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特許拒絶査定不服審判

2019-014872

改善されたがん治療のための局所および全身性免疫修飾療法の組み合わせ

審判番号
2019-014872
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-026788外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年11月06日
審決日
2021年08月02日
公報発行日
2022年01月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018- 26788「改善されたがん治療のための局所および全身性免疫修飾療法の組み合わせ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月12日出願公開、特開2018-109036〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成24年3月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年3月10日 米国)を国際出願日とする特願2013-557888号の一部を、平成30年2月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成30年10月22日:拒絶理由通知 平成31年 4月12日:手続補正書、意見書及び手続補足書の提出 令和 1年 7月 5日:拒絶査定 同年11月 6日:審判請求 同年 同月 7日:手続補足書の提出 令和 2年10月26日:拒絶理由通知 令和 3年 4月19日:手続補正書、意見書及び手続補足書の提出 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1~23に係る発明は、令和3年4月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~23に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 ヒトの悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がんの治療のための医薬の製造における、(1)少なくとも一つの悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がん性の腫瘍のアブレーションを誘起する治療有効量の病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物と、(2)がんに対するT細胞の反応を増強する抗体を含む治療有効量の全身性免疫修飾抗がん剤であって、前記抗体は抗CTLA-4抗体以外の抗体である、全身性免疫修飾抗がん剤と、を別々に投与する医薬組成物の使用方法であって、 前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、ローズベンガルを0.1%(w/v)以上の濃度で含有する水溶液、またはローズベンガルの生理的に許容可能な塩を含む、適切な医薬組成物中にローズベンガル(4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン)を含有する病巣内(IL)ケモアブレーション用薬剤、を含み、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、少なくとも一つの前記悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がん性の腫瘍の病巣内へ0.1mL/cc病変体積から2mL/cc病変体積投与されることを特徴とする医薬組成物の使用方法。」 第3 拒絶の理由 当審において、令和2年10月26日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。 理由1(進歩性) 本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明、引用文献7に記載された事項及び引用文献A~Cに示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献2:Melanoma Research,2008,Vol.18,No.6,p405-411 引用文献7:News Medical,2011年 1月27日,[online],[平成27年12月10日検索],インターネット,<URL:http://www.news-medical.net/news/20110127/Provectus-announces-completion-of-PV-10-Phase-1-trial-in-patients-with-liver-cancer.aspx 引用文献A:Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2002, Vol.99 No.19,p.12293-12297 引用文献B:Biotherapy,2008,Vol.22,No.2,p.105-110 引用文献C:福岡医誌,2010,Vol.101,No.10,p.207-214 理由2(サポート要件) この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献2(Melanoma Research,2008,Vol.18,No.6,p405-411)に記載された事項及び引用発明 (1)本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2には、以下の記載がある(なお、英語で記載されているため、当審による訳文にて記す。)(下線は、当審で付した。以下同様。)。 (2-1)(標題) 「病巣内ローズベンガルを使用した転移性悪性黒色腫のケモアブレーション」 (2-2)(要約) 「転移性悪性黒色腫のケモアブレーションに対する病巣内ローズベンガルの効果を研究することを目的とした。局所領域再発性疾患を有する11人の患者の26の標的病変に、0.5ml/ccの病変体積の用量で薬剤PV-10(生理食塩水中の10%w/vローズベンガル)を注射した。28の未治療病変において、潜在的なバイスタンダー効果が観察された。治療は忍容性が高く、12の標的病変で客観的な反応が観察され、さらに7つの病変が少なくとも12週間の観察で変化がないままだった。この用量評価研究において、奏効率は用量依存的であり、高用量注射後に69%に増加した。非標的病変は27%の客観的奏効率を示し、標的病変の陽性反応を示す患者では44%に増加した。」 (2)引用文献2に記載された発明 上記記載事項によれば、引用文献2には、ヒトの悪性黒色腫のケモアブレーションのために、生理食塩水中の10%w/vローズベンガルを0.5ml/ccの病変体積の用量で、病巣に注射したところ、奏効率は、高用量注射後に69%に増加したことが記載されている。 そうすると、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。 「ヒトの悪性黒色腫の治療のための病巣内ケモアブレーション用医薬組成物であって、前記病巣内ケモアブレーション用医薬組成物は、生理食塩水中の10%w/vローズベンガルであり、前記病巣内ケモアブレーション用医薬組成物は、前記悪性黒色腫の病巣内へ0.5ml/ccの病変体積で投与されるものである医薬組成物。」(以下、「引用発明2」という。) 2 引用文献7(News Medical,2011年 1月27日,[online],[平成27年12月10日検索],インターネット,<URL:http://www.news-medical.net/news/20110127/Provectus-announces-completion-of-PV-10-Phase-1-trial-in-patients-with-liver-cancer.aspx)に記載された事項 本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献7には、以下の記載がある(なお、英語で記載されているため、当審による訳文にて記す。)。 (7-1)(表題) 「プロヴェクタスは、肝臓がん患者を対象としたPV-10フェーズ1試験の完了を発表した。」 (7-2)本文の4~8行 「非盲検試験の主な目的は、肝がん患者のPV-10の1回の病巣内注射の安全性と忍容性を決定することである。・・・ 原発性肝細胞癌(HCC)から生じる肝臓の悪性病変、または広範囲の癌からの転移は、腫瘍学者にとって進行中の治療上の課題を表している。HCCは世界で最も一般的な悪性腫瘍の1つであり、その発生率は米国で急速に増加している。肝臓は、固形腫瘍、特に消化管で発生する腫瘍からの転移の一般的な部位である。肺がんや乳がん、黒色腫などの他の腫瘍も、肝臓に容易に広がる。」 3 引用文献A(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2002, Vol.99 No.19,p.12293-12297)に記載された事項 本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献Aには、以下の記載がある(なお、英語で記載されているため、当審による訳文にて記す。)。 (A-1)表題 「宿主免疫系からのエスケープにおける腫瘍細胞へのPD-L1の関与とPD-L1遮断による腫瘍免疫療法」 (A-2)要約 「PD-1は、特定のリガンド(PD-L)と相互作用することにより、T細胞抗原受容体シグナル伝達を負に調節するIgスーパーファミリーの受容体であり、自己寛容の維持に役割を果たすことが示唆される。本研究では、腫瘍免疫におけるPD-1/PD-Lシステムの可能な役割を検討した。・・・ 正常な同系マウスにおける骨髄腫細胞の増殖は、インビボでの抗PD-L1抗体の投与によって一過性ではあるが有意に阻害され、同系PD-1欠損マウスでは完全に抑制された。 