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特許異議申立

2019-700912

溶液処理装置および溶液処理方法

審判番号
2019-700912
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-509001
登録番号
特許第6514426号(P6514426)
請求日
2019年11月15日
審決日
2020年11月10日
公報発行日
2021年02月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】リファインホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
  • 【権利者】パナソニック株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
  • 【異議申立人】星 正美
審判長/審判官
  • 審判長 菊地 則義
  • 審判官 村岡 一磨
  • 審判官 金 公彦
分類
P1651.121-YAA(B01D) / P1651.537-YAA(B01D) / P1651.851-YAA(B01D) / P1651.853-YAA(B01D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6514426号発明「溶液処理装置および溶液処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6514426号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕及び〔5~8〕について訂正することを認める。 特許第6514426号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6514426号の請求項1~8に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)11月2日(優先権主張 平成30年7月18日)を国際出願日とする出願であって、平成31年4月19日にその特許権の設定登録がされ、令和1年5月15日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和1年11月15日  :特許異議申立人 星正美による請求項1~ 8に係る特許に対する特許異議の申立て 令和2年 2月27日付け:取消理由通知書 同年 5月 7日  :意見書の提出及び訂正の請求(特許権者) なお、上記訂正の請求に対して、特許異議申立人から意見書の提出はされなかった。 第2 訂正の適否についての判断 令和2年5月7日になされた訂正の請求(以下、「本件訂正」という。)は、以下のとおり、適法になされたものと判断する。 1 訂正の内容 本件訂正は、一群の請求項を構成する請求項1~4及び他の一群の請求項を構成する請求項5~8を訂正の単位として請求されたものであり、特許法第120条の5第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に従うものであるところ、その訂正の内容(訂正事項)は、次のとおりである。 (1) 一群の請求項1~4に係る訂正 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「・・・制御することを特徴とする溶液処理装置。」と記載されているのを、「・・・制御し、前記制御手段による前記第2気液分離手段の制御は、限界濃縮液温度、又は、前記第2気液分離手段に保持されている濃縮液の液面の変化速度、に基づき行い、前記した析出が始まる留出率よりも最終的な留出率を高めることを特徴とする溶液処理装置。」(当審注:「・・・」は記載の省略を表し、また、下線を付した部分が訂正箇所である。以下、同じ。)に訂正し、その結果として、請求項1を引用する請求項2~4も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 明細書の段落【0007】に、「・・・呈することを特徴とする。」と記載されているのを、「・・・呈し、前記制御手段は、被処理液に含まれる不揮発性成分の析出が始まる留出率よりも低い留出率となるように前記第1気液分離手段の留出率を制御し、前記制御手段による前記第2気液分離手段の制御は、限界濃縮液温度、又は、前記第2気液分離手段に保持されている濃縮液の液面の変化速度、に基づき行い、前記した析出が始まる留出率よりも最終的な留出率を高めることを特徴とする。」に訂正する。 (2) 一群の請求項5~8に係る訂正 ア 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に「・・・留出率とすることを特徴とする溶液処理方法。」