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特許拒絶査定不服審判

2020-000087

インターロイキン-10イムノコンジュゲート

審判番号
2020-000087
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-550540外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年01月06日
審決日
2022年06月07日
公報発行日
2022年11月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C12N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2016-550540「インターロイキン-10イムノコンジュゲート」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日国際公開、WO2015/117930、平成29年 3月 2日国内公表、特表2017-506075〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 8項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成27年 2月 3日(パリ条約による優先権主張 2014年 2月 6日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和 1年 8月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和 2年 1月 6日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。その後の当審における手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 3年 7月29日付け 拒絶理由通知書

令和 4年 2月 3日付け 意見書、手続補正書

第2 本願発明

本願の請求項1~52に係る発明は、令和 4年 2月 3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~52に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項1】
IgGクラス抗体と変異体IL-10分子との融合タンパク質であって、融合タンパク質は2つの同一の重鎖ポリペプチドと2つの同一の軽鎖ポリペプチドとを含み、かつ変異体IL-10分子は、野生型IL-10分子と比較して、IL-10受容体への変異体IL-10分子の結合親和性を低減させるアミノ酸変異を含み、前記変異体IL-10分子が、ヒトIL-10(配列番号1)の残基87に対応する位置でアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がI87Aであり、前記重鎖ポリペプチドのそれぞれが、IgGクラス抗体重鎖と、そのN末端にて前記IgGクラス抗体重鎖のC末端に融合している変異体IL-10単量体とを含み、前記IL-10受容体がヒトIL-10R1であり、前記IgGクラス抗体が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)と特異的に結合でき、融合タンパク質が、FAPと、表面プラズモン共鳴(SPR)により25℃にて測定した場合に、100pMより小さい親和性定数(KD)で結合できる、融合タンパク質。」

第3 当審で通知した拒絶の理由

令和 3年 7月29日付けで当審が通知した拒絶理由のうち理由1(進歩性)の概要は、請求項1~46に係る発明は、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2012/146628号
引用文献2:特表2012-504425号公報
引用文献3:J.Exp.Med.(2000)Vol.191,No.2,p.213-223

第4 引用文献の記載事項及び引用発明の認定

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当審の拒絶理由で引用文献1として引用した、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である国際公開第2012/146628号(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。下線は合議体による。)。

ア.「請求項1.第一の抗原結合部分、2つのサブユニットからなるFcドメイン、及びエフェクター部分を含み、1以下のエフェクター部分が存在するイムノコンジュゲート。

・・・・・・・・・・・・

請求項10.前記Fcドメインは、Fc受容体への結合を改変されるように、及び/又はエフェクター機能を改変されるように操作される、請求項1から9の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート。

請求項11.前記Fc受容体がFcγ受容体である、請求項10に記載のイムノコンジュゲート。

請求項12.前記エフェクター機能がADCCである、請求項10に記載のイムノコンジュゲート。

請求項13.前記改変される結合及び/又はエフェクター機能は、結合及び/又はエフェクター機能の減少である、請求項10に記載のイムノコンジュゲート。

請求項14.前記Fcドメインは、Fc受容体、特にFcγ受容体に対するFcドメインの結合を減少させる一以上のアミノ酸変異を含む、請求項13に記載のイムノコンジュゲート。

請求項15.前記アミノ酸変異が、位置P329でのアミノ酸置換である、請求項14に記載のイムノコンジュゲート。

請求項16.Fcドメインが、そのサブユニットの各々において、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む、請求項14又は15に記載のイムノコンジュゲート。

・・・・・・・・・・・・

請求項20.イムノコンジュゲートが第一及び第二の抗原結合部分を含む、請求項1から19の何れかに記載のイムノコンジュゲート。

請求項21.前記第一及び第二の抗原結合部分及び前記Fcドメインが免疫グロブリン分子の一部である、請求項20に記載のイムノコンジュゲート。

請求項22.前記免疫グロブリン分子がIgGクラスの免疫グロブリンである、請求項21に記載のイムノコンジュゲート。

請求項23.前記エフェクター部分が、免疫グロブリン重鎖の一方のカルボキシ末端のアミノ酸に、任意でリンカーペプチドを介して融合している、請求項20又は21に記載のイムノコンジュゲート。

・・・・・・・・・・・・

請求項25.前記第一の抗原結合部分又は前記第一及び前記第二の抗原結合部分が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、テネイシンCのA1ドメイン(TNC A1)、テネイシン-CのA2ドメイン(TNC A2)、フィブロネクチンのエキストラドメインB(EDB)、癌胎児性抗原(CEA)、及びメラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)からなる群から選択される抗原を指向する、請求項1から23の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート。

・・・・・・・・・・・・

請求項27.エフェクター部分がサイトカインである、請求項1から26の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート。

・・・・・・・・・・・・

請求項31.前記サイトカインがIL-10である、請求項27に記載のイムノコンジュゲート。

請求項32.請求項1から31の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチド。

請求項33.請求項32に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター。

請求項34.請求項32に記載の単離されたポリヌクレオチド、又は請求項33に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。

・・・・・・・・・・・・

請求項36.請求項34又は35に記載の宿主細胞を、イムノコンジュゲートの発現に適した条件下で培養すること、及び任意でイムノコンジュゲートを回収することを含む、請求項1から31の何れか一項に記載のイムノコンジュゲートを生成する方法。

請求項37.前記イムノコンジュゲートが請求項36に記載の方法により生成される、抗原結合部分、Fcドメイン及び単一エフェクター部分を含むイムノコンジュゲート。

請求項38.請求項1から31又は請求項37の何れか一項に記載のイムノコンジュゲートと薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。

請求項39.必要とする個体における疾患の治療における使用のための、請求項1から33又は請求項37の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート、又は請求項38に記載の薬学的組成物。

請求項40.必要とする個体における疾患の治療のための医薬の製造のための、請求項1から33又は請求項37の何れか一項に記載のイムノコンジュゲート、又は請求項38に記載の薬学的組成物。

・・・・・・・・・・・・

請求項43.前記疾患が炎症性疾患である、請求項39又は40に記載のイムノコンジュゲート又は薬学的組成物、又は請求項41に記載の方法。

請求項44.イムノコンジュゲートのエフェクター部分がIL-10である、請求項43に記載のイムノコンジュゲート、薬学的組成物又は方法。」(請求項1~44)

イ.「それにもかかわらず、当技術分野で公知の免疫グロブリン-サイトカインイムノコンジュゲートに関連した特定の欠点がある。例えば、これらのイムノコンジュゲートは、2つの免疫グロブリン重鎖の各々に結合された少なくとも一のサイトカインを有し、二価標的結合部分及び二つ以上のサイトカイン部分を持つイムノコンジュゲートを生じる(Chang et al.,Expert Opin Drug Discovery 4,181-194(2009)、又はOrtiz-Sanchez et al.,Expert Opin Biol Ther 8,609-632(2008)に総説される)。図1は、当技術分野で知られている従来の免疫グロブリン、サイトカインイムノコンジュゲートを示し、ここでサイトカインは、2本の抗体重鎖の各々のC末端に融合される。二以上のサイトカイン部分の存在のため、このようなイムノコンジュゲートは、各々のサイトカイン受容体に対して高い親和性を有し(例えば、IL-2の場合にはピコモル親和性)、従ってサイトカインが連結されている免疫グロブリンの標的抗原(nMの親和性)に対するよりも、サイトカイン受容体を発現する免疫エフェクター細胞にむしろ標的化される。更に、従来のイムノコンジュゲートは、イムノコンジュゲートのサイトカイン部分による末梢血中の免疫エフェクター細胞上のサイトカイン受容体の活性化から少なくとも部分的に生じる注入反応と関連することが知られている(例えば、King et al.,J Clin Oncol 22,4463-4473(2004)を参照)。」(第2頁第12行~第26行)