これらの結果は、PD-L1の発現が、免疫原性の可能性のある腫瘍が宿主の免疫応答から逃れるための強力なメカニズムとして機能し、PD-1とPD-L間の相互作用の遮断が特定の腫瘍免疫療法の有望な戦略を提供する可能性があることを示唆している。」 4 引用文献B(Biotherapy,2008,Vol.22,No.2,p.105-110)に記載された事項 本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献Bには、以下の記載がある。 (B-1)表題 「消化器癌におけるT細胞negative pathwayの意義と新たな治療戦略」 (B-2)要旨 「T細胞のnegative regulatory pathwayの一つであるPD-L/PD-1経路が腫瘍の宿主免疫からの回避機構に関与している可能性が,最近の研究により示唆されている。さらにいくつかの臨床研究により,この経路が実際のヒト癌に関与している可能性も示されている。最近われわれは,難治性消化器癌の代表である食道癌および膵癌において,腫瘍のPD-L1あるいはPD-L2の発現が有意に予後と関与することを報告した。われわれはさらに研究を進め,この経路を標的とする治療の有用性についてマウスモデルを用いて検討した。その結果,肝転移モデルにおいてはPD-1阻害抗体による治療によって,有意に転移が抑制されることが明らかとなった。興味深いことに,この阻害は別のT細胞negative経路であるCTLA-4に対する阻害抗体の同時投与によって抗腫瘍効果が増強し,ほぼ完全に肝転移を抑制し得ることも判明した。この同時阻害の抗腫瘍効果は,確立した腫瘍に対しても有効であった。さらなる検討の結果,この治療がT細胞の腫瘍内浸潤の促進,局所の免疫活性の増強を誘導し,強力な抗腫瘍効果をもたらすこともわかった。さらにこの効果は長期にわたり持続し,かつ抗原特異的な腫瘍免疫をもたらすことも判明した。したがって,異なるT細胞negative経路の阻害は強力かつ持続的で,難治性消化器癌に対する新たな治療戦略となり得る可能性が示唆された。」 5 引用文献C(福岡医誌,2010,Vol.101,No.10,p.207-214)に記載された事項 本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献Cには、以下の記載がある。 (C-1)表題 「新たな癌免疫療法:制御性T細胞制御療法」 (C-2)207頁「はじめに」の項 「制御性T 細胞(Treg 細胞)は, 基本的には自己抗原に対する免疫寛容, すなわち自己反応性リンパ球の活性化および増殖を抑制する機能を有する特殊なCD4+ T cell の一群である. 従って, 癌抗原の多くが自己抗原であることを考慮すると, Treg 細胞は抗腫瘍免疫を抑制し, 結果として腫瘍の増殖を促進すると考えられている. つまり, Treg 細胞は癌細胞に対する細胞障害性Tリンパ球(CTL)誘導を抑制していると考えられる. したがって, 癌免疫療法の効果を高めるためには, Treg 細胞数あるいは機能を抑制する必要がある. 本稿では, Treg 細胞制御療法に焦点を当てた新しい癌免疫療法について述べたい.」 (C-3)209頁3.(1) 「CD25分子に対する抗体を用いた治療法 Treg細胞がCD25分子を高発現していることから,CD25に対する抗体を用いた治療法が試みられている。」 (C-4)209頁3.(2) 「Cytotoxic T-Lymphocyte Antigen-4:CTLA-4に対する抗体を用いた治療法 CTLA-4はTreg細胞に発現しており,Treg細胞の抑制機能を担っていると考えられている.CTLA-4を介した抑制機序は3つ想定されている.1つ目は, CTLA-4からのシグナルがTreg細胞の抑制機能を作動させる機序であり,2つ目はCTLA-4がeffector T細胞上のCD80(あるいはCD86)に結合し,直接negative signa1を送る可能性,3つ目はAntigen-presenting cells(APCs)にトリプトファン分解酵素であるIndoleamine 2,3-dioxygenase;IDOを誘導し間接的にeffector T細胞機能を抑制する機序である19).つまり,CTLA-4からのシグナルは抗腫瘍免疫を負に制御しており,免疫療法の効果を制限していると思われる.いくつかの臨床試験により,転移性悪性黒色腫卵巣癌,Bce11リンパ腫に対して一定の腫瘍抑制効果が得られている20)~22)。」 第5 理由1(進歩性)について 1 対比 本願発明と引用発明2とを対比すると次のことがいえる。 ・引用発明2の「病巣内ケモアブレーション用医薬組成物」は、「悪性黒色腫の治療のため」のものであるから、「少なくとも一つの悪性黒色腫」「の腫瘍のアブレーションを誘起する」「病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物」であるといえる。 ・引用発明2の「生理食塩水中の10%w/vローズベンガルである」「前記病巣内ケモアブレーション用医薬組成物」は、本願発明の「前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、ローズベンガルを0.1%(w/v)以上の濃度で含有する水溶液、またはローズベンガルの生理的に許容可能な塩を含む、適切な医薬組成物中にローズベンガル(4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン)を含有する病巣内(IL)ケモアブレーション用薬剤」に相当する。 ・引用発明2は、ローズベンガルを有効成分とする組成物であるから、引用発明2におけるローズベンガルの含有量は、本願発明1の「治療有効量」に相当する。 ・引用発明2の「前記悪性黒色腫の病巣内へ0.5ml/ccの病変体積で投与」は、本願発明1の「少なくとも一つの前記悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がん性の腫瘍の病巣内へ0.1mL/cc病変体積から2mL/cc病変体積投与」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明2は、「ヒトの悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がんの治療のための医薬組成物であって、(1)少なくとも一つの悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がん性の腫瘍のアブレーションを誘起する治療有効量の病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物を含むものであり、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、ローズベンガルを0.1%(w/v)以上の濃度で含有する水溶液、またはローズベンガルの生理的に許容可能な塩を含む、適切な医薬組成物中にローズベンガル(4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン)を含有する病巣内(IL)ケモアブレーション用薬剤、を含み、前記病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物は、少なくとも一つの前記悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がん性の腫瘍の病巣内へ0.1mL/cc病変体積から2mL/cc病変体積投与されるものである医薬組成物」に関する発明である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本願発明は、「がんに対するT細胞の反応を増強する抗体を含む治療有効量の全身性免疫修飾抗がん剤であって、前記抗体は抗CTLA-4抗体以外の抗体である、全身性免疫修飾抗がん剤」を、「病巣内ケモアブレーション用医薬組成物」とは「別々に投与する」ものであるのに対し、引用発明2は、「病巣内ケモアブレーション用医薬組成物」のみの医薬組成物である点 (相違点2) 本願発明は、「医薬の製造における」「医薬組成物の使用方法」に係る発明であるのに対し、引用発明2は、医薬組成物自体に係る発明である点 2 当審の判断 (1)上記相違点1について検討する。 上記記載事項(A-2)、(B-2)、(C-3)及び(C-4)によれば、がん免疫療法において、免疫系の下方制御を解除する、「がんに対するT細胞の反応を増強する抗体」を用いること、及びそのような抗体には、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CD25抗体及び抗CTLA-4抗体が含まれることは、本願優先日前の技術常識である。そして、本願発明では、「がんに対するT細胞の反応を増強する抗体」は、「抗CTLA-4抗体以外の抗体である」ことが規定されているから、本願発明における「がんに対するT細胞の反応を増強する抗体」であって、「抗CTLA-4抗体以外」ものには、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体及び抗CD25抗体が含まれるものである。 そして、上記したように、本願優先日前において、免疫系の下方制御を解除する抗体である抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体及び抗CD25抗体といった全身性の抗がん剤により、癌を治療することは本願優先日前の技術常識であったところ、一般に医薬分野において、薬効増大、副作用低減といった当業者によく知られた課題を解決するために、同効薬を組み合わせることは、当業者の通常の創作能力の発揮であるから、引用発明2において、「病巣内ケモアブレーション用医薬組成物」とは「別々」に、さらに、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体又は抗CD25抗体といった「がんに対するT細胞の反応を増強する抗体を含む治療有効量の全身性免疫修飾抗がん剤」を投与することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2)上記相違点2について検討する。 