特許異議申立
2019-700492
洗面キャビネット
- 審判番号
- 2019-700492
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-037035
- 登録番号
- 特許第6443822号(P6443822)
- 請求日
- 2019年06月19日
- 審決日
- 2020年01月17日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOTO株式会社
- 【権利者代理人】日向寺 雅彦
- 【異議申立人】株式会社 LIXIL
- 【異議申立人代理人】正林 真之
- 【異議申立人代理人】芝 哲央
- 【異議申立人代理人】星野 寛明
- 審判長/審判官
- 審判長 森次 顕
- 審判官 秋田 将行
- 審判官 有家 秀郎
- 分類
- P1651.112-YAA(A47B) / P1651.113-YAA(A47B) / P1651.121-YAA(A47B) / P1651.536-YAA(A47B) / P1651.537-YAA(A47B) / P1651.841-YAA(A47B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6443822号発明「洗面キャビネット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6443822号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第6443822号の請求項1、5に係る特許を維持する。
特許第6443822号の請求項2-4、6及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6443822号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成28年2月29日に出願され、平成30年12月7日にその特許権の設定登録がされ、平成30年12月26に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和1年 6月19日 :特許異議申立人株式会社LIXIL(以下「 申立人」という。)による請求項1~7に
係る特許に対する特許異議の申立て
令和1年 8月15日付け:取消理由通知書
令和1年10月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和1年12月 3日 :申立人による意見書の提出
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「内部に物品を収納可能な収納トレイと、前記収納トレイが設置されるキャビネット本体と、を備えるキャビネットであって、前記収納トレイは、物品が載置可能な底面部と、前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部と、を有し、前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大きく、前記収納トレイは、前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記キャビネット本体に設置することが可能であることを特徴とするキャビネット。」
と記載されているのを、
「内部に物品を収納可能な収納トレイと、互いに対面する左右の側壁を有し前記収納トレイが設置されるキャビネット本体と、前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラーと、を備え、水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置される洗面キャビネットであって、前記収納トレイは、物品が載置可能な底面部と、前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部と、前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部と、を有し、前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大きく、前記収納トレイは、前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記キャビネット本体に設置することが可能であり、前記固定部は、前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であり、前記被固定部は、前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部と、前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部と、を有し、前記固定部は、前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部と、を有し、前記収納トレイは、前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持されることを特徴とする洗面キャビネット。」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記底面部の一端側から下方へ向かって立設された第三立壁部と、前記底面部の他端側から下方へ向かって立設された第四立壁部と、をさらに備え、前記第三立壁部及び前記第四立壁部との間に、前記固定部が配置されることを特徴とする請求項2又は3に記載のキャビネット。」
と記載されているのを、
「前記底面部の一端側から下方へ向かって立設された第三立壁部と、前記底面部の他端側から下方へ向かって立設された第四立壁部と、をさらに備え、前記第三立壁部及び前記第四立壁部との間に、前記固定部が配置されることを特徴とする請求項1に記載の洗面キャビネット。」に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
ク 訂正事項8
【発明の名称】、明細書の段落【0001】、【0006】、【0008】、【0016】、【0021】にそれぞれ「キャビネット」と記載されているのを、「洗面キャビネット」に訂正する。
ケ 訂正事項9
明細書の段落【0007】に記載された
「第1の発明は、内部に物品を収納可能な収納トレイと、前記収納トレイが設置されるキャビネット本体と、を備えるキャビネットであって、前記収納トレイは、物品が載置可能な底面部と、前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部と、を有し、前記収納トレイは、前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大きく、前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記キャビネット本体に設置することが可能であることを特徴とするキャビネットである。」を、
「第1の発明は、内部に物品を収納可能な収納トレイと、互いに対面する左右の側壁を有し前記収納トレイが設置されるキャビネット本体と、前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラーと、を備え、水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置される洗面キャビネットであって、前記収納トレイは、物品が載置可能な底面部と、前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部と、前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部と、を有し、前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大きく、前記収納トレイは、前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記キャビネット本体に設置することが可能であり、前記固定部は、前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であり、前記被固定部は、前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部と、前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部と、を有し、前記固定部は、前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部と、を有し、前記収納トレイは、前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持されることを特徴とする洗面キャビネット。」に訂正する。
コ 訂正事項10
明細書の段落【0015】に記載された
「第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記底面部の一端側から下方へ向かって立設された第三立壁部と、前記底面部の他端側から下方へ向かって立設された第四立壁部と、をさらに備え、前記第三立壁部及び前記第四立壁部との間に、前記固定部が配置されることを特徴とするキャビネットである。」を、
「第2の発明は、第1の発明において、前記底面部の一端側から下方へ向かって立設された第三立壁部と、前記底面部の他端側から下方へ向かって立設された第四立壁部と、をさらに備え、前記第三立壁部及び前記第四立壁部との間に、前記固定部が配置されることを特徴とする洗面キャビネットである。」に訂正する。
サ 訂正事項11
明細書の段落【0009】、【0010】を削除する。
シ 訂正事項12
明細書の段落【0011】、【0012】を削除する。
ス 訂正事項13
明細書の段落【0013】、【0014】を削除する。
セ 訂正事項14
明細書の段落【0017】、【0018】を削除する。
ソ 訂正事項15
明細書の段落【0019】、【0020】を削除する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、
a 訂正前の請求項1の「前記収納トレイが設置されるキャビネット本体」について、「互いに対面する左右の側壁を有」する限定を付加し、
b 「内部に物品を収納可能な収納トレイと、前記収納トレイが設置されるキャビネット本体と、を備える」「キャビネット」について、前記「収納トレイ」及び前記「キャビネット本体」に加えて「前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラー」を備える限定を付加するとともに、「水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置」される「洗面」キャビネットである限定を付加し、
c 「前記収納トレイ」が、「物品が載置可能な底面部と、前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部」に加えて「前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部」を有する限定を付加するとともに、
d 前記収納トレイに付加限定された「固定部」が固定される「被固定部」が、「前記キャビネット本体の前記側壁に設けられ」、「前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部と、前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部と、を有」することを特定し、
e 前記付加限定された「固定部」が、「前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であ」るとともに、「前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部と、を有」することを特定し、
f 前記「固定部」が付加限定された「収納トレイ」及び「被固定部」は、「前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」ことを特定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
g 以上のとおりであるから、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
a 本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面には以下の記載がある(下線は当審において付した。)。
(a)「【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、本発明において、使用者がキャビネット100に向かって立っている位置が、キャビネット100に対する「前方」であると定義する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るキャビネットを示す模式的斜視図である。
なお、図1(a)は、2枚のミラーが開いているキャビネットを示す模式的斜視図であり、図1(b)は、ミラーを取り外した状態のキャビネットを示す模式的斜視図である。
【0025】
図1に示すように、キャビネット100は、例えば樹脂で形成されたキャビネット本体1と、キャビネット本体1の内部空間に載置された収納トレイ2と、を備えている。このキャビネット100は、例えば、水を吐出する水栓装置や、その水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置される。キャビネット本体1の上方には、発光素子を光源に有する照明装置(図示せず)が設置される。この照明装置は、キャビネット100の前方に立っている使用者に向かって光を照射する。キャビネット本体1は、ミラー4を有しており、このミラー4を開閉させることによって、キャビネット本体1の内部空間を開放・隠蔽できる。なお、本発明の実施の形態においては、収納トレイ2は、キャビネット本体1の内部空間に収納されるものであるが、本発明はそれに限らず、例えば、キャビネット本体1の前方に設けられた棚に載置される構成などであっても良い。」
(b)「【0027】
図2、3に示すように、収納トレイ2は、物品が載置可能な底面部6と、底面部6の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部8と、底面部6の他端側(第一立壁部8が設けられた一端側とは反対の側)から上方へ向かって立設された第二立壁部10と、を有している。収納トレイ2は、例えばポリプロピレン樹脂製である。第一立壁部8の高さは、第二立壁部10の高さより大きい。なお、底面部6、第一立壁部8、第二立壁部10は、一体に形成されている。
【0028】
収納トレイ2は、図2(a)に示すような、第一立壁部8が第二立壁部10より前方側に位置するように配置された第一状態と、図2(b)に示すような、第二立壁部10が第一立壁部8より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えてキャビネット本体1に設置することが可能である。
【0029】
収納トレイ2は、キャビネット本体1に対して着脱自在に固定可能な固定部12を有する。固定部12は、底面部6の下面に設けられ、キャビネット本体1に設けられた被固定部14(図4参照)に固定可能な底面側第一固定部12a及び底面側第二固定部12bを有する。即ち、本発明の第1の実施の形態において、固定部12は、底面部6の下面に設けられ、収納トレイ2が第一状態である際に、キャビネット本体1に設けられた被固定部14に固定可能な第一固定部であり、収納トレイ2が第二状態である際にも被固定部14に固定可能な第二固定部である。」
(c)「【0045】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係るキャビネットが備えている収納トレイを示す模式的断面図である。図12は、図11における収納トレイを第一状態でキャビネット本体に取り付ける過程を示す模式的断面図である。図13は、図11における収納トレイを第二状態でキャビネット本体に取り付ける過程を示す模式的断面図である。
なお、図11(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る収納トレイが第一状態でキャビネット本体に取り付けられた状態を示す模式的断面図であり、図11(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る収納トレイが第一状態でキャビネット本体に取り付けられた状態を示す模式的断面図である。
【0046】
図11に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る収納トレイ2Aにおいては、収納トレイ2Aの固定部12Aは、底面部6の下面に設けられ、収納トレイ2Aが第一状態である際に被固定部14に固定可能な第一固定部28と、底面部6の下面に設けられ、収納トレイ2Aが第二状態である際に被固定部14に固定可能な第二固定部30と、を有している。
【0047】
第一固定部28は、被固定部14を横から(底面部6と略平行な方向から)挿入可能な第一横嵌合部32と、第一横嵌合部32より第一立壁部8寄りに設けられており、被固定部14を上方から挿入可能な第一縦嵌合部34と、有している。
【0048】
第二固定部30は、被固定部14を横から(底面部6と略平行な方向から)挿入可能な第二横嵌合部36と、第二横嵌合部36より第二立壁部10寄りに設けられており、被固定部14を上方から挿入可能な第二縦嵌合部38と、有している。」
(d)「【0052】
図12に示すように、収納トレイ2Aを第一状態でキャビネット本体1に取り付ける際には、まず被固定部14を横から(底面部6と略平行な方向から)第一横嵌合部32に挿入し、嵌合(固定)させる。そして、第一横嵌合部32に嵌合された被固定部14を軸に収納トレイ2Aを下方へ回転させ、他の被固定部14を第一縦嵌合部34に挿入し、嵌合(固定)させる。
【0053】
図13に示すように、収納トレイ2Aを第二状態でキャビネット本体1に取り付ける際には、まず被固定部14を横から(底面部6と略平行な方向から)第二横嵌合部36に挿入し、嵌合(固定)させる。そして、第二横嵌合部36に嵌合された被固定部14を軸に収納トレイ2Aを下方へ回転させ、他の被固定部14を第二縦嵌合部38に挿入し、嵌合(固定)させる。」
(e)図1
(f)図11
(g)図12
(h)図13
(i)上記(a)の記載と図1(a)からは、キャビネット本体1が、閉じた際のミラー4の平面と収納トレイ2の底面部とに直交し、互いに対面する複数の側壁部材を有することが看て取れる。そして、収納トレイ2が載置された空間は、前記複数の側壁部材を左右に備え、前記ミラー4により解放・隠蔽できる内部空間となることが看て取れる。
また、図1(a)と(b)とを対比すると、前記ミラー4は、前記側壁部材の前端側に開閉可能に支持されていることが看て取れる
b 上記(ア)に示したa~f事項について
訂正事項1は、上記(ア)に示したa~fの各事項を限定するものであるところ、これらの各限定が明細書等に記載された事項の範囲内であるかを検討する。
(a)上記(ア)a及びbに示した事項について
上記a(a)及びa(i)から、訂正事項1のうち、キャビネット本体が「互いに対面する左右の側壁を有」すること、「キャビネット」が「前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラー」を備えるとともに、「水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置」されること、及び、前記洗面台の上方に設置されるキャビネットを「洗面キャビネット」と限定する訂正は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(b)上記(ア)dに示した事項について
