特許訂正審判
2019-390122
細胞障害性ベンゾジアゼピン誘導体
- 審判番号
- 2019-390122
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2017-512775
- 登録番号
- 特許第6606545号(P6606545)
- 請求日
- 2019年12月05日
- 審決日
- 2020年02月19日
- 公報発行日
- 2020年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】イミュノジェン・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】小野 新次郎
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】廣瀬 しのぶ
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬良 聡機
- 審判官 冨永 保
- 審判官 関 美祝
- 分類
- P141 .852-Y (C07D) / P141 .853-Y (C07D) / P141 .854-Y (C07D) / P141 .855-Y (C07D) / P141 .856-Y (C07D) / P141 .841-Y (C07D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第126条、特許法第184条の4第1項、特許法第184条の19
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6606545号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第6606545号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6606545号(以下、「本件特許」という。)は、2015年9月2日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年9月3日、同年12月3日、2015年4月17日及び同年5月20日 いずれもアメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特願2017-512775号の請求項1~30に係る発明について、令和1年10月25日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、令和1年12月5日に本件訂正審判の請求がなされたものである。
第2 請求の趣旨及び訂正の内容
1 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第6606545号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正審判の請求に係る訂正の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件特許明細書の段落【0007】の
「本発明の1つの目的は、以下の式:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
または
【化6】
(式中、
L’、L’’、及びL’’’のうちの1つは、以下の式:
-Z1-P-Z2-Rx-J(A)
により表され、その他の2つは、同じであるか異なっていて、独立して、-H、炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、ポリエチレングリコール単位-(CH2CH2O)n-Rc、ハロゲン、グアニジニウム[-NH(C=NH)NH2]、-OR、-NR’R’’、-NO2、-NR’COR’’、-SR、-SOR’、-SO2R’、-SO3H、-OSO3H、-SO2NR’R’’、シアノ、アジド、-COR’、-OCOR’、及びOCONR’R’’から選択され、
Z1及びZ2のうち一方は-C(=O)-であり、他方は-NR5-であり、
Pは、アミノ酸残基であるか、アミノ酸残基を2~20含有するペプチドであり;
Rxは、炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニルであり、
Jは、細胞障害性化合物を細胞結合剤に共有結合で連結させることができる反応性基を含む部分であり、
NとCの間の二重線
【化7】
は、単結合または二重結合を表すが、ただし、二重線が二重結合である場合、Xは存在せず、Yは-Hであるか、または炭素原子を1~4個有する直鎖または分岐鎖のアルキルであり、二重線が単結合である場合、Xは-Hであるかアミン保護部分であり、
Yは、-OR、-OCOR’、-OCOOR’、-OCONR’R’’、-NR’R’’、-NR’COR’’、-NR’NR’R’’、随意に置換される5員もしくは6員の窒素含有複素環(例えば、窒素原子を介して結合した、ピペリジン、テトラヒドロピロール、ピラゾール、モルホリンなど)、-NR’(C=NH)NR’R’’で表されるグアニジニウム、アミノ酸残基、もしくは-NRCOP’で表されるペプチド、-SR、-SOR’、ハロゲン、シアノ、アジド、-OSO3H、亜硫酸基(-SO3Hまたは-SO2H)、メタ重亜硫酸基(H2S2O5)、モノ、ジ、トリ、及びテトラチオリン酸基(PO3SH3、PO2S2H2、POS3H2、PS4H2)、チオリン酸エステル(RiO)2PS(ORi)、RiS-、RiSO、RiSO2、RiSO3、チオ硫酸基(HS2O3)、亜ジチオン酸基(HS2O4)、ホスホロジチオアート(P(=S)(ORk’)(S)(OH))、ヒドロキサム酸(Rk’C(=O)NOH)、及びホルムアルデヒドスルホキシル酸基(HOCH2SO2-)、またはそれらの混合物から選択される脱離基であり、式中、Riは、炭素原子を1~10個有する直鎖または分岐鎖のアルキルであり、かつ-N(Rj)2、-CO2H、-SO3H、及びPO3Hから選択される少なくとも1つの置換基で置換され、Riは随意に、本明細書中に記載されるアルキルの置換基でさらに置換することができ、Rjは、炭素原子を1~6個有する直鎖または分岐鎖のアルキルであり、Rk’は、炭素原子を1~10個有する直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくアルキニルか、アリール、ヘテロシクリル、もしくはヘテロアリールであり、
P’は、1つのアミノ酸残基であるか、アミノ酸残基を2~20含有するペプチドであり、
Rは、存在する場合それぞれ、独立して、-H、炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、ポリエチレングリコール単位-(CH2CH2O)n-Rc、炭素原子を6~18個有する随意に置換されるアリール、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される1個または複数のヘテロ原子を含有する随意に置換される5員~18員のヘテロアリール環、またはO、S、N、及びPから独立して選択されるヘテロ原子を1~6個含有する随意に置換される3員~18員の複素環からなる群より選択され、