引用発明2の医薬組成物を、それを含む医薬の製造のために使用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (3)本願発明の効果 そして、本願明細書には、ローズベンガルと抗PD-L1抗体、ローズベンガルと抗PD-1抗体又はローズベンガルと抗CD25抗体等の、「抗CTLA-4抗体以外の」任意の抗体とローズベンガルとの組み合わせについての薬理試験結果等の客観的な裏付けとなる記載が全くないだけでなく、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体又は抗CD25抗体との記載自体すらない。 また、出願後に提出された資料5(平成31年4月12日付け手続補足書及び令和1年11月7日付け手続補足書)の図3A、B(PV-10(ローズベンガル)+抗PD-L1抗体)、図3C、D(PV-10+抗PD-1抗体)に示された効果は、PV-10と抗CTLA-4抗体を組み合わせた医薬組成物により奏される効果(図3E、F)に比して、特に、インターフェロンγの量の点で優れているものであり、このような効果は、本願明細書に記載されていないし、また、本願明細書又は図面の記載から当業者が推論できるものではないから、資料5の図3B及びDで示された効果は参酌することはできない。 (4)また、治療用途について、本願発明は、対象疾患として、ヒトの悪性黒色腫以外に、「原発性または転移性肝がん」をも選択肢として記載するものであるが、ここでいう転移性肝がんとしては、引用文献2に記載されるような悪性黒色腫が肝臓に転移して生じるものも含まれること、及び、そのような肝がんに対し、PV-10等のローズベンガルを含有する病巣内(IL)ケモアブレーション用薬剤を、病巣内投与することによって治療することは、本願優先日当時の技術常識であるから(必要ならば、記載事項(7-2)参照)、治療用途を「原発性または転移性肝がん」とすることもまた、当業者が容易に想到し得ることである。 (5)請求人の主張について ア 請求人は、令和3年4月19日付け意見書において、以下の(ア)~(ウ)の点を主張する。 主張(ア) 本願の原出願(特願2013-557888号)は、全身性免疫修飾抗がん剤が、「抗CTLA-4抗体を含む」ように限定されて特許されているところ、本願と同様に共に国際特許出願PCT/US2012/028412を基礎とする米国出願において、全身性免疫修飾抗がん剤は「抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体を含む」というクレームで特許登録されている。(意見書3頁(2)ア~エ) 主張(イ) 本願のPCT出願の明細書には、「免疫系下方制御に対応し、がんに対するT細胞の反応を増強する全身性免疫修飾抗がん剤として、抗CTLA-4抗体以外の抗体については明示的には記載されていないが、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体を含む全身性免疫修飾抗がん剤がPCT出願時には公知であったことは、資料8~11からも明らかであり、当初明細書の段落【0008】,【0031】,【0066】,【0092】の記載からも、全身性免疫修飾抗がん剤の一例として抗CTLA-4抗体を挙げたにすぎない。 抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体は、抗CTLA-4抗体と同様に、抗体の体内への残存期間はおそらく2~3ヶ月の長期間であり、免疫チェックポイント分子に結合して活性化T細胞にかかっている活性化抑制シグナルを解除するように作用する点で類似した性質を有するものである(資料8~11)。(意見書3~5頁(3)ア~サ) 主張(ウ) 本願の対欧米国出願の審査過程において提出された本願の発明者の一人であるEric A. Wachter博士による宣誓書(資料13)には、病巣内(IL)治療の作用と全身性抗がん剤との組み合わせが、それらの個別の効果の予想される合計よりも大きい結果を生み出していること、そして、この相乗効果の概念は、本願明細書の段落【0047】~【0050】、【0071】、【0096】に記載されており、単純に同効薬を組み合わせたわけではない。 Tumor Weightについての図3E(PV-10+CTLA-4抗体)に示される効果とTumor Sizeについての図3A(PV-10+抗PD-L1抗体)に示される効果、Tumor Sizeについての図3C(PV-10+抗PD-1抗体)に示される効果とを比較すれば、これらは質及び/又は程度において同様の効果が奏されている。資料13(B)の宣誓書Bの項目18において、博士は、「ローズベンガルなどのハロゲン化キサンテンが固形がん性腫瘍に病巣内注射され、その注射された腫瘍に対して殺腫瘍性である各状態において、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体などの免疫系下方制御に対する全身性阻害剤の使用は、ハロゲン化キサンテンを単独で使用して得られた肯定的な結果を、単なる相加よりも大きい度合いで増強している。」と証言していることからも、(1)PV-10+抗PD-L1抗体、(2)PV-10+抗PD-1抗体、(3)PV-10+抗CTLA-4抗体に示される効果は、質及び/又は程度において同様の効果が奏される。(意見書5~6頁(4)エ~コ) イ 請求人の主張に対する合議体の判断 主張(ア)について 本願と同様に共に国際特許出願PCT/US2012/028412を基礎とする米国出願が特許になっているとしても、法律も運用基準も国・機関によって異なるから、他庁における審査結果をそのまま採用することはできない。 主張(イ)について 抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体を含む全身性免疫修飾抗がん剤が本願優先日前に公知であって、本願明細書に記載された抗CTLA-4抗体は単なる例示であったとしても、本願明細書に、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体に関する薬理試験結果等の客観的な裏付けとなる記載が全くないだけでなく、抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体との記載自体すらないことは、上記(3)で説示したとおりであり、本願明細書に、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体が記載されていたことにはならない。 また、請求人は、抗CTLA-4抗体と、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体が免疫チェックポイント分子に結合して活性化T細胞にかかっている活性化抑制シグナルを解除するように作用する点や半減期が長い点で類似の性質を有し、質及び/又は程度において同様の効果を奏する旨主張するが、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体は、いずれも、「がんに対するT細胞の反応を増強する抗体」とはいえるものの、これらの抗体が結合する抗原は、制御性T細胞に発現するCTLA-4、がん細胞に発現するPD-L1及び細胞傷害性T細胞(CTL)に発現するPD-1であり、抗原が異なるだけでなく、発現する細胞も異なるものであるし、これらの抗体が、がんに対するT細胞の反応を増強する作用機序も異なるものであるから、これらの抗体は質及び/又は程度において同様の効果を奏するものとはいえない。このことは、引用文献Bの(B-2)の記載からも把握されることであるし、また、請求人が提出した資料8には、「PD-1の遮断は、CTLA-4とは異なる免疫シグナル伝達経路を介してなされるため、CTLA-4の遮断とは異なるスペクトルの効果が得られると考えられる。」(430頁要約17行~18行)と記載されており、これらの抗体が質及び/又は程度において同様の作用を有するものではないことを裏付けている。 また、請求人が提出した資料9~11は、本願優先日後に頒布された刊行物であるから、本願優先日当時の技術常識を示す文献として参酌することはできない。 主張(ウ)について 請求人は、出願後に提出された資料5(平成31年4月12日付け手続補足書及び令和1年11月7日付け手続補足書)を根拠に、図3A、B(PV-10(ローズベンガル)+抗PD-L1抗体)、図3C、D(PV-10+抗PD-1抗体)及び図3E、F(PV-10+抗CTLA-4抗体)に示された効果は、相乗効果を示すものである旨主張した上で、本願明細書には、この相乗効果の概念が【0047】~【0050】、【0071】、【0096】に記載されている旨主張する。 しかしながら、請求人が挙げる本願明細書の箇所をみても、本願発明の併用療法が、相乗的効果を奏する旨の一般的記載はあるものの、ローズベンガルと組み合わせる抗体として、抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体は何ら記載されておらず、また、それらの組み合わせによる薬理試験結果等も示されていない。 そして、出願後に提出された前記資料5の図3A、B(PV-10(ローズベンガル)+抗PD-L1抗体)、図3C、D(PV-10+抗PD-1抗体)に示された効果は、PV-10と抗CTLA-4抗体を組み合わせた医薬組成物により奏される効果(図3E、F)に比して、特に、インターフェロンγの量の点で優れているものであり、このような効果は、本願明細書に記載されていないし、また、本願明細書又は図面の記載から当業者が推論できるものではないから、資料5の図3B及びDで示された効果は参酌することはできないことは、上記(1)で説示したとおりである。 よって、請求人の主張(ア)~(ウ)はいずれも採用することができない。 (6)小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明2、引用文献2の記載事項、及び引用文献A~Cの記載事項の組合せに基づいて、若しくは、引用発明2,引用文献2の記載事項、引用文献7の記載事項、及び引用文献A~Cの記載事項の組合せに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定のより、特許を受けることができない。 