特許異議申立
2024-700514
開閉支持装置並びにこの開閉支持装置を用いた事務機器
- 審判番号
- 2024-700514
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-036000
- 登録番号
- 7390763
- 請求日
- 2024年06月03日
- 審決日
- 2026年03月12日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ナチュラレーザ・ワン
- 【権利者代理人】伊藤 捷雄
- 【権利者代理人】小林 慶哉
- 【権利者】キャノン株式会社
- 【権利者代理人】伊藤 捷雄
- 【権利者代理人】小林 慶哉
- 【異議申立人】下西技研工業 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人ブライタス
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 東松 修太郎
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P1651.121-YAA(G03B) / P1651.536-YAA(G03B) / P1651.537-YAA(G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条、特許法第126条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7390763号発明「開閉支持装置並びにこの開閉支持装置を用いた事務機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7390763号の明細書及び特許請求の範囲を、それぞれ訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7390763号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7390763号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和5年3月8日の出願であって、同年11月24日にその特許権の設定登録がされ、同年12月4日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 6月 3日 :特許異議の申立て(請求項1~5に対して)
(特許異議申立人:下西技研工業株式会社(以下「申立人」という。))
同年 8月 1日付け:取消理由通知書
同年10月 7日 :意見書の提出(特許権者)
同年11月12日 :特許権者との面接
同月29日 :特許権者との面接
令和7年 2月17日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 4月22日 :期間延長請求書、意見書の提出(特許権者)
同月30日 :意見書の提出(特許権者)
同年 6月16日 :上申書の提出(特許権者)
同月27日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 8月29日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年10月 2日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和7年10月2日付けの通知書において、申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は応答しなかった。
以下、令和7年8月29日に提出された訂正請求書を、「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正について
1 本件訂正の請求の趣旨
本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求めるものである。
2 本件訂正前後の特許請求の範囲の記載
(1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~5の記載(特許権の設定登録時における特許請求の範囲)は、次のとおりである。
「【請求項1】
底板とこの底板から立ち上げた両側板を有し、事務機器の装置本体側に取り付けられる取付部材と、
上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から内側に向けて設けた抱持片を有し、前記両側板を前記取付部材の前記両側板へメインシャフトを介して回転可能に軸支される支持部材と、
上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から外側に向けて設けられた原稿圧着板の取付板とを有し、前記支持部材の両側板の自由端側に設けた内径の大きな遊挿孔に緩く挿通された第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支されるリフト部材と、
上板とこの上板から垂設した両側板とを有し、前記支持部材と前記リフト部材との間に、前記第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支される調整部材と、
前記リフト部材と前記調整部材との間に前記第1リフトシャフトを挟んで一方の側に設けた加圧手段及び他方の側に設けられた増圧手段と、
前記取付部材の前記両側板の間に設けられた受圧部材と前記リフト部材の前記両側板の間に設けられた第2リフトシャフトとの間に設けられた前記支持部材の回転制御手段と、を有し、
前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に前記リフト部材を下方へ加圧し、
前記増圧手段は、前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成したことを特徴とする、開閉支持装置。
【請求項2】
前記回転制御手段は、前記支持部材内に設けられ、前記取付部材の両側板の間に設けられたところの前記受圧部材に接して設けられた第1ばね受け部と、前記リフト部材の両側板の間に設けられたところの前記第2リフトシャフトに接して設けられた第2ばね受け部と、前記第1ばね受け部と前記第2ばね受け部の間に弾設された第1弾性部材を有することを特徴とする、請求項1に記載の開閉支持装置。
【請求項3】
前記加圧手段は、前記リフト部材と前記調整部材との間に前記リフト部材を前記支持部材側へ加圧させる第2弾性部材とを有し、前記増圧手段は、前記リフト部材と前記調整部材との間に前記リフト部材を前記支持部材側へ加圧させる第3弾性部材とを有することを特徴とする、請求項1に記載の開閉支持装置。
【請求項4】
前記増圧手段は、前記リフト部材に取り付けられる第1支持部と、前記調整部材に取り付けられる第2支持部とを有し、第3弾性部材が、前記第1支持部と第2支持部との間に弾設されることを特徴とする、請求項1に記載の開閉支持装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の開閉支持装置を用いたことを特徴とする、事務機器。」
(2) 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5の記載は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。
「【請求項1】
底板とこの底板から立ち上げた両側板を有し、事務機器の装置本体側に取り付けられる取付部材と、
上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から内側に向けて設けた抱持片を有し、前記両側板を前記取付部材の前記両側板へメインシャフトを介して回転可能に軸支される支持部材と、
上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から外側に向けて設けられた原稿圧着板の取付板とを有し、前記支持部材の両側板の自由端側に設けた内径の大きな遊挿孔に緩く挿通された第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支されるリフト部材と、
上板とこの上板から垂設した両側板とを有し、前記支持部材と前記リフト部材との間に、前記第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支される調整部材と、
前記リフト部材と前記調整部材との間に前記第1リフトシャフトを挟んで後方側に設けた加圧手段及び前方側に設けられた増圧手段と、
前記取付部材の前記両側板の間に設けられた受圧部材と、前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側を軸支する第2リフトシャフトとの間に設けられた前記支持部材の回転制御手段と、を有し、
前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に、第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧し、
前記増圧手段は、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して上方へ加圧して前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成したことを特徴とする、開閉支持装置。
【請求項2】
前記回転制御手段は、前記支持部材内に設けられ、前記取付部材の両側板の間に設けられたところの前記受圧部材に接して設けられた第1ばね受け部と、前記リフト部材の両側板の間に設けられたところの前記第2リフトシャフトに接して設けられた第2ばね受け部と、前記第1ばね受け部と前記第2ばね受け部の間に弾設された第1弾性部材を有することを特徴とする、請求項1に記載の開閉支持装置。
【請求項3】
前記加圧手段は、前記リフト部材と前記調整部材との間に前記リフト部材を前記支持部材側へ加圧させる第2弾性部材とを有し、前記増圧手段は、前記リフト部材と前記調整部材との間に前記リフト部材を前記支持部材側へ加圧させる第3弾性部材とを有することを特徴とする、請求項1に記載の開閉支持装置。
【請求項4】