上記a(b)から、被固定部14はキャビネット本体1に設けられており、上記a(i)でみたようにキャビネット本体1は側壁部材を有し、上記図1、11~13のキャビネット本体1の収納空間における収納トレイ2の載置状況からみて、前記被固定部14が、前記側壁部材に設けられること、および、前記被固定部14が、前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部と、前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部とを有することは明らかであるから、訂正事項1のうち、「被固定部」が、「前記キャビネット本体の前記側壁に設けられ」、「前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部と、前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部と、を有」することを特定する訂正は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(c)上記(ア)cに示した事項について
上記a(b)から、「前記収納トレイ」が、「キャビネット本体1に対して着脱自在に固定可能な固定部12を有」しており、上記(b)で見たように、キャビネット本体1の側壁部材に被固定部14が設けられており、上記a(c)から、収納トレイ2Aの固定部12Aは、底面部6の下面に設けられて、当該固定部12Aの第一固定部28と第二固定部30が、それぞれ、第一状態及び第二状態である際に被固定部14に固定可能であるから、訂正事項1のうち、「収納トレイ」が「前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部」を有することを特定する訂正は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(d)上記イ(ア)eに示した事項について
上記a(b)及びa(c)から、「固定部」が、「前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であ」ることが理解でき、また、上記a(b)及び図11~13から、「固定部」が、「前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部と、を有」するものであることは明らかであるから、訂正事項1のうち、「固定部」が、「前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であ」り、「前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部と、を有」するものであることを特定する訂正は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(e)上記(ア)fに示した事項について
上記a(b)及びa(c)から、「収納トレイ」は、「前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合する」ものであり、また、「前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合する」ことは明らかである。
また、第一状態を示す図11(a)及び第二状態を示す図11(b)において、第一縦嵌合部および第二縦嵌合部は、前記底面部6「の下側」に設けられており、前記第一縦嵌合部および第二縦嵌合部に嵌合した前記被固定部14は、前記底面部6「の下側」の位置で当該底面部6に当接していることが看て取れるから、前記被固定部14が前記第一縦嵌合部および第二縦嵌合部に嵌合することで、第一状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6「の下側」が被固定部で支持され、第二状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6「の下側」が被固定部で支持されることとなり、第一状態及び第二状態のいずれの場合も、図11における右側(後方側)の被固定部14は、第一横嵌合部32及び第二横嵌合部36に嵌合しており、図11における左側(前方側)の被固定部14は、収納トレイ2の底面部6を下から支持していると認められる。
そうすると、訂正事項1のうち、「収納トレイ」が、「前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」ことを特定する訂正は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
c よって、訂正事項1に係る訂正は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
d 申立人は、令和1年12月3日に提出した意見書において、「(4-2)訂正要件違反について」との項目を設けて、
「ウ-3.すなわち、出願当初明細書等には、第一状態で被固定部14が第一縦嵌合部34に挿入され嵌合固定され、第二状態で被固定部14が第二縦嵌合部38に挿入され嵌合固定される態様しか記載されておらず、訂正発明1における、広い概念の「支持」手段は記載されていない。」との意見や、
「エ.よって、訂正事項1で追加された「支持」手段は、本件特許の出願当初明細書に記載されておらず、その範囲内でなされた訂正ではない。」との意見を述べている。(意見書第4頁第14行~第6頁第2行)
しかしながら、訂正事項1による訂正は、底面部が被固定部に支持されることを特定したものであり、新たな「支持」手段を追加するものではない。そして、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面には、第一状態で被固定部14が第一縦嵌合部34に挿入され嵌合固定され、第二状態で被固定部14が第二縦嵌合部38に挿入され嵌合固定される態様だけが、第一状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6が被固定部で支持される唯一の態様であるとの説明、あるいは、第二状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6が被固定部で支持される唯一の態様であるとの説明はない。
また、収納トレイは、上記a(a)にあるように、キャビネット本体1の内部空間に載置されるものであり、前記内部空間に載置されるためには収納トレイ2の底面部6が被固定部14によって支持されていれば載置可能であることは明らかであるとともに、縦嵌合部がなければ収納トレイ2の底面部6が被固定部によって支持されないと解さなければならない特段の事情も見当たらない。
そうすると、明細書等に、被固定部が縦嵌合部に挿入され嵌合固定される態様のみが記載されているとしても、「収納トレイ」が、「前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」ことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項から当業者にとって自明な事項であるといえる。
よって、上記の意見は採用できない。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項1に係る訂正は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的について
訂正事項2に係る請求項5についての訂正は、
a 訂正前の請求項5は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2、または、訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項3を引用するものである。
また、訂正後の請求項1は、訂正前の請求項2に記載された、「前記収納トレイは、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能な固定部をさらに有し、前記固定部は、前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能である」との事項に対応する、上記ア(ア)cで示した「前記収納トレイ」が「前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部」を有することと、上記ア(ア)eで示した「固定部」が、「前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であ」ることを規定する事項を含むものである。
一方、訂正後の請求項1は、訂正前の請求項3に記載された事項を含むものではない。
そうすると、訂正後の請求項5は、訂正後の請求項1を引用することにより、訂正前の請求項2または請求項3のうち、訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項5に限定するとともに、訂正事項1のうちの訂正前の請求項2に記載された以外の事項(以下「訂正事項2-1」という。)について上記ア(ア)のとおり限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b また、訂正前の「キャビネット」を「洗面キャビネット」とする訂正(以下「訂正事項2-2」という。)は、訂正事項1に係る訂正後の請求項1が「洗面キャビネット」に訂正されたことと整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項2-1に係る訂正は、上記(ア)のとおり、訂正事項1に係る請求項1の訂正を行うもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記ア(イ)に示したように、訂正事項1は新規事項を追加するものではないから、訂正事項2-1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項2-2に係る訂正は、上記(ア)のとおり、訂正事項1に係る訂正による訂正後の請求項1の記載とを整合させるための訂正であり、新規事項を追加するものではないから、訂正事項2-2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項2に係る訂正は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲を減縮すること、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項3~7
(ア)訂正の目的について
訂正事項3~7に係る訂正は、請求項2~4、6及び7を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項3~7に係る訂正は、請求項2~4、6及び7を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項3~7に係る訂正は、請求項2~4、6及び7を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項8について
(ア)訂正の目的について
訂正事項8に係る訂正は、明細書の【発明の名称】、段落【0001】、【0006】、【0008】、【0016】、【0021】にそれぞれ「キャビネット」と記載されているのを、「洗面キャビネット」に訂正するものであり、明細書の記載と訂正後の請求項1の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項8に係る訂正は、上記(ア)のとおり、明細書の記載と訂正後の請求項1の記載とを整合させるための訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項8に係る訂正は、上記(ア)のとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項9について
(ア)訂正の目的について
訂正事項9は、明細書の段落【0007】の記載と訂正後の請求項1の記載とを整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項9に係る訂正は、上記(ア)のとおり、明細書の記載と訂正後の請求項1の記載とを整合させるための訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項9に係る訂正は、上記(ア)のとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
カ 訂正事項10について
(ア)訂正の目的について
訂正事項10は、明細書の段落【0015】の記載と訂正後の請求項5の記載とを整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項10に係る訂正は、上記(ア)のとおり、明細書の記載と訂正後の請求項5の記載とを整合させるための訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項8に係る訂正は、上記(ア)のとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
キ 訂正事項11
(ア)訂正の目的について
訂正事項11に係る訂正は、明細書の段落【0009】、【0010】を削除して、訂正事項3により請求項2を削除することと整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項11に係る訂正は、明細書の段落【0009】、【0010】を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項11に係る訂正は、明細書の段落【0009】、【0010】を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ク 訂正事項12
(ア)訂正の目的について
訂正事項12に係る訂正は、明細書の段落【0011】、【0012】を削除して、訂正事項4により請求項3を削除することと整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項12に係る訂正は、明細書の段落【0011】、【0012】を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項12に係る訂正は、明細書の段落【0011】、【0012】を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ケ 訂正事項13
(ア)訂正の目的について
訂正事項13に係る訂正は、明細書の段落【0013】、【0014】を削除して、訂正事項5により請求項4を削除することと整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項13に係る訂正は、明細書の段落【0013】、【0014】を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項13に係る訂正は、明細書の段落【0013】、【0014】を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
コ 訂正事項14
(ア)訂正の目的について
訂正事項14に係る訂正は、明細書の段落【0017】、【0018】を削除して、訂正事項6により請求項6を削除することと整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項14に係る訂正は、明細書の段落【0017】、【0018】を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項14に係る訂正は、明細書の段落【0017】、【0018】を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
サ 訂正事項15
(ア)訂正の目的について
訂正事項15に係る訂正は、明細書の段落【0019】、【0020】を削除して、訂正事項7により請求項7を削除することと整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加について
訂正事項15に係る訂正は、明細書の段落【0019】、【0020】を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項15に係る訂正は、明細書の段落【0019】、【0020】を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)一群の請求項、及び独立特許要件について
訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は請求項1を直接的または間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、訂正事項1~15の訂正は、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。
そして、本件においては、訂正前の請求項1~7について特許異議の申立てがされているから、訂正事項1~15の訂正は、いずれも特許異議の申立てがされている請求項に係る訂正であり、訂正事項1~15により特許請求の範囲の限定的減縮が行われていても、訂正後の請求項1~7に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)まとめ
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件訂正発明1~7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件訂正発明1
「【請求項1】
内部に物品を収納可能な収納トレイと、互いに対面する左右の側壁を有し
前記収納トレイが設置されるキャビネット本体と、前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラーと、を備え、水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置される洗面キャビネットであって、
前記収納トレイは、
物品が載置可能な底面部と、
前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、
前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部と、
前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部と、を有し、
前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大きく、
前記収納トレイは、前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記キャビネット本体に設置することが可能であり、
前記固定部は、前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であり、
前記被固定部は、前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部と、前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部と、を有し、
前記固定部は、前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部と、を有し、
前記収納トレイは、
前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、
前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持されることを特徴とする洗面キャビネット。」
本件訂正発明2
「【請求項2】(削除)」
本件訂正発明3
「【請求項3】(削除)」
本件訂正発明4
「【請求項4】(削除)」
本件訂正発明5
「【請求項5】
前記底面部の一端側から下方へ向かって立設された第三立壁部と、
前記底面部の他端側から下方へ向かって立設された第四立壁部と、をさらに備え、
前記第三立壁部及び前記第四立壁部との間に、前記固定部が配置されることを特徴とする請求項1に記載の洗面キャビネット。」
本件訂正発明6
「【請求項6】(削除)」
本件訂正発明7
「【請求項7】(削除)」