ウ.「本発明は、既知のイムノコンジュゲートに比較して、有効性の改善、活性の高い特異性、毒性の減少、及び血中半減期と安定性の改善を示す免疫グロブリン様イムノコンジュゲートを提供する。」(第3頁第14行~第16行)

エ.「図22.A)分析的SDS-PAGE(NuPAGE Novex Bis-Tris Mini Gel, インビトロジェン)、NuPAGE LDSサンプルバッファー(4×)、10分間70℃で加熱、MOPSバッファー、160V、60分、MWマーカーMark12、還元(1)及び非還元(2)4G8 IgG-IL-10M1の無染色標準物質(インビトロジェン、M)。B)1:1相互作用モデルに対して全体的に近似される、4G8 IgG-IL-10M1のヒトFAPに対するSPRにもとづく親和性決定(ProteOn XPR36)(チップ:GLM;リガンド:huFAP(500RU);分析物:FAP 4G8 IgG-IL-10M1 164kDa;分析物の濃度の範囲:10、2、0.4、0.08、0nM;会合時間:180s;解離時間:600s;流速:50μl/分;kon 6.68×105 1/Ms;koff:1.75×10-5 1/s;KD:26pM)。C)1:1相互作用モデルに対して全体的に近似される、4G8 IgG-IL-10M1のヒトIL-10R1に対するSPRにもとづく親和性決定(ProteOn XPR36)(チップ:NLC;リガンド:IL 10R1(1600RU);分析物:FAP 4G8 IgG-IL-10M1 164kDa;分析物の濃度の範囲:50、10、2、0.4、0.08、0nM;会合時間:180s;解離時間:600s;流速:50μl/分;kon:3.64×105 1/Ms;koff:2.96×10-4 1/s;KD:815pM)。」(第11頁第17行~第28行)

オ.「本明細書で使用しているように、用語「イムノコンジュゲート」は、1つ以下のエフェクター部分が存在することを条件として、1つのエフェクター部分、少なくとも一つの抗原結合部分及びFcドメインを含む融合ポリペプチド分子を指す。特定の実施態様では、イムノコンジュゲートは、1つのエフェクター部分、2つの抗原結合部分、及びFcドメインを含む。本発明による特定のイムノコンジュゲートは、一以上のリンカー配列により連結される、エフェクター部分、2つの抗原結合部分、及びFcドメインから本質的になる。抗原結合部分およびエフェクター部分は、様々な相互作用によって、本明細書に記載されるように様々な立体配置でFcドメインに結合することができる。特定の実施態様において、2つの抗原結合部分とFcドメインは、完全な免疫グロブリン分子を形成するような立体配置でお互いに連結される。本明細書で言及されるイムノコンジュゲートは、融合タンパク質であり、すなわち、イムノコンジュゲートの成分はペプチド結合により、直接又はリンカーペプチドを介して相互に連結されている。」(第13頁第26行~第14頁第5行)

カ.「本明細書で使用しているように、用語「サイトカイン」は、生物学的又は細胞性機能又はプロセス(例えば免疫、炎症および造血)を媒介および/または制御する分子を指す。本願明細書において使用する用語「サイトカイン」には、「リンホカイン」、「ケモカイン」、「モノカイン」及び「インターロイキン」が含まれる。有用なサイトカインの例には、GM-CSF、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIP-1α、MIP-1β、TGF-β、TNF-αおよびTNF-βが含まれるが、これに限定されるものではない。特定のサイトカインは、IL-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IFN-α及びIFN-γである。特定の実施態様において、サイトカインは、ヒトサイトカインである。本明細書で使用される用語「サイトカイン」はまた、Sauve et al.,Proc Natl Acad Sci USA 88,4636-40(1991);Hu et al.,Blood 101,4853-4861(2003)及び米国特許出願公開第2003/0124678号;Shanafelt et al.,Nature Biotechnol 18,1197-1202(2000);Heaton et al.,Cancer Res 53,2597-602(1993)及び米国特許第5,229,109号;米国特許出願公開第2007/0036752号;国際公開第2008/0034473号;国際公開第2009/061853号;PCT特許出願PCT/EP2012/051991に記述される、IL-2変異体などの野生型サイトカインに対応するアミノ酸配列における一以上のアミノ酸変異を含むサイトカイン変異体を含む。更に、サイトカイン変異体、例えばIL-15変異体が本明細書に記載されている。特定の実施態様において、サイトカインは、グリコシル化を排除するために変異されている。」(第16頁第4行~第19行)

キ.「用語「免疫グロブリン分子」は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から成る約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、続いて重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)がある。同様に、N末端からC末端に、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、続いて軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインがある。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG),又はμ(IgM)と呼ばれる5つのタイプの1つに割り当てることができ、そのうち幾つかは更にγ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)などのサブタイプに分割され得る。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプのいずれかに割り当てることができる。免疫グロブリンは、免疫グロブリンのヒンジ領域を介して連結された2つのFab分子およびFcドメインから本質的になる。用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。」(第17頁第10行~第23行)

ク.「エフェクター部分

本発明における使用のためのエフェクター部分は、一般に、例えばシグナル伝達経路を介して細胞活性に影響を与えるポリペプチドである。従って、本発明において有用なイムノコンジュゲートのエフェクター部分は、細胞内応答を調節する細胞膜の外側からシグナルを伝達する受容体媒介性シグナル伝達と関連することができる。例えば、イムノコンジュゲートのエフェクター部分は、サイトカインとすることができる。特定の実施態様において、エフェクター部分はヒトである。

特定の実施態様において、エフェクター部分は、単鎖エフェクター部分である。特定の実施態様において、エフェクター部分はサイトカインである。有用なサイトカインの例としては、限定されないが、GM-CSF、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-21、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIP-1α、MIP-1β、TGF-β、TNF-α、及びTNF-βを含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分は、GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、IFN-α、IFN-γ、MIP-1α、MIP-1β及びTGF-βの群から選択されるサイトカインである。一実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分は、IL-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IFN-α及びIFN-γの群から選択されるサイトカインである。特定の実施態様において、サイトカインのエフェクター部分は、N-および/またはO-グリコシル化部位を除去するために変異される。グリコシル化の排除は、組換え生産で得られる生成物の均質性を向上させる。

