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商標異議申立

2023-900192

審判番号
2023-900192
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2021-052961
登録番号
6711392
請求日
2023年08月30日
審決日
2025年03月27日
公報発行日
2025年08月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】カシオ計算機株式会社
  • 【権利者代理人】弁護士法人窪田法律事務所
  • 【異議申立人】シチズン時計 株式会社
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 板谷 玲子
  • 審判官 鈴木 雅也
  • 審判官 馬場 秀敏
分類
T1651.13 -Y (W14) / T1651.17 -Y (W14) / T1651.941-Y (W14)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、商標法第4条第1項第18号、商標法第3条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

登録第6711392号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6711392号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 1 本件商標 本件登録第6711392号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、第14類「腕時計」を指定商品として、令和3年4月28日に立体商標として登録出願、同5年5月23日に登録審決、同年6月26日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項の要件を満たしておらず、かつ、同法第4条第1項第18号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。 (1)本件商標について 本件商標は、(ア)八角形状のベゼル(その中央には長方形状の枠がある。)を有し、左右に凹凸部やボタンを設けた時計ケースと、(イ)その上下につながる、横方向に連続した溝を有するバンド(各部位の表面に2個ずつ穴を設けている。)を組み合わせた立体的形状からなるものである。 よって、本件商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本件商標は、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるものではなく、自他商品識別力の獲得がなされていないものであり、同法第3条第2項に該当するに至っていない。 (2)商標法第3条第1項第3号該当について 本件商標の指定商品「腕時計」は、一般的に、文字盤などの表示部を囲むベゼルを備えた時計ケースと、それにつながるバンドにより構成されるものであるところ、本件商標は、構成全体として、比較的角張ったデザインの、ベゼルの中央部に時刻表示部を設けた腕時計の形状を表してなると看取できる。 そうすると、本件商標は、いずれの構成要素も、その指定商品と関連して、商品等の機能又は美観に資することを目的として採用される、又はその機能又は美感上の理由から採用すると予測される範囲のものにすぎないから、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえる。したがって、本件商標は商標法3条1項3号に該当する。 審査便覧においては、「立体的形状が、商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる場合は、特段の事情のない限り、商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断する。」として、識別力を有するものとは認められない具体例として、カメラとともに腕時計が挙げられており、機能的な形状の典型例とみられる。 また、「立体的形状が、通常の形状より変更され又は装飾を施される等により特徴を有していたとしても、需要者において、機能又は美感上の理由による形状の変更又は装飾等と予測し得る範囲のものであれば、その立体的形状は、商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められ、特段の事情のない限り、商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断する。」として、装飾的な要素があるとしても予測の範囲である場合には登録できない典型例として、文字盤の形状及び位置にデザイン性がある腕時計が具体例として挙げられている。