2019-002781
TRPV2受容体アゴニストを用いる拡張期心機能不全の治療
- 審判番号
- 2019-002781
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-502000外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年02月28日
- 審決日
- 2022年01月06日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ユニバーシティ・オブ・シンシナティ
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K) / P18 .537-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
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本願は、2014年3月13日(パリ条約による優先権主張 2013年3月13日 (US)米国)を国際出願日とする特許出願であって、その出願後の主な経緯は、以下のとおりである。
同年 4月17日付け:前置報告書
同年12月 8日 :意見書の提出
同年 9月15日 :回答書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~11に係る発明は、平成31年2月28日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されたとおりものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「対象において保持された駆出率を伴う心不全を静脈内注入により治療するための医薬組成物であって、対象における保持された駆出率を伴う心不全を治療するのに有効な血漿中濃度を達成するプロベネシドの量を含む、医薬組成物。」
第3 当審が通知した拒絶理由
令和2年6月2日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
[理由1](進歩性欠如)
この出願の請求項1~11に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の引用文献Aに記載された発明、及び、優先日当時の技術常識に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献>
A.米国特許出願公開第2013/0046021号明細書(原査定の引用文献1)
B.理学療法学,2012年,Vol.39,No.4,p235-239(原査定の参考文献1、技術常識を示す文献。)
C.「メルクマニュアル 第18版 日本語版」、2007年4月25日初版第3刷発行、日経BP社、p686-687)(技術常識を示す文献)
[理由2](サポート要件違反)
この出願は、特許請求の範囲の請求項1~11の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第4 本願明細書の記載
本願明細書における発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付した。
・背景技術
「【背景技術】【0003】心不全の最も一般的な形態は、保持された駆出率を伴う心不全(HFpEF)及びその前兆状態、拡張機能障害、左室弛緩障害による左室肥大、並びに左室弛緩障害による浸潤性心筋症として知られる変異形である。HFpEFは、たとえ適切に収縮することができても(すなわち、正常な収縮機能)、心臓が十分に拡張して心臓拡張期の間に充填する能力の欠如により、以前は「拡張期心不全」として知られていた。HFpEFは概して、もっぱら60歳を超える年齢の人に影響を及ぼす疾患であり、今日まで治療法は知られていない。HFpEF及びその前兆状態を患っている患者は、非常に予後が不良であり、今までの一連のネガティブな臨床試験から救いがなく、非常に少数の、大規模なNIHの資金による研究が、全国でこの疾患に焦点を当てている。【0004】HFpEF及びその前兆状態の現在の処置は、利尿による症状の緩和及び心臓に対する負荷の低減として知られる治療法に基づいている。これらの治療法は、心不全の他の変異形(すなわち、収縮期心不全、低下EFによるHFとしても知られている)に対して主に試験され、最良でHFpEFの症状を減少させたが、(心臓収縮機能を改善する薬物は多くあるが)心臓の拡張機能を改善させる薬物治療は知られていないので、根本的な原因を治療はできない。HFpEF及びその前兆を患っている患者を治療する方法が必要とされている。【0005】一過性受容体電位(TRP)ファミリーのイオンチャネルは、腎臓学及び神経学において何年も研究されてきた。いくつかのTRPはまた、血管緊張(TRPC1、TRPVc6、及びTRPM4)、脳血流(TRPM4)、新生内膜過形成(TRPC1)、及び肺高血圧症(TRPC6)の重要なメディエーターであることも発見された。しかしながら最近まで、このファミリー中でたった数個のチャネル(例えば、血圧過負荷に対する反応に対する心臓肥大の発生におけるTRPC3/6/7等)しか直接的な心臓効果を有すると確認されていなかった。一過性受容体電位バニロイド(TRPV)ファミリーにおいて、直接的な心臓効果が見出だされた非常に興味深い研究が行われている。最初に、マウスの心臓の全ての腔の室拡張を引き起こすTRPV2の心臓の特異的過剰発現が確認された。続いて、TRPV1ノックアウトマウスが、野生型同腹子に比べて左前下行動脈の結紮後に増加した梗塞サイズ及び減少した生存率を示すことが見いだされた。興味深いことに、特異的アゴニストによるTRPV1活性化が虚血/再灌流(I/R)傷害に対する保護をもたらすことも他の研究により見いだされた。【0006】プロベネシドは、最近、TRPV2の選択的なアゴニストであることが同定された。・・・」
・発明の概要
「【発明が解決しようとする課題】【0009】HFpEF及びその前兆を患っている患者を治療する方法が必要とされている。【課題を解決するための手段】【0010】・・・【0011】本発明の一態様は、拡張期心機能不全又は拡張期心機能不全の症状を治療するのに有効な一過性受容体電位バニロイド2(「TRPV2」)アゴニストの量を投与することを含む、対象における保持された駆出率を伴う心不全(HFpEF)及びその前兆(例えば、拡張機能障害、左室弛緩障害による左室肥大、及び左室弛緩障害による浸潤性心筋症)等の拡張期心機能不全を治療する方法に関する。TRPVアゴニストは、注入(注射)、経口投与、又は経皮投与の少なくとも1つにより投与され得る。好ましいTRPVアゴニストとしては、プロベネシド・・・の医薬製剤が挙げられる。本発明の一実施形態において、TRPVアゴニストは約1mg/kg/日から約100mg/kg/日の範囲で投与される。注入により投与される場合、TRPVアゴニストはボーラス注入若しくは持続的静脈内注入の少なくとも1つ、又はボーラス(初期量)及びその後の静脈内注入で投与され得る。・・・プロベネシドは、心機能を臨床的に改善するのに十分な量で投与することができ、結果として、例えば、標準6分間歩行テスト(又は「標準化した6分間歩行テスト」)、改善したニューヨーク心臓協会(NYHA)等級、より低い利尿薬の用量要求、より低い血清BNP濃度、血清ナトリウム濃度の正常化、及びこれらの組み合わせに基づく定量可能な臨床観察により決定することができる、心機能不全における改善をもたらし得る。」
・発明を実施するための形態
「【発明を実施するための形態】【0014】本発明の一態様は、対象においてTRPV受容体アゴニストを用いて、本明細書ではまとめて「拡張期心機能不全」と示す、(従前から拡張期心不全として知られていた)保持された駆出率を伴う心不全(HFpEF)、及び拡張機能障害、左室弛緩障害による左室肥大、及び左室弛緩障害による浸潤性心筋症等のHFPEFの前兆を治療する新規な方法に関する。プロベネシドは、近年、一過性受容体電位バニロイド2(TRPV2)イオンチャネルのアゴニストと同定された。TRPV2は、プロベネシド・・・等の特定のアゴニストに加えて、細胞の膨潤及び熱により活性化される、僅かにカルシウム選択性カチオンチャネルである。本明細書に記載しているとおり、心筋に存在するTRPV2受容体は、心臓弛緩を向上させることができる。特定の理論に束縛されることなく、TRPV2受容体のアゴニストは、細胞質から筋小胞体中へのカルシウムの除去を向上させることにより、心臓細胞におけるカルシウム処理を改善する。【0015】拡張期心機能不全又は拡張期心機能不全の症状を治療する際、TRPV2受容体アゴニストの治療上有効な用量は、心臓の心臓弛緩及び拡張機能を増加させて、心機能不全の少なくともいくつかの症状を緩和するのに十分な血清中のTRPV2受容体アゴニスト及びその活性代謝物の濃度(レベル)を達成する用量である。例えば、TRPV2受容体アゴニストは、臨床的に拡張期心機能を改善するのに十分な量で投与され、結果として、例えば、標準6分間歩行テスト、改善したニューヨーク心臓協会(NYHA)等級、より低い利尿薬の用量要求、より低い血清BNP濃度、血清ナトリウム濃度の正常化、及びこれらの組み合わせに基づく定量可能な臨床観察により決定され得るもの等の、拡張期心機能不全における改善をもたらし得る。改善は、例えば、治療の実行の前後の間で行われる観察を比較することにより測定できる。」
「【0026】本明細書で用いられるTRPV2受容体アゴニストとしては、これらに限定されないが、薬学的に許容される形態のTRPV2受容体アゴニスト、例えば薬学的に許容される塩又は溶媒和物が挙げられる。例示的なTRPV2受容体アゴニストとしては、プロベネシド、Z-APB、カンナビノール及びカンナビジオールが挙げられる。好ましいTRPV2アゴニストはプロベネシドである。TRPV2受容体アゴニストの組成物は、薬学的に許容される担体中でin vivoで投与され得る。用語「薬学的に許容される」は、生物学的に又は他の望ましくない材料であることを意味する。そのため、この組成物は対象に対して、望ましくない生物学的作用を起こさずに、又はそれが含まれる医薬組成物の他の成分のいずれかと有害に相互作用せずに投与され得る。担体は、当業者に知られているように、TRPV2受容体アゴニストの分解を最小化し、対象における有害な副作用を最小化するように本質的に選択される。【0027】適切な担体及びそれらの製剤は、「Remington」:The Science and Practice of Pharmacy(第19版)、A.R.Gennaro、Mack Publishing Company、Easton、Pa.1995に記載されている。静脈投与において、製剤を等張にするために、適当な量の薬学的に許容される塩を製剤中に用いる。薬学的に許容される担体の例としては、これらに限定されないが、生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液が挙げられる。この溶液のpHは、薬学的に許容できる範囲であり、好ましくは約5から約8.5であり、より好ましくは約7.8から約8.2である。・・・【0028】一実施形態において、注入可能なTRPV2受容体アゴニストの製剤は、プロベネシド等のTRPV2受容体アゴニストの粉末(酸形態)を、0.1Mの水酸化ナトリウム中に溶解することにより調製される。次いで、この溶液を0.2Mのリン酸緩衝液(pH=7.4)で希釈する。次いで、TRPV2受容体アゴニストを生理食塩水又は他の静脈注入に適した担体で保管濃度、例えばプロベネシドにおいては4.2mg/mlまで希釈して、ストック溶液を形成する。次いで、ストック溶液は、食塩水又は他の注入可能な溶液で投与に望ましい用量まで希釈され得る。」
・実施例及び実施例中の図面と図面の簡単な説明(図面の簡単な説明については、【0013】より抜粋した。)
「【実施例】【0032】心臓弛緩におけるTRPV2の役割をTRPV2受容体アゴニストであるプロベネシドを用いてげっ歯類で評価した。プロベネシドは、改善した心臓弛緩及び改善した拡張機能をもたらし、これはTRPV2受容体アゴニストが拡張期心機能不全、例えばHfpEF及びその前兆状態の治療に有用であり得ることを示唆している。【0033】続きを表示(全28行)方法動物・・・すべての野生型(WT)マウス(B6129SF2/J F2及びC57BL6J、Jacksonラボラトリー)及びTRPV2-/-マウス(Dr.M.Caterina(John’s Hopkins, Baltimore,MD)により提供されたつがい)は12-16週齢の雄であった(REF)。試験の前に、通常のげっ歯類の飼料及び水を自由に摂取させ、14時間/10時間の明/暗サイクル(6AMから8PM)で飼育した。【0034】溶液及び投薬水溶性プロベネシド(Molecular Probes,Life Technologies,Eugene,Oregon)をすべての筋細胞試験に用いた。【0035】超音波心臓(心エコー)検査すべての超音波心臓検査試験を、・・・Vevo 2100超音波装置・・・を用いて行い、また、・・・別のワークステーションで後処理した。MモードとBモードの両方で深さ2~10mmでの傍胸骨の長軸(PSLAX)及び短軸(SAZ)の視野から画像を得た。Mモードの画像から、左心室の空洞のサイズ及び厚さを測定し、また、駆出率(EF)、収縮率(FS)、拍出量(SV)、及び心拍出量(CO)の計算を上述したとおり(REF)に行った。マウスを吸入イソフルラン(1.5-2%)で麻酔させた。【0036】in vivoでの心臓血管機能左心室の性能及び局部血流量の測定を、上記したWT及びTRPV2-/-マウスの別々のグループで行った(Lorenz、2008 #1)。簡単に説明すると、マウスを・・・麻酔させた。気管切開を行い(PE-90)、体温をモニタリングし、フィードバック制御された加熱テーブルで維持した。血圧測定のために右大腿動脈を液体で満たされたポリエチレンチューブでカニューレ挿入し、また、低コンプライアンスの圧力変換器・・・を接続した。右大腿静脈を薬剤の送達のためにカニューレ挿入した。高信頼性の、1.2F Scisense血圧カテーテル・・・を右頸動脈に挿入し、心機能をモニタリングするために左心室に進入させた。ECGリードを右及び左腕、並びに左足に配置し、右足をBIOAmp・・・に連結した。頸動脈の血流測定のために、左頸動脈を単離(隔離)して、TS420流量計・・・に接続した0.5-PSB血管周囲流プローブを装着した。血圧、流量、及びECGシグナルを、・・・記録、解析した。血行動態計測を基本状態、及びi.v.での30及び100μg/gのプロベネシドの投与後、各投与の間5分で行った(100μg/μlの投与量は0.3及び1.0μl/gBWボーラスで送達した)。測定は、各投与期間の最後の30~40秒で行った。最大の発生圧力dP/dt(dP/dtmax)及び40mmHgでのdP/dtの発生圧力(dP/dt40)を圧力波形の一次導関数から計算した。脳血管抵抗(CVR)を平均動脈圧及び平均脳血流から計算した(CVR=MAP/CBF)。【0037】単離心筋細胞通常の技術により心筋細胞を単離した。簡単に説明すると、成体マウスを・・・麻酔にかけ、心臓を摘出し、ランゲンドルフ装置上で・・・酸素含有溶液を用いて、37℃でかん流した。消化後、左心室組織を摘出し、細分化し、・・・分離させ、・・・スクリーンで濾過した。次いで、細胞懸濁液を25、100、200μm、及び1mM Ca-タイロードで洗浄し、さらなる解析のために1.8mM Ca-タイロード中で再懸濁した。すべての試験を室温(22~25°C)で、140mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl2,10mM グルコース、10mM HEPES、1.8mM CaCl2を含み、NaOHを用いてpH 7.4に調整した標準タイロード溶液中で行った。【0038】細胞収縮及び細胞内カルシウム測定([Ca]i)・・・細胞のペースを設定した。細胞の収縮をビデオエッジ検出器・・・を用いて測定し、このシグナルをコンピュータでデジタル化して記録した。Ca2+シグナル測定のために、膜透過性の形態の蛍光Ca2+標識Fura-2・・・で細胞をロード(処理)し、Delta Scanデュアルビーム分光光度計・・・を用いて、ベースライン条件で、10mMのカフェインの迅速な適用により340及び380nmで交互に活性化(刺激)させた。Ca2+-一過性(トランジェント)は、生じる510nmの放射の340/380nm比として表わされた。SR Ca2+ロードを10mMのカフェインの迅速な適用によって測定した。データを・・・で解析した。【0039】単離大動脈の血管平滑筋の反応性血管平滑筋の収縮特性の解析を、無傷の(+E)及び内皮剥皮した(-E)胸部大動脈において、DMTミオグラフ・・・を用いて行った。大動脈を切開し、いくつかにおいて、30ゲージ針で内皮表面を優しく擦ることにより機械的に内皮を除去した。・・・データを・・・収集し、解析した。各大動脈の残りの長さを、AD Instruments DMT標準化モジュールを用いて、100mmHgの推定経壁圧で推定外周の90%に設定した。試験の開始前に、各大動脈セグメントを、再現性を確保するために100mM KCl及び10μMフェニレフリンに暴露した。プロベネシドの用量の増加(10-7Mから10-2Mまで)における累積濃度-力の関係を最初に試験し、プロベネシドが収縮を誘発できるかを調べた。プロベネシドの弛緩作用を調べるための別の試験において、血管環を最初に3μMのフェニレフリンで収縮させ、次いでプロベネシドの濃度を10-7Mから10-2まで増加させて暴露させた。3μMのフェニレフリンにおける最大の収縮力及びプロベネシドの弛緩作用におけるEC50を通常のロジスティック非線形曲線フィッティング・・・を用いて求めた。【0040】データ解析適切な繰り返し測定により、1要因対象内デザイン又は2もしくは3要因混合デザインのいずれかを用いる分散分析(ANOVA)により統計解析を行った。・・・データを平均±S.E.M.で表し、P<0.05で有意差を認めた。」
「【0041】結果野生型及びTRPV2-/-マウスにおけるプロベネシドに対するin vivoの反応(応答)【0042】侵襲的心臓血行動態無傷の麻酔マウスモデルを用いて、LV圧力発生及び頸動脈の血流を同時に測定することにより、プロベネシドの用量の増加による心臓と血管の効果を調べた。図1A及び1Bに示すとおり、心臓の収縮性能は、ベースラインにおいて、プロベネシドの注入の間、WTマウスに比べてTRPV2-/-マウスにおいて顕著に低下した。心臓機能の侵襲的測定は、減少した最大発生圧力/時間(dP/dtmax)(図1A)、減少した拡張機能の傾向を伴う40mmHgの発生圧力(dP/dt40)(図1B)、及び負になった圧力/時間(dP/dtmin)(図1C)で証明されるように、減少した拡張機能TRPV2の抑制(撤廃)(TRPV2-/-)がベースラインで減少した収縮機能を有することを実証している。重要なことに、プロベネシドの投与は、WTマウスにおいて収縮機能の確固たる刺激をもたらし、この効果はTRPV2-/-マウスにおいて顕著に弱まった。確認されたプロベネシドのLV dP/dtに対する効果は、通常ボーラス投与の1分以内で最大であり、また、(報告した測定の時間で)少なくとも5分間安定であった。反応の同様の傾向が、拡張機能の1指標としてdP/dt分で確認された(図1C)。」
「【0013】【図1A】図1Aは、野生型及びTRPV2ノックアウトマウスにおける基準(ベースライン)の左心室の収縮機能を示すグラフである。図1Bは、野生型及びTRPV2ノックアウトマウスにおけるベースラインの左心室の収縮機能を示すグラフである。【図1B】図1Cは、野生型及びTRPV2ノックアウトマウスにおける弛緩速度を示すグラフである。」
「【図1A】[図:0001384544000001.jpg]【図1B】[図:0001384544000002.jpg]」
「【0043】血管平滑筋における生体外(ex vivo)機能血管平滑筋におけるex vivo機能を調べた。単離した大動脈における最初の試験を行い、関連した濃度範囲で、プロベネシドの他の血管収縮作用があるかどうかを調べ、無傷の内皮があってもなくても、たとえ10mMの高い濃度であっても(データ示さず)、増加した力発生の証拠は確認されなかった。次いで、3mMのフェニレフリンを用いる血管セグメントの事前収縮の後で、プロベネシドの濃度上昇の弛緩効果を調べ、結果を図2A~2Dに示した。内皮剥皮血管(-E、図2A及び2B)において、野生型マウス(n=8)及びTRPV2-/-(n=8)マウスの間にフェニレフリンに対する反応において発生した最大張力に差はなかった(5.99±0.74 対 6.07±0.55mN)。これらの事前収縮血管のプロベネシドの増加した濃度への反応において、両方のマウスのグループで、1mMの濃度まで有意な遅延的反応は無く、10mMで発生した張力は最大値の約25%まで低下した(図2B)。内皮のない野生型とTRPV2-/-マウスの間に、濃度-反応特性における差はなかった(EC50:それぞれ4.56±0.34 対 4.59±0.52mM)。【0044】無傷の内皮を有する野生型及びTRPV2-/-血管(+E、図2C及び2D)において、フェニレフリンに対する反応において発生した最大張力は、-E血管よりも大幅に小さかったが、これらの2つの遺伝子型の間に差はなかった(WT及びTRPV2-/-において、それぞれ1.45±0.12 対 1.75±0.25mN)。無傷の内皮を有する血管は、プロベネシドに対して-E血管よりもいくらかより反応性であり、しかし、重ねて言うが、2つの遺伝子型の間に濃度-反応特性において差はなかった(EC50:それぞれ0.67±0.21 対 0.52±0.11mM、図2D)。プロベネシドに対する+E血管の増加した反応性は、プロベネシドに対する遅延的反応における内皮のいくらかの、TRPV2非依存のメカニズムによる関与を示唆している。」
「【0013】・・・【図2】図2Aは、野生型及びTRPV2ノックアウトマウスからの予備収縮した剥皮血管において、発生した力に対するプロベネシドの用量反応効果を示すグラフである。図2Bは、野生型及びTRPV2ノックアウトマウスからの予備収縮した剥皮血管において、弛緩(緩和)割合に対するプロベネシドの用量反応効果を示すグラフである。図2Cは、野生型及びTRPV2ノックアウトマウスからの予備収縮した血管において、発生した力に対するプロベネシドの用量反応効果を示すグラフである。図2Dは、野生型及びTRPV2ノックアウトマウスからの予備収縮した血管において、弛緩割合に対するプロベネシドの用量反応効果を示すグラフである。」
「【図2】[図:0001384544000003.jpg]」
「【0045】単離された心筋細胞機能生体内(in vivo)でTRPV2-/-マウスにおける減少した収縮性に関連したメカニズムをさらに調べるために、負荷に依存しない系を表す、単離した心筋細胞における機械特性を評価した。WTに比べて、TRPV2-/-筋細胞は顕著に低下した収縮率(FS、P<0.001、図3A)、収縮速度(+dL/dt、P<0.001、図3B)、及び再伸長速度(relengthening rate、-dL/dt、P<0.001、図3C)を示した。図3Dは、野生型(WT)及びノックアウト型(KO)マウスにおける細胞長さの代表的なトレース図である。」
「【0013】・・・【図3】・・・図3Cは、野生型及びTRPV2ノックアウトマウスからの単離した心筋細胞における弛緩速度を示すグラフである。・・・」
「【図3】[図:0001384544000004.jpg]」
「【0046】考察TRPV2の作用機序について、プロベネシド療法は、上述したとおり、推定されるTRPV2の刺激を通して、単離したWT心筋細胞において、細胞質のCa2+濃度の増加及び増加したCa2+スパーク(sparks)をもたらした。また、上述した通り、以前から成長因子調節チャンネル(GRC)として知られていたTRPV2の心臓における過剰発現は、Ca2+の過負荷により心筋症を生じる。この発見は、研究者により、たとえすべての細胞の受容体濃度が正常及びジストロフィー筋の間で相違しなくても、TRPV2が筋細胞の変性における重要な因子であることを示唆するものと推定された。したがって、著しい過剰発現の試験的条件下でCa2+の流入が顕著に多く、そのため心筋症の発生に関連するけれども、生理学的条件下で、TRPV2が筋弛緩において、Ca2+一過性における小さな変化を通じて、重要でないが臨床的に関連し容易に測定可能な役割を担っていることが推定できる。【0047】血管緊張においてTRPV2が担う役割に関して、血管の表現型はTRPV2の排除並びに少量及び多量の投与量とは関連しておらず、(たとえ内皮剥皮血管であっても)プロベネシドの有意な血管作動性効果はない。この重要な発見は、こうした患者のための潜在的な第1の治療法になり得る、血圧に対して中立的な効果を有する安全で有力な心筋弛緩剤(拡張機能剤)としての、ヒトのHFpEFの治療のために重要な意義を有している。【0048】非常に安全な臨床プロファイルを有する、FDAに承認された薬剤プロベネシドはまた、何十年もの間見過ごされてきた心筋収縮力に影響を与える特性を有していた。この効果は、筋小胞体(SR)放出を通して、また、βADR刺激の従来の変力経路を通さずに、筋細胞のCa2+における一過性の増加の2次的なものである。臨床的に使用されるすべての現段階で利用可能な見込みのある変力物質は、β受容体を直接刺激するか、又は下流(すなわち、ミルリノン)を刺激し、代謝要求を増加させ、プロアポトーシスシグナル伝達経路を活性化し、そして、死亡率の増加を引き起こす悪性の不整脈を促進することが分かった。さらに、これらの変力物質の1つを除いてすべてが、それらの臨床的な有用性を制限する、血管収縮及び後負荷の増加を引き起こす血管アドレナリン受容体も刺激する。本明細書で開示するデータは、以前からの発見である、侵襲的測定で解明されたとおりプロベネシドが変力物質であることを確認するだけではなく、少量(30mg/kg)又は多量(100mg/kg)のプロベネシドの用量が野生型のマウスにおいて拡張機能を増加させることを最初に見出した。【0049】結論TRPV2は、中立的な血管効果を有する有力な心筋弛緩剤として作用するプロベネシドのSRの新規な特性に寄与し得る。これらのデータは、TRPV2アゴニストが、HfpEF及びその前兆状態等の拡張期心機能不全を患う患者のための治療の選択肢を提供することができることを示している。」
第5 引用文献Aの記載及び引用文献Aに記載された発明並びに引用文献B及びCの記載
1 引用文献Aの記載及び引用文献Aに記載された発明(引用発明)
(1)引用文献Aの記載
引用文献Aには、以下の記載がある。なお、引用文献Aは外国語で記載された文献であるので、引用文献Aの対応する日本語ファミリー文献である特表2015-530374号公報の記載をもとに合議体が若干修正した日本語訳で記載し、後ろに原文を括弧書きで、例えば、「[原文の段落番号](【公表公報の段落番号】)・・・日本語訳・・・([原文の段落番号])・・・原文・・・)」のように記載した。なお、原文の摘記に際し、読みやすくするために、適宜、改行、ピリオド、スペース等を加えた。以下では、引用文献Aの段落の記載の後に参考情報として、当該公表公報の段落番号を括弧書きで記載する。また、下線は、合議体で付した。以下この審決において同様である。
・Claims(特許請求の範囲)
「1.対象における心機能不全の心臓症状の治療方法であって、心機能不全の心臓症状を治療するのに有効な量のプロベネシドを投与する工程を含み、前記量のプロベネシドを、注射、経口投与又は経皮投与の少なくとも1つによって投与する、方法。2.注射が静脈内注入である、請求項1に記載の方法。」
(1. A method of treating cardiac symptoms of cardiac dysfunction in a subject comprising administering an amount of probenecid effective to treat a cardiac symptom of cardiac dysfunction wherein the amount of probenecid is administered via at least one of an injection, orally, or a transdermally.