特定の実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分はIL-2である。

特定の実施態様において、IL-2のエフェクター部分は、活性化Tリンパ球細胞における増殖、活性化Tリンパ球細胞における分化、細胞傷害性T細胞(CTL)活性、活性化B細胞における増殖、活性化B細胞における分化、ナチュラルキラー(NK)細胞内の増殖、NK細胞における分化、活性化T細胞またはNK細胞によるサイトカイン分泌、及びNK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞毒性からなる群から選択される一又は複数の細胞応答を誘発することができる。別の特定の実施態様において、IL-2エフェクター部分は、IL-2受容体のαサブユニットへの結合親和性が低下した変異体IL-2エフェクター部分である。β-およびγ-サブユニット(それぞれCD122及びCD132としても知られている)と一緒に、α-サブユニット(CD25とも呼ばれる)は、ヘテロ三量体高親和性IL-2受容体を形成し、一方β-およびγ-サブユニットのみからなる二量体受容体は、中間体親和性IL-2受容体と呼ばれている。その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT特許出願番号PCT/EP2012/051991に記載されるように、IL-2受容体のαサブユニットへの結合が減少した変異体IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、調節性T細胞におけるIL-2シグナル伝達を誘導する能力の低下を有し、T細胞においてより少ない活性化誘導細胞死(AICD)を誘導し、そしてインビボで減少した毒性プロファイルを有する。毒性が低下したそのようなエフェクター部分の使用は、Fcドメインの存在に起因して長い血清半減期を有する、本発明によるイムノコンジュゲートに特に有利である。一実施態様において、本発明によるイムノコンジュゲートの変異体IL-2エフェクター部分は、非変異型IL-2エフェクター部分に比べて、IL-2受容体のαサブユニット(CD25)に対する変異体IL-2エフェクター部分の親和性を低減又は消失させるが、(IL-2受容体のβ-及びγ-サブユニットからなる)中間体親和性IL-2受容体への変異体IL-2エフェクター部分の親和性を保持した少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。一実施態様において、一又は複数のアミノ酸変異はアミノ酸置換である。特定の実施態様において、変異体IL-2エフェクター部分は、ヒトIL-2の残基42、45、及び72に対応する位置から選択される一つ、二つ、または三つの位置で、一つ、二つ又は三つのアミノ酸置換を含む。より特定の実施態様において、変異体IL-2エフェクター部分は、ヒトIL-2の残基42、45、及び72に対応する位置で三つのアミノ酸置換を含む。更により具体的な実施態様において、変異体IL-2エフェクター部分は、アミノ酸置換のF42A、Y45A及びL72Gを含むヒトIL-2である。一実施態様において、変異体IL-2エフェクター部分はさらに、ヒトIL-2の位置3に相当する位置でアミノ酸変異を含み、これはIL-2のO-グリコシル化部位を除去する。特に、前記の付加的アミノ酸変異は、アラニン残基によってトレオニン残基を置換するアミノ酸置換である。本発明において有用な特定の変異体IL-2エフェクター部分は、ヒトIL-2の残基、3、42、45および72に対応する位置に4個のアミノ酸置換を含む。具体的なアミノ酸置換はT3A、F42A、Y45A及びL72Gである。PCT特許出願番号PCT/EP2012/051991及びその添付の実施例に示すように、四重変異体IL-2ポリペプチド(IL-2 qm)は、CD25への検出可能な結合、T細胞においてアポトーシスを誘導する能力の低下、Treg細胞においてIL-2シグナル伝達を誘導する能力の低下、及びインビボでの毒性プロファイルの減少を呈示しない。しかし、それはエフェクター細胞においてIL-2シグナル伝達を活性化する能力を保持しており、エフェクター細胞の増殖を誘導し、NK細胞による二次的サイトカインとしてIFN-γを生成する。

上記実施態様のいずれかに記載のIL-2又は変異体IL-2エフェクター部分は、発現の増加又は安定性などのさらなる利点を提供する付加的な変異を含み得る。例えば、位置125のシステインは、ジスルフィド架橋IL-2二量体の形成を回避するためにアラニンなどの中性アミノ酸で置換されてもよい。従って、特定の実施態様において、本発明によるイムノコンジュゲートのIL-2又は変異体IL-2エフェクター部分は、ヒトIL-2の残基125に対応する位置で付加的なアミノ酸変異を含む。一実施態様において、前記付加的アミノ酸変異はアミノ酸置換C125Aである。

特定の実施態様において、イムノコンジュゲートのIL-2エフェクター部分は、配列番号2のポリペプチド配列を含む。別の特定の実施態様において、イムノコンジュゲートのIL-2エフェクター部分は、配列番号3のポリペプチド配列を含む。

別の実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分はIL-12である。特定の実施態様において、前記IL-12のエフェクター部分は、単鎖IL-12のエフェクター部分である。更により具体的な実施態様において、単鎖IL-12のエフェクター部分は、配列番号4のポリペプチド配列を含む。一実施態様において、IL-12のエフェクター部分は、NK細胞における増殖、NK細胞における分化、T細胞における増殖、及びT細胞分化からなる群から選択される細胞応答の一つ以上を誘発することができる。

別の実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分はIL-10である。特定の実施態様において、前記IL-10のエフェクター部分は、単鎖IL-10のエフェクター部分である。更により具体的な実施態様において、単鎖IL-10のエフェクター部分は、配列番号5のポリペプチド配列を含む。特定の実施態様において、前記IL-10のエフェクター部分は、単鎖IL-10のエフェクター部分である。更により具体的な実施態様において、単鎖IL-10のエフェクター部分は、配列番号6のポリペプチド配列を含む。一実施態様において、IL-10のエフェクター部分は、サイトカイン分泌の阻害、抗原提示細胞による抗原提示の阻害、酸素ラジカルの放出の減少、及びT細胞増殖の阻害からなる群から選択される細胞応答の一つ以上を誘発することができる。エフェクター部分はIL-10であることを特徴とする本発明によるイムノコンジュゲートは、炎症の下方制御のため、例えば炎症性疾患の治療において特に有用である。

別の実施態様において、イムノコンジュゲートのエフェクター部分はIL-15である。特定の実施態様において、前記IL-15エフェクター部分は、IL-15受容体のαサブユニットへの結合親和性が低下した変異体IL-15エフェクター部分である。理論に縛られることを望むものではないが、IL-15受容体のαサブユニットへの結合が減少した変異体IL-15ポリペプチドは、身体全体の線維芽細胞に特異的に結合する能力が低下しており、野生型IL-15ポリペプチドと比較して、改善された薬物動態及び毒性プロファイルをもたらす。毒性が低下したエフェクター部分、例えば説明され変異体IL-2及び変異体IL-15エフェクター部分の使用は、Fcドメインの存在に起因して長い血清半減期を有する、本発明によるイムノコンジュゲートに特に有利である。一実施態様において、本発明によるイムノコンジュゲートの変異体IL-2エフェクター部分は、非変異型IL-15エフェクター部分に比べて、IL-15受容体のαサブユニットに対する変異体IL-15エフェクター部分の親和性を低減又は消失させるが、(IL-15/IL-2受容体のβ-及びγ-サブユニットからなる)中間体親和性IL-15/IL-2受容体への変異体IL-15エフェクター部分の親和性を保持した少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。一実施態様では、アミノ酸変異はアミノ酸置換である。特定の実施態様において、変異体IL-15エフェクター部分は、ヒトIL-15の残基53に対応する位置でアミノ酸置換を含む。より具体的な実施態様において、変異体IL-15エフェクター部分は、アミノ酸置換のE53Aを含むヒトIL-15である。一実施態様において、変異体IL-15エフェクター部分はさらに、ヒトIL-15の位置79に相当する位置でアミノ酸変異を含み、これはIL-15のN-グリコシル化部位を除去する。特に、前記の付加的アミノ酸変異は、アラニン残基によってアスパラギン残基を置換するアミノ酸置換である。更により具体的な実施態様において、IL-15のエフェクター部分は、配列番号7のポリペプチド配列を含む。一実施態様において、IL-15のエフェクター部分は、活性化Tリンパ球細胞における増殖、活性化Tリンパ球細胞における分化、細胞傷害性T細胞(CTL)活性、活性化B細胞における増殖、活性化B細胞における分化、ナチュラルキラー(NK)細胞内の増殖、NK細胞における分化、活性化T細胞またはNK細胞によるサイトカイン分泌、及びNK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞毒性からなる群から選択される一又は複数の細胞応答を誘発することができる。」(第43頁第15行~第46頁第32行)

