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特許異議申立

2019-700381

粘着テープ

審判番号
2019-700381
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-225739外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年05月10日
審決日
2020年02月21日
公報発行日
2020年04月24日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.113-Y (C09J) / P1652.121-Y (C09J) / P1652.536-Y (C09J) / P1652.537-Y (C09J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6427251号発明「粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】
特許第6427251号の請求項1、5ないし8に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 17項目
【理 由】

第1 手続の経緯

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特許第6427251号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成25年12月26日に出願された特願2013-269987号の一部を平成29年11月24日に新たな特許出願としたものであって、平成30年11月2日にその特許権の設定登録がされ、同年11月21日に特許掲載公報が発行された。その後、令和元年5月10日に特許異議申立人高橋愛(以下、「申立人A」という。)が、その請求項1、5~8に係る特許に対して特許異議の申立てを行い、同年5月20日に特許異議申立人岡ヤエ子(以下、「申立人B」という。)が、その請求項1、8に係る特許に対して特許異議の申立てを行った。当審は、同年7月17日付けで取消理由を通知した。この取消理由通知に対して、特許権者は、同年9月19日に意見書の提出を行った。これに対して申立人Bは同年10月8日に上申書を提出し、また、当審よりの同年10月25日付けの審尋に対して申立人Aは同年12月2日に回答書を提出した。

第2 本件発明

本件請求項1~8に係る発明(以下、項番号に応じて「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる、粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有し、
前記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有し、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での前記粘着剤層の加熱重量減少量が10重量%以下である
続きを表示(全19行)
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層のゲル分率が70重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層は、紫外線により気体を発生する気体発生剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記気体発生剤の含有量が、(メタ)アクリルポリマー100重量部に対して5重量部以上、50重量部以下であることを特徴とする請求項3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記(メタ)アクリルポリマーは、側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基が導入されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記(メタ)アクリルポリマーは、重量平均分子量が10万以上、200万以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層の厚みが1μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の粘着テープ。
【請求項8】
半導体ウエハを加工するために用いられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の粘着テープ。」

第3 取消理由の概要

1 当審において、請求項1、5~8に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)理由1(サポート要件)本件は、特許請求の範囲の請求項1、5~8の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1、5~8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)理由2(明確性要件)本件は、特許請求の範囲の請求項1、5~8の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、請求項1、5~8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(3)理由3(実施可能要件)本件は、発明の詳細な説明の記載について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1、5~8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(4)理由4(新規性)本件発明1、5~8は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲A1、甲B1~甲B5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1、5~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

(5)理由5(進歩性)本件発明1、5~8は、下記の甲A1、甲B1~甲B5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1、5~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

(6)理由4、5の甲A1~甲A9、甲B1~甲B5

(甲A1~甲A9は、申立人Aの提出した甲第1号証~甲第9号証であり、甲B1~甲B8は、申立人Bの提出した甲第1号証~甲第8号証である。また、甲A1と甲B3とは同じ文献である。)

甲A1:特開2011-74380号公報
甲A2:特開2007-119646号公報
甲A3:特開2008-27960号公報
甲A4:特開2004-196867号公報
甲A5:特開2007-302868号公報
甲A6:特開2010-155933号公報
甲A7:「日立化成テクニカルレポート」、日立化成工業株式会社、2002年7月発行、第39号、第17~20頁
甲A8:「日立化成テクニカルレポート」、日立化成工業株式会社、2006年7月発行、第47号、第15~20頁
甲A9:「3MTM Adhesives and Tapes Design Production Guide for Application Success」、3M Company、2008年発行、第69、80頁
甲B1:特許第5256515号公報
甲B2:特開平10-298248号公報
甲B3:特開2011-74380号公報
甲B4:特開2000-290625号公報
甲B5:特開2001-31927号公報
甲B6:特開2011-32412号公報
甲B7:特開2012-107194号公報
甲B8:特開2012-31316号公報

2 上記理由1~3は、具体的には次のとおりである。

(1)理由1について

ア 本件発明1の「200℃以上に部品が晒される加工工程」という発明特定事項について

本件発明の課題は、「薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープを提供すること」(【0007】)と認められる。

一方、請求項1の上記発明特定事項では、部品が晒される温度の上限値は規定されておらず、本件発明1には、例えば、400℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる粘着テープも含まれることとなる。

これに対し、本件明細書の発明の詳細な説明の【0067】に記載された「高温に晒されたときの剥がれ評価」では、シリコンウエハに貼り付けた積層体を、300℃、1時間加熱した後の、粘着テープの剥がれを評価しているに過ぎず、300℃を超えた温度における加工工程における粘着テープの剥がれは評価されていない。

そして、粘着テープが晒される雰囲気の温度が高くなるほど、粘着テープが剥離しやすくなると考えられることから、本件発明1に係る粘着テープを、300℃を超える、例えば400℃以上に部品が晒される加工工程において使用した場合に、剥がれが抑制されるかどうかは不明であって、発明の詳細な説明の記載から、当業者が、本件発明1に係る粘着テープが、本件発明の課題を解決できるものであるかどうかを認識することはできない。

また、本件発明1では、「部品」や「加工工程」が限定されておらず、粘着テープがどのような部品や、どのような加工工程に用いられるか不明であって、加工温度の上限値は推定できない。

以上のことから、出願時の技術常識に照らしても、加工工程の加工温度の上限値が特定されない本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないし、本件発明1は、本件発明の課題を解決できるものであるかどうかを認識することはできない。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明5~8も同様である。

イ 本件発明1の粘着剤層に架橋剤が含まれない点について

本件発明1は、粘着剤層の成分に架橋剤を含むことは規定されていない。

これに対し、本件明細書の【0057】~【0063】に記載された実施例1~12の粘着剤層は、いずれも(メタ)アクリルポリマーに加えて、さらに架橋剤(IPDI(イソホロンジイソシアネート)、TETRAD-X)が配合されており(【0068】【表2】、【0069】【表3】)、実施例1~12の粘着剤層は、(メタ)アクリルポリマーの有するヒドロキシル基又は水酸基が、架橋剤によって架橋され3次元架橋構造が導入されているといえる。

そうすると、本件明細書には、(メタ)アクリルポリマーを含有する粘着剤層について、架橋剤によって3次元架橋構造が導入された場合については、300℃ての加熱重量減少量が10%以下であることが示されているとしても、架橋剤を配合していない粘着剤層について、300℃での加熱重量減少量が10%以下であることは記載されているとはいえない。

また、本件明細書の上記実施例1~12とともに記載された比較例2は、(メタ)アクリルポリマーに、カルボキシル基及び水酸基を含有しないものであり(【0061】【表1】の「合成3」、【0068】【表2】)、3次元架橋構造が導入されない態様といえるところ、比較例2の300℃での加熱重量減少量は25%と高く、粘着剤層に3次元架橋構造が導入されていない場合は、粘着剤層の300℃での加熱重量減少量が高くなり、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープではなくなるものといえる。

すなわち、粘着剤層に架橋剤が含まれない(3次元架橋構造が導入されない態様を含む)本件発明1は、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープとはいえないものを含むものといえ、出願時の技術常識に照らしても、粘着剤層が架橋剤を含有しない態様を含む本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないし、本件発明1は、本件発明の課題を解決できるものであるかどうかを認識することはできない。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明5~8も同様である。

ウ 本件発明1の粘着剤層にゲル分率が規定されない点について

上記1で述べたように、本件発明の課題は、「薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープを提供すること」(【0007】)と認められる。

これに対し、本件明細書の【0047】には、「上記粘着剤層は、ゲル分率が70重量%以下であることが好ましい。上記ゲル分率が70重量%以下であれば、粘着テープは、高温に晒されてもより剥がれにくいものとなる。上記ゲル分率のより好ましい上限は60重量%である。」と記載され、ゲル分率の値が大きい場合であっても、高温に晒されても剥がれにくいものであることについての記載はなく、しかも、実施例1~12は、いずれも、ゲル分率が70重量%以下のものである。

そして、粘着剤層のゲル分率の大きさによっても、「薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープ」となるかどうかに影響を与えるものといえることから、粘着剤層にゲル分率が70重量%以下であることが規定されない本件発明1は、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープとはいえないものを含むものといえ、出願時の技術常識に照らしても、粘着剤層にゲル分率が70重量%以下であることが規定されない本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないし、本件発明1は、本件発明の課題を解決できるものであるかどうかを認識することはできない。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明5~8も同様である。

(2)理由2について

ア 本件発明1の「200℃以上に部品が晒される加工工程」という発明特定事項について

本件発明1では、当該加工工程と粘着テープとの関係が規定されていない。すなわち、粘着テープの使用環境について、粘着テープ自体が200℃以上に晒されるのか、あるいは、部品が200℃以上に晒されるが粘着テープ自体は200℃以上には晒されないのかが不明である。

また、粘着テープの使用態様についても、200℃以上に晒される部品に直接貼付されるのか、200℃以上に晒されない部品に貼付されるのか、あるいは、部品を200℃以上に晒す際に使用される治具や装置に貼付されるのか、不明である。

よって、本件発明1には、具体的にどのような粘着テープが含まれるのか明確でない。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明5~8も同様である。

イ 本件発明1のカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率について(架橋後か原料段階か)

本件発明1におけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率が、「架橋後の粘着剤中の(メタ)アクリルポリマーに関する規定」であるか、「原料段階の(メタ)アクリルポリマーに関する規定」であるか明確でない。

たとえば、本件明細書の実施例6の粘着剤層は、合成7の(メタ)アクリルポリマーと架橋剤のIPDI(イソホロンジイソシアネート)とから形成されている(【0068】【表2】)。そして、合成7の(メタ)アクリルポリマーは、BA(ブチルアクリレート)99.5重量%、HEA(ヒドロキシエチルアクリレート)0.5重量%から構成されている(【0061】【表1】)。

そうすると、HEAの分子量は116.12g/モルであるから、(メタ)アクリルポリマー100g中のHEAのモル量は0.004モル(=0.5/116.12)であり、(メタ)アクリルポリマー100g中の水酸基のモル量は0.004モルである。

そして、実施例6の粘着剤層は、合成7の(メタ)アクリルポリマー100重量部に対して、IPDIが0.5重量部配合されている。ここで、(メタ)アクリルポリマー100g、IPDI0.5gとすると、IPDIの分子量が222.28g/モルであるから、IPDIのモル量は0.00225モル(=0.5/222.28)となり、イソシアネート基のモル量は0.0045モルとなる。

そうすると、実施例6の粘着剤層では、(メタ)アクリルポリマー100gが有する水酸基のモル量(0.004モル)よりも、IPDI0.5gが有するイソシアネート基のモル量(0.0045モル)の方が過剰となっている。つまり、形成された粘着剤層において、合成7の(メタ)アクリルポリマーが有する水酸基はIPDIのイソシアネート基との反応で全て消費されており、(メタ)アクリルポリマーはカルボキシル基含有モノマー由来の成分および水酸基含有モノマー由来の成分を含有しない。

よって、実施例6は、粘着剤層に含まれる合成7の(メタ)アクリルポリマーが、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有しているとはいえず、実施例6は、本件発明1に含まれるものではなく、比較例というべきものである。

したがって、発明の詳細な説明の記載からは、本件発明1におけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率が、「架橋後の粘着剤中の(メタ)アクリルポリマーに関する規定」であるか、「原料段階の(メタ)アクリルポリマーに関する規定」であるか明確とはいえない。

また、例えば、原料段階の(メタ)アクリルポリマー中の水酸基含有モノマー由来の成分の含有率が過剰(1重量%超)であって、架橋剤との反応後において水酸基含有モノマー由来の成分の含有率が0.1~1重量%となる場合は、本件発明1の範囲内となるのか不明である。

よって、本件発明1は明確とはいえず、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明5~8も同様である。

ウ 本件発明1のカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率、水酸基含有モノマー由来の成分の含有率について(重合性基導入前か重合性基導入後か)

本件発明1におけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率が、「重合性基導入後の(メタ)アクリルポリマーに関する規定」であるか、「重合性基導入前の(メタ)アクリルポリマーに関する規定」であるか明確でない。

本件明細書の【0021】には、「なお、カルボキシル基又は水酸基には、後述するように、これらの官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させてもよい。・・・また、カルボキシル基又は水酸基が、上記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物と反応することにより消費される場合は、反応により消費されるカルボキシル基又は水酸基の濃度を考慮して、上記(メタ)アクリルポリマーにおけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分、又は、水酸基含有モノマー由来の成分の割合が上記範囲となるように調整しておくことが好ましい。」と記載されており、本件発明1におけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率は、これらの官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物と反応させた後(重合性基導入後)の値であるということができる。

一方、実施例12の粘着剤層は、合成10の(メタ)アクリルポリマーとIPDI(イソホロンジイソシアネート)とから形成され、合成10の(メタ)アクリルポリマーは、合成7の(メタ)アクリルポリマーに2-イソシアナトエチルメタクリレートを反応させることで重合性基が導入されている(【0062】、【0069】【表3】)。

そして、合成7の(メタ)アクリルポリマーは、BA(ブチルアクリレート)99.5重量%、HEA(ヒドロキシエチルアクリレート)0.5重量%から構成され(【0061】【表1】)、HEAの分子量が116.12g/モルであるから、(メタ)アクリルポリマー100g中のHEAのモル量は0.004モル(=0.5/116.12)であり、(メタ)アクリルポリマー100g中の水酸基のモル量は0.004モルである。

そして、合成10の(メタ)アクリルポリマーは、合成7の(メタ)アクリルポリマー100重量部に対して、2-イソシアナトエチルメタクリレートが3.5重量部付加されている。ここで、(メタ)アクリルポリマー100g、2-イソシアナトエチルメタクリレート3.5gとすると、2-イソシアナトエチルメタクリレートの分子量が155.15g/モルであるから、2-イソシアナトエチルメタクリレートのモル量は0.023モル(=3.5/155.15)となり、2-イソシアナトエチルメタクリレートが有するイソシアネート基は0.023モルとなる。

そうすると、合成10の(メタ)アクリルポリマーでは、合成7の(メタ)アグリルポリマー100gが有する水酸基のモル量(0.004モル)よりも、2-イソシアナトエチルメタクリレート3.5gが有するイソシアネート基のモル量(0.023モル)の方が過剰となっている。つまり、合成10の(メタ)アクリルポリマーにおいて、合成7の(メタ)アクリルポリマーが有する水酸基は2-イソシアナトエチルメタクリレートのイソシアネート基との反応で全て消費されており、合成10の(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分および水酸基含有モノマー由来の成分を含有しない。

よって、実施例12は、粘着剤層に含まれる合成10の(メタ)アクリルポリマーが、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有しておらず、実施例12は、本件発明1に含まれるものではなく、比較例というべきものである。

