特許拒絶査定不服審判
2023-013804
ショベル
- 審判番号
- 2023-013804
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-549361
- 請求日
- 2023年08月16日
- 審決日
- 2026年04月27日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友重機械工業株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 岡崎 彦哉
- 審判官 家田 政明
- 分類
- P18 .113-WZ (E02F) / P18 .121-WZ (E02F) / P18 .537-WZ (E02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-549361「ショベル」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 2日国際公開、WO2020/067303〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年9月26日(優先権主張 平成30年9月27日)を国際出願日とする日本語特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和3年 3月22日(受付日):上申書及び手続補正書
令和4年12月 5日付け :拒絶理由通知
令和5年 2月 8日(受付日):意見書及び手続補正書
同年 5月 9日付け :拒絶査定
同年 8月16日(受付日):審判請求書及び手続補正書
令和7年 3月17日付け :拒絶理由通知
同年 5月16日(受付日):意見書及び手続補正書
同年 8月22日付け :拒絶理由通知(最後)
同年10月27日(受付日):意見書及び手続補正書
第2 本願補正について
1 本願補正の内容
令和7年10月27日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本願補正」という。)は、同年5月16日に提出された手続補正書により補正された本願補正前の特許請求の範囲の請求項1~12を補正して、本願補正後の特許請求の範囲の請求項1~12とするものである。
そのうち、本願補正前の特許請求の範囲の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)、及び、本願補正後の請求項3に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりである。なお、下線は本願補正により補正された箇所を示している。
(1)本願補正前
「 【請求項3】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられ、ブーム、前記ブームの先端に取り付けられるアーム、及び前記アームの先端に取り付けられるエンドアタッチメントを有する作業アタッチメントと、
前記作業アタッチメントを駆動する油圧シリンダと、
ショベルの姿勢状態に関するデータを取得する取得装置と、
前記取得装置により取得されるデータに基づき、前記作業アタッチメントの動作に関する所定の制御を行う制御装置と、を備え、
前記所定の制御は、前記作業アタッチメントに所定の動作を自動的に行わせるマシンコントロール制御、又は、ショベルの所定の不安定状態を抑制するように前記作業アタッチメントの動作を制御する安定化制御であり、
前記制御装置は、前記エンドアタッチメントの姿勢状態と、前記油圧シリンダの圧力の測定値から導出される前記油圧シリンダの推力の実測値、及び前記アームの先端に既知の前記エンドアタッチメントが取り付けられていると仮定したときの前記油圧シリンダの推力の予測値とに基づき、前記エンドアタッチメントに関する情報を取得し、取得した前記エンドアタッチメントに関する情報に基づき、前記所定の制御における制御パラメータを変更することにより、前記所定の制御時の前記作業アタッチメントの応答特性を補正する、又は、取得した前記エンドアタッチメントに関する情報に基づき、前記所定の制御における制御パラメータを変更することにより、オペレータによる前記作業アタッチメントの操作内容、又は、自動運転機能による前記作業アタッチメントの動作指令を補正する、
ショベル。」
(2)本願補正後
「 【請求項3】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられ、ブーム、前記ブームの先端に取り付けられるアーム、及び前記アームの先端に取り付けられるエンドアタッチメントを有する作業アタッチメントと、
前記作業アタッチメントを駆動する油圧シリンダと、
ショベルの姿勢状態に関するデータを取得する取得装置と、
前記取得装置により取得されるデータに基づき、前記作業アタッチメントの動作に関する所定の制御を行う制御装置と、を備え、
前記所定の制御は、前記作業アタッチメントに所定の動作を自動的に行わせるマシンコントロール制御、又は、ショベルの所定の不安定状態を抑制するように前記作業アタッチメントの動作を制御する安定化制御であり、
前記制御装置は、
前記エンドアタッチメントの姿勢状態と、前記油圧シリンダの圧力の測定値から導出される前記油圧シリンダの推力の実測値、及び予め規定される基準のエンドアタッチメントに基づく前記作業アタッチメントを駆動する前記油圧シリンダの推力の予測値とに基づき、前記エンドアタッチメントに関する情報を取得し、
取得した前記エンドアタッチメントに関する情報に基づき、前記所定の制御における制御パラメータを変更することにより、前記所定の制御時の前記作業アタッチメントの応答特性を補正する、又は、取得した前記エンドアタッチメントに関する情報に基づき、前記所定の制御における制御パラメータを変更することにより、オペレータによる前記作業アタッチメントの操作内容、若しくは、自動運転機能による前記作業アタッチメントの動作指令を補正する、
ショベル。」
2 本願補正についての検討
(1)補正の目的
