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特許異議申立

2019-700075

ゼオライト材料の後処理

審判番号
2019-700075
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-537192
登録番号
特許第6367812号(P6367812)
請求日
2019年02月01日
審決日
2020年08月25日
公報発行日
2021年05月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
  • 【権利者代理人】江藤 聡明
  • 【異議申立人】松永 健太郎
  • 【異議申立人】小海 善史
審判長/審判官
  • 審判長 菊地 則義
  • 審判官 川村 裕二
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.113-ZDA(C01B) / P1651.121-ZDA(C01B) / P1651.537-ZDA(C01B) / P1651.55 -ZDA(C01B) / P1651.851-ZDA(C01B) / P1651.853-ZDA(C01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第4号、特許法第29条第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6367812号発明「ゼオライト材料の後処理」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6367812号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~17〕、〔18~25〕について訂正することを認める。 特許第6367812号の請求項1、2、4~11、13、14、16、17に係る特許を維持する。 特許第6367812号の請求項18、19、21、24、25に係る特許を取り消す。 特許第6367812号の請求項3、12、15、20、22、23に係る特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯 本件特許第6367812号は、2013年(平成25年)10月9日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年10月18日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成30年7月13日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月1日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成31年 2月 1日付け:特許異議申立人松永健太郎(以下「特許異議申立人1」という。)による請求項1~25に係る特許に対する特許異議の申立て 平成31年 2月 1日付け:特許異議申立人小海善史(以下「特許異議申立人2」という。)による請求項1~25に係る特許に対する特許異議の申立て 平成31年 3月28日付け:取消理由通知書 令和 1年 7月 1日付け:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 1年 9月 6日付け:特許異議申立人1による意見書の提出 令和 1年11月26日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和 2年 2月26日付け:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 2年 4月 7日付け:特許異議申立人1による意見書の提出 令和 2年 6月 3日付け:特許権者に対する審尋 令和 2年 6月30日付け:上記審尋に対する特許権者による回答書 令和 2年 7月14日  :特許権者に対する合議体からの問い合わせ(応対記録あり) 令和 2年 8月 4日付け:特許権者による訂正案の提出(応対記録に添付あり) 令和 2年 8月 4日  :上記訂正案に対する合議体の回答(応対記録あり) なお、令和1年7月1日及び令和2年2月26日になされた訂正請求について、期間を指定して特許異議申立人2に意見を求めたが、意見書等の提出はなされなかった。 第2.訂正請求について 1.訂正の内容 令和2年2月26日付け訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。」)は、次の訂正事項1~25からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。 なお、令和1年7月1日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 訂正事項1 請求項1について、「(i)ゼオライト材料の骨格構造がYO2及びX2O3を含み、Yが4価元素であり、Xが3価元素であり、YがSi、Sn、Ti、Zr、Ge及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択され、XがAl、B、In、Ga、Fe及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される、ゼオライト材料を準備する工程と、」との記載を、「(i)ゼオライト材料の骨格構造がYO2及びX2O3を含み、YがSiであり、XがAlである、ゼオライト材料を準備する工程を含み、」に訂正し、当該「・・・、ゼオライト材料を準備する工程を含み、」の記載の後に、「ここで(i)におけるゼオライト材料を準備する工程が、(1)種結晶並びにYO2の少なくとも1つの源及びX2O3の少なくとも1つの源を含む混合物を調製する工程と、(2)(1)において調製した混合物からゼオライト材料を結晶化する工程とを含む、有機鋳型を用いない合成方法を行うことを含み、(1)において用いる種結晶が(i)において準備されるゼオライト材料の骨格構造を有するゼオライト材料を含み、及び更に」という記載を導入すると共に、「少なくとも90質量%の水を含む液体水性系により処理する工程とを含む方法で処理する工程とを含み、」の記載の後に、「(ii)の(a)において、水溶液によるゼオライト材料の処理の後に、ゼオライト材料を懸濁液から分離し、そして分離したゼオライト材料を、75℃未満の範囲の温度で洗浄するステップにかけ、」という記載を導入する。(請求項1の記載を引用する請求項2、4~11、13、14も同様に訂正する。) 訂正事項2 請求項3を削除する。 訂正事項3 請求項4が引用する請求項を、「請求項1から3のいずれか一項」から、「請求項1又は2のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項4 請求項5が引用する請求項を、「請求項1から4のいずれか一項」から、「請求項1、2及び4のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項5 請求項6が引用する請求項を、「請求項1から5のいずれか一項」から、「請求項1、2、4及び5のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項6 請求項7が引用する請求項を、「請求項1から6のいずれか一項」から、「請求項1、2、4から6のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項7 請求項8が引用する請求項を、「請求項1から7のいずれか一項」から、「請求項1、2、4から7のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項8 請求項9が引用する請求項を、「請求項1から8のいずれか一項」から、「請求項1、2、4から8のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項9 請求項10が引用する請求項を、「請求項1から9のいずれか一項」から、「請求項1、2、4から9のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項10 請求項11が引用する請求項を、「請求項1から10のいずれか一項」から、「請求項1、2、4から10のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項11 請求項12を削除する。 訂正事項12 請求項13が引用する請求項を、「請求項1から12のいずれか一項」から、「請求項1、2、4から11のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項13 請求項15を削除する。 