特許拒絶査定不服審判
2020-010466
カートリッジおよび画像形成装置
- 審判番号
- 2020-010466
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-128517
- 請求日
- 2020年07月28日
- 審決日
- 2021年04月06日
- 公報発行日
- 2021年07月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キヤノン株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人中川国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 尾崎 淳史
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 藤田 年彦
- 分類
- P18 .121-Z (G03G) / P18 .56 -Z (G03G) / P18 .575-Z (G03G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-128517「カートリッジおよび画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-110061〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月26日(優先権主張 平成26年7月25日、同年11月28日)の出願であって、平成31年4月2日付けで拒絶理由が通知され、令和1年6月10日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月3日付で拒絶理由(最後)が通知され、同年12月11日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和2年4月20日付けで令和1年12月11日付けの手続補正書が却下されると同時に拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年7月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和2年7月28日付けで提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年7月28日付けで提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和1年6月10日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
記録材にトナー像を形成する画像形成装置において、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体に当接して前記像担持体の表面を帯電する帯電部材であって、前記像担持体の表面移動速度と異なる前記表面移動速度で回転する帯電部材と、
トナーを収容するトナー収容部と、前記像担持体に当接して前記像担持体の表面に前記トナーを供給する現像部材と、を有する現像ユニットであって、記録材に前記トナー像を形成することなく、前記像担持体に残ったトナーを前記現像部材により回収する現像ユニットと、を有し、
前記帯電部材の表面のマルテンス硬さをHMR、前記トナーのトナー粒子の表面のマルテンス硬さをHMDとしたときに、
HMD>HMR
の関係であって、前記HMDと前記HMRの差分は1以上49.5以下であることを特徴とする画像形成装置。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
記録材にトナー像を形成する画像形成装置において、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体に当接して前記像担持体の表面を帯電する帯電部材であって、前記像担持体の表面移動速度と異なる前記表面移動速度で回転する帯電部材と、
トナーを収容するトナー収容部と、前記像担持体に当接して前記像担持体の表面に前記トナーを供給する現像部材と、を有する現像ユニットであって、記録材に前記トナー像を形成することなく前記像担持体に残ったトナーを前記現像部材により回収する現像ユニットと、を有し、
ビッカース圧子を前記帯電部材に侵入させることで測定される、前記帯電部材の表面からの押し込み深さ1μmにおける前記帯電部材の表面のマルテンス硬さをHMR、
ビッカース圧子を前記トナーのトナー粒子に侵入させることで測定される、前記トナー粒子の表面からの押し込み深さ1μmにおける前記トナー粒子の表面のマルテンス硬さをHMDとしたときに、
HMD>HMR
の関係であって、前記HMDと前記HMRの差分は1以上49.5以下であり、
前記トナー粒子の平均粒径は4μm以上9μm以下であることを特徴とする画像形成装置。」
2 本件補正の適否について
本件補正の請求項1に係る補正事項は、本件補正前の請求項1において特定されている発明特定事項である「前記帯電部材の表面のマルテンス硬さ」を本件補正により「ビッカース圧子を前記帯電部材に侵入させることで測定される、前記帯電部材の表面からの押し込み深さ1μmにおける」ものであるとの限定を付加し、同じく本件補正前の請求項1において特定されている「前記トナー粒子の表面のマルテンス硬さ」を,本件補正により「ビッカース圧子を前記トナーのトナー粒子に侵入させることで測定される、前記トナー粒子の表面からの押し込み深さ1μmにおける」ものであるとの限定を付加し、本件補正前の請求項1において特定されされている「トナー粒子」について、「前記トナー粒子の平均粒径は4μm以上9μm以下」との限定を付加して,本件補正後の請求項1の記載とするものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正の請求項1に係る補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正の請求項1に係る補正事項は、本願の願書の最初に添付した明細書の
「【0081】
<マルテンス硬さの測定方法>
マルテンス硬さHMの測定は、(株)フィッシャー・インストルメンツのFISCHERSCOPE HM2000Sを使用する。
【0082】
マルテンス硬さHMは、試験加重を負荷した状態で測定する。マルテンス硬さHMは、試験加重を増加させていき、できれば既定の加重に達した後の、加重・くぼみ深さによって得られる値から求める。具体的には以下である。
【0083】
マルテンス硬さHMは、負荷した試験力(F)とくぼみの表面積A(h)との商と定義され、くぼみ表面積A(h)は圧子押し込み深さ(h)から算出する。圧子は、ビッカース圧子を使用する。
…
【0086】
得られた押し込み深さ1μm時の試験荷重から、上記式3より、本発明におけるマルテンス硬さHMを得ることができる。なお、本発明においては、上記式3より得られる、トナー表面のマルテンス硬さをHMD、帯電ローラ表面のマルテンス硬さをHMRとしている。」
及び
「【0079】
更に、本発明に用いるトナーは、その重量平均粒径において、4~9μmが好ましく用いられ、高精細な画像を得ることができる。本発明における重量平均粒径は以下のように測定される。」
の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。
(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由において引用された特開2006-284750号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、被現像体を現像する現像装置に関する。より詳しくは、被現像体に接触して現像する接触現像装置に関する。
【0002】
また、該現像装置を像担持体の現像処理手投として使用した複写機やプリンタ等の電子写真画像形成装置に関する。
【0003】
また、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジに関する。