前記増圧手段は、前記リフト部材に取り付けられる第1支持部と、前記調整部材に取り付けられる第2支持部とを有し、第3弾性部材が、前記第1支持部と第2支持部との間に弾設されることを特徴とする、請求項1に記載の開閉支持装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の開閉支持装置を用いたことを特徴とする、事務機器。」
3 本件訂正の内容
本件訂正は、一群の請求項〔1~5〕について訂正するものであるところ、その内容は、特許請求の範囲及び明細書の訂正に係る次の訂正事項1及び2からなる。
(1) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正)
請求項1の記載に係る訂正事項1は、次のア~エに示す訂正事項1-1から訂正事項1-4までからなる。
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「前記リフト部材と前記調整部材との間に前記第1リフトシャフトを挟んで一方の側に設けた加圧手段及び他方の側に設けられた増圧手段と、」
(イ) 訂正後の記載
「前記リフト部材と前記調整部材との間に前記第1リフトシャフトを挟んで後方側に設けた加圧手段及び前方側に設けられた増圧手段と、」
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「前記取付部材の前記両側板の間に設けられた受圧部材と前記リフト部材の前記両側板の間に設けられた第2リフトシャフトとの間に設けられた前記支持部材の回転制御手段とを有し、」
(イ) 訂正後の記載
「前記取付部材の前記両側板の間に設けられた受圧部材と、前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する第2リフトシャフトとの間に設けられた前記支持部材の回転制御手段とを有し、」
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に前記リフト部材を下方へ加圧させるように成したことを特徴とする、」
(イ) 訂正後の記載
「前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させるように成したことを特徴とする、」
エ 訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項1の次の(ア)に示す訂正前の記載を、後記(イ)に示す訂正後の記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。
(ア) 訂正前の記載
「前記増圧手段は、前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成したことを特徴とする、」
(イ) 訂正後の記載
「前記増圧手段は、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して上方に加圧して前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成したことを特徴とする、」
(2) 訂正事項2(本件明細書の記載に係る訂正)
本件明細書の記載に係る訂正事項2は、次のア~ウに示す訂正事項2-1から訂正事項2-3までからなる。
ア 訂正事項2-1
明細書の【0048】の次のアに示す訂正前の記載を、後記イに示す訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前の記載
「弾設された第3弾性部材16dは、圧縮される場合、受圧部材19を支点軸にしてリフト部材を上方向、すなわち時計方向に付勢する。」
(イ) 訂正後の記載
「弾設された第3弾性部材16dは、圧縮される場合、第2リフトシャフト20を支点軸にしてリフト部材を上方向、すなわち時計方向に付勢する。」
イ 訂正事項2-2
明細書の【0049】の次のアに示す訂正前の記載を、後記イに示す訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前の記載
「リフト部材は、常に、受圧部材19を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、開閉支持装置10が加圧手段15のみを有する場合よりも、第2弾性部材15dがより大きく圧縮され、その結果リフト部材14を下方向に付勢する付勢力が増大する。」
(イ) 訂正後の記載
「リフト部材は、常に、第2リフトシャフト20を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、開閉支持装置10が加圧手段15のみを有する場合よりも、第2弾性部材15dがより大きく圧縮され、その結果リフト部材14を下方向に付勢する付勢力が増大する。」
ウ 訂正事項2-3
明細書の【0051】の次のアに示す訂正前の記載を、後記イに示す訂正後の記載に訂正する。
(ア) 訂正前の記載
「本実施例における開閉支持装置10は、リフト部材が、常に、受圧部材19を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、図10(a)に示す第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより付勢されていない場合よりも、リフト部材が下方向(装置本体2側)にα移動する(図9(b))。」
(イ) 訂正後の記載
「本実施例における開閉支持装置10は、リフト部材が、常に、第2リフトシャフト20を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、図10(a)に示す第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより付勢されていない場合よりも、リフト部材が下方向(装置本体2側)にα移動する(図9(b))。」
4 本件訂正の適否についての当合議体の判断
以下、訂正事項1及び2について、訂正要件の充足について検討する。なお、本件特許異議の申立てにおいては、請求項1~5の全ての請求項が特許異議の申立ての対象となっているから、本件訂正後の請求項1~5について、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項に規定するいわゆる独立特許要件は課されない。
(1) 訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1-1~1-4に係る訂正は、次の(ア)~(エ)に示すとおり、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するから、訂正事項1は、全体として、同号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(ア) 訂正事項1-1について
訂正事項1-1に係る訂正は、「第1リフトシャフトを挟んで一方の側に設けた加圧手段及び他方の側に設けられた増圧手段」の発明特定事項における「一方の側」及び「他方の側」を、それぞれ「後方側」及び「前方側」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ) 訂正事項1-2について
訂正事項1-2に係る訂正は、「第2リフトシャフト」を「前記リフト部材の前記両側板の間に設け[る]」態様について「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」ことを限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(ウ) 訂正事項1-3について
訂正事項1-3に係る訂正は、「リフト部材を下方へ加圧[する]」ことの態様について「前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧[する]」ものに限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(エ) 訂正事項1-4について
訂正事項1-4に係る訂正は、「前記増圧手段」が「前記加圧手段の加圧力を増圧させる」ことの態様について「前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して上方に加圧して前記加圧手段の加圧力を増圧させる」ものに限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項1-1~1-4に係る訂正は、次の(ア)~(エ)に示すとおり、いずれも、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(本件特許の登録時点のものを指す。以下「本件特許明細書等」という。明細書のみを指すときには、以下「本件特許明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、訂正事項1に係る訂正は、全体として、特許法120条の5第9項で準用する特許法126条5項の規定に適合する。
(ア) 訂正事項1-1について
訂正事項1-1に係る訂正は、本件特許明細書の次のa及びbに示す段落の記載に基づくものであって、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
a 【0045】
「加圧手段15は、リフト部材14と調整部材13との間であって第1リフトシャフト18の後方に設けられている。」
b 【0047】
「増圧手段16は、リフト部材14と調整部材13との間であって第1リフトシャフト18の前方に設けられている。…(略)…リフト部材14と調整部材13との間に第1リフトシャフト18を挟んで一方の側に加圧手段15が設けられ、他方の側に増圧手段16が設けられている。」
(イ) 訂正事項1-2について
訂正事項1-2に係る訂正は、本件特許明細書の次のa及びbに示す段落の記載に基づくものであって、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
a 【0036】
「両側板13b、13bは、上板13aの前端部から前方向に所定の長さで延出しており、延出した前端部の上板13a側の箇所に第1リフトシャフト18が挿通される第1挿通孔13e、13eが設けられるとともに、第1挿通孔13e、13eの下方にシャフト状の第2リフトシャフト20が挿通される第2挿通孔13f、13fが設けられる。両側板13b、13bの第2挿通孔13f、13fに第2リフトシャフト20が挿通されて固定される。」
