2020-002962
ショベル
- 審判番号
- 2020-002962
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-169346外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年03月03日
- 審決日
- 2021年06月21日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (E02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成28年8月31日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 令和3年4月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年4月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回機構を介して搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体に設置された動力源であるエンジンと、前記エンジンに供給する空気を濾過するエアクリーナと、を備え、前記エアクリーナは、本体部の内部の一の支持部に支持されたアウターエレメントと、前記本体部の内部の該アウターエレメントの下流側で他の支持部に支持されるとともに該アウターエレメントと同程度又はそれ以上に小さい塵埃を捕捉可能なインナーエレメントと、を含み、空気導入部から取り込まれた空気がらせん流を形成しながら前記アウターエレメントと前記インナーエレメントとを通過して空気排出部より排出され、前記アウターエレメントは、前記インナーエレメントが前記他の支持部に支持されたままで脱着可能に構成され、前記空気導入部は、前記本体部の外周において前記アウターエレメントの中心軸に重ならないように形成され、前記空気排出部は、前記インナーエレメントの中心軸に重なるように形成される、ショベル。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年1月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回機構を介して搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体に設置された動力源であるエンジンと、前記エンジンに供給する空気を濾過するエアクリーナと、を備え、前記エアクリーナは、本体部の内部の一の支持部に支持されたアウターエレメントと、前記本体部の内部の該アウターエレメントの下流側で他の支持部に支持されるとともに該アウターエレメントと同程度又はそれ以上に小さい塵埃を捕捉可能なインナーエレメントと、を含み、空気導入部から取り込まれた空気がらせん流を形成しながら前記アウターエレメントと前記インナーエレメントとを通過して空気排出部より排出され、前記アウターエレメントは、前記インナーエレメントが前記他の支持部に支持されたままで脱着可能に構成される、ショベル。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ショベル」について、「空気導入部」が「記本体部の外周において前記アウターエレメントの中心軸に重ならないように形成され」、「空気排出部」が「前記インナーエレメントの中心軸に重なるように形成される」るとの限定を付加するものである。そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
ア 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
イ なお、「重なる」の通常の意味は、「物の上に別の同じような物が乗る。」(岩波書店『広辞苑 第六版』)であるところ、本件補正後の請求項1における、「前記空気導入部は、前記本体部の外周において前記アウターエレメントの中心軸に重ならないように形成され」るとの記載は、以下のいずれの意味であるのか、その記載のみからは明らかでない。
(ア)「空気導入部」が、「本体部の外周において」、「アウターエレメントの中心軸」に乗っていない、という意味。
(イ)ある方向からの平面視で、「前記空気導入部は、前記本体部の外周において前記アウターエレメントの中心軸に重ならないように形成され」る、すなわち、ある方向からの平面視で、「空気導入部」が、「本体部の外周において」、「アウターエレメントの中心軸」に乗っていない、という意味。
また、上記(イ)の場合には、平面視がどの方向からのものであるのかも明らかでない。
したがって、本件補正発明は、請求項の記載がそれ自体で明確であるとはいえない。
そこで、本願の明細書及び図面の記載を参照すると、本願の明細書には、本件補正発明の上記記載に関して次の記載がある(下線は当審で付した。)。
「【0029】エアクリーナ9は、ターボチャージャ14を介してエンジン8に導入される空気を濾過する。図3に示すように、エアクリーナ9は、エアクリーナ室7Bの上部空間に配置される。エアクリーナ9は、外周部に形成される空気導入部9aを通じて空気を取り込む。内部に取り込まれた空気は円筒状のフィルタ、具体的には、アウターエレメント9d及びインナーエレメント9eの周りで、弱いらせん流を形成しながら左方向(Y1方向)に進む。この過程において、粉塵等の空気中の比較的重いダスト(以下、「重量ダスト」と称する)には、遠心力が働くため、空気と重量ダストとは分離される。具体的には、らせん流中の重量ダストは、エアクリーナ9の本体9bの内壁に押し付けられて、その内壁に沿って進み、後述するダスト排出口9h(図4参照)を通じて、バキュエータバルブ20内に集められる。バキュエータバルブ20内に集められた重量ダストは、バキュエータバルブ20が開くと、下方に排出される。一方、らせん流中の比較的軽いダスト(以下、「軽量ダスト」と称する)を含む空気は、アウターエレメント9d,インナーエレメント9eを通過し、インナーエレメント9e内に進入する。この際、アウターエレメント9d,インナーエレメント9eで、空気中の軽量ダストが捕捉(濾過)される。そして、インナーエレメント9e内に進入した空気は、空気排出部9cを介して排出され、ターボチャージャ14の遠心式圧縮機に供給される。エアクリーナ9の構造の詳細については、後述する。」
また、本願の図6は以下のものであり、「空気導入部9a」は、「アウターエレメント9d」の中心軸ではなく、「本体9b」の内壁の方向に向いて配置されていることが看取される。
「」
本願の明細書及び図面における上記の記載からみて、「空気導入部9a」は、空気を取り込む方向が、「アウターエレメント9d」の中心軸ではなく、「本体9b」の内壁に向いて配置され、この「空気導入部9a」を通じて「本体9b」の内部に取り込まれた空気は、まず、「アウターエレメント9d」と「本体9bの内壁」との間で「弱いらせん流を形成」するものと解される。
したがって、本願の明細書及び図面におけるこれらの記載を参酌すると、本件補正後の請求項1における、「前記空気導入部は、前記本体部の外周において前記アウターエレメントの中心軸に重ならないように形成され」るとの記載は、上記イの意味であり、「空気導入部」が空気を取り込む方向からの平面視で、「空気導入部」が、「本体部の外周において」、「アウターエレメントの中心軸」に乗っていない(言い換えると、「空気導入部」の空気を取り込む方向への延長線上に「アウターエレメントの中心軸」が存在しない)、との意味であると解される。
なお、このような解釈は、令和3年4月26日に出願人が提出した意見書における「「空気導入部9a」は、「アウターエレメント9d」の中心軸に重ならないように形成され、「空気排出部9c」は、「インナーエレメント9e」の中心軸に重なるように形成されることによって、吸気時に「空気導入部9a」から取り込まれた空気が本体部の外周内壁に沿いつつ「インナーエレメント9e」の中心軸に重なるように形成された「空気排出部9c」へ向かって流動することから、「本体部9b」の内部ではらせん流が自ずと生じることになります。」との記載にも整合するものと考えられる。
付言すると、もし上記アの意味であるとすると、上記意見書における記載とは整合しないと解される。すなわち、まず、「本体部の外周」と「アウターエレメントの中心軸」とはそもそも接触することがないから、「空気導入部」は、「本体部の外周」にどのような向きで設けられていても、「本体部の外周において」、「アウターエレメントの中心軸」に乗ることはない。したがって、上記アの意味であるとすると、本件補正後の請求項1における、「前記空気導入部は、前記本体部の外周において前記アウターエレメントの中心軸に重ならないように形成され」るとの記載は、「空気導入部」の「本体部の外周」上での向きを、何ら特定していないことになる。他方、上記意見書に記載のメカニズムでらせん流を生じるためには、「空気導入部9a」は、取り込んだ空気を「本体部の外周内壁に沿」う方向に流すように設けられる必要があるから、「空気導入部」は、「本体部の外周内壁」に向けて設けられる必要があり、どのような向きで設けられていてもよいということはないと解される。したがって、上記アの意味である場合には、上記意見書の記載と整合しないと考えられる。