第6 理由2(サポート要件)について 1 本願の発明の詳細な説明及び図面の記載事項 本願の発明の詳細な説明及び図面には、次の事項が記載されている。 【技術分野】 【0001】 本発明は、腫瘍学の分野、ひいては改善された治療レジメンに関する。 【背景技術】 【0002】 従来、がん治療のための薬理学的アプローチは、各種の単剤による全身治療(モノセラピー)を利用することに依存していた。その典型例は化学療法で、これはダカルバジン(DTIC)もしくはテモゾロミド(TMZ)などのアルキル化剤、またはパクリタキセルなどの有糸分裂阻害剤を含む、広い細胞毒性を有し、急速に分裂する細胞を標的化する薬剤を使用して、がんに特徴的な急速に成長する細胞を阻害する、または殺す化学療法である。 【0003】 このようなモノセラピーでは、付随する高い全身毒性により投与量を少量もしくは治療量以下にする必要があるため、またはモノセラピー用薬剤の活性を回避する腫瘍の耐性が発達するため、腫瘍を完全に消失させることができない恐れがある。より進歩的な化学療法ストラテジーは、複数の生化学的経路から腫瘍を同時に攻撃する併用療法において、複数の薬剤を使用することを前提に開発された。 【0004】 ホジキンリンパ腫に用いられる、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびDTICの組み合わせなど、これらのレジメンの多くは実験的(empirical)試験を通じて開発された。これらの個々の薬理成分には本質的な制限があるので、このようなアプローチは、高い副作用(morbidity)に対して比較的非特異的なままであり、ここに有効性と安全性改善の面における大きな改良の余地がある。 【0007】 残念ながら従来の化学療法の場合、これらの受容体および経路が、腫瘍周辺で標的に毒性をもたらしうる重要な生理学的機能を果たす一方で、標的細胞もまた、代替的な生化学的プロセスを利用することにより、またはがん細胞の抗クローナル亜集団を選択し繁殖することにより、耐性を発達させる可能性があった。したがって、この種の標的療法による障害は、実質的に従来の化学療法による障害と類似している。 【0008】 ますます多くの腫瘍学的示唆から、がん腫瘍が様々な方法を用いて異常組織として検出されることを回避し、免疫系の能力を低減し、それにより患者の免疫系に同定および破壊されることを回避することが、現在では明らかとなっている。このため、がんを検出および破壊する患者の免疫系の能力を高めるための、多くのアプローチが開発された。例えば、抗CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)抗体であるイピリムマブおよびトレメリムマブは、CTLA-4の活性をブロックすることにより免疫系の下方制御に対抗し、がんに対するT細胞の反応を増強する。 【0011】 これらの免疫修飾剤の潜在的な全身毒性、標的部位の差次的発現、またはクローン亜集団の反応性、療法導入中におけるがん負担の増大、および選択された攻撃方法に対する耐性の発達などを非限定的に含む様々な理由から、現在のレジメンでは、望ましい強力な免疫反応が得られないかもしれず、ここにまた有効性と安全性の面で大きな改善の余地がある。 【0012】 全身性免疫修飾剤を、全身化学療法剤またはキナーゼ阻害剤と併用することは、例えばJure-KunkelおよびLee(WO2010/014784)により提案されたが、このようなアプローチが臨床的に有意義であるか否かを判定するためのデータは限られている。基本的に、このアプローチは(化学療法または代謝阻害剤を用いた)標的療法の特徴を、併用療法において免疫修飾と組み合わせたものであり、また一般的な化学療法的併用療法の場合と同様に、いくつかの異なる経路を介してがんを同時に攻撃する手段をもたらし、これにより耐性が生じる可能性を低減しながら、有効性を増強する。 【0013】 化学療法は免疫学的な結果として、免疫修飾剤の活性を少なくとも部分的に打ち消す可能性があり、またそれぞれの全身性副作用は相加的または相乗的でありうるから、このようなモダリティの組み合わせには潜在的に重大な欠陥がある。Jure-KunkelおよびLeeの主題ではないが、標的療法も免疫修飾剤と組み合わされると、これらの負の効果をもたらす恐れがある。 【0014】 恐らく最も重要なことに、免疫学的利益に関して、これらの可能な(potential)組み合わせが相加的または相乗的な殺腫瘍力をもたらしうるとは思えない。なぜなら化学療法も、代謝もしくは異常遺伝子の標的化も、抗がん免疫反応を大幅に活性化することは見込めず、提案された抗CTLA-4の標的化も、組み合わされる(companion)化学療法またはがん特異的アプローチに対する、がん細胞の感受性を増大させるとは思えないからである。免疫修飾療法の導入中に腫瘍負担が増大するという可能性が、状況をさらに複雑にしており、レジメンの初期段階において疾患が許容不可能な進行状態まで進む可能性を高めている。 【0015】 治療学的障害をさらに複雑にすることに、これら従来の全身療法のいずれかに反応して、長期間にわたり次第に縮小しつつ、徐々に免疫反応性腫瘍物質を放出する腫瘍は、強力な保護反応を引き起こすのを妨げ、そのかわりに抗がん免疫の低減を容易にする恐れがある。この現象は、低量の抗原性物質を宿主に対して長期間に渡って反復的に曝露し、継続的で「背景的な」抗原を「自己(即ち、宿主の普通の一部分)」であると免疫系に認識させることで寛容性を引き出す、アレルギーに対する低容量治療に類似している。 【0016】 同様の仕組みにより、多くの全身治療への反応として、がん抗原が免疫系に対して徐々に低量ずつ放出されると、免疫系が誤認してがん抗原への寛容性を生じ、これにより起こりうる抗がん反応を低減して、または不能にして、潜在的にがんの生存を長引かせ、転移拡散の継続を可能にしてしまう恐れがある。 【0017】 代替的な療法の種類には、病巣組織への治療モダリティ送達を物理的に制限することを前提とするものもある。これらの局所療法は全身性曝露を低減しながら、療法による腫瘍組織内での効果を最大化しようとするものである。そのアプローチには、例えば経皮的エタノール注入療法(PEIT)および高周波(RF)アブレーションなどの、病巣内的方法を用いた腫瘍の物理的または化学的破壊、および、例えばメルファラン(アルキル化剤)または類似の薬剤を用いる分離式肢灌流(ILP)、四肢分離注入(ILI)または経皮的肝灌流(PHP)などの、強力な細胞毒性剤の局所領域への送達が含まれる。 【0018】 これらのアプローチは、治療される(treated)腫瘍に対する薬理活性を最大化するには概して非常に効果的だが、全身療法と同じ多くの欠陥を有する。これらの欠陥は、強力な局所領域的毒性を伴うが、標的がんへの特異性が低いこと、および、特に治療される腫瘍に対する免疫賦活機構を有さないアプローチの場合には、全身性疾患に対する効果が僅かであることを含む、基盤の治療モダリティの本質的な欠陥によるものである。 【0019】 病巣内(IL)ルートで送達されるがん特異的細胞毒性剤の使用(即ち、IL化学アブレーション)は、本発明者により(例えば、本願にその全体が組み込まれる、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に)記載された、新たな混成アプローチである。このアプローチは、患者に対する注入剤の全身性曝露と、その結果として生じうる全身性副作用とを最小限にするとともに、注入がなされた腫瘍に対する局所有効性を最大化するものである。 【0020】 本発明者は、ある特定の薬剤(例えば「PV-10」とよばれる、生理食塩水中にローズベンガル二ナトリウムを10%(w/v)含有する溶液、および悪性黒色腫、乳がん、および肝細胞がん治療のための実施中の臨床試験に代表される、特定のハロゲン化キサンテン製剤)クラスのIL使用によって、注入がなされた病巣部位に対する高特異的なアブレーションが可能となるだけでなく、注入がなされた腫瘍内における局所有効性を増強し、注入がなされていない腫瘍の自発的退縮を誘導する抗がん免疫反応(「バイスタンダー効果」)をも引き出すことができる、ということを示した。 【0021】 非臨床的証拠では、(好塩基球、好酸球、および肥満細胞などの)顆粒球が腫瘍周辺組織において高いレベルで発現しうることが示されており、これは宿主が腫瘍組織に対して非特異的免疫反応を開始しようとしていることを意味する。PV-10を用いた腫瘍治療は、この反応による修飾を、(例えば、単核の腫瘍浸潤リンパ球であるTIL、またはマクロファージを、腫瘍の内部または周囲に補充することで、)より特異的で効果的なものにすることができる。 【0022】 PV-10を用いたILケモアブレーションによる急激な腫瘍破壊により、隔絶された(sequested)無傷の腫瘍抗原が、局所抗原提示細胞(APC)に放出され、これが免疫反応の修飾と、TおよびB細胞への適切な抗原性標的の提示とを容易にする。腫瘍周辺で付随的に起こる顆粒球の破壊はケモカイン放出および局所炎症を誘発する可能性があり、特定の抗がん反応の促進においてはアジュバントの役割を果たす可能性がある。 【0023】 注入がなされた腫瘍のインサイチュでの破壊は、確実に自然な環境で腫瘍抗原を提示できるようにし、これにより治療される腫瘍、および同じ免疫シグネチャを有する腫瘍に対する免疫系の潜在的な反応を最大化する。免疫反応は、宿主への損傷の強度および持続時間に比例するため、ILケモアブレーションにより達成される急激な曝露は、長期間にわたり拡大する、全身療法により生じる強度の低い損傷と比較して、免疫学的に有利である。またこの急激な曝露は、潜在的には治療される腫瘍を患者に接種したことになる。 【0024】 注入がなされた腫瘍の急激なアブレーションはまた、一度の治療セッションにおいてであれ、あるいは数日又は数週間に分けて行なわれる連続した治療においてであれ、患者の腫瘍を全て、または大部分を注入することで増強されうる腫瘍負担を、急速に低減することができる。これはまた、患者の腫瘍塊による免疫抑制のレベルを低減し、その免疫系の能力を向上させて、残存するがん組織に対して奏功性のある攻撃を仕掛けることを可能にする。 