本願補正は、本願発明のショベルの制御装置が、エンドアタッチメントに関する情報を取得するにあたり、「前記エンドアタッチメントの姿勢状態と、前記油圧シリンダの圧力の測定値から導出される前記油圧シリンダの推力の実測値、及び前記アームの先端に既知の前記エンドアタッチメントが取り付けられていると仮定したときの前記油圧シリンダの推力の予測値とに基づき」としていたところを、令和7年8月22日付け拒絶理由通知(最後)において、「前記アームの先端に既知の前記エンドアタッチメントが取り付けられていると仮定したときの前記油圧シリンダの推力の予測値」に係る構成が不明確である旨通知した点を、「前記エンドアタッチメントの姿勢状態と、前記油圧シリンダの圧力の測定値から導出される前記油圧シリンダの推力の実測値、及び予め規定される基準のエンドアタッチメントに基づく前記作業アタッチメントを駆動する前記油圧シリンダの推力の予測値とに基づき」とすることで明確にしたものであって、特許法第17条の2第5項第4号で掲げる明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
(2)新規事項の有無
本願補正により補正された事項は、願書に最初に添付した明細書(以下、特許請求の範囲及び図面とあわせて「当初明細書等」という。)の段落【0068】に記載されているから、本願補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
(3)本願補正のまとめ
したがって、請求項3に係る本願補正は適法になされたものである。
よって、以下では本願補正発明について、検討及び判断する。
第3 当審において通知した拒絶理由(最後)の概要
令和7年8月22日付けの拒絶理由通知(最後)で通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
理由1(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の請求項1、3~8、11~12の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2(進歩性)
この出願の請求項3、5~8、11~12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
・引用文献1 国際公開第2015/025986号
第4 当審において通知した拒絶理由(最後)の理由2(進歩性)について
(1)引用文献、引用発明等
ア 引用文献の記載
(ア)記載事項
本願の出願前に頒布された引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した)。
a 「【0027】
図1に示されるように、作業車両100として、本例においては、おもに油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0028】
作業車両100は、車両本体1と、油圧により作動する作業機2とを有する。なお、後述するように、作業車両100には掘削制御を実行する制御システム200(図3)が搭載されている。
【0029】
車両本体1は、旋回体3と、走行装置5とを有する。走行装置5は、一対の履帯5Crを有する。作業車両100は、履帯5Crの回転により走行可能である。なお、走行装置5が車輪(タイヤ)を有していてもよい。
【0030】
旋回体3は、走行装置5の上に配置され、かつ走行装置5により支持されている。旋回体3は、旋回軸AXを中心として走行装置5に対して旋回可能である。」
b 「【0034】
作業機2は、旋回体3に支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8と、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とを有する。ブーム6は旋回体3に接続されている。アーム7はブーム6に接続されている。バケット8はアーム7に接続されている。
【0035】
ブームシリンダ10は、ブーム6を駆動する。アームシリンダ11は、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動する。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12のそれぞれは、作動油によって駆動される油圧シリンダである。」
c 「【0044】
なお、本例においては、ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12のストローク長さをそれぞれブームシリンダ長、アームシリンダ長およびバケットシリンダ長とも称する。また、本例においては、ブームシリンダ長、アームシリンダ長、及びバケットシリンダ長を総称してシリンダ長データLとも称する。なお、角度センサを用いてストローク長さを検出する方式を採用することも可能である。」
d 「【0052】
本例においては、グローバル座標演算部23は、2つの設置位置P1a及び設置位置P1bに基づいて旋回体方位データQを生成する。旋回体方位データQは、設置位置P1aと設置位置P1bとで決定される直線がグローバル座標の基準方位(例えば北)に対してなす角に基づいて決定される。旋回体方位データQは、旋回体3(作業機2)が向いている方位を示す。グローバル座標演算部23は、後述する表示コントローラ28に基準位置データP及び旋回体方位データQを出力する。
【0053】
IMU24は、旋回体3に設けられる。本例においては、IMU24は、運転室4の下部に配置される。旋回体3において、運転室4の下部に高剛性のフレームが配置される。IMU24は、そのフレーム上に配置される。なお、IMU24は、旋回体3の旋回軸AX(基準位置P2)の側方(右側又は左側)に配置されてもよい。IMU24は、車両本体1の左右方向に傾斜する傾斜角θ4と、車両本体1の前後方向に傾斜する傾斜角θ5とを検出する。
・・・
【0055】
図3は、実施形態に基づく制御システム200の構成を示す機能ブロック図である。
図3に示されるように、制御システム200は、作業機2を用いる掘削処理を制御する。本例においては、掘削処理の制御は、ならい制御を有する。