ケ.「特定の実施態様において、イムノコンジュゲートは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的である少なくとも一、典型的には二以上の抗原結合部分を含む。具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号51、配列番号55、配列番号59、配列番号63、配列番号67、配列番号71、配列番号75、配列番号79、配列番号83、配列番号87、配列番号91、配列番号95、配列番号99、配列番号103、配列番号107、配列番号111、配列番号115、配列番号119、配列番号123、配列番号127、配列番号131、配列番号135、配列番号139、配列番号143、配列番号147、配列番号151及び配列番号155からなる群から選択される配列に対して、少なくともおよそ80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である重鎖可変領域配列、又は機能性を保持したその変異体を含む。別の具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号37、配列番号39、配列番号43、配列番号49、配列番号53、配列番号57、配列番号61、配列番号65、配列番号69、配列番号73、配列番号77、配列番号81、配列番号85、配列番号89、配列番号93、配列番号97、配列番号101、配列番号105、配列番号109、配列番号113、配列番号117、配列番号121、配列番号125、配列番号129、配列番号133、配列番号137、配列番号141、配列番号145、配列番号149及び配列番号153,からなる群から選択される配列に対して、少なくともおよそ80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である軽鎖可変領域配列、又は機能性を保持したその変異体を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号51、配列番号55、配列番号59、配列番号63、配列番号67、配列番号71、配列番号75、配列番号79、配列番号83、配列番号87、配列番号91、配列番号95、配列番号99、配列番号103、配列番号107、配列番号111、配列番号115、配列番号119、配列番号123、配列番号127、配列番号131、配列番号135、配列番号139、配列番号143、配列番号147、配列番号151及び配列番号155からなる群から選択される配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である重鎖可変領域配列又は機能性を保持したその変異体、及び配列番号37、配列番号39、配列番号43、配列番号49、配列番号53、配列番号57、配列番号61、配列番号65、配列番号69、配列番号73、配列番号77、配列番号81、配列番号85、配列番号89、配列番号93、配列番号97、配列番号101、配列番号105、配列番号109、配列番号113、配列番号117、配列番号121、配列番号125、配列番号129、配列番号133、配列番号137、配列番号141、配列番号145、配列番号149及び配列番号153からなる群から選択される配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である軽鎖可変領域配列又は機能性を保持したその変異体を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号111の重鎖可変領域配列、及び配列番号109の軽鎖可変領域配列を含む。更なる特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号143の重鎖可変領域配列、及び配列番号141の軽鎖可変領域配列を含む。特定の実施態様において、イムノコンジュゲートの抗原結合部分は、配列番号51の重鎖可変領域配列、及び配列番号49の軽鎖可変領域配列を含む。

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更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、FAPに特異的なFab重鎖が、ホール修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有し、同様にIL-10ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。より具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号243又は配列番号245のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。一実施態様において、イムノコンジュゲートは、FAPに特異的なFab重鎖が、ノブ修飾を含むFcドメインサブユニットとカルボキシ末端のペプチド結合を共有するポリペプチド配列を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号241のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートはFAPに特異的なFab軽鎖を含む。更により具体的な実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号205のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号205、配列番号241及び配列番号243のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。更に別の実施態様において、イムノコンジュゲートは配列番号205、配列番号241及び配列番号245のポリペプチド配列、または機能性を保持したその変異体を含む。別の特定の実施態様において、ポリペプチドは、共有結合、例えばジスルフィド結合により連結されている。幾つかの実施態様において、Fcドメインサブユニットの各々は、アミノ酸置換のL234A、L235A及びP329Gを含む。」(第55頁第22行~第59頁第23行)

コ.「実施例5

FAP標的化4G8ベース、並びにTNC A2標的化2B10ベースのIgG-IL-10イムノコンジュゲートが、2つの異なるIL-10サイトカインフォーマットを、ホール修飾を含んでなるヘテロ二量体IgGの重鎖のC末端へ融合させることにより構築された:(G4S)420量体リンカーが2つのIL-10分子の間に挿入された単鎖IL-10、又は操作された単量体IL-10のどちらか(Josephson et al.,J Biol Chem 275,13552-7(2000))。両方の分子は、(G4S)315量体リンカーを介して、C末端Lys残基の欠失を伴い、ホール修飾を含んでなる重鎖のC末端へ融合された。IL-10部分を保有する一重鎖のみにて生じるヘテロ二量体は、ノブ・イントゥ・ホール技術の適用によって達成される。IgG-サイトカイン融合体は、IgG様特性を有する。FcγR結合/エフェクター機能を低下させ、FcR同時活性化を防止するために、P329G LALAの変異がイムノコンジュゲートのFcドメインに導入された。各コンストラクトの配列は配列番号233、235及び239(scIL-10を含む2B10)、配列番号233、237及び239(単量体IL-10“IL-10M1”を含む2B10)、配列番号241、243及び205(scIL-10を含む4G8)、配列番号241、245及び205(IL-10M1を含む4G8)に与えられる。これらの全てのイムノコンジュゲートは上記の方法に従って精製された。続いて、FAP又はTNC A2のそれぞれに対する結合特性、並びにヒトIL-10R1へのそれらの親和性がProteOn XPR36バイセンサーを用いてSPRによって測定された。簡潔には、標的のFAP又はTNC A2並びにヒトIL-10R1はセンサーチップ表面に垂直な配向で固定化された(FAPは標準的なアミンカップリングにより、TNC A2及びヒトIL-10R1(両方ともC末端avi-タグを介してビオチン化)はニュートラアビジン捕捉による)。続いて、IgG-IL-10イムノコンジュゲートは、水平配向での分析物として、ゼロ濃度を含む6つの異なる濃度で注入された。二重に参照した後、運動速度定数および親和性を決定するために、センサーグラムは1:1相互作用モデルに適合させた。分析的SDS PAGE分析及び標的抗原並びにIL-10受容体に対するSPRに基づいた親和性決定の結果を図21および図22に示す。データは、イムノコンジュゲートはTNC A2又はFAPにKD値がそれぞれ52又は26で結合するが、IL-10受容体に対するKD値は520と815pMであることを示している。」(第102頁第11行~第103頁第5行)

サ.「実施例8

生体内分布の研究が、本発明のイムノコンジュゲートの腫瘍標的化を評価するために行われた。FAP標的化28H1ベースのIgG-IL-2 qmは、FAP標的化非結合型28H1 IgG及び4B9 IgG、及び非標的化DP47GS IgGに対して比較された。更に、SPECT/CTイメージング研究が4B9 IgG-IL-2 qmを用いて行われ、DP47GS IgG-IL-2 qm、4B9 IgG及びDP47GS IgGと比較された。

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図31は、24時間での28H1及び4B9 IgG1及び28H1 IgG-IL-2 qmの組織分布と腫瘍標的化の間に有意差はなく(それ故サイトカインはイムノコンジュゲートの組織分布および腫瘍標的化の特性を有意には変更せず)、そしてFAP標的化コンストラクトの腫瘍対血液比は、非標的化DP47GS対照IgGよりも有意に大きいことを示している。

これらの結果は、4B9 IgG-IL-2 qmイムノコンジュゲートのSPECT/CTイメージングで確認された(データは示さず)。4B9 IgG-IL-2 qmはFAP陽性HEK-FAPに局在化するが、FAP陰性HEK-293対照腫瘍には局在化せず、一方非標的化DP47GSイムノコンジュゲートはどちらの腫瘍にも局在化しなかった。非結合体のIgGとは異なり、4B9 IgG-IL-2 qmの弱い取り込みは、脾臓でも観察された。」(第106頁第3行~第108頁第18行)

シ.「実施例2

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FAP結合親和性

4G8及び28H1抗FAP抗体に基づいたIgG-IL-2 qmイムノコンジュゲートのFAP結合活性が、対応する非修飾型IgG抗体に比較してBiacore機器で表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された。・・・・・・・・・・・・

[図:0001389989000001.jpg]

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続いて、IL-2Rβγヘテロ二量体とIL-2Rαサブユニットへの4G8-及び28H1ベースのIgG-IL-2 qmイムノコンジュゲートの親和性を表面プラズモン共鳴(SPR)により測定し、PCT特許出願PCT/EP2012/051991に記載されたFab-IL-2 qm-Fab-イムノコンジュゲートのフォーマットと直接比較した。・・・・・・・・・・・・