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審が令和1年8月15日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア (サポート要件)
本件特許の請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。
イ (明確性)
本件特許の請求項4に係る発明は、明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。
ウ(実施可能要件)
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許の請求項4に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。
エ(新規性)
本件特許の請求項1、2、6及び7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
オ(進歩性)
本件特許の請求項1、2、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
また本件特許の請求項3~5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
証拠
・引用例1:特開2003-144249号公報(甲第1号証)
・引用例2:特開平6-237826号公報(甲第2号証)
(周知技術を示す文献)
・引用例3:特開2002-345609号公報(甲第3号証)
(周知技術を示す文献)
・引用例4:実用新案登録第2520072号公報(甲第4号証)
(周知技術を示す文献)
・引用例5:特開2006-223555号公報(周知技術を示す文献)
・引用例6:実公昭60-24238号公報
(申立人による令和1年12月3日提出の意見書に添付された 参考資料1)
・引用例7:特開2003-50069号公報
(申立人による令和1年12月3日提出の意見書に添付された 参考資料2)
・引用例8:実願昭61-190207号(実開昭63-93840号)の マイクロフィルム
(申立人による令和1年12月3日提出の意見書に添付された 参考資料3)
・引用例9:特開2007-29394号公報
(申立人による令和1年12月3日提出の意見書に添付された 参考資料4)
・引用例10:特開平10-286135号公報
(申立人による令和1年12月3日提出の意見書に添付された 参考資料5)
・引用例11:株式会社LIXIL「ミラーキャビネット ML1シリーズ 、MX1シリーズ 取扱説明書」(甲第8号証)
(2)各証拠の記載
ア 引用例1
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例1(甲第1号証)には、図面と共に次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。以下、他の引用例について同じ。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化粧台本体の収納空間を蓋うスイング式の扉の内面に、着脱自在の小物入れを装着した洗面化粧台に係り、特に、小物入れの装着態様を適宜かえることにより、該小物入れに保管される小物の出し入れを容易にした洗面化粧台に関するものである。
・・・(中略)・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】洗面化粧台の収納扉の裏面に装着される小物入れにおいて、該小物入れの深さが浅いと、背の高い小物例えば歯ブラシや化粧用ペンシルを該小物入れにいれても十分に収納されず収納扉の開閉時に該小物が小物入れから落ちてくるという問題があり、一方、小物入れの深さを深くすると、背の低い小物例えば棒状口紅が該小物入れから出しにくい、という問題があった。本発明はかかる問題点を解決した洗面化粧台を提供することを課題とする。」
(イ)「【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の洗面化粧台の好ましい実施の形態について説明する。図1乃至図6は、本発明の第一実施例を示すものである。先ず、本発明の洗面化粧台の全体を示す図6を参照して説明する。図において、1は化粧台本体で中央の鏡12の両側部に設けた収納空間11、11に、スイング式の扉が開閉自在に設けられている。図6において、左側の扉13は鏡板からなり、右側にスイング式の扉2が本発明の洗面化粧台にかかる扉2である。該扉2はその表面に右側の鏡24を設けており、扉2の内面21の周囲には袖壁22が形成され該内面21に小物入れ3が着脱自在に設けられている。次に、本発明に係る扉2及び小物入れ3等について図1乃至図5を参照して説明する。小物入れ3は扉2の内面21であって両側の袖壁22、22間に着脱自在に装着される。該小物入れ3の両側外面34、34には係合部35、35が形成されており、該扉2の両側の袖壁22、22の内面には係合部23、23が形成されており、該小物入れ3の係合部35、35と該扉2の係合部23、23とを該扉2の内面21に直交する方向に摺動自在に係合させている。
【0010】小物入れ3の係合部35は突条351の上下のそれぞれに山形突起352を間隔をおいて2個形成したものである。扉2の袖壁22に設けた係合部23は係合溝231の上下のそれぞれに山形凹部232を間隔をおいて2個形成したものである。該それぞれの係合部23、35が係合又は離脱するとき双方の係合部23、35又は一方の係合部23又は係合部35が弾性変形をする。かくして、該双方の係合部23、35の係合状態が安定するのである。
【0011】小物入れ3はその前面壁32の該開口周縁31までの高さhに対して該小物入れ3の後面壁33の該開口周縁31までの高さHを大きくしている。従って、小物入れ3を扉2の内面21に装着するとき、該小物入れ3の前後を反転させて、該小物入れ3の前面壁32を該扉2の内面21に対向させて装着する場合と、小物入れ3の後面壁33を該扉2の内面21に対向させて装着する場合とを必要に応じて選択することができる。図4は小物入れ3の後面壁33を該扉2の内面21に対向させて装着した場合であり、このとき小物入れ3の高さの低い方の前面壁32が前方に位置するから、背の低い小物36例えば棒状口紅を小物入れ3に入れてもその出し入れに支障がない。図5は小物入れ3の前面壁32を該扉2の内面21に対向させて装着した場合であり、このとき小物入れ3の高さの高い方の後面壁33が前方に位置するから、背の高い小物36例えば歯ブラシや化粧用ペンシルを小物入れ3に入れてもその出し入れに支障がないと同時に扉3の開閉時に該化粧用ペンシル等の小物36が小物入れ3から落ちてくることはないのである。」
(ウ)「【0014】
【発明の効果】請求項1に記載した洗面化粧台は、化粧台本体1に設けた収納空間11を開閉自在に蓋うスイング式の扉2の内面21に、上端部が開口周縁31で形成される開口部とした小物入れ3を着脱自在に装着した洗面化粧台において、該小物入れ3の前面壁32の該開口周縁31までの高さhに対して該小物入れ3の後面壁33の該開口周縁31までの高さHを大きくするとともに、該小物入れ3の前面壁32と後面壁33とのいずれか一方が該扉2の内面21に選択的に対向するよう該小物入れ3を該扉2の内面21に装着したから、小物入れ3に入れる小物36の高さ寸法に応じて小物入れ3の装着態様を替えることにより小物入れ3に入れた小物36の出し入れを円滑に行うことができる。」
(エ)上記(イ)、下記図1及び図5から、引用例1における小物入れ3には、物品が載置可能な底面部があることが見て取れる。
a 図1
b 図5
(オ)上記(イ)及び下記図6から、スイング式の扉2は、互いに対面する左右の袖壁を有すること、化粧台本体1の収納空間11は、互いに対面する側壁を有することが見て取れる。
また、図6からみて、前記収納空間11を蓋うスイング式の扉2は、前記側壁の前側に開閉自在に支持されることが看て取れる。
図6
(カ)上記(ア)~(オ)からみて、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明1」という)が記載されているものと認められる。
「小物入れ3と、中央の鏡12の両側部に互いに対面する側壁を有する収納空間11を設けた化粧台本体1と、前記収納空間11の前記側壁の前側に開閉自在に支持されて前記収納空間11を蓋い、その表面に鏡24が設けられるとともにその内面の周囲には袖壁が形成され、前記内面に小物入れ3が着脱自在に設けられるスイング式の扉2とを備える洗面化粧台であって、
前記小物入れ3は底面部を有し、その前面壁の該開口周縁までが高さhであり、該小物入れ3の後面壁の該開口周縁までが高さHであって、前記高さhに対して、前記高さHを大きくしており、
前記小物入れ3の両側外面には、突条の上下のそれぞれに山形突起を間隔をおいて2個形成した係合部35が形成されており、前記扉2の両側の袖壁の内面には係合溝の上下のそれぞれに山形凹部を間隔をおいて2個形成した係合部23が形成されており、前記小物入れ3の係合部35と前記扉2の係合部23とを該扉2の内面に直交する方向に摺動自在に係合させて、前記それぞれの係合部23、35が係合又は離脱するとき双方の係合部23、35又は一方の係合部23又は係合部35が弾性変形をして、前記双方の係合部23、35の係合状態が安定するものであり、
前記スイング式の扉2の内面に前記小物入れ3を着脱自在に装着するものであり、前記小物入れ3を前記扉2の内面に装着するとき、前記小物入れ3の前後を反転させて、前記小物入れ3の前面壁を前記扉2の内面に対向させて装着する場合と、前記小物入れ3の後面壁を前記扉2の内面に対向させて装着する場合とを必要に応じて選択することができる洗面化粧台。」
イ 引用例2
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例2(甲第2号証)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、陳列棚等の棚板装置に係わり、更に詳しくは店舗用の商品陳列棚や整理棚の棚板を前後反転させて取付可能とし、棚板の前後縁部の異なる機能を選択して利用することが可能な陳列棚等の棚板装置に関する。」
(イ)「【0010】
【実施例】次に添付図面に示した実施例に基づき更に本発明の詳細を説明する。図1~図5は本発明の陳列棚等の棚板装置の代表的実施例を示し、図中1は棚板、2は陳列棚本体の支柱、3はブラケット、4は棚受具をそれぞれ示している。
【0011】前記棚板1は、前後縁部の一方をデザイン優先部Aとし、他方を機能優先部Bとしたものであり、前記支柱2にブラケット3及び棚受具4からなる支持手段を用いて前後反転させて取付けることを可能となしたものである。」
(ウ)「【0017】前記ブラケット3は、金属板をプレス成形して製造したもので、基端部に前記支柱2の係止孔11,…に嵌合係止可能な下向きフック12,…を形成するとともに、先端に上向き突起13を形成し、また上縁部は直線状となしている。
【0018】前記棚板1は、図1及び図8に示すように、下面の両側部の前後部に前記ブラケット3の突起13が嵌入し得る直径を有する係合孔14,…を穿設し、デザイン優先部Aの端縁からそれに近接する係合孔14までの距離L1と機能優先部Bの端縁からそれに近接する係合孔14までの距離L2を一致させ、対角位置にある一対の係合孔14,14は180°回転対称な位置に設定している。更に、本実施例では、それぞれの係合孔14の内方位置に別の係合孔15,…を前記同様な位置関係を有するように穿設し、ブラケット3を取付ける支柱2,2の間隔の変化により、あるいは係止孔11を2列設けた場合において外側の列又は内側の列の係止孔11を選択してブラケット3を取付ける場合において、係合孔14,…又は係合孔15,…を選択することが可能となっている。
【0019】前記棚受具4は、合成樹脂製で形成したもので、図1、図9及び図10に示すように、平面視長方形の基体16の長手方向一側寄り上部に前記棚板1の係合孔14又は15に抜け止め係合する係合突部17を突設するとともに、該係合突部17の直下であって基体16の下面に前記ブラケット3の上縁部に係合する前後方向の凹溝18を形成したものである。
【0020】そして、前記ブラケット3及び棚受具4からなる支持手段を用いて前記棚板1を支持するには、図1及び図8に示すように、先ず立設した支柱2の係止孔11,…に、ブラケット3のフック12,…を嵌合係止して取付け、次に棚板1の下面に形成した係合孔14,…又は係合孔15,…を選択し、図例の如くその選択した後方の係合孔14に、棚受具4の基体16の長手方向一側寄り上部に突設した係合突部17を抜け止め係合するとともに、基体16の長手方向を横方向に向けて取付け、そして棚板1を下方に落し込むことにより、前方の係合孔14に前記ブラケット3の先端に形成した上向き突起13を嵌入すると同時に前記棚受具4の基体16下面に形成した凹溝18を該ブラケット3の上縁部の後部に係合させて棚板1を前後方向及び横方向の移動を規制した状態で支持するものである。また、図1に示した棚板1の取付状態とは前後逆の取付状態である図2に示した場合も同様に支持することが可能である。
【0021】尚、前記機能優先部Bとして、棚板1の前後一側縁部を上方に延設して当止部を形成すれば、棚板1に載置した物品の落下を防止する機能を備え、その一方、棚板1は前後縁部の厚みが異なる側面視倒L字形となってデザイン的にも前後縁部が異なるものとなる。更に、棚板1の前後縁部の一方を斜面となし、他方を側面視半円形となして、前後縁部のデザインが異なるものとし、斜面には見出し等の機能を付与することも可能である。
【0022】
【発明の効果】以上にしてなる本発明の陳列棚等の棚板装置は、立設した支柱間に棚板を前後反転させて取付けることが可能な支持手段にて、目的に応じてデザイン優先部又は機能優先部を前側又は後側に設定して取付けて使用することが可能であるので、使用態様の多様性を実現できる。そして、デザイン優先部を前側に設定した場合には、陳列棚等の外観性を高める得るとともに、後側の機能優先部に衝立部材や仕切部材を装着して使用でき、一方、機能優先部を前側に設定した場合には、前側に衝立部材や仕切部材を装着して使用でき、見出し機能を衝立部材に付与して使用することもできるのである。」
(エ)上記(ア)~(ウ)からみて、引用例2には、以下の事項(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「デザイン優先部Aの縁部と機能優先部Bの縁部を有する棚板を、支柱にブラケット及び棚受具からなる支持手段を用いて前後反転させて取付けることを可能となした棚板装置において、前記ブラケットの先端に形成した上向き突起及び前記棚受具の基体の上部に突設した係合突起にそれぞれ固定可能な係合孔が前記棚板の下面の前後部に形成され、前記係合孔は前記棚板の前側の端縁からそれに近接する係合孔までの距離L1と後側の端縁からそれに近接する係合孔までの距離L2を一致させ、対角位置にある一対の係合孔は180°回転対称な位置に設定しており、前記棚板の下面に形成した係合孔のうち、後方の係合孔に前記棚受具の前記係合突部を抜け止め係合するとともに、前方の係合孔に、前記ブラケットの前記上向き突起を嵌入した取付状態と、当該取付状態とは前後逆の取付状態とが可能な棚板装置。」
ウ 引用例3
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例3(甲第3号証)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デパートやスーパーマーケット等で使用される棚装置、特に衣料品の陳列に適した棚装置に関する。」
(イ)「【0004】本発明は、上述の問題点に鑑み、陳列する商品に応じて、棚板の形状や機能を容易に選択及び変更して、様々な態様で使用することができ、もって利用目的の多様化を図ることができ、特に衣料品等の陳列に好適な棚装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)左右の支柱の前面に、左右1対のブラケットを等高となるように係止し、両ブラケットに、平板の前縁に折曲片を設けた棚板を、上下に反転させることにより、前記折曲片が上下いずれの方向をも向くことができるようにして装着する。
【0006】(2)左右の支柱の前面に、左右1対のブラケットを等高となるように係止し、両ブラケットに、平板の前縁と後縁とに互いに上下逆向きの第1の折曲片と第2の折曲片とを設けた棚板を、上下または前後に反転させることにより、前記第1及び第2の折曲片のいずれもが、前縁において上下いずれの方向をも向くことができるようにして装着する。」
(ウ)「【0020】棚板(3)の平板(9)における左右両端部には、前後1対の係合孔(8)が穿設されている。平板(9)の前端から前部の係合孔(8)までの距離と、平板(9)の後端から後部の係合孔(8)までの距離は等しく、かつこれらの2個の係合孔(8)の位置は、ブラケット(4)の2個のねじ孔(7)と整合するものとしてある。
【0021】各係合孔(8)に、ねじ孔(7)に螺合した有頭ねじ(12)のピン状の頭部(12a)を嵌合することにより、棚板(3)は、その前後の向きを変えることなく、上下を反転させて(図2及び図3参照)、または前後の向きを変えて、上下を反転させて(図4及び図5参照)、左右のブラケット(4)に装着することができる。」
(エ)「【0025】図5は、棚板(3)を、図2に示す状態から前後の向きを反転して、ブラケット(4)に取り付けた状態を示している。」
(オ)「【0028】有頭ねじ(12)を通常の止めねじとして、棚板(3)をブラケット(4)にねじ止めしたり、または、棚板(3)の上下面にピンを突設して、その上下いずれかのピンを、ブラケット(4)の水平部分(5)に穿設した係合孔に嵌合するようにしてもよい。
【0029】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、1枚の棚板で、折曲片が上向きと下向きの2態様で商品を陳列することができ、陳列商品の区分、品名等を貼付、表示できる折曲片を、棚板の取り付け高さ位置に応じて、顧客に見やすい位置とすることができるとともに、折曲片が上向きの場合、これを商品の前方への落下防止に役立てることができる。また、折曲片の形成は、棚板の補強効果にも寄与する。
【0030】請求項2記載の発明によれば、第1の折曲片が前縁に位置して上方を向く態様と、同じく下方を向く態様と、第2の折曲片が前縁に位置して上方を向く態様と、同じく下方を向く態様との4態様で商品を陳列することができるので、使い勝手がよく、しかも棚板の前後に折曲片があるので棚板の補強効果が大である。第1または第2の折曲片を前端に上向きとした場合、商品の前方への落下防止に役立てることができる。」
(カ)上記(ア)~(オ)からみて、引用例3には、以下の事項(以下「引用例3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「平板の前縁と後縁に第1の折曲片と第2の折曲片を設けた棚板を前後反転させて利用可能な棚装置において、前記棚板の左右両端部に設けられる係合孔は、前記ブラケットに設けられたねじ孔に螺合した有頭ねじのピン状の頭部に嵌合することにより、前記棚板の前後の向きを変えて前記ブラケットに装着するものであり、前記棚板の前端から前部の前記係合孔までの距離と、前記の後端から後部の前記係合孔までの距離は等しく、かつこれらの2個の係合孔の位置は、ブラケットの2個のねじ孔と整合するものである棚装置において、前記棚板を前記ブラケットに装着するにあたって、前記棚板にピンを突設して、そのピンを、ブラケットの水平部分に穿設した係合孔に嵌合するようにして固定するものでもよい棚装置。」
エ 引用例4
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例4(甲第4号証)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【考案の詳細な説明】
産業上の利用分野
本考案は、棚板を有する棚架設装置に関するものである。」(第1頁左欄第7~10行)
(イ)「従来の技術
従来のこの種の棚架設装置は、第3図に示すように棚板8の下面に棚受け用の凹部9を設け、この凹部9をサイドパネル10より突出した支持ピン10に上方より嵌合しセットしてなるものであった。
考案が解決しようとする課題
