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特許異議申立

2019-700315

内燃機関用点火装置

審判番号
2019-700315
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-509138
登録番号
特許第6411636号(P6411636)
請求日
2019年04月22日
審決日
2020年03月09日
公報発行日
2020年07月31日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】日立オートモティブシステムズ阪神株式会社
  • 【権利者代理人】福田 伸一
  • 【権利者代理人】水崎 慎
  • 【権利者代理人】高橋 克宗
  • 【異議申立人】松本 征二
審判長/審判官
  • 審判長 金澤 俊郎
  • 審判官 齊藤 公志郎
  • 審判官 渋谷 善弘
分類
P1652.121-ZAA(F02P)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6411636号発明「内燃機関用点火装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6411636号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 特許第6411636号の請求項1、2、4、5、7及び10ないし12に係る特許を取り消す。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6411636号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成30年10月5日にその特許権の設定登録がされ、同年10月24日に特許掲載公報が発行された。その後、平成31年4月22日に特許異議申立人松本征二(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1、2、4、5、7及び10ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てがされ、令和元年7月17日付けで取消理由が通知され(発送日:令和元年7月22日)、同年9月18日に特許権者から意見書及び訂正請求書が提出され、同年11月6日に特許異議申立人から意見書が提出され、令和元年11月29日付けで取消理由通知書(決定の予告)が送付された(発送日:令和元年12月6日)ものである。 なお、令和元年11月29日付けの取消理由通知書(決定の予告)に対する特許権者からの応答はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和元年9月18日に提出された訂正請求書による訂正の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記主スイッチ手段および副スイッチ手段の切り替え動作を制御する」と記載されているのを、「前記主スイッチ手段および副スイッチ手段の切り替え動作を個別に制御する」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項4ないし12も同様に訂正する。)ものである。(下線は、訂正箇所を示す。以下同様。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記点火制御手段は、主一次コイルヘの通電を遮断した遮断タイミング以降の放電期間内に所定の重畳時間だけ副一次コイルに通電」と記載されているのを「前記点火制御手段は、前記主一次コイルのみで適切な放電特性を得られない運転状況の場合、前記主一次コイルヘの通電を遮断した遮断タイミング以降の放電期間内に所定の重畳時間だけ副一次コイルに通電」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項4ないし12も同様に訂正する。)ものである。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記主一次コイルと接地点との間に接続される主スイッチ手段と並列に接続したバイパス線路に、接地点側から点火コイル側に向かって順方向となる整流手段を設けたたことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用点火装置」と記載されているのを、「通電により正方向の通電磁束が生じ、電流を遮断することにより逆方向の遮断磁束が生じる主一次コイルと、通電により前記遮断磁束と同方向の重畳磁束が生じる副一次コイルと、一端側が点火プラグと接流され、前記主一次コイルと副一次コイルに生じた磁束が作用して放電エネルギーが発生する二次コイルと、を有する点火コイルと、 前記点火コイルの主一次コイルヘの通電・遮断を切り替える主スイッチ手段と、 前記点火コイルの副一次コイルヘの通電・遮断を切り替える副スイッチ手段と、 前記主スイッチ手段および副スイッチ手段の切り替え動作を制御することで、燃焼サイクルの所定のタイミングで点火プラグに放電火花を発生させる点火制御手段と、 を備え、 前記点火コイルは、主一次コイルへの通電を遮断したときの磁束変化によって副一次コイルに発生する電圧が電源電圧よりも小さくなるように、前記副一次コイルの巻数を設定し 前記点火制御手段は、主一次コイルヘの通電を遮断した遮断タイミング以降の放電期間内に所定の重畳時間だけ副一次コイルに通電することで、二次コイルに発生する放電エネルギーを重畳的に増加させるようにし、 前記点火コイルの主一次コイルおよび副一次コイルヘの給電には、単一の直流電源を共用するようにし、 前記主一次コイルと接地点との間に接続される主スイッチ手段と並列に接続したバイパス線路に、接地点側から点火コイル側に向かって順方向となる整流手段を設けたことを特徴とする内燃機関用点火装置」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4ないし12も同様に訂正する。)ものである。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「車両の運転状況に基づいて副点火コイルの通電開始タイミングを決定する」と記載されているのを、「車両の運転状況に基づいて副一次コイルの通電開始タイミングを決定する」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5ないし12も同様に訂正する。)ものである。