2022-003785
水解性洗浄材
- 審判番号
- 2022-003785
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-237088外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月14日
- 審決日
- 2024年06月04日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シーバイエス株式会社
- 【請求人代理人】大野 聖二
- 【請求人代理人】森田 耕司
- 【請求人代理人】松野 知紘
- 【請求人代理人】大木 信人
- 分類
- P18 .121-Z (C11D) / P18 .537-Z (C11D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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1 本願は、平成29年12月11日の出願であって、令和3年4月23日付けの拒絶理由通知に対して、同年7月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月8日付けで拒絶査定がなされ(以下「原査定」ともいう。謄本送達は同月14日。)、これに対して令和4年3月14日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
2 その後の経緯は以下のとおりである。
令和5年11月14日付け 拒絶理由通知書
令和5年12月13日 意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明は、令和5年12月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」ともいう。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】組成物全量基準にして、(A)下記の式:HO-(C2H4O)n-(C3H6O)m-(C2H4O)l-H(ただし、n、mおよびlは0ではない整数)で表され、酸化エチレン付加重量率が80質量%であり、数平均分子量が8,750以上、20,000以下である、酸化エチレン/酸化プロピレン/酸化エチレン共重合体0.05質量%以上、20質量%未満、(B)エタノール0.1~70質量%、および(C)水、を含有し、キレート剤および無機ビルダーが含まれない、トイレ清掃用の用途である液体洗浄剤組成物。」
第3 原査定の拒絶理由の概要
原査定には「この出願については、令和3年4月23日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶すべきものです。」と記載され、当該理由は理由1~4であるところ、そのうち、理由2は、請求項1~4に係る発明は、引用文献8に記載された発明及び周知技術等に基いて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
第4 当審の判断
1 引用文献等の記載事項
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(1)引用文献8
上記第3の原査定に引用された引用文献8には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】凝固点30℃以上のポリオキシアルキレン化合物と抗菌成分を含有することを特徴とする清浄剤組成物。【請求項2】ポリオキシアルキレン化合物の含有量が、0.01~10重量%である請求項1記載の清浄剤組成物。【請求項3】抗菌成分が、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン・ジグルコネート、塩化セチルピリジニウム、パラヒドロキシ安息香酸エステル、安息香酸又は安息香酸塩である請求項1記載の清浄剤組成物。【請求項4】請求項1、請求項2又は請求項3記載の清浄剤組成物を含浸させてなることを特徴とする清拭用品。」
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、清浄剤組成物及び該組成物を含浸させてなる清拭用品に関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた抗菌効果を有するとともに、使用後にサラサラとした優れた肌触り感と清浄感を与えることができる清浄剤組成物及び該組成物を含浸させてなる清拭用品に関する。【0002】【従来の技術】近年、四季を通じて適度な温度や湿度を保つことができるような快適な生活環境が整ってきたことから、従来季節の移り変わりとともに繁殖と衰退を繰り返した種々の細菌やカビなどの微生物類が、季節に関わりなく発生するようになっている。