2. The method of claim 1 wherein the injection is an intravenous infusion.)
・BACKGROUND OF THE INVENTION(発明の背景)
「[0009](【0009】)最近になって、プロベネシドへの研究上の関心は、それが一過性受容器電位バニロイド2(TRPV2)の選択的アゴニストであるという発見によって増している。・・・TRPVファミリーに関して、直接的な心臓効果を発見した非常に興味深い研究がある。最初に、TRPV2の心臓特異的な過剰発現は、マウス心臓の全腔の室拡張をもたらすことが観察された。その後、TRPV1ノックアウトマウスは、それらの野生型同腹仔と比較して、左前下行枝を結紮後に梗塞サイズが増加し、生存期間が短縮することが観察された。興味深いことに、他の研究者らは、特定のアゴニストによるTRPV1活性化により、虚血/再灌流(I/R)傷害からの保護がもたらされることを観察している。」
([0009]
Research interest in probenecid has recently increased with the finding that it is a selective agonist of transient receptor potential vanilloid 2 (TRPV 2). ・・・ With regards to the TRPV family, there are very interesting studies that have found a direct cardiac effect. First, it was observed that cardiac specific overexpression of TRPV2 resulted in chamber dilation of all cavities of the murine heart. Subsequently, it was observed that TRPV1 knockout mice have increased infarct size and decreased survival after ligation of the left anterior descending artery in comparison to their wild type littermates. Interestingly, others have observed that TRPV 1 activation with specific agonists results in protection against ischemia/reperfusion (I/R) injury.)
・SUMMARY OF THE INVENTION(発明の概要)
「[0011](【0012】)本発明の一態様は、対象における、本明細書中で「心機能不全」と総称する心筋症、収縮期心機能不全及びうっ血性心不全症状の治療方法であって、心機能不全及び心機能不全症状を治療するのに有効な量のプロベネシドを静脈内投与によって投与する工程を含む方法を対象とする。」
([0011]
An aspect of the present invention is directed to a method of treating cardiomyopathy, systolic cardiac dysfunction, and the symptoms of congestive heart failure, collectively referred to herein as“cardiac dysfunction," in a subject that includes administering via intravenous administration an amount of probenecid effective to treat a cardiac dysfunction and the symptom of cardiac dysfunction. In one embodiment of the invention, probenecid is administered in a range of about 1 mg/kg/day to about 100 mg/kg/day. The probenecid may be administered in at least one of a bolus injection or continuous intravenous infusion, or a bolus (loading dose) followed by intravenous infusion. In an embodiment, probenecid is administered over a period of about 8 hours to about 24 hours. Probenecid may be used for short term treatments, i.e., less than a week, or it may be administered in a long term manner, i.e., over a period of weeks, months, or even years. Probenecid may be administered in an amount sufficient to improve cardiac function clinically, resulting in an improvement in the cardiac dysfunction such as can be determined with a quantifiable clinical observations based on, for example, a standardized 6 minute walk test, improved New York Heart Association (NYHA) classification, lower diuretic dose requirement, lower serum BNP levels, normalization of serum sodium concentrations, and combinations thereof.)
・DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION(発明の詳細な説明)
「[0063](【0016】)
本発明の一態様は、対象における、本明細書中で「心機能不全」と総称する心筋症、収縮期心機能不全及びうっ血性心不全症状の新規治療方法を対象とする。最近になって、プロベネシドは、一過性受容器電位バニロイド2(TRPV2)イオンチャネルのアゴニストと特定された。TRPV2は、カルシウム弱選択性のカチオンチャネルであり、プロベネシドのような特定のアゴニストに加えて、細胞膨潤及び熱によって活性化される。
([0063]
An aspect of the invention is directed to novel methods of treating cardiomyopathy, systolic cardiac dysfunction, and the symptoms of congestive heart failure, collectively referred to herein as "cardiac dysfunction," in a subject with probenecid. Probenecid has recently been identified as an agonist of the transient receptor potential vanilloid 2 (TRPV2) ion channel. TRPV2 is a weakly calcium-selective cation channel that is activated by swelling of cells and heat, in addition to specific agonists, like probenecid.)
[0064](【0017】)
特定の理論に束縛されるものではないが、プロベネシドは、筋細胞カルシウム濃度の用量依存的変化及び細胞によるカルシウムハンドリングの改善によって心筋細胞の収縮力を増加させる。実施例1において提供するデータに示されるように、これらのプロセスは、βアドレナリン受容体のリン酸化又はリアノジン受容体若しくはホスホランバンを介しては媒介されない。プロベネシドによって媒介される効果は、細胞死を誘発せず、臨床的に使用される交感神経作動薬と異なり、シミュレートされた心筋梗塞時の梗塞サイズの増加と関係しない。実施例2及び実施例3において実証される、プロベネシドの効果に関する作用メカニズムを理解にすることにより、心機能不全及び心機能不全症状がプロベネシドで治療できること、より詳細には、他の用途に必要とされるより低用量のプロベネシドが必要とされ、実際、うっ血性心不全の以前の研究において使用されたプロベネシドの用量より用量を低下させることができるという、驚くべき発見が可能になる。これらの観察は、治療有効用量のプロベネシドでの、急性クライシスの対象の新規治療、及び患者の長期治療につながった。
([0064]
Without being bound to any particular theory, probenecid increases contractility in cardiac myocytes through dose dependent changes in myocyte calcium concentration and improved calcium handling by the cell. As illustrated in the data provided in Example 1, these processes are not mediated through beta-adrenergic receptor phosphorylation or ryanodine receptor or phospholamban. The effects mediated by probenecid do not induce cell death and is not associated with increased infarct size during simulated myocardial infarction, unlike clinically used sympathomimetics. Understanding the mechanism of action for the effects of probenecid, as demonstrated in Examples 2 and 3 allow for the surprising discovery that cardiac dysfunction and the symptom of cardiac dysfunction can be treated with probenecid and more particularly, lower doses of probenecid than is needed for the other uses and indeed lower the doses of probenecid used in previous studies of congestive heart failure. These observations resulted in novel treatments for subjects in acute crisis as well as the long term treatment of patients with therapeutically effective doses of probenecid.)
[0065](【0018】)
実施例中に示すように、プロベネシドは、マウスの心不全モデルにおいての陽性変力物質として作用する。重要なことに、プロベネシドは、駆出率の低い心不全マウスでは、心不全のないマウスよりも活性である。心不全マウスにおいて、プロベネシドは駆出率を正常化する。マウス心臓組織と同様、ヒト心臓組織も、プロベネシドで心機能不全又は心機能不全症状を治療するための標的にできるTRPV2イオンチャネルを含む。
([0065]
As illustrated in the Examples, probenecid acts as a positive inotrope in a murine model of heart failure. Importantly, probenecid is more active in heart failure mice with low ejection fraction than in mice without heart failure. In the heart failure mice, probenecid normalizes the ejection fraction. Like murine cardiac tissue, human cardiac tissue also includes TRPV2 ion channels that can be targeted to treat cardiac dysfunction or the symptoms of cardiac dysfunction with probenecid.)
[0066](【0019】)
心機能不全又は心機能不全症状を治療する場合、プロベネシドの治療有効用量は、心拍出量が心機能不全の少なくとも一部の症状を軽減するのに十分であるように心臓の収縮力を増加させる、プロベネシド及びその活性代謝産物の血漿中レベルを達成する用量である。例えば、プロベネシドは、臨床的に心機能を改善するのに十分な量で投与して、心機能不全の改善をもたらすことができる。心機能不全の改善は、例えば、6分間歩行試験の標準化、ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類の改善、利尿薬投与必要量の減少、血清BNPレベルの低下、血清ナトリウム濃度の正常化、及びそれらの組合せに基づいて定量化可能な臨床的観察によって決定できるようなものである。
([0066]
When treating cardiac dysfunction or the symptoms of cardiac dysfunction, the therapeutically effective dose of probenecid is a dose that achieves levels of probenecid and its active metabolites in the plasma to increase the contractility of the heart such that the cardiac output is sufficient to alleviate at least some symptoms of cardiac dysfunction. For example, probenecid may be administered in an amount sufficient to improve cardiac function clinically, resulting in an improvement in the cardiac dysfunction such as can be determined with a quantifiable clinical observations based on, for example, a standardized 6 minute walk test, improved New York Heart Association (NYHA) classification, lower diuretic dose requirement, lower serum BNP levels, normalization of serum sodium concentrations, and combinations thereof.)
[0067](【0020】)
発明の一態様は、対象における心機能不全又は心機能不全症状の治療方法であって、治療有効量のプロベネシドを注射によって投与する工程を含む、方法を対象とする。一実施形態において、注射は静脈内投与である。所与の患者の心機能を適切に改善するのに必要な用量は、治療の有効性及びクリアランスの速度によって必要とされる用量設定によって大きく変動し得る。したがって、一実施形態において、プロベネシドは、約1mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲で投与する。・・・
([0067]
An aspect of the invention is directed to a method of treating cardiac dysfunction or the symptoms of cardiac dysfunction in a subject comprising administering via injection a therapeutically effective amount of probenecid. In one embodiment, the injection is an intravenous administration. The dose required to adequately improve cardiac function in a given patient may vary widely due to titration required by the effectiveness of treatment and the rate of clearance. Thus, in one embodiment, probenecid is administered in a range from about 1 mg/kg/day to about 100 mg/kg/day.・・・)
・・・
[0073](【0026】)
治療血漿濃度の達成は、6分間歩行試験の標準化、ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類の改善、利尿薬投与必要量の減少、血清BNPレベルの低下、血清ナトリウム濃度の正常化、及びそれらの組合せによるなどして、対象の新機能の臨床的改善を定量化することによって評価できる。・・・
([0073]
Achievement of a therapeutic blood plasma concentration may be evaluated by quantifying the clinical improvement in cardiac function of a subject such as with a standardized 6 minute walk test, improved New York Heart Association (NYHA) classification, lower diuretic dose requirement, lower serum BNP levels, normalization of serum sodium concentrations, and combinations thereof.・・・)
・・・
[0075](【0028】)
本明細書中で使用するプロベネシドは、プロベネシドの医薬として許容される塩、並びにプロドラッグ、異性体及び多形体、並びにプロベネシドに構造的に関係する又はプロベネシドから誘導される誘導体を含む。医薬として許容される担体中のプロベネシドの組成物を、インビボで投与できる。「医薬として許容される」とは、生物学的に又はその他の面で不所望でない材料を意味する。したがって、組成物は、不所望な生物学的作用を引き起こすことがなく、又は医薬組成物中に含まれる医薬組成物のいかなる他の成分とも有害な相互作用をすることがなく、対象に投与することができる。当業者ならば分かることであるが、当然ながら、担体は、プロベネシドのいかなる分解も最小限に抑え且つ対象における有害な副作用を最小限に抑えるように選択する。
([0075]
Probenecid, as used herein, includes pharmaceutically acceptable salts of probenecid as well as, pro-drugs, isomers, and polymorphs, as well as derivatives that are structurally related to or derived from probenecid. The compositions of probenecid can be administered in vivo in a pharmaceutically acceptable carrier. By “pharmaceutically acceptable" is meant a material that is not biologically or otherwise undesirable. Thus, the compositions may be administered to a subject, without causing undesirable biological effects or interacting in a deleterious manner with any of the other components of the pharmaceutical composition in which it is contained. The carrier would naturally be selected to minimize any degradation of the probenecid and to minimize any adverse side effects in the subject, as would be known to one of skill in the art.)
・・・
[0077](【0030】)
一実施形態において、プロベネシドの注射製剤は、0.1モルの水酸化ナトリム中にプロベネシド粉末(酸形態)を溶解させることによって調製する。次に、この溶液を0.2Mリン酸塩緩衝液(pH=7.4)で希釈する。次いで、標準生理食塩水又は静脈内注射に好適な他の担体を用いて、プロベネシドを原液濃度、例えば、約4.2mg/mlに希釈して、原液を形成する。次に、原液を、投与のために望ましい用量まで、生理食塩水又は他の注射可能な溶液中で希釈することができる。
([0077]
In one embodiment, an injectable formulation of probenecid is prepared by dissolving probenecid powder (acid form) in 0.1 molar sodium hydroxide. This solution is then diluted with 0.2M phosphate buffer (pH=7.4). The probenecid is then diluted to a stock concentration, such as about 4.2 mg/ml with normal saline, or other carrier suitable for intravenous injection, to form a stock solution. The stock solution may then be diluted in saline or other injectable solution to the desired dose for administration.)
・・・
[0080](【0033】)
開示した組成物は、全身投与に好適であり得る。例えば、組成物は、当技術分野で知られている他の手段によって、例えば、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射又は皮下注射)、坐剤によって、又はさらには経皮的に、例えば、ゲル若しくはパッチ製剤によって投与できる。このような製剤は、前述のようにして又は当業者に知られているようにして、調製できる。
([0080]
The disclosed compositions may be suitable for systemic administration. For example the compositions may be administered by other means known in the art, such as orally, parenterally (e.g., intravenous injection, intramuscular injection, intraperitoneal injection, or subcutaneous injection), suppository, or even transdermally such as through a gel or patch formulation. Such formulations may be prepared as described above or as is known to those of ordinary skill in the art.)
・EXAMPLE 1(実施例1)
「実施例1
[0081](【0034】)
TRPVチャネルの発現に関するマウス及びヒト心筋組織の調査により、TRPV2は、全心臓試料で及び左心室で特異的に発現されるもの中で最も高いことが確証された。本研究では、動物の全身、摘出された心臓全体及び単離された心室筋細胞を調べることにより、心筋機能を調節するプロベネシドの能力を評価する。
(EXAMPLE 1
[0081]
A survey of murine and human myocardial tissue for expression of TRPV channels established that TRPV2 was the highest of these expressed in whole heart samples and specifically in the left ventricle. The present study investigates the cardiac effects of probenecid on the whole animal, isolated whole heart and the isolated ventricular myocyte to evaluate probenecid's ability to modulate myocardial function.)
[0082](【0035】)
方法
[0083]
動物 - 野生型(WT)マウス(B6129SF2/J F2及びC57BL6J、Jackson laboratories社)及びTRPV2-/-マウス[Dr.M.Caterina(John's Hopkins、Baltimore、MD)により提供されたブリーディングペアは、12~16週齢の雄であった。
([0082]
Methods
[0083]
Animals - Wild type (WT) mice (B6129SF2/J F2 and C57BL6J, Jackson laboratories) and TRPV2-/- mice (breeding pairs provided by Dr. M. Caterina, John's Hopkins, Baltimore, Md.) were males at 12-16 weeks of age.)