【0025】 ILケモアブレーションは、大きな、または複数のがん病巣があるとき、これに対して使用するのに本質的に適しているため、腫瘍成長および転移の間に生じうる、異なる腫瘍(または個々の腫瘍内)における潜在的に顕著(distinct)なクローン亜集団に対するインサイチュでの接種が容易となり、転帰を改善することが可能となりうる。 【0026】 ILケモアブレーションは、従来の治療モダリティの欠陥の多くを(例えば腫瘍負担を急速に低減し、適切な環境において無傷の腫瘍抗体の急激な曝露を最大化し、起こりうる全身性副作用の最小化に寄与することにより)解消するが、本発明者は、これが全てのがんの場合に理想的であるとは限らず、特に、腫瘍が急速に過剰増殖するものである場合、疾患が広く拡散している場合、およびIL製剤を十分に浸潤させることが困難な形で存在する場合など、ある程度進行した場合においては、理想的でないと考えた。したがって、腫瘍学の分野におけるさらなる進歩、ひいては改善された治療レジメンが必要である。 【0028】 本発明は、治療有効量の病巣内ケモアブレーション用医薬組成物、またはその組成物の変種を、全身性免疫修飾抗がん剤と組み合わせて投与することを含む、がんの治療方法を対象とする。 【0029】 本発明はまた、がん治療用の医薬組成物であって:治療有効量の病巣内ケモアブレーション用医薬組成物と;治療有効量の全身性免疫修飾抗がん剤とを含む組成物も対象とする。 【0030】 上記方法および医薬組成物の実施形態において、全身性免疫修飾抗がん剤には、イピリムマブおよびトレメリムマブを含む、抗CTLA-4抗体が含まれる。 【0031】 上記方法および医薬組成物の実施形態において、全身性免疫修飾抗がん剤は、インターロイキン-1、インターロイキン-2、またはインターロイキン-6(IL-1、IL-2、またはIL-6)およびアルデスロイキンなどの非特異的サイトカイン;インターフェロン-アルファまたはインターフェロン-ガンマ(IFN-α、IFN-γ)、インターフェロンアルファ-2bおよび(ペグインターフェロンアルファ-2aおよびペグインターフェロンアルファ-2bを含む)ペグインターフェロン;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、モルグラモスチム、またはサルグラモスチム);GM-CSFをコードする遺伝子を有する腫瘍溶解性ヘルペスウイルス(Onco Vex(登録商標))、またはヒト白血球抗原-B7およびベータ-2ミクログロブリン剤をコードする遺伝子を有し、同種のMHCクラスI抗原を発現させるよう設計されたプラスミド(Allovectin-7(登録商標))を含む病巣内ワクチンを含めた、樹状細胞ワクチン、およびその他の同種または自己がんワクチン;および特定のがん抗原に対する抗体;からなる群より選択される。 【0032】 本発明はまた、がんを治療する方法も対象とする。この方法は、治療有効量の病巣内ケモアブレーション用医薬組成物、またはその組成物の変種を、治療有効量の全身性標的抗がん剤と組み合わせて投与することを含む。 【0033】 本発明はまた、がん治療用の医薬組成物であって:治療有効量の病巣内ケモアブレーション用医薬組成物と;治療有効量の全身性標的抗がん剤と;を含む組成物も対象とする。 【0034】 上記方法および医薬組成物の実施形態において、全身性標的抗がん剤は、アファチニブ(BIBW2992)、べバシズマブ、セツキシマブ、ダサチニブ、E7080、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、およびバンデタニブを含む、プロテインキナーゼおよびこれらを活性化する受容体を標的化する薬剤;(PLX4032、RG7204またはRO5185426としても知られる)ベムラフェニブ、GSK2118436およびGSK1120212などを含む、B-Raf/MEK/ERK経路を標的化するものを含む、セリン/スレオニン選択的プロテインキナーゼ阻害剤;アミノグルテチミド、アナストロゾール、エキセメスタン、ファドロゾール、フォルメスタン、レトロゾール、テストラクトン、およびボロゾールを含むアロマターゼ阻害剤;ラソフォキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、およびトレミフェンを含むエストロゲン受容体拮抗剤;セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブを含むCOX-2阻害剤;IFN-α、IL-12、スラミン、および(スロンボスポンディン1、ABT-510、およびABT-898を含む)スロンボスポンディンを含む血管新生阻害剤(blocker);養子T細胞移入および自己免疫細胞療法を含む免疫細胞療法;からなる群より選択される。 【0035】 上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、病巣内ケモアブレーション用医薬組成物は、ハロゲン化キサンテンまたはその混合物、またはハロゲン化キサンテンの生理的に許容可能な塩を、0.1%(w/v)以上の濃度で含有する水溶液を含む、適切な医薬組成物中にハロゲン化キサンテンを主成分として含有するILケモアブレーション用薬剤を含む。 【0036】 上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ハロゲン化キサンテンはローズベンガル(4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン)である。 【0037】 上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ハロゲン化キサンテンはローズベンガル二ナトリウムである。 【0038】 上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ハロゲン化キサンテンは、エリスロシンB、フロキシンB、4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7-ペンタクロロ-4’,5’,7’-トリヨードフルオレセイン、4,4’,5,6,7-ペンタクロロ-2’,5’,7’-トリヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7,7’-ヘキサクロロ-4’,5’-ジヨードフルオレセイン、4,4’,5,5’,6,7-ヘキサクロロ-2’,7’-ジヨードフルオレセイン、2’,4,5,5’,6,7-ヘキサクロロ-4’,7’-ジヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’-トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,7’-トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,5’-トリヨードフルオレセイン、および4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,7’-トリヨードフルオレセイン、からなる群より選択される。 【0039】 上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ハロゲン化キサンテンの濃度は約0.1%~約20%(w/v)である。また、医薬組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つのカチオンと、塩化物、リン酸塩、および硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つのアニオンとを含む電解質を含み、この電解質の濃度は約0.1%(w/v)~約2%(w/v)である。 【0040】 上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、ILケモアブレーション用医薬組成物中の電解質の濃度は0.5~1.5%(w/v)である。 【0046】 上記全ての方法および医薬組成物のさらなる実施形態において、これらの方法および医薬組成物は、悪性黒色腫、乳がん、原発性または転移性肝がん、前立腺がん、および小細胞ならびに非小細胞肺がん、より選択されるがんを治療するためのものである。 【発明を実施するための形態】 【0047】 [現時点における好ましい実施形態の詳細] 本発明は、特定の局所治療モダリティ、具体的には、例えばPV-10またはその他のハロゲン化キサンテン薬剤を用いるILケモアブレーションなどの局所免疫修飾療法を、特定の全身治療モダリティと組み合わせることによる、予期せぬ相乗効果の結果としての側面を有する。この組み合わせは、両方の治療モダリティの治療活性を高めることができ、またそれぞれの療法を別々に用いた場合に通常生じる副作用(morbidity)を大幅に増大させる恐れがなく、むしろこれを全体的に低減する可能性がある。 【0048】 本発明者は、ILケモアブレーションが、患者の腫瘍負担を急速に低減することで、腫瘍により誘導される免疫抑制の可能性、疾患の範囲と重症度、および、患者の免疫およびその他の生理的機能に対する持続的障害を低減する、ということを示した。結果的に無傷の腫瘍抗原を患者の免疫系に対して、適切な生物学的環境において急激に曝露することになるが、これはがん抗原を免疫系に対して、最良でも徐々に低いレベルで長期間にわたり、そしてしばしば不適切な環境において曝露する全身化学療法、全身性標的療法、またはその他いかなる局所治療モダリティによって達成されるものとも画期的に異なるものである。 【0049】 腫瘍の全部または腫瘍の略全部のケモアブレーション、および、特に複数の腫瘍のケモアブレーションは、患者の免疫系に対する、存在しうるあらゆる顕著な腫瘍細胞のクローン亜集団の曝露を増やすことで、インサイチュでの抗がんワクチン接種に対する全体的な反応を最大化する。そのため、従来の治療的アプローチを用いた場合よりも、範囲および有効性の面で優れた免疫修飾効果が達成されうる。 【0050】 しかしながら、疾患が急速に増殖する場合、または広く拡散している場合、またはILケモアブレーション用薬剤を十分に浸潤させることが難しい形で存在している場合には、補完的治療モダリティ、特にILケモアブレーションによる免疫刺激(即ち、免疫修飾)の補完に寄与するモダリティを使用すると、相加的または相乗的な利益が得られる。 