特許異議申立
2022-700558
床材
- 審判番号
- 2022-700558
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-134612
- 登録番号
- 7017847
- 請求日
- 2022年06月27日
- 審決日
- 2024年03月21日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東リ株式会社
- 【権利者代理人】細田 芳弘
- 【権利者代理人】細田 芳徳
- 【異議申立人】塩谷 由紀子
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 居島 一仁
- 分類
- P1651.121-YAA(E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7017847号発明「床材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7017847号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第7017847号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7017847号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成28年7月6日に出願され、令和4年2月1日にその特許権の設定登録がされ、同月9日に特許掲載公報がされたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。
令和4年 6月27日 特許異議申立人 塩谷 由紀子(以下「申立
人」という。)による請求項1~4に係る発
明の特許に対する特許異議の申立て
同年10月27日付け 取消理由通知
同年12月28日 特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
令和5年 2月20日 申立人による意見書の提出
同年 3月30日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 6月 2日 特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
同年 7月12日 申立人による意見書の提出
同年 9月22日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年11月27日 特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
令和6年 1月 9日付け 申立人による意見書の提出
なお、令和5年11月27日に訂正の請求がされたことにより、令和4年12月28日及び令和5年6月2日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
特許権者により令和5年11月27日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の内容(以下「本件訂正」という。)は以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「樹脂層及び形状安定化層を含む床材本体と、前記床材本体の上に表面保護層を有する床材であって、前記表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類と、防滑性粒子とを含み、前記表面保護層に用いる樹脂としては電離放射線硬化性樹脂からなり、前記表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満である、床材(但し、木材を含む床材を除く)。」と記載されているのを、
「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層、形状安定化層、及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体と、前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する床材であって、前記床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有し、前記表面保護層は、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類と、防滑性粒子とを含み、前記表面保護層に用いる樹脂としては電離放射線硬化性樹脂からなり、前記表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満であり、長尺帯状又は枚葉状に形成されてなる、靴底に対する防滑及び防汚用の床材(但し、木材を含む床材を除く)。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記床材本体が表層及び化粧層を更に含み、前記表層が熱可塑性樹脂からなる、請求項1または2に記載の床材。」と記載されているのを、「前記床材本体が化粧層を更に含む、請求項1または2に記載の床材。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
便宜上、訂正事項1の訂正を以下の訂正事項1Aないし1Dに分けて判断する。
ア 訂正事項1A
特許請求の範囲の請求項1に「樹脂層及び形状安定化層を含む床材本体」とあるのを、「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層、形状安定化層、及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体」に訂正する。
イ 訂正事項1B
特許請求の範囲の請求項1に「前記床材本体の上に表面保護層を有する床材」とあるのを、「前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する床材であって、前記床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有し、」に訂正する。
ウ 訂正事項1C
特許請求の範囲の請求項1に「前記表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、」とあるのを、「前記表面保護層は、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、」に訂正する。
エ 訂正事項1D
特許請求の範囲の請求項1に「前記表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満である、床材(但し、木材を含む床材を除く)。」とあるのを、「前記表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満であり、長尺帯状又は枚葉状に形成されてなる、靴底に対する防滑及び防汚用の床材(但し、木材を含む床材を除く)。」に訂正する。
(2)訂正事項1Aについて
ア 訂正の目的
訂正事項1Aに係る訂正は、樹脂層について「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む」ことを特定して限定するとともに、床材本体について、樹脂層及び形状安定化層に加え、可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層をも含むことを特定して限定し、「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層、形状安定化層、及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更
樹脂層について、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」といい、特許請求の範囲及び図面とあわせて「本件特許明細書等」という。)の段落【0016】に「樹脂層22の合成樹脂成分としては、・・・熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、・・・などが挙げられ、加工性や柔軟性、コストなどの観点から塩化ビニル樹脂が好ましい。」と記載され、段落【0022】に「樹脂層22は、任意に添加剤を含むことができ、添加剤としては、・・・可塑剤、・・・などが挙げられる。」と記載されている。また、床材本体について、段落【0015】に「床材本体2は、基材層21、形状安定化層23、化粧層24、表層3などの層を任意に組み合わせた構造のものが挙げられる。」と記載され、段落【0042】に「表層3としては、・・・例えば熱可塑性樹脂および可塑剤などにより形成され、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、・・・などが挙げられ、・・・」と記載されている。
したがって、訂正事項1Aに係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)訂正事項1Bについて
ア 訂正の目的
訂正事項1Bに係る訂正は、本件訂正事項1Aにより床材本体が表層を含むものとなったことに関連して、表面保護層について、訂正前の請求項1において「前記床材本体の上に表面保護層を有する」との記載により、「床材本体の上」に「有する」ことのみが特定されていたのを、「前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された」ことを特定して限定するとともに、床材について、「床材を長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有する」ことを特定して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更
