2019-700393
気体の分離または濃縮方法、および高酸素濃度混合気体の製造方法
- 審判番号
- 2019-700393
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-179035外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年05月14日
- 審決日
- 2020年06月30日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】山本 典輝
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【権利者代理人】岸本 達人
- 【異議申立人】奥村 一正
- 分類
- P1651.121-YAA(B01D) / P1651.537-YAA(B01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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特許第6436207号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成25年 8月28日を出願日とする特願2013-177093号の一部を平成29年 9月19日に特願2017-179035号として新たな特許出願としたものであって、平成30年11月22日にその請求項1~3に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年12月12日に特許掲載公報が発行され、その後、その全請求項に係る特許について、令和 1年 5月14日付けで特許異議申立人奥村 一正(以下、「申立人」という。)により甲第1~5号証を添付して特許異議の申立てがされ、同年 8月23日付けで当審より取消理由が通知され、同年10月25日に特許権者代理人 弁理士 山本 典輝らとの面接が行われ、取消理由通知書の指定期間内である同年10月29日付けで特許権者より乙第1号証~乙第3号証を添付して意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年12月 3日付けで申立人より参考資料1、2を添付して意見書が提出され、令和 2年 1月15日付けで当審より取消理由(決定の予告)が通知され、同年 3月 6日付けで特許権者より意見書案及び訂正請求書案がFAX送信され、取消理由通知書(決定の予告)の指定期間内である同年 3月16日付けで特許権者より意見書の提出並びに訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、これについて、同年3月24日付けで当審より申立人に意見書の提出を求めたところ、申立人からは指定期間内に何らの応答もなされなかったものである。
第2 本件訂正請求による訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項1~4からなるものである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
なお、本件訂正請求により、令和 1年10月29日付け訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「該ゼオライト膜は、酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、」
と記載されているのを、
「該ゼオライト膜は、酸素8員環の細孔構造を有するゼオライトを含み、」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~3も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の本件特許明細書(以下、「訂正前明細書」という。)の【0150】に
「CO2/N2のパーミエンス比は17、He/CH4パーミエンス比は17であり、分離性能が向上している傾向にあるものの不十分であった。」
と記載されているのを、
「CO2/N2のパーミエンス比は35、He/CH4パーミエンス比は145であり、高い分離性能の膜なっていることがわかった。」
(3)訂正事項3
訂正前明細書の【0153】に
「CO2/N2のパーミエンス比は35、He/CH4パーミエンス比は145であり、」
と記載されているのを、
「CO2/N2のパーミエンス比は43、He/CH4パーミエンス比は256であり、」
に訂正する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上であることを特徴とする、」
と記載されているのを、
「該ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上であることを特徴とする、」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~3も同様に訂正する。)。
本件訂正前の請求項2~3は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1、4によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~3は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
訂正事項2~3に係る訂正は、願書に添付した明細書を訂正するものであるが、いずれも一群の請求項である訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3に関係する訂正である。
そして、本件訂正は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われるものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、請求項1の「酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライト」を「酸素8員環の細孔構造を有するゼオライト」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、「実施例1」について、訂正前明細書の【0150】の「CO2/N2のパーミエンス比は17、He/CH4パーミエンス比は17であ」る、との記載が、同【0168】【表1】の「実施例1」の「CO2/N2のパーミエンス比」である「35」、「He/CH4パーミエンス比」である「145」の記載と合致せず、また、前記【0150】の「分離性能が向上している傾向にあるものの不十分であった。」との記載が、同【0151】の「分離後の酸素濃度は40%であり、比較例1、2および3と比べて高い濃度の酸素が得られることがわかった。」の記載と合致しなかったものを、これらの記載と合致するように訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項2による訂正は、願書に最初に添付した明細書の【0151】及び【0168】【表1】の「実施例1」の「CO2/N2のパーミエンス比」である「35」、「He/CH4パーミエンス比」である「145」の記載に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、「実施例2」について、訂正前明細書の【0153】の「CO2/N2のパーミエンス比は35、He/CH4パーミエンス比は145であ」る、との記載が、同【0168】【表1】の「実施例2」の「CO2/N2のパーミエンス比」である「43」、「He/CH4パーミエンス比」である「256」の記載と合致しなかったものを、これらの記載と合致するように訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項3による訂正は、願書に最初に添付した明細書の【0168】【表1】の「実施例2」の「CO2/N2のパーミエンス比」である「43」、「He/CH4パーミエンス比」である「256」の記載に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、請求項1の「ゼオライト膜」を、「該ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾され」るものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正前明細書の【0082】には、下記第6の1(1)(c)と同じ記載があり、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
なお、本件訂正請求においては、全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本件発明1」~「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」という。)。
「【請求項1】複数の気体成分を含有する混合気体を接触させて、該混合気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、該混合気体から該透過性の高い成分を分離する、または、該混合気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する気体の分離または濃縮に用いられる分離膜であって、該透過性の高い成分が二酸化炭素であり、該分離膜は無機多孔質支持体上にゼオライト膜を有するゼオライト膜複合体であり、該ゼオライト膜は、酸素8員環の細孔構造を有するゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上であることを特徴とする、分離膜。【請求項2】該ゼオライト膜の厚さが20μm以下である、請求項1に記載の分離膜。【請求項3】空気透過量が1400L/(m2・h)以下である、請求項1または2に記載の分離膜。」
第4 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第5号証を提出し、以下の特許異議申立理由によって、本件訂正前の請求項1~3に係る発明の特許は取り消すべきものである旨を主張している。
1 特許法第29条第2項(進歩性)について
本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲第1号証に記載される発明及び甲第2~5号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 取消理由の概要
1 令和 1年 8月23日付け取消理由通知の概要
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 訂正前明細書の【0132】~【0168】の実施例1~5においては、「CHA型ゼオライト」を「X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上である」ものとすることで、本件特許の課題が解決されているということができるが、訂正前明細書においては、「ゼオライト」が「酸素8員環以下の細孔構造を有するゼオライトを含み、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上である」ものでありさえすれば、本件特許の課題を解決できることが十分に裏付けられているとはいえない。
イ そして、本件訂正前の請求項1に係る発明においては、「ゼオライト」が「CHA型ゼオライト」であることが特定されておらず、本件訂正前の請求項1に係る発明は、「ゼオライト」として「CHA型ゼオライト」以外の「そのほかの型のゼオライト」を包含するものであり、このことと、前記アによれば、訂正前明細書の記載に接した当業者は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を満たすことにより本件特許の課題を解決できることを理解できないので、本件訂正前の請求項1に係る発明が、訂正前明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