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「車両の運転状況に基づいて副点火コイルの通電時間を決定する」と記載されているのを、「車両の運転状況に基づいて副一次コイルの通電時間を決定する」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6ないし12も同様に訂正する。)ものである。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項11に「対応する気筒の点火制御を行うようにしたことと特徴とする」と記載されているのを、「対応する気筒の点火制御を行うようにしたことを特徴とする」に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)ものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3の、請求項3に係る訂正は、引用関係を解消することを目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4及び5について 訂正事項4及び5は、誤記の訂正を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項6について 訂正事項6は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 したがって、上記の訂正請求による訂正事項1ないし6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するから、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正を認める。 第3 取消理由の概要 訂正後の請求項1、2、4、5、7及び10ないし12に係る特許に対して、当審が令和元年11月29日付け取消理由通知書(決定の予告)により通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1 請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)及び甲第6号証に記載された発明(甲6記載事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 請求項4、5及び7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)、甲第6号証に記載された発明(甲6記載事項)及び甲第2号証に記載された発明(甲2記載事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4、5及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項4、5及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 請求項10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)、甲第6号証に記載された発明(甲6記載事項)、甲第2号証に記載された発明(甲2記載事項)及び甲第3号証に記載された発明(甲3記載事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである したがって、請求項10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 4 請求項11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)、甲第6号証に記載された発明(甲6記載事項)及び甲第2号証に記載された発明(甲2記載事項)ないし甲第4号証に記載された発明(甲4記載事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 5 請求項12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)、甲第6号証に記載された発明(甲6記載事項)及び甲第2号証に記載された発明(甲2記載事項)ないし甲第5号証に記載された発明(甲5記載事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (1)甲第1号証:特開昭62-48967号公報 (2)甲第2号証:米国特許出願公開第2015/0034059号明細書 (3)甲第3号証:特開2015-17540号公報 (4)甲第4号証:特開2007-309148号公報 (5)甲第5号証:特開2012-41912号公報 (6)甲第6号証:特開昭61-294167号公報 第4 当審の判断 1 訂正発明 訂正請求により訂正された訂正後の請求項1、請求項2、請求項4、請求項5、請求項7及び請求項10ないし請求項12に係る発明(以下「訂正発明1」、「訂正発明2」、「訂正発明4」、「訂正発明5」、「訂正発明7」及び「訂正発明10」ないし「訂正発明12」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 通電により正方向の通電磁束が生じ、電流を遮断することにより逆方向の遮断磁束が生じる主一次コイルと、通電により前記遮断磁束と同方向の重畳磁束が生じる副一次コイルと、一端側が点火プラグと接続され、前記主一次コイルと副一次コイルに生じた磁束が作用して放電エネルギーが発生する二次コイルと、を有する点火コイルと、 前記点火コイルの主一次コイルヘの通電・遮断を切り替える主スイッチ手段と、 前記点火コイルの副一次コイルヘの通電・遮断を切り替える副スイッチ手段と、 前記主スイッチ手段および副スイッチ手段の切り替え動作を個別に制御することで、燃焼サイクルの所定のタイミングで点火プラグに放電火花を発生させる点火制御手段と、 を備え、 前記点火コイルは、主一次コイルヘの通電を遮断したときの磁束変化によって副一次コイルに発生する電圧が電源電圧よりも小さくなるように、前記副一次コイルの巻数を設定し、 前記点火制御手段は、前記主一次コイルのみで適切な放電特性を得られない運転状況の場合、前記主一次コイルヘの通電を遮断した遮断タイミング以降の放電期間内に所定の重畳時間だけ副一次コイルに通電することで、二次コイルに発生する放電エネルギーを重畳的に増加させるようにしたことを特徴とする内燃機関用点火装置。 【請求項2】 前記点火コイルの主一次コイルおよび副一次コイルヘの給電には、単一の直流電源を共用するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火装置。」 「【請求項4】 前記点火制御手段は、車両の運転状況に基づいて副一次コイルの通電開始タイミングを決定するようにしたことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項に記載の内燃機関用点火装置。 