本件特許明細書の段落【0091】に「・・・表面保護層を除く床材中間品を、公知の方法で熱と圧力をかけて作製し、・・・電離放射線硬化性樹脂組成物を、床材中間品の表層上にナチュラルロールコート法により均一な厚みで塗布した後、直ちに空気中において有電極紫外線ランプで紫外線を照射することにより、表面保護層を形成した。」と記載され、また、段落【0014】に「長尺帯状の床材1は、通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。」と記載されている。
したがって、訂正事項1Bに係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(4)訂正事項1Cについて
訂正事項1Cに係る訂正は、訂正事項1Bにおいて「前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する」ことが特定されたことに伴い、訂正前の請求項1における「電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み」との記載にある「電離放射線硬化性樹脂組成物」が、訂正事項1Bにおいて特定された、表層上に塗布された「電離放射線硬化性樹脂組成物」と同じものであることが明瞭となるよう、「電離放射線硬化性樹脂組成物」の前に「前記」を付したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
訂正事項1Cに係る訂正は、上記のとおり、「電離放射線硬化性樹脂組成物」の前に「前記」を付する訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(5)訂正事項1Dについて
ア 訂正の目的
訂正事項1Dに係る訂正は、床材について、「長尺帯状又は枚葉状に形成されてなる」こと及び「靴底に対する防滑及び防汚用」であることを特定して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更
本件特許明細書の段落【0014】に「本発明の床材は、長尺帯状に限られず、平面視正方形状などの枚葉状に形成されていてもよい」と記載されている。また、段落【0012】に「本発明の床材は、防汚性に優れる電離放射線硬化性樹脂組成物に電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類が含まれるため、シリコン及びフッ素の官能基の有する摺動性及び撥水・撥油性によって電離放射線硬化性樹脂表面に汚れ物質が付着し難く、付着した汚れ物質も除去し易い。また、防滑性については、表面保護層表面に防滑性粒子による微細な凹凸が形成されるので、人が踏んだ際に足裏や靴底にめり込んで、適当な防滑性を有することができるためと推定される。」と記載され、段落【0097】に、
「<BHM試験>
実施例1、比較例1、参考例1の床材について、・・・その表面の汚れ状態を目視で観察し、写真撮影した。続いて各サンプルの表面を乾燥した状態で紙拭き(乾拭)及び、水で濡らした状態で紙拭き(水拭)し、汚れを拭き終わるまでの時間(10分間以内に拭き取れないものは拭き取り不可とする。)と拭きとった後の汚れ状態を目視で観察し、写真撮影した。清掃後の表面の防汚性および汚染除去性を、目視で以下の基準で評価した。その結果を表4に示す。また、図5に、各例の試験直後および拭き取り後の状態を示す。
◎:ヒールマークがつかない
○:ヒールマークがつくが紙拭き・水拭きで短時間で拭きとれるもの
△:ヒールマークがつくが紙拭き・水拭きで時間をかければ拭きとれるもの
×:紙拭き・水拭きした後でもわずかにヒールマークがのこるもの」と記載され、【0105】に「実施例1、比較例1、参考例1から、表面保護層に電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が含有されていると、防汚性および汚染除去性に優れていることがわかる。」と記載されており、ヒールマークが靴底のゴムの付着によるものであることが技術常識であることに鑑みると、床材は「靴底」に対する「防汚用」であるといえる。
したがって、訂正事項1Dに係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(6)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「前記床材本体が表層及び化粧層を更に含み、前記床材本体が表層及び化粧層を更に含み、前記表層が熱可塑性樹脂からなる、」と記載されていたところ、訂正事項1Aにより、請求項3が引用する請求項1において、「床材本体」が「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む」ことが特定され、「表層」が「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む」ものと特定されたことにより、請求項3において「床材本体」が「更に含む」ものが「表層及び化粧層」のうちの「化粧層」となったことから、請求項3の記載から「表層及び」及び「前記表層が熱可塑性樹脂からなる、」ことを削除して「前記床材本体が化粧層を更に含む、」としたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする。
上記のとおりであるから、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項2ないし4は、請求項1を引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
そうすると、訂正前の請求項1ないし4に対応する訂正後の請求項1ないし4は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であって、訂正事項1に係る訂正は、一群の請求項〔1-4〕についてするものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で示したとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ、請求項番号により「本件発明1」等といい、これらを併せて「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層、形状安定化層、及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体と、前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する床材であって、前記床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有し、前記表面保護層は、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類と、防滑性粒子とを含み、前記表面保護層に用いる樹脂としては電離放射線硬化性樹脂からなり、前記表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満であり、長尺帯状又は枚葉状に形成されてなる、靴底に対する防滑及び防汚用の床材(但し、木材を含む床材を除く)。
【請求項2】
前記形状安定化層がガラス繊維を含むガラスシートである、請求項1に記載の床材。
【請求項3】
前記床材本体が化粧層を更に含む、請求項1または2に記載の床材。
【請求項4】
前記表面保護層の硬度が、6B~4Hである、請求項1~3のいずれか1に記載の床材。
第4 取消理由(決定の予告)の概要及び証拠
1 取消理由(決定の予告)の概要
令和5年6月2日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明に対して、当審において令和5年9月22日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
(1)請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)本件特許の訂正前の請求項2ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された技術及び周知技術に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2ないし4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
2 証拠
取消理由(決定の予告)で引用した文献は以下のとおり。
甲第1号証 特開2012-213923号公報
甲第2号証 鹿工技ニュース No.56,鹿児島県工業技術センター,2002年1月号,P.5
甲第3号証 特開2014-84684号公報
甲第4号証 特開2006-316578号公報
甲第5号証 特開2003-213211号公報
甲第6号証 特開2001-123113号公報
甲第7号証 特開2014-69447号公報
参考資料1 床材の現場,可塑剤インフォメーション,可塑剤工業会,平成10年4月発行,No.9,P.5-7
参考資料4 長尺塩ビシート,[online],最終更新日2002/09/18,三井住友信託銀行グループ三井住友トラスト不動産,[令和5年3月15日検索],インターネット<URL:https://smtrc.jp/useful/glossary/detail/n/608>)
引用文献A 特開2001-232743号公報
(以下「甲第1号証」等を「甲1」等という場合がある。)
第5 当審の判断
1 各甲号証等について
