審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2023-013846

低レベルの中鎖から長鎖の直鎖アルコールを有する高発泡洗剤用の界面活性剤パッケージ

審判番号
2023-013846
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-569097外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年08月17日
審決日
2025年08月21日
公報発行日
2026年02月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C11D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-569097「低レベルの中鎖から長鎖の直鎖アルコールを有する高発泡洗剤用の界面活性剤パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月26日国際公開、WO2020/236873、令和 4年 7月22日国内公表、特表2022-533411〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)5月20日(パリ条約による優先権主張 2019年(令和元年)5月20日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 4年 3月11日 :手続補正書の提出 令和 4年11月30日付け:拒絶理由通知書 令和 5年 1月 6日 :意見書・手続補正書の提出 令和 5年 4月 5日付け:拒絶査定 令和 5年 8月17日 :審判請求書・手続補正書の提出 令和 7年 3月 5日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。) 令和 7年 5月16日 :意見書・手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明は、令和7年5月16日提出の手続補正書により補正(以下「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」ということがある。)は、次のとおりである(下線は補正箇所である。)。 「【請求項1】 アニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系と、 芳香族スルホネートを含むカップリング剤と、 塩化物、水酸化物、酸化物、ギ酸塩、酢酸塩、又は硝酸塩の形態の、カルシウムイオン、又はマグネシウムイオンから選択される、二価イオンと、 グリセロール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、又はジプロピレングリコールから選択される、保湿剤と、 中鎖の直鎖アルコールと を含む、食器洗浄用洗浄組成物であって、 前記アニオン性界面活性剤が、直鎖一級アルキルスルフェートを含み、 前記中鎖の直鎖アルコールが、C6、C7、C8、C9、C10、C11、またはC12の直鎖アルコールから選択され、 前記中鎖の直鎖アルコール:前記アニオン性界面活性剤の重量比率が、1:100~2:100であり、 前記界面活性剤系が、前記洗浄組成物の20重量%~50重量%である、洗浄組成物。」 本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項13における、「中鎖の直鎖アルコール:前記アニオン性界面活性剤の重量比率」が明細書段落0010、0044、0057等に基づき「~2:100」に、「界面活性剤系」の「洗浄組成物」中の割合が当初特許請求の範囲の請求項15の数値範囲に基づき「20重量%~50重量%」に、特定されると共に、 a「芳香族スルホネートから選択されるカップリング剤」が「芳香族スルホネートを含むカップリング剤」に、 b「前記アニオン性界面活性剤が、直鎖一級アルキルスルフェートから選択され」が「前記アニオン性界面活性剤が、直鎖一級アルキルスルフェートを含み」に補正されたものである。 なお、上記a及びbの「から選択され」を「を含む」又は「含み」とする補正について、請求人は令和7年5月16日に提出された意見書において「補正後の請求項1・・・では、1つの要素について用いられている「から選択され」との記載を、「含む」又は「含み」と補正しましたので、当該拒絶の理由は解消しています」と説明しており、当該主張に対応する当審拒絶理由は、以下のとおりである。 「2 理由2(明確性要件違反)について ア 請求項1~23 請求項1には、「直鎖一級アルキルスルフェートから選択される、高発泡アニオン性界面活性剤」と記載されているところ、「選択される」とは、通常、複数のものから選ぶことを意味し、複数のものに対して「選択される」という用語を用いることが通常の用法と解される。 しかしながら、上記請求項1では、複数のものではない「直鎖一級アルキルスルフェート」に対して、「選択される」という用語を用いており、通常の用法と異なるから、日本語として不明瞭である。 また、請求項13、19、23の「から選択され」についても、同様の理由で、日本語として不明瞭である。・・・ 上記アのとおり、請求項1~23に係る発明は明確でないが、以下では、請求項1の記載を、「直鎖一級アルキルスルフェートである、高発泡アニオン性界面活性剤」として、請求項13、23の記載を、「前記アニオン性界面活性剤が、直鎖一級アルキルスルフェートであり、」として、請求項19の記載を、「前記高発泡アニオン性界面活性剤は、直鎖一級アルキルスルフェートであり、」として、理由3及び4について検討する。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由のうち、本件補正前の請求項13に対する拒絶理由の概要は、本件補正前の請求項13は、以下の引用文献10に記載された発明及び以下の引用文献等に記載された事項に基づいて、本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 <引用文献等一覧> 引用文献10:特開2007-177085号公報 引用文献11:特開2016-124965号公報(技術常識を示す文献) 引用文献12:特表2012-516905号公報 第4 引用文献等の記載、引用発明、及び、技術常識について 1 引用文献等の記載事項 (1) 引用文献10 引用文献10には、次の記載がある。下線は、合議体が付した。 