R’及びR’’は、それぞれ独立して、-H、-OH、-OR、-NHR、-NR2、-COR、炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、ポリエチレングリコール単位-(CH2CH2O)n-Rc、及びO、S、N、及びPから独立して選択される1~6個のヘテロ原子を有する随意に置換される3員~18員の複素環から選択され、
Rcは、-Hであるか、炭素原子を1~4個有する随意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキルであり、
nは、1~24の整数であり、
X’は、-H、アミン保護基、炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、ポリエチレングリコール単位-(CH2CH2O)n-Rc、炭素原子を6~18個有する随意に置換されるアリール、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される1個または複数のヘテロ原子を含有する随意に置換される5員~18員のヘテロアリール環、ならびにO、S、N、及びPから独立して選択されるヘテロ原子を1~6個含有する随意に置換される3員~18員の複素環から選択され、
Y’は、-H、オキソ基、炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、随意に置換される6員~18員のアリール、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される1個または複数のヘテロ原子を含有する随意に置換される5員~18員のヘテロアリール環、ヘテロ原子を1~6個有する随意に置換される3員~18員の複素環から選択され、
R1、R2、R3、R4、R1’、R2’、R3’、及びR4’は、それぞれ独立して、-H、炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、ポリエチレングリコール単位-(CH2CH2O)n-Rc、ハロゲン、グアニジニウム[-NH(C=NH)NH2]、-OR、-NR’R’’、-NO2、-NCO、-NR’COR’’、-SR、-SOR’、-SO2R’、-SO3-H、-OSO3H、-SO2NR’R’’、シアノ、アジド、-COR’、-OCOR’、及びOCONR’R’’からなる群より選択され、
R6は、-H、-R、-OR、-SR、-NR’R’’、-NO2、またはハロゲンであり、
Gは、-CH-または-N-であり、
A及びA’は、同じであるか異なっていて、かつ独立して、-O-、オキソ(-C(=O)-)、-CRR’O-、-CRR’-、-S-、-CRR’S-、-NR5、及びCRR’N(R5)-から選択され、
R5は、存在する場合それぞれ、独立して、-Hであるか、あるいは炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキルである)のいずれか1つ、またはその薬学上許容される塩により表される細胞障害性化合物を提供することである。」
との記載を
「【化1】
」
に訂正する(審決注:下線は訂正箇所を示す。以下同じ。)。
(2)訂正事項2
本件特許明細書の段落【0010】の
「具体的には、本発明のコンジュゲートは、細胞障害性化合物及び細胞結合剤(CBA)を含む場合があり、該細胞障害性化合物は、CBAに共有結合で連結しており、以下の式:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
または
【化13】
のいずれか1つ、またはその薬学上許容される塩により表され、式中、
L’、L’’、及びL’’’のうちの1つは、以下の式:
-Z1-P-Z2-Rx-J’(A’)
により表され、その他の2つは、同じであるか異なっていて、独立して、-H、炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、ポリエチレングリコール単位-(CH2CH2O)n-Rc、ハロゲン、グアニジニウム[-NH(C=NH)NH2]、-OR、-NR’R’’、-NO2、-NR’COR’’、-SR、-SOR’で表されるスルホキシド、-SO2R’で表されるスルホン、スルホン酸基-SO3M、硫酸基-OSO3M、-SO2NR’R’’で表されるスルホンアミド、シアノ、アジド、-COR’、-OCOR’、及びOCONR’R’’から選択され、
J’は、細胞結合剤に共有結合で連結している連結基を含む部分であり、
残りの可変要素は、式(I)~(VI)について上述のとおりである。」
との記載を
「【化4】
」
に訂正する。
(3)訂正事項3
本件特許明細書の段落【0014】の「アルキニル、アルケニル、もしくはアルキニル」との記載(同段落内に2箇所)を「アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル」と訂正する。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
本件特許明細書の段落【0016】の「アルキニル、アルケニル、もしくはアルキニル」との記載(同段落内に5箇所)を「アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル」と訂正する。
イ 訂正事項4-2
本件特許明細書の段落【0016】の「アルキニル、アルケニル、もしくアルキニル」との記載を「アルキル、アルケニル、もしくアルキニル」と訂正する。
(5)訂正事項5
本件特許明細書の段落【0026】の「アルキニル、アルケニル、もしくはアルキニル」との記載を「アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル」と訂正する。
(6)訂正事項6
本件特許明細書の段落【0041】の
「置換基が、最大で特定の個数の非水素置換基で随意に置換されると記載される場合、その置換基は、(1)置換されない、または(2)最大でその特定の個数の非水素置換基もしくは最大で置換基上の最大数の置換可能な部位のいずれか少ない方により置換されている、のいずれかであってもよい。すなわち、例えば、置換基が、最大3つの非水素置換基で随意に置換されるヘテロアリールであると記載される場合、置換可能な位置が3つ未満である任意のヘテロアリールは随意に、最大でもそのヘテロアリールが有する置換可能な位置と同数の非水素置換基のみで置換されることになる。