以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1における、「前記空気導入部は、前記本体部の外周において前記アウターエレメントの中心軸に重ならないように形成され」るとの記載は、「空気導入部」が空気を取り込む方向からの平面視で、「空気導入部」が、「本体部の外周において」、「アウターエレメントの中心軸」に乗っていない、という意味であると解釈して以下の検討を行う。
(2)引用文献の記載事項
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ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
令和3年2月22日付けで当審から通知した拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2010-37977号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。他の引用文献も同様。)。
a 「【技術分野】【0001】本発明は、エアクリーナ、及びエンジン制御システムに関し、特に、エンジンに供給する空気の流量を安定化させるエアクリーナ、及びエンジン制御システムに関する。」
b 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建設機械等に用いられる大型のディーゼルエンジンでは、エアクリーナによる空気中の塵埃補捉効果を向上させるため、同心円状に配置される内筒フィルタ及び外筒フィルタと、これらを収納する筐体とを備えたエアクリーナが知られている。
このエアクリーナでは、外部から取り込まれた空気を内筒フィルタ及び外筒フィルタの二重構造で濾過しているため、排出される空気の清浄度をより向上させることができる、という利点がある。
このようなエアクリーナでは、通常内筒フィルタは、フィルタを収納する筐体内に固定されており、フィルタの汚れの状態に応じて、外筒フィルタを交換するようにしている。
しかしながら、このようなエアクリーナは、外筒フィルタ自体のフィルタ紙のバラつきや、筐体内部に固定された内筒フィルタと、装着した外筒フィルタとの位置関係で筐体内部の空気の流れが微妙に変化することがあり、単純に前記特許文献1に記載の技術を適用しただけでは、質量流量計によって空気の流量を高精度に測定できないという問題がある。
c 「【発明の効果】【0012】本発明によれば、質量流量計の上流側に整流格子が設けられることにより、下流側配管中の空気の流れを整流することができるため、質量流量計によって流量を高精度に測定することができる。また、内筒フィルタ及び外筒フィルタという二重構造のフィルタ構造により濾過効率を向上させて、排出させる空気の清浄度を向上させることができる。」
d 「【0017】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。(エアクリーナ10の構造)図1は、本実施形態でのエアクリーナ10の断面図である。続きを表示(全17行)このエアクリーナ10は、外部の空気を取り込んで、空気中の塵埃を除去して排出し、エンジン等に供給する気流濾過装置であり、筐体11、外筒フィルタ12、内筒フィルタ13、及び整流格子18を備えている。外筒フィルタ12及び内筒フィルタ13は、筐体11の内部に同心円状に配置されている。【0018】筐体11は、空気を濾過する外筒フィルタ12及び内筒フィルタ13を収納するものであり、ケース本体11Aと、ケース本体11Aの開口端面を塞ぐ蓋部材14とを備えている。ケース本体11Aは、合成樹脂等の有底円筒状体である。蓋部材14は、ケース本体11Aの開口端面を覆う円板状体から構成され、蓋部材14の外周には、面外方向に突出するリブ141が形成されており、リブ141がケース本体11Aの外周面に係合する。【0019】ケース本体11Aの外周側面には、外部の空気を筐体11の内部に取り込む上流側配管としての吸気口15が設けられ、この吸気口15は、ケース本体11Aの中心に対して偏心して配置されている。そして、空気が、外筒フィルタ12の外周側面に対して流れ込むようになっている。また、開口しているケース本体11Aの開口端面は、蓋部材14にて塞がれ、ケース本体11Aの底面111の略中央には、外筒フィルタ12および内筒フィルタ13で濾過された空気を排気する下流側配管としての排気口16が設けられている。これによれば、外筒フィルタ12が汚れにより劣化した際には、蓋部材14を取り外して、外筒フィルタ12を交換できるようになっている。また、筐体11の底面111の内面には、環状に突起し、排気口16の内径寸法よりも大きい径寸法を有する環状突起部17が形成され、後述する内筒フィルタ13はこの環状突起部17に係合されている。【0020】外筒フィルタ12は、筐体11の内部に取り込んだ空気を濾過する汎用的なフィルタをひだ折りして筒状に形成された筒部122と、筒部122の一端を保持するウレタン製の円形保持部材123と、筒部122の他端を保持するウレタン製の環状保持部材124とを備えている。円形保持部材123が、筐体11の底面111に当接され、環状突起部17の外周面に対して、着脱自在に取り付けられている。環状保持部材124の外面側には、環状の突起部125が形成され、突起部125は、蓋部材14に当接している。すなわち、外筒フィルタ12の交換後、蓋部材14が突起部125を付勢することで、弾性体であるウレタン製の環状保持部材124が収縮し、蓋部材14と環状保持部材124とが密着する。さらに、突起部125が付勢されることで、弾性体であるウレタン製の円形保持部材123が底面111を押圧するので、底面111と円形保持部材123とが密着する。これにより、吸気口15から入ってきた空気は、筒部122の外周側面に対してのみ流れ込むようになっている。【0021】内筒フィルタ13は、外筒フィルタ12で濾過された空気をさらに濾過するものであり、さらに、外筒フィルタ12の交換時に、汚れた空気が下流側に進入するのを防止するものである。また、内筒フィルタ13は、外筒フィルタ12の中空部121に収納され、外筒フィルタ12と同様に汎用的なフィルタをひだ折りして筒状に形成された筒部131と、筒部131の一端を保持するウレタン製の円形保持部材132と、筒部131の他端を保持するウレタン製の環状保持部材133とを備えている。円形保持部材132の外面側には、環状の突起部134が形成され、突起部134は、外筒フィルタ12の環状保持部材124に当接している。また、環状保持部材133が、環状突起部17の内周面に対して嵌合し、固定されている。」
e 「【0025】ここで、内筒フィルタ13の内径寸法は、排気口16の内径寸法と略同一寸法か、または排気口16の内径寸法も大きくなっている。これによれば、外筒フィルタ12および内筒フィルタ13で濾過された空気は、内筒フィルタ13の内面を通って、排気口16へと排出されるのであるが、内筒フィルタ13の内径寸法は、排気口16の内径寸法と略同一寸法か、または排気口16の内径寸法よりも大きくなっているので、内筒フィルタ13から排気口16への空気の流れにおいて拡大による乱れを防止することができ、乱流等を生じることがない。空気の流れに整流効果を与えることができる。また、排気口16には、排気口16内を通過する空気の流量を計測する質量流量計としての質量流量センサ19が取り付けられている。この質量流量センサ19は、空気の流量を計測すると、検出信号を生成し、制御手段としてのコントローラ30へ出力する。」
f 「【0027】(エンジン制御システム20の構成)図3は、本実施形態でのエンジン制御システム20を示す概略図である。エンジン制御システム20は、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンと称する)21、可変ターボ過給機24、排気再循環通路としてのEGRライン25、EGRライン25の途中に設けられたEGRクーラ26およびEGRバルブ27、前述したエアクリーナ10、質量流量計としての質量流量センサ19、及び制御手段としてのコントローラ30を備えている。」
g 「【0034】本実施形態によれば、整流格子18は、質量流量センサ19にて計測される空気の質量流量と予め吸気口15側で計測される空気の質量流量との誤差率が小さく、かつ圧力損失の低い最適なものが選択されているため、外筒フィルタ12と内筒フィルタ13との位置関係等に関わらず、エアクリーナ10から排出される空気の流量を高精度で測定できる。また、エアクリーナ10の筐体11の内部には、外筒フィルタ12および内筒フィルタ13が収納され、二重構造となっているので、外部から取り込んだ空気に含まれる塵埃等を確実に除去でき、空気の清浄度を向上できる。一方、高精度に測定された空気の流量に基づいて、エンジン21を制御するため、コントローラ30は、より緻密なEGR制御を行うことができる。」
h 「【産業上の利用可能性】【0047】本発明のエアクリーナ、およびエンジン制御システムは、建設機械、土木機械、農業機械、発電装置、輸送車両等に好適に利用できる。」
(イ)引用文献1に記載された発明