[0084](【0036】)
インビボ研究 - プロベネシドの静脈内投与による収縮力の研究。
[0085]
心エコー評価。用量反応曲線を得るために、12~16週齢の雄C57 WT(n=39)マウスをイソフルランで麻酔すると同時に、既に記載されているようにして顕微鏡下で頸静脈の静脈内アクセス(IV)を得た。続いて、Mモード及びとBモードの両方での心エコー検査は、後述するように傍胸骨長軸(PSLAX)で得た。生理食塩水又は種々の用量のプロベネシド(2mg/kgから200mg/kgまで増加させる)を、WTマウスにおいて初期収縮力の研究のために注射した(ボーラスIV)。
([0084]
In vivo studies - Studies of contractility with intravenous administration of probenecid.
[0085]
Echocardiographic evaluation. In order to obtain a dose response curve, male C57 WT (n=39) mice 12-16 weeks of age were anesthetized with isoflurane while intravenous jugular access (IV) was obtained under a microscope as previously described. Subsequently, an echocardiographic study with both M-mode and B-mode was obtained in parasternal long axis (PSLAX) as described below. Either saline or different doses of probenecid (increasing from 2 to 200 mg/kg) were injected (bolus IV) for the initial contractility studies in WT mice.)
[0086](【0037】)
侵襲的評価。 - 用量範囲が決定されたら、異なる群のWTマウスを、ケタミン(50μg/g)及びイナクチン(チオブタバルビタール、100μg/g、Sigma社、MA)の腹腔内注射によって麻酔した。気管切開を行い(PE-90)、体温をモニターし、フィードバック制御された暖房テーブルで維持した。右大腿動脈に、血圧測定のための液体充填ポリエチレンチューブ管をカニューレ挿入し、低コンプライアンス圧力トランスデューサー[COBE Cardiovascular社、(Arvada、CO)]に接続した。右大腿静脈に、薬物の送達のためにカニューレ挿入した。高忠実度の1.2-French SciSence圧力カーテル[SciSence社(London、ON、Canada)]を、右頸動脈に挿入し、左心室まで進めて、心臓性能をモニターした。ECGリードを左右の腕及び左脚に配置し、BIOAmp[AD Instruments社(Colorado Springs、CO)]に接続した。頸動脈血流量を測定するために、左頸動脈を単離し、TS420流量計[Transonic Systems社(Ithaca、NY)]に接続された0.5-PSB血管周囲流量プローブを装着した。100μg/μlプロベネシドの実験用溶液を、大腿静脈カテーテルを介して30及び100mg/kgのボーラスとして、各用量間隔5分で送達させた。血行力学的変数を収集し、MacLab 4/Sシステム[AD Instruments社(Colorado Springs、CO)]及びChartソフトウェアを用いて解析した。
([0086]
Invasive evaluation. - Once a dose range was established, a separate group of WT mice were anesthetized with an intraperitoneal injection of ketamine (50μg/g) and inactin (thiobutabarbital, 100μg/g, Sigma, Mass.). A tracheotomy was performed (PE-90), and body temperature was monitored and maintained with a feedback-controlled heating table. The right femoral artery was cannulated with fluid filled polyethylene tubing for measurement of blood pressure and connected to a low compliance pressure transducer (COBE Cardiovascular, Arvada, Colo.). The right femoral vein was cannulated for delivery of drugs. A high fidelity, 1.2-French SciSence pressure catheter (SciSence, London, ON, Canada) was inserted into the right carotid artery and advanced into the left ventricle to monitor cardiac performance. ECG leads were placed on the right and left arms, and left leg and connected to a BIOA mp (AD Instruments, Colorado Springs, Colo.). For carotid blood flow measurements, the left carotid artery was isolated and fitted with a 0.5-PSB perivascular flow probe connected to a TS420 flowmeter (Transonic Systems, Ithaca, N.Y.). Experimental solutions of 100μg/μl probenecid were delivered as a bolus via the femoral vein catheter at 30 and 100 mg/kg with 5 minutes between each dose. Hemodynamic variables were collected and analyzed using a MacLab 4/S system (AD Instruments, Colorado Springs, Colo.) and Chart software.)
[0087](【0038】)
WT、TRPV2+/-及びTRPV2-/-マウスを用いた収縮力の研究 - 前記実験の結果に基づき、プロベネシドの100mg/kgの用量が最大収縮力反応をもたらすと判断された。次に、起こり得る手術のストレス作用を低減するために、マウスにプロベネシドを腹腔内(IP)注射した。WT、TRPV2+/-及びTRPV2-/-マウスを、後述するように注射後30分にわたってエコーでモニターした。
([0087]
Contractility studies with WT, TRPV2+/- and TRPV2-/- mice - Based on the results of the above experiments, it was determined that the dose of 100 mg/kg of probenecid gave a maximum contractility response. Mice were then injected the probenecid intraperitoneal (IP) to decrease the possible stress effects of surgery. WT, TRPV2+/-, and TRPV2-/- mice were monitored by echo for 30 minutes after injection as described below.)
[0088](【0039】)
心エコー - 全ての心エコー検査は、MS400プローブ(センターライン周波数30MHz)を備えたVevo 2100 Ultrasoundシステム[Visualsonics社(Toronto、Canada)]で行い、別個のワークステーションにおいてVevostrainソフトウェア[Vevo 2100、v1.1.1 B1455、Visualsonics社(Toronto、Canada)]で後処理した。画像を、Mモード及びBモードの両方において深さ2から10mmの間のPSLAX及び短軸(SAX)断面から得た。I/R傷害に曝露されたマウスの全検査は、PSLAXにおいてMモード、Bモード及びSAXにおいてストレインイメージングを含むものであった。さらに、収縮力の研究のために、Mモード測定値のみをPSLAXから得た。ストレインイメージングを、Bモード画像から行ない、局所的な半径方向ストレイン及び円周方向変位を局所壁によって測定し、SAX画像からの平均値を合計した。Mモード画像から、左心室の内腔サイズ及び壁厚を測定した。駆出率(EF)及び短縮率(FS)の計算値を、Vevoソフトウェアを用いて得た。
([0088]
Echocardiography - All echocardiographic studies were performed with a Vevo 2100 Ultrasound system (Visualsonics, Toronto Calif.) with an MS400 probe (30 MHz centerline frequency) and were post-processed at a separate workstation with Vevostrain software (Vevo 2100, v1.1.1 B1455, Visualsonic, Toronto, Canada). Images were obtained from PSLAX and short axis (SAX) views at depths between 2 and 10 mm in both M-mode and B-mode. All studies on mice exposed to I/R injury included M-mode, B-mode in PSLAX and strain imaging in SAX. While for the contractility studies, only M-mode measurements were obtained from the PSLAX. Strain imaging was performed from the B-mode images and regional radial strain and circumferential displacement were measured by regional wall and summed average from the SAX images. From the M-mode images, left ventricular cavity size and wall thickness was measured and the ejection fraction (EF) and fractional shortening (FS) calculations were obtained using the Vevo software.)
[0089](【0040】)
EF、FS及びストレインに由来するパラメーターの変化は、その後の時点に対して個々の対象からベースライン値を減算することによって得た。加えて、5分から30分の間の各時点に関するベースラインからの平均変化を、各マウスについて、5分毎に測定を行うことによって求めた。これらの平均値を、異なる群間で比較した。
([0089]
The change in the EF, FS, as well as strain derived parameters was obtained by subtracting the baseline value from each individual subject against subsequent time-points. In addition, the average change from baseline for each time point between 5 and 30 minutes was determined for each mouse, with measurements being taken every 5 minutes. These averages were compared between the different groups.)
[0090](【0041】)
インビボ電気生理 - 全ての心エコー検査中に、心電図のデータを得た。続いて、これらの検査を、全時点において独立した盲検リーダーが解析して、心電図変化及び薬物誘発性不整脈について評価した。PR間隔、RR間隔、QRS幅のパラメーターを測定し、ピーク変化として報告し、同時に、上室性不整脈又は心室性不整脈の存在を、30分で得られた全画像にわたって観察された合計として判定した。
([0090]
In vivo electrophysiology - Electrocardiographic data was obtained during all echocardiographic studies. These studies were subsequently analyzed by an independent, blinded reader at all time points to evaluate for electrocardiographic changes and drug induced arrhythmias. The following parameters were measured: PR interval, RR interval, QRS width and were reported as peak change while the presence of supraventricular or ventricular arrhythmias was measured as a total observed over all images obtained in 30 minutes.)
[0091](【0042】)
エキソビボ(Langendorff)の研究 - 摘出心臓実験を、WTマウスについて前述したようにして行った。心臓がペーシングによって400bpmの定常状態に達した後、プロベネシド(10-6M)を、最高5分間にわたってシリンジポンプを用いた連続潅流によって心臓に灌流させた。測定は、1秒毎に行った。5分間のプロベネシドの潅流後、心臓をカニューレから取り外し、ウェスタンブロット解析のためにN2中で急速冷凍させた。
([0091]
Ex vivo ( Langendorff ) studies - Isolated heart experiments were performed as previously described on WT mice. After hearts achieved steady-state with pacing at 400 bpm, probenecid (10-6M) was perfused into the heart using a syringe pump and continuous perfusion for up to 5 minutes Measurements were taken every second. After the 5 minute perfusion of probenecid, the hearts were removed from the cannula and flash frozen in N2 for western blot analysis. )
[0092](【0043】)
分子的研究
([0092]
Molecular Studies)
・・・
[0096](【0046】)
単離筋細胞、カルシウム取り込み及びハンドリング
[0097]
心室筋細胞の単離 - WTマウス(12週齢)からの心臓を、LangendorffシステムでNaCl 118mM、KCl 5.4mM、HEPES 10mM、NaH2PO4 0.33mM、MgCl2 2mM、グルコース10mM、タウリン30mM、ブタンジオンモノオキシム10mMから構成される修正Krebs-Henseleit緩衝液(KHB) (pH=7.4)を用いて灌流させた。次いで、酵素溶液(0.7mg/ml II型コラゲナーゼ、0.1%BSA及び25μM CaCl2を含有するKHB)を用いて、心臓を10分間消化した。最後に、心臓の心室を切除し、細かく切り刻み、濾過して、単離細胞を得た。十分に沈降させた後、上清を除去し、細胞を再懸濁させた。
([0096]
Isolated Myocytes, Calcium Uptake and Handling
[0097]
Isolation of ventricular myocytes - Hearts from WT mice (12-week old) were perfused on the Langendorff system with a modified Krebs-Henseleit buffer (KHB) composed of (mM) NaCl 118, KC1 5 .4, HEPES 10, NaH2P04 0.33, MgC12 2, glucose 10, taurine 30, butanedione monoxime 10 (pH=7.4). Then an enzyme solution (KHB containing 0.7 mg/ml type II collagenase, 0.1% BSA and 25μM CaC12) was used to digest the hearts for 10 min. Finally, ventricles of the hearts were excised, minced and filtered to obtain isolated cells. After sufficient sedimentation, the supernatant was removed and the cells were resuspended.)
[0098](【0047】)
筋細胞収縮力の測定 - 筋細胞は、NaCl 140mM、KCl 5.4mM、MgCl2 1mM、CaCl2 1.8mM、HEPES 5mM、グルコース 10mMから構成されるタイロード液(pH=7.4)を含むプレキシガラスチャンバー上に置いた。筋細胞を、0.5Hzの電場刺激下で興奮させた。定常状態に達した後に、筋細胞の短縮並びに短縮率(+dL/dt)及び再伸長率(-dL/dt)を、CCDカメラで画像化し、ビデオエッジ検出器でモニターした。薬物をタイロード液に溶解させ、チャンバー中に灌流させた。データを、PCLAMP 9ソフトウェアによって連続的に収集した。
([0098]
Myocyte contractility measurement - Myocytes were put on a plexiglass chamber containing a Tyrode's solution composed of(mM) NaC1 140, KC1, 5.4, MgCl2 l, CaCl2 1.8, HEPES 5, glucose 10 (pH=7.4). Myocytes were excited under 0.5 Hz field stimulation. After reaching the steady state, myocyte shortening and the rates of shortening (+dL/dt) and relengthening (-dL/dt) were imaged with a CCD camera and monitored by a video-edge detector. Drugs were dissolved in Tyrode's solution and perfused into the chamber. Data were continuously collected through the PCLAMP 9 software.)
[0099](【0048】)
筋細胞Ca2+トランジェント及び細胞質Ca2+の測定 - 筋細胞に、Fluo-4アセトキシメチルエステル(7μM)を室温で20分間負荷し、続いてタイロード液で10分間洗浄し、次いで記録のためにプレキシガラスチャンバー上に置いた。Ca2+トランジェントの測定のために、筋細胞を、0.5Hz及び3Hzの電場刺激下で興奮させ、蛍光シグナルをNikon TE 2000顕微鏡を用いて得て、InCyt Standard測光システムによって収集した。静止状態の筋細胞における細胞質Ca2+の分析のために、Zeiss LSM 510共焦点顕微鏡を用いて、静止筋細胞からの蛍光画像を記録した。ラインスキャンモードを、512ピクセルを0.056μm間隔で配置して、3.07ms間隔で適用した。薬物をタイロード液に溶解させ、チャンバー中に灌流させた。筋細胞の画像は、薬物適用後30s毎に記録した。データ解析は、Clampfit 9.2及びImage J 1.44ソフトウェアを用いて行った。
([0099]
Myocyte Ca2+ transient and cytosolic Ca2+ measurement - Myocytes were loaded with Fluo-4 acetoxymethy1 ester (7μM) for 20 min at room temperature, followed by a 10 min wash with Tyrode's solution, and then placed onto a plexiglass chamber for recording. For Ca2+ transient measurements, myocytes were excited under 0.5 Hz and 3 Hz field stimulation, and the fluorescence signals were obtained using a Nikon TE 2000 microscope and collected through an In Cyt Standard photometry system. For cytosolic Ca2+ analysis in quiescent myocytes, a Zeiss LSM 510 confocal micro scope was used to record fluorescent images from resting myocytes. Line-scan mode was applied at 3.07 ms intervals with 512 pixels spaced at 0.056μm. Drugs were dissolved in Tyrode's solution and perfused into the chamber. Images of myocytes were recorded every 30 s after drug application Data analysis was performed using Clampfit 9.2 and Image J1.44 software.)
[0100](【0049】)
筋細胞実験の全てに水溶性プロベネシドが用いられた。
[0101](【0050】)
電気生理学的な記録 - 単離した筋細胞に、塩化テトラエチルアンモニウム(TEA-Cl) 137mM、CsCl 5.4mM、CaCl2 2mM、MgCl2 1mM、HEPES 5mM、グルコース10mM及び4-アミノピリジン3mMを含有する、Na+及びK+を含まない溶液(pH=7.4)を灌流させた。ホールセルパッチクランプ記録を、Axopatch-1B増幅器を用いて行った。Ca2+電流の記録のために、ガラスピペットに、アスパラギン酸115mM、CsOH 115mM、CsCl 20mM、EGTA 11mM、HEPES 10mM、MgCl2 2.5mM、Na-GTP 0.1mM、Mg-ATP 2mMを含有する溶液(pHをCsOHで7.2に調整)を充填した。プロベネシドを、筋細胞を灌流させるのに用いた、Na+及びK+を含まない溶液に溶解させた。データは、pCLAMP9ソフトウェアを用いてAxon Digidata 1322Aデータ取得システムによって収集した。実験は全て、室温(24℃)で行った。
([0100]
Water soluble probenecid was used for all of the myocyte experiments.
[0101]
Electrophysiological recordings - Isolated myocytes were perfused with a Na+- and K+-free solution containing(mM):tetraethylammonium chloride(TEA-Cl) 137,CsC1 5 .4, CaCl2 2, MgC12 1, HEPES 5, glucose 10and4-aminopyridine 3 (pH=7.4). Whole-cell patch clamp recordings were performed with an Axopatch-1B amplifier. For Ca2+ current recordings, glass pipettes were filled with solution containing (mM): aspartic acid 115, CSOH 115, CSC1 20, EGTA 11, HEPES 10, MgC12 2.5, Na-GTP 0.1, Mg-ATP 2 (pH adjusted to 7.2 with CSOH). Probenecid was dissolved in a Na+- and K+-free solution which was used to perfuse the myocytes. Data were collected using pCLAMP9 software through an Axon Digidata 1322A data acquisition system. All experiments were performed at room temperature (24°C).)
[0102](【0051】)
統計解析 - データは全て、平均値±平均値の標準誤差(SEM)で表す。・・・P値≦0.05を、有意とみなした。検出力分析を用いて、前述のように対照群と実験群でエンドポイント測定値間に有意差が存在するかどうかを判定するのに必要な群サイズを決定した。・・・最良適合線を作成し、用量反応曲線に関するEC50を算出した。
([0102]
Statistical Analysis - All data are expressed as means±standard error of the mean (SEM). ・・・P values ≦0.05 were considered significant. Power analysis was employed to determine the group size necessary to determine whether significant differences exist between endpoint measures in control and experimental groups as previously described. Sigma Plot was used to pro duce a best fit line and calculate an EC50 for the dose response curves.)
[0103](【0052】)
結果
[0104]
プロベネシドは、WTではインビボでの収縮力を増加させるが、TRPV2-/-マウスでは増加させない。’WTマウスへのプロベネシドの投与は、EFによって測定される収縮力を、生理食塩水を与えた対照マウスにおけるEFと比較して増加させた(図1A)。収縮力の増加は、75mg/kg以上の全ての用量においてボーラス注射後5分以内に認められた(75mg/kg、100mg/kg及び200mg/kgに関するピーク変化はそれぞれ、5.26±3.35、8.40±2.80、7.32±2.52)(図1B及び図1C、75及び100mg/kgに関してはデータは示さず)。5分間隔(合計30分間)で測定した収縮力変化により、収縮力の用量依存的な増加が明らかになり、推定EC50は49.33mg/kgであった(図1D)。EFは、より長い期間にわたって評価した対象(n=5、用量200mg/kg IV)では少なくとも1時間にわたって高い状態にとどまった(ベースラインと比べたEFの平均増加8.9±2.57、データは示さず)。
([0103]
Results
[0104]
Probenecid increases in vivo contractility in WT but not TRPV2-/- mice.' Administration of probenecid to WT mice resulted in increased contractility as measured via EF relative to EF in control mice given saline (FIG. 1A). The increased contractility was noted within 5 minutes of the bolus injection with all doses at or above 75 mg/kg (peak change of 5.26±3.35, 8.40±2.80, 7.32±2.52 for 75mg/kg, 100 mg/kg and 200 mg/kg, respectively) (FIGS. 1B and 1C, data not shown for 75 and 100 mg/kg). The measured change in contractility as measured at 5 minute intervals (for 30 minutes total) revealed a dose dependent increase in contractility with an estimated EC50 of 49.33 mg/kg (FIG. 1D). The EF remained at an elevated state for at least 1 hour on subjects (n=5, dose of 200 mg/kg IV) that were evaluated for a longer period of time (average increase in EF over baseline of 8 .9±2 57, data not shown).)
[0105](【0053】)
プロベネシドは、TRPV2+/-マウスに投与すると収縮力を増加させたが、収縮力のピーク変化は、WTマウスにおいて同一用量で観察されるピーク変化のわずか49%であった(図1E)。さらにまた、プロベネシドをTRPV2-/-に投与した場合、30分間の心エコー図測定の間に識別可能な心臓反応は認められなかった。
([0105]
Probenecid administered to the TRPV2+/- mice increased contractility, though the peak change in contract1lity was only 49% of that observed with the same dose in the WT mice (FIG. 1E). Furthermore, when probenecid was administered to the TRPV2-/-, there was no discernable cardiac response noted during the 30 minutes of echocardiogram measurements.)
