特許拒絶査定不服審判
2020-012722
熱搬送システム
- 審判番号
- 2020-012722
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-525638外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月11日
- 審決日
- 2021年09月10日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
- 【請求人】ダイキン アプライド アメリカズ インコーポレィティッド
- 【請求人代理人】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
- 分類
- P18 .121-Z (F25B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-525638号「熱搬送システム」拒絶査定不服審判事件〔2018年12月27日国際公開、WO2018/235832〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2018年6月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年6月23日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年3月16日付けで拒絶理由通知
令和2年4月15日に意見書及び手続補正書の提出
令和2年4月28日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年9月11日に拒絶査定不服審判の請求
2 本願発明
本願の請求項1~11に係る発明は、令和2年4月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
冷媒を昇圧する冷媒昇圧機と、
前記冷媒と室外空気とを熱交換させる室外空気熱交換器と、
前記冷媒と熱搬送媒体とを熱交換させる媒体熱交換器と、
前記室外空気熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させる冷媒放熱状態と、前記室外空気熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させる冷媒蒸発状態と、を切り換える冷媒流路切換機と、
を有しており、前記冷媒としてHFC-32からなる流体が封入された冷媒回路と、
前記熱搬送媒体を昇圧する媒体昇圧機と、
前記媒体熱交換器と、
前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の放熱器として機能させる第1媒体放熱状態と、前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の蒸発器として機能させる第1媒体蒸発状態と、を切り換える第1媒体流路切換機と、
前記熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる複数の室内空気熱交換器と、
を有しており、前記熱搬送媒体として二酸化炭素が封入された媒体回路と、
を備えた、
熱搬送システム。」
3 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の一部は、概略、以下のとおりである。
<理由3(進歩性)について>
本願発明は、本願の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献10に記載された事項、周知の事項(引用文献2、3、11)に基いて、本願の出願前(優先日前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2008-20083号公報
2.特許第5800994号公報
3.特開2016-44892号公報
10.特開2017-32184号公報(2017年2月9日出願公開)
11.特開2005-180866号公報(周知技術を示す文献)
4 引用文献
4-1 引用文献1
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献1には、「2元冷凍サイクル装置」に関し、次の記載がある(下線は、参考のため当審が付与したものである。また、「・・・」は、文の省略を意味する。)。
ア 「【請求項1】
室外熱交換器を有する1次側冷凍サイクルと、
室内熱交換器を有する2次側冷凍サイクルと、
この2次側冷凍サイクルに設けられ、2つのシリンダを有するとともに、これら2つのシリンダのうち1つは圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能に構成され、インバータ駆動される2シリンダ形回転式圧縮機と、
上記1次側冷凍サイクルの冷媒と上記2次側冷凍サイクルの冷媒とを熱交換する中間熱交換器とを備えることを特徴とする2元冷凍サイクル装置。
・・・
【請求項3】
上記2次側冷凍サイクルの冷媒は、二酸化炭素を主成分とする単一冷媒又は混合冷媒であることを特徴とする請求項1または2記載の2元冷凍サイクル装置。
【請求項4】
上記1次側冷凍サイクルの冷媒は、炭化水素系の冷媒であることを特徴とする請求項3記載の2元冷凍サイクル装置。」
イ 「【0010】
図1に示すように2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10と、2次側冷凍サイクル20とを備えている。また、2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10の冷媒(1次側冷媒)と2次側冷凍サイクル20の冷媒(2次側冷媒)とが熱交換できるように形成された中間熱交換器300とを備えている。なお、1次側冷媒と2次側冷媒とには、同じ冷媒又は特性の類似した冷媒を用いる。
【0011】
1次側冷凍サイクル10は、第1圧縮機100と、この第1圧縮機100の吐出口に連結された第1四方弁150と、この第1四方弁150に連結された室外熱交換器160と、この室外熱交換器160に連結された第1膨張機構170と、この第1膨張機構170に連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第1中間熱交換器300Aと、この第1中間熱交換器300Aに第1四方弁150を介して連結されたアキュムレータ180とを順次備え、このアキュムレータ180は圧縮機100の吸込口へと連結されている。
【0012】
2次側冷凍サイクル20は、第2圧縮機200と、この第2圧縮機200の吐出口から連結された第2四方弁250と、この第2四方弁250に連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第2中間熱交換器300Bと、この第2中間熱交換器300Bに連結された第2膨張機構260と、この第2膨張機構260に連結された室内熱交換器270と、この室内熱交換器270に第2四方弁250を介して連結されたアキュムレータ280とを順次備え、このアキュムレータ280は圧縮機200の吸込口へと連結されている。
【0013】
中間熱交換器300は、第1中間熱交換器300Aと第2中間熱交換器300Bとを備えており、1次側冷媒と2次側冷媒とを熱交換可能に構成されている。」
ウ 「【0036】
2元冷凍サイクル装置1の冷房運転時は図1中矢印Cのように、まず1次側冷凍サイクル10では、上述したように第1圧縮機100で圧縮された1次側冷媒は、第1圧縮機100の吐出管118から第1四方弁150、室外熱交換器160、第1膨張装置170及び第1中間熱交換器300Aを順次通過し、第1四方弁150、第1アキュムレータ180を介して第1圧縮機100へと戻る。
【0037】