このような従来の構成では、下方より棚板8を見た場合、凹部9と支持ピン10が見え、見苦しいとともに、長い棚を使用する場合、反り,ねじれが発生しやすいという問題があった。
本考案はこのような問題点を解決するもので、棚板の前後端部に縁材を設け、棚受けの取付部を簡単にするとともに、棚板の剛性をよくし、棚板上の物の落下をふせぐことを目的としたものである。」(第1頁左欄第11行~右欄第9行)
(ウ)「課題を解決するための手段
前記課題を解決するため、本考案の棚架設装置は棚板と、前記棚板の両端を突出した各2つのピンで受ける棚固定部材よりなり、前記棚板の前縁と後縁の全長にわたり縁材を取り付け、前記縁材の上下端をそれぞれ棚板上面および下面より突出する構成としたものである。
作用
上記構成の本考案の棚架設装置は、棚板の前後端部に全長にわたり縁材を設け、前記縁材の上下端をそれぞれ棚板上面下面より突出することにより、棚板の剛性をよくするとともに、縁材の下面突出により棚受の当たり部を形成し、また、縁材の上面突出により棚板上の物の落下防止としてなるものである。」(第1頁右欄第10行~第2頁左欄第7行)
(エ)「図において、1はキャビネットであり、キャビネット1の両端にはサイドパネル2がそれぞれ設けられている。前記キャビネット1の上部には、棚板上面および下面より突出した縁材3を両端部に有する棚板4が配設されている。棚板4は、前記サイドパネル2側面に取付けられている棚受5により支持されている。棚板4上には、ツボ6、植木ばち7が載置されている。
上記構成において、棚板4の前後端部に設けられた縁材3の下面突出部により棚受けの当たり部を形成し、上面突出部により上部のツボ6、植木ばち7の落下防止となり、さらに棚板の剛性を縁材の取付けによりよくしている。」(第2頁左欄第11行~右欄第3行)
(オ)上記(イ)を踏まえると、図1から、棚板下面より縁材を突出することにより、下方より棚板を見た場合、当該縁材の下面突出部に当たっている棚受5が見えないようになっていることが看て取れる。
(カ)上記(ア)~(オ)からみて、引用例4には、以下の事項(以下「引用例4記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「棚架設装置において、棚板の前後端部の下面より縁材を突出することにより、下方より棚板を見た場合、当該縁材の下面突出部に当たっている棚受が見えず、見苦しくない構造。」
オ 引用例5
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例5には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットに設けた棚ダボに載置される棚板の構造に関するものである。」
(イ)「【0009】
また、前記棚板4は、キャビネット1に固定される固定棚10の上面に被せられると共に、固定棚10の上面近傍の前側及び奥側に設けられた棚ダボ2,3が棚板4の棚ダボ差込部5及び棚ダボ受け部6にそれぞれ着脱可能に差し込まれ、前記棚板4の前端部4bから下方に向けて固定棚10を隠すための隠し片11が垂設されていると共に前記棚板4の後端部4aから上方向Dに向けてキャビネット1の背板14に当接可能な凸リブ12が立設されているのが好ましく、この場合、棚板4を固定棚10に被せることで、固定棚10を棚板4として使用可能となり、また棚板4を固定棚10の上面近傍の棚ダボ2,3に取り付けることで、棚板4は固定棚10と一体化されると共に、棚板4に対して様々な外力が加わった場合でも棚板4が外れて落下するのを防止できるようになる。しかも、棚板4は固定棚10に対して着脱自在となるので、棚板4と固定棚10との使い分けが容易となる。また棚板4の取り付け状態では、棚板4の前端部4bから垂下する隠し片11によって固定棚10を覆い隠すことができるので、棚板4と固定棚10とが一体化した外観を呈するので、見栄えが良好となり、さらに棚板4の後端部4aから立設する凸リブ12をキャビネット1の背板14に当接させることで、地震時に凸リブ12が背板に当たって棚板4の回転を阻止するので、棚ダボ差込部5及び棚ダボ受け部6による外れ防止効果とあいまって、棚板4の回転防止に一層効果的となると共に、棚板4上に濡れた物が置かれた場合でも、棚板4の後端部4aと背板との隙間に水が流れ込むのを凸リブ12にて防止できるようになる。」
(ウ)「【0018】
次に、棚板4を取り付けるにあたっては、図4に示すように、棚板4を後端部4a側が前端部4b側よりも下になるような斜め姿勢にして、棚ダボ差込部5の後方Aに開口した第1棚ダボ差込口5cから奥側の棚ダボ2を差し込み、さらに、棚ダボ受け部6の斜め後方下方Bに開口した第2棚ダボ差込口6cから前側の棚ダボ3を差し込む。その後、棚板4の前端部4b側を下に降ろして図5に示す水平姿勢にすることで、前後の棚ダボ2,3が棚ダボ差込部5と棚ダボ受け部6とにそれぞれ引っ掛けられた状態となり、取り付け作業が完了する。なお、棚板4を取り外すときは、前記動作と逆の動座で外すことができる。」
(エ)「【0022】
図7及び図8は本発明の他の実施形態であり、前記実施形態の棚板4(以下「着脱棚板4」という)とは別に、キャビネット1に固定される固定棚10を備えた場合の一例を示している。本例では固定棚10の上面は平坦面となっている。また固定棚10の上面近傍の前側及び奥側には、着脱棚板4を取り付けるための棚ダボ2,3がそれぞれ設けられている。図7の例では、上下2段の固定棚10に着脱棚板4を取り付ける場合を示しているが、勿論、図7の例に限定されるものではない。また本例の着脱棚板4は、キャビネット1に固定される固定棚10の上面に被せられると共に、固定棚10の上面近傍の前側及び奥側に設けられた棚ダボ2,3が着脱棚板4の棚ダボ差込部5及び棚ダボ受け部6にそれぞれ着脱可能に差し込まれるようになっている。なお、着脱棚板4の棚ダボ差込部5及び棚ダボ受け部6の構造等は前記図1~図6の実施形態と同様であり、対応する部位には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0023】
しかして、着脱棚板4を固定棚10に被せた状態で取り付けるにあたっては、前記図4と同じ方法で、着脱棚板4を後端部4a側が前端部4b側よりも下になるような斜め姿勢にして、前後の棚ダボ2,3を棚ダボ差込部5と棚ダボ受け部6とにそれぞれ引っ掛けた状態で取り付けることができる。なお、着脱棚板4を取り外すときは、前記動作と逆の動座で外すことができる。これにより、図7に示すように、着脱棚板4を固定棚10に被せることができ、固定棚10を着脱棚板4として使用できるようになる。このとき、図8に示すように、棚ダボ受け部6の第2外れ防止突片6bと隠し片11とが固定棚10の前端部側の上面コーナー部にて支持されるようになり、着脱棚板4の前端部4b側をそのまま固定棚10の上に安定良く設置できるようになる。つまり、着脱棚板4は棚ダボ2,3に引っ掛けられると同時に固定棚10でも支持される形となり、結果、着脱棚板4の上の荷物荷重が固定棚10によって十分に受け止められる構造となり、安定した着脱棚板4の取り付け状態を確保できるものである。
【0024】
しかも固定棚10の上面近傍に設けた棚ダボ2,3に着脱棚板4を取り付けることで、誰でも簡単に着脱棚板4の取り付け、取り外しができるものでありながら、着脱棚板4の上方向Dへの跳ね上がり防止や回転防止、さらに前方向Cへのずれ止めが確実となり、地震等の振動に対して簡単に落下するのを防止できるようになる。しかも、着脱棚板4を棚ダボ2,3から簡単に取り外せるので、着脱棚板4と固定棚10との使い分けが容易となる。また着脱棚板4の取り付け状態では、着脱棚板4の前端部4bから垂下する隠し片11によって固定棚10を覆い隠すことができるので、着脱棚板4と固定棚10とが一体化した外観を呈するようになり、見栄えが良好になる利点もある。
【0025】
前記実施形態ではミラーキャビネット用の棚板4を例示したが、必ずしもこれに限らず、本発明の棚板4は、地震対策用の書棚等の家具全般にも広く適用可能である。」
(オ)図1
(カ)図4及び図5
(キ)図8
(ク)上記(イ)、(エ)及び図8から、隠し片11は、着脱棚板4の下に存在する「固定棚10」を覆い隠すとともに、前記着脱棚板4の下に存在する「前側の棚ダボ3」、「第2外れ防止突片6b」及び「ずれ防止突起6d」も覆い隠して見栄えが良好となっているといえる。
また、図1のように固定板10が無い場合にも、隠し片11は、着脱棚板4の下に存在する「前側の棚ダボ3」、「第2外れ防止突片6b」及び「ずれ防止突起6d」を覆い隠して見栄えが良好となっているといえる。
そうすると、上記着脱棚板4は、隠し片11により当該着脱棚板4の下に存在する部材を覆い隠し、見栄えが良好となる構造になっているといえる。
(キ)上記(ア)~(ク)からみて、引用例5には、以下の事項(以下「引用例5記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「キャビネットに設けた棚ダボに載置される着脱棚板の構造であって、棚板4を後端部4a側が前端部4b側よりも下になるような斜め姿勢にして、棚ダボ差込部5の後方Aに開口した第1棚ダボ差込口5cから奥側の棚ダボ2を差し込み、さらに、棚ダボ受け部6の斜め後方下方Bに開口した第2棚ダボ差込口6cから前側の棚ダボ3を差し込み、その後、棚板4の前端部4b側を下に降ろして水平姿勢にすることで、前後の棚ダボ2、3が棚ダボ差込部5と棚ダボ受け部6とにそれぞれ引っ掛けられた状態となり、取り付け作業が完了するものであり、前記着脱棚板4の前端部4bから垂下する隠し片11によって前記着脱棚板の下に存在する部材を覆い隠し、見栄えが良好となる着脱棚板の構造。」
カ 引用例6
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例6(参考資料1)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「以下本考案の実施例を第2図乃至第5図に基づき説明する。下部に洗面台2、上方に鏡3及び収納部4b等を備えた化粧棚5よりなる洗面化粧台1において、洗面化粧台1を部屋の間仕切りとして使用する場合には第2図に示すごとく、洗面台2及び化粧棚5の背板6b、6cを、洗面台2及び化粧棚5の収納部4b、4c背面開口部枠内寸法と同等の大きさに形威し、しかも両面を化粧面とし該収納部4b、4c空間の適宜位置に立設させ、複数個の係止具7,7cによって収納部4b、4c内の底、側壁、天井に螺子等で係止固定し収納部4b、4cを表裏2分割せしめ、各々の収納部4b、4b及び4c、4cの対向する側板8、8に棚板載置用ダボ等を設けその上方に複数個の棚板9b、9cを載置する。」(第1頁右欄第4~18行)
(イ)第2図
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用例6には、以下の事項(以下「引用例6記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「下部に洗面台2、上方に鏡3及び収納部4b等を備えた化粧棚5よりなる洗面化粧台1において、各々の収納部4b、4b及び4c、4cの対向する側板8、8に棚板載置用ダボ等を設けその上方に複数個の棚板9b、9cを載置する技術。」
キ 引用例7
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例7(参考資料2)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0015】図1に示すように、実施形態の洗面化粧台は、床面に載置され、上端にカウンター2をもつフロアキャビネット1と、カウンター2内に設けられた洗面鉢3と、カウンター2上で洗面鉢3の奥端に設けられた水栓金具4と、水栓金具4より奥端でカウンター2から垂直に立ち上がる前面パネル5と、前面パネル5より上方で壁面に固定され、上端に照明装置7をもつミラーキャビネット6とからなる。前面パネル5の表面には鏡5aが貼着されている。
【0016】ミラーキャビネット6は、図2に示すように、左側に位置する左室6aと、中央に位置する中室6bと、右側に位置する右室6cとの三室に縦に区画されており、左室6a、中室6b及び右室6cはそれぞれ水平方向に揺動する前扉6d、6e、6fにより開閉可能になっている。前扉6d、6fは鏡により構成されている。前扉6eは、図5に示すように、ガラス層21aの裏面に金属層21bが形成された鏡21と、鏡21の裏面に一体に形成された発泡ウレタンからなる断熱層22とからなる。
【0017】図2に示すように、中室6bは上下左右及び奥の壁8が発泡ウレタンからなる断熱材により区画されている。左右の壁8には、図4に示すように、上下方向に適宜間隔毎にダボ穴8eが設けられており、左右で対をなすダボ穴8eにダボ9を挿入することにより、図2に示すように、棚10、11及び保冷保温ユニット12が自由な高さで載置可能になっている。」
(イ)図1
(ウ)図2
(エ)上記(ア)~(ウ)から、引用例7には、以下の事項(以下「引用例7記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「洗面化粧台は、カウンター2内に設けられた洗面鉢3と、カウンター2上で洗面鉢3の奥端に設けられた水栓金具4と、水栓金具4より奥端でカウンター2から垂直に立ち上がる前面パネル5と、前面パネル5より上方で壁面に固定され、上端に照明装置7をもつミラーキャビネット6とからなり、前面パネル5の表面には鏡5aが貼着されており、前記ミラーキャビネット6の中室6bの左右の壁8には、上下方向に適宜間隔毎にダボ穴8eが設けられており、左右で対をなすダボ穴8eにダボ9を挿入することにより、棚10、11が自由な高さで載置可能になっている洗面化粧台。」
ク 引用例8
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例8(参考資料3)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「第1図で示す固定具1は、本考案の一例であるが、棚板7を上から押えるための上部片2と、棚受けダボ5を横方向から銜え込むための切り込み部4を持つ垂直片3の2片からなる、横断面逆L字状の樹脂製、又は金属製の成形品である。第2図は固定具1を左手前の棚受けダボ5に装着する手順を示す。まず、直接棚受けダボ5に当らないよう、棚板中心線側の上方より、固定具垂直片3を側板6と棚板7との細隙に挿入し、次に上部片2を棚板上に当てながら、切り込み部4に棚受けダボ5が入りきる迄手前に移動させて終わる。」(明細書第3頁第12行~第4頁第2行)
(イ)「第4図は同じ固定具1を右奥棚受けダボ5にも装着して棚板一枚の固定が完了することを示す。一般的には棚板7をやや斜めにして側板6との隙が広がる方に、左右一個ずつの固定具使用で充分であり、全ての棚受けダボへの使用、すなわち4個使いを必要としない。第5図で示す固定具1’は本考案の別例で、垂直片に付く横型切り込み部を2個に増やして、棚受けダボ銜え込みの方向性をなくしたものである。」(明細書第4頁第15行~第5頁第3行)
(ウ)第2図
(エ)第4図
(オ)第5図
(カ)上記(ア)~(オ)から、引用例8には、以下の事項(以下「引用例8記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「棚板7を上から押えるための上部片2と、棚受けダボ5を横方向から銜え込むための切り込み部4を持つ垂直片3の2片からなる固定具1’であって、棚板中心線側の上方より、固定具垂直片3を側板6と棚板7との細隙に挿入し、次に上部片2を棚板上に当てながら、切り込み部4に棚受けダボ5が入りきる迄手前に移動させて用いるものであり、前記垂直片に付く横型切り込み部を2個に増やして、棚受けダボ銜え込みの方向性をなくした固定具。」
ケ 引用例9
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例9(参考資料4)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る収納棚は、前面が開口する収納部1の両内側面にダボ3a、3bを前後方向に複数設け、収納部1の両内側面間に架設される棚板2の両側面の前記ダボ3a、3bに対応する位置に前後方向に長い凹所7a、7bを形成し、各凹所7a、7bの上底面部8を前後方向に移動自在にダボ3a、3bに載置して、棚板2を収納部1内に収納した収納位置から収納部1の前面開口1eよりも前方に突出した突出位置まで出入自在にしたことを特徴とするものである。この構成により、棚板2を収納部1内に収納した収納位置から収納部1の前面開口1eよりも前方に突出した突出位置まで引き出して該棚板2に載置された収納物を取り出したり、この突出位置に引き出した棚板2に収納物を載置した後、収納位置に押し込むことで収納物を収納したりと、上段の棚板2に邪魔されることなく容易に収納物を出し入れでき、またこれにより棚板2間の距離を収納物の高さと略同じ程度に短くすることができて収納棚の収納量を多くできる。また棚板2を収納部1から前方に突出した突出位置に引き出して容易に掃除ができる。」
(イ)「【0032】
また図13の説明図に示すように上記凹所7a、7bの下面に、下方から凹所7a、7b内にダボ3a、3bを挿入するためのダボ挿入用開口12と、棚板2を収納位置及び突出位置に配した際におけるダボ3a、3bの下方に位置するダボ抜け防止用横片部13を設けても良い。即ち図13では図1の例の棚板2において、各凹所7a、7bの前端部及び後端部の下面にダボ抜け防止用横片部13を棚板2に一体に設けてあり、各凹所7a、7bの前端部に設けたダボ抜け防止用横片部13と後端部に設けたダボ抜け防止用横片部13の間の開口をダボ挿入用開口12としている。これにより棚板2が収納位置及び突出位置にある時には収納位置ダボ受け部9及び突出位置ダボ受け部10の夫々の下方に位置するダボ抜け防止用横片部13により各凹所7a、7b内にあるダボ3a、3bが凹所7a、7bから抜け出ることを防止できて、棚板2がダボ3a、3bから外れることを防止できる。また棚板2を収納部1に取付ける際には、棚板2を前後方向において突出位置と収納位置の中程に配置し、該棚板2を下方に移動させることで、ダボ挿入用開口12を介して下方から各凹所7a、7b内に収納部1の両内側面から内側方に向けて突出したダボ3a、3bを容易に挿入でき、棚板2の収納部1への取り付けが容易になる。なお本例では図1の棚板2にダボ挿入用開口12及びダボ抜け防止用横片部13を設けた例を示したが、同様に図5、図7、図9、図11の例の棚板2にダボ挿入用開口12及びダボ抜け防止用横片部13を設けても良いものとする。」
(ウ)図13
(エ)上記(ア)~(ウ)から、引用例9には、以下の事項(以下「引用例9記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「前面が開口する収納部1の両内側面にダボ3a、3bを前後方向に複数設け、収納部1の両内側面間に架設される棚板2の両側面の前記ダボ3a、3bに対応する位置に前後方向に長い凹所7a、7bを形成し、各凹所7a、7bの上底面部8を前後方向に移動自在にダボ3a、3bに載置して、棚板2を収納部1内に収納した収納位置から収納部1の前面開口1eよりも前方に突出した突出位置まで出入自在にした収納棚において、上記凹所7a、7bの下面に、下方から凹所7a、7b内にダボ3a、3bを挿入するためのダボ挿入用開口12と、棚板2を収納位置及び突出位置に配した際におけるダボ3a、3bの下方に位置するダボ抜け防止用横片部13を設けた収納棚。」
コ 引用例10
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用例10(参考資料5)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、棚板その他、支持固定が必要な物を対象とした支持固定機構に関する。」