また、消費者の衛生志向の高まりから、手指の抗菌清浄、衣類の抗菌加工、キッチン・トイレ・バス、建材、家具類などのあらゆる物品の清浄作業に、アルコールや他の消毒剤を、不織布や紙などの基布に含浸させたウエットティッシュやクリーナーティッシュが頻繁に使用されている。一般的にウエットティッシュは、洗浄成分、保水成分、腐敗防止成分、香料、水、アルコールなどからなる配合組成物を、不織布などの基布に含浸させた形で使用され、手指や皮膚表面、物品表面などを拭き取ることで、微生物や汚れなどの付着物を効果的に除去するための衛生用品として広く使用され、その改良が検討されている。例えば、特開平3-16542号公報には、エタノールを含まない無臭タイプの清拭材として、パラオキシ安息香酸エステルの濃度が0.4%以上、ポリエチレングリコールの濃度が10%以下の水溶液を含浸した清拭材が提案されている。特開平5-15468号公報には、安定した殺菌作用を保持し、皮膚に対する安全性に優れ、皮膚を拭いたのち放置しても悪臭を発しないウェットワイパーとして、テトラヒドロアビエチン酸とエタノールを含有する配合物が含浸されたウェットワイパーが提案されている。また、特開平6-46968号公報には、アルコール系溶剤の刺激臭を発生せず、保湿性に優れたウェットティシューとして、塩化ベンザルコニウム又はパラベンとグリコール系溶剤の水溶液を含浸させたウェットティシューが提案されている。特開平7-2615号公報には、殺菌消毒後の被消毒部における抗菌性が持続する抗菌性消毒剤含浸布として、医療用殺菌剤とリモネンを含む消毒剤を含浸した抗菌性消毒剤含浸布が提案されている。さらに、特開平9-40516号公報には、人体や皮膚に対して安全性が高い濡れティッシュとして、柑橘系植物の果実の種子から抽出された成分を含有する水溶液を含浸した濡れティッシュが提案されている。特開平10-165327号公報には、抗菌性及び防黴性が優れ、人体及び環境に対して無害なウェットティッシュとして、再生セルロース繊維を主体とする不織布に、キトサンの有機酸水溶液と安息香酸塩を含浸させたウェットティッシュが提案されている。これらの清拭用の繊維製品は、いずれも薬剤の性質から抗菌を目的としたものであり、人体に使用したときの肌触りは考慮されていなかった。すなわち、アルコールを含んだ製品を使用した場合には、皮膚上の油脂成分を必要以上に拭き取るためにカサカサとした肌荒れが起こり、不快感を与える。また、抗菌成分や腐敗防止成分を添加した製品の場合には、アルコールと異なり皮膚表面に残留する抗菌成分や腐敗防止成分の影響で、ニチャツキのある不快な肌触りとチクチクした皮膚刺激を与える。さらに、保湿成分や香料などの配合成分も、皮膚表面に残留することにより、ニチャツキのある不快感を与える。このために、抗菌効果を保持したまま、使用後に優れた肌触り感と清浄感を与える清浄剤組成物及び清拭用品が求められている。」
「【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、凝固点30℃以上のポリオキシアルキレン化合物を清浄剤組成物に含有させることにより、アルコールを含んだ製品で起こるカサカサした肌荒れ、抗菌成分や腐敗防止成分で起こる不快なニチャツキとチクチクした皮膚刺激を低減し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(1)凝固点30℃以上のポリオキシアルキレン化合物と抗菌成分を含有することを特徴とする清浄剤組成物、(2)ポリオキシアルキレン化合物の含有量が、0.01~10重量%である第(1)項記載の清浄剤組成物、(3)抗菌成分が、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン・ジグルコネート、塩化セチルピリジニウム、パラヒドロキシ安息香酸エステル、安息香酸又は安息香酸塩である第(1)項記載の清浄剤組成物、及び、(4)第(1)項、第(2)項又は第(3)項記載の清浄剤組成物を含浸させてなることを特徴とする清拭用品、を提供するものである。さらに、本発明の好ましい態様として、(5)ポリオキシアルキレン化合物の含有量が、0.03~5重量%である第(2)項記載の清浄剤組成物、及び、(6)第(5)項記載の清浄剤組成物を含浸させてなる清拭用品、を挙げることができる。」
「【0006】本発明組成物に含有させるポリオキシアルキレン化合物の凝固点は、30℃以上であり、より好ましくは30~100℃であり、さらに好ましくは35~65℃である。ポリオキシアルキレン化合物の凝固点30℃は、夏季における人体の体表面温度より高いので、清浄剤組成物が皮膚に付着して残留しても、ニチャツキ感やベトツキ感を感じることがなく、サラサラとした快適な肌触り感を保つことができる。ポリオキシアルキレン化合物の凝固点が30℃未満であると、使用後にニチャツキ感やベトツキ感を感じるおそれがある。ポリオキシアルキレン化合物の凝固点が100℃を超えると、使用後にカサツキ感を感じるおそれがある。本発明組成物において、ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、0.01~10重量%であることが好ましく、0.05~5重量%であることがより好ましい。