そのような置換基の非限定例は、炭素原子を1~10個有する直鎖、分岐鎖または環状のアルキル、アルケニル、またはアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ハロゲン、グアニジニウム[-NH(C=NH)NH2]、-OR100、NR101R102、-NO2、-NR101COR102、-SR100、-SOR101で表されるスルホキシド、-SO2R101で表されるスルホン、スルホン酸基-SO3M、硫酸基-OSO3M、-SO2NR101R102で表されるスルホンアミド、シアノ、アジド、-COR101、-OCOR101、-OCONR101R102、及びポリエチレングリコール単位(-CH2CH2O)nR101から選択することができ、式中、Mは、Hまたはカチオン(Na+またはK+など)であり、R101、R102、及びR103は、それぞれ独立して、H、炭素原子を1~10個有する直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル、アルケニル、またはアルキニル、ポリエチレングリコール単位(-CH2CH2O)n-R104(式中、nは、1~24の整数である)、炭素原子を6~10個有するアリール、炭素原子を3~10個有する複素環式環、及び炭素原子を5~10個有するヘテロアリールから選択され、R104は、Hであるか、炭素原子を1~4個有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルであり、式中、R100、R101、R102、R103、及びR104で表される基中のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルは、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、またはそれ以上)の置換基で随意に置換され、この置換基は、独立して、ハロゲン、-OH、-CN、-NO2、及び炭素原子を1~4個有する未置換の直鎖または分岐鎖のアルキルから選択される。好ましくは、上記の随意に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、環状アルキル、環状アルケニル、環状アルキニル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、及びヘテロアリールの置換基として、ハロゲン、-CN、-NR102R103、-CF3、-OR101、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、-SR101、-SOR101、-SO2R101、及びSO3Mが挙げられる。」
との記載を
「「環状アルケニル」という用語は、環構造中に少なくとも1つの二重結合を有する炭素環式環ラジカルを指す。
「環状アルキニル」という用語は、環構造中に少なくとも1つの三重結合を有する炭素環式環ラジカルを指す。」
と訂正する。
(7)訂正事項7
本件特許明細書の段落【0052】の「アルキニル、アルケニル、またはアルキニル」との記載(同段落内に2箇所)を「アルキル、アルケニル、またはアルキニル」と訂正する。
(8)訂正事項8
本件特許明細書の段落【0056】の
「「イミン反応性試薬」という用語は、イミン基と反応することができる試薬を指す。イミン反応性試薬の例として、亜硫酸化合物(H2SO3、H2SO2、またはカチオンで形成されるHSO3-、SO32-、もしくはHSO2-の塩)、メタ重亜硫酸化合物(H2S2O5またはカチオンで形成されるS2O52-の塩)、モノ、ジ、トリ、及びテトラチオリン酸化合物(PO3SH3、PO2S2H3、POS3H3、PS4H3、またはカチオンで形成されるPO3S3-、PO2S23-、POS33-、もしくはPS43-の塩)、チオリン酸エステル((RiO)2PS(ORi)、RiSH、RiSOH、RiSO2H、RiSO3H)、種々のアミン(ヒドロキシルアミン(例えば、NH2OH)、ヒドラジン(例えば、NH2NH2)、NH2O-Ri、Ri’NH-Ri、NH2-Ri)、NH2-CO-NH2、NH2-C(=S)-NH2、チオ硫酸化合物(H2S2O3またはカチオンで形成されるS2O32-の塩)、亜ジチオン酸化合物(H2S2O4またはカチオンで形成されるS2O42-の塩)、ホスホロジチオ酸化合物(P(=S)(ORk)(SH)(OH)またはカチオンで形成されるその塩)、ヒドロキサム酸(RkC(=O)NHOHまたはカチオンで形成されるその塩)、ヒドラジド(RkCONHNH2)、ホルムアルデヒドスルホキシル酸化合物(HOCH2SO2Hまたはカチオンで形成されるHOCH2SO2-の塩、例えばHOCH2SO2-Na+など)、糖化ヌクレオチド(GDP-マンノースなど)、フルダラビン、またはそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されず、式中、Ri及びRi’は、それぞれ独立して、炭素原子を1~10個有する直鎖または分岐鎖のアルキルであり、-N(Rj)2、-CO2H、-SO3H、及びPO3Hから選択される少なくとも1つの置換基で置換され、Ri及びRi’は随意で、本明細書中に記載されるアルキルの置換基でさらに置換することができ、Rjは、炭素原子を1~6個有する直鎖または分岐鎖のアルキルであり、Rkは、炭素原子を1~10個有する直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニルであるか、アリール、ヘテロシクリル、もしくはヘテロアリールである(好ましくは、Rkは、炭素原子を1~4個有する直鎖または分岐鎖のアルキルであり、より好ましくは、Rkは、メチル、エチル、またはプロピルである)。好ましくは、カチオンは、Na+またはK+などの一価カチオンである。好ましくは、イミン反応性試薬は、亜硫酸化合物、ヒドロキシルアミン、尿素、及びヒドラジンから選択される。より好ましくは、イミン反応性試薬は、NaHSO3またはKHSO3である。」
との記載を
「「キラル」という用語は、鏡像パートナーと重ね合わせできない性質を有する分子を示し、一方「アキラル」という用語は、鏡像パートナーと重ね合わせできる分子を指す。
「立体異性体」という用語は、同一の化学組成及び連結性を有するが、それらの原子の空間配置が異なり、単結合の回転により相互変換することができない化合物を指す。」
と訂正する。
(9)訂正事項9
本件特許明細書の段落【0063】の「アルキニル、アルケニル、もしくはアルキニル」との記載を「アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル」と訂正する。
(10)訂正事項10
本件特許明細書の段落【0074】の
「1つの実施形態において、反応性エステルなどの反応性基が一方の端に結合した結合基は、以下から選択される。
-O(CR20R21)m(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-O(CR20R21)m(CR26=CR27)m’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-O(CR20R21)m(アルキニル)n’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-O(CR20R21)m(ピペラジノ)t’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-O(CR20R21)m(ピロロ)t’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-O(CR20R21)mA’’m’’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-S(CR20R21)m(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-S(CR20R21)m(CR26=CR27)m’