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1には以下の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。
(ア)「【0013】
以下、本発明の化粧シートに関し、基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性熱可塑性樹脂層、プライマー層及び前記表面保護層を順に有する化粧シートを代表例として、具体的に説明する。」
(イ)「【0015】
基材シートとしては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたシート(フィルム)が好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル等が挙げられる。前記基材シートは、これら樹脂を単独で又は2種以上を組み合わせ用いることにより形成される。」
(ウ)「【0044】
表面保護層のマルテンス硬さは、1)複数の樹脂成分を混合する、2)樹脂にエラストマーを添加する、等によって適宜設定することができる。例えば、表面保護層を構成する樹脂成分として、後述するウレタンアクリレートを使用する場合、2官能ウレタンアクリレートと6官能ウレタンアクリレートを適宜配合したり、または分子量1500程度の3官能ウレタンアクリレートのみを使用する等により、所望のマルテンス硬さを得ることができる。なお、ここで2官能ウレタンアクリレートとは1分子中にラジカル重合性のアクリロイル基を2つ有するウレタンアクリレートを意味する。3官能ウレタンアクリレートと6官能ウレタンアクリレートについても同様に、1分子中にラジカル重合性のアクリロイル基をそれぞれ3つ、6つ有するウレタンアクリレートを意味する。」
(エ)「【0048】
また、表面保護層の最大高さ(Rz)は、20~60μmである。好ましくは20~53μmであり、より好ましくは20~50μmである。Rzが20を下回る場合は、対象が軽量物である場合の防滑性が劣り、Rzが60を超える場合は耐傷性が劣る。
(中略)
【0052】
上記したSmはJIS B0601(1994)、Rz及びRzjisはJIS B0601(2001)表面粗さの規格に準拠している。」
(オ)「【0057】
表面保護層のSm、Rz及びRzjisは、1)後述するフィラーを含有する、2)エンボス加工を行う等により、適宜設定することができる。静摩擦係数及び動摩擦係数は、上記1)及び2)の方法の他、3)後述する複数の樹脂成分を混合すること等によっても適宜設定できる。」
(カ)「【0059】
表面保護層は、耐擦傷性等の観点から、電離放射線硬化型樹脂を樹脂架橋することにより形成される電離放射線硬化型樹脂層であることが好ましい。電離放射線硬化型樹脂とは、紫外線、電子線等を照射することにより、架橋及び硬化する樹脂を指す。
【0060】
電離放射線硬化型樹脂としては、公知のもの又は市販品を使用することができる。具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基をもつプレポリマー、オリゴマー及び単量体の少なくとも1種を含む組成物を用いる。
【0061】
前記のプレポリマー又はオリゴマーとしては、例えば、ポリエステルメタアクリレート、ポリエーテルメタアクリレート、ウレタンメタアクリレート、ポリオールメタアクリレート、メラミンメタアクリレート等のメタアクリレート類、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等がある。上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、特開2007-118596に則ったウレタンアクリレートオリゴマーを用いてもよい。」
(キ)「【0067】
表面保護層に含まれるフィラーとしては、例えば、シリカ、シリコーン樹脂(パウダー、ビーズ)等の無機粒子;アクリル、架橋アルキル、架橋スチレン、インゾグアナミン樹脂、尿素- ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ナイロン等の有機材料パウダーないしビーズ等が挙げられる。フィラーとして好ましいのは、シリカ及びアクリルビーズからなる群から選ばれた少なくとも1種である。なお、前記フィラーは、1種又は2種以上使用することができる。」
(ク)「【0083】
電離放射線硬化型樹脂による表面保護層の形成方法については、公知の方法に従えば良い。例えば、電離放射線硬化型樹脂を含む組成物(塗料)を調製し、これをグラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布すれば良い。この場合の前記組成物の塗布量としては、特に限定されず、表面保護層の厚みが上記範囲になるよう適宜設定すればよい。」
(ケ)「【0099】
化粧板
本発明の化粧板は、前記化粧シートの表面保護層が最表面層となるように前記化粧シートが被着材上に積層されてなる。
【0100】
被着材は、限定的でなく、公知の化粧シートと同様のものを用いることができる。例えば、木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラス等が挙げられる。特に、本発明化粧シートは、木質材に好適に使用することができる。木質材としては、具体的には、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。
(中略)
【0103】
本発明の化粧シートは、対象が軽量物においても防滑性に優れ、かつ防滑性の低下が抑制されている。よって、本発明の化粧シートを積層した化粧板は、各種の建材、家具等に用いることができる。特に、本発明の化粧板は、床用化粧材として好適に用いることができる。」
イ 甲1発明
上記アより、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
(甲1発明)
「化粧シートの表面保護層が最表面層となるように化粧シートが、プラスチックスを用いることができる被着材上に積層されてなる、床用化粧材として好適に用いることができる化粧板であって、
化粧シートは、基材シート上に、絵柄模様層、透明性熱可塑性樹脂層、表面保護層を順に有する化粧シートであり、
基材シートは、熱可塑性樹脂であるポリ塩化ビニルを用いることにより形成されたシートであり、
表面保護層は、耐擦傷性等の観点から、電離放射線硬化型樹脂を樹脂架橋することにより形成される電離放射線硬化型樹脂層であり、
電離放射線硬化型樹脂としては、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基をもつプレポリマー、オリゴマー及び単量体の少なくとも1種を含む組成物を用い、プレポリマー又はオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートを用いてもよく、
表面保護層の最大高さRzは、JIS B0601(2001)表面粗さの規格に準拠しているものであり、より好ましくは20~50μmであり、
表面保護層のRzは、フィラーを含有する等により、適宜設定することができ、表面保護層に含まれるフィラーとしては、無機粒子が挙げられ、
電離放射線硬化型樹脂による表面保護層の形成方法は、電離放射線硬化型樹脂を含む組成物(塗料)を調製し、周知の塗布法で塗布すれば良い、
化粧板。」
(2)甲2
ア 甲2の記載
甲2には以下の記載がある。
(ア)「A:表面粗さに関するJIS規格は,国際規格(ISO規格)に整合化することを目的として,2001年にJIS B 0601を含む6つの規格が改正されました。一般に,使用頻度の高いパラメータは中心線平均粗さRa,最大高さRy,十点平均粗さRyと思われますので,これらに関して内容をお知らせします。改正されたポイントは,主に以下の3点です。
○1旧規格の最大高さRyが,最大高さ粗さRzに変更された。十点平均粗さRyは規格から削除され,付属書に移された。
○2最大高さ粗さをRyとし,十点平均粗さをRzjisとして区別する。
○3パラメータを求める輪郭曲線は,断面曲線,粗さ曲線,うねり曲線に分け,それぞれに断面曲線パラメータ(頭文字P),粗さパラメータ(頭文字R),うねリパラメータ(頭文字W)を規定する。」(当審注:○1等は数字を○で囲む文字を表す。以下、同様。)(5頁右欄4-21行)
イ 甲2記載技術
上記アより、甲2には、次の技術的事項(以下「甲2記載技術」という。)が記載されている。
(甲2記載技術)
「表面粗さに関するJIS規格は,国際規格(ISO規格)に整合化することを目的として,2001年にJIS B 0601を含む6つの規格が改正され,旧規格の最大高さRyが,最大高さ粗さRzに変更されたこと。」
(3)甲3
ア 甲3の記載
甲3には以下の記載がある。
(ア)「【0014】
(床材本体)
床材本体2は、床材1の強度及び重量を構成する主たる部分である。本発明では、床材本体2は、主として合成樹脂から形成されている。もっとも、床材本体2は、合成樹脂以外を用いて形成することもできる。
前記床材本体2は、例えば、樹脂層22を有し、必要に応じて、前記樹脂層22の裏面に基材層21が設けられ、さらに、前記樹脂層22内には、形状安定化層23が設けられる。」
(イ)「【0020】
前記形状安定化層23としては、不織布又は織布などを用いることができる。不織布及び織布を構成する繊維の材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。床材1の寸法安定性を高めることができ、有機繊維に比べて極めて寸法変動が少ない上、樹脂との馴染みも良いことから、形状安定化層23として、ガラス繊維不織布を用いることが好ましい。さらに、形状安定化層23としてガラス繊維不織布を用い且つ基材層21としてポリエステル繊維からなる不織布を用いると、ガラス繊維不織布が床材全体の寸法安定性に大きく寄与し且つポリエステル繊維不織布が床材の反りを防止するので、寸法安定性を失うことなく、施工後の反り上りも生じない、安定した床材1を得ることができる。」