(イ)「【0016】図6は、被支持部材100と支持具200の別態様を示す図1に相当する図面である。図1においては、被支持部材100の係止用凹部110の絞り部112が開口部近傍111の両側に設けられていたが、図6に示す態様では、片側にのみ絞り部112が設けられている。かかる態様の場合は、支持具200は、図示するように支持具本体部240の上部に、一方向に突出する棒状の固定用ダボ部210が設けられ、該固定用ダボ部210が設けられた支持具本体部240の面と隣接する側面にバネ作用体220が下方に向けて延設され、該バネ作用体220の途中の外側面上に突部が設けられて係止用突起部221が形成されると共に、該係止用突起部221より下方に位置する部分が消勢用摘み部222として構成される態様のものが好ましく用いられる。この場合、バネ作用体220は、例えば金属製の板状物で構成し、支持具本体部240の上部に適当なスリット状孔部を穿設して、該スリット状孔部に金属製バネ作用体220の上端部を差し込み固定するなどの手段により、該バネ作用体220に係止用突起部221を外側向き(図6に符号Mで示す矢印の向き)に付勢する機能を付与することができる。」
(ウ)「【0020】
【発明の効果】以上説明したことから既に明らかなように本発明においては、被支持部材例えば棚板の小口端面に設けられた係止用凹部の位置を支持具の位置に合せて下向きに単に押圧することにより、或は支持具の態様によっては支持具の消勢用摘み部を摘みながら棚板を支持具上に載置することにより、支持具の係止用突起部を含む上半部分が棚板の係止用凹部内に嵌挿され、棚板に上下前後いずれの向きの力が作用しても棚板が支持具から外れることのないように固定される。一方、棚板を取りはずす場合は、支持具の消勢用摘み部を内側向きに摘んで棚板を上に持ち上げるだけで簡単に取りはずすことができる。また、支持具には固定用ダボが付設されていることにより、これを利用して支持具を所望の上下位置に変更乃至他の支持具に棚板を位置変更することも容易である。従って、本発明における棚板は、上下の位置調節が自由にできる可動棚としての機能を保持しながら、下向きに働く力に対してばかりでなく、前後更に上向きに働く力に対しても棚板が外れることがなく、運送時や地震等の揺れその他の振動或は棚板を跳ね挙げるような不用意な取扱いに対しても棚板の外れの心配がなく利便性と安全性の両面に優れる。更に本発明における被支持部材は部品であってもよく、部品として構成した場合は、従来の棚板にそのまま該部品を取り付けて前記の効果を得ることもでき、更に棚板以外の支持固定が必要な物も対象とすることができるなどその実用上の利用価値は広範且つ有用である。」
(エ)図6
(オ)上記(ア)~(エ)から、引用例10には、以下の事項(以下「引用例10記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「支持具の消勢用摘み部を摘みながら棚板を支持具上に載置することにより、前記支持具の係止用突起部を含む上半部分が棚板の係止用凹部内に嵌挿され、棚板が支持具から外れることのないように固定されるとともに、前記支持具の消勢用摘み部を内側向きに摘んで棚板を上に持ち上げるだけで簡単に取りはずすことができるものである、棚板の支持固定機構において、棚板である被支持部材100の係止用凹部110の絞り部112が開口部近傍111の片側にのみ設けられており、支持具200は、支持具本体部240の上部に、一方向に突出する棒状の固定用ダボ部210が設けられ、該固定用ダボ部210が設けられた支持具本体部240の面と隣接する側面にバネ作用体220が下方に向けて延設され、該バネ作用体220の途中の外側面上に突部が設けられて係止用突起部221が形成される支持固定機構であって、支持具本体部240の上部に適当なスリット状孔部を穿設して、該スリット状孔部に金属製バネ作用体220の上端部を差し込み固定するなどの手段により、該バネ作用体220に係止用突起部221を外側向きに付勢する機能を付与することが可能な支持固定機構。」
サ 引用例11
引用例11(甲第8号証)には、図面と共に次の事項が記載されている。
引用例11(甲第8号証)は、下記(ア)のようにミラーキャビネットの「取扱説明書」であるから、ミラーキャビネットの購入者に対して頒布されることは明らかであるところ、下記(エ)の「2014年4月現在の」価格は、頒布時点の価格であって、引用例11(甲第8号証)は、本件特許の出願前に頒布された刊行物であると推認される。
(ア)「LIXIL
INAX
ミラーキャビネット
ML1シリーズ
MX1シリーズ
取扱説明書」(表紙頁)
(イ)「各部のなまえ
●商品の仕様はお客さまに断り無く変更することがあります。
●図は商品の例示であり実際の商品とは異なる場合があります。
」(第2頁上方箇所)
(ウ)「棚板の着脱方法
注意
●棚ダボや棚受け奥まで確実に差し込み、棚がガタツキなどなくしっかりはまっていることを確認のうえ使用してください。
※差し込みや取付けが不十分だと、棚板や収納物が落下して破損やケガの恐れがあります。
ML1シリーズ 多面鏡・収納付1面鏡の場合
MX1シリーズ 多面鏡の場合
」(第13頁第10行~第14頁第18行)
(エ)「※価格は2014年4月現在のものです。(税別)」(第25頁第2行右側)
(オ)「こんな症状が見られたら、お求めの取扱店またはLIXIL修理受付センターに修理をご依頼ください。
」(最終頁最下部分)
(カ)上記(イ)の図から、多面鏡である3面鏡は、鏡扉、棚板を有することが看て取れる。
(キ)上記(オ)の図から、ミラーキャビネットは、水栓金具や排水金具を有する洗面器の上方に設置され、鏡・収納棚、鏡扉の蝶番(ヒンジ)を有することが看て取れる。
(ク)上記(イ)の図、(ウ)のML1シリーズの図、(オ)の図から、ML1シリーズのミラーキャビネットの収納棚は、収納棚の両側に位置する側板からダボが出ており、側板の前端側に開閉可能に鏡扉が支持されおり、収納棚には、手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有する棚板が設置され、当該棚板は、下面に、開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起と開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起が設けられ、本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめ込むことにより取り付け、棚板の手前側を持ち上げて取外すものであることが看て取れる。
(ケ)上記(イ)の図、(ウ)のMX1シリーズの図、(オ)の図から、MX1シリーズのミラーキャビネットの収納棚は、収納棚の両側に位置する側板から棚ダボが出ており、側板の前端側に開閉可能に鏡扉が支持されおり、収納棚には、平面状の棚板が設置され、当該棚板は、棚板奥側にくる溝と棚板下面の手前の溝を有し、棚板の奥側にくる溝を奥側の棚ダボに差込み、棚板の手前の溝が手前の棚ダボに合うように棚板を手前の溝に上から下に向かってはめ込むことにより取り付けるものであることが看て取れる。
(コ)上記(ア)~(ク)から、引用例11には、以下の発明(以下「引用例11発明」という。)が記載されているものと認められる。
「水栓金具や排水金具を有する洗面器の上方に設置され、鏡・収納棚、収納棚の両側に位置する側板、側板から出ているダボ、側板の前端側に開閉可能に支持された鏡扉、鏡扉の蝶番(ヒンジ)、手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有するとともに、下面に、開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起と開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起を有する棚板、及び、棚板が取り付けられる奥及び手前側のダボを備えるミラーキャビネットであって、前記棚板は本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け、棚板の手前側を持ち上げて取外すものであるミラーキャビネット。」
(サ)上記(ア)~(キ)及び(ケ)から、引用例11には、以下の事項(以下「引用例11記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「水栓金具や排水金具を有する洗面器の上方に設置され、鏡・収納棚、収納棚の両側に位置する側板、側板からでているダボ、側板の前端側に開閉可能に支持された鏡扉、鏡扉の蝶番(ヒンジ)、平面状の棚板、及び、棚板が取り付けられる奥側及び手前側の棚ダボを有するミラーキャビネットであって、前記棚板は、棚板奥側にくる溝と棚板下面の手前の溝を有し、棚板の奥側にくる溝を奥側の棚ダボに差し込み、棚板の手前の溝を手前側の棚ダボに合うように棚板を上から下に向かってはめ込むことにより取り付けるものであるミラーキャビネット。」
(3)当審の判断
ア サポート要件、明確性、実施可能要件の取消理由について
(ア)サポート要件、明確性、実施可能要件の取消理由は訂正前の請求項4に係る特許について通知されたものである。
そして、本件訂正請求により請求項4は削除されており、請求項4に係る特許についての本件取消理由は、本件訂正によってその対象となる請求項が存在しないものとなった。
(イ)また、訂正前の請求項4は「前記底面部の下面に設けられ、前記収納トレイが第一状態である際に前記被固定部に固定可能な第一固定部と、前記底面部の下面に設けられ、前記収納トレイが第二状態である際に前記被固定部に固定可能な第二固定部と、を有し、」との構成を有したところ、収納トレイが第一状態である際に第一固定部が固定されている「被固定部」と、前記収納トレイが第二状態である際に第二固定部が固定されている「被固定部」が、同じ「被固定部」を指していると解することも可能であり、また、それぞれが異なる「被固定部」を指していると解することも可能であるため、上記サポート要件、明確性、実施可能要件の取消理由を有していたが、本件訂正発明1及び本件訂正発明5は上記の構成を有さないから、上記取消理由を有しないことは明らかである。
したがって、本件訂正発明1及び本件訂正発明5は、先の取消理由通知において訂正前の請求項4について通知されたサポート要件、明確性、実施可能要件の取消理由によっては、取り消すことはできない。
(ウ)申立人は、令和1年12月3日に提出の意見書において、「(4-3)サポート要件、明確性要件及び実施可能要件」として意見を述べているので検討する。
a サポート要件について
(a)意見書には、「(4-3-2)サポート要件」の項において、「(4-2)訂正要件違反について」の項で述べたように、本件訂正発明1は、第一状態の場合に前方側で底面部が第一被固定部に支持され、第二状態の場合に前方では底面部が第一被固定部に支持されるとしか特定していないが、出願当初書明細書等には、第一状態で被固定部14が第一縦嵌合部34に挿入されて嵌合固定され、第二状態で被固定部14が第二縦嵌合部38に挿入されて嵌合固定される態様しか記載されておらず、本件訂正発明1で特定された範囲まで、発明の詳細な説明に記載された態様を拡張又は一般化できるとはいえない、との意見が述べられている。(意見書第7頁第8~17行)
(b)本件特許明細書には「【発明が解決しようとする課題】【0006】 本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、背の高い物品が収納された場合にも収納された物品の落下を防ぐことができる状態と、背の低い物品が収納された場合にも物品の視認性を確保することができる状態とを切り替えることができ、且つ、収納トレイ全体の高さに対して背の高い物品を収納できる収納トレイを備えたキャビネットを提供することを目的とする。」と記載されており、当該記載からみて、本件特許の発明の課題は、「背の高い物品が収納された場合にも収納された物品の落下を防ぐことができる状態と、背の低い物品が収納された場合にも物品の視認性を確保することができる状態とを切り替えることができ、且つ、収納トレイ全体の高さに対して背の高い物品を収納できる収納トレイを備えたキャビネットを提供すること」であると認められる。
(c)申立人が述べるように発明の詳細な説明に被固定部が縦嵌合部に挿入され嵌合固定される態様のみが記載されているとしても、本件特許における発明の課題は上記のとおりであるところ、上記2(2)ア(イ)b(e)に示したように、発明の詳細な説明には、被固定部14が第一縦嵌合部および第二縦嵌合部に嵌合することで、第一状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6「の下側」が被固定部で支持され、第二状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6「の下側」が被固定部で支持されることが記載されるとともに、上記2(2)ア(イ)dに示したように、第一状態で被固定部14が第一縦嵌合部34に挿入され嵌合固定され、第二状態で被固定部14が第二縦嵌合部38に挿入され嵌合固定される態様だけが、第一状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6が被固定部で支持される唯一の態様であるとの説明、あるいは、第二状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6が被固定部で支持される唯一の態様であるとの説明はなく、また、縦嵌合部がなければ収納トレイ2の底面部6が被固定部によって支持されないと解さなければならない特段の事情も見当たらない。そのため、本件特許の上記課題を解決し、「背の高い物品が収納された場合にも収納された物品の落下を防ぐことができる状態と、背の低い物品が収納された場合にも物品の視認性を確保することができる状態とを切り替える」ためには、収納トレイ2の底面部6が被固定部によって支持されれば足りると本件特許明細書から理解することができ、申立人が主張するように、さらに縦嵌合部を必須とするものではないことは当業者にとって明らかである。
(d)そうすると、縦嵌合部を必須としない「収納トレイ」が、「前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」本件訂正発明1及び本件訂正発明5が発明の詳細な説明に記載されているといえる。
b 明確性要件について
意見書には、「(4-3-3)明確性要件」の項において、本件訂正発明1では、収納トレイが、第一状態の場合には、後方側で第一横嵌合部が第二被固定部に嵌合し、第二状態の場合には、後方側で第二横嵌合部が第二被固定部に嵌合すると特定しているが、第一状態の場合に前方側には第二横嵌合部が存在しており、第一被固定部の固定に障害となり、第二状態の場合に前方側に第一横嵌合部が存在しており、第一被固定部への固定に障害となる。よって、前方側に第二横嵌合部又は第一横嵌合部が位置する場合、いかにして底面部を支持できるのか、不明確である、との意見が述べられている。(意見書第7頁第19~28行)
しかしながら、本件訂正発明1においては、収納トレイは、前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持されるのであって、意見書で述べるような、第一状態の場合に前方側には第二横嵌合部が存在しており、第一被固定部の固定に障害となり、第二状態の場合に前方側に第一横嵌合部が存在しており、第一被固定部への固定に障害となることで、底面部が支持されない態様を含まないことは明らかであるから、不明確であるとはいえない。
c 実施可能要件について
(a)意見書には、「(4-3-4)実施可能要件」の項において、本件訂正発明1は、第一状態の場合に前方側で底面部が第一被固定部に支持され、第二状態の場合に前方側で底面部が第一被固定部に支持されると特定しているが、出願当初書明細書等には、第一状態で被固定部14が第一縦嵌合部34に挿入されて嵌合固定され、第二状態で被固定部14が第二縦嵌合部38に挿入されて嵌合固定される態様しか記載されておらず、本件訂正発明1で特定された底面部を支持するための手段が、当業者が実施できる程度に記載されていない、との意見が述べられている。(意見書第8頁第1~9行)
(b)しかしながら、申立人が述べるように発明の詳細な説明に被固定部が縦嵌合部に挿入され嵌合固定される態様のみが記載されているとしても、上記a(c)に示したように、発明の詳細な説明には、被固定部14が第一縦嵌合部および第二縦嵌合部に嵌合することで、第一状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6「の下側」が被固定部で支持され、第二状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6「の下側」が被固定部で支持されることが記載されるとともに、第一状態で被固定部14が第一縦嵌合部34に挿入され嵌合固定され、第二状態で被固定部14が第二縦嵌合部38に挿入され嵌合固定される態様だけが、第一状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6が被固定部で支持される唯一の態様であるとの説明、あるいは、第二状態の場合に、前方側では収納トレイ2の底面部6が被固定部で支持される唯一の態様であるとの説明はなく、また、縦嵌合部がなければ収納トレイ2の底面部6が被固定部によって支持されないと解さなければならない特段の事情も見当たらないから、収納トレイ2の底面部6が被固定部によって支持される上で、縦嵌合部を必須とするものではないことは当業者にとって明らかである。
(c)そうすると、発明の詳細な説明の記載は、縦嵌合部を必須としない、「収納トレイ」が、「前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」本件訂正発明1及び本件訂正発明5を実施することができる程度に記載されているといえる。
d よって、サポート要件、明確性要件及び実施可能要件についての申立人の意見は採用できない。
イ 新規性及び進歩性の取消理由について
(ア)対比
本件訂正発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1における「小物入れ3」は、本件訂正発明1における「内部に物品を収納可能な収納トレイ」に相当する。
b 引用発明1における「中央の鏡12の両側部に互いに対面する側壁を有する収納空間11を設けた化粧台本体1」と本件訂正発明1における「互いに対面する左右の側壁を有し前記収納トレイが設置されるキャビネット本体」とは、「互いに対面する左右の側壁を有するキャビネット本体」である点で共通する。
c 引用発明1における「前記収納空間11の前記側壁の前側に開閉自在に支持されて前記収納空間11を蓋い、その表面に鏡24が設けられるとともにその内面の周囲には袖壁が形成され、前記内面に小物入れ3が着脱自在に設けられるスイング式の扉2」は、本件訂正発明1における「前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラー」に相当する。
d 引用発明1における「中央の鏡12の両側部に互いに対面する側壁を有する収納空間11を設けた化粧台本体1」及び「スイング式の扉2」を備える「洗面化粧台」は、洗面化粧台の通常の構造を勘案すると、「水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備える洗面台」を備えるとともに、前記「化粧台本体1」及び前記「スイング式の扉2」により前記洗面台の上に洗面キャビネットが形成されることは技術常識であるから、本件訂正発明1における「水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台」及び「洗面台の上方に設置される洗面キャビネット」に相当する。
e 引用発明1における「小物入れ3」が、「底面部を有し、その前面壁の該開口周縁までが高さhであり、該小物入れの後面壁の該開口周縁までが高さHであって、前記高さhに対して、前記高さHを大きく」していることは、本件訂正発明1において、「前記収納トレイ」が、「物品が載置可能な底面部と、前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部と」、「を有し、前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大き」いことに相当する。
f 引用発明1において、「係合部35」が小物入れ3に形成され、「係合部23」が前記小物入れ3が装着される扉2の内面に形成されており、前記「係合部35」と「係合部23」とが係合して、前記小物入れ3が前記扉2の内面に装着されるものであるから、前記「小物入れ3の係合部35」と前記「扉2の係合部23」との関係は、「小物入れの固定部」と「小物入れが装着される部材の被固定部」という関係であるといえる。
一方、本件訂正発明1においては、「キャビネット本体」が、「収納トレイ」を着脱自在に設置する対象である。
