2020-007236
金属、誘電体および窒化物適合性を有する、反射防止コーティング洗浄およびエッチング後残留物除去組成物
- 審判番号
- 2020-007236
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-571339外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年05月27日
- 審決日
- 2020年12月22日
- 公報発行日
- 2021年07月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】インテグリス・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】園田・小林特許業務法人
- 分類
- P18 .121-Z (C11D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月2日(パリ条約による優先権主張 2014年(平成26年)6月4日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、令和1年7月8日付けの拒絶理由に対し、同年10月16日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、同2年1月21日付けの拒絶査定に対し、同年5月27日付けで審判請求がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~11に係る発明は、令和1年10月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「0.01重量%から25重量%の少なくとも1種のフッ化物含有の化合物と、0.01重量%から99.9重量%の少なくとも1種の有機溶媒と、0.01重量%から10重量%の水と、0.01重量%から2重量%の誘電体不動態化剤、0.01重量%から20重量%の腐食抑制剤またはこれらの組み合わせとを含む液体除去組成物であって、少なくとも1種のフッ化物含有化合物が、フッ化水素、フッ化アンモニウム、フルオロホウ酸、テトラメチルアンモニウムフルオリド(TMAF)、トリエタノールアミンフッ化水素酸塩、重フッ化アンモニウム((NH4)HF2)、重フッ化テトラアルキルアンモニウム((R)4NHF2)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化学種を含み、少なくとも1種の有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-プロパノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1,4-ブタンジオール、1-ペンタノール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含み、少なくとも1種の誘電体不動態化剤がホウ酸、二ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸ナトリウム、二ホウ酸アンモニウム、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、イミノ二酢酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化学種を含み、少なくとも1種の腐食抑制剤が、ベンゾトリアゾール(BTA)、1,2,4-トリアゾール(TAZ)、5-アミノテトラゾール(ATA)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、3-アミノ-1H-1,2,4トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、トリルトリアゾール、5-フェニル-ベンゾトリアゾール、5-ニトロ-ベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,4-トリアゾール、2-(5-アミノ-ペンチル)-ベンゾトリアゾール、1-アミノ-1,2,3-トリアゾール、1-アミノ-5-メチル-1,2,3-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、5-フェニルチオール-ベンゾトリアゾール、ハロ-ベンゾトリアゾール(ハロ=F、Cl、BrまたはI)、ナフトトリアゾール、1H-テトラゾール-5-酢酸、2-メルカプトベンゾチアゾール(2-MBT)、1-フェニル-2-テトラゾリン-5-チオン、2-メルカプトベンゾイミダゾール(MBI)、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-メルカプトチアゾリン、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、チアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアジン、メチルテトラゾール、ビスムチオールI、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、ジアミノメチルトリアジン、イミダゾリンチオン、4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、ベンゾチアゾール、リン酸トリトリル、インダゾール、DNA塩基、ピラゾール、プロパンチオール、アスコルビン酸、チオ尿素、1,1,3,3-テトラメチル尿素、尿素、尿素誘導体、尿酸、エチルキサントゲン酸カリウム、グリシン、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)、酒石酸、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、1-ニトロソ-2-ナフトール、ポリソルベート80(Tween 80)、ドデシルホスホン酸(DDPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、(1,2-シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTCA)、エチレンジアミンジコハク酸、プロピレンジアミン四酢酸、ホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)(Dequest 2010)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロ-トリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(Dequest 2000)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(Dequest 2060S)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMPA)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化学種を含み、反射防止コーティング(ARC)材料および/またはエッチング後残留物を、かかる材料および/または残留物をその上に有するマイクロ電子デバイスから除去するのに有用である、液体除去組成物。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、刊行物として特表2008-546036号公報を引用するものである。
