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特許拒絶査定不服審判

2019-015364

R1233zdを用いて冷却を提供する方法

審判番号
2019-015364
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-568226外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年11月18日
審決日
2021年01月07日
公報発行日
2021年07月30日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .16 -WZ (F25B) / P18 .121-WZ (F25B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条の2
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017-568226「R1233zdを用いて冷却を提供する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日国際公開、WO2017/004017、平成30年 8月 2日国内公表、特表2018-521291〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)6月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年6月29日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年12月21日付け:拒絶理由通知書 平成31年 4月 8日  :意見書および手続補正書 令和 1年 7月 8日付け:拒絶査定 令和 1年11月18日  :審判請求書および手続補正書 令和 2年 7月22日付け:拒絶理由通知書 令和 2年10月28日  :意見書 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年11月18日提出の手続補正書に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「チラーシステム内において、磁気軸受を備え、潤滑油を含まない、負圧条件で運転されても内部に汚染物質が侵入することを防止する密閉式遠心圧縮機にて、R1233zdを含む冷媒組成物を圧縮するステップを含み、 前記密閉式遠心圧縮機は、ある回転速度でR134aを圧縮する時のベースライン冷却能力を有し、 前記密閉式遠心圧縮機は、前記回転速度でR1233zdを含む前記冷媒組成物を圧縮する時、低冷却能力を有し、 前記密閉式遠心圧縮機は、R1233zdを含む前記冷媒組成物を圧縮する際、実際の冷却能力が前記低冷却能力より大きくなるように、前記回転速度よりも大きな回転速度で運転され、 前記磁気軸受は能動型磁気軸受である、 冷却方法。」 第3 拒絶の理由 令和2年7月22日付けで当審が通知した拒絶理由のうち理由1は、次のとおりである。 理由1:本件出願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 引用文献1(先願):特願2014-156370号(特開2016-33348号) 引用文献2:米国特許出願公開第2015/0010383号明細書 引用文献3:特開2014-5833号公報 第4 引用文献等 1 引用文献1(先願) (1)引用文献1(先願)の記載事項 本願優先日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた引用文献1(先願)の願書の最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0021】 以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。 [第1実施形態] 以下、本発明の第1実施形態について、図1および図2を用いて説明する。 図1には、その第1実施形態に係るターボ冷凍機の構成図が示され、図2には、それに適用されるターボ圧縮機の概略構成図が示されている。 ターボ冷凍機1は、図1に示されるように、ターボ圧縮機2と、凝縮器3と、第1減圧装置4と、エコノマイザとして機能する気液分離器5と、第2減圧装置6と、蒸発器7とが順次冷媒配管(配管)8を介して接続されることにより構成される閉サイクルの冷凍サイクル9を備えている。」 「【0023】 上記した冷凍サイクル9中には、地球温暖化係数(GWP)が5以下、オゾン破壊係数(ODP)が0.00031であって共に低く、飽和温度が18℃以下で負圧となる特性を有するR1233zd(E)冷媒が所要量充填されている。