[0106](【0054】)
プロベネシドは、インビボマウスにおいて電気伝導に測定可能な変化を引き起こさない。 - 一般的に用いられる変力物質はさまざまな不整脈をもたらすことが知られている。WTマウスにおいては、プロベネシドのいかなる用量の投与後も、上室性若しくは心室性不整脈又は心房性期若しくは心室性期外収縮は、観察されなかった。さらにまた、全ての用量において、いずれの伝導間隔にも変化は測定されず(図2A、図2B及び図2C)、WT及びTRPV2-/-マウスのプロベネシド(100mg/kg)IP間で有意差は認められなかった(図2D)。
([0106]
Probenecid does not cause any measurable changes in electrical conduction in vivo mice. - It is known that commonly used inotropes result in varied arrhythmias. No supraventricular or ventricular arrhythmias or premature atrial or ventricular beats were observed after any dose of probenecid administered in WT mice. Furthermore, at all doses there were no measured changes in any conduction intervals (FIGS. 2A, B and C), and there were no significant differences noted between probenecid (100 mg/kg) IP in WT and TRPV2-/- mice (FIG. 2D).)
[0107](【0055】)
プロベネシドは、インビボ心臓及びLangendorff灌流心臓において収縮力を増加させる。 - +dP/dtの侵襲的測定から、収縮力に対するプロベネシド(10-6M)の心臓特異的な効果を測定するのに用いたLangendorff灌流心臓と同様な効果が実証された。本発明者らは、インビボでのプロベネシドの投与が、低用量(30mg/kg)及び高用量(100mg/kg)のいずれにおいても、ピーク+dP/dtを急速に増加させることを見出した(図3A)。Langendorff灌流心臓における平均+dP/dtの経時的変化を、図3Bに示す。この変化は、90秒から210秒までが統計的に有意であること及び120秒から180秒の間で定常状態に達することが分かった(図3B)。また、弛緩(-dP/dt)も同一濃度のプロベネシドで影響され、1812±158から2309±133まで増加した(P<0.01)。プロベネシドによる処置後、心臓は、他の実験に使用するために急速冷凍した。
([0107]
Probenecid increases contractility in in vivo hearts and in Langendorff perfused hearts. - Invasive measurements of +dP/dt demonstrated an effect similar to the Langendorff perfused hearts which were used to measure the cardiac specific effects of probenecid (10-6 M) on contractility. We found that administration of probenecid in vivo at both a low (30 mg/kg) and high (100 mg/kg) dose rapidly increased the peak +dP/dt (FIG. 3A). The changes in average +dP/dt over time in Langendorff perfused hearts are shown in FIG. 3B. This change was found to be statistically significant from 90 to 210 seconds and reached a steady state between 120 and 180 seconds (FIG. 3B). Relaxation (-dP/dt) was also affected at the same concentration of probenecid, increasing from 1812±158 to 2309±133 (P<0.01). After treatment with probenecid, the hearts were flash frozen to be used for other experiments.)
・・・
[0109](【0057】)
カルシウムハンドリングタンパク質の発現レベルは、プロベネシドの投与後に変化しない。 - Langendorff法の動物から摘出した心臓及びタイロード液で灌流させた年齢適合対照マウス心臓を用いて、心臓全体における、ホスホランバン(PLN)及びリアノジン受容体(RyR)(リン酸化及び総タンパク質)の発現を見積もった。これらの心臓は収縮力の増加を示したにもかかわらず、これらの心臓におけるリン酸化若しくは総ホスホランバン又はリン酸化若しくは総リアノジン受容体の量に有意な変化は認められず(図5A及び図5B)、p-PLN対t-PLNの比にも有意な変化は認められなかった(図5C)。さらにまた、収縮力の増加の原因となる別のCa2+ハンドリングタンパク質があるかどうかを確認するためにナトリウム/カルシウム交換体(NCX)及びSERCA2aを検討したが、発現レベルに変化は認められないことが分かった(データは示さず)。
([0109]
Expression levels of calcium handling proteins are unchanged after probenecid administration. - Using the hearts isolated from the Langendorff procedure animals and age-matched control mouse hearts perfused with Tyrode's solution, the expression of phospholamban (PLN) and the ryanodine receptor (RyR), phosphorylated and total protein, in the whole heart was assessed. Even though these hearts demonstrated an increase in contractility, no significant changes in the amount of phosphorylated or total phospholamban or ryanodine receptor in these hearts (FIGS. 5A and 5B) nor in the ratio of p-PLN to t-PLN were found (FIG. 5C) Furthermore, the sodium/calcium exchanger (NCX) and SERCA2a was investigated to determine if there was another Ca2+-handling protein responsible for the increase in contractility, but found no changes were found in the expression levels (data not shown).)
[0110](【0058】)
単離筋細胞においてはプロベネシドによる収縮力の用量依存的な増加がある。 - プロベネシドは、単離心室筋細胞の収縮力を用量依存的に増加させたことが分かった(図6)。筋細胞の短縮率(FS)は、0.1μMプロベネシドに0.5Hz及び室温において曝露した場合には30.8±1.4%増加し(6.9%から9.0%まで; n=6、P<0.01)、3Hz及び32℃において曝露した場合には10.1%から13.9%まで増加した(n=4; P<0.01);プロベネシドの作用の用量反応曲線は、EC50が1.6nMであった(図6A及び図6B)。TRPV2チャネルの非選択的遮断薬であるルテニウムレッドでの筋細胞の前処理は、筋細胞の収縮力に対するプロベネシドの効果を完全に消失させた(図6C及び図6D)。単離筋細胞において、本発明者らは+dL/dt及び-dL/dtを測定した。室温において、プロベネシド投与は80.6±12.3から112.5±16.6までの最大+dL/dtの変化をもたらし(n=10、P<0.01)、-dL/dtは57.7±7.4μm/秒から77.6±8.7μm/秒まで増加した(P<0.01)。
([0110]
There is a dose-dependent increase of contractility by probenecid in isolated myocytes. Probenecid was found to have increased the contractility of isolated ventricular myocytes in a dose-dependent manner (FIG. 6). Fractional shortening (FS) of myocytes was increased by 30.8 ± 1.4% (from 6.9% to 9.0%; n=6, P<0.01) when exposed to 0.1μM probenecid at 0.5 Hz and room temp, and increased from 10.1% to 13.9% (n=4; P<0.01) at 3 Hz and 32°C.; the dose response curve for the action of probenecid had an EC50 of l .6 nM (FIGS. 6A and 6B). Pretreatment of myocytes with ruthenium red, a non-selective blocker ofTRPV2 channels, completely abolished probenecid's effect on myocyte contractility (FIGS. 6C and 6D). In isolated myocytes, we measured the + dL/dt and-dL/dt). At room temperature, probenecid administration resulted in a change in maximum +dL/dt from 80.6 ± 12.3 to 112.5 ± 16.6 (n=10, P<0.01) while the - dL/dt increased from 57.7± 7.4 to 77.6 ±7 μm/sec (P<0.01).)
[0111](【0059】)
筋細胞Ca2+トランジェントに対するプロベネシドの効果も調べた。プロベネシドは、Ca2+トランジェント振幅(ΔF/F0)の有意な増加をもたらした(図6E及び図6F)。これは、筋細胞においてみられる短縮率の増加と一致していた。濃度0.1μMのプロベネシドは、Ca2+トランジェント振幅(ΔF/F0)を3.35±0.20から4.25±0.25まで増加させた(P<0.001)が、Ca2+トランジェントの減衰率(タウ)は、プロベネシド処理によって影響を受けなかった(図6F)。
([0111]
The effect of probenecid on the myocyte Ca2+ transient was also examined. Probenecid caused a significant increase in Ca2+ transient amplitude (ΔF/F0) (FIGS. 6E and 6F), which was consistent with the fractional shortening increase found in myocytes. The concentration of 0.1μM probenecid increased the Ca2+ transient amplitude (ΔF/F0) from 3.35±0.20 to 4.25±0.25 (P<0.001), while the decay rate (Tau) of Ca2+ transient was not affected by probenecid treatment (FIG. 6F).)
[0112](【0060】)
単離筋細胞におけるプロベネシドによる細胞質Ca2+の増加。 - 細胞質Ca2+及びSR Ca2+遊離に対するプロベネシドの効果を、共焦点イメージングを用いてさらに調べた。プロベネシド(0.1μM)は、SR遊離の顕著な増加(Ca2+スパーク頻度により測定)及び細胞質Ca2+濃度の段階的な増加を引き起こした(図7A及び図7B)。平均して、スパーク頻度は、1.45±0.09から2.99±0.24までの2倍の増加を示した。細胞質Ca2+は、プロベネシド処理の1分後に増加し始め、典型的には約5分後にピークに達した(図7C)。定常状態に達した時点で、細胞質Ca2+は、プロベネシド処理下では対照と比較して2.5±0.2倍増加していた(図7D)。ルテニウムレッド(1μM)を筋細胞に適用した場合には、プロベネシドによる細胞質Ca2+の増加は完全に遮断された(図7E)。パッチクランプ実験は、プロベネシドは有意な膜貫通Ca2+流入をトリガーしないことを示している。筋細胞を-70mVに保持し且つ0.1μMプロベネシドに曝露した場合には、測定可能な内向きCa2+電流は検出されなかった(図7F、左側)。しかし、-70mVから+10mVへの細胞膜の脱分極は、ロバストなL型Ca2+電流を誘発した(図7F、右側)。SR Ca2+遊離の増加は、細胞質Ca2+レベルの増加において主要な役割を果たすように思われた。SERCA遮断薬であるタプシガルジンによってSR内容物を空にすると、プロベネシドによる細胞質Ca2+の変化は消失した(図7G及び図7H)。
([0112]
Cytosolic Ca2+ increase by probenecid in isolated myocytes. - The effects of probenecid on cytosolic Ca2+ and SR Ca2+ release were further examined using confocal imaging. Probenecid (0.1μM) caused a marked increase in SR release (as measured by Ca2+ spark frequency) as well as a grad叫 increase in cytosolic Ca2+ concentration (FIGS. 7A and 7B). On average, the spark frequency was increased two fold, from 1.45±0.09 to 2.99±0.24. The cytosolic Ca2+ began to increase after 1 minute and typically reached a peak at approximately 5 min after probenecid treatment (FIG. 7C) Once steady state was achieved, cytosolic Ca2+ was increased 2.5±0.2 fold under probenecid treatment compared to control (FIG. 7D). When ruthenium red (1μM) was applied to the myocytes, the increase of cytosolic Ca2+ by probenecid was fully blocked (FIG. 7E). Patch clamp experiments indicate that probenecid does not trigger any significant transmembrane Ca2+ influx. No measurable inward Ca2+ current was detected when myocytes were held at - 70 mV and exposed to 0.1μM probenecid(FIG. 7F, left). However, depolarization of the cell membrane from - 70 mV to +10 mV elicited a robust L-type Ca2+ current (FIG. 7F, right). Increased SR Ca2+ release appeared to play a major role in generating the increased cytosolic Ca2+ level. Emptying of SR content with thapsigargin, a SERCA blocker, abolished the change in cytosolic Ca2+ by probenecid (FIGS. 7G and 7H).)
[0113](【0061】)
プロベネシドは、これまで認識されていなかった陽性変力性を有しており、効果はTRPV2チャネルによって媒介される。
([0113]
Probenecid has positive inotropic properties which were previously not recognized, and the effect is mediated by TRPV2 channels.)
[0114](【0062】)
これらのデータは、プロベネシドは、心エコーによって及び侵襲的測定によって用量依存的に測定した場合、マウス心臓において収縮力を増加させたことを示している。しかし、これらの研究には、動物にとって外傷性であり且つ交感神経反応を刺激する可能性がある頸静脈カテーテルの導入が必要であった。より低用量(100mg/kg)のIP注射は、より簡単な投与方法で同様な効果を有することが観察され(したがって、この方法及び用量を残りの研究で用いた)。
([0114]
These data indicate that probenecid increased contractility in the mouse heart as determined by echocardiography and invasive measurements in a dose-dependent manner. However, these studies required the introduction of a jugular catheter which was traumatic to the animals and likely stimulated a sympathetic response. IP injection at a lower dose (100 mg/kg) was observed to have similar effects with a simpler method of administration (and therefore this method and dose was used for the remainder of the studies).)
[0115](【0063】)
・・・一連の実験は、β-アドレナリン作動性(β-ADR)経路がプロベネシドの投与によって刺激されているどうかを確認するために行った。インビボ実験で観察された収縮力の増加は、・・・カルシウム依存性メカニズムによって起こると結論づけられた。β-ADR刺激が心毒性作用を有し、結果として酸素要求量の増加による梗塞サイズの増加、心筋細胞アポトーシスの誘発及び肥大をもたらすことが広く文献記載されているため、並びにβ-拮抗作用が心保護的であり且つ心不全の治療において安全であることが知られているため、このことは重要である。したがって、心臓のβ-ADR刺激(直接又は間接的)は、収縮力を増加させるが、虚血及び細胞死の増加を伴い、虚血性心疾患患者においては傷害性であるとみなされる。ここに示されたデータは、エキソビボ及びインビボ実験によって、プロベネシドの作用 (即ち、増加した収縮を引き起こす) メカニズムがこれらの経路に依存しないこと、及び虚血性心疾患患者において陽性変力物質として潜在的に有用であり得ることを実証している。さらにまた、WT及びTRPV2-/-マウスに対するプロベネシドのIP又はIV投与前、投与中及び投与後の全ての心電図記録の極めて徹底的な解析により、測定した心電図変数のいずれにも不整脈及び有意な変化がないことが実証された。これは、心房性頻脈及びAV伝導欠陥(ジゴキシン)並びに心室性及び上室性不整脈(ドーパミン、ドブタミン、イソプロテレノール(isoprotenelol))を含む著しい不整脈をもたらす、一般的に使用されている変力物質と大きく異なる。
([0115]
・・・A series of experiments was performed to determine if the β-adrenergic ( β-ADR) pathway was being stimulated by the administration of probenecid. The conclusion was reached that the increased contractility observed in the in vivo experiments occurred through a calcium dependent mechanism ・・・. This is significant because β-ADR stimulation has been extensively described as having cardiotoxic effects resulting in increased infarct size through increased oxygen demand, induction of cardiocyte apoptosis, and hypertrophy, while β-antagonism is known to be cardioprotective and safe in the treatment of heart failure. Hence, β-ADR stimulation of the heart (directly or indirectly) results in increased contractility but with increased ischemia and cell death and is considered injurious in patients with ischemic heart disease. The data presented herein demonstrates that through ex vivo and in vitro experiments that the mechanism of action of probenecid (i.e. causing increased contractility) is not dependent on these path ways and can be potentially useful as a positive inotrope in patients with ischemic heart disease. Furthermore, a very thorough analysis of all electrocardiographic traces before, during and after administration of probenecid IP or IV on WT and TRPV2-/- mice demonstrated no arrhythmias and no significant changes in any of the measured electrocardiographic variables. This is in stark contrast with commonly used inotropes which result in significant arrythmias, including atrial tachycardia and AV conduction deficits (digoxin) and ventricular and supraventricular arrhythmias (dopamine, dobutamine, isoprotenelol).)
[0116](【0064】)
初期のインビボ実験は、収縮力の増加のみを記載し、メカニズムについては記載していないが、本発明者らは、その後、プロベネシドの心臓特異的効果から全身を切り離すために一連のLangendorff実験を行った。これらの実験は、インビボで観察されたのと同様な収縮力の増加を示した。一連の予備実験で使用した10-6Mの濃度は、この用量が最も再現性がある反応をもたらすことを示した。さらにまた、これらの実験が同様な時間枠(いずれの場合も5分)内で収縮力の対応する変化を生じたという事実は、陽性変力作用の主要因としてのアドレナリン作用性緊張(adrenergic drive)の著しい全身的増加と明らかに相反する。本発明者らが短縮率(+dL/dt)及び再伸長率(-dL/dt)を測定した際に、収縮力の増加が単離筋細胞における弛緩率の増加と関連することも観察された。それらは同一でないとしても、エキソビボ研究でみられる収縮率(+dP/dt)及び弛緩率(-dP/dt)に匹敵する。
([0116]
While the initial in vivo experiments only describe an increase in contractility, and not a mechanism, we subsequently performed a series of Langendorff experiments in an attempt to separate the systemic from the cardiac specific effects of probenecid. These experiments showed an increase in contractility similar to that which was observed in vivo. A concentration of 10-6M used in a series of preliminary experiments showed this dose to result in the most reproducible response. Furthermore, the fact that these experiments resulted in corresponding changes in contractility within a similar time frame (5 minutes in all cases) argues convincingly against a significant systemic increase in adrenergic drive as the main cause for the positive inotropism. It was also observed that the increase in contractility was associated with an increased rate of relaxation in isolated myocytes when we measured the rate of shortening (+dL/dt) and the rate of relengthening (-dL/dt), and even though they are not identical, they are comparable to rate of contractility (+dP/dt) and relaxation (-dP/dt) found in ex vivo studies.)
[0117](【0065】)
プロベネシドは、すでに2007年にTRPV2発現HEK293細胞を用いてTRPV2アゴニストと特定された。Fluro-3 AMカルシウムイメージング実験から、プロベネシドは、TRPV2発現細胞においては細胞質Ca2+の著しい増加を誘発するが、TRPV1、TRPV3、TRPV4、TRPM8及びTRPA1を含む他のサーモTRPチャネルを発現する細胞においては誘発しないことが実証された。サーモTRPチャネルファミリーのメンバーとして、TRPV2は、侵害的熱(>52℃)によって活性化されるCa2+選択的チャネルであり、TRPV2の活性化は、後根神経節に限局されるニューロン細胞中においてCa2+流入をもたらすことが示されている。細胞質Ca2+及び筋細胞収縮力に対するプロベネシドの刺激作用は、TRPV2チャネルの活性化を伴うと仮定された。この仮説は、TRPV2チャネルの遮断薬であるルテニウムレッド(RR)が、収縮力及び細胞質Ca2+レベルの両方に対するプロベネシドの効果を完全に消失し得ることによって裏付けられる。RRは、TRPVチャネルの一般的なアンタゴニストとして確立されており、それらの水性ポアを遮断することによって作用するが、また、それはミトコンドリアのカルシウム取り込み及びリアノジン受容体のカルシウム放出に影響を及ぼすことも示されている。
([0117]
Probenecid was previously identified as a TRPV2 agonist in 2007 using TRPV2-expressing HEK293 cells Fluro-3 AM calcium imaging experiments demonstrated that probenecid elicited a significant increase in cytosolic Ca2+ in TRPV2-expressing cells but not in cells expressing other thermo-TRP channels, including TRPV1, TRPV3, TRPV4, TRPMS and TRPA1. As a member of the thermo TRP channel family, TRPV2 is a Ca2+ selective channel activated by noxious heat (>52°C.) and activation of TRPV2 has been shown to lead to Ca2+ influx in neuron cells localized to dorsal root ganglia. Probenecid's stimulatory effects on cytosolic Ca2+ and myocyte contractility were hypothesized to involve activation of the TRPV2 channel. This hypothesis is supported by the ability of ruthenium red (RR), a blocker of TRPV2 channels, to fully abolish probenecid's effects on both contractility and cytosolic Ca2+ level. RR has been established as a general antagonist for TRPV channels, acting by blocking their aqueous pores, however, it has also been shown to affect mitochondrial calcium uptake and ryanodine receptor calcium release.)
・・・
[0119](【0067】)
細胞レベルにおいては、データは、プロベネシドがマウス心室筋細胞においては収縮力を増加させたことを示しているが、心臓線維芽細胞については個別に検討しなかった。TRPV2が、種々の型の線維芽細胞中に存在し、活性であることは分かっており、これは、観察された効果に潜在的に関与している可能性がある。また、プロベネシドはCa2+トランジェントの振幅を増加させることもわかった。静止状態の筋細胞では細胞質Ca2+濃度の段階的な増加が観察された。興味深いことに、測定可能な内向きCa2+電流は、プロベネシドへの曝露時に検出されなかった。このことは、筋細胞へのCa2+流入が、プロベネシドによってトリガーされた細胞質Ca2+レベルの増加の直接原因ではなかったこと示唆している。むしろ、SR Ca2+遊離の増大が、細胞質Ca2+増加において主要な役割を果たすように思われた。プロベネシドはCa2+スパーク頻度を著しく増加させること、及びSERCA遮断薬でSRを空にすることにより細胞質Ca2+に対するプロベネシドの効果が消失することが分かった。
([0119]
At the cellular level, the data show that probenecid increased contractility in mouse ventricular myocytes, though cardiac fibroblasts were not investigated separately. TRPV2 has been found to be present and active in various types of fibroblasts, which may potentially play a role in the observed effects. It was also found that probenecid increased the aniplitude of the Ca2+ transients, and in quiescent myocytes a gradual increase of the cytosolic Ca2+ concentration was observed. Intriguingly, no measurable inward Ca2+ current was detected upon exposure to probenecid, suggesting that Ca2+ influx into the myocyte was not the direct source of the probenecid-triggered increase in cytosolic Ca2+ levels Rather, enhanced SR Ca2+ re lease appeared to play a major role in the cytosolic Ca2+ increase. It was found that probenecid markedly increased Ca2+ spark frequency and emptying the SR with a SERCA blocker abolished the effect of probenecid on cytosolic Ca2+.)
