特許訂正審判
2019-390037
プロテインキナーゼに対する阻害活性を有するチエノ[3,2-d]ピリミジン誘導体
- 審判番号
- 2019-390037
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2014-550010
- 登録番号
- 特許第5797345号(P5797345)
- 請求日
- 2019年03月06日
- 審決日
- 2019年05月09日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー.
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】品川 永敏
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 秀次
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P141 .851-Y (C07D) / P141 .852-Y (C07D) / P141 .853-Y (C07D) / P141 .854-Y (C07D) / P141 .855-Y (C07D) / P141 .856-Y (C07D) / P141 .841-Y (C07D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5797345号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5797345号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~14]について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5797345号(以下「本件特許」という。)は、2012年12月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年12月30日 韓国(KR))を国際出願日とする特願2014-550010号の請求項1~14に係る発明について平成27年8月28日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成31年3月6日に本件訂正審判の請求(以下「本件請求」という。)がされたものである。
第2 本件審判請求の趣旨及び内容
1 審判請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第5797345号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
2 訂正の内容
訂正の内容は次のとおりである。
[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項5に列記された化合物の中で、28)の化合物について、「4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」とあるのを、「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」に訂正する。
[訂正事項2]
特許請求の範囲の請求項5に列記された化合物の中で、81)、106)、119)の3つの化合物を削除する。
[訂正事項3]
明細書の段落【0016】に「直線状、環状、または分枝状の炭化水素残基」とあるのを、「直線状、または分枝状の炭化水素残基」に訂正する。
[訂正事項4]
明細書の段落【0025】、【0104】、および【0248】中の【表4】にそれぞれ記載された28)の化合物(実施例28の化合物)について、「4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」とあるのを、「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」に訂正する。
[訂正事項5]
明細書の段落【0248】中の【表3】、【表13】、【表14】に記載された実施例19、109、110、118の化学構造式
を、それぞれ、化学構造式
に訂正する。
第3 当審の判断
1 目的要件について
(1)訂正事項1について
訂正事項1について、特許法第126条第1項ただし書第2号を目的とするか否かについて検討する。
ア 判断の前提
特許請求の範囲又は明細書の誤記の訂正を目的とする訂正が認められるためには、特許がされた特許請求の範囲又は明細書の記載に誤記が存在し、それ自体で特許請求の範囲、明細書又は図面の他の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ正しい記載が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面から自明な事項として定まる必要がある。
(例えば、参考判決としては、「「誤記の訂正」を目的とする場合には明細書又は図面を訂正することを認めている。ここでいう「誤記」というためには,訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいことが,当該明細書及び図面の記載や当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)の技術常識などから明らかで,当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合でなければならないものと解される。」(知財高判平18(行ケ)10204号)参照)。
イ 目的要件の判断
訂正前の請求項5の記載は、次のとおり
「【請求項5】
・・・
28)4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド;
・・・
からなる群から選択される、請求項1に記載のチエノ[3,2-d]ピリミジン誘導体またはその医薬的に許容される塩。」であり、「請求項1に記載のチエノ[3,2-d]ピリミジン誘導体またはその医薬的に許容される塩。」との記載からみて、「請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。」に該当するものである。
そして、前記訂正事項1は、要するに、「4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」を「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」と訂正するものであるところ、誤記の訂正を目的としたものとして認められるためには、上述のとおり訂正前の「4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」の記載がそれ自体で、特許された特許請求の範囲又は明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであり、かつ、特許がされた明細書、特許請求の範囲の記載全体から、正しい記載が「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」であることが自明な事項として定まることが必要である。
(ア)訂正前の請求項5の「4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」との記載がそれ自体で、特許された特許請求の範囲又は明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであるについて検討する。
(i)前記請求項5の記載において、「4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」の記載は、「(」が4つであるのに対し、「)」が2つであり、それ自体で誤りであるとはいえる。
(ii)さらに、前記請求項5が引用する請求項1には
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
Aは、 部分水素化されていてもよいC6-10アリールまたはO,S,Nから選らばれる1~2個のヘテロ原子を環構成原子として有しかつ部分水素化されていてもよい5~10員のヘテロアリール であり;
Wは、O、 NH、または-NHNH- であり;
X はCHまたはN、YはNであり;
Zは、水素、 またはNR3R4であり、ここで、該R3およびR4は、各々、独立して、水素、C1-6アルキルまたは-(CH2)q-B-であり、Bは、 C3-6シクロアルキル、qは0(ゼロ)を示し;