訂正事項14 請求項16が引用する請求項を、「請求項1から15のいずれか一項」から、「請求項1、2、4から11、13及び14のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項15 請求項17が引用する請求項を、「請求項1から16のいずれか一項」から、「請求項1、2、4から11、13、14及び16のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項16 請求項18について、「Yが4価元素であり、Xが3価元素であり、YがSi、Sn、Ti、Zr、Ge及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択され、XがAl、B、In、Ga、Fe及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される、YO2及びX2O3を含む骨格構造を有し、」との記載を、「YがSiであり、XがAlである、YO2及びX2O3を含む骨格構造を有し、及びBEA骨格構造を有し、」に訂正し、「IRスペクトルによって特徴づけられる、ゼオライト材料。」との記載を「IRスペクトルによって特徴づけられ、YO2:X2O3モル比が12:1から40:1の範囲であり、水取込み量が最大限でも20質量%である、ゼオライト材料。」に訂正する(請求項18の記載を引用する請求項19、21、24、25も同様に訂正する。) 訂正事項17 請求項19について、「YO2:X2O3モル比が20:1~60:1の範囲」から、「YO2:X2O3モル比が20:1~40:1の範囲」に訂正する。 訂正事項18 請求項20を削除する。 訂正事項19 請求項21が引用する請求項を、「請求項18又は20」から、「請求項18」に訂正する。 訂正事項20 請求項22を削除する。 訂正事項21 請求項23を削除する。 訂正事項22 請求項24について、「YがSiであり、XがAlであり、ゼオライト材料が脱アルミニウム化ゼオライトベータである」という記載を、「ゼオライト材料が脱アルミニウム化ゼオライトベータである」に訂正し、さらに請求項24が引用する請求項を、「請求項18から23のいずれか一項」から、「請求項18、19及び21のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項23 請求項25が引用する請求項を、「請求項18から24のいずれか一項」から、「請求項18、19、21及び24のいずれか一項」に訂正する。 一群の請求項について 訂正前の請求項1の記載を請求項2~17が引用し、訂正前の請求項18の記載を請求項19~25が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~17に係る発明は一群の請求項であり、訂正前の請求項18~25に係る発明は一群の請求項である。 したがって、請求項1に係る訂正事項1及び請求項18に係る訂正事項16を含む本件訂正請求は、これらの一群の請求項それぞれについて請求したものと認められる。 2.訂正の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1に記載された「ゼオライト材料の後処理の方法」の発明において、ゼオライトの骨格構造を構成するYO2及びX2O3の構成元素であるY及びXをSi及びAlに限定し、「ここで(i)におけるゼオライト材料を準備する工程が、(1)種結晶並びにYO2の少なくとも1つの源及びX2O3の少なくとも1つの源を含む混合物を調製する工程と、(2)(1)において調製した混合物からゼオライト材料を結晶化する工程とを含む、有機鋳型を用いない合成方法を行うことを含み、(1)において用いる種結晶が(i)において準備されるゼオライト材料の骨格構造を有するゼオライト材料」を含むことを導入してゼオライト材料を準備する工程を具体的にしてより限定し、さらに「(ii)の(a)において、水溶液によるゼオライト材料の処理の後に、ゼオライト材料を懸濁液から分離し、そして分離したゼオライト材料を、75℃未満の範囲の温度で洗浄するステップ」を導入して(ii)の(a)において水溶液によるゼオライト処理の後に洗浄するステップを追加し(a)の工程をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、ゼオライトの骨格構造を構成するYO2及びX2O3の構成元素であるYがSi、XがAlであることは訂正前の特許請求の範囲の請求項12に、ゼオライト材料を準備する工程の具体的な工程は訂正前の特許請求の範囲の請求項15にそれぞれ記載されており、さらに(ii)の(a)において水溶液による処理後のゼオライトを洗浄するステップについては本件明細書の段落0038に「本発明によれば、ゼオライト材料は、好ましくはろ過法により懸濁液から分離する。上述のように、工程(a)の後に、好ましくは分離されたゼオライト材料を75℃未満の温度での洗浄工程及び/又は乾燥及び/又は焼成にかけることができる。」と記載されているから、いずれも願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 さらに、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2、11、13、18、20、21について 訂正事項2、11、13、18、20、21は、いずれも請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3~10、12、14、15、19、23について 訂正事項3~10、12、14、15、19、23は、いずれも上記(2)で検討した請求項を削除する訂正事項にともない、削除した請求項を引用する請求項から削除するものであり、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項は、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 さらに、引用する請求項を削除することにより、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項16について 訂正事項16は、請求項18に記載された「ゼオライト材料」の発明において、ゼオライトの骨格構造を構成するYO2及びX2O3の構成元素であるY及びXをSi及びAlに限定し、骨格構造がBEAであることを限定し、さらにYO2:X2O3モル比及び水取込み量を所定の範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、ゼオライトの骨格構造を構成するYO2及びX2O3の構成元素であるYがSi、XがAlであることは訂正前の特許請求の範囲の請求項22に記載されているものであり、骨格構造がBEAであることは本件明細書の段落0087に「好ましくは、ゼオライト材料は、LEV、CHA、MFI、MWW、BEA骨格構造を有し、骨格構造は、好ましくはBEAであり、ゼオライト材料はより好ましくはゼオライトベータである。」と記載されており、さらにYO2:X2O3モル比は本件明細書の段落0078に「したがって、本発明は、(a)による少なくとも1回の処理とそれに続く(b)による処理の後に、ゼオライト材料が好ましくは少なくとも12:1の合成後に増加したYO2:X2O3モル比を有し、より好ましくは増加したモル比が12:1~60:1の範囲にある、Yが4価元素であり、Xが3価元素である、YO2及びX2O3を含む骨格構造を有するゼオライト材料に関する。・・・(a)による少なくとも1回のさらなる処理を適用する場合、ゼオライト材料は、好ましくは20:1~60:1、より好ましくは20:1~40:1の範囲のYO2:X2O3モル比を有する。」(「・・・」は省略を示す。)と、水取込み量は訂正前の特許請求の範囲の請求項20にそれぞれ記載されているから、いずれも願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 さらに、訂正事項16は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項17について 訂正事項17は、請求項19に記載されていた「ゼオライト材料」の発明において、YO2:X2O3モル比の上限を60:1から40:1に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、YO2:X2O3モル比の範囲が12:1~40:1であることは本件明細書の段落0078にYO2:X2O3モル比は本件明細書の段落0078に「したがって、本発明は、(a)による少なくとも1回の処理とそれに続く(b)による処理の後に、ゼオライト材料が好ましくは少なくとも12:1の合成後に増加したYO2:X2O3モル比を有し、より好ましくは増加したモル比が12:1~60:1の範囲にある、Yが4価元素であり、Xが3価元素である、YO2及びX2O3を含む骨格構造を有するゼオライト材料に関する。・・・(a)による少なくとも1回のさらなる処理を適用する場合、ゼオライト材料は、好ましくは20:1~60:1、より好ましくは20:1~40:1の範囲のYO2:X2O3モル比を有する。」(「・・・」は省略を示す。)