したがって、本件発明1におけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率が、「重合性基導入後の(メタ)アクリルポリマーに関する規定」であるか、「重合性基導入前の(メタ)アクリルポリマーに関する規定」であるか明確とはいえない。

また、例えば、重合性基導入前の(メタ)アクリルポリマー中の水酸基含有モノマー由来の成分の含有率が過剰(1重量%超)であって、重合性基導入後において水酸基含有モノマー由来の成分の含有率が0.1~1重量%となる場合は、本件発明1の範囲内となるのか不明である。

よって、本件発明1は明確とはいえず、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明5~8も同様である。

(3)理由3について

ア 上記理由2の2で述べたように、本件明細書には、(メタ)アクリルポリマーを含有する粘着剤層について、架橋剤を配合していない粘着剤層について、300℃での加熱重量減少量が10%以下であることは記載されているとはいえない。

すなわち、架橋剤を配合していない粘着剤層は、300℃での加熱重量減少量が10%以下とならない場合もあり得るといえ、そのような場合に、どのようにして、300℃での加熱重量減少量を10%以下とするかについては、本件明細書に記載されていない。また、架橋剤を配合していない粘着剤層の加熱重量減少量の値を低下させる方法については当業者にとって明らかではない。

そうすると、本件発明1の架橋剤を配合していない粘着剤層について、当業者がその実施をすることは、明細書の記載及び出願時の技術常識に照らしてもできず、本件発明1は当業者が実施できる程度に明確かつ十分に説明されていない。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明5~8についても同様である。

イ 後述するように、本件発明1の粘着剤層の「示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での」「加熱重量減少量が10重量%以下である」という発明特定事項は、「粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有し、前記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有し」たことによって、必然的に充足されるものである、ともいうことができるところ、本件明細書には、「加熱重量減少量を抑えることができる」ことについて、【0009】、【0011】に、「リビングラジカル重合によれば、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑え、高温に晒されたときの剥がれの原因となる加熱重量減少量を抑えることができる」と記載されている程度であり、上記「加熱重量減少量」は、「分子量分布(Mw/Mn)」に加えて、「(メタ)アクリルポリマー」の種類や分子量等によっても変化するものといえることから、「ビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマー」であれば、直ちに、上記「加熱重量減少量が10重量%以下」のものとなる、といえるものではない。

しかしながら、本件明細書には、「リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマー」に対して、どのようにすれば、上記「加熱重量減少量が10重量%以下」のものとできるかについては記載がなく、そのようなことは当業者にとって自明ではないことから、上記「加熱重量減少量が10重量%以下」の粘着層を得るために、当業者といえども過度の試行錯誤を要するといえ、本件発明1を当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないといわざるを得ない。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明5~8についても同様である。

第4 甲A1~甲A9、甲B1~甲B8の記載、及び、それらに記載された発明又は事項

1 甲A1~甲A9、甲B1~甲B8の記載

(1)甲A1

甲A1には、次の記載がある。

「【請求項1】
リビングラジカル重合によって得られた重量平均分子量20万~200万及び分子量分布2.5未満の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する保護フィルムであって、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満であることを特徴とする保護フィルム。
・・・
【請求項4】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)が、炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)と、反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b)とを、質量比80:20~99.9:0.1の割合で含むものである、請求項1~3のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項5】
さらに、粘着剤組成物が架橋剤(B)を含む、請求項1~4のいずれかに記載の保護フィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を有する保護フィルムに関する。さらに詳しくは、粘着剤層を構成する粘着剤組成物中の残留モノマー及び低分子量成分が極めて少なく、被着体への残渣物の付着が極めて少ない保護フィルム、及びその保護フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、保護フィルムは、光学用として各種画像表示装置、例えばLCD(液晶表示体)、タッチパネル、CRT(ブラウン管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、EL(エレクトロルミネッセンス)、光記録媒体などにおいて、表面保護を始め、防眩性や反射防止などの目的で用いられている。また、LCDにおいては、偏光子を保護するために用いられている。この保護フィルムは、一般に、基材フィルムの一方の面に粘着剤層を有し、他方の面に帯電防止性能や防汚性能などの機能性コーティング層、あるいは必要に応じてハードコート層などが設けられている。そして、光学的特性に優れ、粘着剤の設計が比較的容易であることから前記粘着剤層には、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主剤とするアクリル系粘着剤が用いられている。
このような保護フィルムを、前記被着体に粘着剤層を介して貼付すると、視認不可能なレベルで僅かな残渣物が付着することが知られており、これは、アクリル系粘着剤を用いる場合、主剤である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中に存在する残留モノマーや低分子量成分に起因することが分かっている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下になされたもので、粘着剤組成物中の主剤として(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を選択し、該粘着剤組成物より形成された粘着剤層を有する保護フィルムが、各種被着体に貼付した場合、十分な粘着力を発揮しながら、剥離した際には該粘着剤層に起因する残渣物の付着が極めて少ない保護フィルムを提供することを目的とするものである。」
「【0010】
まず、本発明の保護フィルムについて説明する。
本発明の保護フィルムは、リビングラジカル重合によって得られる重量平均分子量20万~200万及び分子量分布2.5未満の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する保護フィルムであって、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満であることを特徴とする。」
「【0012】
(組成)
当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)(以下、非官能性単量体単位(a)と称することがある。)と、反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b)(以下、官能性単量体単位(b)と称することがある。)とを、質量比80:20~99.9:0.1の割合で含むものが好ましい。前記官能性単量体単位(b)における反応性官能基は、後述の架橋剤によって架橋される架橋点となる官能基であり、該官能性単量体単位(b)の含有量が、前記非官能性単量体単位(a)との合計量に基づき、0.1質量%未満では、当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は架橋が不充分となり、粘着剤組成物は粘着力や耐久接着性の劣るものとなり、一方20質量%を超えると、粘着剤の製造時にゲル化を起こしやすくなり、さらに、架橋剤添加後のポットライフが短くなりすぎて作業性の問題が生じる恐れがある。また、凝集力が高くなりすぎ粘着力が低下して被着体に対する密着性が悪くなる恐れもある。
官能性単量体単位(b)のより好ましい含有量は、非官能性単量体単位(a)との合計量に基づき、0.5~10質量%であり、さらに好ましくは1~8質量%である。」
「【0015】
一方、反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、本発明においては、架橋性などの観点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。」
「【0017】
当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)としては、粘着剤としての性能の観点から、ブチルアクリレートと、4-ヒドロキシブチルアクリレートとの共重合体、ブチルアクリレートと、2-エチルヘキシルアクリレートと、4-ヒドロキシブチルアクリレートとの共重合体、ブチルアクリレートと、2-ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体、ブチルアクリレートと、シクロヘキシルアクリレートと、4-ヒドロキシブチルアクリレートとの共重合体、あるいはブチルアクリレートと、メチルアクリレートと、4-ヒドロキシブチルアクリレートとの共重合体が好適である。
この場合、共重合体中の架橋点となる4-ヒドロキシブチルアクリレート単位や2-ヒドロキシエチルアクリレート単位の含有量は、0.5~10質量%程度が好ましい。」
「【0041】
合成例1(エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート)
金属テルル[Aldrich社製、製品名「Tellurium(-40mesh)」]6.38g(50mmol)をテトラハイドロフラン(THF)50mlに懸濁させ、これにn-ブチルリチウム[Aldrich社製、1.6mol/Lヘキサン溶液]34.4ml(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した。この反応溶液に、エチル-2-ブロモ-イソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物のエチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート8.98g(収率59.5%)を得た。
実施例1
続きを表示(全15行)
(1)リビングラジカル重合によるランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造
単量体としてブチルアクリレート[BA、東京化成社製]と2-エチルヘキシルアクリレート[2EHA、東京化成社製]と4-ヒドロキシブチルアクリレート[4HBA、東京化成社製]とを、質量比75:20:5の割合で用い、以下に示すリビングラジカル重合により、BA/2EHA/4HBAのランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造した。この共重合体の性状を第2表に示す。
<リビングラジカル重合>
アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート68.5μL、ブチルアクリレート(同上)107g、2-エチルヘキシルアクリレート(同上)28.5g、4-ヒドロキシブチルアクリレート(同上)7.1g及び2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)[AIBN;Aldrich社製]4.6mgを60℃で20時間反応させた。
反応終了後、反応器をグローブボックスから取り出し、酢酸エチル500mlに溶解した後、そのポリマー溶液を活性アルミナ[和光純薬工業社製]で作製したカラムに通した。ポリマー溶液の粘度が5000mPa・s(25℃)となるようにトルエンを添加した。得られたポリマーの固形分は30.0質量%であった。
またGPCにより、重量平均分子量48.5万、分子量分布1.88であった。
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で製造したランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分)と、架橋剤としてイソシアヌレート型HDI[日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」、NCO含量:21.3質量%、固形分100%]4.0質量部を、溶媒であるメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度28質量%、23℃における粘度が3Pa・sの粘着剤組成物を調製した。なお、上記粘度はB型粘度計を用いて測定した。
(3)保護フィルムの作製
厚さ38μmの離型フィルム[リンテック社製、商品名「SP-PET381031」]の離型処理面に、上記(2)で得た粘着剤組成物を、ナイフ式塗工機により、乾燥厚さが20μmになるように塗布したのち、90℃にて1分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した。
次いで、基材フィルムとして、厚さ38μmの帯電防止性防汚ポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ社製、商品名「PET38SLD52」]の一方の面に、上記で得られた離型フィルム付き粘着剤層を貼合して、保護フィルムを作製し、この保護フィルムについて、諸特性を求めた。その結果を第2表に示す。」
「【0042】
実施例2~10、及び比較例2
(1)リビングラジカル重合によるランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造
単量体として、第1表に示す種類と使用割合のものを用い、エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート及びAIBNの添加量、並びに重合時間を調整する以外は実施例1と同様にしてリビングラジカル重合により、各種の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造した。各共重合体の性状を第2表に示す。
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で製造した各(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部と、第1表に示す種類と量の各架橋剤を溶媒であるメチルエチルケトンに溶解して、第1表に示す固形分濃度と粘度を有する各種の粘着剤組成物を調製した。
(3)保護フィルムの作製
上記(2)で得られた各種の粘着剤組成物を用い、粘着剤層の厚さを第2表に示す値にした以外は、実施例1と同様にして各種の保護フィルムを作製した。各保護フィルムについて、諸特性を求めた。その結果を第2表に示す。」
「【0043】
実施例11
(1)実施例4で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)(BA/4HBA質量比=99/1)の分別
実施例4で得られたBA/4HBA質量比=99/1の共重合体の溶液40質量部(固形分7.2質量部)をメタノール100質量部中に加え、室温でかきまぜて、沈殿を形成させた。次いで、この沈殿物を、デカンテーションにより分離したのち、メタノール50質量部で洗浄した。その後、デカンテーションでメタノールを取り除き、沈殿物をトルエン40質量部に溶解させ、固形分含有量が15質量%の共重合体(A)の溶液を調製した。
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で調製した溶液に、その固形分100質量部に対し、架橋剤としてイソシアヌレート型HDI「コロネートHX」(前出)1.0質量部を添加して溶解させ、23℃における粘度が3Pa・sの粘着剤組成物を調製した。
(3)保護フィルムの作製
上記(2)で得られた粘着剤組成物を用い、粘着剤層の厚さを第2表に示す値にした以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。この保護フィルムについて、諸特性を求めた。その結果を第2表に示す。」
「【0045】【表1】
」
「【0046】
[注]
コロネートHX;日本ポリウレタン工業社製、商品名、イソシアヌレート型HDI、NCO含量:23.1質量%、固形分:100%
タケネートD-110N;三井化学社製、商品名、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンの3:1付加物、NCO含量:11.8質量%、固形分:75質量%
BA;ブチルアクリレート[東京化成社製]
HEA;2-ヒドロキシエチルアクリレート[東京化成社製]
4HBA;4-ヒドロキシブチルアクリレート[東京化成社製]
2EHA;2-エチルヘキシルアクリレート[東京化成社製]
CHA;シクロヘキシルアクリレート[東京化成社製]
MA;メチルアクリレート[東京化成社製]」
「【0047】【表2】
」

(2)甲A2

甲A2には、次の記載がある。

「【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その課題は、加熱時に発生するガスが少なく、耐アルカリ性も高く、200℃以上の耐熱性があり、剥離液による剥離が容易な接着剤組成物および接着フィルムを提供することにある。」
「【0020】
前記課題を解決するために、本発明にかかる接着剤組成物は、(a)スチレン、(b)環式骨格含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(c)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとからなるアクリル系ポリマーを主成分とすることを特徴とする。」
「【0040】
本発明の接着剤組成物は、特に、半導体ウェハーの精密加工用保護基板を半導体ウェハーに接着するために用いられる半導体ウェハー精密加工用保護基板接着用接着剤組成物として使用することで、優れた効果を発揮する。しかし、一方において、保護テープの粘着層として用いることも可能であり、その場合も優れた特性を発揮することができる。」
「【0055】
本発明の接着剤組成物であれば、前記予備乾燥工程の温度を200℃以下(40~200℃)、前記乾燥工程の温度を300℃以下(40~300℃)とすることができる。」