R1は、水素またはC1-3アルキル であり ;
R2は、水素、ハロゲン、-CF3、 -OH、-CN、C1-6アルコキシ、C1-6アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、-NR7R8、-NHSO2R9、-SO2R10、-C(O)R11、-NHC(O)R12、-NHC(O)OR13、-S(O)R14、O,Nから選らばれる1~2個のヘテロ原子を環構成原子として有する5~10員のヘテロシクロアルキル、 C6-10アリールオキシ、またはO,Nから選らばれる1~2個のヘテロ原子を環構成原子として有する5~10員のヘテロアリール であり、ここで、該R2は-(CH2)p-によりAと結合されているか、あるいはC1-4アルキル、 C1-4アルキルカルボニルまたは1個以上のハロゲン原子で置換されており;
R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、各々、独立して、水素、-NHCH3、-N(CH3)2、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシ であり;
pは、0~3の範囲の整数であり;
mは、0~5の範囲の整数であり;
nは、0~2の範囲の整数である]
で示されるチエノ[3,2-d]ピリミジン誘導体またはその医薬的に許容される塩。」であるところ、請求項1を引用する請求項5に記載された化合物28は式(I)における
の部分構造を有しない点で、明らかに式(I)で示されるチエノ[3,2-d]ピリミジン誘導体に該当しないものである。
そうすると、上記(i)及び(ii)のことから、当業者は、請求項5の「28)4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」との記載には誤りが存在すると気付くといえる。
(イ)訂正後の「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」との記載に関して、特許明細書、特許請求の範囲の記載全体から、正しい記載が「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」であることが明らかであるといえるかについて検討する。
段落【0248】の【表4】には、「【表4】
・・・
・・・
」
と記載され、「28)4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」とは異なる化学構造式が併記されている。
また、段落【0104】には、「【0104】
実施例28:4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミドの製造
実施例1の<工程1、2および3>の方法(実施例1の<工程1>において4-クロロアニリンの代わりにN,N-ジメチル-p-フェニレンジアミンを用いることを除く)を順序通りに繰り返して、標題の化合物(32 mg, 15%)を得た。
1H-NMRスペクトル (300 MHz, DMSO-d6): δ 11.51 (s, 1H), 8.96 (s, 1H), 8.93 (s, 1H), 8.58 (s, 1H), 8.42 (d, 1H), 7.94 (s, 2H), 7.87 (d, 1H), 7.61 (d, 2H), 7.55 (d, 1H), 7.02 (d, 1H), 6.76 (d, 2H), 2.86 (s, 3H), 2.40 (s, 3H)
MS(ESI+, m/z): 470 [M+H]+」と記載され、
段落【0070】~【0072】には、「【0070】
実施例1:4-アミノ-N-(1-((4-クロロフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミドの製造
<工程1>N-(4-クロロフェニル)-6-メチル-5-ニトロイソキノリン-1-アミンの製造
製造例2の<工程4>で得られた1-クロロ-6-メチル-5-ニトロイソキノリン(5.0 g, 22.5 mmol)を2-プロパノール(70 mL)に溶解させ、4-クロロアニリン(2.6, 20.4 mmol)を室温で加えた。該反応溶液を密閉した反応器に入れ、90℃で10時間以上撹拌した。該反応混合液を室温まで冷却し、得られた固形物を減圧下で濾過した後、酢酸エチルで洗浄した。濾過された固形物を、オーブンにおいて温風(40℃)で3時間以上乾燥させて、標題の化合物(6.1 g, 95%)を得た。
1H-NMRスペクトル (300 MHz, DMSO-d6): δ 8.53 (m, 2H), 7.92 (d, 1H), 7.67 (d, 1H), 2.72 (s, 3H)
MS(ESI+, m/z): 314 [M+H]+
【0071】
<工程2>N1-(4-クロロフェニル)-6-メチルイソキノリン-1,5-ジアミンの製造
鉄(5.4 g, 97.2 mmol)および濃塩酸(0.1 mL)を、エタノール/水(50 mL/50 mL)の混合溶液に加え、1時間還流した。上記<工程1>で得られたN-(4-クロロフェニル)-6-メチル-5-ニトロイソキノリン-1-アミン(6.1 g, 19.4 mmol)を該混合反応溶液に加え、2時間以上さらに還流した。該反応混合液を減圧下でセライトパッドにより濾過し、クロロホルム/2-プロパノール=4/1(v/v)の混合溶液で洗浄した。得られた濾液を減圧下で蒸留し、クロロホルム/2-プロパノール=4/1(v/v)の混合溶液に溶解させた。有機層を分離し、炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、標題の化合物(4.6 g, 84%)を得た。
1H-NMRスペクトル (300 MHz, DMSO-d6): δ 8.96 (s, 1H), 7.96 (d, 2H), 7.88 (d, 1H), 7.63 (d, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.33 (d, 2H), 7.26 (d, 1H), 5.48 (s, 2H), 2.25 (d, 3H)
MS(ESI+, m/z): 284 [M+H]+
【0072】
<工程3>4-アミノ-N-(1-((4-クロロフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミドの製造
製造例1の<工程7>で得られた4-アミノチエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボン酸(7.9 g, 40.5 mmol)をジメチルホルムアミドに溶解させ、DECP(11.7 mL, 81.1 mmol)およびDIPEA(17.7 mL, 97.3 mmol)を0℃で加え、10分間撹拌した。該混合反応溶液に、上記<工程2>で得られたN1-(4-クロロフェニル)-6-メチルイソキノリン-1,5-ジアミン(4.6 g, 16.2 mmol)を加えた後、12時間以上撹拌した。該反応混合液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。濃縮した固形物に酢酸エチルを加えた後、2時間以上撹拌した。得られた固形物をオーブンにおいて温風で3時間以上乾燥させて、標題の化合物(2.7 g, 36%)を得た。
1H-NMRスペクトル (300 MHz, DMSO-d6): δ 11.56 (s, 1H), 9.33 (s, 1H), 9.14 (s, 1H), 8.58 (s, 1H), 8.47 (d, 1H), 8.00 (m, 5H), 7.63 (d, 1H), 7.38 (d, 2H), 7.19 (d, 1H), 2.42 (s, 3H)
MS(ESI+, m/z): 461 [M+H]+」と記載されている。これらの記載から特許明細書の実施例28は、実施例1の<工程1>において4-クロロアニリンの代わりにN,N-ジメチル-p-フェニレンジアミンを用いることが記載されているから、【表4】に記載の化学構造式が正しく、化合物名が誤りであると当業者は認識でき、その化学構造式からの化合物の名称である4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミドが製造されたといえる。
したがって、請求項5の「4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」との記載の箇所に誤りがあると気付いた当業者には、正しい記載が「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」であることが明らかであると理解することができるといえる。