b 【0041】
「両側板14b、14bは、前端部の上板14a側の箇所に第1リフトシャフト18が緩く挿通(遊挿)される遊挿孔14e、14eが設けられていると共に、遊挿孔14e、14eの下方に設けられたシャフト状の第2リフトシャフト20が挿通される挿通孔14f、14fが設けられている。両側板14b、14bの挿通孔14f、14fに第2リフトシャフト20が挿通されて固定される。」
(ウ) 訂正事項1-3について
訂正事項1-3に係る訂正は、本件特許明細書の次のa~gに示す段落の記載に基づくものであって、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
a 【0018】
「支持部材12、調整部材13、リフト部材14は、この順番で取付部材11に対して配置され、調整部材13とリフト部材14とは加圧手段15及び増圧手段16によっても連結され、調整部材13とリフト部材14との間には第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dが弾設されている。」
b 【0045】
「加圧手段15は、リフト部材14と調整部材13との間であって第1リフトシャフト18の後方に設けられている。」
c 【0046】
「弾設された第2弾性部材15dは、圧縮される場合、リフト部材を下方向に付勢する。」
d 【0047】
「リフト部材14と調整部材13との間に第1リフトシャフト18を挟んで一方の側に加圧手段15が設けられ、他方の側に増圧手段16が設けられている。」
e 【0049】
「本実施例では、閉成状態において、受圧部材19を支点軸にして、増圧手段16の第3弾性部材16dがリフト部材を上方向に付勢することで、加圧手段15の第2弾性部材15dがリフト部材を下方向に更に付勢する付勢力が発生する。すなわち、リフト部材は、常に、受圧部材19を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、開閉支持装置10が加圧手段15のみを有する場合よりも、第2弾性部材15dがより大きく圧縮され、その結果リフト部材14を下方向に付勢する付勢力が増大する。」(後記(2)で説示するように、【0049】に「受圧部材19を支点軸にして」と記載されているものを、「第2リフトシャフト20を支点軸にして」の明らかな誤記である。)
f 【0051】
「本実施例における開閉支持装置10は、リフト部材が、常に、受圧部材19を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、図10(a)に示す第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより付勢されていない場合よりも、リフト部材が下方向(装置本体2側)にα移動する(図9(b))。」(後記(2)で説示するように、【0051】に「受圧部材19を支点軸にして」と記載されているものを、「第2リフトシャフト20を支点軸にして」の明らかな誤記である。)
g 【0052】
「このように、本実施例での開閉支持装置10では、閉成状態において、原稿圧着板3の重量(自重)に加えて、増圧手段16によって、加圧手段15により原稿圧着板3が取り付けられるリフト部材が下方(装置本体2側)に移動するように加えられる圧力を増大させることにより、原稿圧着板3の後部がコンタクトガラス4の後部側、即ち、開閉支持装置10側へ押し付けられることになる。したがって、原稿圧着板3は閉成時にその後部側から閉じられるので、原稿圧着板3とコンタクトガラス4の後部側に隙間ができることを防止することができるものであり、この作業を自動的できることになる。」
(エ) 訂正事項1-4について
訂正事項1-4に係る訂正は、本件特許明細書の次のa~fに示す段落の記載に基づくものであって、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
a 【0018】
「支持部材12、調整部材13、リフト部材14は、この順番で取付部材11に対して配置され、調整部材13とリフト部材14とは加圧手段15及び増圧手段16によっても連結され、調整部材13とリフト部材14との間には第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dが弾設されている。」
b 【0047】
「増圧手段16は、リフト部材14と調整部材13との間であって第1リフトシャフト18の前方に設けられている。また、増圧手段16は、4本の圧縮コイルスプリングから成る第3弾性部材16dと、リフト部材の上板の先端部下(内)側にネジ16e着されると共に第3弾性部材16dの一端を支持する第1支持部16aと、調整部材13の両側板13b、13b間を架け渡して取り付けられるL字状断面を有する取付部材16cと、取付部材16cにネジ16f着されると共に第3弾性部材16dの他端を支持する第2支持部16bから成り、リフト部材に取り付けられた第1支持部16a及び取付部材16cを介して調整部材13に取り付けられた第2支持部16bによって第3弾性部材16dが支持されることで、調整部材13とリフト部材14とを連結する。…(略)…リフト部材14と調整部材13との間に第1リフトシャフト18を挟んで一方の側に加圧手段15が設けられ、他方の側に増圧手段16が設けられている。」
c 【0048】
「弾設された第3弾性部材16dは、圧縮される場合、受圧部材19を支点軸にしてリフト部材を上方向、すなわち時計方向に付勢する。」(後記(2)で説示するように、【0048】に「受圧部材19を支点軸にして」と記載されているものを、「第2リフトシャフト20を支点軸にして」の明らかな誤記である。)
d 【0049】
「本実施例では、閉成状態において、受圧部材19を支点軸にして、増圧手段16の第3弾性部材16dがリフト部材を上方向に付勢することで、加圧手段15の第2弾性部材15dがリフト部材を下方向に更に付勢する付勢力が発生する。すなわち、リフト部材は、常に、受圧部材19を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、開閉支持装置10が加圧手段15のみを有する場合よりも、第2弾性部材15dがより大きく圧縮され、その結果リフト部材14を下方向に付勢する付勢力が増大する。」(後記(2)で説示するように、【0049】に「受圧部材19を支点軸にして」と記載されているものを、「第2リフトシャフト20を支点軸にして」の明らかな誤記である。)
e 【0051】
「本実施例における開閉支持装置10は、リフト部材が、常に、受圧部材19を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、図10(a)に示す第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより付勢されていない場合よりも、リフト部材が下方向(装置本体2側)にα移動する(図9(b))。」(後記(2)で説示するように、【0051】に「受圧部材19を支点軸にして」と記載されているものを、「第2リフトシャフト20を支点軸にして」の明らかな誤記である。)
f 【0052】
「このように、本実施例での開閉支持装置10では、閉成状態において、原稿圧着板3の重量(自重)に加えて、増圧手段16によって、加圧手段15により原稿圧着板3が取り付けられるリフト部材が下方(装置本体2側)に移動するように加えられる圧力を増大させることにより、原稿圧着板3の後部がコンタクトガラス4の後部側、即ち、開閉支持装置10側へ押し付けられることになる。したがって、原稿圧着板3は閉成時にその後部側から閉じられるので、原稿圧着板3とコンタクトガラス4の後部側に隙間ができることを防止することができるものであり、この作業を自動的できることになる。」
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に係る訂正は、前記ア及びイに検討したとおり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
エ 訂正事項1に係る訂正についてのまとめ
以上ア~ウに検討のとおり、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たす。
(2) 訂正事項2
ア 訂正の目的
(ア) 訂正事項2-1について
本件特許明細書の【0048】の「弾設された第3弾性部材16dは、圧縮される場合、受圧部材19を支点軸にしてリフト部材を上方向、すなわち時計方向に付勢する。」との記載が、「弾設された第3弾性部材16dは、圧縮される場合、第2リフトシャフト20を支点軸にしてリフト部材を上方向、すなわち時計方向に付勢する。」との記載の明らかな誤記であることは、各部材の機能(【0027】、【0036】、【0041】、【0042】、【0044】~【0052】、【図4】、【図9】等)に照らして、当業者には明らかである。
したがって、訂正事項2-1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。
(イ) 訂正事項2-2について
本件特許明細書の【0048】の「リフト部材は、常に、受圧部材19を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、開閉支持装置10が加圧手段15のみを有する場合よりも、第2弾性部材15dがより大きく圧縮され、その結果リフト部材14を下方向に付勢する付勢力が増大する。」との記載が、「リフト部材は、常に、第2リフトシャフト20を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、開閉支持装置10が加圧手段15のみを有する場合よりも、第2弾性部材15dがより大きく圧縮され、その結果リフト部材14を下方向に付勢する付勢力が増大する。」との記載の明らかな誤記であることは、各部材の機能(【0027】、【0036】、【0041】、【0042】、【0044】~【0052】、【図4】、【図9】等)に照らして、当業者には明らかである。
したがって、訂正事項2-2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。
(ウ) 訂正事項2-3について