【0051】 このような補完的な免疫修飾療法の使用にはさらに、片方または両方の療法を、高い有効性を維持しながら、(それぞれ単剤療法で個別に用いられた場合に必要な量と比べて)少ない投与量で利用できるようにし、これにより望ましくない副作用を低減することができるという、相加的または相乗的な免疫学的相互作用における効果がありうる。 【0052】 特に、例えばPV-10またはその他のハロゲン化キサンテン薬剤を用いるILケモアブレーションなどの強力な局所免疫修飾療法を、1つ以上の全身療法(特に免疫系の上方制御を促すもの、または腫瘍誘導免疫系の下方制御に対向するもの)と組み合わせて用いることは、特に(uniquely)健康に良い組み合わせを生じる非常に魅力的である:患者の強化された免疫系を、ILケモアブレーションにより生じた強い抗原性「傷害(insult)」に対して曝露することになるのである。 【0053】 このような組み合わせの効果は、ケモアブレーション時またはケモアブレーション後における免疫系の強化により高められうる。ILケモアブレーションは治療を繰り返すのに適しているので、実施形態としては、例えば全身性免疫修飾療法を継続的に実施しながら、ILケモアブレーションを1回以上実施することにより、患者の免疫系を継続的に強化することが好ましい。代替的な実施形態としては、ILケモアブレーション後、例えば数週間以上が経過して、局所炎症またはその他の非特異的免疫学的効果が低減したときに、全身性免疫修飾療法が開始されることが望ましい。 【0054】 局所免疫修飾療法を全身性免疫修飾療法のレジメンと組み合わせることで得られる利益によって、これ以外の方法では望ましくないとされる全身性免疫修飾療法が、実施できるようになる可能性がある:併用療法における全身療法による効果が結果的に増強されることで、全身投与量を低減したレジメンが可能となり、これに比例する全身療法による副作用を低減することも可能となりうる。 【0055】 さらに、局所免疫修飾療法(即ち、ILケモアブレーション)の副作用プロファイルは、ほとんどの全身性免疫修飾療法の副作用プロファイルと全く異なる(orthogonal)ので、局所および全身性免疫修飾療法の組み合わせは、望ましくない相加的または相乗的な副作用を生じうる従来の組み合わせよりも、本質的に安全でより魅力的である。 【0056】 この環境において、ILケモアブレーションによる腫瘍負担の低減と、腫瘍抗原の大量曝露との組み合わせは特に魅力的である。なぜならこれは、潜在的な免疫の下方制御および腫瘍塊からの生理的要求を減少させながら、潜在的な免疫活性を最大化するからである。免疫の上方制御をさらに促進する、または下方制御をさらに抑制する全身療法と組み合わせると、アブレーションを行なった病巣と、注入がなされた部位の隣接部から遠隔部までを含む、注入がなされていない部位との双方において、抗腫瘍免疫に対する効果は相加的または相乗的になるであろう。 【0057】 局所免疫修飾療法を全身性免疫修飾療法と組み合わせることで生まれる利益の多くは、例えばILケモアブレーションと標的キナーゼ阻害剤(targeted kinase inhibitor)との組み合わせなど、局所免疫修飾療法と全身性標的療法との類似の組み合わせによっても得られる。 【0058】 ILケモアブレーションは腫瘍組織に対して特異的破壊効果を有するから、このモダリティを、例えば腫瘍の過剰増殖に関与する異常成長シグナリングまたは受容体の過剰発現などを標的化するアプローチなど、全く異なる経路を介して腫瘍の生存能力(viability)を標的化するアプローチと組み合わせると、治療される腫瘍により高い効果をもたらすことができる。 【0059】 例えばILケモアブレーション後に、全身性標的療法を用いて腫瘍へのストレスを増大させる、または腫瘍の生存能力を低減することにより、IL治療時においてIL治療の細胞毒性を高めることができる;全身療法が、ケモアブレーションによる免疫反応の発達を阻害することなく、残存腫瘍組織の増殖を抑制するため、あらゆる残存腫瘍組織の反応が増強されて、IL治療による免疫活性が可能となる。 【0060】 これらのアドバンテージは、ILケモアブレーションによる腫瘍負担の急速な低減により、免疫抑制、および腫瘍組織からの生理的要求が低減されることで、さらに増強される。この環境において全身性標的療法に求められるのは、潜在する腫瘍塊の完全な制御および根絶を達成することではなく、むしろ局所免疫修飾療法の活性を増強する役割を果たすことであるから、投与量を低減して全身療法を実施することが可能となりうる。そうすると潜在的な副作用が最小化され、併用療法は従来の全身療法の組み合わせよりも安全で魅力的なものになる。 【0061】 BRAF阻害剤を用いる療法など、多くの全身性標的療法では、特に疾患への制御を長期にわたり維持するために持続的な全身性標的療法が必要とされるときに、耐性問題が障害となっていたが、局所免疫修飾療法による免疫反応を増大させることは、この耐性問題に対抗する手段をもたらす。これは長期制御が、全身性標的療法に絶えず依存することによってではなく、免疫反応によってなされるためである。 【0062】 疾患負担が非常に大きいか、広く拡散しているとき、または疾患が急速に増殖するもので、局所免疫修飾療法の効果的な実施を困難にしたり、効果を低減させたりする可能性があるときなど、局所免疫修飾療法に先立ち、全身性標的療法を開始することが望ましい場合もありうる。このように、全身性標的療法は、局所免疫修飾療法に対する疾患の反応性を高めるべく、局所免疫修飾療法に先立ち、腫瘍負担を制御または低減するのに使用することもできる。 【0063】 このようなアプローチは、局所免疫修飾療法の開始に先立つ疾患の「ダウンステージング」に相当する。例えば特定のBRAF阻害剤については、進行期の転移性悪性黒色腫に対し、一時的に腫瘍負担を低減するには効果的だが、数ヶ月以内に耐性が生じることが多く、長期転帰では効果が打ち消される(negating)ことが判明している。標的療法の制御下にある間に、IL化学療法などの局所免疫修飾療法により残存疾患を治療することは、刺激により長期免疫を回復させ、最終的な転帰を改善するとともに、残存腫瘍負担を除去する(eliminate)ための手段をもたらす。 【0064】 がん治療ワクチンの開発および使用の試みに支障をきたす問題も、このようなワクチンを局所免疫修飾療法と組み合わせることで、軽減または解決されうる。特に、進行期がんに対するこのようなワクチンの臨床試験、例えばIII期またはIV期の悪性黒色腫に対するカンバキシンの臨床試験などにおいて生存利益が認められないのは、接種時に患者体内に存在する腫瘍負担を、ワクチン接種で克服できないこと、および、ワクチン接種から免疫反応の発達までに必要な誘導期間中に、疾患のレベル(disease level)が進行しつづけることが一因であると思われる。 【0065】 全身性標的療法と用いた場合と同様に、ILケモアブレーションによる急速な腫瘍負担の低減は、ワクチン接種から免疫反応開始までに必要な最低限の時間(critical time)をもたらすとともに、患者の疾患負担による免疫系の抑制を緩和することができ、それによって、局所免疫修飾療法と全身ワクチン接種の組み合わされた作用(action)により局所および全身における抗腫瘍効果を最大化させる。 【0066】 本発明における療法および治療方法の組み合わせの例は、以下を非限定的に含む: 局所免疫修飾療法と、イピリムマブおよびトレメリムマブを非限定的に含む抗CTLA-4抗体などの、1つ以上の免疫系下方制御に対する全身性阻害剤との組み合わせ; 【0067】 局所免疫修飾療法と、以下の1つ以上の全身性免疫上方制御剤:インターロイキン-1、-2、または-6(IL-1、IL-2、またはIL-6)およびアルデスロイキンなどの非特異的サイトカイン;インターフェロン-アルファまたはガンマ(IFN-α、IFN-γ);インターフェロンアルファ-2bおよび(ペグインターフェロンアルファ-2aおよびペグインターフェロンアルファ-2bを含む)ペグインターフェロン;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、モルグラモスチムまたはサルグラモスチム);GM-CSFをコードする遺伝子を有する腫瘍溶解性ヘルペスウイルス(OncoVex(登録商標))、またはヒト白血球抗原-B7およびベータ-2ミクログロブリン剤をコードする遺伝子を有し、同種のMHCクラスI抗原を発現させるよう設計されたプラスミド(Allovectin-7(登録商標))を含む病巣内ワクチンを含めた、樹状細胞ワクチン、およびその他の同種または自己がんワクチン;および特定のがん抗原に対する抗体;との組み合わせ; 【0068】 局所免疫修飾療法と、以下の1つ以上の全身性標的療法剤:アファチニブ(BIBW2992)、べバシズマブ、セツキシマブ、ダサチニブ、E7080、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、およびバンデタニブを非限定的に含む、プロテインキナーゼおよびこれを活性化する受容体を標的化する薬剤;(PLX4032、RG7204またはRO5185426としても知られる)ベムラフェニブ、GSK2118436およびGSK1120212などの、B-Raf/MEK/ERK経路を標的化するものを非限定的に含む、セリン/スレオニン選択的プロテインキナーゼ阻害剤;アミノグルテチミド、アナストロゾール、エキセメスタン、ファドロゾール、フォルメスタン、レトロゾール、テストラクトン、およびボロゾールを非限定的に含むアロマターゼ阻害剤;ラソフォキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、およびトレミフェンを非限定的に含むエストロゲン受容体拮抗剤;セレコキシブ、バルデコキシブ、およびロフェコキシブを非限定的に含むCOX-2阻害剤;IFN-α、IL-12、スラミン、および(スロンボスポンディン1、ABT-510、およびABT-898を含む)スロンボスポンディンを含む血管新生阻害剤(blocker);および養子T細胞移入および自己免疫細胞療法を非限定的に含む免疫細胞療法;との組み合わせ。 