第4 当審の判断
1 引用文献及びその記載事項
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(1) 引用文献1
原査定において引用した特表2008-546036号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】少なくとも1種類のフッ化物含有化合物と、少なくとも1種類の有機溶媒と、任意に水と、任意に少なくとも1種類のキレート剤とを含む液体除去組成物であって、犠牲反射防止コーティング(SARC)材料およびエッチング後残留物を、その上にかかる材料および残留物を有するマイクロ電子デバイスから除去するのに有用である、液体除去組成物。…[MK1]【請求項12】水が、前記組成物の全重量に基づき約0.01重量%~約1重量%の量で存在する、請求項9に記載の液体除去組成物。」
「【0029】【表1】」
「【0037】フッ化物の存在が、酸性溶液でシリケート材料をエッチングするのに必要であることから、フッ化物イオンの供給源が必要とされる。フッ化物含有化合物の適切な供給源としては、限定されないが、フッ化水素、フッ化アンモニウム、およびトリエタノールアミンフッ化水素酸塩が挙げられる。その代わりとして、重フッ化アンモニウム((NH4)HF2)、重フッ化テトラアルキルアンモニウム((R)4NHF2、式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ベンジル、またはフッ素化C1-C4アルキル基である)などの重フッ化物の塩を使用することができる。2種類以上のフッ化物種の組み合わせもまた、本明細書において企図される。好ましい実施形態において、フッ化物含有化合物としては、フッ化水素が挙げられる。注目すべきことには、フッ化水素は一般に、残りの量の水と共に輸送され、したがって、その後に水が意図的に添加されないとしても、除去組成物中に水が存在し得る。代替方法としては、配合物中に唯一の水が、溶媒から生じる微量の水であるようにするため、気体無水フッ化水素が使用される。無水フッ化水素含有配合物は一般に、水含有配合物よりも優れた金属および誘電体相溶性を示す。【0038】有機溶媒種は、溶媒としての役割を果たし、かつSARCおよび/またはエッチング後残留物中に存在し得る有機残留物の溶解を助ける。かかる組成物のための適切な溶媒種としては、限定されないが、直鎖または分枝鎖C1-C6アルコール、限定されないが、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、およびヘキサノール;エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、テトラメチレングリコール(1,4-ブタンジオール)およびネオペンチルグリコールなどのグリコール;またはジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、およびトリプロピレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテルが挙げられる。有用である他の溶媒は、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシドなどの一般的な極性溶媒、および他の極性溶媒である。2種類以上の溶媒種の組み合わせも本明細書において企図される。多孔質低k誘電材料については、有機溶媒種としては、好ましくは1-ブタノールおよび1,4-ブタンジオールが挙げられる。高密度誘電体に最も好ましいクリーニング溶液は、グリコール、極性溶媒およびグリコールエーテルの組み合わせ、さらに好ましくは、エチレングリコール、テトラメチレンスルホンおよびトリプロピレングリコールメチルエーテルの組み合わせまたはエチレングリコール、テトラメチレンスルホンおよびジプロピレングリコールn-ブチルエーテルの組み合わせである。【0039】キレート剤を添加して、下地層における金属、例えば銅および/またはコバルトの腐食を低減することができる。かかる組成物におけるキレート剤/不動態化剤は、いずれかの適切な種類のものであり、限定されないが、トリアゾール、例えば、1,2,4-トリアゾール、またはC1-C8アルキル、アミノ、チオール、メルカプト、イミノ、カルボキシおよびニトロ基などの置換基で置換されたトリアゾール、例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-フェニル-ベンゾトリアゾール、5-ニトロ-ベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,4-トリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-(5-アミノ-ペンチル)-ベンゾトリアゾール、1-アミノ-1,2,3-トリアゾール、1-アミノ-5-メチル-1,2,3-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、5-フェニルチオール-ベンゾトリアゾール、ハロ-ベンゾトリアゾール(ハロ=F、Cl、BrまたはI)、ナフトトリアゾール等、ならびにチアゾール、テトラゾール、イミダゾール、ホスフェート、チオールおよびアジン、例えば2-メルカプトベンゾイミジゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール,4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-メルカプトチアゾリン、5-アミノテトラゾール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、チアゾール、トリアジン、メチルテトラゾール、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、ジアミノメチルトリアジン、メルカプトベンゾチアゾール、イミダゾリンチオン、メルカプトベンズイミダゾール、4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、ベンゾチアゾール、トリトリルホスフェート、インジアゾール等が挙げられる。