【0004】
更に、被現像体を現像する現像装置に使用される固定磁場発生手段に関する。
【0005】
ここで、電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて記録媒体に画像を形成するものである。そして、電子写真画像形成装置の例としては、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えばレーザプリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置及びワードプロセッサ等が含まれる。
【0006】
また、プロセスカートリッジとは、帯電手段、現像手段またはクリーニング手段と電子写真感光体(像担持体)とを一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを画像形成装置本体に対して着脱可能とするものである。及び帯電手段、現像手段、クリーニング手段の少なくとも1つと電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化して画像形成装置本体に着脱可能とするものである。更に、少なくとも現像手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化して画像形成装置本体に着脱可能とするものをいう。」
(イ)「【0013】
(4)クリーナレス(トナーリサイクル)システム
装置構成の簡略化や廃棄物を無くすという観点から、転写方式の画像形成装置において感光体の転写工程後の表面清掃手段である専用のドラムクリーナーを廃し、トナーを装置内でリサイクルする電子写真プロセスの提案がされている。例えば、前述の非磁性接触現像方式を用いて、現像時に同時に転写残となった現像剤を回収する画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。」
(ウ)「【0045】
(1)画像形成装置例
図1は本発明に従う現像装置を用いた画像形成装置の概略構成図である。この画像記録装置は、転写式電子写真プロセス利用のレーザプリンタである。以下に本実施例における画像形成装置の全体的な概略構成について述べる。
【0046】
1は像担持体(被現像体)であり、本例ではφ24mmの回転ドラム型の負極性OPC感光体(ネガ感光体、以下、感光ドラムと記す)である。この感光ドラム1は矢印の時計方向に周速度85mm/sec(=プロセススピードPS、印字速度)の一定速度をもって回転駆動される。
【0047】
2は感光ドラム1の帯電装置としての帯電ローラである。この帯電ローラ2は導電性の弾性ローラであり、2aは芯金、2bは導電性弾性層である。この帯電ローラ2を感光ドラム1に所定の押圧力で圧接させて感光ドラム1との間に帯電部nを形成させてある。本例ではこの帯電ローラ2は感光ドラム1の回転に従動して回転する。
【0048】
S1は帯電ローラ2に帯電バイアスを印加する帯電電源である。本例ではこの帯電電源S1から帯電ローラ2と感光ドラム1との間の接触部に放電開始電圧以上の直流電圧を印加する。具体的には帯電バイアスとして-1300Vの直流電圧を印加して、感光ドラム1面を帯電電位(暗部電位)-700Vに一様に接触帯電させている。
【0049】
4はレーザダイオード・ポリゴンミラー等を含むレーザビームスキャナ(露光装置、潜像書き込み装置)である。このレーザビームスキャナ4は目的の画像情報の時系列電気ディジタル画素信号に対応して強度変調されたレーザ光を出力し、該レーザ光で上記回転感光ドラム1の一様帯電面を走査露光Lする。感光ドラム1の一様帯電処理面をレーザ光で全面露光した場合、感光ドラム面の電位が-150Vになるようにレーザパワーは調整されている。この走査露光Lにより回転感光ドラム1の面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0050】
3は現像装置である。現像装置3において、一定の摩擦帯電を帯びた現像剤tは、現像バイアス印加電源S2により現像スリーブ(現像剤担持体)3bと感光ドラム1との間の電位差によって、現像部Aにおいて感光ドラム1上の静電潜像を顕像化する。現像装置3については、次の(2)項で詳述する。
【0051】
6は転写装置に用いられている接触転写手投としての中抵抗の転写ローラであり、感光ドラム1に所定に圧接させて転写ニップ部bを形成させてある。この転写ニップ部bに給紙部の給紙カセット9内から給紙ローラ10により所定のタイミングで被記録体としての転写材Pが給紙され、かつ転写ローラ6に転写バイアス印加電源S3から所定の転写バイアス電圧が印加されることで、感光ドラム1側のトナー画像が転写ニップ部bに給紙された転写材Pの面に順次に転写されていく。
【0052】
本例で使用の転写ローラ6は、芯金6aに中抵抗発泡層6bを形成した、ローラ抵抗値5×108Ωのものであり、+2.0kVの電圧を芯金6aに印加して転写を行う。転写ニップ部bに導入された転写材Pはこの転写ニップ部bを挟持搬送されて、その表面側に回転感光ドラム1の表面に形成担持されているトナー画像が順次に静電気力と押圧力にて転写されていく。
【0053】
7は熱定着方式等の定着装置である。転写ニップ部bに給紙されて感光ドラム1側のトナー画像の転写を受けた転写材Pは回転感光ドラム1の面から分離されてこの定着装置7に導入され、トナー画像の定着を受けて画像形成物(プリントコピー)として装置外へ排出される。
【0054】
8は感光ドラムクリーニング装置であり、感光ドラム1上に残留した転写残トナーをクリーニングブレード8aで掻き落として廃トナー容器8bに回収する。
【0055】
そして、感光ドラム1は再度帯電装置2により帯電され、繰り返して画像形成に用いられる。
【0056】
なお、本実施例においては、感光ドラム1、帯電ローラ2、現像装置3、ドラムクリーナー8を一体に画像形成装置本体から着脱可能としたプロセスカートリッジに構成してある。
【0057】
(2)現像装置3
本実施例の現像装置3において、3bは現像剤担持体としての現像スリーブである。3aは現像スリーブ3bに内包させた、固定の磁場(磁界)発生手段としてのマグネットロールである。
【0058】
現像スリーブ3bは、現像剤tを付着、搬送して、現像部Aにおいて、上記現像剤tで感光ドラム1上の静電潜像を現像するものであり、アルミシリンダー上に非磁性の導電弾性層を形成して構成され、感光ドラム1に対し一定の加圧量をもって当接されている。感光ドラム1と現像スリーブ3b間の圧力は、23kPa(キロパスカル)に設定されている。
【0059】
現像剤tは一成分磁性トナー(磁性一成分現像剤)である。この一成分磁性トナーtは、結着樹脂、磁性体粒子、電荷制御剤を混合し混練、粉砕、分級の各工程を経て作製し、流動化剤などを外添剤として添加されたものである。磁性体粒子は結着樹脂と同重量処方し十分な磁力による搬送を可能な磁性粒子を作製した。なお、本実施例で用いたトナーの重量平均粒径(D4)は7.0μmである。
…
【0061】
なお、本実施例における現像容器3e中の初期のトナー量は90gを充填されている。これは、印字率4%の標準テストチャートを用いて通紙テストを行った場合、上記の感光ドラム1の電位に対して、本現像装置3により消費されるトナー消費寿命が3000枚になるように設定されているものである。
…
【0076】
ここで、本実施例における、上記マグネットロール3aからの磁界による現像スリーブ表面での磁束密度分布を、現像装置内における、規制ブレード3c、現像部A、現像容器3eとの位置関係で図2に示す。また、これに対して、[背景技術]において述べた、磁性非接触現像方式におけるマグネットロールの一般的な磁束密度分布を、比較例1として図3に示す。」
(エ)「【0132】
図14は本発明に従う現像装置を用いた画像形成装置の概略構成図である。本実施例は、実施例1で用いた現像装置を、クリーナレスシステムに適用したものである。すなわち、実施例1の画像形成装置においてドラムクリーナー8を無しにしてある。」
