2020-014054
X線診断装置
- 審判番号
- 2020-014054
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-038004外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年10月07日
- 審決日
- 2021年03月10日
- 公報発行日
- 2021年06月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成28年2月29日の出願であって、令和元年10月21日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年2月28日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年5月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月30日付けで令和2年5月7日付けの手続補正に対する補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定がなされたところ、同年10月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和2年5月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和2年5月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、その補正内容は、特許請求の範囲について、【請求項1】を
「【請求項1】X線を照射するX線管と、X線を検出する検出器とが被検体を挟んで互いに対向するように支持するアームと、前記X線を所定の大きさの照射範囲に絞るX線絞りと、前記X線絞りの制御を行うX線絞り制御部と、前記照射範囲を前記X線絞り制御部から受け付けて、前記照射範囲の位置と前記検出器の位置とに基づいて、当該検出器の移動量を算出する移動制御部と、前記移動制御部が算出した前記移動量に基づいて、前記検出器を検出面に対して平行方向に移動させる検出器移動部と、オペレータからの入力操作を受け付ける入力部とを有し、前記検出器移動部は、前記検出器の位置と前記照射範囲の位置とに応じて、前記検出器を移動させる速度を変化させ、前記入力部は、前記検出器に備えられ、前記検出器の移動方向に対応する複数のスイッチを含み、前記複数のスイッチは、前記検出器の移動可能な方向を通知するX線診断装置。」(下線部は補正箇所を示す。)
と補正するものを含むものである。
2.本件補正の目的
本件補正のうち、請求項1についての補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「X線を検出する検出器」に、「オペレータからの入力操作を受け付ける入力部」を「備え」させ、その「入力部は、前記検出器に備えられ、前記検出器の移動方向に対応する複数のスイッチを含み、」「前記複数のスイッチは、前記検出器の移動可能な方向を通知する」ものとして限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3.独立特許要件について
本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明1は、前記「第2 1.」に記載したとおりのものである。
(2)引用文献、引用発明等
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願前である平成25年12月5日に頒布された刊行物である「特開2013-240543号公報」(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明の実施形態は、X線診断装置に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】【0007】しかしながら、前述の手技では、外科医と内科医とが同時に作業を行うことになるため、外科医が作業をしているときに、外科医の手とX線検出器とが近づいてしまうことがある。このとき、X線検出器が外科医の作業の邪魔となるが、外科医が自身の意図でX線検出器を移動させてしまうと、内科医が見ているX線画像がずれてしまい、関心領域を視認することができなくなることがある。【0008】本発明が解決しようとする課題は、外科医と内科医とが同時に作業を効率良く行うことができるX線診断装置を提供することである。」