適切なキレート剤種としてはさらに、グリセロール、アミノ酸、カルボン酸、アルコール、アミド、およびキノリン、例えばグアニン、アデニン、グリセロール、チオグリセロール、ニトリロ三酢酸、サリチルアミド、イミノ二酢酸、ベンゾグアナミン、メラミン、チオシラヌル酸、アントラニル酸、没食子酸、アスコルビン酸、サリチル酸、8-ヒドロキシキノリン、5-カルボン酸-ベンゾトリアゾール、3-メルカプトプロパノール、ホウ酸、イミノ二酢酸等が挙げられる。2種類以上のキレート剤の組み合わせも本明細書において企図される。キレート剤は、マイクロ電子デバイスで使用される金属および誘電材料と組成物との相溶性を高めるために有効に使用される。」
「【0048】種々の好ましい実施形態において、実施形態Aの除去組成物は、以下の配合物AA~AI3で配合され、すべてのパーセンテージは、配合物の全重量に基づく重量基準による:…配合物AI:エチレングリコール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AJ:プロピレングリコール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AK:ジエチレングリコールブチルエーテル98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AL:2-プロパノール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AM:1,4-ブタンジオール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AN:1-プロパノール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AO:1-ペンタノール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%…」
「【0089】【表15】【0090】【表16】」
2 引用文献1に記載された発明
摘記1aの「少なくとも1種類のフッ化物含有化合物と、少なくとも1種類の有機溶媒と、任意に水と、任意に少なくとも1種類のキレート剤とを含む液体除去組成物であって、犠牲反射防止コーティング(SARC)材料およびエッチング後残留物を、その上にかかる材料および残留物を有するマイクロ電子デバイスから除去するのに有用である、液体除去組成物。」の記載からみて、引用文献1には、
「フッ化物含有化合物と、有機溶媒と、水と、キレート剤とを含む液体除去組成物であって、犠牲反射防止コーティング(SARC)材料およびエッチング後残留物を、その上にかかる材料および残留物を有するマイクロ電子デバイスから除去するのに有用である、液体除去組成物。」(以下、引用発明1とする。)が記載されていると認められる。
3 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「フッ化物含有化合物」は本願発明の「フッ素化物含有の化合物」に相当する。
また、犠牲反射防止コーティングは反射防止コーティングの一種であるから、引用発明1の「犠牲反射防止コーティング(SARC)材料」は本願発明の「反射防止コーティング(ARC)材料」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明1は、両者とも
「少なくとも1種のフッ化物含有の化合物と、少なくとも1種の有機溶媒と、水と、とを含む液体除去組成物であって、反射防止コーティング(ARC)材料および/またはエッチング後残留物を、かかる材料および/または残留物をその上に有するマイクロ電子デバイスから除去するのに有用である、液体除去組成物。」である点で一致し、次の点において相違する。
(相違点1)本願発明は、フッ化物含有の化合物、有機溶媒をそれぞれ「フッ化水素、フッ化アンモニウム、フルオロホウ酸、テトラメチルアンモニウムフルオリド(TMAF)、トリエタノールアミンフッ化水素酸塩、重フッ化アンモニウム((NH4)HF2)、重フッ化テトラアルキルアンモニウム((R)4NHF2)、およびこれらの組み合わせからなる群」と「エチレングリコール、プロピレングリコール、2-プロパノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1,4-ブタンジオール、1-ペンタノール、およびこれらの組み合わせからなる群」から選択される化学種に限定しているのに対して、引用発明1はフッ化物含有化合物や有機溶媒を特定していない点
(相違点2)本願発明は、「誘電体不動態化剤」、「腐食抑制剤」として、それぞれ「ホウ酸、二ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸ナトリウム、二ホウ酸アンモニウム、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、イミノ二酢酸、およびこれらの組み合わせからなる群」と「ベンゾトリアゾール(BTA)、1,2,4-トリアゾール(TAZ)、5-アミノテトラゾール(ATA)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、3-アミノ-1H-1,2,4トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、トリルトリアゾール、5-フェニル-ベンゾトリアゾール、5-ニトロ-ベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,4-トリアゾール、2-(5-アミノ-ペンチル)-ベンゾトリアゾール、1-アミノ-1,2,3-トリアゾール、1-アミノ-5-メチル-1,2,3-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、5-フェニルチオール-ベンゾトリアゾール、ハロ-ベンゾトリアゾール(ハロ=F、Cl、BrまたはI)、ナフトトリアゾール、1H-テトラゾール-5-酢酸、2-メルカプトベンゾチアゾール(2-MBT)、1-フェニル-2-テトラゾリン-5-チオン、2-メルカプトベンゾイミダゾール(MBI)、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