(3)甲A3

甲A3には、次の記載がある。

「【0001】
本発明は、半導体ウエハのダイシング時に用いられる耐熱粘着テープ又はシート及びそれらを使用して得られる半導体部品に関する。」
「【0005】
本発明の目的は、耐熱性に優れ、被着体に貼付後、200℃程度の加熱工程を経た後であっても融けて変形したり、粘着力が著しく増大することがなく、接着目的達成後には被着体を汚染することなく容易に剥離することができる耐熱ダイシングテープ又はシートを提供することである。
本発明の他の目的は、本発明の耐熱ダイシングテープ又はシートを使用してダイシングを行う工程を含む半導体チップの製造方法を提供すること及び、該方法により製造された半導体チップを提供することである。」
「【0022】
粘着剤層は、上述の物性を満たすものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤により構成することができる。上記アクリル系ポリマーは、主モノマーとして、例えば炭素数1~20(好ましくは2~16、さらに好ましくは2~12)のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでいるのが好ましい。・・・」
「【0023】
アクリル系ポリマーは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)を含むことができる。共重合性モノマーとして特定の構造を含むモノマーを使用することにより、粘着剤に耐熱性や非汚染性など、所望の特性を付与することができる。」
「【0026】
共重合性モノマーとしては、その他、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマーなどが挙げられる。また、架橋させることを目的に、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどの多官能性モノマーを使用することもできる。これらの共重合性モノマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として使用するのに加えて、後に詳細に説明するように、粘着剤をエネルギー線硬化型粘着剤とする場合に有用である。」
「【0029】
粘着剤層を構成する粘着剤は、例えば、加熱剥離型粘着剤やエネルギー線硬化型粘着剤など、適宜な時に接着力を低減させることができる粘着剤により構成されていると、裏面研削などの加工工程においては被着体(半導体ウエハなど)をしっかりと固定し、加工工程終了後は被着体を破損したり、被着体に糊残りを生ずることなく容易に剥離することができるため、好ましい。なお、上記エネルギー線には、例えば紫外線や電子線などが含まれる。」
「【0030】
エネルギー線硬化型粘着剤は、例えば、ベースポリマーとしてエネルギー線重合性炭素-炭素二重結合を有するエネルギー線重合性ベースポリマーを使用することにより調製できる。炭素-炭素二重結合は、ベースポリマーの側鎖に有していてもよく、主鎖中あるいは主鎖末端に有していてもよく、特に制限されない。側鎖に炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーは、分子設計の点から有利であるため好ましい。例えば、側鎖に炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを得ようとする場合であれば、アクリル系ポリマー重合の際に、ヒドロキシル基含有モノマーや、カルボキシル基含有モノマーなどの反応性官能基を有する共重合性モノマーを共重合することにより反応の基点となる官能基を有するアクリル系ポリマーをあらかじめ調製し、エネルギー線重合性炭素-炭素二重結合及び前記アクリル系ポリマー中の官能基と反応しうる基を有する化合物と、炭素-炭素二重結合のエネルギー線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。ベースポリマーに導入される反応性官能基と、該官能基と反し得る基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基などが挙げられる。これらの組み合わせの中でも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせが好適である。」
「【0042】
上述のようにして得られた本発明の耐熱ダイシングテープ又はシートは、例えば、電子部品の加工用粘着テープなど、広範な用途に使用でき、その用途は特に制限されない。特に、優れた耐熱特性を生かして、発熱や加熱を伴う作業において好適に使用できる。とりわけ後に詳細に説明する本発明の半導体チップの製造方法においてダイシング用テープ又はシートとして好適に使用することができる。
[半導体チップの製造方法]
本発明のダイシングテープ又はシートは、半導体ウエハをダイシングによりチップ状に小片化する際のダイシングテープとして好適に使用することができる。特に本発明のダイシングテープ又はシートは、加熱により変形・変質し難いため、加熱処理工程や、発熱を伴う作業工程を含む製造工程、特に半導体チップの製造工程に好適に使用できる。本発明のダイシングテープ又はシートを使用して実施することのできる半導体チップの製造方法としては、例えば以下のようなものが挙げられる。すなわち、以下の一連の工程
(1)半導体ウエハを熱剥離性テープ又はシートに貼り付け、半導体ウエハを研削して得られた薄化した半導体ウエハの熱剥離性テープ又はシートを貼付した面とは反対側の面に、本発明の耐熱ダイシングテープ又はシートを貼り合わせる工程
(2)熱剥離性テープ又はシートを加熱により剥離する工程
(3)半導体ウエハをダイシングによりチップ状に小片化する工程
を含む半導体チップの製造方法などである。」

(4)甲A4

甲A4には、次の記載がある。

「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
・・・また主鎖を高分子量化した溶剤型粘着剤では、ある程度の耐熱性は得られるものの、きわめて高い耐熱性が要求される最近伸張しつつある高融点の鉛フリーハンダのリフロー工程、ハンダ浸漬工程で受ける極高温(260℃以上)に対する耐性は未だ不十分である。」
「【0038】実施例1
合成例1で得られたアクリル系重合体1の固形分100重量部に対してテルペン系粘着付与樹脂 T145(YSポリスターT145:ヤスハラケミカル製)を10部、テルペン系粘着付与樹脂 S145(YSポリスターS145:ヤスハラケミカル製)各10部添加して均一に溶解するまで室温で攪拌する。更に架橋剤としてTGMXDA(N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン:三菱瓦斯化学社製)を有効成分5%に希釈したものを1部添加して良く攪拌する。調整した粘着剤溶液をポリエステル製剥離フィルム(フィルム厚さ38μm)に乾燥塗膜厚さが50μmになるようにリップコーターで塗工し100℃120秒間熱風オーブンで乾燥させ、更にポリエステル剥離フィルムを貼り合せ、粘着シートを得る。この粘着シートを23℃50%RHの雰囲気下で7日間熟成させる。・・・
【ハンダ浸漬耐性の評価方法】
剥離フィルムに挟まれた上記粘着シートをポリイミドフィルム(厚さ25μm)に貼り付けた試料を作成する。このハンダ浸漬耐性用の粘着シートを30mm×40mmに切り出し、縦:40mm×横:50mm×厚さ:0.4mmのステンレス板に重さ4kgのゴムロールを用いて貼り付け、ハンダ浸漬耐性評価用のテストピースとする。260℃に加熱して溶融させたハンダ上に、このポリイミドフィルムが空気側になるようにテストピースを浮かべてハンダ溶融温度にさらす。30秒後に溶融ハンダからテストピースを引き上げ、室温まで自然冷却した後に、ポリイミドフィルムの外観を目視で評価する。
5⇔1(良好⇔不良)」

(5)甲A5

甲A5には、次の記載がある。

「【0008】
すなわち、本発明は、配線回路基板に用いられる両面粘着テープ又はシートであって、粘着剤層が、アクリル系ポリマーを主成分とし、且つ連鎖移動性物質を含有する粘着剤組成物により形成されており、且つ、初期のゲル分率が40~70重量%であるとともに、下記の加熱処理条件を条件とするハンダリフロー工程を経た後におけるゲル分率(重量%)と、初期のゲル分率(重量%)との差が10以下の大きさである特性を有していることを特徴とする配線回路基板用両面粘着テープ又はシートを提供する。
(ハンダリフロー工程における加熱処理条件)
(1)両面粘着テープ又はシートをハンダリフロー工程に投入してから130~180秒後の間に、表面温度が175±10℃に達する。
(2)両面粘着テープ又はシートをハンダリフロー工程に投入してから200~250秒後の間に、表面温度が230±10℃に達する。
(3)両面粘着テープ又はシートをハンダリフロー工程に投入してから260~300秒後の間に、表面温度が255±15℃に達する。
(4)両面粘着テープ又はシートをハンダリフロー工程に投入してから370秒後までに、ハンダリフロー工程が完了する。」

(6)甲A6

甲A6には、次の記載がある。

「【0020】
本発明の粘着剤組成物において用いる(A)成分すなわちアクリル系粘着性化合物は、質量平均分子量が60万以上、酸価が5mgKOH/g以上、30mgKOH/g未満のアクリル系粘着性化合物であるか、或いはこの化合物55~95質量%と質量平均分子量5万以上60万未満で酸価が30mgKOH/g以上のアクリル系粘着性化合物45~5質量%との混合物である。」
「【0044】
次に、上記の粘着剤組成物を用いて粘着シートを製造するには、離型性を有する基材上に塗布してもよいし、離型性を有さない基材の片面又は両面に、この粘着剤組成物を含む粘着層形成用塗工液を塗布してもよい。」
「【0057】
はんだ温度におけるプロファイル適用性
製造後、加熱処理や紫外線照射処理を施していない、実施例及び比較例の粘着シートを、23℃、65%RHの環境下で、幅50mm、長さ50mmに切断し、無接着タイプ銅張積層板(新日鉄化学社製、製品名:エスパネックスSC12-25-00AE)のポリイミド面と東レ・デュポンフィルム社製、商品名:カプトン500H(厚さ125μm)との間に挟んだ後、ラミネーターにより温度23℃、速度1m/分、圧力0.3MPaの条件で貼り合せ、その後、110℃まで昇温、加熱し、その温度で1時間放置(アフターキュア)後、ピーク温度が260℃のリフロー炉に投入し、粘着層の接着状態を観察して気泡、浮き、シワ、剥がれ、ズレなどの接着異常の発生の有無を目視により以下の基準で
評価した。
なお、図1に示す各温度プロファイルに従い、アフターキュア後はリフロー炉を使用し、空気環境下で約150℃×60秒ないし260℃×30秒で行った。
○:外見上変化が認められない。
△:一部に気泡(接着異常)が認められるが、カプトン500Hの剥がれは無く、銅張積層板の銅箔面からも凹凸が確認されなかった。
×:全面に気泡(接着異常)が認められる。カプトン500Hと銅張積層板の間に気泡が生じ、銅張積層板の銅箔面からも凹凸が確認された。」

(7)甲A7

甲A7には、次の記載がある。

「2.1 Q FN用アセンブリテープの役割
図3にアセンブリテープを用いたQFNの一括封止工程を示す。
(1)はじめにアセンブリテープをリードフレームの裏面に貼る。
(2)次に銀ペーストなどを用いてチップマウントを行い,その後,銀ペーストを加熱硬化する。
続きを表示(全12行)
(3)超音波と熱の併用でワイヤボンドを行う。
(4)複数のチップを一括封止する。
(5)アセンブリテープを引きはがす。
(6)最後にダイシングして個々のパッケージに分割する。
この際のQFN用アセンブリテープの主な役割は,次の2点てある。
1(当審注:○の中に1)ワイヤボンド時にインナーリードを固定する。
2(当審注:○の中に2)封止時に封止材の漏れを防ぎ,バリを生じさせない。
そしてテープには,封止後に封止材とリードフレームから,糊残りなしに引きはがせることが要求されている。」(第18頁左欄第24行~右欄第7行)

「さらにワイヤボンド工程でアウトガスが生じた場合には,インナーリードを汚染し,ワイヤの接合不良が生じやすいと予想される。したがって接着剤層の熱分解温度は高い方が好ましい。そして従来の粘着剤を用いたのでは,Tgや熱分解温度が低いため,上記の要求特性を満たすのは難しい。そこで今回,Tgが220℃と高い特殊な耐熱熱可塑性接着剤を開発した(表1)。開発品はワイヤボンド温度で高い貯蔵弾性率と低い損失弾性率を示した(図5)。さらに熱分解温度が440℃と高いため,300℃以下ではほとんどアウトガスを発生しない。開発品はTgが高いため,室温でリードフレームに接着するのは難しいが,240~260℃で加熱することにより接着することができた。本開発品を用いてQFNパッケージの組立工程を行ったところ,ワイヤボンド性は良好であった。」(第19頁左欄第2~14行)

(8)甲A8

甲A8には、次の記載がある。

「このパッケージを製造する組立プロセスの中で,チップと基板,あるいはチップ同士を接着する接着フィルム(ダイボンディングフィルム)2-7)に要求される特性は多岐にわたるが,特に以下の3要素が重要である。
(1)応力緩和性=「柔らかい」:チップと実装基板の熱膨張係数の差を吸収し,熱応力に起因するチップのそりを低減できること。
(2)耐熱性=「強い」:表面実装時のリフロー工程においてパッケージクラックが発生しないこと。
特に従来のPb,Sn共晶はんだからPbフリーはんだへの転換が進められており,Pbフリーはんだ付け工程に対応可能な265℃での耐リフロー性を満足することが望まれている。
(3)プロセス適合性=「作りやすい」:現在の半導体パソケージはより複雑な構造になっており,未硬化状態での樹脂の流動性,弾性率,タック等が組立プロセスに適合するように,調整されていることが必要である。」(第15頁右欄第1~17行)
「2.1 試料
グリシジルメタクリレートを共重合した架橋性アクリルポリマ(重量平均分子量:約80万),エポキシ樹脂(ビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂),フェノールノボラック系硬化剤,硬化促進剤(イミダゾール化合物)からなるワニスを,離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工し,乾燥(140℃で5min)することでBステージの接着フィルムを得た。」(第16頁左欄第16~24行)

(9)甲A9

甲A9の第69頁には、「Adhesive Family」の項目に、「100 High Temp」、「100MP」、「100HT」が記載されており、これらの耐熱性が、「Temperature Resistance」の欄に、それぞれ、232℃、232℃、260℃であることが記載されている。

また、同第80頁には、「100High Temperature Acrylic」、「100MP High Performance Acrylic」、「100HT Ultra High Temperature Acrylic」と記載されており、上記Adhesive Familyがアクリル系(Acrylic)であることが記載されている。