本件特許明細書の【0048】の「本実施例における開閉支持装置10は、リフト部材が、常に、受圧部材19を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、図10(a)に示す第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより付勢されていない場合よりも、リフト部材が下方向(装置本体2側)にα移動する(図9(b))。」との記載が、「本実施例における開閉支持装置10は、リフト部材が、常に、第2リフトシャフト20を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、図10(a)に示す第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより付勢されていない場合よりも、リフト部材が下方向(装置本体2側)にα移動する(図9(b))。」との記載の明らかな誤記であることは、各部材の機能(【0027】、【0036】、【0041】、【0042】、【0044】~【0052】、【図4】、【図9】等)に照らして、当業者には明らかである。
したがって、訂正事項2-3に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
(ア) 訂正事項2-1について
本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を以下「当初明細書等」といい、明細書のみを指すときは「当初明細書」という。
訂正事項2-1は、本件特許明細書の【0048】の「弾設された第3弾性部材16dは、圧縮される場合、受圧部材19を支点軸にしてリフト部材を上方向、すなわち時計方向に付勢する。」との記載が、「弾設された第3弾性部材16dは、圧縮される場合、第2リフトシャフト20を支点軸にしてリフト部材を上方向、すなわち時計方向に付勢する。」との記載の明らかな誤記であることは、各部材の機能に関する当初明細書の【0027】、【0036】、【0041】、【0042】、【0044】~【0052】、【図4】、【図9】等の記載からして当業者には明らかであり、訂正事項2-1による訂正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2-1に係る訂正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(イ) 訂正事項2-2について
訂正事項2-2は、本件特許明細書の【0049】の「リフト部材は、常に、受圧部材19を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、開閉支持装置10が加圧手段15のみを有する場合よりも、第2弾性部材15dがより大きく圧縮され、その結果リフト部材14を下方向に付勢する付勢力が増大する。」との記載が、「リフト部材は、常に、第2リフトシャフト20を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、開閉支持装置10が加圧手段15のみを有する場合よりも、第2弾性部材15dがより大きく圧縮され、その結果リフト部材14を下方向に付勢する付勢力が増大する。」との記載の明らかな誤記であることは、各部材の機能に関する当初明細書の【0027】、【0036】、【0041】、【0042】、【0044】~【0052】、【図4】、【図9】等の記載からして当業者には明らかであり、訂正事項2-2による訂正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2-2に係る訂正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(ウ) 訂正事項2-3について
訂正事項2-3は、本件特許明細書の【0051】の「本実施例における開閉支持装置10は、リフト部材が、常に、受圧部材19を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、図10(a)に示す第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより付勢されていない場合よりも、リフト部材が下方向(装置本体2側)にα移動する(図9(b))。」との記載が、「本実施例における開閉支持装置10は、リフト部材が、常に、第2リフトシャフト20を支点軸にして、第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより時計方向に付勢されることで、図10(a)に示す第2弾性部材15d及び第3弾性部材16dにより付勢されていない場合よりも、リフト部材が下方向(装置本体2側)にα移動する(図9(b))。」との記載の明らかな誤記であることは、各部材の機能に関する当初明細書の【0027】、【0036】、【0041】、【0042】、【0044】~【0052】、【図4】、【図9】等の記載からして当業者には明らかであり、訂正事項2-3による訂正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2-3に係る訂正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記アに検討したとおり、訂正事項2に係る訂正は、当業者にとって明らかな誤記を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
エ 訂正事項2に係る訂正についてのまとめ
したがって、訂正事項2に係る訂正は、訂正要件を満たす。
5 本件訂正の適否のまとめ
前記4に検討のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び2号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
なお、本件訂正には、同条9項において読み替えて準用する同法第126条7項所定の独立特許要件は課されない。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正は前記第2のとおり認められたから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明5」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、前記第2の2(2)に示した本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものである。
第4 取消理由の概要
令和7年6月27日付け取消理由通知書(決定の予告)において通知した取消理由1~3の要旨は、それぞれ以下の1~3に示すとおりである。
1 取消理由1(明確性要件違反)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が下記の(1)~(4)に示す点で不備があるため、請求項1~5に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(それぞれ「取消理由1(1)」などという。)。
記
(1) 請求項1の「支持部材」、「リフト部材」、「調整部材」及び「回転制御手段」が、それぞれ、なぜ「支持」、「リフト」、「調整」及び「回転制御」と称されるのか、明確でない。
(2) 請求項1には「リフト部材」が「第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支される」と記載されているとともに、「第1リフトシャフト」が「内径の大きな遊挿孔」に「緩く挿通」されていると記載されているところ、「軸支」と「緩く挿通」の意味するところが明確でない。
(3) 請求項1には「遊挿孔」が「内径の大きな」ものであると記載されているところ、その意味が明確でない。
(4) 請求項1の「増圧手段」と「加圧手段」が、何に対して何を増圧・加圧するのか請求項1において特定されておらず、明確でない。
2 取消理由2(実施可能要件違反)
本件特許に係る出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の(1)~(4)に示す点で不備があるため、請求項1~5に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(それぞれ「取消理由2(1)」などという。)。
記
(1) 本件明細書等の【0048】・【0049】・【0051】には、加圧手段15及び増圧手段16に含まれる弾性部材が、圧縮される場合、「受圧部材19を支点軸にして」リフト部材を付勢する旨記載されており、これは、「第2リフトシャフト20を支点軸として」の明らかな誤記であると解されるが、仮にこの理解が相当でないならば、本件明細書等には、機構上、理解しがたい内容が記載されていることになり、その意味において、本件明細書等の記載は、請求項1に記載された発明を当業者が実施できる程度のものとはいえない。
(2) 本件課題解決原理は、支持部材12とリフト部材14との間の設置角度を調整することにより、閉成状態において原稿圧着板の後部側とコンタクトガラスとの間に生じる隙間を埋められることを前提とした上で、その調整が加圧手段15及び増圧手段16によって自動的にされることにあると解されるが、従来技術(特開2002-244232号公報(本件明細書等の【0005】))における調整と本件課題解決原理における調整では、リフト部材を動かす方向が互いに逆になるように考えられ、本件課題解決原理を、従来技術の自動化という形で理解してよいのかが不明である。
(3) 本件課題解決原理における調整(以下「本件調整」という。)は、加圧手段15及び増圧手段16によって、第2リフトシャフト20を支点軸にして、調整部材13に対してリフト部材14を図4の時計方向に移動させるものであり、この移動方向は、閉成状態において原稿圧着板の後部側とコンタクトガラスとの間に生じる隙間(以下「本件隙間」という。)を埋めるための方向とは逆方向であり、本件隙間を埋められることが理解できない。
(4) 加圧手段15及び増圧手段16による付勢力は、第2リフトシャフト20を支点軸にして、調整部材13に対してリフト部材14を移動させる方向に作用していると解されるが、請求項1には、それを実現するために必要な調整部材13と第2リフトシャフト20との関係が特定されておらず、本件明細書等の記載は、そのような関係が特定されていない態様について、当業者が実施できる程度のものとはいえない。