イ 甲3記載技術
上記アより、甲3には、次の技術的事項(以下「甲3記載技術」という。)が記載されている。
(甲3記載技術)
「床材1の強度及び重量を構成する主たる部分である床材本体2は、樹脂層22を有し、樹脂層22内には、形状安定化層23が設けられ、形状安定化層23としてガラス繊維不織布を用いると、ガラス繊維不織布が床材全体の寸法安定性に大きく寄与すること。」
(4)甲4
ア 甲4の記載
甲4には以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は建物、バス、電車等に施工される床材に関するもので、特に屋外の廊下や階段、厨房、トイレ、バス、電車などの水濡れしやすい場所に適した防滑性床材に関するものである。」
(イ)「【0009】
これらの熱可塑性樹脂製シート基材は、単層でも、2層以上の複数層でも良く、その中に発泡層を設けても良い。また、裏面及び/又は中間に寸法安定性、施工時の接着性の向上を目的として編物、織物、不織布、紙等を積層することも可能である。また、熱可塑性樹脂製シート基材表面に印刷フイルムをラミネートして意匠付与しても良い。厚みは通常の床材と同様でよく、1.0~5.0mm程度が一般的である。」
イ 甲4記載技術
上記アより、甲4には、次の技術的事項(以下「甲4記載技術」という。)が記載されている。
(甲4記載技術)
「床材の熱可塑性樹脂製シート基材は、単層でも、2層以上の複数層でも良く、裏面及び/又は中間に寸法安定性、施工時の接着性の向上を目的として編物、織物、不織布、紙等を積層することも可能であること。」
(5)甲5
ア 甲5の記載
甲5には以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、床、壁、天井などの表面仕上げ材、柱や家具、キャビネット、自動車内装などの化粧材、各種造作材などに使用される木質仕上げ材用の塗料組成物に関する。及び、この塗料組成物を塗布してなる表面塗装木質材に関する。」
(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討の結果、シリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物と微粒子状物質を組み合わせることで、耐汚染性が良好で、且つ、この性能が長期間に亘って持続し、さらに、表面の滑りを抑制し、転倒や倒壊の危険性を低減可能なことを見出し、本発明に至った。
【0006】すなわち本発明は、シリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)、微粒子状物質(B)を含有することを特徴とする木質材用塗料組成物を提供する。さらに、本発明は、前記した木質材用塗料組成物の硬化塗膜が木質材表面に形成されていることを特徴とする表面塗装木質材を提供する。
(中略)
【0008】本発明のシリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)としては、インキおよび塗料等に使用されている各種シリコーン化合物の中で、活性エネルギー線照射により重合可能な官能基によって変性された化合物が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン変性不飽和ポリエステル、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン変性エポキシ(メタ)アクリレート、シリコーン変性ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等が挙げられる。この中で好ましくは(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン変性エポキシ(メタ)アクリレート、シリコーン変性ポリエステル(メタ)アクリレートである。これらシリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)は、上記化合物を単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。」
(ウ)「【0020】本発明で言う活性エネルギー線とは、電子線、紫外線あるいはγ線の如き、電離性放射線や電磁波などを総称するものである。また、紫外線を照射して硬化させる場合には、必要に応じて、紫外線の照射によりラジカルや酸を発生する光(重合)開始剤をシリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)と反応性希釈剤の合計100質量部に対して0.1~20質量部程度添加することが好ましい。」
イ 甲5記載技術
上記アより、甲5には、次の技術的事項(以下「甲5記載技術」という。)が記載されている。
(甲5記載技術)
「シリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)、微粒子状物質(B)を含有する、床などの表面仕上げ材用の塗料組成物において、活性エネルギー線は、電離性放射線であり、シリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)は、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートであり、耐汚染性が良好で、且つ、この性能が長期間に亘って持続し、さらに、表面の滑りを抑制し、転倒や倒壊の危険性を低減可能であること。」
(6)甲6
ア 甲6の記載
甲6には以下の記載がある。
(ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、床、壁、天井などの表面仕上材、或いは柱や家具、システムキッチン及びキャビネットなどの化粧材、自動車の内装材、更には各種造作の表面材などとして使用される木質仕上げ材に、耐久性、耐汚染性、耐傷付き性に優れた塗膜を形成することができる木質仕上材用塗料、及び、このような木質仕上材用塗料を最表面に塗布して耐久性、耐汚染性、耐傷付き性を高めた表面塗装木質仕上材に関する。」
(イ)「【0006】本発明の木質仕上材用塗料は、ベースポリマーがシリコーン変性ウレタン樹脂であるため、シリコーンによる撥水性が発現され、塗膜の耐汚染性、耐傷付き性、耐久性に優れる。
(中略)
【0008】本発明におけるベースポリマーのシリコーン変性ウレタン樹脂は塗工の前にポリオール成分とイソシアネート成分を混合し、硬化させる2液タイプのものでも良いが、製造の段階でポリオール成分とイソシアネート成分を反応させ、ウレタン構造を形成した1液タイプのものでも良い。ただし、1液タイプのものは塗工後、紫外線硬化又は電子線硬化が必要なため、シリコーン変性ウレタン樹脂の分子構造に2重結合を含むことが必要で、シリコーン変性ウレタン樹脂が主鎖末端及び/又は側鎖末端にアクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基を持つことが好ましい。」
イ 甲6記載技術
上記アより、甲6には、次の技術的事項(以下「甲6記載技術」という。)が記載されている。
(甲6記載技術)
「シリコーンによる撥水性が発現され、塗膜の耐汚染性、耐傷付き性、耐久性に優れる、ベースポリマーがシリコーン変性ウレタン樹脂である、床などの表面仕上材用塗料において、
ベースポリマーのシリコーン変性ウレタン樹脂はウレタン構造を形成した1液タイプのものでも良く、1液タイプのものは塗工後、紫外線硬化又は電子線硬化が必要なため、シリコーン変性ウレタン樹脂の分子構造に2重結合を含むことが必要で、シリコーン変性ウレタン樹脂が主鎖末端及び/又は側鎖末端にアクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基を持つことが好ましいこと。」
(7)甲7
ア 甲7の記載
甲7には以下の記載がある。
(ア)「【0130】
本発明の加飾樹脂成形品は、耐薬品性に優れており、低艶感が表出された意匠性を有しており、複雑な形状にも成形可能であるので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;幅木、回縁等の造作部材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。」
(イ)「【0121】
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに射出樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも射出樹脂層、基材層、プライマー層、及び表面保護層を順に有しており、当該表面保護層が、艶消し剤及び電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つプライマー層が疎水処理シリカ粒子を含有していることを特徴とする。」
(ウ)「【0090】シリコーン変性ウレタンアクリレート 電離放射線硬化性樹脂として使用されるシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、ウレタン(メタ)アクリレートの側鎖の一部をシリコーンで変性させた化合物であればよい。」
イ 甲7記載技術
上記アより、甲7には、次の技術的事項(以下「甲7記載技術」という。)が記載されている。
(甲7記載技術)
「床等の建築物の内装材として利用することができる、耐薬品性に優れた加飾樹脂成形品において、加飾樹脂成形品は、少なくとも表面保護層を有しており、表面保護層が、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物から形成されており、電離放射線硬化性樹脂としてシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートが使用されること。」