(10)甲B1

甲B1には、次の記載がある。

「【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニルモノマー80~99.9重量部および反応性官能基を有するビニルモノマー0.1~20重量部を、
・・・リビングラジカル重合法により共重合して得られた共重合体を含有する樹脂組成物であって、組成物中の金属含有量が1000ppm以下である樹脂組成物からなることを特徴とする粘着剤。・・・
【請求項2】
続きを表示(全15行)
共重合体のPD値が1.05~2.00である請求項1の粘着剤。
【請求項3】
金属含有量が200ppm以下である請求項1の粘着剤。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂組成物100重量部に対し0.1~10重量部の架橋剤を配合してなり、架橋反応後のゲル分率が80重量%以上であることを特徴とする粘着剤。
【請求項5】
請求項1に記載の樹脂組成物100重量部に対し3~10重量部の架橋剤を配合したことを特徴とする表面保護フィルム用粘着剤。
【請求項6】
請求項1に記載の樹脂組成物100重量部に対し0.1~3重量部の架橋剤を配合したことを特徴とする光学フィルム用粘着剤。
【請求項7】
フィルムの基材に、請求項4~6のいずれかに記載の粘着剤を形成したことを特徴とする粘着フィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、有機テルル化合物を用いてリビングラジカル重合された樹脂組成物及びそれを用いた耐熱性に優れた粘着剤に関する。
また本発明は基材に上記粘着剤からなる粘着層を形成することにより得られる、耐熱性となじみ性に優れた粘着層を有する表面保護フィルムに関する。
また本発明は基材に上記粘着剤からなる粘着層を形成することにより得られる、耐久性に優れた粘着層を有する光学フィルムに関する。」
「【背景技術】
【0002】
これまで、粘着剤用樹脂組成物として様々なモノマーの組み合わせの共重合体が使用されており、これらは単一モノマーで作られる重合体に比べ、複数種類のモノマーそれぞれの特徴を有し、更には組み合わせることにより初めて発現する機能を持つ共重合体が得られる可能性がある。かかる共重合体を製造するに当たっては、通常のフリーラジカル重合法が用いられるが、該フリーラジカル重合法では、分子量の制御や、共重合体組成の均一性を取ることが困難であり、その結果として低分子量成分(オリゴマー)や、ホモポリマーの生成がおこり、これらの成分は粘着剤として使用する際に、使用環境下での耐熱性の低下や、再剥離時に糊残りによる被着体表面の汚染を招くことが知られており、できるだけこれらの成分を排除することが求められている。
また偏光板や位相差板や導光板などの光学フィルムの非粘着面、半導体基板やフレキシブル基板などの電子部品表面、自動車等の塗装面、意匠銘板表面には輸送中や工程中に、傷、汚れ等がつかないように通常表面保護フィルムが用いられる。このような表面保護フィルムは、工程終了後、使用時等不要になった時点で剥がされ廃棄されるが、剥離時の粘着力(剥離力)を小さくし、剥離後の被着体表面への汚染を小さくするために粘着剤にメタクリル酸メチルのような凝集成分を共重合することが一般に知られている。このような表面保護フィルムはガラス転移点が高くなるため被着体とのなじみ性が悪くなり、工程中や輸送中に被着体表面からの浮きや剥がれが生じやすい。そのため、表面保護フィルム用粘着剤には、被着体表面を汚染せず、かつ被着体へのなじみ性が要求される。また加工工程において高温処理工程が含まれる場合は、その高温により粘着剤が変質し、被着体に強固に固着し、工程終了後において剥離が困難であったり、剥離出来た場合でもその物品の剥離面に粘着剤が付着して物品を汚染するという問題がある。そのため、表面保護フィルム用粘着剤には耐熱性も要求される。
また液晶表示装置に用いる光学フィルム、例えば偏光板や位相差板などは液晶セルに粘着剤を用いて貼り付けられる。このような光学部材に用いられる材料は、加熱条件下や加湿条件下では伸縮が大きいため、貼り付け後にはそれに伴う浮きや剥がれが生じやすい。そのため、光学部材用粘着剤には加熱条件下や加湿条件下においても対応できる耐久性が要求される。・・・
使用環境下での耐熱性の低下や、再剥離時に糊残りによる被着体表面の汚染を招く低分子量成分(オリゴマー)や、ホモポリマーの成分を排除する手段としてより制御されたポリマーが得られるリビング重合法が考えられる。・・・
また本発明者らは上記有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合によって得られた樹脂組成物の架橋度を制御し、この架橋度の制御された樹脂組成物を粘着フィルムの粘着層に使用することにより、なじみ性、耐熱性、耐久性、再剥離性、及び応力緩和性に優れた粘着層を有する粘着フィルムが得られることを見いだした。・・・」
「【0004】
本発明は、以下の発明に係る。
・・・好ましい反応性基含有ビニルモノマーとしては水酸基含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有ビニルモノマー、グリシジル基含有ビニルモノマー、イソシアネート基含有ビニルモノマーがよい。また水酸基含有またはカルボキシル含有ビニルモノマーとグリシジル基含有またはイソシアネート基含有ビニルモノマーを併用することにより得られるポリマーは触媒の添加、熱処理等により自己架橋が可能なため、架橋剤不要の粘着剤が得られる。
特に好ましくは、保存環境での安定性や使用環境での酸による悪影響のない水酸基含有ビニルモノマーがよい。・・・」
「【0005】
・・・本発明で得られるリビングラジカルポリマーの分子量分布(PD=Mw/Mn)は、1.05~2.00の間で制御される。更に、分子量分布1.05~1.90、更には1.05~1.80のより狭い分子量分布を持ったポリマーを得ることができる。
・・・ゲル分率が80重量%未満であると、接着力が上昇しやすく、・・・
本発明における粘着フィルムは最小構成単位として基材と粘着剤層を含む。また粘着剤層は基材の片面もしくは両面に形成される。・・・
本発明における光学フィルムは、前述の通り分子量や架橋剤の配合量を適宜選択することにより、例えば80℃、500時間といった耐熱試験条件下や、60℃、90%RH、500時間といった耐湿熱条件下でも気泡や、剥がれが無く、応力緩和性に優れるため色むらが生じない。
本発明の粘着剤は、テープ、シート、ラベル、箔等に広く適用することができる。例えば、合成樹脂製又は変成天然物製のフィルム、紙、あらゆる種類の布、金属箔、金属化プラスチック箔、アスベスト又はガラス繊維布等の基質材料に、溶剤型、エマルション型又はホットメルト型等の形で前記粘着剤を塗布し、活性エネルギー線や熱により硬化させることにより得られる。具体的な用途としては、例えば塗装用マスキングテープ等の建築用、輸送時の表面保護フィルム等の自動車用途、電気絶縁用粘着テープ、半導体製造工程用テープ等の電気電子材料用途、液晶ディスプレイ等の光学フィルム貼り合わせ用テープ等の光学用途、経皮投与用貼布剤等の医療用途向け粘着剤などとして非常に有効である。」
「【実施例1】
【0007】
(ポリアクリル酸n-ブチル-co-ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル)
アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート63.8μL(0.28mmol)、アクリル酸n-ブチル〔東京化成(株)製を蒸留精製して使用〕154mL(1.08mol)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル〔シグマアルドリッチジャパン(株)製〕4mL(32.9mmol)及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)〔大塚化学(株)製、商品名:AIBN〕4.6mg(0.03mmol)を60℃で20時間反応させた。NMR分析により、重合率は94.4%であった。
反応終了後、反応器をグローブボックスから取り出し、酢酸エチル500mLに溶解した後、そのポリマー溶液を活性アルミナ(和光純薬工業株式会社製)で作製したカラムに通した。ポリマー溶液の粘度が5000mPa・S(25℃)となるよう酢酸エチルを添加した。得られたポリマー溶液の固形分は26.7%であった。
またGPC分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により、重量平均分子量713,400、PD=1.52であった。
またポリマー溶液を乾燥後、灰化処理しICP/MSによる分析を行った結果、不揮発分中の金属含量は154ppmであった。
このポリマー溶液の固形分換算100重量部に対して、架橋剤としてコロネートL-55E(日本ポリウレタン工業(株)製、ポリイソシアネート系化合物、固形分55%)を固形分換算で1部添加し、撹拌して粘着剤組成物を得た。
これをPETフィルム上に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、105℃で2分間乾燥させて粘着フィルムを作製した。」
「【0010】
・・・
比較例1
ポリアクリル酸n-ブチル
続きを表示(全27行)
アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート61.6μL(0.35mmol)、アクリル酸n-ブチル(同上)200mL(1.4mol)、及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(同上)5.8mg(0.04mmol)を60℃で46時間反応させた。NMR分析により、重合率は79.6%であった。
反応終了後、反応器をグローブボックスから取り出し、減圧蒸留により未反応のモノマーを除去した。酢酸エチル500mLに溶解した後、そのポリマー溶液を活性アルミナ(和光純薬工業株式会社製)で作製したカラムに通した。
ポリマー溶液の粘度が5000mPa・S(25℃)となるよう酢酸エチルを添加した。得られたポリマー溶液の固形分は33.3%であった。
またGPC分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により、重量平均分子量581,600、PD=1.24であった。
またポリマー溶液を乾燥後、灰化処理しICP/MSによる分析を行った結果、不揮発分中の金属含量は105ppmであった。
このポリマー溶液をそのまま粘着剤組成物として用い、PETフィルム上に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、105℃で2分間乾燥させて粘着フィルムを作製した。
・・・
試験例1
上記で得られた粘着剤組成物および粘着剤フィルムについて、ゲル分率、保持力試験、及び粘着力試験を下記方法により実施した。結果を表1に示した。
(ゲル分率測定方法A1)
実施例1~4及び比較例1~3で得られた粘着剤組成物を120℃×3時間乾燥し、乾燥後の重量がW1(約500mg)の粘着剤組成物を重量がW0の円筒型ろ紙に量り取り、ソックスレー抽出器に設置し、酢酸エチル200mLで還流下、14時間ソックスレー抽出を行った。
抽出試験終了後、円筒型ろ紙を取り出し、80℃×8時間減圧乾燥後の重量W2を測定して、下記の式により算出した。
ゲル分率=〔(W2-W0)/(W1-W0)〕×100(重量%)
(保持力測定方法B1)
40℃、80℃、100℃及び120℃の条件でJIS Z 0237の保持力の測定法に準拠して上記粘着フィルムの保持力を測定し、下記の如く評価した。
◎…1440分後においてもズレなし
○…1440分後において1mm以内のズレあり
△…60分~1440分の間に落下あり
×…60分未満に落下あり
(粘着力測定方法C1)
被着体としてステンレス板(SUS304)を用意し、23℃、50%RHにて上記粘着フィルムを該被着体に接着させてJIS Z 0237の粘着力の測定法に準拠して180度剥離強度を測定した。
【表1】
」
「【実施例7】
【0013】
ポリアクリル酸n-ブチル-co-ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル
アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート25.5μL(0.11mmol)、アクリル酸n-ブチル(和光純薬工業株式会社製)98g(0.76mol)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(和光純薬工業株式会社製)2g(15.4mmol)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔大塚化学(株)製、商品名:ADVN〕5.5mg(0.02mmol)及び酢酸エチル25gを50℃で24時間反応させた。NMR分析により、重合率は83.8%であった。
反応終了後、反応器をグローブボックスから取り出し、酢酸エチルで希釈後、空気酸化を行い、苛性ソーダ1%水溶液で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムを加え系中の水分を脱水し、1μm孔径のメンブランフィルターを用いてろ過を行い、アクリルポリマーを得た。得られたポリマー溶液の粘度は4,100mPa・S(25℃)、固形分は20.7%であった。
またGPC分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により、重量平均分子量891,300、PD=1.34であった。
またポリマー溶液を乾燥後、灰化処理しICP/MSによる分析を行った結果、不揮発分中の金属含量は133ppmであった。」
「【0017】
・・・
試験例2
実施例9~11で得られた本発明の表面保護フィルム及び比較例6で得られた表面保護フィルムについて、ゲル分率、粘着力試験、及びボールタック試験を下記方法により実施した。結果を表2に示した。
続きを表示(全21行)
(架橋度測定方法D1)
上記で得られたフィルムのFT-IR反射スペクトルを測定。ポリマーのC-H振動(2960cm-1)とウレタン結合のN-H振動(1536cm-1)から下記の式により算出した。
架橋度=〔C-H振動吸光度〕/〔N-H振動吸光度〕
(ゲル分率測定方法A2)
乾燥後の重量がW1(約1g)の上記フィルムの粘着剤組成物を重量がW0の円筒型ろ紙に量り取り、ソックスレー抽出器に設置し、酢酸エチル200mLで還流下、14時間ソックスレー抽出を行った。
抽出試験終了後、円筒型ろ紙を取り出し、130℃×3時間減圧乾燥後の重量W2を測定して、以下ゲル分率測定方法A1と同様にしてゲル分率を算出した。
粘着力はSUS304の代わりにSUS304(鏡面仕上げ)を用いた以外は粘着力測定方法C1と同様にして180度剥離強度を測定した。
(糊のこり評価方法E1)
粘着力測定後の被着体表面を目視で観察し、下記の如く評価した。
○…被着体表面の顕著な汚染なし
△…被着体表面にくもり
×…被着体表面に明らかな糊のこり(凝集破壊or転写)
保持力は120℃の条件で、以下保持力測定方法B1と同様にして評価した。
(ボールタック測定方法F)
23℃、50%RHの条件でJIS Z 0237の傾斜式ボールタックの測定法に準拠して上記フィルムのボールタックを測定した。
【表2】
表2から明らかなように、本発明の粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られたMw>30万以上、Mw/Mnが1.8以下の分子量が揃ったポリマーを用いることにより、耐熱性に優れ、被着体への耐汚染性に優れる。また本発明の粘着剤層はタック性が高いため、被着体へのなじみ性に優れる。」
「【0021】
・・・
試験例3
実施例12~15で得られた本発明の光学フィルム及び比較例7で得られた比較例の光学フィルムについて、ゲル分率、保持力試験、粘着力試験及びボールタック性試験を下記方法により実施した。結果を表3に示した。
続きを表示(全21行)
架橋度は架橋度測定方法D1と同様にして算出した。
ゲル分率はゲル分率測定方法A2と同様にして算出した。
(粘着力測定方法C2)
被着体として無アルカリガラス(コーニングガラス#1737)を用意し、23℃、50%RHにて上記粘着フィルムを該被着体に接着させてJIS Z 0237の粘着力の測定法に準拠して90度剥離強度を測定した。
糊のこりは糊のこり評価方法E1と同様にして評価した。
保持力は120℃の条件で、以下保持力測定方法B1と同様にして評価した。
(耐久性G)
上記で得られた160×160mmサイズの光学フィルムを195×195mmサイズの無アルカリガラス(コーニングガラス#1737)に貼付け、80℃(耐熱耐久性)、および60℃、90%RH(加湿耐久性)の雰囲気に500時間投入して、光学フィルムの気泡の発生・剥がれおよび色むらを目視で観察し、下記の基準で評価した。
<気泡・剥がれ>
○…気泡の発生や浮き・剥がれがない
×…気泡の発生や浮き・剥がれが確認される
<色むら>
○…色むらがない
△…僅かな色むらが確認される
×…色むらが確認される
【表3】
表3~4から明らかなように、本発明の光学フィルムは高温高湿の環境下で保存しても剥がれや気泡が発生することがなく耐久性に優れる。また、本発明の粘着剤層は応力緩和性に優れるため、光学部材の寸法変化に起因する応力を均一に緩和でき、色むらを抑制することができる。」
「【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の樹脂組成物は、分子量分布(PD値)を2.0未満にすることができ、これにより粘着剤として使用する際に、使用環境下での耐熱性の低下や、再剥離時に糊残りによる被着体表面の汚染を招くことが知られている低分子量成分(オリゴマー)や、ホモポリマーの生成が抑制され、かつ樹脂組成物から残存開始剤(金属テルル)の除去が比較的容易である。
その結果本発明の樹脂組成物を用いた粘着剤は、耐熱性に優れた効果を示し、開始剤が残存することによる光学特性の低下、異物混入による信頼性の低下、臭気による不快感等の問題がない。」

(11)甲B2

甲Bには、次の記載がある。

「【請求項1】 アルキル基の炭素数が1~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー80~99.5重量部と(メタ)アクリル酸0.5~20重量部とからなる(メタ)アクリル系共重合体であって、前記(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量(Mw)が、10万以上であり、前記重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、1.0~1.5であることを特徴とするアクリル系共重合体。」

「【請求項11】 請求項1若しくは2記載のアクリル系共重合体、又は、請求項4、5、7若しくは8記載のアクリル系ブロック共重合体からなることを特徴とする粘着剤組成物。」

「【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑み、分子量分布を狭くすることにより優れた耐熱性を得るとともに、被着体の種類によらずに高い接着力を発現できるアクリル系共重合体、アクリル系ブロック共重合体及びこれを用いた粘着剤組成物を提供することを目的とする。」

「【0066】本発明3のアクリル系ブロック共重合体(II)は、その少なくとも一つのブロック中に、カルボキシル基又は水酸基を有するビニル系モノマーを含有するものであることが好ましい。このようなモノマーを含有することにより、凝集力、耐熱性が高まり、金属等の高極性被着体に対する接着力が向上する。・・・」

「【0069】上記アクリル系ブロック共重合体(II)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.0~2.0である。2.0を超えると、充分な耐熱性が得られないので、上記範囲に限定される。好ましくは、1.0~1.5である。」