ポリオキシアルキレン化合物の含有量が0.01重量%未満であると、使用後にニチャツキ感を感じるおそれがある。ポリオキシアルキレン化合物の含有量が10重量%を超えると、使用後にカサツキ感を感じるおそれがある。本発明組成物に含有させる抗菌成分に特に制限はなく、一般的にウエットティッシュやクリーナーティッシュにおいて、抗菌成分として使用されている化合物を用いることができる。抗菌成分としては、例えば、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムなどの四級アンモニウム塩系化合物、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアニド系化合物、アルキルジ(アミノエチル)グリシンなどのアミノ酸系化合物、安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸、サリチル酸塩、パラヒドロキシ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸塩、パラヒドロキシ安息香酸エステル、ソルビン酸、ソルビン酸塩、フェノール系化合物などを挙げることができる。本発明組成物において、抗菌成分の含有量は0.01~10重量%であることが好ましく、0.05~5重量%であることがより好ましい。抗菌成分の含有量が0.01重量%未満であると、抗菌効果が不足するおそれがある。抗菌成分の含有量が10重量%を超えると、使用後の肌触りの感触が不良となるおそれがある。」
「【0009】実施例6グルコン酸クロルヘキシジン液2重量部、パラヒドロキシ安息香酸メチル0.4重量部、アロエエキス(2)0.8重量部、ポリエチレングリコール60000(凝固点58~67℃)1.0重量部、ポリオキシエチレン(30モル)セチルエーテル0.1重量部及び水道水95重量部を撹拌混合し、均一に溶解した。得られた溶液1重量部に対して、水道水7重量部を加えて希釈した液を含浸液とした。セルロース系不織布100重量部を、この含浸液230重量部に含浸させてウエットティッシュを作製した。実施例7塩化セチルピリジニウム0.4重量部、安息香酸ナトリウム2.4重量部、アロエエキス(2)0.8重量部、ポリエチレンポリプロピレングリコール(凝固点55℃、プルロニックF88、旭電化工業(株))0.8重量部、ポリオキシエチレン(30モル)セチルエーテル0.05重量部及び水道水95重量部を撹拌混合し、均一に溶解した。得られた溶液1重量部に対して、水道水7重量部を加えて希釈した液を含浸液とした。セルロース系不織布100重量部を、この含浸液230重量部に含浸させてウエットティッシュを作製した。実施例8塩化セチルピリジニウム0.4重量部、安息香酸ナトリウム2.4重量部、アロエエキス(2)0.8重量部、ポリエチレンポリプロピレングリコール(凝固点35℃、プルロニックP85、旭電化工業(株))0.8重量部、ポリオキシエチレン(30モル)セチルエーテル0.05重量部及び水道水95重量部を撹拌混合し、均一に溶解した。得られた溶液1重量部に対して、水道水7重量部を加えて希釈した液を含浸液とした。セルロース系不織布100重量部を、この含浸液230重量部に含浸させてウエットティッシュを作製した。実施例9安息香酸0.8重量部、安息香酸ナトリウム2.4重量部、アロエエキス(2)0.8重量部、ポリエチレングリコール6000(凝固点56~61℃)1.2重量部、ポリエチレンポリプロピレングリコール(凝固点55℃、プルロニックF88、旭電化工業(株))0.2重量部、ポリオキシエチレン(30モル)セチルエーテル0.03重量部及び水道水95重量部を撹拌混合し、均一に溶解した。得られた溶液1重量部に対して、水道水7重量部を加えて希釈した液を含浸液とした。セルロース系不織布100重量部を、この含浸液230重量部に含浸させてウエットティッシュを作製した。」
(2)引用文献10
上記第3の原査定に引用された引用文献10には以下の事項が記載されている。
「【0037】(水性洗浄剤)清掃効果を高めるために本発明の含浸液に水性洗浄剤を含有させるのが好ましい。水性洗浄剤としては、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを用いることができる。界面活性剤を用いる場合、水性含浸液中のシリコーンの安定性の観点からは非イオン界面活性剤を用いるか、或いは界面活性剤を用いずに低級及び高級アルコールの少なくとも一方を用いるのが好ましいが、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。特にアルコールは、除菌剤としての機能も有するため好ましい。【0038】低級アルコールとしては、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、イソプロピルアルコール等から1種または数種を適宜選択して使用することができる。