また、このことは、本件訂正前の請求項1に係る発明を直接的又は間接的に引用する本件訂正前の請求項2~3に係る発明についても同様であるから、本件訂正前の請求項1~3に係る発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 令和 2年 1月15日付け取消理由通知(決定の予告)の概要
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 令和 1年10月29日付けの訂正の請求により訂正された本件特許明細書の【0023】、【0024】、【0082】によれば、本件特許に係る発明は、酸素8員環の細孔構造を有するゼオライト膜表面をSi化合物により修飾し、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を50以上として、ゼオライトが本来もつ細孔径よりも小さい開口径とすることで、本件特許の課題を解決するものといえ、このことは、令和 1年10月29日付けで特許権者が提出した意見書の6頁13行~8頁2行の記載及びイメージ図(8頁)によっても裏付けられるものである。
イ 一方、令和 1年10月29日付けの訂正の請求により訂正された請求項1に係る発明(以下、「訂正発明1」という。)においては、酸素8員環の細孔構造を有するゼオライト膜表面をSi化合物により修飾して、ゼオライトが本来もつ細孔径よりも小さい開口径とすることは特定されていない。
そして、酸素8員環の細孔構造を有するゼオライト膜表面を、Si化合物により修飾することなく、水熱合成等によりSiO2/Al2O3モル比が50以上となるようにした場合、訂正発明1の「該ゼオライト膜は、酸素8員環の細孔構造を有するゼオライトを含み、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上である」との発明特定事項を満たすものとなるが、このときのゼオライト膜は、膜表面がSi化合物により修飾されておらず、ゼオライトが本来もつ細孔径よりも小さい開口径とはならないのであって、そのようなゼオライト膜により本件特許の課題を解決できるとはいえないので、訂正発明1は、本件特許の課題を解決できないものも包含するから、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
そして、このことは、訂正発明1を直接的又は間接的に引用する令和 1年10月29日付けの訂正の請求により訂正された請求項2~3に係る発明(以下、「訂正発明2~3」という。)についても同様であるから、訂正発明1~3に係る発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第6 取消理由についての判断
前記第5の1(1)及び同2(1)の取消理由は、いずれも、請求項1~3に係る発明が、本件特許の課題を解決できないものを包含する旨をいうものであるので、以下、まとめて検討する。
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)本件特許明細書の記載事項
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本件特許明細書には、以下の(a)~(c)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(a)「【0001】本発明は、ゼオライト分離膜を用いて、複数の気体成分を含有する混合気体から、透過性の高い物質を透過して分離し、透過性の低い物質を濃縮する、気体の分離または濃縮方法に関する。【背景技術】…続きを表示(全19行)【0003】膜による気体分離の方法としては、1970年代から高分子膜を用いた方法が提案されている。…これらの問題を解決すべく耐薬品性、耐酸化性、耐熱性、耐圧性が良好な無機膜が提案されてきている。無機膜としてはPd膜、複合酸化物膜などの緻密膜やシリカ膜、ゼオライト膜等の多孔質膜がある。…【0004】気体分離用ゼオライト膜としては、A型膜、FAU膜、MFI膜、SAPO-34膜、DDR膜などのゼオライト膜が知られている。具体的な混合気体の膜分離の例としては、気体状の化石資源の分離や火力発電所や石油化学工業などから排出される気体の分離などで二酸化炭素と窒素、二酸化炭素とメタン、水素と炭化水素、水素と酸素、水素と二酸化炭素、窒素と酸素、パラフィンとオレフィン、ヘリウムとメタンなどの分離などがある。用い得るゼオライト膜の中で、A型ゼオライト膜は水蒸気安定性に乏しく、また結晶間隙のない膜にすることが難しいため結晶間隙を通過する気体が多く存在し分離性能は十分でない。FAU膜はゼオライトの細孔が0.6~0.8nmであり、水素などの小さな気体分子2個分がゼオライト細孔内に入りうる大きさであり、上述した気体分離の多くの場合で分子ふるい効果は期待できない。この膜は、ゼオライト細孔への吸着特性をもつ分子ともたない分子の分離、例えば二酸化炭素と窒素の分離に向いている。しかし、吸着性のない分子は分離しにくく、適用範囲が狭い。MFI膜の細孔径は0.55nmであり、これもFAU膜同様に気体分子の分離には細孔がやや大きく分離性能も高くない。細孔径が小さく、小さな気体の分離に適した膜としてDDR(特許文献1)、SAPO-34(非特許文献1)、SSZ-13(非特許文献2)が知られている。また本発明者らがこれらの膜の課題である透過性、耐水性、分離性に優れたゼオライト膜複合体とそれによるガス分離方法を見出し先に提案している(特許文献2)。…【発明が解決しようとする課題】【0007】これらの膜の細孔径としては、International Zeolite Association(IZA)が定める結晶学的なチャネル直径でDDRが3.6×4.4ÅでありSAPO-34、SSZ-13の結晶構造であるCHAでは3.8×3.8Åである。一方、分離が期待される気体のkinetic直径としては例えばヘリウム分子は2.6Å、酸素分子は3.5Å、窒素分子は3.6Åであり、これらはDDR、CHA膜の細孔径の長径よりも小さい(kinetic直径(kinetic diameter):Laurence W McKeen, FilmProperties of Plastics and Elastomers Third Edition,Elsevier,2012)。【0008】このような細孔サイズと分子サイズの関係にある気体混合物を分離・濃縮する場合には気体分子がいずれも膜を透過することができるため、分子の大きさの序列や拡散速度による分離はできるものも分子ふるい効果が機能せず分離性能としては十分でなかった。本発明は、かかる従来技術の問題が解決された、様々なkinetic直径の小さな気体を高い分離性で分離することができ、特に4Å以下のような気体が含まれる気体混合物の分離または濃縮方法を提供することを課題とするものである。また、本発明は、分離または濃縮方法を利用することで、高酸素濃度の混合気体の製造方法を提供することを課題とするものである。」
(b)「【0024】ゼオライト 膜表面のSiO2/Al2O3モル比は、25以上であればよく、…特に好ましくは50以上、最も好ましくは80以上であり、また、好ましくは3000以下、…最も好ましくは300以下である。ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が25以上であることにより膜表面の膜表面の細孔径が狭小化しており分離性能が向上すると考えられる。また、膜表面のSARが上限以下であることにより、吸着性の点で、透過度が小さくならないというメリットがある。…【0032】酸素n員環構造はゼオライトの細孔のサイズを決定するものであり、酸素6員環よりも小さいゼオライトではH2O分子のKinetic直径よりも細孔径が小さくなるため透過度が小さくなり実用的でない場合がある。また、酸素8員環構造よりも大きい場合は細孔径が大きくなり、サイズの小さな気体成分では分離性能が低下することがあり、用途が限定的になる場合がある。」
(c)「【0082】…続いて、ゼオライト膜複合体を、Si原子を1原子以上含む化合物である、Si化合物を含む液体で浸漬等の処理をする。これにより、ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されて、上記した特定の物理化学的性質を有するものとすることができる。例えば、ゼオライト膜表面にSi層を形成することにより、ゼオライトが本来もつ細孔径よりも小さい開口径となり、分離性能が向上させることができると考えられる。また、ゼオライト膜表面をSi化合物により修飾することで膜表面に存在する微細な欠陥をふさぐ効果が副次的に得られることがある。」
(2)当審の判断
ア 前記(1)(a)によれば、気体分離用ゼオライト膜としては、従来からA型膜、FAU膜、MFI膜、SAPO-34膜、DDR膜などのゼオライト膜が知られているのであるが、A型ゼオライト膜は、水蒸気安定性に乏しく、また結晶間隙のない膜にすることが難しいため結晶間隙を通過する気体が多く存在し分離性能は十分でない、という課題を有するものであり、FAU膜はゼオライトの細孔が0.6~0.8nmであり、水素などの小さな気体分子2個分がゼオライト細孔内に入りうる大きさであり、上述した気体分離の多くの場合で分子ふるい効果は期待できないのであり、この膜は、ゼオライト細孔への吸着特性をもつ分子ともたない分子の分離、例えば二酸化炭素と窒素の分離に向いているが、吸着性のない分子は分離しにくく、適用範囲が狭い、という課題を有するものであり、MFI膜の細孔径は0.55nmであり、これもFAU膜同様に気体分子の分離には細孔がやや大きく分離性能も高くない、という課題を有するものである。
また、細孔径が小さく、小さな気体の分離に適した膜としてDDR、SAPO-34、SSZ-13が知られているが、これらの膜の細孔径としては、DDRが3.6×4.4Åであり、SAPO-34、SSZ-13の結晶構造であるCHAでは3.8×3.8Åである一方、分離が期待される気体のkinetic直径としては例えばヘリウム分子は2.6Å、酸素分子は3.5Å、窒素分子は3.6Åであり、これらはDDR、CHA膜の細孔径の長径よりも小さいのであり、このような細孔サイズと分子サイズの関係にある気体混合物を分離・濃縮する場合には気体分子がいずれも膜を透過することができるため、分子の大きさの序列や拡散速度による分離はできるものも分子ふるい効果が機能せず分離性能としては十分でなかった、という課題を有するものである。
イ そして、前記(1)(b)、(c)によれば、本件発明は、ゼオライト膜表面をSi化合物により修飾することでゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を50以上として、ゼオライトが本来もつ細孔径よりも小さい開口径となり、分離性能を向上させることができるものである。
また、本件発明における「酸素n員環構造」はゼオライトの細孔のサイズを決定するものであり、「酸素6員環構造」よりも小さいゼオライトではH2O分子のKinetic直径よりも細孔径が小さくなるため透過度が小さくなり実用的でない場合がある一方、「酸素8員環構造」よりも大きい場合は細孔径が大きくなり、サイズの小さな気体成分では分離性能が低下することがあり、用途が限定的になる場合があるものである。
ウ 前記イによれば、本件発明は、「酸素8員環構造」を有するゼオライトにおいて、ゼオライト膜表面をSi化合物により修飾してゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を50以上とすることにより、ゼオライトが本来もつ細孔径よりも小さい開口径とすることで、気体の分離性能を向上させ、前記アの課題を解決するものといえる。