と記載されているのを、「・・・留出率とし、前記第2気液分離工程における制御は、限界濃縮液温度、又は、前記第2気液分離工程において保持されている濃縮液の液面の変化速度、に基づき行い、前記した析出が始まる留出率よりも最終的な留出率を高めることを特徴とする溶液処理方法。」に訂正し、その結果として、請求項5を引用する請求項6~8も同様に訂正する。 イ 訂正事項4 明細書の段落【0008】に、「・・・呈することを特徴とする。」と記載されているのを、「・・・呈し、前記第1気液分離工程における留出率を、被処理液に含まれる不揮発性成分の析出が始まる留出率よりも低い留出率とし、前記第2気液分離工程における制御は、限界濃縮液温度、又は、前記第2気液分離工程において保持されている濃縮液の液面の変化速度、に基づき行い、前記した析出が始まる留出率よりも最終的な留出率を高めることを特徴とする。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 一群の請求項1~4に係る訂正について ア 訂正事項1について (ア) 訂正の目的の適否 本件訂正前の請求項1に係る発明において、「・・・制御することを特徴とする溶液処理装置。」と記載されていたところ、「・・・制御し、前記制御手段による前記第2気液分離手段の制御は、限界濃縮液温度、又は、前記第2気液分離手段に保持されている濃縮液の液面の変化速度、に基づき行い、前記した析出が始まる留出率よりも最終的な留出率を高めることを特徴とする溶液処理装置。」とするものであり、制御手段による制御内容を更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ) 新規事項の有無 また、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0064】には、「また、溶液処理装置1Aの制御については、定常状態において、第2気液分離容器21に保持されている濃縮液の温度が「限界濃縮液温度」の99℃に達したタイミングでバルブV5を開き、所定の液面高さまで濃縮液を抜き出すという制御を実施した。」との記載がなされており、また、同段落【0067】には、「溶液処理装置1Aの制御については、第2気液分離容器21に保持されている濃縮液の温度に基づく制御を実施しなかった。その代わりに、第2気液分離容器21に保持されている濃縮液の液面の変化速度(液面の上昇速度)に基づいて、バルブV5の制御を実施した。具体的には、濃縮液の液面の変化速度が顕著に遅くなったタイミングでバルブV5を開き、所定の液面高さまで濃縮液を抜き出した。」との記載がなされており、更に、同段落【0051】における「第2気液分離手段(第2気液分離工程)において被処理液の不揮発性成分が析出するような高いレベルの条件で蒸発処理を実施しても、析出成分の付着に伴う処理効率の低下を抑制することができる。」なる記載及び同明細書の実施例1~3において最終的な留出率が不揮発性成分の析出が始まる留出率よりも高いことが示されているので、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 更に、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は、上記訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための、明細書の訂正であるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2) 一群の請求項5~8に係る訂正について ア 訂正事項3について 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「・・・留出率とすることを特徴とする溶液処理方法。」と記載されているのを、「・・・留出率とし、前記第2気液分離工程における制御は、限界濃縮液温度、又は、前記第2気液分離工程において保持されている濃縮液の液面の変化速度、に基づき行い、前記した析出が始まる留出率よりも最終的な留出率を高めることを特徴とする溶液処理方法。」に訂正するものであり、第2気液分離工程における制御内容を更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項3が限定する当該制御内容は、上記訂正事項1が限定する制御内容と同様であるから、訂正事項3は、上記(1)ア(イ)と同様、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。 