[図:0001389989000002.jpg]

」(第92頁第19行~第95頁第1行)

当審の拒絶理由で引用文献2として引用した、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特表2012-504425号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は合議体による。)。

ス.「【図23】図23は、MC/9細胞増殖アッセイにおいて、改変体IL10(I87変異を有するIL10またはモノIL10のいずれか)を含むいくつかのxceptorタンパク質が、マウスIL10よりも免疫賦活性が低いことを示す。

【図24】図24は、MC/9細胞増殖アッセイにおいて、改変体IL10(I87変異を有するIL10またはモノIL10のいずれか)を含むいくつかのxceptorタンパク質が、ヒトIL10よりも免疫賦活性が低いことを示す。」(【0013】)

セ.「(IL10)

上記のように、一部の特定の実施形態では、本開示により、IL10アゴニストである(すなわち、IL10シグナル伝達を増大させ得る)結合領域またはドメインを含むポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、IL10アゴニスト結合ドメインは、IL10もしくはIL10Fcまたはその機能性サブドメインである。他の実施形態において、IL10アゴニスト結合ドメインは、IL10R1またはIL10R2に特異的に結合する単鎖結合タンパク質(scFvなど)である。一部の実施形態では、IL10アゴニスト結合ドメインは、配列番号7の87位に点変異、例えば「I」から「A」または「S」(本明細書において、それぞれ、I87AまたはI87Sと称する)を含むIL10である。I87改変体IL10分子は、野生型IL10と比べて免疫賦活性が低いことがわかっている(Dingら,J.Exp.Med.191:213,2000)。また、IL10は、通常、各単量体分子のアミノ末端ドメインが他方の単量体のカルボキシ末端ドメインに結合しているホモ二量体を形成している。一実施形態において、IL10アゴニスト結合ドメインは、分子の2つのサブドメイン(アミノおよびカルボキシ末端ドメイン)を引き離す短いリンカー(gggsgg 配列番号379)を有するIL10分子であり、そのため、これらのサブドメインが分子内二量体を形成し得ることも調べた。これを、本明細書においてモノIL10分子と称する。」(【0039】)

ソ.「一部の特定の実施形態では、本発明の多重特異性融合タンパク質は、特定の細胞型を標的化するために異なるフロントおよびバック末端親和性を有するように操作され得る。例えば、CD86に対する親和性が、操作型IL10アゴニスト(例えば、I87AもしくはI87S変異またはモノIL10構造を有する)がhuIL10R1に対して有する親和性よりも高い、抗CD86結合ドメイン(例えば、3D1、FUN1、またはそのヒト化改変体)の使用、およびかかる分子を本開示(disclcosure)のxceptor分子に組み合わせることは、目的の特定の細胞型(抗原提示細胞(APC)など)を標的とすることに有利になるように使用され得る。これに関連して、標的とする所望の細胞型に応じて、CD86に対する親和性が高いかまたは低い、あるいは、本明細書に記載の任意の異種標的タンパク質に対する親和性が高いかまたは低い融合タンパク質が作製され得る。好ましい実施形態では、CD86アンタゴニスト結合ドメインが、異種結合ドメインがその結合パートナーに対して有する親和性よりも大きいCD86に対する親和性を有することにより、多標的特異的xceptor分子はAPCを優先的に標的とする。」(【0120】)

タ.「(実施例15)

(IL10を含むXceptor分子の免疫賦活活性)

種々のxceptor融合タンパク質におけるIL10の免疫賦活活性を、インビトロ細胞増殖アッセイにおいて試験した。特に、MC/9マウス肝臓脂肪細胞株を以下のようにして使用した。MC/9細胞株(American Type Culture Collection ♯CRL-8306)をDMEMまたはRPMI+10%FBSおよび5%Rat T-STIM(BD ♯354115)中で培養した。Rat T-STIMなしの培地中でMC/9細胞を洗浄し、一晩おいて置いた(37℃、5%CO2でインキュベート、96ウェル平底プレート内、1×105細胞/ウェル、100μl/ウェル)。種々の濃度のIL10タンパク質およびxceptor融合タンパク質を24時間インキュベートし、6時間後、増殖を[3H]チミジン取込みによって評価した。

IL10のI87改変体は、野生型IL10と比べて免疫賦活性が低いことがわかっている(Dingら,J.Exp.Med.191:213,2000)。IL10は、通常、各単量体分子のアミノ末端ドメインが他の単量体のカルボキシ末端ドメインに結合しているホモ二量体を形成している。IL10 I87 改変体(I87AおよびI87S)を、IL10の該2つのサブドメインをさらに引き離し、これらのサブドメインが分子内二量体を形成することを可能にする短いリンカー(gggsgg;配列番号379)を有するIL10分子とともに、xceptor形式にて免疫賦活活性について調べた。

図23は、マウスIL10が、MC/9細胞増殖を、IL10のアミノ酸87に単一の変異を含むCTLA4::IL10-I87A(配列番号191)xceptorよりも高い程度まで増進させ得ることを示す。図24は、ヒトIL10と(CTLA4::IL10)-75(配列番号173)がともに、CTLA4::IL10-I87A(配列番号191)またはCTLA4::モノIL-10(配列番号181)のいずれかよりも大きくMC/9細胞増殖を増進させ得ることを示す。」(【0225】~【0227】)

チ.「(実施例16)

(Xceptor分子が特定の細胞型を標的とするようにする操作)

この実施例では、Xceptor融合タンパク質が特定の細胞型を標的とするようにする操作を説明する。これは、BD1およびBD2の親和性を操作することによりなされる。4種類のXceptor分子を、CD86およびhuIL10R1に対して異なる親和性を有するように操作した。表9は、これらの4種類の分子の異なる親和性比を示す。例えば、CD86結合ドメイン(例えば、3D1またはヒト化FUN1)およびhuIL10R1に対して低い親和性を有する操作型IL10分子(I87A)の使用によってCD86に対する親和性を改善することにより、次いで、かかる配置は、目的の特定の細胞型(APCなど)を標的とするのに有利になるように使用され得る。

[図:0001389989000003.jpg]

」(【0228】)

当審の拒絶理由で引用文献3として引用した、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献であるJ.Exp.Med.(2000)Vol.191,No.2,p.213-223(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。)。

ツ.「特異的活性を計算するために、Ba/F3-mIL-10R1細胞の短期間増殖を刺激する能力を、hIL-10、hIL-10(I87A)、vIL-10及びvIL-10(A87I)の様々な濃度で比較した(図5c)。hIL-10は、200U/nMの特異的活性で増殖を誘導し、87位の単一置換(I→A)は、受容体結合を100倍低下させたにもかかわらず、20U/nMまで特異的活性を10倍だけ低下させた。」(第218頁右欄第22行~第29行)。

上記記載事項ア.、イ.、エ.、オ.及びキ.~コ.によると、引用文献1には、「サイトカインイムノコンジュゲートである、IgGクラス抗体とIL-10分子との融合タンパク質であって、融合タンパク質は2つの重鎖ポリペプチドと2つの軽鎖ポリペプチドとを含み、前記重鎖ポリペプチドが、IgGクラス抗体重鎖と、そのN末端にて前記IgGクラス抗体重鎖のC末端に融合しているIL-10単量体とを含み、前記IgGクラス抗体が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)と特異的に結合でき、融合タンパク質が、FAPと、表面プラズモン共鳴(SPR)により25℃にて測定した場合に、26pMの親和性定数(KD)で結合できる、融合タンパク質。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