(ウ)「【発明を実施するための形態】【0011】実施の一形態について図面を参照して説明する。【0012】続きを表示(全24行)図1に示すように、実施形態に係るX線診断装置1は、患者などの被検体Pが載置される寝台2と、その寝台2上の被検体Pを撮像する撮像装置3と、その撮像装置3を保持する保持装置4と、X線画像を収集する画像収集装置5と、X線画像などの各種画像を表示する表示部6と、各部を制御する制御装置7とを備えている。【0013】寝台2は、被検体Pを載せる長方形状の天板2aと、その天板2aを支持して水平方向及び鉛直方向に移動させる天板駆動部2bとを備えている。天板駆動部2bは、天板2aを移動させる移動機構やその移動のための駆動力を供給する駆動源などを有している。この寝台2は、天板駆動部2bにより天板2aを所望高さまで移動させ、さらに、その天板2aを水平方向に移動させて天板2a上の被検体Pを所望位置まで移動させる。【0014】撮像装置3は、天板2a上の被検体Pに対してX線を照射するX線照射部3aと、その被検体Pを透過したX線を検出するX線検出部3bとを備えている。この撮像装置3は、天板2aの周囲を移動可能に設けられており、撮像位置から天板2a上の被検体PのX線画像を撮像する。このX線画像としては、例えば、注目部位の心臓などの透視画像がある。【0015】X線照射部3aは、X線を出射するX線管などのX線照射器3a1やそのX線照射器3a1から出射されたX線を絞ってX線の照射野(照射範囲)を調整するX線絞り器3a2、X線照射器3a1に供給する高電圧を発生させるX線高電圧発生部3a3などを備えている。このX線照射部3aは、X線高電圧発生部3a3により高電圧をX線照射器3a1に供給し、そのX線照射器3a1によりX線を出射し、さらに、そのX線をX線絞り器3a2により絞って天板2a上の被検体Pに照射する。・・・【0017】X線検出部3bは、X線を検出するFPD(X線平面検出器)などのX線検出器3b1やそのX線検出器3b1を平面(例えば、水平面)内で移動させる移動機構(第1の移動機構)3b2などを備えている。【0018】X線検出器3b1は、X線照射器3a1に対向させて保持装置4に設けられており、天板2aに平行な平面内で移動可能に形成されている。このX線検出器3b1は画像収集装置5に電気的に接続されており、その画像収集装置5に検出したX線量、すなわちX線画像信号を送信する。【0019】このX線検出器3b1の側面には、外科医や助手などの操作者による移動操作を検出する複数の移動操作検出器A1及びA2が設けられている。これらの移動操作検出器A1及びA2は制御装置7に電気的に接続されており、操作者による移動操作を検出し、その検出信号を制御装置7に送信する。この移動操作検出器A1及びA2としては、例えば、タッチセンサなどの接触操作スイッチ、あるいは、非接触操作スイッチなどを用いることが可能である。【0020】移動機構3b2は、X線検出器3b1を水平方向に移動させる機構である。この移動機構3b2は制御装置7に電気的に接続されており、その駆動が制御装置7により制御される。移動機構3b2としては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動機構などを用いることが可能である。【0021】保持装置4は、X線照射器3a1及びX線検出部3bを対向させて保持する保持アーム4aと、その保持アーム4aをスライド移動可能に支持するアーム支持部4bと、そのアーム支持部4bを回動可能に保持して天井面に移動可能及び回動可能に設けられた保持部材4cと、その保持部材4cを水平方向に移動させる移動機構(第2の移動機構)4dとを備えている。【0022】保持アーム4aは、例えばC字形状のCアームであり、そのアームが伸びる方向にスライド移動可能にアーム支持部4bに設けられている。この保持アーム4aの長手方向の両端部に、X線照射器3a1及びX線検出器3b1が対向させて設けられている。また、アーム支持部4bは、保持アーム4aをスライド移動可能に保持し、保持部材4cに回動可能に設けられている。」
(エ)「【0029】制御装置7は、システムの各部を制御するシステム制御部7aと、X線高電圧発生部3a3を制御するX線制御部7bと、外科医や内科医、助手などの操作者により入力操作される操作部7cとを備えている。【0030】システム制御部7aは、記憶した各種プログラムや各種データに基づいて各部を制御するものであり、特に、操作部7cに対する操作者の入力操作に応じて、寝台2や撮像装置3、保持装置4などを制御する移動制御部7a1を備えており、さらに、X線画像に関心領域(ROI:Region Of Interest)を設定する領域設定部7a2を備えている。」