【請求項5】 前記点火制御手段は、車両の運転状況に基づいて副一次コイルの通電時間を決定するようにしたことを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項に記載の内燃機関用点火装置。」 「【請求項7】 前記点火コイルの二次側に流れる二次電流を検出する二次電流検出手段を設け、 前記点火制御手段は、前記二次電流検出手段によって検出された二次電流に基づいて、車両の運転状況を判定するようにしたことを特徴とする請求項4~請求項6の何れか1項に記載の内燃機関用点火装置。」 「【請求項10】 前記点火制御手段は、内燃機関の動作を統括的に制御する内燃機関駆動制御装置に組み込まれ、全ての気筒の点火制御を内燃機関駆動制御装置が行うようにしたことを特徴とする請求項1~請求項9の何れか1項に記載の内燃機関用点火装置。 【請求項11】 前記点火制御手段は、気筒毎に設けられ、内燃機関の動作を統括的に制御する内燃機関駆動制御装置からの点火指示に基づいて、対応する気筒の点火制御を行うようにしたことを特徴とする請求項1~請求項10の何れか1項に記載の内燃機関用点火装置。 【請求項12】 少なくとも、前記点火コイルと、該点火コイルに対応して設けられる主スイッチ手段および副スイッチ手段を1つのケースに収納して、ユニット化するようにしたことを特徴とする請求項1~請求項11の何れか1項に記載の内燃機関用点火装置。」 2 甲各号証に記載された発明及び事項 (1)甲第1号証、甲1発明 甲第1号証には、「内燃機関用点火装置」に関して、図面(特に、第1図及び第2図を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線部は当審が付与した。以下同様。)。 ア 「この発明は内燃機関用点火装置に関し、特に高エネルギ一点火装置に関する。」(第1ページ右下欄18行ないし19行) イ 「ところで、通常の点火システムは点火コイルの2次側高圧出力はディストリビュータおよび抵抗入り高圧コードを介して各点火プラグに接続されている。ここで、各点火プラグの放電維持電圧は1KV程度であるが、抵抗入り高圧コードやディストリビュータ等でも電圧が印加されることにより電圧降下が生じるので、点火コイルの2次出力はこれらの電圧降下を考慮して最低2KV以上の放電維持電圧が必要である。さらに点火プラグの放電維持電圧はエンジン回転および負荷により変動する。また、エンジンのバッテリ電圧VBも回転数、負荷によってVB=10~16Vまで変化するので、重ね合せの2次出力電圧に影響する。」(第2ページ左下欄15行ないし右下欄7行) ウ 「1はマイナス端子を接地したバッテリ、100は通常の電流遮断型点火装置でその点火コイル108の2次コイル111の高電圧出力端子は抵抗入り高圧コード7a~7eおよびディストリビュータ2を介して各点火プラグ3,4,5,6に接続されている。 次いで、通常の電流遮断型点火装置100について簡単に説明する。内燃機関の回転に同期して交流出力信号を発生するマグネットピックアップ101はイグナイタ120に接続され、このイグナイタ120はマグネットピックアップ101の交流出力信号に同期して断続する1次電流断続手段をなすパワートランジスタ107を有している。 さらに、このパワートランジスタ107のエミッタは接地され、そのコレクタは点火コイル108の1次コイル109を介してバッテリ1のプラス端子VBに接続されている。 200は火花エネルギー増大回路で、次にその詳細を説明する。210はイグナイタ120のパワートランジスタ107のベース側に接続され、このパワートランジスタ107のベース信号を反転するインバータである。220は単安定回路をなす単安定マルチバイブレータで例えば東芝製TC4047を用いて構成でき、詳細な説明は省略するが、インバータ210の出力信号の立上りに同期して2ms程度幅の高レベルの出力を発生し、その出力は抵抗201を介してトランジスタ202のベースに接続される。このトランジスタ202のエミッタは接地され、そのコレクタは抵抗203を介してトランジスタ204のベースに接続されている。このトランジスタ204のエミッタはバッテリ1のプラス端子VBに接続され、そのコレクタは始動補助回路240の2つのAND回路234,235の各一方の入力端子に接続され、AND回路234の出力端子は抵抗206を介してパワートランジスタ207のベースに接続されている。このパワートランジスタ207のエミッタは接地され、そのコレクタはダイオード208のカソードに接続され、ダイオード20Bのアノードは1次補助コイル209を介してバッテリのプラス端子VBに接続されている。」(第3ページ左下欄15行ないし第4ページ左上欄15行) エ 「機関の回転に同期してパワートランジスタ107が導通し、1次コイル109に電流が流れる。そして、所定の点火時期になるとパワートランジスタ107が遮断し、1次コイル109の電流が急激に遮断されるので、2次コイル1)1に高電圧が発生し、ディストリビュータ2および各点火プラグ3,4,5,6で放電しアーク電流が流れる。 ここまでは通常の電流遮断型点火装置と同じ動作であるが、スタータスイッチ8が開放している通常動作時には、パワートランジスタ107が遮断した時点から単安定マルチバイブレータ220より所定の時間(約2ms)高レベルの信号が出力され、この時間だけAND回路234を介してパワートランジスタ207を導通させる(ここで、ダイオード208はパワートランジスタ207の逆流防止用である)。」(第4ページ左下欄3行ないし19行) オ 「ところで、1次補助コイル209は1次コイル109の巻数の1/2~1/4程度の巻数、つまり1次補助コイル209と2次コイル111との巻数比は200~400倍程度である。また、パワートランジスタ207が導通した時に1次補助コイル209に流れる電流により鉄心110に発生する磁束の向きは、パワートランジスタ107が導通した時の1次コイル109の電流による磁束の向きとは逆方向となるよう巻かれている。ここで、鉄心110において、1次コイル109の電流が通電中の磁束の方向と1次コイル109の電流が遮断直後の磁束の方向とは一般に知られているように互いに逆方向であるから、1次コイル109の電流遮断後の磁束の方向と1次補助コイル209の通電中の磁束の方向とは同方向となり、1次コイル109の電流遮断によるアークエネルギーに1次補助コイル209の通電によるエネルギーを足し合せることが可能である。」(第4ページ左下欄20行ないし右下欄17行) カ 「パワートランジスタ107の断続〔第2図(1)〕に伴って時刻t0で通電が開始された1次コイル109の電流〔第2図(2)の(a)〕は時刻t1で遮断される。これにより、2次コイル111に高電圧が発生し、ディストリビュータ2および各点火プラグ3~6で放電しアーク電流〔第2図(5)の(b)〕が流れる。