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-S(CR20R21)m(アルキニル)n’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-S(CR20R21)m(ピペラジノ)t’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-S(CR20R21)m(ピロロ)t’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-S(CR20R21)mA’’m’’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-NR33(C=O)p’’(CR20R21)m(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-NR33(C=O)p’’(CR20R21)m(CR26=CR27)m’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-NR33(C=O)p’’(CR20R21)m(アルキニル)n’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q’’(CO)tX’’、
-NR33(C=O)p’’(CR20R21)m(ピペラジノ)t’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-NR33(C=O)p’’(CR20R21)m(ピロロ)t’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q-(CO)tX’’、
-NR33(C=O)p’’(CR20R21)mA’’m’’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-(CR20R21)m(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-(CR20R21)m(CR26=CR27)m’(CR22R23)n(OCH2CH2)pCR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-(CR20R21)m(アルキニル)n’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-(CR20R21)m(ピペラジノ)t’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-(CR20R21)mA’’m’’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-(CR20R21)m(CR29=N-NR30)n’’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-(CR20R21)m(CR29=N-NR30)n’’(CR26=CR27)m’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’、
-(CR20R21)m(CR29=N-NR30)n’’(アルキニル)n’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q-(CO)tX’’、
-(CR20R21)m(CR29=N-NR30)n’’A’’m’’(CR22R23)n(OCH2CH2)p(CR40R41)p’’Y’’(CR24R25)q(CO)tX’’(式中、
m、n、p、q、m’、n’、t’は、1~10の整数であるか、あるいは随意に0であり、
t、m’’、n’’、及びp’’は、0または1であり、
X’’は、OR36、SR37、NR38R39から選択され、式中、R36、R37、R38、R39は、Hであるか、または炭素原子を1~20個有する直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、またはポリエチレングリコール単位-(OCH2CH2)nであり、R37は、t=1の場合に、随意にチオール保護基であり、COX’’は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシフタルイミドエステル、N-ヒドロキシスルホ-スクシンイミドエステル、p-ニトロフェニルエステル、ジニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、及びそれらの誘導体から選択される反応性エステルを形成し、該誘導体はアミド結合形成を促進し、
Y’’は存在しないか、またはO、S、S-S、もしくはNR32から選択され、式中、R32は、Rについて以上で与えられたものと同じ定義を有するか、または
Y’’がS-Sではなく、かつt=0の場合、X’’は、マレイミド基、ハロアセチル基、またはSR37から選択され、式中、R37は上記と同じ定義を有し、
A’’は、1つのアミノ酸残基であるか、2~20のアミノ酸残基を含有するポリペプチドであり、
R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、及びR27は、同一であるかまたは異なっていて、かつ-Hであるか、または炭素原子を1~5個有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルであり、
R29及びR30は、同一であるかまたは異なっていて、かつ-Hであるか、または炭素原子を1~5個有するアルキルであり、
R33は、H、または炭素原子を1~12個有する直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、ポリエチレングリコール単位R-(OCH2CH2)nであるか、または、R33は、-COR34、-CSR34、-SOR34、もしくは-SO2R34であり、式中、R34は、H、または炭素原子を1~20個有する直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニルか、またはポリエチレングリコール単位-(OCH2CH2)nであり、
R40及びR41の一方は、随意に、負に荷電した、または正に荷電した官能基であり、他方は、H、または炭素原子を1~4個有するアルキル、アルケニル、アルキニルである。」
との記載を
「「保護基」または「保護部分」という用語は、化合物、その誘導体、またはそのコンジュゲートの他の官能基が反応している間、特定の官能基をブロックまたは保護するために一般的に使用される置換基を指す。例えば、「アミン保護基」または「アミノ保護部分」は、化合物のアミノ官能基をブロックまたは保護する、アミノ基に結合した置換基である。そのような基は、当技術分野で周知であり(例えば、P.Wuts and T.Greene,2007,Protective Groups in Organic Synthesis,Chapter 7,J.Wiley & Sons,NJを参照)、代表的なものとして、メチルカルバミン酸基及びエチルカルバミン酸基などのカルバミン酸基、FMOC、置換エチルカルバミン酸基、1,6-β-脱離で切断されるカルバミン酸基(「自壊(selfimmolative)型」とも称される)、尿素、アミド、ペプチド、アルキル、及びアリール誘導体がある。適切なアミノ保護基として、アセチル、トリフルオロアセチル、t-ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、及び9-フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。保護基の全般的な説明及びそれらの使用については、P.G.M.Wuts & T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,New York,2007を参照のこと。」