これらの例示から、機能的であり、かつファッションの要素もあるため装飾について配慮されるのが当然である腕時計の立体形状は、識別力を認めることができない最たるものと考えられる。 これまで文字なしで商標登録された立体的な商品形状は、人形、ロボット、動物などの形が非常に多いが、本来的識別力を認められた機能的な形状としては、形状自体がシンプルながら特徴的で、文字商標がなくても一目でブランドが想起されるものである。 このうち「時計」の立体商標は、時計の部分であるリューズプロテクターの形状である。この立体商標と類似の形態の使用について、商標権侵害及び不正競争防止法に基づく差止め請求がされた事案では、リューズプロテクターの形状について、「ケース側面に、リューズを覆うように、リューズプロテクターが取り付けられている点、リューズプロテクターは、半円形の弦の中央部を長方形にくり抜いたブリッジ形であり、長方形にくり抜かれた部分にリューズがはめ込まれるような形で配置されている点」などに形態上の特徴があり、「機能面から必然的に選択される形状であると解することはできない」として商品等表示性(識別力)が認められ、その使用実績により周知性も認められている(東京地判平成16.7.28裁判所ウェブサイト参照)。 「時計」についての立体商標の権利であっても、本件商標のように全体形状に係るものではなく、プロテクターといっても機能的な観点から必然的な形状ではなく装飾的な観点から変更可能な形状であれば、同一又は類似の形状の回避も容易であり、独占適応性はあるといえる。 (3)商標法第3条第2項非該当について ア 商標法第3条第2項適用例を参考に本件商標について見ると、著名性はなく、従来品の同種商品の形状とは全く違う特異性があるものでもなく、長年同一の形状で独占的に販売されてきたものでもない。また、本件商標は、同法第3条第2項適用で登録が認められる多くの立体商標に共通するシンプルで記憶しやすい形状ともみられない。 イ 商標法第3条第2項の趣旨 三浦葉山牛事件の判旨より、商標法第3条第1項第3号に該当するにかかわらず同法第3条第2項適用により登録を認められる商標は、「他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合」であって、「当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている」状態となっている必要があると解される。しかしながら、本件商標については、同業他社の他人の使用状況から明らかなように、本件商標と類似の形状の腕時計は本件商標権者のみが独占排他的に使用してきたとはいえず、また、同業者が本件商標権者の独占使用を容認しているという状態にもない。 ウ 本件商標と使用商標の同一性 商標審査基準によれば、文字商標が含まれる立体商標について商標法第3条第2項の適用が認められるのは、「使用商標中に、出願商標以外の標章が含まれているが、出願商標部分が独立して自他商品・役務の識別標識として認識されると認められる場合」である。 本件使用商標には、強い識別力を発揮するハウスマーク「CASIO」と著名商標である「G-SHOCK」が時刻表示部の上下に白抜き文字で顕著に付されている。 本件商標は、商品自体の形状であるが、文字商標が識別力を発揮しているとみられる場合、形状自体が識別力を発揮していると判断することはできない。 エ 形状自体の識別力 米国のトレードドレス(商品又は商品の包装の外観、店舗外観)についての裁判例によれば、商品の包装は本来的に識別力を認められ得るものであるが、商品自体の形状については、セカンダリーミーニング(使用により生じた二次的意味)を獲得した場合のみ保護される。 我が国において、形状のみからなる立体商標、中でも商品自体の形状については、独占適応性の観点から、選択の自由度が高い商品包装とは別の基準で判断すべきである。 オ G-SHOCK商品の多様性 本件商標の立体形状に係るG-SHOCKのオリジナルモデルは、1983年に発売された後、数多くの後継モデルが登場しており、ベゼル及びバンドの形状も多種多様であることが確認できる(甲4、甲5)。 これらに紹介されているモデルを、おおまかな形状ごとに分類すると、本件商標の立体形状である(ア)八角形状のベゼル及びその中央に矩形のデジタル表示部を有し、左右に凹凸部やボタンを設けた時計ケース、(イ)横方向に連続した溝を有するバンド(各部位の両端付近には円形のくぼみを有する。)を組み合わせた立体的形状を有するものは、わずかに10種類のみである(甲6)。 その他は、時刻表示が文字盤と針によるアナログ表示であるタイプの32種、略円形状のベゼルを有するタイプの18種、及び左右非対称のベゼルを有するタイプの14種に分類される(甲6)。 