この時、鉄心110中の磁束〔第2図(6)〕はx0からxlまで変化し、1次コイル電流に対応したエネルギーが貯えられる。また、時刻t1において単安定マルチバイブレータ220に高レベルの出力信号〔第2図(3)〕が発生し、1次補助コイル電流〔第2図(4)〕が流れるが、この1次補助コイル電流は第2図(4)の(c)と(e)に分けられ、このうち(c)が第2図(5)のアーク電流の(d)に対応する。この時、鉄心110の磁束φはx1、からx2まで変化し、一度零となるが、時刻t2からt3までは1次補助コイル電流のうち(e)に相当する電流が逆方向に磁束φを形成し、x2~X3まで変化する。」(第5ページ左上欄12行ないし右上欄10行) キ 「また、内燃機関始動時において、スタータ9を作動させるためにスタータスイッチ8を閉じると、単安定マルチバイブレータ220よりの所定時間幅の出力信号によりAND回路235を介してパワートランジスタ237を導通させ、中間タップ231を介して1次補助コイル209の一部のコイル部分230にのみ電流を供給する。ここで、このコイル部分230と2次コイル111との巻数比を600倍程度とすることによって、内燃機関始動時においてバッテリ電圧が低い場合においても、1次補助コイル209のコイル部分230への通電による2次コイル111の2次電圧を点火プラグの放電維持電圧よりも十分高くすることができて、1次電流遮断によるアークエネルギーに1次補助コイル209のコイル部分230への通電によるエネルギーを足し合せることが可能である。」(第6ページ左上欄2行ないし18行) ク 「また、上述した実施例においては、単安定マルチバイブレータ220は一定時間の出力を有するものとしたが、この時間をエンジン回転数、負荷等により任意に可変してアークエネルギーを変えることも可能で、さらに火花エネルギー増大回路200によるアークエネルギーの重ね合せは、ディストリビュータ2や点火プラグ3~6の消耗を防ぐため、低回転、低負荷時のみ作動するようにしてもよい。」(第6ページ右上欄14行ないし18行) ケ 「以上述べたように本発明においては、1次電流遮断時に1次補助コイルの通電によるエネルギーが足し合わされ、かつ1次補助コイルの巻数が1次コイルの巻数より小さいことによって、1次補助コイルと2次コイルとの巻数比が1次、2次コイルの巻数比より高くなって、1次補助コイルへの通電時に点火プラグの放電維持電圧よりも高い2次電圧が得られるから、通常の電流遮断型点火装置に、1次コイルより巻数の少ない1次補助コイルと、この補助コイルへの通電を断続する1次補助電流断続手段等を付加するのみの簡単な回路構成によって、安価かつ小型で点火エネルギーを良好に増大することができるという優れた効果がある。 さらに、内燃機関始動時には始動補助回路により1次補助コイルの有効巻数を減少させて、1次補助コイルへの通電時に、より高い2次電圧を得るから、内燃機関始動時においてバッテリ電圧が低い場合においても、1次電流遮断によるアークエネルギーに1次補助コイルの一部分のみへの通電によるエネルギーを効果的に足し合せることができるという優れた効果がある。」(第6ページ左下欄5行ないし右下欄6行) コ 上記オの記載事項及び第2図の図示内容からみて、1次補助コイル209の通電により1次コイル109の遮断磁束と同方向の重畳磁束が生じることが分かる。 サ 上記エの記載事項及び第1図の図示内容からみて、機関の回転及び所定の点火時期に応じてパワートランジスタ107を導通・遮断して、1次コイル109に流れる電流を制御する制御手段を備えていること、単安定マルチバイブレータ220は、パワートランジスタ207を導通・遮断して、1次補助コイル209に流れる電流を制御することが分かる。 シ 上記サから、パワートランジスタ107およびパワートランジスタ207の切り替え動作を制御することで、燃焼サイクルの所定のタイミングで点火プラグに放電火花を発生させる点火制御手段を備えていることが分かる。 ス 上記クから、火花エネルギー増大回路200によるアークエネルギーの重ね合せは、低回転、低負荷時のみ作動し、低回転、低負荷時以外では、作動しないように構成できることが分かる。 上記アないしスの記載事項及び図示内容を総合し、訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 [甲1発明] 「通電により正方向の通電磁束が生じ、電流を遮断することにより逆方向の遮断磁束が生じる1次コイル109と、通電により前記遮断磁束と同方向の重畳磁束が生じる1次補助コイル209と、一端側が点火プラグ3、4、5、6と接続され、前記1次コイル109と1次補助コイル209に生じた磁束が作用してアークエネルギーが発生する2次コイル111と、を有する点火コイル108と、 前記点火コイル108の1次コイル109への通電・遮断を切り替えるパワートランジスタ107と、 前記点火コイル108の1次補助コイル209への通電・遮断を切り替えるパワートランジスタ207と、 前記パワートランジスタ107およびパワートランジスタ207の切り替え動作を制御することで、燃焼サイクルの所定のタイミングで点火プラグに放電火花を発生させる点火制御手段と、 を備え、 前記1次補助コイル209と2次コイル111との巻数比を、1次コイル109と2次コイル111との巻数比より高い200~400倍とし、 前記点火制御手段は、低回転、低負荷時のみ1次コイル109への通電を遮断した時刻t1からt3の時間、1次補助コイル209に通電することで、1次コイル109の電流遮断によるアークエネルギーに1次補助コイル209の通電によるエネルギーを足し合わせることが可能な内燃機関用点火装置。」 (2)甲第2号証ないし甲第6号証、甲2記載事項ないし甲6記載事項 ア 甲第2号証には、「IGNITIONSYSTEM」(当審仮訳:点火システム)に関して、図面(特に、図1ないし図3を参照。)とともに以下の事項が記載されている。 「As the energy is depleted from the secondary LSEC, the controlcircuit 20 monitors the secondary currentISEC by way of the voltage acrossshunt RS. As soon as the secondary current ISEC dropsbelow a threshold value ISEC_TH the control circuit 20 operates a second phase,which comprises repeatedly energizing and deenergizing the second primarywinding LP 2 .」