一方、高級アルコールとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、2-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール等を挙げることができ、中でも3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等から1種または数種を適宜選択して使用することができる。低級アルコール及び高級アルコールは単独で用いる他、併用することもできる。【0039】水性洗浄剤の配合量は適宜定めることができるが、界面活性剤を用いずに低級及び高級アルコールを用いる場合、低級アルコールを2~8重量%、特に4~6重量%とするのが好適である。また、高級アルコールは0.5~6重量%、特に2~4重量%とするのが好適である。配合量が少な過ぎると汚れ落ち機能が低下し、多過ぎるとベトツキの原因となる。」
(3)引用文献11
上記第3の原査定に引用された引用文献11には以下の事項が記載されている。
「積層シートには、水溶性溶剤8~50重量%、好ましくは10~40重量%、水92~50重量%、好ましくは90~60重量%を含有する清浄液を積層シート重量に対し100~250%量(owf)含浸させる。水溶性溶剤量が8重量%未満では、清掃作業に耐えうる強度の清掃物品を得ることが困難であり、又物品貯蔵時にエンボスの弱化、消失をきたす。水含量が50%未満でもホコリ汚れ、水溶性汚れの清掃性を低下させる。また、シートに対する清浄液含浸量が100%owf未満では清掃効果が不充分であり、250%owfを越えると清掃物品の強度を保つことが難しくなる。水溶性溶剤としてはエタノール、メタノール、プロパノールの如き1価の低級アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールの如きグリコール類、及びそれらグリコール類とメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールとのモノ、或はジエーテル、又は前記グリコール類と低級脂肪酸とのエステル等、更にはグリセリン、ソルビトール等の多価アルコール等の1種或は2種以上を組み合わせて使用できる。」(第3頁右上欄第16行~左下欄第20行)
(4)文献A
また、当審において技術常識を示す文献として新たに採用した特開2004-182492号公報(以下「文献A」という。)には以下の事項が記載されている。
「【0041】(実施例1)12%の硝酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic F88 (PEO39PPO103PEO39) (平均分子量11400、親水部PEO割合80%)(BASF)溶液に、市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO2:23.6%、Na2O:7.59%)に水を加え希釈した珪酸ナトリウム水溶液を600rpmで攪拌しながら添加した。混合溶液のモル比は、SiO2:Pluronic F88:Na2O:HNO3:H2O=1:0.0043:0.312:5.61:194である。尚、H2Oには全ての原料由来の水が含まれている。反応温度は25℃~27℃で、2時間攪拌反応を行った後、固体生成物を濾別し、60℃の温水で洗浄後、50℃で十分乾燥させた。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し、真球状定形多孔質シリカ粒子を得た。」
2 引用文献8に記載された発明
引用文献8(上記1(1)参照。)の実施例7の含浸液、並びに、当該含浸液に含浸させたウエットティッシュに着目するとともに、段落【0001】の「本発明は、清浄剤組成物及び該清浄剤組成物を含浸させてなる清拭用品に関する。」との記載及び【0002】のウエットティッシュの用途の記載からみて、引用文献8から次の発明(以下「引用発明」という。)が認定できる。
(引用発明)
「塩化セチルピリジニウム0.4重量部、安息香酸ナトリウム2.4重量部、アロエエキス(2)0.8重量部、ポリエチレンポリプロピレングリコール(凝固点55℃、プルロニックF88、旭電化工業(株))0.8重量部、ポリオキシエチレン(30モル)セチルエーテル0.05重量部及び水道水95重量部を撹拌混合し、均一に溶解した清浄剤組成物であって、当該清浄剤組成物は、トイレなどの清浄作業に使用されるウエットティッシュに含浸させて用いられる、清浄剤組成物」
3 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明における「清浄剤組成物は、トイレなどの清浄作業に使用されるウエットティッシュに含浸させて用いられる」は、本願発明の「トイレ清掃用の用途である液体洗浄剤組成物」に相当する。
また、引用発明における「ポリエチレンポリプロピレングリコール(凝固点55℃、プルロニックF88、旭電化工業(株))0.8重量部」は、清浄剤組成物全量基準で0.8重量%(0.8/(0.4+2.4+0.8+0.8+0.05+95)×100≒0.8)であることから、本願発明における「酸化エチレン/酸化プロピレン/酸化エチレン共重合体0.05質量以上、20質量%未満」を充足する。