(オ)「【0036】次に、前述のX線診断装置1が行うX線検出器3b1の移動処理(第1の移動処理及び第2の移動処理)について説明する。【0037】(第1の移動処理)続きを表示(全34行)図2に示すように、ハイブリッド手術中に外科医がX線検出器3b1を矢印Y1の方向に移動させる場合の移動処理について説明する。例えば、このときの状況は、外科医が開胸作業をしており、同時に、内科医がカテーテル治療を行っている場合に、X線検出器3b1が開胸作業の邪魔になるため、外科医がそのX線検出器3b1を邪魔にならない希望位置まで移動させるような状況である。・・・【0041】ステップS1において、関心領域R1が設定されたと判断されると(ステップS1のYES)、移動操作検出器A1又はA2により移動操作(移動開始操作)が検出されたか否かが判断される(ステップS2)。この判断は移動操作が検出されるまで繰り返される(ステップS2のNO)。【0042】ここで、外科医は、X線検出器3b1の側面に存在する移動操作検出器A1又はA2を操作してX線検出器3b1を移動させる。例えば、移動操作検出器A1が操作者により操作されると、その移動操作検出器A1からシステム制御部7aに検出信号が入力される。これに応じて、システム制御部7aの移動制御部7a1は移動機構3b2を制御し、X線検出器3b1を矢印Y1の方向に移動させる(移動の開始)。【0043】ステップS2において、移動操作検出器A1又はA2により移動操作が検出されたと判断されると(ステップS2のYES)、X線検出器3b1の水平移動が開始され(ステップS3)、X線検出器3b1の移動量がリアルタイムに読み込まれ(ステップS4)、その移動量から関心領域R1が見えなくなるか否かが判断される(ステップS5)。【0044】ここで、X線検出器3b1の移動量が許容値より大きくなると、関心領域R1が表示部6の表示画面から外れ、見えなくなってしまう。移動制御部7a1は、表示画面に対する関心領域R1の位置情報(例えば、座標情報)から移動量がどの程度になると、関心領域R1が表示部6の表示画面から外れてしまうかを把握することが可能である。【0045】ステップS5において、X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくならないと判断されると(ステップS5のNO)、再び、移動操作検出器A1又はA2により移動操作(移動停止操作)が検出されたか否かが判断される(ステップS6)。【0046】ここで、外科医は、X線検出器3b1の側面に存在する移動操作検出器A1又はA2を操作してX線検出器3b1の移動を停止させる。例えば、移動操作検出器A1が再度操作者により操作されると、その移動操作検出器A1からシステム制御部7aに検出信号が入力される。これに応じて、システム制御部7aの移動制御部7a1は移動機構3b2を制御し、X線検出器3b1の移動を停止させる(移動の停止)。【0047】ステップS6において、移動操作検出器A1又はA2により移動操作が検出されたと判断されると(ステップS6のYES)、X線検出器3b1の水平移動が止められる(ステップS7)。一方、移動操作検出器A1又はA2により移動操作が検出されていないと判断されると(ステップS6のNO)、処理はステップS5に戻される。【0048】また、ステップS5において、X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくなると判断されると(ステップS5のYES)、その位置でX線検出器3b1の水平移動が止められる(ステップS7)。【0049】すなわち、前述のように、X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくならないと判断された場合には(ステップS5のNO)、希望位置までX線検出器3b1が水平移動することになる。一方、X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくなると判断された場合には(ステップS5のYES)、X線検出器3b1は希望位置まで移動せず、関心領域R1の全域が見える範囲内で移動量が最大となる位置まで移動することになる(移動の制限)。【0050】ここで、図4(右下図参照)に示すように、X線検出器3b1は、移動機構3b2により、矢印Y1の方向に関心領域R1の全域が見えなくならない位置まで移動する。この移動中、関心領域R1は内科医により少しでも見えなくなるような状態にはならない。すなわち、X線検出器3b1は、関心領域R1が見える状態を維持したまま、停止しても関心領域R1の全域が見える位置まで移動することになる。【0051】その後、関心領域R1に基づいてX線絞り器3a2の開口度が調整され(ステップS8)、関心領域R1を表示画面の中央にする画像処理が実行され(ステップS9)、処理はステップS2に戻される。