このR1233zd(E)冷媒は、低GWP冷媒であるHCFO(ヒドロクロロフルオロオレフィン)冷媒の1つであり、低圧冷媒であって密度が低く、現行ターボ冷凍機に用いられているHFC冷媒の1つであるR134a冷媒に対して密度が5分の1程度であることが知られている。 【0024】 本実施形態では、このR1233zd(E)冷媒を充填したターボ冷凍機1に組み込まれるターボ圧縮機2を、以下の構成を有するターボ圧縮機2としている。 図2に、そのターボ圧縮機2の概略構成図が示されている。 ターボ圧縮機2は、公知の如く、回転するインペラー(羽根車)により低圧の冷媒ガスを高圧の冷媒ガスに遠心圧縮して冷凍サイクル9内を循環させるものである。 【0025】 ここでのターボ圧縮機2は、モータ19により駆動され、2段の低段側および高段側インペラー(羽根車)15,17を回転する回転軸18が、モータ19のロータ19Aに直結された直結構造とされるとともに、その回転軸18がハウジング11に対して、前後一対のラジアル磁気軸受20,21と、互いに対向配置されている一対のスラスト磁気軸受23,24とを介して回転自在に支持された構成のターボ圧縮機2とされている。 【0026】 つまり、このターボ圧縮機2は、圧縮機ハウジング11Aと、モータハウジング11Bとを一体化したハウジング11を備え、蒸発器7で蒸発された低圧のガス冷媒を冷媒吸込み口12から入口ベーン13を介して吸込み、低段側インペラー15を有する低段側圧縮部14および高段側インペラー17を有する高段側圧縮部16により2段圧縮し、高温高圧のガス冷媒としてスクロールケーシングの吐出口から外部の凝縮器3へと吐出するものであり、低段側圧縮部14と高段側圧縮部16間において、エコノマイザ回路10からの中間圧の冷媒ガスが中間ポートを介してインジェクションされる構成とされている。」 「【0032】 このターボ冷凍機1の冷凍サイクル9内には、地球温暖化係数(GWP)およびオゾン破壊係数(ODP)が共に低く、低圧冷媒であって密度が低いR1233zd(E)冷媒が充填されている。かかる冷媒は、冷凍能力の確保が難しいとされているが、本実施形態では、大流量の冷媒圧縮に好適とされるターボ圧縮機2を、更にインペラー15,17の回転軸18をモータ19に直結した構造のターボ圧縮機2とするとともに、その回転軸18をラジアル磁気軸受20,21およびスラスト磁気軸受23,24で支持した構成のターボ圧縮機2として組み込んでいる。 【0033】 このため、増速歯車での動力損失や転がり軸受等での軸受損失を低減して、大流量の冷媒の圧縮に適しているターボ圧縮機2の一層の高回転化を図ることにより、低圧冷媒であって密度が低く、またHFC冷媒と比較すると音速が高いため、能力の確保が難しいとされていたR1233zd(E)冷媒を用いたことによる弱点をカバーすることができるとともに、油による潤滑を必要とする増速歯車や転がり軸受等を省いてオイルレス化することにより、潤滑油や油フィルタの交換等の潤滑油系統のメンテナンスを省略化することができる。」 「【図1】 」 「【図2】 」 (2)先願明細書等に記載された技術的事項 上記(1)の記載から、先願明細書には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 ア 上記段落【0021】及び図1の記載から、ターボ冷凍機1は、「ターボ圧縮機2と、凝縮器3と、第1減圧装置4と、エコノマイザとして機能する気液分離器5と、第2減圧装置6と、蒸発器7とが順次冷媒配管(配管)8を介して接続されることにより構成される閉サイクルの冷凍サイクル9」を備えているといえる。 イ 上記段落【0025】及び図2の記載から、ターボ冷凍機1は、「その回転軸18がハウジング11に対して、前後一対のラジアル磁気軸受20,21と、互いに対向配置されている一対のスラスト磁気軸受23,24とを介して回転自在に支持された構成」を備えているといえる。 ウ 上記段落【0033】の記載から、ターボ冷凍機1は、「油による潤滑を必要とする増速歯車や転がり軸受等を省いてオイルレス化」されているといえる。 エ 上記段落【0026】及び図2の記載から、ターボ冷凍機1は「圧縮機ハウジング11Aと、モータハウジング11Bとを一体化したハウジング11を備え」ているといえる。 オ 上記段落【0023】及び【0024】の記載から、ターボ冷凍機1の冷凍サイクル9中には、「飽和温度が18℃以下で負圧となる特性を有するR1233zd(E)冷媒が所要量充填され」ているといえる。 カ 上記段落【0023】の記載から、冷凍サイクル9中に充填されるR1233zd(E)冷媒は、「低GWP冷媒であるHCFO(ヒドロクロロフルオロオレフィン)冷媒の1つであり、低圧冷媒であって密度が低く、現行ターボ冷凍機に用いられているHFC冷媒の1つであるR134a冷媒に対して密度が5分の1程度である」と理解でき、また、上記段落【0033】の記載から、ターボ冷凍機1においては「大流量の冷媒の圧縮に適しているターボ圧縮機2の一層の高回転化を図ることにより、低圧冷媒であって密度が低く、またHFC冷媒と比較すると音速が高いため、能力の確保が難しいとされていたR1233zd(E)冷媒を用いたことによる弱点をカバー」しているといえる。 