そして、引用文献8の段落【0006】~【0007】の記載からみて、引用発明の清浄剤組成物に含まれる「塩化セチルピリジニウム及び安息香酸ナトリウム」、「アロエエキス(2)」、「ポリオキシエチレン(30モル)セチルエーテル」、及び、「水道水」はそれぞれ、「抗菌成分」、「天然抽出成分」、「界面活性剤」、及び、「水」であり、引用発明の清浄剤組成物にはキレート剤及び無機ビルダーが含まれていないことから、引用発明の清浄剤組成物は、本願発明の「キレート剤および無機ビルダーが含まれていない」を充足している。
してみると、本願発明と引用発明の一致点及び一応の相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「組成物全量基準にして、(A)酸化エチレン/酸化プロピレン/酸化エチレン共重合体0.05質量%以上、20質量%未満、および(C)水、を含有し、キレート剤および無機ビルダーが含まれない、トイレ清掃用の用途である液体洗浄剤組成物。」
<相違点1>
本願発明は(A)酸化エチレン/酸化プロピレン/酸化エチレン共重合体が「HO-(C2H4O)n-(C3H6O)m-(C2H4O)l-H(ただし、n、mおよびlは0ではない整数)で表され、酸化エチレン付加重量率が80質量%であり、数平均分子量が8,750以上、20,000以下である」のに対し、引用発明は「ポリエチレンポリプロピレングリコール(凝固点55℃、プルロニックF88、旭電化工業(株))」である点
<相違点2>
本願発明は「(B)エタノール0.1~70質量%」を含有するのに対し、引用発明はエタノールを含有していない点
4 判断
(1)上記相違点1について検討する。引用発明の「ポリエチレンポリプロピレングリコール(凝固点55℃、プルロニックF88、旭電化工業(株))は、文献Aの段落【0041】に記載された、「トリブロック共重合体Pluronic F88 (PEO39PPO103PEO39) (平均分子量11400、親水部PEO割合80%)(BASF)」と同じ製品名であり、同じ構造式、平均分子量、酸化エチレン付加重量率を有するものであるといえるところ、文献Aの「PEO39PPO103PEO39」は、本願発明の「下記の式:HO-(C2H4O)n-(C3H6O)m-(C2H4O)l-H(ただし、n、mおよびlは0ではない整数)を充足し、文献Aの「平均分子量11400」は、共重合体中の各ブロックの重合度の組み合わせが1種類に特定されていることから、数平均分子量、重量平均分子量のいずれも同じ値となるので、本願発明の「数平均分子量が8,750以上、20,000以下である」を充足し、文献Aの「親水部PEO割合80%」は本願発明の「酸化エチレン付加重量率が80質量%であり」に相当する。
そうすると、引用発明の「ポリエチレンポリプロピレングリコール(凝固点55℃、プルロニックF88、旭電化工業(株))は、本願発明の「HO-(C2H4O)n-(C3H6O)m-(C2H4O)l-H(ただし、n、mおよびlは0ではない整数)で表され、酸化エチレン付加重量率が80質量%であり、数平均分子量が8,750以上、20,000以下である」を充足する。
よって、相違点1は実質的な相違点ではない。
(2)上記相違点2について検討する。引用文献8の段落【0006】には、抗菌成分として、塩化セチルピリジニウム、安息香酸塩とともにエタノールが例示されており、抗菌効果と使用後の肌触りの感触の観点から、抗菌成分の含有量が0.01~10重量%であることが好ましく、0.05~5重量%であることがより好ましいことが記載されている。また、引用発明における抗菌成分である塩化セチルピリジニウム及び安息香酸ナトリウムの含有量は2.8重量%((0.4+2.4)/(0.4+2.4+0.8+0.8+0.05+95)×100≒2.8)であり、引用文献8の実施例9は引用発明と同じくプルロニックF88を含有する清浄剤組成物であって、抗菌成分として安息香酸及び安息香酸ナトリウムを含有しており、抗菌成分の含有量は3.2重量%((0.8+2.4)/(0.8+2.4+0.8+1.2+0.2+0.03+95)×100≒3.2)である。してみれば、引用発明の清浄剤組成物として、抗菌成分である塩化セチルピリジニウム、安息香酸ナトリウムに代えて、あるいは、追加して同じ抗菌成分であるエタノールを含有させれば、本願発明の「エタノール0.1~70質量%」との数値範囲を充足するようにすることにも特段の困難性はない。