同様に、2次側冷凍サイクル20では、第2圧縮機200で圧縮された2次側冷媒は、第2圧縮機200の吐出管118から第2四方弁250、第2中間熱交換器300B、第2膨張装置260及び室内熱交換器270を順次通過し、第2四方弁250、第2アキュムレータ280を介して第2圧縮機200へと戻る。このとき、1次側冷媒は室外熱交換器160で凝縮され、第1中間熱交換器300Aで蒸発し、2次側冷媒は第2中間熱交換器300Bにおいて放熱し冷熱を得て、室内熱交換器270によって室内の熱を吸収し室内空気を冷却する。
【0038】
2元冷凍サイクル装置1の暖房運転時は第1四方弁150と、第2四方弁250とを切換える。これにより、図1中矢印Hのように、冷媒の流れが冷房運転時と逆になり、1次側冷媒の流れは1次側冷凍サイクル10では、第1圧縮機100の吐出管118から第1四方弁150、第1中間熱交換器300A、第1膨張装置170及び室外熱交換器160を順次通過し、第1四方弁150、第1アキュムレータ180を介して第1圧縮機100へと戻る。
【0039】
同様に2次側冷凍サイクル20では、第2圧縮機200で圧縮された2次側冷媒が、第2圧縮機200の吐出管118から第2四方弁250、室内熱交換器270、第2膨張装置260及び第2中間熱交換器300Bを順次通過し、第2四方弁250、第2アキュムレータ280を介して第1圧縮機200へと戻る。
【0040】
図3は冷凍サイクル1の暖房運転時における冷媒の状態を示しており、図3中実線Mは冷凍圧縮サイクル行程の1次側冷凍サイクル10の冷媒のP―hの変化を示し、aは第1圧縮機100の入口(吸込み)部、bは第1中間熱交換器300A、cは第1膨張装置170の入口部、dは室外熱交換器160の入口部の入口部の冷媒の状態を示している。また、図3中破線Nは冷凍圧縮サイクル行程の2次側冷凍サイクル20の冷媒のP―hの変化を示し、eは第2圧縮機200の入口(吸込み)部、fは室内熱交換器270の入口部、gは第2膨張装置26の入口部、hは第2中間熱交換器300Bの入口部の冷媒の状態を示している。
【0041】
1次側冷媒は、第1中間熱交換器300Aで凝縮され、室外熱交換気160で蒸発する。2次側冷媒は室内熱交換器270において放熱し室内空気を暖め、第2中間熱交換器300Bによって蒸発する。このとき図3に示すように、中間熱交換器300では、1次側冷凍サイクル10の凝縮と2次側冷凍サイクル20の蒸発とでの温度差をとって熱交換させるため、1次側冷媒の冷凍サイクル行程と2次側冷媒の冷凍サイクル行程とが交差する二段構造となる。」
エ 「【0053】
本変形例の2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10に使用する1次側冷媒をHC系冷媒であるプロパンを用い、2次側冷凍サイクル20に使用する2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いたものである。
・・・
【0055】
2元冷凍サイクル装置1は、2次側冷凍サイクル20の室内熱交換器(蒸発)270で室内空気から吸熱して室内を冷却する。室内空気から吸熱した2次側冷媒は、中間熱交換器300の1次側冷凍サイクル10の第1中間熱交換器(蒸発)300Aと2次側冷凍サイクル20の第2中間熱交換器(凝縮)300Bとで熱交換し、冷媒の熱を2次側冷媒から1次側冷媒に移動させる。1次側冷媒の熱を1次側冷凍サイクル10の室外熱交換器(凝縮)160で室外空気へ放熱させる。
【0056】
図5は、本変形例の2元冷凍サイクル装置1の暖房運転時における、図5中破線Qは1次側冷媒であるプロパンのT-hの変化、図5中実線Rは2次側冷媒である二酸化炭素のT-hの変化を示したグラフである。
【0057】
2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10の室外熱交換器(蒸発)160にて室外空気から吸熱し、中間熱交換器300の1次側冷凍サイクル10の第1中間熱交換器(凝縮)300Aと2次側冷凍サイクル20の第2中間熱交換器(蒸発)300Bとで熱交換し、冷媒の熱を1次側冷媒から2次側冷媒へ移動させる。そして、2次側冷媒の熱を2次側冷凍サイクル20の室内熱交換器270により室内を暖房する。
【0058】
図4、5に示すように、2次側冷媒として用いる二酸化炭素はサイクル効率が低いため、2次側冷凍サイクル20の冷媒に使用する場合は、1次側冷凍サイクル10で、高圧側と低圧側の温度差を可能な限り取り、2次側冷凍サイクルは圧力差を極力小さくすることが消費電力量の点で望ましい。
【0059】
図6は、1次側冷凍サイクル10と2次側冷凍サイクル20との熱交換時の凝縮温度と全体のサイクル効率(COP)を示したグラフである。冷房運転時は、2次側冷凍サイクル20の二酸化炭素の凝縮温度を下げるほど、暖房運転時は1次側冷凍サイクル10のプロパンの凝縮温度を上げるほど効率が高くなる。
【0060】
図7は、二酸化炭素のP-h線図上に、冷房運転時及び暖房運転時における二酸化炭素の冷媒状態を示したグラフである。図7に示すように、冷房運転時と暖房運転時で、作動圧力が極端に変わることが分かる。他の冷媒は圧力に大きな差があると、コンプレッサ吸込における冷媒の密度の差が大きくなる。しかし、二酸化炭素冷媒の場合は、暖房運転時に超臨界サイクルになり、エンタルピ差が冷房運転時に比べて極端に小さくなる。このため、上述した第1の実施の形態の2元冷凍サイクル装置1とは異なり、吸込み圧力が低く、冷媒の比体積の大きな(冷媒密度の小さい)冷房運転の方が暖房運転に比べて、能力が大きすぎることになる。
【0061】
したがって、一方のシリンダを圧縮運転と非圧縮運転とを切替可能な2シリンダ形回転式圧縮機(例えば第1圧縮機100、第2圧縮機200)を備えることにより、冷房運転時や低負荷時には1つのシリンダでの運転、暖房運転時や高負荷時には2シリンダでの運転とすることができ、適用能力範囲を広げることが可能となる。
【0062】
本実施例の2元冷凍サイクル装置1によれば1次側冷媒に炭化水素(HC)系の冷媒を用い、2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いると、使用冷媒が自然界に存在する冷媒であることから、代替フロンを用いる必要がなく、地球温暖化への冷媒自体の直接効果を減少することが可能である。このため、冷媒の漏れなどによる温暖化防止に有効となる。また、室内側に使用する冷媒が二酸化炭素冷媒であるため、室内に可燃性冷媒が漏れることもなく、安全に使用可能である。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例で2次側冷媒に二酸化炭素を用いるとしたが、この二酸化炭素冷媒は単一冷媒又は混合冷媒のどちらでも適用できる。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
オ 「【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る2元冷凍サイクル装置を示す構成図。」
カ 「【符号の説明】
【0065】
1…2元冷凍サイクル装置、10…1次側冷凍サイクル、20…2次側冷凍サイクル、100…第1圧縮機、150…第1四方弁、160…室外熱交換器、170…第1膨張装置、180…第1アキュムレータ、200…第2圧縮機、250…第2四方弁、260…第2膨張弁、270…室内熱交換器、280…第2アキュムレータ、300…中間熱交換器、300A…第1中間熱交換器、300B…第2中間熱交換器、E…室外構成、I…室内構成、C…冷房運転時の冷媒の流れ、H…暖房運転時の冷媒の流れ。」
キ 「
[図:0001394303000001.jpg]
」
(2)引用発明
上記(1)を総合すると、引用文献には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「1次側冷凍サイクル10と、2次側冷凍サイクル20とを備えた2元冷凍サイクル装置1であって、