キ 先願明細書等に記載されたターボ冷凍機1の運転は、何らかの対象物を冷却するために行われることは明らかであるから、先願明細書等は「ターボ冷凍機1による冷却方法」を開示しているといえる。 (3)先願発明 上記(1)、(2)の内容を総合すると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。 「ターボ冷凍機1において、 前記ターボ冷凍機1は、ターボ圧縮機2と、凝縮器3と、第1減圧装置4と、エコノマイザとして機能する気液分離器5と、第2減圧装置6と、蒸発器7とが順次冷媒配管(配管)8を介して接続されることにより構成される閉サイクルの冷凍サイクル9を備え 前記ターボ圧縮機2は、 その回転軸18がハウジング11に対して、前後一対のラジアル磁気軸受20,21と、互いに対向配置されている一対のスラスト磁気軸受23,24とを介して回転自在に支持された構成とされ、 油による潤滑を必要とする増速歯車や転がり軸受等を省いてオイルレス化されており、 圧縮機ハウジング11Aと、モータハウジング11Bとを一体化したハウジング11を備え、 前記冷凍サイクル9中には、飽和温度が18℃以下で負圧となる特性を有するR1233zd(E)冷媒が所要量充填され、 R1233zd(E)冷媒は、低GWP冷媒であるHCFO(ヒドロクロロフルオロオレフィン)冷媒の1つであり、低圧冷媒であって密度が低く、現行ターボ冷凍機に用いられているHFC冷媒の1つであるR134a冷媒に対して密度が5分の1程度であるところ、大流量の冷媒の圧縮に適しているターボ圧縮機2の一層の高回転化を図ることにより、低圧冷媒であって密度が低く、またHFC冷媒と比較すると音速が高いため、能力の確保が難しいとされていたR1233zd(E)冷媒を用いたことによる弱点をカバーする、 ターボ冷凍機1による冷却方法。」 2 引用文献2 本願優先日前に外国において頒布された引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「[0019] An example compressor control system 60 is illustrated in FIG. 3. In the example, the radial bearing 30R1, which is located closest to the impeller 18, is used to detect a shaft condition. The shaft condition, for example, vibration, can be used to determine an undesired impeller operating condition, such as stall or surge. In a stall or surge condition, for example, undesired vibrations are imparted to the magnetic bearings and will be picked up by their sensors that also used for the position control feedback system. [0020] Active magnetic bearing system equipped with position sensing capability integrated with the magnetic bearing. In the example illustrated, the radial bearing 30R1 includes position sensors 66X, 66Y that respectively detect the position of the shaft 20 relative to the magnetic bearing 30R1 in the X and Y directions. The shaft position is communicated to the controller 32, as indicated by the arrows. Similarly, the axial bearing 30A includes a position sensor 66Z that communicates the position of the shaft 20 relative to the axial bearing 30A to the controller 32. Radial bearing position sensors 66R1, 66R2 also communicate with the controller 32. (当審注:以下の括弧内は当審による翻訳である。 [0019] 例示の圧縮機制御システム60は図3に図示されている。この例では、インペラ18に近接して設けられたラジアル軸受30R1は軸の状態を検知するのに用いられる。軸の状態、例えば振動などは、ストールやサージといった望ましくないインペラ運転状態を測定するのに用いられる。ストールやサージが起こる状態では、例えば、望ましくない振動が磁気軸受に加わり、位置制御フィードバックシステムに用いられるセンサによって検知される。 [0020] 能動型磁気軸受システムは磁気軸受に位置検知能力を備えたものである。例えば図示の例では、ラジアル軸受30R1は、位置センサ66X、66Yをそなえ、それぞれが軸20の磁気軸受30R1に対する位置をX、Y方向で検知する。軸位置は、矢印で示すとおり、コントローラ32に伝えられる。同様に、アキシャル軸受30Aは位置センサ66Zを含み、軸20のアキシャル軸受30Aに対する位置をコントローラ32に伝達する。ラジアル軸受位置センサ66R1、66R2もまたコントローラ32と通信する。」 3 引用文献3 本願優先日前に日本国内において頒布された引用文献3には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 車輌用冷暖房空調システムのための電動コンプレッサであって、 該電動コンプレッサが、モータ部分(20)と、シャフト(15)を通じて前記モータ部分(20)によって駆動される遠心式コンプレッサ部分(10)とを備え、 該電動コンプレッサの機能動作中に前記シャフト(15)を浮揚させるための電磁式手段と、補助接地ベアリング(8)とをさらに備えていることを特徴とする電動コンプレッサ。 【請求項2】 前記モータ部分(20)は、軸方向ベアリングレスモータ(130)と、前記シャフト(15)を浮揚させるための径方向電磁式手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電動コンプレッサ。 【請求項3】 前記径方向電磁式手段は、第1能動型径方向磁気ベアリング及び第2能動型径方向磁気ベアリング(140,150)を備えていることを特徴とする請求項2に記載の電動コンプレッサ。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と先願発明とを対比する。 先願発明の「ターボ冷凍機1」は、本願発明の「チラーシステム」に相当する。 先願発明の「ターボ冷凍機1」に含まれる「ターボ圧縮機2」に備わる「ラジアル磁気軸受20,21」および「スラスト磁気軸受23、24」は、本願発明の「磁気軸受」に相当する。 先願発明の「ターボ圧縮機2」が「オイルレス化」されていることは、本願発明の「潤滑油を含まない」構成に相当する。 先願発明の「ターボ圧縮機2」は、「圧縮機ハウジング11Aと、モータハウジング11Bとを一体化したハウジング11」を備えており、また、図2で図示されているとおり、ハウジング11には外部と連通している箇所は存在しないから、本願発明の「密閉型圧縮機」に相当する。また、先願発明の「ターボ冷凍機1」の「冷凍サイクル9」は、「飽和温度が18℃以下で負圧となる特性を有するR1233zd(E)冷媒が所要量充填され」ていることから、負圧条件下で運転されることは明らかであり、また上記の通り、先願発明は「密閉型圧縮機」を用いているので「負圧条件で運転されても内部に汚染物質が侵入することを防止」していることも明らかである。よって、先願発明は、本願発明の「負圧条件で運転されても内部に汚染物質が侵入することを防止する密閉式遠心圧縮機にて、R1233zdを含む冷媒組成物を圧縮するステップを含」むことに相当する構成を有している。 先願発明の「ターボ圧縮機2」で圧縮される「R1233zd(E)冷媒」は、「現行ターボ冷凍機に用いられているHFC冷媒の1つであるR134a冷媒に対して密度が5分の1程度」であり、また、「低圧冷媒であって密度が低く、またHFC冷媒と比較すると音速が高いため、能力の確保が難しいとされていた」ことから、HFC冷媒の一つであるR134aに比べてR1233zd(E)冷媒が低冷却能力であると理解できる。また、先願発明は「能力の確保が難しいとされていたR1233zd(E)冷媒を用いたことによる弱点」を「ターボ圧縮機2の一層の高回転化を図ること」によりカバーするものであることから、例えばR134aのようなHFC冷媒を用いる場合と比べると、R1233zd(E)冷媒を用いる場合には、R134aのようなHFC冷媒と同じ冷却能力を得るために、より高回転数でターボ圧縮機2を運転するものと理解できる。