「【0004】 従って、本発明の課題は、油汚れに対する洗浄力が高く、泡立ち性、低刺激性に優れ、かつ良好な保存安定性を有する食器洗浄用として最適な液体洗浄剤組成物を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0005】 前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、(a)特定のポリオキシエチレン脂肪酸アミド、および(b)エチレンオキシド付加モル分布の狭いアルキルエトキシサルフェートまたはその塩、(c)アルキルエトキシレート及び/又は(d)高級アルコールを含有することで、洗浄力に優れ、泡立ち性並びに低刺激性と保存安定性が良好な液体洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」 「【0006】 すなわち、本発明は、下記(a)成分と、(b)成分と、(c)成分および/または(d)成分とを含有する液体洗浄剤組成物であって、(b)成分が、 (b)成分の全質量を基準にして、その質量%が最大値を示す式(II)のアルキルエトキシサルフェートまたはその塩のn3をn3 MAXとするとき、n3 MAXが0ではなく、 (b)成分の全質量を基準にして、n3がn3 MAXである式(II)のアルキルエトキシサルフェートまたはその塩が、15~35質量%の範囲で含まれ、かつ、 (b)成分の全質量を基準にして、n3 MAX-1からn3 MAX+1の範囲に含まれるアルキルエトキシサルフェートまたはその塩が、55~75質量%の範囲で含まれる、アルキルエトキシサルフェートまたはその塩の混合物であり、 (b)成分、(c)成分、(d)成分の質量比{(c)+(d)}/{(b)+ (c)+(d)}が0.01~0.2の範囲であることを特徴とする前記液体洗浄剤組成物を提供する: 【0007】 (a)成分:一般式(I)で表されるポリオキシエチレン脂肪酸アミド R1-CO-NH-CH2CH2O-(AO)n1-(EO)n2-H (II) (式中、R1は炭素数6~24の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級のアルキル基またはアルケニル基であり、 AOは炭素数3~4のアルキレンオキシド基であり、 EOはエチレンオキシド基であり、 n1はアルキレンオキシド基の付加モル数を示し、アルキレンオキシド基の平均付加モル数n1 AVは0~2の範囲であり、 n2はエチレンオキシド基の付加モル数を示し、エチレンオキシド基の平均付加モル数n2 AVは0~5の範囲であり、 かつ1≦n1 AV+n2 AV≦5である。) 【0008】 (b)成分:一般式(II)で表されるアルキルエトキシサルフェートまたはその塩の混合物 R2-O-(CH2CH2O)n3-SO3M (II) (式中、R2は炭素数6~24の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級のアルキル基またはアルケニル基であり、 n3はエチレンオキシド基の付加モル数を示し、エチレンオキシド基の平均付加モル数n3 AVは1~6の範囲であり、 Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミンまたはアンモニウムである。) 【0009】 (c)成分:一般式(III)で表されるアルキルエトキシレート R3-O-(CH2CH2O)n4-H (III) (式中、R3は炭素数6~24の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級のアルキル基またはアルケニル基であり、 n4はエチレンオキシド基の付加モル数を示し、エチレンオキシド基の平均付加モル数n4 AVは6以下の数である。) (d)下記一般式(IV)で表される高級アルコール R4-OH (IV) (式中、R4は炭素数6~24の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級のアルキル基またはアルケニル基である。) 【発明の効果】 【0010】 本発明によれば、油汚れに対する洗浄力が高く、泡立ち性、低刺激性に優れ、かつ良好な保存安定性を有する液体洗浄剤組成物を提供することができる。」 「【0024】 本発明における(b)成分と共に、(c)成分として上記一般式(III)で表されるアルキルエトキシレート及び/又は(d)成分として上記一般式(IV)であらわされる高級アルコールを併用することが洗浄力を向上する上で重要である。 式(III)及び式(IV)中、R3,R4は炭素数が10~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基であるのが好ましい。炭素数が6未満の場合は粘度低下効果が不充分であり、場合によってはかえって増粘をもたらす場合がある。また、炭素数が24を超えて大きい場合は界面活性剤自体の溶解度が減少するため、組成物中に均一に相溶しない場合がある。 (c)成分としては、具体的には、エチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(3)トリデシルエーテル等があげられる。このうち、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン(3)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルが好ましい。 (d)成分としては、具体的には、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、トリデカノールや、ドバノックス(登録商標)、ダイヤドール(登録商標)、ネオドール(登録商標)、サフォール(登録商標)等の1級合成アルコールや椰子油高級アルコール等の天然アルコール等があげられる。このうち、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、トリデカノール、ドバノックス(登録商標)、ダイヤドール(登録商標)、ネオドール(登録商標)、サフォール(登録商標)等の1級合成アルコールや椰子油高級アルコール等の天然アルコールが好ましい。 (c)成分及び(d)は、当業界において公知の方法を使用して製造することができるし、市販品を使用することもできる。 本発明の組成物において、(c)成分、(d)成分の配合量は、液体洗浄剤組成物全量に対してそれぞれ好ましくは0.05~5%、0.005~0.5%、より好ましくは0.1~3%、0.01~0.5%である。配合量がそれぞれ0.05%未満,0.005%未満であると洗浄力向上効果に劣ることがあり、それぞれ5%、0.5%を超えると保存安定性が劣ることがある。」 「【0035】 無機塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いることが出来る。水溶性の2価マグネシウム塩であれば、その構造、製造法及び対イオンなどは限定されないが、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化カルシウム及びそれらの水和物等が挙げられ、これらは単独(1種)で又は2種以上を混合して用いることができる。このうち、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及びこれらの混合物が好ましい。合計含有量は、液体洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは、0.5~5質量%とすることが望ましい。このような範囲で含まれると、洗浄力、低温での安定性、泡質がさらに向上するので好ましい。 更に本発明にはカルボン酸およびその塩を添加することも可能である。