と訂正する。
(11)訂正事項11
本件特許明細書の段落【0080】の「アルキニル、アルケニル、もしくはアルキニル」との記載を「アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル」と訂正する。
(12)訂正事項12
本件特許明細書の段落【0101】の
「第9の特定実施形態において、構造式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び(VI)では、X’は、-H、-OH、炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル、及びフェニルからなる群より選択され、残りの可変要素は、第1の実施形態または第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、もしくは第8の特定実施形態で上記したとおりである。」
との記載を
「第6の特定実施形態において、構造式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び(VI)では、Pは、2~10のアミノ酸残基を含有するペプチドであり、残りの可変要素は、第1の実施形態または第1、第2、第3、第4、もしくは第5の特定実施形態で上記したとおりである。」
と訂正する。
(13)訂正事項13
本件特許明細書の段落【0110】の「アルキニル、アルケニル、もしくはアルキニル」との記載を「アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル」と訂正する。
(14)訂正事項14
本件特許明細書の段落【0229】の
「第9の特定実施形態において、構造式(I’)、(II’)、(III’)、(IV’)、(V’)、及び(VI’)では、X’は、-H、-OH、炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル、アルケニル、またはアルキニル、及びフェニルからなる群より選択され、残りの可変要素は、第1の実施形態または第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、もしくは第8の特定実施形態で上記したとおりである。」
との記載を
「のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン軽鎖領域を含む。
別の実施形態において、抗Muc1抗体は、huDS6抗体である。
さらに別の実施形態において、抗Muc1抗体は、配列番号21の重鎖CDR1-CDR3、及び/または配列番号22の軽鎖CDR1-CDR3を含み、好ましくはMuc1と特異的に結合する。」
と訂正する。
(15)訂正事項15
本件特許明細書の段落【0278】の「アルキニル、アルケニル、またはアルキニル」との記載を「アルキル、アルケニル、またはアルキニル」と訂正する。
第3 当審の判断
1 訂正要件判断の前提
請求人は、訂正の目的として誤訳の訂正を含めて主張しているので、その前提を確認した上で判断する。
(1)本件特許に係る出願について
本件特許に係る出願は、特許法第184条の4第1項の「外国語特許出願」である国際出願PCT/US2015/048059(国際公開第2016/036801号参照。以下、「本件国際出願」という。)が、同法第184条の3第1項の規定により特許出願とみなされたものである。
(2)誤訳の訂正について
誤訳の訂正とは、翻訳により外国語書面における意味とは異なる意味を有するものとなった記載(誤訳)を、外国語書面における意味を表す記載に訂正することをいうものであるから、誤訳の訂正であるか否かは、本件特許明細書の記載の意味が、外国語書面における意味と異なることが必要である。
(3)誤訳の訂正を目的とする場合の新規事項の判断について
特許法第184条の19の規定により、同法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とする場合にあっては、同条第5項を適用する際には、同法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「本件国際出願明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
以下、これらを前提として検討する。
2 訂正事項1及び2について
(1)訂正の目的要件の適否について
ア 訂正事項1及び2が訂正の対象とする本件特許明細書の段落【0007】及び【0010】の記載は、【課題を解決するための手段】に関する記載であり、段落【0006】に「・・・本発明の1つの目的は、以下の式:」と記載されているのに続けて、段落【0007】の最初にも「本発明の1つの目的は、以下の式:」と同じ記載が繰り返されている。
その後には、式(I)~(VI)と、前記式中の符号の説明が記載され、段落【0007】の最後には「・・・その薬学上許容される塩により表される細胞障害性化合物を提供することである。」と記載されている。
それに続く段落【0008】には、式(II)のみが、続く段落【0009】には、式(III)のみが記載されている。
そして、その後に続く訂正事項2が訂正の対象とする本件特許明細書の段落【0010】には、「具体的には、本発明のコンジュゲートは、細胞障害性化合物及び細胞結合剤(CBA)を含む場合があり、該細胞障害性化合物は、CBAに共有結合で連結しており、以下の式:」と記載され、式(I’)~(VI’)と、前記式中の符号の説明が記載されている。
また、その後の段落【0011】には、式(V)のみが記載され、段落【0012】の「または」に続けて、段落【0013】には、式(VI)のみが記載されている。
さらに続く段落【0014】~【0016】には、段落【0007】の式(I)~(VI)の付号の説明とほとんど同じ記載が繰り返され、段落【0018】~【0026】には、段落【0010】とほとんど同じ記載が繰り返されている。
このように、本件特許明細書の段落【0006】~【0026】の記載は、前後の段落との関係からみて文脈のつながりが整合していないといえる。
イ 一方、本件国際出願明細書等における、本件特許明細書の段落【0006】~【0026】に対応する記載(なお、記載箇所は国際公報の段落で示す。以下同じ。)にあたる[07]~[10]には、本件特許明細書の段落【0007】に該当する箇所に式(I)のみが記載され、同段落【0010】に該当する箇所に式(IV)のみが記載され、その他の記載箇所については、段落【0006】、【0008】~【0009】、【0011】~【0026】とほとんど同じ記載がされている。