2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10の冷媒(1次側冷媒)と2次側冷凍サイクル20の冷媒(2次側冷媒)とが熱交換できるように形成された中間熱交換器300とを備え、
1次側冷凍サイクル10は、第1圧縮機100と、この第1圧縮機100の吐出口に連結された第1四方弁150と、この第1四方弁150に連結された室外熱交換器160と、この室外熱交換器160に連結された第1膨張機構170と、この第1膨張機構170に連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第1中間熱交換器300Aと、この第1中間熱交換器300Aに第1四方弁150を介して連結されたアキュムレータ180とを順次備え、このアキュムレータ180は圧縮機100の吸込口へと連結され、
2次側冷凍サイクル20は、第2圧縮機200と、この第2圧縮機200の吐出口から連結された第2四方弁250と、この第2四方弁250に連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第2中間熱交換器300Bと、この第2中間熱交換器300Bに連結された第2膨張機構260と、この第2膨張機構260に連結された室内熱交換器270と、この室内熱交換器270に第2四方弁250を介して連結されたアキュムレータ280とを順次備え、このアキュムレータ280は圧縮機200の吸込口へと連結され、
中間熱交換器300は、第1中間熱交換器300Aと第2中間熱交換器300Bとを備えており、1次側冷媒と2次側冷媒とを熱交換可能に構成され、
2元冷凍サイクル装置1の冷房運転時は、1次側冷媒は室外熱交換器160で凝縮され、第1中間熱交換器300Aで蒸発し、2次側冷媒は第2中間熱交換器300Bにおいて放熱し冷熱を得て、室内熱交換器270によって室内の熱を吸収し室内空気を冷却し、
冷凍サイクル1の暖房運転時は、1次側冷媒は、第1中間熱交換器300Aで凝縮され、室外熱交換気160で蒸発し、2次側冷媒は室内熱交換器270において放熱し室内空気を暖め、第2中間熱交換器300Bによって蒸発し、
2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10に使用する1次側冷媒をHC系冷媒であるプロパンを用い、2次側冷凍サイクル20に使用する2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いたものである、
2元冷凍サイクル装置1。」
4-2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献2には、「冷凍装置及びその制御方法」に関し、次の記載がある。
(1) 引用文献の記載
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧縮機、第1凝縮器、第1絞り装置、及び第1蒸発器が順次配管接続され、冷媒が循環する第1冷媒回路と、
第2圧縮機、第2凝縮器、受液器、第2絞り装置、及び第2蒸発器が順次配管接続され、冷媒が循環する第2冷媒回路と、
前記第1蒸発器と前記第2凝縮器とで構成され、前記第1蒸発器を流れる冷媒と前記第2凝縮器を流れる冷媒とが熱交換を行うカスケードコンデンサと、
前記第1圧縮機及び前記第2圧縮機の運転を制御する制御部と、を備え、
前記受液器は、前記カスケードコンデンサの下方に配置されており、
前記制御部は、前記第2圧縮機の運転が停止している際に、前記第1圧縮機の運転を稼働させ、前記第2圧縮機の運転が停止し、且つ、前記第1圧縮機の運転が稼働している際に、前記第2冷媒回路の高圧側圧力に基づいて、前記第1圧縮機の周波数及び前記第1絞り装置の開度の少なくともいずれか一方を制御する、
ことを特徴とする冷凍装置。」
イ 「【0002】
従来の冷凍装置として、例えば、高温側(高段側、一次側)の冷凍サイクル(以下、高温側サイクルという)と、低温側(低段側、二次側)の冷凍サイクル(以下、低温側サイクルという)と、を備えた冷凍装置がある(例えば、特許文献1参照)。
このような冷凍装置では、高温側サイクルの蒸発器と低温側サイクルの凝縮器とでカスケードコンデンサが構成される。
高温側サイクルの冷媒と低温側サイクルの冷媒とは、カスケードコンデンサにおいて熱交換する。低温側サイクルの冷媒と冷凍室の室内空気等の冷却対象とは、低温側サイクルの蒸発器において熱交換する。」
「【0012】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る冷凍装置を説明する。
なお、以下では、低圧カット制御によって低温側サイクルの循環が停止される場合について説明するが、本発明には、例えば、低温側サイクルの圧縮機の故障、低温側サイクルの蒸発器の霜取運転等、低圧カット制御以外によって低温側サイクルの循環が停止される場合が含まれる。
(冷凍装置の構成)
実施の形態1に係る冷凍装置の構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る冷凍装置の、構成を示す図である。
図1に示すように、冷凍装置1は、高温側サイクル11と、低温側サイクル21と、カスケードコンデンサ51と、制御部61と、を有する。
高温側サイクル11は、本発明における「第1冷媒回路」に相当する。
低温側サイクル21は、本発明における「第2冷媒回路」に相当する。
【0013】
高温側サイクル11は、高温側圧縮機12と、高温側凝縮器13と、高温側膨張弁14と、高温側蒸発器15と、を有する。
高温側圧縮機12は、本発明における「第1圧縮機」に相当する。
高温側凝縮器13は、本発明における「第1凝縮器」に相当する。
高温側膨張弁14は、本発明における「第1絞り装置」に相当する。
高温側蒸発器15は、本発明における「第1蒸発器」に相当する。
高温側圧縮機12と高温側凝縮器13と高温側膨張弁14と高温側蒸発器15とは、直列に接続される。
【0014】
低温側サイクル21は、低温側圧縮機22と、中間冷却器23と、低温側凝縮器24と、受液器25と、冷却ユニット41と、アキュムレータ26と、を有する。
低温側圧縮機22は、本発明における「第2圧縮機」に相当する。
低温側凝縮器24は、本発明における「第2凝縮器」に相当する。
低温側圧縮機22と中間冷却器23と低温側凝縮器24と受液器25と冷却ユニット41とアキュムレータ26とは、直列に接続される。
受液器25の出口側と冷却ユニット41の入口側との間には、サービスバルブ27が設けられる。
冷却ユニット41の出口側とアキュムレータ26の入口側との間には、サービスバルブ28が設けられる。
冷却ユニット41は、サービスバルブ27、28によって冷凍装置1から分離可能である。
サービスバルブ27、28が設けられず、冷却ユニット41が分離不能であってもよい。
なお、低温側サイクル21に、冷媒の量又は状態を確認するためのサイトグラス(図示せず)、配管内の水分を吸収するドライヤ(図示せず)等が設けられてもよい。
【0015】
高温側蒸発器15と低温側凝縮器24とは、カスケードコンデンサ51を構成する。
高温側サイクル11の冷媒と低温側サイクル21の冷媒とは、カスケードコンデンサ51において熱交換を行う。」
「【0018】
高温側サイクル11の冷媒として、例えば、HFC冷媒(R410A、R404A、R32、R407C)、HFO冷媒、HC冷媒等が使用される。
低温側サイクル21の冷媒として、例えば、地球温暖化係数(GWP)が1であるCO2冷媒が使用される。」
「
[図:0001394303000002.jpg]
」
(2) 上記(1)記載事項からわかること
(引2事項)
「高温側(高段側、一次側)の冷凍サイクル(以下、高温側サイクルという)と、低温側(低段側、二次側)の冷凍サイクル(以下、低温側サイクルという)と、を備えた冷凍装置では、高温側サイクルの蒸発器と低温側サイクルの凝縮器とでカスケードコンデンサが構成され、高温側サイクルの冷媒と低温側サイクルの冷媒とは、カスケードコンデンサにおいて熱交換するものにおいて、高温側サイクルの冷媒として、例えば、HFC冷媒(R410A、R404A、R32、R407C)、HFO冷媒、HC冷媒等が使用され、低温側サイクルの冷媒として、例えば、地球温暖化係数(GWP)が1であるCO2冷媒が使用されること。」