これらは、本件商標の立体形状における矩形のデジタル表示部は有さない、円形状のベゼルを有する他、デジタル表示部の形状は矩形となっておらず多様な形状である、外側に特徴的なボタンが突出するなど左右非対称のベゼル形状であるなど、本件商標の立体形状とは全く異なるものの、いずれも「G-SHOCK」の文字が前面に顕著に表示されているものである。 すなわち、一口に「G-SHOCK」といっても多種多様なモデルが存在しており、本件立体形状と本件商標権者のG-SHOCK商品との結びつきは強固なものではない。 カ 同業他社の類似の形状 ベゼルの形状を八角形とすること、その中央に矩形のデジタル表示部を設けることは、ベゼルの上下に円形のくぼみの装飾を設けること、バンドの各コマに2つずつ円形のくぼみの装飾を設けること、側面に凹凸を設けることは腕時計としてはありふれたデザインであって、同業他社による類似の形状を持つ腕時計を示す(甲7~甲9)。 したがって、本件商標の立体形状は、腕時計の機能又は美観を向上させるために普通に使用されているデザインからなるものであって、このような立体形状に保護を与えることは、同業他社が類似の形状を使用することを不当に制限し、その創作意欲を過度に委縮させるものであるから、独占適応性がないものである。 キ 需要者の認知 商標法第3条第2項の商標審査基準では、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、何人かの出所表示として、その商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されているものをいう、としている(知財高判平成27.7.16平27(行ケ)10003参照)ところ、本件商標の拒絶査定不服審判(不服2022-11052、以下「本件不服審判」という。)において提出されたアンケート調査(以下「本件アンケート調査」という。)結果をもって、全国的に認識されていると判断できるかは疑問である。 ク 独占不適応について (ア)商品の包装の立体的形状との比較 立体的形状のうち独占適応性が低く商標法第3条第1項第3号に該当するとされるものには、指定商品自体の形状と、その包装の形状とがある。いずれも同法第3条第2項を充足すれば登録が可能であるが、この両者の独占適応性は全く異なることに留意しなければならない。 商取引の本質的な目的物は商品の包装ではなく商品であるから、商品自体の形状の独占は包装形状の独占の場合と異なり、競業者に対して商品の本質的部分で類似形状の使用を禁ずるという全くレベルが異なる不利益を及ぼすものであり、独占適応性が極めて低いというべきである。 つまり、包装用容器についての権利は、包装する中味には及ばないので、包装を変更することで対処可能な場合が考えられるが、商品自体の形状については他人の商品形状の選択の余地を直接狭める結果となるものである。 すなわち、商品自体の立体的形状である本件商標の独占適応性は、過去の登録例である容器形状の事案と比べて低いというべきであり、これと同列に並べて安易に識別力を認めるべきではない。 (イ)腕時計という商品の特性 本件指定商品の腕時計は、時を知らせるという実用性を有する身飾品であり、機能と美観の両方が要求されるという特異な性質を持つ商品である。 このことから、機能と美観を追求した腕時計の形状の独占は競業上の弊害が大きく、独占適応性が低いというべきである。 (ウ)本件使用商品の特異的とされる部分は内部構造であること 審決において、本件商標の特異性について「その形状は、従来の腕時計にはない、耐衝撃性を備える独特の形状からなると評価されている」と認定されたが、本件商標に相当する形状を備える本件商標権者商品について、耐衝撃性を備える独特の構造と評価されているのはその外観的な立体的形状ではなく、その内部構造である。 (エ)耐衝撃性そのものは特異でないこと 本件商標権者によるG-SHOCKの革新性の主張には、「衝撃に弱く、壊れやすい」という腕時計の常識を覆し、腕時計に対する価値観を一新しました。」(本件不服審判、甲159)や「落としても故障しない「常識を覆す腕時計の開発」を開始」し、「建物3階のトイレの窓(約10m)からの落下実験」を繰り返した(本件不服審判、甲7)などの記載が度々登場し、このことが本件商標の特異性の評価として本件審決で採用されているように見受けられるため念のため明らかにするが、このような耐衝撃時計というものは全く特異ではない。 1933年ないし1938年頃のスイスでは、既に多くの耐振装置が発明され腕時計に搭載されていて、日本では、1956年(昭和31年)シチズン時計が、独自開発したシチズン「パラショック」を発売しており、1956年より耐衝撃性の公開実験として大阪御堂筋においてヘリコプターで30mの高さから当該装置の腕時計10個を落下させその性能テストを実施し、その様子は、新聞、テレビ等多くのマスコミに取り上げられた。 その後も、京都、神戸、仙台、鹿児島等主要都市で公開実験を行った(甲10)。