「【0088】本発明1のアクリル系ブロック共重合体(I)、本発明2のアクリル系ブロック共重合体(I)又は本発明3のアクリル系ブロック共重合体(II)を架橋することにより、上記粘着剤組成物の凝集力、耐熱性をより高めることができる。上記架橋を行うための架橋剤としては特に限定されず、例えば、有機化合物架橋剤、有機金属化合物架橋剤、金属塩架橋剤等を挙げることができる。」

「【0097】実施例1
アルゴン置換した1000mlのフラスコに、ナトリウム/カリウム合金で乾燥し、蒸留したトルエン500gと、ビスペンタメチルシクロペンタジエニルサマリウムハイドライド([Cp* 2 SmH]2 :Cp* =C5 (CH3 )5 0.5g(1.2mmol)とをトルエン50mlに溶かした溶液を加え、磁気攪拌機で均一になるまで攪拌しながら液温を0℃に調整した。これにカルシウムハイドライド及びモレキュラーシーブにより乾燥したアクリル酸n-ブチル(n-BA)50gとアクリル酸トリメチルシリル(TMSA)3gとを加え、0℃で1時間攪拌した。この時点で系中の未反応モノマーをガスクロマトグラフィーで測定したところ、n-BA、TMSAは検出できず、モノマーの重合転化率は略100%であることが確認された。これに50gのメタノールを加えて重合を停止させた。
【0098】この溶液に水50gを加え、70℃で1時間攪拌し、TMSAの保護基を外し、真空加熱乾燥させて、BA-アクリル酸共重合体を得た。このポリマーの一部をTHFに溶解させ、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)測定を行った。測定は標準架橋ポリスチレンを基準とし、THFを分離剤として使用し、検出は屈折計を用いて測定した。ポリマーの重量平均分子量(Mw)、及び、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)を表1に示した。
【0099】残りのポリマーをトルエンで固形分が40重量部になるように希釈した後、アクリル系ポリマー固形分換算100重量部に対して、架橋剤としてN,N′-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)(HDU、相互薬工社製)0.15重量部を添加し、攪拌してアクリル系粘着剤組成物を得た。これをコロナ放電処理した38μmのPETフィルム上にアプリケーターで塗布乾燥し、25μmの厚みの粘着剤層を形成し、その上にシリコン離型処理したPETフィルムをラミネートし、アクリル系粘着剤ラミネート体を得た。得られたアクリル系粘着剤ラミネート体について、保持力試験、定荷重剥離試験及び180°ピール力試験を下記方法により実施した。結果を表1に示した。
【0100】保持力試験
アクリル系粘着剤ラミネート体を25mm幅のテープ状に切り、離型PETを剥がして、25mm×25mmの面積で、23℃の温度下、SUS304板に対して2kgのローラーで一往復して貼付し、図1に示すようにして、100℃のオーブン中で2kgの重りを吊り下げ、1時間後の粘着剤層のずれ、又は、1時間以内のテープの落下時間を測定した。」
「【0108】
【表1】
」
「【0118】
【表2】
」
「【0127】
【表3】
」

(12)甲B4

甲B4には、次の記載がある。

「【請求項1】 ・・・アクリル系共重合体をエポキシ架橋してなる架橋ポリマ―を含有することを特徴とする粘着剤組成物。」

「【請求項8】 ・・・アクリル系単量体と、分子内にエポキシ基を有する単量体および/または分子内に水酸基を有する単量体とを含む単量体混合物を、遷移金属とその配位子の存在下、重合開始剤を用いて、リビングラジカル重合することにより、アクリル系共重合体を生成し、この共重合体をこれに含まれるエポキシ基および/またはこれに配合されるエポキシ化合物のエポキシ基を利用してエポキシ架橋することにより、架橋ポリマ―を生成することを特徴とする粘着剤組成物の製造方法。」

「【0052】製造例1
メカニカルスタ―ラ、窒素導入口、冷却管、ラバ―セプタムを備えた4つ口フラスコに、アクリル酸ブチル72.8g(568ミリモル)を入れ、これに2,2′-ビピリジン820mg(5.25ミリモル)を加え、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、臭化銅250mg(1.74ミリモル)を加え、反応系を100℃に加熱し、重合開始剤として2-MPEを461mg(1.74ミリモル)加えて重合を開始し、溶剤を加えずに窒素気流下、100℃で12時間重合した。重合率(加熱して揮発成分を除去したポリマ―重量を、揮発成分を除去する前の重合溶液そのままのポリマ―重量で割つた値で定義される割合)が90重量%以上であることを確認したのち、重合系に、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレ―ト475g(2.61ミリモル)をラバ―セプタムから添加し、これをさらに20時間加熱した。得られた重合物を酢酸エチルに20重量%程度に希釈して、触媒をろ去し、酢酸エチルを除去した。残さに冷アセトニトリルを加え、ポリマ―油状物をよく洗浄したのち、沈殿したポリマ―油状物を減圧加熱(60℃)して、アクリル系共重合体 (1)を製造した。
【0053】製造例2~13
アクリル酸ブチル568ミリモルに対し、重合開始剤の種類と量、分子内にエポキシ基または水酸基を有する単量体の種類と量を、表1のように変更した以外は、製造例1と同様の手法により、アクリル系共重合体 (2)~(13)を製造した。各重合に際して、臭化銅の使用量は重合開始剤と同モル量とし、2,2′-ビピリジンはその3倍モル量使用した。
【0054】なお、表1において、「3,4-ECHMA」は3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレ―ト、「3,4-ECHMMA」は3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレ―ト、「6-HHA」は6-ヒドロキシヘキシルアクリレ―ト、「2-HHA」は2-ヒドロキシエチルアクリレ―トである。また、表1に記載される( )内の数値は、各原料成分のモル数(ミリモル)を示したものである。さらに、表1には、製造例1の使用原料などについても、参考のために、併記した。
【0055】
」

(13)甲B5

甲B5には、次の記載がある。

「【請求項1】 下記(a)成分50~98重量%及び下記(b)成分2~50重量%からなるアクリル系モノマー100重量部に対し、下記(c)成分0.01~1重量部、下記(d)成分0.01~5重量部及び下記(e)成分0.5~175重量部が添加されてなる光重合性組成物を光重合させて得られる基材層の少なくとも片面に、(a)成分50~95重量%及び(b)成分5~20重量%を含有するアクリル系モノマーの共重合体を主成分とする粘着剤層が積層されてなり、且つ、該粘着剤の重量平均分子量(Mw)が50万以上であり、分子量分布{Mw/Mn(数平均分子量)}が4以下であることを特徴とする粘着テープ。
(a)成分:炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(b)成分:(a)成分と共重合可能な極性基を有するモノマー
(c)成分:(a)成分及び(b)成分と共重合可能な不飽和二重結合を2個以上有するモノマー
(d)成分:光重合開始剤
(e)成分:平均粒子径1~150μmの微粒子又は中空微粒子」

「【0003】しかし、アクリル系樹脂を基材層とする粘着テープは粘着剤の接着力が高いために、基材層と粘着剤層との界面に応力が集中しやすく、特に150~200℃のような高温下においては、基材層と粘着剤層との界面で破壊が発生し、耐熱強度が低下するという問題点がある。」

「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点に鑑み、優れた耐熱性を安定的に発現し得る粘着テープを提供することにある。」

「【0012】本発明における基材層及び粘着剤層に(b)成分として用いられる(a)成分と共重合可能な極性基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー又はその無水物;(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等の窒素含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー等が挙げられる。」

「【0054】本発明における粘着剤は、重量平均分子量(Mw)が50万以上であることが必要であり、好ましくは60万以上である。又、分子量分布{Mw/Mn(数平均分子量)}が4以下であることが必要であり、好ましくは3.7以下である。
【0055】粘着剤のMwが50万未満であると、十分な接着力や耐熱性を得られない。又、粘着剤のMw/Mnが4を超えると、耐熱性が不十分となる。尚、上記Mw及びMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算の値である。
【0056】本発明における粘着剤は、耐熱性や耐クリープ性をより向上させるために、架橋剤を添加して架橋されていることが好ましい。
【0057】上記架橋剤としては、一般にアクリル系粘着剤の架橋剤として使用されている架橋剤が用いられ、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。」
「【0091】(2)粘着剤の作製
冷却管、温度計、攪拌機を備えたセパラブルフラスコ中に、アクリル酸2-エチルヘキシルエステル700部、アクリル酸n-ブチルエステル250部、アクリル酸50部、n-ドデカンチオール0.2部及び酢酸エチル900部を仕込み、窒素ガス雰囲気下、60℃で20分間放置した後、酢酸エチル50部に溶解したアゾビスイソブチロニトリル1部を滴下し、温度を60±2℃に保持した状態で8時間反応した。その後、酢酸エチル1433部を添加し均一に攪拌混合して、粘度4800cps、固形分28%の溶剤型アクリル系粘着剤を作製した。得られた粘着剤のMw及びMw/MnをGPCによるポリスチレン換算法で測定したところ、Mwは72万であり、Mw/Mnは3.2であった。
【0092】(3)粘着剤層の作製
上記で得られた粘着剤の固形分100部に対し、架橋剤としてN,N-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)0.18部を添加し均一に攪拌混合した後、離型処理されたPETフィルムの離型面上に乾燥後の厚みが50μmとなるように塗工し、100℃のオーブン中で10分間乾燥して粘着剤層を作製した。得られた粘着剤層のゲル分率は76%であった。
【0093】尚、基材層及び粘着剤層のゲル分率は以下の方法で測定した。試料(基材層又は粘着剤層)を酢酸エチルに浸漬した後、不溶解分を秤量し、下記計算式でゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(不溶解分の重量/浸漬した試料の重量)×100
【0094】(4)粘着テープの作製
(1)で得られた基材層の両面に接着力増強剤としてN-メトキシメチル化ナイロンの2%メタノール溶液を乾燥後の塗工量が1g/m2 となるようにバーコーターで塗工した後、90℃で5分間乾燥して両面に接着力増強層が設けられた基材層を得た。次いで、この基材層の両面に(3)で得られた粘着剤層をラミネート機で積層して粘着テープを作製した。
【0095】(5)耐熱性の評価
上記で得られた粘着テープを接着面積20mm×20mmでSUS304に貼り付け、背面に厚み100μmのアルミ箔をバッキング材として貼り付けた後、2kgのローラーを2往復させて圧着し、23℃の雰囲気下に3日間放置した。次いで、1kgの荷重を剪断方向にアルミ箔に取り付けた後、3℃/5分の速度で昇温し、SUS面からの粘着テープの落下温度を測定した。その結果は表1に示した。」
「【0102】
【表1】
【0103】表1から明らかなように、本発明による実施例1~3の粘着テープは、いずれも落下温度が200℃以上であり、優れた耐熱性を発現した。
【0104】これに対し、Mw/Mnが4を超えていた比較例1の粘着剤を用いた粘着テープ及びMwが50万未満であった比較例2の粘着剤を用いた粘着テープは、いずれも耐熱性が劣っていた。
【0105】
【発明の効果】以上述べたように、本発明による粘着テープは、優れた耐熱性を安定的に発現し得るので、特に耐熱性の要求される構造物の接合用として好適に用いられる。」

(14)甲B6

甲B6には、次の記載がある。

「【請求項1】
2種類以上の単量体をリビングアニオン重合してなる共重合体を含むことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
上記共重合体における分子量分布(Mw/Mn)が、1.01以上、2.00以下であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
・・・
【請求項7】
フィルム上に、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤組成物を含有する接着剤層を備えることを特徴とする接着フィルム。」
「【0001】
本発明は、接着剤組成物、及び接着フィルムに関するものである。さらに詳しくは、半導体ウェハー等の半導体製品や光学系製品等を研削等の加工をする工程において、当該半導体製品にシートや保護基板を一時的に固定するための、接着剤組成物、及び接着フィルムに関するものである。」
「【0007】
そこで、半導体ウェハーの回路パターン面を保護するとともに、半導体ウェハーの破損を防止するために、回路パターン面に加工用粘着フィルムを貼着した上で、研削作業が行われている。
【0008】
また、ダイシング時には、半導体ウェハー裏面側に保護シートを貼り付けて、半導体ウェハーを接着固定した状態でダイシングし、得られたチップをフィルム基材側からニードルで突き上げてピックアップし、ダイパッド上に固定させている。」
「【0013】
しかし、従来の上記加工用粘着フィルム等は、貫通電極の形成のように、高温プロセス及び高真空プロセスを必要とする工程に用いるには、高温環境下における接着強度の不足や、高真空環境下におけるガスの発生等による接着不良の問題や、上記高温プロセス後における剥離時に、残渣物が残存するなどの剥離不良という問題点を有している。
【0014】
例えば、貫通電極の形成では、半導体チップにバンプを形成した後、半導体チップ間を接続するとき、200℃程度まで加熱して、さらに高真空状態にするプロセスを要する。しかし、上記特許文献1及び上記特許文献2に係る保護テープの接着剤層を構成する接着剤組成物は、200℃もの高温に対する耐性が無い。また、加熱により上記接着剤層にガスが発生するため接着不良となる。」
「【0018】
(1)接着剤層と保護基板とを熱圧着したとき、接着剤層が吸湿した水分がガスとなって接着界面に泡状の剥がれを生じるため、高温環境下における接着強度が低い。また、このようなガスの発生は、高温環境下における接着強度を低下させるのみならず、真空条件による加工プロセス等を行なう場合において、真空環境の作製又は保持に支障を来たす。」
「【0021】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い耐熱性、及び高温環境下、特に200℃以上において高い接着強度を有しており、かつ、半導体ウェハー及びチップ等からの剥離時における熱処理において高い溶解性を有するとともにガスの発生を抑制する、剥離容易性に優れた接着剤組成物を提供することにある。」
「【0024】
本発明に係る接着剤組成物によれば、上述のように、2種類以上の単量体をリビングアニオン重合してなる共重合体を含んでいるので、高い耐熱性、及び高温環境下における高い接着強度を有し、かつ、半導体ウェハー及びチップ等からの剥離時における熱処理において、高い溶解性を有するとともにガスの発生を抑制する、剥離容易性に優れた接着剤組成物を提供することができるという効果を奏する。」
「【0125】
本発明に係る接着剤組成物及び接着フィルムは、高温環境下においてガスを発生せず高い耐熱性を有し、高い接着強度を備え、かつ、半導体ウェハー及びチップ等からの剥離時における熱処理において高い溶解性を有するとともにガスの発生を抑制する、優れた剥離容易性を備えている。よって高温プロセス、高真空プロセス、アルカリ等様々な化学薬品を用いるプロセスを経る半導体ウェハー又はチップの加工工程に、好適に用いることができる。」

