしている。
(請求人の主張)
「(1)引用文献を組み合わせても、本願発明の構成は得られないこと(i)拒絶査定の指摘について拒絶査定では、審査官殿は、本願の第2動作モードが引用文献1に記載のFRUCに相当すると指摘するとともに、引用文献3にはFRUC処理の詳細が記載されていると指摘をしています。(ii)引用文献3に記載のFRUCモードについてここで、上記イ.に転載した引用文献3の記載によれば、FRUCモードは主に2段階のプロセスに分けて動きベクトルの導出を実施します。最初に、PUのマージリストから、マッチングコストが最小となる候補を開始地点(starting point)として選択し、開始地点の周囲にバイラテラルマッチング又はテンプレートマッチングを行うことで、マッチングコストが最小となる動きベクトルをPUの動きベクトルとして導出しています。この記載によれば、最初のプロセスでは、ブロック単位の動きベクトルが導出されます。次に、導出したPUの動きベクトルを開始地点として、サブブロックレベルで動き情報を改善(refine)しています。この“導出したPUの動きベクトルを開始地点(starting point)として”との記載によれば、最初のプロセスと同様、この開始地点の周囲にバイラテラルマッチング又はテンプレートマッチングを行うものと考えられます。しかしながら、この記載のように、導出したブロック単位の動きベクトルが示す地点を開始地点として、その周囲にバイラテラルマッチング又はテンプレートマッチングを行っても、導出されるベクトルは予測ブロックの1つの動きベクトルであり、ブロックを複数に分割したサブブロック毎の動きベクトルとはなりません。つまり、引用文献3のFRUCモードで導出される動きベクトルとは、サブブロックレベルの精度を有する1つのブロックの動きベクトルであって、ブロックを複数に分割したサブブロック毎に導出された、サブブロック単位の動きベクトルではありません。(iii)小括したがって、引用文献1と引用文献3とを組み合わせても、本願発明における第2動作モードの構成を得ることはできません。」
「(2)本願発明は有利な効果を奏すること本願発明によれば、サブブロック毎に、サブブロック単位で動きベクトルが導出される場合は、輝度の空間的な勾配を参照して予測画像を生成する処理(BIO処理)は適用されないため、BIO処理への入力はブロック単位の動きベクトルのみとなります。その結果、入力される動きベクトルの単位は1種類のみとなり、2種類のBIO処理の機能を実装させる必要がなくなるため、装置の実装を簡略化することができる、という効果を奏します(段落0197、0208)。また、本願明細書の段落0229に記載されているように、BIO処理では、予測ブロック単位よりも小さい単位で画像を補正して予測画像を生成することができます。そのため、本願発明では、「予測ブロック単位で導出された動きベクトル」についてはBIO処理を行い、「サブブロック毎にサブブロック単位で導出された動きベクトル」についてはBIO処理を行わないことにより、符号化効率の低下を抑制しながら、処理量を低減するという効果を奏します。」
上記主張について検討する。
「(1)引用文献を組み合わせても、本願発明の構成は得られないこと」について、上記(3-5)における(相違点2)についての判断のとおり、引用文献3とともに示される文献記載の事項を踏まえて引用文献3記載の事項を理解すれば、引用文献3記載の事項が意味するのは、FRUCは、ブロック単位でサブブロック精度を有する動きベクトルを導出する(すなわち、サブブロック精度を有する1つのブロックの動きベクトルを導出する)のではなく、ブロックを複数に分割したサブブロック毎にサブブロック単位の動きベクトルを導出することであるといえる。
そして、引用文献3記載の事項を引用発明のFRUCに適用することは当業者が容易になしえたものである。
また、「(2)本願発明は有利な効果を奏すること」について、引用発明において、引用文献1において参照される参照文献1、2に記載される事項でもある、引用文献2記載の事項、ならびに引用文献3記載の事項、を適用することで、本件補正発明の構成に至る以上、引用発明において上記の引用文献記載の事項を適用したものは、本件補正発明と同様に「符号化効率の低下を抑制しながら、処理量を低減する」という効果を奏するといえる。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。
(5) 小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、および引用文献2記載の事項、ならびに引用文献3記載の事項、に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本件発明について
1 本件発明
令和2年10月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年2月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項2に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記第2の1に示した(補正前の請求項2)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
令和2年6月5日付けの原査定における拒絶の理由の内容は、概略、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1-2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.Harmonization and improvement for BIO,STUDY GROUP 16 - CONTRIBUTION 1045,ITU-T,2015年 9月,COM16-C1045-E,pp.1-3
2.E.Alshina et al.,Known tools performance investigation for next generation video coding,ITU - Telecommunications Standardization Sector STUDY GROUP16 Question6 Video Coding Experts Group(VCEG),52nd Meeting: Warsaw, Poland,2015年 6月,VCEG-AZ05,pp.1-7
3.Jianle Chen et al.,Further improvements to HMKTA-1.0,ITU-Telecommunications Standardization Sector STUDY GROUP16 Question6 Video Coding Experts Group(VCEG),52nd Meeting: Warsaw, Poland,2015年 6月,VCEG-AZ07_v2,pp.1-8
3 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の2(3-3-1)アに示したとおりである。
また、引用文献1において参照されている文献である、参照文献1、2の記載事項は、上記第2の2(3-3-1)イ、ウに示したとおりであり、これらを踏まえた引用文献1に記載された発明(引用発明)は、上記第2の2(3-3-1)エに認定したとおりである。
4 対比、判断
本件発明は、本件補正発明から、
・「復号方法」が「動き補償処理を行う」ものであって、「前記動き補償処理は第1動作モード及び第2動作モードを含」むこと、「第1動作モード」及び「第2動作モード」がそれぞれ「前記」されていることについての発明特定事項を除くとともに、
・「第2動作モード」について「予測ブロックを複数に分割したサブブロック」から「複数」という発明特定事項と、「サブブロック毎に、サブブロック単位で双方向予測」の動きベクトルを導出することを「サブブロック単位で双方向予測」の動きベクトルを導出するとすることで、「サブブロック毎に」動きベクトルを導出するという発明特定事項を除くことで、
上位概念化したものである。
ところで、上記第2の2(3-5)の「相違点に対する判断」のとおり、本件補正発明は、引用発明、および引用文献2記載の事項、ならびに引用文献3記載の事項、に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、本件補正発明から上記発明事項を除いた本件発明も同様にして、引用発明、および引用文献2記載の事項、ならびに引用文献3記載の事項、に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明、および引用文献2記載の事項、ならびに引用文献3記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-014266