・EXAMPLE 2(実施例2)
「実施例2[0120](【0068】)実施例1のデータは、プロベネシドが、これまで認識されていなかった陽性変力性を有することを実証する。実施例1のデータはまた、プロベネシドは、有意な悪性の電気生理学的性質を有さず(即ち、不整脈が認められなかった)、したがって、心不全の治療に有用な薬物であり得ることを実証している。他の陽性変力物質は細胞傷害性であることが知られているので、実施例2のデータは、プロベネシドの潜在的細胞毒性/アポトーシスについての特性を示すと共に、マウス虚血性心疾患モデルにおける陽性変力物質としてのその潜在的使用を実証する。これらのデータは、プロベネシドが、従来から使用されている変力物質とは異なるメカニズムによって機能すること、及び収縮力を増加させ且つ虚血後の心機能を改善させるが、細胞生存期間を短縮することもアポトーシスを増加させることもないことを示唆している。確立されている、臨床的に関連したマウス虚血/再灌流(I/R)モデルに加えて、HL-1心臓細胞株を使用してインビトロでデータを生成し、心エコーによって心機能をモニターした。(EXAMPLE 2続きを表示(全121行)[0120]The data in Example 1 demonstrates that probenecid has positive inotropic properties which were previously not recognized. The data in Example 1 also demonstrates that probenecid does not have significant malignant electrophysiologic properties (i.e no arrhythmias were noted) and hence may be a useful drug for the treatment of heart failure. As other positive inotropes are known to be cell injurious, the data in Example 2 demonstrate the potential cytotoxic/apoptotic properties of probenecid and its potential use as a positive inotrope in a mouse model of ischemic heart disease. These data suggest that probenecid functions through a mechanism separate from conventionally used inotropes, and that it will increase contractility and improve heart function after ischemia without decreasing cell survival or increasing apoptosis. The data were generated in vitro using the HL-1 cardiac cell line in addition to a well-established and clinically relevant mouse model of ischemia/reperfusion (I/R) and monitored cardiac function via echocardiography.)[0121](【0069】)方法[0122]細胞生存率アッセイ - 細胞生存率は、・・・を用いて製造業者の指示に従って見積もった。簡潔には、HL-1細胞を、・・・1×104細胞/ウェルの密度で播種し、・・・培地中で一晩成長させた。細胞を、総容量100μlの補充成長培地中で指示用量のプロベネシド又はイソプロテレノールで処理し、一晩インキュベートした。次いで、GF-AFC(GF-AFC viability)を、ApoTox-Glo Assay Bufferに2.0mlのAssay Bufferに対してGF-AFC 10μlの比率で加え、この混合物20μlを各ウェルに加え、細胞を37℃で30分間インキュベートした。・・・蛍光を測定し、データを非処理の対照細胞に対して標準化した。([0121]Methods[0122]Cell Viability Assays - Cell viability was assessed・・・ per manufacturer's instructions. Briefly, HL-1 cells were seeded ・・・at a density of 1x104 cells/well and allowed to grow overnight in・・・media・・・. Cells were treated with indicated doses of probenecid or isoproterenol in supplemented growth media at 100μl total volume and allowed to incubate over night. GF-AFC viability was then added to ApoTox - Glo Assay Buffer at a ratio of 10μl GF-AFC to 2.0 ml Assay Buffer and 20μl of this mixture was added to each well and cells were incubated at 37°C. for 30 minutes. Fluorescence was measured・・・ and the data was normalized to untreated control cells.)[0123](【0070】)全ての実験に、水溶性プロベネシドが用いられた。[0124](【0071】)Ca2+蛍光のイメージング及び測定。 - HL-1細胞は、前述のようにして得た。解離細胞を、・・・カバーグラス(・・・)上に蒔いた。・・・画像取得は、・・・で行った。・・・タイロード液(・・・)中で最終濃度1μMまで希釈したCa2+インジケータ染料・・・を細胞に37℃において20分間負荷し、次いでタイロード液中で・・・洗浄した。染料を前負荷した付着性HL1細胞を有するカバースリップを、倒立顕微鏡上に取り付けられた記録室に入れ、続いてタイロード液に浸してから、プロベネシドを灌流させた。焦点調節及びベースライン画像の撮影の後、プロベネシド(種々の実験で10-8~10-4M)を0.5ml/15秒の速度で細胞に灌流させた。・・・データに関する統計解析を、・・・行った。([0123]Water soluble probenecid was used for all of the experiments.[0124]Imaging and measurement of Ca2+ fluorescence. HL-1 cells were obtained as described above. Dissociated cells were plated on glass cover-slip (・・・)・・・. ・・・Image acquisition was done with ・・・.・・・ Cells were loaded with the Ca2+ indicator dye(・・・) diluted in Tyrode's solution (・・・) to a final concentration of 1μM for 20 min at 37°C, and then washed ・・・. Coverslips with adherent HL1 cells pre-loaded with dye were placed in the recording chamber that was mounted on an inverted microscope and subsequently bathed in Tyrode's solution before perfusion of probenecid. After focusing and taking baseline images cells were perfused with probenecid (10-8 to 10-4 M in different experiments) at a rate of 0.5 ml/15 sec. ・・・statistical analyses on the data were done ・・・.)[0125](【0072】)保存LSMファイルから画像を取得後に、潅流前のピーク蛍光(F0)及び灌流後のピーク蛍光(F)を手動で決定した。それぞれの実験の全持続時間にわたる保存画像の各細胞の細胞質内の円形領域を用いて、灌流前後における蛍光の変化を求めた。([0125]Peak fluorescence before perfusion (F0)and that after perfusion (F) were determined manually after acquisition of images from the saved LSM files. Circular areas within the cytosol of each cell of the saved images over the entire duration of respective experiments were used to determine changes in fluorescence before and after perfusion.)・・・[0127](【0074】)細胞死の検出。 - 種々の条件下でプロベネシド又は砂糖水(対照)に曝露したマウスから心臓を採取した。これらの実験のマウスは、対照(n=4)、プロベネシド処置水(n=4)、I/R傷害後の対照(n=4)及びI/R傷害後のプロベネシド処置水(n=4)を含む4群とした。心臓を取り出し、PBSですすぎ、3.7%緩衝ホルムアルデヒドで固定し・・・脱水した(・・・)。試料を、パラフィン包理し、・・・厚さ6μmの切片を作り、2つの心臓切片を各スライド上に載せた。スライドは、その場アポトーシス検出キット・・・を用いて製造業者の指示に従って調製した。染色後、スライドを、顕微鏡(・・・)上に配置し、アポトーシス細胞の数を、2人の独立した盲検リーダーが各心臓切片につき5視野でカウントした。同一視野で総細胞数も測定し、アポトーシス細胞を、総細胞の百分率となるように計算した。次に、これらの値をプロベネシド及び対照マウスの各群について平均した。([0127]Detection of cell death. - Hearts were obtained from mice which were exposed to probenecid or sugar-water (control) under various conditions. There were 4 groups of mice for these experiments, including control (n=4), probenecid treated water (n=4), control after I/R injury (n=4) and probenecid treated water after I/R injury (n=4). The hearts were removed, rinsed with PBS, fixed with 3.7% buffered formaldehyde・・・and dehydrated (・・・). The samples were embedded in paraffin, sectioned into thicknesses of 6μm, ・・・ and 2 heart sections were placed onto each slide. The slides were prepared using the in situ apoptosis detection kit, ・・・according to the manufacturer's instructions. After staining, the slides were placed on a microscope (・・・) and the number of apoptotic cells was counted by two separate and blinded readers in 5 fields of view for each heart section. The total number of cells was also determined for the same field, and the apoptotic cells were calculated to be a percentage of the total cells. These values were then averaged for each group; probenecid and control mice.)[0128](【0075】)動物 - 全てのマウス(C57BL6J、・・・)は、12~16週齢の雄であった。[0129](【0076】)虚血/再灌流法 - マウスをペントバルビタールナトリウムで麻酔し、第4肋間腔のレベルで左開胸によって心臓を露出させた。マウスに挿管し、これを小型人工呼吸器[・・・]に配置した。ループオクルーダーを左前下行枝(LAD)の周囲に配置し、締め付け、LADを30分間又は45分間閉塞させた。手術後、開胸部を重ねて縫合し、動物を回復させた。([0128]Animals - All mice (C57BL6J, ・・・) were males at 12-16 weeks of age.[0129]Ischemia/Reperfusion methods - Mice were anesthetized with sodium pentobarbital and the heart exposed through a left thoracotomy at the level of the fourth intercostal space. The mice were intubated and placed on a mini-ventilator (・・・). A loop occluder was placed around the left anterior descending artery (LAD), and tightened, occluding it for either 30 minutes or 45 minutes. After surgery, the thorocotomy was sutured in layers, and the animal was allowed to recover.)[0130](【0077】)全てのマウスは、IRの24時間後に記載した通りの心エコー測定を行って、インビボで傷害の重症度を判定した。[0131](【0078】)心エコー法 - 全ての心エコー検査は、実施例1に関して既に記載したように行った。[0132](【0079】)虚血/再灌流とそれに続くプロベネシドボーラス - I/R研究は、前述のようにして45分間虚血させて行った。心エコーは、I/Rの24時間後及びその後週1回行った。マウスは、I/R後EFが50~60%のマウスのサブグループに関する生理食塩水及びプロベネシドの群(生理食塩水についてはn=5及びプロベネシドについてはn=6)、又は、I/R後EFが40~50%のマウスのサブグループを含む生理食塩水及びプロベネシドの群(生理食塩水についてはn=6及びプロベネシドについてはn=6)の4群とした。プロベネシドマウスは、100μl(100mg/kg)のIPボーラスで処置し、生理食塩水群には生理食塩水100μlのみをIP投与した。マウスを、合計30分間にわたって5分間隔で撮像した。([0130]All mice had echocardiographic measurements as described after 24 hours post-IR to determine the severity of the injury in vivo.[0131]Echocardiography methods - All echocardiographic studies were performed as previously described for Example 1[0132]Ischemia/Reperfusion followed by probenecid bolus I/R studies were performed as described above with 45 minutes of ischemia. Echocardiography was performed at 24 hours post-I/Rand weekly thereafter. There were 4 groups of mice, saline and probenecid with subgroups of mice with a post I/R EF of 50 to 60% (n=5 for saline and n=6 for probenecid) or those with a post I/REF of 40 to 50% (n=6 for saline and n=6 for probenecid). The probenecid mice were treated with an IP bolus of 100μl (100 mg/kg) while the saline groups only received 100μl of saline IP. The mice were imaged at 5 minute intervals for a total of 30 minutes.)[0133](【0080】)虚血/再灌流とそれに続く経口プロベネシド - I/R研究を、前述のようにして45分間虚血させて行い、心エコーを、I/Rの24時間後及びその後4週間にわたって週1回行った。24時間後、マウスを、プロベネシド処置水又は非処置水のケージに無作為に割り付けた。プロベネシドは、5%スクロースを含有する水に0.5μg/mlの濃度で溶解させた。水を週2回変え、消費前後に容量を測定して、概算用量を決定した。投与された総用量をより正確に見積もるために、マウスは1ケージに2匹収容した。([0133]Ischemia/Reperfusion followed by oral probenecid - The I/R studies were performed as described above with 45 minutes of ischemia and echocardiography was performed at 24 hours post-I/Rand weekly thereafter for 4 weeks. After 24 hours, the mice were randomized to probenecid treated water or untreated water cages. The probenecid was dissolved in water containing 5% sucrose at a concentration of 0.5n/ml. The water was changed twice a week and the volume was measured before and after consumption to determine the approximate dose. The mice were housed 2 to a cage for a more accurate assessment of total dose administered.)[0134](【0081】)プロベネシドボーラスとそれに続く虚血/再灌流 - 45分間の冠状動脈閉塞の15分前に食塩水又はプロベネシド(100mg/kg)をIV投与した(即ち、収縮力の最大限の増加時)。I/Rの24時間後に、心エコーを行い、続いて梗塞サイズの測定のために心臓を取り出し、リスク領域に対して標準化を行った。([0134]Probenecid bolus followed by Ischemia/Reperfusion―Either saline or probenecid (100 mg/kg) were administered IV 15 prior to a 45 minute coronary occlusion (i.e., at the time of maximal increase in contractility). At twenty-four hours post-I/R, echocardiography was performed and the hearts subsequently removed for determination of infarct size and normalized to the risk region.)[0135](【0082】)統計解析 - データは全て、平均値±平均値の標準誤差(SEM)で表す。・・・P値≦0.05を、有意とみなした。・・・([0135]Statistical Analysis - All data are expressed as means±standard error of the mean (SEM). ・・・ P values of 0.05 were considered significant.・・・)[0136](【0083】)結果[0137]プロベネシドはインビトロで細胞死を誘発しない。 - これらの実験では、HL-1細胞を用いて、プロベネシドの効果をアッセイした。プロベネシド10-8の潅流前後におけるピーク細胞質蛍光の測定中央値に有意差は観察されなかった。他に、より高濃度のプロベネシドを潅流した後のピーク蛍光の中央値は、灌流前の値よりも有意に高かった(図8A)。([0136]Results[0137]Probenecid does not induce cell death in vitro. - For these experiments HL-1 cells were used to assay the effect of probenecid. No significant differences in the median measurement of the peak cytosolic fluorescence before and after perfusion of probenecid 10-8 were observed. Else the median of peak fluorescence after perfusion of higher probenecid concentrations were significantly higher than that before perfusion (FIG. 8A).)・・・[0139](【0085】)加えて、漸増用量のプロベネシドによるHL-1細胞の処理は、処理の4、8又は24時間後に検出可能な細胞毒性をもたらさない(図8B)。・・・([0139]In addition, treatment of HL-1 cells with increasing doses of probenecid does not result in any detectable cytotoxicity at 4, 8 or 24 hours following treatment ( FIG. 8B ). ・・・)[0140](【0086】)プロベネシドは、インビボで筋細胞の有意な細胞死を引き起こさない。健常マウスにおける経口プロベネシド療法は、プロベネシドの平均摂取量がケージ当たりのペアのマウスの水消費量に基づき190.56±6.33mg/kg/日と推定される処置の2週間後に、有意なアポトーシスを誘発しなかった。さらにまた、I/Rに供してからプロベネシド処置水又は非処置水に無作為に割り付けたマウスは、プロベネシド処置水と非処置水との間で細胞死の量に有意差を示さなかった(図2A)。予想通り、I/R傷害に供したマウスは、非I/Rマウスと比較して高いレベルのアポトーシスを示した(図9)。([0140]Probenecid does not cause significant myocyte cell death in vivo. Oral probenecid therapy in healthy mice did not induce significant apoptosis after 2 weeks of treatment where the average intake of probenecid was estimated to be 190.56±;6.33 mg/kg/day based on the water consumption of paired mice per cage. Furthermore, mice that were subjected to I/R and subsequently randomized to either probenecid treated water or untreated water did not show significant differences in amount of cell death between the probenecid treatment and untreated water ( FIG. 2A ). As expected, mice subjected to I/R injury did demonstrate higher levels of apoptosis in comparison to non-I/R mice ( FIG. 9 ).)[0141](【0087】)ボーラスプロベネシドは、虚血的に損傷された心臓において急性的に機能を改善する。I/R傷害後に、IP投与されたプロベネシドは、全ての処置マウスにおいてEFの統計的に有意な増加を引き起こした。興味深いことに、プロベネシドによって誘発されたEFの増加と初期EFとの間の強い相関関係によって示されるように、プロベネシドによる処置は、低い初期EFを示すマウスほど強く機能を増大させることができた(図10A)。この効果は、既に報告した同様な時間枠において現れ、最初の上昇は、両群において1分及び5分で観察された。しかし、ピーク効果は、初期EFがより高い(50~60%)マウスでは10分でみられた(EFの変化は19.72±4.10%であった)が、プロベネシドは、EFがより低い(40~50%)マウスにおいては30分間の全実験期間にわたって収縮力を増大させ続けた(図10B及び図10C)。