(オ)上記(エ)より、図14に示された実施例の画像形成装置は、図1に示された実施例1と同様に、回転可能な感光ドラムと、前記感光ドラムに当接して前記感光ドラムの表面を帯電し前記感光ドラムの回転に従動して回転する帯電ローラと、現像装置とを有する、転写材に前記トナー画像を形成する画像形成装置であると認められる。
(カ)上記(オ)と同様に、図14に示された実施例の画像形成装置は、図2に示された実施例1と同様に、トナーを収容する現像容器と、前記感光ドラムに当接して前記感光ドラムの表面に前記トナーを供給する現像剤担持体と、を有する現像装置を有するものと認められる。
(キ)上記(オ)と同様に、図14に示された実施例の画像形成装置の現像容器には、重量平均粒径が7.0μmのトナーが収容されているものと認められる。
(ク)上記(イ)及び(エ)より、クリーナレスシステムを適用した現像装置は、感光ドラムに残ったトナーを現像時に同時に回収し、回収したトナーを装置内でリサイクルするのであるから、クリーナレスシステムを適用した現像装置は、感光ドラムに残ったトナーを現像剤担持体により回収するものであると認められる。
そうすると、上記(オ)乃至(ク)の記載事項から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「回転可能な感光ドラムと、前記感光ドラムに当接して前記感光ドラムの表面を帯電し、前記感光ドラムの回転に従動して回転する帯電ローラと、現像装置とを有する、転写材に前記トナー画像を形成する画像形成装置であって、
現像装置は、重量平均粒径が7.0μmのトナーを収容する現像容器と、前記感光ドラムに当接して前記感光ドラムの表面に前記トナーを供給する現像剤担持体と、を有し、
現像装置は、クリーナレスシステムが適用され、感光ドラムに残ったトナーを現像剤担持体により回収するものである、
画像形成装置。」
イ 引用例2
原査定の拒絶の理由において引用された特開2004-21019号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明に属する技術分野】
本発明は、電子写真用複写機、プリンタ等の画像形成装置における静電記録プロセスに用いられる帯電ロール等の導電性ロールに関する。」
(イ)「【0011】
さらに、前記異物の付着は、帯電ロールだけでなく感光体周りに配置され、感光体に接触する部材(転写ロール、クリーニングロール等)にとっても耐久性を低下させるなど大きな問題であり、異物付着を根本的に回避・低減できるロール、または異物が付着しても性能が低下しないロールはいまだ開発されていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、表面への異物の付着による汚染に起因する画像欠陥の発生を防止するとともに、異物が付着した際の画像欠陥を最小限とし、さらに感光体表面への異物のフィルミングを防止できる導電性ロール、帯電ロール、転写ロール、及びクリーニングロールを提供することを目的とする。」
(ウ)「【0040】
図2に示すように、本発明の帯電ロール11と感光体12とのニップ部分においては、マクロ的には、帯電ロール11が粗大な異物13を包み込むように感光体12と接触しており、前記図1における接触不良領域14がかなり減少している。また、この場合の帯電ロール11と粗大な異物13との接触は、図3に示すようにミクロ的には接触面積が低減されている。このため、表面に粗大な異物13が付着したとしても、感光体12の帯電不良領域を最小限とすることができ、また、粗大な異物13が帯電ロール11の表面に密着することがないため、粗大な異物13が継続して帯電ロール11の表面に維持されにくい構造となっている。
【0041】
前記原理を満足する帯電ロール11の提供は、ダイナミック超微小硬度の制御により可能となった。前記ダイナミック超微小硬度は、圧子を押込んで行く過程での硬度であり、試料の塑性変形分と弾性変形分の特性を含んでいる。また、ダイナミック超微小硬度は、面積、深さともに微小領域の硬度を測定でき、測定値は複数の層構成からなる材料特性を反映している。そのために、ダイナミック超微小硬度の制御により、異物の付着、粗大異物による画像欠陥、及び感光体表面への異物のフィルミングを防止できる帯電ロールが提供可能となった。
【0042】
上記帯電ロール11のダイナミック超微小硬度は、小さい方が感光体12と接触したときに、図2に示すように帯電ロール11の表面がマクロ的に異物に柔軟に追従するため、帯電ロール11の表面層の破壊による異物の埋没による付着や局所的なニップ不良を生じにくい。このため、本発明においては、帯電ロール11への異物の埋没による付着を防止したり、粗大な異物13が帯電ロール11と感光体12とのニップ部に侵入した際の局所的な帯電不良による粗大白点や色点等の画像欠陥を最小限とするために、帯電ロール11のダイナミック超微小硬度は0.3以下である必要がある。
【0043】
帯電ロール11のダイナミック超微小硬度が0.3より大きいと、異物により帯電ロールの表面層が破壊され、該異物の付着が増大したり、粗大な異物の付着による局所的なニップ不良を生じ粗大白点や色点といった画像欠陥が発生しやすくなったり、感光体表面への異物のフィルミングが多発したりする。なお、上記帯電ロール11のダイナミック超微小硬度は、0.2以下であることが好ましい。」
ウ 引用例3
原査定の拒絶の理由において引用された特開2013-195717号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、帯電部材に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の帯電部材は、以下の点で問題がある。すなわち、特許文献1の帯電部材は、部材内部にオイルバリア層を設けることにより、ゴム弾性層から表層表面に軟化剤がブリードするのを防止しようとするものである。一方、特許文献2の帯電部材は、表層そのものを、可塑剤のブリードを防止するための移行防止層として機能させようとするものである。
【0007】
つまり、これら従来の帯電部材は、ゴム弾性層の加工性を高めるためにゴム弾性層中に配合される滑剤、可塑剤または軟化剤の表層表面へのブリードを、バリア性の高い層を用いて抑制しようとするものである。しかし、このような構成による場合には、ゴム弾性層とバリア層との界面に滑剤、可塑剤または軟化剤が溜まり、層間剥離が生じるおそれがある。
【0008】
また、上記構成を採用する以外にも、比較的硬いポリマーを用いて表層を形成することにより、表層のバリア性を高めることが考えられる。しかしながら、このような構成による場合には、表層が脆くなる。そのため、使用中に表層にひび割れが生じ、放電が不十分となって感光体等の被帯電体を十分に帯電させることができなくなる。また、表層を硬くすると、感光体等の被帯電体の表面を傷付けやすくなる。近年、いっそうの高画質化が求められている画像形成装置の分野では、上記表層のひび割れや被帯電体の損傷が生じると画質低下につながるため、特に問題となる。」
(ウ)「【0044】
上記帯電部材において、表層は、その表面のマルテンス硬度が9N/mm2以下であることが好ましい(請求項2)。この場合には、表層が柔軟であるので、使用中における表層のひび割れを抑制しやすくなる。また、感光体等の被帯電体を傷つけ難くなる。特に、上記帯電部材の表層表面が、回転する被帯電体と接触した状態で使用される場合に上記効果が大きくなる。表層表面のマルテンス硬度は、好ましくは8N/mm2以下、より好ましくは7N/mm2以下、さらに好ましくは6N/mm2以下とすることができる。上記効果が大きくなる、ゴム弾性部の弾性変形に対して追従しやすく密着性が向上するなどの利点があるからである。一方、表層表面のマルテンス硬度の下限は特に限定されるものではないが、好ましくは0.5N/mm2以上、より好ましくは1N/mm2以上とすることができる。なお、上記マルテンス硬度の測定は、微小硬度計を用いて行うことができる。詳しくは後述する。」
(エ)「【0062】
<表層表面のマルテンス硬度>