(第3ページ右欄14行ないし20行) (当審仮訳)「二次LSECからのエネルギーが減少するので、制御回路20は、シャントRSの両端の電圧によって二次電流ISECを監視する。二次電流ISECが閾値ISEC_TH以下になると、制御回路20は、第二の一次巻線LP2を繰り返し通電、非通電にする第二のフェーズを実行する。」 以上から、甲第2号証には、以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲2記載事項] 「二次LSECの二次側に流れる二次電流ISECを検出するシャントRSを設け、制御回路20は、前記シャントRSによって二次電流ISECを監視し、二次電流ISECが閾値ISEC_TH以下になると、制御回路20は、第二の一次巻線LP2に繰り返し通電、非通電にすること。」 イ 甲第3号証の段落【0015】、【0016】及び図1には、「内燃機関用点火装置」に関して、以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲3記載事項] 「4気筒内での点火状態を制御するための点火制御装置100を搭載して4気筒内燃機関を制御するエンジンコントロールユニット1。」 ウ 甲第4号証の段落【0046】、【0047】及び図1には、「多重放電点火装置」に関して、以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲4記載事項] 「電子制御装置(ECU20)は、各気筒毎に点火制御を指示する各別の統合信号IGiを分離回路22に出力し、分離回路22は、前記統合信号IGiに基づき、放電指示信号IGwを生成してスイッチング回路24に出力すること。」 エ 甲第5号証の段落【0044】、図1及び図2には、「内燃機関用制御システム」に関して、以下の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲5記載事項] 「ケース体10に、点火コイルCa及びCb並びにイグナイタIGTa及びIGTbが収納されること。」 オ 特開昭61-294167号公報(以下「甲第6号証」という。)には、「内燃機関用点火装置」に関して、図面(特に、第1図)とともに、以下の事項が記載されている。 (ア)「〔産業上の利用分野〕 この発明は内燃機関用点火装置に関し、特に高エネルギ一点火装置に関する。」(第2ページ右下欄10ないし11行) (イ)「本発明は上記問題を解決するもので、通常の電流遮断型点火装置に簡単な回路を加えることにより、安価でかつ小型で発熱の少ない高エネルギ一点火装置を提供することを目的とするものである。」(第3ページ右下欄16ないし19行) (ウ)「200は火花エネルギー増大回路で、次にその詳細を説明する。 波形整形回路113の出力端子が単安定マルチバイブレータ231,AND回路232の一方の入力端子およびF/V変換器233に接続されている。単安定マルチバイブレータ231は波形整形回路113の出力信号の立ち上がり(1次電流遮断時)に同期して50μs程度の狭い幅の高レベルの出力を発生する。そして、単安定マルチバイブレータ231の出力はインバータ234により反転されてAND回路232の他方の入力端子に接続されている。これにより、このAND回路232には波形整形回路113の出力信号の立ち上がりから若干遅れて立ち上がる矩形波出力が発生する。このAND回路232の出力は2つの単安定マルチバイブレータ235,236に入力される。これら、単安定マルチバイブレータ235,236はAND回路232の出力信号の立ち上がり(1次電流遮断より約50μs経過後)に同期して2ms程度と3ms程度の幅の高レベルの出力信号を発生する。これら、単安定マルチバイブレータ235,236の各出力は各AND回路237,238の一方の入力端子にそれぞれ接続される。また、F/V変換器233は波形整形回路113よりの入力パルス数、即ち、機関回転数に比例した直流電圧を出力するもので、この出力は2つのコンパレータ239,240の反転入力端子に接続されている。これら各コンパレータ239,240の非反転入力端子は分割抵抗241,242の接続点と、分割抵抗242,243の接続点とにそれぞれ接続され、これら3つの分割抵抗241~243は互いに直列接続されて、一定電圧V+と接地間に接続してある。ここで、一方のコンパレータ239の非反転入力端子の設定電圧は機関回転数2000rpmに対応する値に各分割抵抗241~243により設定されているため、機関回転数が2000rpm以下のときのみ高レベルの出力信号が発生する。また、他方のコンパレータ240の非反転入力端子の設定電圧は機関回転数1000rpmに対応する値に各分割抵抗241~243により設定されているため、機関回転数が1000rpm以下のときのみ高レベルの出力信号が発生する。これら、コンパレータ239,240の出力は各AND回路237,238の他方の入力端子接続され、これら各AND回路237,238の出力はOR回路252の2つの入力端子にそれぞれ接続されていて、このOR回路252の出力は後述するAND回路244の一方の入力端子に接続され、このAND回路244の出力は抵抗201を介してトランジスタ202のベースに接続されている。これによって、機関回転数が1000rpm以下のときには、OR回路252の出力は時間幅が長い方の単安定マルチバイブレータ236の出力と同じ波形となり、機関回転数が1000rpm~2000rpmのときには、OR回路252の出力は時間幅が短い方の単安定マルチバイブレータ235の出力と同じ波形となり、機関回転数が2000rpm以上のときにはOR回路252の出力は低レベルを維持する。」(第5ページ右下欄2行ないし第6ページ左下欄1行) (エ)「次に、上記構成においてその動作について説明する。まず、放電検出回路250およびAND回路244がなく、OR回路252の出力信号が抵抗201を介してトランジスタ202のベースに直接的に供給されている場合の作動を説明する。機関の回転に同期して波形整形回路113の出力信号が低レベルになるとトランジスタ104が導通するとともにパワートランジスタ107が導通し、1次コイル109に電流が流れる。そして、所定の点火時期になると波形整形回路113の出力信号が高レベルになり、1次コイル109の電流が急激に遮断されるので、2次コイル111に高電圧が発生し、ディストリビュータ2および各点火プラグ3,4,5,6で放電しアーク電流が流れる。 ここまでは通常の電流遮断型点火装置と同じ動作であるが、機関回転数が2000rpm以下のときにはパワートランジスタ107が遮断した時点から若干遅れて可変単安定回路210より所定の時間(3msまたは2ms)高レベルの可変単安定信号が出力され、この時間だけパワートランジスタ207を導通させる(ここで、ダイオード208はパワートランジスタ207の逆流防止用である)。 