更に、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ 訂正事項4について 訂正事項4は、上記訂正事項3に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための、明細書の訂正であるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~4〕及び〔5~8〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件発明 上記「第2」のとおり本件訂正は適法になされたものと認められるので、本件特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 有機溶媒と不揮発性成分とを含む被処理液から、留出蒸気として有機溶媒を分離する溶液処理装置であって、 被処理液を加熱し、蒸気を留出させるとともに、保持する濃縮液の一部を缶出させる第1気液分離手段と、 前記第1気液分離手段から缶出する濃縮液を加熱し、蒸気を留出させるとともに、保持する濃縮液の一部を缶出させる第2気液分離手段と、 前記第1気液分離手段において被処理液に含まれる不揮発性成分が析出しないように、前記第1気液分離手段を制御する制御手段と、を備え、 前記第2気液分離手段の濃縮液を加熱する箇所であるとともに濃縮液に接する接液箇所が、不揮発性成分に対して耐付着性を呈し、 前記制御手段は、被処理液に含まれる不揮発性成分の析出が始まる留出率よりも低い留出率となるように前記第1気液分離手段の留出率を制御し、 前記制御手段による前記第2気液分離手段の制御は、限界濃縮液温度、又は、前記第2気液分離手段に保持されている濃縮液の液面の変化速度、に基づき行い、前記した析出が始まる留出率よりも最終的な留出率を高めることを特徴とする溶液処理装置。 【請求項2】 前記第2気液分離手段の内部の濃縮液を所定の流速で送液するポンプを備え、 前記制御手段は、前記所定の流速が、析出した不揮発性成分を堆積させない流速となるように前記ポンプを制御することを特徴とする請求項1に記載の溶液処理装置。 【請求項3】 前記制御手段は、前記第2気液分離手段に保持されている濃縮液の液温が所定の温度に達したタイミング、および、前記第2気液分離手段に保持されている濃縮液の量が所定の量に達したタイミング、の少なくとも1つを満たしたタイミングで、前記第2気液分離手段に保持されている濃縮液が所定量となるまで濃縮液を缶出させるように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶液処理装置。 【請求項4】 前記接液箇所は、耐付着性材料により被覆された状態、または、表面粗さが1μm以下の状態であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶液処理装置。 【請求項5】 有機溶媒と不揮発性成分とを含む被処理液から、留出蒸気として有機溶媒を分離する溶液処理方法であって、 被処理液を加熱し、蒸気を留出させるとともに、保持する濃縮液の一部を缶出させる第1気液分離工程と、 前記第1気液分離工程で缶出された濃縮液を加熱し、蒸気を留出させるとともに、保持する濃縮液の一部を缶出させる第2気液分離工程と、を含み、 前記第1気液分離工程において、被処理液に含まれる不揮発性成分が析出しないように制御し、 前記第2気液分離工程において、濃縮液を加熱する箇所であるとともに濃縮液に接する接液箇所が、不揮発性成分に対して耐付着性を呈し、 前記第1気液分離工程における留出率を、被処理液に含まれる不揮発性成分の析出が始まる留出率よりも低い留出率とし、 前記第2気液分離工程における制御は、限界濃縮液温度、又は、前記第2気液分離工程において保持されている濃縮液の液面の変化速度、に基づき行い、前記した析出が始まる留出率よりも最終的な留出率を高めることを特徴とする溶液処理方法。 【請求項6】 前記第2気液分離工程において、濃縮液の流速を、析出した不揮発性成分を堆積させない流速とすることを特徴とする請求項5に記載の溶液処理方法。 【請求項7】 前記第2気液分離工程において、保持されている濃縮液の液温が所定の温度に達したタイミング、および、保持されている濃縮液の量が所定の量に達したタイミング、の少なくとも1つを満たしたタイミングで、保持されている濃縮液が所定量となるまで濃縮液を缶出させることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の溶液処理方法。 【請求項8】 前記接液箇所は、耐付着性材料により被覆された状態、または、表面粗さが1μm以下の状態であることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の溶液処理方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~8に係る発明に対して、当審が令和2年2月27日付けで特許権者に通知した取消理由(サポート要件違反)の要旨は、次のとおりである。 (1) 本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、第1気液分離手段(工程)において不揮発性成分の析出が確認される留出率よりも大幅に低い留出率を設定値にした制御を行う場合を包含し、これは、「被処理液の不揮発性成分が析出しても、優れた処理効率を発揮することができる溶液処理装置および溶液処理方法を提供する」という本件発明の課題を解決し得ないものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである(以下、「取消理由1」という。)。 (2) 本件訂正前の請求項1~8に係る発明は、第2気液分離手段(工程)において、限界濃縮液温度に基づく制御と、第2気液分離容器に保持されている濃縮液の液面の変化速度(液面の上昇速度)に基づく制御の何れも行わない場合を包含するものであり、上記本件発明の課題の解決をなし得ないものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである(以下、「取消理由2」という。)。 2 取消理由1及び2(サポート要件違反)についての当審の判断 (1) 取消理由1について 本件発明1における「第2気液分離手段」及び本件発明5における「第2気液分離工程」は、「析出が始まる留出率よりも最終的な留出率を高める」ように制御されるものであるから、本件発明は、「被処理液の不揮発性成分が析出しても、優れた処理効率を発揮することができる溶液処理装置および溶液処理方法を提供する」(本件明細書の段落【0006】参照。)という本件発明の課題を解決するものと当業者が認識し得る範囲内のものであるといえ、したがって、上記取消理由1には理由がない。 (2) 取消理由2について 本件発明1における「第2気液分離手段の制御」及び本件発明5における「第2気液分離工程における制御」は、「限界濃縮液温度、又は、前記第2気液分離手段に保持されている濃縮液の液面の変化速度、に基づき」行うものであるから、本件発明は、上記本件発明の課題を解決するものと当業者が認識し得る範囲内のものであるといえ、したがって、上記取消理由2には理由がない。 3 小括 以上のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、サポート要件に違反しているということはできないから、本件請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法113条第4号に該当しないため、取消理由1及び2(サポート要件違反)を理由に、取り消すことはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 採用しなかった特許異議申立理由の概要 異議申立人が、特許異議申立書において主張する特許異議申立理由のうち、当審が上記取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 (1) (進歩性欠如)本件発明1~8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである(以下、「申立理由1」という。)。 (2) (サポート要件違反)本件請求項1、4、5及び8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである(以下、「申立理由2」という。)。 (3) (明確性要件違反)本件請求項1及び5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである(以下、「申立理由3」という。)。 2 申立理由1(進歩性欠如)についての当審の判断 特許異議申立人は、申立理由1を立証するための証拠として、甲第1~11号証(以下、単に「甲1」などという。)を提出し、本件発明1~8について、甲1に記載された発明を主たる引用発明とする進歩性欠如を主張する。 しかしながら、当該主張は、以下の理由により、採用することはできない。 (1) 証拠一覧 甲1:藏方伸ほか,“『廃塗料リサイクルシステム』の開発”, 塗料の研究,2000年4月,No.134, p.50~54 甲2:特開2003-277405号公報 甲3:佐藤靖,“ブラスト表面の粗さと塗膜性能”, 実務表面技術,1984年,Vol.31,No.7, p.318~323 甲4:特表2007-522303号公報 甲5:特開昭57-162703号公報 甲6:特開2013-189400号公報 甲7:特開2004-67863号公報 甲8:特開昭62-36346号公報 甲9:特開昭63-175002号公報 甲10:特開2004-339183号公報 甲11:特開2003-135902号公報 なお、甲2~11は、不揮発成分を含有する有機廃液の処理に関する文献ではなく、また、甲2~5、7及び9は重合体等の反応容器等への付着防止に関する周知技術を示す文献である。 (2)甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。 ア 第51頁左欄第6~最終行 「2.2 廃塗料・廃溶剤発生工程と排出量 図1に、塗料工場における『廃塗料リサイクルシステム』のフローを示した。塗料工場から排出される廃塗料・廃溶剤は、主に塗料製造設備の色・品種変更時の洗浄廃溶剤として発生し、樹脂、顔料を含んでいる。この洗浄廃溶剤は、従来から常圧蒸留装置で溶剤を回収し、洗浄溶剤として再使用していた(一次回収溶剤)。しかし、樹脂分を含む廃溶剤は、蒸留による固形分濃度の上昇に伴い増粘し、粘着性が強くなる。さらに濃縮していくとゲル状物となり、装置の運転ができなくなると共に、装置からの蒸留残さの排出が困難となる。そのため、完全に溶剤を回収できずに、固形分濃度40%程度の蒸留残さを廃油として廃棄していた。また、廃塗料は固形分濃度が数十パーセントであり、同様に廃油として廃棄していた。 蒸留残さおよび廃塗料は大量の溶剤を含有している。即ち、従来の処分方法では溶剤を焼却処分していたことになる。この廃棄していた溶剤を全量回収すれば(二次回収溶剤)、産業廃棄物量の削減が図られると共に、石油資源の有効利用となる。」 イ 第51頁図1 「 」 ウ 第52頁図2 「 」 エ 第52頁左欄第2~最終行 「3.1 『廃塗料リサイクルシステム』の概要 図2に、『廃塗料リサイクルシステム』の概念図を示した。原料である廃塗料をポンプにより真空蒸留機に送り込み、揮発した溶剤は凝縮器で回収され、乾燥した固形物は排出器からコンテナへ落とされる仕組みとした。 本装置を設計する上で必要とされた条件は次の通りである。 1.高温・真空蒸留 高沸点溶剤の蒸発、乾燥過程で半固形状になった廃塗料からの溶剤蒸発を効率良く行う。 2.真空蒸留機内部の付着物除去機能 伝熱面への粘着物付着防止による蒸発効率の維持と装置内閉塞の防止を図る。 3.固形物の粉砕・送り出し機構 固形物の排出配管、バルブの閉塞を防止する。 4.回収溶剤および固形物の連続排出機構 真空蒸留装置内の真空を保ったまま、溶剤と固形物のそれぞれを連続的に系外へ排出することで運転効率を上げ、あわせて、運転エネルギーの抑制を図る。 5.低沸点溶剤と高沸点溶剤を分離回収 分離回収により、回収した溶剤のリサイクルを容易にする。」(当審注:上記「1.」~「5.」は原文では丸数字である。) オ 第52頁右欄第5~最終行 「3.2 連続式真空蒸留機の選定 廃塗料・廃溶剤を溶剤と固形物に分離する真空蒸留機は、本装置の中心部であり、薄膜蒸留機などの数種類の小型実験装置で、数十~数百時間に及ぶ実液運転を行い、性能を比較した。その結果、ほとんどの機種が付着物による装置内部閉塞により、連続運転は困難と判断された。最終的に、伝熱面への付着を防止できる混練押出し機構を有した機種を採用した。特徴は以下の通りである。 1.密閉されたケーシングに、混練押出し翼が水平に配置されている。 2.ケーシング外面のジャケットと、翼軸内部に熱媒が通り、接液部全体が伝熱面となって処理液を加熱、乾燥させる。 3.加熱温度は、熱媒オイルを使用して200℃まで可能。 4.翼回転によって、付着物を削り落とすとともに排出口側へ送り出し、伝熱面の付着堆積を防ぐ。 5.乾燥した固形物は、排出口へ送られる過程で数mm~数cmに粉砕されて排出される。」(当審注:上記「1.」~「5.」は原文では丸数字である。) カ 第54頁表3 「 」 (3) 甲1に記載された発明(甲1発明及び甲1’発明) ア 上記(2)アには、廃塗料リサイクルシステムに関し、塗料工場から排出される廃塗料・廃溶剤は樹脂及び顔料を含むこと、常圧蒸留装置で廃塗料・廃溶剤から溶剤を回収(一次回収溶剤)することが記載されているといえる。 イ 上記(2)イの廃塗料リサイクルシステムのフロー図から、上記常圧蒸留装置からの蒸留残さを真空蒸留機に送り、真空蒸留機において、二次回収溶剤と乾燥固形物に分離することが看取できる。 ウ 上記(2)ウの廃塗料リサイクル装置概略図及びエの記載から、上記真空蒸留機から揮発した溶剤は凝縮器で回収され、乾燥固形物は排出器からコンテナへと落とされることが読み取れる。 エ 上記(2)オには、上記真空蒸留機は、密閉されたケーシングに、混練押出し翼が水平に配置され、ケーシング外面のジャケットと、翼軸内部に熱媒が通り、接液部全体が伝熱面となって処理液を加熱、乾燥させ、翼回転によって、付着物を削り落とすとともに排出口側へ送り出し、伝熱面の付着堆積を防ぐものであることが記載されているといえる。 