上記(ア)から見て、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「エンジンに供給する空気の流量を安定化させるエアクリーナ、及びエンジン制御システムを利用した土木機械であって、内筒フィルタ及び外筒フィルタという二重構造のフィルタ構造により濾過効率を向上させて、排出させる空気の清浄度を向上させることができるものであり、エアクリーナ10は、外部の空気を取り込んで、空気中の塵埃を除去して排出し、エンジン等に供給する気流濾過装置であり、筐体11、外筒フィルタ12、内筒フィルタ13を備えており、外筒フィルタ12及び内筒フィルタ13は、筐体11の内部に同心円状に配置されており、筐体11は、ケース本体11Aと、ケース本体11Aの開口端面を塞ぐ蓋部材14とを備えており、ケース本体11Aの外周側面には、外部の空気を筐体11の内部に取り込む上流側配管としての吸気口15が設けられ、この吸気口15は、ケース本体11Aの中心に対して偏心して配置されており、空気が、外筒フィルタ12の外周側面に対して流れ込むようになっており、ケース本体11Aの底面111の略中央には、外筒フィルタ12および内筒フィルタ13で濾過された空気を排気する下流側配管としての排気口16が設けられており、これにより、外筒フィルタ12が汚れにより劣化した際には、蓋部材14を取り外して、外筒フィルタ12を交換できるようになっており、また、筐体11の底面111の内面には、環状に突起し、排気口16の内径寸法よりも大きい径寸法を有する環状突起部17が形成され、外筒フィルタ12は、筐体11の内部に取り込んだ空気を濾過する汎用的なフィルタをひだ折りして筒状に形成された筒部122と、筒部122の一端を保持するウレタン製の円形保持部材123と、筒部122の他端を保持するウレタン製の環状保持部材124とを備えており、円形保持部材123が、筐体11の底面111に当接され、環状突起部17の外周面に対して、着脱自在に取り付けられており、内筒フィルタ13は、外筒フィルタ12で濾過された空気をさらに濾過するものであり、さらに、外筒フィルタ12の交換時に、汚れた空気が下流側に進入するのを防止するものであり、また、内筒フィルタ13は、外筒フィルタ12の中空部121に収納され、外筒フィルタ12と同様に汎用的なフィルタをひだ折りして筒状に形成された筒部131と、筒部131の一端を保持するウレタン製の円形保持部材132と、筒部131の他端を保持するウレタン製の環状保持部材133とを備えており、円形保持部材132の外面側には、環状の突起部134が形成され、突起部134は、外筒フィルタ12の環状保持部材124に当接しており、また、環状保持部材133が、環状突起部17の内周面に対して嵌合し、固定されており、外筒フィルタ12および内筒フィルタ13で濾過された空気は、内筒フィルタ13の内面を通って、排気口16へと排出され、内筒フィルタ13の内径寸法は、排気口16の内径寸法と略同一寸法か、または排気口16の内径寸法よりも大きくなっているので、内筒フィルタ13から排気口16への空気の流れにおいて拡大による乱れを防止することができ、乱流等を生じることがなく、空気の流れに整流効果を与えることができ、エンジン制御システム20は、ディーゼルエンジン21及びエアクリーナ10を備え、エアクリーナ10の筐体11の内部には、外筒フィルタ12および内筒フィルタ13が収納され、二重構造となっているので、外部から取り込んだ空気に含まれる塵埃等を確実に除去でき、空気の清浄度を向上できる、エアクリーナ、及びエンジン制御システムを利用した土木機械。」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
令和3年2月22日付けで当審から通知した拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2013-141879号公報)には、次の事項が記載されている。
a 「【0023】図1に示すように、建設機械10は、クローラ式の下部走行体11と、下部走行体11上に旋回自在に搭載された上部旋回体20とで構成されている。上部旋回体20には、アタッチメント13、キャブ14、機械室15、アッパーフレーム21等が備えられている。ちなみに、本実施形態の建設機械10は小旋回型である。旋回半径が小さくなるように、上部旋回体20は相対的に小さく構成されており、上部旋回体20の後部の外郭線は、上方から見て円弧状に形成されている。【0024】アタッチメント13は、上部旋回体20の前部に設置され、ブーム13a、アーム13b、及びバケット13c等で構成されている。ブーム13a等のそれぞれは、油圧制御された油圧シリンダ13dの伸縮に連動して動作し、掘削等の作業を行う。これらブーム13a等の操作は、キャブ14において行われる。【0025】キャブ14は、矩形箱形の運転室であり、アタッチメント13に隣接して上部旋回体20の左前部に設置されている。機械室15は、上部旋回体20の後部に設けられている。機械室15の周囲は、機械室カバー16で覆われている。機械室15の内部には、エンジン31(図2参照)や油圧機器等が密集した状態で収容されている。この建設機械10では、機械室15の後部を覆う機械室カバー16が、アタッチメント13との間で前後のバランスを確保するカウンタウエイトを兼ねている。」
b 「【0032】機械室15の内部には、エンジン31の他にも、油圧ポンプ32、ラジエータ33、ファン34、及び吸気ダクト40等が収容されている。この建設機械10では、空気流通方向の上流側から順に、吸気ダクト40、ラジエータ33、ファン34、エンジン31、及び油圧ポンプ32が横並びに配設されている。(中略)【0035】図4にも示すように、吸気ダクト40は、空気流通方向の上流側から下流側に向かって開口した箱状のダクト本体41を有する。ダクト本体41には、エアフィルタ50を取り付けるエアフィルタ取付部42と、機器としてのエアクリーナ55を取り付ける機器取付部56とが設けられている。【0036】エアクリーナ55は、エンジン31に供給する空気を集塵するためのものであり、ダクト本体41からバイパスされた吸気管55a及びエンジン31に向かう排気管(図示省略)に接続されている。」
c 図1は、次のものである。
「」
図1からは、上記aの[0023]~[0024]の記載も踏まえると、以下の点が看取される。
(a)「建設機械10」は、ショベルである点。
(イ)引用文献2に記載された技術的事項
上記(ア)から見て、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用技術的事項2」という。)が記載されている。
「建設機械10は、ショベルであり、クローラ式の下部走行体11と、下部走行体11上に旋回自在に搭載された上部旋回体20とで構成され、機械室15は、上部旋回体20の後部に設けられ、機械室15の内部には、エンジン31等が密集した状態で収容され、機械室15の内部には、エンジン31の他にも、吸気ダクト40等が収容されており、吸気ダクト40は、空気流通方向の上流側から下流側に向かって開口した箱状のダクト本体41を有し、ダクト本体41には、機器としてのエアクリーナ55を取り付ける機器取付部56が設けられており、エアクリーナ55は、エンジン31に供給する空気を集塵するためのものである点。」
ウ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載
令和3年2月22日付けで当審から通知した拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献3(特開2012-207539号公報)には、次の事項が記載されている。
a 「【図面の簡単な説明】【0013】【図1】本発明の第1実施形態に係るエアクリーナを説明する図で、図1(A)は縦断側面図、図1(B)は図1(A)のIB部拡大図である。【図2】図2(A)は図1のIIA-IIA線断面図、図2(B)は図1のIIB-IIB線断面図、図2(C)は図1のIIC-IIC線断面図である。【図3】本発明の第2実施形態に係るエアクリーナを説明する図で、図3(A)は縦断側面図、図3(B)は図3(A)のIIIB部拡大図である。【図4】図4(A)は図3のIVA-IVA線断面図、図4(B)は図3のIVB-IVB線断面図、図4(C)は図3のIVC-IVC線断面図である。」