エ 一方、前記第3によれば、本件発明1は、
「該分離膜は無機多孔質支持体上にゼオライト膜を有するゼオライト膜複合体であり、該ゼオライト膜は、酸素8員環の細孔構造を有するゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上である」
との発明特定事項を有するものであって、これは、「酸素8員環構造」を有するゼオライトにおいて、ゼオライト膜表面をSi化合物により修飾してゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を50以上とすることにより、ゼオライトが本来もつ細孔径よりも小さい開口径とすることで、気体の分離性能を向上させるものにほかならない。
このことと、前記ウによれば、本件発明1において「ゼオライト」が「CHA型ゼオライト」であることが特定されていないとしても、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1により前記アの課題を解決できることを理解できるものである。
(オ)してみれば、本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるというべきであり、このことは、本件発明1を引用する本件発明2~3についても同様であるので、前記第5の1(1)及び同2(1)の取消理由はいずれも理由がない。
第7 特許異議申立理由についての判断
以下、取消理由で採用しなかった特許異議申立理由について検討する。
1 特許法第29条第2項について
(1)各甲号証の記載事項
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(1-1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載される発明
ア 甲第1号証には、以下の(1a)~(1b)の記載がある。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2/Al2O3モル比5以上のゼオライトを含むゼオライト膜を、水熱合成により、多孔質支持体上に形成させてゼオライト膜複合体とし、該ゼオライト膜複合体を、温度50℃以上で加熱処理した後に、温度40℃以上300℃以下の水に1時間以上浸漬することを特徴とする多孔質支持体-ゼオライト膜複合体の製造方法。
…
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする多孔質支持体-ゼオライト膜複合体。」
(1b)「【0115】
…
(比較例1)
無機多孔質支持体CHA型ゼオライト膜複合体はCHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで次のとおり作製した。
【0116】
水熱合成用の反応混合物として、以下のものを調製した。
1mol/L-NaOH水溶液10.5gと1mol/L-KOH水溶液7.0gと水100.5gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)0.88gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(以下これを「TMADAOH」という。)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)2.36gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック-40)10.5gを加えて2時間撹拌し、反応混合物とした。
【0117】
この反応混合物の組成(モル比)は、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=1/0.066/0.15/0.1/100/0.04、SiO2/Al2O3=15である。
無機多孔質支持体として、多孔質アルミナチューブ(外径12mm、内径9mm)を80mmの長さに切断し、超音波洗浄機で洗浄したのち乾燥させたものを用いた。
【0118】
種結晶として、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=1/0.033/0.1/0.06/40/0.07のゲル組成(モル比)で160℃、2日間水熱合成して結晶化させたCHA型ゼオライトを用いた。この種結晶の粒径は1μm程度であった。
この種結晶を1質量%水中に分散させた分散液に、上記支持体を所定時間浸漬した後、100℃で5時間乾燥させて、種結晶を付着させた。付着した種結晶の質量は2.2g/m2であった。
【0119】
この種結晶を付着させた支持体を、上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒(200ml)に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、静置状態で、160℃48時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体-ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し、洗浄後100℃で5時間以上乾燥させた。
テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成した。焼成後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は130g/m2であった。
…
【0124】
…
(比較例2)
無機多孔質支持体としてニッカトー社製のムライトチューブPM(外径12mm、内径9mm)を用いた以外は比較例1と同様に無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。
…
【0141】
…
(実施例4)
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。この無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比はSEM-EDXによって測定した結果17であった。XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は36.2であった。
【0142】
この無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を脱塩水135gとテトラエトキシシラン(以下、TEOSと略することがある)2.5gおよび硫酸1.4gが入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、100℃で20時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体-ゼオライト膜複合体を取りだし、脱塩水で洗浄した。以下、この処理を「温水処理3」という。
【0143】
温水処理3に用いた処理液のpHは1.0であり、H+濃度は0.1mol/l、Si含有量が0.24質量%であった。
温水処理3を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比をXPSにより測定した結果109.8であった。
温水処理3を行う前の無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比に比べ温水処理3を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は増加していた。したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測された。
【0144】
温水処理3を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、パーベーパレーション法により90℃の水/酢酸混合溶液(5/95重量%)から水を選択的に透過させる分離を実施例1と同様に行った。
5時間後の透過成績は、透過流束:0.92kg/(m2・h)、分離係数:17900、透過液中の水の濃度:99.89重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、1.2×10-6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表3に示す。
【0145】
比較例4と実施例4の比較から「温水処理3」によって分離係数が45倍に向上したことが分かる。
(実施例5)
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。この無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比はSEM-EDXによって測定した結果17であった。この無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を脱塩水135gとテトラエトキシシラン(TEOS)2.5gおよび酢酸1.62gが入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、100℃で20時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体-ゼオライト膜複合体を取りだし、脱塩水で洗浄した。以下、この処理を「温水処理4」という。温水処理4に用いた処理液のpHは2.9であり、H+濃度は0.001mol/l、Si含有量が0.24質量%であった。
【0146】
温水処理4を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比をXPSにより測定した結果91.2であった。
温水処理4を行う前の無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比に比べ温水処理4を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は大きくなっていた。したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測された。
【0147】
温水処理4を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、パーベーパレーション法により90℃の水/酢酸混合溶液(5/95重量%)から水を選択的に透過させる分離を実施例1と同様に行った。
5時間後の透過成績は、透過流束:1.2kg/(m2・h)、分離係数:210000、透過液中の水の濃度:99.99重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、1.7×10-6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表3に示す。
【0148】
比較例4と実施例5の比較から「温水処理4」によって分離係数が500倍に向上したことが分かる。
…
【0149】
…
(実施例6)
比較例2と同じ条件で無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。この無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比はSEM-EDXによって測定した結果17であった。XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は36.2であった。
【0150】
この無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を脱塩水135gとテトラエトキシシラン(TEOS)2.5gおよびリン酸4.7gが入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、100℃で20時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体-ゼオライト膜複合体を取りだし、脱塩水で洗浄した。以下、この処理を「温水処理5」という。