また、時計のケース外面に凹凸を有する樹脂を用いて衝撃に対する強度を高めるというアプローチも初代G-SHOCK発売前の1982年当時の製品では一般的で(甲7)、このように耐衝撃性そのものはG-SHOCK発売時である1983年当時としては既に革新的なものではなく、革新的であったと評価されているのは、ケース内でモジュール自体を浮かせるように配置したという従来の耐衝撃性獲得手段とはアプローチの異なる特定の内部構造である。よって、耐衝撃時計という概念がG-SHOCKによってもたらされたような評価を本件立体的形状の特異性の評価として採用するべきではない。 (オ)本件商標が特に機能と結びついた形状であること 本件商標は、腕時計の中でも特に実用的機能のために生まれたデザインであることは本件商標権者も認めているところであり、本件商標の特徴とされている大きなベゼルに保護されつつ視認性に優れた表示面や、ボタンを保護しつつ操作性を叶える側面のザグリや、屈伸性に優れた蛇腹状のラバーバンドなどはいずれも、機能性を追求して選択されたものである。 このことは本件不服審判審決中の「「柔」と「堅」の要素が見事に融合した一切無駄のないスクエアデザインは、耐衝撃だけを追求することでたどり着いた究極の機能美となった。」(甲77)や2014年5月19日付の読売新聞(審査時意見書、甲156)の「「壊れない」という目的のためだけに無駄な機能や装飾をそぎ落とし、試行錯誤を重ねた。その末に時代を超えるデザインが生まれた」の記載からも明らかである。 このような立体的形状は商標としての自他商品識別機能の前にまず実用のための機能として存在しており、独占が競業者に与える影響も大きく、また特許法や意匠法との関係からも商標法による独占に適さない。 本件商標権者は、審査段階の意見書で米国においてカルティエの高級腕時計のデザインが使用による識別力(セカンダリーミーニング)を獲得が認められた事例をあげて本件と比較をしたが、米国においても機能的な形状については機能性が認められる限りセカンダリーミーニングの獲得が全く意味を持たないとされている。 本件立体的形状は、本件商標権者の述べるとおり、機能に基づく形状であり、外観に影響する部分に関する実用新案出願昭63-12729、昭63-44784、昭59-98387が行われていることから、仮に耐衝撃性が高い本件立体的形状にG-SHOCKを想起させるセカンダリーミーニングが備わったとしても、本件商標権者の挙げた米国の裁判例と比較するべきではなく、これを識別力として認めるべきではない。 また、本件商標権者は、G-SHOCKのごつごつしたデザインの機能性を広告しているため、使用商標には機能性をかけ橋としたセカンダリーミーニングが備わることが想定される。 つまり、需要者がごつごつした腕時計の立体形状を見る、機能的な立体形状から機能性・耐衝撃性を想起する、機能性・耐衝撃性からさらにG-SHOCKを想起する、という想起が考えられるが、このようなセカンダリーミーニングは機能性に基づくセカンダリーミーニングであるため、このプロセスで立体形状がG-SHOCKと識別されたとしても、独占適応性を乗り越える識別力と認めるべきでない。 (カ)本件商標に特異性がないこと 本件商標は、70年代から80年代にかけて時計業界で流行した意匠を組み合わせて創作されたものであり、特異性に欠けるものであり、70年代から80年代風をイメージしたり、当時の自社製品を復刻するために意匠を選択する競業者らに与える影響からも独占適応性に欠けるというべきである。 本件商標と類似する特徴を有する現行製品(甲7)は、G-SHOCKと現在市場で共存して販売されており、本件商標に実質的に同一の形状のものから類似とされる可能性のあるものまで様々あるが、本件商標の禁止権の範囲に含まれてしまう可能性のあるものが市場に多数存在する。 また、80年代の製品を製造する競業者もあり、本件商標がもともと80年代初頭に流行していたデザインを使用している以上、本件商標は流行と無関係に創作されたデザインに比べて独占に適さない。 以上のとおり、本件商標が有効であるとすると、既にパブリックドメインとなっている範囲で、今後の他社腕時計の意匠の創作を阻害する結果となる。 市場に類似製品が多数存在し、混同のおそれが認められる類似範囲やどこに識別力が認められているのかが不明確であり、今後80年代の製品の復刻が行われる可能性もある状態で、過失の推定規定や刑事罰の規定のある強力な商標権を認めることには大きな危険がある。 (4)商標法第4条第1項第18号該当性 本件商標は、たとえ商標法第3条第2項に該当する立体形状であっても、商品「腕時計」の性質から通常備える立体的形状のみからなるものであり、また、前記のとおり、「腕時計」の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなるものであるから、同法第4条第1項第18号により登録は認められない。 3 当審の判断 (1)商標法第3条第1項第3号該当性について ア 本件商標は、別掲のとおり、(ア)八角形状のベゼル(その中央には長方形状の枠がある。)