そうすると、引用発明1において「前記小物入れ3の両側外面には、突条の上下のそれぞれに山形突起を間隔をおいて2個形成した係合部35が形成されており、前記扉2の両側の袖壁の内面には係合溝の上下のそれぞれに山形凹部を間隔をおいて2個形成した係合部23が形成されており、前記小物入れ3の係合部35と前記扉2の係合部23とを該扉2の内面に直交する方向に摺動自在に係合させて、前記それぞれの係合部23、35が係合又は離脱するとき双方の係合部23、35又は一方の係合部23又は係合部35が弾性変形をして、前記双方の係合部23、35の係合状態が安定するものであ」ることと、本件訂正発明1において、「前記収納トレイは」、「前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部と、を有」することとは、「前記収納トレイは」、「前記収納トレイが設置される対象に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部と、を有」する点で共通する。
g 引用発明1において「前記スイング式の扉2の内面に前記小物入れ3を着脱自在に装着するものであり、前記小物入れを前記扉の内面に装着するとき、前記小物入れの前後を反転させて、前記小物入れの前面壁を前記扉の内面に対向させて装着する場合と、前記小物入れの後面壁を前記扉の内面に対向させて装着する場合とを必要に応じて選択することができる」ことと、
本件訂正発明1において「前記収納トレイは、前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記キャビネット本体に設置することが可能」であることとは、引用発明1における「係合部35」による「着脱自在」な「装着」と、本件訂正発明1における「固定部」による「着脱自在」な「固定」についての上記fに示した共通点を勘案すると、
「前記収納トレイは、前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記収納トレイが設置される対象に設置することが可能であり、前記固定部は、前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記収納トレイが設置される対象に対して着脱自在に固定可能であ」る点で共通する。
h そうすると、本件訂正発明1と引用発明1とは、以下の一致点及び相違点を有する。
・一致点
「内部に物品を収納可能な収納トレイと、互いに対面する左右の側壁を有するキャビネット本体と、前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラーと、を備え、水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置される洗面キャビネットであって、
前記収納トレイは、
物品が載置可能な底面部と、
前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、
前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部と、
前記収納トレイが設置される対象に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部と、を有し、
前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大きく、
前記収納トレイは、前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記収納トレイが設置される対象に設置することが可能であり、
前記固定部は、前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記収納トレイが設置される対象に対して着脱自在に固定可能である洗面キャビネット。」
・相違点1
本件訂正発明1においては、内部に物品を収納可能な収納トレイが「前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて」「設置することが可能」な対象が「キャビネット本体」であるとともに、キャビネット本体の「側壁」に「被固定部」が設けられ、当該「被固定部」が、「前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部と、前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部と」、を有するのに対して、
引用発明1においては、小物入れ3が「前後を反転させて」設置される対象が「スイング式の扉2」であるとともに、スイング式の扉2の内面に形成された係合部23は、前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部と、前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部を有することが特定されていない点。
・相違点2
本件訂正発明1においては、「固定部」が、収納トレイの「底面部の下面」に設けられるとともに、「前記固定部は、前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部と」、を有し、前記「収納トレイ」は、前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」のに対して、
引用発明1においては、小物入れ3の両側外面に係合部35が形成されるとともに、前後を反転させて装着できる小物入れ3は、係合部23及び係合部35が係合することにより設置される点。
(イ)判断
a 新規性について
上記のように本件訂正発明1と引用発明1とは相違点を有するから同一であるとはいえない。
また、本件訂正発明5は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、本件訂正発明1と同様に、引用発明1と同一であるとはいえない。
したがって、本件訂正発明1及び本件訂正発明5は、引用例1に記載された発明ではない。
b 進歩性について
事案に鑑み、相違点2について検討する。
引用例2~11のいずれにも、「固定部」が、収納トレイの「底面部の下面」に設けられるとともに、「前記固定部は、前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部と」、を有し、前記「収納トレイ」は、前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」構成を備える、収納トレイ、固定部及び被固定部は、記載も示唆もされていない。
以下、各引用例について検討する。
(a)まず、引用例2記載事項~引用例7記載事項からみて、引用例2~引用例7には、棚状部材が、第一状態において後方側の第二被固定部に嵌合する第一横嵌合部、及び、第二状態において後方側の第二被固定部に嵌合する第二横嵌合部の両者を有する技術事項が記載されていないことは明らかである。
(b)引用例8記載事項においては、固定垂直片3に付く横型切り込み部を2個に増やした固定具は、棚板7に形成されたものではなく、棚板7と棚受ダボを固定するものであるから、本件訂正発明1の第一横嵌合部及び第二横嵌合部を示唆するものではない。
(c)引用例9記載事項は、棚板2を収納部1内に収納した収納位置から収納部1の前面開口1eよりも前方に突出した突出位置まで出入自在にした収納棚であり、棚板2が有する「ダボ抜け防止用横片部13」は、前後方向に移動自在に載置した棚板2が、収納位置又は突出位置に配された際に、載置された状態から抜けることを防止する目的で、ダボ3a、3bの下方に位置するものであるから、相違点2に係る本件訂正発明1における「第二被固定部」に「嵌合」する「第一横嵌合部」及び「第二横嵌合部」とは構成が異なる。また、引用例9記載事項における「ダボ抜け防止用横片部13」を引用発明1に適用する動機付けもない。
(d)引用例10記載事項においては、被支持部材100の係止用凹部110の絞り部112が開口部近傍111の片側にのみ絞り部112が設けられているが、前記絞り部がどのような向きに形成されるかは記載されておらず、また、前記係止用凹部110は、支持具の消勢用摘み部を摘みながら棚板を支持具上に載置することにより、前記支持具の係止用突起部を含む上半部分が棚板の係止用凹部内に嵌挿され、棚板が支持具から外れることのないように固定されるとともに、前記支持具の消勢用摘み部を内側向きに摘んで棚板を上に持ち上げるだけで簡単に取りはずすことができるものであって、上下に嵌挿及び取りはずしをするものであるから、本件訂正発明1における「第二立壁部側に向けて開口」し、「第一状態の場合」に「第二被固定部に嵌合」する「第一横嵌合部」、及び、「第一立壁部側に向けて開口」し、「第二状態の場合」に「第二被固定部に嵌合」する「第二横嵌合部」の両構成を開示あるいは示唆するものではない。
なお、「支持具本体部240の上部に適当なスリット状孔部を穿設して、該スリット状孔部に金属製バネ作用体220の上端部を差し込み固定するなどの手段により、該バネ作用体220に係止用突起部221を外側向きに付勢する機能を付与する」ことは、前記係止用突起部221を前記支持具本体からみて外側に付勢することが記載されているのであり、前記絞り部がどのような向きに形成されるかを示唆しているとはいえない。
(e)引用例11発明には、下面に、開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起と開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起を有する棚板を取り付けるにあたり、本体奥のダボに棚板奥の突起を引っかけ、手前側の突起を手前側のダボに上からはめこむことは記載されているものの、前記手前側の突起は、上からはめこむものであるから、本件訂正発明1における「第二立壁部側に向けて開口」し、「第一状態の場合」に「第二被固定部に嵌合」する「第一横嵌合部」、及び、「第一立壁部側に向けて開口」し、「第二状態の場合」に「第二被固定部に嵌合」する「第二横嵌合部」の両構成を開示あるいは示唆するものではない。
また、引用例11記載事項には、棚板奥側にくる溝と棚板下面の手前の溝を有する棚板を取り付けるにあたり、棚板の奥側にくる溝を奥側の棚ダボに差し込み、棚板の手前の溝を手前側の棚ダボに合うように棚板を上から下に向かってはめ込むことは記載されているものの、前記手前の溝は、上から下に向かってはめ込むものであるから、本件訂正発明1における「第二立壁部側に向けて開口」し、「第一状態の場合」に「第二被固定部に嵌合」する「第一横嵌合部」、及び、「第一立壁部側に向けて開口」し、「第二状態の場合」に「第二被固定部に嵌合」する「第二横嵌合部」の両構成を開示あるいは示唆するものではない。
(f)そうすると、引用発明1における小物入れ3を前後を反転させて設置するための「小物入れ3の両側外面」に形成される「係合部35」及び「スイング式の扉2の両側の袖壁の内面」に形成される「係合部23」に代えて、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成と同様の構成を備える、収納トレイ、固定部及び被固定部を用いることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえず、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成を当業者が容易に想到することができたということはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(ウ)申立人の意見について
申立人は、令和1年12月3日に提出した意見書において、「(4-4)新規性及び進歩性」について意見を述べており(意見書第8頁第11行~第14頁第10行)、本件訂正発明1と引用例1(甲第1号証)とを対比し、固定部及び被固定部に関する相違点として、下記相違点(ii)を示している。
・相違点(ii)
本件訂正発明1では、被固定部が側壁の前端側の第一被固定部と後端側の第二被固定部を有し、固定部が、各立壁側に開口する第一横嵌合部及び第二横嵌合部を有してそれぞれ後端側の被固定部に嵌合する点。
そして申立人は、上記相違点(ii)について、引用例8(参考資料3)、引用例9(参考資料4)、引用例10(参考資料5)引用例11(甲第8号証)を例示し、被固定部が側壁の前端側の第一被固定部と後端側の第二被固定部を有し、固定部が、前端又は後端側に開口する第一横嵌合部及び第二横嵌合部を有して後端側の被固定部に嵌合し、前端側の被固定部に支持されることは従来周知であると述べた上で、相違点(ii)に係る発明特定事項は従来周知であって当業者が容易に採用しうる設計的事項にすぎず、その作用効果も引用発明1及び周知技術に基いて当業者が予測できる範囲のものであると述べている。
しかしながら、本件訂正発明1における固定部及び被固定部は、被固定部が前方側の第一被固定部と後方側の第二被固定部と有したうえで、固定部が「第二立壁部側に向けて開口」し、「第一状態の場合」に「第二被固定部に嵌合」する「第一横嵌合部」、及び、「第一立壁部側に向けて開口」し、「第二状態の場合」に「第二被固定部に嵌合」する「第二横嵌合部」の両者を有することにより、第一状態と第二状態とにおける固定をいずれも可能とするものであるから、本件訂正発明1と引用発明1との相違点は、上記(ア)において相違点1及び相違点2として認定したとおりに認定されるべきものである。
そして、上記相違点2に関して、引用例8(参考資料3)、引用例9(参考資料4)、引用例10(参考資料5)、及び、引用例11(甲第8号証)のいずれも、棚状部材が、第一状態において後方側の第二被固定部に嵌合する第一横嵌合部、及び、第二状態において後方側の第二被固定部に嵌合する第二横嵌合部の両者を備えることを示唆するものでもないことは、上記(イ)b(b)~(e)において示したとおりである。
したがって、相違点2については、上記上記(イ)bにおいて判断したとおりである。
よって、申立人の意見は採用できない。
(エ)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ではなく、また、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許法第29条第1項第2号及び第2項に関する特許異議申立理由、並びに、特許法第36条第4項第1号に関する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
ア 本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、甲第7号証~甲第12号証に基づく公然実施された発明である。
イ 本件特許発明1~5は、甲第8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件特許発明7は、発明の詳細な説明に当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。
(2)証拠
・甲第7号証:株式会社LIXIL「LUMISIS」カタログ 2014年3月発行
・甲第8号証:株式会社LIXIL「ミラーキャビネット ML1シリーズ、MX1シリーズ 取扱説明書」
・甲第9号証:株式会社LIXIL「LUMISIS」カタログ 2018年3月発行
・甲第10号証:陳述書
・甲第11号証:「ミラーキャビネット ML4シリーズ」実物写真
・甲第12号証:「ミラーキャビネット ML4シリーズ」実物動画の一部抜粋(静止画)
・甲第13号証:「ミラーキャビネット ML4シリーズ」実物動画(CD-ROM)
(3)各証拠の記載
ア 甲第7号証
本件特許が公然実施された発明であることを立証するために提出された甲第7号証には、以下の記載がある。
(ア)「LIXIL
INAX
洗面化粧台
ルミシス
LUMISIS
2014年4月28日受注開始
2014.3」(表紙)
(イ)「
2.ミラーもキャビネットも、カウンターも
壁から壁へピッタリサイズのオーダーを可能に。
間口2mm単位のカウンター、間口調整材付のキャビネットで
高級ホテルのパウダールームのように
壁から壁にすき間なく納まる洗面化粧台がつくれます。」(第11頁上方側写真及び下方箇所側説明文)
(ウ)「3・4・5面鏡のミラー裏は、すべて収納スペース
多面鏡の収納裏は、たっぷり収納できる空間を確保。60mm刻みで棚板位置を変えることができ、収納物の高さに合わせて、効率よく収納することができます。
」(第37頁下方箇所)
(エ)上記(ウ)からみて、3・4・5面鏡のミラーの裏の収納空間内には、丸洗いできるアルミ棚が棚板として設置されていることが看て取れる。
(オ)「プランニングガイド 品番の見方
・本体品番は、「基本品番」と「詳細仕様品番」から構成されます。
・本体価格は、▲P.52~70の「基本価格」に、下記「詳細仕様加算価格」を加算してください。(当審注:▲は右横に頂点が向く三角)
・納まりなどの条件により、○1~○13の記号の組合せが限られる場合があります。(当審注:○1等は、○の中に数字である。)
*ML1-0753TVAUC MWEAA/LDK
基本品番 詳細仕様品番
」(第50頁冒頭部)
(カ)「2014.3.10発行」(最終頁右下)
(キ)上記(ア)~(カ)からみて、以下の事項が認められる。
「キャビネットの3・4・5面鏡のミラーの裏の収納空間内に丸洗いできるアルミ棚が棚板として設置されている、品番がML1-0753TVAUCのように表示されるミラーキャビネットを備えるLUMISIS洗面化粧台について、2014年4月28日に受注が開始されることが2014年3月10日発行のカタログに掲載されたこと。」
イ 甲第8号証
本件特許が公然実施された発明であることを立証するために提出された甲第8号証には、引用例11(甲第8号証)として上記4(2)サに示した記載に加え、下記の事項が記載されている。
(ア)「品番を調べる
本体に貼ってあるラベルを見る
下図の位置に貼られている品番表示ラベルをご確認ください。
」(第1頁上部箇所)
(イ)引用例11(甲第8号証)は、ミラーキャビネットの「取扱説明書」であるから、ミラーキャビネットの購入者に対して頒布されることは明らかであるところ、上記4(2)サ(エ)の「2014年4月現在の」価格は、頒布時点の価格であると推認されることから、2014年4月には、当該ミラーキャビネットの販売の申出が行われていたことが推認できる。
(ウ)上記4(2)サに示した記載、上記(ア)及び(イ)から、以下の事項が認められる。
「水栓金具や排水金具を有する洗面器の上方に設置され、鏡・収納棚、収納棚の両側に位置する側板、側板から出ているダボ、側板の前端側に開閉可能に支持された鏡扉、鏡扉の蝶番(ヒンジ)、手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有するとともに、下面に、開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起と開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起を有する棚板、及び、棚板が取り付けられる奥及び手前側のダボを備え、品番がML1-3TVAUのように表示されるML1シリーズのミラーキャビネットであって、前記棚板は本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け、棚板の手前側を持ち上げて取外すものであるミラーキャビネットが、2014年4月に販売の申出が行われていたこと。」
ウ 甲第9号証
本件特許が公然実施された発明であることを立証するために提出された甲第9号証には、以下の記載がある。
(ア)「INAX
洗面化粧台
INAX ルミシス
LUMISIS
LIXIL Link to Good Living
2018.4」(表紙)
(イ)「多面鏡のミラー裏は、すべて収納スペース
多面鏡の収納裏は、たっぷり収納できる空間を確保。60mm刻みで棚板位置を変えることができ、収納物の高さに合わせて、効率よく収納することができます。
」(第38頁下方箇所)
(ウ)プランニングガイド/品番の見方 ボウル一体タイプ
ミラーキャビネット品番
品番は「基本品番」と「詳細仕様品番」から構成されます。
*ML4-0753TVAUC MWEAA/LDK
基本品番 詳細仕様品番