と記載されているから、願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 さらに、訂正事項17は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項22について 訂正事項22において、訂正前の請求項24における「YがSiであり、XがAlであり、ゼオライト材料が」という記載の「YがSiであり、XがAlであり、」との記載を削除することについては、請求項24が直接又は間接的に引用する請求項18に係る訂正事項16としてYがSiでありXがAlであると限定されたことに伴い記載を簡潔にしたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、請求項24が引用する請求項を「請求項18、19及び21のいずれか一項」に訂正することは、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項は、明瞭でない記載の釈明及び選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 さらに、明瞭でない記載の釈明及び引用する請求項を削除により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)独立特許要件について 特許異議申立ては、全ての請求項1~25についてされているので、一群の請求項〔1~17〕〔18~25〕に係る訂正事項1~23に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3.まとめ 以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1~25について訂正することを認める。 第3.本件発明について 本件特許の請求項1、2、4~11、13、14、16~19、21、24、25に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明4」~「本件発明11」、「本件発明13」、「本件発明14」、「本件発明16」~「本件発明19」、「本件発明21」、「本件発明24」、「本件発明25」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるものである(下線部は訂正箇所を示す。)。 【請求項1】 ゼオライト材料の後処理の方法であって、 (i)ゼオライト材料の骨格構造がYO2及びX2O3を含み、YがSiであり、XがAlである、ゼオライト材料を準備する工程を含み、 ここで(i)におけるゼオライト材料を準備する工程が、 (1)種結晶並びにYO2の少なくとも1つの源及びX2O3の少なくとも1つの源を含む混合物を調製する工程と、 (2)(1)において調製した混合物からゼオライト材料を結晶化する工程と を含む、 有機鋳型を用いない合成方法を行うことを含み、 (1)において用いる種結晶が(i)において準備されるゼオライト材料の骨格構造を有するゼオライト材料を含み、及び更に (ii)(i)において準備したゼオライト材料を、 (a)最大限でも5のpHを有する、有機酸及び/又は無機酸を含む水溶液により、及び35℃~100℃の範囲の温度で処理する工程と、 (b)(a)から得られたゼオライト材料を、5.5~8の範囲のpH及び少なくとも75℃の温度を有し、かつ、少なくとも90質量%の水を含む液体水性系により処理する工程と を含む方法で処理する工程とを含み、 (ii)の(a)において、水溶液によるゼオライト材料の処理の後に、ゼオライト材料を懸濁液から分離し、そして分離したゼオライト材料を、75℃未満の範囲の温度で洗浄するステップにかけ、 (a)における水溶液のpH及び(b)における液体水性系のpHをpH感受性ガラス電極を用いて測定する、方法。 【請求項2】 (ii)による方法が、 (a)ゼオライト材料を最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する工程と、 (b)(a)から得られたゼオライト材料を5.5~8の範囲のpH及び少なくとも75℃の温度を有する液体水性系により処理する工程と、 (a)(b)から得られたゼオライト材料を最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する工程と を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 削除 【請求項4】 (a)において、水溶液が、シュウ酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される有機酸、及び/又は、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される無機酸を含む、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。 【請求項5】 (a)において、水溶液が0~5の範囲のpHを有する、請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の方法。 【請求項6】 (a)において、ゼオライト材料を水溶液により10分~12時間の範囲の期間にわたり処理する、請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載の方法。 【請求項7】 (b)において、ゼオライト材料を液体水性系により80℃~180℃の範囲の温度で処理する、請求項1、2、4から6のいずれか一項に記載の方法。 【請求項8】 (b)において、ゼオライト材料を液体水性系により0.5時間~24時間の範囲の期間にわたり処理する、請求項1、2、4から7のいずれか一項に記載の方法。 【請求項9】 (b)において、ゼオライト材料に対する液体水性系の質量比が20:1~2:1の範囲にある、請求項1、2、4から8のいずれか一項に記載の方法。 【請求項10】 (b)において、液体水性系が少なくとも99質量%の水を含む、請求項1、2、4から9のいずれか一項に記載の方法。 【請求項11】 (ii)において(b)の後に、ゼオライト材料を乾燥及び/又は焼成処理する、請求項1、2、4から10のいずれか一項に記載の方法。 【請求項12】 削除 【請求項13】 (a)による水溶液及び/又は(b)による液体水性系が少なくとも1種の有機酸の少なくとも1種の塩及び/又は少なくとも1種の無機酸の少なくとも1種の塩を含む、請求項1、2、4から11のいずれか一項に記載の方法。 【請求項14】 少なくとも1種の塩がアンモニウム塩であり、(i)において準備されるゼオライト材料がそのナトリウム型として準備される、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 削除 【請求項16】 (i)において準備するゼオライト材料がLEV、CHA、MFI、MWW、BEA骨格構造を有する、請求項1、2、4から11、13及び14のいずれか一項に記載の方法。 【請求項17】 (i)においても(ii)においても(ii)の後においても、ゼオライト材料を蒸気処理にかけない、請求項1、2、4から11、13、14及び16のいずれか一項に記載の方法。 【請求項18】 YがSiであり、XがAlである、YO2及びX2O3を含む骨格構造を有し、及び BEA骨格構造を有し、 3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯と、3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯とを示し、 第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比が0.1~0.9の範囲にある、IRスペクトルによって特徴づけられ、 YO2:X2O3モル比が少なくとも12:1から40:1の範囲であり、 水取込み量が最大限でも20質量%である、ゼオライト材料。 【請求項19】 YO2:X2O3モル比が20:1~40:1の範囲にある、請求項18に記載のゼオライト材料。 【請求項20】 削除 【請求項21】 IRスペクトルが3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯と、3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯とを示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比が0.2~0.8の範囲にある、請求項18に記載のゼオライト材料。 【請求項22】 削除 【請求項23】 削除 【請求項24】 ゼオライト材料が脱アルミニウム化ゼオライトベータである、請求項18、19及び21のいずれか一項に記載のゼオライト材料。 【請求項25】 触媒工程における触媒として請求項18、19、21及び24のいずれか一項に記載のゼオライト材料を使用する方法。 第4.取消理由について 1.令和1年11月26日付け取消理由について (1)取消理由の概要 令和1年11月26日付け取消理由通知書(決定の予告)における取消理由の概要は、以下のとおりである。 