再び、移動操作検出器A1又はA2により移動操作が検出されると(ステップS2のYES)、前述のような処理が繰り返される。【0052】ステップS8では、X線絞り器3a2が関心領域R1のみにX線を照射するように制御され、その開口度が調整される。これにより、図4(右下図参照)に示すように、X線を遮蔽する遮蔽領域R2が形成されることなる。その結果、不要被ばくを抑止し、被ばく低減を実現することができる。なお、このときの状態(右下図参照)の関心領域R1がそのまま表示部6により表示されると、関心領域R1が表示部6の表示画面の下端側に位置するため、内科医が関心領域R1を見難くなってしまう。【0053】そこで、ステップS9では、関心領域R1が表示部6の表示画面の中央に位置するようにX線画像が画像処理部5aにより処理される。これにより、図4(左下図参照)に示すように、X線検出器3b1の水平移動後でも、関心領域R1が表示画面の中央に位置する。このため、内科医は表示画面内の関心領域R1を容易に視認することが可能となり、カテーテル治療を効率良く行うことができる。【0054】ここで、外科医や助手などの操作者が操作部7cを入力操作し、X線検出器3b1の移動解除を指示すると、X線検出器3b1は元の位置に移動する。この場合には、移動前のX線検出器3b1の位置情報が移動制御部7a1により記憶されており、その位置情報が操作部7cに対する前述の入力操作に応じて読み込まれ、読み込まれた位置情報に基づいてその元の位置までX線検出器3b1が移動機構3b2により移動することになる。」
(カ)「【図1】」
(キ)「【図2】」
(ク)「【図3】」
(ケ)「【図4】」
(コ)上記「(ウ)」及び「(カ)」より、「保持装置4は、被検体Pを挟んでX線照射器3a1及びX線検出部3bを対向させて保持する保持アーム4aを備えている。」ことが見てとれる。
上記引用例1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「外科医と内科医とが同時に作業を効率良く行うことができるX線診断装置において、X線診断装置1は、患者などの被検体Pが載置される寝台2と、その寝台2上の被検体Pを撮像する撮像装置3と、その撮像装置3を保持する保持装置4と、X線画像を収集する画像収集装置5と、X線画像などの各種画像を表示する表示部6と、各部を制御する制御装置7とを備え、撮像装置3は、天板2a上の被検体Pに対してX線を照射するX線照射部3aと、その被検体Pを透過したX線を検出するX線検出部3bとを備え、X線照射部3aは、X線を出射するX線管などのX線照射器3a1やそのX線照射器3a1から出射されたX線を絞ってX線の照射野(照射範囲)を調整するX線絞り器3a2、X線照射器3a1に供給する高電圧を発生させるX線高電圧発生部3a3などを備え、続きを表示(全15行)X線検出部3bは、X線を検出するFPD(X線平面検出器)などのX線検出器3b1やそのX線検出器3b1を平面(例えば、水平面)内で移動させる移動機構(第1の移動機構)3b2などを備え、このX線検出器3b1の側面には、外科医や助手などの操作者による移動操作を検出する複数の移動操作検出器A1及びA2が設けられており、この移動操作検出器A1及びA2としては、タッチセンサなどの接触操作スイッチ、を用いることが可能であり、移動機構3b2は、X線検出器3b1を水平方向に移動させる機構であり、移動機構3b2としては、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動機構などを用いることが可能であり、保持装置4は、被検体Pを挟んでX線照射器3a1及びX線検出部3bを対向させて保持する保持アーム4aと、その保持アーム4aをスライド移動可能に支持するアーム支持部4bと、そのアーム支持部4bを回動可能に保持して天井面に移動可能及び回動可能に設けられた保持部材4cと、その保持部材4cを水平方向に移動させる移動機構(第2の移動機構)4dとを備え、制御装置7は、システムの各部を制御するシステム制御部7aと、X線高電圧発生部3a3を制御するX線制御部7bと、外科医や内科医、助手などの操作者により入力操作される操作部7cとを備え、システム制御部7aは、記憶した各種プログラムや各種データに基づいて各部を制御するものであり、特に、操作部7cに対する操作者の入力操作に応じて、寝台2や撮像装置3、保持装置4などを制御する移動制御部7a1を備えており、外科医がそのX線検出器3b1を邪魔にならない希望位置まで移動させるX線診断装置1が行うX線検出器3b1の移動処理において、X線検出器3b1の側面に存在する移動操作検出器A1又はA2を操作してX線検出器3b1を移動させるために、移動操作検出器A1が操作者