ミラーキャビネット品番」(第90頁第1~6行)
(エ)「●表示価格は2018年3月現在のメーカー希望小売価格です。商品のみの価格で、取付費・工事費などは別途となります。」(最終頁下から5行)
(オ)上記(イ)の「丸洗いできるアルミ棚」の画像からは、当該アルミ棚の下部に固定部が存在することを看て取ることはできない。
(カ)上記(ア)及び(エ)の記載からみて、甲第9号証に係る「INAX・LIXILの洗面化粧台LUMISIS」は、2018年4月の時点で販売の申出がされたものと推認できる。
(キ)上記(ア)~(カ)から、以下の事項が認められる。
「2018年4月の時点で販売の申出がされた、INAX・LIXILの洗面化粧台LUMISISは、基本品番にML4を含むミラーキャビネットを備え、ミラーキャビネットの多面鏡のミラーの裏の収納内には、丸洗いできるアルミ棚が棚板として設置されていること。」
エ 甲第10号証
本件特許が公然実施された発明であることを立証するために提出された甲第10号証には、以下の記載がある。
(ア)「陳述書
令和1年6月17日
株式会社LIXIL 田所淳
1.私は、平成18年4月より、株式会社INAX(現・株式会社LIXIL)において、主に洗面化粧台の技術・製品開発の業務に携わってきました。
2.本件異議申立に係るミラーキャビネットは、株式会社LIXILが2014年4月に、商品名「LUMISIS]、品番「ML1 シリーズ」として販売を開始したものであり、その後も販売を継続し、2018年度にはML4シリーズとして販売しています。
3.私は、当該「LUMISIS]におけるミラーキャビネットの設計について、2014年度のML1シリーズから2018年度のML4シリーズに至るまで、継続してその設計・仕様検討に携わってきました。
特に、当該ミラーキャビネットの棚板については、水回りに用いるものであり、また暗色のキャビネット本体に対して美観を付与するために、明色のアルミ板を用いており、好評を得ていることから、2014年のML1シリーズから2018年度のML4シリーズに至るまで仕様は変更しておらず、棚板の前後に高さが異なるフランジを設けた構造は2014年の販売開始以来変わるところがありません。」
(イ)上記(ア)によると、以下の事項が認められる。
「2014年度のML1シリーズと2018年度のML4シリーズのミラーキャビネットの棚板は、2014年のML1シリーズから2018年度のML4シリーズに至るまで仕様は変更しておらず、棚板の前後に高さが異なるフランジを設けた構造は2014年の販売開始以来変わらないこと。」
オ 甲第11号証
本件特許が公然実施された発明であることを立証するために提出された甲第11号証には、以下の記載がある。
(ア)「甲第11号証の3:棚板の高壁側を手前に配置した写真
」(第3頁)
(イ)「甲第11号証の4:棚板の低壁側を手前に配置した写真
」(第4頁)
(ウ)「甲第11号証の5:製造番号ラベルが貼付された側板内側の写真
撮影日2019年5月27日。撮影者(株)LIXIL 増田将典」(第5頁)
(エ)上記(ウ)の写真からは、「品番」との表示、「CML4-0522TVTUDXXAX(X)/K」との記号と「株式会社LIXIL」との表示が看て取れる。
(オ)上記(ア)~(ウ)の写真からは、棚板の下部に具体的にどのような固定部が存在するのかを明確に看て取ることはできない。
(カ)上記(ア)~(オ)からみて、以下の事項が認められる。
「品番がCML4-0522TVTUDXXAX(X)/Kとの記号で表示される洗面化粧台LUMISISにおいて、棚板の高壁側を手前に配置することと、棚板の低壁側を手前に配置することが可能であること。」
カ 甲第12号証
本件特許が公然実施された発明であることを立証するために提出された甲第12号証には、以下の記載がある。
(ア)「甲第12号証(「ミラーキャビネットML4シリーズ」実物動画)の一部抜粋
甲第12号証の1:前面を高壁側から低壁側に入れ替える動作
〇1 高壁側を前面に配置した状態から固定部を解除
(当審注:〇1は、丸の中に1。以下同様。)
(甲第13号証の動画においては、2秒経過後の様子)
〇2 高壁側を前面に配した状態から取り外し
(甲第13号証の動画においては、2秒経過後〇1より後の様子)
〇3 棚板の前後を入れ替え
(甲第13号証の動画においては、4秒経過後の様子)
〇4 固定用突起をダボに係合させる
(甲第13号証の動画においては、5秒経過後の様子)
〇5 低壁側を前面に配置した状態
(甲第13号証の動画においては、8秒経過後の様子)
」
(イ)「甲第12号証の2:前面を低壁側から高壁側に入れ替える動作
〇1 低壁側を前面に配置した状態から固定部を解除
(甲第13号証の動画においては、開始直後の様子)
〇2 低壁側を前面に配置した状態から取り外し
(甲第13号証の動画においては、1秒経過後の様子)
〇3 棚板の前後を入れ替え
(甲第13号証の動画においては、3秒経過後の様子)
〇4 固定用突起をダボに係合させる
(甲第13号証の動画においては、6秒経過後の様子)
〇5 高壁側を前面に配置した状態
(甲第13号証の動画においては、8秒経過後の様子)
撮影日2019年5月27日。撮影者(株)LIXIL 増田将典」(第1~4頁)
(ウ)上記(ア)及び(イ)の静止画からは、棚板の下部に具体的にどのような固定部が存在するのかを明確に看て取ることはできない。
なお、甲第13号証の動画からも、棚板の下部に具体的にどのような固定部が存在するのかを明確に看て取ることはできない。
(エ)上記(ア)~(ウ)から、以下の事項が認められる。
「ミラーキャビネットML4シリーズにおいて、棚板の高壁側を手前に配置した状態から、棚板の低壁側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能であり、棚板の高壁側を手前に配置するときには、低壁側の固定用突起を奥側のダボに係合させてから、手前の高壁側を上方から押してはめこんで取付け、棚板の低壁側を手前に配置するときには、低壁側の固定用突起を手前側のダボに係合させてから、奥側の高壁側を上方から押してはめこんで取付けること。」
(4)当審の判断
ア 上記(1)アの異議申立理由について
申立人は、甲第7号証~甲第12号証に基づき、本件特許の出願前に公然実施された発明であるML1シリーズのミラーキャビネットは、ML4シリーズのミラーキャビネットと同じ仕様の棚板を使用しており、本件特許発明1ないし5と同一であるから、本件特許は新規性を有しない旨を主張している。(申立書第29頁第1行~第43頁第15行)
上記2のとおり、本件訂正請求による訂正が認められたので、以下、本件訂正発明1及び5が、公然実施された発明と同一であるか否かについて検討する。
(ア)甲第7号証~甲第13号証に基づく発明の検討
a 甲第7号証及び甲第8号証に基づくML1シリーズのミラーキャビネット発明の認定
甲第7号証及び甲第8号証は、いずれも、品番がML1を含むミラーキャビネットを備える洗面化粧台が記載されており、両者は、同じML1シリーズのミラーキャビネットを備える洗面化粧台であると認められる。
また、甲第7号証及び甲第8号証より、以下の洗面化粧台のキャビネットに係る発明(以下、「ML1シリーズ発明」という。)を認定することができる。
「水栓金具や排水金具を有する洗面器の上方に設置され、鏡・収納棚、収納棚の両側に位置する側板、側板からでているダボ、側板の前端側に開閉可能に支持された鏡扉、鏡扉の蝶番(ヒンジ)、手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有するとともに、下面に、開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起と開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起を有する棚板、及び、棚板が取り付けられる奥及び手前側のダボを備え、品番がML1-3TVAUのように表示されるML1シリーズのミラーキャビネットであって、前記棚板は本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け、棚板の手前側を持ち上げて取外すものであるミラーキャビネット。」
そして、甲第7号証及び甲第8号証から、ML1シリーズ発明は、本件特許に係る特許出願の出願日(平成28年2月29日)より前に販売の申出がされていたものと認められるから、前記ML1シリーズ発明は、本件特許出願前に公然実施された発明といえる。
b 次に、甲第9号証及び甲第11号証は、いずれも、品番がML4を含むミラーキャビネットを備える洗面化粧台が記載されており、両者は、同じML4シリーズのミラーキャビネットを備える洗面化粧台であると認められる。
また、甲第12号証及び甲第13号証からは、品番を看取することはできないが、甲第12号証には、「甲第12号証(「ミラーキャビネットML4シリーズ」実物動画)の一部抜粋」と記載されていること、及び、甲第11号証において3つの容器状の部材が並んでいる様子が看て取れるとともに、甲第12号証の静止画において、同様の3つの容器状の部材が並んでいる様子が看て取れることから、甲第12号証及びその静止画の動画とされる甲第13号証は、甲第11号証に記載されたML4シリーズのミラーキャビネットと同一のML4シリーズのミラーキャビネットの静止画及び動画であると認められる。
そうすると、ML4シリーズのミラーキャビネットについては、上記(3)カ(エ)で認定した甲第12号証に記載された事項から、次の技術事項(以下、「ML4シリーズ技術事項」という。)が認められる。
「ML4シリーズのミラーキャビネットは、棚板の高い壁部側を手前に配置した状態から、棚板の低い壁部側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能であり、棚板の高い壁部側を手前に配置するときには、低い壁部側の固定用突起を奥側のダボに係合させてから、手前の高い壁部側を上方から押してはめこんで取付け、棚板の低い壁部側を手前に配置するときには、低い壁部側の固定用突起を手前側のダボに係合させてから、奥側の高い壁部側を上方から押してはめこんで取付けるミラーキャビネットであること。」
c ここで、上記(3)ウ(オ)、(3)オ(オ)、(3)カ(ウ)に示したように、甲第9号証、甲第11号証及び甲第12号証からは、ML4シリーズのミラーキャビネットの棚板の下部に具体的にどのような固定部が存在するのか、その構造の詳細は明らかでないが、仮に、甲第10号証に記載された主張のようにML1シリーズとML4シリーズの棚板が同じ仕様であって、ML4シリーズのミラーキャビネットとML1シリーズ発明が同一構造及び材料の「棚板奥の突起」、「手前側の突起」、「本体奥のダボ」及び「手前側のダボ」を有し、ML1シリーズ発明が、ML4シリーズのミラーキャビネットを用いて示されるのと同様に、棚板の高い壁部側を手前に配置した状態から、棚板の低い壁部側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能であると仮定をした場合には、上記ML1シリーズ発明、上記ML4シリーズ技術事項、上記a及び上記bで認定した事項から、下記の「前後入替可能ML1シリーズ発明」を仮定し得る。
・前後入替可能ML1シリーズ発明
「水栓金具や排水金具を有する洗面器の上方に設置され、鏡・収納棚、収納棚の両側に位置する側板、側板からでているダボ、側板の前端側に開閉可能に支持された鏡扉、鏡扉の蝶番(ヒンジ)、手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有するとともに、下面に、開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起と開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起を有する棚板、及び、棚板が取り付けられる奥及び手前側のダボを備え、品番がML1-3TVAUのように表示されるML1シリーズのミラーキャビネットであって、前記棚板は本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け、棚板の手前側を持ち上げて取外すものであるミラーキャビネットにおいて、前記棚板の高い壁部側を手前に配置した状態から、棚板の低い壁部側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能であり、棚板の高い壁部側を手前に配置するときには、低い壁部側の固定用突起を奥側のダボに係合させてから、手前の高い壁部側を上方から押してはめこんで取付け、棚板の低い壁部側を手前に配置するときには、低い壁部側の固定用突起を手前側のダボに係合させてから、奥側の高い壁部側を上方から押してはめこんで取付けるミラーキャビネット。」
(イ)本件特許出願前に公然実施されていた発明について
a 上記(3)エで甲第10号証について認定したように「2014年度のML1シリーズと2018年度のML4シリーズのミラーキャビネットの棚板は、仕様は変更しておらず、棚板の前後に高さが異なるフランジを設けた構造は2014年の販売開始以来変わらない」という事実が認められるが、当該事実からは、ML1シリーズのキャビネットが、上記棚板の前後に高さが異なるフランジを設けた構造以外に、棚板を固定するための固定部の構造及び材料、前記棚板が取り付けられるダボの構造及び材料を含めて、棚板を固定するための固定部及び被固定部に係る構造及び材料の全てがML4シリーズのキャビネットと同一であるという事実を認めることはできず、ML4シリーズのミラーキャビネットが、棚板の高壁を手前に配置した状態から、棚板の低壁側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能であるからといって、ML1シリーズ発明が、ML4シリーズと同様に、棚板の高壁を手前に配置した状態から、棚板の低壁側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能であるという事実を推認するに足りない。
また、上記4(2)サの引用例11(甲第8号証)の記載からみて、ML1シリーズのキャビネットの棚板は、「本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け、棚板の手前側を持ち上げて取外すもの」として説明されているという事実が認められ、この事実に照らして考えると、ML1シリーズ発明において、棚板の高壁を手前に配置した状態から、棚板の低壁側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能であるという事実を推認することができず、他にML1シリーズ発明において、棚板の高壁を手前に配置した状態から、棚板の低壁側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能であるという事実を認めるに足りる証拠はない。
b そうすると、ML4シリーズのミラーキャビネットが、ML1シリーズ発明と同一構造及び材料の「棚板奥の突起」、「手前側の突起」、「本体奥のダボ」及び「手前側のダボ」を有しているとも、ML1シリーズ発明が、ML4シリーズ技術事項と同様に、棚板の高い壁部側を手前に配置した状態から、棚板の低い壁部側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能であるとも推認することはできないから、申立人が提出した各甲号証から上記前後入替可能ML1シリーズ発明が本件特許出願前に公然実施されていたと認めることはできない。
c よって、甲第7号証~甲第12号証に基づいて、本件特許の出願前に公然実施された発明として認定できるのは、上記ML1シリーズ発明である。
(ウ)本件訂正発明1及び5が前後入替可能ML1シリーズ発明と同一であるか否かについて
上記(イ)のように、上記前後入替可能ML1シリーズ発明は、本件特許出願前に公然実施されたものとは認められないが、念のため、本件訂正発明1及び5が、上記前後入替可能ML1シリーズ発明と同一であるかどうかについて検討する。
a 本件訂正発明1と前後入替可能ML1シリーズ発明との対比
(a)前後入替可能ML1シリーズ発明における「手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有する棚板」は、本件訂正発明1における「内部に物品を収納可能な収納トレイ」であって「前記収納トレイは、物品が載置可能な底面部と、前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部」を有し「前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大き」いことに相当する。
(b)前後入替可能ML1シリーズ発明における「水栓金具や排水金具を有する洗面器の上方に設置され、鏡・収納棚、収納棚の両側に位置する側板、側板からでているダボ、側板の前端側に開閉可能に支持された鏡扉、鏡扉の蝶番(ヒンジ)、手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有するとともに、下面に、開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起と開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起を有する棚板、及び、棚板が取り付けられる奥及び手前側のダボを備え、品番がML1-3TVAUのように表示されるML1シリーズのミラーキャビネット」は、本件訂正発明1における「内部に物品を収納可能な収納トレイと、互いに対面する左右の側壁を有し前記収納トレイが設置されるキャビネット本体と、前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラーと、を備え、水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置される洗面キャビネット」に相当する。
(c)前後入替可能ML1シリーズ発明における「棚板が取り付けられる奥及び手前側のダボ」の「手前側のダボ」及び「本体奥のダボ」は、本件訂正発明1における「前記被固定部」の「前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部」及び「前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部」に相当する。
(d)前後入替可能ML1シリーズ発明における「棚板」が、「下面に」、「開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起」と「開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起」を有し、「前記棚板の高い壁部側を手前に配置した状態から、棚板の低い壁部側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能」であることは、本件訂正発明1における「収納トレイ」が「前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部」を有し、「前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記キャビネット本体に設置することが可能」であることに相当する。
(e)前後入替可能ML1シリーズ発明における「開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起」は、「低い壁部側の固定用突起」であり、棚板の下面に位置し、「棚板の低い壁部側を手前に配置するとき」には「奥側のダボに嵌合」させ、当該ダボを横から引っかける構造であることは明らかであるから、本件訂正発明1における「前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置」の「立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部」に相当する。
(f)前後入替可能ML1シリーズ発明における「開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起」と本件訂正発明1における「前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部」とは、「固定部材」である点で共通する。