よって、先願発明の「大流量の冷媒の圧縮に適しているターボ圧縮機2の一層の高回転化を図ることにより、低圧冷媒であって密度が低く、またHFC冷媒と比較すると音速が高いため、能力の確保が難しいとされていたR1233zd(E)冷媒を用いたことによる弱点をカバーする、」ことは、本願発明の「前記密閉式遠心圧縮機は、ある回転速度でR134aを圧縮する時のベースライン冷却能力を有し、前記密閉式遠心圧縮機は、前記回転速度でR1233zdを含む前記冷媒組成物を圧縮する時、低冷却能力を有し、前記密閉式遠心圧縮機は、R1233zdを含む前記冷媒組成物を圧縮する際、実際の冷却能力が前記低冷却能力より大きくなるように、前記回転速度よりも大きな回転速度で運転」することに相当する。 先願発明の「ターボ冷凍機1による冷却方法」は、本願発明の「冷却方法」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「チラーシステム内において、磁気軸受を備え、潤滑油を含まない、負圧条件で運転されても内部に汚染物質が侵入することを防止する密閉式遠心圧縮機にて、R1233zdを含む冷媒組成物を圧縮するステップを含み、 前記密閉式遠心圧縮機は、ある回転速度でR134aを圧縮する時のベースライン冷却能力を有し、 前記密閉式遠心圧縮機は、前記回転速度でR1233zdを含む前記冷媒組成物を圧縮する時、低冷却能力を有し、 前記密閉式遠心圧縮機は、R1233zdを含む前記冷媒組成物を圧縮する際、実際の冷却能力が前記低冷却能力より大きくなるように、前記回転速度よりも大きな回転速度で運転される冷却方法。」 [相違点] 本願発明は、磁気軸受として能動型磁気軸受を用いているのに対し、先願発明は、能動型磁気軸受を用いているか不明な点。 2 判断 上記相違点について検討する。 引用文献2には、上記第4 2で摘記したとおり、圧縮機の軸受として能動型磁気軸受システムを用いる点が記載されている。 また、引用文献3には、上記第4 3で摘記したとおり、電動コンプレッサに能動型径方向磁気ベアリングを用いる点が記載されている。 これら引用文献2、3の記載を総合すると、冷凍サイクル装置の技術分野において、圧縮機の軸受に能動型磁気軸受を用いることは本願優先日前周知の技術的事項であったと認められる。 そして、圧縮機の軸受として「磁気軸受」を採用している先願発明において、磁気軸受の中で「能動型磁気軸受」を選択することにより新たな効果も奏しないから、上記相違点は課題解決のための具体化手段における微差に過ぎない。 したがって、本願発明と先願発明は、実質的に同一である。 3 効果 先願発明は、圧縮機の軸受として「磁気軸受」を用いることで「オイルレス化」を図っている。また、先願発明において、磁気軸受を採用することにより、摺動型の軸受よりも「長寿命」となっていることは、技術常識からみて明らかである。そのため、先願発明と比較して、「磁気軸受」として「能動型磁気軸受」を選択したことによる本願発明の効果も、先願発明の奏する効果の延長線上にすぎず、何ら新たなものではない。 審判請求人は、令和2年10月28日提出の意見書で、本願発明と先願発明との差異について、以下のように主張している。 「拒絶理由通知では、要するに、磁気軸受のうち能動型磁気軸受を圧縮機に用いることは周知技術であり、磁気軸受として能動型磁気軸受を用いることにより新たな効果も奏しないから、この相違点は微差であると判断されています。 しかしながら、引用文献1に記載されているのはあくまでも上位概念である磁気軸受であって、能動型磁気軸受が周知であるといっても、引用文献1に下位概念である能動的磁気軸受が開示されているとはいえません。 さらに、軸受に能動型磁気軸受を用いることは本願発明の主特徴の一部であって、軸受を能動型磁気軸受とするのか、軸受を能動型磁気軸受以外の磁気軸受とするのかで、得られる結果も異なります。明細書の段落[0015]には、「能動型磁気軸受は非接触位置センサを利用してシャフト位置を監視し、得られた情報を制御システムにフィードバックする。磁気軸受コントローラは、このフィードバックを利用して、適正な回転子位置を維持するために磁気アクチュエータに必要な電流を調整する。能動型磁気軸受を使用すると、非能動型磁気軸受と比べて摩耗が少なく長寿命化が更に促進される。」という、能動型磁気軸受を用いることで得られる具体的な効果が記載されています。 したがって、本願発明と引用文献1との差は微差とは言えず、本願発明と引用文献1に係る発明とは実質的に同一であるとは言えないと思量します。」 しかしながら、既に述べたとおり、先願発明は「磁気軸受」を採用することで「長寿命化」が図られており、審判請求人が能動型磁気軸受を採用することによる効果として挙げている長寿命化は、単なる改善であって、新たな効果ではない。このことは、審判請求人が上記意見書において「長寿命化が更に促進される。」と述べている点から見ても明らかである。 よって、審判請求人の主張は採用できない。 4 まとめ したがって、本願発明は、先願発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-015364

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