(ウ)小括
以上のとおり、請求項5の訂正前の「4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」という記載は、明細書の他の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ正しい記載が「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」であることが願書に添付した明細書から理解することができるといえる。
よって、訂正前の「4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」を「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」と訂正する訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものと認められる。
(2)訂正事項4について
訂正事項4も、訂正事項1と同様の理由により、訂正前の「4-アミノ-N-(1-((4-(ジメチルアミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」という記載は、正しい記載が「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」であることが願書に添付した明細書から理解することができるといえる。
よって、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものと認められる。
(3)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項5の化合物発明について、列記された化合物のうち、3つを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたり、当該訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(4)訂正事項3について
訂正事項3は、本件明細書の段落【0016】で「アルキル」を「直線状、環状、または分枝状の炭化水素残基」と定義し、【0017】で「シクロアルキル」を定義している。前者の「アルキル」の定義にある中の「環状」は、後者の「シクロアルキル」で定義されている「環状アルキル」として定義されていることと、明らかに両者の定義が「環状アルキル」で重複しており、その重複により前者の「環状の炭化水素基」なる記載が後者の「環状アルキル」との記載との関係において不明瞭な記載となっている。
よって、訂正事項3は上記不明瞭な記載を正すものであり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、明細書【0248】中の【表3】、【表13】、【表14】に記載された実施例19、109、110、118の化学構造式で環上の原子間の結合が不鮮明な部分がある化学構造式を、結合を明記した鮮明な化学構造式に置き換えたものであり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
2 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について
上記2で述べたとおり、訂正事項1、4は、特許請求の範囲の誤記の訂正を目的とするものであり、「4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド」との記載は特許明細書に記載されていたといえるものであるから、訂正の前後で実質上特許請求の範囲の拡張又は変更があるとはいえない。
訂正事項2は、化合物発明で特定される一部を削除するものであり、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更があるとはいえない。
訂正事項3は「環状」を削除するものであり、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更があるとはいえない。
また、訂正事項5は、19)4-アミノ-N-(1-((5-(t-ブチル)イソオキサゾール-3-イル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド、109)4-アミノ-N-(6-メチル-1-((1-メチル-1H-インダゾール-5-イル)アミノ)イソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド、110)4-アミノ-N-(6-メチル-1-((2-メチル-2H-インダゾール-5-イル)アミノ)イソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド、118)4-アミノ-N-(1-((3-クロロ-1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミドが記載されており、これに対応する化学構造式を記載するものであるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更があるとはいえない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
3 新規事項の追加の有無について
上記1(1)で述べたとおり、段落【0248】、【0104】及び【0070】~【0072】の記載からは、4-アミノ-N-(1-((4-ジメチルアミノフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミドが記載されているといえるから、訂正事項1及び4によって新たな技術的事項が導入されているとはいえず、願書に最初に添付した特許請求の範囲及び明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。
訂正事項2は、それぞれ独立して列記される複数の化合物の群から一部を削除しただけであり、新規事項を追加するものにはあたらない。
訂正事項3は「環状」を削除するものであり、新規事項を追加するものにはあたらない。
また、訂正事項5は、19)4-アミノ-N-(1-((5-(t-ブチル)イソオキサゾール-3-イル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド、109)4-アミノ-N-(6-メチル-1-((1-メチル-1H-インダゾール-5-イル)アミノ)イソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド、110)4-アミノ-N-(6-メチル-1-((2-メチル-2H-インダゾール-5-イル)アミノ)イソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド、118)4-アミノ-N-(1-((3-クロロ-1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミドが記載されており、これに対応する化学構造式を記載するものであるから、新規事項を追加するものにはあたらない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
4 訂正後の発明の独立特許要件について
訂正事項1、4は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とする訂正を含み、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正を含むので、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が同条第7項の規定に適合するものであるかを検討する。
そこで、この点を検討したところ、本件訂正後における特許請求の範囲の請求項5に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする新たな理由は見当たらない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項、同条第5項~第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-390037