【0056】
ならい制御は、バケットの刃先が設計地形に沿って移動することによりバケットの刃先に当接する土砂を掻き均し、平らな設計地形に対応する面を作るならい作業を自動制御することを意味し、制限掘削制御とも称される。
【0057】
ならい制御は、オペレータによるアーム操作があり、バケットの刃先と設計地形との距離および刃先の速度が基準内である場合に実行される。オペレータは、ならい制御中は通常、ブームを下げる方向に常にブームを操作しつつ、アームを操作する。
【0058】
制御システム200は、ブームシリンダストロークセンサ16と、アームシリンダストロークセンサ17と、バケットシリンダストロークセンサ18と、アンテナ21と、グローバル座標演算部23と、IMU24と、操作装置25と、作業機コントローラ26と、圧力センサ66及び圧力センサ67と、制御弁27と、方向制御弁64と、表示コントローラ28と、表示部29と、センサコントローラ30と、マンマシンインターフェース部32とを有する。」
e 「【0079】
センサコントローラ30は、ブームシリンダストロークセンサ16の検出結果に基づいて、ブームシリンダ長を算出する。ブームシリンダストロークセンサ16は、周回動作に伴うパルスをセンサコントローラ30に出力する。センサコントローラ30は、ブームシリンダストロークセンサ16から出力されたパルスに基づいて、ブームシリンダ長を算出する。
【0080】
同様に、センサコントローラ30は、アームシリンダストロークセンサ17の検出結果に基づいて、アームシリンダ長を算出する。センサコントローラ30は、バケットシリンダストロークセンサ18の検出結果に基づいて、バケットシリンダ長を算出する。
・・・
【0084】
上記算出結果である傾斜角θ1、θ2、θ3と、基準位置データP、旋回体方位データQ、及びシリンダ長データLに基づいて、作業車両100のブーム6、アーム7およびバケット8の位置を特定することが可能となり、バケット8の3次元位置を示すバケット位置データを生成することが可能である。
【0085】
なお、ブーム6の傾斜角θ1、アーム7の傾斜角θ2、及びバケット8の傾斜角θ3は、シリンダストロークセンサで検出されなくてもよい。ロータリーエンコーダのような角度検出器でブーム6の傾斜角θ1が検出されてもよい。角度検出器は、旋回体3に対するブーム6の屈曲角度を検出して、傾斜角θ1を検出する。同様に、アーム7の傾斜角θ2がアーム7に取り付けられた角度検出器で検出されてもよい。バケット8の傾斜角θ3がバケット8に取り付けられた角度検出器で検出されてもよい。」
f 「【0149】
図6は、実施形態に基づくならい制御を実行する制御システム200の構成を示す機能ブロック図である。
【0150】
図6に示されるように、制御システム200が有する作業機コントローラ26および表示コントローラ28の機能ブロックが示される。
【0151】
ここでは、主にならい制御(制限掘削制御)によるブーム6の介入制御について主に説明する。上記で説明したように、介入制御は、バケット8の刃先8aが目標設計地形Uに侵入しないように、ブーム6の動きを制御するものである。
【0152】
具体的には、作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標設計地形Uとバケット8の刃先8aの位置を示すバケット位置データSとに基づいて、目標設計地形Uとバケット8との距離dを算出する。そして、距離dに応じてバケット8が目標設計地形Uに近づく速度が小さくなるように、ブーム6の介入制御による制御弁27への制御指令CBIを出力する。」
g 「【0160】
バケット位置データ生成部28Bは、傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4、θ5と、基準位置データP、旋回体方位データQ、及びシリンダ長データLに基づいて、バケット8の3次元位置を示すバケット位置データSを生成する。なお、刃先8aの位置情報は、メモリ等の接続式記録装置から転送されてもよい。
【0161】
本例においては、バケット位置データSは、刃先8aの3次元位置を示すデータである。
【0162】
目標設計地形データ生成部28Cは、バケット位置データ生成部28Bより取得するバケット位置データSと目標施工情報格納部28Aに格納する後述する目標施工情報Tを用いて、掘削対象の目標形状を示す目標設計地形Uを生成する。
・・・
【0165】
目標設計地形データ生成部28Cは、作業機コントローラ26に対して目標設計地形Uに関するデータを出力する。また、バケット位置データ生成部28Bは、生成したバケット位置データSを作業機コントローラ26に出力する。
【0166】
作業機コントローラ26は、推定速度決定部52と、距離取得部53と、目標速度決定部54と、作業機制御部57と、記憶部58とを有する。
【0167】
作業機コントローラ26は、操作装置25の操作指令(圧力MA、MT)および表示コントローラ28からバケット位置データSおよび目標設計地形Uを取得し、制御弁27への制御指令CBIを出力する。また、作業機コントローラ26は、必要に応じてセンサコントローラ30およびグローバル座標演算部23から演算処理に必要な各種パラメータを取得する。」
h 「【0259】
図15は、実施形態に基づく目標速度決定部54の処理ブロックの概略を説明する図である。
【0260】
図15に示されるように、目標速度決定部54は、制限速度算出部54Aと、調整部54Bと、演算部54Cとを含む。
【0261】
制限速度算出部54Aは、図14で説明した制限速度テーブルを用いた演算処理を実行する。
【0262】
具体的には、制限速度算出部54Aは、距離取得部53で取得されるバケット8の刃先8aと目標設計地形Uとの距離dに応じた作業機2全体の制限速度Vcy_lmtを、制限速度テーブルに従って算出する。
【0263】
調整部54Bは、調整テーブルに基づいて制限速度Vcy_lmtを調整する。
調整テーブルとしては、例えば、縦軸が制限速度Vcy_lmtに乗算する係数K(≦1)、横軸がPPC圧との関係を示すテーブルを用いることができる。
【0264】