b 「【0014】図1、図2は本発明の第1実施形態に係るエアクリーナを説明する図、図3、図4は本発明の第2実施形態に係るエアクリーナを説明する図で、各実施形態では、エンジンのエアクリーナについて説明する。【0015】図1(A)(B)に示すように、ケーシング(1)内に筒状のインナーフィルタエレメント(22)を収容し、インナーフィルタエレメント(22)の周囲に未浄気室(3)を設け、インナーフィルタエレメント(22)内に浄気室(6)を設け、ケーシング端壁(7)から外側に浄気出口管(8)を導出し、インナーフィルタエレメント(22)の端部に浄気出口(10)を開口し、この浄気出口(10)の開口端面(11a)にシール材(12)を設け、シール材(12)を接当部(13)に接当させ、シール材(12)に浄気出口(10)の開口端面(11a)から内周面(11b)に沿って折り返された内側折り返し部(14)を設け、フィルタエレメント(22)の浄気出口(10)と浄気出口管(8)の浄気入口(15)とを連通させ、浄気出口管(8)にエアフローセンサ(9)を配置している。続きを表示(全15行)【0016】図2(A)(B)に示すように、ケーシング(1)は円筒形状である。インナーフィルタエレメント(22)の外側にはインナーフィルタエレメント(22)と同心状の筒状のアウターフィルタエレメント(21)を配置し、アウターフィルタエレメント(21)とインナーフィルタエレメント(22)とで二重筒構造のフィルタエレメント(2)を構成している。未浄気室(3)はアウターフィルタエレメント(21)の外側にある。アウターフィルタエレメント(21)は濾紙製、インナーフィルタエレメント(22)はフェルト製である。これらのフィルタエレメントの素材は、他のもの、例えばスポンジ等であってもよい。【0017】未浄気室(3)は未浄気旋回室であり、図1に示すように、浄気出口管(8)寄りの端部を始端部(3a)とし、反対側の端部を終端部(3b)とし、始端部(3a)に未浄気入口(5)を臨ませている。未浄気室(3)の始端部(3a)には、アウターフィルタエレメント(21)と同心でアウターフィルタエレメント(21)を外側から覆う円筒の未浄気旋回ガイド筒(23)を設けている。図2(A)に示すように、ケーシング周壁(4)に取り付けた未浄気入口(5)は未浄気室(3)の始端部(3a)の接線方向に沿う向きに方向付けている。図1、図2(C)に示すように、浄気出口管(8)はL字形のエルボ管となっている。エアフローセンサ(9)は、浄気出口管(8)のうち、フィルタエレメント(2)と平行な向きの浄気入口寄り部分(20)の周壁に取り付けている。エアフローセンサ(9)にはホットワイヤー式のものを用いている。エアフローセンサ(9)には、他の方式のものを用いてもよい。エアフローセンサ(9)で計測した浄気流量に基づいて、エンジンECU(図外)がコモンレールの燃料噴射量の調量等を行う。エンジンECUは、エンジン電子制御ユニットの略称である。【0018】図1(A)、図2(A)(B)に示すように、未浄気室(3)を未浄気(18)が旋回し、その過程で未浄気(18)から質量の大きな塵埃が遠心分離され、未浄気室(3)から浄気室(6)に向けて未浄気(18)がフィルタエレメント(2)を通過し、その過程で未浄気(18)の微細な塵埃がフィルタエレメント(2)に捕捉され、未浄気(18)は浄気(19)となって浄気室(6)に流入する。浄気室(6)の浄気(16)は浄気出口管(8)からこれに接続した吸気ダクト(図外)を介してエンジンの吸気装置に吸入される。図2(A)(B)では、浄気室(6)を通過する浄気(19)の向きは紙面手前向き、図2(C)では、浄気出口管(8)を通過する浄気(19)の向きは紙面奥向きである。」
c 図1は、次のものである。
「」
図1(A)からは、上記bの段落[0017]~[0018]の記載も踏まえると、以下の点が看取される。
(a)未浄気入口(5)から取り込まれた未浄気(18)が、未浄気室(3)の始端部(3a)から終端部(3b)に向けて移動する点。
(イ)引用文献3に記載された技術的事項
上記(ア)から見て、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用技術的事項3」という。)が記載されている。
「エンジンのエアクリーナであって、ケーシング(1)内に筒状のインナーフィルタエレメント(22)を収容し、インナーフィルタエレメント(22)の周囲に未浄気室(3)を設け、インナーフィルタエレメント(22)内に浄気室(6)を設け、ケーシング端壁(7)から外側に浄気出口管(8)を導出し、インナーフィルタエレメント(22)の端部に浄気出口(10)を開口し、インナーフィルタエレメント(22)の外側にはインナーフィルタエレメント(22)と同心状の筒状のアウターフィルタエレメント(21)を配置し、アウターフィルタエレメント(21)とインナーフィルタエレメント(22)とで二重筒構造のフィルタエレメント(2)を構成しており、未浄気室(3)はアウターフィルタエレメント(21)の外側にあるものにおいて、未浄気室(3)は未浄気旋回室であり、浄気出口管(8)寄りの端部を始端部(3a)とし、反対側の端部を終端部(3b)とし、ケーシング周壁(4)に取り付けた未浄気入口(5)は未浄気室(3)の始端部(3a)の接線方向に沿う向きに方向付けており、未浄気室(3)を未浄気(18)が旋回し、その過程で未浄気(18)から質量の大きな塵埃が遠心分離され、未浄気室(3)から浄気室(6)に向けて未浄気(18)がフィルタエレメント(2)を通過し、その過程で未浄気(18)の微細な塵埃がフィルタエレメント(2)に捕捉され、取り込まれた未浄気(18)が、未浄気室(3)の始端部(3a)から終端部(3b)に向けて移動する点。」
エ 引用文献4
(ア)引用文献4の記載
令和3年2月22日付けで当審から通知した拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献4(実公昭51-17361号公報)には、次の事項が記載されている
a 「本考案は主として動力移動農機等に搭載した原動機に附設して用いる乾式のエアークリーナーに関するものであつて、多量の塵芥又は水分を含んだ外気中での作業が多い農機等に附設した場合でも、良好な除塵作用を長期に亘つて行い得るエアークリーナーを得ようとするものである。本考案実施の態様を例示図について詳述すれば水平基板1の一部を上方に突曲させて段部2を構成し、この段部2より適当距離内側方に位置した段部2上段部分に縦形筒状の乾式濾材(濾紙又は不織布)3を載置すると共に、前記段部2の外側下段部分に連続気泡状合成樹脂(例えばスポンジ)からなる縦形筒状濾材4を配置し、両筒状濾材3,4間に環状の空間5を有せしめた二重筒状態となし、前記基板1を下方より貫通して連結エルボ6の上端を前記筒状乾式濾材3の内部空間7内に挿入させて清浄空気流出口8を形成し、更に空気取入口9を有する上部カバー10を、前記基板1との間に間隙11が存在する状態に前記二重筒状濾材3,4に覆いかぶせ、このカバー10をネジ棒12及び蝶ナツト13によつて前記エルボ6のフランジ14に締着し、もつて基板1及び上部カバー10との間に挾持した合成樹脂濾材4を第一次濾材、乾式濾材3を第二濾材とするエアークリーナーを構成している。」(第1欄第18行~第2欄第4行)
b 「上記構成によれば、上部カバー10の空気取入口9から吸引された空気は先ず第一濾材であるところの連続気泡状合成樹脂筒状濾材4を透過し、大きい塵芥が除去され、次に環状空間5を経て第二濾材であるところの乾式濾材3を透過する間に、第一濾材で除去しきれなかつた小さい塵芥を取り除き清浄空気として流出口8より送り出されてゆくのであるが、雨中での作業や水田での代掻き作業の如く取入れ空気に水分(微小な水滴)や泥水飛沫が含まれている場合においては、是等水分や泥水は第一濾材4に吸着し、乾式濾材3に水分が達する事がなく、合成樹脂濾材4に吸着した水分は自重によつて下方に降下して上部カバー10と基板1との間の間隙11より外方に流出してしまうのである。」(第2欄第14~28行)
(イ)引用文献4に記載された技術的事項
上記(ア)から見て、引用文献4には、次の技術的事項(以下「引用技術的事項4」という。)が記載されている。
「動力移動農機等に搭載した原動機に附設して用いる乾式のエアークリーナーにおいて、多量の塵芥又は水分を含んだ外気中での作業が多い農機等に附設した場合でも、良好な除塵作用を長期に亘つて行い得るものであり、段部2上段部分に縦形筒状の乾式濾材(濾紙又は不織布)3を載置すると共に、前記段部2の外側下段部分に連続気泡状合成樹脂(例えばスポンジ)からなる縦形筒状濾材4を配置し、両筒状濾材3,4間に環状の空間5を有せしめた二重筒状態となし、空気取入口9から吸引された空気は先ず第一濾材であるところの連続気泡状合成樹脂筒状濾材4を透過し、大きい塵芥が除去され、次に環状空間5を経て第二濾材であるところの乾式濾材3を透過する間に、第一濾材で除去しきれなかつた小さい塵芥を取り除き清浄空気として流出口8より送り出されてゆく点。」
オ 引用文献5
(ア)引用文献5の記載
令和3年2月22日付けで当審から通知した拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献5(実公昭42-2315号公報)には、次の事項が記載されている。