第5 対比

引用文献1には、IL-10などの「サイトカイン」として、野生型サイトカインに対応するアミノ酸配列における一以上のアミノ酸変異を含むサイトカイン変異体を含むことが記載されている(上記記載事項カ.)。

そうすると、本願発明と引用発明とは、「IgGクラス抗体と変異体IL-10分子との融合タンパク質であって、融合タンパク質は2つの重鎖ポリペプチドと2つの軽鎖ポリペプチドとを含み、前記重鎖ポリペプチドが、IgGクラス抗体重鎖と、そのN末端にて前記IgGクラス抗体重鎖のC末端に融合している変異体IL-10単量体とを含み、前記IgGクラス抗体が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)と特異的に結合でき、融合タンパク質が、FAPと、表面プラズモン共鳴(SPR)により25℃にて測定した場合に、100pMより小さい親和性定数(KD)で結合できる、融合タンパク質。」である点で一致し、両者は以下の点で相違する。

相違点1:本願発明は、変異体IL-10分子は、野生型IL-10分子と比較して、IL-10受容体への変異体IL-10分子の結合親和性を低減させるアミノ酸変異を含み、前記変異体IL-10分子が、ヒトIL-10(配列番号1)の残基87に対応する位置でアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がI87Aであり、前記IL-10受容体がヒトIL-10R1であるのに対し、引用発明は、そのような特定はされていない点。

相違点2:本願発明は、融合タンパク質は2つの同一の重鎖ポリペプチドと2つの同一の軽鎖ポリペプチドとを含み、前記重鎖ポリペプチドのそれぞれが、IgGクラス抗体重鎖と、そのN末端にて前記IgGクラス抗体重鎖のC末端に融合している変異体IL-10単量体とを含むのに対し、引用発明は、そのような特定はされていない点。

第6 当審の判断

以下、上記相違点について検討する。

相違点1について

引用文献2には、「本発明の多重特異性融合タンパク質は、特定の細胞型を標的化するために異なるフロントおよびバック末端親和性を有するように操作され得る。例えば、CD86に対する親和性が、操作型IL10アゴニスト(例えば、I87AもしくはI87S変異またはモノIL10構造を有する)がhuIL10R1に対して有する親和性よりも高い、抗CD86結合ドメイン(例えば、3D1、FUN1、またはそのヒト化改変体)の使用、およびかかる分子を本開示(disclcosure)のxceptor分子に組み合わせることは、目的の特定の細胞型(抗原提示細胞(APC)など)を標的とすることに有利になるように使用され得る。」(上記記載事項ソ.)、「CD86結合ドメイン(例えば、3D1またはヒト化FUN1)およびhuIL10R1に対して低い親和性を有する操作型IL10分子(I87A)の使用によってCD86に対する親和性を改善することにより、次いで、かかる配置は、目的の特定の細胞型(APCなど)を標的とするのに有利になるように使用され得る。」(上記記載事項チ.)と記載されているように、免疫賦活活性を低減させ、目的の特定の細胞型を標的化するために、IL-10分子を含む融合タンパク質において、IL-10分子として、huIL10R1に対して低い親和性を有する、I87A変異を含む変異体IL-10を使用することが記載されている。

そして、引用文献1には、IL-10と同様にイムノコンジュゲートのエフェクター部分として使用されるサイトカインのIL-2について、IL-2エフェクター部分として、IL-2受容体のαサブユニットへの結合親和性が低下した変異体IL-2エフェクター部分を使用すると、IL-2受容体のαサブユニットへの結合が減少した変異体IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、調節性T細胞におけるIL-2シグナル伝達を誘導する能力の低下を有し、T細胞においてより少ない活性化誘導細胞死(AICD)を誘導し、インビボで減少した毒性プロファイルをもたらすこと、この毒性が低下したエフェクター部分の使用は、Fcドメインの存在に起因して長い血清半減期を有することが記載されている(上記記載事項ク.)。また、引用文献1には、IL-10と同様にイムノコンジュゲートのエフェクター部分として使用されるサイトカインのIL-15について、IL-15エフェクター部分として、IL-15受容体のαサブユニットへの結合親和性が低下した変異体IL-15エフェクター部分を使用すると、IL-15受容体のαサブユニットへの結合が減少した変異体IL-15ポリペプチドは、身体全体の線維芽細胞に特異的に結合する能力が低下しており、野生型IL-15ポリペプチドと比較して、改善された薬物動態及び毒性プロファイルをもたらすこと、この毒性が低下したエフェクター部分の使用は、Fcドメインの存在に起因して長い血清半減期を有することが記載されている(上記記載事項ク.)。

よって、引用発明において、改善された薬物動態及び毒性プロファイルをもたらすことを期待して、変異体IL-10分子として、引用文献2に記載されている、野生型IL-10分子と比較して、IL-10受容体であるヒトIL-10R1への変異体IL-10分子の結合親和性を低減させるアミノ酸変異を含み、前記変異体IL-10分子が、ヒトIL-10(配列番号1)の残基87に対応する位置でアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換がI87Aであるものを使用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

相違点2について

引用文献1には、2つの免疫グロブリン重鎖の各々のC末端に結合された少なくとも一のサイトカインを有し、二価標的結合部分及び二つ以上のサイトカイン部分を持つイムノコンジュゲートは、本願優先日前周知のものである(上記記載事項イ.)から、引用発明において、融合タンパク質は2つの同一の重鎖ポリペプチドと2つの同一の軽鎖ポリペプチドとを含み、前記重鎖ポリペプチドのそれぞれが、IgGクラス抗体重鎖と、そのN末端にて前記IgGクラス抗体重鎖のC末端に融合している変異体IL-10単量体とを含むようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

第7 審判請求人の主張

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審判請求人は、令和 2年 1月 6日付け審判請求書において、以下の(ア)~(ウ)の点を主張し、また、令和 4年 2月 3日付け意見書において、以下の(エ)の点を主張しているので、以下この点について検討する。

(ア)4B9 IgG-hIL-10 I87A又は4G8 IgG-hIL-10 I87A等に代表される、本願発明のFAP標的化IgG-IL-10融合タンパク質は、炎症性疾患の治療に対し、改善された生産しやすさ、安定性、血清半減期、及び驚くべきことに、標的抗原との結合時の生物活性の著しい増加を含む、野生型IL-10分子を有する対応する融合タンパク質を上回る優れた特性を示した。

(イ)本願明細書は、IL-10のI87A変異が、野生型IL-10分子と比較して、IL-10受容体への結合親和性を有意に低減させることを実証しており(表24等)、本願発明の融合タンパク質は、インビトロ効力のレベルを保持しつつ、IL-10受容体(特に、ヒトIL-10R1)への親和性の減少を介した標的効率の改善、及びIL-10の免疫賦活特性の低減により引き起こされる副作用の減少を示す(本願明細書段落【0011】、【0146】、【0186】、表24及び表26等)。

(ウ)参考資料1(Ding et al., J. Exp. Med.,191(2),213-223(2000))は、I87A置換を含む変異したIL-10分子を開示しているが、当該先行技術文献の教示は、全身毒性の低い代替免疫複合体を提供する客観的な技術的問題に直面した当業者を、免疫複合体にI87A置換を含むIL-10分子を含ませることから遠ざけたものと思料する。著者らは、生物学的反応と比活性はリガンド親和性と相関していなかったと要約し、予想外に、I87A置換を含む分子は、一部の試験(I87Aを含むvIL-10等)で効力が増加し、他の試験(MC79細胞の増殖等)で残留活性を示さなかったから、当業者は、全身毒性の低い代替免疫複合体を提供するためにI87A変異を含めることを妨げられたと思料する。当業者は、I87A変異IL-10分子の包含がIL-10受容体への結合親和性の適度な減少をもたらすことを予見できず、むしろ、IL-10分子の活性が完全に失われる可能性があること、または活性が増加する可能性さえあることを恐れたであろうと思料するから、当業者はIgGクラス抗体をI87A変異IL-10分子に融合させることはなく、ましてやIgGクラス抗体を2つのI87A変異IL-10分子に融合させることはなかったであろうと思料する。