ここで、調整テーブルは、PPC圧が大きくなるにしたがって係数Kが線形に上昇するテーブルが示されている。そして、PPC圧が所定値Yの場合に係数Kは1となる。PPC圧が所定値Y以上の場合には係数Kは1を維持する。
【0265】
調整部54Bは、調整テーブルに従い、PPC圧が所定値Y未満の場合に係数Kに基づいて制限速度Vcy_lmtを調整し、PPC圧が所定値Y以上の場合には、制限速度Vcy_lmtを調整しない。
【0266】
調整部54Bは、第2操作レバーの操作量に対応するPPC圧に応じた係数Kを取得し、取得した係数Kと制限速度算出部54Aで算出された制限速度Vcy_lmtとを乗算して制限速度を調整する。
【0267】
演算部54Cは、制限速度Vcy_lmtと、アーム推定速度Vc_amから得られるアーム推定速度Vc_amの垂直速度成分Vcy_amと、バケット推定速度Vc_bktから得られるバケット推定速度Vc_bktの垂直速度成分Vcy_bktとに基づいてブーム目標速度Vc_bm_lmtを算出する。
【0268】
具体的には、図15で説明した方式に従って、ブーム目標速度Vc_bm_lmtを算出する。
【0269】
そして、介入制御部57は、目標速度決定部54で決定されたブーム目標速度Vc_bm_lmtに従って制御指令CBIを制御弁27に出力する。」
i 「【0294】
実施形態の変形例2においては、目標速度決定部54を目標速度決定部54Qに変更する。
【0295】
目標速度決定部54Qは、バケット8の種別に従って制限速度テーブルを調整する。
図18は、実施形態の変形例2に基づく目標速度決定部54Qの処理ブロックの概略を説明する図である。
【0297】
バケット種別取得部54Fは、入力データに基づいてバケット8の種別を判断する。本例においては、バケット8が「大」、「小」の2種類の種別を判断する。
【0298】
バケット8が「大」とはバケット重量が重いことを示す。バケット8が「小」とはバケット重量が軽いことを示す。
【0299】
バケット種別取得部54Fに入力される入力データは、一例として、作業車両100に対してバケット8を装着した際にオペレータがマンマシンインターフェース部32の入力部321を介して設定するバケット8の種別データに基づくものである。
【0300】
たとえば、表示部322において表示されるバケット重量設定の画面において、オペレータがバケット8の重量を設定することが可能である。
【0301】
また、バケット8の重量は、オペレータによって手動で選択されなくても、油圧シリンダ60(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)の内部に発生する圧力に基づいて自動的に検知されてもよい。この場合、例えば作業車両100が特定の姿勢で、かつバケット8が宙に浮いている状態で、油圧シリンダ60の内部に発生する圧力が検知される。検知された油圧シリンダ60内部の圧力に基づいて、アーム7に装着されたバケット8の重量を特定することも可能である。入力データとして、バケット種別取得部54Fが当該検知された油圧シリンダ60内部の圧力のデータを受けて、当該データに基づいて判断するようにしても良い。
【0302】
調整部54Dは、バケット種別取得部54Fで取得されたバケット種別に従う調整テーブルに基づいて制限速度Vcy_lmtを調整する。
【0303】
具体的には、調整部54Dは、縦軸が制限速度Vcy_lmtに乗算する係数K(≦1)、横軸がPPC圧との関係を示す調整テーブルT1,T2を有する。調整テーブルT1,T2は、バケット8の種別によってそれぞれ異なる。
【0304】
調整テーブルT1,T2は、バケット8が「小」、「大」の場合にそれぞれ対応して設けられる。ここで、調整テーブルT1,T2は、PPC圧が大きくなるにしたがって係数Kが線形に上昇するテーブルが示されている。同じPPC圧に対して調整テーブルT1の方が調整テーブルT2よりも係数Kの値が大きい。
【0305】
調整テーブルT1,T2は、PPC圧が所定値Yの場合に係数Kは1となる。PPC圧が所定値Y以上の場合には係数Kは1を維持する。所定値Y未満の場合に係数Kは1未満となる。
【0306】
調整部54Dは、バケット種別取得部54Fで取得されたバケット種別に従って調整テーブルT1,T2のいずれか一方を選択する。そして、調整部54Dは、選択した調整テーブルに基づいて、PPC圧が所定値Y未満の場合に調整テーブルに従う係数Kに基づいて制限速度Vcy_lmtを調整し、PPC圧が所定値Y以上の場合には、制限速度Vcy_lmtを調整しない。
【0307】
そして、演算部54Cは、上記したように制限速度Vcy_lmtと、アーム推定速度Vc_am、バケット推定速度Vc_bktとに基づいてアーム推定速度Vc_amの垂直速度成分Vcy_amとバケット推定速度Vc_bktの垂直速度成分Vcy_bktを算出し、ブーム目標速度Vc_bm_lmtを算出する。
【0308】
そして、介入制御部57は、目標速度決定部54Qで決定されたブーム目標速度Vc_bm_lmtに従って制御指令CBIを制御弁27に出力する。
【0309】
これにより、制限速度Vcy_lmtの値が小さくなるため介入制御によるブーム6のブーム目標速度の値を小さくすることが可能となる。ブーム目標速度の値が小さくなることにより、ブーム6の上下動を抑制してバケット8の刃先8aを安定させてハンチングを抑制することが可能となる。」
(イ)認定事項
a 上記「(ア)d」の【0058】には、「制御システム200は、ブームシリンダストロークセンサ16と、アームシリンダストロークセンサ17と、バケットシリンダストロークセンサ18と」を有することが記載されているところ、当該3つの「ストロークセンサ」に関して、上記「(ア)e」の【0079】及び【0080】には、「センサコントローラ30」が、「ブームシリンダストロークセンサ16」、「アームシリンダストロークセンサ17」及び「バケットシリンダストロークセンサ18」の「検出結果に基づいて、」「ブームシリンダ長」、「アームシリンダ長」及び「バケットシリンダ長」を「算出する」ことが示されている。