【0151】
温水処理5に用いた処理液のpHは1.3であり、H+濃度は0.05mol/l、Si含有量が0.24質量%であった。
温水処理5を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比をXPSにより測定した結果90.0であった。
温水処理5を行う前の無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比に比べ温水処理5を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は増加していた。したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測された。
【0152】
温水処理5を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、パーベーパレーション法により90℃の水/酢酸混合溶液(10/90重量%)から水を選択的に透過させる分離を実施例1と同様に行った。
5時間後の透過成績は、透過流束:1.7kg/(m2・h)、分離係数:99000、透過液中の水の濃度:99.99重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、1.3×10-6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表3に示す。 比較例5と実施例6の比較から「温水処理5」によって分離係数が50倍に向上したことが分かる。
…
【0157】
(実施例9)
比較例1と同じ条件で無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。SEM-EDXにより、ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、生成した膜のSiO2/Al2O3モル比は17であった。XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は32.4であった。
【0158】
得られた無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を脱塩水135gとテトラエトキシシラン(TEOS)2.5gおよび酢酸4.05gが入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、100℃で20時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体-ゼオライト膜複合体を取りだし、脱塩水で洗浄した。以下、この処理を「温水処理8」という。温水処理8に用いた処理液のpHは2.8であり、H+濃度は0.0016mol/l、Si含有量が0.24質量%であった。
【0159】
温水処理8を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比をXPSにより測定した結果は60.4であった。 温水処理8を行う前の無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比に比べ温水処理8を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は増加していた。したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測された。
【0160】
温水処理8を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、パーベーパレーション法により75℃の水/フェノール混合溶液(10/90重量%)から水を選択的に透過させる分離を比較例1と同様に行った。
3時間後の透過成績は、透過流束:5.2kg/(m2・h)、分離係数:75000、透過液中の水の濃度:99.99重量%、フェノールの濃度は0.01重量%であった。水のパーミエンスであらわすと、2.7×10-6mol/(m2・s・Pa)であった。評価結果を表3に示す。
【0161】
比較例6と実施例8の比較から、「温水処理7」によって温水処理したことにより、分離係数が5倍に向上したことが分かる。
また比較例6と実施例9の比較から、「温水処理8」によってSi元素存在下で温水処理をしたことにより、分離係数が100倍に向上したことが分かる。」
イ 前記(1a)によれば、甲第1号証には「多孔質支持体-ゼオライト膜複合体」が記載されており、前記(1b)の実施例4に注目すると、前記「多孔質支持体-ゼオライト膜複合体」は、1mol/L-NaOH水溶液10.5gと1mol/L-KOH水溶液7.0gと水100.5gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)0.88gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とし、これに有機テンプレートとして、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(以下これを「TMADAOH」という。)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)2.36gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック-40)10.5gを加えて2時間撹拌して水熱合成用の反応混合物を調製し、この反応混合物の組成(モル比)は、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=1/0.066/0.15/0.1/100/0.04、SiO2/Al2O3=15であり、
無機多孔質支持体としてニッカトー社製のムライトチューブPM(外径12mm、内径9mm)を80mmの長さに切断し、超音波洗浄機で洗浄したのち乾燥させたものを用い、
種結晶として、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=1/0.033/0.1/0.06/40/0.07のゲル組成(モル比)で160℃、2日間水熱合成して結晶化させたCHA型ゼオライトを用い、この種結晶の粒径は1μm程度であり、この種結晶を1質量%水中に分散させた分散液に、上記支持体を所定時間浸漬した後、100℃で5時間乾燥させて、種結晶を付着させ、このとき付着した種結晶の質量は2.2g/m2であり、
この種結晶を付着させた支持体を、上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒(200ml)に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、静置状態で、160℃48時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体-ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し、洗浄後100℃で5時間以上乾燥させ、テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成し、焼成後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量が130g/m2である、無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製するものであり、
この無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比はSEM-EDXによって測定した結果17であり、XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は36.2であるものである。
そして、この無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を脱塩水135gとテトラエトキシシラン(以下、TEOSと略することがある)2.5gおよび硫酸1.4gが入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、100℃で20時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体-ゼオライト膜複合体を取りだし、脱塩水で洗浄し(温水処理3)、ここで、温水処理3に用いた処理液のpHは1.0であり、H+濃度は0.1mol/l、Si含有量が0.24質量%であり、
温水処理3を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は、XPSにより測定した結果109.8であり、温水処理3を行う前の無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比に比べ温水処理3を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は増加しており、したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測されるものであり、
温水処理3を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、パーベーパレーション法により90℃の水/酢酸混合溶液(5/95重量%)から水を選択的に透過させる分離を行うと、5時間後の透過成績は、透過流束:0.92kg/(m2・h)、分離係数:17900、透過液中の水の濃度:99.89重量%であり、水のパーミエンスであらわすと、1.2×10-6mol/(m2・s・Pa)であるものである。
ウ 前記イによれば、甲第1号証には、
「1mol/L-NaOH水溶液10.5gと1mol/L-KOH水溶液7.0gと水100.5gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)0.88gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とし、これに有機テンプレートとして、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(以下これを「TMADAOH」という。)