4-3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献3には、「空気調和装置」に関し、次の記載がある。
(1) 引用文献の記載
ア 「【0030】
以下、本発明にかかる空気調和装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる空気調和装置の実施形態の具体的な構成は、下記の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0031】
(1)構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。次に、空気調和装置1の全体構成について説明する。
【0032】
<全体>
空気調和装置1は、回路構成の観点から見ると、熱源側冷媒が循環する熱源側回路20と、熱源側冷媒と熱交換を行う熱搬送媒体が循環する搬送側回路40と、熱搬送媒体と熱交換を行う利用側冷媒が循環する利用側回路50とを有する装置である。そして、空気調和装置1は、利用側回路50が、利用側熱交換器42a、42bを有しており、熱源側回路20からの熱が、搬送側回路40を通じて利用側回路50に搬送され、利用側熱交換器42a、42bにおける利用側冷媒の熱交換によって空調を行うようになっている。ここで、熱源側回路20は、昇圧、放熱、減圧、蒸発の行程を行いながら熱源側冷媒が循環する蒸気圧縮式(直膨式)の冷凍サイクルを構成している。また、搬送側回路40は、熱源側回路20から得た熱(冷熱や温熱)を利用側回路50に搬送しながら熱搬送媒体が循環する熱搬送サイクルを構成している。さらに、利用側回路50は、搬送側回路40から得た熱(冷熱や温熱)を使用しつつ、昇圧、放熱、減圧、蒸発の行程を行いながら利用側冷媒が循環する蒸気圧縮式(直膨式)の冷凍サイクルを構成している。このように、空気調和装置1では、三次回路方式が採用されている。ここで、熱源側冷媒と利用側冷媒とは異なる冷媒であってもよいし同じ冷媒であってもよいが、熱源側回路20と利用側回路50との共通化の観点では、同じ冷媒にすることが好ましい。
【0033】
また、空気調和装置1は、ユニット構成の観点から見ると、主として、熱源ユニット2と、中間ユニット3と、利用ユニット4a、4bとが接続されることによって構成されている。ここで、熱源ユニット2は、ビル等の建物外に設けられており、中間ユニット3及び利用ユニット4a、4bは、その建物内に設けられている。そして、熱源ユニット2と中間ユニット3とは、熱搬送媒体が流れる送り側熱搬送媒体連絡管6及び戻り側熱搬送媒体連絡管7を介して接続されている。また、中間ユニット3と利用ユニット4a、4bとは、利用側冷媒が流れる液利用側冷媒連絡管8及びガス利用側冷媒連絡管9を介して接続されている。すなわち、空気調和装置1では、熱源側冷媒が循環する熱源側回路20が熱源ユニット2に設けられており、熱搬送媒体が循環する搬送側回路40が送り側熱搬送媒体連絡管6及び戻り側熱搬送媒体連絡管7を介して熱源ユニット2及び中間ユニット3にまたがって設けられている。また、空気調和装置1では、利用側冷媒が循環する利用側回路50が液利用側冷媒連絡管8及びガス利用側冷媒連絡管9を介して中間ユニット3及び利用ユニット4a、4bにまたがって設けられている。このように、空気調和装置1では、互いに離れた場所に設置される室外側(ここでは、熱源ユニット2)と室内側(ここでは、中間ユニット3及び利用ユニット4a、4b)との接続を、熱搬送媒体が流れる熱搬送媒体連絡管6、7を介して行うようにしており、熱源側冷媒が循環する熱源側回路20が室外側(ここでは、熱源ユニット2)だけに収まり、かつ、利用側冷媒が循環する利用側回路50が室内側(ここでは、中間ユニット3及び利用ユニット4a、4b)だけに収まるようにしている。
【0034】
また、ここでは、建物内の複数の空間の空調を行うことができるように、利用ユニット4a、4bが複数(ここでは、2台)設けられている。また、空調として冷房及び暖房を行うことができるように、熱源側回路20における熱源側冷媒の流れ方向を切り換えるための熱源側冷媒切換機構23が熱源側回路20に設けられており、利用側回路50における利用側冷媒の流れ方向を切り換えるための利用側冷媒切換機構33が利用側回路50に設けられている。ここで、冷房は、熱源側回路20から搬送側回路40を通じて利用側回路50に冷熱を搬送し利用側熱交換器42a、42bにおける利用側冷媒の蒸発によって冷熱を利用する空調である。また、暖房は、熱源側回路20から搬送側回路40を通じて利用側回路50に温熱を搬送し利用側熱交換器42a、42bにおける利用側冷媒の放熱によって温熱を利用する空調である。尚、利用ユニットの台数は、2台に限定されるものではなく、3台以上であってもよい。次に、空気調和装置1の詳細構成について説明する。
【0035】
<熱源ユニット> 熱源ユニット2は、上記のように、室外に設置されており、搬送側回路40の一部及び熱源側回路20を構成している。熱源ユニット2は、主として、熱源側圧縮機21と、熱源側冷媒切換機構23と、熱源側熱交換器24と、熱源側膨張機構25と、媒体-熱源側冷媒熱交換器26と、循環ポンプ29とを有している。そして、熱源側圧縮機21、熱源側冷媒切換機構23、熱源側熱交換器24、熱源側膨張機構25及び媒体-熱源側冷媒熱交換器26が接続されることによって構成された熱源側冷媒が循環する回路が熱源側回路20である。また、媒体-熱源側冷媒熱交換器26及び循環ポンプ29が熱搬送媒体連絡管6、7を介して媒体-利用側冷媒熱交換器34に接続されることによって構成された熱搬送媒体が循環する回路が搬送側回路40である。
【0036】
熱源側圧縮機21は、冷凍サイクルの低圧の熱源側冷媒を高圧になるまで昇圧して熱源側冷媒を循環させるための機器である。ここでは、熱源側圧縮機21は、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)をインバータにより周波数(回転数)制御可能な熱源側圧縮機用モータ22によって回転駆動する構造となっている。すなわち、熱源側圧縮機21は、周波数(回転数)を変化させることで運転容量を制御することが可能に構成されている。熱源側圧縮機21は、吸入側及び吐出側がともに熱源側冷媒切換機構23に接続されている。
【0037】
熱源側冷媒切換機構23は、熱源側回路20における熱源側冷媒の流れの方向を切り換えるための機構である。熱源側冷媒切換機構23は、冷房時には、熱源側熱交換器24を熱源側圧縮機21において昇圧された熱源側冷媒の放熱器として機能させ、かつ、媒体-熱源側冷媒熱交換器26を熱源側熱交換器24において放熱した熱源側冷媒の蒸発器として機能させる冷房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、熱源側冷媒切換機構23は、冷房時には、熱源側圧縮機21の吐出側と熱源側熱交換器24のガス側とが接続される(図1の熱源側冷媒切換機構23の実線を参照)。しかも、熱源側圧縮機21の吸入側と媒体-熱源側冷媒熱交換器26のガス側とが接続される(図1の熱源側冷媒切換機構23の実線を参照)。また、熱源側冷媒切換機構23は、暖房時には、熱源側熱交換器24を媒体-熱源側冷媒熱交換器26において放熱した熱源側冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、媒体-熱源側冷媒熱交換器26を圧縮機21において昇圧された熱源側冷媒の放熱器として機能させる暖房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、熱源側冷媒切換機構23は、暖房時には、熱源側圧縮機21の吐出側と媒体-熱源側冷媒熱交換器26のガス側とが接続される(図1の熱源側冷媒切換機構23の破線を参照)。しかも、熱源側圧縮機21の吸入側と熱源側熱交換器24のガス側とが接続される(図1の熱源側冷媒切換機構23の破線を参照)。尚、ここでは、熱源側冷媒切換機構23として四路切換弁が使用されているが、複数の弁を組み合わせた回路構成にすること等によって、四路切換弁と同様の機能を果たせるように構成してもよい。