(エ)本願明細書は、IL-10におけるI87Aの変異が、野生型IL-10分子と比較して、IL-10受容体への結合親和性を大幅に低下させたことを示している(表24等)。補正後の請求項に記載のFAP標的化IgG-IL-10融合タンパク質、代表例として4B9 IgG-hIL-10 I87Aまたは4G8 IgG-hIL-10 I87Aは、対応する野生型IL-10分子融合タンパク質と比較して、改善された生産性、安定性、血清半減期、そして驚くべきことに、標的抗原への結合時の有意に増加した生物学的活性を含む、炎症性疾患を治療するための優れた特性を示した。特に、本願請求項に記載の特定の融合タンパク質は、補正後の請求項に記載されているように、融合タンパク質が100pM未満の親和定数(KD)でFAPに結合できる場合、インビトロ効力のレベルを保持したまま、IL-10受容体(特に、ヒトIL-10R1)への親和性の低下を通じて、改善された標的化効率を示し、並びにIL-10の免疫刺激特性の低下によって引き起こされる副作用の低下を示した(明細書段落【0011】、【0146】、【0186】、表24及び表26等)。

本願明細書は、標的FAPに対する融合構築物の親和性が、本願請求項に記載されるように、高親和性サイトカイン受容体IL-10Rの場合よりも高い(100pM未満の親和定数(KD))場合に効率的な標的化が達成されることを示している。

表24は、IL-10 I87AがIL-10R1に対して476pMのKDを有することが示されており、野生型IL-10はIL-10R1に対して38.9pMのKDを有することが示されている。表1は、4G8抗体が2~6pMのKDでヒトFAPに結合することを示しており、表2は、4B9抗体が0.6~2pMのKDでヒトFAPに結合することを示している。

表23は、4G8 IG分子と4G8 IgG-IL-10分子が同様の効率で炎症を起こした関節を標的化したことを示しており、本願明細書には、「4G8 IgGと4G8 IgG-IL-10との間で炎症を起こした関節での蓄積に有意な差はなく、このことは、lL-10が炎症部位への4G8 IgGの標的化に著しく影響しなかったことを示す。」と記載されている(明細書段落【0168】)。

表23のデータは、炎症を起こした関節への4G8 IgG-IL-10分子の標的化が影響を受けなかったことを示しており(例えば、血液中のIL-10R1への分子の結合による)、これは、4G8バインダーの結合親和性(2~6pM)が、IL-10のIL-10R1への結合親和性(38.9pM)と比較して高いという事実によるものである。

このデータに基づいて、当業者は、炎症を起こした関節への標的化は4G8 IgG-IL-10 I87Aでも影響を受けないと予想したと思料され、これは、IL-10 I87A分子が野生型IL-10と比較してIL-10R1に対して10分の1の親和性を持っているためである。

主張(ア)について

本願明細書の段落【0011】に「本発明のIgG-IL-10融合タンパク質は、公知の抗体断片に基づく(例えばscFv、ダイアボディ、Fab)IL-10融合タンパク質に対して、改善された生産しやすさ、安定性、血清半減期及び驚くべきことに、標的抗原との結合による生物活性の著しい増加を含むいくつかの利点を有する。」と記載されているように、審判請求人が主張する「改善された生産しやすさ、安定性、血清半減期、及び驚くべきことに、標的抗原との結合時の生物活性の著しい増加」という本願発明の融合タンパク質の効果は、公知の抗体断片に基づく(例えばscFv、ダイアボディ、Fab)IL-10融合タンパク質と比較した効果であって、野生型IL-10分子を有する対応する融合タンパク質と比較した効果であるとは認められない。

また、審判請求人の上記主張が、「4B9 IgG-hIL-10 I87A又は4G8 IgG-hIL-10 I87A等に代表される、本願発明のFAP標的化IgG-IL-10融合タンパク質は、炎症性疾患の治療に対し、改善された生産しやすさ、安定性、血清半減期、及び驚くべきことに、標的抗原との結合時の生物活性の著しい増加を含む、公知の抗体断片に基づく(例えばscFv、ダイアボディ、Fab)IL-10融合タンパク質を上回る優れた特性を示した。」という主張であると解したとしても、そのような効果は、引用文献1の記載(上記記載事項ウ.)から、当業者が予測することができる範囲の効果である。

したがって、審判請求人の上記主張(ア)は採用できない。

主張(イ)について

引用文献3には、「87位の単一置換(I→A)は、受容体結合を100倍低下させた」と記載されている(上記記載事項ツ.)ように、IL-10のI87A変異が、野生型IL-10分子と比較して、IL-10受容体への結合親和性を有意に低減させることを実証している。

そして、引用文献2には、その引用文献3に該当する文献(Dingら,J.Exp.Med.191:213,2000)を引用して、「I87改変体IL10分子は、野生型IL10と比べて免疫賦活性が低いことがわかっている(Dingら,J.Exp.Med.191:213,2000)。」(上記記載事項セ.)、「IL10のI87改変体は、野生型IL10と比べて免疫賦活性が低いことがわかっている(Dingら,J.Exp.Med.191:213,2000)。」(上記記載事項タ.)と記載されており、さらに、「図24は、MC/9細胞増殖アッセイにおいて、改変体IL10(I87変異を有するIL10またはモノIL10のいずれか)を含むいくつかのxceptorタンパク質が、ヒトIL10よりも免疫賦活性が低いことを示す。」(上記記載事項ス.)、「図24は、ヒトIL10と(CTLA4::IL10)-75(配列番号173)がともに、CTLA4::IL10-I87A(配列番号191)またはCTLA4::モノIL-10(配列番号181)のいずれかよりも大きくMC/9細胞増殖を増進させ得ることを示す。」(上記記載事項タ.)と記載されているように、I87A変異を有するIL-10を含む融合タンパク質が、ヒトIL10を含む融合タンパク質よりも免疫賦活性が低いことを実際に確認している。また、引用文献2には、「CD86に対する親和性が、操作型IL10アゴニスト(例えば、I87AもしくはI87S変異またはモノIL10構造を有する)がhuIL10R1に対して有する親和性よりも高い、抗CD86結合ドメイン(例えば、3D1、FUN1、またはそのヒト化改変体)の使用、およびかかる分子を本開示(disclcosure)のxceptor分子に組み合わせることは、目的の特定の細胞型(抗原提示細胞(APC)など)を標的とすることに有利になるように使用され得る。」(上記記載事項ソ.)、「CD86結合ドメイン(例えば、3D1またはヒト化FUN1)およびhuIL10R1に対して低い親和性を有する操作型IL10分子(I87A)の使用によってCD86に対する親和性を改善することにより、次いで、かかる配置は、目的の特定の細胞型(APCなど)を標的とするのに有利になるように使用され得る。」(上記記載事項チ.)と記載されているように、引用文献2には、「IL-10受容体(特に、ヒトIL-10R1)への親和性の減少を介した標的効率の改善」効果も示されている。