3 取消理由3(サポート要件違反)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が下記に示す点で不備があるため、請求項1~5に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
請求項1には、リフト部材14の調整部材13に対する移動が「第2リフトシャフト20」を支点軸として行われることが特定されていないことから、そのような特定を満たさない態様も含まれており、当該態様は、当業者が本件課題を解決できるとは認識できない。
第5 当審の判断
当合議体は、それぞれ1~3において検討するとおり、取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由1~3によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 取消理由1(明確性要件違反)について
(1) 取消理由1(1)について
請求項1の記載における「支持部材」、「リフト部材」、「調整部材」及び「回転制御手段」については、それぞれ次のア~エのように理解することができるものであるから、その意味は明確であり、取消理由1(1)によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
ア 支持部材12は、リフト部材14を支持する部材であると解される。
イ 回転制御手段Fは、原稿圧着板3の回転を開成方向に制御する手段であると解される。
ウ リフト部材14は、厚物原稿に原稿圧着板3をあてがった後に原稿圧着板3の手前側を強く押すと、原稿圧着板3の後部側をリフトアップさせることが可能な部材であると解される。
エ 調整部材13は、リフト部材14とおおむね一体となって移動するので、リフト部材14の上記の機能を維持できる一方で、リフト部材14に遊挿孔14e、14eが存在しているので、その大きさの範囲において、第2リフトシャフト20を支点軸として、リフト部材14が調整部材13に対して移動できるので、支持部材12とリフト部材14との間の設置角度の調整も可能とする部材と解される。
(2) 取消理由1(2)について
請求項1には「リフト部材」が「第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支される」と記載されているとともに、「第1リフトシャフト」が「内径の大きな遊挿孔」に「緩く挿通」されていると記載されているところこれらの意味については、次のア及びイに示すように理解できることから、請求項1の記載における「軸支」と「緩く挿通」の意味するところは明確であり、取消理由1(2)によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
ア 調整部材13及びリフト部材14は、第1リフトシャフトに軸支されているため、両部材は、おおむね一体となって移動するので、リフト部材14において厚物原稿を複写するために必要となる機能を維持できる。
イ リフト部材14に遊挿孔14e、14eが存在しているので、その大きさの範囲において、第2リフトシャフト20を支点軸として、リフト部材14が調整部材13に対して移動できる。
(3) 取消理由1(3)について
「内径の大きな遊挿孔」が意味するところは、第2リフトシャフト20を支点軸として、リフト部材14が調整部材13に対して移動できる大きさの範囲と解されることから、「内径の大きな遊挿孔」が意味するところは明確であり、取消理由1(3)によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
(4) 取消理由1(4)について
本件訂正により、加圧手段15がリフト部材14を調整部材に対して下方へ加圧させること及び増圧手段16がリフト部材14を調整部材13に対して上方へ加圧させることが明確になったことから、取消理由1(4)は解消した。
2 取消理由2(実施可能要件違反)について
(1) 取消理由2(1)について
本件訂正により、「前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させるように成したこと」、「前記増圧手段は、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して上方へ加圧して前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成したこと」及び「第2リフトシャフト20を支点軸として」リフト部材を付勢することが明確化されており、本件明細書等の記載は、請求項1に記載された発明を当業者が実施できる程度のものと理解できるから、取消理由2(1)は解消した。
(2) 取消理由2(2)について
従来技術(特開2002-244232号公報)において、原稿圧着板2の後端部(同公報図1の左側)と原稿台(コンタクトガラス)1aとの間に隙間が生じた場合、カム26を同公報図1の反時計方向に回すことでリフト部材11が支持軸9回りに下がることで隙間を埋めることができ、このとき、リフト部材11は、支持軸9回りに同公報図1の反時計方向に回転することから、原稿圧着板2の後部側(同公報図1の左側)と原稿台(コンタクトガラス)1aとの間において隙間を埋める場合において、従来技術における調整と本件発明の課題解決原理における調整は、リフト部材を動かす方向は同じである。したがって、両者の方向が異なることを前提とする取消理由2(2)は理由がなく、当該理由によっては本件発明に関する特許を取り消すことはできない。
参考:特開2002-244232号公報の【図1】
[図:0001436139000001.jpg]
(3) 取消理由2(3)及び(4)について
本件訂正により、「前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させるように成したこと」及び「前記増圧手段は、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して上方へ加圧して前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成したこと」が明確化されており、原稿圧着板3の後部側とコンタクトガラス4との間を埋めることができることが理解できるから、取消理由2(3)及び(4)は解消した。
3 取消理由3(サポート要件違反)について
本件訂正により、特許請求の範囲の請求項1が、「前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させるように成したこと」及び「前記増圧手段は、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して上方へ加圧して前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成したこと」に訂正され、当業者が本件課題を解決できるとは認識できるものとなったので、取消理由3は解消した。
第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった申立ての理由について
1 申立ての理由の概要
申立人が特許異議の申立ての理由としたもののうち、令和7年6月27日付け取消理由通知書(決定の予告)におい取り上げなかったものとして、次の(1)及び(2)に示す理由(以下、それぞれ「申立理由1」及び「申立理由2」という。)がある。
(1) 申立理由1(サポート要件違反)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が下記のア及びイに示す点で不備があるため、請求項1~5に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条4号に該当し取り消すべきものである(それぞれ「申立理由1ア」などという。)。
記
ア 請求項1には、加圧手段及び増圧手段を如何なる付勢力とするかを予め設定しない限り、隙間ができることを防止する作業ができず、本件発明の課題が解決できない。
イ 請求項1には、第2弾性部材16のばね加重の調整手段、遊挿孔および第1リフトシャフトの径及び高さ調節板が記載されておらず、原稿圧着板がADFを備えている場合には、本件発明の課題が解決できない。
(2) 申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性欠如)
本件発明1~5は、甲第1号証(特許第4898215号公報(以下「甲1」と略記する。))に記載された発明並びに甲第2号証(特開2006-139008号公報(以下「甲2」と略記する。))及び甲第3号証(実開平7-39044号公報(以下「甲3」と略記する。))に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反したものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由の検討
(1) 申立理由1について
ア 申立理由1アについて
加圧手段及び増圧手段は、隙間ができることを防止する程度の調整不要なレベルのものを用い、手作業よりも自動的に原稿圧着板の高さ調整行うことができることは、当業者が自明に想定することであり、本件発明は、当業者が本件課題を解決できるものといえるから、申立理由1アは理由がない。
イ 申立理由1イについて
本件発明は原稿圧着板がADFを備えている場合について限定するものではなく、本件発明は当業者が本件課題を解決できるものといえるものであるから、申立理由1イは理由がない。
(2) 申立理由2について
ア 甲1発明、甲2技術事項及び甲3技術事項の認定
(ア) 甲1発明の認定
甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、甲1発明等の認定に用いた甲1等の記載に係る段落番号等を括弧内に付した。
[甲1発明]
「原稿圧着板を回動させて事務機器の機器本体の上面を前記原稿圧着板で覆う閉成状態とその上面を露出させる開成状態とを形成する原稿圧着板開閉装置であって、