-メルカプトチアゾリン、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、チアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアジン、メチルテトラゾール、ビスムチオールI、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、ジアミノメチルトリアジン、イミダゾリンチオン、4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、ベンゾチアゾール、リン酸トリトリル、インダゾール、DNA塩基、ピラゾール、プロパンチオール、アスコルビン酸、チオ尿素、1,1,3,3-テトラメチル尿素、尿素、尿素誘導体、尿酸、エチルキサントゲン酸カリウム、グリシン、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)、酒石酸、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、1-ニトロソ-2-ナフトール、ポリソルベート80(Tween 80)、ドデシルホスホン酸(DDPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、(1,2-シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTCA)、エチレンジアミンジコハク酸、プロピレンジアミン四酢酸、ホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)(Dequest 2010)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロ-トリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(Dequest 2000)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(Dequest 2060S)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMPA)、およびこれらの組み合わせからなる群」から選択される化学種を用いるものであるのに対して、引用発明は「キレート剤」を用いるものであって、特に上記の化学種を用いることが記載されていない点
(相違点3)本願発明は、フッ化物含有の化合物や、有機溶媒、水、誘電体不動態化剤および/または腐食抑制剤の含有量を「0.01重量%から25重量%の少なくとも1種のフッ化物含有の化合物と、0.01重量%から99.9重量%の少なくとも1種の有機溶媒と、0.01重量%から10重量%の水と、0.01重量%から2重量%の誘電体不動態化剤、0.01重量%から20重量%の腐食抑制剤またはこれらの組み合わせ」を含むと規定しているのに対して、引用発明1は、フッ素化物含有化合物や、有機溶媒、水、キレート剤などの含有量を規定していない点
4 判断
ア 相違点1について
摘記1c【0037】には、フッ化物含有化合物としてフッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化テトラアルキルアンモニウムを用いることができることが、【0038】には、有機溶媒としてエチレングリコール、プロピレングリコール、2-プロパノール、1-ブタノール、1,4-ブタンジオール、1-ペンタノールを用いることができることがそれぞれ記載されており、1-ブタノールや1,4-ブタンジオールが好ましい有機溶媒種であることも記載されている。
また、摘記1d【0048】には、好ましい実施形態として、
「配合物AI:エチレングリコール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AJ:プロピレングリコール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AL:2-プロパノール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AM:1,4-ブタンジオール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AN:1-プロパノール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%配合物AO:1-ペンタノール98.5%;フッ化水素0.735%;水0.765%」
など、上記の化合物の組合せが記載されている。
してみれば、上記の記載に接した当業者は、引用発明1のフッ化物含有化合物や有機溶媒を、引用文献1に具体的に記載される化合物に特定することや、好ましい実施形態で採用されている配合割合に特定することなどにより、相違点1に係る構成を充足するものとすることを動機づけられると認められる。
イ 相違点2について
摘記1c【0039】には、「キレート剤を添加して、下地層における金属、例えば銅および/またはコバルトの腐食を低減することができる。かかる組成物におけるキレート剤/不動態化剤は、いずれかの適切な種類のものであり、限定されない…」と記載されており、キレート剤/不動態化剤が、下地層におけるコバルトなどの金属の腐食を低減することができるものであることが記載されているから、引用文献1のキレート剤/不動態化剤は、腐食抑制剤でもあるといえる。
加えて、同段落には「キレート剤/不動態化剤」の具体例として、「トリアゾール、例えば、1,2,4-トリアゾール、またはC1-C8アルキル、アミノ、チオール、メルカプト、イミノ、カルボキシおよびニトロ基などの置換基で置換されたトリアゾール、例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-フェニル-ベンゾトリアゾール、5-ニトロ-ベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,4-トリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-(5-アミノ-ペンチル)-ベンゾトリアゾール、1-アミノ-1,2,3-トリアゾール、1-アミノ-5-メチル-1,2,3-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、5-フェニルチオール-ベンゾトリアゾール、ハロ-ベンゾトリアゾール(ハロ=F、Cl、BrまたはI)、ナフトトリアゾール等、ならびにチアゾール、テトラゾール、イミダゾール、ホスフェート、チオールおよびアジン、例えば2-メルカプトベンゾイミジゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール,4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-メルカプトチアゾリン、5-アミノテトラゾール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、チアゾール、トリアジン、メチルテトラゾール、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、ジアミノメチルトリアジン、メルカプトベンゾチアゾール、イミダゾリンチオン、メルカプトベンズイミダゾール、4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、ベンゾチアゾール、トリトリルホスフェート、インジアゾール等が挙げられる。