(f)成分としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、安息香酸、サリチル酸、o/m/p-ヒドロキシ安息香酸、o/m/p-トルイル酸、エチル安息香酸、ジメチル安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸などの炭素数C1-15のモノカルボン酸及びそれらの塩、(g)成分としてはシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、アジピン酸、イタコン酸、シクロプロパン1,3ジカルボン酸、シクロヘキサン1,4ジカルボン酸、クエン酸、ニトリロ3酢酸、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラアミン6酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、メチルグリシン2酢酸等の炭素数C2-15かつ2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸及びそれらの塩が好適である。このうち、クエン酸が好ましい。(f)、(g)成分の配合量はそれぞれ、液体洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは0.1~10%、より好ましくは0.5~6%である。このような範囲で含まれると、低温での安定性がさらに向上し、粘度低下したり、低温化で析出したりする等の不具合を効果的に抑制できるので好ましい。」 「【0036】 また、(a)成分、(b)成分、(f)成分、(g)成分の質量比が(e+f)/a+bが0.1-0.5であり、f/(e+f)が0.45-0.95を満たすとき最大の効果が得られる。 その他配合可能な好ましい添加成分としては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールやエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ヘプチレングリコール、1,3-ヘプタンジオール、1,4-ヘプタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、2,3-ヘプタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、ヘキシレングリコール、1,3-ヘキサンンジオール、1,4-ヘキサンンジオール、1,5-ヘキサンンジオール、1,6-ヘキサンンジオール、2,3-ヘキサンンジオール、2,4-ヘキサンンジオール、2,5-ヘキサンンジオール、3,4-ヘキサンンジオール、グリセリン、アルキルグリセリン、ソルビトール等のポリヒドロキシ化合物、BHT、アスコルビン酸等の酸化防止剤、o/m/p-トルエンスルホン酸、o/m/p-キシレンスルホン酸、o/m/p-クメンスルホン酸に代表される芳香族スルホン酸などの液性調整剤、硫酸亜鉛、ポリリジン、アルキルパラベン等の殺菌剤、天然多糖類や粘度鉱物等の粘度調整剤、着色剤、消炎剤、植物抽出物、酵素等の薬効成分、pH調整剤、香料、香料用溶剤、香料安定化剤などの通常用いられる物質が挙げられる。また、溶媒として通常は水(精製水、イオン交換水、常水等)が使用される。 本発明の液体洗浄剤組成物の粘度としては、25℃において、好ましくは50~300mPa・s、更に好ましくは50~250mPa・sの範囲に調整される。なお、本明細書において粘度はB型粘度計を用いて測定される。また、本発明の液体洗浄剤組成物は、洗浄力と低温安定性の観点からpH(原液)を好ましくは3.0~8.0、更に好ましくは5.0~7.0、に調整される。 本発明の組成物は、一般に用いられる配合槽及び攪拌機を有する混合設備を使用して、定法により製造することができる。」 「【実施例】 【0037】 次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。 なお、それに先立って、実施例及び比較例で使用したポリオキシエチレン脂肪酸アミドの製造方法、アルキルエトキシサルフェートの製造方法およびオキシエチレン鎖長の分布と、実施例で採用した試験方法の概要を示す。 【0038】 (1)ポリオキシエチレン脂肪酸アミドの調製 (製造例1-1,2:サンプルA-1,2) ラウリン酸メチル214gに、モノエタノールアミン64.1gおよびナトリウムメトキサイド(28質量%品)7.7g(1.0質量%対脂肪酸メチルエステル)を加え、副生するメタノールを減圧下留去しながら加熱攪拌(300~10mmHg、90℃、1時間)し、反応圧力が10mmHgに到達した時点で、反応温度90℃で3時間熟成し、ラウリン酸モノエタノールアミド240gを調製した。合成したラウリン酸モノエタノールアミドを1L容オートクレーブに仕込み、エチレンオキサイドをラウリン酸モノエタノールアミドに対して2.0、5.0モル分仕込み、90℃で2時間かけて付加反応を行い、該当するポリオキシエチレン(2または5)ラウリン酸モノエタノールアミド混合物(ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤)を合成した。 ・・・ 【0040】 (2)アルキルエトキシサルフェートの調製とオキシエチレン鎖の分布(製造例2-1:サンプルS-1) 本発明の実施例で使用した分布の狭いアルキルエトキシサルフェートの調製は、以下の方法で実施した。4Lのオートクレーブ中にラウリルアルコール400g及びAl/Mg/Mnで構成される複合金属酸化物ルイス酸焼結固体触媒0.4gを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、撹拌しながら昇温した。次いで、温度180℃、圧力を0.3mPaに維持しながらエチレンオキサイド54g を導入し、反応物を得た。次に、このようにして得たアルコールエトキシレート274gを撹拌装置付の500mLフラスコにとり、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを、反応温度を40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後1時間撹拌を続け、目的とするアルキルエトキシサルフェートを得た。得られたアルキルエトキシサルフェートの性状及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定したオキシエチレン鎖長の分布は表-1に示した通りであった。なお、サンプルS-2の調製も、エチレンオキサイド導入量以外は同様の方法により行った。 ・・・ 【0042】 【表1】 [図:0001431484000001.jpg] 【0043】 下記表-2に示される配合組成の各種液体洗浄剤組成物を調製し、下記の試験方法により洗浄力、泡立ち性、刺激性及び保存安定性について評価した。 これらの結果を表-2に示す。なお、表中の配合量は質量%〔組成物の全量が100質量%(残部は精製水で調製)であり、各組成物はpH5.0~6.5に調整したものである。 (洗浄力の評価) 牛脂1gを10×15×5(cm)のポリプロピレン製容器に均一になるように塗布し、激しく汚れたモデル汚垢とした。