【0069】 モノセラピーの投与計画は、早期臨床試験における最大耐性量(MTD)の決定により設定されるのが典型的である。MTD(またはそのバリエーションである近似の量)は、有効性の評価と、安全性のより詳細な評価のために、後期臨床試験にも適用される(promulgated)。これらのMTDは、臨床試験が完了すると、確立された治療量となることが多い。表1に、本発明において局所免疫修飾療法と組み合わされうる各種の全身性薬剤の投与計画例を示す。 【0070】 【表1】 [図:0001380218000001.jpg] 【0071】 本発明の併用療法および治療方法では、相加的または相乗的効果によって、全身性薬剤を上記のような局所免疫修飾療法と組み合わせて使用するとき、これを、表1に記載されているような全身性薬剤の典型的な投与計画のレベル以下で使用することが一般的に可能となる。 【0072】 局所免疫修飾療法は、ローズベンガルの濃度0.1%(w/v)以上の水溶液(即ち、PV-10)、またはその他のハロゲン化キサンテンの同等な溶液、またはそれらの混合物を含め、適切な医薬組成物中、ローズベンガル(4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン)、または、エリスロシンB、フロキシンB、4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7-ペンタクロロ-4’,5’,7’-トリヨードフルオレセイン、4,4’,5,6,7-ペンタクロロ-2’,5’,7’-トリヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7,7’-ヘキサクロロ-4’,5’-ジヨードフルオレセイン、4,4’,5,5’,6,7-ヘキサクロロ-2’,7’-ジヨードフルオレセイン、2’,4,5,5’,6,7-ヘキサクロロ-4’,7’-ジヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’-トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,7’-トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,5’-トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,7’-トリヨードフルオレセインを含むその他のハロゲン化キサンテン、を主成分として含むILケモアブレーション用薬剤、を使用する病巣内ケモアブレーションを非限定的に含む。生理的に許容可能なハロゲン化キサンテン塩も、組成物において使用されうる。 【0073】 本発明は、例えば病巣内のローズベンガルを非限定的に含む免疫修飾剤を、1つ以上の全身性免疫修飾剤と組み合わせて病巣内送達するにあたり、免疫介在性の抗腫瘍反応を高めるために、大量の腫瘍抗原を患者の免疫系に曝露することを含む、免疫治療手順を含む。 【0074】 好ましいILケモアブレーション用薬剤について: 局所免疫修飾療法は、好ましい実施形態として、ローズベンガルまたはその他のハロゲン化キサンテンを使用する病巣内ケモアブレーションを含む。好ましい分子形態であるローズベンガル二ナトリウムは、以下の化学式で表される: 【0075】 【化1】 [図:0001380218000002.jpg] 【0076】 この局所用免疫修飾組成物に関する好ましい実施形態の詳細は、その全体が本明細書に組み込まれる出願人の同時係属出願、特許文献3に一部記載されている。本明細書では、この本発明の好ましい実施形態を、特に悪性黒色腫との関係において記載する。しかし本発明は、乳がん、原発性または転移性肝がん、前立腺がん、小細胞および非小細胞肺がんを非限定的に含むその他の過剰増殖性疾患の治療にも適用できると分かる可能性もあり、またこれらに限定されるべきものでもない。 【0092】 本発明の好ましい実施形態は、転移性悪性黒色腫などの、患者体内のがんを治療する方法をもたらす。この方法は、局所免疫修飾療法と、1つ以上の全身性免疫修飾療法または全身性標的療法との組み合わせによるがん患者の治療を含み、局所免疫修飾療法は、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン(即ち、ローズベンガル)またはその他特定のハロゲン化キサンテン、またはそれらの生理的に許容可能な塩を含有する親水性賦形剤、を含むケモアブレーション用医薬組成物の病巣内投与を含む。 【0093】 好ましくは、ハロゲン化キサンテンは約0.1%(w/v)~約20%(w/v)の濃度で医薬組成物に含有され、また医薬組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つのカチオンと、塩化物、リン酸塩、および硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つのアニオンとを含む電解質を含み、この電解質の濃度は約0.1%(w/v)~約2%(w/v)である。また好ましくは、医薬組成物のpHは約4~約10である。 【0094】 「生理的に許容可能な塩」という語句は、当業界で周知の方法により調整可能な、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム、およびプロタミン亜鉛塩を含め、製薬業界で一般的に使用される、あらゆる非毒性アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウム塩を指す。好ましくは、塩は一塩基塩または二塩基塩形態の、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアンモニウムである。 【0095】 ILケモアブレーション用医薬組成物として特に好ましいのは、ローズベンガル二ナトリウム塩である。本発明者の以前の成果(WO 02/05812)では、ローズベンガルは、がん細胞には優先的に取り込まれるが、正常細胞からは基本的に排除される、という発見が報告されている。 【0096】 本発明者はまた、ハロゲン化キサンテン、またはその生理的に許容可能な塩を含む(administered)賦形剤の性質が、がん細胞中への分配(partitioning)の度合いに重大な影響を及ぼす、という発見を報告した。具体的には、本発明者は、電解質濃度が約0.1%(w/v)~約2%(w/v)であるとき、がん細胞中への分配が急激に増大しうるという驚くべき発見を報告した。 【0097】 薬剤の組織内蓄積能の近似値は分配係数Kpに基づいて推定できる。このインビトロでのパラメータは、細胞レベルにおけるインビトロでの送達に関する予測値とされる。具体的には、1より大きい値は、薬剤が組織に局在する能力を有し、それによりこのような組織内で高い化学療法的有効性を発揮できることを示すと考えられる。 【0098】 本発明者は、約50~100より大幅に大きな値は、望ましい水性(即ち、親水性の)製剤中の薬剤の送達に支障をきたす過度な親油性(有機的環境に蓄積する傾向)を示している可能性がある、と推測する。Kpは、親水性相と接触する親油性相(n-octanol)における、薬剤の平衡濃度比率を測定して決定される。 【0099】 本発明者はまた、ハロゲン化キサンテンの水性賦形剤への溶解度を最大化し、生体組織への親和性を確保するには、ILケモアブレーション用医薬組成物のpHは、好ましくは約4~約10であり、より好ましくは約5~約9である、という発見を報告している。特に好ましいpHは、約4~約7であり、好ましくは約5~約7であり、より好ましくは約6~約7の間である。これらのpH値においてハロゲン化キサンテンは通常、pHが低いときに形成される水不溶性ラクトンではなく、二塩基塩の形態のままである。 【0100】 ILケモアブレーション用医薬組成物のpHは、当業者に周知のあらゆる適切な手段により制御または調整される。組成物は、酸または塩基などの追加により、中和されるか、またはpH調整される。ハロゲン化キサンテンまたはその生理的に許容可能な塩は弱酸であるから、ハロゲン化キサンテンの濃度および/または電解質の濃度によっては、組成物のpHのために中和剤および/またはpH調整剤を使用せずにすむかもしれない。特に好ましくは、投与されてから生体環境に適合できるよう、組成物はいかなる中和剤も含まない。 【0101】 本発明者はまた、Kpは電解質濃度に依存しており、その値は電解質濃度に比例して増大する、という発見を報告した。ILケモアブレーション用医薬組成物の中の電解質濃度として特に好ましいのは、約0.5~1.5%(w/v)であり、さらにより好ましいのは約0.8~1.2%(w/v)であり、最も好ましいのは約0.9%(w/v)であり、この最後に挙げた濃度は、ほぼ等張液に相当するので特別に好ましい。 【0102】 本発明のさらに好ましい実施形態では、ILケモアブレーション用医薬組成物中の電解質は塩化ナトリウムである。 【0103】 このような電解質レベルでは、ILケモアブレーション用医薬組成物の浸透圧が増大する。このように、電解質濃度の範囲を特定するかわりに、浸透圧を、組成物の電解質レベルをある程度特徴付けるために、用いることができる。好ましくは、組成物の浸透圧は約100mOsm/kgより大きく、より好ましくは組成物の浸透圧は約250mOsm/kgより大きく、最も好ましくは300~500mOsm/kgである。 【0104】 本発明者はまた、好ましいハロゲン化キサンテンの濃度および/またはILケモアブレーション用医薬組成物の投与量は、腫瘍の大きさ、数、および位置を非限定的に含む因子に依存することを発見した。肝がんなど、内臓またはその他の体内病巣に対する病巣内投与は、経皮的投与または術中投与により行うことができる。 【0105】 本発明者はまた、濃度が低いと、標的組織の破壊を直接引き起こすには一般的に不十分であるから、ILケモアブレーション用医薬組成物中のハロゲン化キサンテンの濃度が、約1%(w/v)~3%(w/v)より高いと、ケモアブレーションへの使用に特に有益である、ということを発見した。 【0106】 そのため、好ましい実施形態においては、ハロゲン化キサンテンの濃度は、約3%(w/v)~約20%(w/v)である。