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)2.36gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック-40)10.5gを加えて2時間撹拌して水熱合成用の反応混合物を調製し、この反応混合物の組成(モル比)は、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=1/0.066/0.15/0.1/100/0.04、SiO2/Al2O3=15であり、無機多孔質支持体としてニッカトー社製のムライトチューブPM(外径12mm、内径9mm)を80mmの長さに切断し、超音波洗浄機で洗浄したのち乾燥させたものを用い、種結晶として、SiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=1/0.033/0.1/0.06/40/0.07のゲル組成(モル比)で160℃、2日間水熱合成して結晶化させたCHA型ゼオライトを用い、この種結晶の粒径は1μm程度であり、この種結晶を1質量%水中に分散させた分散液に、上記支持体を所定時間浸漬した後、100℃で5時間乾燥させて、種結晶を付着させ、このとき付着した種結晶の質量は2.2g/m2であり、この種結晶を付着させた支持体を、上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒(200ml)に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、静置状態で、160℃48時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体-ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し、洗浄後100℃で5時間以上乾燥させ、テンプレート焼成前のゼオライトの膜複合体を電気炉で500℃、5時間焼成し、焼成後の膜複合体の重量と支持体の重量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量が130g/m2である、無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製し、この無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比はSEM-EDXによって測定した結果17であり、XPSによりゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比を測定した結果、ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は36.2であるものであり、この無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を脱塩水135gとテトラエトキシシラン(以下、TEOSと略することがある)2.5gおよび硫酸1.4gが入ったテフロン(登録商標)製内筒に垂直方向に浸漬してオートクレーブを密閉し、100℃で20時間、自生圧力下で加熱し、所定時間経過後、放冷した後に支持体-ゼオライト膜複合体を取りだし、脱塩水で洗浄し(温水処理3)、ここで、温水処理3に用いた処理液のpHは1.0であり、H+濃度は0.1mol/l、Si含有量が0.24質量%であり、温水処理を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は、XPSにより測定した結果109.8であり、温水処理3を行う前の無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比に比べ温水処理3を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は増加しており、したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測されるものであり、温水処理3を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、パーベーパレーション法により90℃の水/酢酸混合溶液(5/95重量%)から水を選択的に透過させる分離を行うと、5時間後の透過成績は、透過流束:0.92kg/(m2・h)、分離係数:17900、透過液中の水の濃度:99.89重量%であり、水のパーミエンスであらわすと、1.2×10-6mol/(m2・s・Pa)である、多孔質支持体-ゼオライト膜複合体。」
の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(1-2)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の(2a)~(2b)の記載がある。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に成膜されてなり、その主成分がシリカであるとともに、二酸化炭素(CO2)、水素(H2)、酸素(O2)、窒素(N2)、メタン(CH4)、ノルマルブタン(n-C4H10)、イソブタン(i-C4H10)、六フッ化硫黄(SF6)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、プロパン(C3H8)、プロピレン(C3H6)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)及び水(H2O)からなる群から選ばれる少なくとも2種のガスのそれぞれの単成分ガス透過率が、室温及び100℃において、前記少なくとも2種のガス間で互いに異なることを特徴とするDDR型ゼオライト膜。」
(2b)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ゼオライトにおいては、天然ガス中に含有されるような、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、二酸化炭素(CO2)等の比較的低分子量の分子を、それぞれ分離できるような細孔径を有するゼオライト膜はなかった。
【0008】また、上述の天然ガスの精製方法における有機膜は、機械的強度が弱く、耐圧性や耐熱性が低く、二酸化炭素による可塑化が生じ、そして液体炭化水素で劣化するという問題があった。そのため、天然ガスのような低分子量の分子を含有するガスを膜分離するための適した膜がないという問題があった。
【0009】本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、機械的強度及び耐熱性に優れ、二酸化炭素による可塑化、液体炭化水素による劣化等の問題が発生し難く、天然ガス等の特定の2種以上のガス成分を含有する混合ガスから1種以上の特定のガス成分を分離することが可能なDDR型ゼオライト膜、そのようなDDR型ゼオライト膜を使用したガス分離方法、そして、そのようなDDR型ゼオライト膜を搭載したガス分離装置を提供することを目的とする。」
(1-3)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の(3a)~(3c)の記載がある。
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気体成分からなる気体混合物から、透過性の高い気体成分を透過して分離するガス分離用のゼオライト膜複合体であって、該ゼオライト膜が、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含み、セラミックス支持体上に形成されてなることを特徴とするガス分離用ゼオライト膜複合体。」
(3b)「【0121】
(実施例2)
(1)CHA型ゼオライト膜複合体の作製 セラミックス支持体上にCHA型ゼオライトを直接水熱合成することによりセラミックス支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。
水熱合成用の反応混合物は次のとおり調製した。
…
【0125】
また、短冊状に切断したCHA型ゼオライト膜複合体をSEMで観測した結果、表面に結晶が緻密に生成していた。
また、SEM-EDXにより測定した、ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比は22であった。
…
【0129】
(実施例4)
(1)単成分ガス透過試験 焼成温度を500℃とした以外は、実施例2と同様にして作成したCHA型ゼオライト膜複合体の単ガス成分透過性を、図2の装置を用いて評価した。評価したガスは二酸化炭素、メタン、水素、窒素、ヘリウムである。
【0130】
ゼオライト膜複合体を、140℃で、供給ガス7としてHeを、耐圧容器2とゼオライト膜複合体1との円筒の間に導入して、圧力を0.400MPaに保ち、ゼオライト膜複合体1の円筒の内側を0.100MPa(大気圧)として、120分間乾燥し、前処理した。
その後、供給側の圧力を0.200MPaとし、供給ガスを各評価ガスに変更した。このとき、ゼオライト膜複合体1の供給ガス7側と透過ガス8側の差圧は、0.100MPaであった。
【0131】
その後、温度を50℃とし、温度が安定した後に供給ガスを各評価ガスに変更した。このとき、ゼオライト膜複合体1の供給ガス7側と透過ガス8側の差圧は、0.100MPaであった。
このようにして得られた各ガスのパーミエンスを表1に示す。50℃での二酸化炭素とメタンの理想分離係数αは783、水素とメタンの理想分離係数αは264、窒素とメタンの理想分離係数αは48であり、また140℃での二酸化炭素とメタンの理想分離係数αは171、水素とメタンの理想分離係数αは94、窒素とメタンの理想分離係数αは12であった。
【0132】
【表1】
」
(3c)「【図2】
」
(1-4)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の(4a)の記載がある。
(4a)「The molecular -sieve DDR type zeolite membrane with anaperture of 0.36×0.44 nm was formed on a porous alumina substrate by hydrothermal process.The permeance through the membrane in the single gas feed of helium,hydrogen,carbon dioxide,oxygen,nitrogen,methane,n-butane,i-butane,and sulfer hexafluoride were measured at 301 and 373 K up to 0.5 MPa. The permeance decreased by more than three orders of magnitude between 0.35 and 0.40 nm of the kinetic diameter of permeated gas at both 301 and 373 K.The separation factor of CO2 to CH4 in 50% CO2and 50% CH4 mixed gas feed was 220 and 100 at 301 and 373K,respectively at 0.5 MPa total gas feed pressure.The permeation properties were slightly affected by the water addition at 301K.We conclude that the DDR type membrane has few defects and worked as molecular-sieving membrane.」(71頁 Abstract)
(当審訳:多孔質アルミナ基板上に水熱法により細孔径0.36×0.44nmのDDR型ゼオライト膜モレキュラーシーブが形成された。ヘリウム、水素、二酸化炭素、酸素、窒素、メタン、n-ブタン、i-ブタン及び六フッ化硫黄の単一ガス供給における膜透過パーミエンスが301K及び373Kで0.5MPaまで測定された。パーミエンスは、301Kと373Kの両方で、動的直径が0.35nmと0.40nmの間の透過ガスで3桁以上減少した。50%CO2と50%CH4の混合ガスを、0.5MPaの全ガス供給圧力で供給したときのCO2のCH4に対する分離係数は301Kと373Kでそれぞれ220と100であった。パーミエーションの特性は、301Kにおける水の添加によりわずかに影響された。我々は、DDR型の膜は欠陥がわずかであり、モレキュラーシーブ膜として機能したと結論する。」
(1-5)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の(5a)の記載がある。
(5a)「本研究では,二酸化炭素(CO2)/メタン(CH4)分離膜として最近開発されたDDR型ゼオライト膜を用いて様々な単成分ガスの透過やCO2/CH4混合ガスの透過を測定し,各気体の透過機構や分離機構の解明を行い,他の分離膜との性能比較を行った.