ISO14577に準じて、微小硬度計((株)フィッシャー・インストルメンツ製、「フィッシャースコープH-100」)を用いて、表層表面のマルテンス硬度を測定した。なお、上記測定には、微小硬度計の圧子としてビッカース圧子(四角錐)を用い、圧子の押し込み速さは0.5μm/秒、押し込み深さは5μmとした。また、ロール面長方向の中央部、ロール両端面からそれぞれ40mm中央部側の3つの位置につき、ロール周方向に等間隔にて3箇所、すなわち合計9箇所のマルテンス硬度を測定し、これら測定値の平均値を、表層表面のマルテンス硬度とした。」
エ 引用例4
原査定の拒絶の理由において引用された特開2012-42700号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、電子写真感光体や静電記録誘電体等からなる像担持体を帯電せしめるために用いられる帯電ロールに関するものである。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、ロール表面におけるトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、ゴースト画像の発生、感光体表面の削れ発生、及び、保護層に含まれる粗さ形成用粒子の脱落をも抑制する帯電ロールを提供することにある。」
(ウ)「【0067】
-ドラム削れの評価-
帯電ロールを実機のカートリッジ内にセットし、5%濃度画像を、カートリッジについて定められた耐久印刷数だけ出力した。その後、感光ドラムの表面を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。評価結果を、「ドラム削れ」として表4及び表5に示す。○:感光ドラムの表面に、欠損が認められない。×:感光ドラムの表面に、欠損が認められる。
…
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
かかる表4及び表5の結果からも明らかなように、本発明に従う帯電ロール(実施例1~11)にあっては、ロール表面におけるトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、ゴースト画像の発生、感光体表面の削れ発生、及び、保護層に含まれる粗さ形成用粒子の脱落をも抑制するものであることが、認められたのである。」
オ 引用例5
原査定の拒絶の理由において引用された特開2007-264491号公報(以下「引用例5」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンター等の電子写真機器に用いられる帯電ロールに関するものである。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年の、複写やプリントの高速化の要請から、使用されるトナーは、早期に定着する必要があり、低融点化してきている。このような低融点トナーは、ストレスに対して抵抗力が弱くなっている。 【0005】
そして、上記特許文献1のような帯電ロールでは、硬質粒子の存在により、外周面の凸部の表面硬度が高くなっていることから、トナーにストレスを与えてしまう。ストレスに対する抵抗力が小さい上記低融点トナーは、より劣化し易くなる。このため、硬質粒子により凸部を形成した帯電ロールでは、その凸部を起点としてフィルミングが発生し易くなっている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、表層に粒子が多数分布し、その粒子に起因する凸部が形成されていても、フィルミングが発生しない帯電ロールの提供をその目的とする。」
(ウ)「【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の帯電ロールは、軸体と、この軸体の外周に直接もしくは他の層を介して形成された表層とを有し、その表層に、凸部形成用粒子の含有による多数の凸部が分布している帯電ロールであって、上記粒子が含有されてなる凸部での帯電ロール表面のマルテンス硬度(A)と、それ以外の部分(凸部のない平坦状な部分)での帯電ロール表面のマルテンス硬度(B)との比が、下記の式(1)を満たしているという構成をとる。
【0008】
【数1】
0.9≦(A/B)≦1.1
【0009】
本発明者らは、帯電ロールについて、その表層に凸部形成用粒子が多数含有されているものであっても、フィルミングが発生しないようにすべく、帯電ロールの表面硬度を中心に研究を重ねた。その結果、つぎのようなことを突き止めた。すなわち、上記粒子が含有されてなる凸部での帯電ロール表面のマルテンス硬度(A)と、それ以外の部分での帯電ロール表面のマルテンス硬度(B)との比を、上記式(1)を満たすよう設定すると、凸部での帯電ロールの表面硬度が低くなったような状態になり、感光ドラムとの当接状態において、感光ドラムに当接する凸部が内側に退く(引っ込む)ようになる。このとき、隣り合う凸部と凸部との間の部分が感光ドラムに当接するようになった場合でも、凸部の根元部周縁が内側に退く(引っ込む)ため、その凸部の根元部周縁と感光ドラムの外周面との間に、放電空間が確保される。そして、凸部の退きにより凸部での帯電ロールの表面硬度が低くなったような状態になることから、凸部によるトナーに対するストレスが緩和され、フィルミングの発生が防止されることを見出し、本発明に到達した。」
(エ)「【0017】
また、上記式(1)に示すように、上記帯電ロールは、上記凸部Cでの帯電ロール表面のマルテンス硬度(A)が、それ以外の部分での帯電ロール表面のマルテンス硬度(B)と同等ないし略同等となっており、粒子Pが存在していても、凸部Cの表面硬度は硬くなっていない。このため、トナーに対するストレスを緩和することができ、トナーの劣化を防止することができる。そして、ストレスに対する抵抗力が小さい低融点トナーも、劣化し難くなり、複写やプリントの高速化に対応することができる。なかでも、帯電ロールとして好適な表面硬度にし、より良好な画像を得られるようにする観点から、上記凸部Cでの帯電ロール表面のマルテンス硬度(A)は0.3~1.5N/mm2 の範囲内とすることが好ましい。さらに、上記凸部Cは、弾性を有するようになり、凸部Cと感光ドラムDとの間に挟まったトナーを、帯電ロールと感光ドラムDの回転中に弾き飛ばすことができる。これらの結果、フィルミングを防止することができ、すじやむら等の欠点のない良好な画像を得ることができる。」
カ 引用例6
原査定の拒絶の理由において引用された特開2010-32596号公報(以下「引用例6」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像を現像してトナー像を形成するための画像形成方法に用いられるトナー及び画像形成方法に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、上述の如き問題点を解決し、トナー劣化による濃度変動や画像欠陥のない高画質といった軽印刷用途に対しても十分満足できるトナー及び画像形成方法を提供することにある。」
(ウ)「【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、感光体表面の原子密度及びトナー表面の硬度を最適化する事で、現像時におけるトナー劣化及び感光体表面の面ムラを抑制する事ができる。その結果、耐久前後および短時間放置による濃度変動が小さく、また画像欠陥のない、高精細、高画質といった要求に対しても十分満足できる画像を提供できる。」
(エ)「【0063】
本発明のトナーの9.8×10-4Nで測定されるマルテンス硬さは1.0N/mm2以上200.0N/mm2以下、好ましくは5.0N/mm2以上100.0N/mm2以下、より好ましくは8.0N/mm2以上50.0N/mm2以下である事が好ましい。
【0064】
マルテンス硬さは1.0N/mm2よりも小さい時は、トナー表面硬度が低い事を示し、トナーが劣化し易くなる。その結果、トナー担持体での帯電ムラへとつながり、画像内濃度ムラやジョブ濃度変動が悪化する。また長期耐久により、濃度低下も生じる。
【0065】