ウ 以上のことから、本件特許明細書の段落【0007】及び【0010】の記載は、本件国際出願明細書等における意味とは異なる意味を有するものとなった誤訳が生じたものと考えられ、訂正事項1及び2は、本件特許明細書の誤訳を、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤訳の訂正を目的とするものである。
したがって、特許法第126条第1項の要件に適合する。
(2)新規事項の有無について
上記(1)のとおり、訂正事項1及び2は、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、本件国際出願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
したがって、特許法第126条第5項の要件に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて
上記(1)のとおり、訂正事項1及び2は、本件特許明細書の記載を、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであり、また実質的には、繰り返し記載されていた一部を削除する訂正であるといえ、これらの訂正により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、特許法第126条第6項の要件に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(3)のとおり、訂正事項1及び2により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、それによって特許要件を満たさなくなるものではないといえる。
したがって、特許法第126条第7項の要件に適合する。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項1及び2は、特許法第126条第1、5~7項の要件に適合する。
3 訂正事項3について
(1)訂正の目的要件の適否について
訂正事項3が訂正の対象とする本件特許明細書の段落【0014】には、式中の符号の説明が記載されているところ、「L’、L’’、及びL’’’」の選択肢の一つとして、「炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキニル、アルケニル、もしくはアルキニル」との記載があり、Rxの選択肢として「炭素原子を1~10個有する随意に置換される直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキニル、アルケニル、もしくはアルキニル」と記載されており、いずれも「アルキニル」が重複して記載されている(なお、下線は当審で付与。以下同じ。)。
これについて、本件国際出願明細書等の上記記載に対応する[07]には、いずれも「an optionally substituted linear, branched or cyclic alkyl, alkenyl or alkynyl having from 1 to 10 carbon atoms」と記載されている。
そうすると、本件特許明細書の上記記載は、本件国際出明細書等の「alkyl」を、それとは異なる意味の「アルキニル」と誤訳したものを、本来の意味を表す記載である「アルキル」に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤訳の訂正を目的とするものである。
したがって、特許法第126条第1項の要件に適合する。
(2)新規事項の有無について
上記(1)のとおり、訂正事項3は、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、本件国際出願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
したがって、特許法第126条第5項の要件に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて
上記(1)のとおり、訂正事項3は、本件特許明細書の記載を、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであり、この訂正により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、特許法第126条第6項の要件に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(3)のとおり、訂正事項3により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、それによって特許要件を満たさなくなるものではないといえる。
したがって、特許法第126条第7項の要件に適合する。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項3は、特許法第126条第1、5~7項の要件に適合する。
4 訂正事項4、5、7、9、11、13及び15について
(1)訂正の目的要件の適否について
訂正事項4、5、13及び15は、それらが訂正の対象とする本件特許明細書の段落【0016】、【0026】、【0110】及び【0278】にある、式(I)~(VI)又は式(I’)~(VI’)の式中の符号の説明中の記載について、また、訂正事項7、9及び11は、それらが訂正の対象とする本件特許明細書の段落【0052】、【0063】及び【0080】にある、用語の定義に関する記載における符号の説明中の記載について、それぞれ、上記3(1)と同様に、「アルキニル、アルケニル、もしくはアルキニル」、「アルキニル、アルケニル、もしくアルキニル」あるいは「アルキニル、アルケニル、またはアルキニル」のように「アルキニル」が重複して記載されているものについて、それぞれ順に、本件国際出願明細書等の上記記載に対応する[07]、[10]、[124]及び[252]と、[64]、[79]及び[97]のいずれにも「alkyl, alkenyl or alkynyl」と記載されているうちの「alkyl」を、それとは異なる意味の「アルキニル」と誤訳したものを、本来の意味を表す記載である「アルキル」に訂正するものである。よって、訂正事項4、5、7、9、11、13及び15は、いずれも特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤訳の訂正を目的とするものである。
したがって、特許法第126条第1項の要件に適合する。
(2)新規事項の有無について
上記(1)のとおり、訂正事項4、5、7、9、11、13及び15は、いずれも本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、本件国際出願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
したがって、特許法第126条第5項の要件に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて
上記(1)のとおり、訂正事項4、5、7、9、11、13及び15は、いずれも本件特許明細書の記載を、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであり、これらの訂正により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、特許法第126条第6項の要件に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(3)のとおり、訂正事項4、5、7、9、11、13及び15のいずれによっても何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、それによって特許要件を満たさなくなるものではないといえる。
したがって、特許法第126条第7項の要件に適合する。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項4、5、7、9、11、13及び15は、いずれも特許法第126条第1、5~7項の要件に適合する。
5 訂正事項6について
(1)訂正の目的要件の適否について
ア 訂正事項6が訂正の対象とする本件特許明細書の段落【0041】の記載は、本明細書中で使用される用語の「定義」に関する記載である。
そして、段落【0036】には「直鎖または分岐鎖のアルキル」、段落【0037】には「直鎖または分岐鎖のアルケニル」、段落【0038】には「直鎖または分岐鎖のアルキニル」、段落【0039】には「炭素環」、「カルボシクリル」及び「炭素環式環」、段落【0040】には「環状アルキル」及び「シクロアルキル」についての記載がそれぞれされている。
また、段落【0042】には「アリール」、段落【0043】には「複素環」、「ヘテロシクリル」及び「複素環式環」、段落【0044】には「ヘテロアリール」に関する記載がそれぞれされているところ、その間にある段落【0041】には、置換基についての説明が、ヘテロアリールを例示して記載されている。
さらに、段落【0051】に「置換基」、「ラジカル」及び「基」に関する記載があり、段落【0052】には、段落【0041】とほとんど同じ置換基についての説明が記載されている。
このように、本件特許明細書の段落【0041】の記載は、前後の段落との関係からみて文脈のつながりが整合していないといえる。
イ 一方、本件国際出願明細書等における、本件特許明細書の段落【0036】~【0052】に対応する記載にあたる[45]~[64]には、本件特許明細書の段落【0041】に該当する箇所には「環状アルケニル」及び「環状アルキニル」に関する記載がされ、その他の記載箇所については、段落【0036】~【0040】及び【0042】~【0052】とほとんど同じ記載がされている。
ウ 以上のことから、本件特許明細書の段落【0041】の記載は、本件国際出願明細書等における意味とは異なる意味を有するものとなった誤訳が生じたものと考えられ、訂正事項6は、本件特許明細書の誤訳を、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤訳の訂正を目的とするものである。
したがって、特許法第126条第1項の要件に適合する。
(2)新規事項の有無について
上記(1)のとおり、訂正事項6は、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、本件国際出願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
したがって、特許法第126条第5項の要件に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて
訂正事項6は、本明細書中で使用される用語の「定義」には記載がなかった「環状アルケニル」及び「環状アルキニル」について「定義」するものであり、これらの用語は、特許請求の範囲で使用される用語でもある。
しかしながら、訂正後の段落【0041】による「環状アルケニル」及び「環状アルキニル」についての定義は、有機化合物の構造を示す一般的な技術用語の説明を記載したものであり、定義として技術常識に即したものであるので、この訂正により特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、特許法第126条第6項の要件に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(3)のとおり、訂正事項6により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、それによって特許要件を満たさなくなるものではないといえる。
したがって、特許法第126条第7項の要件に適合する。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項6は、特許法第126条第1、5~7項の要件に適合する。
6 訂正事項8及び10について
(1)訂正の目的要件の適否について
訂正事項8及び10がそれぞれ訂正の対象とする本件特許明細書の段落【0056】及び【0074】の記載は、本明細書中で使用される用語の「定義」に関する記載であり、上記5(1)で検討したのと同様に、別の段落に、ほとんど同じ記載が繰り返されているとともに、これらの段落の前後の段落との関係からみて文脈のつながりが整合していない内容となっている。
そして、本件国際出願明細書等における、本件特許明細書の段落【0056】及び【0074】に対応する記載にあたる[70]~[71]及び[91]には異なる意味を表す記載がされ、それらの段落の前後の記載箇所については、本件特許明細書の段落【0056】及び【0074】の前後の記載とほとんど同じ意味を表す記載がされている。
したがって、本件特許明細書の段落【0056】及び【0074】の記載は、本件国際出願明細書等における意味とは異なる意味を有するものとなった誤訳が生じたものと考えられ、訂正事項8及び10は、本件特許明細書の誤訳を、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤訳の訂正を目的とするものである。
したがって、特許法第126条第1項の要件に適合する。
(2)新規事項の有無について
上記(1)のとおり、訂正事項8及び10は、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、本件国際出願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
したがって、特許法第126条第5項の要件に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて
訂正事項8及び10は、本明細書中で使用される用語の「定義」には記載がなかった「キラル」、「アキラル」、「立体異性体」及び「保護基」又は「保護部分」について「定義」するものであり、これらの用語には、特許請求の範囲で使用される用語もある。