オ 以上からすると、甲1には、装置に関する次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「塗料工場から排出され、樹脂及び顔料を含む廃塗料・廃溶剤から、溶剤を回収(一次回収溶剤)する常圧蒸留装置と、 常圧蒸留装置からの蒸留残さが送られる真空蒸留機と、 真空蒸留機から揮発した溶剤を回収(二次回収溶剤)する凝縮器と、 真空蒸留機の排出口から排出される乾燥固形物を受け取る排出器と、 排出器から落とされる乾燥固形物を受け取るコンテナと、を備え、 真空蒸留機は、密閉されたケーシングと、ケーシングに水平に配置される混練押出し翼と、ケーシング外面のジャケットと、翼軸内部を通る熱媒と、を備え、接液部全体が伝熱面となって処理液を加熱、乾燥させ、翼回転によって、付着物を削り落とすとともに排出口側へ送り出し、伝熱面の付着堆積を防ぐものである、 廃塗料リサイクル装置。」 また、甲1には、方法に関する次の発明(以下、「甲1’発明」という。)も記載されていると認められる。 「塗料工場から排出され、樹脂及び顔料を含む廃塗料・廃溶剤から、常圧蒸留装置において溶剤を回収(一次回収溶剤)し、 常圧蒸留装置からの蒸留残さを真空蒸留機に送り、 真空蒸留機から揮発した溶剤を凝縮器で回収(二次回収溶剤)し、 真空蒸留機の排出口から乾燥固形物を排出器へ排出し、 排出器からから乾燥固形物をコンテナへ落とし、 真空蒸留機は、密閉されたケーシングに、混練押出し翼が水平に配置され、ケーシング外面のジャケットと、翼軸内部に熱媒が通り、接液部全体が伝熱面となって処理液を加熱、乾燥させ、翼回転によって、付着物を削り落とすとともに排出口側へ送り出し、伝熱面の付着堆積を防ぐ、 廃塗料リサイクル方法。」 (4)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両発明は少なくとも次の相違点を有するものといえる。 <相違点> 本件発明1において、「前記第2気液分離手段の制御は、限界濃縮液温度、又は、前記第2気液分離手段に保持されている濃縮液の液面の変化速度、に基づき」行われるのに対し、甲1発明において、本件発明1の「第2気液分離手段」に相当する「真空蒸留機」の制御を、「限界濃縮液温度」や当該「真空蒸留機」における液面の変化速度に基づいて制御を行っていない点。 イ 相違点について 甲1には、「真空蒸留機」の制御を「限界濃縮液温度」や当該「真空蒸留機」における液面の変化速度に基づいて制御を行うことに関し、何らの記載も示唆もなく、また、そのような制御が本件出願当時の技術常識であるとの証拠も見当たらないので、甲1発明においてそのような制御を行うことを、当業者が容易に想到し得たものであるとはいい難い。一方、本件発明1は当該制御を行うことにより、「被処理液の不揮発性成分が析出しても、優れた処理効率を発揮することができる」(本件明細書の段落【0009】参照。)という有利な効果を発揮するものといえる。 なお、甲2~11は、不揮発成分を含有する有機廃液の処理に関する文献ではなく、上記「第2気液分離手段」を「限界濃縮液温度」や当該「真空蒸留機」における液面の変化速度に基づいて制御することに関し、何ら記載されたものではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明に対して進歩性が欠如するということはできない。 (5) 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記(4)の本件発明1についての検討と同様の理由により、甲1発明に対して進歩性が欠如するということはできない。 (6) 本件発明5について 本件発明5と甲1’発明とを対比すると、両発明は少なくとも上記(4)アの相違点と同様の相違点を有するものといえる。 そして、当該相違点についての検討は、上記(4)イでの検討と同様であるといえるから、本件発明5は、甲1’発明に対して進歩性が欠如するということはできない。 (7) 本件発明6~8について 本件発明6~8は、本件発明5の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記(6)の本件発明5についての検討と同様の理由により、甲1’発明に対して進歩性が欠如するということはできない。 (8) まとめ 以上の検討のとおり、本件発明1~8は、甲1に記載された発明に対して進歩性が欠如するということはできないから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないため、申立理由1(進歩性欠如)を理由に、取り消すことはできない。 