理由1(サポート要件) シラノールネストに帰される吸収帯の極大がみられる範囲はゼオライト材料の構造等により変化するものであるであるといえ、YがSiであり、XがAlであるBEA型ゼオライト以外の全てのゼオライト材料について、3730cm-1~3750cm-1の吸収帯が表面シラノール基に起因し、3600cm-1~3700cm-1の吸収帯がシラノールネスト等の内部欠陥に起因するものであるとは必ずしもいえないため、YがSiであり、XがAlであるBEA型ゼオライト以外のゼオライト材料については、「3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯」のピーク高さに対する「3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯」のピーク高さの比が0.1~0.9の範囲内であることが、必ずしも低い内部欠陥濃度を意味しないから、令和1年7月1日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲における請求項18、21に記載された、前記ピーク高さの比が所定の範囲内であるゼオライト材料の全てが課題を解決するものであるとはいえず、令和1年7月1日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲における請求項18、19、21、23~25に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由2(明確性) (A)令和1年7月1日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲における請求項3~11、13、14、16、17に係る発明ついては、(a)における洗浄するステップの後に、さらに「5.5~8の範囲のpH及び75℃未満の範囲の温度を有する液体水性系による処理」をすることについて、本件明細書の記載を参酌してもその技術的意義を把握することができず、その技術的意義が不明である。 (B)令和1年7月1日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲における請求項18、19、21、23~25に係る発明における「第1の吸収帯のピーク高さ」及び「第2の吸収帯のピーク高さ」を求める際について、本件明細書にはIRスペクトルのベースライン補正を行うことが記載されている(段落0095参照。)が、本件明細書には当該IRスペクトルのベースライン補正を行う具体的な方法について記載されておらず、ベースラインの引き方には複数の方法があることが当業者に周知であって、ベースラインの引き方によりピーク高さが異なることが自明であることから、当業者が技術常識を考慮しても、「第1の吸収帯のピーク高さ」及び「第2の吸収帯のピーク高さ」を一意に決定することはできず、その結果令和1年7月1日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲における請求項18、20に記載された「第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比」を一意に決定することができない。 理由3(新規性) 令和1年7月1日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲における請求項18、19、21、23~25に係る発明は、特許異議申立人1が甲第2号証として提示し、また、特許異議申立人2が甲第1号証として提示した文献である'Infrared spectroscopic study of the acid properties of dealuminated BEA zeolites'(J.P. Marques et al., Microporous and Mesoporous Materials, 2003年, vol.60, pp.251-262)(以下、「引用文献1」という。)に記載されている発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)取消理由に対する当審の判断 ア.理由1(サポート要件)について 本件訂正請求により、本件発明18は、「YがSiであり、XがAlである」こと、及び「BEA骨格構造」を有することが限定され、3730cm-1~3750cm-1の吸収帯が表面シラノール基に起因し、3600cm-1~3700cm-1の吸収帯がシラノールネスト等の内部欠陥に起因するものとなったため、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さが0.1~0.9の範囲にあることが、低い内部欠陥濃度を有することを意味するものとなったものである。 してみると、本件発明18、19、21、24、25は、課題を解決するものであるから、上記理由1は理由がない。 イ.理由2(明確性)について (ア)(A)について 本件訂正請求により、令和1年7月1日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲における請求項3は削除され、本件発明1、2、4~11、13、14、16、17は、いずれも(a)における洗浄するステップの後に、さらに「5.5~8の範囲のpH及び75℃未満の範囲の温度を有する液体水性系による処理」をすることを特定事項として有しないこととなったから、上記理由2は理由がない。 (イ)(B)について 本件訂正請求においては、本件発明18及び21における「第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比」については訂正されていない。 そこで、令和2年2月26日付け意見書における特許権者の主張について検討する。 a.特許権者の主張について 上記意見書における特許権者の主張は、要するに、以下のとおりである。 (i)ベースライン補正は、オムニック ソフトウェア プログラムを使用することによって行われる。 (ii)ベースライン補正は、乙第5号証として提出する米国特許明細書2013/0053609号(特に段落0072)に記載された方法に従って実施することが可能である。 (iii)どのような補正ベースライン補正が適用されたとしても、第2の吸収帯のピーク高さの第1の吸収帯のピーク高さに対する割合は同じであり、本件発明18は、第2の吸収帯のピーク高さの第1の吸収帯のピーク高さに対する割合に関するものであるから、各ピーク高さの値自体は関与しない。 b.特許異議申立人の主張について 上記特許権者の主張に対する、令和2年4月7日付け意見書における特許異議申立人1の主張は、要するに、以下のとおりである。 (iv)ベースライン補正方法を変更することにより、本件発明18におけるピーク高さの比は変動し得るものである。 (v)本件発明で用いられるベースラインの補正方法が、特許権者が提出した乙第5号証に記載された方法であるとの根拠は、本件明細書等に記載されていない。 c.当審の判断 上記特許権者及び特許異議申立人1の主張を踏まえ、ベースラインの補正方法について再度検討する。 特許権者は、上記のとおり、ベースライン補正は「オムニック ソフトウェア プログラム」を使用することによって行われると主張しているが、当該ソフトウェアのベースライン補正の方法、及び当該ベースライン補正の適用条件等について依然として不明であるため、特許権者の当該主張のみでベースライン補正の方法が明確であり、本件発明18の第1の吸収帯及び第2の吸収帯のピーク高さを一意に決定することができるとは認められない。 そして、乙第5号証には、ベースライン補正を行うことは記載されているが、当該ベースライン補正の方法は具体的には記載されていないため、乙第5号証を参考にしても本件発明18におけるベースライン補正が、当業者に周知である一般的なベースライン補正とどのように異なるものであるかを理解することができないから、上記特許権者の主張のうち(i)及び(ii)は採用しない。 さらに、ベースライン補正の一般的な方法において、ベースライン補正の方法により第2の吸収帯のピーク高さの第1の吸収帯のピーク高さに対する割合が変化することは、下記の令和1年9月6日付け特許異議申立人1による意見書の第4頁に示された拡大図1及び拡大図2の記載から明らかであるから、上記特許権者の主張のうち(iii)も採用しない。 「 」(令和1年9月6日付けの特許異議申立人1の意見書第4頁から引用) d.訂正案について 特許権者は、令和2年6月30日付け回答書及び令和2年8月4日付けファクシミリ(応対記録に添付あり)で、それぞれ訂正案を提示していることから、当該訂正案について検討する。 上記二つの訂正案は、共に、本件発明18における「3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯と、3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯とを示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比が0.1~0.9の範囲にある、IRスペクトル」との記載を、「3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯と、3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯とを示し、第1の吸収帯のピーク高さは、第2の吸収帯のピーク高さよりも高いIRスペクトル」(下線部は訂正箇所を示す。)