一方、200.0N/mm2よりも大きい時は、トナー表面硬度が高い事示す。この場合、トナー粒子表面も非常に固いために、感光体表面に衝突した際、トナー粒子と感光体の間に存在する外添剤は、衝撃を分散し難くくなる。そのため、外添剤は、トナー粒子から外れ、遊離粒子となる。その結果、遊離外添剤が画像上に白ポチとなって表れる画像欠陥を引き起こす場合がある。」
キ 引用例7
原査定の拒絶の理由において引用された特開2004-21127号公報(以下「引用例7」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法における静電荷潜像を顕像化するためのトナー、該トナーを用いた画像形成方法及びプロセスカートリッジに関する。」
(イ)「【0294】
更に、当接部を形成する帯電部材の表面の移動速度と、像担持体の表面の移動速度に相対的速度差を設けることは、接触帯電部材と像担持体の当接部において導電性微粉末が像担持体に接触する機会を格段に増加させ、より高い接触性を得ることができるので、直接注入帯電性を向上させる点で好ましい。接触帯電部材と像担持体との当接部に導電性微粉末を介在させることにより、導電性微粉末の潤滑効果(摩擦低減効果)により接触帯電部材と像担持体との間に大幅なトルクの増大や、接触帯電部材及び像担持体表面の顕著な削れ等を伴うことなく速度差を設けることが可能となる。速度差を設けるための構成としては、接触帯電部材を回転駆動して像担持体と該接触帯電部材に速度差を設けることが挙げられる。」
(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
ア 後者の「転写材」、「トナー画像」、「画像形成装置」、「回転可能な感光ドラム」、「感光ドラムに当接して前記感光ドラムの表面を帯電する帯電ローラ」、「トナーを収容する現像容器」、「感光ドラムに当接して前記感光ドラムの表面にトナーを供給する現像剤担持体」、「現像装置」は、それぞれ、前者の「記録材」、「トナー像」、「画像形成装置」、「回転可能な像担持体」、「像担持体に当接して前記像担持体の表面を帯電する帯電部材」、「トナーを収容するトナー収容部」、「像担持体に当接して前記像担持体の表面にトナーを供給する現像部材」、「現像ユニット」に相当する。
イ 後者の「現像装置」は、クリーナレスシステムが適用され、感光ドラムに残ったトナーを現像剤担持体により回収するものであるところ、感光ドラムに残ったトナーとは、転写材にトナー画像として形成されなかったトナーであることは技術常識に照らして明らかであるから、前者の「現像ユニット」と後者の「現像装置」とは、「記録材にトナー像を形成することなく像担持体に残ったトナーを現像部材により回収する現像ユニット」との点でも相当するものである。
ウ 後者の「トナー」は、重量平均粒径が7.0μmであるから、前者の「トナー」と後者の「トナー」とは、平均粒径が7μmの点で一致する。
したがって、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「記録材にトナー像を形成する画像形成装置において、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体に当接して前記像担持体の表面を帯電する帯電部材と、
トナーを収容するトナー収容部と、前記像担持体に当接して前記像担持体の表面に前記トナーを供給する現像部材と、を有する現像ユニットであって、記録材に前記トナー像を形成することなく前記像担持体に残ったトナーを前記現像部材により回収する現像ユニットと、を有し、トナー粒子の平均粒径が7μmである、
画像形成装置。」
[相違点1]
本願補正発明は、「ビッカース圧子を前記帯電部材に侵入させることで測定される、前記帯電部材の表面からの押し込み深さ1μmにおける前記帯電部材の表面のマルテンス硬さをHMR、ビッカース圧子を前記トナーのトナー粒子に侵入させることで測定される、前記トナー粒子の表面からの押し込み深さ1μmにおける前記トナー粒子の表面のマルテンス硬さをHMDとしたときに、 HMD>HMR の関係であって、前記HMDと前記HMRの差分は1以上49.5以下であ」るのに対し、引用発明1は、帯電ローラの表面のマルテンス硬さ及びトナーの表面のマルテンス硬さが不明である点。
[相違点2]
本願補正発明の「帯電部材」が「像担持体の表面移動速度と異なる前記表面移動速度で回転する」ものであるのに対し、引用発明1の「帯電ローラ」は、「感光ドラムの回転に従動して回転する」ものである点。
(4)判断
上記各相違点について、以下、検討する。
ア [相違点1について]
(ア)本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「明細書等」という。)には、帯電部材の表面のマルテンス硬さ及び現像剤の表面のマルテンス硬さに関して、以下の通り記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2、3の構成では、長期にわたり良質な画質を得られない可能性がある。特許文献1に関しては、トナー形状変化率を規定してあるが、帯電ロールを構成する層の構成、これらの層の材料や厚み等を適切に選択することにより制御可能であることが開示されているだけである。また、特許文献2、3に関しては、現像性の悪化や、回収性の悪化を改善させる構成が提案されているが、これらの件について、更に耐久性を改善するという課題が残されている。
【0008】
本発明は、上記従来の技術を更に発展させたものであり、その目的は、転写後に残留した現像剤が、像担持体と帯電部材との間を通過するときに、現像剤の割れや変形を起こしにくくし、長期にわたって品質の安定した画像を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、像担持体と、前記像担持体に当接して前記像担持体を帯電する帯電部材と、前記像担持体に当接して現像剤を供給する現像部材と、を有し、転写後に前記像担持体に残った現像剤を前記現像部材により回収する画像形成装置において、前記帯電部材の表面のマルテンス硬さをHMR、前記現像剤の表面のマルテンス硬さをHMDとしたときに、HMD>HMRの関係であることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、画像形成装置に着脱自在であって、像担持体と、前記像担持体に当接して前記像担持体を帯電する帯電部材と、前記像担持体に当接して現像剤を供給する現像部材と、を有し、転写後に前記像担持体に残った現像剤を前記現像部材により回収するカートリッジにおいて、前記帯電部材の表面のマルテンス硬さをHMR、前記現像剤の表面のマルテンス硬さをHMDとしたときに、HMD>HMRの関係であることを特徴とする。」
「【0035】
トナー表面のマルテンス硬さHMDは、小さすぎると付着力が大きくなる等使いにくくなる可能性がある。またトナー表面のマルテンス硬さHMDは、大きすぎると感光体ドラムを傷つける等の弊害を起こしやすくなる。従って、トナー表面のマルテンス硬さHMDは、付着力の観点からは、2以上であることが好ましく、更に好ましくは2.5以上である。またトナー表面のマルテンス硬さHMDは、感光体ドラムの表面層との関係においては、50以下であることが好ましく、20以下更に好ましくは15以下の範囲で使用することがより好ましい。
【0036】
他方、本発明の画像形成装置に用いられる、帯電ローラについても所定のマルテンス硬さとする必要がある。帯電ローラを所定のマルテンス硬さとするためには、例えば、帯電ローラの表面層及びその近傍の材料、組成、分子量又は架橋度などを制御することが挙げられる。更には、前記帯電ローラの表面層に硬質又は軟質の材料を含有させることによっても制御することができる。
【0037】
帯電ローラ表面のマルテンス硬さHMRは、小さすぎるとタック性が高くなり、トルクが大きくなる等使いにくくなる可能性がある。また帯電ローラ表面のマルテンス硬さHMRは、大きすぎると感光体ドラムを傷つける等の弊害を起こす可能性がある。従って、帯電ローラ表面のマルテンス硬さHMRは、タック性又はトルクの観点からは、0.5以上であることが好ましく、1以上範囲で使用することがより好ましい。また帯電ローラ表面のマルテンス硬さHMRは、感光体ドラムを傷つけるという観点からは、19以下が好ましく、更に好ましくは10以下である。