(15)甲B7

甲B7には、次の記載がある。

「【0003】
例えば、半導体チップの製造工程において、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研磨して薄膜ウエハとする工程等において、厚膜ウエハを支持板に接着して補強することにより、効率よく作業を進めることが提案されている。また、所定の厚さに研削された薄膜ウエハを個々の半導体チップにダイシングする際にも、ダイシングテープと呼ばれる粘着テープが用いられる。このような半導体の製造工程に用いる粘着剤組成物には、工程中には強固に接着する一方で、工程終了後には得られた薄膜ウエハや半導体チップ等を損傷することなく剥離できること(以下、「高接着易剥離性」ともいう。)が求められる。」
「【0004】
次世代の技術として、複数の半導体チップを積層させてデバイスを飛躍的に高性能化、小型化したTSV(Si貫通ビヤ/Through Si via)を使った3次元積層技術が注目されている。TSVは、半導体実装の高密度化が可能であり、アクセススピードが飛躍的に速く、使用中に発生する熱の放出にも優れる。
このようなTSVの製造では、研削して得た薄膜ウエハをバンピングしたり、裏面にバンプ形成したり、3次元積層時にリフローを行ったりする等の200℃以上の高温処理プロセスを行うことが必要となる。従って、TSVの製造工程に用いる粘着剤組成物には、高接着易剥離性に加えて、200℃以上の高温環境下でも粘着性を維持できる耐熱性が求められる。」
「【0011】
本発明は、高い初期粘着力を有し強固に被着体を固定可能であるとともに、200℃以上の高温加工プロセスを経た後であっても、光の照射又は加熱により容易に剥離することができる粘着剤組成物、及び、該粘着剤組成物を用いた半導体加工用粘着テープを提供することを目的とする。」

(16)甲B8

甲B8には、次の記載がある。

「【請求項1】
電子部品の製造工程において、エッチング処理されたポリイミド樹脂面を有する部品を一時的に固定又は保護するために使用される耐熱仮着用粘着テープであって、
耐熱性基材上に、アクリル系ポリマーと、エネルギー線重合性オリゴマーと、重合開始剤と、架橋剤とを含有する粘着剤層形成用材料からなる粘着剤層が形成されており、
前記アクリル系ポリマーは、質量平均分子量が20万~50万の範囲内であり、且つ、アクリル酸エステルを主成分とし、前記アクリル酸エステルと、共重合可能な水酸基含有モノマーとの共重合により得られるか、又はアクリル酸エステルを主成分とし、前記アクリル酸エステルと、共重合可能な水酸基及びカルボキシル基含有モノマーとの共重合により得られ、前記水酸基含有モノマーと前記カルボキシル基含有モノマーとの質量比が51:49~100:0であり、
前記重合開始剤は、昇温速度10℃/minで30℃から190℃まで昇温させ、190℃にて30分間維持した際の熱重量測定による重量減少率が50%以下であることを特徴とする耐熱仮着用粘着テープ。」
「【0005】
ところで、近年、電子部品の製造工程では、粘着テープを貼付した状態の部品が高温にさらされることも少なくない。そのため、電子部品の製造工程に使用する粘着テープには、高温条件に耐え得る耐熱性も求められる。しかしながら、部品を一時的に固定又は保護するために使用する粘着テープは、高温にさらされると粘着力が低下し、工程中に剥がれる、或いは、工程終了後、被着体に強固に粘着し、糊残りが生じるという問題があった。」
「【0037】
(重合開始剤)
本発明の粘着テープでは、粘着剤層形成用材料として重合開始剤を含有する。重合開始剤によれば、上記エネルギー線重合性オリゴマーの感応性を増進させるので、エネルギー線による重合硬化時間やエネルギー線照射量を低減することができる。そして、本発明の粘着テープでは、重合開始剤は、昇温速度10℃/minで30℃から190℃まで昇温させ、190℃にて30分間維持した際の熱重量測定による重量減少率が50%以下であることを特徴とし、好ましくは重量減少率が20%以下である。このような重合開始剤を含有する粘着剤層形成用材料からなる粘着剤層を有する粘着テープによれば、貼付された状態で被着体が高温にさらされても、粘着力が低下し難い。・・・」
「【0073】
(加熱処理後の粘着力測定)
上記試験片の剥離シートを剥がし、上記エッチング処理済みポリイミドフィルムに対して2kgのローラーを用いてラミネートし、常温常湿下にて20分間放置した。次いで、150℃にて90分間加熱した後、万能材料試験機(5565型,インストロン・ジャパン社製)を用いて、加熱処理後の粘着力を測定(JIS Z0237準拠,剥離速度:300mm/min,剥離距離:50mm,剥離角:180°)した。結果を表1に示す。」

2 甲A1~甲A9、甲B1~甲B8に記載された発明、事項の認定

(1)甲A1に記載された発明

ア 実施例4について(甲A1-1発明)

【0041】、【0042】には、実施例4で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、リビングラジカル重合によって製造されていることが記載されている。

【0045】【表1】には、実施例4で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、ブチルアクリレート(BA)と4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)の質量比が99/1であることが記載されており、4-ヒドロキシブチルアクリレートは、水酸基含有モノマーであるから、実施例4で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、水酸基含有モノマー由来の成分を1重量%含有するといえる。

また、【0047】【表2】には、実施例4で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、分子量分布(Mw/Mn比)が2.36であり、重量平均分子量Mwが167万であることが記載されている。

そして、【0045】【表1】には、実施例4で得られた保護フィルムは、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部と、架橋剤としてタケネートD-110Nを0.5質量部含有する粘着剤層を有していることが記載され、【0047】【表2】には、粘着剤層の厚さは3μmであることが記載されている。

また、【0041】、【0042】には、実施例4の保護フィルムは、粘着剤層と基材フィルム(帯電防止性防汚ポリエチレンテレフタレートフィルム)とから構成されることが記載されている。

そうすると、甲A1には、実施例4の保護フィルムとして、

「粘着剤層を有する保護フィルムであって、
前記粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)2.36、重量平均分子量が167万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、水酸基含有モノマー由来の成分を1質量%含有し、
前記粘着剤層の厚さが3μmである保護フィルム」(以下、「甲A1-1発明」という。)が記載されていると認められる。

イ 実施例11について(甲A1-2発明)

【0041】~【0043】には、実施例11で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、リビングラジカル重合によって製造されていることが記載されている。

【0045】【表1】には、実施例11で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、ブチルアクリレート(BA)と4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)の質量比が99/1であることが記載されており、実施例11で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、水酸基含有モノマー由来の成分を1重量%含有するといえる。

また、【0047】【表2】には、実施例11で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、分子量分布(Mw/Mn比)が1.75であり、重量平均分子量Mwが185万であり、実施例11で得られた保護フィルムは、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部と、架橋剤としてコロネードHXを1.0質量部含有する粘着剤層を有しており、粘着剤層の厚さは3μmであることが記載されている。

また、【0041】~【0043】には、実施例11の保護フィルムは、粘着剤層と基材フィルム(帯電防止性防汚ポリエチレンテレフタレートフィルム)とから構成されることが記載されている。

そうすると、甲A1には、実施例11の保護フィルムとして、

「粘着剤層を有する保護フィルムであって、
前記粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.75、重量平均分子量が185万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、水酸基含有モノマー由来の成分を1質量%含有し、
前記粘着剤層の厚さが3μmである保護フィルム」(「甲A1-2発明」)が記載されていると認められる。

(2)甲A2に記載された事項

甲A2の【0020】には、アクリル系ポリマーを主成分とする接着剤組成物が記載され、同【0040】には、当該アクリル系ポリマーを主成分とする接着剤組成物が、半導体ウェハー精密加工用保護基板接着用接着剤組成物や保護テープの粘着層に使用できることが記載されている。

また、同【0055】には、アクリル系ポリマーを主成分とする接着剤組成物は、半導体ウェハーの加工用に使用し得ること、例えば乾燥工程では温度を300℃とすることができることが記載されている。

(3)甲A3に記載された事項

甲A3の【0022】には、接着剤層がアクリル系ポリマーをベースポリマーとした接着剤層が記載され、同【0001】、【0005】、【0042】には、そのような粘着剤層を有する耐熱ダイシングテープを電子部品の加工用粘着テープとして用いることが記載され、同【0022】には、当該粘着テープが200℃程度の加熱工程に使用されることが記載されている。

また、同【0026】には、粘着剤がエネルギー線硬化型粘着剤であることが好ましいこと、エネルギー線硬化型粘着剤はベースポリマーとしてエネルギー線重合性炭素一炭素二重結合を有するエネルギー線重合性ベースポリマーを使用することにより調製できることが記載されている。

(4)甲A4に記載された事項

甲A4の【0038】には、アクリル系重合体を含有する粘着剤層を有する粘着シートを、部品が260℃に晒される工程(ハンダ浸漬工程)で使用することが記載されている。

(5)甲A5に記載された事項

甲A5の【0008】には、アクリル系ポリマー主成分とする粘着剤層を有する粘着シートを、部品(配線回路基板)が240℃以上((3)の最も低い温度が255-15℃である。)に晒される工程(ハンダリフロー工程)で使用することが記載されている。

(6)甲A6に記載された事項

甲A6の【0057】には、アクリル系粘着性化合物を用いた粘着シードを、部品(無接着タイプ銅張積層板)が260℃に晒される工程(リフロー工程)で使用することが記載されている。

(7)甲A7に記載された事項

甲A7には、粘着テープ(アセンブリテープ)を,240℃~260℃に部品(リードフレーム)が晒される加工工程(QFNパッケージの組立工程)に用いられることが記載されている。

(8)甲A8に記載された事項

甲A8には,粘着テープ(ダイボンディングフィルム)を,265℃に部品(チップ)が晒される加工工程(はんだ付け工程)に用いられることが記載されている。

(9)甲A9に記載された事項

甲A9には、粘着テープを、200℃以上に部品が晒される加工工程に用い得ることが記載されている。

(10)甲B1に記載された発明(甲B1発明)

甲B1の【請求項1】には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニルモノマー80~99.9重量部および反応性官能基を有するビニルモノマー0.1~20重量部を、リビングラジカル重合法により共重合して得られた共重合体を含有する樹脂組成物であって、組成物中の金属含有量が1000ppm以下である樹脂組成物からなる粘着剤が記載されている。

【0004】には、好ましい反応性基含有ビニルモノマーとして、水酸基含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有ビニルモノマーが例示されている。

【0007】には、上記リビングラジカル重合法により共重合して得られた共重合体の具体例として、実施例1のPD(分子量分布(PD=Mw/Mn))が1.52であることが記載されている。

【0005】には、粘着剤の用途として、半導体製造工程用テープが例示されている。

そうすると、甲B1には、

「(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニルモノマー80~99.9重量部、及び、反応性官能基を有するビニルモノマーとして、水酸基含有ビニルモノマー又はカルボキシル基含有ビニルモノマー0.1~20重量部を、リビングラジカル重合法により共重合して得られた共重合体を含有する樹脂組成物であり、組成物中の金属含有量が1000ppm以下である樹脂組成物からなる粘着剤を用いた半導体製造工程用テープ」(以下、「甲B1発明」という。)が記載されていると認められる。

(11)甲B2に記載された発明(甲B2発明)

甲B2の【請求項1】には、「アルキル基の炭素数が1~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー80~99.5重量部と(メタ)アクリル酸0.5~20重量部とからなる(メタ)アクリル系共重合体であって、前記(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量(Mw)が、10万以上であり、前記重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、1.0~1.5であるアクリル系共重合体」が記載され、【請求項11】には、そのアクリル系共重合体を「粘着剤組成物」として用いることが記載されている。

そうすると、甲B2には、「アルキル基の炭素数が1~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー80~99.5重量部と(メタ)アクリル酸0.5~20重量部とからなる(メタ)アクリル系共重合体であって、前記(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量(Mw)が、10万以上であり、前記重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、1.0~1.5であるアクリル系共重合体からなる粘着剤組成物」(以下、「甲B2発明」という。)が記載されていると認められる。

(12)甲B3に記載された発明(甲B3発明)

甲B3は甲A1であるから、甲B3には、上述の甲A1-1発明及び甲A1-2発明が記載されているといえる。

(13)甲B4に記載された発明(甲B4発明)

甲B4の【請求項8】から、甲B4には、

「アクリル系単量体と、分子内にエポキシ基を有する単量体および/または分子内に水酸基を有する単量体とを含む単量体混合物を、遷移金属とその配位子の存在下、重合開始剤を用いて、リビングラジカル重合することにより、アクリル系共重合体を生成し、この共重合体をこれに含まれるエポキシ基および/またはこれに配合されるエポキシ化合物のエポキシ基を利用してエポキシ架橋することにより、架橋ポリマ―を生成した粘着剤組成物」(以下、「甲B4発明」という。)が記載されていると認められる。

(14)甲B5に記載された発明(甲B5発明)

甲B5の【請求項1】から、甲B5には、

「下記(a)成分50~98重量%及び下記(b)成分2~50重量%からなるアクリル系モノマー100重量部に対し、下記(c)成分0.01~1重量部、下記(d)成分0.01~5重量部及び下記(e)成分0.5~175重量部が添加されてなる光重合性組成物を光重合させて得られる基材層の少なくとも片面に、(a)成分50~95重量%及び(b)成分5~20重量%を含有するアクリル系モノマーの共重合体を主成分とする粘着剤層が積層されてなり、且つ、該粘着剤の重量平均分子量(Mw)が50万以上であり、分子量分布{Mw/Mn(数平均分子量)}が4以下であることを特徴とする粘着テープ。
(a)成分:炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(b)成分:(a)成分と共重合可能な極性基を有するモノマー
(c)成分:(a)成分及び(b)成分と共重合可能な不飽和二重結合を2個以上有するモノマー
(d)成分:光重合開始剤
(e)成分:平均粒子径1~150μmの微粒子又は中空微粒子」(以下、「甲B5発明」という。)が記載されていると認められる。

第5 取消理由通知に記載した取消理由についての当審の判断

1 理由1について

(1)本件発明1の「200℃以上に部品が晒される加工工程」という発明特定事項について

本件発明の課題は、「薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープを提供すること」(【0007】)と認められるところ、本件発明の上記課題を解決する手段は、【0008】に記載のとおり、「粘着剤層は・・・分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有し、前記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有し、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での加熱重量減少量が10重量%以下である粘着テープ」を用いることとされている。