前記機器本体に取り付けられる取付部材と、この取付部材に第1ヒンジピンを介して回動可能に軸支された支持部材と、この支持部材に重なり合うと共にこの支持部材の自由端部に第2ヒンジピンを介して回動可能に軸支されるリフト部材と、このリフト部材に重なり合うと共に当該リフト部材の自由端部とは反対側の端部に回動可能に軸支され、かつ、原稿圧着板を取り付ける位置調節部材と、各々前記支持部材内に摺動可能に保持され、前記取付部材に設けた受圧ピンと前記リフト部材に設けた作動ピンに各々一端部側を当接させて設けたスライダー及びバネ受け部材と、前記スライダーとバネ受け部材の間に設けられ、前記原稿圧着板を前記リフト部材を介して開成方向に回動付勢すると共に、前記リフト部材を前記支持部材と重なり合う方向へ回動付勢する弾性手段と、前記位置調節部材の自由端側に設けられ、当該位置調節部材を前記リフト部材と重なり合う方向へ回動付勢させる付勢手段とから成り、この付勢手段により、前記原稿圧着板を閉じる直前または閉じたときに前記位置調節部材を介して当該原稿圧着板をその閉成方向の回動方向とは逆の方向へ回動付勢させて前記原稿圧着板が前記機器本体の上面に密着するように成したものであり、(請求項1)
取付部材は、機器本体に取り付けられる底板と、底板の両側端部からそれぞれ底板に対して直交する方向に延びる両側板と、底板の一端部(後端部)から底板に対して直交する方向に延びる略矩形状の後板とからなり、(【0015】)
前記側板には、第1ヒンジピンが挿通されるシャフト孔が設けられ、側板のシャフト孔より前方で、かつ、内側に偏した位置には、受圧ピンが挿通される受圧ピン孔が設けられ、(【0016】)
支持部材は、天板である上板と、上板の両側端部からそれぞれ上板に対して直交する方向に延びる両側板と、側板の先端部を互いに対向する側に90°折り曲げてなる拘持板とからなり、(【0017】)
両側板の一端部(後端部)には、第2ヒンジピンが挿通される第2ヒンジピン孔が設けられていると共に、作動ピンが入り込む切欠部が設けられ、前記両側板の他端部(前端部)には、シャフト挿通孔が設けられ、シャフト挿通孔に第1ヒンジピン15が挿通され、(【0018】)
リフト部材は、略矩形平板状の上板と、この上板の両端部からそれぞれ上板に対して直交する方向に延びる両側板とから略コ字状であって支持部材を覆うように形成され、リフト部材の一端部(後端部)の中央より上板側の箇所には第2ヒンジピン挿通孔が設けられていると共に、第2ヒンジピン挿通孔より他端部側で、かつ、中央より上板側とは反対側の箇所には作動ピンが挿通される作動ピン孔が設けられ、両側板の作動ピン孔に作動ピンが挿通されて固定されており、リフト部材の両側板の第2ヒンジピン挿通孔と支持部材の両側板の第2ヒンジピン孔とが孔合わせされてこれら孔に第2ヒンジピンが挿通されることによって、リフト部材と支持部材とが第2ヒンジピンを軸に互いに回動可能に連結され、(【0019】)
位置調節部材は、略矩形平板状の上板と、この上板の両端部からそれぞれ上板に対して直交する方向に延びる両側板とから略コ字状であってリフト部材を覆うように形成され、両側板の先端部には、原稿圧着板の後端側にネジやビス等で取り付けられる取付孔を有するフランジがそれぞれ設けられ、両側板の一端部(後端部)側の略中央の箇所には第2ヒンジピン挿通孔が設けられ、この第2ヒンジピン挿通孔とリフト部材の両側板の第2ヒンジピン挿通孔と支持部材の両側板の第2ヒンジピン孔とが孔合わせされてこれら孔に第2ヒンジピンが挿通されることによって、位置調節部材とリフト部材と支持部材とが第2ヒンジピンを軸に互いに回動可能に連結されていて、(【0020】)
位置調節部材の両側板の自由端近傍には、上下方向に延びる移動規制孔が設けられており、リフト部材の両側板の自由端近傍には、移動規制孔に挿通される移動規制ピンが取り付けられており、移動規制ピンが移動規制孔内で移動し得る範囲でリフト部材4に対して位置調節部材5が回動するようになっており、(【0022】)
付勢手段は、位置調節部材をリフト部材と重なり合う方向へ付勢すると共に、原稿圧着板を閉成方向に回転させて閉成状態になる直前又はなったときに原稿圧着板による自重により位置調節部材が重なり合う方向とは反対方向に回転し得るものであり、(【0023】)
付勢手段としては、リフト部材と位置調節部材との間に設けられる第2付勢部材であり、第2付勢部材は、一端部がリフト部材の上板の上面に取り付けられると共に、他端部が位置調節部材の上板の下面に取り付けられる引っ張りスプリングであり、(【0027】)
受圧ピンは、取付部材の両側板の間の前記第2ヒンジピンとは反対側に設けられる、(図1)
原稿圧着板開閉装置。」
参考:甲1の【図1】
[図:0001436139000002.jpg]
(イ) 甲2技術事項
甲2には、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる(【0031】参照)。
[甲2技術事項]
「トーションスプリング54は、第2回動ヒンジピンである第4ヒンジピン57に環巻きされつつ第2リフト部材53を第2支持部材52と重なり合う方向へ付勢すると共に、原稿圧着板3が所定の閉成角度以下のとき、原稿圧着板3を付勢する付勢力が原稿圧着板3の重量より弱いものであり、トーションスプリング54の一端部54aは、第2支持部材52の上板221の下面に当接していると共に、その他端部54bは、第2リフト部材53の上板133に設けられたスプリング挿通孔235に挿通されて、トーションスプリング54の付勢力により、第2リフト部材53の上板231の調節ネジ251の先端が第2支持部材52の上板221に当接して、第2支持部材52の上板221と第2リフト部材53の上板231とが重なりあう又は略重なりあうようになっており、第2リフト部材53の上板133に設けられたスプリング挿通孔235は、トーションスプリング54の装着が容易となるように、トーションスプリング54の他端部54bをその付勢力に抗して移動させる移動挿入部235aと、移動挿入部235aを移動させた他端部54bを当接させる当接部235bとから形成されていること」
【図3】
[図:0001436139000003.jpg]
(ウ) 甲3技術事項
甲3には、次の発明(以下「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる(【0015】参照)。
[甲3技術事項]
「リフト部材5の軸着側には、クランク部材8が第2ヒンジピン7とは異なる位置にピン9によって回動自在に軸着されると共に、このクランク部材8は第2ヒンジピン7にも回動自在に軸着され、このクランク部材8はリフト部材5、或は原稿圧着板Bと一対に構成されてもよく、そして、クランク部材8に設けられたカム部8aと、取付部材1の側に設けた固定ピン11との間には、嵌縮自在に構成されたガイド部材12が懸架されると共に、このガイド部材12に環巻きされつつ弾性手段を構成する圧縮コイルスプリング10がクランク部材8と固定ピン11との間に弾設され、さらに、クランク部材8側の第2ヒンジピン7の回りにはもう1つの弾性手段を構成する捩じりコイルスプリング13が環巻きされ、その一端を支持部材4側に、他端をピン9側に係止させることによって支持部材4とリフト部材5との間に弾設されていること」
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
a 本件発明1の分説
検討の便宜に供するため、本件発明1を次のとおり、構成Xと構成Aから構成Hまでに分説する。
<本件発明の分説>
(構成A) 底板とこの底板から立ち上げた両側板を有し、事務機器の装置本体側に取り付けられる取付部材と、
(構成B) 上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から内側に向けて設けた抱持片を有し、前記両側板を前記取付部材の前記両側板へメインシャフトを介して回転可能に軸支される支持部材と、
(構成C) 上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から外側に向けて設けられた原稿圧着板の取付板とを有し、前記支持部材の両側板の自由端側に設けた内径の大きな遊挿孔に緩く挿通された第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支されるリフト部材と、
(構成D) 上板とこの上板から垂設した両側板とを有し、前記支持部材と前記リフト部材との間に、前記第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支される調整部材と、
(構成E) 前記リフト部材と前記調整部材との間に前記第1リフトシャフトを挟んで後方側に設けた加圧手段及び前方側に設けられた増圧手段と、
(構成F) 前記取付部材の前記両側板の間に設けられた受圧部材と、前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側を軸支する第2リフトシャフトとの間に設けられた前記支持部材の回転制御手段と、を有し、
(構成G) 前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に、第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧し、
(構成H) 前記増圧手段は、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して上方へ加圧して前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成したことを特徴とする、
(構成X)開閉支持装置。
b 対比分析
(a) 構成Aについて(取付部材)
構成Aは、「底板とこの底板から立ち上げた両側板を有し、事務機器の装置本体側に取り付けられる取付部材」を有することである。
甲1発明における「取付部材」は、本件発明1における「取付部材」に相当する。
さらに、甲1発明における「取付部材」は、「機器本体に取り付けられる底板と、底板の両側端部からそれぞれ底板に対して直交する方向に延びる両側板」を有することから、本件発明1における「底板とこの底板から立ち上げた両側板を有し、事務機器の装置本体側に取り付けられる取付部材」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の構成Aを満たしている。
(b) 構成Bについて(支持部材)