【0038】
更に帯電ローラ表面の算術平均粗さRaは、小さすぎるとタック性が高くなり、トルクが大きくなる等使いにくくなる等の可能性がある。また帯電ローラ表面の算術平均粗さRaは、大きすぎると帯電ローラの表面硬度のムラができてしまい、トナーが割れてしまう可能性がある。従って、帯電ローラ表面の算術平均粗さRaは、タック性又はトルクの観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.6μm以上で使用することがより好ましい。また帯電ローラ表面の算術平均粗さRaは、帯電ローラの表面硬度のムラの観点からは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下の範囲で使用することがより好ましい。また、トナーのマルテンス硬さとの差分においては、1以上あることが好ましく、3以上で使用することがより好ましい。尚、前記算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2001に準拠して測定したものである。」
「【0096】
〔実施例1〕
先に説明した画像形成装置を用いて、帯電ローラとして〔帯電ローラ製造例1〕、トナーとして〔トナー製造例1〕を用いて、評価を行った。
【0097】
評価環境は、温度23℃、湿度50%、トナーを100g現像器に充填し、印字率:1.5%、A4紙3000枚をプリントし耐久評価を行った。
【0098】
評価項目は、画質とドラム上のかぶりとその時に現像スリーブ上のトナー形状の観察である。トナー形状の観察は、電子顕微鏡により行う。トナーの粒子全体の個数に対し異形状と認められるトナーの粒子の個数の割合により効果を測定する。
【0099】
耐久結果は、下記表1及び表2に挙げたとおりである。帯電ローラのマルテンス硬さが3、トナーのマルテンス硬さが11の構成では、現像スリーブ上のトナーはほぼ割れがなく、感光体ドラム上のかぶりは4%であり、画質は良好であった。
【0100】
〔表1〕
【0101】
〔表2〕
【0102】
尚、本実施例に用いた、帯電ローラ及びトナーのマルテンス硬さを測定した際の加重くぼみ深さ曲線の一例を図2に挙げた。図2中、帯電ローラのマルテンス硬さを実線で示し、トナーのマルテンス硬さを点線で示している。
【0103】
また、耐久評価とは別に、簡易的にトナー割れ、変形を確認するための加速評価も行っている。加速評価方法は、実施例に記載されている画像形成装置を用いてトナーの評価を行う。まず、評価したいトナーを感光体ドラムの周方向に25mmのベタ黒(m/s=8g/m2程度)を現像し、感光体ドラム上にトナーを載せる。このとき、評価したい帯電ローラを使用する。その後、現像器を取り外し、空回転を12分間行う。そして、12分後に帯電ローラに付着しているトナーを観察する。トナーの形状観察は、電子顕微鏡により行いトナーの粒子全体の個数に対し異形状と認められるトナーの粒子の個数の割合により効果を測定する。例として、表1の実施例1の構成と比較例1の構成において、加速評価を行い、電子顕微鏡により撮影した画像を図4(a)、図4(b)に示す。実施例1の構成では、図4(a)に示すように、ほとんどのトナーが球形の状態を維持していることが確認できた。また、比較例1の構成に関しては、図4(b)に示すように、トナー割れや変形が確認できた。
【0104】
〔実施例2〕
帯電ローラとして〔帯電ローラ製造例3〕、トナーとして〔トナー製造例4〕を用いて、実施例1と同様に耐久評価を行った。耐久結果は、表1及び表2に挙げたとおりである。帯電ローラのマルテンス硬さが13.4、トナーのマルテンス硬さが19.1の構成では、現像スリーブ上のトナーはほぼ割れがなく、感光体ドラム上のかぶりは4%であり、画質は良好であった。 【0105】
〔実施例3〕
帯電ローラとして〔帯電ローラ製造例2〕、トナーとして〔トナー製造例2〕を用いて、実施例1と同様に耐久評価を行った。耐久結果は、表1及び表2に挙げたとおりである。帯電ローラのマルテンス硬さが2.5、トナーのマルテンス硬さが5の構成では、現像スリーブ上のトナーはほぼ割れがなく、感光体ドラム上のかぶりは5%であり、画質は良好であった。
【0106】
〔比較例1〕
帯電ローラとして〔帯電ローラ製造例3〕、トナーとして〔トナー製造例1〕を用いて、実施例1と同様に耐久評価を行った。耐久結果は、表1及び表2に挙げたとおりである。帯電ローラのマルテンス硬さが13.4、トナーのマルテンス硬さが11の構成では、現像スリーブ上のトナーは割れが半数程度であり、感光体ドラム上のかぶりは24%であり、画質は帯電不良であった。
【0107】
〔比較例2〕
帯電ローラとして〔帯電ローラ製造例1〕、トナーとして〔トナー製造例3〕を用いて、実施例1と同様に耐久評価を行った。耐久結果は、表1及び表2に挙げたとおりである。帯電ローラのマルテンス硬さが3、トナーのマルテンス硬さが2.1の構成では、現像スリーブ上のトナーは割れが半数程度であり、感光体ドラム上のかぶりは20%であり、画質は帯電不良であった。
【0108】
<本発明の効果>
帯電ローラ表面のマルテンス硬さHMRとトナー表面のマルテンス硬さHMDが、HMD>HMRの関係を満たす実施例1と、前述の関係を満たさない比較例とを用いて、耐久を行いトナー割れとかぶり、画質の評価を行った。実施例1の比較サンプルとして用意した比較例1は、実施例1構成の帯電ローラのみ硬度を上げた構成であり、比較例2は、実施例1構成のトナーのみ硬度を下げた構成である。
【0109】
また、実施例2,3については上記HMD>HMRの条件になる範囲で硬度を上側と下側に振り、評価を行っている。
【0110】
以上のように、実施例1では、3000枚時でも、トナーの割れはほとんどなく、カブリのトナー量が少ないため、帯電ローラを汚すことなく、安定した画質を保つことができる。それに対して、比較例1、2では、3000枚時において、かぶりが悪化しており、帯電ローラにトナーが付着する量が増えてしまい、帯電不良を引き起こした。また、現像スリーブ上のトナーは、半数程度の割れたトナーが観察された。これは、比較例1,2の構成では、帯電ローラと感光体の間でトナーが割れてしまい、そこで割れたトナーが現像容器に回収されるためである。従って、現像容器内のトナーは、割れたトナーが耐久とともに増加し、現像スリーブ上のトナーも割れたトナーの割合が増加する。そのため、十分にトナーに電荷が付与されないトナーが多くなり、感光体上にかぶるトナーが増加する。かぶったトナーは、負極性に帯電されにくいため、転写されずに、帯電ローラに付着し帯電不良を引き起こしてしまう。
【0111】
また、実施例2,3のように、硬度を上下に変えても、上記HMD>HMRの条件を満たした帯電ローラ、トナーを用いた場合は、3000枚の耐久において安定した画質であった。
【0112】
以上のように、帯電ローラの表面のマルテンス硬さHMDをトナーの表面のマルテンス硬さHMDより小さいものを使用する。これにより、帯電ローラと感光体ドラムの間でのトナーの割れ、変形を抑制することができ、かぶりを良好に保ち、耐久を通じて良好な画像を得ることができる。」
(イ)上記(ア)の記載からすると、本願発明の課題は、「転写後に残留した現像剤が、像担持体と帯電部材との間を通過するときに、現像剤の割れや変形を起こしにくくし、長期にわたって品質の安定した画像を得ること」であって、その課題を解決するための手段は、「帯電部材の表面のマルテンス硬さをHMR、現像剤の表面のマルテンス硬さをHMDとしたときに、HMD>HMRの関係であること」と認められる。
(ウ)上記課題を解決するための手段に対し、本願補正発明は、「HMD>HMR」の関係に加え、「HMDとHMRの差分は1以上49.5以下である」(以下「本件マルテンス硬さの差分の数値範囲」という。)と特定されているところ、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲の技術的意義について以下検討する。