を有し、左右に凹凸部やボタンを設けた時計ケースと、(イ)その上下につながる、横方向に連続した溝を有するバンド(各部位の表面に2個ずつくぼみを設けている。)を組み合わせた立体的形状からなるものである。 イ そして、本件商標の指定商品「腕時計」は、一般的に、文字盤などの表示部を囲むベゼルを備えた時計ケースと、それにつながるバンドにより構成されるものであるところ、本件商標は、構成全体として、比較的角張ったデザインの、ベゼルの中央部に時刻表示部を設けた腕時計の形状を表してなると看取できる。 ウ そうすると、本件商標の上記形状は、その指定商品との関係より、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用される、又はその機能又は美感上の理由から採用されると予測される範囲のものにすぎないから、通常採用し得る形状の範囲を超えているとは認識し得ないので、全体としてその商品の形状の一形態を普通に用いられる方法で表示する立体的形状のみからなる商標といえる。 したがって、本件商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。 (2)商標法第3条第2項該当性について ア 本件不服審判によれば、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものの、本件商標と同一視できる形状からなる商品の販売実績及び本件アンケート調査等に基づき、同条第2項の要件を具備するものと認定、判断されている。 イ 申立人は、本件アンケート調査方法に懸念を示すなどし、その結果について疑問である旨述べているが、種々主張をするのみで、客観的に、この結果を覆さなければならない具体的な理由及び証拠の提出はない。 そして、本件アンケート調査は、a)調査対象者は、日本全国に居住する16歳以上の男女の1,100人、b)調査方法は、インターネットによるアンケート調査であり、c)導入質問の後に、本件商標に相当する画像を示して、思い浮かぶブランドやメーカーなどを自由回答式で尋ね、次に同様の質問を多肢選択式で尋ねる方式で行われたとされる。 そうすると、本件アンケート調査の上記方法及び当該調査に基づく回答内容(本件商標権者又はその関連商品(カシオ、G-ショックなど)を回答したのは、自由回答式で55.09%、多肢選択式で66.27%)については、これを否定するといえるまでの疑義があるとはいえない。 加えて、本件における商標法第3条第2項該当性については、本件アンケート調査の結果のみに基づくものではなく、商品の販売期間、販売数量等の販売実績及び広告宣伝等の実情をも踏まえ、総合して判断したものであるところ、これを覆すような事実は見いだせない。 ウ また、本件商標権者の業務に係るG-SHOCK歴代モデル一覧(甲6)によれば、横と縦の比率が異なる八角形状のベゼル(その中央には時刻等表示部がある。)を有する時計として、ややバリエーションがあるものの、1983年4月のモデルから2018年のモデルに至る10種類において当該ベゼルについては一貫してほぼ同一として見て差し支えない程度に酷似するデザインがなされていることが認められ、同業他社による商品形状(甲7~甲9)には、部分的に比較すれば類似する形状があるとしても、本件商標の上記(1)アの形状を全て兼ね備えた商品は見あたらない。 エ そうすると、本件不服審判が本件商標は商標法第3条第2項の要件を具備するものと認定、判断した根拠となった事実関係を変更すべき事情はないというべきであるから、本件商標に相当する立体的形状は、本件商標権者による使用の結果、需要者が何人か(本件商標権者)の業務に係る商品であることを認識することができるものであり、本件商標は同法第3条第2項の要件を具備するものと判断するのが相当である。 (3)商標法第4条第1項第18号該当性について 本件商標は、上記(1)アのとおりの構成からなるところ、同業他社の業務に係る腕時計には、部分的に比較すればこれらの構成と類似する形状があるとしても、全体として同一視できるようなものは見あたらず、それぞれの商品において、本件商標に係る上記各構成とは異なる形状が認められる(甲7~甲9)ことからすれば、本件商標の形状が、その商品が当然に備える立体的形状(商品等の性質から通常備える立体的形状、商品等の機能を確保するために不可欠な立体的形状)のみからなる商標とはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第18号に該当しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、同法第3条第2項の要件を具備しており、かつ、同法第4条第1項第18号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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