と訂正することを包含するものである。 しかしながら、前記訂正は、IRスペクトルに関する記載から「第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比が0.1~0.9」を削除することで、当該ピーク高さの比が0超0.1未満及び0.9超1未満の範囲が新たに訂正後の本件発明18に含まれるものとなることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえないし、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明及び他の請求の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものでもない。さらに、訂正前の特許請求の範囲に含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるものであり、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。 してみると、訂正案の訂正は、特許法第120条の5第2項但し書き第1号~第4号に掲げる事項を目的とするものではなく、同条第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものでもない。 したがって、特許権者の提示する上記二つの訂正案の訂正は認められないから、理由2の(B)は解消しない。 e.まとめ 以上の検討より、本件発明18、19、21、24、25に対する上記理由2の(B)は、特許権者の主張を考慮しても解消したとは認められないため、本件発明18、19、21、24、25に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 ウ.理由3(新規性)について (ア)本件発明 本件発明18、19、21、24、25は、前記第3のとおりである。 ただし、上記イ.(イ)で指摘した理由により、本件発明18及び21における「第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比」を求める際のベースライン補正の方法は任意であると解釈して、新規性及び進歩性に係る判断を行う。 (イ)特許異議申立人が提出した証拠の記載事項 a.引用文献1 引用文献1には、以下の記載がある。(和訳は、特許異議申立人1及び特許異議申立人2が提出した抄訳を参考にして、当審が作成した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。) (a1) 「HBEA zeolite has been shown to be a good acid catalyst for many industrial reactions such as isobutane alkylation with n-butene [1], aromatic alkylation such as cumene synthesis [2,3], selective synthesis of various organic compounds [4,5]: cis-4-tert-butylcyclohexanol from Meerwein Pondorff Verley reduction of 4-tert-butylcyclohexanone [6], p-acetylanisole from anisole acetylation with acetic anhydride [5,7].」(第251頁左下欄第2行~右下欄第5行) (和訳)HBEAゼオライトは多くの工業反応、例えばn-ブテンとのイソブタンアルキル化[1」、クメン合成等の芳香族アルキル化[2、3]、種々の有機化合物の選択的合成[4、5]:4-tert-ブチルシクロヘキサノンノのメールワイン・ポンドルフ・バーレー還元からのシス-4-tert-ブチルシクロヘキサノール合成[6]、無水酢酸とのアニソールアセチル化からのp-アセチルアニソール合成[5、7]等にとって良好な酸触媒となっている。 (a2) 「2. Experimental 2.1. Preparation of dealuminated samples The parent sample (Cal) results from the calcination under dry air flow up to 550 ℃ of a NH4-BEA sample supplied by Zeolyst International (CP814E). Chemical and 29Si NMR analysis of the NH4-BEA sample showed total and framework Si:Al ratios of 12.5 and 15.5, respectively.」 (第252頁右欄第37~44行) (和訳)2.実験 2.1 脱アルミニウム化サンプルの作製 親サンプル(Cal)は、ゼオリスト・インターナショナル社(CP814E)により提供されたNH4-BEAサンプルを550℃までの乾燥空気流のもと、焼成して得られた。NH4-BEAサンプルの化学分析及び29SiNMR分析により、全体及び骨格のSi:Al比がそれぞれ12.5及び15.5であることがわかった。 (a3) 「 」(第253頁左欄上部) (和訳)表1 HBEAサンプルの処理と命名 サンプル  処理方法 Cal     NH4 BEA(Zeolyst)の焼成 St500(3)   蒸気処理、93.3 kPa 水、500℃、3時間 St500(6)  蒸気処理、93.3 kPa 水、500℃、6時間 St700(3)  蒸気処理、93.3 kPa 水、700℃、3時間 Ac30(0.5)  酸浸出、HCl、1 N、30℃、0.5時間 Ac30(2)   酸浸出、HCl、1 N、30℃、2時間 Ac30(4)   酸浸出、HCl、1 N、30℃、4時間 Ac100(4)  酸浸出、HCl、1 N、100℃、4時間 HFS75(10)  (NH4)2SiF6、75℃、Dth=10% HFS75(150) (NH4)2SiF6、75℃、Dth=150% HFS75(435) (NH4)2SiF6、75℃、Dth=435% HFS25(300) (NH4)2SiF6、25℃、Dth=300% Dth:追加された(NH4)2SiF6の量と完全な脱アルミニウム化のために必要な量の比 (a4) 「The steamed samples, St (Table 1), were prepared by treatment of the sample Cal at 500 or 700 ℃ under a water-air mixture flow (Pwater = 93.3 kPa) for 3 or 6 h. The acid treatment was carried out under stirring at temperatures of 30 and 100 ℃, with a HCl concentration of 1 N and an acid solution to zeolite ratio of 10 cm3g-1. After the treatment, the zeolite samples were recovered by filtration, washed with a large amount of warm deionized water (70-80 ℃) and then oven-dried at 120 ℃ for 24 h. The ammonium hexaflurosilicate dealuminated samples, HFS (Table 1), were prepared according to the method developed by Breck et al. [29,30]. The quantity of (NH4)2SiF6 added corresponds to 0.10, 1.5, 3.0 and 4.35 times the stoechiometric amount required for the complete dealumination of the sample: Dth = 10%, 150%, 300% and 450%, respectively. The nomenclature and the chemical formulae of the samples are presented in Tables 1 and 2.」(第253頁左欄第1行~右欄第8行) (和訳)蒸気処理されたサンプルであるSt(表1)は、サンプルCalを500℃又は700℃で、水と空気の混合流(Pwater=93.3kPa)のもと、3時間又は6時間処理して作製された。 