住友3M社製スコッチブライト(食器洗い用スポンジ)に25℃の水道水38gと液体洗浄剤組成物2gをとり、数回手で揉んだ後、汚染したポリプロピレン容器を、通常家庭で行われるのと同様にして洗浄し、25℃の水道水でよくすすいだ後、牛脂に汚染されていたポリプロピレン容器表面を手で触ったときの触感で、洗浄力を下記評価基準に基づき評価した。 評価基準: ○:ポリプロピレン容器のいずれの部位を触っても、キュッキュと音がするような摩擦感があり、油の残留によるヌルツキは全く感じない。 △:ポリプロピレン容器の平滑な表面を触ると摩擦感があり、油の残留は認められないが、端や角の部位に僅かにヌルツキが残っている。 ×:ポリプロピレン容器全体にヌルツキが感じられ、明らかに油が残留していることがわかる 【0044】 (泡立ちの評価) 住友3M社製スコッチブライト(食器洗い用スポンジ)に25℃の水道水38gと液体洗浄剤組成物2gをとり、5回手で揉んだ後の泡立ちを下記の評価基準で判定した。 評価基準: ◎:泡質が良く豊富な泡が立つ ○:豊富な泡が立つ △:泡が若干立つ ×:泡がほとんど立たない 【0045】 (刺激性評価) 1%の液体洗浄剤組成物水道水希釈液3リットルを入れた桶に、1日30分、手を手首まで浸漬させた。この操作を3日間繰り返し、次の日の手の荒れ具合を、下記の評価基準に従って官能評価した。 評価基準 5:全く荒れない 4:やや手荒れした 3:手荒れした 2:かなり手荒れした 1:非常に手荒れした 【0046】 (保存時の液安定性の評価方法) 各液体洗浄剤組成物100gをガラス瓶に密閉し、50℃および-5℃で1ヶ月間静置したときの外観の変化を下記評価基準にて評価した。 評価基準: ○:沈殿、液分離を生じない △:わずかに濁ったり、微少な析出物が認められる。 ×:沈殿または液の分離が生じる 【0047】 【表2】 [図:0001431484000002.jpg] 【0048】 【表3】 [図:0001431484000003.jpg] ・・・ 【0050】 (a)成分 A-1~2:製造例1-1~2で調整したポリオキシエチレン(2または5)ラウリン酸モノエタノールアミド A-3:製造例1-3で調整したポリオキシプロピレン(1.5)ラウリン酸モノエタノールアミド CME(2):ポリオキシエチレン(2)椰子脂肪酸モノエタノールアミド(川研ファインケミカル(株) アミゼット2C) (b)成分 S-1~4:製造例2-1及び比較製造例2-1でそれぞれ調整したアルキルエトキシサルフェート (c)成分 LEO(2):ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル LEO(5):ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル LEO(10):ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル 何れもS-1,2同様にラウリルアルコールにエチレンオキサイドを付加することにより得られたものを使用。 (d)成分 C10-OH:デシルアルコール(和光純薬工業株 試薬1級) C12-OH:ドデシルアルコール(和光純薬工業株 試薬1級) (アニオン界面活性剤) LAS:アルキルベンゼンスルホン酸(ライオン(株) ライポンLH-200) AOS:α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(ライオン(株) リポランLB-440) AS:アルキル硫酸ナトリウム(ライオン(株) サンノールLM-1130)(半極性界面活性剤) DDAO:ラウリル-N,N-ジメチルアミンオキシド(ライオン・アクゾ(株) アロモックスDM12D-W(C)) AAPDAO:アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド(川研ファインケミカル(株) ソフタゾリンLAO-C) (両性界面活性剤) LPB:ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ライオン(株)エナジコールL-30B) HSB:アルキルヒドロキシスルホベタイン(川研ファインケミカル(株) ソフタゾリンLSB) (ノニオン界面活性剤) AE15:ポリオキシエチレン(15)ラウリルエーテル(ライオン(株) レオックスLC-150) AE7:ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテル(日本エマルジョン(株) エマレックス707) APG:アルキルポリグルコシド(Dow Chemical(株) TRITON CG-110) CME:椰子脂肪酸モノエタノールアミド(川研ファインケミカル(株) アミゾールCME) CDE:椰子油脂肪酸ジエタノールアミド(ライオンアクゾ(株) ホームリードCD) LDE:ラウリン酸ジエタノールアミド(川研ファインケミカル(株) アミゾールLDE) (その他) エタノール:(純正化学(株) 試薬特級) PG:プロピレングリコール(純正化学(株) 試薬特級) PEG:ポリエチレングリコール(平均分子量1000)(ライオン(株) PEG#1000) MgSO4:硫酸マグネシウム7水和物(純正化学(株) 試薬特級) CaCl2:塩化カルシウム2水和物(純正化学(株) 試薬特級) ZnSO4:硫酸亜鉛7水和物(純正化学(株) 試薬特級) PTS:パラトルエンスルホン酸(テイカ(株) テイカトックス300) CS:クメンスルホン酸ナトリウム(テイカ(株) テイカトックスN5040 ) CA:クエン酸(扶桑化学工業(株) 精製クエン酸(無水)) SB:安息香酸ナトリウム((株)伏見製薬) ゼラチン:(ゼライス(株) ゼラチンBLUE) 香料:配合する香料として、表-3記載の香料を用いた。 【0051】 【表5】 [図:0001431484000004.jpg] 」 (2) 引用文献11 引用文献11には、次の記載がある。下線は、合議体が付した。 「【0048】 <(A-1)成分、非石鹸系アニオン界面活性剤> ・・・ A-1-5:SDS、ラウリル硫酸塩、ライオン株式会社製、商品名「サンノールLM-1130」。」 (3)引用文献12 引用文献12には、次の記載がある。下線は、合議体が付した。 「【請求項1】 (a)0.1重量%~50重量%の保湿剤と、 (b)0.005重量%~3重量%の活性真珠光沢剤と、を含む、食器手洗い用液体洗剤。 【請求項2】 前記保湿剤が、グリセリン、ジグリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、(ジ)-プロピレングリコール、グリセリルトリアセテート、ポリアルキレングリコール、メチルグルコースのポリエチレングリコールエーテル、ヒアルロン酸、キトサン、リン脂質、コラーゲン、エラスチン、レシチン、ピロリドンカルボン酸及びその塩、ピドロ酸及びその塩、セラミド、ソルビトール、キシリトール及びマルチトールなどのポリオール、ポリデキストロースなどの高分子ポリオール、キラヤなどの天然抽出物、又は乳酸又は尿素、アルキルポリグリコシド、ポリベタインポリシロキサン、塩化リチウム並びにそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはポリオール又はカルボキシル保湿剤からなる群から選択され、より好ましくはソルビトール、グリセロール、乳酸ナトリウム、尿素並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。 ・・・ 【請求項5】 前記組成物全体の4重量%~40重量%のアニオン性界面活性剤を更に含み、かつ15重量%以下のスルホネート界面活性剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、食器手洗い用液体組成物、及び皮膚に対する穏やかさを提供するために、保湿剤と、真珠光沢剤と、を含む、このような洗剤組成物を用いる食器洗浄法に関する。」 「【0016】 保湿剤 本明細書で使用するとき、「保湿剤」は水以外の吸湿性の物質を指し、水素結合を介して保湿剤に結合した水和水を皮膚に輸送する。保湿剤は多くの場合、数個の親水基を、ほとんどの場合ヒドロキシル基を有する分子であるが、しばしばエステル化されたアミン及びカルボキシル基もまた見出され得る。 【0017】 本発明の組成物は、組成物全体の0.1重量%~50重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは1重量%~10重量%、更により好ましくは1重量%~6重量%、及び最も好ましくは2重量%~5重量%の濃度の少なくとも1種の保湿剤を含む。 【0018】 本発明に従って使用できる保湿剤としては、水に対して結合性を示し、基材の、好ましくは皮膚の水の吸収作用を高める助けをする物質が挙げられる。特に好適な保湿剤の具体的な非限定的な例としては、グリセロール、ジグリセロール、ポリエチレングリコール(PEG-4)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、(ジ)-プロピレングリコール、グリセリルトリアセテート、ポリアルキレングリコール、リン脂質、コラーゲン、エラスチン、セラミド、レシチン、及びこれらの混合物が挙げられる。他の好適な保湿剤は、メチルグルコースのポリエチレングリコールエーテル、ピロリドンカルボン酸(PCA)及びその塩、ピドロ酸(pidplic acid)及びピドロ酸ナトリウムなどのその塩、ソルビトール、キシリトール及びマルチトールなどのポリオール、又はポリデキストロースなどの高分子ポリオール、又はキラヤなどの天然抽出物、又は乳酸又は尿素であり得る。同様に、アルキルポリグリコシド、ポリベタインポリシロキサン、及びこれらの混合物も挙げられる。塩化リチウムは優れた保湿剤であるが、毒性である。更なる好適な保湿剤は、例えば、ヒアルロン酸、キトサン及び/若しくはフルクトースに富む多糖(例えばSOLABIA SからFucogel(登録商標)1000(CAS-Nr 178463-23-5))として入手可能である、水溶性及び/又は水膨潤性及び/又は水ゼラチンである多糖のファミリーの高分子保湿剤である。 【0019】 酸素原子を含有する保湿剤は、窒素原子又は硫黄原子を含有するものに比べて好ましい。より好ましい保湿剤はポリオールであるか、又はグリセロール、ジグリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコールを含有するカルボキシル並びに/あるいはピドロ酸及びその塩であり、最も好ましいのはソルビトール、グリセロール、乳酸ナトリウム及び/又は尿素である。グリセロールはP&G Chemicalsから供給され得る。」 (4)技術常識を示すために新たに提示する引用文献13(特開2015-048379号公報) 引用文献13には、次の記載がある。下線は、合議体が付した。 「【0001】 本発明は、食器洗い用の濃縮型食器洗浄剤に関する。」 「【0022】 本発明の液状組成物には、適宜、防腐剤、酸、金属イオン封鎖剤、保湿剤、香料等を添加することができる。」 「【0026】 保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。」 (5)技術常識を示すために新たに提示する引用文献14(特表平6-508651号公報) 引用文献14には、次の記載がある。下線は、合議体が付した。 ア 第3頁右下欄第3~10行 「本発明の製剤は、シャンプー、入浴剤、シャワー用入浴剤、液体セッケン、および手動食器洗い洗剤といったような多くの洗浄製品において使用することができる。 界面活性剤または界面活性剤の組み合わせのほかに、こういった製品には一般的に、乳化剤、オイル成分、可溶化剤、増粘剤、過脂剤、生物薬剤、皮膜形成剤、香料、染料、パール顔料、気泡安定剤、防腐剤およびpH調節剤といったような配合剤が含まれる。すなわち、本発明の製剤は、先行技術より既知であるような追加成分および助剤を含有していてもよく、その最も重要なものには、以下のようなものが挙げられる。」 イ 第4頁左上欄第19~23行 「保湿剤 例えば、グリセロール、ポリグリセロール、ソルビトール、プロパン―1,2―ジオール、ブタン―1,2,3―トリオール、ポリエチレングリコール、グルコース、マンニトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸塩(PCA)、アミノ酸、乳酸。」 2 引用文献10に記載された発明(引用発明) 引用文献10の段落【0048】の【表3】に記載された実施例20の液体洗浄組成物に着目し、同段落【0038】、【0040】、【0043】~【0046】の実施例についての記載、及び、同段落【0004】の「油汚れに対する洗浄力が高く、泡立ち性、低刺激性に優れ、かつ良好な保存安定性を有する食器洗浄用として最適な液体洗浄剤組成物を提供する」という発明の課題に基づいて整理すると、引用文献10には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「(a)成分として、ラウリン酸メチルに、モノエタノールアミンおよびナトリウムメトキサイド(28質量%品)を加え、副生するメタノールを減圧下留去しながら加熱攪拌(300~10mmHg、90℃、1時間)し、反応圧力が10mmHgに到達した時点で、反応温度90℃で3時間熟成して得られたラウリン酸モノエタノールアミドを、1L容オートクレーブに仕込み、エチレンオキサイドをラウリン酸モノエタノールアミドに対して2.0モル分仕込み、90℃で2時間かけて付加反応を行って得られたポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアミド混合物(ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤)A-1(E02)を5質量%、 (b)成分として、4Lのオートクレーブ中にラウリルアルコール及びAl/Mg/Mnで構成される複合金属酸化物ルイス酸焼結固体触媒を仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、撹拌しながら昇温し、温度180℃、圧力を0.3mPaに維持しながらエチレンオキサイドを導入して得られたアルコールエトキシレートを撹拌装置付の500mLフラスコにとり、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)を、反応温度を40℃に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下終了後1時間撹拌を続けて得られたエチレンオキシド基の平均付加mol数が2であるアルキルエトキシサルフェートS-1を15質量%、 (c)成分として、LEO(2):ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル0.5質量%、 (d)成分として、C12-OH:デシルアルコール(和光純薬工業株 試薬1級)を0.05質量%、 アニオン界面活性剤として、AS:アルキル硫酸ナトリウム(ライオン(株) サンノールLM-1130)を5質量%、 半極性界面活性剤として、DDAO:ラウリル-N,N-ジメチルアミンオキシド(ライオン・アクゾ(株) アロモックスDM12D-W(C))を3質量%、 ノニオン界面活性剤として、AE15:ポリオキシエチレン(15)ラウリルエーテル(ライオン(株) レオックスLC-150)を3質量%、APG:アルキルポリグルコシド(Dow Chemical(株) TRITON CG-110)を3質量%、 その他の成分として、 EtOH:エタノール(純正化学(株) 試薬特級)を4質量%、 PEG:ポリエチレングリコール(平均分子量1000)(ライオン(株) PEG#1000)を2質量%、 MgSO4:硫酸マグネシウム7水和物(純正化学(株) 試薬特級)を3質量%、 ZnSO4:硫酸亜鉛7水和物(純正化学(株) 試薬特級)を0.5質量%、 CS:クメンスルホン酸ナトリウム(テイカ(株) テイカトックスN5040)を2質量%、 CA:クエン酸(扶桑化学工業(株) 精製クエン酸(無水))を1質量%、 SB:安息香酸ナトリウム((株)伏見製薬)を2質量%、 オレンジ油20質量%、レモン油10質量%、ライム油5質量%、ミント油2質量%、ユーカリ油1質量%、バジル油1質量%、クローブ油0.2質量%、ジンジャー油5質量%、シナモン油0.2質量%、フェンネル油0.2質量%、オールスパイス油0.2質量%、リモネン30質量%、リナロール5質量%、シトロネロール3質量%、リナリルアセテート3質量%、フェニルエチルアルコール2質量%、ゲラニオール2質量%、γ-ウンデカラクトン0.2質量%、残部(香料Bに可溶な任意の汎用香料成分)10質量%からなる香料Bを0.25質量%含み、 残部が精製水である、pH5.5に調整された食器洗浄用の液体洗浄剤組成物。」 なお、当審拒絶理由において、「引用文献10の段落【0048】の【表3】に記載された実施例20の液体洗浄剤に着目し」て認定された引用発明10Aの「(b)成分」の「エチレンオキシド基の平均付加mol数が5であるアルキルエトキシサルフェートS-2」は、「エチレンオキシド基の平均付加mol数が2であるアルキルエトキシサルフェートS-1」の誤記であることは明らかである。 3 本件優先日前の技術常識について 前記1(3)~(5)から、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、グリセロール等が保湿剤としての機能を有することは、本件優先日前の技術常識であったと認められる。 第6 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「AS:アルキル硫酸ナトリウム(ライオン(株) サンノールLM-1130)」は、引用文献11の段落【0048】の記載より、ラウリル硫酸塩であるから、本願発明の「直鎖一級アルキルスルフェート」に相当する。したがって、引用発明の「アニオン界面活性剤として、AS:アルキル硫酸ナトリウム(ライオン(株) サンノールLM-1130)」は、本願発明の「アニオン界面活性剤が、直鎖一級アルキルスルフェートを含み」を充足する。 また、本願明細書の段落【0064】には、好適なカップリング剤として、クメンスルホネート等の芳香族スルホネートが挙げられていることからすると、引用発明の芳香族スルホネートである「CS:クメンスルホン酸ナトリウム(テイカ(株) テイカトックスN5040)」は、本願発明の「芳香族スルホネートを含むカップリング剤」に相当する。 引用発明の「C12-OH:デシルアルコール(和光純薬工業株 試薬1級)」は、C12の直鎖アルコールであるから、本願発明の「C6、C7、C8、C9、C10、C11、またはC12の直鎖アルコールから選択され」る「中鎖の直鎖アルコール」に相当する。 加えて、引用発明の「食器洗浄用の液体洗浄剤組成物」は、「アニオン界面活性剤」である「アルキル硫酸ナトリウム」を含むものであるから、本願発明の「アニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系」を含む「食器洗浄用洗浄組成物」に相当する。 そして、引用発明は、C12の直鎖アルコールに相当する「デシルアルコール」である中鎖の直鎖アルコールを0.05質量%含み、直鎖一級アルキルスルフェートであるアニオン性界面活性剤に相当する「アルキル硫酸ナトリウム」を5質量%含むものであるから、「C12の直鎖アルコール」:「直鎖一級アルキルスルフェートを含むアニオン性界面活性剤」の重量比率は、1:100であり、本願発明の「前記中鎖の直鎖アルコール:前記アニオン性界面活性剤の重量比率が、1:100~2:100である」という発明特定事項を充足する。 さらに、「界面活性剤系」について、本願明細書段落0044及び0045には、「界面活性剤系は、一つ又は複数の界面活性剤を含み」及び「追加の界面活性剤は、界面活性剤系中および/または洗浄組成物中に存在し得る。」と記載されており、本願発明の「アニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系」は、アニオン性界面活性剤を含み、追加の界面活性剤も含むものである。引用発明の「ポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアミド混合物(ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤)A-1(E02)を5質量%」、「エチレンオキシド基の平均付加mol数が2であるアルキルエトキシサルフェートS-1を15質量%」、「LEO(2):ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル0.5質量%」、「AS:アルキル硫酸ナトリウム(ライオン(株) サンノールLM-1130)を5質量%」、「DDAO:ラウリル-N,N-ジメチルアミンオキシド(ライオン・アクゾ(株) アロモックスDM12D-W(C))を3質量%」、「AE15:ポリオキシエチレン(15)ラウリルエーテル(ライオン(株) レオックスLC-150)を3質量%」及び「APG:アルキルポリグルコシド(Dow Chemical(株) TRITON CG-110)を3質量%」は、本願発明の「アニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系」に相当し、その総量は液体洗浄剤組成物全体の34.5重量%であるから、本願発明の「前記界面活性剤系が、前記洗浄組成物の20重量%~50重量%である」を充足する。 そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「アニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系と、 芳香族スルホネートを含むカップリング剤と、 中鎖の直鎖アルコールと を含む、食器洗浄用洗浄組成物であって、 前記アニオン性界面活性剤が、直鎖一級アルキルスルフェートを含み、 前記中鎖の直鎖アルコールが、C6、C7、C8、C9、C10、C11、またはC12の直鎖アルコールから選択され、 前記中鎖の直鎖アルコール:前記アニオン性界面活性剤の重量比率が、1:100~2:100であり、 前記界面活性剤系が、前記洗浄組成物の20重量%~50重量%である、洗浄組成物。」 (相違点1) 本願発明は、二価イオンであるカルシウムイオン、又はマグネシウムイオンを、塩化物、水酸化物、酸化物、ギ酸塩、酢酸塩、又は硝酸塩の形態で含有するのに対して、引用発明は、二価イオンであるマグネシウムイオンを硫酸塩の形態で含有する点。 (相違点2) 本願発明は、グリセロール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、又はジプロピレングリコールから選択される保湿剤を含有するのに対して、引用発明は、そのような保湿剤を含有しない点。 2 判断 (1)相違点1について 引用文献10の段落【0035】には、「無機塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いることが出来る。水溶性の2価マグネシウム塩であれば、その構造、製造法及び対イオンなどは限定されないが、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化カルシウム及びそれらの水和物等が挙げられ、これらは単独(1種)で又は2種以上を混合して用いることができる。このうち、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及びこれらの混合物が好ましい。」と記載されている。 また、塩化カルシウムについては、引用文献10の段落【0048】の【表3】において、実施例18として、実際に添加した具体例も示されている。 そうすると、引用発明において、硫酸マグネシウムにかえて、硫酸塩と並んで列挙されているマグネシウムの硝酸塩や酢酸塩を用いることや、最も好ましいものとして、硫酸マグネシウムと並んで記載されている塩化カルシウムを用いることは、当業者が容易に想到し得るものである。 (2)相違点2について 引用文献10の段落【0036】には、洗浄剤組成物における好ましい添加剤として、プロピレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン等のポリヒドロキシ化合物が記載されており、プロピレングリコールについては、同段落【0047】及び【0048】の【表2】及び【表3】において、実施例11及び実施例19として、実際に添加した具体例も示されている。 引用発明は、引用文献10の【0050】に「(その他)」成分として記載される「PEG:ポリエチレングリコール(平均分子量1000)(ライオン(株) PEG#1000)」を2質量%含有するものであるところ、ポリエチレングリコールは、引用文献10の【0036】に記載されるプロピレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン等と同じくポリヒドロキシ化合物であり、前記第5 3のとおり、保湿剤としての機能を有するものであると認められる。 してみれば、引用発明において、ポリエチレングリコールにかえて、プロピレングリコール、へキシレングリコール等を洗浄剤組成物内に含有させることは、当業者にとって格別困難なこととはいえない。 (3)効果について 本願明細書の【0161】~【0167】には実施例との記載があるが、【表2】の二価イオン、保湿剤40%、アニオン性界面活性剤(60%)等の各組成も、【表3】及び【表4】の「市販の洗剤」の組成も、具体的にいかなるものか不明である。また【表5】及び【表6】はいずれも界面活性剤を76.5重量%含むものであるから、本願発明の「界面活性剤系が、前記洗浄組成物の20重量%~50重量%である」との特定事項を満たすものでない。また、【表8】~【表11】のアニオン性界面活性剤はSLES(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)であり、【表12】~【表15】のアニオン性界面活性剤はAOS(α-オレフィンスルフォン酸ナトリウム)であるから、いずれも本願発明の「アニオン性界面活性剤が、直鎖一級アルキルスフフェートを含み」との特定事項を満たすものではない。【表7】及び【表16】~【表19】は、アニオン性界面活性剤であって、直鎖一級アルキルスフフェートであるSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)を500ppm及びC6、C8、C10またはC12アルコールを5ppmの組み合わせにおける45秒の気泡寿命を記載するものではあるが、これらの記載が本願発明の洗浄組成物の組成を満たすことが明らかとはいえないことに加え、引用文献10の段落【0048】の【表3】には、AS:アルキル硫酸ナトリウム(ライオン(株) サンノールLM-1130)を5質量%と、C12-OH:デシルアルコール(和光純薬工業株 試薬1級)を0.05質量%含む、引用発明の液体洗浄剤組成物は、豊富に泡が立ち、洗浄力、皮膚刺激性、低温安定性及び高温安定性に優れたものであることが記載されている。 したがって、本願発明により奏される効果が、当業者が出願当時に本願発明の構成が奏するであろうと予測できた効果と比較して、顕著で予測できないものとはいえない。 (4)審判請求人の主張について 審判請求人は、令和7年5月16日提出の意見書において、以下のとおり主張している。 「3.理由3及び4(新規性及び進歩性)について 引用文献10に記載の液体洗浄剤組成物には、アルキル硫酸ナトリウム(ライオン(株)サンノールLM-1130)が5質量%含まれております。しかしながら、引用文献10は、直鎖一級アルキルスルフェートを含む20重量%~50重量%のアニオン性界面活性剤を、本願発明の他の特徴と組み合わせて使用することを記載も示唆もしていません。 他方、本願発明において、洗浄組成物は、中鎖(C6、C7、C8、C9、C10、C11、またはC12)の直鎖アルコールと、20重量%から50重量%の高発泡アニオン性界面活性剤とを組み合わせ、直鎖アルコールとアニオン系界面活性剤の比が1:100から2:100であることを特徴の一つとします。これらの特徴により、本願発明の洗浄組成物は、表面張力を大幅に減少させ、気泡寿命に対して最良の相乗効果を奏することができます。これは、実施例、表7~19、および段落0165等の記載に裏付けられています。このことは、引用文献10には記載も示唆もされていません。」 しかしながら、上記主張とは異なり、本願発明は、「アニオン性界面活性剤を含む界面活性剤系」の「前記界面活性剤系が、前記洗浄組成物の20重量%~50重量%である、洗浄組成物。」であって、「20重量%~50重量%のアニオン性界面活性剤」を発明特定事項とするものではない。 また、豊富な泡が立ち洗浄力にも優れる等の効果は、引用発明において既に奏されていることは、前記(3)で検討したとおりである。 したがって、上記主張は採用できない。 (なお、引用発明は、「アニオン性界面活性剤として、AS:アルキル硫酸ナトリウム(ライオン(株) サンノールLM-1130)を5質量%」に加えて(b)成分として「エチレンオキシド基の平均付加mol数が2であるアルキルエトキシサルフェートS-1を15質量%」を含んでおり、これらを合わせた組成物中の濃度は20重量%である。これに対し、「引用文献10は、・・・20重量%~・・・のアニオン性界面活性剤を・・・使用することを記載も示唆もしていません。」とする前記主張からも、請求人は、「(b)成分である「エチレンオキシド基の平均付加mol数が2であるアルキルエトキシサルフェートS-1」は、本願発明の「アニオン性界面活性剤」に相当する」と争うものではないことは明らかである。但し、仮に、(b)成分の化学構造から(b)成分も本願発明の「アニオン性界面活性剤」に相当すると認定した場合、引用発明における「前記中鎖の直鎖アルコール:前記アニオン性界面活性剤の重量比率」は1:400(0.5重量%:15重量%+5重量%)となるものの、引用文献10の段落0027の「・・・アニオン性界面活性剤の配合量は、本発明の(b)成分と合わせて液体洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは5~40質量%、更に好ましくは5~30質量%である。このような範囲で含まれると、洗浄力、低温での安定性がさらに向上するので好ましい。」との記載から、アニオン性界面活性剤の配合量を好ましいとされる「5」重量%として、「前記中鎖の直鎖アルコール:前記アニオン系界面活性剤の重量比率」を1:100(0.5:5=1:100)とすることは、当業者が容易に設定し得る範囲内ものである。) 3 小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献10に記載された発明、並びに、引用文献10の記載事項及び技術常識(引用文献11~14等)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-013846

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決51件(エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド)
  • 2025-009146拒絶査定不服審判 / 2026-08-05 / 原査定取消(特許/登録すべき)原油の生産および処理に使用するための抗汚染組成物
    同じ当事者: エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
  • 2025-001165拒絶査定不服審判 / 2026-07-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)構造化アルコキシル化シロキサンを含む起泡性アルコール/水混合組成物
    同じ当事者: エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
  • 2024-008678拒絶査定不服審判 / 2026-07-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)高濃縮液体配合物における粘弾性を制御するためのEO/POブロックコポリマー界面活…
    同じ当事者: エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
  • 2024-012205拒絶査定不服審判 / 2026-04-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)分枝状ポリアミンを使用してリップスティックを除去するための組成物および方法
    同じ当事者: エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
  • 2024-002170拒絶査定不服審判 / 2026-03-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)殺ウイルス有効性に対するアニオン性界面活性剤の影響
    同じ当事者: エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2025-002345拒絶査定不服審判 / 2026-03-19 / 請求不成立グラフトコポリマー及び有益剤を含有する洗濯洗剤組成物
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2023-021642拒絶査定不服審判 / 2025-05-13 / 請求不成立色変化洗剤組成物および使用方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-010134拒絶査定不服審判 / 2024-06-11 / 請求不成立界面活性剤として適した組成物
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-003785拒絶査定不服審判 / 2024-06-04 / 請求不成立水解性洗浄材
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-003123拒絶査定不服審判 / 2023-11-14 / 請求不成立アルカリ性洗剤の金属保護を強化するためのアミノカルボキシレートの使用
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)223件(121・C11D)
  • 2025-007301拒絶査定不服審判 / 2026-08-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)凍結融解安定性の油中水型乳化洗浄剤及び/又は研磨組成物
    共通の審決分類: 121・C11D
  • 2024-018732拒絶査定不服審判 / 2026-08-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)繊維製品用洗浄剤キット、繊維製品用洗浄剤組成物、及び繊維製品の洗浄方法
    共通の審決分類: 121・C11D
  • 2024-020868拒絶査定不服審判 / 2026-08-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)消泡剤及び非イオン性界面活性剤を含む低粘度液体洗剤組成物
    共通の審決分類: 121・C11D
  • 2025-002911拒絶査定不服審判 / 2026-08-05 / 原査定取消(特許/登録すべき)高いコア:壁比を有する送達粒子を含む消費者製品
    共通の審決分類: 121・C11D
  • 2025-009846拒絶査定不服審判 / 2026-08-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)異性化糖の使用により洗浄剤組成物の起泡特性を増大させる方法
    共通の審決分類: 121・C11D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存