まず、He,H2,CO2,O2,N2,CH4の単成分ガスの透過流束を測定し,CO2は主に吸着に起因し,CH4はDDRゼオライト細孔による分子ふるいに起因する透過機構であることを明らかにした.また,加圧透過試験およびスウィープ試験による298Kでの単成分ガスのCO2/CH4理想分離係数は供給圧力0.2MPa,透過圧力0.1MPaのとき最大でそれぞれ337,170となった.
次に、スウィープ試験で測定したCO2/CH4混合ガス(50:50)と単成分ガスの透過流束および分離係数を比較した結果,全ての圧力範囲においてCO2の透過流束は混合ガスより単成分ガスの方が高く,CH4の透過流束は混合ガスと単成分ガスとで変化はなかった.さらに,混合ガスを用いた加圧透過試験では供給圧力0.6MPaで分離係数が極大値を示し,そのときの値は106であり,スウィープ試験では供給圧力が大気圧のとき分離係数が最大値200を示し,圧力の増加に伴い分離係数は減少した.
本幕を近年報告されている他のCO2/CH4分離膜と性能比較した結果,CO2/CH4分離性能およびCO2透過性能ともに高いゼオライト膜であることを明らかにした.」(122頁7行~20行)
(2)対比・判断
(2-1)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「多孔質支持体-ゼオライト膜複合体」は、本件発明1における、「無機多孔質支持体上にゼオライト膜を有するゼオライト膜複合体であり、該ゼオライト膜は、」「ゼオライトを含」む、「分離膜」に相当する。
また、甲1発明において、「温水処理を施した無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は、XPSにより測定した結果109.8であり、温水処理を行う前の無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体のバルクでのSiO2/Al2O3比に比べ温水処理を行った後の膜表面のSiO2/Al2O3比は増加しており、したがって、ゼオライト膜表面がシリカで修飾されていると推測される」ことは、本件発明1において、「該ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上である」ことに合致する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「分離膜であって、該分離膜は無機多孔質支持体上にゼオライト膜を有するゼオライト膜複合体であり、該ゼオライト膜は、ゼオライトを含み、該ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上であることを特徴とする、分離膜。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
・相違点1:本件発明1は、「分離膜」が、「複数の気体成分を含有する混合気体を接触させて、該混合気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、該混合気体から該透過性の高い成分を分離する、または、該混合気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する気体の分離または濃縮に用いられる」ものであって、「該透過性の高い成分が二酸化炭素であ」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「パーベーパレーション法により90℃の水/酢酸混合溶液(5/95重量%)から水を選択的に透過させる分離を行う」ものである点。
イ 判断
(ア)まず、前記ア(イ)の相違点1について検討すると、前記(1)(1-2)(2a)~(2b)、同(1-4)(4a)、同(1-5)(5a)によれば、甲第2、4、5号証には、DDR型ゼオライト膜が、CO2/CH4分離性能およびCO2透過性能が高いことが記載されているといえる。
また、前記(1)(1-3)(3a)によれば、甲第3号証には、複数の気体成分からなる気体混合物から、透過性の高い気体成分を透過して分離する「ガス分離用のゼオライト膜複合体」であって、該ゼオライト膜が、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含み、セラミックス支持体上に形成されてなる、「ガス分離用ゼオライト膜複合体」が記載されており、前記「ガス分離用ゼオライト膜複合体」は、具体的には、同(1-3)(3b)~(3c)によれば、セラミックス支持体上にCHA型ゼオライトを直接水熱合成することにより作製される「セラミックス支持体-CHA型ゼオライト膜複合体」からなるものであって、SEM-EDXにより測定したSiO2/Al2O3モル比が22であるCHA型ゼオライト膜複合体であるものである。
ところが、甲第2、4、5号証に記載されるDDR型ゼオライト及び甲第3号証に記載されるCHA型ゼオライトは、いずれも、「ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上であ」る「分離膜」とはいえないのであって、甲第2~5号証には、「ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上であ」る「分離膜」を、混合気体から二酸化炭素を分離または濃縮する用途に用いることは記載も示唆もされていない。
(イ)更に、「ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上であ」る「分離膜」を、混合気体から二酸化炭素を分離または濃縮する用途に用いたときの作用、効果についてみると、本件特許明細書には、前記第6の1(1)(a)~(c)に加えて、以下(d)~(f)の記載がある。
(d)「【0123】(5)単成分気体透過評価 単成分気体透過試験は、図1に模式的に示す装置を用いて、以下のとおり行った。用いた試料気体は、二酸化炭素(純度99.9%、高圧気体工業社製)、メタン(純度99.999%、ジャパンファインプロダクツ製)、窒素(純度99.99%、東邦酸素工業製)、ヘリウム(純度99.99、ジャパンヘリウムセンター製)である。【0124】図1において、円筒型のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。続きを表示(全11行)円筒型のゼオライト膜複合体1の一端は、円柱状のエンドピン3で密封されている。他端は接続部4で接続され、接続部4の他端は、耐圧容器2と接続されている。円筒型のゼオライト膜複合体の内側と、透過気体8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。耐圧容器2には、試料気体の供給側の圧力を測る圧力計5が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。【0125】図1において、円筒型のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で、恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、試料気体の温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。円筒型のゼオライト膜複合体1の一端は、円形のエンドピン3で密封されている。他端は、接続部4で接続され、接続部4の他端は耐圧容器2と接続されている。円筒型のゼオライト膜複合体1の内側と透過気体8を排出する配管11が、接続部4を介して接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に伸びている。また、ゼオライト膜複合体1には、配管11を経由して、スイープ気体9を供給する配管(スイープ気体導入用配管)12が挿入されている。さらに、耐圧容器2に通ずるいずれかの箇所には、試料気体の供給側の圧力を測る圧力計5、供給側の圧力を調整する背圧弁6が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。【0126】図1の装置において、単成分気体透過試験を行う場合は、試料気体(供給気体7)を、一定の流量で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1の間に供給し、背圧弁6により供給側の圧力を一定とする。配管11から排出される排出気体10の流量を測定する。さらに具体的には、水分や空気などの成分を除去するため、測定温度以上での乾燥、及び、排気若しくは使用する供給気体によるパージ処理をした後、試料温度及びゼオライト膜複合体1の供給気体7側と透過気体8側の差圧を一定として、透過気体流量が安定したのちに、ゼオライト膜複合体1を透過した試料気体(透過気体8)の流量を測定し、気体のパーミエンス[mol・(m2・s・Pa)-1]を算出する。パーミエンスを計算する際の圧力は、供給気体の供給側と透過側の圧力差(差圧)を用いる。」