b 一方、上記「(ア)c」の【0044】には、「角度センサを用いてストローク長さを検出する」との記載があり、かつ、上記「(ア)e」の【0085】には、「ロータリーエンコーダのような角度検出器」によって、「ブーム6の傾斜角θ1」が、「アーム7に取り付けられた角度検出器で」「アーム7の傾斜角θ2」が、「バケット8に取り付けられた角度検出器で」「バケット8の傾斜角θ3」が検出されることが記載されているから、上記【0058】の「制御システム200」が有する、上記3つの「ストロークセンサ」を、これらの3つの「角度検出器」に置き換えることにより、その出力によって上記の傾斜角θ1~3に加えて「ブームシリンダ長」、「アームシリンダ長」及び「バケットシリンダ長」が算出されることが記載されていると解することができる。
c さらに、上記【0044】には、「ブームシリンダ長、アームシリンダ長、及びバケットシリンダ長を総称してシリンダ長データLと称」することが、上記【0079】及び【0080】には、「センサコントローラ30」が、「ブームシリンダ長」、「アームシリンダ長」及び「バケットシリンダ長」を算出することが記載されているから、上記「制御システム200」が有する「センサコントローラ30」は、上記3つの「角度検出器」により検出された傾斜角θ1~3から、「シリンダ長データL」を算出するものと解することができる。
d したがって、引用文献1には、上記【0058】と、段落【0044】、【0079】、【0080】及び【0085】の記載を併せみると、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項」という。)。
(認定事項)
「制御システム200は、旋回体3に対するブーム6の屈曲角度を検出して、傾斜角θ1を検出する角度検出器と、アーム7に取り付けられたアーム7の傾斜角θ2を検出する角度検出器と、バケット8に取り付けられたバケット8の傾斜角θ3を検出する角度検出器と、グローバル座標演算部23と、IMU24と、操作装置25と、作業機コントローラ26と、制御弁27とを有し、センサコントローラ30は、ブーム6の傾斜角θ1、アーム7の傾斜角θ2、及び、バケット8の傾斜角θ3によりシリンダ長データLを算出すること。」
(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)からみて、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「作業車両100は、車両本体1と、油圧により作動する作業機2とを有し、掘削制御を実行する制御システム200が搭載され(【0028】)、
車両本体1は、旋回体3と、走行装置5とを有し(【0029】)、
旋回体3は、走行装置5の上に配置され、かつ走行装置5により支持され(【0030】)、
作業機2は、旋回体3に支持され、ブーム6と、アーム7と、バケット8と、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とを有し(【0034】)、
ブームシリンダ10は、ブーム6を駆動し、アームシリンダ11は、アーム7を駆動し、バケットシリンダ12は、バケット8を駆動し、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12のそれぞれは、作動油によって駆動される油圧シリンダであり(【0035】)、
グローバル座標演算部23は、表示コントローラ28に基準位置データP及び旋回体方位データQを出力し(【0052】)、
IMU24は、旋回体3に設けられ、車両本体1の左右方向に傾斜する傾斜角θ4と、車両本体1の前後方向に傾斜する傾斜角θ5とを検出し(【0053】)、
ならい制御は、バケットの刃先が設計地形に沿って移動することによりバケットの刃先に当接する土砂を掻き均し、平らな設計地形に対応する面を作るならい作業を自動制御することを意味し(【0056】)、
ならい制御は、オペレータによるアーム操作があり、バケットの刃先と設計地形との距離および刃先の速度が基準内である場合に実行され(【0057】)、
制御システム200は、旋回体3に対するブーム6の屈曲角度を検出して、傾斜角θ1を検出する角度検出器と、アーム7に取り付けられたアーム7の傾斜角θ2を検出する角度検出器と、バケット8に取り付けられたバケット8の傾斜角θ3を検出する角度検出器と、グローバル座標演算部23と、IMU24と、操作装置25と、作業機コントローラ26と、制御弁27とを有し、センサコントローラ30は、ブーム6の傾斜角θ1、アーム7の傾斜角θ2、及び、バケット8の傾斜角θ3によりシリンダ長データLを算出し(認定事項)、
制御システム200は、作業機コントローラ26を有し(【0150】)、
作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標設計地形Uとバケット8の刃先8aの位置を示すバケット位置データSとに基づいて、目標設計地形Uとバケット8との距離dを算出し、距離dに応じてバケット8が目標設計地形Uに近づく速度が小さくなるように、ブーム6の介入制御による制御弁27への制御指令CBIを出力し(【0152】)、
バケット位置データ生成部28Bは、傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4、θ5と、基準位置データP、旋回体方位データQ、及びシリンダ長データLに基づいて、バケット8の3次元位置を示すバケット位置データSを生成し(【0160】)、
作業機コントローラ26は、目標速度決定部54と、作業機制御部57と、記憶部58とを有し(【0166】)、
作業機2全体の制限速度Vcy_lmtを、制限速度テーブルに従って算出し(【0262】)、
作業車両100が特定の姿勢で、かつバケット8が宙に浮いている状態で、油圧シリンダ60の内部に発生する圧力が検知され、検知された油圧シリンダ60内部の圧力に基づいて、アーム7に装着されたバケット8の重量を特定し、入力データとして、バケット種別取得部54Fが当該検知された油圧シリンダ60内部の圧力のデータを受けて、当該データに基づいて判断するようにし(【0301】)、
目標速度決定部54Qは、バケット8の種別に従って制限速度テーブルを調整し(【0295】)、