a 「従来、塵埃の多い場所に使用する空気濾過器は濾過エレメントを複数個直列に連設することによつて捕塵効果を上げていたが、空気の流通抵抗が大きくかつ初段の濾過エレメントが目詰りを生じ易く、またその構造が大きくなる欠点を避けることができなかつた。この考案は、以上の欠点を除くためになされたもので、合成樹脂製帯状スポンジシートを円筒状に形成して構成した目が粗くて通気抵抗の小さいかつ洗滌などにより再生可能な一次濾過エレメントと濾紙、布等を菊花状に形成して構成した目が細かくて通気抵抗の大きい二次濾過エレメントを時に一次濾過エレメントを洗滌に際して取り外し容易なる構造でもつて同心的に配置することにより濾過器の構造を小さく、かつ流入抵抗を小さくさらに捕塵効果が大きくなるようにしたものである。つぎに図面についてこの考案の実施例を説明する。1は外ケース、2は外ケース1の胴部に設けた流入口、3は外ケース1の上端に形成した段部、4は側面に多数の通孔5を有する内ケースで、この内ケース4はその上端に設けた鍔6を環状パツキン7を介して外ケース1の段部3に密着して支承されている。8は外ケース1と内ケース4との間に形成された空間、9は目が粗く通気性の良い合成樹脂製帯状スポンジシートよりなる洗滌再生可能な一次濾過エレメントで、この一次濾過エレメント9は多数の通孔10を有する円筒11を囲繞して内ケース4に嵌挿されるものである。12は目の細かい布、濾紙等よりなる二次濾過エレメントで、この二次濾過エレメント12は多数の通孔13を有する内筒14を菊花状に囲繞した後、上下2枚の端板15,16によつて内筒14に固定された後、パツキン17を介して内ケース4上に支持される。18は環状パツキン材19を介して上端板15上に密着固定された外ケース1の蓋でこの蓋18に設けた流出口20は内筒14の空間21と連通するようになつている。塵埃を含んだ空気は流入口2より流入し外ケース1と内ケース4とによつて構成される空間8を通つて一次濾過エレメント9の全外周より流入するが、この際粒子の大きい塵埃が捕塵される。一次濾過エレメント9を通過した空気は、空間22を介して二次濾過エレメント12に流入するがその際残りの塵埃は完全に捕塵される。二次濾過エレメント12を通過した空気は空間21を介して流出口20より流出するものである。」(第1欄第22行~第2欄第26行)
(イ)引用文献5に記載された技術的事項
上記(ア)から見て、引用文献5には、次の技術的事項(以下「引用技術的事項5」という。)が記載されている。
「塵埃の多い場所に使用する空気濾過器において、合成樹脂製帯状スポンジシートを円筒状に形成して構成した目が粗くて通気抵抗の小さいかつ洗滌などにより再生可能な一次濾過エレメントと濾紙、布等を菊花状に形成して構成した目が細かくて通気抵抗の大きい二次濾過エレメントを時に一次濾過エレメントを洗滌に際して取り外し容易なる構造でもつて同心的に配置することにより濾過器の構造を小さく、かつ流入抵抗を小さくさらに捕塵効果が大きくなるようにしたものであって、目が粗く通気性の良い合成樹脂製帯状スポンジシートよりなる洗滌再生可能な一次濾過エレメントである一次濾過エレメント9は、多数の通孔10を有する円筒11を囲繞して内ケース4に嵌挿され、目の細かい布、濾紙等よりなる二次濾過エレメントである二次濾過エレメント12は、多数の通孔13を有する内筒14を菊花状に囲繞した後、上下2枚の端板15,16によつて内筒14に固定された後、パツキン17を介して内ケース4上に支持され、塵埃を含んだ空気は流入口2より流入し外ケース1と内ケース4とによつて構成される空間8を通つて一次濾過エレメント9の全外周より流入し、この際粒子の大きい塵埃が捕塵され、一次濾過エレメント9を通過した空気は、空間22を介して二次濾過エレメント12に流入し、その際残りの塵埃は完全に捕塵され、二次濾過エレメント12を通過した空気は空間21を介して流出口20より流出する点。」
カ 引用文献7
(ア)引用文献7の記載
本審決で新たに引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献7(特開2014-218894号公報)には、次の事項が記載されている。
a 「【技術分野】【0001】本発明は、特にサイクロン式(旋回式)のエアクリーナに関する。」
b 「【背景技術】【0002】従来、例えば砂塵等が多く舞い上がる現場で稼動する建設機械においては、エンジンへ供給される吸気用のエアクリーナとして、サイクロン式のものが知られている。図6には、そのようなサイクロン式のエアクリーナ100が示されている。エアクリーナ100は、内部に図示略のフィルタエレメントが収容された円筒状のボディ101、およびボディ101の開口部分を塞ぐサービスカバー102を備えている。ボディ101には、空気を取り入れる入口管103と、空気をエンジン側に送出する出口管104とが設けられ、サービスカバー102には、バキュエータバルブ105が設けられている。【0003】入口管103は、その中心がボディ101の径方向の中心線C1に対して寸法Lだけオフセットして設けられており、空気がボディ101の内部に対して接線方向から流入し、ボディ101の内周とフィルタエレメントの外周との間を旋回する(図中の点線参照)。出口管104は、ボディ101の一端である入口管103側の端部に取り付けられており、ボディ101の中心軸線C2に沿って延出している。バキュエータバルブ105は、ボディ101の他端側にあって、その中心線C1に沿って下方に垂設されている。【0004】入口管103から入り込んでボディ101内で旋回する空気は、多くの砂塵を含んでいるが、これらの砂塵の何割かは、空気の旋回による遠心分離作用により、ボディ101の内周壁側に寄せられて旋回し、バキュエータバルブ105に落とし込まれる。ここで、バキュエータバルブ105下端のバルブ部106は、弾性を有した合成ゴム等からなり、バキュエータバルブ105内に集められた砂塵が所定量になると、その重みでバルブ部106が押し広げられ、砂塵を外部へと排出する。一方、砂塵の大半が除かれた旋回空気は、フィルタエレメントを軸中心側に向けて通過し、砂塵が除かれた状態で出口管104から送出される。」
c 「【0018】図1には、本実施形態の整流構造を備えたエアクリーナ1の断面図が示されている。図1において、エアクリーナ1は、ブルドーザや油圧ショベル等の建設機械に搭載されたディーゼルエンジンの吸気に用いられるものであり、円筒状のボディ10と、ボディ10の一端側の開口部分を塞ぐ出口側部材20と、他端側の開口部分を塞ぐサービスカバー30とを備えている。【0019】続きを表示(全15行)ボディ10は、金属製または樹脂製の外装ケース11を備えて構成されている。外装ケース11の一端側寄りの外周部分には、外部の空気を取り込む入口管12が接続されている。この入口管12のボディ10に対する配置位置は、図6に示す従来のものと同様、ボディ10の中心線に対してオフセットされており、入口管12から吸引された空気は、ボディ10内で旋回する。【0020】ボディ10の内部には、円筒状のアウターエレメント13が収容され、さらにアウターエレメント13の内部には、円筒状でより小径なインナーエレメント14が収容されている。旋回による遠心分離作用にて除かれなかった空気中の砂塵等は、これらのエレメント13,14にて捕捉される。【0021】出口側部材20には、ボディ10の開口部分にあてがわれる閉塞部21と、閉塞部21の中央からボディ10の中心軸線C2(インナーエレメント14の中心軸線と同じ)に沿って突出した出口管22とが設けられている。閉塞部21および出口管22は金属製とされてロストワックス製法や鋳造等により一体ものとして成型されるか、樹脂製として一体に成型される。【0022】出口側部材20の閉塞部21には、ボディ10の外装ケース11内に嵌合して接続される筒状のボディ嵌合部23と、内方に向かって突出した第1筒状部24と、その内側の第2筒状部25とが設けられている。第1筒状部24は、入口管12の入口開口15を覆う位置まで内方に延出しており、入口管12から入り込んだ空気は、アウターエレメント13に直接当たることなく、平坦な表面を有した第1筒状部24の外周に沿って流れるようになり、こうすることで旋回流がスムーズに生じるようになっている。【0023】このような第1、第2筒状部24,25の間の環状の凹部は、アウターエレメント13の一端側が取り付けられるアウターエレメント嵌合部26とされ、アウターエレメント13が嵌合部材16を介してアウターエレメント嵌合部26に嵌合される。アウターエレメント13の他端側は、周方向に沿った嵌合溝17Aを有する樹脂製のアウターキャップ17に嵌合しており、このアウターキャップ17で塞がれている。【0024】また、第2筒状部25の内周部分は、インナーエレメント14の一端側が取り付けられるインナーエレメント嵌合部27とされ、インナーエレメント14が保持部材18を介してインナーエレメント嵌合部27に嵌合されている。保持部材18は断面コ字形とされ、環状の保持溝18Aを有している。この保持溝18A内にインナーエレメント14が挿入され、挟持されている。インナーエレメント14の他端側も、周方向の沿った嵌合溝19Aを有する樹脂製のインナーキャップ19に嵌合しており、このインナーキャップ19で塞がれている。」
d 「【0028】このようなサービスカバー30には、図6で示したバキュエータバルブが従来と同様に設けられているが、図1ではその図示を省略してある。ボディ10内において、外装ケース11とアウターエレメント13との間では、入口管12から吸い込まれた空気が旋回しながらバキュエータバルブ側に向かい、空気中に含まれる大半の砂塵等が旋回時の遠心分離作用によって分離され、バキュエータバルブによって捕捉される。【0029】以下には、インナーエレメント14の内部に設けられた本実施形態の整流構造について説明する。ボディ10内で旋回していた空気は、各エレメント13,14を軸中心側に向かって通過し、筒状のインナーエレメント14の内部空間を通って出口管22へ流れる。従来、インナーエレメント14内を流れる空気には旋回成分が残っており、出口管22を流れる空気の流速分布が均一とはならず、MAFセンサ60での計測にばらつきが生じていた。そこで、本実施形態では、そのような旋回成分を取り除くために、インナーエレメント14の内部に整流装置50が配置されている。」
e 図1は、次のものである。