本件明細書には、次の記載がある。

「【0004】
一方、粘着テープの粘着剤には、ビニルモノマー、アクリルモノマー等のラジカル重合性モノマーを重合させて得られたポリマーが頻用されている。ラジカル重合の種類としてはフリーラジカル重合が一般的である。しかしながら、フリーラジカル重合は、分子量及び分子量分布、共重合体組成等を充分に制御できず、低分子量成分が生成したり、共重合の場合であってもホモポリマーが生成したりするため、これらの成分が粘着テープの耐熱性低下、凝集力低下等を招いたり、粘着テープを剥がれやすくしたりする等の欠点がある。
【0005】
これに対して、より制御されたラジカル重合として、リビングラジカル重合が検討されている。リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合であるため、分子量及び分子量分布、共重合体組成等を制御しやすく、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑えることができる。
特許文献2には、有機テルル化合物を重合開始剤として用いてリビングラジカル重合法によりモノマーを共重合して得られた共重合体を含有する粘着剤が記載されている。
しかしながら、このような粘着剤であっても、粘着テープを薄くすると高温に晒されたときに剥がれやすくなるという問題点を解決することはできていなかった。」
「【0009】
本発明者らは、リビングラジカル重合により得られた特定範囲の分子量分布(Mw/Mn)の(メタ)アクリルポリマーであって、カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分の割合が特定範囲に調整され、更に、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での加熱重量減少量が特定範囲に調整された(メタ)アクリルポリマーを用いることにより、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
粘着テープが高温に晒されても剥がれにくい理由としては、リビングラジカル重合によれば、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑え、高温に晒されたときの剥がれの原因となる加熱重量減少量を抑えることができる点、カルボキシル基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーを各ポリマー分子に特定範囲の割合で均一に共重合させることができる点が挙げられる。」
「【0011】
上記(メタ)アクリルポリマーは、リビングラジカル重合、好ましくは有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合により得られたポリマーである。
上記粘着剤層が上記(メタ)アクリルポリマーを含有することにより、本発明の粘着テープは、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくいものとなる。
粘着テープが高温に晒されても剥がれにくい理由としては、リビングラジカル重合によれば、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑え、高温に晒されたときの剥がれの原因となる加熱重量減少量を抑えることができる点、カルボキシル基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーを各ポリマー分子に特定範囲の割合で均一に共重合させることができる点が挙げられる。」
「【0023】
上記カルボキシル基含有モノマー由来の成分の割合が0.1重量%未満であると、粘着テープの耐熱性が不足することがある。上記カルボキシル基含有モノマー由来の成分の割合が10重量%を超えると、上記粘着剤層のゲル分率が高くなりすぎて、高温に晒されたときに粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記カルボキシル基含有モノマー由来の成分の割合の好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は5重量%であり、より好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は3重量%である。」
「【0025】
上記水酸基含有モノマー由来の成分の割合が0.1重量%未満であると、粘着テープの耐熱性が不足することがある。上記水酸基含有モノマー由来の成分の割合が1重量%を超えると、上記粘着剤層のゲル分率が高くなりすぎて、高温に晒されたときに粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記水酸基含有モノマー由来の成分の割合の好ましい下限は0.2重量%、好ましい上限は0.8重量%であり、より好ましい下限は0.3重量%、より好ましい上限は0.5重量%である。」

上記記載によれば、粘着テープが高温で剥がれやすくなる原因は、粘着剤層における低分子量成分やホモポリマーの生成であることが理解される(【0004】)。

そして、リビングラジカル重合法を採用し、単に、低分子量成分やホモポリマーの生成を抑えるようにした粘着剤層を有する粘着テープは、薄くすると高温に晒されたときに剥がれやすくなるという問題点があったことが理解される(【0005】)。

そこで、本件発明は、単に、低分子量成分やホモポリマーの生成を抑えるだけではなく、ポリマーとして(メタ)アクリルポリマーを採用し、その分子量分布(Mw/Mn)を特定(1.05~2.5)の範囲とし、さらに、カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分の割合をそれぞれ、特定(0.1~10重量%)の範囲とすることで、高温に晒されたときの剥がれの原因となる加熱重量減少量を抑えることができ、その上、カルボキシル基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーを各ポリマー分子に特定範囲の割合で均一に共重合させることで、耐熱性の低下や凝集力の低下を招かない粘着テープが得られたことが理解できる(【0009】、【0011】)。

さらに、本件発明では、高温に晒されたときの剥がれ易さを示す指標となる、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での加熱重量減少量を、10重量%以下に調整することにより、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープが得られることが理解される(【0009】)。

そうすると、上記記載によれば、本件明細書には、「粘着剤層は、・・・分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有し、前記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%の範囲を含有し、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での前記粘着剤層の加熱重量減少量が10重量%以下」という発明特定事項を備える本件発明1は、この発明特定事項を備えさえすれば、粘着テープが高温に晒されても剥がれにくいものとなることが開示されているといえる。また、本件明細書中の実施例では、対比実験を行って当該作用機序が裏付けられているといえる。

なお、上記「(メタ)アクリルポリマー」が熱分解して粘着性を失うような高温において用いられることは想定されていないというべきであり、一般的に用いられる(メタ)アクリルポリマーの熱分解温度は、高々400℃程度であるから、本件発明1には、(メタ)アクリルポリマーが熱分解される温度以上のもの、たとえば、400℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる粘着テープは含まれないというべきである。

そうすると、本件発明1は、粘着テープが高温に晒されても剥がれにくいものとなる構成が特定されているといえる以上、本件発明1において、加工温度の上限値が特定されず、しかも、どのような部品や、どのような加工工程に用いられるかが特定されないからといって、本件発明1の「200℃以上に部品が晒される加工工程」という発明特定事項によって、当業者が、本件発明1に係る粘着テープが、本件発明の課題を解決できるものであることが認識できなくなるものではない。

(2)本件発明1の粘着剤層に架橋剤が含まれない点について

本件明細書には、「上記粘着剤層は、ゲル分率が70重量%以下であることが好ましい。上記ゲル分率が70重量%以下であれば、粘着テープは、高温に晒されてもより剥がれにくいものとなる。上記ゲル分率のより好ましい上限は60重量%である。また、上記ゲル分率の下限は特に限定されないが、好ましい下限は1重量%である。上記ゲル分率が1重量%未満であると、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎて、耐熱性が低下することがある。上記ゲル分率のより好ましい下限は5重量%である。」(【0047】)、「上記範囲のゲル分率の粘着剤層を得る方法としては、架橋剤を添加して上記粘着剤層を構成する樹脂の主鎖間に架橋構造を形成する方法が好ましい。上記架橋剤の種類又は量を適宜調整することによって、上記粘着剤層のゲル分率を上記範囲に調整しやすくなる。」(【0048】)と記載されていることから、「架橋剤」は、粘着剤層のゲル分率を所定の範囲に調整しやすくするために用いられているものと解される。

しかしながら、粘着剤層のゲル分率が耐熱性に関連するとしても、上記(1)で述べたように、本件発明は、低分子量成分やホモポリマーの生成を抑えた(メタ)アクリルポリマーを用いて、カルボキシル基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーを各ポリマー分子に特定範囲の割合で均一に共重合させ、さらに加熱重量減少を所定以下としたものを用いることによって本件発明の課題が解決されるものであり、粘着剤層のゲル分率や架橋剤の有無は、(メタ)アクリルポリマーの低分子量成分やホモポリマーの生成には直接の関連はないし、カルボキシル基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーを各ポリマー分子に特定範囲の割合で均一に共重合させることとも関連はなく、まして、加熱重量減少が10重量%以下でないものを含むようになるわけではないことから、ゲル分率や架橋剤の有無によって、本件発明の課題解決が左右されるものとはいえない。

したがって、本件明細書のいずれの実施例においても架橋剤が用いられているとしても、架橋剤を用いないものについても、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープが得られるという本件発明の課題を解決することが認識されるというべきである。

(3)本件発明1の粘着剤層にゲル分率が規定されない点について

上記(2)で述べたように、粘着剤層のゲル分率の値は、(メタ)アクリルポリマーの低分子量成分やホモポリマーの生成には直接の関連はないし、カルボキシル基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーを各ポリマー分子に特定範囲の割合で均一に共重合させることとも関連はなく、まして、ゲル分率の値によって加熱重量減少が10重量%以下でないものを含むようになるわけではないことから、ゲル分率の値によって、本件発明の課題解決が左右されるものとはいえない。

したがって、粘着剤層のゲル分率が規定されないからといって、当業者が、本件発明1に係る粘着テープが、本件発明の課題を解決できるものであることが認識できなくなるものではない。

(申立人の主張について)

申立人Aは、令和元年12月2日付けの回答書において、「架橋剤を配合することで低分子量成分を低減することができ、加熱重量減少を低減できます。よって、『架橋剤の有無』と『加熱減量の要因』とは密接に関連します。また、本件特許明細書には、架橋剤を配合していない粘着剤層について、300℃での加熱重量減少量を10%以下とする方法は一切記載されておりません。」と主張している(4頁3~7行)。

しかしながら、「架橋剤を配合することで低分子量成分を低減することができ、加熱重量減少を低減でき」るとしても、架橋剤がないからといって、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープが得られなくなる、となるわけではない。

また、架橋剤によらず、加熱重量減少量を低下させるためには、技術常識によれば、a)(メタ)アクジルポリマーの平均分子量を大きくする手法(これにより、低分子量成分の存在量を低減する)、b)(メタ)アクリルポリマーの分子量分布(Mw/Mn)を狭くする手法(これにより、低分子量成分の存在量を低減する)、c)(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)を高くする手法(これにより、熱分解によって生じる低分子量成分の発生量を低減する)等を想定することができ、架橋剤を配合していない粘着剤層について、300℃での加熱重量減少量を10%以下とする方法は記載されていないからといって、本件発明1がサポート要件を満たしていないものである、とすることはできない。したがって、申立人Aの上記主張は採用することができない。

また、申立人Bは、令和元年10月8日付けの上申書において、「ゲル分率が当該課題解決に多大なる影響があることを本件特許明細書(及び技術常識)において示されている以上、万が一仮に特許権者が主張するような課題解決手段の作用原理に相違があったとしても、そのこと自体、課題を解決できるか否かに何ら関係がないことにご留意下さい。架橋剤についても同様のことが言えます。」(5頁22~26行)と主張している。

しかしながら、上述したように、粘着剤層におけるゲル分率の値や架橋剤の有無によって、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープが得られなくなる、となるわけではないことから、申立人Bの主張は採用することができない。

2 理由2について

(1)本件発明1の「200℃以上に部品が晒される加工工程」という発明特定事項について

本件発明1は、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる、粘着剤層を有する粘着テープ」に係るものであるところ、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」という発明特定事項は、それ自体は明確であり、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」ものであれば、当該「粘着テープ」の使用環境や使用態様をさらに規定するものではないことから、当該「粘着テープ」の使用環境や使用態様が特定されていないからといって、本件発明1が不明確になるものではない。

(申立人の主張について)

申立人Aは、令和元年12月2日付けの回答書において、「粘着テープの使用環境や使用態様について一切記載されておりません。本件発明1には、具体的にどのような粘着テープが含まれるのか明確ではありません。また、そもそも温度範囲について「200℃以上)と規定されていますが、下限だけを示す数値範囲限定であり、発明の範囲が不明確となっています(特許・実用新案審査基準 第II部第2章第3節2.2(5)b)。」(5頁11~17行)と主張している。

しかしながら、粘着テープの使用環境や使用態様は、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる、粘着剤層を有する粘着テープ」という請求項1の発明特定事項から、「加工工程において」「200℃以上に」「晒される」「部品」に対して用いられたものであって不明確なものではなく、具体的には、本件明細書の【0002】に記載されるように、「半導体ウエハの加工(例えば、裏面研削、ダイシング等)」において、「半導体ウエハの固定や回路面の保護のために半導体ウエハに」「貼り合わせた状態」の「粘着テープ」を指すものといえる。

また、「200℃以上に部品が晒される加工工程」について、温度の上限は、部品や粘着テープによって自ずと決まるものであり、一律に決まるものではないことから、上限が規定されないからといって、発明が不明確になるものでもない。

そして、申立人Bは、令和元年10月8日付けの上申書において、権利者の「加工工程は技術常識に照らせば自ずと明らかであり、当業者にとって不明確ではないといえます」という主張に対し、「『技術常識』と述べるだけで、何ら具体的な説明がなされていません。 特に、本件特許が、課題を『高温に晒されても剥がれにくい』としていることに鑑みても、粘着テープの用途たる発明特定事項『200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる』は、重要な発明特定事項であり、明確でなければ発明の外縁が明らかとなりません。」(6頁18~25行)と主張している。

しかしながら、「半導体ウエハの加工(例えば、裏面研削、ダイシング等)」の際に、「半導体ウエハ」が研削やダイシングによって200℃といった高温になることは明らかであるし、「加工工程」が当業者にとって不明確とはいえない。また、上述したように、「200℃以上に部品が晒される加工工程」において、温度の上限は、部品や粘着テープによって自ずと決まるものであり、一律に決まるものではないことから、上限が規定されないからといって、発明が不明確になるものでもない。

(2)本件発明1のカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率(架橋後か原料段階か)について

本件発明1の(メタ)アクリルポリマーについて、本件明細書には、次の記載がある。

「上記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有する。有機テルル重合開始剤を用いることで、このような官能基を有するモノマーであってもいずれも保護することなく用いることができる。
なお、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有するとは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分のみを上記範囲で含有するか、水酸基含有モノマー由来の成分のみを上記範囲で含有するか、これらの両方をそれぞれ上記範囲で含有するかのいずれかであることを意味する。」(【0020】)
「上記(メタ)アクリルポリマーは、側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基が導入されていてもよい。・・・
なお、カルボキシル基又は水酸基に、これらの官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させる場合は、反応により消費されるカルボキシル基又は水酸基の濃度を考慮して、上記(メタ)アクリルポリマーにおけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分、又は、水酸基含有モノマー由来の成分の割合が上記範囲となるように調整しておくことが好ましい。」(【0028】~【0029】)

そうすると、「上記範囲」、すなわち、「カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%」という範囲は、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させる場合は調整しておくというのであるから、「上記範囲」は、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させる前のものであると理解すべきである。

したがって、本件発明1におけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率は、原料段階の(メタ)アクリルポリマーに関する規定であることは明らかである。

(申立人の主張について)

申立人Aは、令和元年12月2日付けの回答書において、「本件発明1は、このような『架橋剤』や『紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物』を含有しない態様に限定されておらず、粘着剤層が架橋剤を含有する態様も含まれていますが、このような粘着剤層が架橋剤を含有する態様について、具体的な説明がされておりません。よって、粘着剤層が架橋剤を含有する場合については、架橋前の(メタ)アクリルポリマーがカルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有しているのか、架橋後の(メタ)アクリルポリマーがカルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有しているのかが明確ではありません。」(6頁25行~7頁6行)と主張している。

しかしながら、本件発明1の粘着剤層が架橋剤を含有する場合において、本件発明1のカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率が、原料段階ではなく、架橋後のものであると、あえて解釈しなければならない根拠はなく、本件発明1の粘着剤層が架橋剤を含有する場合においても、当該含有率は、原料段階のものであると、解釈するのが合理的である。

また、申立人Bは、令和元年10月8日付けの上申書において、「原料段階であれば『由来の成分』といった表現との関係が明らかでありません。また、原料段階であれば、実際に(メタ)アクリルポリマー中に『0.1~10重量%』や『0.1~1重量%』の割合で含有しなくても良いのか否かも定かではありません。」(7頁4~6行)と主張している。