3 申立理由2(サポート要件違反)についての当審の判断 (1) 申立理由2(サポート要件違反)についての具体的な指摘事項は、要するに、本件発明4及び8並びに本件明細書の段落【0026】の記載を根拠に、本件発明1及び5における「不揮発性成分に対して耐付着性を呈する」なる発明特定事項の具体的態様として、「表面粗さが1μm以下の状態」が規定されているとし、一方で、本件明細書の比較例1において、接液箇所の表面粗さが0.7μmであるにもかかわらず、「第2蒸発器22である多管式熱交換器の接液箇所(熱媒体Hにより加熱される管の内壁の伝熱面)を確認したところ、析出した不揮発性成分が固着しており、濃縮液が流れなくなっていた。」(本件明細書の【0071】参照。)としており、してみれば、接液箇所の表面粗さが0.7μmの場合を包含する本件発明1、4、5及び8は、「被処理液の不揮発性成分が析出しても、優れた処理効率を発揮することができる溶液処理装置および溶液処理方法を提供する」という上記本件発明の課題を解決できない態様を含むものであり、したがって、本件発明の課題を解決するための手段が反映されていないこととなるというものである。 (2) しかしながら、本件発明1及び5における「不揮発性成分に対して耐付着性を呈する」なる発明特定事項について、本件明細書の段落【0023】によれば、「析出した不揮発性成分が付着し難い状態となるような処理が施されていること」と定義されており、また、同段落【0051】によれば、それにより、「第2気液分離手段(第2気液分離工程)において被処理液の不揮発性成分が析出するような高いレベルの条件で蒸発処理を実施しても、析出成分の付着に伴う処理効率の低下を抑制することができる」という作用効果が得られることを理解できるので、当該発明特定事項により規定される本件発明1、4、5及び8は、上記本件発明の課題を解決するものと当業者が認識し得る範囲内のものであるといえる。 (3) なお、第2蒸発器の接液箇所において「析出した不揮発性成分が固着しており、濃縮液が流れなくなっていた」上記比較例2は、接液箇所が「不揮発性成分に対して耐付着性を呈する」ものとはいえないので、本件発明に包含される態様でないことは明らかであるといえる。 また、上記「析出した不揮発性成分が付着し難い状態」に関し、当該析出物の付着の程度は、有機溶媒や不揮発性成分の種類、被処理液の流れや速度等により変化するのが通常であるから、上記「耐付着性」を呈する「平坦な状態」の具体的な表面粗さも、それに応じて変化するものといえ、「1μm」や「0.7μm」といった絶対的な数値により一義的に決まるものでないことは、当業者であれば理解するものといえる。 (4) 以上のとおりであるから、請求項1、4、5及び8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないため、申立理由2(サポート要件違反)を理由に、取り消すことはできない。 4 申立理由3(明確性要件違反)についての当審の判断 (1) 申立理由3(明確性要件違反)についての具体的な指摘事項は、要するに、本件発明1及び5における「耐付着性」なる発明特定事項が指示する比較の基準又は程度が不明確であり、接液箇所がどのような性質を有していれば、本件発明1及び5の範囲に入るのかを当業者が理解することができないというものである。 (2) しかしながら、本件発明1及び5における「不揮発性成分に対して耐付着性を呈する」なる発明特定事項について、本件明細書の段落【0023】によれば、「析出した不揮発性成分が付着し難い状態となるような処理が施されていることを示しており」と定義されており、また、同段落【0023】~【0026】によれば、当該処理が施された状態として具体的に、「耐付着性材料により被覆された状態」及び研磨処理による「平坦な状態」が示されているのだから、そのような処理により得られる物性により、析出した不揮発性成分が付着し難い状態となる程度であることを、当業者は理解するものといえ、 更に、同段落【0051】によれば、当該「耐付着性」が「第2気液分離手段(第2気液分離工程)において被処理液の不揮発性成分が析出するような高いレベルの条件で蒸発処理を実施しても、析出成分の付着に伴う処理効率の低下を抑制することができる」という作用効果が得られる程度であることを理解できるといえるので、当該発明特定事項の意味内容を当業者が理解できない結果、発明が不明確となるものとはいえない。 (3) 以上のとおりであるから、請求項1及び5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないため、申立理由3(明確性要件違反)を理由に、取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700912

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