別の実施形態においては、ハロゲン化キサンテンの濃度は約3%(w/v)~約10%(w/v)である。別の実施形態においては、ハロゲン化キサンテンの濃度は約10%(w/v)~約20%(w/v)である。さらに別の実施形態では、ハロゲン化キサンテンの濃度は約10%(w/v)である。 【0107】 本発明者はまた、これらの濃度においては有効な(efficient)治療反応が得られるだけでなく、溶液の安定性が高く、製造および使用の双方において簡単に取り扱える、という驚くべき発見をした。これらの好ましい濃度は、重量対体積(w/v)で表現できるが、重量対重量(w/w)で表現しても実質的には同等である。 【0108】 IL投与される、ILケモアブレーション用医薬組成物の典型的な投与量は、0.1mL/cc病変体積(lesion volume)~約2mL/cc病変体積の間であり、最も好ましくは約0.25mL/cc~約0.75mL/cc病巣体積である。このような投与量は、一般的に、約10mg~約1500mgのハロゲン化キサンテンによる患者線量(patient dose)(肝臓の診断テストに使用されるよりも大幅に高容量である)に相当する。 【0111】 さらに、本発明者は、ハロゲン化キサンテンのがん組織への分配性を最大化するためには、親水性賦形剤が医薬組成物として適している、ということを発見した。したがって、このような分配を妨害しうる非親水性成分の、医薬組成物中の含有量を最小限にすることが好ましい。好ましくは親水性賦形剤は水であり、最も好ましくは、この医薬組成物は実質的に水からなる。 2 当審の判断 (1)本願発明が解決しようとする課題 本願明細書の【0029】及び特許請求の範囲の記載によれば、本願発明が解決しようとする課題は、治療有効量の病巣内ケモアブレーション用医薬組成物を、がんに対するT細胞の反応を増強する抗体を含む治療有効量の全身性免疫修飾抗がん剤と組み合わせて投与する医薬組成物を、ヒトの悪性黒色腫、あるいは原発性または転移性肝がんの治療のための医薬の製造における使用する方法を提供することであると認められる。 (2)本願明細書には、抗CTLA-4抗体については、【0008】に、「免疫系の下方制御に対抗し、がんに対するT細胞の反応を増強する」との記載があり、【0030】には、「上記方法および医薬組成物の実施形態において、全身性免疫修飾抗がん剤には、イピリムマブおよびトレメリムマブを含む、抗CTLA-4抗体が含まれる。」との記載があり、【0066】には、「本発明における療法および治療方法の組み合わせの例は、以下を非限定的に含む: 局所免疫修飾療法と、イピリムマブおよびトレメリムマブを非限定的に含む抗CTLA-4抗体などの、1つ以上の免疫系下方制御に対する全身性阻害剤との組み合わせ;」との記載があり、【0070】の表1には、抗CTLA-4抗体であるイピリムマブ及びトレメリムマブについて、用法用量の記載があるように、「全身性免疫修飾抗がん」作用を有し「がんに対するT細胞の反応を増強する」抗体として、本願明細書に裏付けがあるのは「抗CTLA-4抗体」のみであって、本願発明の(2)の剤の有効成分である抗体として、当該「抗CTLA-4抗体」以外の任意の抗体を用いることは、本願明細書に何ら記載されていない。 ましてや、本願明細書に裏付けられていない上記「「抗CTLA-4抗体」以外の任意の抗体」に含まれると一応解されるもののうち、「抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体」といった特定の抗体については、なおのこと本願明細書中で裏付けられているとはいえない。 抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体は、いずれも、がんに対するT細胞の反応を増強する抗体とはいえるものの、これらの抗体が結合する抗原は、制御性T細胞に発現するCTLA-4、がん細胞に発現するPD-L1及びCTLに発現するPD-1であり、抗原が異なるだけでなく、発現する細胞も異なるものであるし、これらの抗体が、がんに対するT細胞の反応を増強する作用機序も異なるものであるから、これらの抗体は質及び/又は程度において同様の作用を有するものとはいえない。 このことは、出願後に提出された資料5には、PV-10と抗CTLA-4抗体を組み合わせた医薬組成物により奏される効果よりも、PV-10と抗PD-1抗体を組み合わせた医薬組成物により奏される効果の方が、インターフェロンγの量の点において優れたものであることにも裏付けられている(図3Dと図3Fの比較)。また、請求人が令和3年4月19日付け手続補足書にて提出した資料8には、「PD-1の遮断は、CTLA-4とは異なる免疫シグナル伝達経路を介してなされるため、CTLA-4の遮断とは異なるスペクトルの効果が得られると考えられる。」(430頁要約17行~18行)と記載されており、これらが同質の作用を有するものではないことを裏付けている。 したがって、出願時の技術常識に照らしても、「がんに対するT細胞の反応を増強する抗体」の範囲まで、本願明細書に記載された抗CTLA-4抗体を拡張ないし一般化できるとはいえず、本願発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるとも、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものであるとも認められないので、本願発明の記載は、特許法第36条第6項1号に適合するものではない。 (3)請求人の主張 ア 請求人は、令和3年4月19日付け意見書において、以下の(ア)及び(イ)の点を主張する。 主張(ア) 本願明細書には、抗CTLA-4抗体以外の抗体については記載がないが、PV-10と組み合わせ使用される全身性免疫修飾抗がん剤として抗CTLA-4抗体は例示記載したものである。 主張(イ) サポート要件を満たすか否かの判断は、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合は、特許請求の範囲がサポート要件に違反すると判断されるところ、本願出願時には、免疫チェックポイント分子とそのリガンドとの結合によるT細胞の活性化抑制を解除する全身性免疫修飾抗がん剤としては、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体が存在していたことは医薬分野に蔵する当業者の技術常識であった。 抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体では、その作用機序が幾分異なることや、PV-10との組み合わせにおいて効果に多少優劣があることをもって、本願明細書に記載された抗CTLA-4抗体を拡張ないし一般化できないと認定することは、本願発明の課題に鑑みると妥当性を欠く。 イ 請求人の主張に対する合議体の判断 主張(ア)について 本願明細書には、抗CTLA-4抗体は明示的に記載されているところ、これが例示的な記載であったとしても、本願明細書には、抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体である「がんに対するT細胞の反応を増強する抗体」については、それと病巣内(IL)ケモアブレーション用医薬組成物の組み合わせを用いてヒトの悪性黒色腫、原発性または転移性肝がんを具体的に処置した結果について記載がないだけでなく、抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体を単独で使用する場合の用法用量についてさえも記載がなされていないことは、上記イで説示したとおりであり、本願明細書に、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体である「がんに対するT細胞の反応を増強する抗体」が記載されていたと認めることはできない。 主張(イ)について 本願出願時には、免疫チェックポイント分子とそのリガンドとの結合によるT細胞の活性化抑制を解除する全身性免疫修飾抗がん剤としては、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体が存在していたことは医薬分野に蔵する当業者の技術常識であったとしても、これらの抗体が結合する抗原は、制御性T細胞に発現するCTLA-4、がん細胞に発現するPD-L1及びCTLに発現するPD-1であり、抗原が異なるだけでなく、発現する細胞も異なるものであるし、これらの抗体が、がんに対するT細胞の反応を増強する作用機序も異なるものであるから、これらの抗体は質及び/又は程度において同様の作用を有するものとはいえないことは、上記2(2)で説示したとおりである。 そして、請求人は、ローズベンガルと、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を組み合わせた場合の効果が、ローズベンガルと抗CTLA-4抗体と組み合わせた場合と、質及び/又は程度において同様であるといえる本願出願時の技術常識を示していない。 実際、出願後に提出された資料5には、PV-10と抗CTLA-4抗体を組み合わせた医薬組成物により奏される効果よりも、PV-10と抗PD-1抗体を組み合わせた医薬組成物により奏される効果の方が、インターフェロンγの量の点において優れたものであることが示されているし(図3Dと図3Fの比較)、請求人が令和3年4月19日付け手続補足書にて提出した資料8には、「PD-1の遮断は、CTLA-4とは異なる免疫シグナル伝達経路を介してなされるため、CTLA-4の遮断とは異なるスペクトルの効果が得られると考えられる。」(430頁要約17行~18行)と記載されていることからも、これらが質及び/又は程度において同様の作用を有するものではないことは、上記2(2)で説示したとおりである 第7 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、他の請求項について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-014872

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