(8)参考資料1
ア 参考資料1の記載
申立人が令和5年2月20日提出の意見書で提出した参考資料1(床材の現場,可塑剤インフォメーション,可塑剤工業会,平成10年4月発行,No.9,P.5-7)には、以下の記載がある。
(ア)「ビニル系床材は塩ビ樹脂あるいは塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合樹脂を粘結材とし、これに可塑剤や充てん材、その他を加えて作ります。」(5頁左欄下から2行-右欄1行)
(イ)「〇3一般ビニル床シート
一般に長尺塩ビシートと呼ばれるもので、発泡層のないビニル床シート。学校、病院、オフィス、工場などにおける最もスタンダードな床仕上げ材の一つ。」(5頁右欄下から3行-6頁左上欄1行)
(ウ)「床材に求められる性質について、富田さんに聞いてみました。
「近年、床材では高度なデザイン性が求められており、柄のあるものが多くなっています。したがって、施工で貼り合わせる際に柄がぴたっと合わなければならず、高い寸法安定性が要求されています」と富田さん。寸法安定性はJISで規格があるのですが、東リではさらに厳しい社内規準を設定しており、0.0何%のレベルだそうです。伸び縮みを抑えるため、一般シートでは基布を貼り合わせたりし、クッションフロアなどではガラス繊維を固めたものをベースとして、さらにコーティングなどを施すのだそうです。」(6頁左下欄1-11行)
(エ)「床材では、寸法安定性の他に耐汚染性も重要です。「汚染の種類は、使われる場所によって様々です。家庭の台所では油や調味料が問題になってきますし、トイレでは耐尿性、耐薬品性、ふろの脱衣所では人体から出る汗や油などが問題となります」と富田さん。また、ゴム汚染など移行による汚れもあり、これは可塑剤の使用量が多いほど影響が出やすいそうです。表面のコーティングや、溶出しにくい可塑剤を使うことなどで対処をしているとのことでした。」(6頁右下欄7-14行)
(オ)「可塑剤の配合比は種類によって様々ですが、カチカチの硬いものというイメージがあるコンポジションタイルにも可塑剤が7%程度は入っているそうで、少し力を加えば曲げられるくらいなのです。「可塑剤の量は、求められる性質の他に、コストや加工性、耐汚染性などの兼ね合いで決まってきます」と富田さん。」(7頁左上欄13行-右上欄13行)
イ 参考1記載技術
上記アより、参考資料1には、次の技術的事項(以下「参考1記載技術」という。)が記載されている。
(参考1記載技術)
「ビニル系床材は塩ビ樹脂あるいは塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合樹脂を粘結材とし、これに可塑剤を加えて作るものであり、
一般に長尺塩ビシートと呼ばれる一般ビニル床シートは、最もスタンダードな床仕上げ材の一つであり、
床材に求められる性質について、近年、床材では高度なデザイン性が求められており、柄のあるものが多くなっており、施工で貼り合わせる際に柄がぴたっと合わなければならず、高い寸法安定性が要求されていて、
寸法安定性の他に耐汚染性も重要で、汚染の種類は、使われる場所によって様々であり、
可塑剤の配合比は種類によって様々でカチカチの硬いものというイメージがあるコンポジションタイルにも可塑剤が7%程度は入っていて、可塑剤の量は、求められる性質の他に、コストや加工性、耐汚染性などの兼ね合いで決まること。」
(9)参考資料4
ア 参考資料4の記載
申立人が令和5年2月20日提出の意見書で提出した参考資料4(長尺塩ビシート,[online],最終更新日2002/09/18,三井住友信託銀行グループ三井住友トラスト不動産,[令和5年3月15日検索],インターネット<URL:https://smtrc.jp/useful/glossary/detail/n/608>)には、以下の記載がある。
(ア)「長尺塩ビシート読み:ちょうじゃくえんびしーと
プラスチック系床材のうち、塩化ビニル系床材であって、発泡層を含んでいない、幅の広いロール状のプラスチックシートのことを「長尺塩化ビニルシート」または「長尺塩ビシート」と呼んでいる。
「長尺塩ビシート」は、ロール状であるため大きな床面の仕上げに適しており、同時に硬質で耐久性・耐摩耗性に優れている。このため、学校、病院、オフィスなどでよく使用されている。」
イ 参考4記載技術
上記アより、参考資料4には、次の技術的事項(以下「参考4記載技術」という。)が記載されている。
(参考4記載技術)
「長尺塩ビシートと呼ばれる、プラスチック系床材のうち、塩化ビニル系床材であって、発泡層を含んでいない、幅の広いロール状のプラスチックシートはロール状であり、よく使用されているものであること。」
(10)参考資料5
ア 参考資料5の記載
申立人が令和5年2月20日提出の意見書で提出した参考資料5(特開2003-113668号公報)には、以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】床面を装飾する方法としては、○1床面に床材を貼る(さらに該床材の上に床材を貼る)、○2床材にコーティング剤を塗布する、○3床材に印刷フィルムや転写フィルムを貼る、等の方法が知られている。床面を装飾する目的は、床面の保護、歩行適性や車両運行特性の向上、床面への意匠の付与、広告や各種サインの掲示等である。
【0003】上記○1の床材としては、塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート;フローリングなどの木質系材料;磁器タイルなどのセラミックス系材料;大理石、御影石、テラゾーなど石系材料;モルタルなどのコンクリート系材料;ゴムやリノリウムなどの天然樹脂系タイル及びシート、および、これらの床材上に予めワックス、フロアポリッシュ、塗料等の塗膜を設けた塗装済み床材等がある。かかる床材は概ね優れた耐久性を有するが、様々な意匠(複雑な意匠)を付与できない等、意匠性の点で必ずしも優れているとは言えない。
【0004】上記のコーティング剤を塗布する方法は、床材を使用する場合に比べて安価であるが、ワックス、フロアポリッシュ、塗料等のみでは、上記と同様に様々な意匠(複雑な意匠)を付与できない。また、着色塗料を非常に厚く塗ることで、床面上で実質的に床材を形成する、所謂、塗り床があるが、該塗り床においても、同様に、様々な意匠(複雑な意匠)を付与できない。
【0005】上記○3の印刷フィルムや転写フィルムは、通常の印刷機やインクジェットプリンター等を用いて文字や写真や各種の画像をフィルムに印刷又は転写してなるものであり、様々な意匠(複雑な意匠)を容易に付与できる。しかし、床材やコーティング剤の塗膜に比べて、著しく耐久性が劣るという欠点がある。さらにまた、意匠の保護のためには、その最上層に保護フィルム(プラスチックフィルム)を設けざるをえず、保護フィルムを通して画像を見ることになるので、画像等が暗くぼけてしまうなどの画質低下の問題もある。
【0006】上記のように、床面の装飾方法として、従来から各種の方法が提案されているが、優れた耐久性(床面の保護および歩行適性等の長期持続性)が得られるとともに様々な意匠、複雑な意匠を容易に付与でき、しかも、その意匠(画像)を長期間鮮明なまま保持できる方法は未だ確立されておらず、かような床面の装飾方法が望まれている。」
(11)参考資料7
ア 参考資料7の記載
申立人が令和6年1月9日提出の意見書で提出した参考資料7(特開2001-254504号公報)には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防滑性床材と、その製造方法に関するものであり、より詳しくは、表面が実質的に平坦,平滑であることにより清掃性に優れていながら、良好な意匠的な外観模様を付与することが可能な構成を有する防滑性床材、及びこれを製造する方法に関するものである。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】従来から、ポリ塩化ビニル(以下単に「塩ビ」という)を主体とした合成樹脂製の床面形成素材、一般的には矩形状のシート床材や、長尺状の床材が用いられており、オフィスビル、病院や学校、老人ホーム、或いは電車やバス等の車両の床材として広く使用されている。このような塩ビを主体とした合成樹脂製床材は、通常の状態で比較的滑りにくいものであるが、病院や老人ホーム、或いは電車やバス等の床面、或いは傾斜がある通路など、特に防滑性が要求される場合には、より滑り難くすることが求められるので種々の方法で床材表面の防滑性を高めるための工夫が従来からされている。
【0003】このような工夫の代表的なものとしては、例えば床材表面に深いエンボスを施してその凹凸によって高い防滑性を得る方法や、細かな砂や石等の硬度の高い粒子を床材に埋設して表面層から突起状に突出させることで高い防滑性を付与する方法、更には特開昭59-8869号公報で提案されているように、ポリウレタンや合成ゴム等の粒子を塩ビマトリックス内に分散させることでより高い防滑性を付与する方法が提案されている。」
(ウ)「【0014】また本発明の別の目的は、耐汚れ性が劣るという不具合の影響をできるだけ少なくすることができてかつ清掃性に優れた床材を提供するところにある。」
(エ)「【0035】上記構成を有する上記発明の防滑性床材は、床材表面に露出した相対的に滑り抵抗が大きくかつショアA硬度が20~90という柔軟なポリマー(B)領域の優れた防滑性と、相対的に滑り抵抗係数の小さいポリマー(A)の領域の汚れにくさとを利用できるように、上記の各領域を所定の表面積割合で散在させたことで、異なるポリマー素材が複合化して床材表面を形成し、防滑性と耐汚れ性の両方を調和して満足でき、柔軟性が良好であるため転倒しても擦過傷の恐れの無い防滑性床材が提供される。すなわち、従来のエンボス床材等とは異なり、実質的に平坦な表面を有するものでありながら、全体として滑り抵抗が大きい状態が確保され、また当該表面を含む層が柔軟である状態をも確保して、優れた防滑性と十分な安全性の確保を両立させることができる。」