酸処理は、1Nの濃度のHClを用い、酸溶液とゼオライトの比を10cm3g-1とし、30℃及び100℃の温度で撹拌しながら実施した。処理後、ゼオライトのサンプルは濾過により回収し、大量の温かい脱イオン水(70~80℃)で洗浄し、120℃で24時間炉乾燥した。 ヘキサフルオロケイ酸アンモニウムの脱アルミニウム化サンプルであるHFS(表1)は、Breckら[29,30]により開発された方法で作製した。追加された(NH4)2SiF6の量は、サンプルの完全な脱アルミニウム化に必要な化学量論的な量の0.10倍、1.5倍、3.0倍、4.35倍に相当する:それぞれ、Dth=10%、150%、300%及び450%である。 (a5) 「 」(第253頁下部) (和訳)表2 HBEAサンプルの単位セル組成 サンプル  単位セル式          Si/Al     NEFAL 全体 骨格 Cal     Na0.06H1.8Al1.9Si62.1O128  12.5  33  3.1 St500(3)  Na0.06H1.7Al1.7Si62.3O128  12.5  36  3.3 St500(6)  Na0.06H1.5Al1.6Si62.4O128  12.5  40  3.4 St700(3)  Na0.06H0.5Al0.6Si63.4O128  12.5  110  4.4 Ac30(0.5)  H1.7Al1.7Si62.1(OH)0.6O127  30.0  36  0.4 Ac30(2)   H1.7Al1.7Si62.1(OH)0.8O127  35.0  37  0.1 Ac30(4)   H1.7Al1.7Si62.1(OH)0.8O127  37.0  37  0.0 Ac100(4)  H0.8Al0.8Si62.1(OH)4.5O124  82.0  82  0.0 HFS75(10)  H1.7Al1.7Si62.3O128     12.6  37 HFS75(150) H1.6Al1.6Si62.4O128     26.4  40 HFS75(435) H0.9Al0.9Si63.1O128     37.3  70 HFS25(300) H1.2Al1.2Si62.8O128     29.2  51 (a6) 「 」(第254頁下部) (和訳)表3 サンプル物理化学的特徴 サンプル 空隙体積       構造          酸度 マイクロ空隙 メソ空隙 相対的 結晶子 結晶子 ブレン ルイス (cm3/g)  (cm3/g) 結晶度 サイズbサイズcステッド (%)  (nm)  (nm) (μmol/g) (μmol/g) Cal     0.176    0.510  96  11.7   18.5  315  340 St500(3)  0.160    0.501             222  173 St500(6)  0.165    0.517  100  11.2   20.4  205  182 St700(3)  0.140    0.554              96  100 Ac30(0.5)  0.177    0.527  93  11.7   18.9  259  132 Ac30(2)   0.175    0.487             207   76 Ac30(4)   0.178    0.489  94  11.7   17.7  188   51 Ac100(4)  0.169    0.560  91  11.7   18.1  84   8 HFS75(10)  0.168    0.544             300  191 HFS75(150) 0.148    0.540             276   67 HFS75(435) 0.119    0.366             163   46 HFS25(300) 0.158    0.459  84  11.8   19.6  218   38 (a7) 「3.2. Characterization by IR spectroscopy 3.2.1. Hydroxyl groups Four bands can be clearly distinguished in the spectrum of Cal in the spectral range of hydroxyl stretching modes (Fig. 1(a)): the most intense at 3745 cm-1 which is asymmetric corresponds to different silanol groups as shown later by introduction of pyridine. The band at 3607 cm-1 corresponds to the bridging hydroxyl groups (Si-(OH)-Al). The bands at 3662 and 3782 cm-1 are commonly assigned to two kinds of AlOH groups in which Al atoms belong to EFAL species [15,33] or are tricoordinated Al atoms linked to the framework by two O atoms [9], respectively. Moreover, there is a broad absorption band in the 3700-3300 cm-1 region, which could correspond to hydrogen bonded OH groups [15,18-20,34,35].」(第255頁右欄第9行~第256頁左欄第7行) (和訳)3.2 赤外分光法による評価 3.2.1 ヒドロキシル基 ヒドロキシル伸縮モードのスペクトル域におけるCalのスペクトルにおいて4つの帯域を明確に判別することができ(図1(a))、その中で3745cm-1の帯域が非対称で最も強く、下記のようにピリジンの導入により様々なシラノール基に対応する。3607cm-1の帯域は、共に2種のAlOH基に割り当てられ、そのうちAl原子はEFAL種に属するか[15、33]、又は2つのO原子によってそれぞれ骨格に接続する3配位Al原子[9]である。また、3700から3300cm-1の領域において幅広い吸収バンドがあり、これは水素結合したOH基に対応しうる[15、18~20、34、35]。 (a8) 「 」(第255頁右欄下部) (和訳)図1 活性化されたサンプルのヒドロキシ領域における赤外スペクトル:Cal (a), St500(3) (b), St700(3) (c), Ac30(0.5) (d), Ac30(2) (e), Ac100(4) (f), HFS75(10) (g), HFS75(435) (h). ここで、上記(a5)に記載されたSi/Al(全体)の比は、2を掛けることでSiO2:Al2O3比に換算できるから、HFS75(10)サンプルは25.2のSiO2:Al2O3比を有するといえる。 次に、上記(a8)に示されるHFS75(10)サンプルのIRスペクトル(記号「g」が付されたもの)について、以下のように、3800~3850cm-1付近の吸光度を基準とするベースラインを設定する。 「 」(特許異議申立人2が提示した甲第3号証第3頁から引用) そして、HFS75(10)サンプルのIRスペクトルについて、上記ベースラインを基準として、3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯のピーク高さ(3735cm-1付近のピーク高さ)に対する、3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯のピーク高さ(3607cm-1付近のピーク高さ)の比を求めると、約0.36となる。 そうすると、上記(a2)には、NH4-BEAゼオライトを焼成して得られるゼオライトが記載されており、上記(a3)及び(a4)には、当該ゼオライトを(NH4)2SiF6で処理することにより得られた脱アルミニウム化されたゼオライトが記載されていることから、引用文献1には、脱アルミニウム化されたゼオライトに関し、 「NH4-BEAゼオライトを焼成して得られるゼオライトを、(NH4)2SiF6で処理することにより得られた、脱アルミニウム化されたゼオライトであって、SiO2:Al2O3比が25.2であり、IRスペクトルにおいて3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯のピーク高さに対する、3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯のピーク高さの比が約0.36である、ゼオライト。」の発明(以下、「引用発明1c」という。)が記載されていると認める。 (ウ)対比・判断 a.本件発明18について 本件発明18と引用発明1cを対比する。 