により操作されると、その移動操作検出器A1からシステム制御部7aに検出信号が入力され、これに応じて、システム制御部7aの移動制御部7a1は移動機構3b2を制御し、X線検出器3b1を矢印Y1の方向に移動させ、X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくならないと判断された場合には、希望位置までX線検出器3b1が水平移動することになる一方、X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくなると判断された場合には、X線検出器3b1は希望位置まで移動せず、関心領域R1の全域が見える範囲内で移動量が最大となる位置まで移動し、その位置でX線検出器3b1の水平移動が止められることになり、X線絞り器3a2が関心領域R1のみにX線を照射するように制御され、その開口度が調整される、X線診断装置。」
イ 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、本願の出願前である2014年(平成26年)9月25日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「国際公開第2014/148309号」(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
(ア)「[0001] 本発明は、移動型X線装置及びその位置決め制御方法に関し、特に、施設内を移動し、X線撮影を行なう移動型X線装置の撮影時のポジショニングを容易にする技術に関する。」
(イ)「[0006] 前記課題を解決するために、本発明は、昇降動可能に支持されたX線源を備え、X線源から、前記X線源の下に位置する距離計測対象体までの距離を測定し、予め定められた焦点受像面間距離であって、前記X線源、及び、当該X線源から発生するX線を検出してその強度を示すX線信号を出力するX線検出器までの距離を示す焦点受像面間距離と、前記測定により得られた測定値と、を比較し、この比較結果に基づいて、前記昇降動に対して制動をかける、ことを特徴とする。」
(ウ)「[0009] 本発明に係る移動型X線装置は、本体部と、前記本体部を床面上に走行させる移動部と、前記移動部に立設された支柱と、X線を発生させるX線源と、前記X線源を支持するアームと、前記アームを前記支柱の軸方向に沿って昇降動可能に支持するアーム支持部と、前記アーム支持部の昇降動に対し制動をかけるブレーキ部と、前記X線源から、前記X線源の下に位置する距離計測対象体まで、の距離を測定する距離計測部と、前記X線源から、前記X線を検出してその強度を示すX線信号を出力するX線検出器に含まれるX線受像面まで、の距離を示す焦点受像面間距離の入力を受け付ける第一入力部と、前記測定により得られた測定値、及び、前記焦点受像面間距離を比較し、この比較結果に基づいて、前記ブレーキ部に対して、前記昇降動に対して制動をかけるための制御を行う制御部と、を備えたことを特徴とする。」
(エ)「[0011] また、前記ブレーキ部は、相対的に制動力が弱く、前記昇降動の速度を下げるための第一ブレーキ部、及び、相対的に制動力が強く、前記アーム支持部を前記軸方向に沿った所定の位置に停止させるための第二ブレーキ部を含み、前記制御部は、前記焦点受像面間距離及び前記測定値の差分が、予め定められた減速範囲以内に相当すると、前記第一ブレーキ部を作動させ、前記測定値が前記焦点受像面間距離差分と一致すると、前記第二ブレーキ部を作動させてもよい。」
上記引用例2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「移動型X線装置において、本体部と、前記本体部を床面上に走行させる移動部と、前記移動部に立設された支柱と、X線を発生させるX線源と、前記X線源を支持するアームと、前記アームを前記支柱の軸方向に沿って昇降動可能に支持するアーム支持部と、前記アーム支持部の昇降動に対し制動をかけるブレーキ部と、前記X線源から、前記X線源の下に位置する距離計測対象体まで、の距離を測定する距離計測部と、前記X線源から、前記X線を検出してその強度を示すX線信号を出力するX線検出器に含まれるX線受像面まで、の距離を示す焦点受像面間距離の入力を受け付ける第一入力部と、前記測定により得られた測定値、及び、前記焦点受像面間距離を比較し、この比較結果に基づいて、前記ブレーキ部に対して、前記昇降動に対して制動をかけるための制御を行う制御部と、を備え、前記ブレーキ部は、相対的に制動力が弱く、前記昇降動の速度を下げるための第一ブレーキ部、及び、相対的に制動力が強く、前記アーム支持部を前記軸方向に沿った所定の位置に停止させるための第二ブレーキ部を含み、前記制御部は、前記焦点受像面間距離及び前記測定値の差分が、予め定められた減速範囲以内に相当すると、前記第一ブレーキ部を作動させ、前記測定値が前記焦点受像面間距離差分と一致すると、前記第二ブレーキ部を作動させる、装置。」