構成Bは、「上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から内側に向けて設けた抱持片を有し、前記両側板を前記取付部材の前記両側板へメインシャフトを介して回転可能に軸支される支持部材」を有することである。
甲1発明における「支持部材」は、本件発明1における「支持部材」に相当する。
そして、甲1発明における「第1ヒンジピン」は、本件発明1における「メインシャフト」に相当する。
さらに、甲1発明における「支持部材」は、「天板である上板と、上板の両側端部からそれぞれ上板に対して直交する方向に延びる両側板と、側板の先端部を互いに対向する側に90°折り曲げてなる拘持板とからなり、」「取付部材に第1ヒンジピンを介して回動可能に軸支され」ていることから、本件発明1における「上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から内側に向けて設けた抱持片を有し、前記両側板を前記取付部材の前記両側板へメインシャフトを介して回転可能に軸支される支持部材」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の構成Bを満たしている。
(c) 構成Cについて(リフト部材)
構成Cは、「上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から外側に向けて設けられた原稿圧着板の取付板とを有し、前記支持部材の両側板の自由端側に設けた内径の大きな遊挿孔に緩く挿通された第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支されるリフト部材」を有することである。
i 甲1発明における「位置調節部材」は、本件発明1における「リフト部材」に相当する。
さらに、甲1発明における「位置調節部材」は、「略矩形平板状の上板と、この上板の両端部からそれぞれ上板に対して直交する方向に延びる両側板とから略コ字状であってリフト部材を覆うように形成され、両側板の先端部には、原稿圧着板の後端側にネジやビス等で取り付けられる取付孔を有するフランジがそれぞれ設けられ[る]」ものであるから、本件発明1における「上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から外側に向けて設けられた原稿圧着板の取付板とを有[する]」「リフト部材」に相当する。
ii 甲1発明における「第2ヒンジピン」は、本件発明1における「第1リフトシャフト」に相当する。
さらにまた、甲1発明は、「支持部材の自由端部に第2ヒンジピンを介して回動可能に軸支されるリフト部材」を有することから、甲1発明における「位置調節部材」(「リフト部材」に相当する。)の「第2ヒンジピンが挿通される」「第2ヒンジピン挿通孔」も「支持部材の自由端部」側に設けられており、「位置調節部材」(「リフト部材」に相当する。)は、前記支持部材の両側板の自由端側に設けた孔に挿通された第2ヒンジピン(「第1リフトシャフト」に相当する。)を介して支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支されるといえる。
ここで、甲1発明における「移動規制孔57」及び「移動規制ピン47」は、本件発明1における「内径の大きな遊挿孔」及び「第1リフトシャフト」と、リフト部材の移動範囲を規制する孔と柱状の部材である点において共通する。
以上の検討結果をまとめると、構成Cの観点における本件発明1の甲1発明との一致点及び相違点は、それぞれ次のi)及びii)のとおりである。
i) 構成Cの観点における一致点
次の構成C’及び構成C”を有する点。
(構成C’) 「上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から外側に向けて設けられた原稿圧着板の取付板とを有し、前記支持部材の両側板の自由端側に設けた」「孔に」「挿通された第1リフトシャフトを介して当該支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支されるリフト部材」
(構成C”) リフト部材の移動範囲を規制する孔と柱状の部材
ii) 構成Cの観点における相違点
リフト部材の移動範囲を規制する孔と柱状の部材が、
本件発明1においては、
「リフト部材」において「前記支持部材の両側板の自由端側に設けた内径の大きな遊挿孔」と当該「内径の大きな遊挿孔に緩く挿通された第1リフトシャフト」であるのに対して、
甲1発明においては、「移動規制孔57」及び「移動規制ピン47」であり、したがって、第2ヒンジピン(「第1リフトシャフト」に相当する。)は第2ヒンジピン挿通孔に緩く挿通されていない点。
(d) 構成Dについて(調整部材)
構成Dは、「上板とこの上板から垂設した両側板とを有し、前記支持部材と前記リフト部材との間に、前記第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支される調整部材」を有することである。
甲1発明における「リフト部材」は、本件発明1における「調整部材」に相当する。
さらに、甲1発明における「リフト部材」は、「略矩形平板状の上板と、この上板の両端部からそれぞれ上板に対して直交する方向に延びる両側板とから略コ字状であ[る]」から、本件発明1における「上板とこの上板から垂設した両側板とを有[する]」「調整部材」に相当する。
さらにまた、甲1発明における「支持部材を覆うように形成され」、「位置調節部材」に「覆」われて「形成され」、「リフト部材の両側板の第2ヒンジピン挿通孔と支持部材の両側板の第2ヒンジピン孔とが孔合わせされてこれら孔に第2ヒンジピンが挿通されることによって、リフト部材と支持部材とが第2ヒンジピンを軸に互いに回動可能に連結され」る「リフト部材」は、本件発明1における「前記支持部材と前記リフト部材との間に、前記第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支される調整部材」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の構成Dを満たしている。
(e) 構成Eについて(加圧手段及び増圧手段)
構成Eは、「前記リフト部材と前記調整部材との間に前記第1リフトシャフトを挟んで後方側に設けた加圧手段及び前方側に設けられた増圧手段」を有することである。
甲1発明における「当該位置調節部材を前記リフト部材と重なり合う方向へ回動付勢させる付勢手段」(である「第2付勢手段」としての「引っ張りスプリング」)は、本件発明1における「加圧手段」に相当する。
そうすると、構成Eの観点における本件発明の甲1発明との一致点及び相違点は、それぞれ次のi)及びii)に示すとおりである。
i) 構成Eの観点における一致点
(構成E’) 「加圧手段」を有する点。
ii) 構成Eの観点における相違点
加圧手段が、
本件発明1においては、
「前記リフト部材と前記調整部材の前記第1リフトシャフトを挟んで後方側に設けられた」ものであるのに対して、
甲1発明においては、
「一端部がリフト部材の上板の上面に取り付けられると共に、他端部が位置調節部材の上板の下面に取り付けられる」ものであり、
本件発明1においては、
「前記リフト部材と前記調整部材との間に前記第1リフトシャフトを挟んで」「前方側に設けられた増圧手段」を有するのに対して、
甲1発明においては、
増圧手段を有しない点。
(f) 構成Fについて(回転制御手段)
構成Fは、「前記取付部材の前記両側板の間に設けられた受圧部材と、前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側を軸支する第2リフトシャフトとの間に設けられた前記支持部材の回転制御手段」を有することである。
甲1発明における「弾性手段」は、本件発明1における「回転制御手段」に相当する。
そして、甲1発明における「受圧ピン」及び「作動ピン」は、それぞれ本件発明1における「受圧部材」及び「第2リフトシャフト」に相当する。
さらに、甲1発明における「受圧ピン」は、「取付部材の両側板の間の前記第1リフトシャフトとは反対側に設けられ」ているから、本件発明1における「受圧ピン」は本件発明1における「前記取付部材の前記両側板の間に設けられた受圧部材」に相当する。
さらにまた、甲1発明における「弾性手段」は、「前記取付部材に設けた受圧ピンと前記リフト部材に設けた作動ピンに各々一端部側を当接させて設けたスライダー及びバネ受け部材」「の間に設けられ」ていることから、本件発明1における「回転制御手段」は、「受圧部材」と「第2リフトシャフト」との間に設けれている点において一致する。
ここで、甲1発明においては、「位置調節部材(「リフト部材」に相当する。)とリフト部材(「調整部材」に相当する。)と支持部材とが第2ヒンジピンを軸に互いに回動可能に連結されてい[る]」ことから、前記(c)及び(d)の検討結果も踏まえると、甲1発明における「第2ヒンジピン」と本件発明1における「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」「第2リフトシャフト」とは、「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」部材である点において共通する。
以上の検討結果を踏まえると、本件発明1と甲1発明の構成Fの観点における一致点及び相違点は、次のi)及びii)のとおりである。
i) 構成Fの観点における一致点
次の構成F’及び構成F”を有する点。
(構成F’) 「前記取付部材の前記両側板の間に設けられた受圧部材と、」「第2リフトシャフトと」「の間に設けられた前記支持部材の回転制御手段」
(構成F”) 「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」部材
ii) 構成Fの観点における相違点
「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」部材が、
本件発明1においては、
「第2リフトシャフト」であるのに対して、
甲1発明においては、
第2ヒンジピン(「第1リフトシャフト」に相当する。)である点。
(g) 構成Gについて(加圧の支点軸と方向)
構成Gは、「前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に、第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧[する]」ことである。