(エ)上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲における下限値である「1以上」と上記本願発明の課題との関係について、明細書等には、【0038】に単に「1以上あることが好ましく」と記載されているだけで、上記本願発明の課題である「転写後に残留した現像剤が、像担持体と帯電部材との間を通過するときに、現像剤の割れや変形を起こしにくくし、長期にわたって品質の安定した画像を得ること」を解決する作用機序が記載されているわけでもなく、また、実施例や比較例においても1以上とそれより低い値であるものとにおいて、上記本願発明の課題を解決するための作用効果がどのように異なるのかについては、何ら示されていないから、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲における下限値である「1以上」について、実施例による裏付けがあるわけでもない。
また、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲における上限値である「49.5以下」と上記本願発明の課題との関係について、明細書等には、【0035】に単に「HMDは、感光体ドラムの表面層との関係においては、50以下であることが好ましく」及び【0037】に「HMRは、タック性又はトルクの観点からは、0.5以上であることが好ましく」と記載されているだけで、上記本願発明の課題である「転写後に残留した現像剤が、像担持体と帯電部材との間を通過するときに、現像剤の割れや変形を起こしにくくし、長期にわたって品質の安定した画像を得ること」を解決する作用機序が記載されているわけでもなく、また、実施例や比較例においても49.5以下とそれより高い値であるものとにおいて、上記本願発明の課題を解決するための作用効果がどのように異なるのかについては、何ら示されていないから、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲における上限値である「49.5以下」について、実施例による裏付けがあるわけでもない。
そして、明細書等の【0100】及び【0101】には、上記本件マルテンス硬さの差分が2.5、5.7、8の実施例については、トナーの割れがなく、感光体上のかぶりが少なく、画質が良好であったことが記載されているが、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲における1以上2.5以下、及び8以上49.5以下の範囲については、実施例による裏付けはない。
そうすると、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲における「1以上2.5以下」及び「8以上49.5以下」の範囲については、上記本願発明の課題との関係において臨界的意義を有するものではないと言わざるを得ない。
してみると、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲は、上記本願発明の課題との関係において、臨界的意義を有するものとはいえない。
(オ)一方、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲を算出するための数値である帯電部材の表面のマルテンス硬さHMRについて、明細書等の【0037】には、「小さすぎるとタック性が高くなり、トルクが大きくなる等使いにくくなる可能性がある。」、「大きすぎると感光体ドラムを傷つける等の弊害を起こす可能性がある。」、「タック性又はトルクの観点からは、0.5以上」及び「感光体ドラムを傷つけるという観点からは、19以下が好ましく」と記載されているところ、上記引用例3~5に記載されているように、像担持体(感光体ドラム)を傷つけ難くするとともに、トナーに対するストレスが緩和し、フィルミングの発生を防止するために帯電部材の表面の硬さを所定の数値範囲に調整することは、画像形成装置の分野において従来より、普通に行われていたことであって、本願補正発明と上記引用例3~5とは、感光体ドラムを傷つけることを防止するとの課題で共通するのであるから、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲を算出するための数値である帯電部材の表面のマルテンス硬さHMRを所定の数値範囲に調整することは、画像形成装置の分野において普通に採用されていた手段と認められる。
そして、測定手法に違いはあるものの、上記(2)ウ~オに摘記したように、帯電部材の表面のマルテンス硬さとして、引用例3に0.5~9N/mm2、引用例4に0.2~6.6N/mm2、引用例5に0.3~1.5N/mm2とすることが記載されていることからすれば、上記の通り、帯電部材の表面のマルテンス硬さHMRを所定の数値範囲に調整することが、画像形成装置の分野において普通に採用されていた手段であるところ、本願補正発明と上記引用例3~5とで、帯電部材の表面のマルテンス硬さを調整することで、感光体ドラムを傷つけることを防止するという目的が共通することからすれば、測定手法の違いを考慮したとしても、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲を算出するための数値である帯電部材の表面のマルテンス硬さHMRを0.2以上6.6以下とすることは、帯電部材の表面硬さとして通常採用する数値範囲であると認められる。
(カ)また、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲を算出するための数値であるトナー粒子の表面のマルテンス硬さHMDについて、明細書等の【0035】には、「小さすぎると付着力が大きくなる等使いにくくなる可能性がある。」、「大きすぎると感光体ドラムを傷つける等の弊害を起こしやすくなる。」、「付着力の観点からは、2以上であることが好ましく」及び「感光体ドラムの表面層との関係においては、50以下であることが好ましく」と記載されているところ、上記引用例6に記載されているように、画像欠陥のない画像を提供するためにトナー表面の硬さを1.0N/mm2以上200.0N/mm2以下に調整することは、画像形成装置の分野において従来より、普通に行われていたことであって、本願補正発明の「付着力が大きくなる」及び「感光体ドラムを傷つける」との課題は、画像欠陥の原因であることから、引用例6の「画像欠陥のない画像を提供する」こととの課題と共通するのであるから、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲を算出するための数値であるトナー表面の硬さを1.0N/mm2以上200.0N/mm2以下に調整することは、画像形成装置の分野において普通に採用されていた手段と認められる。
そして、測定手法に違いはあるものの、上記(2)カに摘記したように、トナー粒子の表面のマルテンス硬さとして、引用例6に1.0N/mm2以上200.0N/mm2以下とすることが記載されていることからすれば、上記の通り、トナー粒子の表面のマルテンス硬さHMDを所定の数値範囲に調整することが、画像形成装置の分野において普通に採用されていた手段であるところ、本願補正発明と上記引用例6とで、トナー粒子の表面のマルテンス硬さを調整することで、画像欠陥のない画像を提供するという目的が共通することからすれば、測定手法の違いを考慮したとしても、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲を算出するための数値であるトナー粒子の表面のマルテンス硬さHMDを2以上50以下とすることは、トナー粒子の表面の硬さとして通常採用する数値範囲と認められる。
(キ)そうすると、帯電部材の表面のマルテンス硬さHMRを0.2以上6.6以下とすること、及びトナー粒子の表面のマルテンス硬さHMDを1.0N/mm2以上200.0N/mm2以下とすることがいずれも、帯電部材及びトナー粒子として通常採用する数値範囲のものであること、及び上記イ(イ)のとおり、残留したトナーを含む異物による画像欠陥を防止するために、帯電ローラを、残留したトナーを含む異物に追従させること、すなわち、帯電ローラの表面硬度を残留したトナーの表面硬度より柔らかくすることが公知であることからすると、帯電部材の表面のマルテンス硬さHMRとトナー粒子の表面のマルテンス硬さHMDとの大小関係を、HMD>HMRとすることは、画像形成装置において、通常採用し得ることであると認められる。