バケット種別取得部54Fは、入力データに基づいてバケット8の「大」、「小」の2種類の種別を判断し(【0297】)、
調整部54Dは、バケット種別取得部54Fで取得されたバケット種別に従う調整テーブルに基づいて制限速度Vcy_lmtを調整し(【0302】)、
調整部54Dは、縦軸が制限速度Vcy_lmtに乗算する係数K(≦1)、横軸がPPC圧との関係を示す調整テーブルT1,T2を有し、調整テーブルT1,T2は、バケット8の種別によってそれぞれ異なり(【0303】)、
調整テーブルT1,T2は、バケット8が「小」、「大」の場合にそれぞれ対応して設けられ、同じPPC圧に対して調整テーブルT1の方が調整テーブルT2よりも係数Kの値が大きく(【0304】)、
調整テーブルT1,T2は、PPC圧が所定値Yの場合に係数Kは1となり、PPC圧が所定値Y以上の場合には係数Kは1を維持し、所定値Y未満の場合に係数Kは1未満となり(【0305】)、
調整部54Dは、選択した調整テーブルに基づいて、PPC圧が所定値Y未満の場合に調整テーブルに従う係数Kに基づいて制限速度Vcy_lmtを調整し、PPC圧が所定値Y以上の場合には、制限速度Vcy_lmtを調整せず(【0306】)、
介入制御部57は、目標速度決定部54Qで決定されたブーム目標速度Vc_bm_lmtに従って制御指令CBIを制御弁27に出力し(【0308】)、
制限速度Vcy_lmtの値が小さくなるため介入制御によるブーム6のブーム目標速度の値を小さくすることが可能となり、ブーム目標速度の値が小さくなることにより、ブーム6の上下動を抑制してバケット8の刃先8aを安定させてハンチングを抑制することが可能となる(【0309】)、
作業車両100としての油圧ショベル(【0027】)。」
(2)対比
ア 本願補正発明と引用発明との対比
(ア)引用発明の「走行装置5」は、その「上に」「旋回体3」が「配置され」るから、本願補正発明の「下部走行体」に相当し、引用発明の「旋回体3」は、本願補正発明の「下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体」に相当する。
(イ)引用発明の「ブーム6」、「アーム7」、「バケット8」は、「アーム7」が「ブーム6」に取り付けられ、「バケット8」が「アーム7」に取り付けられるという技術常識も踏まえると、それぞれ本願補正発明の「ブーム」、「ブームの先端に取り付けられるアーム」、「アームの先端に取り付けられるエンドアタッチメント」に相当し、引用発明の「作業機2」は、「旋回体3に支持されて」おり、「ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有」するものであるから、本願補正発明の「上部旋回体に取り付けられ」る「作業アタッチメント」に相当する。
(ウ)引用発明の「ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12」は、本願補正発明の「作業アタッチメントを駆動する油圧シリンダ」に相当する。
(エ)引用発明の「旋回体3に対するブーム6の屈曲角度」である「傾斜角θ1」、「アーム7の傾斜角θ2」及び「バケット8の傾斜角θ3」は、これらの角度を用いて「旋回体3」に対する「バケット8」の位置を定めることができると解されるから、本願補正発明の「ショベルの姿勢状態に関するデータ」に相当する。
また、引用発明の「センサコントローラ30」は、「ブーム6の傾斜角θ1、アーム7の傾斜角θ2、及び、バケット8の傾斜角θ3」について、それぞれを検出する「角度検出器」から入力し、「シリンダ長データLを算出」することは明らかであるから、本願補正発明の「ショベルの姿勢状態に関するデータを取得する取得装置」に相当する。
(オ)引用発明において、「作業機コントローラ26」が、「ならい制御」において、「ブーム6の介入制御による制御弁27への制御指令CBIを出力」することは、これにより「バケット8」の「目標設計地形Uに近づく速度が小さくなる」との動作が生じるから、本願補正発明の「作業アタッチメントの動作に関する所定の制御」に相当する。
また、引用発明の上記「ブーム6の介入制御による制御弁27への制御指令CBIを出力」することは、「傾斜角θ1、θ2、θ3」及び「シリンダ長データL」を含むデータに基づいて生成されたものである、「バケット8の3次元位置を示すバケット位置データS」に基づいて実行されるから、引用発明は、本願補正発明の「取得装置により取得されるデータに基づき、」「作業アタッチメントの動作に関する所定の制御を行う」に相当する構成を有する。
さらに、これらのことからみて、引用発明の「作業機コントローラ26」を有する「制御システム200」は、本願補正発明の「取得装置により取得されるデータに基づき、」「作業アタッチメントの動作に関する所定の制御を行う制御装置」に相当する。
(カ)引用発明の「ならい制御」は、「バケットの刃先が設計地形に沿って移動することによりバケットの刃先に当接する土砂を掻き均し、平らな設計地形に対応する面を作るならい作業を自動制御する」ものであるから、引用発明の「ならい制御」において、「ブーム6の介入制御による制御弁27への制御指令CBIを出力」することは、本願補正発明の「所定の制御は、」「作業アタッチメントに所定の動作を自動的に行わせるマシンコントロール制御」であることに相当する。
また、引用発明の「ブーム6の上下動を抑制してバケット8の刃先8aを安定させてハンチングを抑制すること」は、本願補正発明の「ショベルの所定の不安定状態を抑制する」ことに相当する。
そして、引用発明において、「ハンチングを抑制する」ために行う制御である「介入制御部57は、目標速度決定部54Qで決定されたブーム目標速度Vc_bm_lmtに従って制御指令CBIを制御弁27に出力する」ことは、本願補正発明の「作業アタッチメントの動作を制御する安定化制御」に相当する。
(キ)引用発明の「作業車両100が特定の姿勢で、かつバケット8が宙に浮いている状態」は、「バケット8」自体の「宙に浮いている」との「ブーム6」、「アーム7」により規定される「バケット8」の態様と、「作業車両100」の「姿勢」により決せられる「バケット8」の対地における「姿勢」とを含む「状態」を示すと解されるから、本願補正発明の「エンドアタッチメントの姿勢状態」に相当する。