適切なキレート剤種としてはさらに、グリセロール、アミノ酸、カルボン酸、アルコール、アミド、およびキノリン、例えばグアニン、アデニン、グリセロール、チオグリセロール、ニトリロ三酢酸、サリチルアミド、イミノ二酢酸、ベンゾグアナミン、メラミン、チオシラヌル酸、アントラニル酸、没食子酸、アスコルビン酸、サリチル酸、8-ヒドロキシキノリン、5-カルボン酸-ベンゾトリアゾール、3-メルカプトプロパノール、ホウ酸、イミノ二酢酸等が挙げられる。2種類以上のキレート剤の組み合わせも本明細書において企図される。」など本願発明の「誘電体不動態化剤」、「腐食抑制剤」にあたる多数の化合物が記載されている。(下線は当審による。)
また、特定の化合物が複数の種類の剤(キレート剤、不動態化剤、腐食抑制剤)として機能する場合には、当該特定の化合物に対してどの呼称を用いるかを、当業者が自由に決定できるものである。
してみれば、キレート剤/不動態化剤(腐食抑制剤)として、上記の化合物の中から好適な化合物を用いるとともに、当該化合物の呼称を「誘電体不動体化剤」や「腐食抑制剤」など称する程度のことは、当業者が容易になしえる程度のことである。
ウ 相違点3について
引用文献1には、フッ化物含有化合物約0.01~約25.0%、有機溶剤約0.01~約99.9%、キレート剤/不動態化剤0~約10.0%、水約0~10.0%を含む液体組成物が記載され(摘記1b【0029】の表1)、また、水の含有量について、組成物の全重量に基づき約0.01重量%~約1重量%の量で存在することについて記載されている(【請求項12】)ところ、各構成成分の含有量を上記の範囲で調整することは、当業者が容易になしえる程度のことである。
エ 本願発明の有する効果について
前述のとおり、引用文献1には、キレート剤/不動態化剤を用いることで銅/コバルトの腐食を低減できると記載されている(摘記1e)ところ、これらを添加することで、コバルトの腐食が低減されることは当業者が予測可能なことであるし、引用文献1の実施例1においては、40℃で30分間、キレート剤や不動態化剤を含まない実施例Aの除去溶液に浸漬した際のコバルトエッチング速度が約1~4Å/分であると示されているのに対して、本願明細書【0056】~【0078】に記載される実施例1~7における、35℃で5分の時点のコバルトクーポンからのコバルトの損失は8.0Å/分であると示されているところ、より高温且つ長時間の条件下で測定された引用発明1のコバルトのエッチング速度(コバルトの損失に相当)が本願発明のそれより少ないことから考えて、本願発明のコバルトの腐食低減の効果は引用発明のものに比べて格別顕著なものであるとは認められない。
更に、本願明細書【0057】に記載の配合物Aと配合物DのCo損失や、SiNエッチング速度を対比すると、配合物A99.625重量%に対して、ホウ酸を0.375重量%添加することで、Co損失、SiNエッチング速度はいずれも悪化しているから、本願発明の全範囲において(どのような種類の誘電体不動態化剤や腐食抑制剤をどのような量で添加しても)、誘電材料、相互連結金属および/または窒化物含有材料に対する損傷を最小限に抑えることが出来るという効果が得られるとは到底認められない。
オ 小括
上記の点を総合的に判断すると、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。
5 審判請求人の主張について
審判請求人は令和2年5月27日付けの審判請求書において、
「引用文献1には、任意に少なくとも1種類のキレート剤を含む液体除去組成物が記載されているものの、誘電体不動態化剤、腐食抑制剤またはそれらの組み合わせを含むこと、さらに、誘電体不動態化剤、腐食抑制剤として、本願請求項1に規定される狭く具体的に特定された成分を選択するための教示も示唆も存在」しないこと、引用発明1においては、「水とキレート剤は、任意の成分であって、必須の成分ではない」こと、引用文献1の実施例において実際に調整され、実験により効果が確認されているのは、フッ化物含有化合物と、有機溶媒と、水のみを含む化合物及び表4に示される化合物、即ち、フッ化物含有化合物と、有機溶媒と、キレート剤としてのマロン酸と、水のみを含む化合物のみであり、引用文献1は、液体除去組成物がキレート剤を含む場合、マロン酸を採用すべきことを強く教示しているが、本願請求項1の液体除去組成物はマロン酸を含まないものであることを挙げ、当業者であっても、引用文献1から本願請求項1の液体除去組成物に想到するのは容易ではないと主張する。
しかしながら、引用文献1には、すでに検討したように、本願請求項1に規定される具体的な成分が多数例示されており、これらの化合物を選択することについては教示がなされていると考えられるものであるし、水や5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオールなどのキレート剤を添加する具体例も記載されている。
また、具体的な配合例として特定の化合物を用いることが記載されていないことは、キレート剤として使用できないことを意味するものではないし、上記4のエで検討したとおり、本願明細書【0056】~【0078】に記載されるコバルトの損失が、引用発明のコバルトのエッチング速度と比べて劣るものであることから考えて、引用発明1に5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール以外のキレート剤を添加したことによる格別の効果も認められない。
よって、上記審判請求人の主張はいずれも認められない。
6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明についての原査定の理由は妥当なものであり、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-007236