なお、前後入替可能ML1シリーズ発明における「手前側の突起」は、上から下にはめこむものであるから、「第二被固定部」に「嵌合」する「横嵌合部」ということはできず、棚板のいずれの側を手前に配置した場合にも、本件訂正発明1の「第二横嵌合部」に相当するものではない。
また、前後入替可能ML1シリーズ発明において、棚板の高壁側の底面部には横嵌合部が存在しないことは、上記4(2)サに示したように、甲第8号証において、棚板の取付方法として「本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側にはめこみます」と説明し、一番右の図においては、下側の矢印「↓」とともに「手前にはめこむ」と説明していることとも整合するとともに、仮に、高壁側の底面部下に設けられた突起を奥側のダボに横から嵌合すると、低壁側の突起を上方から押してはめこもうとしても、上記低壁側の固定用突起によりはめこみが妨げられ、棚板の装着ができないと解されることとも整合する。
(g)前後入替可能ML1シリーズ発明における「前記棚板は本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け、棚板の手前側を持ち上げて取外す」とともに、「前記棚板の高い壁部側を手前に配置した状態から、棚板の低い壁部側を手前に配置した状態に着脱自在に前後入れ替え可能であり、棚板の高い壁部側を手前に配置するときには、低い壁部側の固定用突起を奥側のダボに係合させてから、手前の高い壁部側を上方から押してはめこんで取付け、棚板の低い壁部側を手前に配置するときには、低い壁部側の固定用突起を手前側のダボに係合させてから、奥側の高い壁部側を上方から押してはめこんで取付ける」ことは、前後を入れ替えてもダボ間の距離と突起間の距離は変わらず、棚板の低い壁部側を手前に配置するときには、高い壁部側の突起が、奥側のダボにはめこまれると解されるから、
本件訂正発明1における「固定部は、前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であり」、「前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部」とを有することとは、
「固定部は、前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であり」、「前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二被固定部に固定される固定部材」とを有する点で共通する。
(h)前後入替可能ML1シリーズ発明における「棚板」を「本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け」ることにより、前記棚板の底面部が手前側のダボに支持されることは明らかであるから、本件訂正発明1における「前記収納トレイ」は、「前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」ことに相当する。
(i)そうすると、本件訂正発明1と前後入替可能ML1シリーズ発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
・一致点
「内部に物品を収納可能な収納トレイと、互いに対面する左右の側壁を有し
前記収納トレイが設置されるキャビネット本体と、前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラーと、を備え、水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置される洗面キャビネットであって、
前記収納トレイは、
物品が載置可能な底面部と、
前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、
前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部と、
前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部と、を有し、
前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大きく、
前記収納トレイは、前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記キャビネット本体に設置することが可能であり、
前記固定部は、前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であり、
前記被固定部は、前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部と、前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部と、を有し、
前記固定部は、前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二被固定部に固定される固定部材と、を有し、
前記収納トレイは、
前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される、洗面キャビネット。」
・相違点A
本件訂正発明1においては、第二状態の場合に第二被固定部に対応する位置で前記第二被固定部に固定される固定部材が、「第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部」であり、収納トレイが「前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」のに対して、前後入替可能ML1シリーズ発明においては、上記固定部材が「手前側の突起」であり、「ダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付ける」ものであって、横から嵌合する「横嵌合部」ではない点。
b 判断
(a)本件訂正発明1について
上記のように、本件訂正発明1と前後入替可能ML1シリーズ発明とは、相違点Aを有するから、本件訂正発明1は、前後入替可能ML1シリーズ発明と同一であると認めることはできない。
(b)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、前後入替可能ML1シリーズ発明と同一であると認めることはできない。
(エ)本件訂正発明1及び5がML1シリーズ発明と同一であるか否かについて
上記(イ)bのとおり、本件特許の出願前に公然実施された発明として認定できるのは、上記ML1シリーズ発明であるから、本件訂正発明1及び5が、上記ML1シリーズ発明と同一であるかどうかについて検討する。
a 本件訂正発明1について
本件訂正発明1とML1シリーズ発明が、上記相違点Aを有することは明らかであるから、本件訂正発明1は、ML1シリーズ発明と同一であると認めることはできない。
b 本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、ML1シリーズ発明と同一であると認めることはできない。
(オ)小括
以上のようであるから、本件訂正発明1は、前後入替可能ML1シリーズ発明と同一ではなく、また、ML1シリーズ発明とも同一ではないから、いずれにしても、本件訂正発明1が本件特許出願前に公然実施されていた発明であると認めることはできない。
また、本件訂正発明5も、本件訂正発明1と同じ理由により、その出願前に公然実施された発明であると認めることはできない。
イ 上記(1)イの異議申立理由について
申立人は、本件特許発明1~5は、甲第8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。(申立書第44頁第1行~第48頁第3行)
(ア)本件訂正発明1と、上記4(2)サ(ケ)に認定した、甲第8号証(引用例11)に記載された引用例11発明とを対比する。
・引用例11発明
「水栓金具や排水金具を有する洗面器の上方に設置され、鏡・収納棚、収納棚の両側に位置する側板、側板から出ているダボ、側板の前端側に開閉可能に支持された鏡扉、鏡扉の蝶番(ヒンジ)、手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有するとともに、下面に、開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起と開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起を有する棚板、及び、棚板が取り付けられる奥及び手前側のダボを備えるミラーキャビネットであって、前記棚板は本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け、棚板の手前側を持ち上げて取外すものであるミラーキャビネット。」
a 引用例11発明における「手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有する棚板」は、本件訂正発明1における「内部に物品を収納可能な収納トレイ」であって「前記収納トレイは、物品が載置可能な底面部と、前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部」を有し「前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大き」いことに相当する。
b 引用例11発明における「水栓金具や排水金具を有する洗面器の上方に設置され、鏡・収納棚、収納棚の両側に位置する側板、側板から出ているダボ、側板の前端側に開閉可能に支持された鏡扉、鏡扉の蝶番(ヒンジ)、手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有するとともに、下面に、開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起と開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起を有する棚板、及び、棚板が取り付けられる奥及び手前側のダボを備えるミラーキャビネット」は、本件訂正発明1における「内部に物品を収納可能な収納トレイと、互いに対面する左右の側壁を有し前記収納トレイが設置されるキャビネット本体と、前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラーと、を備え、水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置される洗面キャビネット」に相当する。
c 引用例11発明における「棚板が取り付けられる奥及び手前側のダボ」の「奥のダボ」及び「手前側のダボ」は、本件訂正発明1における「前記被固定部」の「前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部」及び「前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部」に相当する。
d 引用例11発明における「棚板」が「開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起」と「開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起」を有し、「前記棚板は本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け、棚板の手前側を持ち上げて取外すもの」であり、前記ダボは「側板から出ているダボ」であることは、「本件訂正発明1における「収納トレイ」が「前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部」を有することに相当する。
e 引用例11発明における「開口方向が低い壁部側に向けて開口しているL字状の棚板奥の突起」は、棚板の下面に位置し、ダボを横から引っかける構造であることは明らかであるから、本件訂正発明1における「前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部」に相当する。
f 引用例11発明における「開口方向が高い壁部側に向けて開口している弧状の手前側の突起」と本件訂正発明1における「前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部」とは、「固定部材」である点で共通する。
なお、引用例11発明における「手前側の突起」は、上から下にはめこむものであるから、「第二被固定部」に「嵌合」する「横嵌合部」ということはできず、棚板のいずれの側を手前に配置した場合にも、本件訂正発明1の「第二横嵌合部」に相当するものではない。
g 引用例11発明における「手前に高い壁部を有し、奥に低い壁部を有する棚板」を「本体奥のダボに棚板奥の突起を引っ掛け、手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け、棚板の手前側を持ち上げて取外す」ことは、本件訂正発明1における「前記収納トレイ」は、「前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態で前記キャビネット本体に設置することが可能」であることに相当する。
また、引用例11発明の「棚板」が、「手前側の突起を手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付ける」ことにより、前記棚板の底面部が手前側のダボに支持されることは明らかであるから、本件訂正発明1における「前記収納トレイ」は、「前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」ことに相当する。
h そうすると、本件訂正発明1と引用例11発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
・一致点
「内部に物品を収納可能な収納トレイと、互いに対面する左右の側壁を有し
前記収納トレイが設置されるキャビネット本体と、前記側壁の前端側に開閉可能に支持され前記キャビネット本体の内部空間を開放または隠蔽可能なミラーと、を備え、水栓装置から吐出された水を受けるボウル部を備えた洗面台の上方に設置される洗面キャビネットであって、
前記収納トレイは、
物品が載置可能な底面部と、
前記底面部の一端側から上方へ向かって立設された第一立壁部と、
前記底面部の他端側から上方へ向かって立設された第二立壁部と、
前記底面部の下面に設けられ前記キャビネット本体の前記側壁に設けられた被固定部に対して着脱自在に固定可能な固定部と、を有し、
前記第一立壁部の高さは、前記第二立壁部の高さより大きく、
前記収納トレイは、前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態で前記キャビネット本体に設置することが可能であり、
前記固定部は、前記収納トレイが第一状態である際に、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であり、
前記被固定部は、前記側壁の前端側に設けられた第一被固定部と、前記第一被固定部よりも後方側に設けられた第二被固定部と、を有し、
前記固定部は、前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と固定部材とを有し、
前記収納トレイは、
前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される洗面キャビネット。」
・相違点ア
本件訂正発明1においては、「収納トレイ」が、「前記第一立壁部が前記第二立壁部より前方側に位置するように配置された第一状態と、前記第二立壁部が前記第一立壁部より前方側に位置するように配置された第二状態と、を切り替えて前記キャビネット本体に設置することが可能」であるのに対して、引用例11発明においては、棚板が、第一状態でキャビネットに設置されるものであり、第二状態と切り替えてキャビネットに設置することは特定されていない点。
・相違点イ
本件訂正発明1においては、「固定部」が、「前記収納トレイが第一状態である際でも、前記収納トレイが第二状態である際でも、前記キャビネット本体に対して着脱自在に固定可能であり」、「前記第一状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第二立壁部側に向けて開口する第一横嵌合部と、前記第二状態の場合に前記第二被固定部に対応する位置で前記第一立壁部側に向けて開口する第二横嵌合部と、を有し」、
「収納トレイ」が、「前記第一状態の場合には、後方側では前記第一横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持され、前記第二状態の場合には、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持される」のに対して、
引用例11発明においては、固定部として、棚板の高壁低い壁第一横嵌合部に加えて第二横嵌合部を有さず、前記棚板が、第二状態の場合に、後方側では前記第二横嵌合部が前記第二被固定部に嵌合するとともに、前方側では前記底面部が前記第一被固定部に支持されるものではない点。
(2)判断
a 事案に鑑み、上記相違点イについて検討する。
引用例11発明において、棚板の高壁側の底面部には横嵌合部が存在しないことは、上記(1)fに示したとおりである。
そして、引用例11発明においては、仮に、高い壁部側の底面部の下面に設けられた、上から下に向かってはめこむ弧状の突起を、たとえば棚板奥のL字状の突起のように、ダボに横から嵌合する突起に変更すると、たとえ低壁側の突起を上方から押してはめこもうとしても、上記低壁側の棚板奥の突起によりはめこみが妨げられ、棚板の装着ができなくなると解される。そのため、引用例11発明において、高い壁部側の、上から下に向かってはめこむ弧状の突起を奥側のダボに横から嵌合する「第二横嵌合部」とすることには阻害要因があり、引用例1~10記載事項が開示されていたとしても、相違点イに係る本件訂正発明1を得ることは当業者にとって容易でない。
そうすると、引用例11発明における「手前側のダボに上から下に向かってはめこむことにより取り付け」る「手前側の突起」を、「横嵌合部」に相当する構造へと改変することについて、動機付けや示唆を示す証拠はないから、引用例11発明及び周知技術に基いて、相違点イに係る本件訂正発明1の構成を得ることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
b 他に、本件訂正発明1が、甲第8号証(引用文献11)に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めるべき特段の事情もない。
c 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲第8号証(引用文献11)に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
d 本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、甲第8号証(引用文献11)に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
ウ 上記(1)ウの異議申立理由について
申立人は、本件特許発明7は、発明の詳細な説明に当業者が容易に実施できる程度に記載されていないと主張している。(申立書第49頁下から7行~、第50頁第7行)
上記申立理由は、訂正前の請求項7に係る特許についてのものである。
そして、本件訂正請求により請求項7は削除されており、また、訂正後の請求項には他に訂正前の請求項7の発明特定事項を有するものはないから、請求項7に係る特許についての本件取消理由は、本件訂正によってその対象となる請求項が存在しないものとなった。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項2~4、6及び7は訂正により削除されたため、本件特許の請求項2~4、6及び7に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700492