そして、引用発明の「油圧シリンダ60の内部に発生する圧力」、「アーム7に装着されたバケット8の重量」は、それぞれ本願補正発明の「油圧シリンダの圧力の測定値」、「エンドアタッチメントに関する情報」に相当し、引用発明の「検知された油圧シリンダ60内部の圧力に基づいて、アーム7に装着されたバケット8の重量を特定」することは、本願補正発明の「油圧シリンダの圧力の測定値から導出される」「油圧シリンダの推力の実測値」「に基づき、」「エンドアタッチメントに関する情報を取得」することに相当する。
(ク)引用発明の「作業機コントローラ26」が有する「目標速度決定部54Q」は、「バケット8の種別に従って制限速度テーブルを調整」し、これにより「ブーム目標速度Vc_bm_lmtに従って制御指令CBIを制御弁27に出力」され、かつ、「作業機コントローラ26」は「制御システム200」が有するものであるから、引用発明の「制御システム200」は、本願補正発明の「制御装置」に相当する。
また、引用発明の上記「バケット8の種別に従って制限速度テーブルを調整」することは、当該「バケット8の種別」が「バケット8の重量を特定」することにより「判断」されたものであるから、本願補正発明の「取得した」「エンドアタッチメントに関する情報に基づき、」「所定の制御における制御パラメータを変更すること」に相当する。
さらに、引用発明の「ブーム目標速度Vc_bm_lmtに従って制御指令CBIを制御弁27に出力」することは、「バケット8の種別に従って制限速度テーブルを調整」し、これにより当該「ブーム目標速度Vc_bm_lmt」が変更されると解されるから、本願補正発明の「取得した」「エンドアタッチメントに関する情報に基づき、」「所定の制御時の」「作業アタッチメントの応答特性を補正する」ことに相当する。
(ケ)引用発明において、「ならい制御は、オペレータによるアーム操作があり、バケットの刃先と設計地形との距離および刃先の速度が基準内である場合に実行され」ることにより「ブーム目標速度Vc_bm_lmtに従って制御指令CBIを制御弁27に出力」することは、本願補正発明の「オペレータによる前記作業アタッチメントの操作内容」「を補正する」ことに相当する。
また、引用発明において、「ならい制御は、バケットの刃先が設計地形に沿って移動することによりバケットの刃先に当接する土砂を掻き均し、平らな設計地形に対応する面を作るならい作業を自動制御する」際に「ブーム目標速度Vc_bm_lmtに従って制御指令CBIを制御弁27に出力」することは、本願補正発明の「自動運転機能による前記作業アタッチメントの動作指令を補正する」ことに相当する。
(コ)引用発明の「作業車両100としての油圧ショベル」は、本願補正発明の「ショベル」に相当する。
以上を整理すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「下部走行体と、
下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
上部旋回体に取り付けられ、ブーム、ブームの先端に取り付けられるアーム、及びアームの先端に取り付けられるエンドアタッチメントを有する作業アタッチメントと、
作業アタッチメントを駆動する油圧シリンダと、
ショベルの姿勢状態に関するデータを取得する取得装置と、
取得装置により取得されるデータに基づき、作業アタッチメントの動作に関する所定の制御を行う制御装置と、を備え、
所定の制御は、作業アタッチメントに所定の動作を自動的に行わせるマシンコントロール制御、又は、ショベルの所定の不安定状態を抑制するように前記作業アタッチメントの動作を制御する安定化制御であり、
制御装置は、
エンドアタッチメントの姿勢状態と、油圧シリンダの圧力の測定値から導出される油圧シリンダの推力の実測値に基づき、エンドアタッチメントに関する情報を取得し、
取得したエンドアタッチメントに関する情報に基づき、所定の制御における制御パラメータを変更することにより、所定の制御時の作業アタッチメントの応答特性を補正する、又は、取得したエンドアタッチメントに関する情報に基づき、前記所定の制御における制御パラメータを変更することにより、オペレータによる作業アタッチメントの操作内容、若しくは、自動運転機能による作業アタッチメントの動作指令を補正する、
ショベル。」
そして、両者は、以下の点で相違する。
<相違点>
エンドアタッチメントに関する情報を、
本願補正発明では、「エンドアタッチメントの姿勢状態と、油圧シリンダの圧力の測定値から導出される油圧シリンダの推力の実測値」に加えて、「予め規定される基準のエンドアタッチメントに基づく前記作業アタッチメントを駆動する前記油圧シリンダの推力の予測値」に基づいて取得しているのに対し、
引用発明では、「作業車両100が特定の姿勢で、かつバケット8が宙に浮いている状態で、油圧シリンダ60の内部に発生する圧力が検知され、検知された油圧シリンダ60内部の圧力に基づいて、アーム7に装着されたバケット8の重量を特定し、入力データとして、バケット種別取得部54Fが当該検知された油圧シリンダ60内部の圧力のデータを受けて、当該データに基づいて判断」しているものの、「予め規定される基準のエンドアタッチメントに基づく前記作業アタッチメントを駆動する前記油圧シリンダの推力の予測値」に基づいて取得するとの特定がなされていない点。
(3)検討・判断
上記相違点について検討する。
ア 引用発明は、作業機の操作速度の制限速度である「制限速度Vcy_lmt」に基づいて、所定の制御がなされるショベルである。