【0038】
熱源側熱交換器24は、冷房時には室外空気を冷却源として熱源側圧縮機21において昇圧された熱源側冷媒の放熱器として機能し、暖房時には室外空気を加熱源として熱源側膨張機構25において減圧された熱源側冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。熱源側熱交換器24は、液側が熱源側膨張機構25に接続されており、ガス側が熱源側冷媒切換機構23に接続されている。ここで、熱源ユニット2は、熱源ユニット2内に室外空気を吸入して、熱源側熱交換器24において熱源側冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための室外ファン27を有している。すなわち、熱源ユニット2は、熱源側熱交換器24を流れる熱源側冷媒の冷却源又は加熱源としての室外空気を熱源側熱交換器24に供給するファンとして、室外ファン27を有している。ここでは、室外ファン27として、室外ファン用モータ28によって駆動されるプロペラファン等が使用されている。
【0039】
熱源側膨張機構25は、冷房時には熱源側熱交換器24において放熱した冷凍サイクルの高圧の熱源側冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧し、暖房時には媒体-熱源側冷媒熱交換器26において放熱した冷凍サイクルの高圧の熱源側冷媒を冷凍サイクルの低圧まで減圧するための機構である。熱源側膨張機構25は、一端が熱源側熱交換器24の液側に接続されており、他端が媒体-熱源側冷媒熱交換器26のガス側に接続されている。ここでは、熱源側膨張機構25として電動膨張弁が使用されている。
【0040】
媒体-熱源側冷媒熱交換器26は、熱源側回路20を循環する熱源側冷媒と搬送側回路40を循環する熱搬送媒体との熱交換を行う熱交換器である。媒体-熱源側冷媒熱交換器26は、冷房時には、熱源側膨張機構25において減圧された熱源側冷媒と媒体-利用側冷媒熱交換器34において吸熱した熱搬送媒体との熱交換によって、熱源側冷媒の蒸発器として、かつ、熱搬送媒体の放熱器として機能する。また、媒体-熱源側冷媒熱交換器26は、暖房時には、熱源側圧縮機21において昇圧された熱源側冷媒と媒体-利用側冷媒熱交換器34において放熱した熱搬送媒体との熱交換によって、熱源側冷媒の放熱器として、かつ、熱搬送媒体の吸熱器として機能する。媒体-熱源側冷媒熱交換器26の熱源側冷媒が流れる部分は、液側が熱源側膨張機構25に接続されており、ガス側が熱源側冷媒切換機構23に接続されている。また、媒体-熱源側冷媒熱交換器26の熱搬送媒体が流れる部分は、入口側が循環ポンプ29の吐出側に接続されており、出口側が送り側熱搬送媒体連絡管6に接続されている。このように、熱源側回路20と搬送側回路40とが、媒体-熱源側冷媒熱交換器26を有している。
【0041】
循環ポンプ29は、熱搬送媒体を昇圧して熱搬送媒体を循環させるための機器である。ここでは、循環ポンプ29は、遠心式や容積式等のポンプ要素をポンプ用モータ30によって駆動する構造となっている。循環ポンプ29は、吸入側が戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続されており、吐出側が媒体-熱源側冷媒熱交換器26の入口側に接続されている。尚、循環ポンプ29は、遠心式や容積式等の機械式のポンプに限定されるものではなく、特許文献1のような加減圧動作による構成を使用してもよい。また、循環ポンプ29の接続位置は、媒体-熱源側冷媒熱交換器26の入口側に限定されるものではなく、媒体-熱源側冷媒熱交換器26の出口側に接続されていてもよい。この場合には、媒体-熱源側冷媒熱交換器26の熱搬送媒体が流れる部分は、入口側が戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続され、出口側が循環ポンプ29の吐出側に接続されることになる。
【0042】
<中間ユニット>
中間ユニット3は、上記のように、室内に設置されており、搬送側回路40の一部及び利用側回路50の一部を構成している。中間ユニット3は、主として、媒体-利用側冷媒熱交換器34と、利用側圧縮機31と、利用側冷媒切換機構33とを有している。そして、媒体-利用側冷媒熱交換器34が熱搬送媒体連絡管6、7を介して循環ポンプ29及び媒体-熱源側冷媒熱交換器26に接続されることによって構成された熱搬送媒体が循環する回路が搬送側回路40である。また、利用側圧縮機31、利用側冷媒切換機構33及び媒体-利用側冷媒熱交換器34が利用側冷媒連絡管8、9を介して利用側流量調節機構4a、41b及び利用側熱交換器42a、42bに接続されることによって構成された利用側冷媒が循環する回路が利用側回路50である。
【0043】
媒体-利用側冷媒熱交換器34は、搬送側回路40を循環する熱搬送媒体と利用側回路50を循環する利用側冷媒との熱交換を行う熱交換器である。媒体-利用側冷媒熱交換器34は、冷房時には、媒体-熱源側冷媒熱交換器26において放熱した熱搬送媒体と利用側圧縮機31において昇圧された利用側冷媒との熱交換によって、熱搬送媒体の吸熱器として、かつ、利用側冷媒の放熱器として機能する。また、媒体-利用側冷媒熱交換器34は、暖房時には、媒体-熱源側冷媒熱交換器26において吸熱した熱搬送媒体と利用側流量調節機構41a、41bにおいて減圧された利用側冷媒との熱交換によって、熱搬送媒体の放熱器として、かつ、利用側冷媒の蒸発器として機能する。媒体-利用側冷媒熱交換器34の熱搬送媒体が流れる部分は、入口側が送り側熱搬送媒体連絡管6に接続されており、出口側が戻り側熱搬送媒体連絡管7に接続されている。また、媒体-利用側冷媒熱交換器34の利用側冷媒が流れる部分は、液側が液利用側冷媒連絡管8に接続されており、ガス側が利用側冷媒切換機構33に接続されている。このように、搬送側回路40と利用側回路50とが、媒体-利用側冷媒熱交換器34を有している。
【0044】
利用側圧縮機31は、冷凍サイクルの低圧の利用側冷媒を高圧になるまで昇圧して利用側冷媒を循環させるための機器である。ここでは、利用側圧縮機21は、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)をインバータにより周波数(回転数)制御可能な利用側圧縮機用モータ32によって回転駆動する構造となっている。すなわち、利用側圧縮機31は、周波数(回転数)を変化させることで運転容量を制御することが可能に構成されている。利用側圧縮機31は、吸入側及び吐出側がともに利用側冷媒切換機構33に接続されている。
【0045】