引用発明1cの「NH4-BEA」はSiO2及びAl2O3骨格構造からなるBEA型のゼオライトであるから、本件発明18における「YがSiであり、XがAlである、YO2及びX2O3を含む骨格構造を有し、BEA骨格構造を有」する「ゼオライト材料」に相当する。そして、引用発明1cの「SiO2:Al2O3比が25.2」であることは、SiO2:Al2O3のモル比が25.2:1であることであるから、本件発明18における「YO2:X2O3モル比が12:1から40:1の範囲」であることを満足する。また、本件発明1cの「IRスペクトルにおいて3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯のピーク高さに対する、3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯のピーク高さの比が約0.36」であることは、本件発明18における「3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯と、3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯とを示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比が0.1~0.9の範囲にある、IRスペクトル」であることを満足する。 そうすると、本件発明18と引用発明1cの一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「YがSiであり、XがAlである、YO2及びX2O3を含む骨格構造を有し、及び BEA骨格構造を有し、 3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯と、3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯とを示し、 第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比が0.1~0.9の範囲にある、IRスペクトルによって特徴づけられ YO2:X2O3モル比が12:1から40:1の範囲である、ゼオライト材料。」である点。 (相違点) 本件発明18は、「水取込み量が最大限でも20質量%である」のに対し、引用発明1cは、水取込み量が不明である点。 上記相違点について検討する。 引用発明1cのゼオライトの水取込み量は不明であるが、ゼオライトは脱アルミニウム化により疎水性が高まることが周知であり、また、本件明細書において実施例として開示された、酸溶液による脱アルミニウム処理が行われたBEA型ゼオライトは、その後の液体水性系による処理の有無にもかかわらず、全て20質量%以下の水取込み量を示しているから(比較例1及び実施例1~4を参照。)、引用発明1cのゼオライトの水取込み量も20質量%以下である蓋然性が高く、上記相違点は実質的な相違点ではない。 してみると、本件発明18は、引用発明1cと同一の発明であり、本件発明18は、引用文献1に記載された発明である。 b.本件発明19、21、24について 引用発明1cのゼオライトは、25.2:1のSiO2:Al2O3モル比を有し、3730cm-1~3750cm-1の範囲に極大を有する第1の吸収帯のピーク高さに対する、3600cm-1~3700cm-1の範囲に極大を有する第2の吸収帯のピーク高さの比が約0.36であり、SiO2及びAl2O3からなるBEA骨格構造を有する脱アルミニウム化ベータゼオライトであるから、本件発明19、21、24と引用発明1cとの間に新たな相違点は存在しない。 よって、本件発明19、21、24は、引用文献1に記載された発明である。 c.本件発明25について 引用文献1には、HBEAゼオライトは良好な酸触媒となること(上記(a1)を参照。)が記載されていることから、引用文献1には、引用発明1cの脱アルミニウム化されたHBEAゼオライトを触媒工程における触媒として使用することが記載されているといえる。 よって、本件発明25は、引用文献1に記載された発明である。 (エ)令和2年6月30日付け回答書における特許権者の主張について 本件発明18、19、21、24、25に係る発明が、引用発明1cと同一の発明であるとの取消理由については、令和2年6月3日付けの特許権者への審尋において指摘した。 これに対して、特許権者は、令和2年6月30日付けで提出した回答書において、上記審尋において指摘した取消理由を解消するために訂正案を提示している。 しかしながら、令和2年6月30日付け回答書における訂正案の訂正が認められないことは、上記イ.(イ)のd.で検討したとおりである。 そして、上記回答書における特許権者の主張は、同回答書で提示された訂正案に基くものであり、当該訂正案の訂正が認められないことは上記のとおりであるため、上記回答書における特許権者の主張は採用しない。 (オ)まとめ 本件発明18、19、21、24、25に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第5.令和1年9月6日付けの特許異議申立人1が提出した意見書における理由について 上記第4で検討したとおり、本件発明18、19、21、24、25に係る特許は取り消されるべき理由が存在することから、以下では、本件発明1、2、4~11、13、14、16、17について、検討するものとする。 1.新規性及び進歩性について(令和1年9月6日付け意見書の第4頁下から5行目~第6頁第10行) 上記意見書における特許異議申立人1の新規性及び進歩性に関する主張は、要するに、後処理工程(b)を含む後処理は、引用文献1、及び特許異議申立人2が甲第2号証として提示した、'Dealumination of Zeolite Beta Catalyst Under Controlled Conditions for Enhancing its Activity in Acylation and Esterification' (R. Srivastava etal.,Catalysis Letters, 2009年5月23日, Vol. 130,pp.655-663)(以下、「引用文献2」という。)に記載されているから、本件発明1は引用文献1又は引用文献2に記載された発明であるというものである。 ここで、本件発明1は、(a)最大限でも5のpHを有する、有機酸及び/又は無機酸を含む水溶液により、及び35℃~100℃の範囲の温度で処理する工程、(a’)ゼオライト材料を懸濁液から分離して、そして分離したゼオライト材料を、75℃未満の範囲で洗浄するステップ、及び(b)5.5~8の範囲のpH及び少なくとも75℃の温度を有し、かつ、少なくとも90質量%の水を含む液体水性系により処理する工程を順番に行うものである。 そして、引用文献1には、酸処理の後70~80℃の脱イオン水で洗浄すること(上記第4.1.(2)ウ.(イ)a.の(a4)参照。)が記載されており、引用文献2には、酸処理後熱水で洗浄すること(第656頁右欄第9行~第13行参照。)が記載されており、引用文献1及び引用文献2の酸処理は、本件発明1における上記(a)の工程に相当し、引用文献1及び引用文献2の洗浄することは、本件発明1における上記(b)の工程に相当するものであるが、酸処理と洗浄との間に本件発明1における上記(a’)のステップに相当する洗浄工程をさらに行うことは記載も示唆もされていない。 してみると、本件発明1における(a)の工程、(a’)のステップ及び(b)の工程を含む後処理工程は、引用文献1及び引用文献2に記載されておらず、また、引用文献1又は引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものともいえない。 したがって、特許異議申立人1の上記主張は、採用しない。 2.付言について(令和1年9月6日付け意見書の第8頁第30行~第9頁第14行) 上記意見書における特許異議申立人1の付言は、要するに、本件発明1における「有機鋳型を用いない合成方法を行うことを含み」との記載は、合成過程の一部において有機鋳型を用いる合成方法を行うことを含むものであり、合成過程の一部において有機鋳型を用いる合成方法により得られるゼオライト材料を出発原料とした場合には、本件発明1の処理方法により、本件発明の課題が解決できると当業者が認識できないというものである。 ここで、令和1年7月1日付けの特許権者による意見書において、以下のように主張している。(下線は、当審が付した。また、「・・・」は省略個所を示す。) 「この点に関しましては、引用文献1及び2の何れもが、最も近い技術ではないかと考えられます。・・・実際に、これらの文献では、(高いSi/Al比を有する)有機鋳型合成から得られたベータゼオライト材料は、酸処理に対して安定的であり、そして骨格構造の安定化のための処理を必要としないことが記載されています。・・・特に、本願発明に従う実施例1の方法は、脱アルミニウム工程(酸処理;複数可)を含み、これはTF-BEA(鋳型を使用せずに調製されたBEA)上で行われるものであり」(第3頁第22行~第30行) 「上述しましたように、訂正後の請求項1の発明は、引用文献1及び2とは(i)有機鋳型を用いない合成方法を介してゼオライト材料を準備する構成、・・・という構成で異なっています。」