([0141]Bolus probenecid improves function acutely in ischemically damaged hearts. After I/R injury, probenecid administered IP caused a statistically significant increase in EF in all treated mice. Interestingly, treatment with probenecid was able to more strongly enhance function in mice that display a lower initial EF, as indicated by the strong correlation between the probenecid-induced increase in EF and initial EF ( FIG. 10A ). This effect occurred in a similar time frame as previously reported, with an initial rise observed at 1 and 5 minutes in both groups. However, though the peak effect was found at 10 minutes (change in EF was 19.72±4.10%) in mice with a higher initial EFs (50-60%), probenecid continued to enhance contractility throughout the full 30-minute experiment in mice with lower initial EFs (40-50%) ( FIGS. 10B and 10C ).)[0142](【0088】)経口プロベネシドは、虚血及び再灌流傷害後の機能を改善する。I/R傷害の24時間後には、その後に水対照及びプロベネシド処置に無作為に割り付けたマウスの間で、EF又はLV Vol;dに有意差は認められなかった(EF:それぞれ、43.44±2.05及び41.81±3.40、p=0.65; LV Vol;d:それぞれ、66.51±2.65及び71.99±5.44、p=0.39)。([0142]Oral probenecid improves function after ischemia and reperfusion injury. Twenty-four hours after I/R injury, there was no significant difference in EF or LV Vol;d between the mice subsequently randomized to water control and probenecid treatment (EF: 43.44±2.05 and 41.81±3.40, respectively, p=0.65; LV Vol;d:66.51±2.65 and 71.99±5.44, respectively, p=0.39).)[0143](【0089】)プロベネシド群においては、LV腔サイズ(LV Vol;d)は、実験の1週間後に最小限の拡張を認めたが、実験中に悪化しなかった。しかし、シャム処置マウスにおいては、LV腔サイズ(LV Vol;d)がさらに増加した(水22.55±4.47及びプロベネシド7.59±6.08、p=0.076、図11A)。加えて、水処置マウスでは、プロベネシド処置マウスと比較して半径方向変位が減少した(代表的な心エコー図像を図11B及び図11Cに示す)。これは、心筋機能が保たれたことを示している(水0.018±0.018及びプロベネシド0.071±0.013、p<0.05、図11D及び図11E)。したがって、初期虚血/再灌流傷害が等しいにもかかわらず、プロベネシド処置マウスは、対照と比較して機能を保っていた。([0143]The LV cavity size (LV Vol;d) was minimally dilated after 1 week but did not worsen over the course of the experiment in the probenecid group, though it increased further in the sham treated mice (water 22.55±4.47 and probenecid 7.59±6.08, p=0.076, FIG.11A). In addition, the water treated mice had a decrease in radial displacement as compared to the probenecid treated mice (representative echocardiogram pictures are displayed in FIGS.11B and 11C), indicating preserved myocardial function (water 0.018±0.018 and probenecid 0.071±0.013, p<0.05, FIGS.11D and 11E). Thus, despite equal initial ischemia/reperfusion injury, the probenecid-treated mice had preserved function relative to controls.)[0144](【0090】)プロベネシドは、虚血及び再灌流傷害を悪化させない。アドレナリン刺激は、筋細胞の収縮力を増加させるが、代謝要求量の増加及びアポトーシスメカニズムの誘発を含むいくつかのメカニズムによって細胞損傷及び細胞死と関連することははっきりしている。本研究は、虚血イベント中におけるプロベネシド投与によって観察される収縮力増加の効果を評価するために実施した。組織学的検査によって測定される梗塞サイズは、プロベネシドで前処置したマウスでは、生理食塩水で前処置したマウスと比較して、24時間の再灌流後の30分及び45分虚血群の両方に関して有意差がなかった(図12A)。さらにまた、これらのマウスにおける収縮機能(EF及び円周方向グローバルストレインによって測定)は、生理食塩水処置群とプロベネシド処置群との間で有意差はなかった(図12B及び図12C)。興味深いことに、局所壁運動を、半径方向変位を測定するストレインイメージングによって決定した場合には、30分間の虚血後には、45分間の虚血後と比較して前壁の機能に有意差が認められたが、処置群間で差は認められなかった(30分間、生理食塩水0.43±0.02mm対プロベネシド0.46±0.06mm、及び45分間、生理食塩水0.36±0.03mm対0.35±0.06mm、両方の生理食塩水及びプロベネシド処置群間でp>0.05)(図12D及び図12E)。([0144]Probenecid does not worsen ischemia and reperfusion injury. It is well established that adrenergic stimulation results in increased myocyte contractility but is also associated with cellular damage and death through several mechanisms including increased metabolic requirements and induction of apoptotic mechanisms. The present study was conducted to evaluate the effects of increased contractility observed with probenecid administration during an ischemic event. The infarct size as measured via histology was not significantly different in mice pretreated with probenecid in comparison to saline for both the 30 and 45 minute ischemia groups after 24 hours of reperfusion (FIG.12A). Furthermore, the systolic function in these mice (as measured via EF and global circumferential strain) was not significantly different between the saline and probenecid treated groups (FIGS.12B and 12C). Interestingly, when regional wall motion was determined via strain imaging measuring radial displacement, there was also a significant difference in the function of the anterior wall after 30 minutes as compared to 45 minutes of ischemia, but no difference between the treatment groups (30 minutes, saline 0.43±0.02 mm vs probenecid 0.46±0.06 mm and 45 minutes, saline 0.36±0.03 mm. vs. 0.35±0.06 mm, p>0.05 between both saline and probenecid treated groups) (FIGS.12D and 12E ).)[0145](【0091】)考察[0146]実施例1からのデータは、FDAに認可された薬物であるプロベネシドが、何十年も認識されずに済まされてきた変力性を有することを実証した。これらの実験は、プロベネシドが細胞質Ca2+レベルを増加させ、結果としてβ-アドレナリン作動性シグナル伝達とは独立した収縮力の増加をもたらすことを実証した。アドレナリン刺激は心筋代謝要求を増加させ、アポトーシスの経路を刺激し、筋細胞の肥大を引き起こすことは既に示されているので、β-AR経路の刺激の欠如が、本明細書中に示した研究を開始させた。これは、症状及び血行動態パラメーターが改善されるにもかかわらずこれらの薬物に曝露された患者の短期及び長期死亡率が増加することが見出されている伝統的なβ1-アゴニスト(ドブタミン、ドーパミン)及びPDI(即ち、ミルリノン)に関連する多くの臨床試験に反映されている。([0145] Discussion[0146]Data from Example 1 demonstrated that probenecid, an FDA approved drug, has inotropic properties, which went unrecognized for decades. These experiments demonstrated that probenecid increased cytosolic Ca2+ levels resulting in increased contractility independent of β-adrenergic signaling. The lack of stimulation of the β-AR pathway initiated the research presented herein, as adrenergic stimulation has been previously shown to increase myocardial metabolic demand, stimulate apoptotic pathways and cause myocyte hypertrophy. This has been reflected in numerous clinical trials involving traditional β-agonists (dobutamine, dopamine) as well as PDIs (i.e milrinone) which have found that even as symptoms and hemodynamic parameters improve, the short and long term mortality of patients exposed to these drugs increases.)[0147](【0092】)この研究の2つの主要な発見は、これらの問題に対処する: 1)変力反応の改善に関連する細胞死の欠如、及び2)虚血的に損傷された心臓におけるプロベネシドの陽性変力効果。([0147]The two principal findings of this work address these issues: 1) the lack of cell death associated with the improved inotropic response and 2) the positive inotropic effect of probenecid in an ischemically damaged heart.)[0148](【0093】)後者に関しては、最初に、虚血を短期間引き起こした後に血管を開く、虚血性心疾患の臨床的に関連したモデルを用いた。この病態生理は、血管再生が短期間で行われ且つその後の虚血性損傷が軽微である急性心筋梗塞の一般的な臨床経過と異なるものではない。本モデルは、高周波プローブを使用するため、収縮期の機能の小さい減少を検出でき、これにより、本発明者らは二分法によってマウスを軽度損傷(EF50~60%)と中等度損傷(EF40~50%)に分割できた。プロベネシドが前述のように収縮力を増加させるだけでなく、虚血後EFと逆相関する(EF40~50%の中等度損傷群は、EFのより大きな増加を示した)という本発見は、重要なことには、中等度収縮機能不全患者に使用する、この薬物のトランスレーショナルな可能性の信憑性を高める。([0148]Regarding the latter, initially a clinically relevant model of ischemic heart disease was used in which ischemia is caused for a short period time and subsequently the vessel is opened. This pathophysiology is not dissimilar to the common clinical course of an acute myocardial infarction in which revascularization is accomplished in a short period of time and the subsequent ischemic damage is minor. the present model was able to detect small decreases in systolic function due to the high frequency probe used which permitted us to dichotomously divide the mice between mild damage (EF of 50-60%) and moderate damage (EF of 40-50%). The present finding that probenecid, not only increases contractility as previously described, but also that the increase is inversely correlated with post-ischemic EF (the moderately damaged group, EF of 40-50%, showed a larger increase in EF) importantly lends credence to the translational potential of this drug for use in patients with moderate systolic dysfunction.)・・・[0150](【0095】)I/Rにおける潜在的治療薬としてプロベネシドを使用するためのさらなる証拠として、経口プロベネシドによる処置が、シャム処置マウスと比較して、(より少ない心室拡張及び収縮機能の改善によって証拠立てられる)心機能の悪化を低減することも実証された。([0150]As further evidence for the use of probenecid as a potential therapeutic agent in I/R, it was also demonstrated that treatment with oral probenecid decreases deterioration of cardiac function (as evidenced by less ventricular dilation and improved systolic function) in comparison to sham treated mice.)[0151](【0096】)本研究の第2の重要な発見は、プロベネシドがインビボ及びインビトロの両方で細胞損傷を引き起こさないことであった。臨床的に利用可能な変力物質の大部分は死亡率を増加させ且つ心毒性経路を刺激して梗塞サイズの増加及びアポトーシスをもたらすことが分かっているので、これは劇的な発見である。しかし、高用量療法であっても、インビボで2週間の療法後に又はインビトロでいくつかの異なる時点で及び臨床的に投与される場合に達成されるよりも実質的に高濃度で、(非処置水と比較して)有意な細胞死をもたらさなかった。長期間にわたって陽性変力物質として経口的に使用できるのはジゴキシンのみであるが、ジゴキシンは治療域が極めて狭いので厳密なモニタリングを必要とするため、この発見は潜在的に重要であり得る。これは、数十年にわたってポジティブな安全性プロフィールを有し且つマウスモデルにおいて極めて高用量で投与される場合さえ安全であるプロベネシドとは大きく異なる。([0151]The second critical finding of this study was the lack of cellular damage that probenecid caused both in vivo and in vitro. This is a dramatic finding as the vast majority of the clinically available inotropes have been found to increase mortality and stimulate cardiotoxic pathways resulting in increased infarct size and apoptosis. However, even high dose therapy did not result in significant cell death (compared to untreated water) in vivo after 2 weeks of therapy or in vitro at several different time points and at substantially higher concentrations than would be achieved when administered clinically). This finding may be potentially important, as only digoxin can be used as a positive inotrope over prolonged periods of time orally, though it requires tight monitoring as it has a very narrow therapeutic window. This is in stark contrast to probenecid that has a very positive safety profile over decades and as the present data show, is safe in a murine model when administered even at very high doses.)[0152](【0097】)要約すると、本データは、プロベネシドが陽性変力薬であるという興味深い発見で始まったトランスレーショナルなプロセスの次のステップを提示している。これらのデータは、プロベネシドがI/R傷害後の機能を改善すること及びインビボ又はインビトロでアポトーシス反応を誘発しないことを実証している。これらの発見は、プロベネシドのβ-AR非依存的メカニズムを立証する実施例1に示される以前の研究と共に、プロベネシドがヒトにおける心不全の治療に安全に使用できることを示している。」
([0152]
In summary, the present data present the next step in a translational process that began with the interesting finding that probenecid is a positive inotropic drug. The data demonstrate that probenecid improves function following I/R injury and does not induce an apoptotic response in vivo or in vitro. These findings, together with the previous work presented in Example 1 documenting a β-AR-independent mechanism for probenecid, indicate that probenecid may be safely used to treat heart failure in humans.)
・EXAMPLE 3(実施例3)
「実施例3[0153](【0098】)プロベネシドは、インビトロで、HL-1細胞において細胞死を増加させることなく、細胞内カルシウム濃度の増加を誘導する。本発明者らは、プロベネシドが細胞内カルシウムを増加させるが、心臓細胞に損傷を与えないことを確認した。これは、臨床的に関連した濃度で収縮力も増加させるが細胞死を明らかに増加させるイソプロテレノール(一般的に用いられるβ-アゴニスト)とは異なる。超生理的濃度であっても、プロベネシドは細胞死を引き起こしておらず、実際に、細胞生存期間を延長する傾向がある。これは、プロベネシドが細胞死促進経路(pro-cell death pathway)を活性化することなく、細胞内カルシウムのわずかな増加によって心臓を軽く刺激する(nudge)という事実によると本発明者らは考える。一方、イソプロテレノールは、カルシウムレベルのより劇的な増加と、傷害性であることが知られている細胞死促進及び肥大経路の活性化との、両方をもたらすシグナル伝達を引き起こす。これらの経路の一部の活性を見積もることにより、プロベネシドが、β-AR依存的経路(イソプロテレノール及びドブタミンの標的)を活性化しないこと、及びカルシウムレベルを増加するためにイソプロテレノールによって調節されるカルシウムハンドリングタンパク質のリン酸化状態を変化させないことが立証される。(EXAMPLE3続きを表示(全24行)[0153]Probenecid induces increased intracellular calcium concentrations without an increase in cell death in HL-1 cells in vitro. We confirmed that probenecid increases intracellular calcium and does not damage cardiac cells. This is in contrast to isoproterenol (commonly used beta-agonist) that also increases contractility but clearly results in increased cell death at clinically relevant concentrations. Even at supraphysiological concentrations, probenecid has causes no cell death, and in fact, there is a trend towards enhanced cell survival. We believe this is due to the fact that probenecid nudges the heart by small increases in intracellular calcium without activating pro-cell death pathways. In contrast, isoproterenol causes signaling that both increases calcium levels more drastically, and activates pro-cell death and hypertrophic pathways that are known to be injurious. Assessment of activities of some of these pathways demonstrates that probenecid does not activate β-AR-dependent pathways (the target of isoproterenol and dobutamine) and does not change the phosphorylation state of calcium handling proteins that are modulated by isoproterenol to increase calcium levels.)[0154](【0099】)マウスにおいて虚血性傷害(心臓発作に相当する)がある場合及びない場合において、処置なしとプロベネシド処置との間に心臓細胞死に差はない。これは、プロベネシドがマウスにおいて心臓発作後に経口的に使用しても(水での投与)安全であることを確証し、プロベネシドが、高ストレスの傷害モデルでも細胞死を増大しないことを裏付けている。β-ARアゴニストによる同様な研究は、さらなる損傷を暗示する梗塞サイズの増加を示している。([0154]With and without ischemic injury (equivalent of heart attack) in a mouse there is no difference in cardiac cell death between no treatment and probenecid treatment. This confirms that probenecid is safe to use orally (given in water) after a heart attack in mice and supports that probenecid does not enhance cell death even in a high-stress model of injury. Similar studies withβ-AR agonists show increased infarct size indicative of additional damage.)[0155](【0100】)さらにまた、プロベネシドで処置したマウスは、処置していないマウスと比較して、心室拡張(心臓のサイズ増加)が少なく、機能が良好であった。([0155]Furthermore, the mice treated with probenecid had less ventricular dilation (heart increasing in size) and better function in comparison to those without treatment.)[0156](【0101】)虚血性傷害(心臓発作)後に、損傷が最も大きい(即ち、梗塞領域がより大きい)マウスにおいてプロベネシド(腹腔内投与された)のより強力な効果が認められる。([0156]After ischemic injury (heart attack) there is a stronger effect of probenecid (administered intra peritoneal) in mice that have the most damage (i.e. larger infarct regions).)[0157](【0102】)本発明者らは、傷害後のマウスで心機能(EF)を測定した。心筋梗塞(MI)後のEFが低いほど、変力効果は強力であった。これは、虚血的に損傷された心臓におけるその使用の信憑性を高め、低用量であっても、傷害された又は不全状態にある心臓に有効であり得ることを示唆している。([0157]We measured heart function (EF) in mice after injury. The lower the EF was after myocardial infarction (MI) the more potent the inotropic effect. This lends credence to its use in ischemically damaged hearts and suggests that even lower doses may be effective in injured or failing hearts.)[0158](【0103】)プロベネシドは、ブタ健常モデルにおいて5mg/kg/時間(最初の60分間)及び10mg/kg/時間(次の30分間)で持続点滴によって投与された場合に心エコーによって測定される機能を改善する。この効果は、プロベネシドを5mg/kg IVのボーラスで投与された場合にも認められた。」