そして、本願発明のエタノールを水溶性溶剤として含有させることにより、本願発明の洗浄剤組成物の洗浄力を高めるという効果について、引用文献10の段落【0037】、【0038】には、「清掃効果を高めるために本発明の含浸液に水性洗浄剤を含有させるのが好ましい。水性洗浄剤として、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを用いることができる。」「特にアルコールは、除菌剤としての機能も有するため好ましい。」「低級アルコールとしては、エタノール・・・使用することができる。」ことが記載され、引用文献11の第3頁右上欄第16行~左下欄第20行には、「積層シートには、水溶性溶剤8~50重量%、好ましくは10~40重量%、水92~50重量%、好ましくは90~60重量%を含有する清浄液を積層シート重量に対して100~250%量(owf)含浸させる。」「水溶性溶剤としてはエタノール・・・使用できる。」ことが記載されており、エタノールが除菌剤としての機能のほかに、清掃効果を高める洗浄剤としても機能する水溶性溶剤であることが本願出願前周知であることも考慮すれば、その効果は予測しうる範囲のものである。
5 小括
したがって、本願発明は、引用発明並びに文献Aに記載された技術常識、引用文献10及び引用文献11に記載された周知技術及び引用文献8の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 審判請求人の主張について
1 審判請求人の主張
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審判請求人は、審判請求書の「3.拒絶理由について●理由2(特許法第29条第2項)について」において、「引用文献8には、「アルコールを含んだ製品を使用した場合には、皮膚上の油脂成分を必要以上に拭き取るためにカサカサとした肌荒れが起こり、不快感を与える。また、抗菌成分や腐敗防止成分を添加した製品の場合には、アルコールと異なり皮膚表面に残留する抗菌成分や腐敗防止成分の影響で、ニチャツキのある不快な肌触りとチクチクした皮膚刺激を与える。」こと等が記載され(引用文献8の段落[0002])、アルコール又はその他の抗菌成分や腐敗防止成分がもたらすこのような課題の解決手段として、「凝固点30℃以上のポリオキシアルキレン化合物を清浄剤組成物に含有させることにより、アルコールを含んだ製品で起こるカサカサした肌荒れ、抗菌成分や腐敗防止成分で起こる不快なニチャツキとチクチクした皮膚刺激を低減し得ること」が述べられている(引用文献8の段落[0004])。引用文献8には抗菌成分の一例として、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類が挙げられるものの(引用文献8の段落[0006])、実施例7~9として具体的に記載される組成物には、抗菌成分として、アルコール類とは異なる塩化セチルピリジニウム、安息香酸、安息香酸ナトリウムが含まれ、アルコール類を含むものではない。そのため当該組成物においてアルコール類を含んだ場合に生じる上述の課題が解決できるのか、何ら明らかにされていない。審査官殿は「引用文献8には、当該組成物中に一般的なウェットティッシュやクリ-ナーティッシュにおいて使用される抗菌成分であるエタノールを含有しうることが示されており(引用文献8の[0006]参照)、上記出願人が主張する阻害要因に関しても認めることはできない」と指摘しているが、上述の課題解決を目的とする引用文献8の発明において、上記課題を生じ得るエタノールを添加するか否かは課題解決の根幹にかかわるものであり、単に一般的なウェットティッシュやクリ-ナーティッシュにおいて使用されるという理由で添加を容認し得るものでない。引用文献8には、実施例7~9の組成物に塩化セチルピリジニウム、安息香酸、安息香酸ナトリウムに代えて/加えて、エタノールを含めても上記課題を解決できることは何ら教示されていないのであるから、当該組成物にあえてエタノールを含めようとする動機は存在しないといえる。」(以下「主張1」ともいう。)、及び、「また、本願発明の効果については上述のとおり、本願発明は、エタノール(成分(B))を0.1質量%以上の量で含むことを特徴の一つとしており、エタノールが0.1質量%未満の量で含まれる場合には、汚れに対する洗浄力が乏しくなる場合があり、上述の所望の効果が得られない場合がある。一方、引用文献8においてエタノールは、抗菌成分の一例として記載されるのみであり(引用文献8の段落[0006])、その他の効果に対する寄与については何ら示唆されていない。してみれば、引用文献8に具体的に開示される上記組成物において、エタノールを0.1質量%以上の量で添加することにより、汚れに対する優れた除去効果を得ることができると共に、洗浄面に防汚性能を付与することができ、汚れを着きにくくし、汚れの除去をさらに容易にする効果を奏することは、引用文献8の開示からは予測し得ない効果であるといえる。」(以下「主張2」ともいう。)旨主張している。
2 審判請求人の主張に対する当審合議体の判断