以上のことから、引用発明2には次の技術(以下「引用発明2開示技術」という。)が開示されていると認められる。
「物体を目標距離まで移動させる際に、目標距離と測定値との差分が、予め定められた減速範囲以内に相当すると、相対的に制動力が弱く、前記昇降動の速度を下げるための第一ブレーキ部を作動させて減速し、前記測定値が前記目標距離と一致すると、所定の位置に停止させるための第二ブレーキ部を作動させて停止させる技術。」
ウ 引用例3
当審で新たに提示する文献である、本願の出願前である平成23年4月14日に頒布された刊行物である「特開2011-72582号公報」(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、被検体の透視画像を得るX線撮影装置に係わり、特に、X線照射器の駆動操作に関する。」
(イ)「【0046】照射器操作パネル8に配置された操作スイッチ42~47はLEDを内蔵している。各操作スイッチ42~47は、スイッチ点灯制御部26により、X線照射器3が移動または回転可能な方向である場合には点灯し、移動または回転不可能な方向である場合には消灯する。また、操作スイッチ46および操作スイッチ47は、スイッチ点灯制御部26により、X線照射器3が回転動作中には点滅点灯する。次に、距離検出器24とスイッチ点灯制御部26の制御を説明する。」
上記引用例3の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「照射器操作パネル8に配置された操作スイッチ42~47はLEDを内蔵しており、各操作スイッチ42~47は、スイッチ点灯制御部26により、X線照射器3が移動または回転可能な方向である場合には点灯し、移動または回転不可能な方向である場合には消灯する、X線撮影装置。」
以上のことから、引用発明3には次の技術(以下「引用発明3開示技術」という。)が開示されていると認められる。
「移動または回転可能な方向に対応する複数の操作スイッチにLEDを内蔵して移動または回転可能な方向である場合には点灯し、移動または回転不可能な方向である場合には消灯するスイッチ。」
(3)対比
本願補正発明1を、引用発明1と比較する。
(ア)引用発明1の「X線を出射するX線管などのX線照射器3a1」は、本願補正発明1の「X線を照射するX線管」に相当する。
(イ)引用発明1の「X線を検出するFPD(X線平面検出器)などのX線検出器3b1」は、本願補正発明1の「X線を検出する検出器」に相当する。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の相当関係を踏まえると、引用発明1の「被検体Pを挟んでX線照射器3a1及びX線検出部3bを対向させて保持する保持アーム4a」は、本願補正発明1における「X線を照射するX線管と、X線を検出する検出器とが被検体を挟んで互いに対向するように支持するアーム」に相当する。
(エ)引用発明1の「X線照射器3a1から出射されたX線を絞ってX線の照射野(照射範囲)を調整するX線絞り器3a2」は、本願補正発明1の「X線を所定の大きさの照射範囲に絞るX線絞り」に相当する。
(オ)引用発明1の「X線検出器3b1を水平方向に移動させる機構であ」る「移動機構3b2」は、本願補正発明1の「検出器を検出面に対して平行方向に移動させる検出器移動部」に相当する。
(カ)引用発明1の「操作者により操作される」「タッチセンサなどの接触操作スイッチであ」り「X線検出器3b1を移動させるため」「X線検出器3b1の側面に存在する移動操作検出器A1又はA2」は、本願補正発明1の「検出器に備えられ」、「複数のスイッチを含」む「オペレータからの入力操作を受け付ける入力部」に相当する。
(キ)引用発明1の「制御装置7」の「記憶した各種プログラムや各種データに基づいて各部を制御するものであ」る「システムの各部を制御するシステム制御部7a」は、「X線絞り器3a2が関心領域R1のみにX線を照射するように」「その開口度が調整される」よう「制御」することから、本願補正発明1の「X線絞りの制御を行うX線絞り制御部」と同等の機能を備えている。