利用側冷媒切換機構33は、利用側回路50における利用側冷媒の流れの方向を切り換えるための機構である。利用側冷媒切換機構33は、冷房時には、媒体-利用側熱交換器34を利用側圧縮機31において昇圧された利用側冷媒の放熱器として機能させ、かつ、利用側熱交換器42a、42bを媒体-利用側熱交換器34において放熱した利用側冷媒の蒸発器として機能させる冷房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、利用側冷媒切換機構33は、冷房時には、利用側圧縮機31の吐出側と媒体-熱源側冷媒熱交換器34のガス側とが接続される(図1の利用側冷媒切換機構33の実線を参照)。しかも、利用側圧縮機31の吸入側と利用側熱交換器42a、42bのガス側とが接続される(図1の利用側冷媒切換機構33の実線を参照)。また、利用側冷媒切換機構33は、暖房時には、媒体-利用側熱交換器34を利用側熱交換器42a、42bにおいて放熱した利用側冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、利用側熱交換器42a、42bを利用側圧縮機31において昇圧された利用側冷媒の放熱器として機能させる暖房サイクル状態への切り換えを行う。すなわち、利用側冷媒切換機構33は、暖房時には、利用側圧縮機31の吐出側と利用側熱交換器42a、42bのガス側とが接続される(図1の利用側冷媒切換機構33の破線を参照)。しかも、利用側圧縮機31の吸入側と媒体-利用側冷媒熱交換器34のガス側とが接続される(図1の利用側冷媒切換機構33の破線を参照)。尚、ここでは、利用側冷媒切換機構33として四路切換弁が使用されているが、複数の弁を組み合わせた回路構成にすること等によって、四路切換弁と同様の機能を果たせるように構成してもよい。
【0046】
<利用ユニット>
利用ユニット4a、4bは、上記のように、室内に設置されており、利用側回路50の一部を構成している。利用ユニット4aは、主として、利用側流量調節機構41aと、利用側熱交換器42aとを有している。また、利用ユニット4aと同様に、利用ユニット4bは、主として、利用側流量調節機構41bと、利用側熱交換器42bとを有している。そして、利用側流量調節機構41a、41b及び利用側熱交換器42a、42bが利用側冷媒連絡管8、9を介して媒体-利用側冷媒熱交換器34、利用側圧縮機31及び利用側冷媒切換機構33に接続されることによって構成された利用側冷媒が循環する回路が利用側回路50である。尚、利用ユニット4bは、利用ユニット4aと同様の構成を有するため、以下の説明では、利用ユニット4aの構成だけを説明し、利用ユニット4bの構成については、利用ユニット4aの各部を示す符号の添字「a」を添字「b」に読み替えることで説明を省略する。」
「
[図:0001394303000003.jpg]
」
(2) 上記(1)記載事項からわかること
(引3事項)
「熱源側圧縮機21を備える熱源側冷媒が循環する冷凍サイクルと、搬送側回路と、利用側圧縮機31を備える利用側回路50とをカスケードに接続するものにおいて、利用側回路50に複数の利用ユニット4a、4bを設けること。」
4-4 引用文献10
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献10には、「熱生成ユニット」に関し、次の記載がある。
(1) 引用文献の記載
「【0027】
なお、給湯用冷媒には、例えば、R134a、CO2、R1234yf、R1234zeなどを用いる。給湯用冷媒にR134a、R1234yf、R1234zeを用いた場合、熱媒体は給湯用熱交換器320で60~80℃にまで沸き上げられる。また、給湯用冷媒にCO2を用いた場合、熱媒体は給湯用熱交換器320で60~90℃にまで沸き上げられる。」
「【0041】
熱媒体配管63、64、65の大部分は、加工性の良い銅管が用いられることが多いが、樹脂材料も用いられる。一方、熱媒体ポンプ46の熱媒体吸入部、吐出部には樹脂材料が用いられることが多い。また、二重管式熱交換器である給湯用熱交換器42には、前述したとおり、銅を用いることが多く、接続口も銅管となっている。このように、熱媒体が流れる経路(熱媒体配管63→熱媒体ポンプ46→熱媒体配管64→給湯用熱交換器42→熱媒体配管65)には、樹脂材料と銅が混在し、異なる材料同士の接続部分が存在する。この接続部分には、シール材(図示せず)を挟み込んで固定し、熱媒体の漏れが無いようにしている。
なお、空調用冷媒には、一般的に家庭用空調機やビル用空調機に使われる冷媒であるR410A、R32、R407Cなどを用い、給湯用冷媒には、二酸化炭素冷媒を用いる。」
「【0050】
空調用圧縮機11で圧縮された高温高圧の空調用冷媒はガス管25に流入し、熱生成ユニット40に到達する。一方で、熱生成ユニット40内では、給湯用圧縮機41が稼動し、給湯用冷媒が、給湯用圧縮機41、給湯用熱交換器42、給湯用冷媒流量調整弁43、カスケード熱交換器44の順で循環する。
熱生成ユニット40に到達した空調用冷媒は、カスケード熱交換器44にて給湯用冷媒を加熱し、自身は冷却されて液化した後、熱生成ユニット冷媒流量調整弁45を経由して、液管27に流入し、室外ユニット10に戻る。
【0051】
室外ユニット10に戻った空調用冷媒は、室外冷媒流量調整弁18で減圧されて低温低圧の気液二相状態になった後、室外熱交換器16に入り、室外ユニット10周囲の空気により加熱されて蒸発する。蒸発し気化した空調用冷媒は、室外吸入管開閉弁20、アキュムレータ12を経由して空調用圧縮機11に戻る。
【0052】
一方、カスケード熱交換器44で空調用冷媒により加熱された給湯用冷媒は気化し、給湯用圧縮機41に入る。給湯用圧縮機41で高温高圧に圧縮された給湯用冷媒は、給湯用熱交換器42に入り、熱媒体を70~90℃にまで加熱する。この過程で給湯用冷媒は冷却されて液化し、給湯用冷媒流量調整弁43で減圧された後、再びカスケード熱交換器44に戻る。」
「
[図:0001394303000004.jpg]
」
(2) 上記(1)記載事項からわかること
(引10事項)
「空調用圧縮機11で圧縮された高温高圧の空調用冷媒は、給湯用冷媒とカスケード熱交換器でカスケードに接続され、1次側の空調用冷媒が、給湯用冷媒を加熱するものにおいて、1次側の空調用冷媒にR32を用い、給湯用冷媒には、二酸化炭素冷媒を用いること。」
4-5 引用文献11
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献11には、「二元冷凍装置」に関し、次の記載がある。
(1) 引用文献の記載
「【請求項1】
圧縮機、放熱器、減圧装置及び蒸発器などから成る高段側冷媒回路と、
圧縮機、放熱器、減圧装置及び蒸発器などから成る低段側冷媒回路と、
前記高段側冷媒回路の蒸発器と前記低段側冷媒回路の放熱器とを交熱的にカスケード接続するカスケード熱交換器とを備え、
前記低段側冷媒回路の冷媒として二酸化炭素を用い、前記放熱器において当該二酸化炭素を凝縮させると共に、前記高段側冷媒回路の圧縮機から吐出される冷媒の体積流量を、前記低段側冷媒回路の圧縮機から吐出される冷媒の体積流量よりも多くしたことを特徴とする二元冷凍装置。
・・・
【請求項5】
前記高段側冷媒回路の冷媒として、R717、R290、R1270、R410A、R32、R134a又はR407Cを用いることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の二元冷凍装置。」
「【0021】
そして、前記高段側冷媒回路7内には冷媒としてアンモニア(R717)、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)やフッ素系冷媒のR410、R32、R134a、R407Cなどが所定量封入(実施例ではプロピレンとする)されると共に、低段側冷媒回路13内には冷媒として自然冷媒である二酸化炭素(CO2)が所定量封入されている。この二酸化炭素冷媒は低温においても粘性が低く、熱運搬性能が非常に高いため、低段側冷媒回路13での使用に適している。
【0022】
次に、二元冷凍装置1の動作を説明する。先ず、低段側冷媒回路13の蒸発器12において冷媒の蒸発温度がー30℃となるように運転する場合について説明する。」
(2) 上記(1)記載事項からわかること
(引11事項)
「高段側冷媒回路の蒸発器と低段側冷媒回路の放熱器とを交熱的にカスケード接続するカスケード熱交換器とを備えた二元冷凍装置において、前記高段側冷媒回路内には冷媒としてアンモニア(R717)、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)やフッ素系冷媒のR410、R32、R134a、R407Cなどが所定量封入(実施例ではプロピレンとする)されると共に、低段側冷媒回路内には冷媒として自然冷媒である二酸化炭素(CO2)が所定量封入されていること。」