ところで、1次補助コイル209は1次コイル109の巻数の1/2~1/4程度の巻数、つまり1次補助コイル209と2次コイル111との巻数比は200~400倍程度である。また、パワートランジスタ207が導通した時に1次補助コイル209に流れる電流により鉄心110に発生する磁束の向きは、パワートランジスタ107が導通した時の1次コイル109の電流による磁束の向きとは逆方向となるよう巻かれている。ここで、鉄心110において、1次コイル109の電流が通電中の磁束の方向と1次コイル109の電流が遮断直後の磁束の方向とは一般に知られているように互いに逆方向であるから、1次コイル109の電流遮断後の磁束の方向と1次補助コイル209の通電中の磁束の方向とは同方向となり、1次コイル109の電流遮断によるアークエネルギーに1次補助コイル209の通電によるエネルギーを足し合わせることが可能である。」(第7ページ左上欄8行-第7ページ左下欄9行) (オ)「さらに、最も着火性の悪い、機関回転数が1000rpm以下のときには、1次電流が遮断されて50μs経過後、3msの間1次補助コイル209に電流か涜れて点火エネルキーを最大限増大させる。比較的着火性の悪い、1000~2000rpmのときには、1次電流が遮断されて50μs経過後、2msの間1次補助コイル209に電流が流れて点火エネルギーを必要量増大させ、1次補助コイル209への通電時間を減らした分だけ1次補助コイル209およびパワートランジスタ207の発熱を減少させる。比較的着火性の良い、2000rpm以上のときには、1次補助コイル209への通電がされないようにして、1次補助コイル209およびパワートランジスタ207の発熱を防ぐと共に点火プラグの摩耗を減少させる。」(第8ページ右上欄1ないし16行) (カ)上記(ウ)ないし(オ)の記載からみて、パワートランジスタ207は、機関回転数に応じて導通される状態と導通されない状態とに切り替わるものであるから、パワートランジスタ107とパワートランジスタ207とは個別に制御されるといえる。 上記(ア)ないし(カ)の記載事項及び図示内容からみて、甲第6号証には、次の事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されている。 [甲6記載事項] 「内燃機関用点火装置において、パワートランジスタ107とパワートランジスタ207とを個別に制御し、着火性の悪い、機関回転数が2000rpm以下のときには、1次コイル109の電流遮断によるアークエネルギーに1次補助コイル209の通電によるエネルギーを足し合わせること。」 3 対比・判断 (1)訂正発明1について 訂正発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「1次コイル109」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、前者の「主一次コイル」に相当し、以下同様に、「1次補助コイル209」は「副一次コイル」に、「点火プラグ3、4、5、6」は「点火プラグ」に、「アークエネルギー」は「放電エネルギー」に、「2次コイル111」は「二次コイル」に、「点火コイル108」は「点火コイル」に、「パワートランジスタ107」は「主スイッチ手段」に、「パワートランジスタ207」は「副スイッチ手段」に、それぞれ相当する。 後者の「1次コイル109への通電を遮断した時刻t1」は、前者の「主一次コイルへの通電を遮断した遮断タイミング」に相当する。 また、後者の「時刻t1からt3の時間」は、前者の「遮断タイミング以降の放電期間内」であって「所定の重畳時間」に相当する。 さらに、後者の「足し合わせる」ことは、前者の「重畳的に増加させる」ことに相当するから、後者の「1次コイル109の電流遮断によるアークエネルギーに1次補助コイル209の通電によるエネルギーを足し合わせる」ことは、前者の「副一次コイルに通電することで、二次コイルに発生する放電エネルギーを重畳的に増加させる」ことに相当する。 後者の「1次補助コイル209と2次コイル111との巻数比を、1次コイル109と2次コイル111との巻数比より高い200~400倍とし」たことについて検討する。 上記2(1)オの記載事項からみて、甲1発明においては、1次補助コイル209と2次コイル111との巻数比は200~400倍程度である。また、上記イの記載事項からみて、点火コイルの2次出力は最低2KV以上の放電維持電圧が必要とされるとともに、バッテリ電圧は10~16Vまで変化するものである。 他方、1次コイルに生じる起電力と2次コイルに生じる起電力とは、1次コイル及び2次コイルの巻数比によって関係付けられるということが技術常識であるから、当該技術常識に対して、上記の巻数比及び放電維持電圧を当てはめると、1次補助コイル209の電圧は、5~10Vとなり、バッテリ電圧10~16Vよりも低い電圧となる。 さらに上記2(1)キの記載事項からみて、1次補助コイル209の一部のコイル部分230にのみ電流を供給する場合には、該コイル部分230と2次コイル111との巻数比が600倍程度となることから、その場合の1次補助コイル209の電圧は、上記した5~10Vよりもさらに低いものとなる。 そうすると、甲1発明において、点火コイル108は、一次コイル109への通電を遮断したときの磁束変化によって一次補助コイル209に発生する電圧がバッテリ1の電圧よりも小さくなるように、一次補助コイル209の巻数を設定しているものである。 また、甲1発明においては、1次コイル109の通電遮断直後に、単安定マルチバイブレータ220からの出力信号に基づいて1次補助コイル209によるエネルギーの足し合わせが行われるものである。そうすると、甲1発明において、一次コイル109への通電を遮断したときの磁束変化によって一次補助コイル209に発生する電圧がバッテリ1の電圧よりも小さいことは自明である。 後者の「低回転、低負荷時のみ」と前者の「主一次コイルのみで適切な放電特性を得られない運転状況の場合」とは、「所定の運転状況の場合」という限りにおいて一致する。 そうすると、訂正発明1と甲1発明とは、 「通電により正方向の通電磁束が生じ、電流を遮断することにより逆方向の遮断磁束が生じる主一次コイルと、通電により前記遮断磁束と同方向の重畳磁束が生じる副一次コイルと、一端側が点火プラグと接続され、前記主一次コイルと副一次コイルに生じた磁束が作用して放電エネルギーが発生する二次コイルと、を有する点火コイルと、 前記点火コイルの主一次コイルへの通電・遮断を切り替える主スイッチ手段と、 前記点火コイルの副一次コイルへの通電・遮断を切り替える副スイッチ手段と、 前記主スイッチ手段および副スイッチ手段の切り替え動作を制御することで、燃焼サイクルの所定のタイミングで点火プラグに放電火花を発生させる点火制御手段と、 を備え、 前記点火コイルは、主一次コイルへの通電を遮断したときの磁束変化によって副一次コイルに発生する電圧が電源電圧よりも小さくなるように、前記副一次コイルの巻数を設定し、 前記点火制御手段は、所定の運転状況の場合、前記主一次コイルへの通電を遮断した遮断タイミング以降の放電期間内に所定の重畳時間だけ副一次コイルに通電することで、二次コイルに発生する放電エネルギーを重畳的に増加させるようにした内燃機関用点火装置。」 