「」
図1からは、上記dの記載も踏まえると、以下の点が看取される。
(a)「入口管12」は「ボディ10」の一端側に設けられ、「サービスカバー30」は「ボディ10」の他端側に設けられる点。
f 図6は、次のものである。
「」
(イ)引用文献7の記載から認められる事項
a 図6の左側の図からは、上記(ア)bの記載も踏まえると、以下の点が看取される。
(a)「入口管103」が空気を取り込む方向からの平面視で、「入口管103」は「ボディ101の中心軸線C2」に乗っていない点。
b 上記(ア)cの段落[0019]には、「入口管12のボディ10に対する配置位置は、図6に示す従来のものと同様、ボディ10の中心線に対してオフセットされており、入口管12から吸引された空気は、ボディ10内で旋回する。」と記載されている。
c 上記aのとおり、図6からは、「入口管103」が空気を取り込む方向からの平面視で、「入口管103」は「ボディ101の中心軸線C2」に乗っていないことが看取されるから、段落[0019]の上記記載は、「入口管12」が空気を取り込む方向からの平面視で、「入口管12」は「ボディ10の中心軸線C2」に乗っていないことを意味していると解される。
(ウ)引用文献7に記載された技術的事項
上記(ア)及び(イ)から見て、引用文献7には、次の技術的事項(以下「引用技術的事項7」という。)が記載されている。
「サイクロン式(旋回式)のエアクリーナであって、エアクリーナ1は、ブルドーザや油圧ショベル等の建設機械に搭載されたディーゼルエンジンの吸気に用いられるものであり、円筒状のボディ10と、ボディ10の一端側の開口部分を塞ぐ出口側部材20と、他端側の開口部分を塞ぐサービスカバー30とを備え、ボディ10は、金属製または樹脂製の外装ケース11を備えて構成され、外装ケース11の一端側寄りの外周部分には、外部の空気を取り込む入口管12が接続されており、この入口管12のボディ10に対する配置位置は、ボディ10の中心線に対してオフセットされており、入口管12が空気を取り込む方向からの平面視で、入口管12がボディ10の中心軸線C2に乗っておらず、入口管12から吸引された空気は、ボディ10内で旋回し、続きを表示(全12行)ボディ10の内部には、円筒状のアウターエレメント13が収容され、さらにアウターエレメント13の内部には、円筒状でより小径なインナーエレメント14が収容され、旋回による遠心分離作用にて除かれなかった空気中の砂塵等は、これらのエレメント13,14にて捕捉され、ボディ10の中心軸線C2は、インナーエレメント14の中心軸線と同じであり、出口側部材20の閉塞部21には、内方に向かって突出した第1筒状部24と、その内側の第2筒状部25とが設けられ、第1、第2筒状部24,25の間の環状の凹部は、アウターエレメント13の一端側が取り付けられるアウターエレメント嵌合部26とされ、アウターエレメント13が嵌合部材16を介してアウターエレメント嵌合部26に嵌合され、第2筒状部25の内周部分は、インナーエレメント14の一端側が取り付けられるインナーエレメント嵌合部27とされ、インナーエレメント14が保持部材18を介してインナーエレメント嵌合部27に嵌合されており、入口管12がボディ10の一端側に設けられ、サービスカバー30がボディ10の他端側に設けられ、サービスカバー30には、バキュエータバルブが設けられ、ボディ10内において、外装ケース11とアウターエレメント13との間では、入口管12から吸い込まれた空気が旋回しながらバキュエータバルブ側に向かい、空気中に含まれる大半の砂塵等が旋回時の遠心分離作用によって分離され、バキュエータバルブによって捕捉され、ボディ10内で旋回していた空気は、各エレメント13,14を軸中心側に向かって通過し、筒状のインナーエレメント14の内部空間を通って出口管22へ流れる点。」
(3)引用発明1との対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「ディーゼルエンジン21」は、「土木機械」の動力源であることが明らかであるから、本件補正発明の「動力源であるエンジン」に相当する。
イ 引用発明1において「エアクリーナ10」が「外部の空気を取り込んで、空気中の塵埃を除去して排出し、エンジン等に供給する気流濾過装置であ」る点は、本件補正発明において「エアクリーナ」が「前記エンジンに供給する空気を濾過する」点に相当する。
ウ 引用発明1の「エアクリーナ10」の「外筒フィルタ12」は、本件補正発明の「エアクリーナ」の「アウターエレメント」に相当する。
そして、引用発明1の「エアクリーナ10」の「外筒フィルタ12」は、「筐体11の内部」に「配置され」たものであって、「円形保持部材123」を備えており、「円形保持部材123」が「環状突起部17の外周面に対して、着脱自在に取り付けられて」いるものであるから、引用発明1の「エアクリーナ10」における「環状突起部17の外周面」は、本件補正発明の「エアクリーナ」における「本体部の内部の一の支持部」に相当する。
してみれば、引用発明1の「エアクリーナ10」の「筐体11の内部」に「配置され」、「円形保持部材123」が「環状突起部17の外周面に対して、着脱自在に取り付けられて」いる「アウターエレメント」は、本件補正発明の「エアクリーナ」の「本体部の内部の一の支持部に支持されたアウターエレメント」に相当する。
エ 引用発明1の「エアクリーナ10」の「内筒フィルタ13」は、本件補正発明の「エアクリーナ」の「インナーエレメント」に相当する。
また、引用発明1の上記「内筒フィルタ13」が「外筒フィルタ12で濾過された空気をさらに濾過するものであ」る点は、本件補正発明の「インナーエレメント」が「該アウターエレメントの下流側で」ある点に相当する。
さらに、引用発明1においては、上記「内筒フィルタ13」が「環状保持部材133」を備え、「環状保持部材133が、環状突起部17の内周面に対して嵌合し、固定されて」いるから、引用発明1の「環状突起部17の内周面」は、本件補正発明の「他の支持部」に相当する。
してみれば、引用発明1の「内筒フィルタ13」が、「外筒フィルタ12で濾過された空気をさらに濾過するもの」であるとともに、「環状保持部材133」を備えており、「環状保持部材133が、環状突起部17の内周面に対して嵌合し、固定されて」いる点は、本件補正発明の「インナーエレメント」が、「該アウターエレメントの下流側で他の支持部に支持される」点に相当する。
オ 引用発明1は、「外筒フィルタ12で濾過された空気」を「内筒フィルタ13」で「さらに濾過する」ことで、「濾過効率を向上させ」、「外部から取り込んだ空気に含まれる塵埃等を確実に除去でき、空気の清浄度を向上でき」るものである。
したがって、引用発明1の「内筒フィルタ13」は、上流側の「外筒フィルタ12」が除去できなかった塵埃をさらに除去するためのものであるから、「外筒フィルタ12」では除去できない塵埃を除去できるもの、すなわち、「外筒フィルタ13」と同程度又はそれ以上に小さい塵埃を補捉可能なものであることは明らかである。
この点は、本件補正発明において「インナーエレメント」が「該アウターエレメントと同程度又はそれ以上に小さい塵埃を捕捉可能」である点に相当する。
カ 引用発明1の「吸気口15」は、「外部の空気を筐体11の内部に取り込む上流側配管」であるから、本件補正発明の「空気」を「取り込」む「空気導入部」に相当する。
また、引用発明1の「排気口16」は、「外筒フィルタ12および内筒フィルタ13で濾過された空気を排気する下流側配管」であるから、本件補正発明の「空気排出部」に相当する。
そして、引用発明1において、上記「吸気口15」が「取り込」んだ「外部の空気」が「外筒フィルタ12の外周側面に対して流れ込むようになっており」、「外筒フィルタ12および内筒フィルタ13で濾過された空気」が上記「排気口16」によって「排気」されることは、本件補正発明において、「空気導入部から取り込まれた空気」が「前記アウターエレメントと前記インナーエレメントとを通過して空気排出部より排出され」る点に相当する。
キ 引用発明1において、「外筒フィルタ12」の「円形保持部材123」は「環状突起部17の外周面に対して、着脱自在に取り付けられており」、「内筒フィルタ13」の「環状保持部材133」は「環状突起部17の内周面に対して嵌合し、固定されて」いる。そして、「内筒フィルタ13」は、「外筒フィルタ12の交換時に、汚れた空気が下流側に進入するのを防止するもの」である。
「内筒フィルタ13」が「外筒フィルタ12の交換時に、汚れた空気が下流側に進入するのを防止する」ためには、「外筒フィルタ12」を交換のために取り外した際に、「内筒フィルタ13」が取り付けられたままになっている必要があることは明らかであるから、引用発明1において「外筒フィルタ12」は「内筒フィルタ13」が環状突起部17の内周面に対して固定されたままの状態で脱着可能に構成されていることは明らかであり、この点は本件補正発明の「前記アウターエレメントは、前記インナーエレメントが前記他の支持部に支持されたままで脱着可能に構成される」点に相当する。