そして、引用文献1には、IL-10と同様にイムノコンジュゲートのエフェクター部分として使用されるサイトカインのIL-2について、IL-2エフェクター部分として、IL-2受容体のαサブユニットへの結合親和性が低下した変異体IL-2エフェクター部分を使用すると、IL-2受容体のαサブユニットへの結合が減少した変異体IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、調節性T細胞におけるIL-2シグナル伝達を誘導する能力の低下を有し、T細胞においてより少ない活性化誘導細胞死(AICD)を誘導し、インビボで減少した毒性プロファイルをもたらすこと、この毒性が低下したエフェクター部分の使用は、Fcドメインの存在に起因して長い血清半減期を有することが記載されている(上記記載事項ク.)。また、引用文献1には、IL-10と同様にイムノコンジュゲートのエフェクター部分として使用されるサイトカインのIL-15について、IL-15エフェクター部分として、IL-15受容体のαサブユニットへの結合親和性が低下した変異体IL-15エフェクター部分を使用すると、IL-15受容体のαサブユニットへの結合が減少した変異体IL-15ポリペプチドは、身体全体の線維芽細胞に特異的に結合する能力が低下しており、野生型IL-15ポリペプチドと比較して、改善された薬物動態及び毒性プロファイルをもたらすこと、この毒性が低下したエフェクター部分の使用は、Fcドメインの存在に起因して長い血清半減期を有することが記載されている(上記記載事項ク.)。そうすると、IL-10受容体への結合親和性が低下した変異体IL-10分子についても、変異体IL-2ポリペプチド、IL-15ポリペプチドと同様の上記のような改善された薬物動態及び毒性プロファイルをもたらす効果を奏することが予測できる。

したがって、審判請求人が主張する本願発明の融合タンパク質の効果は、引用文献1及び2の記載から、当業者が予測することができる範囲の効果であるから、審判請求人の上記主張(イ)は採用できない。

主張(ウ)について

参考資料1に該当する引用文献3には、「特異的活性を計算するために、Ba/F3-mIL-10R1細胞の短期間増殖を刺激する能力を、hIL-10、hIL-10(I87A)、vIL-10及びvIL-10(A87I)の様々な濃度で比較した(図5c)。hIL-10は、200U/nMの特異的活性で増殖を誘導し、87位の単一置換(I→A)は、受容体結合を100倍低下させたにもかかわらず、20U/nMまで特異的活性を10倍だけ低下させた。」ことが記載されており(上記記載事項ツ.)、hIL-10(I87A)が、hIL-10と比較して、受容体結合を低下させたこと、Ba/F3-mIL-10R1細胞の増殖を刺激する能力を低下させるものの、増殖刺激活性を有している(20U/nM)ことが明確に記載されているから、当業者が、I87A変異IL-10分子の包含がIL-10受容体への結合親和性の適度な減少をもたらすことを予測できないということはできないし、また、IL-10分子の活性が完全に失われる可能性や活性が増加する可能性があることを恐れたと解すべき理由もない。

また、引用文献2には、参考資料1に該当する文献(Dingら,J.Exp.Med.191:213,2000)を引用して、「I87改変体IL10分子は、野生型IL10と比べて免疫賦活性が低いことがわかっている(Dingら,J.Exp.Med.191:213,2000)。」(上記記載事項セ.)、「IL10のI87改変体は、野生型IL10と比べて免疫賦活性が低いことがわかっている(Dingら,J.Exp.Med.191:213,2000)。」(上記記載事項タ.)と記載されており、さらに、「図24は、MC/9細胞増殖アッセイにおいて、改変体IL10(I87変異を有するIL10またはモノIL10のいずれか)を含むいくつかのxceptorタンパク質が、ヒトIL10よりも免疫賦活性が低いことを示す。」(上記記載事項ス.)、「図24は、ヒトIL10と(CTLA4::IL10)-75(配列番号173)がともに、CTLA4::IL10-I87A(配列番号191)またはCTLA4::モノIL-10(配列番号181)のいずれかよりも大きくMC/9細胞増殖を増進させ得ることを示す。」(上記記載事項タ.)と記載されているように、I87A変異を有するIL-10を含む融合タンパク質が、ヒトIL10を含む融合タンパク質よりも免疫賦活性が低いことを確認しているから、参考資料1が、当業者が融合タンパク質にI87A置換を含むIL-10分子を含ませることを妨げる文献であるとは認められない。

したがって、審判請求人の上記主張(ウ)は採用できない。

主張(エ)について

審判請求人は、「補正後の請求項に記載のFAP標的化IgG-IL-10融合タンパク質、代表例として4B9 IgG-hIL-10 I87Aまたは4G8 IgG-hIL-10 I87Aは、対応する野生型IL-10分子融合タンパク質と比較して、改善された生産性、安定性、血清半減期、そして驚くべきことに、標的抗原への結合時の有意に増加した生物学的活性を含む、炎症性疾患を治療するための優れた特性を示し」たと主張しているが、上記「主張(ア)について」において述べたように、審判請求人が主張する「改善された生産性、安定性、血清半減期、そして驚くべきことに、標的抗原への結合時の有意に増加した生物学的活性を含む、炎症性疾患を治療するための優れた特性」という本願発明の融合タンパク質の効果は、公知の抗体断片に基づく(例えばscFv、ダイアボディ、Fab)IL-10融合タンパク質と比較した効果であって、対応する野生型IL-10分子融合タンパク質と比較した効果であるとは認められない。

審判請求人は、「本願明細書は、IL-10におけるI87Aの変異が、野生型IL-10分子と比較して、IL-10受容体への結合親和性を大幅に低下させたことを示している(表24等)。・・・・・・・・・特に、本願請求項に記載の特定の融合タンパク質は、補正後の請求項に記載されているように、融合タンパク質が100pM未満の親和定数(KD)でFAPに結合できる場合、インビトロ効力のレベルを保持したまま、IL-10受容体(特に、ヒトIL-10R1)への親和性の低下を通じて、改善された標的化効率を示し、並びにIL-10の免疫刺激特性の低下によって引き起こされる副作用の低下を示した」と主張しているが、上記「第4 引用文献の記載事項及び引用発明の認定」において述べたように、引用発明の融合タンパク質は、FAPと、表面プラズモン共鳴(SPR)により25℃にて測定した場合に、26pMの親和性定数(KD)で結合できる、すなわち、100pM未満の親和性定数(KD)で結合できる融合タンパク質であり、また、上記「主張(イ)について」において述べたように、審判請求人が主張する本願発明の融合タンパク質の効果は、引用文献1及び2の記載から、当業者が予測することができる範囲の効果である。

また、引用文献1には、「28H1及び4B9 IgG1及び28H1 IgG-IL-2 qmの組織分布と腫瘍標的化の間に有意差はなく(それ故サイトカインはイムノコンジュゲートの組織分布および腫瘍標的化の特性を有意には変更せず)、そしてFAP標的化コンストラクトの腫瘍対血液比は、非標的化DP47GS対照IgGよりも有意に大きいことを示している。 これらの結果は、4B9 IgG-IL-2 qmイムノコンジュゲートのSPECT/CTイメージングで確認された(データは示さず)。」と記載されており(上記記載事項サ.)、FAP標的化28H1 IgG1とFAP標的化28H1 IgG-IL-2 qmの間の腫瘍標的化に有意差はなく、FAP標的化4B9 IgG1とFAP標的化4B9 IgG-IL-2 qmの間の腫瘍標的化に有意差はないことが記載されているから、本願明細書の表23に示された実験結果は、引用文献1の記載から、当業者が予測することができるものといえる。

そして、これは、28H1のFAP結合親和性が、IL-2 qmのIL-2受容体への結合親和性と比較して高い(上記記載事項シ.)ことによるものと認められるから、標的FAPに対する融合構築物の親和性が、高親和性サイトカイン受容体IL-10Rの場合よりも高い場合に効率的な標的化が達成されることも、引用文献1の記載から、当業者が予測することができるものといえる。

したがって、審判請求人の上記主張(エ)は採用できない。

第8 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1~3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-000087

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