そして、引用発明の制限速度は、「作業車両100が特定の姿勢で、かつバケット8が宙に浮いている状態で、油圧シリンダ60の内部に発生する圧力が検知され、検知された油圧シリンダ60内部の圧力に基づいて、アーム7に装着されたバケット8の重量を特定し、入力データとして、バケット種別取得部54Fが当該検知された油圧シリンダ60内部の圧力のデータを受けて」、「入力データに基づいてバケット8の「大」、「小」の2種類の種別を判断し」、「作業機コントローラ26」の「調整部54D」が、その「バケット8の種別によってそれぞれ異な」る「調整テーブルT1,T2」に対応して「選択した調整テーブルに基づいて、PPC圧が所定値Y未満の場合に調整テーブルに従う係数Kに基づいて制限速度Vcy_lmtを調整し、PPC圧が所定値Y以上の場合には、制限速度Vcy_lmtを調整」しないものであり、「係数K(≦1)」を「制限速度Vcy_lmtに乗算」することにより調整されるものである。
イ 引用発明は、「バケット8の「大」、「小」の2種類の種別」によって異なる「調整テーブルT1,T2」を選択するために、「油圧シリンダ60の内部に発生する圧力が検知され、検知された油圧シリンダ60内部の圧力に基づいて、アーム7に装着されたバケット8の重量を特定し、入力データとして、バケット種別取得部54Fが当該検知された油圧シリンダ60内部の圧力のデータを受けて」、「入力データに基づいてバケット8の「大」、「小」の2種類の種別を判断」することに相当する機能を有するといえるところ、引用発明が、「検知された油圧シリンダ60内部の圧力」から得られる「アーム7に装着されたバケット8の重量」が、「「大」、「小」の2種類の種別」の何れに属することになるのかを判断するために必要な閾値等の基準を有しない限り、「バケット8の「大」、「小」の2種類の種別を判断」できないことは明らかである。
ウ よって、引用発明において、「バケット8の「大」、「小」の2種類の種別」の閾値となる重量として「大」と「小」の間の重量を有するバケットを予め規定される基準のバケットとし、その予め規定される基準のバケットを駆動する油圧シリンダの推力の予測値を、「入力データに基づいてバケット8の「大」、「小」の2種類の種別を判断」するために「検知された油圧シリンダ60内部の圧力」の比較の対象のための閾値として採用して、バケットの種別を判断することにより、「バケット8の「大」、「小」の2種類の種別」によって異なる「調整テーブルT1,T2」を選択することは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
エ そうすると、引用発明の「バケット8」及び「油圧シリンダ60」は、本願補正発明の「エンドアタッチメント」及び「作業アタッチメントを駆動する油圧シリンダ」に相当するので、引用発明において、「作業車両100が特定の姿勢で、かつバケット8が宙に浮いている状態で、油圧シリンダ60の内部に発生する圧力が検知され、検知された油圧シリンダ60内部の圧力に基づいて、アーム7に装着されたバケット8の重量を特定し、入力データとして、バケット種別取得部54Fが当該検知された油圧シリンダ60内部の圧力のデータを受けて、当該データに基づいて判断」することに加えて、予め規定される基準のエンドアタッチメントに基づく作業アタッチメントを駆動する油圧シリンダの推力の予測値に基づき、エンドアタッチメントに関する情報を取得するとして、本願補正発明の相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易である。
そして、そうしたことによる効果は、引用発明に照らしてみても、格別顕著なものとは認められない。
オ よって、引用発明に基いて、本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。
(4)請求人の主張について
ア 主張の概要
請求人は、令和7年10月27日付け意見書の「3.拒絶理由に対する意見」の「3.2 理由2(進歩性)」において、「引用文献1では、"検知された油圧シリンダ60内部の圧力に基づいて、アーム7に装着されたバケット8の重量を特定することも可能である"(段落0301参照)との記載からも分かる通り、油圧シリンダの圧力の実測値からバケット8の重量を特定し、所定の閾値を用いて、その重量が重いのか軽いのかを判断すれば済むことであり、審判長殿のご指摘のように、『既知の「バケット8の『大』、『小』の2種類の種別」のバケットが取り付けられているときの測定値』との比較を行う必要がないことは明らかです。
よって、引用文献1に依拠しても、当業者は、本願発明3には全く到達し得ません。」と主張する。
イ 主張に対する見解
引用発明は、引用発明のショベルに取り付けられている「バケット8の「大」、「小」の2種類の種別」によって異なる「調整テーブルT1,T2」を選択するために、「バケット種別取得部54Fは、入力データに基づいてバケット8の「大」、「小」の2種類の種別を判断」するものであり、その「バケット8の「大」、「小」の2種類の種別を判断」するためには、引用発明のショベルが、バケットの重量の「大」と「小」の間に、該「入力データ」との比較のための閾値等の基準を有することが必要なことは明らかである。
そして、引用発明においても、取り付けられている「バケット8の「大」、「小」の2種類の種別を判断」するために、バケットを駆動する「油圧シリンダ60内部の圧力に基づいて、アーム7に装着されたバケット8の重量を特定し」ており、その特定された測定値を上記閾値と比較して、取り付けられているバケットが「大」に属するか、「小」に属するか判断するものであるといえる。
そうすると、ショベルに取り付けられているバケットが「大」に属するか、「小」に属するか判断するための比較の対象が、ショベルのバケットを駆動するための油圧シリンダの内部の圧力であることから、引用発明の「油圧シリンダ60内部の圧力」が該閾値となるバケットを想定して、本願補正発明の「予め規定される基準のエンドアタッチメント」として設定し、その「予め規定される基準のエンドアタッチメントに基づく前記作業アタッチメントを駆動する前記油圧シリンダの推力の予測値」に基づき、「エンドアタッチメントに関する情報を取得」することにより、上記相違点に係る本願補正発明のような構成とすることが、当業者にとって容易であることは、上記「(3)イ~エ」で述べたとおりである。
よって、請求人の主張は上記(3)に示した判断を左右するものではなく、採用できない。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-013804