(オ)【0041】本発明の防滑性床材の厚みは特に限定されないが、1.0~5mm程度が一般的である。また、床材の形状は、タイル、長尺シート等、通常の床材に使用されているものが適用できる。また、本発明の防滑性床材は表面が平滑で優れた防滑性を示すものであるが、意匠付与の目的や、より防滑性を高めるため表面に凹凸のエンボスを施すことも可能である。」
(カ)「【0049】(熱可塑性ポリマー組成物粒子の作製)上記1~5の熱可塑性ポリマー組成物を押出機またはロールを用いて厚さ1.0mmのシートを成形し、これらをパンチ網4mmの粉砕機にて破砕し、ポリマー粒子を作製した。
(実施例及び比較例の床材の作製)表1、表2の熱可塑性ポリマー組成物(A)及び(B)を、表3,表4の基材を用い、表中の混合比の条件にて実施例1~7、及び比較例1~5の床材を作製した。それぞれの床材の製造方法は、基材上に混合したポリマー粒子を必要厚さに展延して載置後、熱風オーブンにて加熱し、熱可塑性ポリマー組成物が柔軟化した状態で表面をロールで押圧し(加工温度150℃~160℃)、表面が平滑な総厚3.0mmの床材を得た。なお、これらの床材について防滑性、耐汚れ性、耐久性及び加工性の評価を行った。結果を下記表3,表4に示した。
【0050】なお、上記表中の防滑性、耐汚れ性、耐久性及び加工性は下記により評価した。また表中の基材は下記の○1~○3とした。
(基材)
○1:ポリ塩化ビニル樹脂製シート
○2:エチレン酢酸ビニル樹脂製シート
○3:ポリエステル不織布
(防滑性):歩行による官能試験で評価した。
【0051】
◎:防滑性に特に優れる
〇:防滑性に優れる
×:防滑性に劣る
(中略)
(耐汚れ性):歩行量の多い場所に1ヶ月施工し、汚れ度合を目視評価した。
【0052】
〇:汚れが目立たない
△:若干汚れが目立つ
×:汚れが目立つ」
(キ)「【0053】
【表3】
[図:0001411234000001.jpg]
」
(ク)上記(カ)の記載を踏まえると、上記(キ)の表3からは、ポリ塩化ビニル樹脂製シートの基材を用いて作成した床材について防滑性と耐汚れ性を評価したところ、防滑性が○(防滑性に優れる)、耐汚れ性が◎であった床材(実施例1)、防滑性が◎(防滑性に特に優れる)、耐汚れ性が○(汚れがめだたない)であった床材(実施例2)が得られたことが読み取れる。
(ケ)「【0055】
【発明の効果】本発明の防滑性床材は、滑り抵抗係数が0.4~0.9の領域(A)が防汚性に優れ、また、滑り抵抗係数が1.2以上の領域(B)が防滑性に優れ、これらの(A),(B)の領域がそれぞれ面として作用することで、従来得られなかった防滑性と防汚性を兼ね備えた表面特性を得ることができる。また、(B)の領域のショア硬度を20~90とすることで柔軟性に優れ、転倒時に擦過傷の虞れのない床材とすることができる。」
イ 参考7記載技術
上記アより、参考資料7には、次の技術的事項(以下「参考7記載技術」という。)が記載されている。
(参考7記載技術)
防滑性床材を、耐汚れ性が劣るという不具合の影響をできるだけ少なくすることができてかつ清掃性に優れた床材とするようにしたものであり、
床材の形状は、タイル、長尺シート等、通常の床材に使用されているものが適用でき、
より防滑性を高めるため表面に凹凸のエンボスを施すことも可能であり、
ポリ塩化ビニル樹脂製シートの基材を用いて作成した、床材。
2 本件発明1
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「化粧シート」の「熱可塑性樹脂であるポリ塩化ビニルを用いることにより形成されたシート」である「基材シート」は、技術常識を踏まえると「可塑剤を有する」ことは明らかであるから、本件発明1の「床材本体」が「含む」「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層」と甲1発明の「熱可塑性樹脂であるポリ塩化ビニルを用いることにより形成されたシート」である「基材シート」とは、「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層」の点で共通する。
イ 本件発明1の「床材本体」が「含む」「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層」と甲1発明の「化粧シート」が有する「透明性熱可塑性樹脂層」とは、「樹脂を含む」「層」の点で共通する。
ウ 本件発明1の「前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層」と甲1発明の「化粧シート」の「最表面層」であって「電離放射線硬化型樹脂を樹脂架橋することにより形成される電離放射線硬化型樹脂層であ」る「表面保護層」は、表面保護層が「電離放射線硬化型樹脂を含む組成物(塗料)を調製し、周知の塗布法で塗布す」る「形成方法」により形成されるものであるから、「塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層」の点で共通する。また、甲1発明は、本件発明1の「前記表面保護層は、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含」むこと及び「前記表面保護層に用いる樹脂としては電離放射線硬化性樹脂からな」ることに相当する構成を備えるといえる。
エ 甲1発明の「化粧シートが、プラスチックスを用いることができる被着材上に積層されてなる、床用化粧材として好適に用いることができる化粧板」は、本件発明1の「床材(但し、木材を含む床材を除く)」に相当する。
オ 本件発明1の「前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」「を含」むことと、甲1発明の「表面保護層」の「電離放射線硬化型樹脂」が「ウレタン(メタ)アクリレート」であることとは、「前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂」「を含」む点で共通する。
カ 甲1発明の「電離放射線硬化型樹脂層であ」る「表面保護層」が「Rz」を「適宜設定することができ」るように、「無機粒子」である「フィラーを含有する」ことは、本件発明1の「前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、」「防滑性粒子」を含むことに相当する。
キ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層、樹脂を含む層、塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する床材であって、前記表面保護層は、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、防滑性粒子とを含み、前記表面保護層に用いる樹脂としては電離放射線硬化性樹脂からなる、床材(但し、木材を含む床材を除く)。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
床材が、本件発明1は、「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層、形状安定化層、及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体と、前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する」とされるのに対し、甲1発明は、「熱可塑性樹脂であるポリ塩化ビニルを用いることにより形成されたシート」(「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層」)、「透明性熱可塑性樹脂層」(「樹脂を含む層」)、「表面保護層」(「表面保護層」)を備えるものの、「床材本体」が「形状安定化層」を含むものとされず、また、「透明性熱可塑性樹脂層」(「樹脂を含む層」、本件発明1の「表層」に対応)について、樹脂が「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂」と特定されず、さらに、「熱可塑性樹脂であるポリ塩化ビニルを用いることにより形成されたシート」及び「透明性熱可塑性樹脂層」は、「被着材」に「積層」されて「床用化粧材として好適に用いることができる化粧板」となる「化粧シート」が備えるものであるため、「床材本体」が「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層、形状安定化層、及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含むものとされておらず、「表面保護層」も「床材本体」が含む「表層」の上(「表層上」)に「塗布され」て形成されたものではない点。
(相違点2)
「床材」について、本件発明1は、「床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(相違点3)
「電離放射線硬化性樹脂」について、本件発明1は、「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」を含むとされるのに対し、甲1発明は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を使う示唆はあるものの、「シリコン変性」ないし「フッ素変性」がされた「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」とまでは特定されていない点。
(相違点4)
本件発明1は「表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満である」のに対し、甲1発明は、「表面保護層の最大高さRzは、JISB0601(2001)表面粗さの規格に準拠しているものであり、より好ましくは20~50μmであ」る点。