甲1発明の「付勢手段は、位置調節部材をリフト部材と重なり合う方向へ付勢する共に、原稿圧着板を閉成方向に回転させて閉成状態になる直前又はなったときに原稿圧着板による自重により位置調節部材が重なり合う方向とは反対方向に回転し得るものであ[る]」から、本件発明1と、「前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に、」「前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させる」点において共通する。
また、甲1発明は、「位置調節部材とリフト部材と支持部材とが第2ヒンジピンを軸に互いに回動可能に連結されている」ことから、「リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させる」ときに何らかの部材を「支点軸にして[いる]」点において本件発明1と一致し、この「支点軸」となる部材が、本件発明1においては、「第2リフトシャフト」であるのに対して、甲1発明においては、「第2ヒンジピン」(「第1リフトシャフト」に相当する。)である点において相違する。
以上の検討結果を踏まえると、本件発明1と甲1発明の構成Gの観点にける一致点及び相違点は、それぞれ次のi)及びii)に示すとおりである。
i) 構成Gの観点における一致点
(構成G’) 「前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に、」何らかの部材を「支点軸にして、」「前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させるように成した」点。
ii) 構成Gの観点における相違点
「リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させる」ときの「支点軸」となる部材が、
本件発明1においては、「第2リフトシャフト」であるのに対して、
甲1発明においては、「第2ヒンジピン」(「第1リフトシャフト」に相当する。)である点。
(h) 構成Hについて(増圧の支点軸と方向)
構成Hは、「前記増圧手段は、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して上方へ加圧して前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成したこと」である。
甲1発明は、本件補正発明の構成Hに相当する構成を備えていないから、本件補正発明と甲1発明は、次の点において相違する。
「前記増圧手段は、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して上方へ加圧して前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成した」点。
(i) 構成Xについて(開閉支持装置)
構成Xは、「開閉支持装置」に係る発明であることを特定するものである。
甲1発明の「原稿圧着板開閉装置」は、本件補正発明1の「開閉支持装置」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の上記特定事項を満たしている。
c 一致点及び相違点の認定
前記bの対比分析の結果をまとめると、本件発明1の甲1発明との一致点及び相違点は、それぞれ次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 一致点
「(構成A) 底板とこの底板から立ち上げた両側板を有し、事務機器の装置本体側に取り付けられる取付部材と、
(構成B) 上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から内側に向けて設けた抱持片を有し、前記両側板を前記取付部材の前記両側板へメインシャフトを介して回転可能に軸支される支持部材と、
(構成C’) 上板とこの上板から垂設した両側板とこの両側板から外側に向けて設けられた原稿圧着板の取付板とを有し、前記支持部材の両側板の自由端側に設けた孔に挿通された第1リフトシャフトを介して当該支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支されるリフト部材と、
(構成C”) リフト部材の移動範囲を規制する孔と柱状の部材と、
(構成D) 上板とこの上板から垂設した両側板とを有し、前記支持部材と前記リフト部材との間に、前記第1リフトシャフトを介して前記支持部材とは逆方向へ回転可能に軸支される調整部材と、
(構成E’) 加圧手段と、
(構成F’) 前記取付部材の前記両側板の間に設けられた受圧部材と、前記第1リフトシャフト側に取り付けられた第2リフトシャフトとの間に設けられた前記支持部材の回転制御手段と、
(構成F”) 「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」部材とを有し、
(構成G’) 前記加圧手段は、前記原稿圧着板をコンタクトガラス上へ閉じる際に、何らかの部材を支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させるように成した、開閉支持装置」の発明である点。
(b) 相違点
i 相違点1(構成C並びに構成F及び構成Gに係る相違点)
本件発明1においては、
(構成F及び構成Gに関する相違点)
「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」部材であって「リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させる」ときの「支点軸」となる部材が、「第2リフトシャフト」であり、
(構成Cに関する相違点)
「リフト部材の移動範囲を規制する孔と柱状の部材」が、「リフト部材」において「前記支持部材の両側板の自由端側に設けた内径の大きな遊挿孔」と当該「内径の大きな遊挿孔に緩く挿通された第1リフトシャフト」である、
のに対して、
甲1発明においては、
「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」部材であって「リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させるときの支点軸」となる部材が、「第2ヒンジピン」(「第1リフトシャフト」に相当する。)であり、
「リフト部材の移動範囲を規制する孔と柱状の部材が」「移動規制孔57」及び「移動規制ピン47」であり、したがって「第2ヒンジピン」(「第1リフトシャフト」に相当する。)は第2ヒンジピン挿通孔に緩く挿通されていない点。
ii 相違点2(構成Eに係る相違点)
加圧手段が、
本件発明1においては、「前記リフト部材と前記調整部材の各両側板の間に設けられた」ものであるのに対して、
甲1発明においては、「一端部がリフト部材の上板の上面に取り付けられると共に、他端部が位置調節部材の上板の下面に取り付けられる」ものである点。
iii 相違点3(構成E及びHに係る相違点)
本件発明1においては、
「前記リフト部材と前記調整部材との間に前記第1リフトシャフトを挟んで」「前方側に設けられた増圧手段」を有し、「前記増圧手段は、前記第2リフトシャフトを支点軸にして、前記リフト部材を前記調整部材に対して上方へ加圧して前記加圧手段の加圧力を増圧させるように成した」ものであるのに対して、
甲1発明においては、
増圧手段を有しない点。
d 判断
事案に鑑み、相違点1について検討する。
甲1発明においては、「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」部材であって「リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させるときの支点軸」が、「第2ヒンジピン」(「第1リフトシャフト」に相当する。)であり、「リフト部材の移動範囲を規制する孔と柱状の部材が」「移動規制孔57」及び「移動規制ピン47」であるところ、「リフト部材の移動範囲を規制する孔と柱状の部材」を、「移動規制孔57」及び「移動規制ピン47」に代えて、「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」部材であって「リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させるときの支点軸」であった「第2ヒンジピン」(「第1リフトシャフト」に相当する。)に変更し、「前記リフト部材の前記両側板及び前記調整部材の前記両側板を軸支する」部材であって「リフト部材を前記調整部材に対して下方へ加圧させるときの支点軸」を「第2ヒンジピン」(「第1リフトシャフト」に相当する。)から「作動ピン」(本件発明1における「第2リフトシャフト」に相当する。)に変更することについて、甲1文献には記載や示唆はなく、甲2技術事項及び甲3技術事項は相違点1を満たす技術事項ではなく、甲2文献及び甲3文献の全体を見ても相違点1を導く記載や示唆はなく、その契機となるような事情は見当たらず、かつ、相違点1は周知の技術ともいえないので、前記相違点1は、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、本件発明1は、相違点2及び3について判断するまでもなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明2~5について
請求項2~5は請求項1の記載を引用しているものであり、本件発明2~本件発明5は本件発明1の構成を全て備えるから、本件発明2~5は、本件発明1と同様の理由で、甲1発明ではなく、また、本件発明2~5は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 特許異議申立理由についての小括
以上のとおりであるから、特許異議申立書による申立理由(取消理由通知書(決定の予告)で通知したものを除く。)によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明1~5に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消の理由及び特許異議申立書による申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700514