(ク)引用発明1の「制御装置7」の「記憶した各種プログラムや各種データに基づいて各部を制御するものであ」る「システムの各部を制御するシステム制御部7a」は、「外科医がそのX線検出器3b1を邪魔にならない希望位置まで移動させるX線診断装置1が行うX線検出器3b1の移動処理において」、「X線検出器3b1の側面に存在する移動操作検出器A1又はA2を操作してX線検出器3b1を移動させるために、移動操作検出器A1が操作者により操作されると、その移動操作検出器A1からシステム制御部7aに検出信号が入力され、これに応じて、システム制御部7aの移動制御部7a1は移動機構3b2を制御し、X線検出器3b1を矢印Y1の方向に移動させ、X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくならないと判断された場合には、希望位置までX線検出器3b1が水平移動することになる一方、X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくなると判断された場合には、X線検出器3b1は希望位置まで移動せず、関心領域R1の全域が見える範囲内で移動量が最大となる位置まで移動し、その位置でX線検出器3b1の水平移動が止められることにな」るよう「移動機構3b2を制御」することから、本願補正発明1の「照射範囲を」「X線絞り制御部から受け付けて」「照射範囲の位置と」「検出器の位置とに基づいて、」「検出器の移動量を算出する移動制御部」と同等の機能を備えている。
(ケ)引用発明1の「X線検出器3b1を水平方向に移動させる機構であ」る「移動機構3b2」は、「システム制御部7a」により制御されることは、本願補正発明1の「検出器移動部」が「移動制御部が算出した」「移動量に基づいて」「検出器を検出面に対して平行方向に移動させる」ことと等価である。
すると、本願補正発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「【請求項1】X線を照射するX線管と、X線を検出する検出器とが被検体を挟んで互いに対向するように支持するアームと、前記X線を所定の大きさの照射範囲に絞るX線絞りと、前記X線絞りの制御を行うX線絞り制御部と、前記照射範囲を前記X線絞り制御部から受け付けて、前記照射範囲の位置と前記検出器の位置とに基づいて、当該検出器の移動量を算出する移動制御部と、前記移動制御部が算出した前記移動量に基づいて、前記検出器を検出面に対して平行方向に移動させる検出器移動部と、オペレータからの入力操作を受け付ける入力部と、を有し、前記入力部は、前記検出器に備えられた複数のスイッチを含む、X線診断装置。」
一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
検出器移動部が、本願補正発明1では「前記検出器の位置と前記照射範囲の位置とに応じて、前記検出器を移動させる速度を変化させ」るのに対し、引用発明1では「X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくならないと判断された場合には、希望位置までX線検出器3b1が水平移動することになる一方、X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくなると判断された場合には、X線検出器3b1は希望位置まで移動せず、関心領域R1の全域が見える範囲内で移動量が最大となる位置まで移動し、その位置でX線検出器3b1の水平移動が止められることにな」る移動を行う点。
<相違点2>
入力部の複数のスイッチが、本願補正発明1では、「前記検出器の移動可能な方向を通知する」「前記検出器の移動方向に対応する」ものであるのに対し、引用発明1では、「タッチセンサなどの接触操作スイッチ」であるが、その通知機能の有無は明示がない点。
(4)判断
前記「(3)」で記載した各相違点について判断する。
ア 相違点1について
(ア)引用発明1では、「X線検出器3b1の移動量から関心領域R1が見えなくなると判断された場合には、X線検出器3b1は希望位置まで移動せず、関心領域R1の全域が見える範囲内で移動量が最大となる位置まで移動し、その位置でX線検出器3b1の水平移動が止められる」ものであることから、X線検出器3b1の位置と関心領域R1の位置とに応じて検出器を移動させ、停止させることを行っている。
(イ)そして、関心領域R1が見えなくなる位置とは、X線絞り器3a2が関心領域R1のみにX線を照射するように制御されており、X線絞り器3a2により調整されたX線の照射野(照射範囲)の範囲外にX線検出器3b1がはみ出す位置である(前記「(2)ア(ケ)」参照。)ことから、引用発明1のX線検出器3b1は、検出器の位置と照射範囲の位置とに応じて移動しており、その移動速度は最後に停止というゼロ速度に変化している。
(ウ)よって、引用発明1のX線検出器3b1を移動させる移動機構3b2は、システム制御部7aの制御により、X線検出器3b1の位置とX線絞り器3a2により関心領域R1のみにX線を照射するように制御された照射範囲の位置とに応じてX線検出器3b1を移動させている。