(相違点5)
本件発明1は、床材が「長尺帯状又は枚葉状に形成されてなる、」「靴底に対する防滑及び防汚用」であるのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。
(2)判断
ア 本件発明1について
本件発明1は、「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」を含む「電離放射線硬化性樹脂組成物」により形成され、「前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物」と「防滑性粒子」を含む「表面保護層」を、「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層、形状安定化層、及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体」の「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層」の上に「電離放射線硬化性樹脂組成物」を「塗布」して形成し、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する「床材」としたものである。本件発明1は、上記相違点1~3を含む本件発明1に係る発明特定事項により、本件特許明細書の段落【0012】等に示されるような防汚性及び汚染除去性に優れ、防滑性のある床材を、長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有する床材において実現することができたものであるといえる。
特に、ビニル系の素材はゴム靴底と接触した際のヒールマークが付きやすいものであるところ、本件発明1は「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層」の上に「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」を含む「電離放射線硬化性樹脂組成物」が塗布され硬化させて形成された「電離放射線硬化性樹脂組成物」の「硬化物」を含む「表面保護層」により保護してヒールマークがつきにくいものとするとともに、「表面保護層」が含む「防滑性粒子」によって滑りにくくすることで、靴底に対する防滑及び防汚用に適した、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する「床材」としたものである。
本件発明1を上記のように認識したうえで、甲1発明から出発して本件発明1とすることが当業者が容易のなし得たものであるといえるかを検討するべく、以下、甲1発明と本件発明1との相違点について検討する。
イ 相違点1について
(ア)甲1発明は、「形状安定層」を備えるものではなく、また、「透明性熱可塑性樹脂層」(「樹脂を含む層」、本件発明1の「表層」に対応)について、樹脂が「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂」と特定されていない。
そうすると、甲1発明が「熱可塑性樹脂であるポリ塩化ビニルを用いることにより形成されたシート」(「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層」)及び「透明性熱可塑性樹脂層」を備える「化粧シート」を「被着材」に「積層」して「化粧板」とするものであることから、本件発明1及び甲1発明について、積層されて完成した「床材」同士を対比して、甲1発明の「化粧シート」を「被着材」に「積層」してなる「化粧板」が本件発明1の「床材」に対応するものであり、そのうち表面保護層を除く部分が「床材本体」であると認定し得たとしても、本件発明1が「形状安定層」を備える点及び「表層が可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む」点は依然として相違点である。
そして、「形状安定層」を備える床材として申立人が提示する甲3、甲4、「表層が可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む」例として申立人が提示する甲3は、いずれも、長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有するシート状の床材であり、甲1発明において「形状安定層」を備える点及び「表層が可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む」点を周知技術として適用することは、結局、「被着材」について「化粧シート」が「積層」された際に「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものを選択することと同視できることである。この点については、下記(イ)のとおりであり、当業者が容易になし得たことであるはいえない。
(イ)下記ウにおいて相違点2について検討するように、「被着材」について「化粧シート」が「積層」された際に「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものを選択し、「化粧シート」を「被着材」に「積層」した「化粧板」が、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」することは、甲1発明から当業者が容易になし得たこととはいえず、「化粧シート」を「被着材」に「積層」した「化粧板」のうち「表面保護層」を除く部分が本件発明1の「床材本体」に相当するということもできないから、相違点1の、「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む樹脂層、形状安定化層、及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体」の「前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する」ものとすることが、当業者が容易になし得たことであるはいえない。
(ウ)上記(ア)及び(イ)において検討したことに鑑みると、仮に「形状安定化層」を備える床材、「表層が可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む」床材が周知であるとしても、甲1発明において「化粧シート」に積層する「被着材」を、「化粧板」が、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものとするとともに、さらに「形状安定層」を備え、「表層が可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む」ものとすることが当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 相違点2について
上記相違点2について検討する。
(ア)甲1は、「被着材」について「限定的でなく」、「木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラス等が挙げられ」る(上記1(1)ア(ケ)段落【0100】)旨記載されるものの、「被着材」が「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するか否かは不明である。
(イ)甲1には、「被着材は、限定的でなく、公知の化粧シートと同様のものを用いることができる。」と記載される(上記1(1)ア(ケ)段落【0100】)。当該記載は、文理上、「被着材」として「公知の化粧シートと同様のもの」を用いることができると解釈することもでき、このように解釈した場合、甲1発明の「化粧板」は、甲1発明の化粧シートと公知の化粧シートとを積層したものとなり、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する蓋然性が高いといえる。しかし、甲1が背景技術として明示するように、「化粧シートは、表面の保護、装飾等を目的として、木質板、プラスチック板等の表面に貼着して用いられ」ることが技術常識であり、化粧シート同士を積層して用いるものではない。そうすると、この「被着材は、限定的でなく、公知の化粧シートと同様のものを用いることができる。」との記載は、公知の化粧シートが積層される被着材と同様の被着材を、甲1発明の化粧シートを積層する被着材として用いることができると解釈するのが自然である。そうすると、段落【0100】の記載を考慮しても、依然として、「被着材」について「化粧シート」が「積層」された際に「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」することについて甲1に記載ないし示唆されているとはいえない。
(ウ)甲1が先行技術文献として提示する参考資料7には、従来の技術として、塩ビを主体とした合成樹脂製床材は、電車やバス等の床面等、特に防滑性が要求される場合があることが示されており、また、参考7記載技術は、ポリ塩化ビニル樹脂製シートの基材を用いて作成した床材を、耐汚れ性と防滑性とを有するものとするものであるといえる。しかし、参考資料7において防滑性と防汚性とを兼ね備えた床材は、床材表面の2のポリマーの性質と表面積割合を特定したことによって防滑性と防汚性とを兼ね備えることを開示するものであり、化粧シートを被着材と積層して長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有する床材を得ることについて参考資料7に記載ないし示唆されるものではないから、甲1が参考資料7を先行技術文献として挙げており、参考7記載技術が長尺シート等とすることを示しているとしても、そのことをもって、甲1発明の「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られる化粧板を「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」することが記載ないし示唆されているとはいえない。