ク 引用発明1においては、「内筒フィルタ13の内径寸法は、排気口16の内径寸法と略同一寸法」であることができる。そして、「内筒フィルタ13から排気口16への空気の流れにおいて」は、「乱流等を生じることがなく、空気の流れに整流効果を与えることができ」るから、「内筒フィルタ13」の「内径寸法」と「排気口16」の「内径寸法」とが「略同一寸法」である場合には、「内筒フィルタ13」における「排気口16」側の端部と、「排気口16」における「内筒フィルタ13」側の端部とは、空気の流れが乱れることのないよう、内面が略面一となるように対向するものと解される。
そして、「内筒フィルタ13」は「筒状」であるところ、その中心軸が「内筒フィルタ13」の内面よりも内側にあることは明らかであるから、上記の場合には、「内筒フィルタ13」の中心軸は、「排気口16」における「内筒フィルタ13」側の端部の内面よりも内側を通ると解される。
このことは、本件補正発明の「前記空気排出部は、前記インナーエレメントの中心軸に重なるように形成される」ことに相当する。
ケ 引用発明1の「土木機械」と、本件補正発明の「ショベル」とは、「土木機械」である点で共通する。
したがって、本件補正発明と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「動力源であるエンジンと、前記エンジンに供給する空気を濾過するエアクリーナと、を備え、前記エアクリーナは、本体部の内部の一の支持部に支持されたアウターエレメントと、前記本体部の内部の該アウターエレメントの下流側で他の支持部に支持されるとともに該アウターエレメントと同程度又はそれ以上に小さい塵埃を捕捉可能なインナーエレメントと、を含み、空気導入部から取り込まれた空気が前記アウターエレメントと前記インナーエレメントとを通過して空気排出部より排出され、前記アウターエレメントは、前記インナーエレメントが前記他の支持部に支持されたままで脱着可能に構成され、前記空気排出部は、前記インナーエレメントの中心軸に重なるように形成される、土木機械。」
<相違点>
(相違点1)
本件補正発明は、「土木機械」が「下部走行体と、前記下部走行体に旋回機構を介して搭載された上部旋回体と」「を備え」た「ショベル」であり、「エンジン」が「上部旋回体に設置された」ものであるのに対し、引用発明1は、「土木機械」の種類及び「エンジン」の位置が特定されていない点。
(相違点2)
本件補正発明では、「空気導入部」が「前記アウターエレメントの中心軸に重ならないように形成され」、「空気導入部から取り込まれた空気がらせん流を形成」するのに対し、引用発明1では、「吸気口15」が「ケース本体11Aの中心に対して偏心して配置されており、空気が、外筒フィルタ12の外周側面に対して流れ込むようになって」いるものの、「外筒フィルタ12」との位置関係は特定されておらず、「吸気口15」が「取り込」んだ「空気」が「らせん流を形成」することも特定されていない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
土木機械の技術分野において、下部走行体と前記下部走行体に旋回機構を介して搭載された上部旋回体とを備え、上部旋回体にエンジンを設置したショベルは、例えば引用技術的事項2等にあるとおり周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
引用発明1において、土木機械に上記周知技術1を適用し、もって相違点1に係る本件補正発明の構成に至ることは、当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2について
引用技術的事項7の「入口管12」は、「空気」を「吸引」するものであるから、本件補正発明の「空気導入部」に相当する。
また、引用技術的事項7の「円筒状のアウターエレメント13」と当該「アウターエレメント13の内部」に「収容され」た「円筒状でより小径なインナーエレメント14」とは、「空気中の砂塵等」を「捕捉」するものであるから、それぞれ、本件補正発明の「アウターエレメント」及び「インナーエレメント」に相当する。
さらに、引用技術的事項7においては、「入口管12がボディ10の一端側に設けられ、サービスカバー30がボディ10の他端側に設けられ、サービスカバー30には、バキュエータバルブが設けられ」ており、「入口管12から吸い込まれた空気が旋回しながらバキュエータバルブ側に向かい、空気中に含まれる大半の砂塵等が旋回時の遠心分離作用によって分離され、バキュエータバルブによって捕捉され」る。すなわち、引用技術的事項7において、「入口管12から吸い込まれた空気」は、「旋回しながら」、「ボディ10の一端側」から「ボディ10の他端側」に向かって移動している。このことは、本件補正発明において「空気導入部から取り込まれた空気がらせん流を形成」することに相当する。
加えて、円筒状のアウターフィルタの内側に円筒状のインナーフィルタを配置したエアクリーナにおいては、通常、アウターフィルタとインナーフィルタとは同心円状に配置されるものであるところ(例えば、引用発明1(上記(2)ア(イ)参照。)、引用技術的事項3(上記(2)ウ(イ)参照。)、引用技術的事項5(上記(2)オ(イ)参照。)等。)、引用技術的事項7においても、「ボディ10の一端側の開口部分を塞ぐ出口側部材20」の「閉塞部21」に、「内方に向かって突出した第1筒状部24と、その内側の第2筒状部25とが設けられ」、「第1、第2筒状部24,25の間の環状の凹部」である「アウターエレメント嵌合部26」に「アウターエレメント13」が「嵌合され」、「第2筒状部25の内周部分」である「インナーエレメント嵌合部27」に「インナーエレメント14」が「嵌合され」ている、すなわち、「第2筒状部25」の外周部分には「アウターエレメント13」が「嵌合され」、この「第2筒状部25」の「内周部分」には「インナーエレメント14」が「嵌合され」ているから、「アウターエレメント13」、「第2筒状部25」、及び「インナーエレメント14」は、いずれも同心円状に配置されていると解される。
そして、引用技術的事項7の「入口管12」は、「空気を取り込む方向からの平面視で」、「ボディ10の中心軸線C2に乗っておらず」、また、「ボディ10の中心軸線C2は、インナーエレメント14の中心軸線と同じであ」り、さらに、「インナーエレメント14」と「アウターエレメント13」とは、同心円状に配置されているから、引用技術的事項7の「入口管12」は、「空気を取り込む方向からの平面視で」、「アウターエレメント13」の「中心軸線」に「乗って」いない。すなわち、引用技術的事項7の「入口管12」は、「空気を取り込む方向からの平面視で」、「アウターエレメント13」の「中心軸線」と重ならない。
ここで、引用発明1と引用技術的事項7とは、いずれもエンジンのエアクリーナにアウターエレメントとインナーエレメントとを設ける技術に関するものであり、両者は属する技術分野が共通する。また、引用技術的事項7は、エアクリーナであって、空気の清浄度を向上することを技術課題とする点で、引用発明1(上記(2)ア(イ)参照。)と共通する。
加えて、引用文献1には、「このエアクリーナでは、外部から取り込まれた空気を内筒フィルタ及び外筒フィルタの二重構造で濾過しているため、排出される空気の清浄度をより向上させることができる、という利点がある。」(上記(2)ア(ア)b参照。)と記載されており、空気の清浄度の向上を、手段の付加により実現する態様について言及されている。したがって、引用発明1においては、空気の清浄度をより向上させるために手段を付加することの動機付けがあるといえる(なお、遠心分離によって空気中の塵埃を捕捉することは、例えば引用技術的事項3、7等にあるように、エアクリーナの技術分野における周知の技術である。)。
そうすると、引用発明1に、遠心分離を用いて空気中の塵埃を捕捉する技術である引用技術的事項7を適用し、「吸気口15」を「外筒フィルタ12」の中心軸に重ならないように形成し、「吸気口15」から「取り込」んだ「空気」が「らせん流を形成」する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ したがって、本件補正発明は、引用発明1、引用技術的事項7、及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
エ 予備的検討
上記(3)オにおいて示したとおり、引用発明1はインナーエレメントがアウターエレメントと同程度又はそれ以上に小さい塵埃を捕捉可能と解されるものであり、この点において本件補正発明と相違するものではないが、仮に、引用発明1においてインナーエレメントがアウターエレメントと同程度又はそれ以上に小さい塵埃を捕捉可能なものに特定されていないと考えられる場合についても、念のため検討しておく。
塵埃を良好に捕捉できるようにするために、アウターエレメントとインナーエレメントとを備えたエアクリーナにおいて、下流側に配置されるインナーエレメントを、上流側に配置されるアウターエレメント以上に小さい塵埃を補捉可能なものとすることは、例えば引用技術的事項4、5等にあるとおり周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明1と上記周知技術2とは、いずれも、エアクリーナにアウターエレメントとインナーエレメントとを設ける技術に関するものであり、両者は属する技術分野が共通する。また、両者は、いずれも空気の清浄度を向上することを技術課題とするものであり、技術課題の点においても共通している。したがって、引用発明1に当該周知技術2を適用することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、本件補正発明は、引用発明1、引用技術的事項7、並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)請求人の主張について