5 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「1次側冷凍サイクル10」、「2次側冷凍サイクル20」、「2元冷凍サイクル装置1」、「冷媒(1次側冷媒)」、「冷媒(2次側冷媒)」、「第1圧縮機100」、「第1四方弁150」、「室外熱交換器160」、「第2圧縮機」、及び「室内熱交換器270」は、
それぞれ、前者の「冷媒回路」、「媒体回路」、「熱搬送システム」、「冷媒」、「熱搬送媒体」、「冷媒昇圧機」、「冷媒流路切換機」、「室外空気熱交換器」、「媒体昇圧機」、及び「室内空気熱交換器」に相当する。
・後者の「第1圧縮機100」は、冷媒を昇圧することが明らかであるので、前者の「冷媒昇圧器」が「冷媒を昇圧する」態様を備えたものである。
・後者の「室外熱交換器160」が「冷媒(1次側冷媒)」と室外の空気と熱交換させるものであることは明らかなので、後者は、前者の「室外空気熱交換器」が「前記冷媒と室外空気とを熱交換させる」態様を備えてものである。
・後者の「1次側冷凍サイクル10の冷媒(1次側冷媒)と2次側冷凍サイクル20の冷媒(2次側冷媒)とが熱交換できるように形成された中間熱交換器300」は、「第1中間熱交換器300Aと第2中間熱交換器300Bとを備えており、1次側冷媒と2次側冷媒とを熱交換可能に構成され」るものであるから、前者の「前記冷媒と熱搬送媒体とを熱交換させる媒体熱交換器」に相当する。
・後者の「2元冷凍サイクル装置1の冷房運転時は、1次側冷媒は室外熱交換器160で凝縮され、第1中間熱交換器300Aで蒸発」する態様は、「室外熱交換器160」を「冷媒(1次側冷媒)」の放熱器として機能させて、かつ、「中間熱交換器300」を「冷媒(1次側冷媒)」の蒸発器として機能させているので、前者の「前記室外空気熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させる冷媒放熱状態」に相当する。
・後者の「冷凍サイクル1の暖房運転時は、1次側冷媒は、第1中間熱交換器300Aで凝縮され、室外熱交換気160で蒸発」する態様は、「室外熱交換器160」を「冷媒(1次側冷媒)」の蒸発器として機能させ、かつ、「中間熱交換器300」を「冷媒(1次側冷媒)」の放熱器として機能させているので、前者の「前記室外空気熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させる冷媒蒸発状態」に相当する。
・後者の「1次側冷凍サイクル10は、第1圧縮機100と、この第1圧縮機100の吐出口に連結された第1四方弁150と、この第1四方弁150に連結された室外熱交換器160と、この室外熱交換器160に連結された第1膨張機構170と、この第1膨張機構170に連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第1中間熱交換器300Aと、この第1中間熱交換器300Aに第1四方弁150を介して連結されたアキュムレータ180とを順次備え、このアキュムレータ180は圧縮機100の吸込口へと連結され」た態様から、後者の「第1四方弁150」は、前者の「前記室外空気熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させる冷媒放熱状態と、前記室外空気熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させる冷媒蒸発状態と、を切り換える冷媒流路切換機」に相当する。
・後者の「1次側冷凍サイクル10に使用する1次側冷媒をHC系冷媒であるプロパンを用い」た態様と、前者の「冷媒回路」に「前記冷媒としてHFC-32からなる流体が封入された」態様とは、「前記冷媒として流体が封入された冷媒回路」との限りで一致する。
・後者の「第2圧縮機200」は、冷媒を昇圧することが明らかであるので、前者の「媒体昇圧器」が「媒体を昇圧する」態様を備えたものである。
・後者の「2元冷凍サイクル装置1の冷房運転時」は、「2次側冷媒は第2中間熱交換器300Bにおいて放熱し冷熱を得て」いる態様は、「第2中間熱交換器」を「冷媒(2次側冷媒)」の放熱器として機能させているので、前者の「前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の放熱器として機能させる第1媒体放熱状態」に相当する。
・後者の「冷凍サイクル1の暖房運転時」は、「2次側冷媒は室内熱交換器270において放熱し室内空気を暖め、第2中間熱交換器300Bによって蒸発」する態様は、「中間熱交換器」を「冷媒(2次側冷媒)」の蒸発器として機能させているので、前者の「前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の蒸発器として機能させる第1媒体蒸発状態」に相当する。
・後者の「2次側冷凍サイクル20は、第2圧縮機200と、この第2圧縮機200の吐出口から連結された第2四方弁250と、この第2四方弁250に連結され、中間熱交換器300に組み込まれた第2中間熱交換器300Bと、この第2中間熱交換器300Bに連結された第2膨張機構260と、この第2膨張機構260に連結された室内熱交換器270と、この室内熱交換器270に第2四方弁250を介して連結されたアキュムレータ280とを順次備え、このアキュムレータ280は圧縮機200の吸込口へと連結され」態様から、後者の「第2四方弁250」は、前者の「前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の放熱器として機能させる第1媒体放熱状態と、前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の蒸発器として機能させる第1媒体蒸発状態と、を切り換える第1媒体流路切換機」に相当する。
・後者の「冷房運転時」に「室内熱交換器270によって室内の熱を吸収し室内空気を冷却し」、「暖房運転時」に「2次側冷媒は室内熱交換器270において放熱し室内空気を暖め」ている態様は、前者の「前記熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる複数の室内空気熱交換器」を備える態様と、「前記熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる室内空気熱交換器」を備える態様との限りで一致している。
後者の「2次側冷凍サイクル20に使用する2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いたものである」ことは、前者の「前記熱搬送媒体として二酸化炭素が封入された媒体回路」を備える態様に相当する。
したがって、両者は、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「冷媒を昇圧する冷媒昇圧機と、
前記冷媒と室外空気とを熱交換させる室外空気熱交換器と、
前記冷媒と熱搬送媒体とを熱交換させる媒体熱交換器と、
前記室外空気熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させる冷媒放熱状態と、前記室外空気熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、前記媒体熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させる冷媒蒸発状態と、を切り換える冷媒流路切換機と、
を有しており、前記冷媒として流体が封入された冷媒回路と、
前記熱搬送媒体を昇圧する媒体昇圧機と、
前記媒体熱交換器と、
前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の放熱器として機能させる第1媒体放熱状態と、前記媒体熱交換器を前記熱搬送媒体の蒸発器として機能させる第1媒体蒸発状態と、を切り換える第1媒体流路切換機と、