(エ)申立人は、「床材」が「床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」することについて、参考資料1、5を示して下記(3)に述べる主張をしている。しかし、参考資料1、5については以下のa、bにおいて検討するとおりであり、参考資料1、5のいずれにも、「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られる化粧板を「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものとすることについて、記載ないし示唆があるとはいえない。
a 参考資料1には、塩化ビニルからなる床材が記載されている。参考資料1において、塩ビ床材としては、「コンポジションタイル」のような半硬質タイプのものと、「一般ビニル床シート」等が並列して挙げられる。このうち「一般ビニル床シート」等が「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものであることが技術常識であるとしても、そのような床材が「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られることについては、参考資料1に記載も示唆もない。
b 参考資料5は、段落【0003】において「○1の床材」、すなわち、「床面」に「貼る」「床材」として「塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート」と「フローリングなどの木質系材料」をともに周知の材料として列記しており、この記載から「床面」に「貼る」「床材」として「フローリングなどの木質系材料」に代えて「塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート」を選択可能な場合があることは理解できる。しかし、上記のとおり、「塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート」及び「フローリングなどの木質系材料」は、床面に施工される「床材」として示されるのみであって、「化粧シート」の「被着材」として「木質系材料」と「塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート」とが列記されるものではない。
c 参考資料5の段落【0002】の「さらに該床材の上に床材を貼る」との記載は、文字どおり「床材」の上に「床材」を貼ることを示すのみであって、例えば、改修等の際に、床面に貼られた床材を床面と同視してその上にさらに「床材」を貼ることを示していると認められ、この記載によって、床材が「化粧シート」と積層する「被着材」として「塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート」と「フローリングなどの木質系材料」を示しており、「塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート」と「フローリングなどの木質系材料」とがいずれも「化粧シート」と積層する「被着材」として周知であって置換可能であるといえるものではない。
(オ)以上のとおり、「化粧シート」と積層する「被着材」を、積層された際に「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものとすることは、甲1に記載ないし示唆されているとはいえず、また、申立人が提示したいずれの文献にも記載されておらず、周知技術であるともいえないから、甲1発明において、「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られる化粧板を「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものとし、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
エ 相違点3について
甲1発明において表面保護層の樹脂として挙げられるウレタン(メタ)アクリレート樹脂について、防汚性向上のために「シリコン変性」ないし「フッ素変性」がされた「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」とすること自体は、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。
しかし、本件発明1において「表面保護層」は、「床材本体」が有する「表層」の上、すなわち「表層上」に「塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された」ものであるから、本件発明1の構成とするためには、甲1発明の「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られる化粧板を「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものとし、その上でさらに、表面保護層の樹脂について、「シリコン変性」ないし「フッ素変性」がされた「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」とすることが必要である。
この前段の点について、上記イ及びウにおいて検討したように当業者が容易に想到し得たといえるものではなく、その上でさらに、表面保護層の樹脂について、「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」とすることも、当業者が容易になし得たことではない。
オ 相違点4及び5について
上記イ~エにおいて検討したとおり、相違点1~3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易になし得たものではないから、相違点4、5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明から出発して当業者が容易になし得たものではない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人の主張
相違点2(「床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものである点)について、申立人は、令和4年12月28日付け意見書(以下「申立人意見書」という。)において、参考資料1及び5を示し、概略以下の主張をする
(ア)甲1の段落【0100】には、「被着材は、限定的でなく、公知の化粧シートと同様のものを用いることができる」と記載され、甲1発明の被着材は限定的ではないことから、実施例で用いられている被着材(中密度木質繊維板(MDF)に代えて、参考資料1に記載されている一般ビニル床材シート(長尺塩ビシート)にすることに疎外要因は存在しない。
(イ)参考資料5の従来技術の欄の段落【0002】【0003】には床材を装飾する方法として「〇1床面に床材を貼る(さらに該床材の上に床材を貼る)方法が知られている」ことが記載され、「上記○1の床材としては、塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート;フローリングなどの木質系材料;・・・および、これらの床材上に予めワックス、フロアポリッシュ、塗料等の塗膜を設けた塗装済み床材等がある。」と塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート;フローリングなどの木質系材料が被着材として同列に記載されていることから判るように、化粧シートを張る床材の被着材として、塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート;フローリングなどの木質系材料が用いられることは周知技術である。
イ 主張の検討
(ア)上記ア(ア)について
甲1及び参考資料1の記載については、上記(2)ウにおいて検討したとおりであり、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する床材が周知であるとしても、甲1発明の「被着材」として「化粧シート」と積層された際に「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものを選択することが当業者が容易になし得たこととはいえない。
(イ)上記ア(イ)について
参考資料5の記載については、上記(2)ウ(エ)において検討したとおりであり、「塩化ビニルなどの樹脂系タイル及びシート」と「フローリングなどの木質系材料」とは「化粧シート」を積層する「被着材として同列に記載されている」とはいえないから、当業者が参考資料5に接したとしても、甲1発明の「被着材」として「化粧シート」と積層された際に「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものを選択することが当業者が容易になし得たこととはいえない。
(4)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2~4
本件発明2~4は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに他の構成を追加して限定したものであるから、上記2と同様の理由により、甲1発明、甲第3号証に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700558