2019-700246
加飾シート及び加飾樹脂成形品
- 審判番号
- 2019-700246
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-066933外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年04月01日
- 審決日
- 2019年05月31日
- 公報発行日
- 2019年07月26日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
特許第6398259号の請求項1~8に係る特許についての出願は,平成26年3月27日に出願され,平成30年9月14日にその特許権の設定登録がされ,平成30年10月3日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,平成31年4月1日に特許異議申立人渡辺寛(以下「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第6398259号の請求項1~8の特許に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】熱融着層を有する加飾シートを加熱により軟化させ、前記加飾シートを成形樹脂の形状に追従させて成形しながら、前記熱融着層を前記成形樹脂に熱融着させて、前記加飾シートにより前記成形樹脂が加飾された加飾樹脂成形品を製造するオーバーレイ法に用いられる加飾シートであって、前記加飾シートは、少なくとも、基材層と、熱融着層とが積層された積層体からなり、前記積層体の厚みが、215~400μmの範囲にあり、続きを表示(全24行)前記熱融着層のガラス転移温度が、65~85℃の範囲にある、加飾シート。【請求項2】表面保護層をさらに有する、請求項1に記載の加飾シート。【請求項3】装飾層をさらに有する、請求項1または2に記載の加飾シート。【請求項4】前記熱融着層と、前記基材層と、表面保護層とがこの順に積層された積層体からなる、請求項1~3のいずれかに記載の加飾シート。【請求項5】前記基材層と前記表面保護層との間に、プライマー層及び装飾層の少なくとも一方が積層された積層体からなる、請求項4に記載の加飾シート。【請求項6】前記熱融着層と、装飾層と、前記基材層とがこの順に積層された積層体からなる、請求項1に記載の加飾シート。【請求項7】請求項1~6のいずれかに記載の加飾シートの前記熱融着層が、成形樹脂層に積層されてなる、加飾樹脂成形品。【請求項8】以下の工程1~5を備える、加飾樹脂成形品の製造方法。工程1:請求項1~6のいずれかに記載の加飾シートの前記熱接着層を、前記成形樹脂に対向させ、チャンバー内が前記加飾シートを介して気密に分割されるようにして、前記加飾シートと前記成形樹脂とをチャンバー内に配置する工程工程2:前記加飾シートを介して分割された前記チャンバー内の一方側と他方側とが同一圧力となるように前記チャンバー内を減圧し、かつ、前記チャンバー内の前記加飾シートを加熱して軟化させる工程工程3:前記加飾シートを介して分割された前記チャンバー内の前記成形樹脂とは反対側の減圧を解除して、加熱により軟化した前記加飾シートを前記成形樹脂の形状に追従させて成形する工程工程4:前記加飾シートと前記成形樹脂とを前記熱融着層を介して熱融着させる工程工程5:前記加飾シートを介して分割された前記チャンバー内の前記成形樹脂側の減圧を解除して、加飾樹脂成形品を取り出す工程」
第3 申立ての理由の概要
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申立人は,以下の甲第1~2号証(以下「甲1」等といい,甲1に記載された発明を「甲1発明」という。)を提出し,次の取消理由を主張している。
本件発明1~8は,甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1~8に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1.甲1発明
甲1の【請求項9】,【請求項10】,【請求項15】,段落【0001】,【0010】,【0026】等の記載を総合すると,甲1には次の甲1発明が記載されていると認められる。
「TOM工法において基体をオーバーレイするために使用される多層加飾フィルムであって,多層加飾フィルムは,ハードコート層(A),ベースフィルム層(B),接着層(D)及びハードコート層(A)と接着層(D)との間の意匠層(C)を有する多層フィルムであり,接着層(D)が,少なくとも40℃より高い融点又はガラス転移温度を有し且つ200μm以下の粒子寸法を有し固体の表面不活性化された少なくとも1つのポリイソシアネート(D1)及び少なくとも1つのイソシアネート反応性ポリマー(D2)を有する,多層加飾フィルム。」
2.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると,両者は,少なくとも次の相違点1で相違している。
(相違点1)本件発明1は,オーバーレイ法に用いられる加飾シートについて,積層体の厚みが215~400μmの範囲にあり,熱融着層のガラス転移温度が65~85℃の範囲にあるのに対し,甲1発明は,TOM工法において基体をオーバーレイするために使用される多層加飾フィルムについて,多層フィルムの厚みが特定されておらず,接着層(D)のガラス転移温度も不明である点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
オーバーレイ法に用いられる加飾シートについて,積層体の厚みを215~400μmの範囲とし,かつ,熱融着層のガラス転移温度を65~85℃の範囲とすることは,甲1及び甲2のいずれにも記載されておらず,本件特許の出願前における周知技術でもない。
そして,本件明細書の段落【0008】,【0013】,【0021】及び【0080】~【0082】等の記載によれば,本件発明1は,上記相違点1に係る構成を備えることにより,オーバーレイ法による成形時の高い密着性に加えて,成形後に高温に晒された場合にも高い密着性を有するという有利な効果を奏するものである。
したがって,甲1発明において,上記相違点1に係る構成に当業者が容易に想到し得るとはいえない。
(3)特許異議申立書における申立人の主張について
申立人は,特許異議申立書において,本件発明1と甲1発明の相違点は「前記積層体の厚みが、215~400μmの範囲にあり」の1点である旨主張している。
しかしながら,甲1発明は,接着層(D)に含まれる「200μm以下の粒子寸法を有し固体の表面不活性化された少なくとも1つのポリイソシアネート(D1)」が,「少なくとも40℃より高い融点又はガラス転移温度」を有してはいるものの,そのポリイソシアネート(D1)と反応するイソシアネート反応性ポリマー(D2)も含む,接着層(D)そのもののガラス転移温度は不明なものであるから,本件発明1と甲1発明は,上記相違点1で相違するものである。
よって,申立人の上記主張は採用できない。
また,申立人は,特許異議申立書において,甲1発明に「真空成型用シートの厚さ220~270μm」という甲2記載事項を組み合わせる動機付けの説明にあたって,本件発明1における厚みの限定は,他の発明特定事項とは互いに機能的又は作用的に関連しておらず,本件発明1は各事項の単なる寄せ集めである旨主張している。
しかしながら,本件明細書の段落【0078】~【0082】に示された実施例1~6及び比較例1~4の評価結果の比較から理解されるとおり,本件発明1の「積層体の厚みが、215~400μmの範囲にあり」との事項は,「熱融着層のガラス転移温度が、65~85℃の範囲にある」との事項と併せて初めて,オーバーレイ法による成形時の高い密着性に加えて,成形後に高温に晒された場合にも高い密着性を有するという有利な効果をもたらすものであるから,本件発明1は両事項の単なる寄せ集めではない。
よって,申立人の上記主張は採用できない。
なお,前述のとおり,本件発明1と甲1発明は,上記相違点1で相違するものであるから,仮に,甲1発明に「真空成型用シートの厚さ220~270μm」という甲2記載事項を組み合わせたとしても,上記相違点1に係る構成には想到し得ない。
(4)小括
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3.本件発明2~6について
本件発明1を引用する本件発明2~6も,甲1発明と少なくとも上記相違点1で相違するものであるから,本件発明1と同じ理由により,甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4.本件発明7について
本件発明1~6が甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明1~6のいずれかの熱融着層が成型樹脂層に積層されてなる加飾樹脂成形品である本件発明7も,同様に,甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5.本件発明8について
本件発明1~6が甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明1~6を用いた加飾樹脂成形品の製造方法である本件発明8も,同様に,甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおり,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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