しかしながら、上述したように、当該含有率は、原料段階のものであると解釈するのが合理的であり、「由来の成分」という表現によって、当該含有率が原料段階以外のものを指すことにはならない。また、架橋後の当該含有率は、原料段階のものと異なる値となることは明らかである。

(3)本件発明1のカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率、水酸基含有モノマー由来の成分の含有率(重合性基導入前か重合性基導入後か)について

上記(2)で述べたように、本件発明1のカルボキシル基含有モノマー由来の成分や水酸基含有モノマー由来の成分の含有率、水酸基含有モノマー由来の成分の含有率は、原料段階の(メタ)アクリルポリマーに関する規定であることは明らかである。

3 理由3について

(1)上記1(1)で述べたように、本件発明1は、リビングラジカル重合によって、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑えることで、「示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での粘着剤層の加熱重量減少量が10重量%以下」としたものであって、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成と、粘着剤層の架橋剤の有無とは直接的な関連があるとはいえない。

そして、粘着剤層の加熱重量減少量を低くするためには、(メタ)アクリルポリマーの平均分子量を大きくする手法、(メタ)アクリルポリマーの分子量分布(Mw/Mn)を狭くする手法、(メタ)アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)を高くする手法等があることは周知である。

そうすると、仮に、架橋剤を配合していない粘着剤層について、300℃での加熱重量減少量が10%以下ではないものがあるとしても、上記の周知の手法を採用することにより、300℃での加熱重量減少量が10%以下のものとすることができることは、当業者にとって明らかである。

(2)上記(1)で述べたように、粘着剤層の加熱重量減少量を低くするための手法は、当業者にとって明らかであり、「ビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマー」について、300℃での加熱重量減少量が10%以下ではないものがあるとしても、上記の周知の手法を採用することにより、300℃での加熱重量減少量が10%以下のものとすることができることは、当業者にとって明らかである。

(申立人の主張について)

申立人Aは、令和元年12月2日付けの回答書において、「350℃や400℃においても加熱重量減少量が10重量%以下である粘着剤層の作製方法は記載されておりません。・・・400℃超に晒される加工工程で使用できる粘着テープは当業者であっても製造できないと考えます。・・・本件特許明細書には、架橋剤を配合していない粘着剤層について、300℃での加熱重量減少量を10%以下とする方法は一切記載されておりません。」(9頁6~15行)と主張している。

しかしながら、本件発明は、そもそも、400℃超といった(メタ)アクリルポリマーが熱分解して「粘着剤層」ではなくなってしまうような温度に晒される加工工程において用いられる粘着テープまでをも包含するものではなく、400℃超に晒される加工工程で使用できる粘着テープについて記載されていないからといって、本件明細書の記載に実施可能要件違反があるとはいえない。

また、上述したように、架橋剤を配合しなくても、加熱重量減少量を10重量%以下とする方法は当業者にとって明らかといえるから、架橋剤を配合しないものや、350℃や400℃においても加熱重量減少量が10重量%以下である粘着剤層の作製方法が記載されていないからといって、本件明細書の記載に実施可能要件違反があるとはいえない。

4 理由4、5について

(1)甲A1-1発明を主引用発明とした場合

ア 本件発明1について

本件発明1と甲A1-1発明とを対比する。

甲A1-1発明の「粘着剤層を有する保護フイルム」、「(メタ)アクリル酸エステル共重合体」、「リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)2.36、重量平均分子量が167万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有」する構成、及び、「(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、水酸基含有モノマー由来の成分を1質量%含有」する構成は、本件発明1の「粘着剤層を有する粘着テープ」、「(メタ)アクリルポリマー」、「リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有」する構成、及び、「カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有」する構成に、それぞれ相当する。

そうすると、本件発明1と甲A1-1発明とは、

「粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有し、
前記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有する粘着テープ。」である点で一致し(以下、単に、「一致点A1-1」という。)、次の点で相違が認められる。

(相違点A1-1-1)

本件発明1は、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」のに対し、甲A1-1発明は、そのような加工工程で用いられるかどうか不明な点。

(相違点A1-1-2)

本件発明1の粘着剤層は、「示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での前記粘着剤層の加熱重量減少量が10重量%以下であ」るのに対し、甲A1-1発明の粘着剤層のそのような加熱重量減少量は不明な点。

ここで、事案に鑑み、相違点A1-1-1について検討する。

甲A1には、甲A1-1発明に係る保護フィルムについて、「従来、保護フィルムは、光学用として各種画像表示装置、例えばLCD(液晶表示体)、タッチパネル、CRT(ブラウン管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、EL(エレクトロルミネッセンス)、光記録媒体などにおいて、表面保護を始め、防眩性や反射防止などの目的で用いられている。また、LCDにおいては、偏光子を保護するために用いられている。」(【0002】)、「本発明は、このような状況下になされたもので、粘着剤組成物中の主剤として(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を選択し、該粘着剤組成物より形成された粘着剤層を有する保護フィルムが、各種被着体に貼付した場合、十分な粘着力を発揮しながら、剥離した際には該粘着剤層に起因する残渣物の付着が極めて少ない保護フィルムを提供することを目的とするものである。」(【0006】)と記載されていることから、甲A1-1発明に係る保護フィルムは、専ら、各種画像表示装置や偏光子の保護に用いられるものであって、一般に、各種画像表示装置や偏光子を、200℃以上で加工することは行われないことから、甲A1-1発明が、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」ことは想定されていないというべきである。

そして、本件明細書に【発明の効果】として「薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープを提供することができる。」(【0056】)と記載され、【0057】~【0069】に記載された実施例1~12においては、300℃で1時間加熱した後、室温に戻した粘着テープについて(【0067】)、当該効果が確認されているものであり、本件発明1は、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」ことは想定されていない甲A1-1発明からは、当業者が予測し得ない格別顕著な作用効果を奏するものである。

そうすると、相違点A1-1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A1-1発明であるということはできないし、甲A1-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

イ 本件発明5~8について

本件発明5~8は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲A1-1発明であるということはできないし、甲A1-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(2)甲A1-2発明を主引用発明とした場合

ア 本件発明1について

本件発明1と甲A1-2発明とを対比する。

甲A1-2発明の「粘着剤層を有する保護フイルム」、「(メタ)アクリル酸エステル共重合体」、「リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.75、重量平均分子量が185万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有」する構成、及び、「(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、水酸基含有モノマー由来の成分を1質量%含有」する構成は、本件発明1の「粘着剤層を有する粘着テープ」、「(メタ)アクリルポリマー」、「リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有」する構成、及び、「カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有」する構成に、それぞれ相当する。

そうすると、本件発明1と甲A1-2発明とは、

「粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有し、
前記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1~10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1~1重量%を含有する粘着テープ。」である点で一致し(以下、単に、「一致点A1-2」という。)、次の点で相違が認められる。

(相違点A1-2-1)

本件発明1は、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」のに対し、甲A1-2発明は、そのような加工工程で用いられるかどうか不明な点。

(相違点A1-2-2)

本件発明1の粘着剤層は、「示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での前記粘着剤層の加熱重量減少量が10重量%以下であ」るのに対し、甲A1-2発明の粘着剤層のそのような加熱重量減少量は不明な点。

ここで、事案に鑑み、相違点A1-2-1について検討する。

上記(1)アで述べたように、甲A1-2発明に係る保護フィルムは、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」ことは想定されていないというべきであり、本件発明1は、甲A1-2発明からは、当業者が予測し得ない格別顕著な作用効果を奏するものである。

そうすると、相違点A1-2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A1-2発明であるということはできないし、甲A1-2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

イ 本件発明5~8について

本件発明5~8は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲A1-2発明であるということはできないし、甲A1-2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことはできない。

(3)甲B1発明を主引用発明とした場合

ア 本件発明1について

本件発明1と甲B1発明とを対比する。

甲B1発明の「粘着剤を用いた半導体製造工程用テープ」、「リビングラジカル重合法により共重合して得られた共重合体」、及び、「反応性官能基を有するビニルモノマーとして、水酸基含有ビニルモノマー又はカルボキシル基含有ビニルモノマー」は、本件発明1の「粘着剤層を有する粘着テープ」、「(メタ)アクリルポリマー」、及び、「カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分」に、それぞれ相当する。

そうすると、本件発明1と甲B1発明とは、

「粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた(メタ)アクリルポリマーを含有し、
前記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分を含有する粘着テープ。」である点で一致し(以下、単に、「一致点B1」という。)し、次の点で相違が認められる。

(相違点B1-1)

本件発明1は、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」のに対し、甲B1発明は、そのような加工工程で用いられるかどうか不明な点。

(相違点B1-2)

(メタ)アクリルポリマーの分子量分布(Mw/Mn)について、本件発明1は「1.05~2.5」であるのに対し、甲B1発明の「リビングラジカル重合法により共重合して得られた共重合体」の分子量分布(Mw/Mn)は、規定されていない点。

(相違点B1-3)

カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分の含有量について、本件発明1は、「カルボキシル基含有モノマー由来の成分」は、「0.1~10重量%」であり、「水酸基含有モノマー由来の成分」は、「0.1~1重量%」であるのに対し、甲B1発明は、「水酸基含有ビニルモノマー又はカルボキシル基含有ビニルモノマー0.1~20重量部」である点。

(相違点B1-4)

本件発明1の粘着剤層は、「示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での前記粘着剤層の加熱重量減少量が10重量%以下であ」るのに対し、甲B1発明の粘着剤のそのような加熱重量減少量は不明な点。

ここで、事案に鑑み、相違点B1-1について検討する。

甲B1(相違点B1-1について)

甲B1には、甲B1発明に係る半導体製造工程用テープについて、「本発明は、有機テルル化合物を用いてリビングラジカル重合された樹脂組成物及びそれを用いた耐熱性に優れた粘着剤に関する。」(【0001】)と記載されていて、耐熱性に優れたものであることは記載されているものの、「本発明における光学フィルムは、前述の通り分子量や架橋剤の配合量を適宜選択することにより、例えば80℃、500時間といった耐熱試験条件下や、60℃、90%RH、500時間といった耐湿熱条件下でも気泡や、剥がれが無く、応力緩和性に優れるため色むらが生じない。」(【0005】)という記載、耐熱試験条件が「80℃、500時間」で行われていること、及び、「具体的な用途としては、例えば塗装用マスキングテープ等の建築用、輸送時の表面保護フィルム等の自動車用途、電気絶縁用粘着テープ、半導体製造工程用テープ等の電気電子材料用途、液晶ディスプレイ等の光学フィルム貼り合わせ用テープ等の光学用途、経皮投与用貼布剤等の医療用途向け粘着剤などとして非常に有効である。」(【0005】)という記載からみて、甲B1発明は80℃程度において用いられることはあっても、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」ことは想定されていないというべきである。

上記(1)アで述べたように、本件発明1は、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」ことは想定されていない甲B1発明からは、当業者が予測し得ない格別顕著な作用効果を奏するものである。

そうすると、相違点B1-2~4について検討するまでもなく、本件発明1は、本件発明1は、甲B1発明であるということはできないし、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

イ 本件発明5~8について

本件発明5~8は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲B1発明であるということはできないし、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(3)甲B2~甲B4発明を主引用発明とした場合

本件発明1と甲B2発明~甲B4発明は、いずれも上記「一致点B1」で一致するものといえる。

しかしながら、本件発明1と甲B2発明~甲B4発明とは、本件発明1は「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」のに対し、甲B2発明~甲B4発明は、そのような加工工程で用いられるかどうか不明である点で相違し、しかも、(メタ)アクリルポリマーの分子量分布(Mw/Mn)、カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分の含有量、及び、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での粘着剤層の加熱重量減少量の点においても相違が認められる。

そして、甲B2発明~甲B4発明を、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」ものとし、(メタ)アクリルポリマーの分子量分布(Mw/Mn)、カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分の含有量、及び、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での粘着剤層の加熱重量減少量を、本件発明1の範囲内のものとする動機付けは見当たらない。

そうすると、本件発明1は、甲B2発明~甲B4発明であるということはできないし、甲B2発明~甲B4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

また、本件発明5~8は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲B2発明~甲B4発明であるということはできないし、甲B2発明~甲B4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(4)甲B5発明を主引用発明とした場合

本件発明1と甲B5発明とは、「粘着剤層を有する粘着テープ」点で一致するものの、甲B5発明の粘着剤層は、リビングラジカル重合によって得られたものではなく、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」かどうか不明であり、(メタ)アクリルポリマーの分子量分布(Mw/Mn)、カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分の含有量、及び、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での粘着剤層の加熱重量減少量の点においても相違が認められる。

しかしながら、甲B5発明の粘着剤層を、リビングラジカル重合によって得られたものとし、「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」もので、(メタ)アクリルポリマーの分子量分布(Mw/Mn)、カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分の含有量、及び、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での粘着剤層の加熱重量減少量を、本件発明1の範囲内のものとする動機付けは見当たらない。

そうすると、本件発明1は、甲B5発明であるということはできないし、甲B5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

また、本件発明5~8は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲B5発明であるということはできないし、甲B5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(申立人の主張について)

申立人Aは、令和元年12月2日付けの回答書において、「本件発明1にどのような粘着テープが含まれ、どのような粘着テープが含まれないのか不明です。そのため、『200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる、』との要件は、そもそも相違点となり得ません。・・・低分子量成分の合有率が低い粘着剤層が耐熱性に優れることは当業者の技術常識ですので、この甲A1に記載されている保護フィルム(粘着テープ)を『200℃以上に部品が晒される加工工程』に用いることは、当業者が容易に想到し得ることです。」(10頁3行~11頁2行)と主張している。

しかしながら、上述したように、本件発明1における「200℃以上に部品が晒される加工工程において用いられる」点は、甲A1に記載されている保護フィルムの使用態様としては想定されるものではなく、実質的な相違点であって、当業種が容易に想到し得るものでもない。

また、申立人Bは、令和元年10月8日付けの上申書において、本件発明では本件特許明細書の【0002】等に記載されるような用途に規定されているわけではありませんし、・・・いずれの主引例発明も、・・・200℃以上といった高温に晒される場合を明らかに想定したものであると言えますし、少なくともこのような高温に晒される場合を否定しているというような事情は全くなく、200℃以上といった高温に晒される用途に使用することに何ら困難性はありません」(7頁24行~8頁5行)と主張している。

しかしながら、上述したように、いずれの主引例発明について、「200℃以上といった高温に晒される場合を明らかに想定したものである」とはいえないし、「200℃以上といった高温に晒される用途に使用することに何ら困難性は」ないということもいえない。

そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、申立人Bの主張は採用することができない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断

取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。

第7 むすび

以上のとおり、請求項1、5~8に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。

また、他に請求項1、5~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2019-700381

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