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しかしながら、主張1について、審判請求人によって摘記された引用文献8の段落【0002】の記載は従来技術に関するものであり、同段落【0004】の「凝固点30℃以上のポリオキシアルキレン化合物を清浄剤組成物に含有させることにより、アルコールを含んだ製品で起こるカサカサした肌荒れ、抗菌成分や腐敗防止成分で起こる不快なニチャツキとチクチクした皮膚刺激を低減し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。」の記載は、ポリオキシアルキレン化合物を清浄剤組成物に含有させることにより、カサカサした肌荒れや不快なニチャツキとチクチクした皮膚刺激を低減し得ることが説明されているものであって、アルコールを含有させないこと説明したものではなく、アルコールを含んだ製品であってもポリアルキレン化合物を含有させることにより、カサカサした肌荒れを低減し得ることが記載されていると解することが妥当であり、引用文献8の段落【0002】、【0004】の記載は引用発明の清浄剤組成物にエタノールを含有させることの阻害要因とはならない。また、引用文献8の段落【0006】には「本発明組成物に含有させる抗菌成分に特に制限はなく、一般的にウエットティッシュやクリーナーティッシュにおいて、抗菌成分として使用されている化合物とを用いることができる」とし、その例として「エタノール」が記載されており、審判請求人が主張のように、エタノールが「単に一般的なウェットティッシュやクリ-ナーティッシュにおいて使用される」というものではなく、引用文献8の本発明組成物に含有させることができる成分として記載されていると解するのが妥当であり、引用文献8の実施例の清浄剤組成物にエタノールが含有されていなくても、同段落【0006】の記載からみて、引用発明の清浄剤組成物にエタノールを含有させようとする動機付けは存在しているといえる。してみると、上記第4 4(2)での検討のとおり、引用発明の清浄剤組成物として、抗菌成分である塩化セチルピリジニウム、安息香酸ナトリウムに代えて、あるいは、追加して同じ抗菌成分であるエタノールを含有させることは容易に想到しうるものである。よって、審判請求人の主張1は採用することができない。
また、主張2について、本願発明の洗浄剤組成物に水溶性溶剤であるエタノールを含有させることによる効果については、本願明細書の段落【0021】に記載された「本発明の洗浄剤組成物において、水溶性溶剤は、0.1質量%以上の量で配合することができる。洗浄剤組成物中、0.1質量%未満の配合量では、汚れに対する洗浄力が乏しい場合がある。水溶性溶剤の配合量の上限は特に限定されないが、70質量%未満とすることができる。70質量%以上配合しても、洗浄力の効果は飽和状態となり、経済的に不利となる場合がある。好ましくは、水溶性溶剤は洗浄剤組成物中に、0.5質量%以上、60質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上、40質量%以下の量で配合することができる。」との記載されているところ、エタノールを含有させることで、「汚れに対する洗浄力が乏しい場合がある」ことを防ぐ、すなわち、汚れに対する洗浄力を高める効果を有すると読み取ることができる。しかしながら、上記第4 4(2)での検討のとおり、エタノールを0.1質量%以上含有させる点について、引用発明及び引用文献8の実施例のいずれも抗菌成分を0.1重量%以上含有している。また、引用文献8の抗菌成分のより好ましい含有量は0.05重量%以上であることから、この含有量とした際に、四捨五入により0.1重量%とも把握することができるから、抗菌成分であるエタノールを含有させる際に、エタノールの含有量を0.1質量%以上とすることに何ら困難性はない。さらに、エタノールを0.1質量%以上含有させることによる効果である汚れに対する洗浄力を高める効果についても、前記第4の4(2)で述べたとおり、エタノールが除菌剤としての機能のほかに清掃効果を高める洗浄剤として機能する水溶性溶剤であることは本願出願前周知であり、予測し得ない効果とはいえない。よって、審判請求人の主張2は採用することができない。
3 原査定に対する意見の機会について
なお、審判請求書の[むすび]の後に、「なお、上記によっても、拒絶理由を解消できない場合には、本審判請求人は本願発明について詳細にご説明等を行うべく、面接等の機会を求める次第である。」と記載されているが、合議体は本願に係る発明の内容が十分に理解でき、審判請求人から具体的な補正案などが提示されている訳でもなく、また、当審からの令和5年11月14日付け拒絶理由通知の<付記>において、「上記1.理由1(明確性)について」で言及したように、各請求項に係る発明は明確でなく、各請求項に記載の発明を正確に理解することができないため、現時点では、原審の判断についての検討は留保する」と通知しているのに対して、同年12月13日に審判請求人から提出された意見書において、原審の判断について追加の主張はなされていない。よって、新たに拒絶理由を通知することはしない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項についてさらに検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-003785