前記熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる室内空気熱交換器と、
を有しており、前記熱搬送媒体として二酸化炭素が封入された媒体回路と、
を備えた、
熱搬送システム。」
[相違点1]
冷媒として流体が封入された冷媒回路について、本願発明は、「HFC-32からなる流体が封入され」ているのに対して、引用発明は、「HC系冷媒であるプロパン」が流体として用いられている点。
[相違点2]
熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させる室内空気熱交換器について、本願発明は、「複数の室内空気熱交換器」としているのに対して、引用発明は、室内熱交換器270が複数設けられているとは特定されていない点。
6 判断
(1)相違点の検討
<相違点1について>
引用発明は、「1次側冷凍サイクル10と、2次側冷凍サイクル20とを備えた2元冷凍サイクル装置1であって、2元冷凍サイクル装置1は、1次側冷凍サイクル10の冷媒(1次側冷媒)と2次側冷凍サイクル20の冷媒(2次側冷媒)とが熱交換できるように形成された中間熱交換器300とを備え」るものにおいて、「1次側冷凍サイクル10に使用する1次側冷媒をHC系冷媒であるプロパンを用い、2次側冷凍サイクル20に使用する2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いたものである」。
そして、2元冷凍サイクル装置1に関して、引用文献1には「1次側冷媒に炭化水素(HC)系の冷媒を用い、2次側冷媒に二酸化炭素冷媒を用いると、使用冷媒が自然界に存在する冷媒であることから、代替フロンを用いる必要がなく、地球温暖化への冷媒自体の直接効果を減少することが可能である。このため、冷媒の漏れなどによる温暖化防止に有効となる。また、室内側に使用する冷媒が二酸化炭素冷媒であるため、室内に可燃性冷媒が漏れることもなく、安全に使用可能である。」(【0062】)と記載されている。
他方、1次側(高温側)の冷媒回路の蒸発器と2次側(低温側)の冷媒回路の放熱器とをカスケード接続する二元冷凍装置において、前記1次側(高温側)の冷媒回路内には冷媒としてR32を用い、前記2次側(低温側)の冷媒回路には冷媒として二酸化炭素(CO2)を用いることは、本願の出願前(優先日前)に周知の事項(引2事項、引11事項参照。以下「周知事項1」という。)である。
そして、引10事項の「空調用圧縮機11で圧縮された高温高圧の空調用冷媒は、給湯用冷媒とカスケード熱交換器でカスケードに接続され、1次側の空調用冷媒が、給湯用冷媒を加熱するものにおいて、1次側の空調用冷媒にR32を用い、給湯用冷媒には、二酸化炭素冷媒を用いること」及び上記周知事項1を踏まえると、1次側冷媒により2次側冷媒を冷却する場合(周知事項1の1次側を蒸発器、2次側を凝縮器)、1次側冷媒により2次側冷媒を加熱する場合(引10事項の1次側を凝縮器、2次側を蒸発器)のいずれであっても、1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること自体は、本願の出願前(優先日前)に、普通に採用される冷媒の組み合わせであることが認められる。
さらに、引11事項に示すとおり、1次側冷媒回路に用いられる冷媒として、プロパンとR32とは併記して例示される冷媒でもある。
以上を踏まえると、引用発明において、冷媒回路において用いる冷媒として、HC系冷媒であるプロパンに代えて、R32とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2について>
利用側圧縮機を備える利用側回路に複数の利用ユニットを設けることは、本願の出願前(優先日前)に周知の事項(引3事項等参照。以下「周知事項2」という。)である。
そして、引用発明における利用ユニットに相当する室内熱交換器の数は、利用側の部屋の数や、利用形態に応じて適宜決め得ることであるから、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、引10事項、周知事項1、2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
(3) 請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
(ア) 「引用文献1に開示のプロパン及び二酸化炭素を用いる2元冷凍サイクル装置は、実際には極めて限られた外気条件でしか暖房に使用することができないので、文献1の2元冷凍サイクル装置を製品にできないと本発明者は認識していました。そして、冷媒としてHCF-32からなる流体が封入された冷媒回路と、熱搬送媒体として二酸化炭素が封入された媒体回路と、を備える熱搬送システムを、製品レベルで暖房に使用することができることを本発明者が見出しました。このように、本願第1発明の上記特徴(熱源サイクルの冷媒がHCF-32で、空調(冷房及び暖房)用冷媒がCO2)を備えるからこそ、冷媒が循環する冷媒回路と熱搬送媒体が循環する媒体回路とを有しており、熱搬送媒体と室内空気とを熱交換させて室内の空調(冷房及び暖房)を行う熱搬送システムにおいて、媒体回路を構成する配管を小径化するとともに、環境負荷の低減及び安全性の向上を図ることができるという効果を奏します。」
(イ) 「出願人の主張は、審査基準の『第III部第2章第2節 進歩性』の『3.進歩性の具体的な判断』に基づいています。具体的には、動機付けについては、『3.1進歩性が否定される方向に働く要素』の『3.1.1主引用発明に副引用発明を適用する動機付け』に基づき、阻害要因については、『3.2進歩性が肯定される方向に働く要素』の『3.2.2阻害要因』に基づきます。さらに、引用文献1と引用文献2とを組み合わせる動機付けがないのと同様に、引用文献1と引用文献10とを組み合わせる動機付けもありません。」
イ そこで、以下に検討する。
(ア) 上記<相違点1について>において検討したとおり、1次側冷媒により2次側冷媒を冷却する場合(周知事項1の1次側を蒸発器、2次側を凝縮器)、1次側冷媒により2次側冷媒を加熱する場合(引10事項の1次側を凝縮器、2次側を蒸発器)のいずれであっても、カスケードに接続される1次側冷媒にR32を用い、2次側冷媒にCO2を用いること自体は、本願の出願前(優先日前)に、普通に採用される冷媒の組み合わせであって、これを自然冷媒を用いている引用発明において、自然冷媒でない冷媒を採用しても、同様に機能し得るものであるから、R32を採用することができないとする根拠はなく、また、引11事項に示すように、CO2を含む冷媒回路とカスケードに接続する冷媒回路に用いる冷媒として、プロパンとR32は併記して例示されるものであることから、CO2を含む冷媒回路とR32を含む冷媒回路とのカスケードによる組み合わせは、当業者が容易に想到し得たことであり、請求人の上記主張は採用できない。
(イ) さらに、引用発明、引10事項及び周知事項1は、ともに、1次側冷媒回路と2次側冷媒回路とをカスケードに接続するものということでは共通し、2次側冷媒回路にCO2を用い、1次側冷媒回路にHC冷媒やHFC冷媒(R32)を用いて、室内側にCO2を用いることで、冷媒が漏れた場合に安全に使用できることは、当業者において当然想定されるので(引用文献1【0062】)、引用文献10、及び周知事項1を述べる際に参照した引用文献2、11に記載された事項を参酌することが、許されないとするところはないので、請求人の上記主張は採用することができない。
(4) まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引10事項、及び周知事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-012722