(エ)ここで、X線を被検体に透過させて検出する診断装置で同一の技術分野に属する引用発明2の引用発明2開示技術(前記「(2)イ」参照。)を引用発明1のX線検出器3b1の移動制御に適用させると、停止させる前に一度減速した速度とし、最後に停止させることとなるから、引用発明1に引用発明2開示技術を適用して前記相違点1に係る発明特定事項を導き出すことは、当業者ならば容易になしえたことである。
イ 相違点2について
(ア)引用発明3開示技術(前記「(2)ウ」参照。)は、「移動または回転可能な方向に対応する複数の操作スイッチにLEDを内蔵して移動または回転可能な方向である場合には点灯し、移動または回転不可能な方向である場合には消灯するスイッチ」という技術である。
(イ)ここで引用発明1と引用発明3とは、X線を被検体に透過させて検出する診断装置で同一の技術分野に属する発明であるから、引用発明1の「タッチセンサなどの接触操作スイッチ」を引用発明3開示技術のスイッチで置換して、前記相違点2に係る発明特定事項を導き出すことは、当業者ならば容易になしえたことである。
ウ 本願補正発明1の効果について
本願補正発明1の効果は、引用発明1ないし3から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。
(5)小括
したがって、本願補正発明1は、引用発明1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
(1)本願発明1
令和2年5月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和2年1月6日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】X線を照射するX線管と、X線を検出する検出器とが被検体を挟んで互いに対向するように支持するアームと、前記X線を所定の大きさの照射範囲に絞るX線絞りと、前記X線絞りの制御を行うX線絞り制御部と、前記照射範囲を前記X線絞り制御部から受け付けて、前記照射範囲の位置と前記検出器の位置とに基づいて、当該検出器の移動量を算出する移動制御部と、前記移動制御部が算出した前記移動量に基づいて、前記検出器を検出面に対して平行方向に移動させる検出器移動部を有し、前記検出器移動部は、前記検出器の位置と前記照射範囲の位置とに応じて、前記検出器を移動させる速度を変化させるX線診断装置。」
(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-5、9-10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である引用文献1に記載された発明と電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、また、この出願の請求項7-8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である引用文献1及び3に記載された発明と電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
(3)引用された刊行物に記載された発明及び電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし2の発明並びにその記載事項は、前記「第2 3.(2)アないしイ」に記載したとおりである。
(4)対比・判断
ア 本願発明1は、前記「第2 3.」で検討した本願補正発明1から、「X線を検出する検出器」に「備え」られた「オペレータからの入力操作を受け付ける入力部」であって、「入力部は、前記検出器に備えられ、前記検出器の移動方向に対応する複数のスイッチを含み、」「前記複数のスイッチは、前記検出器の移動可能な方向を通知する」「入力部」という発明特定事項を削除して拡張した構成としたものである。
イ ここで、本願発明1と引用発明1とを対比するとその相違点は、前記「第2 3.(3)」で検討した相違点1のみとなり、相違点1についての検討は前記「第2 3.(4)ア」で行ったとおり、引用発明2開示技術から当業者が容易になしえたものである。
ウ すると、本願発明1は前記「第2 3.(3)ないし(5)」と同様の理由により、引用発明1ないし2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1ないし2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-014054