(e)「【0132】(比較例1)無機多孔質支持体とCHA型ゼオライト膜の膜複合体は、CHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することで次のとおり作製した。水熱合成用の反応混合物として、以下のものを調製した。続きを表示(全77行)…【0137】このゼオライト膜複合体について、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は11.4であった。得られた無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて、図1に示した装置を用いて50℃で単成分気体透過評価を行なった。前処理として、ゼオライト膜複合体を、140℃で、供給気体7として二酸化炭素を、耐圧容器2とゼオライト膜複合体1との円筒の間に導入して、二酸化炭素の透過量が安定するまで乾燥した。評価した気体は二酸化炭素、メタン、窒素、ヘリウムである。【0138】このようにして得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は12、He/CH4パーミエンス比は13であり、分離性能としては不十分であった。…【0139】(比較例2)加熱時間を24時間とした以外は比較例1と同様に無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。付着した種結晶の質量は1.0g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は126g/m2であった。【0140】焼成後のゼオライト膜複合体の空気透過量は155L/(m2・h)であった。 このゼオライト膜複合体について、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は19.0であった。得られた無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。このようにして得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は15、He/CH4パーミエンス比は16であり、分離性能としては不十分であった。…【0142】(比較例3)無機多孔支持体としてムライトチューブを使用した以外は比較例1と同様に無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。付着した種結晶の質量は0.7g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は140g/m2であった。【0143】このように得たゼオライト膜複合体を次のように表面処理した。テトラエトキシシランに、上部の端面には空気孔を設けた栓をし、下部の端面には孔のない栓をしたゼオライト膜複合体を室温で5秒程度漬けて引き上げた。その後風乾し、さらに底に水約1gを入れたテフロン(登録商標)製内筒に治具を用いて垂直に立てていれオートクレーブを密閉し、100℃で6時間加熱し、所定時間経過後、放冷した後でゼオライト膜複合体を取り出し、さらに150℃で1h加熱処理した。【0144】このゼオライト膜複合体について、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は23.0でありテトラエトキシシランで処理することで表面のSiの割合が増加したため値が大きくなっていると考えられる。得られた無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例2と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は17、He/CH4パーミエンス比は17であり、分離性能が向上している傾向にあるものの不十分であった。…【0146】(実施例1)水熱合成用の反応混合物として、以下のものを調製した。…【0149】このように得たゼオライト膜複合体を、次のように表面処理した。イソプロピルアルコールにメチルシリケートオリゴマー(MKC(登録商標)シリケート、MS-51、三菱化学社製)を30質量%で混合した溶液に、上部の端面には空気孔を設けた栓をし、下部の端面には孔のない栓をしたゼオライト膜複合体を室温で5秒程度漬けて引き上げた。その後風乾し、さらに底に水約1gを入れたテフロン(登録商標)製内筒に治具を用いて垂直に立てていれオートクレーブを密閉し、100℃で6時間加熱し、所定時間経過後、放冷した後でゼオライト膜複合体を取り出し、さらに150℃で1h加熱処理した。【0150】このゼオライト膜複合体について、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は69.0であった。得られた無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は35、He/CH4パーミエンス比は145であり、高い分離性能の膜なっていることがわかった。…【0152】(実施例2)比較例3と同様に無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。付着した種結晶の質量は1.9g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は146g/m2であった。このように得た膜複合体に実施例1同様に表面処理を実施した。【0153】このゼオライト膜複合体について、SEM-EDXにより測定したゼオライト膜自体のSiO2/Al2O3モル比は33.6、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は200であり表面のSiの割合が高いことがわかる。得られた無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は43、He/CH4パーミエンス比は256であり、高い分離性能の膜となっていることがわかった。…【0155】(実施例3)種結晶の分散液の濃度を0.3質量%とした以外は比較例1と同様に無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。付着した種結晶の質量は0.5g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は146g/m2であった。…【0158】…このように得た膜複合体にメチルシリケートオリゴマーの濃度を10質量%とした以外は実施例1と同様に表面処理を実施した。【0159】このゼオライト膜複合体について、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は190であり表面のSiの割合が高いことがわかった。得られた無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は26、He/CH4パーミエンス比は26であり、高い分離性能の膜となっていることがわかった。…【0161】(実施例4)オートクレーブを密閉し、自生圧力下で加熱する条件を180℃、18hとした以外は実施例3と同様に無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。付着した種結晶の質量は0.5g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は123g/m2であった。このように得た膜複合体にメチルシリケートオリゴマーの濃度を25質量%とし、液温を40℃とした以外は実施例1と同様に表面処理を実施した。【0162】このゼオライト膜複合体について、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比は168であり表面のSiの割合が高いことがわかった。得られた無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られたCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は42、He/CH4パーミエンス比は180であり、高い分離性能の膜となっていることがわかった。…【0164】(実施例5)水熱合成用の反応混合物として、以下のものを調製した。…【0165】…その後、加熱時間を18時間とした以外は実施例1と同様に無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を作成した。付着した種結晶の質量は0.3g/m2であり、焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は96g/m2であった。【0166】このように得た膜複合体にメチルシリケートオリゴマーの濃度を5質量%とし、希釈液をアセトンとした以外は実施例1と同様に表面処理を実施した。 このゼオライト膜複合体について、SEM-EDXにより測定したゼオライト膜自体のSiO2/Al2O3モル比は17.6、XPSにより測定したゼオライト膜表面のSiO2/Al2O33モル比は76.2であり表面のSiの割合が高いことがわかる。【0167】得られた無機多孔質支持体-CHA型ゼオライト膜複合体を用いて比較例1と同様に50℃で単成分気体透過評価を行なった。得られてCO2/N2、He/CH4のパーミエンス比、Heのパーミエンスを表1に示す。CO2/N2のパーミエンス比は23、He/CH4パーミエンス比は88であり、高い分離性能の膜となっていることがわかった。…比較例1~3、実施例1~5の結果を表1に示す。【0168】【表1】」