([0158]
Probenecid improves function in a healthy porcine model as measured via echocardiography when administered via continuous drip at 5 mg/kg/hr (first 60 minutes) and 10 mg/kg/hr (second thirty minutes). This effect was also seen when probenecid was given at a bolus of 5 mg/kg IV.)
・BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWINGS及びFIGURE(図面の簡単な説明及び図面)(図面の簡単な説明については、いずれも対応公表公報の【0015】)
「[0014](【0015】)【図1A】ベースライン及びプロベネシド200mg/kg IV投与後の長軸断面からみた代表的なBモード及びMモード心エコー図である。([0014]FIG. 1A is a representative B-mode and M-mode echocardiogram from long axis views for baseline and after administration of probenecid 200 mg/kg IV.)」
「【図1A】[図:0001384544000005.jpg]」
「[0015](【0015】)【図1B】プロベネシドが心エコーの変化をもたらさなかったことを示す棒グラフである。(合議体注:図1Bと図1Bの説明の記載が合わないため、正しくは、「プロベネシド200mg/kg IV投与後におけるEF変化の平均値を示すグラフ」であると解される。([0015]FIG.1B is a bar graph illustrating that probenecid did not result in any echocardiographic changes.)」
「【図1B】[図:0001384544000006.jpg]」
「[0016](【0015】)【図1C】本発明の実施形態に従ってプロベネシド200mg/kgをIV投与した後におけるEF変化の時間経過を示すグラフである。([0016]FIG. 1C is a curve illustrating a time course of the change in EF following IV administration of 200 mg/kg probenecid, in accordance with embodiments of the invention.)」
「【図1C】[図:0001384544000007.jpg]」
「[0017](【0015】)【図1D】本発明の実施形態に従って種々の濃度のプロベネシドを注射した後のEFの用量依存的変化を示すグラフである。([0017]FIG. 1D is a curve illustrating the dose-dependent changes in EF after injection of various different concentrations of probenecid, in accordance with embodiments of the invention.)」
「【図1D】[図:0001384544000008.jpg]」
「[0022](【0015】)【図2D】本発明の実施形態に従って種々の用量のプロベネシドを投与した後に測定した心拍数を示す棒グラフである。(合議体注:引用文献Aの[0106]の記載から見て、プロベネシド100mg/kgの投与後に測定した心拍数を示す棒グラフと認められる。([0022]FIG. 2D is a bar graph illustrating the heart rate measured after various doses of probenecid were administered, in accordance with embodiments of the invention.)」
「[図:0001384544000009.jpg]FIG.2D 」
「[0048]](【0015】)【図10A】I/R傷害に供したマウスにおいて、プロベネシド投与し且つ50~60%の初期EFによって群を分けた後に心機能を心エコーによって追跡後の、初期EFとEFの変化との相関を示す散布図である。([0048]FIG. 10A is a scatter plot illustrating the correlation between initial EF and the change in EF in mice subjected to I/R injury and followed via echocardiography for cardiac function after probenecid administration and the groups divided by initial EF with 50-60%.)」
「【図10A】[図:0001384544000010.jpg]」
(2)引用発明
引用文献Aには、請求項1を引用する請求項2として、「対象における心機能不全の心臓症状の治療方法であって、心機能不全の心臓症状を治療するのに有効な量のプロベネシドを投与する工程を含み、前記量のプロベネシドを、静脈内注入である注射によって投与する方法」が記載されているところ、[0075]にプロベネシドをインビボで投与する際にプロベネシドを含む医薬組成物として投与することが記載されているように、静脈内注入である注射によって投与されるプロベネシドが「医薬組成物」の形態で投与されることは、当業者に自明の事項である。
また、引用文献Aの実施例1~3において、カルシウム弱選択性のカチオンチャネルである一過性受容器電位バニロイド2(TRPV2)のアゴニストであるプロベネシド([0063])は、静脈内投与することによって、野生型(WT)マウス(合議体注:これは、野生型であることから、健常マウスといえる。)の心臓において駆出率(EF)によって測定される収縮力を用量依存的に増加させる一方([0084]、[0088]、[0104]、FIG.1A~1D)、プロベネシドのいかなる用量の投与後も、上室性若しくは心室性不整脈又は心房性期若しくは心室性期外収縮は観察されず、伝導間隔の変化はなく([0106])、心拍数の変化もなかったこと(FIG.2D)(以上、実施例1)、マウス虚血性心疾患モデル(心不全マウス)において陽性変力物質として機能し、心機能(駆出率)を正常化したこと([0120]、[0141]、[0152]、[0065]等、以上実施例2)等が確認されており、引用文献Aには、治療に有効な量のプロベネシドを、静脈内注入である注射によって投与すること(つまり、静脈内投与)によって、対象における心機能不全の心臓症状の治療が行えることを示す実施例が記載されている。
(合議体注:「陽性変力(作用)」とは、心収縮力を増強させる力のことで、心拍出量が増えるが、変時作用(心房結節に作用して心拍を変化させる)とは異なる。プロベネシドは図2Dから、変時作用はなく、心収縮力を増強して駆出率(EF:心拍ごとに心臓が送り出す血液量(駆出量)を心臓が拡張したときの左室容積で除した値で心臓の収縮力の指標である。)を正常化するが、心拍数は変化させないことが理解できる。)
そうすると、引用文献Aには、特に、請求項1を引用する請求項2等の記載からみて、以下の発明が記載されているといえる。
「対象における心機能不全の心臓症状の治療のための医薬組成物であって、心機能不全の心臓症状を治療するのに有効な量のプロベネシドを含む静脈内投与用の医薬組成物。」(以下、「引用発明」という。)
2 引用文献B及びCの記載
(1)本願優先日前の技術常識を示す引用文献Bには、以下の記載がある。
なお、引用文献Bにおける参考文献番号(1)等)の記載は省略した。
・235頁の論文タイトル及び235頁右欄~236頁左欄の1段落目までの「心機能低下を大局的に理解すること」の項目の「1.」
「心疾患の評価と治療・・・心機能低下を大局的に理解すること1.心臓の基本機能続きを表示(全12行)・・・心臓の基本機能は,収縮と拡張を繰り返し,一定の量の血液を一定の方向とリズムで体全体に送りだすポンプといえる。・・・1)心筋心筋は血液を血管に送り出すポンプの大本であり,心筋の異常がないかはおもに心エコーの結果で把握することができる。心機能と聞いて思い出されるのは,左室駆出率(Left Ventricular Ejection Fraction;LVEF [拡張末期左室容量―収縮末期容量]/拡張末期左室容量×100)である。一般に40%未満を「左室機能障害」と呼び,心筋収縮能の指標となる。憎帽弁および大動脈弁閉鎖不全,左室壁肥厚を有する高血圧性心疾患や肥大型心筋症などでは,収縮機能を過大評価することもあるので,LVEFだけで心臓機能のすべてを判断することは避けたほうがよい。近年,高齢者の心臓の特徴として,左室拡張能,またはLVEFが保たれた心不全(Heart Failure Preserved Ejection Fraction: HLFpEF)が注目されている。加齢に伴い,心筋の間質は線維化し脂肪組織が増加した結果,拡張機能の低下が認められるようになる。また,左室拡張障害をきたすおもな疾患には,肥大型心筋症や拘束型心筋症などに加えて,高齢者に多い高血圧性心疾患や大動脈弁狭窄症などもある。これらの疾患により左室壁厚の増加や左室内腔の狭小化,加齢や冠動脈疾患などによる心筋の線維化による弛緩遅延が認められるようになると,左室の弛緩時間の延長による拡張早期の充満遅延を心房収縮が代償するようになる(図1)。このように左室の拡張を心房機能に頼るような状態で,頻脈や心房細動になると心房による代償が働かなくなるために血行動態が悪化し容易に心不全となってしまう。通常,心房は左室充満を助けるのに十分な収縮力と陽性変力作用に対しての反応性を有しているが,拡張障害では代償的に心房収縮が増加しているため,頻脈になったり,心房細動になると,左室充満を助けることができなくなり心拍出量が低下してしまう。これらの理由から,理学療法実施中に生じる高齢者の心房細動の頻脈性不整脈を軽視することはできない。拡張不全の評価はおもに超音波検査で行われ,その評価指標は諸説あるが,European Society of Cardiologyのステートメントによる診断フローチャートが近年,定着してきているように思われる。また,心収縮能の指標としてよく用いられるLVEFは,40%未満になると,左室機能障害と呼ばれリスクも高いと考えられている。一方,近年LVEFは正常でも左室拡張能の低下によって心不全を発症することがあることがあきらかにされ注目されている。左室拡張障害(拡張不全)に対する疫学研究によると,収縮機能が正常な心不全例の頻度は51%と多く,特に拡張不全による心不全は高齢者に多いことも報告されている。日本人を対象にした報告でも,EFが保たれた心不全(HFpEF)の特徴として,高齢者,女性,高血圧,心肥大,貧血,心房細動,睡眠時無呼吸症候群,透析が挙げられている。[図:0001384544000011.jpg]図1 心周期心室拡張末期は心房の収縮期で,左室拡張機能が低下している者にとっては心室を血液で充満させ心拍出量や血圧を維持するためにも心房機能が重要であることがわかる.(・・・)」
(2)本願優先日前の技術常識を示す引用文献Cには、以下の記載がある。
・686頁左欄~右欄の3段落の「心不全」の「生理」の項目及び687頁左欄の「病態生理」の項目の1~3段落目
「心不全・・・心不全は心室機能不全症候群である。・・・生理心収縮性(収縮性および収縮速度)、心室機能、および心筋O2要求量は,前負荷,後負荷,基質の供給量(例,O2、脂肪酸、ブドウ糖),心拍数および調律,ならびに生存心筋量によって決まる。心拍出量(CO)は1回拍出量と心拍数の積に等しい;COはまた,静脈還流量,末梢血管緊張度,および神経液性因子の影響を受ける。前負荷は,収縮期直前である弛緩相(拡張期)終期に心臓にかかる負荷条件である。前負荷は拡張終期心筋線維伸展の程度および拡張終期容量を表し,これは心室拡張期圧および心筋壁組成の影響を受ける。典型的には,左室(LV)拡張終期圧は,特に正常値を超えていれば,前負荷の妥当な指標である。左室拡張,肥大,および心筋伸展性の変化(コンプライアンス)は前負荷に影響する。後負荷は収縮期開始時に心筋線維収縮に抵抗する力である;これは大動脈弁開口時の室圧,容量,および壁厚により決まる。臨床的には,大動脈弁開口時または直後の全身血圧は最大収縮期壁応力を表し,後負荷にほぼ等しい。フランク-スターリングの法則は前負荷と心機能との関係を表す。正常では収縮期収縮機能(1回拍出量またはCOによって表される)は標凖的な生理範囲内の前負荷に比例することを,この法則は説明している(図74-1参照)。収縮性は、心臓カテーテル法を用いなければ測定困難であるが駆出率(EF)にある程度反映され,これは収縮毎に駆出される拡張終期容量のパーセンテージ(左室1回拍出量/拡張終期容量)である。」
「病態生理心不全では,心臓が代謝要求に適う量の血液を組織に供給できないことがあり,心臓との関連で上昇した肺または全身の静脈圧が臓器うっ血をもたらすことがある。この状態は,収縮機能,拡張機能,または一般的には両機能の異常に起因しうる。・・・収縮機能不全では,心室収縮不良や心室駆出不十分がまず拡張期容量および拡張期圧の上昇をもたらす。その後,EFが低下する。・・・。拡張機能不全では心室の充満が障害され,心室拡張終期容量の減少,拡張終期圧の増加,または両方が生じる。収縮性,ひいてはEFは正常に保たれる;充満不良の左室において,駆出が完全に近く,COが維持されれば,EFは増加することもある。左室充満の著しい低下は低COおよび全身症状をもたらす。左房圧の上昇は肺うっ血を惹起しうる。拡張機能不全は通常,心室弛緩の障害(能動的な過程),心室スティッフネスの増加,収縮性心膜炎,または房室弁狭窄から生じる。充満抵抗は加齢とともに上昇するが,これは恐らく心筋細胞の喪失および間質性コラーゲンの沈着の増加を反映している;したがって,拡張機能不全は持に高齢者で一般的にみられる。肥大型心筋症,心室肥大を伴う障害(例,高血圧,重度の大動脈弁狭窄),およびアミロイドの心筋浸潤では,拡張機能不全が優勢であると考えられる。もし右室圧が著明に上昇して心室中隔が左側へ移動すれば,左室の充満および機能も障害されうる。」
第6 理由1(進歩性欠如)について
1 本願発明と引用発明との対比
「心機能不全」と「心不全」は同義である(上記第5 2(2)参照)から、引用発明の「対象における心機能不全の心臓症状の治療のための医薬組成物」である「静脈内投与用の医薬組成物」は、本願発明の「対象において心不全を静脈内注入により治療するための医薬組成物」に相当する。
また、本願発明の「保持された駆出率を伴う心不全を治療するのに有効な血漿中濃度を達成するプロベネシドの量を含む、医薬組成物」と、引用発明の「心機能不全の心臓症状を治療するのに有効な量のプロベネシドを含む」「医薬組成物」とは、「心不全を治療するのに有効なプロベネシドの量を含む、医薬組成物」である限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
対象において心不全を静脈内注入により治療するための医薬組成物であって、対象における心不全を治療するのに有効なプロベネシドの量を含む、医薬組成物。
<相違点>
本願発明では、医薬組成物が治療対象とする心不全が「保持された駆出率を伴う心不全」であり、医薬組成物に含まれるプロベネシドの量が、対象における「保持された駆出率を伴う心不全」を治療するのに有効な「血漿中濃度を達成する」量であることが特定されているのに対し、引用発明では、これらの特定はされていない点。
2 判断
(1)相違点について検討する。
ア 心不全は、収縮機能、拡張機能、又は両機能の異常に起因するものであり、高齢者で一般的にみられるのは、加齢等による心筋の線維化等により拡張機能の低下が起きる「拡張機能不全による心不全」であり、これは、収縮機能が正常であり駆出率(EF)が保持されていることから、「保持された駆出率を伴う心不全(HFpEF)」とも呼ばれることは、本願の優先日当時の技術常識であった(必要なら、上記第5 2(1)の引用文献Bの235頁右欄の最下段落~236頁右欄の1段落目、及び、同(2)の引用文献Cの687頁の左欄「病態生理」の項目の1~3段落目(特に下線部)参照)。
また、心筋の線維化により弛緩遅延が認められるようになり(合議体注:「弛緩遅延」は、左心室が拍出を終えて心室収縮期が終わった後から、心房の収縮が終わり、左心室が最大に拡張するまでの期間(心室拡張期)において、左心室が拡張(つまり、弛緩)する工程が遅延することを意味すると解される(引用文献Bの図1参照)。)、左心室の弛緩時間が延長して拡張早期の充満遅延(合議体注:拡張の早期に左心室に血液が充満するのが遅延すること。)等の心室弛緩の障害が起きることで生じる疾患であり、心室拡張終期容量の減少や拡張終期圧の増加が生じる疾患であることも本願の優先日当時の技術常識であった(必要なら、引用文献Bの235頁右欄の最下段落、及び、引用文献Cの687頁左欄の「病態生理」の1、3段落目参照)。
そうすると、当業者は、心臓の弛緩機能(合議体注:拡張機能と同義)を改善すること、つまり、心室が弛緩する時間が延長する弛緩遅延を改善することや、心室拡張終期容量の減少を改善すること、拡張終期圧の増加を改善することにより、「駆出率の維持を伴う心不全」が治療できることを認識できるといえる。
イ 上記第5 1(1)の引用文献Aの記載によれば、引用文献Aには、プロベネシドの主たる薬理作用(主作用)に関し、概ね、以下のとおりの薬理実験及びその結果が記載されていると認められる。
(ア)引用文献Aに記載のプロベネシドの薬理作用(薬理実験及びその結果)の概要
・プロベネシドの静脈内投与による心臓の初期収縮力についてのインビボ研究のために、野生型(WT)マウスの静脈内(IV)に、生理食塩水又は種々の用量のプロベネシド(2mg/kgから200mg/kgまで増加させる)を、注射投与した(ボーラス)こと([0084]-[0085])。
・侵襲的評価のために、野生型(WT)マウスの右大腿動脈で血圧測定をし、右大腿静脈から薬物を投与し、圧力カーテルを左心室まで進めて心臓性能をモニターし、また、頸動脈血流量を測定したこと、プロベネシドの投与は、100μg/μlプロベネシドの実験用溶液を、静脈カテーテルを介して30及び100mg/kgのボーラスとして、各用量間隔5分で送達させて解析したこと([0086])。
・エキソビボ(Langendorff)の研究のために、WTマウスの摘出心臓に、プロベネシド(10-6M)を、最高5分間にわたって灌流させたこと([0091])。
・プロベネシドは、インビボ心臓及びLangendorff灌流心臓(合議体注:これは、摘出心臓に当たる。)において収縮力を増加させること、(インビボ心臓における)+dP/dtの侵襲的測定から、収縮力に対するプロベネシド(10-6M)の心臓特異的な効果を測定するのに用いたLangendorff灌流心臓と同様な効果が実証されたこと、インビボでのプロベネシドの投与が、低用量(30mg/kg)及び高用量(100mg/kg)のいずれにおいても、ピーク+dP/dtを急速に増加させることを見出したこと(図3A)、Langendorff灌流心臓における平均+dP/dtの経時的変化は、90秒から210秒までが統計的に有意であり、120秒から180秒の間で定常状態に達すること(図3B)、弛緩(-dP/dt)も同一濃度(つまり、10-6M)のプロベネシドで影響され、1812±158から2309±133まで増加したこと(P<0.01)([0107])。
・WTマウスからの単離心室筋細胞の短縮率(+dL/dt)及び再伸長率(-dL/dt)を測定したところ、プロベネシド投与は80.6±12.3から112.5±16.6までの最大+dL/dtの変化をもたらし(n=10、P<0.01)、-dL/dtは57.7±7.4μm/秒から77.6±8.7μm/秒まで増加したこと(P<0.01)([0097]、[0098]及び[0110])。
・プロベネシドの心臓特異的効果から全身を切り離すためにLangendorff実験(摘出心臓を用いた実験)を行ったところ、インビボで観察されたのと同様な収縮力の増加を示し、予備実験で使用した10-6Mの濃度は、最も再現性がある反応をもたらしたこと、(単離心室筋細胞における)短縮率(+dL/dt)及び再伸長率(-dL/dt)を測定したところ、収縮力の増加が単離筋細胞における弛緩率の増加と関連することも観察されたこと、また、その結果は、(摘出心臓を用いた)エキソビボ研究でみられる収縮率(+dP/dt)及び弛緩率(-dP/dt)に匹敵すること([0116])。
(合議体注:上記の「エキソビボ研究」とは、上記、[0107]のLangendorff灌流心臓(摘出心臓)を用いた実験のことである。)
(イ)上記(ア)の引用文献Aにおける薬理実験及びその結果、特に、プロベネシドが、野生型(WT)マウスへのインビボでの投与により、心臓の収縮を増加させるのみならず、摘出心臓の弛緩率(-dP/dt)(これは、本願明細書のFIG.1Cについての【図1B】の説明に記載のとおり「弛緩速度」である。)を1812±18から2309±133まで増加(P<0.01)させた旨の記載([0107])、及び、インビトロでの単離心室筋細胞への投与においても再伸張率(-dL/dt)(合議体注:本願明細書の【0045】に記載の「再伸長速度(-dL/dt)」と同義である。)を57.7±7.4μm/秒から77.6±8.7μm/秒まで増加(P<0.01)させた旨の記載([0110])によれば、プロベネシドが、摘出心臓の弛緩速度を増加させ、弛緩機能を改善する薬理作用を有することが引用文献Aに記載されているといえる。
ウ また、上記第5 1(1)の引用文献Aの記載によれば、引用文献Aには、プロベネシドの安全性(副作用の影響)に関し、概ね、以下のとおりの記載がされていると認められる。
(ア)引用文献Aに記載のプロベネシドの安全性についての記載の概要
・実施例1によれば、プロベネシドのいかなる用量の投与後も、上室性若しくは心室性不整脈又は心房性期若しくは心室性期外収縮は観察されず([0106])、心拍数の変化もなく(FIG.2D)、有意な悪性の電気生理学的性質を有していないこと([0120])。
・実施例2のデータにより、プロベネシドは、従来から使用されている陽性変力物質のβ-アドレナリン刺激(これは、心毒性作用を有し、虚血及び細胞死の増加をもたらす)とは異なるカルシウム依存性メカニズムによって機能し、収縮力を増加させ且つ虚血後の心機能を改善させるが、細胞生存期間を短縮することもアポトーシスを増加させることもないことが示唆されること([0115]、[0120]、[0146]、[0152]等)。
・心不全マウスにおいて、プロベネシドは駆出率(EF)を正常化するが、駆出率の低い心不全マウスでは、心不全のないマウスよりも活性であり([0065])プロベネシドによって誘発されたEFの増加と初期EFとの間の強い相関関係によって示されるように、プロベネシドによる処置は、低い初期駆出率(EF)を示すマウスほど、強く機能を増大させること([0141]、[0148]、図10A)。
・実施例3から、プロベネシドは細胞内カルシウムを増加させるが、心臓細胞に損傷を与えず、細胞生存期間を延長する傾向があるし、マウスにおいて虚血性傷害(心臓発作に相当する)がある場合とない場合において、処置なしとプロベネシド処置との間に心臓細胞死に差はなく、また、プロベネシドで処置したマウスは、処置していないマウスと比較して、心室拡張(心臓のサイズ増加)が少なく、機能が良好であったこと([0153]-[0155])。