請求人は、令和3年4月26日に提出した意見書において、「引用文献1には、"・・・この吸気口15は、ケース本体11Aの中心に対して偏心して配置されている"(段落0019参照)と記載されている一方で、"本発明の一実施形態に係るエアクリーナの断面図"として開示された図1では、"吸気口15"の断面構造がエアクリーナの断面図にも描写されています。しかも、"吸気口15"は、"ケース本体11A"の上端において接続されているため、"吸気口15"が"ケース本体11A"の中心に対して偏心して配置されているという程度にまで、描写されていません。」と述べている。そして、「当業者が引用文献1に触れたとしても、引用文献1における図面と明細書の記載事項が技術的に一致していないことから、・・・内容を正確且つ適切に理解することができません。」とし、「審判長殿の引用文献1に関する認定は全く当たらないものと思料致します。そればかりか、記載事項が技術的に一致していない引用文献1は主引用例としては不適格であり、引用文献1を主引用例とする本願発明の進歩性を否定する論理の構築は全く成立し得ないものと思料致します。」と主張している。
しかしながら、一般に、願書に添付した図面は発明の理解を助けるためのものであって、いわゆる設計図面のように図示された形状や寸法を正確に表したものではない。そして、当業者であれば、引用文献1の図1がそのような図面であることを踏まえて、「ケース本体11A」内における「外筒フィルタ12」及び「内筒フィルタ13」の大まかな位置や取り付け構造、「ケース本体11A」と「吸気口15」、「排気口16」の接続関係等を理解し、上記(2)ア(イ)の内容を把握することができるから、請求人の主張は失当である。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件発明について
1 本件発明
令和3年4月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年1月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 当審からの拒絶の理由
令和3年2月22日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由3は、本件発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された技術的事項、及び引用文献2等に記載された周知技術に基づいて、又は、引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された技術的事項、引用文献2等に記載された周知技術、及び引用文献4、5等に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献
上記2の拒絶の理由で引用された引用文献1~5の記載並びに記載された発明及び技術的事項は、前記第2の[理由]2(2)ア~オに記載したとおりである。
4 引用発明1との対比
本件発明と引用発明1とを対比すると、上記第2の[理由]2(3)ア~キ、ケのとおりである。
したがって、本件発明と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「動力源であるエンジンと、前記エンジンに供給する空気を濾過するエアクリーナと、を備え、前記エアクリーナは、本体部の内部の一の支持部に支持されたアウターエレメントと、前記本体部の内部の該アウターエレメントの下流側で他の支持部に支持されるとともに該アウターエレメントと同程度又はそれ以上に小さい塵埃を捕捉可能なインナーエレメントと、を含み、空気導入部から取り込まれた空気が前記アウターエレメントと前記インナーエレメントとを通過して空気排出部より排出され、前記アウターエレメントは、前記インナーエレメントが前記他の支持部に支持されたままで脱着可能に構成される、土木機械。」
<相違点>
(相違点A)
本件発明は、「土木機械」が「下部走行体と、前記下部走行体に旋回機構を介して搭載された上部旋回体と」「を備え」た「ショベル」であり、「エンジン」が「上部旋回体に設置された」ものであるのに対し、引用発明1は、「土木機械」の種類及び「エンジン」の位置が特定されていない点。(上記第2の[理由]2(3)で挙げた相違点1と同じ。)
(相違点B)
本件発明では、「空気導入部から取り込まれた空気がらせん流を形成」するのに対し、引用発明1では、「吸気口15」が「取り込」んだ「空気が、外筒フィルタ12の外周側面に対して流れ込むようになって」いるものの、「吸気口15」が「取り込」んだ「空気」が「らせん流を形成」するとは特定されていない点。
5 判断
以下、相違点について検討する。
(1)相違点Aについて
上記第2の[理由]2(4)アのとおり、土木機械の技術分野において、下部走行体と前記下部走行体に旋回機構を介して搭載された上部旋回体とを備え、上部旋回体にエンジンを設置したショベルは、例えば引用技術的事項2等にあるとおり周知の技術(周知技術1)である。
引用発明1において、土木機械に上記周知技術1を適用し、もって相違点1に係る本件発明の構成に至ることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点Bについて
引用技術的事項3の「未浄気入口(5)」は、本件発明の「空気導入部」に相当する。
また、引用技術的事項3の「二重筒構造のフィルタエレメント(2)を構成」する「筒状のアウターフィルタエレメント(21)」と「筒状のインナーフィルタエレメント(22)」とは、「未浄気(18)の微細な塵埃」を「捕捉」するものであるから、それぞれ、本件発明の「アウターエレメント」及び「インナーエレメント」に相当する。
さらに、引用技術的事項3において、「未浄気室(3)を未浄気(18)が旋回し」、「未浄気室(3)の始端部(3a)から終端部(3b)に向けて移動する」ことは、本件発明において「空気導入部から取り込まれた空気がらせん流を形成」することに相当する。
そして、引用発明1と引用技術的事項3とは、いずれもエンジンのエアクリーナにアウターエレメントとインナーエレメントとを設ける技術に関するものであり、両者は属する技術分野が共通する。また、引用技術的事項3は、エアクリーナであって、空気の清浄度を向上することを技術課題とする点で、引用発明1(上記(2)ア(イ)参照。)と共通する。
加えて、引用文献1には、「このエアクリーナでは、外部から取り込まれた空気を内筒フィルタ及び外筒フィルタの二重構造で濾過しているため、排出される空気の清浄度をより向上させることができる、という利点がある。」(上記第2の[理由]2(2)ア(ア)b参照。)と記載されており、空気の清浄度の向上を、手段の付加により実現する態様について言及されている。したがって、引用発明1においては、空気の清浄度をより向上させるために手段を付加することの動機付けはあるといえる(なお、遠心分離によって空気中の塵埃を捕捉することは、上記第2の[理由]2(4)イで検討したとおり、例えば引用技術的事項3、7等にあるように、エアクリーナの技術分野における周知の技術である。)。
そうすると、引用発明1に遠心分離を用いて空気中の塵埃を捕捉する技術である引用技術的事項3を適用し、「空気導入部から取り込まれた空気がらせん流を形成」する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(3)したがって、本件発明は、引用発明1、引用技術的事項3、及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)予備的検討
上記第2の[理由]2(4)エのとおり、仮に、引用発明1においてインナーエレメントがアウターエレメントと同程度又はそれ以上に小さい塵埃を捕捉可能なものに特定されていないとしても、塵埃を良好に捕捉できるようにするために、アウターエレメントとインナーエレメントとを備えたエアクリーナにおいて、下流側に配置されるインナーエレメントを、上流側に配置されるアウターエレメント以上に小さい塵埃を補捉可能なものとすることは、上記第2の[理由]2(4)エで検討したように、例えば引用技術的事項4、5等にあるとおり周知の技術(周知技術2)である。そして、引用発明1と上記周知技術2とは、いずれも、エアクリーナにアウターエレメントとインナーエレメントとを設ける技術に関するものであり、両者は、属する技術分野が共通する上、いずれも空気の清浄度を向上することを技術課題とするものであり、技術課題の点においても共通しているから、引用発明1に当該周知技術2を適用することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、本件発明は、引用発明1、引用技術的事項3、並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-002962