で一致し、以下の点で装置する。 [相違点1] 訂正発明1は、主スイッチ手段および副スイッチ手段の切り替え動作を「個別に」制御するのに対して、甲1発明は、該切り替え動作を「個別に」制御するか不明な点。 [相違点2] 所定の運転状況が、訂正発明1は、「主一次コイルのみで適切な放電特性を得られない」場合であるのに対して、甲1発明は、低回転、低負荷時である点。 上記相違点1及び2について検討する。 甲6記載事項は、「内燃機関用点火装置において、パワートランジスタ107とパワートランジスタ207とを個別に制御し、着火性の悪い、機関回転数が2000rpm以下のときには、1次コイル109の電流遮断によるアークエネルギーに1次補助コイル209の通電によるエネルギーを足し合わせること。」である。 訂正発明1と甲6記載事項とを対比すると、後者の「パワートランジスタ107」は前者の「主スイッチ手段」に相当し、以下同様に、「パワートランジスタ207」は「副スイッチ手段」に、「着火性の悪い、機関回転数が2000rpm以下のとき」は「主一次コイルのみで適切な放電特性を得られない運転状況の場合」に、それぞれ相当する。 また、後者の「アークエネルギー」は前者の「放電エネルギー」に相当し、以下同様に「1次補助コイル209」は「副一次コイル」に、「エネルギーを足し合わせる」は「重畳的に増加させる」に相当するから、後者の「1次コイル109の電流遮断によるアークエネルギーに1次補助コイル209の通電によるエネルギーを足し合わせる」ことは前者の「副一次コイルに通電することで、二次コイルに発生する放電エネルギーを重畳的に増加させるようにしたこと」に相当する。 そうすると、甲6記載事項は、訂正発明1の用語を用いると、「主スイッチ手段および副スイッチ手段の切り替え動作を個別に制御し、主一次コイルのみで適切な放電特性を得られない運転状況の場合、副一次コイルに通電することで、二次コイルに発生する放電エネルギーを重畳的に増加させるようにした」との事項を備えるものといえる。 そして、甲1発明と甲6記載事項とは、内燃機関用点火装置に関する技術であることで共通し、内燃機関用点火装置における放電電流の重ね合わせを行う技術であることでも共通する。また、甲1発明に甲6記載事項を適用することについての格別な阻害要因を見いだすこともできない。 そうすると、甲1発明に、甲6記載事項を適用して、上記相違点1及び2に係る訂正発明1の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、訂正発明1は、甲1発明及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得た発明であるから、訂正後の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)訂正発明2について 上記2(1)ウの記載事項及び甲第1号証の第1図の図示内容からみて、甲1発明は、点火コイル108の一次コイル109および一次補助コイル209への給電には、単一のバッテリ1を共用するようにしたものである。 したがって、訂正発明2は、甲1発明及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得た発明であるから、訂正後の請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)訂正発明4について 訂正発明4と甲1発明とを対比すると、前記「3(1)訂正発明1について」において検討した一致点と、以下の相違点とがある。 [相違点3] 訂正発明4は、「点火制御手段は、車両の運転状況に基づいて副一次コイルの通電開始タイミングを決定するようにした」のに対して、甲1発明は、かかる構成を備えていない点。 上記相違点3について検討する。 訂正発明4の「車両の運転状況」に関して、本件特許の明細書には、「運転状況の判定に用いる情報としては、エンジンの回転数、二次電流値、点火コイル11の温度などで、気筒の燃焼に関与する情報であれば、何を用いても構わない。」(段落【0043】)との記載がある。 他方、甲2記載事項は、「二次LSECの二次側に流れる二次電流ISECを検出するシャントRSを設け、制御回路20は、前記シャントRSによって二次電流ISECを監視し、二次電流ISECが閾値ISEC_TH以下になると、制御回路20は、第二の一次巻線LP2を繰り返し通電および非通電すること。」である。 そうすると、甲2記載事項は、訂正発明4の用語を用いると、「車両の運転状況に基づいて副一次コイルの通電開始タイミングを決定するようにした」との事項を備えるものといえる。 甲1発明と甲2記載事項とは、点火装置に関する技術であることで共通し、内燃機関用点火装置における放電電流の重ね合わせを行う技術であることでも共通する。また、甲1発明に甲2記載事項を適用することについての格別な阻害要因を見いだすこともできない。 そうすると、甲1発明に、甲2記載事項を適用して、上記相違点3に係る訂正発明4の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、訂正発明4は、甲1発明、甲6記載事項及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得た発明であるから、訂正後の請求項1または2を引用する訂正後の請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (5)訂正発明5について 上記2(1)クの記載事項からみて、甲1発明は、エンジン回転数、負荷等により単安定マルチバイブレータ220の出力時間を任意に変えることが可能なものである。 したがって、訂正発明5は、甲1発明、甲6記載事項及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得た発明であるから、訂正後の請求項1、2又は4を引用する訂正後の請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (6)訂正発明7について 訂正発明7と甲1発明とを対比すると、前記した一致点及び相違点のほか、以下の相違点がある。 [相違点4] 訂正発明7は、「点火コイルの二次側に流れる二次電流を検出する二次電流検出手段を設け、前記点火制御手段は、前記二次電流検出手段によって検出された二次電流に基づいて、車両の運転状況を判定するようにした」のに対して、甲1発明は、かかる構成を備えていない点。 