(イ)上記(ア)の引用文献Aにおけるプロベネシドの安全性についての記載によれば、プロベネシドは、従来のβ-アドレナリン刺激による心毒性はなく、心不全の治療に安全に使用できるものであるし、プロベネシドは、低い初期駆出率(EF)を示すマウスほど強く心臓収縮機能を増大させることができるものであり、駆出率が正常な、「保持された駆出率を伴う心不全」に適用する場合には、心臓の収縮作用の影響はより少なく、安全に使用できるものであることを、当業者は理解できる。
エ そうすると、上記アに記載の技術常識を熟知した当業者であれば、引用文献Aに記載される上記イ及びウの記載から、摘出心臓の弛緩率(弛緩速度、-dP/dt)及び心室筋細胞の再伸張率(再伸長速度、-dL/dt)を増加させることで心臓の弛緩機能を改善する薬理作用を有し、心室の弛緩遅延を改善することが可能なプロベネシドを、駆出率が正常な「保持された駆出率を伴う心不全」に適用することで、駆出率への影響は少ないままで、その心臓弛緩速度を改善する薬理作用に基づいて、「保持された駆出率を伴う心不全」の治療をすることが可能であることを自然に認識するといえる。
したがって、プロベネシドを含む引用発明の医薬組成物を、駆出率の維持を伴う心不全の治療に使用するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。
また、プロベネシドを含む引用発明の医薬組成物を、駆出率の維持を伴う心不全の治療に使用するものとする際に、医薬組成物に含まれるプロベネシドの量を、対象における「保持された駆出率を伴う心不全」を治療するのに有効な「血漿中濃度を達成する」量とすることは、当然のことである。
(2)本願発明の効果について
ア 上記第4における本願明細書の記載、及び、以下の第7 3(1)~(3)における本願明細書の記載事項についての説示のとおり、本願明細書には本願発明の効果に関し、以下のことが記載されているといえる。
(ア)プロベネシドの主作用に関し
・in vivoでの心臓血管機能の調査における、侵襲的心臓血行動態の試験結果として、プロベネシドの投与により、野生型(WT)マウスの拡張機能が改善する(FIG.1Cで、プロベネシドの投与量に応じてdP/dtminのマイナスの程度がより大きくなる結果に示される)ことが示されていることから、TRPV2受容体アゴニストであるプロベネシドは、インビボにおいて、圧力/時間(dP/dtmin)を指標とする心臓弛緩速度(心臓拡張機能)の改善効果をもたらすこと(【0042】及びFIG.1C)。
・単離心筋細胞における細胞収縮測定において、野生型(WT)に比べて、TRPV2-/-筋細胞は顕著に低下した再伸長速度(-dL/dt、図3C)を示したとの結果もあわせみれば、プロベネシドによる心臓弛緩(心臓拡張機能)の改善効果は、心筋細胞の再伸長速度(-dL/dt)を高めることによる結果であること(【0045】及びFIG.3C)。
(イ)プロベネシドの安全性(副作用の影響)に関し
・プロベネシドは、有意な血管作動性効果がなく、血圧に対して中立的な効果を有する安全な薬剤であること(【0047】)。
(ウ)プロベネシドが心臓弛緩機能を有すること(主作用)及びプロベネシドの安全性が高いことから、プロベネシドは「駆出率の維持を伴う心不全」の治療に有用であるといえること。
イ 以下、検討する。
上記プロベネシドが心臓弛緩機能を有する点(主作用)の効果に関し、引用文献Aには、上記(1)イ(イ)に記載したとおり、プロベネシド(これは、引用文献Aの[0009]に記載のとおり、TRPV2受容体アゴニストである。)が、摘出した灌流心臓を用いたエキソビボ研究において心臓の弛緩率(弛緩速度、-dP/dt)を増加させたこと([0107])、及び、単離心室筋細胞の再伸張率(-dL/dt)を増加させたこと([0110])が示されているのであるから、引用文献Aの記載に接した当業者は、引用文献Aにおいて摘出心臓を用いた実験において示された心臓弛緩機能の改善効果が、インビボでプロベネシドを投与した場合においても奏されると予測するといえる。
また、プロベネシドの安全性に関し、引用文献Aには、同(1)ウに記載したとおり、プロベネシドが従来から使用されている心毒性のβ-アドレナリン刺激とは異なる、細胞質Ca2+レベルを増加させるメカニズムによって機能すること([0115]、[0146])、駆出率の低い心不全マウスでは、心不全のないマウスより活性であること([0065]、[0141])が記載されており、駆出率が正常な「保持された駆出率を伴う心不全」に適用する場合には、心臓の収縮作用の影響はより少なくなることが理解できるし、引用文献Aで、インビボの試験において血圧測定を含む侵襲的評価が行われているとおり([0086])、薬剤の投与に当たり血圧等の全身に対する影響を確認することは通常に行われていることであるから、プロベネシドが有意な血管作動性効果がなく安全であるという効果は、本願発明の進歩性を認めるに足りるほどの格別の効果とはいえない。
さらに、引用文献Aの記載に接した当業者であれば、心臓の弛緩機能を改善する薬理作用を有し、かつ、安全に使用できるプロベネシドが、高齢者で一般的にみられる心機能不全である「駆出率の維持を伴う心不全」の治療にも有用であることを自然に認識するといえることは同(1)エで説示したとおりである。
以上のとおりであるから、本願発明の効果は、格別顕著な効果とは解されない。
3 請求人の主張について
(1)令和1年10月7日提出の上申書における主張について
請求人は、上申書(p.2~3)において、引用文献A(原査定の引用文献1)と同じ薬理試験結果を開示する引用文献2(J.Mol.Cell.Cardiology,2012,Vol.53,No.1,p.134-144)のp.134右欄下から8~3行に「最初の研究は、TRPV2(Ca2+透過性成長因子制御チャネルとして開示されている)の心臓に特異的な発現が、マウスの心臓の全腔の心室拡張をもたらすことを見出した岩田及び同僚によって報告された[20]。」と記載されている点に関し、参照文献20である参考資料1(J.Cell.Biol.,Vol.161,2003,pp.957-967)に、TRPV2の過剰発現は、心筋細胞の損傷や心臓機能の喪失、心臓肥大(すなわち、拡張)をもたらすことが記載されていることを指摘して、当業者は、心臓に悪影響を与える可能性のあるTRPV2受容体アゴニストであるプロベネシドを、保持された駆出率を伴う心不全の治療に適用することを動機づけられない旨主張する。
(なお、引用文献Aにも、TRPV2受容体の心臓特異的な過剰発現により、心臓の全腔(左心房、左心室、右心房、右心室)の拡張がもたらされることが記載されている([0009])。)
しかしながら、参考資料1において、心臓に悪影響を与えるとされているのは、心筋にTRPV2受容体に相当するGRC(合議体注:これは、要約の第3文及びp.964の右欄最下段落冒頭の文に記載のとおり、TRPチャネルファミリーとして知られる成長因子調節チャネルであり、Ca2+透過性成長因子制御チャネルとしても知られる。)を過剰発現させたトランスジェニックマウスであるところ、本願発明の治療対象疾患である「保持された駆出率を伴う心不全」において、TRPV2が過剰に発現しているとの技術常識はないから、「保持された駆出率を伴う心不全」を罹患する対象にTRPV2受容体アゴニストであるプロベネシドを投与することにより、心臓の機能に損傷を与えるような心臓の拡張が起こると当業者が認識するとはいえない。
かえって、引用文献Aには、プロベネシドで処置したマウスは、処置していないマウスと比較して、心室拡張(心臓のサイズ増加)が少なく、機能が良好であった旨記載されており([0155])、引用文献Aの記載から、当業者は、TRPV2が過剰発現することが特定されていない心臓にプロベネシドを投与しても、心臓のサイズが増加するような、病的な心臓の拡張は生じないと認識できるといえる。
したがって、参考資料1に示される知見にかかわらず、当業者は、プロベネシドを保持された駆出率を伴う心不全の治療に適用することを動機づけられるといえる。
よって、上記請求人の主張は採用できない。
(2)令和2年12月8日提出の意見書における主張について
ア 請求人は、意見書の「2.」において、概ね以下の2つの主張をしている。
(ア)第1の主張
引用文献Aの[0107]及び[0110](【0055】及び【0058】)に記載のプロベネシドの心筋弛緩効果は、「心臓の弛緩率(-dP/dt)」あるいは「単離心室筋細胞の再伸張率(-dL/dt)」の改善効果であり、これは、プロベネシドが筋肉をどれぐらい迅速に弛緩させることができるかに影響を及ぼすにすぎず、心臓組織が弛緩する能力、すなわち、心臓の弛緩の最大状態又は程度に影響を及ぼすかどうか不明である。心筋弛緩剤で処置した心臓は、処置していない心臓よりも迅速に弛緩することができるが、両方の心臓は、依然として、同じ最大状態の弛緩を有している。言い換えると、弛緩率の改善は、心臓のトータルの弛緩を増加させることができることを予期するものではない。対照的に、本願発明は、処置した心臓において、弛緩の最大状態を改善するためのプロベネシドの使用に関する。
このように、本願発明が、「心臓組織の最大弛緩」を増加させるためのプロベネシドの投与に関するのに対して、引用文献Aは「組織の弛緩率」のみを論じており、「最大弛緩」について論じていない。
(イ)第2の主張
引用文献Aは、心臓組織の収縮性の問題を原因とする機能不全の治療に関するものであり、プロベネシドが、心臓の緩和機能不全の状態である「保持された駆出率を伴う心不全(HFpEF)」を含む心臓の拡張障害で見られるような、心臓の弛緩が損なわれた心疾患を治療するのに有用であることを記載も示唆もしていない。
イ 上記アの主張について検討する。
(ア)第1の主張について
本願明細書においてインビボでの心臓弛緩効果を示す物性として測定しているのは、プロベネシドの投与による「単位時間当たりの最小の発生圧力(dP/dtmin)」の変化(図1C)のみであり、これは、引用文献Aに記載された「心臓の弛緩率(-dP/dt)」と軌を一にするものといえ、本願明細書には、プロベネシドが、「dP/dtmin」とは異なる、「心臓組織の最大弛緩を増加させたこと」を確認した試験結果は記載されていない。
これに関し、合議体から、令和3年3月9日付けの審尋における審尋事項3として、「プロベネシドの投与」により「心臓組織の最大弛緩を増加させる」ことができることについて、本願明細書のいずれの箇所から理解できるのかについて説明を求めたところ、請求人は、回答書の6.において、本願明細書の【0014】の記載、【0043】及び【0044】の実験結果の記載、並びに、【0046】の実験結果の考察の記載から理解できる旨回答した。
しかしながら、請求人が指摘する上記段落には、「心臓組織の最大弛緩を増加させたこと」を、具体的に確認したことは記載されていないし、プロベネシドの投与により心臓組織の最大弛緩を増加させることができることを推認させるような記載もない。
よって、請求人の第1の主張は採用できない。
(イ)第2の主張について
「駆出率の維持を伴う心不全(HFpEF)」は高齢者で一般的にみられる心機能不全疾患であり、引用文献Aの、プロベネシドが摘出した心臓における心臓弛緩(-dP/dt)及び単離した心室筋細胞の再伸張率(-dL/dt)を改善したとの結果、及び、プロベネシドの安全性についての記載(特に、プロベネシドによる処置は、低い初期EFを示すマウスほど強くEFを増大させ、初期EFが正常に近いほどEFの増大作用も小さい点を示す図10A等の記載やプロベネシドの作用がβ-アドレナリン刺激のメカニズムに関係しない旨の記載)に接した当業者であれば、プロベネシドが、その心臓弛緩改善作用に基づいて、「駆出率の維持を伴う心不全」の治療にも有用であることを自然に認識するといえることも上記2(1)で説示したとおりである。
よって、請求人の第2の主張も採用できない。
4 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明並びに引用文献Aの記載及び優先日当時の技術常識(引用文献B及びC)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 理由2(サポート要件違反)について
仮に、上記第6 2(1)イで指摘した引用文献Aの薬理実験における結果、特に、プロベネシドが、野生マウスの摘出心臓を用いた実験において「心臓の弛緩率(-dP/dt)」を増加させる作用を有していたという結果([0107])、及び、インビトロでの単離心室筋細胞を用いた実験において「再伸張率(-dL/dt)」を増加させる作用を有していたという結果([0110])等を考慮しても、本願出願時の技術常識を有する当業者が、プロベネシドにより、「保持された駆出率を伴う心不全」の治療をすることが可能であることを認識できない場合には、以下のとおり、本願発明はサポート要件を満足しない。
なお、本願優先日当時から本願出願時の間に、技術常識が変わったという事情があるとはいえない。
1 特許法第36条第6項第1号に規定する要件について
特許法第36条第6項第1号は、特許請求の範囲の記載が適合するものでなければならない要件として、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」(いわゆる「サポート要件」)を規定している。
そして、特許請求の範囲の記載が、同要件に適合するか否かは、特許請求の範囲と明細書の発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、を検討して判断すべきものである。
そこで、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載がサポート要件を満たすか否か、以下、検討する。
2 本願発明の課題について
本願の請求項1並びに本願明細書の【0003】~【0006】及び【0009】(上記第4)の記載によれば、本願発明が解決しようとする課題(以下、「本願発明の課題」という。)は、「保持された駆出率を伴う心不全を治療するための医薬組成物を提供すること」であると認められる。
3 発明の詳細な説明について
(1)上記第4によれば、本願明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には、プロベネシドの心臓に対する主作用に関して次の事項が記載されているといえる。
ア 本願発明は、「保持された駆出率を伴う心不全(HFpEF)」を含む拡張期心機能不全を、一過性受容体電位バニロイド2(TRPV2)イオンチャネル(これは、僅かにカルシウム選択性のカチオンチャネルである)のアゴニストであるプロベネシド等により治療する方法に関するものであり、TRPV2受容体アゴニストの治療上有効な用量は、心臓の心臓弛緩及び拡張機能を増加させて、心機能不全の少なくともいくつかの症状を緩和できること、その理論として、TRPV2受容体アゴニストが、細胞質から筋小胞体中へのカルシウムの除去を向上させることにより、心臓細胞におけるカルシウム処理を改善すると考えられること(【0014】、【0015】)。
イ 実施例において、心臓弛緩におけるTRPV2の役割を、TRPV2受容体アゴニストであるプロベネシドを用いてげっ歯類で評価したこと、以下の(ア)及び(イ)の試験結果から、プロベネシドは改善した心臓弛緩及び改善した拡張機能をもたらし、これはTRPV2受容体アゴニストがHfpEF等の拡張期心機能不全の治療に有用であることを示唆していること(【0032】)。
(ア)in vivoでの心臓血管機能の調査
・in vivoでの心臓血管機能のために、野生型(WT)マウス及びTRPV2-/-マウスの左心室性能及び局部血流量の測定を行ったこと、より具体的には、ECG(合議体注:「心電図」を意味する。)シグナルを測定し、また、頸動脈の血流測定で、血圧、流量を測定し、血行動態計測で、基本状態、及び、i.v.での30及び100μg/gのプロベネシドの投与後の、最大の発生圧力dP/dt(dP/dtmax)、40mmHgでの発生圧力(dP/dt40)を計測したこと(【0033】-【0036】)。
・野生型(WT)及びTRPV2-/-マウスにおけるプロベネシドに対するin vivoの反応のための侵襲的心臓血行動態の試験により、プロベネシドの用量の増加による心臓と血管の効果を調べた結果、野生型(WT)マウスと比較した場合のTRPV2-/-マウスにおける減少した最大発生圧力/時間、(dP/dtmax)(図1A)、40mmHgの発生圧力(dP/dt40)(図1B)、及び、負の圧力/時間(dP/dtmin)(図1C)の結果に示される拡張機能の減少傾向から証明されるように、TRPV2-/-マウスではベースラインでの収縮機能がWT(野生型)マウスに比べて顕著に減少すること、プロベネシドのLV(合議体注:「左(心)室」を意味する。)におけるdP/dtに対する効果は、通常ボーラス投与の1分以内で最大で、少なくとも5分間安定な傾向であり、反応の同様の傾向が、拡張機能の指標であるdP/dtminでも確認されたこと(図1C)(【0041】、【0042】)。
(イ)単離心筋細胞の細胞収縮及び細胞内カルシウム測定([Ca]i)
・成体マウス摘出心臓から心筋細胞を単離し、細胞収縮及び細胞内カルシウム測定([Ca]i)を行ったこと、より具体的には、Ca2+シグナル測定により、Ca2+-一過性(トランジェント)を求めたこと、SR Ca2+ロードをカフェインの適用により測定したこと(合議体注:SRは、【0048】に記載のとおり「筋小胞体」を意味する。)(【0037】、【0038】)。
・単離された心筋細胞機能における機械特性を評価したところ、WTに比べて、TRPV2-/-筋細胞は顕著に低下した収縮率(FS、P<0.001、図3A)、収縮速度(+dL/dt、P<0.001、図3B)、及び再伸長速度(relengthening rate、-dL/dt、P<0.001、図3C)を示したこと(【0045】)。
・TRPV2の作用機序に関する、プロベネシド療法は推定されるTRPV2の刺激を通して、単離したWT心筋細胞において、細胞質のCa2+濃度の増加及び増加したCa2+スパーク(sparks)をもたらすとの知見、及び、TRPV2の心臓における過剰発現は、Ca2+の過負荷により心筋症を生じることの発見から、TRPV2が筋細胞の変性における重要な因子であることが推定されること、したがって、生理学的条件下で、TRPV2が筋弛緩において、Ca2+一過性における小さな変化を通じて、臨床的に関連した役割を担っていると推定できること(【0046】)。
(2)プロベネシドの安全性(副作用の影響)に関して以下のことが記載されている。
単離大動脈の血管平滑筋の反応性(血管平滑筋におけるex vivo機能)に関し、
・プロベネシドの用量の増加(10-7Mから10-2Mまで)における単離大動脈のex vivoでの血管平滑筋の収縮作用及び弛緩作用を、無傷の(+E)及び内皮剥皮した(-E)胸部大動脈において調べたところ、いずれも、高濃度でも、プロベネシドには血管収縮作用は確認されなかったこと、フェニレフリンによる血管の事前収縮後に、プロベネシドによる血管弛緩効果を調べたところ、内皮剥皮血管(-E、図2A及び2B)において、野生型マウスとTRPV2-/-マウスの間で発生した最大張力の差、濃度-反応特性の差はなかったこと(【0039】、【0043】)。
・無傷の内皮を有する野生型及びTRPV2-/-血管(無傷の内皮+E、図2C及び2D)において、フェニレフリンによる収縮で発生した最大張力は、-E血管よりも大幅に小さかったが、これらの2つの遺伝子型の間に差はなかったこと、無傷の内皮を有する血管は、プロベネシドに対して-E血管よりもいくらかより反応性であるが、2つの遺伝子型の間に濃度-反応特性において差はなかったこと(【0044】)。
(3)上記(1)の主作用及び(2)の安全性に関する記載を受けて、以下のことが記載されている。
・プロベネシドの有意な血管作動性効果はないという重要な発見は、血圧に対して中立的な効果を有する安全で有力な心筋弛緩剤(拡張機能剤)としての、プロベネシドのヒトのHFpEF(保持された駆出率を伴う心不全)の治療のための重要な意義を有していること(【0047】)。
・非常に安全な臨床プロファイルを有する、FDAに承認された薬剤プロベネシドはまた、心筋収縮力に影響を与える特性を有しており、この効果は、筋小胞体(SR)放出を通して、また、βADR刺激の従来の変力経路を通さずに、筋細胞のCa2+における一過性の増加の2次的なものであること。明細書で開示するデータは、以前からの発見である、プロベネシドが陽性変力物質であることを確認するだけではなく、少量(30mg/kg)又は多量(100mg/kg)のプロベネシドの用量が野生型のマウスにおいて拡張機能を増加させることを最初に見出したこと、TRPV2は、中立的な血管効果を有する有力な心筋弛緩剤として作用するプロベネシドのSRの新規な特性に寄与し得ること、本願明細書に記載の薬理試験結果は、TRPV2アゴニストが、HfpEF及びその前兆状態等の拡張期心機能不全を患う患者のための治療の選択肢を提供することができることを示していること(【0048】-【0049】)。
4 判断
(1)上記1を踏まえると、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載がサポート要件を満足するといえるためには、出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により当業者が、本願発明の課題である、「保持された駆出率を伴う心不全を治療するための医薬組成物を提供すること」ができること、つまり、本願発明のプロベネシドを含む医薬組成物により、保持された駆出率を伴う心不全を治療できることを認識できる必要があるので、以下検討する。
(2)上記3(1)で指摘した発明の詳細な説明の主作用についての記載、特に、イ(ア)の、in vivoでの心臓血管機能の調査における、侵襲的心臓血行動態の試験結果として、TRPV2-/-マウスでは野生型(WT)マウスに比べてベースラインにおける心臓の拡張機能が弱く(図1Cで圧力/時間(dP/dtmin)のマイナス値がより小さい結果に示される)、また、プロベネシドの投与により、野生型(WT)マウス及びTRPV2-/-マウスの拡張機能が改善する(図1Cで、プロベネシドの投与量に応じてdP/dtminのマイナス値がより大きくなる結果に示される)ことが示されていることから、発明の詳細な説明の記載からは、TRPV2受容体アゴニストであるプロベネシドが、インビボにおいて、圧力/時間(dP/dtmin)を指標とする心臓弛緩(心臓拡張機能)の改善効果をもたらすことが理解できる。
また、同イ(イ)の単離心筋細胞の細胞収縮測定において、野生型(WT)に比べて、TRPV2-/-筋細胞は顕著に低下した再伸長速度(-dL/dt、図3C)を示したとの結果もあわせみれば、プロベネシドによる心臓弛緩(心臓拡張機能)の改善効果は、心筋細胞の再伸長速度(-dL/dt)を高めることによる結果であることが理解できる。
さらに、上記3(2)で指摘したプロベネシドの安全性についての結果の記載からは、同(3)で記載されるとおり、プロベネシドは、有意な血管作動性効果がなく、血圧に対して中立的な効果を有する安全な薬剤であることが理解できる。
しかしながら、本願明細書に示される心臓弛緩(心臓拡張機能)についての薬理試験結果は、プロベネシドが安全な薬剤であることを示すとともに、TRPV2受容体を有する健常な対象(野生型(WT)マウス)あるいはTRPV2受容体を有していない特殊な対象(TRPV2-/-マウス)に対する試験結果、及び心筋細胞に対する試験結果を示すものであり、発明の詳細な説明で示される心臓弛緩(心臓拡張)の効果は、本願発明の「保持された駆出率を伴う心不全」を有する対象において示されたものではない。
ここで、発明の詳細な説明に記載の上記試験結果は、引用文献Aにおいて野生型(WT)マウスの摘出心臓を用いた試験において確認されていた心臓弛緩への影響を、野生型(WT)及びTRPV2-/-マウスでのインビボでの試験において確認した結果に相当するものであって、両者の試験結果は、「保持された駆出率を伴う心不全」ではない心臓において心臓弛緩効果を確認している点でも軌を一にするものである。
そして、ある薬物により「保持された駆出率を伴う心不全」が治療できるというためには、その薬物が、心臓の弛緩率(-dP/dt)と単離心室筋細胞の再伸張率(-dL/dt)を増加させることだけでは足りず、「保持された駆出率を伴う心不全」を有する心臓の心臓弛緩(心臓拡張)の効果を確認することが必要であることが、本願の出願当時の技術常識である場合、「保持された駆出率を伴う心不全」を有する心臓に対する薬理試験結果が示されていない本願の発明の詳細な説明の試験結果の記載から、当業者は、本願発明のプロベネシドを含む医薬組成物により、「保持された駆出率を伴う心不全」の治療を行うことができ、本願発明の課題を解決できることは理解できないといえる。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、令和2年12月8日提出の意見書の3.及び令和3年9月15日提出の回答書において、本願明細書(【0014】、【0043】、【0043】、【0044】、【0046】)は、プロベネシドの弛緩率への効果(心筋拡張効果)だけでなく、「最大弛緩」までを対象としていることから、サポート要件を満たす旨主張する。
イ しかしながら、上記第6 3(2)イ(ア)及び上記(2)で記載したとおり、発明の詳細な説明の記載からは、インビボにおいて、TRPV2受容体アゴニストであるプロベネシドの投与により、圧力/時間(dP/dtmin)を指標とする心臓弛緩(単位時間あたりの圧力低下の最大値)を改善することができ、心臓拡張機能が改善でき、また、この改善効果は、心筋細胞の再伸長速度(-dL/dt)を高めることによる結果であることは理解できるが、プロベネシドが「心臓組織の最大弛緩」の効果を有することは理解できない。
ウ そうすると、仮に、「心臓組織の最大弛緩」(これは、令和3年9月15日提出の回答書の4.によれば、「心臓組織が、プロベネシドの投与が無い場合と比較して、より大きな程度の弛緩を呈すること」を意味する。)が改善すれば、「保持された駆出率を伴う心不全」の治療が行うことができるといえる場合であっても、発明の詳細な説明にはプロベネシドが「心臓組織の最大弛緩」の効果を有することが記載されているとはいえないから、当業者は、本願の発明の詳細な説明の記載から、プロベネシドを含む本願発明の医薬組成物により、「保持された駆出率を伴う心不全」の治療を行うことができ、本願発明の課題を解決できることを理解することはできない。
5 小括
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、本願発明のプロベネシドを含む医薬組成物により、本願発明の課題を解決できることは理解できないから、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載がサポート要件を満足するとはいえない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用文献Aに記載された発明並びに引用文献Aの記載及び優先日当時の技術常識(引用文献B及びC)に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないし、本願発明に関し、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-002781