(f)「【図1】」
(ウ)前記(イ)(d)~(f)によれば、本件発明に係る「分離膜」を混合気体から二酸化炭素を分離または濃縮する用途に用いたとき、その機能は単成分気体透過試験により評価するものであり、当該単成分気体透過試験は、図1の装置において、試料気体(供給気体7)を、一定の流量で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1の間に供給し、背圧弁6により供給側の圧力を一定とし、配管11から排出される排出気体10の流量を測定するものである。
具体的には、水分や空気などの成分を除去するため、測定温度以上での乾燥、及び、排気若しくは使用する供給気体によるパージ処理をした後、試料温度及びゼオライト膜複合体1の供給気体7側と透過気体8側の差圧を一定として、透過気体流量が安定したのちに、ゼオライト膜複合体1を透過した試料気体(透過気体8)の流量を測定し、気体のパーミエンス[mol・(m2・s・Pa)-1]を算出するものであり、パーミエンスを計算する際の圧力は、供給気体の供給側と透過側の圧力差(差圧)を用いるものである。
そして、「ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上であ」る「分離膜」の50℃における単成分気体透過試験によるCO2/N2のパーミエンス比は23(実施例5)~43(実施例2)であり、高い分離性能の膜となるのに対して、そうでない「分離膜」の場合は、50℃におけるCO2/N2のパーミエンス比が12(比較例1)~17(比較例3)であり、分離性能としては不十分なものである。
すなわち、本件発明は、「酸素8員環の細孔構造を有するゼオライト」であって、「ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上であ」る「分離膜」を、混合気体から二酸化炭素を分離または濃縮する用途に用いることにより、そうでない場合と比較して高い分離性能の膜となる、という作用、効果を奏するものである。
(エ)ところが、甲第2、4、5号証に記載されるDDR型ゼオライトも、甲第3号証に記載されるCHA型ゼオライトも、「ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上であ」る「分離膜」とはいえないことは、前記(ア)に記載のとおりであって、そのような「分離膜」を混合気体から二酸化炭素を分離または濃縮する用途に用いることが記載も示唆もされない甲第2~5号証の記載事項から、当業者が前記(ウ)の作用、効果を予測することは困難である。
(オ)なお、前記(1)(1-3)(3b)、(3c)によれば、甲第3号証には、「ガス分離用のゼオライト膜複合体」の単成分ガス透過性を、図2の装置を用いた単成分ガス透過試験で評価した結果が記載されており、その評価方法は、ゼオライト膜複合体を、140℃で、供給ガスとしてHeを、耐圧容器とゼオライト膜複合体との円筒の間に導入して、圧力を0.400MPaに保ち、ゼオライト膜複合体の円筒の内側を0.100MPa(大気圧)として、120分間乾燥し、前処理した後、供給側の圧力を0.200MPaとし、供給ガスを各評価ガスに変更するものであり、このとき、ゼオライト膜複合体の供給ガス側と透過ガス側の差圧を0.100MPaとし、その後、温度を50℃とし、温度が安定した後に供給ガスを各評価ガスに変更するものであり、このとき、ゼオライト膜複合体の供給ガス側と透過ガス側の差圧を0.100MPaとするものである。
そして、このようにして得られた各ガスのパーミエンスは、50℃において、N2:3.73×10-8(mol/(m2・sec・Pa))、CO2:6.06×10-7(mol/(m2・sec・Pa))であり、これらからパーミエンス比CO2/N2を算出すると、6.06×10-7/3.73×10-8=16.2となるものである。
(カ)ここで、前記(オ)の単成分ガス透過試験は、前記(ウ)の本件特許明細書に記載される単成分気体透過試験とその工程が概略合致するものといえるところ、甲第3号証の「ガス分離用のゼオライト膜複合体」の50℃におけるパーミエンス比CO2/N2(16.2)は、本件特許明細書に記載される比較例の水準(12(比較例1)~17(比較例3))にとどまるものであり、前記(オ)の単成分ガス透過試験の結果から、甲第3号証の「ガス分離用のゼオライト膜複合体」の50℃におけるパーミエンス比CO2/N2が、本件特許明細書に記載される実施例の水準(23(実施例5)~43(実施例2))となることが予測されるものでもない。
すると、甲第3号証に、複数の気体成分からなる気体混合物から、透過性の高い気体成分を透過して分離する「ガス分離用のゼオライト膜複合体」であって、該ゼオライト膜が、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを含み、セラミックス支持体上に形成されてなる、「ガス分離用ゼオライト膜複合体」が記載されているとしても、甲第3号証の記載事項から、当業者が前記(ウ)の作用、効果を予測することは困難であることに変わりはない。
(キ)前記(エ)~(カ)によれば、仮に、甲1発明において、「分離膜」を、「複数の気体成分を含有する混合気体を接触させて、該混合気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、該混合気体から該透過性の高い成分を分離する、または、該混合気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する気体の分離または濃縮に用いられる」ものであって、「該透過性の高い成分が二酸化炭素であ」るものとすることを、甲第2~5号証の記載事項に基づいて当業者が着想したとしても、そうすることにより奏する作用、効果、すなわち前記(ウ)の本件発明の作用効果を当業者が予測することは困難である。
(ク)前記(ア)、(キ)によれば、甲1発明において、「分離膜」を、「複数の気体成分を含有する混合気体を接触させて、該混合気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、該混合気体から該透過性の高い成分を分離する、または、該混合気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する気体の分離または濃縮に用いられる」ものであって、「該透過性の高い成分が二酸化炭素であ」る、との前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを、甲第2~5号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。
(ケ)前記(ク)によれば、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1を、甲第1号証に記載される発明及び甲第2~5号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(コ)なお、前記(1)(1-1)イ、ウにおいては、甲1発明を、同ア(1b)の実施例4に注目して認定したのであるが、実施例4と同様に、ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されており、X線光電子分析法(XPS)により得られる数値である該ゼオライト膜表面のSiO2/Al2O3モル比が50以上である実施例5、6、9のいずれかに注目して甲1発明を認定したとしても、これらは、いずれも、「複数の気体成分を含有する混合気体を接触させて、該混合気体のうち透過性の高い成分を透過させることにより、該混合気体から該透過性の高い成分を分離する、または、該混合気体から透過性の高い成分を透過させることにより、透過性の低い成分を濃縮する気体の分離または濃縮に用いられる」ものであって、「該透過性の高い成分が二酸化炭素であ」るものではないから、本件発明1との間に前記相違点1と同じ相違点を有するものである。
すると、実施例5、6、9のいずれかに注目して甲1発明を認定した場合であっても、前記(ク)に記載したのと同様の理由により、本件発明1を、甲第1号証に記載される発明及び甲第2~5号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2-2)本件発明2~3について
本件発明2~3は、いずれも、直接的又は間接的に本件発明1を引用するものであって、本件発明2~3のいずれかと甲1発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記相違点1の点で相違する。
すると、前記(2-1)イ(ク)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2~3を、甲第1号証に記載される発明及び甲第2~5号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)小括
したがって、前記第4の1の特許異議申立理由は理由がない。
第8 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700393