上記相違点4について検討する。 相違点3について検討したとおり、車両の運転状況は、二次電流値を用いて判定されるものである。 そして、甲2記載事項は、訂正発明7の用語を用いると、「点火コイルの二次側に流れる二次電流を検出する二次電流検出手段を設け、点火制御手段は、前記二次電流検出手段によって検出された二次電流に基づいて、車両の運転状況を判定するようにした」との事項を備えるものといえる。 そうすると、甲1発明に、甲2記載事項を適用して、上記相違点4に係る訂正発明7の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、訂正発明7は、甲1発明、甲6記載事項及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得た発明であるから、訂正後の請求項4または5を引用する訂正後の請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (7)訂正発明10について 訂正発明10と甲1発明とを対比すると、前記した一致点及び相違点のほか、以下の相違点がある。 [相違点5] 訂正発明10は、「点火制御手段は、内燃機関の動作を統括的に制御する内燃機関駆動制御装置に組み込まれ、全ての気筒の点火制御を内燃機関駆動制御装置が行うようにした」のに対して、甲1発明は、かかる構成を備えていない点。 上記相違点5について検討する。 甲3記載事項は、「4気筒内での点火状態を制御するための点火制御装置100を搭載して4気筒内燃機関を制御するエンジンコントロールユニット1。」である。 そうすると、甲3記載事項は、訂正発明10の用語を用いると、「点火制御手段は、内燃機関の動作を統括的に制御する内燃機関駆動制御装置に組み込まれ、全ての気筒の点火制御を内燃機関駆動制御装置が行うようにした」との事項を備えるものといえる。 甲1発明と甲3記載事項とは、内燃機関用点火装置に関する技術であることで共通し、甲1発明に甲3記載事項を適用することについての格別な阻害要因を見いだすこともできない。 そうすると、甲1発明に、甲3記載事項を適用して、上記相違点5に係る訂正発明10の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、訂正発明10は、甲1発明、甲6記載事項、甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得た発明であるから、訂正後の請求項1、2、4、5又は7を引用する訂正後の請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (8)訂正発明11について 訂正発明11と甲1発明とを対比すると、前記した一致点及び相違点のほか、以下の相違点がある。 [相違点6] 訂正発明11は、「点火制御手段は、気筒毎に設けられ、内燃機関の動作を統括的に制御する内燃機関駆動制御装置からの点火指示に基づいて、対応する気筒の点火制御を行うようにした」のに対して、甲1発明は、かかる構成を備えていない点。 上記相違点6について検討する。 甲4記載事項は、「電子制御装置(ECU20)は、各気筒毎に点火制御を指示する各別の統合信号IGiを分離回路22に出力し、分離回路22は、前記統合信号IGiに基づき、放電指示信号IGwを生成してスイッチング回路24に出力すること。」である。 そうすると、甲4記載事項は、訂正発明11の用語を用いると、「点火制御手段は、内燃機関の動作を統括的に制御する内燃機関駆動制御装置からの点火指示に基づいて、対応する気筒の点火制御を行うようにした」との事項を備えるものといえる。 甲1発明と甲4記載事項とは、点火装置に関する技術であることで共通し、甲1発明に甲4記載事項を適用することについての格別な阻害要因を見いだすこともできない。 そうすると、甲1発明に、甲4記載事項を適用して、上記相違点6に係る訂正発明11の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、訂正発明11は、甲1発明、甲6記載事項、甲2記載事項ないし甲4記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得た発明であるから、訂正後の請求項1、2、4、5、7又は10を引用する訂正後の請求項11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (9)訂正発明12について 訂正発明12と甲1発明とを対比すると、前記した一致点及び相違点のほか、以下の相違点がある。 [相違点7] 訂正発明12は、「少なくとも、点火コイルと、該点火コイルに対応して設けられる主スイッチ手段および副スイッチ手段を1つのケースに収納して、ユニット化するようにした」のに対して、甲1発明は、かかる構成を備えていない点。 上記相違点7について検討する。 甲5記載事項は、「ケース体10に、点火コイルCa及びCb並びにイグナイタIGTa及びIGTbが収納されること。」である。 そうすると、甲5記載事項は、訂正発明12の用語を用いると、「少なくとも、点火コイルと、該点火コイルに対応して設けられる主スイッチ手段および副スイッチ手段を1つのケースに収納して、ユニット化するようにした」との事項を備えるものといえる。 甲1発明と甲5記載事項とは、内燃機関用点火装置に関する技術であることで共通し、甲1発明に甲5記載事項を適用することについての格別な阻害要因を見いだすこともできない。 そうすると、甲1発明に、甲5記載事項を適用して、上記相違点7に係る訂正発明11の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、訂正発明12は、甲1発明、甲6記載事項、甲2記載事項ないし甲5記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得た発明であるから、訂正後の請求項1、2、4、5、7、10又は11を引用する訂正後の請求項12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第5 むすび 以上のとおり、訂正発明1、2、4、5、7及び10ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、訂正後の請求項1、2、4、5、7及び10ないし12に係る特許は、同法第113条第2号により取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700315

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