(第3頁第48行~第4頁第4行) 「従いまして、このことは、鋳型の不存在下に調製される出発材料の選択は、本発明のキーパラメーターでもあります。この理由は、異なる出発材料を使用した場合、得られる生成物は異なる特性を示すからです。」(第4頁第23行~第25行) 上記によると、本件発明1の(i)におけるゼオライト材料を準備する工程は、有機鋳型を用いない方法によって行うことを特許権者は主張していると認められる。 そして、本件明細書の段落0051には、以下の記載がある。(下線は、当審が付した。) 「好ましくは、また特に、骨格構造BEAを有するゼオライト材料について、(i)において準備するゼオライト材料は、 (1)種結晶並びにYO2の少なくとも1つの源(原料、YO2源)及びX2O3の少なくとも1つの源(原料、X2O3源)を含む混合物を調製する工程と、 (2)(1)において調製した混合物からゼオライト材料を結晶化する工程と を含む、有機鋳型を用いない合成方法により得られ、 (1)において用いる種結晶は(i)において準備すべきゼオライト材料の骨格構造を有するゼオライト材料を含む。」 上記記載によると、(i)におけるゼオライト材料を準備する工程は、有機鋳型を用いない方法によって行われるものであり、当該記載に接した当業者は(i)において準備するゼオライト材料は有機材料を用いない合成方法によって得られるものと理解するのが自然であり、合成過程の一部において有機鋳型を用いる合成方法によって得られるものであるとは理解しない。 してみると、上記意見書における特許権者の主張、及び本件明細書の記載を参酌すれば、本件発明1は、合成過程の一部において有機鋳型を用いる合成方法を含むものではない。 したがって、特許異議申立人1の付言における主張は採用しない。 第6.取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由について 本件訂正前の請求項1~17に対する特許異議申立ての理由のうち、取消理由で採用しなかった申立ての理由について検討する。 1.特許異議申立人1による申立ての理由 特許異議申立人1による、取消理由で採用しなかった申立ての理由は、以下のとおりである。 ・特許法第36条第6項第1号 本件訂正前の請求項1には、ゼオライト材料の骨格構造が記載されていない。 ・特許法第29条第1項第3号及び同条第2項 本件訂正前の請求項1、4、5、7、10~14、17は、特許異議申立人1が甲第3号証として提示した特開平5-96175号公報(以下、「甲3文献」という。)に記載された発明であり、本件訂正前の請求項1~17は、甲3文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をできたものである。 (1)当審の判断 ア.特許法第36条第6項第1号について 本件発明1は、ゼオライト材料の骨格構造を特定事項として含むものではない。 ここで、本件明細書の段落0076には、以下の記載がある。 「好ましくは、本発明によれば、(ii)による方法は、ゼオライト材料の骨格構造からXの少なくとも一部を除去するための処置である。(i)により準備するゼオライト材料の組成によって、YO2:X2O3モル比は、本発明の方法により少なくとも20%、好ましくは、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%などの少なくとも25%増加する。驚くべきことに、YO2:X2O3モル比が増加するが、本発明による一連の工程(a)及び(b)によって、結晶化度の損失を示さないゼオライト材料を得ることができることが見いだされた。それと反対に、YO2:X2O3モル比を増加させ、同時に結晶化度を増加させることが可能であることが見いだされた。」 当該記載によれば、本件発明1における(ii)の工程は、ゼオライトの骨格構造からXの少なくとも一部を除去するための処置であり、有機酸及び無機酸による処置は骨格構造によらずにゼオライトの骨格構造からXの少なくとも一部を除去するものであるから、本件発明1における(ii)の工程はゼオライトの骨格構造によらず、その効果を奏することは当業者が認識できるものである。 してみると、本件発明1においては、ゼオライトの骨格構造が課題を解決するための必須の手段であるとは認められず、本件発明1の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満足するものである。 したがって、特許異議申立人1による上記特許法第36条第6項第1号に関する主張は、採用しない。 イ.特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について 甲3文献には、酸処理後に80℃の温水で洗浄すること(段落0018参照。)が記載されており、甲3文献の酸処理は、本件発明1における上記(a)の工程に相当し、甲3発明の洗浄することは、本件発明1における上記(b)の工程に相当するものであるが、酸処理と洗浄との間に本件発明1における上記(a’)のステップに相当する洗浄工程をさらに行うことは記載も示唆もされていない。 してみると、本件発明1における(a)の工程、(a’)のステップ及び(b)の工程を含む後処理工程は、甲3文献に記載されておらず、また、甲3文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものともいえない。 したがって、特許異議申立人1による上記特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に関する主張は、採用しない。 2.特許異議申立人2による申立ての理由 特許異議申立人2による、取消理由で採用しなかった申立ての理由は、以下のとおりである。 ・特許法第29条第1号第3号及び第2項 本件訂正前の請求項1は、引用文献2に記載された発明であり、本件訂正前の請求項2~17は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・特許法第36条第6項第1号 本件明細書には、硝酸の実施例しかなく、シュウ酸等の有機酸について同様の効果が得られるかどうかは記載されていない。また、BEA型ゼオライトの実施例しかない。 (1)当審の判断 ア.特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について 引用文献2に、本件発明1における(a)の工程、(a’)のステップ及び(b)の工程が記載されておらず、また、示唆もされていないことは、上記第5の1.で検討したとおりである。 したがって、特許異議申立人2による上記特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に関する主張は、採用しない。 イ.特許法第36条第6項第1号について 上記1.(1)で検討したように、本件発明1における(ii)の工程は、ゼオライトの骨格構造からXの少なくとも一部を除去するための処置であり、有機酸及び無機酸による処置によりゼオライトの骨格構造からXの少なくとも一部を除去することができることから、シュウ酸等の有機酸について同様の効果が得られると当業者は認識できるものである。 また、本件発明1には、ゼオライト材料の骨格構造については記載されていないが、ゼオライトの骨格構造が課題を解決するための必須の手段であるとは認められないことは、上記1.(1)のア.で検討したとおりである。そして、BEA型以外のゼオライトの骨格構造については段落0087に記載されている。 したがって、特許異議申立人2による上記特許法第36条第6項第1号に関する主張は、採用しない。 第7.むすび 以上で検討したとおり、請求項18、19、21、24、25に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第2号及び第4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、請求項1、2、4~11、13、14、16、17に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、2、4~11、13、14、16、17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項3、12、15、20、22、23は、訂正により削除されたため、同請求項に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700075

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  • 2021-700412異議申立 / 2022-01-26 / 訂正認容酸素8員環ゼオライト及びAEI型ゼオライトの製造方法
    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B、537・C01B、851・C01B ほか1件

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