(ク)そして、上記(エ)のとおり、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲に臨界的意義がないことからすると、前記数値範囲を1以上49.5以下とすることは、通常採用する帯電部材の表面のマルテンス硬さ及びトナー粒子の表面のマルテンス硬さから好適な範囲を特定したにすぎないものと認められる。
(ケ)そうすると、引用発明1において、上記引用例2~6を参酌し、帯電ローラの表面のマルテンス硬さとトナーの表面のマルテンス硬さとを適宜選択し、以て、上記相違点1の構成とすることは、当業者が適宜採用し得る事項と認められる。
イ [相違点2]について
引用例7に示されているように、像担持体と帯電部材の回転速度に速度差を設けることで、帯電性を向上させることは、画像形成装置の分野において、通常採用されている手段である。
そして、画像形成装置において、帯電部材の帯電性は、高いに越したことはないのであるから、引用発明1の帯電ローラが感光ドラムの回転に従動して回転しているところ、感光ドラムの回転速度と帯電ローラの回転速度とを異なる速度とし、上記相違点2の構成とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
請求人は、「引用例2の段落0003及び図1などに記載の異物は、数十~数百μmの大きさの凝集物(転写残トナー、キャリア、紙粉など)であります。このような凝集物が発生するためには、転写後、帯電部材に至る過程でクリーニングブレードなどの接触物があり、感光ドラム上で何らかの負荷により、一度堰き止める必要があります。したがって、そのような接触物が配置されていることが示唆されていることから、引用例2に開示された発明は、上記(イ)のようなクリーナレスシステムを想定しておりません。さらに、引用例2の異物は、数十~数百μmの大きさの凝集物であることから、上記(ロ)のような関係性を全く想定し得ない構成となります。」と主張する。
しかし、上記イ(イ)に記載されているように、引用例2には、異物が付着しても画像欠陥を最小限とすることを発明が解決しようとする課題としていることから、引用発明1のクリーナレスシステムに適用する阻害要因があるとはいえない。また、引用例2が対象とする異物には、転写残のトナーも含まれているのであるから、引用例2における導電性ロールの硬度の設定に際しては、本願補正発明と同様に、転写残のトナーの硬度を考慮していることは明らかといえる。
また請求人は、「引用例2-6に記載された範囲は、ただ単に上記課題を抑制、低減するためだけの、帯電部材の「表面の硬さ」とトナー粒子の「硬さ」の関係を考慮した範囲に過ぎないため、特に帯電部材の「表面の硬さ」とトナー粒子の「表面の硬さ」の関係を上記(ロ)とする本願発明の特徴を想起することは出来ません。したがって、この本願発明の特徴を想起することができない引用例2-6の記載からは、「帯電部材を通過する際にトナー粒子の割れや変形を抑制し、トナー粒子を現像部材に効果的に回収する」という本願発明特有の効果を得ることも到底出来ません。」と主張する。
しかし、上記アで検討したように、上記相違点1の「HMDとHMRの差分は1以上49.5以下」は、本願発明の課題との関係において臨界的意義を有するものとはいえないし、上記本件マルテンス硬さの差分の数値範囲を算出するための数値である帯電部材の表面のマルテンス硬さの数値範囲も、トナー粒子の表面のマルテンス硬さの数値範囲も、当該画像形成装置の分野において、通常採用する数値範囲のものであることから、上記相違点1の構成とすることは、上記引用例3~6を参酌すれば、当業者が適宜採用し得る事項と言わざるを得ない。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、当業者が容易に発明できた発明であって、特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ないものであるから、本件補正は,特許法第17条の2第6項の規定に違反してされたものである。
(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和1年6月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
記録材にトナー像を形成する画像形成装置において、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体に当接して前記像担持体の表面を帯電する帯電部材であって、前記像担持体の表面移動速度と異なる前記表面移動速度で回転する帯電部材と、
トナーを収容するトナー収容部と、前記像担持体に当接して前記像担持体の表面に前記トナーを供給する現像部材と、を有する現像ユニットであって、記録材に前記トナー像を形成することなく、前記像担持体に残ったトナーを前記現像部材により回収する現像ユニットと、を有し、
前記帯電部材の表面のマルテンス硬さをHMR、前記トナーのトナー粒子の表面のマルテンス硬さをHMDとしたときに、
HMD>HMR
の関係であって、前記HMDと前記HMRの差分は1以上49.5以下であることを特徴とする画像形成装置。」(以下「本願発明」という。)
2 引用例
令和1年10月3日付けの拒絶理由通知に引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用例」に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、実質的に、本願補正発明の「ビッカース圧子を前記帯電部材に侵入させることで測定される、前記帯電部材の表面からの押し込み深さ1μmにおける」、「ビッカース圧子を前記トナーのトナー粒子に侵入させることで測定される、前記トナー粒子の表面からの押し込み深さ1μmにおける」及び「前記トナー粒子の平均粒径は4μm以上9μm以下」との限定を省くものである。
そうすると、本願発明と引用発明1とを対比すると、上記「第2 3 (3)対比」での検討を勘案すると、両者は、
「記録材にトナー像を形成する画像形成装置において、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体に当接して前記像担持体の表面を帯電する帯電部材と、
トナーを収容するトナー収容部と、前記像担持体に当接して前記像担持体の表面に前記トナーを供給する現像部材と、を有する現像ユニットであって、記録材に前記トナー像を形成することなく、前記像担持体に残ったトナーを前記現像部材により回収する現像ユニットと、を有する、
画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で、相違する。
[相違点1’]
本願発明は、「前記帯電部材の表面のマルテンス硬さをHMR、前記トナー粒子の表面のマルテンス硬さをHMDとしたときに、 HMD>HMR の関係であって、前記HMDと前記HMRの差分は1以上49.5以下である」のに対し、引用発明1は、帯電ローラの表面のマルテンス硬さ及びトナーの表面のマルテンス硬さが不明であって、そのようなものなのか定かでない点。
[相違点2]
本願発明は、像担持体の表面移動速度と異なる前記表面移動速度で回転する帯電部材であるのに対し、引用発明1は、感光ドラムの回転に従動して回転するものである帯電ローラである点。
上記[相違点1’]は、上記[相違点1]から、「ビッカース圧子を前記帯電部材に侵入させることで測定される、前記帯電部材の表面からの押し込み深さ1μmにおける」との事項を省いたものである。
してみると、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、上記と同様の理由により、本願発明は、引用発明1、引用例2から7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-010466