しかしながら、訂正後の段落【0056】及び【0074】による「キラル」、「アキラル」、「立体異性体」及び「保護基」又は「保護部分」についてする定義は、いずれも有機化合物の構造や反応において用いる置換基の一般的な技術用語の説明を記載したものであり、定義として技術常識に即したものであるので、この訂正により特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、特許法第126条第6項の要件に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(3)のとおり、訂正事項8及び10により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、それによって特許要件を満たさなくなるものではないといえる。
したがって、特許法第126条第7項の要件に適合する。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項8及び10は、いずれも特許法第126条第1、5~7項の要件に適合する。
7 訂正事項12ついて
(1)訂正の目的要件の適否について
訂正事項12が訂正の対象とする本件特許明細書の段落【0101】の記載は、「細胞障害性化合物」の実施形態に関する記載であるところ、本件特許明細書の記載は、第1の実施形態から第16の実施形態についてほぼその順に記載されていると解される一方で、段落【0101】では、その前の第5の実施形態の記載の次に第9の実施形態の説明が記載されることとなっており、その後で第6の実施形態、第7の実施形態の記載が続く内容となっている。
そして、本件国際出願明細書等における、本件特許明細書の段落【0101】に対応する記載にあたる[117]には第6の実施形態の記載がされ、それらの段落の前後の記載箇所については、本件特許明細書の段落【0101】の前後の記載とほとんど同じ意味を表す記載がされている。
したがって、本件特許明細書の段落【0101】の記載は、本件国際出願明細書等における意味とは異なる意味を有するものとなった誤訳が生じたものと考えられ、訂正事項12は、本件特許明細書の誤訳を、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤訳の訂正を目的とするものである。
したがって、特許法第126条第1項の要件に適合する。
(2)新規事項の有無について
上記(1)のとおり、訂正事項12は、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、本件国際出願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
したがって、特許法第126条第5項の要件に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて
訂正事項12は、特許請求の範囲に記載の式(I)~(VI)の式中の符号の「P」についての具体的な記載や置換基を特定した実施形態に関するものであるが、この訂正による記載は、特許請求の範囲に記載の式(I)~(VI)の最も上位概念の説明から具体的な化合物の例示までの順に説明された記載の間における説明を記載したものであり、かつ、本件特許明細書の段落【0607】の[18]には同様の記載もあり、この訂正により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、特許法第126条第6項の要件に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(3)のとおり、訂正事項12により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、それによって特許要件を満たさなくなるものではないといえる。
したがって、特許法第126条第7項の要件に適合する。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項12は、特許法第126条第1、5~7項の要件に適合する。
8 訂正事項14ついて
(1)訂正の目的要件の適否について
訂正事項14が訂正の対象とする本件特許明細書の段落【0229】の記載は、「細胞結合剤」の実施形態に関する記載であって、段落【0225】~【0228】及び【0230】には、細胞結合剤の実施形態のうちの「抗Muc1抗体」に関する記載がされているのに対し、段落【0229】には、式(I’)~(VI’)の第9の実施形態に関する記載がされている。
そして、本件国際出願明細書等における、本件特許明細書の段落【0225】~【0230】に対応する記載にあたる[212]~[215]には一貫して「抗Muc1抗体」に関する記載がされ、そのうち本件特許明細書の段落【0229】に対応する記載にあたる[214]以外の記載箇所については、本件特許明細書の記載とほとんど同じ意味を表す記載がされている。
したがって、本件特許明細書の段落【0229】の記載は、本件国際出願明細書等における意味とは異なる意味を有するものとなった誤訳が生じたものと考えられ、訂正事項14は、本件特許明細書の誤訳を、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤訳の訂正を目的とするものである。
したがって、特許法第126条第1項の要件に適合する。
(2)新規事項の有無について
上記(1)のとおり、訂正事項14は、本件国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正するものであるから、本件国際出願明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
したがって、特許法第126条第5項の要件に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて
訂正事項14は、特許請求の範囲に記載の細胞結合剤の実施形態のうちの「抗Muc1抗体」に関する記載において、段落【0228】の配列番号22が免疫グロブリン軽鎖領域を含むことを説明した記載、抗Muc1抗体がhuDS6抗体であることを説明した記載、及び抗Muc1抗体が配列番号21の重鎖CDR1-CDR3及び/又は配列番号22の軽鎖CDR1-CDR3を含み、好ましくはMuc1と特異的に結合することを説明したものであるが、これらは本件特許明細書における他の抗体に関する記載や、本件特許明細書の段落【0607】の[111]及び[112]の記載から明らかな事項であり、この訂正により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、特許法第126条第6項の要件に適合する。
(4)独立特許要件について
上記(3)のとおり、訂正事項14により何ら特許請求の範囲の内容が変更されるものではないから、それによって特許要件を満たさなくなるものではないといえる。
したがって、特許法第126条第7項の要件に適合する。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項14は、特許法第126条第1、5~7項の要件に適合する。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項、第5項ないし第7項に規定する要件に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-390122